説明

有機発光ダイオード(OLED)バックライト

【課題】複数のOLEDディスプレイと1枚の拡散板とを用いてディスプレイバックライトを形成すること。
【解決手段】こうしたバックライトは、AMLCDバックライトとして使うことができる。赤サブピクセルに供給される電流を減少させ、場合により資材選択または光学薄膜コーティングを用いたフィルタリングによって630nmより上の光の透過を制限することで、OLEDディスプレイをNVISとの互換に対応させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般的に言えば、本発明は、アクティブマトリックス液晶ディスプレイに用いるバックライトに関する。
【背景技術】
【0002】
透過型および半透過型アクティブマトリックス液晶ディスプレイ(AMLCD
s)は、バックライトを有することが一般的である。多くの例において、バックライトは冷陰極蛍光ランプ(CCFL)であり、これは複数のCCFLチューブを有する。残念なことに、CCFLバックライトを有するディスプレイはあらゆる用途に適しているわけではなく、必ずしも所望のサイズで生産できるわけでもない。さらに、CCFLバックライトは水銀(Hg)を含有しており、当該水銀は危険な素材であって、環境に無害ではない。加えて、CCFLバックライトは高電圧を必要とし、容量が大きく、低温では効率的に動作しない。
【0003】
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイは、有機超薄膜(固体)からのエレクトロルミネッセンス(EL)発光を利用した自己発光型ディスプレイである。こうしたタイプのディスプレイは自己発光型のため、バックライトが必要でない。残念なことながら、現在のところ大型OLEDディスプレイは生産が難しい。
【特許文献1】特開平10−319872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が目指すのは、複数の有機発光ダイオード(OLED)装置を利用し、アクティブマトリックス液晶ディスプレイ(AMLCDs)の背後から光を当てる方法および装置である。
1つの実施の形態において、本発明はバックライトを有する装置であって、当該バックライトは複数の有機発光ダイオード(OLED)装置を有し、当該装置は拡散板の背後に配置されている。
【0005】
別の実施の形態において、本発明はアクティブマトリックス液晶ディスプレイパネルとバックライトの組立物とを有するアクティブマトリックス液晶ディスプレイ装置である。バックライト組立物は、少なくとも1つの拡散板と複数の有機発光ダイオード装置とを有する。拡散板は、液晶ディスプレイパネルと複数の有機発光ダイオード装置との間に置かれている。
【0006】
さらに別の実施の形態において、本発明はアクティブマトリックス液晶ダイオードディスプレイに背後から光を当てるための方法であって、当該方法には、(a)複数の有機発光ダイオードディスプレイを設けるステップ、(b)拡散板を設けるステップ、そして(c)複数のOLEDディスプレイを拡散板の背後に配置し、拡散板が複数のOLEDディスプレイとアクティブ液晶ディスプレイパネルとの間に配置される形とするステップ、が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の目的と効果と共に、その正確な特性については、添付図面を参照しながら、次の詳述について考察すれば容易に明らかになるだろう。なお、図面において、同じ参照番号は同じ部品を示している。
以下、本発明の好ましい実施の形態について参照するが、これらの例は添付図面において示されている。本発明は、好ましい実施の形態と併せて説明されているが、理解できるように、これらの実施の形態は本発明を限定するべきものではない。それどころか逆に、本発明は、代替例、変形、そして同等の発明を含むべきものであって、これらは添付の特許請求の範囲によって定められた本発明の主旨および範囲の中に含めることができる。
【0008】
以下の詳細な説明において、本発明について完全に理解できるよう数多くの特定の詳細部分が示されている。しかし、当業者であれば理解できるように、本発明はこれらの特定の詳細を持たない形で実施することができる。それ以外では、公知の方法、手順、構成部分、そして回路については、本発明の重要な側面を不必要に不明瞭にしないよう詳細には説明していない。
【0009】
図1および2に示すのは有機発光ダイオード(OLED)バックライト1の概略図であり、これは拡散板3と複数のOLEDディスプレイ5とを有する。OLEDディスプレイ5は光を発し、その光の少なくとも一部は拡散板3を透過する。拡散板3は、OLEDディスプレイ/装置5からの光を十分に拡散するため、OLEDディスプレイ同士の間の隙間によって生じるバックライトの発光量の変化は最小限化または除去される。結果、バックライトが、拡散板3のうちOLEDディスプレイ5とは反対側の表面から発する光はほぼ均一な分布となる。
【0010】
拡散板の背後で複数のOLED装置をバックライトとして使うことで、相当な冗長性が実現する。1つのOLED装置が故障した場合(あるいは、万一複数のOLED装置が故障した場合)であっても、バックライト1は機能し続ける。機能し続けるいずれかのOLED装置からの光が拡散板3によって拡散され、バックライト1によって発せられる。
拡散板3は、何らかの1つの素材または多素材の組み合わせ、および/あるいは単一の1つの素材の部品または単一部品の組み立て品を有する形にしてもよい。しかし、用いられる構造や素材に関わらず、拡散板3は、OLEDディスプレイ5同士の間に間隔が空いていることによって生じる光の非均等性および/あるいはOLEDディスプレイ5によって得られる照度レベルの差を最小限化または除去する働きをすることが好ましい。効果的な構成として、高拡散性ポリマー(高分子)が含まれた光透過型の拡散板(例えば、Clarex (R) DR-III CV Light Diffusion Filter)を拡散板3として用いることが考えられる。そうした拡散板の使用により、隣接するディスプレイ同士が隙間によって隔てられる形で置かれたOLEDディスプレイは補償されると考えられる。また、そうした拡散板の使用により、隣接する2つのOLEDディスプレイのうち大きい方の横幅の少なくとも10%分にあたる隙間がこれらOLEDディスプレイを隔てている、という形で置かれたOLEDディスプレイは補償されると考えられる。
【0011】
OLEDディスプレイ5は、どんなOLEDディスプレイ装置を有する形にしてもよい。しかし、後ほどさらに説明するが、OLEDディスプレイ5はナイトビジョン(NVIS)との互換を目的に調整および/あるいは制御されていることが好ましい。バックライト1内のOLEDディスプレイ5の数と配置とについては、実施の形態によって異なる。しかし、一般的に、バックライト1は複数のOLEDディスプレイ5を有し、いくつかの例においては、少なくともX個(Xは、2、4、8、16、そして32のうちのいずれか)のディスプレイを有する、ということが考えられる。さらに、バックライト1内のOLEDディスプレイ5の配置は、実施の形態によって異なる。しかし、一般的に、それらディスプレイは実質的には平面となる形で、すなわち、拡散板3から共通の距離をおいて置かれている、という形が考えられる。いくつかの例においては、OLEDディスプレイ5を図1に示すとおり、行と列とに配置し、全ての行が同数のOLEDディスプレイ5を有し、全ての列が同数のOLEDディスプレイ5を有する形としてもよい。しかし、OLEDディスプレイ5を異なる配置で有する実施の形態も考えられる。
【0012】
図3を参照する。AMLCDモジュール7は、間に拡散板3が置かれた形でバックライト1とAMLCDパネル9とを有する。バックライト1からの光は、AMLCDパネル9を通過し、AMLCDは通過していく光を選択的に透過、遮断、または修正し、AMLCDモジュール7の視聴者に画像を表示する。
AMLCDパネル9はいかなる型のAMLCDパネルを有することにしてもよい。そのようなものとして、LCD層、共通電極、ピクセル電極、TFT薄膜トランジスタ、ソースライン、ガラス、アンチリフレクションコーティング、アンチグレアコーティング、偏光フィルム、配向層、そしてカラーフィルタのうち1つまたは2つ以上を有することにしてもよい。いくつかの例においては、AMLCDパネル9は拡散板3に直接連結されることもある。また、その他の例においては、場合により他の1つまたは2つ以上の構成部品が拡散板3とAMLCDパネル9との間に置かれた形で、AMLCDパネル9を拡散板3から隔離することもできる。
【0013】
AMLCDパネル9はいかなるサイズを有していてもよいが、本明細書で説明された方法および装置は、大型のAMLCDに対応するものとする。そのようなものとして考えられるのは、少なくともYインチ(Yは、4、8、12、16、20、24、28、32、40、そして60のうちいずれか)の対角寸法を有する大きさで、さまざまなAMLCDパネル9を作ることができる、ということである。
【0014】
AMLCDモジュール7は、ナイトビジョン画像システム(NVIS)と互換性があることが好ましい。そのため、ディスプレイモジュール7によって発せられる光ほぼ全てが630nm以下の波長を有することが好ましい。このことは、適当な方法であればどんなものを用いても実現できるが、以下の3つの方法のうちいずれかによって実現するのが好ましい。それらの方法とは、(1)有色サブピクセルを有するOLEDディスプレイを用いる場合、赤サブピクセルに供給される電流を減少させる、(2)”白色”OLEDディスプレイを用いる場合、630nmより大きい波長を有する光を、仮に発するとしてもごくわずかである、という有機発光体層を選ぶ、そして(3)1枚または2枚以上のフィルターを利用し、バックライト1から発せられる光ほぼ全てが630nm以下の波長を有することを確実にする。
【0015】
図4を参照する。OLEDディスプレイ5は、ガラス基板11、陽極12、正孔注入帯層13、有機発光体層15、電子伝達層17、そして陰極19を複数有する。有機発光体層15は、赤(R)、緑(G)、そして青(B)の複数のサブピクセルを有する。ディスプレイモジュール7などのディスプレイには、図4に示すようなOLEDディスプレイ5を有するバックライト1を利用してもよい。そうした場合においては、各サブピクセルに供給される電流を制御し、赤サブピクセルに供給される電流を減少または除去することで、OLEDディスプレイ5による630nmを超える光の発光を減らす、というコントローラを設置することで、ディスプレイモジュール7にNVISとの互換性を持たせることにしてもよい。
【0016】
図5を参照する。OLEDディスプレイ5は、ガラス基板21、陽極22、正孔注入帯層23、有機発光体層25、電子伝達層27、そして陰極29を有する。図5のOLEDディスプレイ5は、630nmより上の光を発することがないよう構成されている。構成は、630nmより上の光を仮に発したとしてもごく少ない、という有機発光体層25を利用することでなされている。
【0017】
図6を参照する。OLEDディスプレイ5は、ガラス基板31、陽極32、正孔注入帯層33、有機発光体層35、電子伝達層37、陰極39、そしてフィルター層40を有する。図6のOLEDディスプレイ5は、OLEDディスプレイ5によって発せられる光のうち630nmを上回る波長を有するものの量を減少または除去するフィルターレイヤー40を有することで、630nmより上の光を発することがないよう構成されている。
【0018】
630nmという波長制限に関して説明してきたが、別の実施の形態として、異なった波長制限を有するものも考えられる。そのようなものとして、ある実施の形態は、550nm、575nm、600nm、650nm、700nmの波長のうちいずれかを超える光の発光が減少または除去される形で構成されている。
また、本明細書で説明したいずれかのAMLCDモジュール7を赤外線光および/あるいは紫外線光を実質的には発することがないよう構成するのも有益であり得ると考えられる。このような構成は、図4乃至6に関連付けて説明してきたOLEDディスプレイ5を利用すること、および/あるいは、バックライト1および/あるいはディスプレイモジュール7によって発せられた光をろ過する1枚または2枚以上のフィルターを用いることによって達成できる。
【0019】
いくつかの例においては、そうしたAMLCDモジュール7および/あるいはOLEDバックライト1が、少なくとも2つの動作状態を有し、そのどちらの状態の間も複数のOLEDディスプレイが発光する、という形にしてもよい。こうした場合において、第1の動作状態は昼間可視モード、第2の動作状態はNVISモードに対応させることができる。赤サブピクセルへの電流変化を利用してモード変換する実施の形態に関しては、LCDディスプレイに表示されたパターンは不変のまま、第1の動作状態と第2の動作状態との間の切り替えによって、ディスプレイの赤サブピクセルに供給される電流は、赤以外のサブピクセルに供給される電流が変化するよりも大きく変化する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の例示的な実施の形態によるOLEDバックライトの概略上面図である。
【図2】図1のバックライトの概略側面図である。
【図3】本発明の例示的な実施の形態によるAMLCDの概略側面図である。
【図4】本発明の例示的な実施の形態による第1のOLEDディスプレイの概略側面図である。
【図5】本発明の例示的な実施の形態による第2のOLEDディスプレイの概略側面図である。
【図6】本発明の例示的な実施の形態による第3のOLEDディスプレイの概略側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックライトを有する装置であって、
当該バックライトは、複数の有機発光ダイオード(OLED)装置を拡散板の背後に配置された形で有すること、
を特徴とする装置。
【請求項2】
装置は液晶ディスプレイ(LCD)であること、
を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
装置は、アクティブマトリックス液晶ディスプレイ(AMLCD)であること、
を特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
拡散板は、複数の有機発光ダイオード(OLED)装置を液晶ディスプレイ(LCD)から隔てていること、
を特徴とする請求項の2に記載の装置。
【請求項5】
装置は少なくとも2つの動作状態を有し、それら状態の間複数のOLEDディスプレイは発光し、LCDディスプレイに表示されたパターンは不変のまま、第1の動作状態と第2の動作状態との間を切り替えることによって、ディスプレイの赤サブピクセルに供給される電流は、赤以外のサブピクセルに供給される電流が変化するよりも大きく変化すること、
を特徴とする請求項の4に記載の装置。
【請求項6】
OLEDディスプレイは、630nmを超える光の発光を最小限化するよう構成されていること、
を特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項7】
OLEDディスプレイはそれぞれ、白色発光体層と拡散板との間にフィルター層を有すること、
を特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項8】
OLEDディスプレイはそれぞれ、発光体層を有し、当該発光体層から発せられる光ほぼ全てが630nm未満の波長を有すること、
を特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項9】
LCDは少なくとも10インチの対角寸法を有すること、
を特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項10】
バックライトは赤外線を発さないこと、
を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
バックライトは紫外線を発さないこと、
を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
OLEDディスプレイは、隣接するOLEDディスプレイ同士が隙間によって隔てられた形で置かれ、いずれの2つのOLEDディスプレイの間の隙間の幅は、少なくとも0.2インチであること、
を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項13】
OLEDディスプレイは、隣接するOLEDディスプレイ同士が隙間によって隔てられた形で置かれ、隣接する2つのOLEDディスプレイの間の隙間の幅は、当該隣接する2つのOLEDディスプレイの幅の少なくとも10%であること、
を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
アクティブマトリックス液晶ディスプレイモジュールであって、
アクティブマトリックス液晶ディスプレイパネルとバックライトの組立物とを有し、
バックライト組立物は、少なくとも1つの拡散板と複数の有機発光ダイオード装置とを有し、
拡散板は、液晶ディスプレイパネルと複数の有機発光ダイオード装置との間に置かれていること、
を特徴とするモジュール。
【請求項15】
ディスプレイによって発せられる光ほぼ全てが630nm未満の波長を有すること、
を特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
アクティブマトリックス液晶ダイオードディスプレイに背後から光を当てる方法であって、
複数の有機発光ダイオードディスプレイを設けるステップと、
拡散板を設けるステップと、そして、
複数のOLEDディスプレイを拡散板の背後に配置し、拡散板が複数のOLEDディスプレイとアクティブ液晶ディスプレイパネルとの間に配置される形とするステップと、が含まれること、
を特徴とする方法。
【請求項17】
OLEDディスプレイの赤サブピクセルに供給される電流の量を減少させることで、ディスプレイを夜間可視モードに設定するステップ、がさらに含まれること、
を特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
OLEDディスプレイの赤サブピクセルに供給される電流の量を増加させることで、ディスプレイを昼間可視モードに設定するステップ、がさらに含まれること、
を特徴とする請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−236998(P2006−236998A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41054(P2006−41054)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(505113724)ノースロップ グルーマン コーポレーション (6)
【Fターム(参考)】