説明

有機発光ダイオード

有機発光ダイオード10は、金属によって形成されている第1の電極1と、第2の電極と、少なくとも1つの活性層33を備えた有機層列3と、放射を透過させるインデクス層4と、前面6と、背面5とを有する。有機層列3は第1の電極1と第2の電極2との間に設けられている。インデクス層4は、第1の電極1の有機層列3側とは反対側の外面11に設けられている。インデクス層4の平均屈折率は有機層列3の平均屈折率よりも大きいか、又は、有機層列3の平均屈折率と等しい。背面5はインデクス層4と対向しており、前面6は有機層列3と対向している。発光ダイオード10において生成される放射P,R,Sは前面6及び背面5の内の少なくとも一方において放出される。有機発光ダイオード10によって生成される電磁的なプラズモン放射Pの少なくとも一部はインデクス層4を通過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオードに関する。
【0002】
本発明が解決すべき課題は、金属電極のプラズモンモードから光を効率的に出力することができる、有機発光ダイオード、略してOLEDを提供することである。
【0003】
有機発光ダイオードの一つの実施の形態によれば、有機発光ダイオードが、金属から形成されている第1の電極を含んでいる。例えば、第1の電極は、銀、アルミニウム、カドミウム、バリウム、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム及び金の内の少なくとも一つから形成されている。即ち第1の電極は、特に、導電性の材料から形成されており、この導電性の材料は層が薄い場合であっても光非透過性である。換言すれば、第1の電極は有利には、可視スペクトル領域の放射の真空波長の少なくとも1/4の厚さである場合にその放射に対して非透過性である材料から形成されている。
【0004】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、有機発光ダイオードが、少なくとも一つの活性層を備えた少なくとも一つの有機層列を含んでいる。活性層は、電磁放射を生成するために構成されている。活性層は、例えば、有機ポリマー、有機オリゴマー、有機モノマー、有機の非ポリマー小分子、又は、それらの組み合わせを基礎としている。有機層列は別の複数の有機層を有することができ、それらの有機層は例えば、電荷注入層、電荷輸送層及び電荷阻止層の内の少なくとも一つとして構成されている。
【0005】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、有機発光ダイオードが第2の電極を有している。有利には、第2の電極は第1の電極と同様に、面状に構成されているか、又は、平坦に構成されているか、又は、面状且つ平坦に構成されている。面状とは、電極が相互に反対側に位置する面において有機層列の主面の少なくとも80%を覆っているか、又は、完全に覆っているか、もしくは、電極の横方向の拡張部と電極の厚さとの比が少なくとも1000であることを意味している。
【0006】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、有機層列が第1の電極と第2の電極との間に設けられている。有機層列を、完全に電極間に設けることができるか、又は、部分的に電極間に設けることができる。
【0007】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、有機発光ダイオードが放射透過性のインデクス層を含んでいる。即ち、インデクス層は可視スペクトル領域の少なくとも部分領域において半透明であるか、又は、有利には透明もしくは可視に構成されている。更に有利には、インデクス層は誘電性材料でもって構成されている。インデクス層は、均質の材料、例えば結晶性の材料から形成することができるが、少なくとも一つのメタ材料から形成することもできる。インデクス層が結晶性の材料を有している場合、適切な材料は例えばLiNbO3,ZnS,ZnSe又はTeO2である。同様に、約2.2の屈折率を有するC60のような有機材料をインデクス層に対して使用することができるか、又は、インデクス層内に使用することができる。
【0008】
適切な材料は、マトリクス材料内に埋め込まれている、例えばTiO2である。適切なマトリクス材料は例えばポリマー、特にエポキシド、シリコーン、また、エポキシとシリコーンのハイブリッド材料である。
【0009】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、インデクス層が、第1の電極の有機層側とは反対側の外面に設けられている。換言すれば、インデクス層と有機層列との間に金属性の第1の電極が設けられている。
【0010】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、インデクス層の平均光学屈折率は有機層列の平均屈折率よりも大きいか、有機層列の平均屈折率に等しい。平均屈折率とは、屈折率が有機層列又はインデクス層の総層厚にわたり平均化されることを意味している。プラズモンモードは第1の電極から遠くなる方向において指数的に弱まるので、インデクス層の層を第1の電極に近くなるほどより強く重み付けすることができる。平均屈折率はまた、それぞれの層の実効屈折率であっても良い。例えば、有機層列の平均屈折率及び実効屈折率の内の少なくとも一方が1.8である場合、インデクス層の平均屈折率及び実効屈折率の内の少なくとも一方は同様に少なくとも1.8である。
【0011】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、有機発光ダイオードが前面及び背面を有している。背面はインデクス層に対向しているか、又は、インデクス層によって形成されており、また、前面は有機層列に対向している。即ち、背面と有機層列との間には、少なくとも部分的にインデクス層が設けられており、前面とインデクス層との間には少なくとも部分的に有機層列が設けられている。発光ダイオード内で生成される放射は、有機発光ダイオードの前面及び背面の内の少なくとも一方において放出される。有利には、放射は少なくとも前面において発光ダイオードから放出され、選択的には更に背面において放出される。発光ダイオードの前面を横断する方向の側面においては、有利には、放射は放出されないか、又は、極僅かな割合の放射しか放出されない。
【0012】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、有機発光ダイオードによって生成される電磁的なプラズモン放射の少なくとも一部がインデクス層を通過する。プラズモン放射は、少なくとも第1の電極の表面プラズモンから生成されている放射である。
【0013】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、有機発光ダイオードが、金属により形成されている第1の電極と、第2の電極とを有している。更に、有機発光ダイオードは、第1の電極と第2の電極との間に設けられている、少なくとも一つの活性層を備えた有機層列を含んでいる。更に、有機発光ダイオードは、第1の電極の有機層列側と反対側の外面に設けられている、放射を透過するインデクス層を有している。インデクス層の平均屈折率は、有機層列の平均屈折率より大きいか、有機層列の平均屈折率と等しい。更に、有機発光ダイオードは、インデクス層に対向している前面と、有機層列に対向している背面とを有している。発光ダイオード内で生成される放射は、前面及び背面の内の少なくとも一方において放出される。有機発光ダイオードによって生成される電磁的なプラズモン放射の少なくとも一部はインデクス層を通過する。
【0014】
少なくとも一つの実施の形態によれば、第1の電極が有機層列ともインデクス層とも物理的に直接接触している。換言すれば、第1の電極はこの第1の電極の主延在方向を横断する方向において、インデクス層及び有機層列によって完全に又は部分的に境界付けられているか、閉じられている。
【0015】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、活性層において生成された電磁放射によって、少なくとも、第1の電極と有機層列との間の境界面において表面プラズモンが励起される。表面プラズモンによって、プラズモン放射が完全に又は部分的に生成される。
【0016】
有機層列において放射を生成するために設けられている活性層は、通常の場合、電子的に励起される状態において近似的に電気双極子モーメントを示す分子を有している。電子的な基本状態においては分子が双極子モーメントを示すことは必要とされていない。更には、有機層列と金属性の第1の電極層との間の境界面においては、電磁的な境界面モードが存在している。近接場効果及び表面粗さの内の少なくとも一つを介して、表面プラズモンモードとも称される境界面モードを有機層列の分子に結合させることができるか、又は、有機層列の分子がこのモードが結合させることができる。活性層によって生成される光の総量を測定すると、表面プラズモンモードにおける結合の範囲のオーダは約30%になる。換言すれば、有機発光ダイオードの出力の大部分が表面プラズモンに変換される。
【0017】
上記のように構成されているインデクス層を有していない有機発光ダイオードにおいては、表面プラズモンに結合される出力は、特に第1の電極の金属内での表面プラズモンモードの減衰によって失われ、光に変換されない。第1の電極の有機層列側とは反対側の面におけるインデクス層によって、表面プラズモンを電磁放射に変換するためのエネルギ及びインパルスを維持することができる。即ち、表面プラズモンを少なくとも部分的に、第1の電極の外面において電磁放射に変換することができる。
【0018】
第1の電極の表面プラズモンから生成される放射、即ちプラズモン放射は、少なくとも部分的にインデクス層を通過し、例えば、インデクス層によって形成されている有機発光ダイオードの背面において有機発光ダイオードから放出される。第1の電極における表面プラズモンの電磁放射への逆変換によって、有機発光ダイオードの効率及び能率を向上させることができる。
【0019】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、インデクス層が、少なくとも50nm、特に少なくとも100nm又は少なくとも200nmの平均的な幾何学的厚さを有している。有利には、インデクス層の平均的な幾何学的厚さは少なくとも300nm、特に少なくとも500nmを上回っている。即ち、インデクス層は、このインデクス層内の電磁放射の波長のオーダに少なくとも対応する厚さを有している。
【0020】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、金属性の第1の電極が15nm以上65nm以下の厚さ、有利には25nm以上50nm以下の厚さを有している。上述の範囲内の第1の電極の厚さでは、第1の電極は放射に対して十分に非透過性である。即ち、活性層において生成される放射の殆どの部分は、反射、吸収又は表面プラズモンへの変換が行われることなく、第1の電極を直接的に通過することはない。他方では、第1の電極の有機層列と対向する内面から第1の電極の外面への表面プラズモンの移動を効果的に保証するために、第1の電極の厚さは上述の範囲において十分に薄い。即ち、第1の電極の上述の範囲の厚さでは、プラズモン放射の生成が特に効果的である。
【0021】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、第1の電極と活性層との間の平均間隔は、15nm以上100nm以下、有利には25nm以上50nm以下である。表面プラズモンへの結合を低減するために、上述のように構成されているインデクス層を備えていない有機発光ダイオードにおいては、第1の電極と活性層との間隔が通常の場合、可能な限り大きく選定されている。可能な限り大きいとは、間隔が例えば100nmを上回ることを意味している。インデクス層を介する表面プラズモンのプラズモン放射への変換が実現されているので、活性層と第1の電極との間隔を短くすることができる。
【0022】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、第1の電極と活性層との間の平均間隔は最大で25nm、特に最大で15nmである。活性層と第1の電極との間隔がこのように短いことによって、活性層において生成される放射が第1の電極の表面プラズモンに特に効果的に結合されることを保証することができる。換言すれば、有機発光ダイオードの電力消費量の大部分が少なくとも第1の電極における表面プラズモンに変換される。
【0023】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、有機層列の平均的な幾何学的総厚は150nm以下、有利には90nm以下である。有機層列の総厚がこのように薄いことは、表面プラズモンのプラズモン放射への変換によって実現されているので、発光ダイオードの総効率は、表面プラズモンの励起に基づき発光ダイオードの効率を低減させない、又は、殆ど低減させない。
【0024】
更には、有機層列の層厚が薄いことによって、有機発光ダイオードの電気的な特性が改善される。つまり有機層列においては、その厚さが薄いことに基づき、電圧も僅かにしか低下しない。更に、有機層列の形成に必要とされる材料の使用量を低減することができる。更には、有機層列は、導波層としての従来の発光ダイオードにおけるもののようには機能しないか、そのような従来の発光ダイオードにおけるものに比べて少なくとも遥かに低い機能を有している。有機層列が導波層として機能しないか、又は機能が低下している場合、生成される放射の出力効率を上昇させることができる。
【0025】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、発光ダイオードによって生成される放射の、発光ダイオードの背面における平均放射強度は、発光ダイオードの前面における平均放射強度の少なくとも5%、特に少なくとも15%である。換言すれば、発光ダイオードから放出される放射の大部分は背面において、即ち、発光ダイオード有機層列側とは反対側の面において放出される。
【0026】
有機発光ダイオードの少なくとも1つの実施の形態によれば、25%の許容差でもって、背面における平均放射強度は前面における平均放射強度に相当する。有利には、許容差は最大で10%であり、特に背面における平均放射強度と前面における放射強度は製造公差の範囲で同一である。前面における放射強度と背面における放射強度との比率を、例えば、活性層と第1の電極との間隔によって、即ち、表面プラズモンにおける結合度によって、また、金属性の第1の電極の厚さ及び透明度の内の少なくとも一つとによって調整することができる。即ち、特に金属性の電極を一つだけ備えており、両面において、即ち前面及び背面において均一に光を放出する、有機発光ダイオードを実現することができる。
【0027】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、インデクス層の平均屈折率は有機層列の平均屈折率の少なくとも1.1倍である。有利には、インデクス層の平均屈折率は、有機層列の平均屈折率の少なくとも1.2倍、特に、少なくとも1.3倍である。屈折率の差が比較的大きいことによって、表面プラズモンからのプラズモン放射の効果的な生成を保証することができる。
【0028】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、インデクス層が、交番的に配置されている複数の層から形成されている。交番的に配置されている複数の層はそれぞれ異なる材料組成を有している。交番的に配置されている複数の層は、例えば、比較的高い屈折率と比較的低い屈折率とを交互に示すことができる。
【0029】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、交番的に配置されている複数の層の内の少なくとも1つの層は透明な金属酸化物によって形成されている。例えば、インデクス層はZnO層と、TiO層及び/又はSrTiO3層とが順番に交互に配置されている層列から形成されている。複数の層は例えば、それぞれ原子層堆積(atomic layer deposition又は、略してALD)によって製造されている。このようにして構成されているインデクス層は、高い屈折率及び高い透過性を有しており、更には、酸素及び湿気のような外部からの影響に対する有機発光ダイオードの保護に適している。
【0030】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、有機発光ダイオードの背面がインデクス層によって形成されている。即ち、背面における有機発光ダイオードからの光はインデクス層から直接的に出力される。
【0031】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、インデクス層がプラズモン放射の放射出力を高めるための構造化部を有している。この構造化部を規則的に構成することができるが、不規則に構成することもできる。例えば、構造化部はエッチングマスクを用いたエッチングによって形成されているか、又は、例えば研磨もしくはサンドビームのような統計的な仕上げ処理によって形成されている。
【0032】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、インデクス層には拡散手段が添加されている。拡散手段は例えば散乱粒子によって形成されている。換言すれば、プラズモン放射、又は、プラズモン放射の少なくとも一部はインデクス層を直線的に通過するのではなく、拡散手段によって、特に反射及び散乱内の少なくとも一方によって少なくとも一回は方向を変更する拡散手段を使用することによって、特に、インデクス層の構造化部と組み合わせることによって、プラズモン放射に関する光の高い出力効率を達成することができる。
【0033】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、インデクス層が変換手段を含んでいる。変換手段は、プラズモン放射の少なくとも一部を吸収し、より大きい波長の放射に変換するよう構成されている。変換手段によって、背面における発光ダイオードの空間放射特性も変更することができ、特に均一に構成することができる。変換手段を、拡散手段及びインデクス層の構造化部と組み合わせて使用することもできる。
【0034】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、第1の電極も第2の電極も金属から形成されている。即ち、この場合にはいずれの電極も金属性の電極である。例えば、有機発光ダイオードはいわゆるマイクロ共振器OLEDとして構成されている。即ち、第1の電極及び第2の電極によって、例えば一種の共振器が形成されている。
【0035】
特に、第1の電極も第2の電極も金属から形成されている有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、いずれの電極も最大で30nm、特に最大で15nmの厚さを有している。換言すれば、いずれの電極も厚さが薄いことに基づき、活性層において生成される可視の放射に対して透過性である。
【0036】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、第2の電極が透明導電性酸化物から形成されている。有利には、第2の電極の厚さは100nm、特に200nmを上回っている。有利には、第2の電極の厚さは100nm以上140以下である。例えば、第2の電極は、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、酸化インジウム亜鉛、酸化亜鉛又は酸化スズを含有しているか、もしくは、それらの材料から形成されている。同様に、第2の電極のための材料として、Alドープされた酸化亜鉛、略してAZOを使用することができる。
【0037】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、少なくとも、第1の電極は少なくとも一つの主延在方向に沿って、有利には二つの主延在方向に沿って厚さが変化する。換言すれば、第1の電極の厚さは、直交する二つの主延在方向に沿って、例えば周期的に変化するか、又は、統計的に分布して変化する。
【0038】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、有機発光ダイオードの支持体が主面において構造化部を有している。支持体のこの主面には、第1の電極及び第2の電極、並びに、有機層列及びインデクス層が、それぞれ有利には主面全体にわたり製造公差の範囲で一定の厚さでもって被着されている。
【0039】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、厚さ変化の長さスケール及び構造化部の長さスケールの内の少なくとも一方は300nm以上1.5μm以下、有利には400nm以上1.0μm以下である。厚さ変化は均一な変化又は周期的な変化で良く、この周期的な変化は例えば正弦波状の変化又は段状の変化であり、且つ、長さスケールに応じた周期性を示している。同様に、第1の電極内で相互に規則的な間隔を空けて配置されている複数の孔の形態で厚さ変化を実施することができる。長さスケールは平均長さスケールであっても良く、また、主延在方法に沿った厚さ変化は不規則であるか、ランダムなものであっても良い。有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、インデクス層の第1の電極側とは反対側の面にはミラーが設けられており、このミラーはプラズモン放射を有機層列の方向へと反射させるよう構成されている。その種のミラーを使用することによって、有機発光ダイオードによって生成される放射全てを有機発光ダイオードの前面から出力させることができる。その種のミラーを使用する場合、インデクス層は有利には拡散手段及び構造化部の内の少なくとも一方を有している。
【0040】
有機発光ダイオードの少なくとも一つの実施の形態によれば、ミラーはインデクス層の一部である。例えば、この場合ミラーはブラッグミラーとして形成されており、またそれと同時に、ミラー層はインデクス層の部分層である。これによって、有機発光ダイオードの効率的なカプセル化及び小型の構造の内の少なくとも一方を達成することができる。
【0041】
以下では、図面に示した実施例を参照しながら、本願発明による有機発光ダイオードをより詳細に説明する。個々の図面において、同一の構成要素には同一の参照符号並びに参照番号を付している。しかしながら、それらの図面は縮尺通りに描かれたものではない。むしろ、より良い理解のために個々の構成要素は強調して大きく描かれている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本願発明による有機発光ダイオードの実施例の概略的な断面図を示す。
【図2】本願発明による有機発光ダイオードの実施例の概略的な断面図を示す。
【図3】本願発明による有機発光ダイオードの実施例の概略的な断面図を示す。
【図4】本願発明による有機発光ダイオードの実施例の概略的な断面図を示す。
【図5】本願発明による有機発光ダイオードの実施例の概略的な断面図を示す。
【図6】本願発明による有機発光ダイオードの実施例の概略的な断面図を示す。
【図7】本願発明による有機発光ダイオードの実施例の概略的な断面図を示す。
【図8】本願発明による有機発光ダイオードの実施例の概略的な断面図を示す。
【図9】本願発明による有機発光ダイオードの実施例の概略的な断面図を示す。
【図10】本願発明による有機発光ダイオードの実施例の概略的な断面図を示す。
【図11】本願発明による有機発光ダイオードの実施例の概略的な断面図を示す。
【図12】本願発明による有機発光ダイオードの実施例の概略的な断面図を示す。
【図13】本発明による原理スケッチの概略的な断面図を示す。
【図14】表面プラズモンのばらつき関係の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1には、有機発光ダイオード10の一つの実施例が示されている。有機発光ダイオード10は、活性層33を備えた有機層列3を有している。有機発光ダイオード10の動作時には、活性層33において電磁放射Rが生成される。有機層列33の総厚Hは、例えば最大で300nm、特に最大で90nmである。有機層列3の支持体7側の面には第2の電極2が設けられている。第2の電極2は例えば透明導電性酸化物から形成されている。活性層33において生成された放射Rの少なくとも一部は、第2の電極2及び支持体7を通過して、有機発光ダイオード10の前面6において放出される。
【0044】
有機層列3の支持体7側とは反対側の面には第1の電極1が設けられており、この第1の電極1は金属、例えば銀から形成されている。活性層33における放射の生成によって、第1の電極1と活性層列3との間の境界面においては、表面プラズモン+,−が励起される。この表面プラズモン+,−は、第1の電極1の有機層列3側とは反対側の外面11に到達することができる。これを効率的に実現するために、第1の電極1の厚さTは有利には25nm以上50nm以下である。
【0045】
第1の電極1の外面11には、この第1の電極1と直接的に接触して、インデクス層4が設けられている。インデクス層4の平均屈折率は、有機層列3の平均屈折率と少なくとも同じ大きさであるか、又は、有利には有機層列3の平均屈折率よりも大きい。インデクス層4によって発光ダイオード10の背面5も形成されている。
【0046】
インデクス層4の平均屈折率が有機層列3の平均屈折率よりも大きいことによって、第1の電極1における表面プラズモン+,−をプラズモン放射P1,P2,P3に変換することができる。プラズモン放射P1,P2,P3は少なくとも部分的にインデクス層4を通過し、背面5において発光ダイオード10から放出される。インデクス層4の厚さDは有利には少なくとも200nmである。
【0047】
表面プラズモン+,−がプラズモン放射P1,P2,P3へと変換される際にインパルス及びエネルギが維持されることに基づき、波長に関するプラズモン放射P1,P2,P3の放出は角度に依存して行われる。即ち、プラズモン放射P1の波長はプラズモン放射P2の波長よりも小さい。また、プラズモン放射P2の波長はプラズモン放射P3の波長よりも小さい。プラズモン放射P1,P2,P3の波長が小さくなればなるほど、それらのプラズモン放射P1,P2,P3がインデクス層4を通過して第1の電極1の主延在方向へと延びる角度も小さくなる。
【0048】
図2による実施例においては、インデクス層4が基板7と第1の電極1との間に設けられている。背面5は基板7によって形成されており、また、前面6は第2の電極2の有機層列3側とは反対側の外面12によって形成されている。プラズモン放射P1,P2,P3は基板7を通過して発光ダイオード10から放出される。
【0049】
図1又は図2に示した実施例とは異なり、基板7が出力効率を改善するための表面処理部を有していても良い。
【0050】
図3によれば、基板7自体がインデクス層4を形成している。即ち、基板7は有機層列3の平均屈折率と少なくとも同じ屈折率を有している金属によって形成されている。有利には、有機層列3の屈折率と基板7の屈折率の差は少なくとも0.2又は0.3である。例えば、基板7の屈折率は約2.1であり、有機層列3の平均屈折率は約1.8であり、特にそれぞれが0.1又は0.05の許容差を有している。
【0051】
図4による有機発光ダイオード10はマイクロ共振器発光ダイオードとして実施されている。第1の電極1も第2の電極2もそれぞれ金属、例えば銀から形成されている。しかしながら、有利には2つの電極1,2は相互に異なる金属を含有しているか、異なる金属から形成されている。第1の電極1の外面11においても、第2の電極2の外面12においてもインデクス層4a,4bが設けられている。選択的に、第1の電極1におけるインデクス層4aが同時に支持体7を表していることも考えられる。第1の電極1の厚さT1及び第2の電極2の厚さT2は、表面プラズモン、従ってプラズモン放射P1,P2,P3が生成され、更には、直接的に活性層3において生成された放射Rが少なくとも部分的に第1の電極1及び第2の電極2の内の少なくとも一方を通過するように調整されている。これによって、例えば図1から図3に示した実施例でも同様に、有機発光ダイオード10の前面6においても背面5においてもほぼ同一の高放射強度を実現することができる。
【0052】
図5による実施例では、第1の電極1が主延在方向に沿って、長さスケールLの厚さ変化を示している。長さスケールLは有利には、放出されるプラズモン放射P1,P2,P3の真空波長のオーダにある。例えば、厚さ変化は周期的な正弦波状の経過を示している。
【0053】
選択的に、インデクス層4は図5に示されているものとは異なる厚さ変化を示しても良い。同様に、図5に示されているものとは異なり、第2の電極2が厚さ変化を示し、また、第2の電極2から見て基板7側とは反対側の層3から5が一定の厚さを有していることも考えられる。更には、基板7の有機層列3側の面を構造化することもでき、その場合には、有利には別の層2から5が一定の厚さを有している。
【0054】
プラズモン放射P1,P2,P3の波長の長さスケールLでの厚さ変化によって、第1の電極1において一種の光学格子を形成することができる。これによって、放出されるプラズモン放射P1,P2,P3と角度の関係を調整することができる。例えば、プラズモン放射P2の強度はプラズモン放射P1,P3の強度を上回っている。
【0055】
図面を分かりやすくするために、図5及び後続の図面においては、直接的に活性層33において生成された放射Rは図示していない。
【0056】
図6によれば、第1の電極1は複数の孔9を有している。それらの孔9は第1の電極1を例えば完全に貫通しており、また、それらの孔9をフォトリソグラフィ処理によって形成することができる。孔9の直径は、例えば100nm以上200nm以下である。第1の電極1における孔9によって、同様に、背面5における放射特性を調整するための一種の光学格子を形成することができる。
【0057】
図7には、インデクス層4が、プラズモン放射Pの出力効率を高めるための構造化部13を有していることが示されている。
【0058】
図8によれば、インデクス層4は散乱粒子の形態の拡散手段14を含んでいる。散乱粒子14によって、プラズモン放射Pは少なくとも部分的に、直線的にインデクス層4を通過するのではなく、散乱粒子において偏向又は反射されてインデクス層4を通過する。これによって、インデクス層4からのプラズモン放射Pの出力効率をやはり高めることができる。
【0059】
図9による実施例においては、インデクス層4には変換手段15が添加されている。変換手段15の粒子によって、プラズモン放射Pの少なくとも一部が吸収され、より大きい波長の二次放射Sへと変換される。変換手段15を使用することによって、放出される放射P,Sの放射特性を均質化することができる。即ち放射P,Sをより安定したものにすることができる。例えば、プラズモン放射の青色スペクトル成分及び緑色スペクトル成分のみが二次放射Sへと変換され、プラズモン放射Pの赤色スペクトル成分が変換されずに背面5において放出されるように変換手段15を選定することができる。
【0060】
図10によれば、第1の電極1は段状の厚さ変化を示している。この厚さ変化によって、プラズモン放射P1,P2,P3の種々の波長に関して、表面プラズモンをプラズモン放射P1,P2,P3に変換するための種々の効率が第1の電極の異なる位置において存在することを達成することができる。したがって、このような第1の電極1の厚さ変化によって、第1の電極1を構造化させることなく、光学格子のような、背面5における放射特性の影響及び構成を実現することができる。
【0061】
図11による実施例においては、第1の電極1の厚さ変化は図10のように段状のものではなく、スロープ状のものである。図10に示されているものにおいても、スロープ状に構成されている厚さ変化の周期性は有利には、プラズモン放射P1,P2,P3の波長よりも大きい。
【0062】
図12には、インデクス層4の有機層列3側とは反対側の面にミラー8が設けられている、発光ダイオード10の実施例が示されている。ミラー8を介してプラズモン放射Pが基板7の方向へと反射されるので、プラズモン放射Pも、直接的に活性層33において生成された放射Rも前面6を介して発光ダイオード10から放出される。有利には、インデクス層4は、図12に示されていない散乱手段を有している。更に、ミラー8をインデクス層4の一部として形成することができる。
【0063】
図13には、いわゆるクレッチマン配置が示されている。ガラスプリズム16が第1の電極1上に設けられている。第1の電極1のガラスプリズム16側とは反対側の面には更に有機層列3が設けられている。所定の波長の放射Qがガラスプリズム16に入射する。放射Qの入射角度、放射Qの波長、及び、ガラスプリズム16並びに有機層列3の屈折率に依存して、所定量の放射Qが表面プラズモン+,−に変換される。全ての放射Qが表面プラズモン+,−に変換されることも考えられる。即ち、図1から図12に示したような有機発光ダイオード10とは異なり、クレッチマン配置では逆の場合の変換が存在する。つまり、放射Qが表面プラズモン+,−に変換される。
【0064】
図14には、表面プラズモン+,−の分散関係が概略的に示されている。波長λ(単位nm)もしくは周波数f(単位Hz)に対する波ベクトルk(単位m-1)がプロットされている。分散関係に関して、更に右側にある曲線から更に左側にある曲線にのみ、放射Qの表面プラズモン+,−への変換が実現される。曲線aは空気中の分散関係を概略的に示しており、曲線bは屈折率1.5の媒体中の分散関係を示しており、曲線cは空気と銀の境界面における表面プラズモンに関する分散関係を示しており、また、曲線dは銀と有機体との間の境界面における表面プラズモンに関する分散関係を示している。ここで、有機体は約30nmの厚さを有している。
【0065】
したがって逆の場合、即ち、表面プラズモン+,−からプラズモン放射Pに変換が行われる場合、表面プラズモンがプラズモン放射Pへと変換される媒体の屈折率、ここではインデクス層4の屈折率が十分に大きい場合にのみ実現される。
【0066】
上記において説明した本発明は、実施例に基づいた上記の説明によって限定されるものではない。むしろ、本発明はあらゆる新規の特徴並びにそれらの特徴のあらゆる組合せを含むものであり、これには特に特許請求の範囲に記載した特徴の組み合わせ各々が含まれ、このことはそのような組み合わせ自体が特許請求の範囲又は実施例に明示的には記載されていないにしても当てはまる。
【0067】
本願は、ドイツ連邦共和国特許出願第10 2009 023 352.0号及び第10 2009 037 185.0号の優先権を主張するものであり、その開示内容は参照により本願に取り入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光ダイオード(10)において、
金属によって形成されている第1の電極(1)と、第2の電極と、少なくとも1つの活性層(33)を備えた有機層列(3)と、放射を透過させるインデクス層(4)と、前面(6)と、背面(5)とを有しており、
前記有機層列(3)は前記第1の電極(1)と前記第2の電極(2)との間に設けられており、
前記インデクス層(4)は、前記第1の電極(1)の前記有機層列(3)側とは反対側の外面(11)に設けられており、前記インデクス層(4)の平均屈折率は前記有機層列(3)の平均屈折率よりも大きいか、又は、前記有機層列(3)の平均屈折率と等しく、
前記背面(5)は前記インデクス層(4)と対向しており、前記前面(6)は前記有機層列(3)と対向しており、発光ダイオード(10)において生成される放射(P,R,S)は前記前面(6)及び前記背面(5)の内の少なくとも一方において放出され、有機発光ダイオード(10)によって生成される電磁的なプラズモン放射(P)の少なくとも一部は前記インデクス層(4)を通過することを特徴とする、有機発光ダイオード(10)。
【請求項2】
前記活性層(33)において生成される電磁放射の少なくとも一部によって、少なくとも前記第1の電極(1)においては表面プラズモン(+,−)が励起されており、該表面プラズモン(+,−)によって前記プラズモン放射(P)が形成されている、請求項1に記載の有機発光ダイオード(10)。
【請求項3】
前記インデクス層(4)は少なくとも100nmの平均的な幾何学的厚さを有している、請求項1又は2に記載の有機発光ダイオード(10)。
【請求項4】
前記第1の電極(1)は25nm以上65nm以下の厚さ(T)を有している、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機発光ダイオード(10)。
【請求項5】
前記第1の電極(1)と前記活性層(33)との間の平均間隔(A)は15nm以上80nm以下であるか、又は、
前記有機層列(3)の平均的な幾何学的総厚(Z)は最大で150nmであるか、又は、
前記第1の電極(1)と前記活性層(33)との間の平均間隔(A)は15nm以上80nm以下であり、且つ、前記有機層列(3)の平均的な幾何学的総厚(Z)は最大で150nmである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機発光ダイオード(10)。
【請求項6】
有機発光ダイオード(10)によって生成される放射(P,R)の、有機発光ダイオード(10)の前記背面(5)における平均放射強度は、有機発光ダイオード(10)の前記前面(6)における平均放射強度の少なくとも5%である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の有機発光ダイオード(10)。
【請求項7】
25%の許容差でもって、前記背面(5)における平均放射強度は前記前面(6)における平均放射強度に等しい、請求項6に記載の有機発光ダイオード(10)。
【請求項8】
前記インデクス層(4)の平均屈折率は、前記有機層列(3)の平均屈折率の少なくとも1.1倍である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の有機発光ダイオード(10)。
【請求項9】
前記インデクス層(4)は少なくとも二種類の層が交番的に配置されている複数の層を含んでおり、該複数の層の少なくとも一種類は透明な金属酸化物によって形成されている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の有機発光ダイオード(10)。
【請求項10】
前記背面(5)は前記インデクス層(4)によって形成されており、前記インデクス層(4)は前記プラズモン放射(P)の放射出力を高めるための構造化部(13)を有している、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の有機発光ダイオード(10)。
【請求項11】
前記インデクス層(4)は拡散手段(14)及び変換手段(15)の内の少なくとも一方を含有している、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の有機発光ダイオード(10)。
【請求項12】
前記第1の電極(1)も前記第2の電極(2)も金属から形成されている、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の有機発光ダイオード(10)。
【請求項13】
前記第2の電極(2)は透明導電性酸化物から形成されている、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の有機発光ダイオード(10)。
【請求項14】
前記第1の電極(1)は少なくとも主延在方向に沿って厚さが変化し、該厚さの変化の長さスケール(L)は少なくとも300nm且つ最大で1.5μmである、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の有機発光ダイオード(10)。
【請求項15】
前記インデクス層(4)の前記第1の電極(1)側とは反対側の面にはミラー(8)が設けられており、該ミラー(8)は前記プラズモン放射(P)を前記有機層列(3)の方向へと反射させるよう構成されている、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の有機発光ダイオード(10)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2012−528434(P2012−528434A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512381(P2012−512381)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057346
【国際公開番号】WO2010/136537
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】