説明

有機発光ディスプレイ装置

【課題】視認性の向上した有機発光ディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】第1基板と;第1基板と対向するように配置された第2基板と;第1基板と第2基板との間に配置されて有機発光素子を含むディスプレイ部と;第1基板と第2基板との間にディスプレイ部を取り囲むように配置され、第1基板と第2基板とを接合させる密封材と;ディスプレイ部を覆うように密封材の内側に配置され、光変色性材料を含む充填材と;を備え、光変色性材料は、470nm〜490nm波長の光を吸収する第1光変色性材料、及び550nm〜580nm波長の光を吸収する第2光変色性材料を含む有機発光ディスプレイ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ディスプレイ装置に係り、さらに詳細には、視認性の向上した有機発光ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ディスプレイ装置は、互いに対向する電極間に有機発光層を位置させて、一側電極から注入された電子と他側電極から注入された正孔とが有機発光層で結合し、この時の結合を通じて発光層の発光分子が励起された後、基底状態に戻りながら放出されるエネルギーを光として発光させる平板ディスプレイ装置のうち一つである。
【0003】
かかる有機発光ディスプレイ装置は、視認性に優れて軽量化、薄型化を図ることができ、低電圧で駆動できて次世代ディスプレイとして注目されている。
【0004】
有機発光ディスプレイ装置のウィンドウとパネルとの間に空気があれば、反射量が増加して野外の視認性が劣る。これを改善するために、内部をエポキシで充填して視認性を改善するための技術が提案されたが、未だ視認性は十分でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】大韓民国特許出願公開第2009−0081863号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、視認性の向上した有機発光ディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によって、第1基板と;前記第1基板と対向するように配置された第2基板と;前記第1基板と前記第2基板との間に配置されて有機発光素子を含むディスプレイ部と;前記第1基板と前記第2基板との間に前記ディスプレイ部を取り囲むように配置され、前記第1基板と前記第2基板とを接合させる密封材と;前記ディスプレイ部を覆うように前記密封材の内側に配置され、光変色性材料を含む充填剤と;を備え、前記光変色性材料は、470nm〜490nmの波長の光を吸収する第1光変色性材料、及び550nm〜580nmの波長の光を吸収する第2光変色性材料を含む有機発光ディスプレイ装置が提供される。
【0008】
本発明の一具現例によれば、前記光変色性材料は、下記化学式1の化合物である。
【0009】
【化1】

【0010】
前記化学式1で、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素、重水素またはハロゲンを表し、Ar及びArは、それぞれ独立して下記のグループを表し、
【化2】

【0011】
Yは、O、S、SOまたはSOを表し;Xは、CまたはNを表し;*は、結合を表し;Rは、炭素数1〜炭素数50のアルキル基または炭素数5〜炭素数60のアリール基を表し;R及びRは、それぞれ独立して非共有電子対、水素、重水素または炭素数1〜炭素数50のアルキル基を表す。
【0012】
本発明の他の具現例によれば、前記光変色性材料は、下記化学式2の化合物である。
【0013】
【化3】

【0014】
前記化学式2で、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素、重水素またはハロゲンを表し、Xは、CまたはNを表し;Rは、炭素数1〜炭素数10のアルキル基または炭素数5〜炭素数30のアリール基を表し;R及びRは、それぞれ独立して非共有電子対、水素、重水素または炭素数1〜炭素数10のアルキル基を表す。
【0015】
本発明のさらに他の具現例によれば、前記第1光変色性材料が下記化学式3の化合物であり、
【化4】

前記第2光変色性材料が下記化学式4の化合物である。
【化5】

【0016】
前記化学式3及び4で、Rは、炭素数1〜炭素数10のアルキル基または炭素数5〜炭素数30のアリール基を表し;Rは、水素、重水素または炭素数1〜炭素数10のアルキル基を表す。
【0017】
本発明のさらに他の具現例によれば、前記第1光変色性材料が下記化学式5の化合物であり、
【0018】
【化6】

前記第2光変色性材料が下記化学式6の化合物である。
【化7】

【0019】
本発明のさらに他の具現例によれば、前記第1光変色性材料と前記第2光変色性材料との比率が1:2〜2:1のモル比である。
【0020】
本発明のさらに他の具現例によれば、前記充填材がバインダーを含む。
【0021】
本発明のさらに他の具現例によれば、前記充填材がエポキシバインダーを含む。
【0022】
本発明のさらに他の具現例によれば、前記充填材の光変色性材料の含有量が、充填材全体100質量部に対して50〜70質量部である。
【発明の効果】
【0023】
本発明による有機発光ディスプレイ装置は、野外でも優秀な視認性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一具現例による有機発光ディスプレイ装置の一部を概略的に示す平面図である。
【図2】第2基板が合着された有機発光ディスプレイ装置の概略的な断面図である。
【図3】図1及び2のディスプレイ部をさらに詳細に示す断面図である。
【図4】充填材に光変色性材料を使用しない場合と、充填材に光変色性材料を使用して光変色性材料が光を吸収する場合と、を図式的に比較して示す図面である。
【図5】充填材に含まれる光変色性材料が光を吸収する波長範囲を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0026】
本発明の一側面による有機発光ディスプレイ装置は、第1基板と;前記第1基板と対向するように配置された第2基板と;前記第1基板と前記第2基板との間に配置されて有機発光素子を含むディスプレイ部と;前記第1基板と前記第2基板との間に前記ディスプレイ部を取り囲むように配置され、前記第1基板と前記第2基板とを接合させる密封材と;前記ディスプレイ部を覆うように前記密封材の内側に配置され、光変色性材料を含む充填材と;を備え、前記光変色性材料は、470nm〜490nm波長の光を吸収する第1光変色性材料、及び550nm〜580nm波長の光を吸収する第2光変色性材料を含む。
【0027】
図1は、本発明の一具現例による有機発光ディスプレイ装置の一部を概略的に示す平面図であり、図2は、第2基板が合着された有機発光ディスプレイ装置の概略的な断面図であり、図3は、図1及び2のディスプレイ部をさらに詳細に示す断面図である。
【0028】
前記図面を参照すれば、本発明の一具現例による有機発光ディスプレイ装置100は、第1基板110、第2基板120、密封材150、光変色性材料を含む充填材170を備える。
【0029】
第1基板110の第2基板120に向かう面上にディスプレイ部D及びパッド部Pが形成され、ディスプレイ部Dの外周には、密封材150がディスプレイ部Dの外周を取り囲むように配置される。
【0030】
ディスプレイ部Dは、複数の有機発光素子140、及び各有機発光素子140に接続された複数の薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)130を備える。各有機発光素子140の駆動をTFT 130で制御するかどうかによって、受動駆動型(PM:passive matrix)及び能動駆動型(AM:active matrix)に大別できる。本具現例による有機発光ディスプレイ装置100は、能動及び受動駆動型の両方に適用できる。以下、能動駆動型有機発光ディスプレイ装置100を一例として、本発明の具現例を詳細に説明する。
【0031】
第1基板110及び第2基板120は、SiOを主成分とする透明なガラス基板を使用できるが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、プラスチック材などの多様な材質の基板を利用できる。
【0032】
バッファ層111上には、TFT 130の活性層131が半導体材料で形成され、これを覆うようにゲート絶縁膜112が形成される。活性層131は、非晶質シリコンまたはポリシリコンなどの無機材半導体や有機半導体が使われ、ソース領域131b、ドレイン領域131cとこれらとの間にチャネル領域131aを持つ。
【0033】
ゲート絶縁膜112上にはゲート電極133が備えられ、これを覆うように層間絶縁膜113が形成される。そして、層間絶縁膜113上にはソース電極135及びドレイン電極136が備えられ、これを覆うようにパッシベーション膜114及び平坦化膜115が順に備えられる。
【0034】
前記のゲート絶縁膜112、層間絶縁膜113、パッシベーション膜114、及び平坦化膜115は絶縁体で備えられ、無機物、有機物、または有機/無機複合物で単層または複数層の構造で形成される。一方、前述したTFT積層構造は、一例示であり、それ以外にも多様な構造のTFTがいずれも適用できる。
【0035】
ディスプレイ部Dの外周にはパッド部Pが形成される。パッド部Pは複数のパッド電極(図示せず)を備え、パッド電極(図示せず)は、ディスプレイ部Dに備えられた多様な導線(図示せず)、例えば、データライン、スキャンライン、または電源供給ラインなどのように、ディスプレイ素子を駆動するための多様な導線に対応するように連結されることで、外部信号を各連結された導線を通じてディスプレイ部Dに備えられた有機発光素子に伝達する。
【0036】
平坦化膜115の上部には、有機発光素子140のアノード電極になる第1電極141が形成され、これを覆うように絶縁物で画素定義膜144が形成される。画素定義膜144に所定の開口部を形成した後、この開口部で限定された領域内に有機発光素子の有機発光層142が形成される。そして、全体画素をいずれも覆うように、有機発光素子のカソード電極になる第2電極143が形成される。もちろん、第1電極141と第2電極143との極性は、交換されてもよい。
【0037】
第1電極141は、透明電極または反射型電極で備えられる。透明電極で備えられる場合には、ITO、IZO、ZnOまたはInで備えられ、反射型電極で備えられる場合には、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Crまたはこれらの化合物などで形成された反射膜と、ITO、IZO、ZnOまたはInで形成された透明膜とを含む。
【0038】
第2電極143も、透明電極または反射型電極で備えられるが、透明電極で備えられる時には、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Mgまたはこれらの化合物が有機発光層142に向かうように蒸着して形成された膜と、その上のITO、IZO、ZnOまたはInなどの透明な導電性物質で形成された補助電極やバス電極ラインを備えることができる。そして、反射型電極で備えられる時には、前記Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Mg及びこれらの化合物で形成できる。
【0039】
第1電極141と第2電極143との間に備えられる有機発光層142は、低分子または高分子有機物で備えられる。
【0040】
前記有機発光層142についてさらに詳細に説明する。前記有機発光層142は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層または電子注入層などを含む。
前記第1電極141の上部に真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB(Langmuir−Blodgett)法などの多様な方法を利用して正孔注入層(HIL)(図示せず)を形成できる。
【0041】
真空蒸着法によって正孔注入層を形成する場合、その蒸着条件は、正孔注入層の材料として使用する化合物、目的とする正孔注入層の構造及び熱的特性などによって異なるが、一般的に蒸着温度100〜500℃、真空度10−8〜10−3torr、蒸着速度0.01〜100Å/secの範囲で適当に選択することが望ましい。
【0042】
スピンコーティング法によって正孔注入層を形成する場合、そのコーティング条件は、正孔注入層の材料として使用する化合物、目的とする正孔注入層の構造及び熱的特性によって異なるが、約2000rpm〜5000rpmのコーティング速度、コーティング後の溶媒除去のための熱処理温度は、約80℃〜200℃の温度範囲で適当に選択することが望ましい。
【0043】
前記正孔注入層物質としては、公知の正孔注入材料を使用できるが、例えば、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、m−MTDATA[4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン]、NPB(N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン、TDATA、2T−NATA、Pani/DBSA(ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸)、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート))、Pani/CSA(ポリアニリン/カンファースルホン酸)またはPANI/PSS(ポリアニリン/ポリ(4−スチレンスルホネート))などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
【化8】

【0045】
前記正孔注入層の厚さは、約100Å〜10000Å、望ましくは、100Å〜1000Åでありうる。前記正孔注入層の厚さが前記範囲を満たす場合、駆動電圧の上昇なしに優秀な正孔注入特性を得ることができる。
【0046】
次いで、前記正孔注入層の上部に真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB法などの多様な方法を利用して正孔輸送層(HTL)(図示せず)を形成できる。真空蒸着法及びスピンコーティング法によって正孔輸送層を形成する場合、その蒸着条件及びコーティング条件は使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲内で選択される。
【0047】
前記正孔輸送層物質は、公知の正孔輸送層物質を利用できるが、例えば、N−フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、NPB、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)などの芳香族縮合環を持つアミン誘導体などを使用できる。
【0048】
【化9】

【0049】
前記正孔輸送層の厚さは、約50Å〜1000Å、望ましくは、100Å〜600Åでありうる。前記正孔輸送層の厚さが前述したような範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧上昇なしに優秀な正孔輸送特性を得ることができる。
【0050】
次いで、前記正孔輸送層の上部に真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB法などの方法を利用して発光層(EML)(図示せず)を形成できる。真空蒸着法及びスピンコーティング法により発光層を形成する場合、その蒸着条件は使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲内で選択される。
【0051】
前記発光層は、公知の多様な発光物質を利用して形成できるが、公知のホスト及びドーパントを利用して形成してもよい。前記ドーパントの場合、公知の蛍光ドーパント及び公知の燐光ドーパントをいずれも使用できる。
【0052】
例えば、公知のホストとしては、Alq、CBP(4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル)、PVK(ポリ(n−ビニルカルバゾール))、9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン(ADN)、TCTA、TPBI(1,3,5−トリス(N−フェニルベンゾイミダゾール−2−イル)ベンゼン)、TBADN(3−tert−ブチル−9,10−ジ(ナフト−2−イル)アントラセン)、E3、DSA(ジスチリルアリーレン)などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
【化10】

【0054】
一方、公知の赤色ドーパントとしてPtOEP、Ir(piq)、BtpIr(acac)、DCJTBなどを利用できるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
【化11】

【0056】
また、公知の緑色ドーパントとして、Ir(ppy)(ppy=フェニルピリジン)、Ir(ppy)(acac)、Ir(mpyp)、C545Tなどを利用できるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
【化12】

【0058】
一方、公知の青色ドーパントとして、FIrpic、(Fppy)Ir(tmd)、Ir(dfppz)、ter−フルオレン、4,4’−ビス(4−ジフェニルアミノスチリル)ビフェニル(DPAVBi)、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(TBP)などを利用できるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
【化13】

【0060】
前記ドーパントの含有量は、発光層形成材料100質量部(すなわち、ホストとドーパントとの総質量は100質量部とする)を基準として、0.1〜20質量部、特に、0.5〜12質量部であることが望ましい。ドーパントの含有量が前記範囲を満たすならば、濃度消光現象が実質的に防止される。
【0061】
前記発光層の厚さは、約100Å〜1000Å、望ましくは、200Å〜600Åでありうる。前記発光層の厚さが前記範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに優秀な発光特性を得ることができる。
【0062】
発光層が燐光ドーパントを含む場合、三重項励起子または正孔が電子輸送層に広がる現象を防止するために、正孔阻止層(HBL)(図示せず)を発光層の上部に形成できる。この時に使用できる正孔阻止層物質は特に制限されず、公知の正孔阻止層物質から任意に選択して利用できる。例えば、オキサジアゾール誘導体やトリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、Balq、BCPなどを利用できる。
【0063】
前記正孔阻止層の厚さは、約50Å〜1000Å、望ましくは、100Å〜300Åでありうる。前記正孔阻止層の厚さが50Å未満である場合、正孔阻止特性が低下し、前記正孔阻止層の厚さが1000Åを超過する場合、駆動電圧が上昇するためである。
【0064】
次いで、電子輸送層(ETL)(図示せず)を真空蒸着法、またはスピンコーティング法、キャスト法などの多様な方法を利用して形成する。真空蒸着法及びスピンコーティング法により電子輸送層を形成する場合、その条件は使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲内で選択される。
【0065】
前記電子輸送層物質は、公知の電子輸送層形成材料から任意に選択される。例えば、かかる例としては、キノリン誘導体、特に、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)、TAZ、BAlqなどの公知の材料を使用してもよいが、これらに限定されるものではない。
【0066】
【化14】

【0067】
前記電子輸送層の厚さは、約100Å〜1000Å、望ましくは、100Å〜500Åでありうる。前記電子輸送層の厚さが前述したような範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧上昇なしに優秀な電子輸送特性を得ることができる。
【0068】
また電子輸送層の上部に、負極からの電子の注入を容易にする機能を持つ物質である電子注入層(EIL)(図示せず)が積層されうる。
【0069】
電子注入層としては、LiF、NaCl、CsF、LiO、BaOなどの電子注入層形成材料として公知の任意の物質を利用できる。前記電子注入層の蒸着条件及びコーティング条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲内で選択される。
【0070】
前記電子注入層の厚さは、約1Å〜100Å、望ましくは、5Å〜90Åである。前記電子注入層の厚さが前述したような範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧上昇なしに優秀な電子注入特性を得ることができる。
【0071】
本発明の一具現例による有機発光ディスプレイ装置の充填材に含まれる光変色性材料は、470nm〜490nm波長の光を吸収する第1光変色性材料、及び550nm〜580nm波長の光を吸収する第2光変色性材料を含む。望ましくは、前記第1光変色性材料が吸収する光の波長は480nm〜490nmであり、前記第2光変色性材料が吸収する光の波長は560nm〜580nmである。
【0072】
充填材に含まれる光変色性材料の光を吸収する波長が前記範囲である場合、発光層で発生する光の波長とあまり重ならない。したがって、発光層で発生する光は光変色性材料に吸収されず、本発明の一具現例による光変色性材料は、外光のみを吸収するようになって視認性を向上させる。
【0073】
図4は、充填材に含まれる光変色性材料が光を吸収することを模式的に示す図面であり、図5は、充填材に含まれる光変色性材料が光を吸収する波長範囲を示す図面である。
【0074】
図4及び図5を参照すれば、従来技術によってエポキシのみからなる充填材を備える有機発光ディスプレイ装置は、外光を吸収しなくて視認性が劣る一方、本発明の一具現例による有機発光ディスプレイ装置は、充填材に含まれた第1光変色性材料及び第2光変色性材料が、それぞれ外光の470nm〜490nmの波長及び550nm〜580nmの波長を吸収して、視認性を高めるということが分かる。
【0075】
本発明の一具現例による光変色性材料は、下記化学式1の化合物でありうる。
【0076】
【化15】

【0077】
前記化学式1で、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素、重水素またはハロゲンを表し、Ar及びArは、それぞれ独立して下記のグループを表し、
【化16】

Yは、O、S、SOまたはSOを表し;Xは、CまたはNを表し;*は、結合を表し;Rは、炭素数1〜炭素数50のアルキル基または炭素数5〜炭素数60のアリール基を表し;R及びRは、それぞれ独立して非共有電子対、水素、重水素または炭素数1〜炭素数50のアルキル基を表す。
【0078】
さらに具体的には、前記光変色性材料は下記化学式2の化合物でありうる。
【0079】
【化16】

【0080】
前記化学式2で、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素、重水素またはハロゲンを表し;Xは、CまたはNを表し;Rは、炭素数1〜炭素数10のアルキル基または炭素数5〜炭素数30のアリール基を表し;R及びRは、それぞれ独立して非共有電子対、水素、重水素または炭素数1〜炭素数10のアルキル基を表す。
【0081】
前記化学式2の化合物は、UVを吸収して下記のように変形され、熱などのエネルギーを吸収する場合に再び最初の状態に戻る。
【0082】
【化17】

【0083】
さらに具体的に、前記第1光変色性材料は、下記化学式3の化合物であり、
【化18】

前記第2光変色性材料は、下記化学式4の化合物でありうる。
【化19】

【0084】
前記化学式で、Rは、炭素数1〜炭素数10のアルキル基または炭素数5〜炭素数30のアリール基を表し;Rは、水素、重水素または炭素数1〜炭素数10のアルキル基を表す。
【0085】
本発明のさらに他の一具現例によれば、前記第1光変色性材料は、下記化学式5の化合物であり、
【化20】

前記第2光変色性材料は、下記化学式6の化合物でありうる。
【化21】

【0086】
前記化学式5の化合物は、UVを吸収して下記のように変換され、熱などのエネルギーを吸収する場合に再び最初の状態に戻る。UVを吸収する前の化合物も共役化合物であって、一定領域の可視光を吸収できるが、共役化合物であっても分子が一平面に存在していない場合に可視光吸収能は劣る。特に、化学式5の化合物のチオフェンモイエティ部分の内側のメチル基は非常に近接していて立体障害を発生させるため、化学式5の化合物がUVを吸収する前には一平面上に存在する可能性はほとんどない。化学式5の化合物がUVを吸収して結合が形成される場合、UVを吸収して変形された化合物も共役化合物であるが、前記化合物はほぼ一平面(a plane)上に存在することで、470nm〜490nm波長の光吸収能が顕著に高くなる。
【0087】
【化22】

【0088】
前記化学式6の化合物は、UVを吸収して下記のように変換され、熱などのエネルギーを吸収する場合に再び最初の状態に戻る。同様に、UVを吸収する前の化合物も共役化合物であって、一定領域の可視光を吸収できるが、共役化合物であっても分子が一平面に存在していない場合に可視光吸収能は劣る。特に、化学式6の化合物のチオフェンモイエティ部分の内側のメチル基は非常に近接していて立体障害を発生させるため、化学式6の化合物がUVを吸収する前には一平面上に存在する可能性はほとんどない。化学式6の化合物がUVを吸収して結合が形成される場合、UVを吸収して変形された化合物も共役化合物であるが、前記化合物はほぼ一平面上に存在することで、550nm〜580nm波長の光吸収能が顕著に高くなる。
【0089】
【化23】

【0090】
以下、本発明の化学式で使われたグループのうち代表的なグループの定義を説明すれば、次の通りである(置換基を限定する炭素数は非制限的なものであって、置換基の特性を限定しない)。
【0091】
前記化学式で、非置換された炭素数1〜50のアルキル基は線形及び分枝型であり、その非制限的な例としては、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、sec−ブチル、ペンチル、iso−アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノナニル、ドデシルなどを挙げることができ、前記アルキル基のうち一つ以上の水素原子は重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボキシル基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸やその塩、または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数6〜16のアリール基、または炭素数4〜16のヘテロアリール基に置換できる。
【0092】
前記化学式のうち、非置換された炭素数5〜60のアリール基は、一つ以上の環を含む炭素環式芳香族システムを意味し、2つ以上の環を持つ場合、互いに融合するか、または単一結合などを通じて連結される。アリールという用語は、フェニル、ナフチル、アントラセニルなどの芳香族システムを含む。また、前記アリール基のうち一つ以上の水素原子は、前述した炭素数1〜50のアルキル基の置換基と同じ置換基に置換できる。
【0093】
置換または非置換された炭素数5〜60のアリール基の例としては、フェニル基、炭素数1〜10のアルキルフェニル基(例えば、エチルフェニル基)、ハロフェニル基(例えば、o−、m−及びp−フルオロフェニル基、ジクロロフェニル基)、シアノフェニル基、ジシアノフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、ビフェニル基、ハロビフェニル基、シアノビフェニル基、炭素数1〜10のアルキルビフェニル基、炭素数1〜10のアルコキシビフェニル基、o−、m−、及びp−トリル基、o−、m−及びp−クメニル基、メシチル基、フェノキシフェニル基、(α,α−ジメチルベンゼン)フェニル基、(N,N’−ジメチル)アミノフェニル基、(N,N’−ジフェニル)アミノフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、ハロナフチル基(例えば、フルオロナフチル基)、炭素数1〜10のアルキルナフチル基(例えば、メチルナフチル基)、炭素数1〜10のアルコキシナフチル基(例えば、メトキシナフチル基)、シアノナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、アセナフチルレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントラキノリル基、メチルアントリル基、フェナントリル基、トリフェニレン基、ピレニル基、クリセニル基、エチル−クリセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、クロロペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基などを挙げることができる。
【0094】
前記第1光変色性材料及び前記第2光変色性材料の比率は、1:2〜2:1のモル比でありうる。
【0095】
前記モル比範囲内で、470nm〜490nm波長の光と、550nm〜580nm波長の光との吸収程度が最適である。
【0096】
前記充填材は、バインダーを含む。バインダーとしては、有機バインダー、無機バインダーなどを挙げることができ、前記バインダーは、例えば、エポキシバインダーでありうる。
【0097】
前記充填材の光変色性材料の含有量は、充填材全体100質量部に対して50〜70質量部である。光変色性材料の含有量が前記範囲である場合、470nm〜490nm波長の光と、550nm〜580nm波長の光との吸収程度が最適となる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明の実施例を具体的に例示するが、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0099】
(実施例1)
透明なガラス基板(第1基板)上に、第1電極層としてITO(indium−tin oxide)が1.0μmの厚さにコーティングされた透明電極基板を、アセトンとエアガンとを利用してきれいに洗浄した後、その上に絶縁層として、LiFを1.0nm厚さにプラズマ蒸着した。次いで、正孔輸送層として4,4’−ビス(N,N−フェニル−m−トリアミノ)ジフェニルアミン(TPD)を50nm厚さにコーティングし、発光層としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)を50nm厚さにコーティングした。次いで、Alを蒸着して第2電極層を形成させた。
【0100】
透明ガラス基板の外周部に密封材としてフリットを使用して塗布し、エポキシ50質量部、下記化学式5の化合物50質量部、下記化学式6の化合物50質量部を混合した充填材を充填し、ウィンドウ(第2基板)を覆って圧着して有機発光ディスプレイ装置を完成した。
【0101】
【化24】

【0102】
【化25】

【0103】
(比較例1)
充填材としてエポキシのみを使用したことを除いては、実施例1と同じ有機発光ディスプレイ装置を製作した。
【0104】
実施例1及び比較例1の有機発光ディスプレイ装置の反射率などを測定して、結果を下記の表1に示した。
【0105】
【表1】

【0106】
ACR@500lux及びACR@10,000luxは、それぞれ照度500lux(蛍光灯環境程度の強度)及び10,000luxの外光環境下でディスプレイのwhite Luminance/Black luminanceを表現する値を表し、前記値が大きいほど外光視認性が良いということを意味する。
【0107】
Gamutは、色再現率を表し、大きい値であるほど良い色再現率を表す。
【0108】
表1を参照すれば、実施例1の場合反射率が4.35%であって、比較例1の反射率10.3%より低い反射率を示すことが分かる。
【0109】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、有機発光ディスプレイ装置関連の技術分野に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0111】
100 有機発光ディスプレイ装置
110 第1基板
120 第2基板
130 TFT
140 有機発光素子
150 密封材
170 充填材
D ディスプレイ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板と対向するように配置された第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置されて有機発光素子を含むディスプレイ部と、
前記第1基板と前記第2基板との間に前記ディスプレイ部を取り囲むように配置され、前記第1基板と前記第2基板とを接合させる密封材と、
前記ディスプレイ部を覆うように前記密封材の内側に配置され、光変色性材料を含む充填材と、
を備え、
前記光変色性材料は、470nm〜490nmの波長の光を吸収する第1光変色性材料、及び550nm〜580nm波長の光を吸収する第2光変色性材料を含む、有機発光ディスプレイ装置。
【請求項2】
前記光変色性材料は、下記化学式1の化合物である、請求項1に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【化1】

前記化学式1で、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素、重水素またはハロゲンを表し;
Ar及びArは、それぞれ独立して下記のグループを表し;
【化2】

Yは、O、S、SOまたはSOを表し、
Xは、CまたはNを表し、
*は、結合を表し、
は、炭素数1〜炭素数50のアルキル基または炭素数5〜炭素数60のアリール基を表し;
及びRは、それぞれ独立して、非共有電子対、水素、重水素または炭素数1〜炭素数50のアルキル基を表す。
【請求項3】
前記光変色性材料は、下記化学式2の化合物である、請求項1または2に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【化3】

前記化学式2で、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素、重水素またはハロゲンを表し、
Xは、CまたはNを表し、
は、炭素数1〜炭素数10のアルキル基または炭素数5〜炭素数30のアリール基を表し、
及びRは、それぞれ独立して、非共有電子対、水素、重水素または炭素数1〜炭素数10のアルキル基を表す。
【請求項4】
前記第1光変色性材料が下記化学式3の化合物であり、
【化4】

前記第2光変色性材料が下記化学式4の化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【化5】

前記化学式3及び4で、
は、炭素数1〜炭素数10のアルキル基または炭素数5〜炭素数30のアリール基を表し、
は、水素、重水素または炭素数1〜炭素数10のアルキル基を表す。
【請求項5】
前記第1光変色性材料が下記化学式5の化合物であり、
【化6】

前記第2光変色性材料が下記化学式6の化合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【化7】

【請求項6】
前記第1光変色性材料と前記第2光変色性材料との比率が、1:2〜2:1のモル比である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項7】
前記充填材がバインダーを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項8】
前記充填材がエポキシバインダーを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。
【請求項9】
前記充填材の光変色性材料の含有量が、充填材全体100質量部に対して50〜70質量部である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機発光ディスプレイ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−186137(P2012−186137A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−277343(P2011−277343)
【出願日】平成23年12月19日(2011.12.19)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Mobile Display Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】San #24 Nongseo−Dong,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do 446−711 Republic of KOREA
【Fターム(参考)】