説明

有機発光トランジスタ素子及びその製造方法並びに発光表示装置

【課題】縦型の有機発光トランジスタ素子において、陽極と陰極との間の電流制御を容易にした有機発光トランジスタ素子を提供する。
【解決手段】有機EL素子構造と縦型FET構造とを有する電界効果型の有機発光トランジスタ素子であって、基板1と、基板1上に設けられた第1電極4と、第1電極4上に所定の大きさからなる絶縁層3、補助電極2及び電荷注入抑制層5がその順に設けられた積層構造体8と、その積層構造体8が設けられていない第1電極4上に当該第1電極4及び前記積層構造体8を覆うように設けられた有機EL層6と、その有機EL層6上に設けられた第2電極7とを少なくとも有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光トランジスタ素子及びその製造方法並びに発光表示装置に関し、更に詳しくは、縦型の有機発光トランジスタ素子において、陽極と陰極との間の電流制御を容易にした有機発光トランジスタ素子及びその製造方法並びに発光表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Organic Electroluminesence)素子は、素子構造が単純で、薄型・軽量・大面積・低コストな次世代ディスプレイの発光素子として期待されており、近年その研究が盛んに行われている。
【0003】
有機EL素子を駆動するための駆動方式としては、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を用いたアクティブマトリックス方式の電界効果型トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)が動作速度や消費電力の点で有効と考えられている。一方、薄膜トランジスタを構成する半導体材料については、シリコン半導体や化合物半導体等の無機半導体材料についての研究のほか、近年、有機半導体材料を用いた有機薄膜トランジスタ(有機TFT)についての研究が盛んに行われている。こうした有機半導体材料は次世代の半導体材料として期待されているが、無機半導体材料に比べて電荷移動度が低く抵抗が高いという問題点がある。
【0004】
一方、電界効果型トランジスタについて、その構造を縦型にした縦型FET構造の静電誘導型トランジスタ(SIT:Static Induction Transistor)は、トランジスタのチャネル幅を短くできること、表面の電極全体を有効利用できるために高速応答や大電力化が可能となること、さらに、界面の影響が受け難くなること等のメリットがある。
【0005】
近年、静電誘導型トランジスタ(SIT)が備える前記の特長を活かし、このSIT構造と有機EL素子構造とを複合させた有機発光トランジスタの開発が検討されている(例えば、非特許文献1及び特許文献1,2を参照)。図21は、非特許文献1に記載の、SIT構造と有機EL素子構造とを複合させた有機発光トランジスタの一例を示す断面構成図である。この有機発光トランジスタ101は、図21に示すように、ガラス基板102上に、透明導電膜からなるソース電極103、スリット状のゲート電極105が埋め込まれた正孔輸送層104、発光層106、ドレイン電極107がこの順に設けられた縦型FET構造をなしている。この複合型の有機発光トランジスタ101は、正孔輸送層104の内部にスリット状のショットキーゲート電極105を埋め込んだ構造であり、正孔輸送層104とゲート電極105とがショットキー接合し、これにより正孔輸送層104に空乏層が形成される。この空乏層の広がりはゲート電圧によって変化するので、そのゲート電圧(ソース電極103とゲート電極105との間に印加する電圧)を変化させてチャネル幅を制御し、ソース電極103とドレイン電極107との間の印加電圧を制御して電荷の発生量を変化させている。
【0006】
また、図22は、特許文献2に記載の、FET構造と有機EL素子構造とを複合させた有機発光トランジスタの一例を示す断面構成図である。この有機発光トランジスタ111は、図22に示すように、基体112上に、補助電極113と絶縁層118が積層され、その絶縁層118上に陽極115が形成され、その絶縁層上にその陽極115を覆うように発光材料層116が形成され、その上に陰極117が形成されている。陽極115上には、正孔を陽極115から発光材料層116に通過させるが、電子が発光材料層116から陽極115に通過するのを防ぐための陽極バッファ層119が形成されている。この有機発光トランジスタ111においても、補助電極113と陽極115との間の印加電圧を変化させてチャネル幅を制御し、陽極115と陰極117との間の印加電圧を制御して電荷の発生量を変化させている。
【非特許文献1】工藤一浩、「有機トランジスタの現状と将来展望」、応用物理、第72巻、第9号、第1151頁〜第1156頁(2003年)
【特許文献1】特開2003−324203号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2002−343578号公報(図23)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した非特許文献1及び特許文献1,2に記載のSIT構造と有機EL素子構造とを複合化させた有機発光トランジスタでは、例えば図22で説明すれば、陽極115と陰極117との間に一定電圧(−Vd1<0)を印加すると、陰極117に対向する陽極115面で多くの正孔が発生し、その正孔が陰極117に向かう電荷(正孔)の流れが起こる。この際、より大きな電荷の流れを得るため(すなわち、より大きな輝度を得るため)、V=−Vd2≪−Vd1なる電圧を陽極115と陰極117との間に印加すると、補助電極113と陽極115との間の印加電圧(V)を制御しても、陽極115と陰極117との間の電荷の発生とその流れが支配的になり、電荷発生量を制御できず発光量の制御が難しいという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、縦型の有機発光トランジスタ素子において、陽極と陰極との間の電流制御を容易にした有機発光トランジスタ素子及びその製造方法並びに発光表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための、本発明の第1形態に係る有機発光トランジスタ素子は、基板と、当該基板上に設けられた第1電極と、当該第1電極上に所定の大きさからなる絶縁層、補助電極及び電荷注入抑制層がその順に設けられた積層構造体と、当該積層構造体が設けられていない前記第1電極上に少なくとも設けられた有機EL層と、当該有機EL層上に設けられた第2電極とを少なくとも有することを特徴とする。
【0010】
本発明の第2形態に係る有機発光トランジスタ素子は、基板と、当該基板上に所定のパターンで設けられた第1電極と、当該第1電極が形成されていない前記基板上に当該第1電極を平面視で挟むように、所定の大きさからなる絶縁層、補助電極及び電荷注入抑制層がその順に設けられた積層構造体と、前記第1電極上に少なくとも設けられた有機EL層と、当該有機EL層上に設けられた第2電極とを少なくとも有し、前記第1電極が前記補助電極に接触しない厚さで設けられていることを特徴とする。
【0011】
有機EL層では第1電極と第2電極から注入された電荷が結合して発光現象が生じるが、上記第1及び第2形態に係る本発明によれば、補助電極が第1電極と第2電極との中間領域に設けられているので、補助電極と第1電極との間の印加電圧を変化させることにより、第1電極と第2電極での電荷発生量を増加又は減少させて発光量を制御することができる。なお、補助電極は絶縁層と電荷注入抑制層で挟まれており、補助電極の上面及び下面では電荷(正孔又は電子)の発生や消失が抑制されるので、補助電極での可変電圧は、第1電極と第2電極で発生する電荷発生量に影響を及ぼすことができる。すなわち、この有機発光トランジスタ素子は第1電極と第2電極との間に一定電圧が印加されたノーマリーオン態様の発光素子として好ましく適用されるものであり、補助電極と第1電極との間に印加する可変電圧を制御することにより、第1電極−第2電極間に流れる電流(電荷発生量)を制御して発光量を制御することができる。
【0012】
上記本発明の有機発光トランジスタ素子において、前記有機EL層が、電荷注入層と発光層とを少なくとも有する層、又は、電荷注入材料を含む発光層を少なくとも有する層であることが好ましい。また、前記第1電極と、当該第1電極上に設けられる前記積層構造体及び/又は前記有機EL層との間に、電荷注入層がさらに設けられた構成としてもよいし、前記有機EL層と前記第2電極との間に、当該第2電極用の電荷注入層が設けられた構成としてもよい。
【0013】
上記本発明の有機発光トランジスタ素子において、前記電荷注入抑制層が、絶縁材料からなる層であることを特徴とする。この発明によれば、第2電極に対向する補助電極の上面に形成された電荷注入抑制層が絶縁材料からなる層(好ましくはポジ型のレジスト膜)であるので、補助電極上に容易に形成できると共に、寸法精度よく形成できるという利点がある。
【0014】
上記本発明の有機発光トランジスタ素子は、(i)前記第1電極が陽極であり、前記第2電極が陰極であること、又は、(ii)前記第1電極が陰極であり、前記第2電極が陽極であること、の何れかの形態で構成される。この発明によれば、第1電極と第2電極とが何れの極性を持つものであっても、上記のように、補助電極と第1電極との間に印加する電圧(ゲート電圧)を制御して電荷量を鋭敏に変化させることができ、第1電極−第2電極間に流れる電流を制御して発光量を制御することができる。
【0015】
本発明の有機発光トランジスタは、上記本発明の有機発光トランジスタ素子と、当該有機発光トランジスタ素子が備える第1電極と第2電極との間に一定電圧を印加する第1電圧供給手段と、当該有機発光トランジスタ素子が備える第1電極と補助電極との間に可変電圧を印加する第2電圧供給手段とを有することを特徴とする。この発明によれば、上記第1電圧供給手段と上記第2電圧供給手段とを有するので、第1電極と第2電極との間に一定電圧を印加すると共に第1電極と補助電極との間に可変電圧を印加することができる。その結果、制御された電圧により電荷量を鋭敏に変化させることができ、第1電極−第2電極間に流れる電流を制御して発光量を制御することができる。
【0016】
本発明の発光表示装置は、複数の発光部をマトリクス状に配置した発光表示装置であって、前記複数の発光部の各々は、上記本発明の有機発光トランジスタ素子を有することを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するための、本発明の第1態様に係る有機発光トランジスタ素子の製造方法は、上記本発明の有機発光トランジスタ素子の製造方法であって、第1電極が形成された基板を準備する工程と、前記第1電極上に所定の大きさからなる絶縁層、補助電極及び電荷注入抑制層がその順に積層した積層構造体を設ける工程と、前記積層構造体が設けられていない前記第1電極上に有機EL層を設ける工程と、前記有機EL層上に第2電極を設ける工程とを少なくとも有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の第2態様に係る有機発光トランジスタ素子の製造方法は、所定のパターンからなる第1電極が形成された基板を準備する工程と、前記第1電極が形成されていない前記基板上に当該第1電極を平面視で挟むように、所定の大きさからなる絶縁層、補助電極及び電荷注入抑制層がその順に積層した積層構造体を設ける工程と、前記第1電極上に有機EL層を設ける工程と、前記有機EL層上に第2電極を設ける工程とを少なくとも有し、前記第1電極が前記補助電極に接触しない厚さで設けられていることを特徴とする。
【0019】
上記本発明の有機発光トランジスタ素子の製造方法が有する前記電荷注入抑制層形成工程において、前記電荷注入抑制層の形成材料が光照射により除去可能になる感光性材料であり、前記絶縁層及び前記補助電極の一方又は両方が前記感光性材料の露光波長を透過しない材料からなり、当該感光性材料を前記補助電極を覆うように前記第1電極上に設けた後に前記基板側から露光して前記第1電極上に設けられた感光性材料のみを除去して電荷注入抑制層を形成することが好ましい。この発明によれば、補助電極上に電荷注入抑制層を形成する際に、光照射により除去可能になる感光性材料を補助電極を覆うように設けた後に基板側から露光することにより、第1電極上に設けられた感光性材料のみを容易且つ精度よく除去することができる。
【0020】
上記本発明の有機発光トランジスタ素子の製造方法が有する前記有機EL層形成工程において、前記有機EL層をマスク蒸着法又はインクジェット法等のパターニング法により形成することが好ましい。この発明によれば、有機EL層を低分子材料で形成する場合にはマスク蒸着法等で、また、高分子材料で形成する場合はインクジェット法等で形成できるので、例えば絶縁層/補助電極/電荷注入抑制層からなる積層構造体同士の間に有機EL層を形成してマトリクス状に素子化することも可能になる。
【0021】
上記本発明の有機発光トランジスタ素子の製造方法において、前記第1電極上又は当該第1電極が形成されていない基板上に所定の大きさからなる絶縁層を設ける工程前に、前記第1電極上に前記電荷注入層と同じ材料又は異なる材料からなる電荷注入層を予め設ける工程を有するようにしてもよい。
【0022】
本発明の第1形態に係る有機トランジスタ素子は、基板と、当該基板上に設けられた第1電極と、当該第1電極上に所定の大きさからなる絶縁層、補助電極及び電荷注入抑制層がその順に設けられた積層構造体と、当該積層構造体が設けられていない前記第1電極上に少なくとも設けられた有機半導体層と、当該有機半導体層上に設けられた第2電極とを少なくとも有することを特徴とする。また、第2形態に係る有機トランジスタ素子は、基板と、当該基板上に所定のパターンで設けられた第1電極と、当該第1電極が形成されていない前記基板上に当該第1電極を平面視で挟むように、所定の大きさからなる絶縁層、補助電極及び電荷注入抑制層がその順に設けられた積層構造体と、前記第1電極上に少なくとも設けられた有機半導体層と、当該有機半導体層上に設けられた第2電極とを少なくとも有し、前記第1電極が前記補助電極に接触しない厚さで設けられていることを特徴とする。
【0023】
ここで、上記第2形態に係る有機発光トランジスタ素子及び前記第2形態に係る有機トランジスタ素子において、「第1電極を平面視で挟むように」とは、第1電極が積層構造体(絶縁層)に接した態様で挟まれている場合、第1電極が積層構造体(絶縁層)内に食い込んだ態様で挟まれている場合、及び、第1電極が積層構造体(絶縁層)に接しない態様で挟まれている場合を包含し、さらにそれらの態様が、第1電極の両サイドそれぞれにおいて異なる場合を含むものとして定義される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の有機発光トランジスタ素子及び有機発光トランジスタによれば、補助電極と第1電極との間に印加する可変電圧を制御することにより、第1電極−第2電極間に流れる電流(電荷発生量)を制御して発光量を制御することができるので、第1電極と第2電極との間に一定電圧が印加されたノーマリーオン態様の発光素子として好ましく適用することができる。
【0025】
また、本発明の発光表示装置によれば、発光量の制御が容易で、輝度調整が容易な高性能の発光表示装置を提供できる。
【0026】
また、本発明の有機発光トランジスタ素子の製造方法によれば、絶縁層/補助電極/電荷注入抑制層からなる積層構造体同士の間に有機EL層を容易且つ精度よく形成することができると共に、マトリクス状に素子化することも可能になる。また、補助電極上に電荷注入抑制層を形成する際に、ポジ型の感光性材料を補助電極を覆うように設けた後に基板側から露光することにより、絶縁層/補助電極/電荷注入抑制層からなる積層構造体間の第1電極上に設けられたポジ型の感光性材料のみを容易且つ精度よく除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の有機発光トランジスタ素子及びその製造方法並びに発光表示装置について図面を参照しつつ説明する。
【0028】
(有機発光トランジスタ素子)
図1〜図9は、本発明の有機発光トランジスタ素子の構成例を示す模式断面図である。本発明の有機発光トランジスタ素子は、有機EL素子構造と縦型FET構造とを有する電界効果型の有機発光トランジスタ素子である。この有機発光トランジスタ素子は、第1電極4と積層構造体8との構成により、図1〜図7に示す第1形態に係る有機発光トランジスタ素子と、図8及び図9に示す第2形態に係る有機発光トランジスタ素子とに形態上大別されるが、これらは同一の技術的思想を共有するものである。
【0029】
第1形態に係る有機発光トランジスタ素子10は、図1〜図7に示すように、基板1と、基板1上に設けられた第1電極4と、第1電極4上に所定の大きさからなる絶縁層3、補助電極2及び電荷注入抑制層5がその順に設けられた積層構造体8と、その積層構造体8が設けられていない第1電極4上に少なくとも設けられた有機EL層6と、その有機EL層6上に設けられた第2電極7とを少なくとも有している。一方、第2形態に係る有機発光トランジスタ素子70,70A,70Bは、図8及び図9に示すように、基板1と、基板1上に所定のパターンで設けられた第1電極4と、第1電極4が形成されていない基板1上に前記第1電極4を平面視で挟むように、所定の大きさからなる絶縁層3、補助電極2及び電荷注入抑制層5がその順に設けられた積層構造体8と、第1電極4上に少なくとも設けられた有機EL層6と、有機EL層6上に設けられた第2電極7とを少なくとも有し、前記第1電極4が前記補助電極2に接触しない厚さT5で設けられている。
【0030】
上記において、「少なくとも」とは、有機EL層6が、積層構造体8が設けられていない第1電極4上のみに設けられる場合と、積層構造体8が設けられていない第1電極4上に設けられると共に、積層構造体8を覆うことができる厚さで積層構造体8上にも設けられる場合を包含する意味で用いている。
【0031】
本発明の第1及び第2形態に係る有機発光トランジスタ素子は、絶縁層3、補助電極2及び電荷注入抑制層5が平面視で同じ大きさでその順に積層された積層構造体8を有するものであり、且つ、補助電極2のエッヂ部2aと有機EL層6とが接触するように構成されている。有機EL層6では第1電極4と第2電極7から注入された電荷(正孔及び電子)が結合して発光現象が生じるが、この有機発光トランジスタ素子10では、補助電極2が第1電極4と第2電極7との中間領域に設けられているので、その補助電極2と第1電極4との間の印加電圧(ゲート電圧V)を変化させることにより、第1電極と第2電極での電荷発生量を増加又は減少させて発光量を制御することができる。
【0032】
なお、図示のように、補助電極2は絶縁層3と電荷注入抑制層5で挟まれており、補助電極2の上面及び下面では電荷(正孔又は電子)の発生や消失が抑制される。その結果、補助電極2での可変電圧(ゲート電圧V)は、第1電極4と第2電極7で発生する電荷発生量に影響を及ぼす。
【0033】
こうした制御は、絶縁層3と電荷注入抑制層5とで補助電極2を挟んだ積層構造体を、第1電極と第2電極との中間領域に設けることにより実現する。例えば第1電極4を陽極とし、第2電極7を陰極としたとき、両者の間に一定電圧(ドレイン電圧V)を印加したときの正孔の流れ21を図2中の矢印で模式的に示した場合において、補助電極2と第1電極4との間に電荷発生量を増す方向にゲート電圧Vを印加すると正孔の流れ22は大きくなり、補助電極2と第1電極4との間に電荷発生量を減らす方向にゲート電圧Vを印加すると正孔の流れ22は小さくなる。すなわち、第1電極−第2電極間に一定電圧を印加するノーマリーオン態様の発光素子において、このような補助電極2を設けて第1電極4との間に可変電圧を印加することにより、第1電極−第2電極間に流れる電荷量を制御でき、有機EL層6で発光する輝度を制御することができる。具体的には、第1電極−第2電極間に一定電圧を印加したノーマリーオン態様の発光素子において、補助電極2と第1電極4との間に電荷発生量を増す方向にゲート電圧Vを印加すると、輝度が向上して明るくなり、補助電極2と第1電極4との間に電荷発生量を減らす方向にゲート電圧Vを印加すると、有機EL層6で発光する輝度が減少して暗くなる。さらに、こうした補助電極−第1電極間の電圧制御に加えて、第1電極−第2電極間の電圧を可変させれば、輝度の高度な階調を実現でき、より精細な画像形成を実現できる。
【0034】
本発明では、第1電極4を陽極とし、第2電極7を陰極として構成してもよいし、第1電極4を陰極とし、第2電極7を陽極として構成してもよい。第1電極4と第2電極7とが何れの極性を持つものであっても、補助電極2と第1電極4との間に印加する電圧を制御して第1電極−第2電極間に流れる電流(電荷発生量)を制御し、有機EL層内での輝度を可変させることができる。なお、第1電極4が陽極で第2電極7が陰極である場合には、第1電極4に接する側に好ましく設ける電荷注入層12は正孔注入層であり(図1〜図9を参照)、第2電極7に接する側に好ましく設ける電荷注入層14は電子注入層である(図6を参照)。同様に、第1電極4が陰極で第2電極7が陽極である場合には、第1電極4に接する側に好ましく設けられる電荷注入層12は電子注入層であり、第2電極7の接する側に好ましく設けられる電荷注入層14は正孔注入層である。
【0035】
本発明の有機発光トランジスタ素子は、絶縁層3、補助電極2及び電荷注入抑制層5が平面視で同じ大きさでその順に積層された積層構造体8を有するものであり、且つ、補助電極2のエッヂ部2aと有機EL層6とが接触するように構成されているものであれば、その有機EL層6の形態については特に限定されず各種の形態を例示できる。
【0036】
有機EL層6の形態としては、例えば、図1〜図3に示すように、第1電極4側から電荷注入層12と発光層11とがその順で形成された2層構造や、図4及び図5に示すように、第1電極4側から電荷注入層12’と電荷注入層12と発光層11とがその順で形成された3層構造や、図6に示すように、第1電極4側から電荷注入層12と発光層11と電荷注入層14とがその順で形成された3層構造や、図7に示すように、第1電極4側から電荷注入層12と電荷輸送層13と発光層11とがその順で形成された3層構造等を例示できる。なお、有機EL層の構成はこれらに限定されず、さらに必要に応じて、電荷輸送層等を設けたものであってもよいし、発光層11中に電荷注入材料や電荷輸送材料を含有させて同様の機能を持たせた単層構造からなるものであってもよい。
【0037】
なお、図4及び図5では、上述したように、第1電極4側から電荷注入層12’と電荷注入層12と発光層11とがその順で形成されているが、この形態の有機発光トランジスタ素子30,40は、第1電極4と、積層構造体8及び有機EL層6との間に、電荷注入層12と同じ材料又は異なる材料からなる電荷注入層12’が設けられているように構成したものである。こうした形態からなる有機発光トランジスタ素子30,40は、積層構造体8の下の第1電極4上にも電荷注入層12’が設けられているので、積層構造体8の下の第1電極4面でも電荷を発生させることができ、その発生電荷も、補助電極2と第1電極4との間に印加される電圧により制御することができる。
【0038】
有機EL層6が電荷注入層12と発光層11とで構成された場合における電荷注入層12の厚さは、図1〜図3に示すように特に限定されず、例えば、図1に示すように、電荷注入層12の厚さT3を積層構造体8の合計厚さT2よりも厚くして、電荷注入層12が積層構造体8を覆うようにしたものであってもよいし、図3(A)に示すように、電荷注入層12の厚さT3を絶縁層3の厚さと同程度にしたものであってもよいし、図3(B)に示すように、電荷注入層12の厚さT3を絶縁層3と補助電極2の合計厚さT2と同程度にしたものであってもよいし、図3(C)に示すように、電荷注入層12の厚さT3を積層構造体8の厚さT2と同程度にしたものであってもよい。
【0039】
なお、図3(C)に示す有機発光トランジスタ素子のように、積層構造体8を第1電極4と第2電極7との両方に接する厚さで形成すれば、積層構造体同士の間に有機EL層6を形成してマトリクス状に素子化することも可能になる。
【0040】
また、図8及び図9に第2形態として示すように、本発明の有機発光トランジスタ素子70,70A,70Bは、基板1と、基板1上に所定のパターンで設けられた第1電極4と、第1電極4が形成されていない基板1上に前記第1電極4を平面視で挟むように、所定の大きさからなる絶縁層3、補助電極2及び電荷注入抑制層5がその順に設けられた積層構造体8と、第1電極4上に少なくとも設けられた有機EL層6と、有機EL層6上に設けられた第2電極7とを少なくとも有するように構成しても良い。この形態では、第1電極4が補助電極2に接触しない厚さT5で設けられていることが必要である。
【0041】
なお、図8に示す有機発光トランジスタ70は、平面視で、基板1上の第1電極4がその両側の絶縁層3,3に接した態様で挟まれているが、図9(A)に示す有機発光トランジスタ70Aは、平面視で、基板1上の第1電極4が絶縁層3内に食い込んだ態様で挟まれており、図9(B)に示す有機発光トランジスタ70Bは、平面視で、基板1上の第1電極4が絶縁層3に接しない態様で挟まれている。本発明の第2形態に係る有機発光トランジスタにおいて、「第1電極4を平面視で挟むように設けられた積層構造体8」とは、これらの態様を包含し、それらの態様が、第1電極4の両サイドそれぞれにおいて異なる場合を含むものとして定義される。
【0042】
この第2形態の有機発光トランジスタ素子70,70A,70Bは、基板1上に第1電極4と積層構造体8とがパターニングされてなるものであり、具体的には、第1電極4が形成されていない基板1上にその第1電極4を平面視で挟むように積層構造体8が形成されている。それ以外の形態は、図1〜図7で示した形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。なお、この第2形態に係る有機発光トランジスタ素子70,70A,70Bにおいては、基板1面から絶縁層3上面までの距離T4は、基板1面から第1電極4上面までの距離T5よりも大きい(T4>T5)ことが必要である。こうした関係で形成されていることにより、第1電極4は補助電極2接触することがなく、且つ補助電極2のエッヂ部2aは電荷注入層12又は電荷注入材料を含む有機EL層6に接触することになる。
【0043】
こうした本発明の有機発光トランジスタ素子は、トップエミッション型の発光トランジスタ素子であってもよいし、ボトムエミッション型の発光トランジスタ素子であってもよく、いずれの形態にするかによって、構成される層の光透過性が設計される。なお、本願で示す有機発光トランジスタ素子の断面構成図は、有機発光トランジスタの一画素(一ピクセル)を示している。したがって、この画素毎に所定の発光色を発光する発光層を形成することにより、カラーディスプレイ等の発光表示装置を形成することができる。
【0044】
(有機トランジスタ素子)
また、図10(A)(B)に示すように、本発明の特徴部分を有機トランジスタ素子に適用することも可能である。例えば図10(A)示す第1形態の有機トランジスタ素子80Aのように、基板1と、基板1上に設けられた第1電極4と、第1電極4上に所定の大きさからなる絶縁層3、補助電極2及び電荷注入抑制層5がその順に設けられた積層構造体8と、積層構造体8が設けられていない第1電極4上に設けられた有機半導体層15と、有機半導体層15上に設けられた第2電極7とを少なくとも有することにより、有機半導体層15に流れる電荷量を制御することができる。
【0045】
また、例えば図10(B)示す第2形態の有機トランジスタ素子80Bのように、基板1と、基板1上に所定のパターンで設けられた第1電極4と、第1電極4が形成されていない基板1上にその第1電極4を平面視で挟むように、所定の大きさからなる絶縁層3、補助電極2及び電荷注入抑制層5がその順に設けられた積層構造体8と、第1電極4上に少なくとも設けられた有機半導体層15と、有機半導体層15上に設けられた第2電極7とを少なくとも有している。そして、第1電極4が補助電極2に接触しない厚さで設けられていることにより、有機半導体層15に流れる電荷量を制御することができる。
【0046】
なお、この有機半導体層15には、必要に応じて電荷注入層や電荷輸送層も含まれる。また、図10において、有機半導体層15は、積層構造体8を覆うことができる厚さで設けられている。さらに、この第2形態に係る有機トランジスタにおいても、上記図9(A)(B)で示した第2形態に係る有機発光トランジスタの場合と同様、「第1電極4を平面視で挟むように設けられた積層構造体8」とは、第1電極4が積層構造体8(絶縁層3)に接した態様で挟まれている場合、第1電極4が積層構造体8(絶縁層3)内に食い込んだ態様で挟まれている場合、及び、第1電極4が積層構造体8(絶縁層3)に接しない態様で挟まれている場合を包含し、それらの態様が、第1電極4の両サイドそれぞれにおいて異なる場合を含むものとして定義される。
【0047】
(有機発光トランジスタ素子の構成)
以下に、本発明の有機発光トランジスタ素子を構成する各層及び各電極について説明する。
【0048】
基板1は、特に限定されるものではなく、積層する各層の材質等により適宜決めることができ、例えば、Al等の金属、ガラス、石英又は樹脂等の各種の材料からなるものを用いることができる。光を基板側から出射させるボトムエミッション構造の有機発光トランジスタ素子の場合には、透明又は半透明になる材料で基板が形成されることが好ましいが、光を第2電極7側から出射させるトップエミッション構造の有機発光トランジスタ素子の場合には、必ずしも透明又は半透明になる材料を用いる必要はなく、不透明材料で基板を形成してもよい。
【0049】
特に好ましくは、有機EL素子の基板として一般的に用いられている各種のものを用いることができ、例えば、用途に応じてフレキシブルな材質や硬質な材質等からなるものが選択される。具体的には、例えば、ガラス、石英、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート等の材質からなる基板を挙げることができる。基板1の形状としては、枚葉状でも連続状でもよく、具体的な形状としては、例えばカード状、フィルム状、ディスク状、チップ状等を挙げることができる。
【0050】
本発明を構成する電極としては、補助電極2、第1電極4及び第2電極7がある。これら各電極の電極材料としては、金属、導電性酸化物、導電性高分子等の材料が用いられる。第1電極4は基板1上に設けられ、上記の第1形態においては、さらにその第1電極4上に、絶縁層3、補助電極2及び電荷注入抑制層5からなる積層構造体8が所定の大きさで設けられ、上記の第2形態においては、第1電極4が形成されていない基板1上にその第1電極4を両側から挟むように、絶縁層3、補助電極2及び電荷注入抑制層5からなる積層構造体8が所定の大きさで設けられる。
【0051】
その所定の大きさは特に限定されないが、例えば後述する図13に示すように、ライン幅が1〜500μm程度でラインピッチが1〜500μm程度の櫛形の積層構造体8や、例えば後述する図14に示すように、格子幅が1〜500μm程度で格子ピッチが1〜500μm程度の格子形の積層構造体8(図14中では、X方向の積層構造体8xとY方向の積層構造体8yで表している)を一例として挙げることができる。なお、積層構造体8の形状は、櫛形や格子状に限定されず、菱形や円形等の各種の形状で形成できるし、その線幅やピッチも特に限定されず、また、各線幅やピッチがそれぞれ同じ幅でなくてもよい。
【0052】
本発明において、補助電極2は有機EL層6とショットキー接触を形成するので、その有機EL層6が正孔注入層又は正孔注入材料を有する有機EL層である場合には、仕事関数が小さい金属で補助電極2を形成することが好ましく、一方、その有機EL層6が電子注入層又は電子注入材料を有する有機EL層である場合には、仕事関数が大きい金属で補助電極2を形成することが好ましい。こうした補助電極2の形成材料としては、例えば、アルミ、銀等の単体金属、MgAg等のマグネシウム合金、AlLi、AlCa、AlMg等のアルミニウム合金、Li、Caをはじめとするアルカリ金属類、LiF等のアルカリ金属類の合金のような仕事関数の小さな金属等を好ましく使用することができるが、電荷(正孔、電子)注入層とショットキー接触を形成することが可能であれば、ITO(インジウム錫オキサイド)、酸化インジウム、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、SnO、ZnO等の透明導電膜、金、クロムのような仕事関数の大きな金属、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリシラン誘導体のような導電性高分子等も使用することができる。
【0053】
また、第1電極4又は第2電極7を陰極とする場合の形成材料としては、アルミ、銀等の単体金属、MgAg等のマグネシウム合金、AlLi、AlCa、AlMg等のアルミニウム合金、Li、Caをはじめとするアルカリ金属類、LiF等のアルカリ金属類の合金のような仕事関数の小さな金属等を挙げることができる。
【0054】
また、第1電極4又は第2電極7を陽極とする場合の形成材料としては、その陽極と接する有機EL層6(電荷注入層12又は発光層12)の構成材料とオーミック接触を形成する金属であって補助電極2や上記陰極に用いられる電極材料と同様の電極材料を挙げることができるが、好ましくは金、クロムのような仕事関数の大きな金属材料や、ITO(インジウム錫オキサイド)、酸化インジウム、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、SnO、ZnO等の透明導電膜、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリシラン誘導体のような導電性高分子が挙げられる。
【0055】
第1電極4は基板1上に設けられるが、基板1と第1電極4との間にはバリア層や平滑層等が設けられていてもよい。また、補助電極2は、第1電極4上に又は基板1上に所定の形状で設けられた絶縁層3の上に、その絶縁層3と平面視で同じ大きさで設けられる。本願でいう「同じ大きさ」とは、大きさが厳密に一致する場合を含むほか、作用効果が共通する程度の大きさまで含む意味で用いている。また第2電極7は、有機EL層6を第1電極4と挟むように設けられる。
【0056】
これら、補助電極2、第1電極4及び第2電極7のそれぞれは、上記の電極材料で形成された単層構造の電極であってもよいし、複数の電極材料で形成された積層構造の電極であってもよい。なお、後述するように、電荷注入抑制層5の形成材料として光照射により除去可能となる感光性材料が用いられる場合には、補助電極2の形成材料としてその感光性材料を透過しない材料を用いることが好ましく、第1電極4の形成材料としてその感光性材料の露光波長を透過する材料を用いることが好ましい。これらの各電極の厚さは特に限定されないが、通常、10〜1000nmの範囲内である。
【0057】
有機発光トランジスタ素子がボトムエミッション構造である場合には、発光層11よりも下側に位置する電極は、透明又は半透明になっていることが好ましく、トップエミッション構造である場合には、発光層11よりも上側に位置する電極は、透明又は半透明になっていることが好ましい。透明材料としては、上記の透明導電膜、金属薄膜、導電性高分子膜を用いることができる。なお、下側、上側とは、本発明で示す図を平面視したときの形態について、その上下方向における下側、上側を意味し、両側(右側、左側)とは、本発明で示す図を平面視したときの形態について、その左右方向における両側(右側、左側)を意味している。
【0058】
上記の各電極は、真空蒸着、スパッタリング、CVD等の真空プロセス又は塗布により形成され、その膜厚は使用する材料等によっても異なるが、例えば10nm〜1000nm程度であることが好ましい。なお、発光層11や電荷注入層12等の有機EL層6上に電極を成膜する場合は、電極成膜時にその有機EL層6に加わるダメージを軽減するための保護層(図示しない)を有機EL層上に設けてもよい。保護層は、電極をスパッタリング法等で有機EL層6上に成膜する場合に電極形成前に予め設けられるものであり、例えば、Au、Ag、Al等の半透明膜やZnS、ZnSe等の無機半導体膜等の蒸着膜又はスパッタ膜のように、成膜時にダメージを与え難いものが1〜500nm程度の厚さで予め成膜されることが好ましい。
【0059】
絶縁層3は、第1電極4上(第1形態)又は基板1上(第2形態)に、所定の箇所に所定の大きさ/形状で設けられる。ここでいう所定の大きさは特に限定されないが、上記同様、例えばライン幅が1〜500μm程度でラインピッチが1〜500μm程度の櫛形の絶縁層3や、格子幅が1〜500μm程度で格子ピッチが1〜500μm程度の格子形の絶縁層3を一例として挙げることができる。なお、絶縁層3の形状は、櫛形や格子状に限定されず、菱形や円形等の各種の形状で形成できるし、その線幅やピッチも特に限定されず、また、各線幅やピッチがそれぞれ同じ幅でなくてもよい。
【0060】
絶縁層3の形成材料としては、例えば、SiO、SiN、A1等の無機材料や、ポリクロロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリビニルクロライド、ポリフッ化ビニリデン、シアノエチルプルラン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルフェノール、ポリサルホン、ポリカーボネート、ポリイミド等の有機材料や、一般的に使用されている市販のレジスト材料等を挙げることができる。この絶縁層3は、上記の材料で形成された単層構造の絶縁層であってもよいし、複数の材料で形成された積層構造の絶縁層であってもよい。なお、後述するように、電荷注入抑制層5の形成材料として光照射により除去可能となる感光性材料が用いられる場合には、絶縁層3の形成材料とその上に同じ大きさで形成される補助電極2の一方又は両方が、その感光性材料の露光波長を透過する材料で形成されていることが好ましい。
【0061】
特に本発明においては、製造コストや製造容易性の観点から、一般的に使用されているレジスト材料を好ましく用いることができ、スクリーン印刷法、スピンコート法、キャスト法、引き上げ法、転写法、インクジェット法等やフォトリソグラフ法により所定のパターンに形成できる。上記の無機材料からなる絶縁層3については、CVD法等の既存パターンプロセスを用いて形成できる。絶縁層3の厚さは薄いほど好ましいが、薄すぎると補助電極2と第1電極4との間の漏れ電流が大きくなり易いので、通常、10〜500nm程度であることが好ましい。
【0062】
有機発光トランジスタ素子がボトムエミッション構造である場合には、この絶縁層3は発光層11よりも下側に位置するので、透明又は半透明になっていることが好ましく、トップエミッション構造である場合には、透明又は半透明の必要はない。
【0063】
電荷注入抑制層5は、補助電極2上にその補助電極2と平面視で同じ大きさで設けられる。そして、この電荷注入抑制層5は、第1電極4−補助電極2間に電圧を印加した場合に、第2電極7に対向する補助電極2上面で発生して補助電極2に向かう電荷(正孔又は電子。以下同じ。)の流れを抑制するように作用する。
【0064】
本発明では、この電荷注入抑制層5を補助電極2上面に平面視で同じ大きさで設けたので、第1電極4−補助電極2間に電圧を印加した場合に、補助電極2で発生する電荷を、電荷注入抑制層5が設けられていない小面積のエッヂ部2aで発生させることができる。補助電極2のエッヂ部2aでの電荷発生量は、補助電極2と第1電極4との間に印加されるゲート電圧Vで制御され、そのエッヂ部2aで発生した電荷は、その極性にもよるが、第1電極4と第2電極7との間に印加されたドレイン電圧Vにより、第2電極7側又は第1電極4側に向かう。その結果、その電荷が第1電極4−第2電極7間に印加して発生した電荷に加わって総電荷量を変化させる。一方、第1電極4でも電荷が発生するので、その電荷が第1電極4−第2電極7間に印加して発生した電荷に加わって総電荷量を変化させる。この総電荷量は、第1電極4−補助電極2間で発生する電荷の極性が第1電極4−第2電極7間で発生する電荷の極性と同じであれば、総電荷量は増す方向に変化するが、極性が逆であれば、総電荷量は減る方向に変化する。すなわち、第1電極−第2電極間に一定電圧を印加したノーマリーオン態様の発光素子において、補助電極2と第1電極4との間に電荷発生量を増す方向にゲート電圧Vを印加すると、有機EL層6で発光する輝度が向上して明るくなり、補助電極2と第1電極4との間に電荷発生量を減らす方向にゲート電圧Vを印加すると、輝度が減少して暗くなる。さらに、こうした補助電極−第1電極間の電圧制御に加えて、第1電極−第2電極間の電圧を可変させれば、輝度の高度な階調を実現でき、より精細な画像形成を実現できる。
【0065】
電荷注入抑制層5は、上記作用を奏すれば各種の形成材料で形成することができる。電荷注入抑制層5としては、絶縁性の無機膜や有機膜を例示でき、例えば、SiO、SiN、A1等の無機絶縁材料で形成したものであってもよいし、一般的な有機絶縁材料、例えば、ポリクロロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリビニルクロライド、ポリフッ化ビニリデン、シアノエチルプルラン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルフェノール、ポリサルホン、ポリカーボネート、ポリイミド等の有機絶縁材料で形成したものであってもよい。また、この電荷注入抑制層5は、上記の材料で形成された単層構造の電荷注入抑制層であってもよいし、複数の材料で形成された積層構造の電荷注入抑制層であってもよい。電荷注入抑制層5は、真空蒸着、スパッタリング、CVD等の真空プロセス又は塗布により形成され、その膜厚は使用する材料等によっても異なるが、例えば0.010μm〜10μm程度であることが好ましい。
【0066】
本願では、電荷注入抑制層5として、入手が容易で、成膜や精度のよいパターニングが容易な絶縁材料からなる層とすることが好ましく、特に光照射により除去可能となる感光性材料からなる膜、より具体的にはポジ型のレジスト膜とすることが好ましい。電荷注入抑制層5の形成材料としてポジ型の感光性材料を用いた場合には、その感光性材料を補助電極2を覆うように第1電極4上の全面に設けた後に基板1側から露光して第1電極4上に設けられたポジ型の感光性材料のみを容易且つ寸法精度よく除去することができ、その結果、補助電極2上にその補助電極2と平面視で同じ大きさで寸法精度よく電荷注入抑制層5を形成することができる。
【0067】
有機EL層6は、電荷注入層12と発光層11とを少なくとも有する層、又は、電荷注入物質を含む発光層11を少なくとも有する層であれば特に限定されず、上述した各種の形態を例示できる。有機EL層6を構成する各層は、素子の構成や構成材料の種類等に応じ、適切な厚さ(例えば0.1nm〜1μmの範囲内)で形成される。なお、有機EL層6を構成する各層の厚さが厚すぎる場合には、一定の光出力を得るために大きな印加電圧が必要になって発光効率が悪くなることがあり、各層の厚さが薄すぎる場合には、ピンホール等が発生して電界を印加しても十分な輝度が得られないことがある。
【0068】
発光層11の形成材料としては、有機EL素子の発光層として一般的に用いられている材料であれば特に限定されず、例えば色素系発光材料、金属錯体系発光材料、高分子系発光材料等を挙げることができる。
【0069】
色素系発光材料としては、例えば、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等を挙げることができる。また、金属錯体系発光材料としては、例えば、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be等、又はTb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。また、高分子系発光材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、及びそれらの共重合体等を挙げることができる。
【0070】
発光層11中には、発光効率の向上や発光波長を変化させる等の目的でドーピング剤等の添加剤を添加するようにしてもよい。ドーピング剤としては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体等を挙げることができる。
【0071】
電荷注入層12の形成材料としては、例えば、発光層11の発光材料に例示した化合物の他、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、ポリアセン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウムなどの酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの誘導体等を挙げることができる。
【0072】
また、第2電極7の発光層11側には、第2電極用の電荷注入層14(図6を参照)を設けてもよい。例えば第2電極7を陰極とした場合における電荷(電子)注入層14の形成材料としては、発光層11の発光材料に例示した化合物の他、アルミニウム、フッ化リチウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、カルシウム、ポリメチルメタクリレートポリスチレンスルホン酸ナトリウム、リチウム、セシウム、フッ化セシウム等のようにアルカリ金属類、及びアルカリ金属類のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体等を挙げることができる。
【0073】
第1電極4を陽極とした場合における電荷(正孔)輸送層13(図7を参照)の形成材料としては、フタロシアニン、ナフタロシアニン、ポリフィリン、オキサジアゾール、トリフェニルアミン、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、ピラゾリン、テトラヒドロイミダゾール、ヒドラゾン、スチルベン、ペンタセン、ポリチオフェン若しくはブタジエン、又はこれらの誘導体等、正孔輸送材料として通常使用されるものを用いることができる。また、電荷輸送層13の形成材料として市販されている、例えばポリ(3、4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(略称PEDOT/PSS、バイエル社製、商品名;Baytron P AI4083、水溶液として市販。)等も使用することができる。電荷輸送層13は、こうした化合物を含有した電荷輸送層形成用塗液を用いて形成される。なお、これらの電荷輸送材料は、上記の発光層11内に混ぜてもよいし、上記の電荷注入層12内に混ぜてもよい。
【0074】
また、図示しないが、電荷輸送層を発光層11の第2電極7側に設けてもよい。例えば第2電極7を陰極とした場合における電荷(電子)輸送層の形成材料としては、アントラキノジメタン、フルオレニリデンメタン、テトラシアノエチレン、フルオレノン、ジフェノキノンオキサジアゾール、アントロン、チオピランジオキシド、ジフェノキノン、ベンゾキノン、マロノニトリル、ニジトロベンゼン、ニトロアントラキノン、無水マレイン酸若しくはペリレンテトラカルボン酸、又はこれらの誘導体等、電子輸送材料として通常使用されるものを用いることができる。電荷(電子)輸送層は、こうした化合物を含有した電荷輸送層形成用塗液を用いて形成される。なお、これらの電荷輸送材料は、上記の発光層11内に混ぜてもよいし、上記の電子注入層内に混ぜてもよい。
【0075】
なお、上述した発光層11、電荷注入層12、電荷輸送層13等からなる有機EL層中には、必要に応じてオリゴマー材料又はデンドリマー材料の発光材料若しくは電荷輸送注入材料を含有させてもよい。また、有機EL層を構成する各層は、真空蒸着法によって成膜するか、あるいは、それぞれの形成材料をトルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の溶媒に溶解又は分散させて塗布液を調整し、その塗布液を塗布装置等を用いて塗布又は印刷等することで形成される。
【0076】
有機EL層6は、上述したような各種の積層態様に応じて、発光層形成材料、電荷注入層形成材料、電荷輸送層形成材料等を隔壁により区分けされた所定の位置に形成される。なお、隔壁(図示しない。)は、有機発光トランジスタ素子を有する発光表示装置の平面上に発光色毎に区分けする領域を形成するものである。隔壁材料としては、従来より隔壁材料として使用されている各種の材料、例えば、感光性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。隔壁の形成手段としては、採用される隔壁材料に適した手段で形成でき、例えば、厚膜印刷法を用いたり、感光性レジストを用いたパターニングにより形成することができる。
【0077】
隔壁として、図3(C)に示すように、電荷注入抑制層5を第2電極7に接触するまで厚くしたものを利用することも可能である。例えば、図3(C)に示す形態からなる絶縁層3、補助電極2及び電荷注入抑制層5からなる積層構造体8を隔壁として用い、それ以外の積層構造体は、図3(A)に示すように第2電極7に接触しない厚さで薄くして形成すれば、その隔壁で囲まれた範囲に各色の発光層を設けた発光部とすることができる。
【0078】
(有機発光トランジスタ素子の製造方法)
次に、本発明の有機発光トランジスタ素子の製造方法について説明する。図11は、本発明の第1態様に係る有機発光トランジスタ素子の製造方法の一例を示す工程図である。本発明の有機発光トランジスタ素子の製造方法は、図11に示すように、第1電極4が形成された基板1を準備する工程(図11(A)参照)と、第1電極4上に所定の大きさからなる絶縁層3、補助電極2及び電荷注入抑制層5がその順に積層した積層構造体8を設ける工程(図11(B)〜(E)参照)と、積層構造体8が設けられていない第1電極4上に有機EL層6を設ける工程(図11(F)参照)と、有機EL層6上に第2電極4を設ける工程(図11(F)参照)とを少なくとも有している。
【0079】
上記の各工程のうち、第1電極4上に積層構造体8を形成する工程では、(i)その絶縁層3、補助電極2及び電荷注入抑制層5のそれぞれをマスク蒸着法で直接パターン形成してもよいが、(ii)図11(C)〜図11(E)に示すように、電荷注入抑制層5の形成材料として光照射により除去可能となる感光性材料(ポジ型レジスト)を用い、絶縁層3とその上に同じ大きさで形成される補助電極2の一方又は両方をその感光性材料の露光波長を透過しない材料で形成すると共に、第1電極4をその感光性材料の露光波長を透過する材料で形成すれば、その感光性材料を絶縁層3と補助電極2とからなる積層体を覆うように設けた後、基板1側から露光してその第1電極4上に設けられた感光性材料のみを除去する。これにより、その積層体上にのみ感光性材料が設けられた積層構造体8を容易且つ精度よく形成することができる。
【0080】
感光性材料の露光波長を透過しない補助電極材料としては、Al、Au、Cr、Pt、Ti等の金属のほか、透明電極であるITOやIZOの上か下にAuやAl等を積層したものでもよい。また、補助電極2には、Au、Cr、Pt、Ti、ITO、IZOの何れかの材料が少なくとも1層入るように構成してもよい。
【0081】
すなわち、図11(C)に示すように、まず、ポジ型レジスト5’を補助電極2を覆うように第1電極4上に設ける。その後、図11(D)に示すように、基板1側からポジ型のレジスト5’の露光光を照射して第1電極4上に設けられたポジ型レジスト5’を露光する。次いで、図11(E)に示すように、露光後のポジ型のレジスト5’を現像し、第1電極4上に設けられたポジ型レジスト5’のみを除去する。こうして、電荷注入抑制層5を補助電極2上に、その補助電極2と平面視で同じ大きさで設けることができる。
【0082】
図11では、図1に示す有機発光トランジスタ素子10の製造方法について具体的に説明したが、図3(A)〜図3(C)に示す有機発光トランジスタ素子についても同様に製造することができる。ただし、図3(A)に示す有機発光トランジスタ素子20Aを製造する際には、電荷注入層12を、マスク蒸着法又はインクジェット法等のパターニング法により、例えば絶縁層3の厚さと同程度の厚さになるまで形成する。その後は、その電荷注入層12上及び電荷注入抑制層5上を一様に覆うように発光層11を形成する。
【0083】
また、図3(B)に示す有機発光トランジスタ素子20Bを製造する際には、電荷注入層12の厚さT3を、マスク蒸着法又はインクジェット法等のパターニング法により、例えば絶縁層3と補助電極2と電荷注入抑制層5とからなる積層構造体8の合計厚さと同程度の厚さになるまで形成する。その後は、その電荷注入層12上及び電荷注入抑制層5上を一様に覆うように発光層11を形成する。
【0084】
また、図3(C)に示す有機発光トランジスタ素子20Cを製造する際には、電荷注入層12をマスク蒸着法又はインクジェット法等のパターニング法により、例えば絶縁層3と補助電極2とからなる積層体の厚さと同程度の厚さになるまで形成し、さらにその後の発光層形成工程においても、マスク蒸着法又はインクジェット法等のパターニング法により、発光層11が積層構造体8を超えず且つ略同じ面まで形成する。
【0085】
図3(A)〜図3(C)に示す有機発光トランジスタ素子の製造方法においては、上記のように、例えば有機EL層6を構成する各層を低分子材料で形成する場合にはマスク蒸着法等で、また高分子材料で形成する場合はインクジェット法等でパターン形成できるので、有機EL層6を隣り合う積層構造体8,8間に形成して素子化できる。そのため、例えば図3(C)に示すように、積層構造体同士の間に有機EL層6を形成してマトリクス状に素子化することも可能になる。
【0086】
図12は、図4に示した有機発光トランジスタ素子の製造方法の一例を示す工程図である。この製造方法は、図12に示すように、第1電極4上に所定の大きさからなる絶縁層3を設ける工程前に、第1電極4上に電荷注入層12と同じ材料又は異なる材料からなる電荷注入層12’を予め設ける工程を有する点でのみ、図11に示す製造方法とは異なっているが、その他においては同様であるので共通する工程の説明は省略する。
【0087】
図11の説明中で述べたように、基板1側から露光して第1電極4上に設けられたポジ型レジストのみを除去する工程を有するので、第1電極4上に予め形成される電荷注入層12’は、その際の露光波長を透過する材料で形成されていることが好ましい。
【0088】
また、本発明の第2態様に係る有機発光トランジスタ素子の製造方法は、図8及び図9に示す形態の有機発光トランジスタ素子70,70A,70Bの製造方法であって、所定のパターンからなる第1電極4が形成された基板1を準備する工程と、第1電極4が形成されていない基板1上にその第1電極4を平面視で挟むように、所定の大きさからなる絶縁層3、補助電極2及び電荷注入抑制層5がその順に積層した積層構造体8を設ける工程と、第1電極4上に有機EL層6を設ける工程と、有機EL層6上に第2電極7を設ける工程とを少なくとも有している。そして、第1電極4が補助電極2に接触しない厚さT5で設けられていることを特徴とする。この第2態様に係る製造方法は、積層構造体8を、第1電極4が形成されていない基板1上にその第1電極4を平面視で挟むように形成している点で上記第1態様に係る製造方法とは相違するが、その他においては、上記同様の工程を経て製造される。
【0089】
なお、図5〜図7の有機発光トランジスタ素子及び図10の有機トランジスタ素子も、上記同様の工程を経て製造できる。したがって、本発明に係る製造方法によれば、絶縁層3と補助電極2とからなる積層体上に電荷注入抑制層5を形成する際に、ポジ型の感光性材料をその積層体を覆うように設けた後に基板1側から露光することにより、その積層体間に設けられたポジ型の感光性材料のみを容易且つ精度よく除去することができる。
【0090】
(有機発光トランジスタ及び発光表示装置)
次に、本発明の有機発光トランジスタ及び発光表示装置について説明するが、以下により限定されるものではない。本発明の有機発光トランジスタは、上述した本発明の有機発光トランジスタ素子がシート状基板の上にマトリクス配置されたものであり、上記本発明の有機発光トランジスタ素子と、その有機発光トランジスタ素子が備える第1電極4と第2電極7との間に一定電圧(ドレイン電圧V)を印加する第1電圧供給手段と、その有機発光トランジスタ素子が備える第1電極4と補助電極2との間に可変電圧(ゲート電圧V)を印加する第2電圧供給手段とを有する。
【0091】
図13及び図14は、本発明の有機発光トランジスタ素子を構成する電極配置の例を示す平面図である。図13は、絶縁層3と補助電極2と電荷注入抑制層5とからなる積層構造体8を櫛形に形成した場合の配置図であり、図14は、その積層構造体8を格子状に形成した場合の配置図である。電極配置は、図13及び図14に示すように、平面視で上下方向に延びる第1電極4と、その第1電極4に直交するように一方の側から延びる積層構造体8(補助電極2を含む)と、その第1電極4に直交すると共に積層構造体8と重なるように他方の側から延びる第2電極7とからなるように配置されている。図14では、X方向の積層構造体8xとY方向の積層構造体8yで格子を構成している。なお、図13及び図14は一例である。
【0092】
また、本発明の発光表示装置は、複数の発光部をマトリクス状に配置した発光表示装置であって、その複数の発光部の各々が、上記本発明の有機発光トランジスタ素子を有している。図15は、本発明の有機発光トランジスタ素子を内蔵した典型的な発光表示装置の一例を示す概略図であり、図16は、発光表示装置内の各画素(単位素子)180として設けられた本発明の有機発光トランジスタ素子を有する有機発光トランジスタの一例を示す回路概略図である。この発光表示装置は、各画素(単位素子)180が1つのスイッチングトランジスタを有する例を示している。
【0093】
図16に示す各画素180は、縦横に配列された第一スイッチング配線187と第二スイッチング配線188とに接続されている。第一スイッチング配線187及び第二スイッチング配線188は、図15に示すように、電圧制御回路164に接続され、その電圧制御回路164は、画像信号供給源163に接続されている。なお、図15及び図16中の符号186はグランド配線であり、符号189は定電圧印加線である。
【0094】
図16において、第一スイッチングトランジスタ183のソース193aは、第二スイッチング配線188に接続され、ゲート194aは、第一スイッチング配線187に接続され、ドレイン195aは、有機発光トランジスタ140の補助電極2及び電圧保持用コンデンサ185の一方の端子に接続されている。また、電圧保持用コンデンサ185の他方の端子は、グランド186に接続されている。有機発光トランジスタ140の第2電極7は、グランド186に接続され、有機発光トランジスタ140の第1電極4は、定電圧印加線189に接続されている。
【0095】
次に、図16に示す回路の動作について説明する。第一スイッチング配線187に電圧が印加されると、第一スイッチングトランジスタ183のゲート194aに電圧が印加される。これにより、ソース193aとドレイン195aとの間に導通が生じる。この状態において、第二スイッチング配線188に電圧が印加されると、ドレイン195aに電圧が印加され、電圧保持用コンデンサ185に電荷が貯えられる。これにより、第一スイッチング配線187又は第二スイッチング配線188に印加する電圧をオフにしても、有機発光トランジスタ140の補助電極2に、電圧保持用コンデンサ185に貯えられた電荷が消滅するまで電圧が印加され続ける。有機発光トランジスタ140の第1電極4に電圧が印加されることにより、第1電極4と第2電極7との間が導通し、定電圧供給線189から有機発光トランジスタ140を通過してグランド186に電流が流れ、有機発光トランジスタ140が発光する。
【0096】
図17は、発光表示装置内の各画素(単位素子)181として設けられた本発明の有機発光トランジスタ素子を有する有機発光トランジスタの他の一例を示す回路概略図である。この発光表示装置は、各画素(単位素子)181が2つのスイッチングトランジスタを有する例を示している。
【0097】
図17に示す各画素181は、図16の場合と同様、縦横に配列された第一スイッチング配線187と第二スイッチング配線188とに接続されている。第一スイッチング配線187及び第二スイッチング配線188は、図15に示すように、電圧制御回路164に接続され、その電圧制御回路164は、画像信号供給源163に接続されている。なお、図17中の符号186はグランド配線であり、符号209は電流供給線であり、符号189は定電圧印加線である。
【0098】
図17において、第一スイッチングトランジスタ183のソース193aは、第二スイッチング配線188に接続され、ゲート194aは、第一スイッチング配線187に接続され、ドレイン195aは、第二スイッチングトランジスタ184のゲート194b及び電圧保持用コンデンサ185の一方の端子に接続されている。また、電圧保持用コンデンサ185の他方の端子は、グランド186に接続され、第二スイッチングトランジスタのソース193bは、電流源191に接続され、ドレイン195bは、有機発光トランジスタ140の補助電極2に接続されている。有機発光トランジスタ140の第2電極7は、グランド186に接続され、有機発光トランジスタ140の第1電極4は、定電圧印加線189に接続されている。
【0099】
次に、図17に示す回路の動作について説明する。第一スイッチング配線187に電圧が印加されると、第一スイッチングトランジスタ183のゲート194aに電圧が印加される。これにより、ソース193aとドレイン195aとの間に導通が生じる。この状態において、第二スイッチング配線188に電圧が印加されると、ドレイン195aに電圧が印加され、電圧保持用コンデンサ185に電荷が貯えられる。これにより、第一スイッチング配線187又は第二スイッチング配線188に印加する電圧をオフにしても、第二スイッチングトランジスタ184のゲート194bに、電圧保持用コンデンサ185に貯えられた電荷が消滅するまで電圧が印加され続ける。第二トランジスタ184のゲート194bに電圧が印加されることにより、ソース193bとドレイン195bとの間が導通し、定電圧印加線189から有機発光トランジスタ140を通過してグランドに電流が流れ、有機発光トランジスタ140が発光する。
【0100】
図15に示す画像信号供給源163は、例えばそれに内蔵又は接続されている画像情報メディアに記録されている画像情報を再生する装置や、入力された電気磁気的な情報を電気信号に変換する装置からもたらされる電気信号を、電圧制御装置164が受け取れる電気信号形態に変換して、電圧制御装置164に送る。電圧制御装置164は、画像信号供給源163からもたらされた電気信号を更に変換し、どの画素180,181をどれだけの時間発光させるかを計算し、第一スイッチング配線187及び第二スイッチング配線188に印加する電圧、時間、及びタイミングを決定する。これにより、画像情報に基づき発光表示装置は、所望の画像を表示できるようになる。なお、近接した微小画素ごとに、赤を基調にする色、緑を基調にする色、および青を基調にする色のRGB三色が発光できるようにすると、カラー表示の画像表示装置を得ることができる。
【実施例】
【0101】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0102】
(実施例1)
第1電極4(陽極)として厚さ100nmのITO膜付きガラス基板1上に、SiOをスパッタ成膜して100nmの厚さで層状の絶縁層を成膜した。次に、その層状の絶縁層上に、補助電極となるAlを厚さ30nmで層状にスパッタ成膜し、さらにエッチング用レジスト(東京応化工業株式会社製、商品名:OFPR800)を厚さ2μmで塗布した後、露光、現像して櫛形形状のレジストパターンを形成し、リン酸:硝酸=4:1の混合溶液でAlをエッチングして、櫛型形状の補助電極2を100μmの幅d1で形成した。さらに、その櫛形形状のエッチング用レジストをマスクとして、層状の絶縁層をドライエッチングし、前記補助電極2と平面視で同じ大きさになる厚さ100nmの櫛形形状の絶縁層3を形成した。その後、エッチング用レジストを剥離液(東京応化工業株式会社製、商品名:剥離液104)で剥離した。さらにその後、第1電極4及び補助電極2を覆うように、PVP系のレジスト(東京応化工業株式会社製、商品名:TMR−P10)をスピンコートして100nmの厚さで成膜した後に露光、現像して、前記補助電極2と平面視で同じ大きさからなる電荷注入抑制層5を形成した。
【0103】
次に、絶縁層3、補助電極2及び電荷注入抑制層5からなる積層構造体8が形成されていない第1電極4上に、電荷注入材料であるポリフルオレン(アメリカンダイソース社製、商品名:Poly [(9,9-dioctylfluorenyl-2,7-diyl) -co-(N,N'-diphenyl) -N,N'-di(p-butylphenyl) 1,4-diamino-benzene)])をスピンコートで塗布し、積層構造体8(絶縁層3、補助電極2及び電荷注入抑制層5からなる積層体)の厚さ以上の250nmの厚さで電荷注入層12を形成した。さらにその後、電荷(正孔)輸送層13としてのα−NPD(厚さ40nm)をその電荷注入層12を覆うようにして真空蒸着により成膜し、さらに、発光層11としてのAlq(厚さ60nm)/電子注入層14としてのLiF(厚さ1nm)/第2電極7としてのAl(厚さ100nm)をその順で真空蒸着により積層して、図18の形態からなる実施例1の有機発光トランジスタ素子を作製した。
【0104】
(実施例2)
実施例1において電荷注入材料であるポリフルオレン(アメリカンダイソース社製、商品名:Poly [(9,9-dioctylfluorenyl-2,7-diyl) -co-(N,N'-diphenyl) -N,N'-di(p-butylphenyl) 1,4-diamino-benzene)])をインクジェットで塗布し、積層構造体8(絶縁層3、補助電極2及び電荷注入抑制層5からなる積層体)の厚さ以下の厚さ200nmで電荷注入層12を形成した他は、実施例1と同様にして、図19の形態からなる実施例2の有機発光トランジスタ素子を作製した。
【0105】
(実施例3)
実施例1において、第1電極4上に層状の絶縁層を形成する前に、第1電極4上に電荷(正孔)注入層12’としてのポリ(3、4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(略称PEDOT/PSS、バイエル社製、商品名;Baytron P CH8000)をスピンコートにより厚さ80nmで形成した他は、実施例1と同様にして、図20の形態からなる実施例3の有機発光トランジスタ素子を作製した。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の有機発光トランジスタ素子の一例を示す模式断面図である。
【図2】図1の有機発光トランジスタ素子での電荷の流れを概念的に示す説明図である。
【図3】本発明の有機発光トランジスタ素子の他の例を示す模式断面図である。
【図4】本発明の有機発光トランジスタ素子の他の例を示す模式断面図である。
【図5】本発明の有機発光トランジスタ素子の他の例を示す模式断面図である。
【図6】本発明の有機発光トランジスタ素子の他の例を示す模式断面図である。
【図7】本発明の有機発光トランジスタ素子の他の例を示す模式断面図である。
【図8】本発明の有機発光トランジスタ素子の他の例を示す模式断面図である。
【図9】本発明の有機発光トランジスタ素子の他の例を示す模式断面図である。
【図10】本発明の有機トランジスタ素子の一例を示す断面構成図である。
【図11】本発明の有機発光トランジスタ素子の製造方法の一例を示す工程図である。
【図12】本発明の有機発光トランジスタ素子の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図13】本発明の有機発光トランジスタ素子を構成する電極配置の一例を示す平面図である。
【図14】本発明の有機発光トランジスタ素子を構成する電極配置の他の一例を示す平面図である。
【図15】本発明の有機発光トランジスタ素子を内蔵した発光表示装置の一例を示す概略図である。
【図16】発光表示装置内の各画素(単位素子)として設けられた本発明の有機発光トランジスタ素子を有する有機発光トランジスタの一例を示す回路概略図である。
【図17】発光表示装置内の各画素(単位素子)として設けられた本発明の有機発光トランジスタ素子を有する有機発光トランジスタの他の一例を示す回路概略図である。
【図18】実施例1の有機発光トランジスタ素子の構成図である。
【図19】実施例2の有機発光トランジスタ素子の構成図である。
【図20】実施例3の有機発光トランジスタ素子の構成図である。
【図21】SIT構造と有機EL素子構造とを複合させた従来の有機発光トランジスタの一例を示す断面構成図である。
【図22】SIT構造と有機EL素子構造とを複合させた従来の発光トランジスタの他の例を示す断面構成図である。
【符号の説明】
【0107】
10,20A,20B,20C,30,40,50,60,70,70A,70B 有機発光トランジスタ素子
1 基板
2 補助電極
2a エッヂ部
3 絶縁層
4 第1電極
5,5’ 電荷注入抑制層
6,6’ 有機EL層
7 第2電極
8 積層構造体
11 発光層
12、12’ 電荷注入層(第1電極用)
13 電荷輸送層(第1電極用)
14 電荷注入層(第2電極用)
15 有機半導体層
80A,80B 有機トランジスタ素子
140 有機トランジスタ
163 画像信号供給源
164 電圧制御回路
180,181 画素
183 第一スイッチングトランジスタ
184 第二スイッチングトランジスタ
185 電圧保持用コンデンサ
186 グランド配線
187 第一スイッチング配線
188 第二スイッチング配線
189 定電圧印加線
193a 第一スイッチングトランジスタのソース
193b 第二スイッチングトランジスタのソース
194a 第一スイッチングトランジスタのゲート
194b 第二スイッチングトランジスタのゲート
195a 第一スイッチングトランジスタのドレイン
195b 第二スイッチングトランジスタのドレイン
209 電流供給線
ゲート電圧
ドレイン電圧
T1 第1電極の厚さ
T2 電荷注入抑制層の厚さ
T3 電荷注入層の厚さ
T4 基板面から絶縁層上面までの距離(絶縁層の厚さ)
T5 基板面から第1電極上面までの距離(第1電極の厚さ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、当該基板上に設けられた第1電極と、当該第1電極上に所定の大きさからなる絶縁層、補助電極及び電荷注入抑制層がその順に設けられた積層構造体と、当該積層構造体が設けられていない前記第1電極上に少なくとも設けられた有機EL層と、当該有機EL層上に設けられた第2電極とを少なくとも有することを特徴とする有機発光トランジスタ素子。
【請求項2】
基板と、当該基板上に所定のパターンで設けられた第1電極と、当該第1電極が形成されていない前記基板上に当該第1電極を平面視で挟むように、所定の大きさからなる絶縁層、補助電極及び電荷注入抑制層がその順に設けられた積層構造体と、前記第1電極上に少なくとも設けられた有機EL層と、当該有機EL層上に設けられた第2電極とを少なくとも有し、前記第1電極が前記補助電極に接触しない厚さで設けられていることを特徴とする有機発光トランジスタ素子。
【請求項3】
前記有機EL層が、電荷注入層と発光層とを少なくとも有する層、又は、電荷注入材料を含む発光層を少なくとも有する層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機発光トランジスタ素子。
【請求項4】
前記第1電極と、当該第1電極上に設けられる前記積層構造体及び/又は前記有機EL層との間に、電荷注入層がさらに設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機発光トランジスタ素子。
【請求項5】
前記有機EL層と前記第2電極との間に、当該第2電極用の電荷注入層が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機発光トランジスタ素子。
【請求項6】
前記電荷注入抑制層が、絶縁材料からなる層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機発光トランジスタ素子。
【請求項7】
前記第1電極が陽極であり、前記第2電極が陰極であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の有機発光トランジスタ素子。
【請求項8】
前記第1電極が陰極であり、前記第2電極が陽極であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の有機発光トランジスタ素子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の有機発光トランジスタ素子と、当該有機発光トランジスタ素子が備える第1電極と第2電極との間に一定電圧を印加する第1電圧供給手段と、当該有機発光トランジスタ素子が備える第1電極と補助電極との間に可変電圧を印加する第2電圧供給手段とを有することを特徴とする有機発光トランジスタ。
【請求項10】
複数の発光部をマトリクス状に配置した発光表示装置であって、前記複数の発光部の各々は、請求項1〜8のいずれかに記載の有機発光トランジスタ素子を有することを特徴とする発光表示装置。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の有機発光トランジスタ素子の製造方法であって、
第1電極が形成された基板を準備する工程と、前記第1電極上に所定の大きさからなる絶縁層、補助電極及び電荷注入抑制層がその順に積層した積層構造体を設ける工程と、前記積層構造体が設けられていない前記第1電極上に有機EL層を設ける工程と、前記有機EL層上に第2電極を設ける工程とを少なくとも有することを特徴とする有機発光トランジスタ素子の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかに記載の有機発光トランジスタ素子の製造方法であって、
所定のパターンからなる第1電極が形成された基板を準備する工程と、前記第1電極が形成されていない前記基板上に当該第1電極を平面視で挟むように、所定の大きさからなる絶縁層、補助電極及び電荷注入抑制層がその順に積層した積層構造体を設ける工程と、前記第1電極上に有機EL層を設ける工程と、前記有機EL層上に第2電極を設ける工程とを少なくとも有し、前記第1電極が前記補助電極に接触しない厚さで設けられていることを特徴とする有機発光トランジスタ素子の製造方法。
【請求項13】
前記電荷注入抑制層を形成する工程において、前記電荷注入抑制層の形成材料が光照射により除去可能になる感光性材料であり、前記絶縁層及び前記補助電極の一方又は両方が前記感光性材料の露光波長を透過しない材料からなり、当該感光性材料を前記補助電極を覆うように前記第1電極上に設けた後に前記基板側から露光して前記第1電極上に設けられた感光性材料のみを除去して電荷注入抑制層を形成することを特徴とする請求項11又は12に記載の有機発光トランジスタ素子の製造方法。
【請求項14】
前記有機EL層形成工程において、前記有機EL層をマスク蒸着法又はインクジェット法等のパターニング法により形成することを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の有機発光トランジスタ素子の製造方法。
【請求項15】
前記第1電極上又は当該第1電極が形成されていない基板上に所定の大きさからなる絶縁層を設ける工程前に、前記第1電極上に前記電荷注入層と同じ材料又は異なる材料からなる電荷注入層を予め設ける工程を有することを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の有機発光トランジスタ素子の製造方法。
【請求項16】
基板と、当該基板上に設けられた第1電極と、当該第1電極上に所定の大きさからなる絶縁層、補助電極及び電荷注入抑制層がその順に設けられた積層構造体と、当該積層構造体が設けられていない前記第1電極上に少なくとも設けられた有機半導体層と、当該有機半導体層上に設けられた第2電極とを少なくとも有することを特徴とする有機トランジスタ素子。
【請求項17】
基板と、当該基板上に所定のパターンで設けられた第1電極と、当該第1電極が形成されていない前記基板上に当該第1電極を平面視で挟むように、所定の大きさからなる絶縁層、補助電極及び電荷注入抑制層がその順に設けられた積層構造体と、前記第1電極上に少なくとも設けられた有機半導体層と、当該有機半導体層上に設けられた第2電極とを少なくとも有し、前記第1電極が前記補助電極に接触しない厚さで設けられていることを特徴とする有機トランジスタ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−200746(P2007−200746A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18689(P2006−18689)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】