有機発光素子、これを含む照明装置、およびこれを備える有機発光ディスプレイ装置
【課題】光抽出効率を高めた有機発光素子、これを含む照明装置、およびこれを備える有機発光ディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】基板と、基板上に規則的にパターニングされた第1電極層と、前記第1電極層上に配置され、有機層よりも屈折率が小さい導電性物質を含む低屈折導電層と、前記低屈折導電層上に配置される有機層と、前記有機層上に形成される第2電極層と、を備える有機発光素子。
【解決手段】基板と、基板上に規則的にパターニングされた第1電極層と、前記第1電極層上に配置され、有機層よりも屈折率が小さい導電性物質を含む低屈折導電層と、前記低屈折導電層上に配置される有機層と、前記有機層上に形成される第2電極層と、を備える有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子、これを含む照明装置、およびこれを備える有機発光ディスプレイ装置に関し、さらに詳細には、光抽出効率を高めた有機発光素子、これを含む照明装置、およびこれを備える有機発光ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、互いに対向する電極間に有機発光層を配置させて、一の側電極から注入された電子と他の側電極から注入された正孔とが有機発光層で再結合し、この際の再結合を通じて発光層の発光分子が励起された後、基底状態に戻りながら放出されるエネルギーを光として発光させる発光素子である。
【0003】
有機発光素子の発光層で発光される光は、一般的に特定の方向性を持たずに放出され、統計的に均一な各分布をなす任意の方向に放出される特性を有する。このため、有機発光素子の発光層内で生成された総光子数に対して、消費されずに観測者に到達する光子数の比率、すなわち、外部光抽出効率(Outcoupling Efficiency;ηout)は、有機発光素子を構成する各層の屈折率の値によって変わりうるが、通常15〜20%未満程度にしか達し得ない。
【0004】
有機発光素子の外部光抽出効率は、全般的な外部量子効率(External Quantum Efficiency:EQE)および電力効率を制限し、EQEや電力効率は、有機発光素子の全体的な電力消費量を決定して有機発光素子の寿命に大きい影響を与える要因であるため、これを増大させるために様々な研究がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国公開特許第2008/0238310号明細書
【特許文献2】米国公開特許第2008/0265757号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記のような問題点およびその他の問題点を解決するために、外部光抽出効率が向上した有機発光素子、これを含む照明装置、およびこれを備える有機発光ディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板と、前記基板上に規則的にパターニングされた第1電極層と、前記第1電極層上に配置され、有機層よりも屈折率が小さい導電性物質を含む低屈折導電層と、前記低屈折導電層上に配置された有機層と、前記有機層上に形成された第2電極層と、を備える有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の有機発光素子によれば、素子能動部に電気的な不活性領域がないため、不活性領域の存在による素子の寿命減少の要因がない状態で光抽出効率を向上させることができ、また、これに比例して電力効率の向上をそのまま具現できる。このような光抽出効率および電力効率向上は、全般的な有機発光素子の寿命向上をもたらす。また、本発明の一実施形態による有機発光素子は、波長依存性がないか、または非常に少ない光抽出効率の向上をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態による有機発光素子を示す断面概略図である。
【図2】基板上に第1電極層がパターニングされたパターン構造の平面概略図およびパターン構造の断面概略図である。
【図3】本実施形態による有機発光素子の発光状態を光線追跡法により模式的に示す断面模式図である。
【図4】本実施形態による有機発光素子のEQEの上昇の様子を示す図面である。
【図5】本実施形態による有機発光素子の電力効率の上昇の様子を示す図面である。
【図6】本発明の他の実施形態による有機発光素子を示す断面概略図である。
【図7】第1電極層のテーパー角およびエッチング比率と有機発光素子の光抽出効率との関係を示す図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態による有機発光素子を示す断面概略図である。
【図9】本実施形態による有機発光素子のEQEの上昇の様子を示す図である。
【図10】本実施形態による有機発光素子の電力効率の上昇の様子を示す図である。
【図11】基板と同じ屈折率を有するマイクロレンズアレイ(MLA)を備えた有機発光素子の場合の、基板屈折率と光抽出効率との関係を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付した図面に図示された本発明の望ましい実施形態を参照して、本発明の技術的思想を詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態による有機発光素子を概略的に図示した断面概略図である。
【0012】
図1を参照すれば、本実施形態による有機発光素子100は、基板110、第1電極層120、低屈折導電層130、有機層140、および第2電極層150を備える。
【0013】
基板110は、SiO2を主成分とするガラス基板、プラスチック基板など多様な材質の基板を使用することができる。本発明の有機発光素子100は、第2電極層150側に光が放出される前面発光、基板110側に光が放出される背面発光、または両面発光のいかなる場合にも適用できるが、本実施形態では基板110側に光が放出される背面発光素子を基準に説明する。この場合、透明な基板110を使用することが好ましい。
【0014】
一方、本実施形態では、有機発光素子100の光抽出効率を向上させるための透明な基板110には、通常多く用いられるソーダライム基板を使用している。
【0015】
基板110上に、第1電極層120が規則的にパターニングされて配置される。本実施形態では、第1電極層110は透明電極の一種であって、屈折率が約1.8であるITO(Indium Tin Oxide)を使用したが、本発明はこれに限定されないということは言うまでもない。
【0016】
図2は、基板110上に第1電極層120がパターニングされたパターン構造の平面概略図とパターンの断面を示す断面概略図である。
【0017】
図2を参照すれば、第1電極層120は、基板110上に複数の開口パターンAが規則的に繰り返し形成され、所定の厚さD1を備えたグリッドタイプのパターンに形成されている。
【0018】
これらの第1電極層120のパターンの周期的間隔は、好ましくは光の波長より大きく数μmサイズに形成されて、可視光領域での光の波長依存性を低減させる。このように、数μmサイズの第1電極層110のパターンは、一般的なフォトリソグラフィ工程を利用して容易にエッチングして形成できるという利点がある。
【0019】
一方、図2には、第1電極層120のパターンである矩形の開口Aが規則的に配列されているが、これは一例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、規則的なパターンの開口Aは、矩形以外の任意の形状にしてもよく、サイズや繰り返しの周期もパターンの全体的な均一性を損なわない範囲で、ある程度の変形が可能である。
【0020】
一方、図2には、第1電極層120の開口が完全にエッチングされて基板110の表面が表れるようにパターニングされているが、本発明はこれに限定されるものではない。また、第1電極層120のパターン端部を、基板110の表面に所定のテーパー角(θ)で形成することによって、光抽出効率を向上させることができる。これらについての詳細な説明は、後述する。
【0021】
第1電極層120の洗浄およびプラズマクリーニングを経た後、第1電極層120および開口された基板110上に、有機層140より屈折率が小さい導電性物質を含む低屈折導電層130を形成する。
【0022】
低屈折導電層130は、好ましくはPEDOT:PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート))、ポリアニリン、カーボンナノチューブ、およびグラフェンからなる群より選択される少なくとも1種の物質を、スピンコーティングなど多様な方法を用いて形成されうる。
【0023】
かかる低屈折導電層130は、導電率および透明性に優れ、屈折率が有機層140より小さく、かつ隣接する有機層140への電荷注入が容易であることが好ましい。
【0024】
本実施形態では、低屈折導電層130に、導電性高分子であるPEDOT:PSSの高導電グレードであるドイツのHC Starck社製のPH500溶液に、ジメチルスルホキシド(DMSO)を5%の体積比で混合し、スピンコーティング法で塗布した。この場合、低屈折導電層130の導電率は、200〜500S/cm程度であり、約50nm厚さのフィルムで、数百Ω/sqほどの面抵抗が実現できるということが知られており、正孔輸送型有機層への正孔注入もよく行われると知られている。低屈折導電層 130の屈折率は、可視光領域で好ましくは1.3〜1.5ほどであって、有機層140の屈折率である1.7〜1.8より小さく具現される。
【0025】
低屈折導電層130上に有機層140が形成される。図2には有機層140が単一の層で図示されているが、実際には、有機層140はいろいろな物質が用いられる複層構造であってもよく、無機物質層をさらに備えてもよい。これらの有機層140は、有機低分子または有機高分子から形成される。
【0026】
有機低分子を用いる場合、有機層140は、通常複層構造で形成される。該複層構造は、正孔注入層(HIL:Hole Injection Layer)(図示せず)、正孔輸送層(HTL:Hole Transport Layer)(図示せず)、発光層(EML:Emitting Layer)、電子輸送層(ETL:Electron Transport Layer)(図示せず)、電子注入層(EIL:Electron Injection Layer)(図示せず)のうち、発光層を含む一つ以上の層を含む積層構造で形成され、使用可能な有機材料も、例えば、銅フタロシアニン(CuPc)、N,N−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)、トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)などをはじめとして、多様に適用できる。有機高分子の場合、有機層140からアノード電極側に通常正孔輸送層(HTL)(図示せず)がさらに備えられた構造を有することができるが、本実施形態では、アノード層の上部に塗布された低屈折率導電体であるPEDOT:PSS層 130がその役割を兼ねることができる。すなわち、正孔注入層として前記のPEDOT:PSSを使用し、発光層としてPPV(Poly−Phenylene vinylene)系およびポリフルオレン系などの有機高分子を使用できる。本実施形態では、有機層140が、標準構造として多く使われるNPB(厚さ 50nm)およびAlq3(厚さ 50nm)で構成され、この場合、NPBがホール輸送層として、Alq3が電子輸送層および発光層として作用する。
【0027】
有機層140上に第2電極層150が形成される。第2電極層150は、前面発光型素子の場合には透明電極で、背面発光型素子の場合には反射型電極で形成されうる。第2電極層150が反射型電極で形成される場合には、好ましくはLi、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Mg、またはこれらの化合物から形成される。本実施形態では、第2電極層150はLiF(厚さ 1nm)/Al(厚さ 100nm)で構成されている。
【0028】
図3は、本実施形態による有機発光素子の発光状態を光線追跡法により模式的に図示した断面模式図である。本実施形態で、有機層140はNPB(厚さ 50nm)とAlq3(厚さ 50nm)とで構成されているが、二つの物質は屈折率がほぼ同一であって、NPBとAlq3との界面での屈折は無視することができ、したがって、便宜上、光学的には一つの物質からなると見なすことができる。
【0029】
図3を参照すれば、本実施形態による有機発光素子100の有機発光層(発光物質:Alq3)140から発光された光のうち、一般的な構造では、ウェーブガイドモードになるほど十分に水平な角度で発光される光 L1、L2、L3が、どのように発光モードに変化するかが分かる。図3で分かるように、有機層140の屈折率が低屈折導電層130の屈折率より大きいので、光L1、L2、L3が有機層140に沿ってガイドされている途中で、構造物に合って反射されつつ構造物の表面に垂直な方向に角度が変わり、その結果、発光モードに転換される。
【0030】
図4は、本実施形態による有機発光素子のEQEの上昇の様子を示す図面(グラフ)であり、図5は、本実施形態による有機発光素子の電力効率の上昇の様子を示す図面(グラフ)である。
【0031】
本実施形態に適用された有機発光素子は、第1電極層120としてITOを使用し、ITOの開口パターンAは、3μm×3μmの矩形と繰り返し周期6μmとを有し、低屈折導電層130としては、DMSOが5%(体積比基準)添加されたPH500が使用された。この際、図4および図5を参照すれば、ITOがパターンを有していない有機発光素子と比べて、本実施形態による有機発光素子は、EQEおよび電力効率が約1.25倍向上した。この実験値は、ITOパターン構造のテーパー角(θ)が最適化されていない構造で測定されたものであって、SEM(Scanning Electron Microscope)写真によれば、本実施形態の場合、テーパー角は約20〜30°と測定された。したがって、テーパー角が最適化される場合、さらに高い性能向上が期待され、これについては後述する。
【0032】
一方、光抽出の向上のために、ITO電極上に低屈折率のアレイを配置して使用する米国出願公開特許第2008/0238310A1号明細書の場合、絶縁物質の低屈折アレイをITO電極上に配置することによって、低屈折アレイが配置される領域は、電気的に動作しない電気的に不活性な領域(Inactive area)になる。この場合、同じ有効輝度を具現するための実際の電流密度が高くなるので、電流が単位面積に集中して素子の寿命減少、動作電圧上昇、およびこれによる電力効率の低下などの問題点が発生しうる。しかし、本実施形態による有機発光素子100は、低屈折率である低屈折導電層130が、パターニングされたITO120と有機層140との間に配置されることによって、電気的な不活性領域なしに、低屈折導電層130が形成されたあらゆる領域で光が放出されるという長所を有する。
【0033】
一方、第1電極層120を形成するITOの面抵抗をR(ITO)、低屈折導電層130を形成するPH500の面抵抗をR(PH500)、ITO/PH500全体の面抵抗をR(TOTAL)とすれば、本実施形態によるITOの開口パターン形態および周期を考慮する時、有機発光素子のITO/PH500全体の面抵抗R(TOTAL)は、下記の数式1で表すことができる。
【0034】
【数1】
【0035】
ここで、R(PH500)は50nmの厚さを基準として約50Ω/sqであり、R(ITO)は約10Ω/sq、R(PEDOT)を500Ω/sqとする時、全体の面抵抗R(TOTAL)は約14.8Ω/sqとなり、その増加幅が大きくないことが分かる。したがって、本実施形態による有機発光素子100を使用する照明装置や有機発光ディスプレイ装置を大面積化させる場合にも、IR電圧降下による輝度の減少が、パターニングされていないITOを備える有機発光素子と比較して大きくないため、光抽出効率が向上しつつIRドロップによる輝度の減少も防止することができる。
【0036】
したがって、前述した本発明の実施形態による有機発光素子100は、電気的な不活性領域を小さくして、電力効率および素子の寿命を向上させることができる。また、パターンのサイズや繰り返し周期が、可視光領域の波長より十分に大きいので、波長依存性を低減させて光抽出効率を向上させることができる。
【0037】
図6は、本発明の他の実施形態による有機発光素子を概略的に示す断面概略図である。以下、図6を参照して、前述した実施形態による有機発光素子100との相違点を中心に、本発明の他の実施形態による有機発光素子200を説明する。
【0038】
図6を参照すれば、本実施形態による有機発光素子200は、基板210、第1電極層220、低屈折導電層230、有機層240、および第2電極層250を含む。
【0039】
本実施形態による有機発光素子200は、基板210上に第1電極層220が規則的な形状を持つようにパターニングされる。かかる第1電極層220のパターンは、基板210の上面から第1の厚さ(D1)を有するように形成された第1パターン部P1と、第1パターン部P1の上面から基板210側に第2厚さD2ほどエッチングされた第2パターン部P2とが規則的に配列される。すなわち、前述した実施形態による有機発光素子100では、基板110の表面が表れるように第1電極層110の開口が完全にエッチングされて、第1の厚さD1に対する第2の厚さD2の比(D2/D1)が1である実施形態であったが、本実施形態による有機発光素子200は、第1厚さD1に対する第2厚さD2の比(D2/D1)が1より小さい実施形態である。
【0040】
また、本実施形態による有機発光素子200では、第1電極層220の第2パターン部P2の端部が前記第1パターン部P1の表面と形成するテーパー角(θ)が、好ましくは15°〜90°の間で形成され、さらに好ましくは、20°〜70°の間で形成される。第1厚さD1に対する第2厚さD2の比(D2/D1)が増加するほど、すなわち、エッチング程度が大きいほど光抽出効率を高めるために選択できるテーパー角の範囲は増大する。これを、図7を参照して詳細に説明する。
【0041】
図7は、第1電極層のテーパー角およびエッチング比率と有機発光素子の光抽出効率との関係を示す図面(グラフ)である。
【0042】
図7を参照すれば、第1パターン部P1の第1厚さD1が150nmである場合、第2パターン部P2の第1電極層220をエッチングした厚さD2が大きいほど、すなわち、グラフでG3<G2<G1の順序で有機発光素子の光抽出効率が高くなることが分かる。したがって、光抽出効率の面では、第1電極層220の第2パターン部P2を完全にエッチングすることが有利である。
【0043】
しかし、本実施形態のように、第2パターン部P2の第1電極層220が完全にエッチングされなくても(G2およびG3)、テーパー角(θ)の範囲を調節することによって有効な光抽出効率の範囲を維持することができる。例えば、基準素子(ITOパターンのない通常の構造)の光抽出効率16%よりも、約31%増加した21%以上の優秀な光抽出効率を導出するために、第2パターン部P2の第1電極層220を完全にエッチングしたG1の場合、テーパー角の範囲は好ましくはα1〜α2となり、第2パターン部P2の第1電極層220を、第1パターン部P1に対して2/3エッチングしたG2の場合、テーパー角の範囲は好ましくはβ1〜β2となり、第2パターン部P2の第1電極層220を第1パターン部P1に対して1/3エッチングしたG3の場合、テーパー角の範囲は好ましくはγ1〜γ2となる。すなわち、エッチング程度が大きいほど、光抽出効率を高めるために選択できるテーパー角の範囲は広くなる。
【0044】
したがって、図7のグラフからテーパー角の最適の範囲を決定することによって、光抽出効率を向上させることができるということが分かる。また、第2パターン部P2の第1電極層120を完全にエッチングしなくても、テーパー角の最適の範囲を選択することによって所望の光抽出効率を共に得ることができるということが分かる。
【0045】
これらの第1パターン部P1および第2パターン部P2は、グリッドタイプのパターンなど多様なパターンで形成されうる。そして、第1パターン部P1と第2パターン部P2との間隔を、光の波長より大きく数μmのサイズに形成して、可視光領域での光の波長依存性を低減させる。
【0046】
第1電極層220上には、有機層240より屈折率が小さく導電性を有する物質を含む低屈折導電層230と第2電極層250とを形成する。この低屈折導電層230および第2電極層250の構成については、前述した実施形態と同様であるので、ここでは説明は省略する。
【0047】
前記低屈折導電層は前記第2電極層より仕事関数が大きいことが好ましい。
【0048】
図8は、本発明のさらに他の実施形態による有機発光素子を概略的に示す断面概略図である。以下、図8を参照して、前述した実施形態による有機発光素子100との相違点を中心に、本発明の他の実施形態による有機発光素子300を説明する。
【0049】
図8を参照すれば、本実施形態による有機発光素子300は、基板310、第1電極層320、低屈折導電層330、有機層340、第2電極層350、およびマイクロレンズアレイ(MLA) 360を備える。
【0050】
本実施形態では、基板310の外部表面にMLA 360がさらに備えられる。MLA 360は半球形、ピラミッド型、および逆台形からなる群より選択される少なくとも1種の形態で構成されることが好ましい。これらのMLA 360は、可視光線に透明な酸化物、窒化物、シリコン化合物、および有機高分子からなる群より選択される少なくとも1種の物質を含むことができる。これらのMLA 360は、基板310の上部に形成されるか、または付着され、場合によっては基板310を機械的な方法やエッチング方法を通じて削って形成されてもよい。
【0051】
また、MLA 360は、一定の周期性を有するように形成されることが好ましく、MLA 360のサイズおよび周期性は、好ましくは発光される光の波長より大きく形成することによって、可視光領域での光の波長依存性を低減させる。
【0052】
図9は、本実施形態による有機発光素子のEQEの上昇の様子を示す図(グラフ)であり、図10は、本実施形態による有機発光素子の電力効率の上昇の様子を示す図(グラフ)である。
【0053】
図9を参照すれば、ITOがパターンされていない有機発光素子に比べて、本実施形態のようにITO 320が規則的にパターニングされ、ITO 320上にPEDOT:PSSなどの低屈折導電層330が形成され、基板310の外部にMLA 360が備えられた有機発光素子300は、EQEおよび電力効率が約1.63倍向上することが分かる。この実験値は、ITOパターン構造のテーパー角(θ)が最適化されていない構造で測定されたものであって、前述したように、テーパー角が最適化する場合には、さらに高い性能向上を期待することができる。
【0054】
一方、本実施形態では、有機発光素子300の光抽出効率を向上させるために、最適の範囲の屈折率を有する基板310を使用でき、この際、MLA 360は、基板310と同一または類似した屈折率の材料から形成することができる。
【0055】
図11は、基板と同一の屈折率を有する材料から形成されるMLAを備えた有機発光素子であり、第1電極層320のパターンが25°のテーパー角を有する際の、基板の屈折率と光抽出効率との関係を図示したグラフである。
【0056】
図11を参照すれば、基板360の屈折率が有機層およびITO層の屈折率と類似した値である1.7〜1.9付近である際は、光抽出効率の向上を最大化できるということが分かる。しかし、高い屈折率を有する基板は、コスト面で一般的な基板よりも高いので、基板の選択は、全般的な素子のコストや公正性などを総合的に考慮して決定する必要がある。図11から分かるように、屈折率が1.52ほどである一般的なガラス基板でも、本実施形態の有機発光素子の構造を通じて100%以上(約16%→約36%)の効率向上をもたらすことができる。
【0057】
したがって、本実施形態による有機発光素子、これを含む照明装置および有機発光ディスプレイ装置は、MLAをさらに備えることによって、光抽出効率をさらに効果的に向上させることができる。
【0058】
一方、図面に図示された構成要素は、説明の便宜上、拡大または縮少して表示されているため、図面に図示された構成要素のサイズや形状に本発明が限定されるものではなく、当業者ならば、これより多様な変形および均等な他の実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって定められねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、有機発光素子関連の技術分野に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0060】
100、200、300 有機発光素子、
110、210、310 基板、
120、220、320 第1電極層、
130、230、330 低屈折導電層、
140、240、340 有機層、
150、250、350 第2電極層、
360 マイクロレンズアレイ(MLA)、
L1、L2、L3 光。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子、これを含む照明装置、およびこれを備える有機発光ディスプレイ装置に関し、さらに詳細には、光抽出効率を高めた有機発光素子、これを含む照明装置、およびこれを備える有機発光ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、互いに対向する電極間に有機発光層を配置させて、一の側電極から注入された電子と他の側電極から注入された正孔とが有機発光層で再結合し、この際の再結合を通じて発光層の発光分子が励起された後、基底状態に戻りながら放出されるエネルギーを光として発光させる発光素子である。
【0003】
有機発光素子の発光層で発光される光は、一般的に特定の方向性を持たずに放出され、統計的に均一な各分布をなす任意の方向に放出される特性を有する。このため、有機発光素子の発光層内で生成された総光子数に対して、消費されずに観測者に到達する光子数の比率、すなわち、外部光抽出効率(Outcoupling Efficiency;ηout)は、有機発光素子を構成する各層の屈折率の値によって変わりうるが、通常15〜20%未満程度にしか達し得ない。
【0004】
有機発光素子の外部光抽出効率は、全般的な外部量子効率(External Quantum Efficiency:EQE)および電力効率を制限し、EQEや電力効率は、有機発光素子の全体的な電力消費量を決定して有機発光素子の寿命に大きい影響を与える要因であるため、これを増大させるために様々な研究がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国公開特許第2008/0238310号明細書
【特許文献2】米国公開特許第2008/0265757号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記のような問題点およびその他の問題点を解決するために、外部光抽出効率が向上した有機発光素子、これを含む照明装置、およびこれを備える有機発光ディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板と、前記基板上に規則的にパターニングされた第1電極層と、前記第1電極層上に配置され、有機層よりも屈折率が小さい導電性物質を含む低屈折導電層と、前記低屈折導電層上に配置された有機層と、前記有機層上に形成された第2電極層と、を備える有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の有機発光素子によれば、素子能動部に電気的な不活性領域がないため、不活性領域の存在による素子の寿命減少の要因がない状態で光抽出効率を向上させることができ、また、これに比例して電力効率の向上をそのまま具現できる。このような光抽出効率および電力効率向上は、全般的な有機発光素子の寿命向上をもたらす。また、本発明の一実施形態による有機発光素子は、波長依存性がないか、または非常に少ない光抽出効率の向上をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態による有機発光素子を示す断面概略図である。
【図2】基板上に第1電極層がパターニングされたパターン構造の平面概略図およびパターン構造の断面概略図である。
【図3】本実施形態による有機発光素子の発光状態を光線追跡法により模式的に示す断面模式図である。
【図4】本実施形態による有機発光素子のEQEの上昇の様子を示す図面である。
【図5】本実施形態による有機発光素子の電力効率の上昇の様子を示す図面である。
【図6】本発明の他の実施形態による有機発光素子を示す断面概略図である。
【図7】第1電極層のテーパー角およびエッチング比率と有機発光素子の光抽出効率との関係を示す図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態による有機発光素子を示す断面概略図である。
【図9】本実施形態による有機発光素子のEQEの上昇の様子を示す図である。
【図10】本実施形態による有機発光素子の電力効率の上昇の様子を示す図である。
【図11】基板と同じ屈折率を有するマイクロレンズアレイ(MLA)を備えた有機発光素子の場合の、基板屈折率と光抽出効率との関係を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付した図面に図示された本発明の望ましい実施形態を参照して、本発明の技術的思想を詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態による有機発光素子を概略的に図示した断面概略図である。
【0012】
図1を参照すれば、本実施形態による有機発光素子100は、基板110、第1電極層120、低屈折導電層130、有機層140、および第2電極層150を備える。
【0013】
基板110は、SiO2を主成分とするガラス基板、プラスチック基板など多様な材質の基板を使用することができる。本発明の有機発光素子100は、第2電極層150側に光が放出される前面発光、基板110側に光が放出される背面発光、または両面発光のいかなる場合にも適用できるが、本実施形態では基板110側に光が放出される背面発光素子を基準に説明する。この場合、透明な基板110を使用することが好ましい。
【0014】
一方、本実施形態では、有機発光素子100の光抽出効率を向上させるための透明な基板110には、通常多く用いられるソーダライム基板を使用している。
【0015】
基板110上に、第1電極層120が規則的にパターニングされて配置される。本実施形態では、第1電極層110は透明電極の一種であって、屈折率が約1.8であるITO(Indium Tin Oxide)を使用したが、本発明はこれに限定されないということは言うまでもない。
【0016】
図2は、基板110上に第1電極層120がパターニングされたパターン構造の平面概略図とパターンの断面を示す断面概略図である。
【0017】
図2を参照すれば、第1電極層120は、基板110上に複数の開口パターンAが規則的に繰り返し形成され、所定の厚さD1を備えたグリッドタイプのパターンに形成されている。
【0018】
これらの第1電極層120のパターンの周期的間隔は、好ましくは光の波長より大きく数μmサイズに形成されて、可視光領域での光の波長依存性を低減させる。このように、数μmサイズの第1電極層110のパターンは、一般的なフォトリソグラフィ工程を利用して容易にエッチングして形成できるという利点がある。
【0019】
一方、図2には、第1電極層120のパターンである矩形の開口Aが規則的に配列されているが、これは一例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、規則的なパターンの開口Aは、矩形以外の任意の形状にしてもよく、サイズや繰り返しの周期もパターンの全体的な均一性を損なわない範囲で、ある程度の変形が可能である。
【0020】
一方、図2には、第1電極層120の開口が完全にエッチングされて基板110の表面が表れるようにパターニングされているが、本発明はこれに限定されるものではない。また、第1電極層120のパターン端部を、基板110の表面に所定のテーパー角(θ)で形成することによって、光抽出効率を向上させることができる。これらについての詳細な説明は、後述する。
【0021】
第1電極層120の洗浄およびプラズマクリーニングを経た後、第1電極層120および開口された基板110上に、有機層140より屈折率が小さい導電性物質を含む低屈折導電層130を形成する。
【0022】
低屈折導電層130は、好ましくはPEDOT:PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート))、ポリアニリン、カーボンナノチューブ、およびグラフェンからなる群より選択される少なくとも1種の物質を、スピンコーティングなど多様な方法を用いて形成されうる。
【0023】
かかる低屈折導電層130は、導電率および透明性に優れ、屈折率が有機層140より小さく、かつ隣接する有機層140への電荷注入が容易であることが好ましい。
【0024】
本実施形態では、低屈折導電層130に、導電性高分子であるPEDOT:PSSの高導電グレードであるドイツのHC Starck社製のPH500溶液に、ジメチルスルホキシド(DMSO)を5%の体積比で混合し、スピンコーティング法で塗布した。この場合、低屈折導電層130の導電率は、200〜500S/cm程度であり、約50nm厚さのフィルムで、数百Ω/sqほどの面抵抗が実現できるということが知られており、正孔輸送型有機層への正孔注入もよく行われると知られている。低屈折導電層 130の屈折率は、可視光領域で好ましくは1.3〜1.5ほどであって、有機層140の屈折率である1.7〜1.8より小さく具現される。
【0025】
低屈折導電層130上に有機層140が形成される。図2には有機層140が単一の層で図示されているが、実際には、有機層140はいろいろな物質が用いられる複層構造であってもよく、無機物質層をさらに備えてもよい。これらの有機層140は、有機低分子または有機高分子から形成される。
【0026】
有機低分子を用いる場合、有機層140は、通常複層構造で形成される。該複層構造は、正孔注入層(HIL:Hole Injection Layer)(図示せず)、正孔輸送層(HTL:Hole Transport Layer)(図示せず)、発光層(EML:Emitting Layer)、電子輸送層(ETL:Electron Transport Layer)(図示せず)、電子注入層(EIL:Electron Injection Layer)(図示せず)のうち、発光層を含む一つ以上の層を含む積層構造で形成され、使用可能な有機材料も、例えば、銅フタロシアニン(CuPc)、N,N−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)、トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)などをはじめとして、多様に適用できる。有機高分子の場合、有機層140からアノード電極側に通常正孔輸送層(HTL)(図示せず)がさらに備えられた構造を有することができるが、本実施形態では、アノード層の上部に塗布された低屈折率導電体であるPEDOT:PSS層 130がその役割を兼ねることができる。すなわち、正孔注入層として前記のPEDOT:PSSを使用し、発光層としてPPV(Poly−Phenylene vinylene)系およびポリフルオレン系などの有機高分子を使用できる。本実施形態では、有機層140が、標準構造として多く使われるNPB(厚さ 50nm)およびAlq3(厚さ 50nm)で構成され、この場合、NPBがホール輸送層として、Alq3が電子輸送層および発光層として作用する。
【0027】
有機層140上に第2電極層150が形成される。第2電極層150は、前面発光型素子の場合には透明電極で、背面発光型素子の場合には反射型電極で形成されうる。第2電極層150が反射型電極で形成される場合には、好ましくはLi、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Mg、またはこれらの化合物から形成される。本実施形態では、第2電極層150はLiF(厚さ 1nm)/Al(厚さ 100nm)で構成されている。
【0028】
図3は、本実施形態による有機発光素子の発光状態を光線追跡法により模式的に図示した断面模式図である。本実施形態で、有機層140はNPB(厚さ 50nm)とAlq3(厚さ 50nm)とで構成されているが、二つの物質は屈折率がほぼ同一であって、NPBとAlq3との界面での屈折は無視することができ、したがって、便宜上、光学的には一つの物質からなると見なすことができる。
【0029】
図3を参照すれば、本実施形態による有機発光素子100の有機発光層(発光物質:Alq3)140から発光された光のうち、一般的な構造では、ウェーブガイドモードになるほど十分に水平な角度で発光される光 L1、L2、L3が、どのように発光モードに変化するかが分かる。図3で分かるように、有機層140の屈折率が低屈折導電層130の屈折率より大きいので、光L1、L2、L3が有機層140に沿ってガイドされている途中で、構造物に合って反射されつつ構造物の表面に垂直な方向に角度が変わり、その結果、発光モードに転換される。
【0030】
図4は、本実施形態による有機発光素子のEQEの上昇の様子を示す図面(グラフ)であり、図5は、本実施形態による有機発光素子の電力効率の上昇の様子を示す図面(グラフ)である。
【0031】
本実施形態に適用された有機発光素子は、第1電極層120としてITOを使用し、ITOの開口パターンAは、3μm×3μmの矩形と繰り返し周期6μmとを有し、低屈折導電層130としては、DMSOが5%(体積比基準)添加されたPH500が使用された。この際、図4および図5を参照すれば、ITOがパターンを有していない有機発光素子と比べて、本実施形態による有機発光素子は、EQEおよび電力効率が約1.25倍向上した。この実験値は、ITOパターン構造のテーパー角(θ)が最適化されていない構造で測定されたものであって、SEM(Scanning Electron Microscope)写真によれば、本実施形態の場合、テーパー角は約20〜30°と測定された。したがって、テーパー角が最適化される場合、さらに高い性能向上が期待され、これについては後述する。
【0032】
一方、光抽出の向上のために、ITO電極上に低屈折率のアレイを配置して使用する米国出願公開特許第2008/0238310A1号明細書の場合、絶縁物質の低屈折アレイをITO電極上に配置することによって、低屈折アレイが配置される領域は、電気的に動作しない電気的に不活性な領域(Inactive area)になる。この場合、同じ有効輝度を具現するための実際の電流密度が高くなるので、電流が単位面積に集中して素子の寿命減少、動作電圧上昇、およびこれによる電力効率の低下などの問題点が発生しうる。しかし、本実施形態による有機発光素子100は、低屈折率である低屈折導電層130が、パターニングされたITO120と有機層140との間に配置されることによって、電気的な不活性領域なしに、低屈折導電層130が形成されたあらゆる領域で光が放出されるという長所を有する。
【0033】
一方、第1電極層120を形成するITOの面抵抗をR(ITO)、低屈折導電層130を形成するPH500の面抵抗をR(PH500)、ITO/PH500全体の面抵抗をR(TOTAL)とすれば、本実施形態によるITOの開口パターン形態および周期を考慮する時、有機発光素子のITO/PH500全体の面抵抗R(TOTAL)は、下記の数式1で表すことができる。
【0034】
【数1】
【0035】
ここで、R(PH500)は50nmの厚さを基準として約50Ω/sqであり、R(ITO)は約10Ω/sq、R(PEDOT)を500Ω/sqとする時、全体の面抵抗R(TOTAL)は約14.8Ω/sqとなり、その増加幅が大きくないことが分かる。したがって、本実施形態による有機発光素子100を使用する照明装置や有機発光ディスプレイ装置を大面積化させる場合にも、IR電圧降下による輝度の減少が、パターニングされていないITOを備える有機発光素子と比較して大きくないため、光抽出効率が向上しつつIRドロップによる輝度の減少も防止することができる。
【0036】
したがって、前述した本発明の実施形態による有機発光素子100は、電気的な不活性領域を小さくして、電力効率および素子の寿命を向上させることができる。また、パターンのサイズや繰り返し周期が、可視光領域の波長より十分に大きいので、波長依存性を低減させて光抽出効率を向上させることができる。
【0037】
図6は、本発明の他の実施形態による有機発光素子を概略的に示す断面概略図である。以下、図6を参照して、前述した実施形態による有機発光素子100との相違点を中心に、本発明の他の実施形態による有機発光素子200を説明する。
【0038】
図6を参照すれば、本実施形態による有機発光素子200は、基板210、第1電極層220、低屈折導電層230、有機層240、および第2電極層250を含む。
【0039】
本実施形態による有機発光素子200は、基板210上に第1電極層220が規則的な形状を持つようにパターニングされる。かかる第1電極層220のパターンは、基板210の上面から第1の厚さ(D1)を有するように形成された第1パターン部P1と、第1パターン部P1の上面から基板210側に第2厚さD2ほどエッチングされた第2パターン部P2とが規則的に配列される。すなわち、前述した実施形態による有機発光素子100では、基板110の表面が表れるように第1電極層110の開口が完全にエッチングされて、第1の厚さD1に対する第2の厚さD2の比(D2/D1)が1である実施形態であったが、本実施形態による有機発光素子200は、第1厚さD1に対する第2厚さD2の比(D2/D1)が1より小さい実施形態である。
【0040】
また、本実施形態による有機発光素子200では、第1電極層220の第2パターン部P2の端部が前記第1パターン部P1の表面と形成するテーパー角(θ)が、好ましくは15°〜90°の間で形成され、さらに好ましくは、20°〜70°の間で形成される。第1厚さD1に対する第2厚さD2の比(D2/D1)が増加するほど、すなわち、エッチング程度が大きいほど光抽出効率を高めるために選択できるテーパー角の範囲は増大する。これを、図7を参照して詳細に説明する。
【0041】
図7は、第1電極層のテーパー角およびエッチング比率と有機発光素子の光抽出効率との関係を示す図面(グラフ)である。
【0042】
図7を参照すれば、第1パターン部P1の第1厚さD1が150nmである場合、第2パターン部P2の第1電極層220をエッチングした厚さD2が大きいほど、すなわち、グラフでG3<G2<G1の順序で有機発光素子の光抽出効率が高くなることが分かる。したがって、光抽出効率の面では、第1電極層220の第2パターン部P2を完全にエッチングすることが有利である。
【0043】
しかし、本実施形態のように、第2パターン部P2の第1電極層220が完全にエッチングされなくても(G2およびG3)、テーパー角(θ)の範囲を調節することによって有効な光抽出効率の範囲を維持することができる。例えば、基準素子(ITOパターンのない通常の構造)の光抽出効率16%よりも、約31%増加した21%以上の優秀な光抽出効率を導出するために、第2パターン部P2の第1電極層220を完全にエッチングしたG1の場合、テーパー角の範囲は好ましくはα1〜α2となり、第2パターン部P2の第1電極層220を、第1パターン部P1に対して2/3エッチングしたG2の場合、テーパー角の範囲は好ましくはβ1〜β2となり、第2パターン部P2の第1電極層220を第1パターン部P1に対して1/3エッチングしたG3の場合、テーパー角の範囲は好ましくはγ1〜γ2となる。すなわち、エッチング程度が大きいほど、光抽出効率を高めるために選択できるテーパー角の範囲は広くなる。
【0044】
したがって、図7のグラフからテーパー角の最適の範囲を決定することによって、光抽出効率を向上させることができるということが分かる。また、第2パターン部P2の第1電極層120を完全にエッチングしなくても、テーパー角の最適の範囲を選択することによって所望の光抽出効率を共に得ることができるということが分かる。
【0045】
これらの第1パターン部P1および第2パターン部P2は、グリッドタイプのパターンなど多様なパターンで形成されうる。そして、第1パターン部P1と第2パターン部P2との間隔を、光の波長より大きく数μmのサイズに形成して、可視光領域での光の波長依存性を低減させる。
【0046】
第1電極層220上には、有機層240より屈折率が小さく導電性を有する物質を含む低屈折導電層230と第2電極層250とを形成する。この低屈折導電層230および第2電極層250の構成については、前述した実施形態と同様であるので、ここでは説明は省略する。
【0047】
前記低屈折導電層は前記第2電極層より仕事関数が大きいことが好ましい。
【0048】
図8は、本発明のさらに他の実施形態による有機発光素子を概略的に示す断面概略図である。以下、図8を参照して、前述した実施形態による有機発光素子100との相違点を中心に、本発明の他の実施形態による有機発光素子300を説明する。
【0049】
図8を参照すれば、本実施形態による有機発光素子300は、基板310、第1電極層320、低屈折導電層330、有機層340、第2電極層350、およびマイクロレンズアレイ(MLA) 360を備える。
【0050】
本実施形態では、基板310の外部表面にMLA 360がさらに備えられる。MLA 360は半球形、ピラミッド型、および逆台形からなる群より選択される少なくとも1種の形態で構成されることが好ましい。これらのMLA 360は、可視光線に透明な酸化物、窒化物、シリコン化合物、および有機高分子からなる群より選択される少なくとも1種の物質を含むことができる。これらのMLA 360は、基板310の上部に形成されるか、または付着され、場合によっては基板310を機械的な方法やエッチング方法を通じて削って形成されてもよい。
【0051】
また、MLA 360は、一定の周期性を有するように形成されることが好ましく、MLA 360のサイズおよび周期性は、好ましくは発光される光の波長より大きく形成することによって、可視光領域での光の波長依存性を低減させる。
【0052】
図9は、本実施形態による有機発光素子のEQEの上昇の様子を示す図(グラフ)であり、図10は、本実施形態による有機発光素子の電力効率の上昇の様子を示す図(グラフ)である。
【0053】
図9を参照すれば、ITOがパターンされていない有機発光素子に比べて、本実施形態のようにITO 320が規則的にパターニングされ、ITO 320上にPEDOT:PSSなどの低屈折導電層330が形成され、基板310の外部にMLA 360が備えられた有機発光素子300は、EQEおよび電力効率が約1.63倍向上することが分かる。この実験値は、ITOパターン構造のテーパー角(θ)が最適化されていない構造で測定されたものであって、前述したように、テーパー角が最適化する場合には、さらに高い性能向上を期待することができる。
【0054】
一方、本実施形態では、有機発光素子300の光抽出効率を向上させるために、最適の範囲の屈折率を有する基板310を使用でき、この際、MLA 360は、基板310と同一または類似した屈折率の材料から形成することができる。
【0055】
図11は、基板と同一の屈折率を有する材料から形成されるMLAを備えた有機発光素子であり、第1電極層320のパターンが25°のテーパー角を有する際の、基板の屈折率と光抽出効率との関係を図示したグラフである。
【0056】
図11を参照すれば、基板360の屈折率が有機層およびITO層の屈折率と類似した値である1.7〜1.9付近である際は、光抽出効率の向上を最大化できるということが分かる。しかし、高い屈折率を有する基板は、コスト面で一般的な基板よりも高いので、基板の選択は、全般的な素子のコストや公正性などを総合的に考慮して決定する必要がある。図11から分かるように、屈折率が1.52ほどである一般的なガラス基板でも、本実施形態の有機発光素子の構造を通じて100%以上(約16%→約36%)の効率向上をもたらすことができる。
【0057】
したがって、本実施形態による有機発光素子、これを含む照明装置および有機発光ディスプレイ装置は、MLAをさらに備えることによって、光抽出効率をさらに効果的に向上させることができる。
【0058】
一方、図面に図示された構成要素は、説明の便宜上、拡大または縮少して表示されているため、図面に図示された構成要素のサイズや形状に本発明が限定されるものではなく、当業者ならば、これより多様な変形および均等な他の実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって定められねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、有機発光素子関連の技術分野に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0060】
100、200、300 有機発光素子、
110、210、310 基板、
120、220、320 第1電極層、
130、230、330 低屈折導電層、
140、240、340 有機層、
150、250、350 第2電極層、
360 マイクロレンズアレイ(MLA)、
L1、L2、L3 光。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に規則的にパターニングされた第1電極層と、
前記第1電極層上に配置され、有機層よりも屈折率が小さい導電性物質を含む低屈折導電層と、
前記低屈折導電層上に配置される有機層と、
前記有機層上に形成される第2電極層と、
を備える有機発光素子。
【請求項2】
前記第1電極層および第2電極層の少なくとも一方の電極は透明電極である、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記第1電極層のパターンの周期的間隔は、発光される光の波長より大きい、請求項1または2に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記第1電極層のパターン端部と前記基板の表面とが形成するテーパー角が、15°〜90°である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記第1電極層のパターン端部と前記基板の表面とが形成するテーパー角が、20°〜70°である、請求項4に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記第1電極層のパターンは、前記基板の上面から第1厚さD1を有するように形成された第1パターン部と、前記第1パターン部の上面から前記基板側に第2厚さD2ほどエッチングされた第2パターン部とが規則的に配列される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記第1パターン部と前記第2パターン部との周期的間隔は、発光される光の波長より大きい、請求項6に記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記第2パターン部の端部と前記第1パターン部の表面とが形成するテーパー角が、15°〜90°である、請求項6または7に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記第2パターン部の端部と前記第1パターン部の表面とが形成するテーパー角が、20°〜70°である、請求項8に記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記第1厚さD1に対する第2厚さD2の比が増加するほど前記テーパー角の範囲が増大する、請求項8または9に記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記低屈折導電層は透明である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記低屈折導電層は前記第2電極層より仕事関数が大きい、請求項1〜11のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記低屈折導電層は、PEDOT:PSS、ポリアニリン、カーボンナノチューブ、およびグラフェンからなる群より選択される少なくとも1種の物質を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記基板の外部表面にマイクロレンズアレイがさらに備えられる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項15】
前記マイクロレンズアレイは、半球形、ピラミッド型、および逆台形からなる群より選択される少なくとも1種の形態で構成される、請求項14に記載の有機発光素子。
【請求項16】
前記マイクロレンズアレイは、周期性を有する請求項14または15に記載の有機発光素子。
【請求項17】
前記マイクロレンズアレイのサイズおよび周期性は、発光される光の波長より大きい請求項14に記載の有機発光素子。
【請求項18】
前記マイクロレンズアレイは、可視光線に透明な酸化物、窒化物、シリコン化合物、および有機高分子からなる群より選択される少なくとも1種の物質を含む、請求項14に記載の有機発光素子。
【請求項19】
前記マイクロレンズアレイは、前記基板と同一の屈折率を有する材料で形成される、請求項14〜18のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項20】
前記基板は、ソーダライム基板より屈折率が大きい、請求項14〜19のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項21】
前記基板の屈折率は1.5〜2.4である、請求項20に記載の有機発光素子。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の有機発光素子を含む照明装置。
【請求項23】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の有機発光素子を含む有機発光ディスプレイ装置。
【請求項1】
基板と、
前記基板上に規則的にパターニングされた第1電極層と、
前記第1電極層上に配置され、有機層よりも屈折率が小さい導電性物質を含む低屈折導電層と、
前記低屈折導電層上に配置される有機層と、
前記有機層上に形成される第2電極層と、
を備える有機発光素子。
【請求項2】
前記第1電極層および第2電極層の少なくとも一方の電極は透明電極である、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記第1電極層のパターンの周期的間隔は、発光される光の波長より大きい、請求項1または2に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記第1電極層のパターン端部と前記基板の表面とが形成するテーパー角が、15°〜90°である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記第1電極層のパターン端部と前記基板の表面とが形成するテーパー角が、20°〜70°である、請求項4に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記第1電極層のパターンは、前記基板の上面から第1厚さD1を有するように形成された第1パターン部と、前記第1パターン部の上面から前記基板側に第2厚さD2ほどエッチングされた第2パターン部とが規則的に配列される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記第1パターン部と前記第2パターン部との周期的間隔は、発光される光の波長より大きい、請求項6に記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記第2パターン部の端部と前記第1パターン部の表面とが形成するテーパー角が、15°〜90°である、請求項6または7に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記第2パターン部の端部と前記第1パターン部の表面とが形成するテーパー角が、20°〜70°である、請求項8に記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記第1厚さD1に対する第2厚さD2の比が増加するほど前記テーパー角の範囲が増大する、請求項8または9に記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記低屈折導電層は透明である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記低屈折導電層は前記第2電極層より仕事関数が大きい、請求項1〜11のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記低屈折導電層は、PEDOT:PSS、ポリアニリン、カーボンナノチューブ、およびグラフェンからなる群より選択される少なくとも1種の物質を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記基板の外部表面にマイクロレンズアレイがさらに備えられる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項15】
前記マイクロレンズアレイは、半球形、ピラミッド型、および逆台形からなる群より選択される少なくとも1種の形態で構成される、請求項14に記載の有機発光素子。
【請求項16】
前記マイクロレンズアレイは、周期性を有する請求項14または15に記載の有機発光素子。
【請求項17】
前記マイクロレンズアレイのサイズおよび周期性は、発光される光の波長より大きい請求項14に記載の有機発光素子。
【請求項18】
前記マイクロレンズアレイは、可視光線に透明な酸化物、窒化物、シリコン化合物、および有機高分子からなる群より選択される少なくとも1種の物質を含む、請求項14に記載の有機発光素子。
【請求項19】
前記マイクロレンズアレイは、前記基板と同一の屈折率を有する材料で形成される、請求項14〜18のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項20】
前記基板は、ソーダライム基板より屈折率が大きい、請求項14〜19のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項21】
前記基板の屈折率は1.5〜2.4である、請求項20に記載の有機発光素子。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の有機発光素子を含む照明装置。
【請求項23】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の有機発光素子を含む有機発光ディスプレイ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−113973(P2011−113973A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256914(P2010−256914)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]