説明

有機発光素子、発光装置、画像形成装置、表示装置および撮像装置

【課題】 高効率及び低電圧駆動を実現する有機発光素子を提供する。
【解決手段】 陰極と、陰極と接する電子輸送層と、発光層と、陽極と、を有する有機発光素子であって、陰極がアルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物のうち少なくとも一つと銀金属とを含み、電子輸送層は特定のキサントン化合物を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機発光素子、およびその有機発光素子を用いた発光装置、画像形成装置、表示装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は陽極と陰極とそれら両電極間に配置される有機発光材料を含む単層もしくは多層の有機化合物層を有する素子である。有機発光素子において、有機発光材料を含む層(以下、発光層という)で発生した光は、陽極もしくは陰極のうち一方の電極から出射される。特許文献1では、陰極から光が出射される構成であり、この陰極として電子注入性の向上を目的としてアルカリ金属を含有する合金を用いた半透過金属膜が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−320763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような陰極を用いても、陰極と接する有機化合物層(以下、電子輸送層という)を構成する材料によっては、電子注入性は十分に得られなかった。
【0005】
本発明の目的は、発光効率が高く、駆動電圧の低い有機発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、陰極と、前記陰極と接する電子輸送層と、発光層と、陽極と、を有する有機発光素子であって、前記陰極が、アルカリ金属とアルカリ金属化合物とアルカリ土類金属とアルカリ土類金属化合物のうち少なくとも一つと、銀金属と、を含み、前記電子輸送層は下記構造式(1)で示される材料を含むことを特徴とする。
【0007】
【化1】

【0008】
式(1)において、R乃至Rは水素原子または炭素数1乃至4のアルキル基、置換あるいは無置換のフェニル基、置換あるいは無置換のナフチル基、置換あるいは無置換のフェナントリル基、置換あるいは無置換のフルオレニル基、置換あるいは無置換のトリフェニレニル基、置換あるいは無置換のクリセニル基、置換あるいは無置換のジベンゾフラニル基、置換あるいは無置換のジベンゾチエニル基からそれぞれ独立に選ばれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、陰極から電子注入層への電子注入性が向上するため、発光効率が高く、駆動電圧の低い有機発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1に係る有機発光素子の一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の実施形態2に係る表示装置の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
本発明の有機発光素子は、第一電極(陽極)と、第二電極(陰極)と、両電極の間に配置された、発光層と、陰極に接する電子輸送層と、を有する構成である。
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の有機発光素子について説明する。
【0013】
図1(a)乃至(c)は、本実施形態の有機発光素子の断面模式図である。
図1(a)の有機発光素子10は、基板1上に、陽極2、発光層3、電子輸送層4、陰極5がこの順に設けられて構成されている。有機発光素子10は、発光層3が正孔注入輸送性能、電子注入輸送性能及び発光性の性能を全て有している場合に有用である。また、有機発光素子10は、発光層3に、正孔注入輸送性材料、電子注入輸送性材料及び発光材料が混合されている場合にも有用である。
【0014】
図1(b)の有機発光素子20は、基板1上に、陽極2、正孔輸送層6、発光層3、電子輸送層4、陰極5がこの順に設けられて構成されている。有機発光素子20は、正孔キャリア輸送の機能を有する層と発光の機能を有する層を分離したものであり、正孔注入輸送性、電子注入輸送性、発光性の各特性を有した化合物と適時組み合わせて使用することができる。このため極めて材料選択の自由度が増すと共に、中央の発光層3に各電荷あるいは励起子を有効に閉じこめて、発光効率の向上を図ることも可能になる。
【0015】
図1(c)の有機発光素子30は、図1(b)の有機発光素子20において、陽極2と正孔輸送層6との間に正孔注入層7が挿入された構成である。正孔注入層7を設けることにより、陽極2と正孔輸送層6との密着性や正孔注入性が改善されるので、低電圧化に効果的である。
【0016】
ただし、図1に示される有機発光素子10,20,30はあくまでごく基本的な素子構成であり、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、電極と有機化合物層との界面に絶縁性層、接着層あるいは光干渉層を設ける構成、正孔輸送層をHOMOエネルギー準位が異なる2層以上積層する構成等の多様な層構成をとることができる。
【0017】
本発明において、陰極5は、アルカリ金属とアルカリ金属化合物とアルカリ土類金属とアルカリ土類金属化合物のうち少なくとも一つと、銀金属(Ag)と、を含んでいる。さらに、陰極5に接する電子輸送層4は下記構造式(1)で示される化合物を含んでいる。
【0018】
【化2】

【0019】
式(1)において、R乃至Rは水素原子または炭素数1乃至4のアルキル基、置換あるいは無置換のフェニル基、置換あるいは無置換のナフチル基、置換あるいは無置換のフェナントリル基、置換あるいは無置換のフルオレニル基、置換あるいは無置換のトリフェニレニル基、置換あるいは無置換のクリセニル基、置換あるいは無置換のジベンゾフラニル基、置換あるいは無置換のジベンゾチエニル基からそれぞれ独立に選ばれる。
【0020】
炭素数1乃至4のアルキル基は、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリブチル基、イソブチル基、ターシャリブチル基である。
【0021】
フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基が有しても良い置換基を以下に示す。
【0022】
まずメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリブチル基、イソブチル基、ターシャリブチル基である。
【0023】
またフェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、トリイソプロピルフェニル基、ターシャリブチルフェニル基、ジターシャリブチルフェニル基、ナフチルフェニル基、フェナントリルフェニル基、フルオレニルフェニル基、トリフェニレニルフェニル基、クリセニルフェニル基、ジベンゾフラニルフェニル基、ジベンゾチエニルフェニル基、9,9’−スピロビ[フルオレン]−イルフェニル基である。
【0024】
またビフェニル基、ジターシャリブチルビフェニル基、ナフチルビフェニル基、フェナントリルビフェニル基、フルオレニルビフェニル基、トリフェニレニルビフェニル基、クリセニルビフェニル基、ジベンゾフラニルビフェニル基、ジベンゾチエニルビフェニル基である。
【0025】
またナフチル基、ジターシャリブチルナフチル基、フェニルナフチル基、ビフェニルナフチル基である。
【0026】
またフェナントリル基、フェニルフェナントリル基、ビフェニルフェナントリル基である。
【0027】
またフルオレニル基、フェニルフルオレニル基、ビフェニルフルオレニル基、9,9’−スピロビ[フルオレン]−イル基である。
【0028】
またクリセニル基、フェニルクリセニル基、ビフェニルクリセニル基である。
【0029】
またトリフェニレニル基、フェニルトリフェニレニル基、ビフェニルトリフェニレニル基である。
【0030】
またジベンゾフラニル基、ターシャリブチルジベンゾフラニル基、ジターシャリブチルジベンゾフラニル基、フェニルジベンゾフラニル基、ビフェニルジベンゾフラニル基、ナフチルジベンゾフラニル基、フェナントリルジベンゾフラニル基、フルオレニルジベンゾフラニル基、クリセニルベンゾフラニル基、トリフェニレニルジベンゾフラニル基である。
【0031】
またジベンゾチエニル基、ターシャリブチルジベンゾチエニル基、ジターシャリブチルジベンゾチエニル基、フェニルジベンゾチエニル基、ビフェニルジベンゾチエニル基、ナフチルジベンゾチエニル基、フェナントリルジベンゾチエニル基、フルオレニルジベンゾチエニル基、クリセニルジベンゾチエニル基、トリフェニレニルジベンゾチエニル基である。
【0032】
(本発明に係る化合物の性質について)
式(1)で表されるキサントン化合物はカルボニル基を有しているため、電子親和性が高い。特に、キサントン化合物を有する層が、陰極、特にアルカリ金属やアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属やアルカリ土類金属化合物などの還元性ドーパントを含む陰極に隣接して配置されることが好ましい。この場合には、還元性ドーパントとカルボニル基が相互作用して、陰極からキサントン化合物を有する層が電子を受け取ることが容易になるからである。
【0033】
本発明の使用されるアルカリ金属は、リチウム金属、ナトリウム金属、カリウム金属、セシウム金属などが挙げられる。また、本発明の使用されるアルカリ金属化合物は、上記アルカリ金属の酸化物、フッ化物、炭酸塩などが挙げられる。すなわち、アルカリ金属の酸化物としては、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化セシウムなどが挙げられる。また、アルカリ金属のフッ化物としては、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウムが挙げられる。また、アルカリ金属の炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどが挙げられる。
【0034】
本発明の使用されるアルカリ土類金属は、ベリリウム金属、マグネシウム金属、カルシウム金属、ストロンチウム金属、バリウム金属などが挙げられる。また、本発明の使用されるアルカリ土類金属化合物は、上記アルカリ土類金属の酸化物、フッ化物、炭酸塩などが挙げられる。すなわち、アルカリ土類金属の酸化物としては、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムなどが挙げられる。また、アルカリ金属のフッ化物としては、フッ化ベリリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウムなどが挙げられる。また、アルカリ土類金属の炭酸塩としては、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。
【0035】
また、キサントン化合物が平面構造の骨格であるため、分子同士が重なりやすく電子移動度が高い。これは陰極から受け取った電子を発光層に輸送するのに適している。
【0036】
これらの性質から、式(1)で表されるキサントン化合物は電子注入及び輸送機能を担うことが適しているといえる。特に、式(1)で表されたキサントン化合物を有する層は、陰極に接する層として使用されることが望ましい。
【0037】
また、キサントン化合物が示す他の特徴として、高いS(一重項最低励起準位)エネルギー、T(三重項最低励起準位)エネルギーが挙げられ、特にTエネルギーが高い。実際に、式(1)においてR乃至Rが水素原子である化合物の希薄トルエン溶液を77Kにおいて燐光スペクトル測定し、0−0バンドからTエネルギーを求めた。その結果、その化合物のTエネルギーは3.0eV(410nm)であり、この値は青色(発光スペクトルの最大ピーク波長が480nm以下)よりも十分エネルギーが高い。従ってキサントン化合物は、青色から赤色の領域(600nm以上620nm以下)の光を発する蛍光発光材料、または燐光発光材料を用いた有機発光素子において、電子と正孔が再結合して生じたエネルギーの吸収を抑えることができる。このため、発光層に隣接する層として有用である。
【0038】
以上のことから、式(1)で表された化合物を有する電子輸送層は、発光層に接することが好ましくその構成に適用することで、良好な電子輸送および発光層への電子注入を行うことができると考えられる。
【0039】
次に本発明に係るキサントン化合物に付加する置換基について説明する。キサントン化合物のように平面性が高い化合物にアルキル基や芳香環基を導入することで、溶媒に対する溶解性や真空蒸着時の昇華性、薄膜状態のアモルファス性を向上させることができる。しかしながら、アルキル基は炭素数が多すぎると昇華性が低下するので、アルキル基の好ましい炭素数は1乃至4である。
【0040】
一方、式(1)で表されるキサントン化合物を燐光発光素子における発光層に隣接する電子輸送層に用いる際には、燐光発光材料より高いTエネルギーを有している必要がある。即ち、燐光発光材料の発光色が青色から赤色の領域(450nm以上620nm以下)の光を発する場合、その燐光発光材料の発光色に対応して本発明に係る化合物(1)のTエネルギーを決めることが重要である。一般にアルキル置換基はTエネルギーに与える影響が小さいのに対して、芳香環置換基は化合物全体のTエネルギーを大きく変化させる。従って、本発明に係るキサントン化合物のTエネルギーを決めるにあたり、一般式(1)におけるR乃至Rのいずれかに結合する芳香環置換基のTエネルギーに注目した。
【0041】
下記表1に主な芳香環の単体でのTエネルギー(波長換算値)を示す。この中で好ましく用いられる芳香環の構造はベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フルオレン、トリフェニレン、クリセン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ピレンである。
【0042】
さらに、式(1)で表されるキサントン化合物の高いTエネルギー特性を活用して、燐光発光材料が青色から緑色の領域(440nm以上530nm以下)の光を発する場合、式(1)のR乃至Rのいずれかに結合する好ましい芳香環の構造は以下のものである。すなわち、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フルオレン、トリフェニレン、クリセン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェンである。
【0043】
また上記芳香環構造の置換基は、本発明に係るキサントン化合物のTエネルギーを大きく低下させない限りさらに置換基を有していても良い。
【0044】
【表1】

【0045】
(具体的な化合物の構造の説明)
以下に、本発明に係るキサントン化合物の構造式を化3乃至5に具体的に示す。本発明ではこの化合物を陰極に接する電子輸送層の材料として用いる。その場合、陰極からの電子注入性を高めるためには陰極と電子親和性の高い部位が多く接することが重要となる。具体的には、式(1)のRおよびRにアリール基が置換する場合はRおよびRは水素原子、フェニル基もしくは炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。また、化合物中にキサントン骨格(式(1)で表されたユニット)が複数存在することが好ましい。また、前述したように電子移動度の観点から直線状の形状が好ましく、その場合分子の末端に式(1)で表されたユニットが存在することが好ましい。これらの化合物は、陰極と接するケトン基の数が多くなり、電子注入性が増すと考えられる。尚、化合物の大きさとユニット数は使用する発光層のエネルギー(SエネルギーおよびTエネルギー)に依って適宜調整することができる。
【0046】
【化3】

【0047】
【化4】

【0048】
【化5】

【0049】
上記化合物において化3で示されたA群は化合物の(長鎖方向の)中心に式(1)で表されたキサントン骨格を有するものである。電子親和性の高いカルボニル構造を有し、且つ左右対称のものは電子分布が均等であり、受給した電子を良好に輸送する特性を有する。逆に非対称のものは成膜時にアモルファス性が高くなり、その結果膜の安定性が向上する特性を有する。
【0050】
化4で示されたB群は化合物の(長鎖方向の)末端に式(1)で表されたキサントン骨格を有するものである。これはカルボニル基と陰極の接する箇所が多くなることから、電子注入性が高くなる特性を有する。
【0051】
化5で示されたC群は中心および末端に式(1)ので表されたキサントン骨格を有するものである。これも、カルボニル基と陰極の接する箇所が多くなることから、電子注入性が高くなる特性を有する。
【0052】
(発光層)
本発明の発光層を構成する発光材料としては蛍光材料でも燐光材料でも良いが、本発明の材料は特に高エネルギーである青蛍光材料、青燐光材料および緑燐光材料に適している。また発光層を構成する材料は2種類であってもいわゆるアシスト材料を含む3種類以上であってもよい。
【0053】
以下に本発明の燐光発光材料として用いられるイリジウム錯体の具体例(化6)とホスト材料(化7)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
【化6】

【0055】
【化7】

【0056】
ここで、本発明の化合物以外にも、必要に応じて従来公知の低分子系及び高分子系の化合物を使用することができる。さらには正孔注入輸送性材料あるいはホスト材料あるいは発光性化合物あるいは電子注入性材料等を一緒に使用することができる。
【0057】
以下にこれらの化合物例を挙げる。
【0058】
正孔注入輸送性材料としては、陽極からの正孔の注入が容易で、注入された正孔を発光層へと輸送することができるように、正孔移動度が高い材料が好ましい。正孔注入輸送性能を有する低分子及び高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられる。なお、これらの正孔注入輸送性材料は正孔輸送層にも使用することができる。
【0059】
主に発光機能に関わる発光材料としては、前述の燐光発光ゲスト材料、もしくはその誘導体以外に以下のものが挙げられる。すなわち、縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、テトラセン誘導体、アントラセン誘導体、ルブレン等)、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、スチルベン誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機ベリリウム錯体、及びポリ(フェニレンビニレン)誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体等の高分子誘導体が挙げられる。
【0060】
電子注入輸送性材料としては、電子移動度が高い材料が好ましい。例えば、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機アルミニウム錯体等が挙げられる。なお、発光層と式(1)で表されるキサントン化合物を有する電子輸送層との間に別の層があってもよく、その別の層に上記の電子注入輸送性材料が用いられていてもよい。
【0061】
なお、正孔移動度が高い、電子移動度が高いとは、移動度が10−5cm/(V・S)以上のことを指す。これらの値は、Time Of Flight(TOF)法で測定することができる。
【0062】
陽極材料としては仕事関数がなるべく大きなものがよい。例えば金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン等の金属単体あるいはこれらを組み合わせた合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物が使用できる。またポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーも使用できる。これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また、陽極は一層で構成されていてもよく、複数の層で構成されていてもよい。
【0063】
陰極材料は銀(Ag)金属と、少なくともアルカリ金属とアルカリ金属化合物とアルカリ土類金属とアルカリ土類金属化合物のうち少なくとも一つを含む。Agは電気伝導性が高くまた反射率も高い特性を有する。アルカリ金属もしくはアルカリ金属化合物もしくはアルカリ土類金属もしくはアルカリ土類金属化合物を含むことで本発明に係るキサントン化合物のカルボニル基と相互作用し、その結果電子注入性が良好となる。特に、陰極は、銀金属と、セシウム金属とセシウム金属化合物とマグネシウム金属とマグネシウム金属化合物のうち少なくとも一つと、を含んでいることが、さらに電子注入性を向上させるため好ましい。
【0064】
本発明で用いる基板としては、特に限定するものではないが、金属製基板、セラミックス製基板等の不透明性基板、ガラス、石英、プラスチックシート等の透明性基板が用いられる。また、基板にカラーフィルター膜、蛍光色変換フィルター膜、誘電体反射膜等を用いて発色光をコントロールする事も可能である。また、基板上に薄膜トランジスタ(TFT)を作成し、それに接続して素子を作成することも可能である。
【0065】
尚、作製した素子に対して、酸素や水分等との接触を防止する目的で保護層あるいは封止層を設けることもできる。保護層としては、ダイヤモンド薄膜、酸化シリコンや酸化アルミニウムなどの金属酸化物、窒化シリコンなどの金属窒化物等の無機材料膜が挙げられる。また、その他に、フッ素樹脂、ポリパラキシレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂等の高分子膜、さらには、光硬化性樹脂等が挙げられる。さらに、無機材料膜や高分子膜はそれぞれ1層であってもよいし、複数の層であってもよいし、さらには、無機材料膜と高分子膜とが積層された多層膜であってよい。また、ガラス、気体不透過性フィルム、金属等をカバーし、適当な封止樹脂や低融点金属材料により素子自体をパッケージングすることもできる。
【0066】
本発明の有機発光素子を構成する有機化合物層は、種々の方法により形成される。一般的には、真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマCVDにより薄膜を形成する。あるいは、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により薄膜を形成する。特に、塗布法で成膜する場合は、適当な結着樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0067】
上記結着樹脂としては、広範囲な結着性樹脂より選択でき、例えば、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの樹脂は、ホモポリマーであってもよいし共重合体ポリマーであってもよい。さらに、これらの樹脂は、一種類を単独で使用してもよいし、複数種類を併用して使用してもよい。一方で、必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加物を併用してもよい。
【0068】
本発明の有機発光素子は、基板側から光を取り出すことができるいわゆるボトムエミッション構造であってもよく、基板側とは反対の側から光を取り出すいわゆるトップエミッション構造であってもよい。また素子に相当する構造が少なくとも一つ積層されている、いわゆるタンデム構造を形成してもよい。
【0069】
(実施形態2)
本発明の有機発光素子は、発光装置や表示装置に用いることができる。本実施形態に係る発光装置や表示装置は、有機発光素子の発光を制御する制御回路をさらに有し、有機発光素子を例えば、パッシブ駆動あるいはアクティブマトリクス駆動で発光させる。アクティブマトリクス駆動の場合、制御回路としてトランジスタやMIM素子などのスイッチング素子を備えている。
【0070】
発光装置としては、照明装置や電子写真方式の画像形成装置の露光光源、液晶表示装置のバックライトなどが挙げられる。照明装置に用いる場合、有機発光素子は1つでもよいし、複数でもよい。電子写真方式の画像形成装置の露光光源には複数の有機発光素子を利用することが好ましい。
【0071】
図2(a)は、本実施形態に係る表示装置の斜視模式図である。本実施形態の表示装置は、有機EL素子を備える画素100を複数有している。そして、複数の画素100はマトリックス状に配置され、表示領域200を形成している。なお、画素とは、1つの発光素子の発光領域に対応した領域を意味している。本実施形態の表示装置では、発光素子は、有機発光素子であり、画素100のそれぞれに1つの色の有機発光素子が配置された表示装置である。有機発光素子の発光色としては、赤色、緑色、青色が挙げられ、そのほかに黄色、シアンでもよい。また、本実施形態の表示装置には、発光色の異なる複数の画素(例えば赤色を発する画素、緑色を発する画素、及び青色を発する画素)からなる画素ユニットが複数配列されている。画素ユニットとは、各画素の混色によって所望の色の発光を可能とする最小の単位を示す。
【0072】
図2(b)には、図2(a)のA−B線における部分断面模式図である。1つの画素は、基板1上に、陽極2と、正孔輸送層6と、発光層3R,3G,3Bと、電子輸送層4と、陰極5と、を備える有機発光素子40を有している。本発明の有機発光素子40は発光層から放射されて陽極2に向かう光を反射する反射面を陽極2に有し、陰極5から光を出す構成であり、いわゆるトップエミッション型の表示装置である。なお、基板1側から光を取り出すボトムエミッション型の表示装置にも本発明の有機発光素子は適用することができる。また、基板1側から、陰極5、電子輸送層4、発光層3R,3G,3B、正孔輸送層6、陽極2の順で備える有機発光素子としてもよい。
【0073】
また、発光層3Rは赤色を発する発光層、発光層3Gは緑色を発する発光層、発光層3Bは青色を発する発光層である。発光層3R,3G,3Bはそれぞれ、赤色、緑色、青色を発する画素(有機発光素子40)に対応してパターン形成されている。なお、正孔輸送層6や電子輸送層4も、図2(b)で図示したように各画素にまたがって共通で配置されずに画素ごとにパターン形成されていてもよい。
【0074】
また、陽極2も、隣の画素(有機発光素子40)の陽極2と分離されて形成されている。そして、正孔輸送層6と電子輸送層4と陰極5は、隣の画素と共通で形成されていてもよいし、画素毎にパターン形成されていてもよい。なお、陽極2と陰極5とが異物によってショートするのを防ぐために、画素(より具体的には、陽極2)間に絶縁層50が設けられている。さらに、陰極5の上には、有機発光素子を水分等から保護するための保護層が設けられている。
【0075】
なお、本実施形態の表示装置は、画素100の有機発光素子40の発光層がパターン形成されていたが、例えば発光層を白色発光層として全画素にわたって形成されていてもよい。その場合、カラーフィルター等を用いてカラー表示するようにしてもよい。
【0076】
この表示装置は、テレビ受像機、パーソナルコンピュータの表示部に用いられる。この他に、本実施形態の表示装置は、デジタルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像装置の表示部や電子ビューファインダに配置されていてもよい。撮像装置は、撮像するための撮像光学系やCMOSセンサなどの撮像素子をさらに有している。
【0077】
また、本実施形態の表示装置は、携帯電話の表示部、携帯ゲーム機の表示部等に配置されていてもよいし、さらには、携帯音楽再生装置の表示部、携帯情報端末(PDA)の表示部、カーナビゲーションシステムの表示部に配置されていてもよい。
【0078】
また、本実施形態の表示装置は、画像形成装置の操作パネル部に配置されてもよい。画像形成装置は、露光光源と、露光光源によって潜像が形成される感光体と、感光体を帯電する帯電手段と、をさらに有している。上述したように、この露光光源を本実施形態の発光装置とすることも可能である。
【0079】
なお、図2(b)の表示装置の製造方法については、後述する実施例で詳細に述べる。
【実施例】
【0080】
[例示化合物A−1の合成]
【0081】
【化8】

【0082】
以下に示す試薬、溶媒を100mLナスフラスコに投入した。
キサントン(東京化成工業株式会社製):5.0g(26mmol)
臭素:16g(102mmol)
ヨウ素:50mg(0.20mmol)
酢酸:20mL
【0083】
この反応溶液を、窒素下、100℃で撹拌しながら5時間加熱還流させた。反応終了後、反応溶液にクロロホルム、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液を加えて臭素の色が消えるまで撹拌した。続いて有機層を分離して飽和炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過を行った。得られたろ液の溶媒を減圧留去して、析出した固体をシリカゲルカラム(トルエン:100%)によって精製し、2−ブロモキサントンを2.9g(収率41%)、2,7−ジブロモキサントンを2.2g得た(収率25%)。
続いて以下に示す試薬、溶媒を100mLナスフラスコに投入した。
2,7−ジブロモキサントン:0.70g(2.0mmol)
4,4,5,5−テトラメチル−2−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボロラン:1.4g(4.8mmol)
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):0.23g(0.20mmol)
トルエン:10mL
エタノール:2mL
2M炭酸ナトリウム水溶液:5mL
【0084】
この反応溶液を、窒素下、撹拌しながら5時間加熱還流させた。反応終了後、有機層を分離して硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過を行った。得られたろ液の溶媒を減圧留去して、析出した固体をシリカゲルカラム(クロロホルム:ヘプタン=1:1)によって精製した。得られた結晶を150℃で真空乾燥後、10−1Pa、300℃の条件下で昇華精製を行い、高純度の例示化合物A−1を得た。
MALDI−TOF MSによりこの化合物のMである580.2を確認した。
【0085】
さらに、H−NMR測定によりこの化合物の構造を確認した。H−NMR(CDCl,500MHz) δ(ppm):8.68(2H,d),8.09(2H,dd),7.84(2H,d),7.80−7.76(4H,m),7.69(2H,dd),7.65(2H,d),7.48(2H,dd),7.40−7.33(4H,m),1.58(12H,s)
【0086】
また例示化合物A−1について、以下の方法でTエネルギーの測定を行った。例示化合物A−1の希薄トルエン溶液(1×10−5M)について、Ar雰囲気下、77K、励起波長350nmにおいて燐光スペクトルの測定を行った。得られた燐光スペクトルの0−0バンド(第一発光ピーク)のピーク波長からTエネルギーを求めると波長換算値で487nmであった。
【0087】
[例示化合物B−1の合成]
【0088】
【化9】

【0089】
以下に示す試薬、溶媒を100mLナスフラスコに投入した。
2−ブロモキサントン:0.55g(2.0mmol)
ボロン酸エステル誘導体1:1.1g(2.4mmol)
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):0.23g(0.20mmol)
トルエン:15mL
エタノール:3mL
2M炭酸ナトリウム水溶液:5mL
【0090】
この反応溶液を、窒素下、撹拌しながら3時間加熱還流させた。反応終了後、析出した固体をろ過し、水、メタノール、アセトンで洗浄した。続いて、得られた固体をクロロベンゼンに加熱溶解し、溶液を熱ろ過することで不溶物を除いた。ろ液の溶媒を減圧留去して、析出した固体をクロロベンゼン/ヘプタン系で再結晶した。得られた結晶を150℃で真空乾燥後、10−1Pa、370℃の条件下で昇華精製を行い、高純度の例示化合物B−1を得た。
【0091】
MALDI−TOF MSによりこの化合物のMである530.1を確認した。
【0092】
[例示化合物B−2の合成]
【0093】
【化10】

【0094】
以下に示す試薬、溶媒を50mLナスフラスコに投入した。
2−ブロモキサントン:1.5g(5.4mmol)
ボロン酸エステル誘導体2:1.0g(2.5mmol)
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):0.29g(0.25mmol)
トルエン:10mL
エタノール:2mL
2M炭酸ナトリウム水溶液:6mL
【0095】
この反応溶液を、窒素下、撹拌しながら12時間加熱還流させた。反応終了後、析出した固体をろ過し、水、メタノール、アセトンで洗浄した。続いて、得られた固体をクロロベンゼンに加熱溶解し、溶液を熱ろ過することで不溶物を除いた。ろ液の溶媒を減圧留去して、析出した固体をクロロベンゼン/ヘプタン系で再結晶した。得られた結晶を150℃で真空乾燥後、10−1Pa、370℃の条件下で昇華精製を行い、高純度の例示化合物B−2を0.44g得た(収率33%)。
【0096】
MALDI−TOF MS(マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析)によりこの化合物のMである542.2を確認した。
【0097】
さらに、H−NMR測定によりこの化合物の構造を確認した。H−NMR(CDCl,500MHz) δ(ppm):8.65(2H,d),8.39(2H,dd),8.08(2H,dd),7.96(2H,bs),7.78−7.74(2H,m),7.74−7.69(4H,m),7.65−7.58(4H,m),7.55(2H,d),7.44−7.39(2H,m)
【0098】
また例示化合物B−2について、以下の方法でTエネルギーの測定を行った。例示化合物B−2の希薄トルエン溶液(1×10−5M)について、Ar雰囲気下、77K、励起波長350nmにおいて燐光スペクトルの測定を行った。得られた燐光スペクトルの0−0バンド(第一発光ピーク)のピーク波長からTエネルギーを求めると波長換算値で443nmであった。
【0099】
[例示化合物C−2の合成]
【0100】
【化11】

【0101】
以下に示す試薬、溶媒を200mLナスフラスコに投入した。
2−ブロモキサントン:5.0g(18mmol)
ビス(ピナコラト)ジボロン:5.5g(22mmol)
[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物:0.74g(0.91mmol)
酢酸カリウム:3.2g(33mmol)
ジオキサン:40mL
【0102】
この反応溶液を、窒素下、撹拌しながら3時間加熱還流させた。反応終了後、析出した塩をろ過によって除いた。得られたろ液の溶媒を減圧留去して、析出した固体をシリカゲルカラム(酢酸エチル:ヘプタン=1:2)によって精製し、中間体2を5.1g得た(収率87%)。
【0103】
続いて合成実施例1における例示化合物A−1の合成で用いられる4,4,5,5−テトラメチル−2−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボロランを中間体2に変更する以外は合成実施例1における例示化合物A−1の合成と同様の方法で例示化合物C−2を得た。
MALDI−TOF MSによりこの化合物のMである584.6を確認した。
【0104】
[実施例1]
図1(c)に示されるトップエミッション構造の有機発光素子を、以下に示す方法で作製した。
スパッタリング法により、支持体であるガラス基板(基板1)上に、アルミニウム合金(AlNd)膜、酸化錫インジウム膜をそれぞれ膜厚100nm、10nmで成膜し、陽極2を形成した。
【0105】
次に、陽極2まで形成された基板を、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄した。次に、当該基板をIPAで煮沸洗浄した後乾燥させた。次に、この基板1の表面に対してUV/オゾン洗浄を施した。
【0106】
次に、真空蒸着法により、陽極2上に、下記に示される化合物H−1を成膜し正孔注入層7を形成した。このとき正孔注入層7の膜厚を160nmとした。
【0107】
【化12】

【0108】
次に、真空蒸着法により、正孔注入層7上に、上記に示される化合物H−2を10nm成膜し正孔輸送層6とした。
【0109】
次に、ホスト(I−3)、ドーパント(Ir−1)を、重量比にして[I−3]:[Ir−1]=9:1となるように共蒸着して発光層3を形成した。このとき発光層3の膜厚を30nmとした。
【0110】
次に、真空蒸着法により、発光層3上に、A−1を30nm成膜し電子輸送層4を形成した。
【0111】
次に、陰極として銀金属と炭酸セシウムを、層中のセシウム濃度が2重量%となるように共蒸着して陰極5を形成した。このとき陰極5の膜厚を10nmとした。
【0112】
最後に、窒素雰囲気下のグローブボックス内において、陰極5まで形成した基板1を、乾燥材を入れたガラスキャップにより封止した。以上により、有機発光素子30を得た。
【0113】
得られた有機発光素子について、電流密度が10mA/cmの電流を印加した時の発光効率及び電圧を評価した。結果を表2に示す。
【0114】
[実施例2]
電子輸送層4として化合物B−1を用いた以外は実施例1と同様に有機発光素子を作製し評価を行った。結果を表2に示す。
【0115】
[実施例3]
電子輸送層4として化合物B−2を用いた以外は実施例1と同様に有機発光素子を作製し評価を行った。結果を表2に示す。
【0116】
[実施例4]
電子輸送層4として化合物C−2を用いた以外は実施例1と同様に有機発光素子を作製し評価を行った。結果を表2に示す。
【0117】
[比較例1]
電子輸送層4としてAlq3を用いた以外は実施例1と同様に有機発光素子を作製し評価を行った。結果を表2に示す。
【0118】
[実施例5]
陰極5として銀金属とマグネシウム金属を重量比で10:1となるように共蒸着して陰極5を形成した以外は実施例3と同様に有機発光素子を作製し評価を行った。結果を表2に示す。
【0119】
【表2】

【0120】
以上のことから、本発明に係るキサントン化合物を用いることで低電圧、高効率駆動できることがわかる。
【0121】
[実施例6]
図2に示される表示装置を、以下に示す方法により作製した。まず基板1上に、低温ポリシリコンからなり有機発光素子の発光を制御するためのTFT回路(不図示)、及びTFT回路を平坦化するための平坦化膜(不図示)を順次形成した。次に、平坦化膜上に、陽極2を所望の位置に設けた。ここでTFT回路は、例えば、(640×3色)×480の画素が対角3.5インチのサイズで二次元的に配列されたものであった。陽極2は、例えば、膜厚50nmの銀合金からなる反射膜と、膜厚20nmの酸化錫インジウム膜とがこの順で積層された電極であった。また各画素に設けられる陽極2は、平坦化膜に形成されたコンタクトホール(不図示)を通じ、TFT回路に接続させた。
【0122】
次に、スピンコーターで塗布することにより、陽極2を含めた基板1上に、アクリル製の樹脂膜を成膜した。このとき樹脂膜の膜厚は1.5μmであった。次に、フォトリソグラフィ法により、陽極2の周辺部に絶縁層50が形成されるように、樹脂膜について所望のパターニングを行った。この際に半径3mmの開口部を設けた。
【0123】
次に、上記基板1を、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄した。次に、基板1をIPAで煮沸洗浄した後乾燥させた。次に、基板1の表面に対してUV/オゾン洗浄を施した。次に、処理した基板1を真空装置に導入した後、後述する有機化合物層及び陰極5を形成することで発光色が三色(R,G,B)のいずれかである有機発光素子を複数備える表示装置を作製した。
【0124】
まず始めに、真空蒸着法により、化合物H−1を成膜し全画素に共通する正孔注入層(不図示)を形成した。このとき正孔注入層の膜厚を70nmとした。次に、シャドーマスクを用いて、青色画素に相当する領域に選択的に化合物H−2を成膜し、正孔輸送層6を形成した。このとき正孔輸送層6の膜厚を10nmとした。次に、下記に示される化合物BH−1及び化合物BD−1を重量比にして[化合物BH−1]:[化合物BD−1]=95:5となるように共蒸着して青色発光層3Bを形成した。このとき青色発光層3Bの膜厚を35nmとした。
【0125】
【化13】

【0126】
次に、シャドーマスクを用いて、緑色画素に相当する領域に選択的にさらに、化合物H−1を成膜し正孔輸送層6とし、その膜厚を調整した。このとき緑色画素に相当する領域に選択的に成膜された薄膜の膜厚は60nmであった。次に、ホスト(I−3)、ドーパント(Ir−3)を重量比にして[I−3]:[Ir−3]=9:1となるように共蒸着して緑色発光層3Gを形成した。このとき、緑色発光層3Gの膜厚を20nmとした。
【0127】
次に、シャドーマスクを用いて、赤色画素に相当する領域に選択的にさらに、化合物H−1を成膜し正孔輸送層6の膜厚を調整した。このとき赤色画素に相当する領域に選択的に成膜された薄膜の膜厚は130nmであった。次に、下記に示される化合物RH−1及び化合物Ir−16を、重量比にして[化合物RH−1]:[Ir−16]=90:10となるように共蒸着して赤色発光層3Rを形成した。このとき赤色発光層3Rの膜厚を30nmとした。
【0128】
【化14】

【0129】
次に、真空蒸着法により、化合物B−2を成膜し全画素に共通する電子輸送層4を形成した。このとき電子輸送層4の膜厚を30nmとした。次に、真空蒸着法により、電子輸送層4上に、銀金属と炭酸セシウムとを、層中の炭酸セシウム濃度が2重量%となるように共蒸着して陰極5を形成した。このとき陰極5の膜厚を13nmとした。次に、スパッタリング法により、陰極5上に、酸化錫インジウムを成膜して保護層60を形成した。このとき保護層60の膜厚を60nmとした。
【0130】
次に、有機発光素子が形成されている基板を、窒素雰囲気下のグローブボックス内において、乾燥材を入れたガラスキャップにより封止した。最後に、ガラスキャップ上には、外光反射防止の目的で、円偏向板(不図示)を設けた。以上により表示装置を得た。
【0131】
得られた表示装置を駆動すると、輝度が高く耐久性の良好な鮮明なフルカラー動画表示が得られた。また、電源容量に限りのあるモバイル機器等の表示装置として、消費電力の観点からも有効であった。
【符号の説明】
【0132】
2 陽極
3 発光層
4 電子輸送層
5 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と、前記陰極と接する電子輸送層と、発光層と、陽極と、を有する有機発光素子であって、
前記陰極が、アルカリ金属とアルカリ金属化合物とアルカリ土類金属とアルカリ土類金属化合物のうち少なくとも一つと、銀金属と、を含み、
前記電子輸送層は下記構造式(1)で示される材料を含むことを特徴とする有機発光素子。
【化1】


式(1)において、R乃至Rは水素原子または炭素数1乃至4のアルキル基、置換あるいは無置換のフェニル基、置換あるいは無置換のナフチル基、置換あるいは無置換のフェナントリル基、置換あるいは無置換のフルオレニル基、置換あるいは無置換のトリフェニレニル基、置換あるいは無置換のクリセニル基、置換あるいは無置換のジベンゾフラニル基、置換あるいは無置換のジベンゾチエニル基からそれぞれ独立に選ばれる。
【請求項2】
前記陰極が、セシウム金属とセシウム金属化合物とマグネシウム金属とマグネシウム金属化合物のうち少なくとも一つと、銀金属と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記式(1)においてR3、が水素原子あるいは炭素数1乃至4のアルキル基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記発光層に含まれる発光材料が燐光発光材料であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の有機発光素子と、前記有機発光素子の発光を制御する制御回路と、を有することを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の発光装置と、前記発光装置によって潜像が形成される感光体と、前記感光体を帯電する帯電手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
異なる色を発する複数の有機発光素子と、前記有機発光素子の発光を制御する制御回路と、を有する表示装置であって、
前記有機発光素子が請求項1乃至4のいずれか1項に記載の有機発光素子であることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
前記請求項7に記載の表示装置と、撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−16728(P2013−16728A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149923(P2011−149923)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】