説明

有機発光素子および有機発光装置

【課題】 発光性能を可能な限り向上させることが可能な有機発光素子を提供する。
【解決手段】 有機EL素子100は、光反射性を有する下部電極層10と光透過性を有する上部電極層30との間に有機層20が設けられた構成を有している。この有機層20は、複数の発光層(青色発光層22,24,緑色発光層26,赤色発光層28)が積層された積層構造を有している。下部電極層10と各発光層との間の距離は、L=(m−Φ/2π)λ/2の関係式を満たしている。ここで、「L」は下部電極層10と各発光層との間の距離(光学的距離)、「m」は次数(0または整数)、「Φ」は各発光層において発生した光が下部電極層10において反射する際に生じる位相シフト、「λ」は各発光層において発生した光が有機EL素子100から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネセンス(EL;Electro Luminescence)現象を利用して発光する有機発光素子および有機発光素子を備えた有機発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイの1つとして、有機EL現象を利用して画像を表示する有機発光装置(いわゆる有機ELディスプレイ)が注目されている。この有機ELディスプレイは、有機発光素子(いわゆる有機EL素子)の発光現象を利用して画像を表示する自発光型のディスプレイであるため、視野角が広く、消費電力が小さく、かつ軽量である点において優れている。
【0003】
有機ELディスプレイに搭載される有機EL素子は、主に、2つの電極層の間に有機層が設けられた構成を有している。この有機層は、発光源としての発光層と共に、その発光層を発光させるための正孔輸送層や電子輸送層などを併せて含んでいる。
【0004】
有機EL素子の構成に関しては、発光性能を向上させることを目的として、既にいくつかの態様が提案されている。
【0005】
具体的には、発光効率を高めると共に発光寿命を長期化するために、複数の発光層が積層されることにより直列に接続された積層構造(いわゆるタンデム構造)を有するように有機層を構成する技術が知られている(例えば、特許文献1〜7参照。)。この種の有機層では、任意の数の発光層を積層させることが可能である。この場合には、特に、青色光を発生させる青色発光層と、緑色光を発生させる緑色発光層と、赤色光を発生させる赤色発光層とを積層させることにより、それらの青色光、緑色光および赤色光の合成光として白色光を発生させることが可能である。
【特許文献1】特開昭61−037858号公報
【特許文献2】特開平11−329748号公報
【特許文献3】特開平11−329749号公報
【特許文献4】特開2003−045676号公報
【特許文献5】特開2003−264085号公報
【特許文献6】特開2003−272860号公報
【特許文献7】特開2004−039617号公報
【0006】
また、有機層において発生した光の中から所望の色(波長域)の光を効率よく取り出すために、複数の有機EL素子の間において光学的距離の差異を利用して光の干渉現象を生じさせる技術が知られている(例えば、特許文献8〜12参照。)。この種の有機EL素子では、光の3原色に対応する3色の光、すなわち青色光、緑色光および赤色光を個別に放出させることが可能である。
【特許文献8】特開2000−243573号公報
【特許文献9】特開2000−323277号公報
【特許文献10】特開2003−142277号公報
【特許文献11】特開2004−134101号公報
【特許文献12】特開2004−253389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、最近では、有機ELディスプレイの実用性が広く認知されたことに伴い、表示性能の向上に関する要望が一層高まりつつある。このような技術的背景を踏まえると、今後益々有機ELディスプレイの市場普及を促進させるためには、表示性能を可能な限り向上させるために、その表示性能に寄与する有機EL素子の発光性能を可能な限り向上させる必要がある。しかしながら、従来の有機ELディスプレイでは、有機EL素子の発光性能を向上させる観点において未だ十分とは言えないため、多分に改善の余地がある。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、発光性能を可能な限り向上させることが可能な有機発光素子を提供することにある。
【0009】
また、本発明の第2の目的は、表示性能を可能な限り向上させることが可能な有機発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点に係る有機発光素子は、光反射性を有する第1の電極層と光透過性を有する第2の電極層との間に複数の発光層が積層された積層構造を有する有機層が設けられており、第1の電極層と複数の発光層のうちの各発光層との間の距離が下記に示した関係式を満たしているものである。
L=(m−Φ/2π)λ/2
(「L」は第1の電極層と各発光層との間の距離(光学的距離)、「m」は次数(0または整数)、「Φ」は各発光層において発生した光が第1の電極層において反射する際に生じる位相シフト、「λ」は各発光層において発生した光が有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0011】
本発明の第2の観点に係る有機発光素子は、光反射性を有する第1の電極層と光透過性を有する第2の電極層との間に複数の発光層が積層された積層構造を有する有機層が設けられ、その有機層において発生した光をそれぞれ青色光、緑色光および赤色光として放出する青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子を含み、第1の電極層と複数の発光層のうちの各発光層との間の距離が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のいずれにおいても下記に示した関係式を満たしていると共に、第1の電極層と有機層との間の距離が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のうちの少なくとも1つにおいて異なっているものである。
L=(m−Φ/2π)λ/2
(「L」は第1の電極層と各発光層との間の距離(光学的距離)、「m」は次数(0または整数)、「Φ」は各発光層において発生した光が第1の電極層において反射する際に生じる位相シフト、「λ」は各発光層において発生した光が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0012】
本発明の第1の観点に係る有機発光装置は、光反射性を有する第1の電極層と光透過性を有する第2の電極層との間に複数の発光層が積層された積層構造を有する有機層が設けられた有機発光素子を備え、第1の電極層と複数の発光層のうちの各発光層との間の距離が下記に示した関係式を満たしているものである。
L=(m−Φ/2π)λ/2
(「L」は第1の電極層と各発光層との間の距離(光学的距離)、「m」は次数(0または整数)、「Φ」は各発光層において発生した光が第1の電極層において反射する際に生じる位相シフト、「λ」は各発光層において発生した光が有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0013】
本発明の第2の観点に係る有機発光装置は、光反射性を有する第1の電極層と光透過性を有する第2の電極層との間に複数の発光層が積層された積層構造を有する有機層が設けられ、その有機層において発生した光をそれぞれ青色光、緑色光および赤色光として放出する青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子を含む有機発光素子を備え、第1の電極層と複数の発光層のうちの各発光層との間の距離が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のいずれにおいても下記に示した関係式を満たしていると共に、第1の電極層と有機層との間の距離が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のうちの少なくとも1つにおいて異なっているものである。
L=(m−Φ/2π)λ/2
(「L」は第1の電極層と各発光層との間の距離(光学的距離)、「m」は次数(0または整数)、「Φ」は各発光層において発生した光が第1の電極層において反射する際に生じる位相シフト、「λ」は各発光層において発生した光が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0014】
本発明の第1の観点に係る有機発光素子では、光反射性を有する第1の電極層と光透過性を有する第2の電極層との間に設けられた有機層が、複数の発光層が積層された積層構造を有しており、特に、第1の電極層と各発光層との間の距離(光学的距離)が、上記した所定の関係式を満たしている。この場合には、第1の電極層が光透過性を有する場合とは異なり、複数の発光層において発生した光が第1の電極層において反射されたのちに第2の電極層を透過することにより有機発光素子の外部に放出される過程において、上記した光学的距離の差異を利用して光の干渉現象が生じる。これにより、光の干渉現象を利用して光取り出し効率が増加するため、有機発光素子から放出される光の強度が増強される。この場合には、例えば、複数の発光層が、4種類の発光層(青色光を発生させる第1の青色発光層および第2の青色発光層,緑色光を発生させる緑色発光層,赤色光を発生させる赤色発光層)を含み、特に、上記した関係式中の次数mが、第1の青色発光層に関してm=0、第2の青色発光層に関してm=1、緑色発光層に関してm=1、赤色発光層に関してm=1であれば、上記した光学的距離の差異に基づく光の干渉現象を利用して有機発光素子から放出される光の強度を増強させる観点において、その干渉条件が各色ごとに最適化される。
【0015】
本発明の第2の観点に係る有機発光素子では、光反射性を有する第1の電極層と光透過性を有する第2の電極層との間に設けられた有機層が、複数の発光層が積層された積層構造を有し、その有機層において発生した光をそれぞれ青色光、緑色光および赤色光として放出する青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子を含んでおり、特に、第1の電極層と各発光層との間の距離(光学的距離)が、青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のいずれにおいても上記した所定の関係式を満たしていると共に、第1の電極層と有機層との間の距離が、青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のうちの少なくとも1つにおいて異なっている。この場合には、第1の電極層が光透過性を有する場合とは異なり、複数の発光層において発生した光が第1の電極層において反射されたのちに第2の電極層を透過することにより青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子の外部に放出される過程において、上記した光学的距離の差異を利用して光の干渉現象が生じる。これにより、光の干渉現象を利用して青色光、緑色光および赤色光の光取り出し効率が増加するため、青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子から放出される青色光、緑色光および赤色光の強度が増強される。この場合には、例えば、複数の発光層が、4種類の発光層(青色光を発生させる第1の青色発光層,緑色光を発生させる緑色発光層,青色光を発生させる第2の青色発光層,赤色光を発生させる赤色発光層)を含み、特に、上記した関係式中の次数mが、第1の青色発光層に関してm=0、緑色発光層に関してm=1、第2の青色発光層に関してm=1、赤色発光層に関してm=1であるか、あるいは複数の発光層が、5種類の発光層(青色光を発生させる第1の青色発光層,緑色光を発生させる緑色発光層,青色光を発生させる第2の青色発光層,赤色光を発生させる赤色発光層,青色光を発生させる第3の青色発光層)を含み、特に、上記した関係式中の次数mが、第1の青色発光層に関してm=0、緑色発光層に関してm=1、第2の青色発光層に関してm=1、赤色発光層に関してm=1、第3の青色発光層に関してm=2であれば、上記した光学的距離の差異に基づく光の干渉現象を利用して青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子から放出される青色光、緑色光および赤色光の強度を増強させる観点において、その干渉条件が各色ごとに最適化される。
【0016】
本発明の第1の観点に係る有機発光装置では、上記した本発明の第1の観点に係る有機発光素子を備えているため、その有機発光素子から放出される光の強度が増強される。
【0017】
本発明の第2の観点に係る有機発光装置では、上記した本発明の第2の観点に係る有機発光素子を備えているため、青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子から放出される青色光、緑色光および赤色光の強度が増強される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の観点に係る有機発光素子によれば、光反射性を有する第1の電極層と光透過性を有する第2の電極層との間に設けられた有機層が、複数の発光層が積層された積層構造を有しており、特に、第1の電極層と各発光層との間の距離(光学的距離)が、上記した所定の関係式を満たしているので、有機発光素子から放出される光の強度が増強される。したがって、発光性能を向上させることができる。この場合には、例えば、複数の発光層が、4種類の発光層(第1の青色発光層,第2の青色発光層,緑色発光層,赤色発光層)を含み、特に、上記した関係式中の次数mが第1の青色発光層に関してm=0、第2の青色発光層に関してm=1、緑色発光層に関してm=1、赤色発光層に関してm=1であれば、その干渉条件が各色ごとに最適化されるため、発光性能を可能な限り向上させることができる。
【0019】
本発明の第2の観点に係る有機発光素子によれば、光反射性を有する第1の電極層と光透過性を有する第2の電極層との間に設けられた有機層が複数の発光層が積層された積層構造を有し、その有機層において発生した光をそれぞれ青色光、緑色光および赤色光として放出する青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子を含んでおり、特に、第1の電極層と各発光層との間の距離(光学的距離)が、青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のいずれにおいても上記した所定の関係式を満たしていると共に、第1の電極層と有機層との間の距離が、青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のうちの少なくとも1つにおいて異なっているので、青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子から放出される青色光、緑色光および赤色光の強度が増強される。したがって、発光性能を向上させることができる。この場合には、例えば、複数の発光層が、4種類の発光層(第1の青色発光層,緑色発光層,第2の青色発光層,赤色発光層)を含み、特に、上記した関係式中の次数mが第1の青色発光層に関してm=0、緑色発光層に関してm=1、第2の青色発光層に関してm=1、赤色発光層に関してm=1であるか、あるいは複数の発光層が、5種類の発光層(第1の青色発光層,緑色発光層,第2の青色発光層,赤色発光層,第3の青色発光層)を含み、特に、上記した関係式中の次数mが第1の青色発光層に関してm=0、緑色発光層に関してm=1、第2の青色発光層に関してm=1、赤色発光層に関してm=1、第3の青色発光層に関してm=2であれば、その干渉条件が各色ごとに最適化されるため、発光性能を可能な限り向上させることができる。
【0020】
本発明の第1の観点に係る有機発光装置によれば、上記した本発明の第1の観点に係る有機発光素子を備えているので、その有機発光素子の発光性能が可能な限り向上する。したがって、表示性能を可能な限り向上させることができる。
【0021】
本発明の第2の観点に係る有機発光装置によれば、上記した本発明の第2の観点に係る有機発光素子を備えているので、青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子の発光性能が可能な限り向上する。したがって、表示性能を可能な限り向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る有機発光装置に適用される有機発光素子として、第1の観点に係る有機発光素子の構成について説明する。図1は、有機発光素子としての有機EL素子100の断面構成を模式的に表している。
【0024】
有機EL素子100は、有機EL現象を利用して光Hを放出するものである。この有機EL素子100は、例えば、図1に示したように、基板1の一面において、光反射性を有する下部電極層10と光透過性を有する上部電極層30との間に有機層20が設けられた構造を有しており、すなわち基板1に近い側から順に、下部電極層10、有機層20および上部電極層30が積層された積層構造を有している。
【0025】
下部電極層10は、有機層20に電圧を印加するための電極として機能する第1の電極層であり、図示しない駆動電源に接続されている。特に、下部電極層10は、有機層20において発生した光を上部電極層30を経由して外部に放出させるために、その光を反射させる反射電極として機能するものである。この下部電極層10は、光反射性を有し、より具体的には可視光の波長域において十分な反射率を有する材料により構成されている。ここでは、例えば、下部電極層10は、陽極として機能するために、有機層20に正孔(いわゆるホール)を効率よく注入することが可能であり、より具体的には仕事関数が十分に大きな材料により構成されている。この場合の下部電極層10の構成材料としては、例えば、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、セレン(Se)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、レニウム(Re)、タングステン(W)、モリブデン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)などの金属や、それらの金属の合金などが挙げられる。
【0026】
有機層20は、有機EL現象を利用して発光するものであり、複数の発光層を含み、すなわち複数の発光層が積層された積層構造を有している。この有機層20は、例えば、複数の発光層として4種類の発光層(青色発光層22,24,緑色発光層26,赤色発光層28)を含むと共に、それらの4種類の発光層を発光させるための複数の発光補助層(発光補助層21,23,25,27,29)を併せて含んでいる。すなわち、有機層20は、例えば、下部電極層10に近い側から順に、発光補助層21、青色発光層22、発光補助層23、青色発光層24、発光補助層25、緑色発光層26、発光補助層27、赤色発光層28および発光補助層29が積層された積層構造を有している。
【0027】
発光補助層21は、青色発光層22に正孔を供給するものであり、例えば、下部電極層10に近い側から順に、正孔注入層および正孔輸送層(いずれも図示せず)が積層された積層構造を有している。この正孔注入層は、例えば、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)などにより構成されており、正孔輸送層は、例えば、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)などにより構成されている。
【0028】
青色発光層22は、有機EL現象を利用して青色光HB1を発生させる発光層(第1の青色発光層)であり、例えば、化1に示した構造式で表される4,4’−(ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル)(BCzVBi)が約5体積%混合された、化2に示した構造式で表される4,4−ビス(2,2−ジフェニル−エテン−1−イル)−ビフェニル(DPVBi)などの電子輸送性発光材料により構成されている。
【0029】
【化1】

【0030】
【化2】

【0031】
発光補助層23は、青色発光層22に電子を供給すると共に青色発光層24に正孔を供給するものであり、例えば、青色発光層22に近い側から順に、電子輸送層、金属層および正孔輸送層(いずれも図示せず)が積層された積層構造を有している。この電子輸送層は、例えば、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq)などにより構成されており、金属層は、例えば、フッ化リチウム(LiF)/マグネシウム銀合金(MgAg)などにより構成されており、正孔輸送層は、例えば、α−NPDなどにより構成されている。この金属層の厚さは、約0.2nm〜4nmであるのが好ましい。なぜなら、金属層の厚さが大きすぎると、光吸収量が大きくなることに起因して光取り出し効率が低下してしまうからである。この金属層の厚さが上記した範囲内であれば、発光補助層23が電子および正孔の供給機能を果たしつつ、その発光補助層23の透過率が約80%以上となるため、十分な光取り出し効率が得られる。なお、発光補助層23には、例えば、周知のタンデム構造を有する有機EL素子に適用されている各種層構造、より具体的には2つの発光層間に設けられることにより電子および正孔を発生または分離することが可能な各種層構造が適用されてもよい。この場合には、十分な光取り出し効率を得る観点から、発光補助層23が可視光の波長域において透明であり(光透過性を有し)、より具体的には透過率が約80%以上であるのが好ましい。
【0032】
青色発光層24は、有機EL現象を利用して青色光HB2を発生させる発光層(第2の青色発光層)であり、例えば、青色発光層22と同様の電子輸送性発光材料により構成されている。なお、青色発光層24の構成材料は、必ずしも青色発光層22の構成材料と一致していなければならないわけではなく、その青色発光層22の構成材料と異なっていてもよい。
【0033】
発光補助層25は、青色発光層24に電子を供給すると共に緑色発光層26に正孔を供給するものであり、例えば、発光補助層23と同様の構成を有している。
【0034】
緑色発光層26は、有機EL現象を利用して緑色光HGを発生させる発光層であり、例えば、クマリン6が約1体積%混合されたAlq(トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム)などの電子輸送性発光材料により構成されている。
【0035】
発光補助層27は、緑色発光層26に電子を供給すると共に赤色発光層28に正孔を供給するものであり、例えば、発光補助層23と同様の構成を有している。
【0036】
赤色発光層28は、有機EL現象を利用して赤色光HRを発生させる発光層であり、例えば、化3に示した構造式で表されるビスアミノスチリルナフタレンのメトキシ置換体(BSN)が約30体積%混合されたAlqなどの正孔輸送性発光材料により構成されている。
【0037】
【化3】

【0038】
発光補助層29は、赤色発光層28に電子を供給するものであり、例えば、上部電極層30に近い側から順に、電子注入層および電子輸送層(いずれも図示せず)が積層された積層構造を有している。この電子注入層は、例えば、マグネシウム(Mg)が約5体積%混合されたAlqなどにより構成されており、電子輸送層は、例えば、Alqなどにより構成されている。なお、電子注入層は、例えば、上記したマグネシウム(Mg)が約5体積%混合されたAlqの層上に、マグネシウム(Mg)および銀(Ag)の共蒸着層(約0.1nm〜10nm厚)が積層された積層構造を有していてもよいし、あるいはフッ化リチウム(LiF)の層上に、マグネシウムおよび銀の共蒸着層(約0.1nm〜10nm厚)が積層された積層構造を有していてもよい。
【0039】
上部電極層30は、有機層20に電圧を印加するための電極として機能する第2の電極層であり、下部電極層10と同様に図示しない駆動電源に接続されている。特に、上部電極層30は、有機層20において発生した光を外部に導くために、その光を透過させる透過電極として機能するものである。この上部電極層30は、光透過性を有し、より具体的には可視光の波長域において十分な透過率を有する材料により構成されている。ここでは、例えば、上部電極層30は、陰極として機能するために、有機層20に電子を効率よく注入することが可能であり、より具体的には仕事関数が十分に小さな材料により構成されている。この場合の上部電極層30の構成材料としては、例えば、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)またはカルシウム(Ca)などの相対的に活性な金属と銀(Ag)、アルミニウム(Al)またはインジウム(In)などの相対的に不活性な金属とを含む合金や、酸化錫(SnO2 )、酸化インジウム錫(ITO;Indium Tin Oxide)、酸化亜鉛(ZnO)または酸化チタン(TiO2 )などの透明導電材料などが挙げられる。なお、上部電極層30は、例えば、上記した2種類の金属(相対的に活性な金属および相対的に不活性な金属)が積層された積層構造を有していてもよい。
【0040】
なお、基板1は、有機EL素子100を支持するものであり、例えば、ガラス基板、シリコン(Si)基板、プラスチック基板、あるいは薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)が設けられたTFT基板などである。ここでは、例えば、基板1は、光透過性のガラス基板である。
【0041】
この有機EL素子100では、下部電極層10と有機層20を構成している複数の発光層のうちの各発光層(青色発光層22,24,緑色発光層26,赤色発光層28)との間の距離が、下記に示した関係式1を満たしている。
L=(m−Φ/2π)λ/2・・・関係式1
(「L」は下部電極層10と各発光層との間の距離(光学的距離)、「m」は次数(0または整数)、「Φ」は各発光層において発生した光が下部電極層10において反射する際に生じる位相シフト、「λ」は各発光層において発生した光が有機EL素子100から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0042】
上記した光学的距離を各発光層ごとに詳しく説明すると、以下の通りである。
【0043】
第1に、下部電極層10と青色発光層22との間の光学的距離は、下記に示した関係式2を満たしている。ここでは、例えば、関係式2中の次数mB1が、mB1=0である。
LB1=(mB1−ΦB1/2π)λB1/2・・・関係式2
(「LB1」は下部電極層10と青色発光層22との間の光学的距離、「mB1」は次数(0または整数)、「ΦB1」は青色発光層22において発生した青色光HB1が下部電極層10において反射する際に生じる位相シフト、「λB1」は青色発光層22において発生した青色光HB1が有機EL素子100から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0044】
この青色発光層22に関する関係式2中の光学的距離LB1は、下部電極層10の反射面10Mと青色発光層22の発光面22Mとの間の距離として規定される。この反射面10Mとは、下部電極層10のうちの発光補助層21に隣接する面である。また、発光面22Mとは、青色発光層22が面発光すると考えた場合に、その青色発光層22中において発光している確率(有機EL現象を利用して実質的に発光している確率)が最も高い面であり、その青色発光層22の材質(電子輸送性発光材料または正孔輸送性発光材料)に基づいて決定される面である。ここでは、例えば、青色発光層22が電子輸送性発光材料により構成されていることに伴い、発光面22Mは、青色発光層22のうちの発光補助層21に隣接する面である。
【0045】
第2に、下部電極層10と青色発光層24との間の光学的距離は、下記に示した関係式3を満たしている。ここでは、例えば、関係式3中の次数mB2が、mB2=1である。
LB2=(mB2−ΦB2/2π)λB2/2・・・関係式3
(「LB2」は下部電極層10と青色発光層24との間の光学的距離、「mB2」は次数(0または整数)、「ΦB2」は青色発光層24において発生した青色光HB2が下部電極層10において反射する際に生じる位相シフト、「λB2」は青色発光層24において発生した青色光HB2が有機EL素子100から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0046】
この青色発光層24に関する関係式3中の光学的距離LB2は、青色発光層22に関する関係式2中の光学的距離LB1について説明した場合と同様に、下部電極層10の反射面10Mと青色発光層24の発光面24M(青色発光層24のうちの発光補助層23に隣接する面)との間の距離として規定される。
【0047】
第3に、下部電極層10と緑色発光層26との間の光学的距離は、下記に示した関係式4を満たしている。ここでは、例えば、関係式4中の次数mGが、mG=1である。
LG=(mG−ΦG/2π)λG/2・・・関係式4
(「LG」は下部電極層10と緑色発光層26との間の光学的距離、「mG」は次数(0または整数)、「ΦG」は緑色発光層26において発生した緑色光HGが下部電極層10において反射する際に生じる位相シフト、「λG」は緑色発光層26において発生した緑色光HGが有機EL素子100から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0048】
この緑色発光層26に関する関係式4中の光学的距離LGは、緑色発光層26が青色発光層22,24と同様に電子輸送性発光材料により構成されていることに伴い、下部電極層10の反射面10Mと緑色発光層26の発光面26M(緑色発光層26のうちの発光補助層25に隣接する面)との間の距離として規定される。
【0049】
第4に、下部電極層10と赤色発光層28との間の光学的距離は、下記に示した関係式5を満たしている。ここでは、例えば、関係式5中の次数mRが、mR=1である。
LR=(mR−ΦR/2π)λR/2・・・関係式5
(「LR」は下部電極層10と赤色発光層28との間の光学的距離、「mR」は次数(0または整数)、「ΦR」は赤色発光層28において発生した赤色光HRが下部電極層10において反射する際に生じる位相シフト、「λR」は赤色発光層28において発生した赤色光HRが有機EL素子100から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0050】
この赤色発光層28に関する関係式5中の光学的距離LRは、下部電極層10の反射面10Mと赤色発光層28の発光面28Mとの間の距離として規定される。この発光面28Mとは、赤色発光層28が面発光すると考えた場合に、その赤色発光層28中において発光している確率(有機EL現象を利用して実質的に発光している確率)が最も高い面であり、その赤色発光層28の材質(正孔輸送性発光材料または電子輸送性発光材料)に基づいて決定される面である。ここでは、例えば、赤色発光層28が正孔輸送性発光材料により構成されていることに伴い、発光面28Mは、赤色発光層28のうちの発光補助層29に隣接する面である。
【0051】
これらの光学的距離LB1,LB2,LG,LRは、青色発光層22,24、緑色発光層26および赤色発光層28においてそれぞれ発生した青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRが下部電極層10において反射されたのちに上部電極層30を透過することにより有機EL素子100の外部に放出される過程において、それらの青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRの光取り出し効率が光の干渉現象を利用して増加するように個別に設定されている。より具体的には、光学的距離LB1,LB2は、青色に対応する波長域(例えば、約460nm近傍の波長域)において青色光HB1,HB2の強度が増強されるように設定され、光学的距離LGは、緑色に対応する波長域(例えば、約530nm近傍の波長域)において緑色光HGの強度が増強されるように設定され、光学的距離LRは、赤色に対応する波長域(例えば、約620nm近傍の波長域)において赤色光HRの強度が増強されるように設定されている。
【0052】
この有機EL素子100は、以下のように動作する。すなわち、外部の駆動電源により下部電極層10と上部電極層30との間に電圧が印加されると、有機層20のうちの青色発光層22,24、緑色発光層26および赤色発光層28において、発光補助層21,23,25,27,29から供給された正孔および電子が再結合することにより発光する。すなわち、青色発光層22において青色光HB1が発生し、青色発光層24において青色光HB2が発生し、緑色発光層26において緑色光HGが発生し、赤色発光層28において赤色光HRが発生する。これにより、青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRの合成光(白色光)として、光Hが外部に放出される。
【0053】
この際、青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRでは、下部電極層10において反射されたのちに上部電極層30を透過することにより有機EL素子100の外部に放出される過程において、光学的距離LB1,LB2,LG,LRの差異に基づいて光の干渉現象が生じる。これにより、光の干渉現象を利用して光取り出し効率が増加するため、光Hの強度が増強される。
【0054】
図1に示した有機EL素子100では、光反射性を有する下部電極層10と光透過性を有する上部電極層30との間に設けられた有機層20が、複数の発光層(青色発光層22,24,緑色発光層26,赤色発光層28)が積層された積層構造を有しており、特に、下部電極層10と各発光層との間の距離(光学的距離LB1,LB2,LG,LR)が、上記した関係式1(関係式2〜5)を満たしているので、以下の理由により、発光性能を向上させることができる。
【0055】
図2は、図1に示した有機EL素子100に対する比較例としての有機EL素子200の構成を説明するためのものであり、図1に対応する断面構成を示している。この有機EL素子200は、光反射性を有する下部電極層10に代えて、光透過性を有する下部電極層210を備えている点を除き、有機EL素子100と同様の構成を有している。この下部電極層210は、例えば、ITOなどの透明導電材料により構成されている。
【0056】
比較例の有機EL素子200(図2参照)では、下部電極層210が光透過性を有しているため、青色発光層22,24、緑色発光層26および赤色発光層28においてそれぞれ発生した青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRが、上部電極層30を透過することにより外部に放出されると共に、下部電極層210および基板1を透過することにより外部に放出される。この場合には、有機EL素子200から青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRが放出される過程において、それらの青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRが下部電極層210において反射されないため、光学的距離LB1,LB2,LG,LRの差異に基づく光の干渉現象が生じない。これにより、光の干渉現象を利用して青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRの光取り出し効率が増加しないため、有機EL素子200から放出される光Hの強度が増強されない。したがって、比較例の有機EL素子200では、発光性能を向上させることが困難である。
【0057】
これに対して、有機EL素子100(図1参照)では、下部電極層10が光反射性を有しているため、下部電極層210が光透過性を有している比較例の有機EL素子200(図2参照)とは異なり、青色発光層22,24、緑色発光層26および赤色発光層28においてそれぞれ発生した青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRが下部電極層10において反射されたのちに上部電極層30を経由することにより外部に放出される。この場合には、有機EL素子100から青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRが放出される過程において、それらの青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRが下部電極層10において反射されるため、光学的距離LB1,LB2,LG,LRの差異に基づく光の干渉現象が生じる。これにより、上記した関係式2〜5を満たすように光学的距離LB1,LB2,LG,LRを設定すれば、上記したように、光の干渉現象を利用して青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRの光取り出し効率が増加するため、有機EL素子100から放出される光Hの強度が増強される。したがって、図1に示した有機EL素子100では、発光性能を向上させることができるのである。
【0058】
この場合には、特に、有機層20が、複数の発光層として4種類の発光層(青色発光層22,24,緑色発光層26,赤色発光層28)を含む場合に、関係式1中の次数mを各発光層ごとに最適化し、すなわち青色発光層22に関する関係式2中の次数mB1をmB1=0、青色発光層24に関する関係式3中の次数mB2をmB2=1、緑色発光層26に関する関係式4中の次数mGをmG=1、赤色発光層28に関する関係式5中の次数mRをmR=1としたので、上記した光学的距離LB1,LB2,LG,LRの差異に基づく光の干渉現象を利用して青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRの光取り出し効率を増強させる観点において、その干渉条件が各色ごとに最適化される。したがって、光Hの強度が著しく増強されるため、発光性能を可能な限り向上させることができる。
【0059】
また、図1に示した有機EL素子100では、有機層20が、緑色発光層(緑色発光層26)および赤色発光層(赤色発光層28)をそれぞれ1つずつ含む一方で、青色発光層(青色発光層22,24)を2つ含むようにしたので、相対的に視感度が高い緑色光(緑色光HG)および赤色光(赤色光HR)の強度よりも、相対的に視感度が低い青色光(青色光HB1,HB2)の強度が大きくなる。したがって、視感度の観点において青色光、緑色光および赤色光の強度バランスが適正化されるため、光Hの色バランスを適正化することができる。なお、確認までに説明しておくと、有機層20が2つの青色発光層22,24を含む場合に、光Hの強度や視野角依存性の観点において青色発光層22,24の構成材料を検討すると、例えば、上記した関係式2,3中の次数mB1,mB2を考慮することにより(例えば、mB1=0,mB2=1)、相対的に次数が高い青色発光層24に関して、相対的に発光スペクトルの半値幅が大きくなるような材料を使用するのが好ましい。
【0060】
なお、図1に示した有機EL素子100では、下部電極層10が光反射性を有すると共に上部電極層30が光透過性を有することにより、その上部電極層30を経由して光Hが外部に放出されるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。具体的には、例えば、図1に対応する図3に示したように、下部電極層10が光透過性を有すると共に上部電極層30が光反射性を有することにより、その下部電極層10を経由して光Hが外部に放出されるようにしてもよい。
【0061】
図3に示した有機EL素子100では、以下の点において、図1に示した有機EL素子100と構成が異なっている。すなわち、下部電極層10と上部電極層30との間において、機能および材質が反転している。より具体的には、下部電極層10は、上記した上部電極層30と同様の機能(第2の電極層)および材質(光透過性)を有しており、上部電極層30は、上記した下部電極層10と同様の機能(第1の電極層)および材質(光反射性)を有している。また、上記したように、下部電極層10と上部電極層30との間において機能および材質が反転していることに伴い、有機層20の積層順も反転している。より具体的には、有機層20は、上部電極層30に近い側から順に、発光補助層21、青色発光層22、発光補助層23、青色発光層24、発光補助層25、緑色発光層26、発光補助層27、赤色発光層28および発光補助層29が積層された積層構造を有している。
【0062】
この場合には、上部電極層30と有機層20を構成している複数の発光層のうちの各発光層(青色発光層22,24,緑色発光層26,赤色発光層28)との間の距離(光学的距離)が、図1に示した有機EL素子100と同様に、上記した関係式1を満たしている。すなわち、第1に、上部電極層30と青色発光層22との間の光学的距離LB1は、上記した関係式2に示したように、例えば、上部電極層30の反射面30M(上部電極層30のうちの発光補助層21に隣接する面)と青色発光層22の発光面22M(青色発光層22のうちの発光補助層21に隣接する面)との間の距離として規定されており、その関係式2中の次数mB1は、mB1=0である。第2に、上部電極層30と青色発光層24との間の光学的距離LB2は、上記した関係式3に示したように、例えば、上部電極層30の反射面30Mと青色発光層24の発光面24M(青色発光層24のうちの発光補助層23に隣接する面)との間の距離として規定されており、例えば、その関係式3中の次数mB2は、mB2=1である。第3に、上部電極層30と緑色発光層26との間の光学的距離LGは、上記した関係式4に示したように、例えば、上部電極層30の反射面30Mと緑色発光層26の発光面26M(緑色発光層26のうちの発光補助層25に隣接する面)との間の距離として規定されており、その関係式4中の次数mGは、mG=1である。第4に、上部電極層30と赤色発光層28との間の光学的距離LRは、上記した関係式5に示したように、例えば、上部電極層30の反射面30Mと赤色発光層28の発光面28M(赤色発光層28のうちの発光補助層29に隣接する面)との間の距離として規定されており、その関係式5中の次数mRは、mR=1である。
【0063】
これらの光学的距離LB1,LB2,LG,LRは、図1に示した有機EL素子100と同様に、青色発光層22,24、緑色発光層26および青色発光層28においてそれぞれ発生した青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRが上部電極層30において反射されたのちに下部電極層10を透過することにより有機EL素子100の外部に放出される過程において、それらの青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRの光取り出し効率が光の干渉現象を利用して増加するように個別に設定されている。
【0064】
図3に示した有機EL素子100においても、光反射性を有する上部電極層30と光透過性を有する下部電極層10との間に設けられた有機層20が、複数の発光層(青色発光層22,24,緑色発光層26,赤色発光層28)が積層された積層構造を有しており、特に、上部電極層30と各発光層との間の距離(光学的距離LB1,LB2,LG,LR)が、上記した関係式1(関係式2〜5)を満たしているので、図1に示した有機EL素子100と同様の作用により、発光性能を向上させることができる。この場合には、特に、上記した関係式1中の次数mを各発光層ごとに最適化し、すなわち関係式2〜5に示した次数mB1,mB2,mG,mRを最適化することにより(例えば、mB1=0,mB2=1,mG=1,mR=1)、発光性能を可能な限り向上させることができる。なお、図3に示した有機EL素子100に関する上記以外の構成は、図1に示した場合と同様である。
【0065】
また、図1に示した有機EL素子100では、有機層20が複数の発光層として4種類の発光層(青色発光層22,24,緑色発光層26,赤色発光層28)を含み、それらの青色発光層22,24、緑色発光層26および赤色発光層28が下部電極層10に近い側から順に積層されるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、有機層20に含まれる複数の発光層の層数および積層順は、有機EL素子100から光Hが放出される限り、自由に変更可能である。
【0066】
次に、図4〜図6を参照して、図1に示した有機EL素子100が適用される有機発光装置として、第1の観点に係る有機発光装置の構成について説明する。図4〜図6は、有機発光装置としての有機ELディスプレイ300の構成を表しており、図4は全体の断面構成を示し、図5は主要部の断面構成を拡大して模式的に示し、図6は主要部の断面構成を拡大して詳細に示している。
【0067】
有機ELディスプレイ300は、有機EL現象を利用して画像を表示するものであり、図4に示したように、上記した有機EL素子100(図1参照)、すなわち上部電極層30を経由して光Hを放出する有機EL素子100が適用された有機EL素子46を備えている。この有機EL素子46は、有機ELディスプレイ300から画像表示用の光HPとして互いに異なる3色の光、すなわち青色光HPB(例えば、波長=約460nm)、緑色光HPG(例えば、波長=約530nm)および赤色光HPR(例えば、波長=約620nm)をそれぞれ放出させるために、いずれも光Hを放出する青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rを含んでいる。
【0068】
より具体的には、有機ELディスプレイ300は、例えば、図4に示したように、駆動パネル40および封止パネル50が互いに対向配置され、それらの駆動パネル40および封止パネル50が接着層60を介して互いに貼り合わされた構成を有している。この有機ディスプレイ300は、例えば、画像表示用の光HPを上方、すなわち封止パネル50を経由して外部へ放出することにより画像を表示するトップエミッション型構造を有している。
【0069】
駆動パネル40は、例えば、駆動用基板41の一面に、その駆動基板41に近い側から順に、薄膜トランジスタ(TFT)42と、層間絶縁層43と、駆動配線44と、平坦化絶縁層45と、上記した有機EL素子46(青色有機EL素子46B,緑色有機EL素子46G,赤色有機EL素子46R)および層内絶縁層47と、保護層48とが積層された構成を有している。
【0070】
駆動用基板41は、TFT42や有機EL素子46などを支持するものであり、例えば、シリコン(Si)やプラスチックなどの非光透過性絶縁性材料により構成されている。
【0071】
TFT42は、有機EL素子46を駆動させることにより発光させるものであり、例えば、駆動用基板41の一面に複数個に渡ってマトリックス状に配列されている。このTFT42は、層間絶縁層43に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて駆動配線44に電気的に接続されている。
【0072】
層間絶縁層43は、TFT42を周囲から電気的に分離するものであり、例えば、酸化ケイ素(SiO2 )やPSG(phospho-silicate glass)などの絶縁性材料により構成されている。この層間絶縁層43は、例えば、TFT42およびその周辺の駆動用基板41を覆うように配設されている。
【0073】
駆動配線44は、信号線として機能することにより有機EL素子46を駆動させるものであり、例えば、アルミニウム(Al)やアルミニウム銅合金(AlCu)などの導電性材料により構成されている。この駆動配線44は、平坦化絶縁層45に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて有機EL素子46に電気的に接続されている。なお、駆動配線44は、例えば、各TFT42ごとに2つずつ(ゲート信号線,ドレイン信号線)設けられており、上記したように、TFT42に電気的に接続されている。
【0074】
平坦化絶縁層45は、TFT42および駆動配線44と有機EL素子46との間を電気的に分離すると共に、その有機EL素子46が配置される下地を平坦化するものであり、例えば、酸化ケイ素(SiO2 )などの絶縁性材料により構成されている。
【0075】
有機EL素子46は、有機EL現象を利用して光Hを放出するものであり、上記したように、有機ELディスプレイ300から青色光HPBを放出させるために光Hを放出する青色有機EL素子46Bと、有機ELディスプレイ300から緑色光HPGを放出させるために光Hを放出する緑色有機EL素子46Gと、有機ELディスプレイ300から赤色光HPRを放出させるために光Hを放出する赤色有機EL素子46Rとを含んでいる。なお、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rは、それらの青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rを1組として、TFT42の配列パターンに対応して複数組に渡ってマトリックス状に配列されている。
【0076】
これらの青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rは、互いに同様の構造を有しており、すなわち光反射性を有する下部電極層461B,461G,461Rと光透過性を有する上部電極層464との間に有機層463が設けられた構成を有している。より詳細には、便宜上、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rの積層構造を互いに分離すると、それらの青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rの積層構造は、例えば、図5および図6に示したように示される。なお、図6では、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rが互いに同様の積層構造を有していることに伴い、図示内容を簡略化するために、それらの青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rの積層構造をまとめて示している。
【0077】
すなわち、青色有機EL素子46Bは、図4に示したように、平坦化絶縁層45に近い側から順に、下部電極層461B、有機層463および上部電極層464が積層された積層構造を有している。この有機層463は、図1に示した有機EL素子100のうちの有機層20と同様の構成を有しており、すなわち複数の発光層が積層された積層構造を有している。より具体的には、有機層463は、図5および図6に示したように、下部電極層461Bに近い側から順に、発光補助層4631、青色発光層4632、発光補助層4633、青色発光層4634、発光補助層4635、緑色発光層4636、発光補助層4637、赤色発光層4638および発光補助層4639が積層された積層構造を有している。下部電極層461Bおよび上部電極層464は、それぞれ図1に示した有機EL素子100のうちの下部電極層10および上部電極層30と同様の機能および材質を有している。また、有機層463を構成している発光補助層4631、青色発光層4632、発光補助層4633、青色発光層4634、発光補助層4635、緑色発光層4636、発光補助層4637、赤色発光層4638および発光補助層4639は、それぞれ図1に示した有機層20のうちの発光補助層21、青色発光層22、発光補助層23、青色発光層24、発光補助層25、緑色発光層26、発光補助層27、赤色発光層28および発光補助層29と同様の機能および材質を有している。なお、上記した有機層463および上部電極層464の構成的特徴は、以下で説明する緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rのうちの有機層463および上部電極層464に関しても同様である。
【0078】
緑色有機EL素子46Gは、図4に示したように、平坦化絶縁層45に近い側から順に、下部電極層461G、有機層463および上部電極層464が積層された積層構造を有している。下部電極層461Gは、図1に示した有機EL素子100のうちの下部電極層10と同様の機能および材質を有している。
【0079】
赤色有機EL素子46Rは、図4に示したように、平坦化絶縁層45に近い側から順に、下部電極層461R、有機層463および上部電極層464が積層された積層構造を有している。下部電極層461Rは、図1に示した有機EL素子100のうちの下部電極層10と同様の機能および材質を有している。
【0080】
これらの青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rでは、下部電極層461B,461G,461Rと有機層463を構成している複数の発光層のうちの各発光層(青色発光層4632,4634,緑色発光層4636,赤色発光層4638)との間の距離(光学的距離LB1,LB2,LG,LR)が、図1に示した有機EL素子100と同様に、上記した関係式1を満たしている。
【0081】
より具体的には、第1に、下部電極層461B,461G,461Rと青色発光層4632との間の光学的距離LB1は、上記した関係式2に示したように、例えば、下部電極層461B,461G,461Rの反射面461BM,461GM,461RM(下部電極層461B,461G,461Rのうちの発光補助層4631に隣接する面)と青色発光層4632の発光面4632M(青色発光層4632のうちの発光補助層4631に隣接する面)
との間の距離として規定されている(例えば、次数mB1=0)。
【0082】
第2に、下部電極層461B,461G,461Rと青色発光層4634との間の光学的距離LB2は、上記した関係式3に示したように、例えば、下部電極層461B,461G,461Rの反射面461BM,461GM,461RMと青色発光層4634の発光面4634M(青色発光層4634のうちの発光補助層4633に隣接する面)との間の距離として規定されている(例えば、次数mB2=1)。
【0083】
第3に、下部電極層461B,461G,461Rと緑色発光層4636との間の光学的距離LGは、上記した関係式4に示したように、例えば、下部電極層461B,461G,461Rの反射面461BM,461GM,461RMと緑色発光層4636の発光面4636M(緑色発光層4636のうちの発光補助層4635に隣接する面)との間の距離として規定されている(例えば、次数mG=1)。
【0084】
第4に、下部電極層461B,461G,461Rと赤色発光層4638との間の光学的距離LRは、上記した関係式5に示したように、例えば、下部電極層461B,461G,461Rの反射面461BM,461GM,461RMと赤色発光層4638の発光面4638M(赤色発光層4638のうちの発光補助層4639に隣接する面)との間の距離として規定されている(例えば、次数mR=1)。
【0085】
これらの光学的距離LB1,LB2,LG,LRは、図1に示した有機EL素子100と同様に、青色発光層4632,4634、緑色発光層4636および青色発光層4638においてそれぞれ発生した青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRが下部電極層461B,461G,461Rにおいて反射されたのちに上部電極層464を透過することにより青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rの外部に放出される過程において、それらの青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRの光取り出し効率が光の干渉現象を利用して増加するように個別に設定されている。
【0086】
なお、図4に示したように、下部電極層461B,461G,461Rは、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rのそれぞれの配置領域ごとに分割されている。一方、有機層463および上部電極層464は、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rのそれぞれの配置領域を連続的に経由するように延在しており、すなわち青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rにより共有されている。
【0087】
層内絶縁層47は、例えば、ポリイミドまたはポリベンゾオキサゾールなどの有機絶縁性材料や酸化シリコン(SiO2 )などの無機絶縁性材料により構成されている。この層内絶縁層47は、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rの周囲に、それらの青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rの間を分離するように設けられている。
【0088】
保護層48は、主に有機EL素子46を保護するものであり、例えば、窒化ケイ素(SiN)などの光透過性誘電性材料により構成されたパッシベーション膜である。
【0089】
一方、封止パネル50は、封止用基板51の一面に、カラーフィルタ52が設けられた構成を有している。
【0090】
封止用基板51は、カラーフィルタ52を支持すると共に、画像表示用の光HPを透過させることにより外部へ放出させるためのものであり、例えば、ガラスなどの光透過性絶縁性材料により構成されている。
【0091】
カラーフィルタ52は、有機EL素子46において発生した光Hの中から青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRを選択的に取り出すものである。特に、カラーフィルタ52は、例えば、有機ELディスプレイ300の内部に外光が侵入することにより有機EL素子46などの高反射性部品において反射した際に、その反射光を吸収することによりコントラストを確保する機能も有している。このカラーフィルタ52は、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rにそれぞれ対応して配置された3色のフィルタ領域、すなわち青色フィルタ領域52B、緑色フィルタ領域52Gおよび赤色フィルタ領域52Rを含んでいる。すなわち、カラーフィルタ52は、青色有機EL素子46Bにおいて発生した光Hの中から青色フィルタ領域52Bを通じて青色光HPBを選択的に取り出し、緑色有機EL素子46Gにおいて発生した光Hの中から緑色フィルタ領域52Gを通じて緑色光HPGを選択的に取り出し、赤色有機EL素子46Rにおいて発生した光Hの中から赤色フィルタ領域52Rを通じて赤色光HPRを選択的に取り出すようになっている。なお、青色フィルタ領域52B、緑色フィルタ領域52Gおよび赤色フィルタ領域52Rは、例えば、それぞれ青色、緑色および赤色の顔料が混入された樹脂を含んで構成されている。
【0092】
なお、接着層60は、駆動パネル40と封止パネル50とを互いに貼り合わせるためのものであり、例えば、熱硬化型樹脂などの接着材料を含んで構成されている。
【0093】
この有機ELディスプレイ300は、以下のように動作する。すなわち、図4〜図6に示したように、駆動パネル40のうちのTFT42を利用して青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rが駆動され、すなわち下部電極層461B,461G,461Rと上部電極層464との間に電圧が印加されると、図1に示した有機EL素子100と同様に、有機層463(例えば、発光点NB,NG,NR)において発光する。すなわち、青色発光層4632において青色光HB1が発生し、青色発光層4634において緑色光HB2が発生し、緑色発光層4636において緑色光HGが発生し、赤色発光層4638において赤色光HRが発生する。
【0094】
この際、発生した青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRでは、図1に示した有機EL素子100と同様に、光学的距離LB1,LB2,LG,LRの差異に基づく光の干渉現象を利用して光取り出し効率が増加するため、光Hの強度が増強される。
【0095】
特に、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rにおいて発生した光Hでは、カラーフィルタ52を経由して有機ELディスプレイ300の外部に放出される過程において、その光Hの中からカラーフィルタ52により青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが選択的に取り出される。すなわち、青色有機EL素子46Bにおいて発生した光Hの中から、青色フィルタ領域52Bを通じて青色光HPBが選択的に取り出され、緑色有機EL素子46Gにおいて発生した光Hの中から、緑色フィルタ領域52Gを通じて緑色光HPGが選択的に取り出され、赤色有機EL素子46Rにおいて発生した光Hの中から、赤色フィルタ領域52Rを通じて赤色光HPRが選択的に取り出される。これにより、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの合成光が画像表示用の光HPとして有機ELディスプレイ300の外部へ放出されることにより画像として視認されるため、その画像表示用の光HPに基づいてフルカラーの画像が表示される。
【0096】
本実施の形態に係る有機ELディスプレイ300では、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rにおいて、光反射性を有する下部電極層461B,461G,461Rと光透過性を有する上部電極層464との間に設けられた有機層463が、複数の発光層(青色発光層4632,4634,緑色発光層4636,赤色発光層4638)が積層された積層構造を有しており、特に、下部電極層461B,461G,461Rと各発光層との間の距離(光学的距離LB1,LB2,LG,LR)が、上記した関係式1(関係式2〜5)を満たしているので、図1に示した有機EL素子100と同様の作用により、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rの発光性能が向上する。したがって、表示性能を向上させることができる。
【0097】
この場合には、特に、有機層463が、複数の発光層として4種類の発光層(青色発光層4632,4634,緑色発光層4636,赤色発光層4638)を含む場合に、関係式1中の次数mを各発光層ごとに最適化し、すなわち青色発光層4632に関する関係式2中の次数mB1をmB1=0、青色発光層4634に関する関係式3中の次数mB2をmB2=1、緑色発光層4636に関する関係式4中の次数mGをmG=1、赤色発光層4638に関する関係式5中の次数mRをmR=1としたので、やはり図1に示した有機EL素子100と同様の作用により、発光性能が可能な限り向上する。したがって、表示性能を可能な限り向上させることができる。
【0098】
なお、図4〜図6に示した有機ELディスプレイ300では、画像表示用の光HPを上方、すなわち封止パネル50を経由して外部へ放出することにより画像を表示するトップエミッション型構造を有するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図4〜図6にそれぞれ対応する図7〜図9に示したように、画像表示用の光HPを下方、すなわち駆動パネル40を経由して外部へ放出することにより画像を表示するボトムエミッション型構造を有するようにしてもよい。
【0099】
図7〜図9に示した有機ELディスプレイ300は、以下の点において、図4〜図6に示した有機ELディスプレイ300と構成が異なっている。第1に、図7に示したように、下部電極層461B,461G,461Rに対応して上部電極層464が分割されており、すなわち青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rの配置領域ごとに上部電極層464B,464G,464Rが配置されている。第2に、下部電極層461B,461G,461Rと上部電極層464B,464G,464Rとの間において、機能および材質が反転している。すなわち、下部電極層461B,461G,461Rは、上記した上部電極464と同様の機能(第2の電極層)および材質(光透過性)を有しており、上部電極層464B,464G,464Rは、上記した下部電極層461B,461G,461Rと同様の機能(第1の電極層)および材質(光反射性)を有している。第3に、駆動基板41と封止基板51との間において材質が反転している。すなわち、駆動基板41は、上記した封止基板51と同様の材質(光透過性)を有しており、封止基板51は、上記した駆動基板41と同様の材質(非光透過性)を有している。第4に、上記したように、下部電極層461B,461G,461Rと上部電極層464B,464G,464Rとの間において機能および材質が反転していることに伴い、図8および図9に示したように、有機層463の積層順も反転している。すなわち、有機層463は、上部電極層464B,464G,464Rに近い側から順に、発光補助層4631、青色発光層4632、発光補助層4633、青色発光層4634、発光補助層4635、緑色発光層4636、発光補助層4637、赤色発光層4638および発光補助層4639が積層された積層構造を有している。第5に、カラーフィルタ52が封止パネル50に代えて駆動パネル40に設けられている。ここでは、カラーフィルタ52は、例えば、平坦化絶縁層45中に埋設されている。
【0100】
この場合には、上部電極層464B,464G,464Rと有機層463を構成している複数の発光層のうちの各発光層(青色発光層4632,4634,緑色発光層4636,赤色発光層4638)との間の距離(光学的距離)が、図4〜図6に示した有機EL素子100と同様に、上記した関係式1を満たしている。すなわち、第1に、上部電極層464B,464G,464Rと青色発光層4632との間の光学的距離LB1は、上記した関係式2に示したように、例えば、上部電極層464B,464G,464Rの反射面464BM,464GM,464RM(上部電極層464B,464G,464Rのうちの発光補助層4631に隣接する面)と青色発光層4632の発光面4632Mとの間の距離として規定されている(例えば、次数mB1=0)。第2に、上部電極層464B,464G,464Rと青色発光層4634との間の光学的距離LB2は、上記した関係式3に示したように、例えば、上部電極層464B,464G,464Rの反射面464BM,464GM,464RMと青色発光層4634の発光面4634Mとの間の距離として規定されている(例えば、次数mB2=1)。第3に、上部電極層464B,464G,464Rと緑色発光層4636との間の光学的距離LGは、上記した関係式4に示したように、例えば、上部電極層464B,464G,464Rの反射面464BM,464GM,464RMと緑色発光層4636の発光面4636Mとの間の距離として規定されている(例えば、次数mG=1)。第4に、上部電極層464B,464G,464Rと赤色発光層4638との間の光学的距離LRは、上記した関係式5に示したように、例えば、上部電極層464B,464G,464Rの反射面464BM,464GM,464RMと赤色発光層4638の発光面4638Mとの間の距離として規定されている(例えば、次数mR=1)。
【0101】
これらの光学的距離LB1,LB2,LG,LRは、図4〜図6に示した有機ELディスプレイ300と同様に、青色発光層4632,4634、緑色発光層4636および青色発光層4638においてそれぞれ発生した青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRが上部電極層464B,464G,464Rにおいて反射されたのちに下部電極層461B,461G,461Rを透過することにより有機ELディスプレイ300の外部に放出される過程において、それらの青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRの光取り出し効率が光の干渉現象を利用して増加するように個別に設定されている。
【0102】
図7〜図9に示した有機ELディスプレイ300においても、光反射性を有する上部電極層464B,464G,464Rと光透過性を有する下部電極層461B,461G,461Rとの間に設けられた有機層463が、複数の発光層(青色発光層4632,4634,緑色発光層4636,赤色発光層4638)が積層された積層構造を有しており、特に、上部電極層464B,464G,464Rと各発光層との間の距離(光学的距離LB1,LB2,LG,LR)が、上記した関係式1(関係式2〜5)を満たしているので、図4〜図6に示した有機ELディスプレイ300と同様の作用により、表示性能を向上させることができる。この場合には、特に、上記した関係式1中の次数mを各発光層ごとに最適化し、すなわち関係式2〜5に示した次数mB1,mB2,mG,mRを最適化することにより(例えば、mB1=0,mB2=1,mG=1,mR=1)、やはり図4〜図6に示した有機ELディスプレイ300と同様の作用により、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rの発光性能が著しく向上するため、表示性能を可能な限り向上させることができる。なお、図7〜図9に示した有機ELディスプレイ300に関する上記以外の構成および動作は、図4〜図6に示した場合と同様である。
【0103】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0104】
まず、図10および図11を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る有機発光装置に適用される有機発光素子として、第2の観点に係る有機発光素子の構成について説明する。図10および図11は、有機発光素子としての有機EL素子400の構成を表しており、上記第1の実施の形態において説明した図1に対応する断面構成を示している。図10および図11では、上記第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素に同一の符号を付している。以下では、上記第1の実施の形態において既に説明した構成要素の材質や機能に関しては、それらの説明を随時省略する。
【0105】
有機EL素子400は、例えば、図10および図11に示したように、主に、基板1の一面において、光反射性を有する下部電極層10と光透過性を有する上部電極層30との間に有機層70が設けられ、その有機層70において発生した光をそれぞれ青色光HPR、緑色光HPGおよび赤色光HPRとして放出する青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rを含んでいる。なお、図10では、青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rが互いに同様の積層構造を有していることに伴い、図示内容を簡略化するために、それらの青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rの積層構造をまとめて示している。
【0106】
青色有機EL素子400Bは、上記したように、青色光HPBを放出するものであり、例えば、図10に示したように、基板1に近い側から順に、下部電極層10、有機層70および上部電極層30が積層された積層構造を有している。緑色有機EL素子400Gは、上記したように、緑色光HPGを放出するものであり、例えば、図11に示したように、基板1に近い側から順に、下部電極層10、透明導電層2G、有機層70および上部電極層30が積層された積層構造を有している。赤色有機EL素子400Rは、上記したように、赤色光HPRを放出するものであり、例えば、図10に示したように、基板1に近い側から順に、下部電極層10、有機層70および上部電極層30が積層された積層構造を有している。特に、青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rのそれぞれは、厳密には、上記したように互いに同様の積層構造を有していることに伴い、青色光HPBまたは赤色光HPRのいずれか一方だけでなく、青色光HPBおよび赤色光HPRの双方を放出するようになっている。
【0107】
有機層70は、複数の発光層を含み、すなわち複数の発光層が積層された積層構造を有しており、例えば、複数の発光層として4種類の発光層(青色発光層72,緑色発光層74,青色発光層76,赤色発光層78)を含むと共に、それらの4種類の発光層を発光させるための複数の発光補助層(発光補助層71,73,75,77,79)を併せて含んでいる。すなわち、有機層70は、例えば、下部電極層10に近い側から順に、発光補助層71、青色発光層72、発光補助層73、緑色発光層74、発光補助層75、青色発光層76、発光補助層77、赤色発光層78および発光補助層79が積層された積層構造を有している。発光補助層71,73,75,77,79は、例えば、それぞれ上記第1の実施の形態において説明した有機EL素子100のうちの発光補助層21,23,25,27,29と同様の構成を有している。また、青色発光層72、緑色発光層74、青色発光層76および赤色発光層78は、例えば、それぞれ上記第1の実施の形態において説明した有機EL素子100のうちの青色発光層22、緑色発光層26、青色発光層24および赤色発光層28と同様の構成を有している。
【0108】
透明導電層2Gは、例えば、酸化インジウム錫(ITO)や酸化亜鉛などの透明導電材料により構成されており、厚さTGを有している。
【0109】
これらの青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rでは、下部電極層10と有機層70を構成している複数の発光層のうちの各発光層(青色発光層72,緑色発光層74,青色発光層76,赤色発光層78)との間の距離が、下記に示した関係式11を満たしている。
L=(m−Φ/2π)λ/2・・・関係式11
(「L」は下部電極層10と各発光層との間の距離(光学的距離)、「m」は次数(0または整数)、「Φ」は各発光層において発生した光が下部電極層10において反射する際に生じる位相シフト、「λ」は各発光層において発生した光が青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0110】
上記した光学的距離を各発光層ごとに詳しく説明すると、以下の通りである。
【0111】
第1に、下部電極層10と青色発光層72との間の光学的距離は、下記に示した関係式12を満たしている。ここでは、例えば、関係式12中の次数mB1が、mB1=0である。この青色発光層72に関する関係式12中の光学的距離LB1は、例えば、下部電極層10の反射面10M(下部電極層10のうちの発光補助層71に隣接する面)と青色発光層72の発光面72M(青色発光層72のうちの発光補助層71に隣接する面)との間の距離として規定される。
LB1=(mB1−ΦB1/2π)λB1/2・・・関係式12
(「LB1」は下部電極層10と青色発光層72との間の光学的距離、「mB1」は次数(0または整数)、「ΦB1」は青色発光層72において発生した青色光HB1が下部電極層10において反射する際に生じる位相シフト、「λB1」は青色発光層72において発生した青色光HB1が青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0112】
第2に、下部電極層10と緑色発光層74との間の光学的距離は、下記に示した関係式13を満たしている。ここでは、例えば、関係式13中の次数mGが、mG=1である。この緑色発光層74に関する関係式13中の光学的距離LGは、例えば、下部電極層10の反射面10Mと緑色発光層74の発光面74M(緑色発光層74のうちの発光補助層73に隣接する面)との間の距離として規定される。
LG=(mG−ΦG/2π)λG/2・・・関係式13
(「LG」は下部電極層10と緑色発光層74との間の光学的距離、「mG」は次数(0または整数)、「ΦG」は緑色発光層74において発生した緑色光HGが下部電極層10において反射する際に生じる位相シフト、「λG」は緑色発光層74において発生した緑色光HGが青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0113】
第3に、下部電極層10と青色発光層76との間の光学的距離は、下記に示した関係式14を満たしている。ここでは、例えば、関係式14中の次数mB2が、mB2=1である。この青色発光層76に関する関係式14中の光学的距離LB2は、例えば、下部電極層10の反射面10Mと青色発光層76の発光面76M(緑色発光層76のうちの発光補助層75に隣接する面)との間の距離として規定される。
LB2=(mB2−ΦB2/2π)λB2/2・・・関係式14
(「LB2」は下部電極層10と青色発光層76との間の光学的距離、「mB2」は次数(0または整数)、「ΦB2」は青色発光層76において発生した青色光HB2が下部電極層10において反射する際に生じる位相シフト、「λB2」は青色発光層76において発生した青色光HB2が青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0114】
第4に、下部電極層10と赤色発光層78との間の光学的距離は、下記に示した関係式15を満たしている。ここでは、例えば、関係式15中の次数mRが、mR=1である。この赤色発光層78に関する関係式15中の光学的距離LRは、例えば、下部電極層10の反射面10Mと赤色発光層78の発光面78M(赤色発光層78のうちの発光補助層79に隣接する面)との間の距離として規定される。
LR=(mR−ΦR/2π)λR/2・・・関係式15
(「LR」は下部電極層10と赤色発光層78との間の光学的距離、「mR」は次数(0または整数)、「ΦR」は赤色発光層78において発生した赤色光HRが下部電極層10において反射する際に生じる位相シフト、「λR」は赤色発光層78において発生した赤色光HRが青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0115】
特に、青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rでは、下部電極層10と有機層70との間の距離が、青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rのうちの少なくとも1つにおいて異なっている。ここでは、例えば、下部電極層10と有機層70との間の距離が、青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rよりも緑色有機EL素子40Gにおいて大きくなっている。より具体的には、例えば、図10および図11に示したように、緑色有機EL素子400Gにおいて、下部電極層10と有機層70との間に透明導電層2Gが設けられている一方で、青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rのいずれにおいても、下部電極層10と有機層70との間に上記した透明導電層2Gに対応する透明導電層が設けられていないため、その透明導電層2Gの厚さの分だけ、下部電極層10と有機層70との間の距離が青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rよりも緑色有機EL素子40Gにおいて大きくなっている。すなわち、緑色有機EL素子400Gでは、透明導電層2Gの厚さを加味して光学的距離LB1,LG,LB2,LRが規定される。
【0116】
これらの光学的距離LB1,LG,LB2,LRは、青色発光層72、緑色発光層74、青色発光層76および赤色発光層78においてそれぞれ発生した青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRが下部電極層10において反射されたのちに上部電極層30を透過することにより青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rの外部に放出される過程において、それらの青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rから、光学的距離LB1,LG,LB2,LRの差異に基づく光の干渉現象を利用して互いに異なる波長域の光が選択的に放出されるように設定されている。より具体的には、青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rでは、光の干渉現象を利用して青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRの中から青色に対応する波長域(例えば、約460nm近傍の波長域)の青色光HPBおよび赤色に対応する波長域(例えば、約620nm近傍の波長域)の赤色光HPRが選択的に取り出されるように設定されていると共に、緑色有機EL素子400Gでは、光の干渉現象を利用して青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRの中から緑色に対応する波長域(例えば、約530nm近傍の波長域)の緑色光HPGが選択的に取り出されるように設定されている。
【0117】
この有機EL素子400(青色有機EL素子400B,緑色有機EL素子400G,赤色有機EL素子400R)は、以下のように動作する。すなわち、外部の駆動電源により下部電極層10と上部電極層30との間に電圧が印加されると、上記第1の実施の形態において説明した有機EL素子100と同様の発光原理により、有機層70のうちの青色発光層72、緑色発光層74、青色発光層76および赤色発光層78において発光する。すなわち、青色発光層72において青色光HB1が発生し、緑色発光層74において緑色光HGが発生し、青色発光層76において青色光HB2が発生し、赤色発光層78において赤色光HRが発生する。
【0118】
この際、青色光HB1、緑色光HG、青色発光層HB2および赤色光HRでは、下部電極層10において反射されたのちに上部電極層30を透過することにより青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rから放出される過程において、光学的距離LB1,LB2,LG,LRの差異に基づいて光の干渉現象が生じる。これにより、光の干渉現象を利用して青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rからそれぞれ青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが放出される。この際、厳密には、緑色有機EL素子400Gから緑色光HPGのみが放出される一方で、青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rのそれぞれから青色光HPBおよび赤色光HPRの双方が放出される。
【0119】
図10および図11に示した有機EL素子400(青色有機EL素子400B,緑色有機EL素子400G,赤色有機EL素子400R)では、光反射性を有する下部電極層10と光透過性を有する上部電極層30との間に設けられた有機層70が、複数の発光層(青色発光層72,緑色発光層74,青色発光層76,赤色発光層78)が積層された積層構造を有しており、特に、下部電極層10と各発光層との間の距離(光学的距離LB1,LG,LB2,LR)が、上記した関係式11(関係式12〜15)を満たしていると共に、下部電極層10と有機層70との間の距離が、青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rよりも緑色有機EL素子400Gにおいて大きくなっている。この場合には、上記したように、光学的距離LB1,LG,LB2,LRの差異に基づく光の干渉現象を利用して、青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rからそれぞれ互いに異なる波長域の光として青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが放出され、厳密には、緑色有機EL素子400Gから緑色光HPGのみが放出される一方で、青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rのそれぞれから青色光HPBおよび赤色光HPRの双方が放出される。しかも、この場合には、上記した関係式12〜15を満たすように光学的距離LB1,LG,LB2,LRを設定すれば、上記第1の実施の形態において説明した有機EL素子100と同様の作用により、光の干渉現象を利用して光取り出し効率が増加するため、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度が増強される。したがって、発光性能を向上させることができる。
【0120】
この場合には、特に、有機層70が、複数の発光層として4種類の発光層(青色発光層72,緑色発光層74,青色発光層76,赤色発光層78)を含む場合に、関係式11中の次数mを各発光層ごとに最適化し、すなわち青色発光層72に関する関係式12中の次数mB1をmB1=0、緑色発光層74に関する関係式13中の次数mGをmG=1、青色発光層76に関する関係式14中の次数m2をmB2=1、赤色発光層78に関する関係式15中の次数mRをmR=1としたので、上記した光学的距離LB1,LG,LB2,LRの差異に基づく光の干渉現象を利用して青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度を増強させる観点において、その干渉条件が各色ごとに最適化される。したがって、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度が著しく増強されるため、発光性能を可能な限り向上させることができる。
【0121】
また、図10および図11に示した有機EL素子400では、下部電極層10と有機層70との間の距離が青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rよりも緑色有機EL素子400Gにおいて大きくなるようにしたので、光学的距離LB1,LG,LB2,LRがやはり青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rよりも緑色有機EL素子400Gにおいて大きくなる。この場合には、光取り出し効率に寄与する光学的距離LB1,LG,LB2,LRが青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rと緑色有機EL素子400Gとの間において別個に設定され、すなわち青色光HPBおよび緑色光HPGの波長域が隣り合っている青色有機EL素子400Bと緑色有機EL素子400Gとの間において光取り出し条件が互いに異なるように設定されると共に、同様に緑色光HPGおよび赤色光HPRの波長域が隣り合っている緑色有機EL素子400Gと赤色有機EL素子400Rとの間において光取り出し条件が互いに異なるように設定される。したがって、下部電極層10と有機層70との間の距離が青色有機EL素子400B、赤色有機EL素子400Rおよび緑色有機EL素子400Gの間において互いに等しい場合と比較して、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの色純度を向上させることができる。この場合には、特に、上記第1の実施の形態において説明したカラーフィルタ52を使用すれば、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの色純度が十分に高くなるため、その色純度を確保することができる。
【0122】
なお、図10および図11に示した有機EL素子400では、下部電極層10と有機層70との間の距離が青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rよりも緑色有機EL素子400Gにおいて大きくなるようにするために、緑色有機EL素子400Gにおいて透明導電層2Gを設ける一方で、青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rのいずれにおいても上記した透明導電層2Gに対応する透明導電層を設けないようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。具体的には、例えば、図11と共に、図10に対応する図12に示したように、緑色有機EL素子400Gにおいて下部電極層10と有機層70との間に透明導電層2G(厚さTG)を設けた場合と同様に(図11参照)、青色有機EL素子400Bにおいて下部電極層10と有機層70との間に透明導電層2B(厚さTB)を設けると共に、赤色有機EL素子400Rにおいて下部電極層10と有機層70との間に透明導電層2R(厚さTR)を設けるようにしてもよい(図12参照)。
【0123】
これらの透明導電層2B,2Rは、例えば、透明導電層2Gと同様の材質を有している。特に、青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rにそれぞれ透明導電層2B,2Rを設ける場合には、上記したように、下部電極層10と有機層70との間の距離が青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rよりも緑色有機EL素子400Gにおいて大きくなる関係を維持するために、透明導電層2Gの厚さTGが透明導電層2B,2Rの厚さTB,TRよりも大きくなるようにする(TG>TB,TR)。この場合には、青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rにおいて、光学的距離LB1,LG,LB2,LRがそれぞれ透明導電層2B,2G,2Rの厚さTB,TG,TRを加味して規定される。なお、透明導電層2B,2Rの厚さTB,TRの間の関係としては、例えば、互いに等しくてもよいし(TB=TR)、あるいは互いに異なっていてもよい(TB≒TR、すなわちTB>TRまたはTB<TR)。図12では、例えば、透明導電層2Bの厚さTBと透明導電層2Rの厚さTRとが互いに等しい場合(TB=TR)を示している。
【0124】
図11および図12に示した有機EL素子400においても、上記した関係式12〜15を満たすように光学的距離LB1,LG,LB2,LRを設定し、特に、関係式12〜15中の次数mB1,mG,mB2,mRを最適化することにより、発光性能を可能な限り向上させることができる。なお、図12に示した青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rに関する上記以外の構成は、図10に示した場合と同様である。
【0125】
また、図10および図11に示した有機EL素子400では、有機層70が複数の発光層として4種類の発光層(青色発光層72,緑色発光層74,青色発光層76,赤色発光層78)を含み、それらの青色発光層72、緑色発光層74、青色発光層76および赤色発光層78が下部電極層10に近い側から順に積層されるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。すなわち、有機層70に含まれる複数の発光層の層数および積層順は、青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rからそれぞれ青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが放出される限り、自由に変更可能である。
【0126】
一例を挙げれば、図10および図11にそれぞれ対応する図13および図14に示したように、有機層70が、複数の発光層として5種類の発光層(上記した青色発光層72、緑色発光層74、青色発光層76および赤色発光層78と共に青色発光層80)と共に、それらの5種類の発光層を発光させるための複数の発光補助層(上記した発光補助層71,73,75,77,79と共に発光補助層81)を併せて含んでおり、すなわち下部電極層10に近い側から順に、上記した発光補助層71から発光補助層79に至る一連の層、青色発光層80および発光補助層81が積層された積層構造を有するようにしてもよい。
【0127】
青色発光層80は、有機EL現象を利用して青色光HB3を発生させる発光層(第3の青色発光層)であり、例えば、青色発光層72,76と同様の材質を有している。なお、青色発光層80の構成材料は、青色発光層72,76の構成材料と異なっていてもよい。発光補助層81は、青色発光層80に電子を供給するものであり、例えば、図10および図11に示した有機EL素子400のうちの発光補助層79と同様の機能および材質を有している。ここでは、発光補助層79は、赤色発光層78に電子を供給すると共に青色発光層80に正孔を供給するものであり、例えば、図13および図14に示した発光補助層73,75,77と同様の機能および材質を有している。
【0128】
図13および図14に示した有機EL素子400では、下部電極層10と有機層70を構成している青色発光層72、緑色発光層74、青色発光層76および赤色発光層78との間の距離(光学的距離LB1,LG,LB2,LR)が、図10および図11に示した有機EL素子400と同様に、上記した関係式11(関係式12〜15)を満たしていると共に、さらに、下部電極層10と青色発光層80との間の距離(光学的距離LB3)が、下記に示した関係式16を満たしている。ここでは、例えば、関係式16中の次数mB3が、mB3=2である。この青色発光層80に関する関係式16中の光学的距離LB3は、例えば、下部電極層10の反射面10Mと青色発光層80の発光面80M(青色発光層80のうちの発光補助層79に隣接する面)との間の距離として規定される。
LB3=(mB3−ΦB3/2π)λB3/2・・・関係式16
(「LB3」は下部電極層10と青色発光層80との間の光学的距離、「mB3」は次数(0または整数)、「ΦB3」は青色発光層80において発生した青色光HB3が下部電極層10において反射する際に生じる位相シフト、「λB3」は青色発光層80において発生した青色光HB3が青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0129】
これらの光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3は、図10および図11に示した有機EL素子400と同様に、青色発光層72、緑色発光層74、青色発光層76、赤色発光層78および青色発光層80においてそれぞれ発生した青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2、赤色光HRおよび青色光HB3が下部電極層10において反射されたのちに上部電極層30を透過することにより青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rから外部に放出される過程において、それらの青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rからそれぞれ光の干渉現象を利用して青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが選択的に放出されるように設定されている。
【0130】
図13および図14に示した有機EL素子400では、光反射性を有する下部電極層10と光透過性を有する上部電極層30との間に設けられた有機層70が、複数の発光層(青色発光層72,緑色発光層74,青色発光層76,赤色発光層78,青色発光層80)が積層された積層構造を有しており、特に、下部電極層10と各発光層との間の距離(光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3)が、上記した関係式11(関係式12〜16)を満たしていると共に、下部電極層10と有機層70との間の距離が、青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rよりも緑色有機EL素子400Gにおいて大きくなっているので、図10および図11に示した有機EL素子400と同様の作用により、発光性能を向上させることができる。なお、図13および図14に示した有機EL素子400に関する上記以外の構成は、それぞれ図10および図11に示した場合と同様である。
【0131】
この場合には、特に、有機層70が、複数の発光層として5種類の発光層(青色発光層72,緑色発光層74,青色発光層76,赤色発光層78,青色発光層80)を含む場合に、関係式11中の次数mを各発光層ごとに最適化し、すなわち青色発光層72に関する関係式12中の次数mB1をmB1=0、緑色発光層74に関する関係式13中の次数mGをmG=1、青色発光層76に関する関係式14中の次数m2をmB2=1、赤色発光層78に関する関係式15中の次数mRをmR=1、青色発光層80に関する関係式16中の次数mB3をmB3=2としたので、上記した光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3の差異に基づく光の干渉現象を利用して青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度を増強させる観点において、その干渉条件が各色ごとに最適化される。したがって、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度が著しく増強されるため、発光性能を可能な限り向上させることができる。
【0132】
もちろん、図13および図14に示した有機EL素子400においても、図10および図11に示した有機EL素子400に関する変形例として図12を参照して説明した変形内容を適用することが可能である。すなわち、例えば、図14と共に、図13に対応する図15に示したように、緑色有機EL素子400Gにおいて透明導電層2G(厚さTG)を設けた場合と同様に(図14参照。)、青色有機EL素子400Bにおいて透明導電層2B(厚さTB)を設けると共に、赤色有機EL素子400Rにおいて透明導電層2R(厚さTR)を設けるようにしてもよい(図15参照)。
【0133】
図14および図15に示した有機EL素子400においても、上記した関係式12〜16を満たすように光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3を設定し、特に、関係式12〜16中の次数mB1,mG,mB2,mR,LB3を最適化することにより、発光性能を可能な限り向上させることができる。なお、図15に示した青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rに関する上記以外の構成は、図13に示した場合と同様である。
【0134】
また、図10および図11に示した有機EL素子400では、上記第1の実施の形態において説明した有機EL素子100(図1参照)に関する変形例として図3を参照して説明した変形内容を適用することが可能である。すなわち、例えば、図10および図11にそれぞれ対応する図16および図17に示したように、下部電極層10と上部電極層30との間において光反射性および光透過性を反転させることにより、青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rからそれぞれ下部電極層10を経由して青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが放出されるようにしてもよい。この場合には、有機層70が、上部電極層30に近い側から順に、発光補助層71、青色発光層72、発光補助層73、緑色発光層74、発光補助層75、青色発光層76、発光補助層77、赤色発光層78および発光補助層79が積層される。特に、緑色有機EL素子400Gにおいて、上部電極層30と発光補助層71との間に透明導電層2G(厚さTG)設けられている一方で、青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rのいずれにおいても、上記した透明導電層2Gに対応する透明導電層が設けられていない。
【0135】
図16および図17に示した有機EL素子400では、上部電極層30と有機層70を構成している複数の発光層のうちの各発光層(青色発光層72,緑色発光層74,青色発光層76,赤色発光層78)との間の距離(光学的距離)が、図10および図11に示した有機EL素子400と同様に、上記した関係式11を満たしている。すなわち、第1に、上部電極層30と青色発光層72との間の光学的距離LB1は、上記した関係式12に示したように、例えば、上部電極層30の反射面30Mと青色発光層72の発光面22Mとの間の距離として規定されている(例えば、次数mB1=0)。第2に、上部電極層30と青色発光層74との間の光学的距離LB2は、上記した関係式13に示したように、例えば、上部電極層30の反射面30Mと青色発光層74の発光面74Mとの間の距離として規定されている(例えば、次数mB2=1)。第3に、上部電極層30と緑色発光層76との間の光学的距離LGは、上記した関係式14に示したように、例えば、上部電極層30の反射面30Mと緑色発光層76の発光面76Mとの間の距離として規定されている(例えば、次数mG=1)。第4に、上部電極層30と赤色発光層78との間の光学的距離LRは、上記した関係式15に示したように、例えば、上部電極層30の反射面30Mと赤色発光層78の発光面78Mとの間の距離として規定されている(例えば、次数mR=1)。
【0136】
これらの光学的距離LB1,LB2,LG,LRは、図10および図11に示した有機EL素子400と同様に、青色発光層72、緑色発光層74、青色発光層76および青色発光層78においてそれぞれ発生した青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRが上部電極層30において反射されたのちに下部電極層10を透過することにより有機EL素子400の外部に放出される過程において、それらの青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRの光取り出し効率が光の干渉現象を利用して増加するように個別に設定されている。
【0137】
図16および図17に示した有機EL素子400においても、光反射性を有する上部電極層30と光透過性を有する下部電極層10との間に設けられた有機層70が、複数の発光層(青色発光層72,緑色発光層74、青色発光層76,赤色発光層78)が積層された積層構造を有しており、特に、上部電極層30と各発光層との間の距離(光学的距離LB1,LG,LB2,LR)が、上記した関係式11(関係式12〜15)を満たしていると共に、上部電極層30と有機層70との間の距離が、青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rよりも緑色有機EL素子400Gにおいて大きくなるようにしたので、図10および図11に示した有機EL素子400と同様の作用により、発光性能を可能な限り向上させることができる。なお、図16および図17に示した有機EL素子400に関する上記以外の構成は、それぞれ図10および図11に示した場合と同様である。
【0138】
また、図16および図17に示した有機EL素子400では、上記実施の形態において図10および図11に示した有機EL素子400に関する変形例として図12を参照して説明した変形内容を適用することが可能である。すなわち、例えば、図17と共に、図16に対応する図18に示したように、緑色有機EL素子400Gにおいて透明導電層2G(厚さTG)を設けた場合と同様に(図17参照)、青色有機EL素子400Bにおいて透明導電層2B(厚さTB)を設けると共に、赤色有機EL素子400Rにおいて透明導電層2R(厚さTR)を設けるようにしてもよい(図18参照)。
【0139】
図17および図18に示した有機EL素子400においても、上記した関係式12〜15を満たすように光学的距離LB1,LG,LB2,LRを設定し、特に、関係式12〜15中の次数mB1,mG,mB2,mRを最適化することにより、発光性能を可能な限り向上させることができる。なお、図18に示した青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rに関する上記以外の構成は、図16に示した場合と同様である。
【0140】
また、図16および図17に示した有機EL素子400では、上記実施の形態において図10および図11に示した有機EL素子400に関する変形例として図13および図14を参照して説明した変形内容を適用することが可能である。すなわち、例えば、図16および図17にそれぞれ対応する図19および図20に示したように、有機層70が、複数の発光層として5種類の発光層(上記した青色発光層72、緑色発光層74、青色発光層76および赤色発光層78と共に青色発光層80)と共に、それらの5種類の発光層を発光させるための複数の発光補助層(上記した発光補助層71,73,75,77,79と共に発光補助層81)を併せて含んでおり、すなわち上部電極層30に近い側から順に、上記した発光補助層71から発光補助層79に至る一連の層、青色発光層80および発光補助層81が積層された積層構造を有するようにしてもよい。
【0141】
図19および図20に示した有機EL素子400では、上部電極層30と有機層70を構成している青色発光層72、緑色発光層74、青色発光層76、赤色発光層78および青色発光層80との間の距離(光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3)が、図13および図14に示した有機EL素子400と同様に、上記した関係式11(関係式12〜16)を満たしている。
【0142】
これらの光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3は、図13および図14に示した有機EL素子400と同様に、青色発光層72、緑色発光層74、青色発光層76、赤色発光層78および青色発光層80においてそれぞれ発生した青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2、赤色光HRおよび青色光HB3が上部電極層30において反射されたのちに下部電極層10を透過することにより青色有機EL素子400B、緑色有機EL素子400Gおよび赤色有機EL素子400Rから外部に放出される過程において、青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rから光の干渉現象を利用して青色光HPBおよび赤色光HPRが選択的に放出されると共に、緑色有機EL素子400Gから光の干渉現象を利用して緑色光HPGが選択的に放出されるように設定されている。
【0143】
図19および図20に示した有機EL素子400おいても、上記した関係式12〜16を満たすように光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3を設定し、特に、関係式12〜16中の次数mB1,mG,mB2,mR,mB3を最適化することにより、発光性能を可能な限り向上させることができる。なお、図19および図20に示した有機EL素子400に関する上記以外の構成は、それぞれ図16および図17に示した場合と同様である。
【0144】
もちろん、図19および図20に示した有機EL素子400では、上記実施の形態において図10および図11に示した有機EL素子400に関する変形例として図15を参照して説明した変形内容を適用することが可能である。すなわち、例えば、図20と共に、図19に対応する図21に示したように、緑色有機EL素子400Gにおいて透明導電層2G(厚さTG)を設けた場合と同様に(図20参照)、青色有機EL素子400Bにおいて透明導電層2B(厚さTB)を設けると共に、赤色有機EL素子400Rにおいて透明導電層2R(厚さTR)を設けるようにしてもよい(図21参照)。
【0145】
図20および図21に示した有機EL素子400においても、上記した関係式12〜16を満たすように光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3を設定し、特に、関係式12〜16中の次数mB1,mG,mB2,mR,LB3を最適化することにより、発光性能を可能な限り向上させることができる。なお、図21に示した青色有機EL素子400Bおよび赤色有機EL素子400Rに関する上記以外の構成は、図19に示した場合と同様である。
【0146】
次に、図22〜図25を参照して、図10および図11に示した有機EL素子400が適用される有機発光装置として、第2の観点に係る有機発光装置の構成について説明する。図22〜図25は、有機発光装置としての有機ELディスプレイ500の構成を表しており、図22は全体の断面構成を示し、図23は主要部の断面構成を拡大して模式的に示し、図24および図25は主要部の断面構成を拡大して詳細に示している。図22〜図25では、上記第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素に同一の符号を付している。以下では、上記第1の実施の形態において既に説明した構成要素の材質や機能に関しては、それらの説明を随時省略する。
【0147】
有機ELディスプレイ500は、図22に示したように、有機EL素子46(青色有機EL素子46B,緑色有機EL素子46G,赤色有機EL素子46R)に代えて、その有機EL素子46と同様の機能を有する有機EL素子96(青色有機EL素子96B,緑色有機EL素子96G,赤色有機EL素子96R)を備える点を除き、上記第1の実施の形態において図4を参照して説明した有機ELディスプレイ300と同様の構成を有している。
【0148】
有機EL素子96のうちの青色有機EL素子96B、緑色有機EL素子96Gおよび赤色有機EL素子96Rは、互いにほぼ同様の構造を有しており、すなわち光反射性を有する下部電極層961B,961G,961Rと光透過性を有する上部電極層964との間に有機層963が設けられた構造を有している。
【0149】
より具体的には、青色有機EL素子96Bは、青色光HPBを放出するものであり、図22に示したように、平坦化絶縁層45に近い側から順に、下部電極層961B、有機層963および上部電極層964が積層された積層構造を有している。この有機層963は、例えば、図23および図24に示したように、下部電極層961Bに近い側から順に、発光補助層9631、青色発光層9632、発光補助層9633、緑色発光層9634、発光補助層9635、青色発光層9636、発光補助層9637、赤色発光層9638および発光補助層9639が積層された積層構造を有している。下部電極層961Bおよび上部電極層964は、それぞれ図10および図11に示した有機EL素子400のうちの下部電極層10および上部電極層30と同様の機能および材質を有している。また、有機層463を構成している発光補助層9631、青色発光層9632、発光補助層9633、緑色発光層9634、発光補助層9635、青色発光層9636、発光補助層9637、赤色発光層9638および発光補助層9639は、それぞれ図10および図11に示した有機層70のうちの発光補助層71、青色発光層72、発光補助層73、緑色発光層74、発光補助層75、青色発光層76、発光補助層77、赤色発光層78および発光補助層79と同様の機能および材質を有している。なお、上記した有機層963および上部電極層964の構成的特徴は、以下で説明する緑色有機EL素子96Gおよび赤色有機EL素子96Rのうちの有機層963および上部電極層964に関しても同様である。
【0150】
緑色有機EL素子96Gは、緑色光HPGを放出するものであり、図22に示したように、平坦化絶縁層45に近い側から順に、下部電極層961G、透明導電層962G、有機層963および上部電極層964が積層された積層構造を有している。下部電極層961Gは、図10および図11に示した有機EL素子400のうちの下部電極層10と同様の機能および材質を有している。
【0151】
赤色有機EL素子96Rは、赤色光HPRを放出するものであり、図22に示したように、平坦化絶縁層45に近い側から順に、下部電極層961R、有機層963および上部電極層964が積層された積層構造を有している。下部電極層961Rは、例えば、図10および図11に示した有機EL素子400のうちの下部電極層10と同様の機能および材質を有している。
【0152】
特に、青色有機EL素子96Bおよび赤色有機EL素子96Rのそれぞれは、厳密には、上記したように互いに同様の積層構造を有していることに伴い、青色光HPBまたは赤色光HPRのいずれか一方だけでなく、青色光HPBおよび赤色光HPRの双方を放出するようになっている。
【0153】
これらの青色有機EL素子96B、緑色有機EL素子96Gおよび赤色有機EL素子96Rでは、下部電極層961B,961G,961Rと有機層963を構成している複数の発光層のうちの各発光層(青色発光層9632,緑色発光層9634,青色発光層9636,赤色発光層9638)との間の距離(光学的距離LB1,LG,LB2,LR)が、図10および図11に示した有機EL素子400と同様に、上記した関係式11を満たしている。
【0154】
より具体的には、第1に、下部電極層961B,961G,961Rと青色発光層9632との間の光学的距離LB1は、上記した関係式12に示したように、例えば、下部電極層961B,961G,961Rの反射面961BM,961GM,961RM(下部電極層961B,961G,961Rのうちの発光補助層9631に隣接する面)と青色発光層9632の発光面9632M(青色発光層9632のうちの発光補助層9631に隣接する面との間の距離として規定されている(例えば、次数mB1=0)。
【0155】
第2に、下部電極層961B,961G,961Rと緑色発光層9634との間の光学的距離LGは、上記した関係式13に示したように、例えば、下部電極層961B,961G,961Rの反射面961BM,961GM,961RMと緑色発光層9634の発光面9634M(緑色発光層9634のうちの発光補助層9633に隣接する面)との間の距離として規定されている(例えば、次数mG=1)。
【0156】
第3に、下部電極層961B,961G,961Rと青色発光層9636との間の光学的距離LB2は、上記した関係式14に示したように、例えば、下部電極層961B,961G,961Rの反射面961BM,961GM,961RMと青色発光層9636の発光面9636M(青色発光層9636のうちの発光補助層9635に隣接する面)との間の距離として規定されている(例えば、次数mB2=1)。
【0157】
第4に、下部電極層961B,961G,961Rと赤色発光層9638との間の光学的距離LRは、上記した関係式15に示したように、下部電極層961B,961G,961Rの反射面961BM,961GM,961RMと赤色発光層9638の発光面9638M(赤色発光層9638のうちの発光補助層9639に隣接する面)との間の距離として規定されている(例えば、次数mR=1)。
【0158】
特に、青色有機EL素子96B、緑色有機EL素子96Gおよび赤色有機EL素子96Rでは、図10および図11に示した有機EL素子400と同様に、例えば、緑色有機EL素子96Gにおいて下部電極層961Gと有機層963との間に透明導電層962G(厚さTG)が設けられている一方で、青色有機EL素子96Bおよび赤色有機EL素子96Rのいずれにおいても下部電極層961B,961Rと有機層963との間に上記した透明導電層962Gに対応する透明導電層が設けられていない。これにより、下部電極層961B,961G,961Rと有機層963との間の距離は、青色有機EL素子96Bおよび赤色有機EL素子96Rよりも緑色有機EL素子96Gにおいて大きくなっている。
【0159】
これらの光学的距離LB1,LG,LB2,LRは、図10および図11に示した有機EL素子400と同様に、青色発光層9632、緑色発光層9634、青色発光層9636および赤色発光層9638においてそれぞれ発生した青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRが下部電極層961B,961G,961Rにおいて反射されたのちに上部電極層964を透過することにより青色有機EL素子96B、緑色有機EL素子96Gおよび赤色有機EL素子96Rの外部に放出される過程において、光学的距離LB1,LG,LB2,LRの差異に基づく光の干渉現象を利用して、青色有機EL素子96Bおよび赤色有機EL素子96Rにおいて青色光HPBおよび赤色光HPRが取り出されると共に、緑色有機EL素子96Gにおいて緑色光HPGが取り出されるように設定されている。特に、光学的距離LB1,LG,LB2,LRは、青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRが青色有機EL素子96B、緑色有機EL素子96Gおよび赤色有機EL素子96Rの外部に放出される過程において、それらの青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRの光取り出し効率が光の干渉現象を利用して増加するように個別に設定されている。
【0160】
この有機ELディスプレイ500は、以下のように動作する。すなわち、図22〜図25に示したように、青色有機EL素子96B、緑色有機EL素子96Gおよび赤色有機EL素子96Rにおいて、外部の駆動電源により下部電極層961B,961G,961Rと上部電極層964との間に電圧が印加されると、図10および図11に示した有機EL素子400と同様の発光原理により、有機層963において発光する。すなわち、青色発光層9632において青色光HB1が発生し、緑色発光層9634において緑色光HGが発生し、青色発光層9636において青色光HB2が発生し、赤色発光層9638において赤色光HRが発生する。
【0161】
この際、青色光HB1、緑色光HG、青色発光層HB2および赤色光HRでは、図10および図11に示した有機EL素子400と同様に、光学的距離LB1,LG,LB2,LRの差異に基づく光の干渉現象を利用して、青色有機EL素子96B、緑色有機EL素子96Gおよび赤色有機EL素子96Rからそれぞれ青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが放出され、厳密には、緑色有機EL素子96Gから緑色光HPGのみが放出される一方で、青色有機EL素子96Bおよび赤色有機EL素子96Rのそれぞれから青色光HPBおよび赤色光HPRの双方が放出される。この場合には、青色有機EL素子96Bから放出された青色光HPBおよび赤色光HPRが有機ELディスプレイ500の外部に放出される過程において、カラーフィルタ52のうちの青色フィルタ領域52Bを青色光HPBのみが透過するため、結果として青色有機EL素子96Bから青色光HPBのみが放出される。また、赤色有機EL素子96Rから放出された青色光HPBおよび赤色光HPRがやはり有機ELディスプレイ500の外部に放出される過程において、カラーフィルタ52のうちの赤色フィルタ領域52Rを赤色光HPRのみが透過するため、結果として赤色有機EL素子96Rから赤色光HPRのみが放出される。なお、緑色有機EL素子96Gから放出された緑色光HPGは、カラーフィルタ52のうちの緑色フィルタ52Gを透過することにより、そのまま有機ELディスプレイ500の外部に放出される。
【0162】
本実施の形態に係る有機ELディスプレイ500では、青色有機EL素子96B、緑色有機EL素子96Gおよび赤色有機EL素子96Rにおいて、光反射性を有する下部電極層961B,961G,961Rと光透過性を有する上部電極層964との間に設けられた有機層963が、複数の発光層(青色発光層9632,緑色発光層9634,青色発光層9636,赤色発光層9638)が積層された積層構造を有しており、特に、下部電極層961B,961G,961Rと各発光層との間の距離(光学的距離LB1,LG,LB2,LR)が、上記した関係式11(関係式12〜15)を満たしていると共に、下部電極層961B,961G,961Rと有機層963との間の距離が、青色有機EL素子96Bおよび赤色有機EL素子96Rよりも緑色有機EL素子96Gにおいて大きくなっているので、図10および図11に示した有機EL素子400と同様の作用により、青色有機EL素子96B、緑色有機EL素子96Gおよび赤色有機EL素子96Rの発光性能が向上する。したがって、表示性能を向上させることができる。
【0163】
この場合には、特に、有機層963が、複数の発光層として4種類の発光層(青色発光層9632,緑色発光層9634,青色発光層9636,赤色発光層9638)を含む場合に、関係式11中の次数mを各発光層ごとに最適化し、すなわち青色発光層9632に関する関係式12中の次数mB1をmB1=0、緑色発光層9634に関する関係式13中の次数mGをmG=1、青色発光層9636に関する関係式14中の次数mB2をmB2=1、赤色発光層9638に関する関係式15中の次数mRをmR=1としたので、やはり図10および図11に示した有機EL素子400と同様の作用により、発光性能が可能な限り向上する。したがって、表示性能を可能な限り向上させることができる。
【0164】
なお、図22〜図25に示した有機ELディスプレイ500では、図10および図11に示した有機EL素子400に関する変形例として図12を参照して説明した変形内容を適用することが可能である。すなわち、例えば、図25と共に、図24に対応する図26に示したように、緑色有機EL素子96Gにおいて下部電極層961Gと有機層963との間に透明導電層962G(厚さTG)を設けた場合と同様に(図25参照)、青色有機EL素子96Bにおいて下部電極層961Bと有機層963との間に透明導電層962B(厚さTB)を設けると共に、赤色有機EL素子96Rにおいて下部電極層961Rと有機層963との間に透明導電層962R(厚さTR)を設けるようにしてもよい(図26参照)。
【0165】
図25および図26に示した有機EL素子96を備えた有機ELディスプレイ500においても、上記した関係式12〜15を満たすように光学的距離LB1,LG,LB2,LRを設定し、特に、関係式12〜15中の次数mB1,mG,mB2,mRを最適化することにより、発光性能を可能な限り向上させることができる。なお、図26に示した青色有機EL素子96Bおよび赤色有機EL素子96Rに関する上記以外の構成は、図24に示した場合と同様である。
【0166】
また、図22〜図25に示した有機ELディスプレイ500では、図10および図11に示した有機EL素子400に関する変形例として図13および図14を参照して説明した変形内容を適用することが可能である。すなわち、例えば、図24および図25にそれぞれ対応する図27および図28に示したように、有機層963が、複数の発光層として5種類の発光層(上記した青色発光層9632、緑色発光層9634、青色発光層9636および赤色発光層9638と共に青色発光層9640)を含むと共に、それらの5種類の発光層を発光させるための複数の発光補助層(上記した発光補助層9631,9633,9635,9637,9639と共に発光補助層9641)を併せて含んでおり、すなわち下部電極層961B,961G,961Rに近い側から順に、上記した発光補助層9631から発光補助層9639に至る一連の層、青色発光層9640および発光補助層9641が積層された積層構造を有するようにしてもよい。
【0167】
図27および図28に示した青色有機EL素子96B、緑色有機EL素子96Gおよび赤色有機EL素子96Rでは、下部電極層961B,961G,961Rと有機層963を構成している複数の発光層のうちの各発光層との間の距離(光学的距離)が、上記したように、関係式11を満たしている。すなわち、下部電極層961B,961G,961Rと青色発光層9632、緑色発光層9634、青色発光層9636および赤色発光層9638との間の光学的距離LB1,LG,LB2,LRは、上記した関係式12〜15を満たしている。また、下部電極層961B,961G,961Rと青色発光層9640との間の光学的距離LB3は、上記した関係式16を満たしている。
【0168】
図27および図28に示した有機EL素子96を備えた有機ELディスプレイ500においても、上記した関係式12〜16を満たすように光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3を設定し、特に、関係式12〜16中の次数mB1,mG,mB2,mR,mB3を最適化することにより、発光性能を可能な限り向上させることができる。なお、図27および図28に示した有機EL素子96に関する上記以外の構成は、それぞれ図24および図25に示した場合と同様である。
【0169】
もちろん、図27および図28に示した有機EL素子96では、図13および図14に示した有機EL素子400に関する変形例として図15を参照して説明した変形内容を適用することが可能である。すなわち、例えば、図28と共に、図27に対応する図29に示したように、緑色有機EL素子96Gにおいて透明導電層962G(厚さTG)を設けた場合と同様に(図28参照)、青色有機EL素子96Bにおいて透明導電層962B(厚さTB)を設けると共に、赤色有機EL素子96Rにおいて透明導電層962R(厚さTR)を設けるようにしてもよい(図29参照)。この場合においても、上記した関係式12〜16を満たすように光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3を設定し、特に、関係式12〜16中の次数mB1,mG,mB2,mR,mB3を最適化することにより、発光性能を可能な限り向上させることができる。なお、図29に示した青色有機EL素子96Bおよび赤色有機EL素子96Rに関する上記以外の構成は、図27に示した場合と同様である。
【0170】
また、図22〜図25に示した有機ELディスプレイ500では、図10および図11に示した有機EL素子400に関する変形例として図16および図17を参照して説明した変形内容を適用することが可能である。すなわち、例えば、図22〜図25にそれぞれ対応する図30〜図33に示したように、下部電極層961B,961G,961Rと上部電極層964B,964G,964Rとの間において光反射性および光透過性を反転させることにより、青色有機EL素子96B、緑色有機EL素子96Gおよび赤色有機EL素子96Rからそれぞれ下部電極層961B,961G,961Rを経由して青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが放出されるようにしてもよい。この場合には、有機層963が、上部電極層964B,964G,964Rに近い側から順に、発光補助層9631、青色発光層9632、発光補助層9633、緑色発光層9634、発光補助層9635、青色発光層9636、発光補助層9637、赤色発光層9638および発光補助層9639が積層される。
【0171】
図32および図33に示した有機EL素子96では、上部電極層964B,964G,964Rと有機層963を構成している複数の発光層のうちの各発光層(青色発光層9632,緑色発光層9634,青色発光層9636,赤色発光層9638)との間の距離(光学的距離)が、図16および図17に示した有機EL素子400と同様に、上記した関係式11を満たしている。すなわち、第1に、上部電極層964B,964G,964Rと青色発光層9632との間の光学的距離LB1は、上記した関係式12に示したように、例えば、上部電極層964B,964G,964Rの反射面964BM,964GM,964RM(上部電極層964B,964G,964Rのうちの発光補助層9631に隣接する面)と青色発光層9632の発光面9632Mとの間の距離として規定されている(例えば、次数mB1=0)。第2に、上部電極層964B,964G,964Rと緑色発光層9634との間の光学的距離LGは、上記した関係式13に示したように、例えば、上部電極層964B,964G,964Rの反射面964BM,964GM,964RMと緑色発光層9634の発光面9634Mとの間の距離として規定されている(例えば、次数mG=1)。第3に、上部電極層964B,964G,964Rと青色発光層9636との間の光学的距離LB2は、上記した関係式14に示したように、例えば、上部電極層964B,964G,964Rの反射面964BM,964GM,964RMと青色発光層9636の発光面9636Mとの間の距離として規定されている(例えば、次数mB2=1)。第4に、上部電極層964B,964G,964Rと赤色発光層9638との間の光学的距離LRは、上記した関係式15に示したように、例えば、上部電極層964B,964G,964Rの反射面964BM,964GM,964RMと赤色発光層9638の発光面9638Mとの間の距離として規定されている(例えば、次数mR=1)。
【0172】
これらの光学的距離LB1,LG,LB2,LRは、図16および図17に示した有機EL素子400と同様に、青色発光層9632、緑色発光層9634、青色発光層9636および青色発光層9638において発生した青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRが上部電極層964B,964G,964Rにおいて反射されたのちに下部電極層961B,961G,961Rを透過することにより青色有機EL素子96B、緑色有機EL素子96Gおよび赤色有機EL素子96Rの外部に放出される過程において、それらの青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRの光取り出し効率が光の干渉現象を利用して増加するように個別に設定されている。
【0173】
図30〜図33に示した有機ELディスプレイ500においても、光反射性を有する上部電極層964B,964G,964Rと光透過性を有する下部電極層961B,961G,961Rとの間に設けられた有機層963が、複数の発光層(青色発光層9632,緑色発光層9634,青色発光層9636,赤色発光層9638)が積層された積層構造を有しており、特に、上部電極層964B,964G,964Rと各発光層との間の距離(光学的距離LB1,LG,LB2,LR)が、上記した関係式11(関係式12〜15)を満たしていると共に、上部電極層964B,964G,964Rと有機層963との間の距離が、青色有機EL素子96Bおよび赤色有機EL素子96Rよりも緑色有機EL素子96Gにおいて大きくなっているので、図16および図17に示した有機EL素子400と同様の作用により、発光性能を可能な限り向上させることができる。なお、図30〜図33に示した有機ELディスプレイ500に関する上記以外の構成は、それぞれ図22〜図25に示した場合と同様である。
【0174】
もちろん、図32〜図33に示した有機EL素子96においても、図16および図17に示した有機EL素子400に関する変形例として図18を参照して説明した変形内容を適用することが可能である。すなわち、例えば、図33と共に、図32に対応する図34に示したように、緑色有機EL素子96Gにおいて透明導電層962G(厚さTG)を設けた場合と同様に(図33参照)、青色有機EL素子96Bにおいて透明導電層962B(厚さTB)を設けると共に、赤色有機EL素子96Rにおいて透明導電層962R(厚さTR)を設けるようにしてもよい(図34参照)。
【0175】
図33および図34に示した有機EL素子96を備えた有機ELディスプレイ500においても、上記した関係式12〜15を満たすように光学的距離LB1,LG,LB2,LRを設定し、特に、関係式12〜15中の次数mB1,mG,mB2,mRを最適化することにより、発光性能を可能な限り向上させることができる。なお、図34に示した青色有機EL素子96Bおよび赤色有機EL素子96Rに関する上記以外の構成は、図32に示した場合と同様である。
【0176】
また、図30〜図33に示した有機ELディスプレイ500では、図16および図17に示した有機EL素子400に関する変形例として図19および図20を参照して説明した変形内容を適用することが可能である。すなわち、例えば、図32および図33にそれぞれ対応する図35および図36に示したように、有機層963が、複数の発光層として5種類の発光層(上記した青色発光層9632、緑色発光層9634、青色発光層9636および赤色発光層9638と共に青色発光層9640)を含むと共に、それらの5種類の発光層を発光させるための複数の発光補助層(上記した発光補助層9631,9633,9635,9637,9639と共に発光補助層9641)を併せて含んでおり、すなわち上部電極層964B,964G,964Rに近い側から順に、上記した発光補助層9631から発光補助層9639に至る一連の層、青色発光層9640および発光補助層9641が積層された積層構造を有するようにしてもよい。
【0177】
図35および図36に示した青色有機EL素子96B、緑色有機EL素子96Gおよび赤色有機EL素子96Rでは、上部電極層964B,964G,964Rと有機層963を構成している複数の発光層のうちの各発光層との間の距離(光学的距離)が、上記したように、関係式11を満たしている。すなわち、上部電極層964B,964G,964Rと青色発光層9632、緑色発光層9634、青色発光層9636および赤色発光層9638との間の光学的距離LB1,LG,LB2,LRは、上記した関係式12〜15を満たしている(例えば、次数mB1=0,mG=1,mB2=1,mR=1)。また、上部電極層964B,964G,964Rと青色発光層9640との間の光学的距離LB3は、上記した関係式16(例えば、次数mB3=2)を満たしている。
【0178】
図35および図36に示した有機EL素子96を備えた有機ELディスプレイ500においても、上記した関係式12〜16を満たすように光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3を設定し、特に、関係式12〜16中の次数mB1,mG,mB2,mR,mB3を最適化することにより、発光性能を可能な限り向上させることができる。なお、図35および図36に示した有機EL素子96に関する上記以外の構成は、それぞれ図32および図33に示した場合と同様である。
【0179】
もちろん、図35および図36に示した有機EL素子96では、図19および図20に示した有機EL素子400に関する変形例として図21を参照して説明した変形内容を適用することが可能である。すなわち、例えば、図36と共に、図35に対応する図37に示したように、緑色有機EL素子96Gにおいて透明導電層962G(厚さTG)を設けた場合と同様に(図36参照)、青色有機EL素子96Bにおいて透明導電層962B(厚さTB)を設けると共に、赤色有機EL素子96Rにおいて透明導電層962R(厚さTR)を設けるようにしてもよい(図37参照)。
【0180】
図36および図37に示した有機EL素子96を備えた有機ELディスプレイ500においても、上記した関係式12〜16を満たすように光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3を設定し、特に、関係式12〜16中の次数mB1,mG,mB2,mR,mB3を最適化することにより、発光性能を可能な限り向上させることができる。なお、図37に示した青色有機EL素子96Bおよび赤色有機EL素子96Rに関する上記以外の構成は、図35に示した場合と同様である。
【実施例】
【0181】
次に、本発明に関する実施例について説明する。
【0182】
(実施例1)
以下の手順を経ることにより、上記第1の実施の形態において説明した本発明の一連の有機EL素子を代表して、図1に示した有機EL素子を製造した。
【0183】
すなわち、ガラス製の基板を準備したのち、まず、基板上に光反射性を有する銀合金を選択的に成膜することにより、陽極としての下部電極層を100nmの厚さとなるようにパターン形成した。続いて、下部電極層のうちの2mm×2mm角の中央領域(発光領域)を部分的に露出させるようにポリイミドを選択的に成膜することにより、発光用のセルを構成した。続いて、上記した発光領域に対応する箇所にパターン成膜用の開口が設けられたマスクを使用しながら、10-4Pa以下の真空雰囲気中において真空蒸着法を使用して、下部電極層上に、発光補助層(m−MTDATA/α−NPD)、青色発光層(DPVBiにBCzVBiを5体積%混合させて共蒸着)、発光補助層(Alq/LiF/MgAg/α−NPD)、青色発光層(DPVBiにBCzVBiを5体積%混合させて共蒸着)、発光補助層(Alq/LiF/MgAg/α−NPD)、緑色発光層(Alqにクマリン6を1体積%混合させて共蒸着)、発光補助層(Alq/LiF/MgAg/α−NPD)、赤色発光層(AlqにBSNを30体積%混合させて共蒸着)および発光補助層(Alq/LiF/MgAg)をこの順に積層させることにより、4種類の発光層(2つの青色発光層,緑色発光層,赤色発光層)を含む積層構造を有するように有機層を形成した。この有機層を形成する際には、上記した関係式2〜5を満たすようにし、特に、光学的距離LB1,LB2,LG,LRに対応する物理的距離(膜厚)がそれぞれ30nm,140nm,190nm,250nmとなるようにしたと共に、次数mB1,mB2,mG,mRがそれぞれmB1=0,mB2=1,mG=1,mR=1となるようにした。最後に、有機層上に光透過性を有する酸化亜鉛を含む透明導電膜を選択的に成膜することにより、陰極としての上部電極層を80nmの厚さとなるようにパターン形成した。これにより、本発明の実施例1の有機EL素子が完成した。
【0184】
(実施例2)
以下の手順を経ることにより、上記第2の実施の形態において説明した本発明の一連の有機EL素子を代表して、図10および図11に示した有機EL素子(青色有機EL素子,緑色有機EL素子,赤色有機EL素子)を製造した。
【0185】
すなわち、基板上に陽極としての下部電極層をパターン形成したのち、緑色有機EL素子の形成領域のみにおいて下部電極層上にITOを選択的に成膜することにより、透明導電層を90nmの厚さとなるように形成した。続いて、下部電極層上に、発光補助層(m−MTDATA/α−NPD)、青色発光層(DPVBiにBCzVBiを5体積%混合させて共蒸着)、発光補助層(Alq/LiF/MgAg/α−NPD)、緑色発光層(Alqにクマリン6を1体積%混合させて共蒸着)、発光補助層(Alq/LiF/MgAg/α−NPD)、青色発光層(DPVBiにBCzVBiを5体積%混合させて共蒸着)、発光補助層(Alq/LiF/MgAg/α−NPD)、赤色発光層(AlqにBSNを30体積%混合させて共蒸着)および発光補助層(Alq/LiF/MgAg)をこの順に積層させることにより、4種類の発光層(青色発光層,緑色発光層,青色発光層,赤色発光層)を含む積層構造を有するように有機層を形成した。この有機層を形成する際には、上記した関係式12〜15を満たすようにし、特に、距離LB1,LG,LB2,LRに対応する物理的距離(膜厚)がそれぞれ30nm,95nm,145nm,240nmとなるようにしたと共に、次数mB1,mG,mB2,mRがそれぞれmB1=0,mG=1,mB2=1,mR=1となるようにした。上記した物理的膜厚=95nm,145nm,240nmは、透明導電層の膜厚(=90nm)を加味して設定した膜厚である。最後に、有機層上に陰極としての上部電極層を120nmの厚さとなるようにパターン形成した。これにより、本発明の実施例の有機EL素子(青色有機EL素子,緑色有機EL素子,赤色有機EL素子)が完成した。なお、実施例2の有機EL素子の製造手順に関する上記以外の手順(材料、厚さおよび製法など)は、実施例1と同様である。
【0186】
これらの本発明の実施例1,2の有機EL素子の諸性能を調べたところ、以下の結果が得られた。
【0187】
まず、実施例1の有機EL素子の基礎的な発光性能を調べたところ、図38に示した結果が得られた。図38は、実施例1の有機EL素子の発光スペクトルを表しており、「横軸」は波長λ(nm)を示し、「縦軸」はスペクトルの強度I(−)を示している。上記した「基本的な発光性能」とは、色調整用のカラーフィルタを使用しない場合における有機EL素子の発光性能であり、すなわち色調に関する性能上の実力である。なお、実施例1の有機EL素子の発光性能を調べる際には、その発光性能を比較評価するために、図2に示した比較例の有機EL素子を製造することにより、その比較例の有機EL素子の発光性能も併せて調べた。この比較例の有機EL素子を製造する際には、光透過性を有するITOを使用して下部電極層を180nmの厚さとなるように形成した点を除き、実施例1の有機EL素子の製造手順と同様の手順を経た。図38では、「381」が実施例1の有機EL素子の発光スペクトルを示し、「382」が比較例の有機EL素子の発光スペクトルを示している。ただし、比較例の有機EL素子に関しては、基板の上方および下方に放出された光の和に基づく発光スペクトルを示している。
【0188】
図38に示した結果から判るように、実施例1の有機EL素子(381)および比較例の有機EL素子(382)では、いずれにおいても白色光が得られ、すなわち可視光に対応する波長λ=約400nm〜800nmの波長域においてブロードなスペクトルが観察された。しかしながら、実施例1の有機EL素子と比較例の有機EL素子との間でスペクトルの強度Iを比較すると、その強度Iは全体に渡って比較例よりも実施例1において大きくなった。すなわち、比較例の有機EL素子では、有機層において発生した青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRが下部電極層および上部電極層の双方を透過して外部に放出されることにより、青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRの本来の強度(発光強度)に基づいて光Hの強度が決定されるため、その光Hの強度が増強されない。これに対して、実施例1の有機EL素子では、有機層において発生した青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRが下部電極層において反射されたのちに上部電極層を透過して外部に放出されることにより、光の干渉現象を利用して青色光HB1,HB2、緑色光HGおよび赤色光HRの本来の強度(発光強度)よりも大きくなるように光Hの強度が決定されるため、その光Hの強度が増強される。このことから、本発明の実施例1の有機EL素子では、光反射性を有する下部電極層と光透過性を有する上部電極層との間に設けられた有機層が複数の発光層(2つの青色発光層,緑色発光層,赤色発光層)が積層された積層構造を有しており、特に、下部電極層と各発光層との間の距離(光学的距離LB1,LB2,LG,LR)が上記した関係式2〜5を満たしていることにより、白色光を放出する観点において発光性能を向上させることが可能であることが確認された。
【0189】
また、実施例1の有機EL素子の実用的な発光性能を調べたところ、図39に示した結果が得られた。図39は、実施例1の有機EL素子の他の発光スペクトルを表しており、図38に示した発光スペクトルに対応している。上記した「実用的な発光性能」とは、色調整用のカラーフィルタを使用した場合における有機EL素子の発光性能であり、すなわち有機ELディスプレイに搭載された場合における色調に関する性能上の実力である。この有機EL素子の発光性能を調べる際には、図42に示した透過特性を有する3色のカラーフィルタを使用し、すなわち有機EL素子において発生した白色光の中からカラーフィルタを通じて赤色光、緑色光および青色光を選択的に取り出すことにより、各色の発光スペクトルを調べた。図42は、カラーフィルタの透過特性を表しており、「横軸」は波長λ(nm)を示し、「縦軸」は透過率T(%)を示している。図42では、「42B」が青色フィルタ領域の透過特性を示し、「42G」が緑色フィルタ領域の透過特性を示し、「42R」が赤色フィルタ領域の透過特性を示している。なお、実施例1の有機EL素子の発光性能を調べる際には、その発光性能を比較評価するために、上記した比較例の有機EL素子(図2参照)に関してもカラーフィルタを使用することにより、その比較例の有機EL素子の発光性能も併せて調べた。図39では、「39B1」,「39G1」,「39R1」がそれぞれ実施例1の有機EL素子に関する青色光、緑色光および赤色光の発光スペクトルを示し、「39B2」,「39G2」,「39R2」がそれぞれ比較例の有機EL素子に関する青色光、緑色光および赤色光の発光スペクトルを示している。
【0190】
図39に示した結果から判るように、実施例1の有機EL素子(39B1,39G1,39R1)および比較例の有機EL素子(39B2,39G2,39R2)では、いずれにおいても青色光、緑色光および赤色光が得られ、すなわち青色に対応する波長λ=約460nm近傍、緑色に対応する波長λ=約530nm近傍、ならびに赤色に対応する波長λ=約620nm近傍においてスペクトルピークが観察された。しかしながら、実施例2の有機EL素子と比較例の有機EL素子との間でスペクトルの強度Iを比較すると、その強度Iは、青色光(39B1,39B2)、緑色光(39G1,39G2)および赤色光(39R1,39R2)のいずれにおいても、比較例よりも実施例1において大きくなった。このことは、図38に示した結果を参照して説明したように、比較例の有機EL素子では光Hの強度が増強されないのに対して、実施例1の有機EL素子では光の干渉現象を利用して光Hの強度が増強されることを反映している。このことから、本発明の実施例1の有機EL素子では、カラーフィルタを使用することにより、青色光、緑色光および赤色光を放出する観点において発光性能を向上させることが可能であることが確認された。確認までに、実施例1の有機EL素子に関して色度特性を調べたところ、(x,y)色度値において青色:(0.132,0.081)、緑色:(0.242,0.634)、赤色:(0.663,0.334)であり、NTSC比84%の色再現範囲であった。
【0191】
続いて、実施例2の有機EL素子の基礎的な発光性能を調べたところ、図40に示した結果が得られた。図40は、実施例2の有機EL素子の発光スペクトルを表しており、図38に示した発光スペクトルに対応している。図40では、「40B」,「40G」,「40R」がそれぞれ青色光、緑色光および赤色光の発光スペクトルを示している。
【0192】
図40に示した結果から判るように、実施例2の有機EL素子では、青色光のスペクトルピーク(40B)、緑色光のスペクトルピーク(40G)および赤色のスペクトルピーク(40R)が観察され、すなわち青色有機EL素子および赤色有機EL素子から青色光および赤色光が放出されたと共に、緑色有機EL素子から緑色光が放出された。より具体的には、互いに同様の構造を有している青色有機EL素子および赤色有機EL素子では、光の干渉現象を利用して青色および赤色の光成分量が増加される(緑色の光成分量が減少される)ことにより、青色および赤色が強調された光(青色光および赤色光)が放出された。一方、青色有機EL素子および赤色有機EL素子とは異なる構造を有している(光取り出し条件が異なっている)緑色有機EL素子では、光の干渉現象を利用して緑色の光成分量が増加される(青色および赤色の光成分量が減少される)ことにより、緑色が強調された光(緑色光)が放出された。しかも、この場合には、青色光、緑色光および赤色光に対応する3つのスペクトルピークが明瞭に区別して観察され、すなわち3つのスペクトルピークが互いに異なる波長λにおいて実施例1と同等の強度Iを有していることから明らかなように、青色光、緑色光および赤色光の強度が確保された。このことから、本発明の実施例2の有機EL素子(青色有機EL素子,緑色有機EL素子,赤色有機EL素子)では、光反射性を有する下部電極層と光透過性を有する上部電極層との間に設けられた有機層が複数の発光層(青色発光層,緑色発光層,赤色発光層)が積層された積層構造を有しており、特に、下部電極層と各発光層との間の距離(光学的距離LB1,LG,LB2,LR)が上記した関係式12〜15を満たしていることにより、青色光、緑色光および赤色光を放出する観点において発光性能を向上させることが可能であることが確認された。
【0193】
また、実施例2の有機EL素子の実用的な発光性能を調べたところ、図41に示した結果が得られた。図41は、実施例2の有機EL素子の他の発光スペクトルを表しており、図38に示した発光スペクトルに対応している。この有機EL素子の発光性能を調べる際には、やはり図42に示した透過特性を有する3色のカラーフィルタを使用した。図41では、「41B」,「41G」,「41R」が青色光、緑色光および赤色光の発光スペクトルを示している。
【0194】
図41に示した結果から判るように、実施例2の有機EL素子では、青色光のスペクトルピーク(41B)、緑色光のスペクトルピーク(41G)および赤色のスペクトルピーク(41R)が観察された。すなわち、青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子からカラーフィルタを通じてそれぞれ青色光、緑色光および赤色光が放出された。この場合には、特に、カラーフィルタを使用しなかった場合(図40参照)と比較して、青色有機EL素子および赤色有機EL素子のそれぞれから放出される緑色の光成分量が著しく減少したため、青色光および赤色光の色純度が向上した。このことから、本発明の実施例2の有機EL素子(青色有機EL素子,緑色有機EL素子,赤色有機EL素子)では、カラーフィルタを使用することにより、青色光、緑色光および赤色光を放出する観点において発光性能を向上させることが可能であることが確認された。確認までに、実施例2の有機EL素子に関して色度特性を調べたところ、(x,y)色度値において青色:(0.130,0.076)、緑色:(0.222,0.701)、赤色:(0.662,0.335)であり、NTSC比99%の色再現範囲であった。
【0195】
以上、いくつかの実施の形態および実施例を挙げて本発明の有機発光素子および有機発光装置を説明したが、その本発明の有機発光素子および有機発光装置の構成は、上記各実施の形態および実施例において説明した態様に限定されず、光反射性を有する一方の電極層と光透過性を有する他方の電極層との間に設けられた有機層が複数の発光層が積層された積層構造を有しており、特に、一方の電極層と各発光層との間の距離(光学的距離)が上記した関係式1,11を満たすことにより発光性能を向上させることが可能な限り、自由に変更可能である。
【0196】
特に、上記第2の実施の形態では、下部電極層10と有機層70との間の距離が、赤色有機EL素子400Rおよび青色有機EL素子400BGよりも緑色有機発光素子400Gにおいて大きくなるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、下部電極層10と有機層70との間の距離は、青色有機発光素子400B、緑色有機発光素子400Gおよび赤色有機発光素子400Rのうちの少なくとも1つにおいて異なっている限り、自由に変更可能である。すなわち、下部電極層10と有機層70との間の距離は、青色有機発光素子400B、緑色有機発光素子400Gおよび赤色有機発光素子400Rの間において、自由に設定可能である。ただし、上記したように、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの色純度を向上させることを考慮すれば、下部電極層10と有機層70との間の距離は、赤色有機EL素子400Rおよび青色有機EL素子400BGよりも緑色有機発光素子400Gにおいて大きくなっているのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明に係る有機発光素子および有機発光装置は、いわゆる有機ELディスプレイに適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る有機ELディスプレイに搭載される有機EL素子の断面構成を模式的に表す断面図である。
【図2】図1に示した有機EL素子に対する比較例としての有機EL素子の断面構成を表す断面図である。
【図3】図1に示した有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る有機ELディスプレイの全体の断面構成を表す断面図である。
【図5】図4に示した有機ELディスプレイのうちの主要部(有機EL素子)の断面構成を拡大して模式的に表す断面図である。
【図6】図4に示した有機ELディスプレイのうちの主要部(有機EL素子)の断面構成を拡大して詳細に表す断面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る有機ELディスプレイの構成に関する変形例を表す断面図である。
【図8】図7に示した有機ELディスプレイのうちの主要部(有機EL素子)の断面構成を拡大して模式的に表す断面図である。
【図9】図7に示した有機ELディスプレイのうちの主要部(有機EL素子)の断面構成を拡大して詳細に表す断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る有機ELディスプレイに搭載される有機EL素子(青色有機EL素子および赤色有機EL素子)の断面構成を模式的に表す断面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る有機ELディスプレイに搭載される有機EL素子(緑色有機EL素子)の断面構成を模式的に表す断面図である。
【図12】図10に示した有機EL素子(青色有機EL素子および赤色有機EL素子)の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図13】図10に示した有機EL素子(青色有機EL素子および赤色有機EL素子)の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図14】図11に示した有機EL素子(緑色有機EL素子)の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図15】図13に示した有機EL素子(青色有機EL素子および赤色有機EL素子)の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図16】図10に示した有機EL素子(青色有機EL素子および赤色有機EL素子)の構成に関するさらに他の変形例を表す断面図である。
【図17】図11に示した有機EL素子(緑色有機EL素子)の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図18】図16に示した有機EL素子(青色有機EL素子および赤色有機EL素子)の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図19】図16に示した有機EL素子(青色有機EL素子および赤色有機EL素子)の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図20】図17に示した有機EL素子(緑色有機EL素子)の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図21】図19に示した有機EL素子(青色有機EL素子および赤色有機EL素子)の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図22】本発明の第2の実施の形態に係る有機ELディスプレイの全体の断面構成を表す断面図である。
【図23】図22に示した有機ELディスプレイのうちの主要部(有機EL素子)の断面構成を拡大して模式的に表す断面図である。
【図24】図22に示した有機ELディスプレイのうちの主要部(青色有機EL素子および赤色有機EL素子)の断面構成を拡大して詳細に表す断面図である。
【図25】図22に示した有機ELディスプレイのうちの主要部(緑色有機EL素子)の断面構成を拡大して詳細に表す断面図である。
【図26】図24に示した有機EL素子(青色有機EL素子および赤色有機EL素子)の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図27】図24に示した有機EL素子(青色有機EL素子および赤色有機EL素子)の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図28】図25に示した有機EL素子(緑色有機EL素子)の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図29】図27に示した有機EL素子(青色有機EL素子および赤色有機EL素子)の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図30】図22に示した有機ELディスプレイの構成に関する変形例を表す断面図である。
【図31】図23に示した有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図32】図24に示した有機EL素子(青色有機EL素子および赤色有機EL素子)の構成に関するさらに他の変形例を表す断面図である。
【図33】図25に示した有機EL素子(緑色有機EL素子)の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図34】図32に示した有機EL素子(青色有機EL素子および赤色有機EL素子)の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図35】図32に示した有機EL素子(青色有機EL素子および赤色有機EL素子)の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図36】図33に示した有機EL素子(緑色有機EL素子)の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図37】図35に示した有機EL素子(青色有機EL素子および赤色有機EL素子)の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図38】実施例1および比較例の有機EL素子の発光スペクトルを表す図である。
【図39】実施例1および比較例の有機EL素子の他の発光スペクトルを表す図である。
【図40】実施例2の有機E素子の発光スペクトルを表す図である。
【図41】実施例2の有機EL素子の他の発光スペクトルを表す図である。
【図42】カラーフィルタの透過特性を表す図である。
【符号の説明】
【0199】
1…基板、2B,2G,2R,962B,962G,962R…透明導電層、10,461B,461G,461R,961B,961G,961R…下部電極層、10M,30M,461BM,461GM,461RM,464BM,464GM,464RM,961BM,961GM,961RM…反射面、20,70,463,963…有機層、21,23,25,27,29,71,73,75,77,79,81,4631,4633,4635,4637,4639,9631,9633,9635,9637,9639,9641…発光補助層、22,24,72,76,80,4632,4634,9632,9636,9640…青色発光層、22M,24M,26M,28M,72M,74M,76M,78M,80M,4632M,4634M,4636M,4638M,9632M,9634M,9636M,9638M,9640M…発光面、26,74,4636,9634…緑色発光層、28,78,4638,9638…赤色発光層、30,464,464B,464G,464R,964,964B,964G,964R…上部電極層、40…駆動パネル、41…駆動用基板、42…TFT、43…層間絶縁層、44…駆動配線、45…平坦化絶縁層、46,96,100…有機EL素子、46B,96B…青色有機EL素子、46G,96G…緑色有機EL素子、46R,96R…赤色有機EL素子、47…層内絶縁層、48…保護層、50…封止パネル、51…封止用基板、52…カラーフィルタ、52B…青色フィルタ領域、52G…緑色フィルタ領域、52R…赤色フィルタ領域、60…接着層、300…有機ELディスプレイ、H…光、HB1,HB2,HB3,HPB…青色光、HG,HPG…緑色光、HR,HPR…赤色光、HP…画像表示用の光、LB1,LB2,LB3,LG,LR…光学的距離、NB,NG,NR…発光点、TB,TG,TR…厚さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射性を有する第1の電極層と光透過性を有する第2の電極層との間に、複数の発光層が積層された積層構造を有する有機層が設けられており、
前記第1の電極層と前記複数の発光層のうちの各発光層との間の距離が、下記に示した関係式を満たしている
ことを特徴とする有機発光素子。
L=(m−Φ/2π)λ/2
(「L」は第1の電極層と各発光層との間の距離(光学的距離)、「m」は次数(0または整数)、「Φ」は各発光層において発生した光が第1の電極層において反射する際に生じる位相シフト、「λ」は各発光層において発生した光が有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【請求項2】
前記複数の発光層が、前記第1の電極層に近い側から順に、青色光を発生させる第1の青色発光層および第2の青色発光層と、緑色光を発生させる緑色発光層と、赤色光を発生させる赤色発光層と、を含んでおり、
前記関係式中の次数mが、前記第1の青色発光層に関してm=0、前記第2の青色発光層に関してm=1、前記緑色発光層に関してm=1、前記赤色発光層に関してm=1である
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光素子。
【請求項3】
光反射性を有する第1の電極層と光透過性を有する第2の電極層との間に、複数の発光層が積層された積層構造を有する有機層が設けられ、その有機層において発生した光をそれぞれ青色光、緑色光および赤色光として放出する青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子、を含み、
前記第1の電極層と前記複数の発光層のうちの各発光層との間の距離が、前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のいずれにおいても下記に示した関係式を満たしていると共に、
前記第1の電極層と前記有機層との間の距離が、前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のうちの少なくとも1つにおいて異なっている
ことを特徴とする有機発光素子。
L=(m−Φ/2π)λ/2
(「L」は第1の電極層と各発光層との間の距離(光学的距離)、「m」は次数(0または整数)、「Φ」は各発光層において発生した光が第1の電極層において反射する際に生じる位相シフト、「λ」は各発光層において発生した光が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【請求項4】
前記第1の電極層と前記有機層との間の距離が、前記青色有機発光素子および前記赤色有機発光素子よりも前記緑色有機発光素子において大きくなっている
ことを特徴とする請求項3記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記緑色有機発光素子において、前記第1の電極層と前記有機層との間に透明導電層が設けられており、
前記青色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のいずれにおいても、前記第1の電極層と前記有機層との間に前記透明導電層が設けられていない
ことを特徴とする請求項4記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のいずれにおいても、前記第1の電極層と前記有機層との間に透明導電層が設けられており、
その透明導電層の厚さが、前記青色有機発光素子および前記赤色有機発光素子よりも前記緑色有機発光素子において大きくなっている
ことを特徴とする請求項4記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記複数の発光層が、前記第1の電極層に近い側から順に、青色光を発生させる第1の青色発光層と、緑色光を発生させる緑色発光層と、青色光を発生させる第2の青色発光層と、赤色光を発生させる赤色発光層と、を含んでおり、
前記関係式中の次数mが、前記第1の青色発光層に関してm=0、前記緑色発光層に関してm=1、前記第2の青色発光層に関してm=1、前記赤色発光層に関してm=1である
ことを特徴とする請求項3記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記複数の発光層が、前記第1の電極層に近い側から順に、青色光を発生させる第1の青色発光層と、緑色光を発生させる緑色発光層と、青色光を発生させる第2の青色発光層と、赤色光を発生させる赤色発光層と、青色光を発生させる第3の青色発光層と、を含んでおり、
前記関係式中の次数mが、前記第1の青色発光層に関してm=0、前記緑色発光層に関してm=1、前記第2の青色発光層に関してm=1、前記赤色発光層に関してm=1、前記第3の青色発光層に関してm=2である
ことを特徴とする請求項3記載の有機発光素子。
【請求項9】
光反射性を有する第1の電極層と光透過性を有する第2の電極層との間に、複数の発光層が積層された積層構造を有する有機層が設けられた有機発光素子を備え、
前記第1の電極層と前記複数の発光層のうちの各発光層との間の距離が、下記に示した関係式を満たしている
ことを特徴とする有機発光装置。
L=(m−Φ/2π)λ/2
(「L」は第1の電極層と各発光層との間の距離(光学的距離)、「m」は次数(0または整数)、「Φ」は各発光層において発生した光が第1の電極層において反射する際に生じる位相シフト、「λ」は各発光層において発生した光が有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【請求項10】
光反射性を有する第1の電極層と光透過性を有する第2の電極層との間に、複数の発光層が積層された積層構造を有する有機層が設けられ、その有機層において発生した光をそれぞれ青色光、緑色光および赤色光として放出する青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子、を含む有機発光素子を備え、
前記第1の電極層と前記複数の発光層のうちの各発光層との間の距離が、前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のいずれにおいても下記に示した関係式を満たしていると共に、
前記第1の電極層と前記有機層との間の距離が、前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のうちの少なくとも1つにおいて異なっている
ことを特徴とする有機発光装置。
L=(m−Φ/2π)λ/2
(「L」は第1の電極層と各発光層との間の距離(光学的距離)、「m」は次数(0または整数)、「Φ」は各発光層において発生した光が第1の電極層において反射する際に生じる位相シフト、「λ」は各発光層において発生した光が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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