有機発光素子および有機発光装置
【課題】 発光性能を可能な限り向上させることが可能な有機発光素子を提供する。
【解決手段】 青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rにおいて、下部電極層161B,161G,161Rと上部電極層164との間に設けられた有機層163が、複数の発光層が積層された積層構造を有している。特に、(1)下部電極層161B,161G,161Rの反射面と複数の発光層のうちの各発光層の発光面との間の距離(第1の光学的距離)が所定の関係式を満たし、(2)下部電極層161B,161G,161Rの反射面と反射面規定層165,166の界面との間の距離(第2の光学的距離)が他の所定の関係式2を満たし、(3)下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離が青色有機発光素子16Bおよび赤色有機発光素子16Rよりも緑色有機発光素子16Gにおいて大きくなっている。
【解決手段】 青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rにおいて、下部電極層161B,161G,161Rと上部電極層164との間に設けられた有機層163が、複数の発光層が積層された積層構造を有している。特に、(1)下部電極層161B,161G,161Rの反射面と複数の発光層のうちの各発光層の発光面との間の距離(第1の光学的距離)が所定の関係式を満たし、(2)下部電極層161B,161G,161Rの反射面と反射面規定層165,166の界面との間の距離(第2の光学的距離)が他の所定の関係式2を満たし、(3)下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離が青色有機発光素子16Bおよび赤色有機発光素子16Rよりも緑色有機発光素子16Gにおいて大きくなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネセンス(EL;Electro Luminescence)現象を利用して発光する有機発光素子および有機発光素子を備えた有機発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイの1つとして、有機EL現象を利用して画像を表示する有機発光装置(いわゆる有機ELディスプレイ)が注目されている。この有機ELディスプレイは、有機発光素子(いわゆる有機EL素子)の発光現象を利用して画像を表示する自発光型のディスプレイであるため、視野角が広く、消費電力が小さく、かつ軽量である点において優れている。
【0003】
有機ELディスプレイに搭載される有機EL素子は、主に、2つの電極層の間に有機層が設けられた構造を有している。この有機層は、発光源としての発光層と共に、その発光層を発光させるための正孔輸送層や電子輸送層などを併せて含んでいる。
【0004】
有機EL素子の構造に関しては、発光性能を向上させることを目的として、既にいくつかの態様が提案されている。
【0005】
具体的には、発光効率を高めると共に発光寿命を長期化するために、複数の発光層が積層されることにより直列に接続された積層構造(いわゆるタンデム構造)を有するように有機層を構成する技術が知られている(例えば、特許文献1〜7参照。)。この種の有機層では、任意の数の発光層を積層させることが可能である。この場合には、特に、青色光を発生させる青色発光層と、緑色光を発生させる緑色発光層と、赤色光を発生させる赤色発光層とを積層させることにより、それらの青色光、緑色光および赤色光の合成光として白色光を発生させることが可能である。
【特許文献1】特開昭61−037858号公報
【特許文献2】特開平11−329748号公報
【特許文献3】特開平11−329749号公報
【特許文献4】特開2003−045676号公報
【特許文献5】特開2003−264085号公報
【特許文献6】特開2003−272860号公報
【特許文献7】特開2004−039617号公報
【0006】
また、有機層のうちの発光層から発生した光(白色光)の中から所望の色(波長域)の光を効率よく取り出すために、複数の有機EL素子の間において光学的距離の差異を利用して光の干渉現象を生じさせる技術が知られている(例えば、特許文献8〜12参照。)。この種の有機EL素子では、光の3原色に対応する3色の光、すなわち青色光、緑色光および赤色光を個別に放出させることが可能である。
【特許文献8】特開2000−243573号公報
【特許文献9】特開2000−323277号公報
【特許文献10】特開2003−142277号公報
【特許文献11】特開2004−134101号公報
【特許文献12】特開2004−253389号公報
【0007】
さらに、上記した青色光、緑色光および赤色光の色純度を高めるために、光反射性を有する一方の電極層と光半透過性を有する他方の電極層との間において、有機層のうちの発光層から発生した光を反射させて共振させる技術が知られている(例えば、特許文献13,14参照。)。この光共振機能を有する有機EL素子の素子構造は、一般に、「光共振器構造(いわゆるマイクロキャビティ構造)」と呼ばれている。特に、光共振器構造を有する有機EL素子は、上記した光の干渉現象を利用する場合と比較して光取り出し効率が向上し、すなわち正面光強度が大きくなると共に色純度が高くなることから、フルカラーディスプレイに適している。
【特許文献13】国際公開第WO01/039554号パンフレット
【特許文献14】特開平10−177896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、最近では、有機ELディスプレイの実用性が広く認知されたことに伴い、表示性能の向上に関する要望が一層高まりつつある。このような技術的背景を踏まえると、今後益々有機ELディスプレイの市場普及を促進させるためには、表示性能を可能な限り向上させるために、その表示性能に寄与する有機EL素子の発光性能を可能な限り向上させる必要がある。しかしながら、従来の有機ELディスプレイでは、有機EL素子の発光性能を向上させる観点において未だ十分とは言えないため、多分に改善の余地がある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、発光性能を可能な限り向上させることが可能な有機発光素子を提供することにある。
【0010】
また、本発明の第2の目的は、表示性能を可能な限り向上させることが可能な有機発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る有機発光素子は、第1の電極層と第2の電極層との間に複数の発光層が積層された積層構造を有する有機層が設けられ、複数の発光層から発生した光を第1の反射面と第2の反射面との間において反射させて共振させることによりそれぞれ第2の電極層を経由して青色光、緑色光および赤色光を放出する青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子を含み、第1の反射面と複数の発光層のうちの各発光層の発光面との間の距離が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のいずれにおいても下記に示した関係式1を満たし、第1の反射面と第2の反射面との間の距離が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のいずれにおいても下記に示した関係式2を満たし、第1の電極層と有機層との間の距離が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のうちの少なくとも1つにおいて異なっているものである。
L=(mL−ΦL/2π)λL/2・・・関係式1
(「L」は第1の反射面と各発光層の発光面との間の距離(第1の光学的距離)、「mL」は次数(0または整数)、「ΦL」は各発光層において発生した光が第1の反射面において反射する際に生じる位相シフト、「λL」は各発光層において発生した光が有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
D=(mD−ΦD/2π)λD/2・・・関係式2
(「D」は第1の反射面と第2の反射面との間の距離(第2の光学的距離)、「mD」は次数(0または整数)、「ΦD」は複数の発光層において発生した光が第1の反射面および第2の反射面において反射する際に生じる位相シフト、「λD」は複数の発光層において発生した光が有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0012】
本発明に係る有機発光装置は、第1の電極層と第2の電極層との間に複数の発光層が積層された積層構造を有する有機層が設けられ、複数の発光層から発生した光を第1の反射面と第2の反射面との間において反射させて共振させることによりそれぞれ第2の電極層を経由して青色光、緑色光および赤色光を放出する青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子を含む有機発光素子を備え、第1の反射面と複数の発光層のうちの各発光層の発光面との間の距離が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のいずれにおいても下記に示した関係式3を満たし、第1の反射面と第2の反射面との間の距離が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のいずれにおいても下記に示した関係式4を満たし、第1の電極層と有機層との間の距離が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のうちの少なくとも1つにおいて異なっているものである。
L=(mL−ΦL/2π)λL/2・・・関係式3
(「L」は第1の反射面と各発光層の発光面との間の距離(第1の光学的距離)、「mL」は次数(0または整数)、「ΦL」は各発光層において発生した光が第1の反射面において反射する際に生じる位相シフト、「λL」は各発光層において発生した光が有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
D=(mD−ΦD/2π)λD/2・・・関係式4
(「D」は第1の反射面と第2の反射面との間の距離(第2の光学的距離)、「mD」は次数(0または整数)、「ΦD」は複数の発光層において発生した光が第1の反射面および第2の反射面において反射する際に生じる位相シフト、「λD」は複数の発光層において発生した光が有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0013】
本発明に係る有機発光素子では、青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子において、第1の電極層と第2の電極層との間に設けられた有機層が複数の発光層が積層された積層構造を有しており、特に、(1)第1の反射面と複数の発光層のうちの各発光層の発光面との間の距離(第1の光学的距離)が上記した関係式1を満たし、(2)第1の反射面と第2の反射面との間の距離(第2の光学的距離)が上記した関係式2を満たし、(3)第1の電極層と有機層との間の距離が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のうちの少なくとも1つにおいて異なっている。この場合には、第1の光学的距離の差異に基づく光の干渉現象を利用して、青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子からそれぞれ青色光、緑色光および赤色光が放出される。特に、第1の光学的距離が関係式1を満たしているため、光の干渉現象を利用して青色光、緑色光、青色光および赤色光HRの光取り出し効率が増加することにより、それらの青色光、緑色光および赤色光の強度が増強される。しかも、青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子がいずれも光共振器構造を有しており、特に、第2の光学的距離が関係式2を満たしているため、光の共振現象を利用して青色光、緑色光および赤色光の色純度が向上する。この場合には、例えば、複数の発光層が4種類の発光層(青色光を発生させる第1の青色発光層,緑色光を発生させる緑色発光層,青色光を発生させる第2の青色発光層,赤色光を発生させる赤色発光層)を含む場合に、上記した関係式1,2中の次数mL,mDが第1の青色発光層に関してmL=0,mD=2、緑色発光層に関してmL=1,mD=2、第2の青色発光層に関してmL=1,mD=2、赤色発光層に関してmL=1,mD=1であるか、あるいは複数の発光層が5種類の発光層(青色光を発生させる第1の青色発光層,緑色光を発生させる緑色発光層,青色光を発生させる第2の青色発光層,赤色光を発生させる赤色発光層,青色光を発生させる第3の青色発光層)を含む場合に、上記した関係式1,2中の次数mL,mDが第1の青色発光層に関してmL=0,mD=2、緑色発光層に関してmL=1,mD=2、第2の青色発光層に関してmL=1,mD=2、赤色発光層に関してmL=1,mD=1、第3の青色発光層に関してmL=2,mD=2であれば、光の干渉現象を利用して青色光、緑色光および赤色光の強度を増強させる観点において、その干渉条件が各色ごとに最適化される。
【0014】
本発明に係る有機発光装置では、上記した本発明に係る有機発光素子(青色有機発光素子,緑色有機発光素子,赤色有機発光素子)を備えているため、それらの青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子からそれぞれ放出される青色光、緑色光および赤色光の強度が増強されると共に色純度が向上ずる。
【0015】
なお、本発明に係る有機発光素子では、第1の反射面が第1の電極層と有機層との間の界面である一方で、(1)青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子がいずれも第1の電極層に近い側から順に相対的に高い屈折率を有する高屈折率層および相対的に低い屈折率を有する低屈折率層を含み、第2の反射面が高屈折率層と低屈折率層との間の界面であってもよいし、(2)青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子がいずれも第1の電極層に近い側から順に相対的に低い屈折率を有する低屈折率層および相対的に高い屈折率を有する高屈折率層を含み、第2の反射面が低屈折率層と高屈折率層との間の界面であってもよいし、あるいは(3)青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子がいずれも第1の電極層に近い側から順に相対的に低い屈折率を有する第1の低屈折率層および相対的に高い屈折率を有する第1の高屈折率層と相対的に高い屈折率を有する第2の高屈折率層および相対的に低い屈折率を有する第2の低屈折率層とを含み、第2の反射面が第1の低屈折率層と第1の高屈折率層との間の界面および第2の高屈折率層と第2の低屈折率層との間の界面であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る有機発光素子によれば、青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子において、第1の電極層と第2の電極層との間に設けられた有機層が複数の発光層が積層された積層構造を有しており、特に、上記した(1)〜(3)の構成条件を満たしているので、その(1)〜(3)の構成条件を満たしていない場合と比較して、青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子からそれぞれ放出される青色光、緑色光および赤色光の強度が増強されると共に色純度が向上する。したがって、発光性能を向上させることができる。この場合には、例えば、複数の発光層が4種類の発光層(青色光を発生させる第1の青色発光層,緑色光を発生させる緑色発光層,青色光を発生させる第2の青色発光層,赤色光を発生させる赤色発光層)を含む場合に、上記した関係式1,2中の次数mL,mDが第1の青色発光層に関してmL=0,mD=2、緑色発光層に関してmL=1,mD=2、第2の青色発光層に関してmL=1,mD=2、赤色発光層に関してmL=1,mD=1であるか、あるいは複数の発光層が5種類の発光層(青色光を発生させる第1の青色発光層,緑色光を発生させる緑色発光層,青色光を発生させる第2の青色発光層,赤色光を発生させる赤色発光層,青色光を発生させる第3の青色発光層)を含む場合に、上記した関係式1,2中の次数mL,mDが、第1の青色発光層に関してmL=0,mD=2、緑色発光層に関してmL=1,mD=2、第2の青色発光層に関してmL=1,mD=2、赤色発光層に関してmL=1,mD=1、第3の青色発光層に関してmL=2,mD=2であれば、光の干渉条件が各色ごとに最適化されるため、発光性能を可能な限り向上させることができる。
【0017】
本発明に係る有機発光装置によれば、上記した本発明に係る有機発光素子を備えているので、その有機発光素子の発光性能が可能な限り向上する。したがって、表示性能を可能な限り向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
[第1の実施の形態]
まず、図1〜図4を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る有機発光装置の構成について説明する。図1〜図4は、本実施の形態に係る有機発光装置としての有機ELディスプレイ100の構成を表しており、図1は全体の断面構成を示し、図2は主要部の断面構成を拡大して模式的に示し、図3および図4は図2に示した主要部の断面構成を詳細に示している。
【0020】
なお、本発明の第1の実施の形態に係る「有機発光素子」は、本実施の形態に係る有機ELディスプレイ100に有機EL素子16として搭載されるものであるため、その「有機発光素子」に関しては以下で併せて説明する。
【0021】
有機ELディスプレイ100は、有機EL現象を利用して画像表示用の光HPを放出することにより画像を表示するものである。この有機ELディスプレイ100は、例えば、図1に示したように、画像表示用の光HPを放出する有機EL素子16を備えており、その有機EL素子16は、青色光HPB(例えば、約460nm近傍の波長域)、緑色光HPG(例えば、約530nm近傍の波長域)および赤色光HPR(例えば、約620nm近傍の波長域)をそれぞれ放出する青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rを含んでいる。
【0022】
より具体的には、有機ELディスプレイ100は、例えば、図1に示したように、駆動パネル10および封止パネル20が互いに対向配置され、それらの駆動パネル10および封止パネル20が接着層30を介して互いに貼り合わされた構造を有している。この有機ディスプレイ100は、例えば、画像表示用の光HPを上方、すなわち封止パネル20を経由して外部へ放出することにより画像を表示するトップエミッション型構造を有している。
【0023】
駆動パネル10は、例えば、駆動用基板11の一面に、その駆動用基板11に近い側から順に、薄膜トランジスタ(TFT;thin film transistor)12と、層間絶縁層13と、駆動配線14と、平坦化絶縁層15と、上記した有機EL素子16(青色有機EL素子16B,緑色有機EL素子16G,赤色有機EL素子16R)および層内絶縁層17と、保護層18とが積層された構造を有している。
【0024】
駆動用基板11は、TFT12や有機EL素子16などを支持するものであり、例えば、シリコン(Si)やプラスチックなどの非光透過性絶縁性材料により構成されている。
【0025】
TFT12は、有機EL素子16を駆動させるものであり、例えば、駆動用基板11の一面に複数個に渡ってマトリックス状に配列されている。このTFT12は、層間絶縁層13に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて駆動配線14に電気的に接続されている。
【0026】
層間絶縁層13は、TFT12を周囲から電気的に分離するものであり、例えば、酸化ケイ素(SiO2 )やPSG(phospho-silicate glass)などの絶縁性材料により構成されている。この層間絶縁層13は、例えば、TFT12およびその周辺の駆動用基板11を覆うように配設されている。
【0027】
駆動配線14は、信号線として機能することにより有機EL素子16を駆動させるものであり、例えば、アルミニウム(Al)やアルミニウム銅合金(AlCu)などの導電性材料により構成されている。この駆動配線14は、平坦化絶縁層15に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて有機EL素子16に電気的に接続されている。なお、駆動配線14は、例えば、各TFT12ごとに2つずつ(ゲート信号線,ドレイン信号線)設けられており、上記したように、TFT12に電気的に接続されている。
【0028】
平坦化絶縁層15は、TFT12および駆動配線14と有機EL素子16との間を電気的に分離すると共に、その有機EL素子16が配置される下地を平坦化するものであり、例えば、酸化ケイ素(SiO2 )などの絶縁性材料により構成されている。
【0029】
有機EL素子16は、有機EL現象を利用して発光するものであり、上記したように、青色光HPBを放出する青色有機EL素子16Bと、緑色光HPGを放出する緑色有機EL素子16Gと、赤色光HPRを放出する赤色有機EL素子16Rとを含んでいる。なお、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rは、それらの青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rを1組として、TFT12の配列パターンに対応して複数組に渡ってマトリックス状に配列されている。
【0030】
これらの青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rは、互いにほぼ同様の構造を有しており、すなわち光反射性を有する下部電極層161B,161G,161Rと光半透過性を有する上部電極層164との間に有機層163が設けられた構造を有している。
【0031】
より詳細には、便宜上、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rの積層構造を互いに分離すると、それらの積層構造は、例えば、図2〜図4に示したように示される。なお、図3では、例えば、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rが互いに同一の積層構造を有していることに伴い、図示内容を簡略化するために、それらの青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rの積層構造をまとめて示している。
【0032】
すなわち、青色有機EL素子16Bは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161B、有機層163、上部電極層164および反射面規定層165,166が積層された積層構造を有している。緑色有機EL素子16Gは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161G、透明導電層162G、有機層163、上部電極層164および反射面規定層165,166が積層された積層構造を有している。赤色有機EL素子16Rは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161R、有機層163、上部電極層164および反射面規定層165,166が積層された積層構造を有している。特に、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rのそれぞれは、厳密には、上記したように互いに同様の積層構造を有していることに伴い、青色光HPBまたは赤色光HPRのいずれか一方だけでなく、青色光HPBおよび赤色光HPRの双方を放出するようになっている。
【0033】
下部電極層161B,161G,161Rは、有機層163に電圧を印加するための電極として機能する第1の電極層であり、図示しない駆動電源に接続されている。特に、下部電極層161B,161G,161Rは、有機層163から発生した光を上部電極層164を経由して外部に放出させるために、その光を反射させる反射電極として機能するものである。これらの下部電極層161B,161G,161Rは、光反射性を有し、より具体的には可視光の波長域において十分な反射率を有する材料により構成されている。ここでは、下部電極層161B,161G,161Rは、例えば、陽極として機能するために、有機層163に正孔(いわゆるホール)を効率よく注入することが可能であり、より具体的には仕事関数が十分に大きな材料により構成されている。この場合の下部電極層161B,161G,161Rの構成材料としては、例えば、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、セレン(Se)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、レニウム(Re)、タングステン(W)、モリブデン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)などの金属や、それらの金属の合金などが挙げられる。
【0034】
透明導電層162Gは、緑色有機EL素子16Gの光学的な構成条件(後述する光学的距離L,D)を調整するためのものである。この透明導電層162Gは、例えば、酸化インジウム錫(ITO;indium tin oxide)や酸化亜鉛などの透明導電材料により構成されており、厚さTGを有している。
【0035】
有機層163は、有機EL現象を利用して発光するものであり、複数の発光層を含み、すなわち複数の発光層が積層された積層構造(いわゆるタンデム構造)を有している。この有機層163は、例えば、複数の発光層として4種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)を含むと共に、それらの4種類の発光層を発光させるための複数の発光補助層(発光補助層1631,1633,1635,1637,1639)を併せて含んでいる。すなわち、有機層163は、例えば、下部電極層161B,161G,161Rに近い側から順に、発光補助層1631、青色発光層1632、発光補助層1633、緑色発光層1634、発光補助層1635、青色発光層1636、発光補助層1637、赤色発光層1638および発光補助層1639が積層された積層構造を有している。
【0036】
発光補助層1631は、青色発光層1632に正孔を供給するものであり、例えば、下部電極層161B,161G,161Rに近い側から順に、正孔注入層および正孔輸送層(いずれも図示せず)が積層された積層構造を有している。この正孔注入層は、例えば、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)などにより構成されており、正孔輸送層は、例えば、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)などにより構成されている。
【0037】
青色発光層1632は、有機EL現象を利用して青色光HB1を発生させる発光層(第1の青色発光層)であり、例えば、化1に示した構造式で表される4,4’−(ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル)(BCzVBi)が約5体積%混合された、化2に示した構造式で表される4,4−ビス(2,2−ジフェニル−エテン−1−イル)−ビフェニル(DPVBi)などの電子輸送性発光材料により構成されている。
【0038】
【化1】
【0039】
【化2】
【0040】
発光補助層1633は、青色発光層1632に電子を供給すると共に緑色発光層1634に正孔を供給するものであり、例えば、青色発光層1632に近い側から順に、電子輸送層、金属層および正孔輸送層(いずれも図示せず)が積層された積層構造を有している。この電子輸送層は、例えば、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq)などにより構成されており、金属層は、例えば、フッ化リチウム(LiF)/マグネシウム銀合金(MgAg)などにより構成されており、正孔輸送層は、例えば、α−NPDなどにより構成されている。この金属層の厚さは、約0.2nm〜4nmであるのが好ましい。なぜなら、金属層の厚さが大きすぎると、光吸収量が大きくなることに起因して光取り出し効率が低下してしまうからである。この金属層の厚さが上記した範囲内であれば、発光補助層1633が電子および正孔の供給機能を果たしつつ、その発光補助層1633の透過率が約80%以上となるため、十分な光取り出し効率が得られる。なお、発光補助層1633には、例えば、周知のタンデム構造を有する有機EL素子に適用されている各種層構造、より具体的には2つの発光層間に設けられることにより電子および正孔を発生または分離することが可能な各種層構造が適用されてもよい。この場合には、十分な光取り出し効率を得る観点から、発光補助層1633が可視光の波長域において透明であり、より具体的には透過率が約80%以上であるのが好ましい。
【0041】
緑色発光層1634は、有機EL現象を利用して緑色光HGを発生させる発光層であり、例えば、クマリン6が約1体積%混合されたAlq(トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム)などの電子輸送性発光材料により構成されている。
【0042】
発光補助層1635は、緑色発光層1634に電子を供給すると共に青色発光層1636に正孔を供給するものであり、例えば、発光補助層1633と同様の構成を有している。
【0043】
青色発光層1636は、有機EL現象を利用して青色光HB2を発生させる発光層(第2の青色発光層)であり、例えば、青色発光層1632と同様の電子輸送性発光材料により構成されている。なお、青色発光層1636の構成材料は、必ずしも青色発光層1632の構成材料と一致していなければならないわけではなく、その青色発光層1632の構成材料と異なっていてもよい。
【0044】
発光補助層1637は、青色発光層1636に電子を供給すると共に赤色発光層1638に正孔を供給するものであり、例えば、発光補助層1633と同様の構成を有している。
【0045】
赤色発光層1638は、有機EL現象を利用して赤色光HRを発生させる発光層であり、例えば、化3に示した構造式で表されるビスアミノスチリルナフタレンのメトキシ置換体(BSN)が約30体積%混合されたAlqなどの正孔輸送性発光材料により構成されている。
【0046】
【化3】
【0047】
発光補助層1639は、赤色発光層1638に電子を供給するものであり、例えば、上部電極層164に近い側から順に、電子注入層および電子輸送層(いずれも図示せず)が積層された積層構造を有している。この電子注入層は、例えば、マグネシウム(Mg)が約5体積%混合されたAlqなどにより構成されており、電子輸送層は、例えば、Alqなどにより構成されている。なお、電子注入層は、例えば、上記したマグネシウム(Mg)が約5体積%混合されたAlqの層上に、マグネシウム(Mg)および銀(Ag)の共蒸着層(約0.1nm〜10nm厚)が積層された積層構造を有していてもよいし、あるいはフッ化リチウム(LiF)の層上に、マグネシウムおよび銀の共蒸着層(約0.1nm〜10nm厚)が積層された積層構造を有していてもよい。
【0048】
上部電極層164は、有機層163に電圧を印加するための電極として機能する第2の電極層であり、下部電極層161B,161G,161Rと同様に図示しない駆動電源に接続されている。特に、上部電極層164は、有機層163から発生した光を外部に導くために、その光を透過させる透過電極として機能するものである。この上部電極層164は、光透過性を有し、より具体的には可視光の波長域において十分な透過率を有する材料により構成されている。この場合の上部電極層164の構成材料としては、例えば、酸化錫(SnO2 )、酸化インジウム錫(ITO;Indium Tin Oxide)、酸化亜鉛(ZnO)または酸化チタン(TiO2 )などの透明導電材料が挙げられる。なお、「透明」とは、いわゆる光透過性と同義である。
【0049】
反射面規定層165,166は、屈折率の差異を利用して光共振器構造のうちの反射面(第2の反射面;後述する反射面1656M)を規定するものである。すなわち、反射面規定層165は、相対的に高い屈折率nHを有することにより高屈折率層として機能するものであり、可視光の波長域において光吸収量が小さな材料により構成されている。この反射面規定層165の構成材料としては、例えば、ITO、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム(MgO)、酸化モリブデン(MoO3 )、酸化ニオブ(Nb2 O5 )またはセレン化亜鉛(ZnS)などの高屈折率材料が挙げられる。一方、反射面規定層166は、相対的に低い屈折率層nLを有することにより低屈折率層として機能するものであり、やはり可視光の波長域において光吸収量が小さな材料により構成されている。この反射面規定層166の構成材料としては、例えば、フッ化リチウム(LiF)、フッ化カルシウム(CaF2 )、フッ化マグネシウム(MgF2 )、フッ化アルミニウム(AlF3 )、臭化カリウム(KBr)、酸化ケイ素(SiO2 )または窒化ケイ素(SiN)などの低屈折率材料が挙げられる。確認までに、反射面規定層165,166は、上記したように高屈折率層または低屈折率層として機能し得る限り、単層構造を有していてもよいし、あるいは積層構造を有していてもよい。
【0050】
なお、図1に示したように、下部電極層161B,161G,161Rは、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rのそれぞれの配置領域ごとに分割されている。一方、有機層163、上部電極層164および反射面規定層165,166は、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rのそれぞれの配置領域を連続的に経由するように延在しており、すなわち青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rにより共有されている。
【0051】
層内絶縁層17は、例えば、ポリイミドまたはポリベンゾオキサゾールなどの有機絶縁性材料や酸化ケイ素(SiO2 )などの無機絶縁性材料により構成されており、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rの周囲に設けられている。
【0052】
保護層18は、主に有機EL素子16を保護するものであり、例えば、窒化ケイ素(SiN)などの光透過性誘電性材料により構成されたパッシベーション膜である。
【0053】
一方、封止パネル20は、封止用基板21の一面に、カラーフィルタ22が設けられた構造を有している。
【0054】
封止用基板21は、カラーフィルタ22を支持すると共に、画像表示用の光HPを透過させることにより外部へ放出させるためのものであり、例えば、ガラスなどの光透過性絶縁性材料により構成されている。
【0055】
カラーフィルタ22は、有機EL素子16(青色有機EL素子16B,緑色有機EL素子16G,赤色有機EL素子16R)において発生した青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRを透過させると共に、有機ELディスプレイ100の内部に外光が侵入することにより有機EL素子16などの高反射性部品において反射した際に、その反射光を吸収することによりコントラストを確保するためのものである。このカラーフィルタ22は、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rにそれぞれ対応して配置された3色のフィルタ領域、すなわち青色フィルタ領域22B、緑色フィルタ領域22Gおよび赤色フィルタ領域22Rを含んでいる。なお、青色フィルタ領域22B、緑色フィルタ領域22Gおよび赤色フィルタ領域22Rは、例えば、それぞれ青色、緑色および赤色の顔料が混入された樹脂を含んで構成されている。
【0056】
なお、接着層30は、駆動パネル10と封止パネル20とを互いに貼り合わせるためのものであり、例えば、熱硬化型樹脂などの接着材料を含んで構成されている。
【0057】
ここで、図2〜図4を参照して、有機EL素子16(青色有機EL素子16B,緑色有機EL素子16G,赤色有機EL素子16R)の詳細な構成について説明する。
【0058】
第1に、所定の反射面(第1の反射面)と有機層163を構成している複数の発光層のうちの各発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)の発光面との間の距離は、下記に示した関係式11を満たしている。
L=(mL−ΦL/2π)λL/2・・・関係式11
(「L」は所定の反射面と各発光層の発光面との間の距離(第1の光学的距離)、「mL」は次数(0または整数)、「ΦL」は各発光層から発生した光が所定の反射面において反射する際に生じる位相シフト、「λL」は各発光層から発生した光が有機発光素子16から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0059】
上記した「所定の反射面」とは、例えば、下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMであり、すなわち下部電極層161B,161Rのうちの発光補助層1631に隣接する面および下部電極層161Gのうちの透明導電層162Gに隣接する面である。
【0060】
図3および図4を参照して各発光層ごとに光学的距離Lを説明すると、以下の通りである。
【0061】
すなわち、下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと青色発光層1632の発光面1632Mとの間の光学的距離は、下記に示した関係式12を満たしている。ここでは、例えば、関係式12中の次数mLB1が、mLB1=0である。
LB1=(mLB1−ΦLB1/2π)λLB1/2・・・関係式12
(「LB1」は反射面161BM,161GM,161RMと発光面1632Mとの間の距離(第1の光学的距離)、「mLB1」は次数(0または整数)、「ΦLB1」は青色発光層1632から発生した青色光HB1が反射面161BM,161GM,161RMにおいて反射する際に生じる位相シフト、「λLB1」は青色発光層1632から発生した青色光HB1が青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0062】
上記した「発光面1632M」とは、青色発光層1632が面発光すると考えた場合に、その青色発光層1632中において発光している確率(有機EL現象を利用して実質的に発光している確率)が最も高い面であり、その青色発光層1632の材質(電子輸送性発光材料または正孔輸送性発光材料)に基づいて決定される面である。ここでは、例えば、青色発光層1632が電子輸送性発光材料により構成されていることに伴い、発光面1632Mは、その青色発光層1632のうちの発光補助層1631に隣接する面である。
【0063】
下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと緑色発光層1634の反射面1634Mとの間の光学的距離は、下記に示した関係式13を満たしている。ここでは、例えば、関係式13中の次数mLGが、mLG=1である。
LG=(mLG−ΦLG/2π)λLG/2・・・関係式13
(「LG」は反射面161BM,161GM,161RMと発光面1634Mとの間の距離(第1の光学的距離)、「mLG」は次数(0または整数)、「ΦLG」は緑色発光層1634から発生した緑色光HGが反射面161BM,161GM,161RMにおいて反射する際に生じる位相シフト、「λLG」は緑色発光層1634から発生した緑色光HGが青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0064】
上記した「発光面1634M」とは、例えば、緑色発光層1634が青色発光層1632と同様に電子輸送性発光材料により構成されていることに伴い、その緑色発光層1634のうちの発光補助層1633に隣接する面である。
【0065】
下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと青色発光層1636の反射面1636Mとの間の光学的距離は、下記に示した関係式14を満たしている。ここでは、例えば、関係式14中の次数mLB2が、mLB2=1である。
LB2=(mLB2−ΦLB2/2π)λLB2/2・・・関係式14
(「LB2」は反射面161BM,161GM,161RMと発光面1636Mとの間の距離(第1の光学的距離)、「mLB2」は次数(0または整数)、「ΦLB2」は青色発光層1636から発生した青色光HB2が反射面161BM,161GM,161RMにおいて反射する際に生じる位相シフト、「λLB2」は青色発光層1636から発生した青色光HGが青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0066】
上記した「発光面1636M」とは、例えば、青色発光層1636が青色発光層1632と同様に電子輸送性発光材料により構成されていることに伴い、その青色発光層1636のうちの発光補助層1635に隣接する面である。
【0067】
下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと赤色発光層1638の発光面1638Mとの間の光学的距離は、下記に示した関係式15を満たしている。ここでは、例えば、関係式15中の次数mLRが、mLR=1である。
LR=(mLR−ΦLR/2π)λLR/2・・・関係式15
(「LR」は反射面161BM,161GM,161RMと発光面1638Mとの間の距離(第1の光学的距離)、「mLR」は次数(0または整数)、「ΦLR」は赤色発光層1638から発生した赤色光HRが反射面161BM,161GM,161RMにおいて反射する際に生じる位相シフト、「λLR」は赤色発光層1638から発生した赤色光HRが青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0068】
上記した「発光面1638M」とは、例えば、赤色発光層1638が正孔輸送性発光材料により構成されていることに伴い、その赤色発光層1638のうちの発光補助層1639に隣接する面である。
【0069】
これらの光学的距離LB1,LG,LB2,LRは、青色発光層1632、緑色発光層1634、青色発光層1636および赤色発光層1638のそれぞれから発生した青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRが下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMにおいて反射されたのちに上部電極層164を経由することにより青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rの外部に放出される過程において、それらの青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRの光取り出し効率が光の干渉現象を利用して増加するように個別に設定されている。より具体的には、光学的距離LB1,LB2は、青色に対応する波長域(例えば、約460nm近傍の波長域)において青色光HB1,HB2の強度が増強されるように設定され、光学的距離LGは、緑色に対応する波長域(例えば、約530nm近傍の波長域)において緑色光HGの強度が増強されるように設定され、光学的距離LRは、赤色に対応する波長域(例えば、約620nm近傍の波長域)において赤色光HRの強度が増強されるように設定されている。
【0070】
第2に、下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離は、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rのうちの少なくとも1つにおいて異なっている。
【0071】
ここでは、例えば、上記した下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離が、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rよりも緑色有機EL素子16Gにおいて大きくなっている。より具体的には、例えば、図3および図4に示したように、緑色有機EL素子16Gにおいて、下部電極層161Gと有機層163との間に透明導電層162G(厚さTG)が設けられている一方で、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rのいずれにおいても、下部電極層161B,161Rと有機層163との間に上記した透明導電層162Gに対応する透明導電層が設けられていない。これにより、下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離は、上記した透明導電層162Gの厚さ分だけ、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rよりも緑色有機EL素子16Gにおいて大きくなっている。すなわち、緑色有機EL素子16Gでは、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rとは異なり、透明導電層162Gの厚さを加味して光学的距離LB1,LG,LB2,LRが規定される。
【0072】
これらの光学的距離LB1,LG,LB2,LRは、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rのそれぞれから青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRが放出される過程において、それらの青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rから光の干渉現象を利用して互いに異なる波長域の光が選択的に取り出されるように設定されている。より具体的には、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rでは、青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRの中から青色に対応する波長域(例えば、約460nm近傍の波長域)の青色光HPBおよび赤色に対応する波長域(例えば、約620nm近傍の波長域)の赤色光HPRが選択的に取り出されると共に、緑色有機EL素子16Gでは、青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRの中から緑色に対応する波長域(例えば、約530nm近傍の波長域)の緑色光HPGが選択的に取り出されるように設定されている。
【0073】
第3に、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rは、有機層163のうちの複数の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)から発生した光を一方の反射面(第1の反射面)と他方の反射面(第2の反射面)との間において反射させて共振させる光共振器構造を有しており、すなわち一種の狭帯域フィルタとして働く機能を有している。
【0074】
これらの青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rでは、一方の反射面と他方の反射面との間の距離が、下記に示した関係式16を満たしている。
D=(mD−ΦD/2π)λD/2・・・関係式16
(「D」は一方の反射面と他方の反射面との間の距離(第2の光学的距離)、「mD」は次数(0または整数)、「ΦD」は複数の発光層から発生した光が一方の反射面および他方の反射面において反射する際に生じる位相シフト、「λL」は複数の発光層から発生した光が青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0075】
上記した「一方の反射面」とは、例えば、下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMである。また、「他方の反射面」とは、例えば、互いに隣接する2つの層間における屈折率の差異に基づいて光を反射し、すなわち下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMにおいて反射された光を反射し得るだけの十分な屈折率差を有する界面である。ここでは、例えば、高屈折率層として機能する反射面規定層165(屈折率nH)と低屈折率層として機能する反射面規定層166(屈折率nL)との間において十分な屈折率差が確保されていることに伴い、「他方の反射面」は、反射面規定層165,166の間の界面1656Mである。
【0076】
この光学的距離Dは、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rのそれぞれから青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが放出される過程において、それらの青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの色純度が光共振器構造の光共振現象を利用して増強されるように設定されている。ここでは、例えば、関係式16中の次数mDが、青色発光層1632に関してmD=2、緑色発光層1634に関してmD=2、青色発光層1636に関してmD=2、赤色発光層1638に関してmD=1である。
【0077】
この有機ELディスプレイ100は、以下のように動作する。
【0078】
すなわち、図1〜図4に示したように、駆動パネル10のうちのTFT12を利用して青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rが駆動され、すなわち下部電極層161B,161G,161Rと上部電極層164との間に電圧が印加されると、有機層163のうちの青色発光層1632、緑色発光層1634、青色発光層1636および赤色発光層1638(発光点NB,NG,NR)において、発光補助層1631,1633,1635,1637,1639から供給された正孔および電子が再結合することにより発光する。すなわち、青色発光層1632から青色光HB1が発生し、緑色発光層1634から緑色光HGが発生し、青色発光層1636から青色光HB2が発生し、赤色発光層1638から赤色光HRが発生する。
【0079】
この際、図3および図4に示したように、青色光HB1、緑色光HG、青色発光層HB2および赤色光HRが下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMにおいて反射されたのちに上部電極層164を経由することにより青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rから放出される過程において、光学的距離LB1,LG,LB2,LRの差異を利用して光の干渉現象が生じる。これにより、光の干渉現象を利用して青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRの中から青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rごとに互いに異なる波長域の光が取り出されるため、それらの青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rからそれぞれ青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが放出される。この際、厳密には、緑色有機EL素子16Gから緑色光HPGのみが放出される一方で、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rのそれぞれから青色光HPBおよび赤色光HPRの双方が放出される。しかも、光の干渉現象を利用して光取り出し効率が増加するため、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度が増強される。これにより、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの合成光として画像表示用の光HPが有機ELディスプレイ100の外部へ放出されることにより画像として視認されるため、その画像表示用の光HPに基づいてフルカラーの画像が表示される。
【0080】
この場合には、特に、図2〜図4に示したように、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが下部電極層161R,161G,161Bの反射面161BM,161GM,161RMと反射面規定層165,166の間の界面1656Mとの間において反射されることにより共振される。これにより、赤色光HR、緑色光HGおよび青色光HBの半値幅が減少するため、それらの赤色光HR、緑色光HGおよび青色光HBの色純度が向上する。
【0081】
本実施の形態に係る有機ELディスプレイ100では、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rにおいて、下部電極層161B,161G,161Rと上部電極層164との間に設けられた有機層163が、複数の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)が積層された積層構造を有しており、特に、以下の3つの構成条件を満たしている。すなわち、第1に、下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと青色発光層1632、緑色発光層1634、青色発光層1636および赤色発光層1638のそれぞれの発光面1632M,1634M,1636M,1638Mとの間の距離(光学的距離LB1,LG,LB2,LR)が、上記した関係式11(関係式12〜15)を満たしている。第2に、下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと反射面規定層165,166の間の界面1656Mとの間の距離(光学的距離D)が、上記した関係式16を満たしている。第3に、下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離が、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rよりも緑色有機EL素子16Gにおいて大きくなっている。
【0082】
この3つの構成条件を満たした有機ELディスプレイ100では、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rのいずれにおいても初期段階において青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRが発生するにもかかわらず、光学的距離LB1,LG,LB2,LRの差異に基づく光の干渉現象を利用して、それらの青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rからそれぞれ青色光HPB、緑色光HGおよび赤色光HRが放出され、厳密には、緑色有機EL素子16Gから緑色光HPGのみが放出される一方で、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rのそれぞれから青色光HPBおよび赤色光HPRの双方が放出される。これにより、青色光HPB、緑色光HGおよび赤色光HRの合成光(画像表示用の光HP)に基づいてフルカラーの画像が表示される。この際、上記した関係式12〜15を満たすように光学的距離LB1,LG,LB2,LRが設定されているため、光の干渉現象を利用して青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRの光取り出し効率が増加することにより、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度が増強される。しかも、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rがいずれも光共振器構造を有しており、特に、上記した関係式16を満たすように光学的距離Dが設定されているため、光の共振現象を利用して青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの色純度が向上する。したがって、画像表示用の光HP(青色光HPB,緑色光HPG,赤色光HPR)の強度および色純度の観点において青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rの発光性能が向上するため、上記した3つの構成条件が満たされていない場合と比較して、表示性能を向上させることができる。
【0083】
この場合には、特に、有機層163が複数の発光層として4種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)を含む場合に、関係式11中の次数mLを各発光層ごとに最適化し、すなわち青色発光層1632に関する関係式12中の次数mLB1をmLB1=0、緑色発光層1634に関する関係式13中の次数mLGをmLG=1、青色発光層1636に関する関係式14中の次数mLB2をmLB2=1、赤色発光層1638に関する関係式15中の次数mLRをmLR=1としたので、光学的距離LB1,LG,LB2,LRの差異に基づく光の干渉現象を利用して青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRの光取り出し効率を増加させる観点において、その干渉条件が各色ごとに最適化される。しかも、関係式16中の次数mDを各発光層ごとに最適化し、すなわち青色発光層1632に関してmD=2、緑色発光層1634に関してmD=2、青色発光層1636に関してmD=2、赤色発光層1638に関してmD=1としたので、光学的距離Dに基づく光の共振現象を利用して青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRの色純度を向上させる観点において、その共振条件が各色ごとに最適化される。したがって、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度が著しく増強されると共に色純度が著しく向上するため、表示性能を可能な限り向上させることができる。
【0084】
なお、本実施の形態に係る有機ELディスプレイ100において青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの色純度が向上する点に関して補足しておくと、以下の通りである。すなわち、本実施の形態では、上記したように、下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離が青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rよりも緑色有機EL素子16Gにおいて大きくなっているため、光学的距離LB1,LG,LB2,LRがやはり青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rよりも緑色有機EL素子16Gにおいて大きくなる。この場合には、光取り出し効率に寄与する光学的距離LB1,LG,LB2,LRが青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rと緑色有機EL素子16Gとの間において別個に設定され、すなわち青色光HPBおよび緑色光HPGの波長域が隣り合っている青色有機EL素子16Bと緑色有機EL素子16Gとの間において光取り出し条件が互いに異なるように設定されると共に、同様に緑色光HPGおよび赤色光HPRの波長域が隣り合っている緑色有機EL素子16Gと赤色有機EL素子16Rとの間において光取り出し条件が互いに異なるように設定される。したがって、下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離が青色有機EL素子16B、赤色有機EL素子16Rおよび緑色有機EL素子16Gの間において互いに等しい場合と比較して、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの色純度を向上させることができる。この場合には、特に、カラーフィルタ22を使用することにより、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの色純度が十分に高くなるため、その色純度を著しく向上させることができる。
【0085】
また、本実施の形態では、有機層163が緑色発光層(緑色発光層1634)および赤色発光層(赤色発光層1638)をそれぞれ1つずつ含む一方で青色発光層(青色発光層1632,1636)を2つ含むようにしたので、相対的に視感度が高い緑色光(緑色光HG)および赤色光(赤色光HR)の強度よりも、相対的に視感度が低い青色光(青色光HB1,HB2)の強度が大きくなる。したがって、視感度の観点において青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度バランスが適正化されるため、画像表示用の光HPの色バランスを適正化することができる。なお、確認までに説明しておくと、有機層163が2つの青色発光層1632,1636を含む場合に、画像表示用の光HPの強度や視野角依存性の観点において青色発光層1632,1636の構成材料を検討すると、例えば、上記した関係式12,14中の次数mLB1,mLB2を考慮することにより(例えば、mLB1=0,mLB2=1)、相対的に次数が高い青色発光層1636に関して、相対的に発光スペクトルの半値幅が大きくなるような材料を使用するのが好ましい。
【0086】
上記した他、本実施の形態に係る有機EL素子16(青色有機EL素子16B,緑色有機EL素子16G,赤色有機EL素子16R)では、下部電極層161B,161G,161Rと上部電極層164との間に、複数の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)が積層された積層構造を有する有機層163が設けられており、特に、上記した3つの構成条件を満たすようにしたので、上記したように、画像表示用の光HP(青色光HPB,緑色光HPG,赤色光HPR)の強度が増強されると共に色純度が向上する。したがって、発光性能を向上させることができる。この場合には、特に、上記したように、関係式11中の次数mLを各発光層ごとに最適化し、すなわち関係式12〜15に示した次数mLB1,mLG,mLB2,mLRを最適化する(mLB1=0,mLG=1,mLB2=1,mLR=1)と共に、関係式16中の次数mDを各発光層ごとに最適化し、すなわち次数mDを青色発光層1632に関してmD=2、緑色発光層1634に関してmD=2、青色発光層1636に関してmD=2、赤色発光層1638に関してmD=1とすることにより、発光性能を可能な限り向上させることができる。
【0087】
なお、本実施の形態では、図3および図4に示したように、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rにおいて、光共振器構造のうちの反射面(第2の反射面)を構成するために、上部電極層164上に、相対的に高い屈折率nHを有する反射面規定層165および相対的に低い屈折率層nLを有する反射面規定層166をこの順に設けることにより、それらの反射面規定層165,166の間の界面1656Mにおいて光を反射させるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。すなわち、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rの構造は、屈折率の差異を利用して光共振器構造のうちの反射面(第2の反射面)を構成し得る限り、自由に変更可能である。
【0088】
具体的な一例を挙げれば、図3および図4にそれぞれ対応する図5および図6に示したように、上部電極層164が相対的に高い屈折率nHを有することにより高屈折率層として機能する場合には、その上部電極層164上に反射面規定層165(屈折率nH)を設けずに反射面規定層166(屈折率nL)のみを設けることにより、屈折率の差異を利用して上部電極層164(屈折率nH)と反射面規定層166(屈折率nL)との間の界面1646Mにおいて光を反射させるようにしてもよい。この場合においても、反射面161BM,161GM,161RMと界面1646Mとの間の光学的距離Dが上記した関係式16を満たすことにより、図3および図4に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図5および図6に示した青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図3および図4に示した場合と同様である。
【0089】
また、他の例として、図3および図4にそれぞれ対応する図7および図8に示したように、有機層163のうちの発光補助層1639が相対的に高い屈折率nHを有することにより高屈折率層として機能すると共に、上部電極層164が相対的に低い屈折率nLを有することにより低屈折率層として機能する場合には、その上部電極層164上に反射面規定層165,166を設けないことにより、屈折率の差異を利用して発光補助層1639と上部電極層164との間の界面1634Mにおいて光を反射させるようにしてもよい。この場合においても、反射面161BM,161GM,161RMと界面1634Mとの間の光学的距離Dが上記した関係式16を満たすことにより、図3および図4に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図7および図8に示した青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図3および図4に示した場合と同様である。
【0090】
また、本実施の形態では、図3および図4に示したように、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rにおいて、有機層163が複数の発光層として4種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)を含み、それらの青色発光層1632、緑色発光層1634、青色発光層1636および赤色発光層1638が下部電極層161B,161G,171Rに近い側から順に積層されるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。すなわち、有機層163に含まれる複数の発光層の層数および積層順は、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rからそれぞれ青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが放出される限り、自由に変更可能である。
【0091】
具体的な一例を挙げれば、図3および図4にそれぞれ対応する図9および図10に示したように、有機層163が複数の発光層として5種類の発光層(上記した青色発光層1632、緑色発光層1634、青色発光層1636および赤色発光層1638と共に青色発光層1640)と共に、それらの5種類の発光層を発光させるための複数の発光補助層(上記した発光補助層1631,1633,1635,1637,1639と共に発光補助層1641)を併せて含み、すなわち下部電極層161B,161G,161Rに近い側から順に、上記した発光補助層1631から発光補助層1639に至る一連の層、青色発光層1640および発光補助層1641が積層された積層構造を有するようにしてもよい。
【0092】
青色発光層1640は、有機EL現象を利用して青色光HB3を発生させる発光層(第3の青色発光層)であり、例えば、青色発光層1632,1636と同様の電子輸送性材料により構成されている。なお、青色発光層1640の構成材料は、青色発光層1632,1636の構成材料と異なっていてもよい。発光補助層1641は、青色発光層1640に電子を供給するものであり、例えば、図3および図4に示した発光補助層1639と同様の機能および材質を有している。ここでは、発光補助層1639は、赤色発光層1638に電子を供給すると共に青色発光層1640に正孔を供給するものであり、例えば、図3および図4に示した発光補助層1633,1635,1637と同様の機能および材質を有している。
【0093】
下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと青色発光層1640の発光面1640Mとの間の距離(光学的距離LB3)は、下記に示した関係式17を満たしている。ここでは、例えば、関係式17中の次数mLB3が、mLB3=2である。この「発光面1640M」とは、青色発光層1640が青色発光層1632,1636と同様に電子輸送性発光材料により構成されていることに伴い、その青色発光層1640のうちの発光補助層1639に隣接する面である。
LB3=(mLB3−ΦLB3/2π)λLB3/2・・・関係式17
(「LB3」は反射面161BM,161GM,161RMと発光面1640Mとの間の距離(第1の光学的距離)、「mLB3」は次数(0または整数)、「ΦLB3」は青色発光層1640から発生した青色光HB3が反射面161BM,161GM,161RMにおいて反射する際に生じる位相シフト、「λLB3」は青色発光層1640から発生した青色光HB3が青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0094】
この光学的距離LB3および上記した他の光学的距離LB1,LG,LB2,LRは、青色発光層1632、緑色発光層1634、青色発光層1636、赤色発光層1638および青色発光層1640のそれぞれから発生した青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2、赤色光HRおよび青色光HB3が下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMにおいて反射されたのちに上部電極層164を経由することにより青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rの外部に放出される過程において、それらの青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2、赤色光HRおよび青色光HB3の光取り出し効率が光の干渉現象を利用して増加するように個別に設定されている。なお、この場合においても、光学的距離Dは上記した関係式16を満たしている。ここでは、例えば、関係式16中の次数mDが、青色発光層1640に関してmD=2である。
【0095】
この場合においても、有機層163が5種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638,青色発光層1640)を含んでいると共に、光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3が上記した関係式11(関係式12〜15,17)を満たしている点を除き、図3および図4に示した場合と同様の構成条件を満たしているため、その図3および図4に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図9および図10に示した青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図3および図4に示した場合と同様である。
【0096】
もちろん、図9および図10に示した場合においても、図5および図6を参照して説明した変形例または図7および図8を参照して説明した変形例を適用することが可能である。すなわち、図9および図10にそれぞれ対応する図11および図12に示したように、高屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nH)と低屈折率層として機能する反射面規定層166(屈折率nL)との間の界面1646Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させるようにしてもよいし、あるいは図9および図10にそれぞれ対応する図13および図14に示したように、高屈折率層として機能する発光補助層1639(屈折率nH)と低屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nL)との間の界面1634Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させるようにしてもよい。これらの場合においても、図9および図10に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図11,図13および図12,図14に示した青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図9および図10に示した場合と同様である。
【0097】
また、本実施の形態では、図3および図4に示したように、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rにおいて、下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離が青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rよりも緑色有機EL素子16Gにおいて大きくなるようにするために、緑色有機EL素子16Gにおいて透明導電層162Gを設ける一方で、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rのいずれにおいても上記した透明導電層162Gに対応する透明導電層を設けないようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。具体的には、例えば、図4と共に、図3に対応する図15に示したように、緑色有機EL素子16Gにおいて下部電極層161Gと有機層163との間に透明導電層162G(厚さTG)を設けた場合と同様に(図4参照)、青色有機EL素子16Bにおいて下部電極層161Bと有機層163との間に透明導電層162B(厚さTB)を設けると共に、赤色有機EL素子16Rにおいて下部電極層161Rと有機層163との間に透明導電層162R(厚さTR)を設けるようにしてもよい(図15参照)。
【0098】
これらの透明導電層162B,162Rは、例えば、透明導電層162Gと同様の材質を有している。特に、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rにそれぞれ透明導電層162B,162Rを設ける場合には、上記したように、下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離が青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rよりも緑色有機EL素子16Gにおいて大きくなる関係を維持するために、透明導電層162Gの厚さTGが透明導電層162B,162Rの厚さTB,TRよりも大きくなるようにする(TG>TB,TR)。この場合には、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rにおいて、光学的距離LB1,LG,LB2,LRがそれぞれ透明導電層162B,162G,162Rの厚さTB,TG,TRを加味して規定される。なお、透明導電層162B,162Rの厚さTB,TRの間の関係としては、例えば、互いに等しくてもよいし(TB=TR)、あるいは互いに異なっていてもよい(TB≒TR、すなわちTB>TRまたはTB<TR)。図15では、例えば、透明導電層162Bの厚さTBと透明導電層162Rの厚さTRとが互いに等しい場合(TB=TR)を示している。
【0099】
この場合においても、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rにおいてそれぞれ透明導電層162B,162Rが設けられている点を除き、図3および図4に示した場合と同様の構成条件を満たしているため、その図3および図4に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図15に示した青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rに関する上記以外の構成は、図3に示した場合と同様である。
【0100】
もちろん、図15に示した場合においても、図5および図6を参照して説明した変形例または図7および図8を参照して説明した変形例を適用することが可能である。すなわち、図15に対応する図16に示したように、高屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nH)と低屈折率層として機能する反射面規定層166(屈折率nL)との間の界面1646Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させるようにしてもよいし、あるいは図15に対応する図17に示したように、高屈折率層として機能する発光補助層1639(屈折率nH)と低屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nL)との間の界面1634Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させるようにしてもよい。これらの場合においても、図15に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図16および図17に示した青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rに関する上記以外の構成は、図15に示した場合と同様である。
【0101】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0102】
図18および図19は、本実施の形態に係る有機発光装置に搭載される有機発光素子としての有機EL素子46(青色有機EL素子46B,緑色有機EL素子46G,赤色有機EL素子46R)の断面構成を詳細に表しており、それぞれ上記第1の実施の形態において示した図3および図4に対応する断面構成を示している。なお、図18および図19では、上記第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素に同一の符号を付している。以下では、上記第1の実施の形態において既に説明した構成要素の機能や材質等に関する説明を随時省略する。
【0103】
本実施の形態に係る有機発光装置としての有機ELディスプレイは、上記第1の実施の形態において説明した有機EL素子16(青色有機EL素子16B,緑色有機EL素子16G,赤色有機EL素子16R)に代えて、有機EL素子46(青色有機EL素子46B,緑色有機EL素子46G,赤色有機EL素子46R)を搭載している点を除き、その第1の実施の形態において説明した有機ELディスプレイ100(図1および図2参照)と同様の構造を有している。
【0104】
これらの青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rは、光共振器構造の反射面(第2の反射面)の構成が異なり、より具体的には相対的に高い屈折率nHを有する反射面規定層165および相対的に低い屈折率nLを有する反射面規定層166の積層順が異なる点を除き、上記第1の実施の形態において説明した青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rとそれぞれ同様の構造を有している。すなわち、青色有機EL素子46Bは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161B、有機層163、上部電極層164および反射面規定層166,165が積層された積層構造を有している。緑色有機EL素子46Gは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161G、透明導電層162G、有機層163、上部電極層164および反射面規定層166,165が積層された積層構造を有している。赤色有機EL素子46Rは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161R、有機層163、上部電極層164および反射面規定層166,165が積層された積層構造を有している。
【0105】
この場合には、下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと、それらの下部電極層161B,161G,161Rに近い側から順に積層された反射面規定層166,165の間の界面1665Mとの間の距離(光学的距離D)が、上記した関係式16を満たしている。
【0106】
本実施の形態に係る有機ELディスプレイでは、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rにおいて、下部電極層161B,161G,161Rと上部電極層164との間に設けられた有機層163が、複数の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)が積層された積層構造を有しており、特に、反射面161BM,161GM,161RMと界面1665Mとの間の距離(光学的距離D)が上記した関係式16を満たしている点を除き、上記第1の実施の形態において説明した3つの構成条件を満たしている。したがって、この場合においても、上記第1の実施の形態と同様の作用が得られ、すなわち青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度および色純度の観点において青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rの発光性能が向上するため、表示性能を向上させることができる。この場合には、特に、上記した関係式11(関係式12〜15)中の次数mL(mLB1,mLG,mLB2,mLR)を各発光層ごとに最適化すると共に(mLB1=0,mLG=1,mLB2=1,mLR=1)、上記した関係式16中の次数mDを各発光層ごとに最適化することにより(青色発光層1632に関してmD=2,緑色発光層1634に関してmD=2,青色発光層1636に関してmD=2,赤色発光層1638に関してmD=1)、表示性能を可能な限り向上させることができる。
【0107】
上記した他、本実施の形態に係る有機EL素子46(青色有機EL素子46B,緑色有機EL素子46G,赤色有機EL素子46R)では、下部電極層161B,161G,161Rと上部電極層164との間に、複数の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)が積層された積層構造を有する有機層163が設けられており、特に、下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと反射面規定層166,165の間の界面1665Mとの間の距離(光学的距離D)が上記した関係式16を満たしている点を除き、上記第1の実施の形態において説明した3つの構成条件を満たしているので、その第1の実施の形態と同様の作用により、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度が増強されると共に色純度が向上する。したがって、発光性能を向上させることができる。この場合には、特に、上記した関係式11(関係式12〜15)中の次数mL(mLB1,mLG,mLB2,mLR)を各発光層ごとに最適化すると共に(mLB1=0,mLG=1,mLB2=1,mLR=1)、上記した関係式16中の次数mDを各発光層ごとに最適化することにより(青色発光層1632に関してmD=2,緑色発光層1634に関してmD=2,青色発光層1636に関してmD=2,赤色発光層1638に関してmD=1)、発光性能を可能な限り向上させることができる。
【0108】
なお、本実施の形態では、図18および図19に示したように、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rにおいて、光共振器構造のうちの反射面(第2の反射面)を構成するために、上部電極層164上に、相対的に低い屈折率nLを有する反射面規定層166および相対的に高い屈折率nHを有する反射面規定層165をこの順に設けることにより、それらの反射面規定層166,165の間の界面1665Mにおいて光を反射させるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。すなわち、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rの構成は、屈折率の差異を利用して光共振器構造のうちの反射面(第2の反射面)を構成し得る限り、自由に変更可能である。
【0109】
具体的な一例を挙げれば、図18および図19にそれぞれ対応する図20および図21に示したように、上部電極層164が相対的に低い屈折率nLを有することにより低屈折率層として機能する場合には、その上部電極層164上に反射面規定層166(屈折率nL)を設けずに反射面規定層165(屈折率nH)のみを設けることにより、屈折率の差異を利用して上部電極層164(屈折率nL)と反射面規定層165(屈折率nH)との間の界面1645Mにおいて光を反射させるようにしてもよい。この場合においても、反射面161BM,161GM,161RMと界面1645Mとの間の光学的距離Dが上記した関係式16を満たすことにより、図18および図19に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図20および図21に示した青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図18および図19に示した場合と同様である。
【0110】
また、他の例として、図18および図19にそれぞれ対応する図22および図23に示したように、有機層163のうちの発光補助層1639が相対的に低い屈折率nLを有することにより低屈折率層として機能すると共に、上部電極層164が相対的に高い屈折率nHを有することにより高屈折率層として機能する場合には、その上部電極層164上に反射面規定層166,165を設けないことにより、屈折率の差異を利用して発光補助層1639(屈折率nL)と上部電極層164(屈折率nH)との間の界面1634Mにおいて光を反射させるようにしてもよい。この場合における上部電極層164の構成材料としては、例えば、酸化亜鉛または酸化錫などの高屈折率を有する透明導電材料などが挙げられる。この場合においても、反射面161BM,161GM,161RMと界面1634Mとの間の光学的距離Dが上記した関係式16を満たすことにより、図18および図19に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図22および図23に示した青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図18および図19に示した場合と同様である。
【0111】
また、本実施の形態では、図18および図19に示したように、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rにおいて、有機層163が複数の発光層として4種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)を含み、それらの青色発光層1632、緑色発光層1634、青色発光層1636および赤色発光層1638が下部電極層161B,161G,171Rに近い側から順に積層されるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。すなわち、有機層163に含まれる複数の発光層の層数および積層順は、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rからそれぞれ青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが放出される限り、自由に変更可能である。
【0112】
具体的な一例を挙げれば、上記第1の実施の形態において図9および図10を参照して説明した変形例を適用することにより、図18および図19にそれぞれ対応する図24および図25に示したように、有機層163が複数の発光層として5種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638,青色発光層1640)と共に、それらの5種類の発光層を発光させるための複数の発光補助層(発光補助層1631,1633,1635,1637,1639,1641)を併せて含むようにしてもよい。この場合においても、有機層163が5種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638,青色発光層1640)を含んでいると共に、光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3が上記した関係式11(関係式12〜15,17)を満たしている点を除き、図18および図19に示した場合と同様の構成条件を満たしているため、その図18および図19に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図24および図25に示した青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図18および図19に示した場合と同様である。
【0113】
もちろん、図24および図25に示した場合においても、図20および図21を参照して説明した変形例または図22および図23を参照して説明した変形例を適用することが可能である。すなわち、図24および図25にそれぞれ対応する図26および図27に示したように、低屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nL)と高屈折率層として機能する反射面規定層165(屈折率nH)との間の界面1645Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させるようにしてもよいし、あるいは図24および図25にそれぞれ対応する図28および図29に示したように、低屈折率層として機能する発光補助層1639(屈折率nL)と高屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nH)との間の界面1634Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させるようにしてもよい。これらの場合においても、図24および図25に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図26,図28および図27,図29に示した青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図24および図25に示した場合と同様である。
【0114】
また、本実施の形態では、図18および図19に示したように、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rにおいて、下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離が青色有機EL素子46Bおよび赤色有機EL素子46Rよりも緑色有機EL素子46Gにおいて大きくなるようにするために、緑色有機EL素子46Gにおいて透明導電層162Gを設ける一方で、青色有機EL素子46Bおよび赤色有機EL素子46Rのいずれにおいても上記した透明導電層162Gに対応する透明導電層を設けないようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。具体的には、例えば、上記第1の実施の形態において図15を参照して説明した変形例を適用することにより、図19と共に、図18に対応する図30に示したように、緑色有機EL素子46Gにおいて下部電極層161Gと有機層163との間に透明導電層162G(厚さTG)を設けた場合と同様に(図19参照)、青色有機EL素子46Bにおいて下部電極層161Bと有機層163との間に透明導電層162B(厚さTB)を設けると共に、赤色有機EL素子46Rにおいて下部電極層161Rと有機層163との間に透明導電層162R(厚さTR)を設けるようにしてもよい(図30参照)。この場合においても、青色有機EL素子46Bおよび赤色有機EL素子46Rにおいてそれぞれ透明導電層162B,162Rが設けられている点を除き、図18および図19に示した場合と同様の構成条件を満たしているため、その図18および図19に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図30に示した青色有機EL素子46Bおよび赤色有機EL素子46Rに関する上記以外の構成は、図18に示した場合と同様である。
【0115】
もちろん、図30に示した場合においても、図20および図21を参照して説明した変形例または図22および図23を参照して説明した変形例を適用することが可能である。すなわち、図30に対応する図31に示したように、低屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nL)と高屈折率層として機能する反射面規定層165(屈折率nH)との間の界面1645Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させるようにしてもよいし、あるいは図30に対応する図32に示したように、低屈折率層として機能する発光補助層1639(屈折率nL)と高屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nH)との間の界面1634Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させるようにしてもよい。これらの場合においても、図30に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図31および図32に示した青色有機EL素子46Bおよび赤色有機EL素子46Rに関する上記以外の構成は、図30に示した場合と同様である。
【0116】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0117】
図33および図34は、本実施の形態に係る有機発光装置に搭載される有機発光素子としての有機EL素子56(青色有機EL素子56B,緑色有機EL素子56G,赤色有機EL素子56R)の断面構成を詳細に表しており、それぞれ上記第1の実施の形態において示した図3および図4に対応する断面構成を示している。なお、図33および図34では、上記第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素に同一の符号を付している。以下では、上記第1の実施の形態において既に説明した構成要素の機能や材質等に関する説明を随時省略する。
【0118】
本実施の形態に係る有機発光装置としての有機ELディスプレイは、上記第1の実施の形態において説明した有機EL素子16(青色有機EL素子16B,緑色有機EL素子16G,赤色有機EL素子16R)に代えて、有機EL素子56(青色有機EL素子56B,緑色有機EL素子56G,赤色有機EL素子56R)を搭載している点を除き、その第1の実施の形態において説明した有機ELディスプレイ100(図1および図2参照)と同様の構造を有している。
【0119】
これらの青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rは、光共振器構造の反射面(第2の反射面)の構成および数が異なり、より具体的には複数の反射面(第2の反射面)を有する点を除き、上記第1の実施の形態において説明した青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rとそれぞれ同様の構造を有している。ここでは、例えば、青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rにおいて、上部電極層164上に、相対的に高い屈折率nHを有する反射面規定層165が設けられておらずに、相対的に低い屈折率nLを有する反射面規定層166のみが設けられていると共に、有機層163のうちの発光補助層1639が相対的に低い屈折率nLを有することにより低屈折率層として機能し、かつ上部電極層164が相対的に高い屈折率nHを有することにより高屈折率層として機能することにより、2つの反射面(第2の反射面)を有している。この場合の「2つの反射面(第2の反射面)」とは、発光補助層1639(屈折率nL)と上部電極層164(屈折率nH)との間の界面1634Mおよび上部電極層164(屈折率nH)と反射面規定層166(屈折率nL)との間の界面1646Mである。
【0120】
すなわち、青色有機EL素子56Bは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161B、有機層163、上部電極層164および反射面規定層166が積層された積層構造を有している。緑色有機EL素子56Gは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161G、透明導電層162G、有機層163、上部電極層164および反射面規定層166が積層された積層構造を有している。赤色有機EL素子56Rは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161R、有機層163、上部電極層164および反射面規定層166が積層された積層構造を有している。この場合における上部電極層164の構成材料としては、例えば、酸化亜鉛または酸化錫などの高屈折率を有する透明導電材料などが挙げられる。
【0121】
この場合には、下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと、発光補助層1639と上部電極層164との間の界面1634Mとの間の距離が、上記した関係式16を満たしていると共に、それらの反射面161BM,161GM,161RMと、上部電極層164と反射面規定層166との間の界面1646Mとの間の界面1646Mとの間の距離も、上記した関係式16を満たしている。
【0122】
より具体的には、反射面161BM,161GM,161RMと界面1634Mとの間の距離は、下記に示した関係式18を満たしている。
D1=(mD1−ΦD1/2π)λD1/2・・・関係式18
(「D1」は反射面161BM,161GM,161RMと反射面1634Mとの間の距離(第1の光学的距離)、「mD1」は次数(0または整数)、「ΦD1」は複数の発光層から発生した光が反射面161BM,161GM,161RMおよび反射面1634Mにおいて反射する際に生じる位相シフト、「λL1」は複数の発光層から発生した光が青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0123】
また、反射面161BM,161GM,161RMと界面1646Mとの間の距離は、下記に示した関係式19を満たしている。
D2=(mD2−ΦD2/2π)λD2/2・・・関係式19
(「D2」は反射面161BM,161GM,161RMと反射面1646Mとの間の距離(第1の光学的距離)、「mD2」は次数(0または整数)、「ΦD2」は複数の発光層から発生した光が反射面161BM,161GM,161RMおよび反射面1646Mにおいて反射する際に生じる位相シフト、「λL2」は複数の発光層から発生した光が青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0124】
これらの光学的距離D1,D2は、青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rのそれぞれから青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが放出される過程において、それらの青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの色純度が光共振器構造の光共振現象を利用して増強されるように設定されている。
【0125】
本実施の形態に係る有機ELディスプレイでは、青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rにおいて、下部電極層161B,161G,161Rと上部電極層164との間に設けられた有機層163が、複数の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)が積層された積層構造を有しており、特に、反射面161BM,161GM,161RMと界面1634Mとの間の距離(光学的距離D1)が上記した関係式18を満たしていると共に、反射面161BM,161GM,161RMと界面1646Mとの間の距離(光学的距離D2)が上記した関係式19を満たしている点を除き、上記第1の実施の形態において説明した3つの構成条件を満たしている。したがって、この場合においても、上記第1の実施の形態と同様の作用が得られ、すなわち青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度および色純度の観点において青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rの発光性能が向上するため、表示性能を向上させることができる。この場合には、特に、上記した関係式11(関係式12〜15)中の次数mL(mLB1,mLG,mLB2,mLR)を各発光層ごとに最適化すると共に(mLB1=0,mLG=1,mLB2=1,mLR=1)、上記した関係式16中の次数mDを各発光層ごとに最適化することにより(青色発光層1632に関してmD=2,緑色発光層1634に関してmD=2,青色発光層1636に関してmD=2,赤色発光層1638に関してmD=1)、表示性能を可能な限り向上させることができる。
【0126】
特に、本実施の形態では、反射面(第2の反射面)として2つの界面1634M,1646Mを有するため、その反射面(第2の反射面)を1つのみ有する上記第1の実施の形態および第2の実施の形態と比較して、光共振器構造の光共振作用が増強される。したがって、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの色純度をより向上させることができる。
【0127】
上記した他、本実施の形態に係る有機EL素子56(青色有機EL素子56B,緑色有機EL素子56G,赤色有機EL素子56R)では、下部電極層161B,161G,161Rと上部電極層164との間に、複数の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)が積層された積層構造を有する有機層163が設けられており、特に、反射面161BM,161GM,161RMと界面1634Mとの間の距離(光学的距離D1)が上記した関係式18を満たしていると共に、反射面161BM,161GM,161RMと界面1646Mとの間の距離(光学的距離D2)が上記した関係式19を満たしている点を除き、上記第1の実施の形態において説明した3つの構成条件を満たしているので、その第1の実施の形態と同様の作用により、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度が増強されると共に色純度が向上する。したがって、発光性能を向上させることができる。この場合には、特に、上記した関係式11(関係式12〜15)中の次数mL(mLB1,mLG,mLB2,mLR)を各発光層ごとに最適化すると共に(mLB1=0,mLG=1,mLB2=1,mLR=1)、上記した関係式16中の次数mDを各発光層ごとに最適化することにより(青色発光層1632に関してmD=2,緑色発光層1634に関してmD=2,青色発光層1636に関してmD=2,赤色発光層1638に関してmD=1)、発光性能を可能な限り向上させることができる。
【0128】
なお、本実施の形態では、図33および図34に示したように、青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rにおいて、光共振器構造のうちの2つの反射面(第2の反射面)を構成するために、上部電極層164上に相対的に低い屈折率nLを有する反射面規定層166のみを設けると共に、発光補助層1639が相対的に低い屈折率nLを有し、かつ上部電極層164が相対的に高い屈折率nHを有することにより、発光補助層1639と上部電極層164との間の界面1634Mおよび上部電極層164と反射面規定層166との間の界面1646Mにおいて光を反射させるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。すなわち、青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rの構成は、屈折率の差異を利用して光共振器構造のうちの反射面(第2の反射面)を2つ構成し得る限り、自由に変更可能である。
【0129】
具体的な一例を挙げれば、図33および図34にそれぞれ対応する図35および図36に示したように、上部電極層164上に、相対的に低い屈折率nLを有する反射面規定層166に代えて、相対的に高い屈折率nHを有する反射面規定層165を設けると共に、有機層163のうちの発光補助層1639が相対的に高い屈折率nHを有することにより高屈折率層として機能し、かつ上部電極層164が相対的に低い屈折率nLを有することにより低屈折率層として機能することにより、2つの反射面(第2の反射面)を有するようにしてもよい。この場合の「2つの反射面(第2の反射面)」とは、発光補助層1639(屈折率nH)と上部電極層164(屈折率nL)との間の界面1634Mおよび上部電極層164(屈折率nL)と反射面規定層166(屈折率nL)との間の界面1646Mであり、すなわち界面1634M,1646Mにおいて光が反射される。この場合における上部電極層164の構成材料としては、例えば、酸化亜鉛または酸化錫などの高屈折率を有する透明導電材料などが挙げられる。この場合においても、反射面161BM,161GM,161RMと反射面1634Mとの間の光学的距離D1が上記した関係式18を満たすと共に、反射面161BM,161GM,161RMと反射面1646Mとの間の光学的距離D2が上記した関係式19を満たすことにより、図33および図34に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図35および図36に示した青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図33および図34に示した場合と同様である。
【0130】
また、本実施の形態では、図33および図34に示したように、青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rにおいて、有機層163が複数の発光層として4種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)を含み、それらの青色発光層1632、緑色発光層1634、青色発光層1636および赤色発光層1638が下部電極層161B,161G,171Rに近い側から順に積層されるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。すなわち、有機層163に含まれる複数の発光層の層数および積層順は、青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rからそれぞれ青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが放出される限り、自由に変更可能である。
【0131】
具体的な一例を挙げれば、上記第1の実施の形態において図9および図10を参照して説明した変形例を適用することにより、図33および図34にそれぞれ対応する図37および図38に示したように、有機層163が複数の発光層として5種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638,青色発光層1640)と共に、それらの5種類の発光層を発光させるための複数の発光補助層(発光補助層1631,1633,1635,1637,1639,1641)を併せて含むようにしてもよい。この場合においても、有機層163が5種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638,青色発光層1640)を含んでいると共に、光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3が上記した関係式11(関係式12〜15,17)を満たしている点を除き、図33および図34に示した場合と同様の構成条件を満たしているため、その図33および図34に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図37および図38に示した青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図33および図34に示した場合と同様である。
【0132】
もちろん、図37および図38に示した場合においても、図35および図36を参照して説明した変形例を適用することが可能である。すなわち、図37および図38にそれぞれ対応する図39および図40に示したように、高屈折率層として機能する発光補助層1639(屈折率nH)と低屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nL)との間の界面1634Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させると共に、その低屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nL)と高屈折率層として機能する反射面規定層165(屈折率nH)との間の界面1645Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させるようにしてもよい。この場合においても、図35および図36に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図39および図40に示した青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図35および図36に示した場合と同様である。
【0133】
また、本実施の形態では、図33および図34に示したように、青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rにおいて、下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離が青色有機EL素子56Bおよび赤色有機EL素子56Rよりも緑色有機EL素子56Gにおいて大きくなるようにするために、緑色有機EL素子56Gにおいて透明導電層162Gを設ける一方で、青色有機EL素子56Bおよび赤色有機EL素子56Rのいずれにおいても上記した透明導電層162Gに対応する透明導電層を設けないようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。具体的には、例えば、上記第1の実施の形態において図15を参照して説明した変形例を適用することにより、図34と共に、図33に対応する図41に示したように、緑色有機EL素子56Gにおいて下部電極層161Gと有機層163との間に透明導電層162G(厚さTG)を設けた場合と同様に(図34参照)、青色有機EL素子56Bにおいて下部電極層161Bと有機層163との間に透明導電層162B(厚さTB)を設けると共に、赤色有機EL素子56Rにおいて下部電極層161Rと有機層163との間に透明導電層162R(厚さTR)を設けるようにしてもよい(図41参照)。この場合においても、青色有機EL素子56Bおよび赤色有機EL素子56Rにおいてそれぞれ透明導電層162B,162Rが設けられている点を除き、図33および図34に示した場合と同様の構成条件を満たしているため、その図33および図34に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図41に示した青色有機EL素子56Bおよび赤色有機EL素子56Rに関する上記以外の構成は、図33に示した場合と同様である。
【0134】
もちろん、図41に示した場合においても、図35および図36を参照して説明した変形例を適用することが可能である。すなわち、図41に対応する図42に示したように、高屈折率層として機能する発光補助層1639(屈折率nH)と低屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nL)との間の界面1634Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させると共に、その低屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nL)と高屈折率層として機能する反射面規定層165(屈折率nH)との間の界面1645Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させるようにしてもよい。これらの場合においても、図41に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図42に示した青色有機EL素子56Bおよび赤色有機EL素子56Rに関する上記以外の構成は、図41に示した場合と同様である。
【0135】
また、本実施の形態では、図33および図34を例示して示したように、青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rにおいて、光共振器構造の反射面(第2の反射面)を有するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、高屈折率層(屈折率nH)として機能する層と低屈折率層(屈折率nL)として機能する層との間の屈折率の差異を利用して光を反射可能となるように反射面(第2の反射面)を構成する限り、その反射面(第2の反射面)の数は自由に設定可能である。ただし、(1)反射面(第2の反射面)の数が増えるほど、有機ELディスプレイの製造コストが増すこと、(2)反射面(第2の反射面)が2つあれば、光共振器構造において十分な光共振作用が得られること、(3)反射面(第2の反射面)が3つ以上ある場合には、上記した関係式16中の次数mDが大きくなりすぎることに起因して半値幅が狭くなりすぎるため、膜厚のばらつきや視野角に応じて色ずれが著しく大きくなることを考慮すれば、反射面(第2の反射面)の数は2つが好ましい。
【0136】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0137】
図43および図44は、本実施の形態に係る有機発光装置に搭載される有機発光素子としての有機EL素子66(青色有機EL素子66B,緑色有機EL素子66G,赤色有機EL素子66R)の断面構成を詳細に表しており、それぞれ上記第1の実施の形態において示した図3および図4に対応する断面構成を示している。なお、図43および図44では、上記第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素に同一の符号を付している。以下では、上記第1の実施の形態において既に説明した構成要素の機能や材質等に関する説明を随時省略する。
【0138】
本実施の形態に係る有機ELディスプレイは、上記第1の実施の形態において説明した有機EL素子16(青色有機EL素子16B,緑色有機EL素子16G,赤色有機EL素子16R)に代えて、有機EL素子66(青色有機EL素子66B,緑色有機EL素子66G,赤色有機EL素子66R)を搭載している点を除き、その第1の実施の形態において説明した有機ELディスプレイ100(図1および図2参照)と同様の構造を有している。
【0139】
これらの青色有機EL素子66B、緑色有機EL素子66Gおよび赤色有機EL素子66Rは、光共振器構造の反射面(第2の反射面)の構成が異なり、より具体的には上部電極層164上に、相対的に高い屈折率nHを有する反射面規定層165および相対的に低い屈折率nLを有する反射面規定層166の双方が設けられていない点を除き、上記第1の実施の形態において説明した青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rとそれぞれ同様の構造を有している。この場合における上部電極層164は、例えば、光共振器構造の反射面(第2の反射面)を構成することが可能であり、すなわち必要に応じて光を十分に反射させることが可能な反射率を有する光半透過性材料を含んで構成されている。この場合の「反射面(第2の反射面)」とは、上部電極層164の反射面164Mであり、すなわち上部電極層164のうちの有機層163(発光補助層1639)に隣接する面である。
【0140】
すなわち、青色有機EL素子66Bは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161B、有機層163および上部電極層164が積層された積層構造を有している。緑色有機EL素子66Gは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161G、透明導電層162G、有機層163および上部電極層164が積層された積層構造を有している。赤色有機EL素子66Rは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161R、有機層163および上部電極層164が積層された積層構造を有している。
【0141】
この場合の上部電極層164の構成は、上記した光半透過性材料を含んでいることにより反射面164Mを構成し得る限り、自由に設定可能である。具体的には、例えば、上部電極層164の構成は、例えば、光半透過性金属により構成された薄膜の単層構造であってもよいし、あるいは有機層163に近い側から順に光半透過性金属の薄膜と透明導電材料の薄膜とが積層された積層構造であってもよい。上記した単層構造を有する場合における光半透過性金属の薄膜としては、例えば、アルミニウム薄膜、銀がドープされたマグネシウムの薄膜、アルミニウムおよび銀の積層薄膜、あるいはカルシウムおよび銀の積層薄膜などが挙げられる。また、積層構造を有する場合における光半透過性金属の薄膜としては、例えば、アルミニウム薄膜、銀がドープされたマグネシウムの薄膜、アルミニウムおよび銀の積層薄膜、あるいはカルシウムおよび銀の積層薄膜などが挙げられ、一方、透明導電材料の薄膜としては、例えば、酸化亜鉛薄膜または酸化錫薄膜などが挙げられる。
【0142】
この場合には、下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと上部電極層164の反射面164Mとの間の距離(光学的距離D)が、上記した関係式16を満たしている。
【0143】
本実施の形態に係る有機ELディスプレイでは、青色有機EL素子66B、緑色有機EL素子66Gおよび赤色有機EL素子66Rにおいて、下部電極層161B,161G,161Rと上部電極層164との間に設けられた有機層163が、複数の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)が積層された積層構造を有しており、特に、反射面161BM,161GM,161RMと反射面164Mとの間の距離(光学的距離D)が上記した関係式16を満たしている点を除き、上記第1の実施の形態にいて説明した3つの構成条件を満たしている。したがって、この場合においても、上記第1の実施の形態と同様の作用が得られ、すなわち青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度および色純度の観点において青色有機EL素子66B、緑色有機EL素子66Gおよび赤色有機EL素子66Rの発光性能が向上するため、表示性能を向上させることができる。この場合には、特に、上記した関係式11(関係式12〜15)中の次数mL(mLB1,mLG,mLB2,mLR)を各発光層ごとに最適化すると共に(mLB1=0,mLG=1,mLB2=1,mLR=1)、上記した関係式16中の次数mDを各発光層ごとに最適化することにより(青色発光層1632に関してmD=2,緑色発光層1634に関してmD=2,青色発光層1636に関してmD=2,赤色発光層1638に関してmD=1)、表示性能を可能な限り向上させることができる。
【0144】
上記した他、本実施の形態に係る有機EL素子66(青色有機EL素子66B,緑色有機EL素子66G,赤色有機EL素子66R)では、下部電極層161B,161G,161Rと上部電極層164との間に、複数の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)が積層された積層構造を有する有機層163が設けられており、特に、反射面161BM,161GM,161RMと反射面164Mとの間の距離(光学的距離D)が上記した関係式16を満たしている点を除き、上記第1の実施の形態において説明した3つの構成条件を満たしているので、その第1の実施の形態と同様の作用により、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度が増強されると共に色純度が向上する。したがって、発光性能を向上させることができる。この場合には、特に、上記した関係式11(関係式12〜15)中の次数mL(mLB1,mLG,mLB2,mLR)を各発光層ごとに最適化すると共に(mLB1=0,mLG=1,mLB2=1,mLR=1)、上記した関係式16中の次数mDを各発光層ごとに最適化することにより(青色発光層1632に関してmD=2,緑色発光層1634に関してmD=2,青色発光層1636に関してmD=2,赤色発光層1638に関してmD=1)、発光性能を可能な限り向上させることができる。
【0145】
なお、本実施の形態では、図43および図44に示したように、青色有機EL素子66B、緑色有機EL素子66Gおよび赤色有機EL素子66Rにおいて、有機層163が複数の発光層として4種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)を含み、それらの青色発光層1632、緑色発光層1634、青色発光層1636および赤色発光層1638が下部電極層161B,161G,171Rに近い側から順に積層されるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。すなわち、有機層163に含まれる複数の発光層の層数および積層順は、青色有機EL素子66B、緑色有機EL素子66Gおよび赤色有機EL素子66Rからそれぞれ青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが放出される限り、自由に変更可能である。
【0146】
具体的な一例を挙げれば、上記第1の実施の形態において図9および図10を参照して説明した変形例を適用することにより、図43および図44にそれぞれ対応する図45および図46に示したように、有機層163が複数の発光層として5種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638,青色発光層1640)と共に、それらの5種類の発光層を発光させるための複数の発光補助層(発光補助層1631,1633,1635,1637,1639,1641)を併せて含むようにしてもよい。この場合においても、有機層163が5種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638,青色発光層1640)を含んでいると共に、光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3が上記した関係式11(関係式12〜15,17)を満たしている点を除き、図43および図44に示した場合と同様の構成条件を満たしているため、その図43および図44に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図45および図46に示した青色有機EL素子66B、緑色有機EL素子66Gおよび赤色有機EL素子66Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図43および図44に示した場合と同様である。
【0147】
また、本実施の形態では、図43および図44に示したように、青色有機EL素子66B、緑色有機EL素子66Gおよび赤色有機EL素子66Rにおいて、下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離が青色有機EL素子66Bおよび赤色有機EL素子66Rよりも緑色有機EL素子66Gにおいて大きくなるようにするために、緑色有機EL素子66Gにおいて透明導電層162Gを設ける一方で、青色有機EL素子66Bおよび赤色有機EL素子66Rのいずれにおいても上記した透明導電層162Gに対応する透明導電層を設けないようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。具体的には、例えば、上記第1の実施の形態において図15を参照して説明した変形例を適用することにより、図44と共に、図43に対応する図47に示したように、緑色有機EL素子66Gにおいて下部電極層161Gと有機層163との間に透明導電層162G(厚さTG)を設けた場合と同様に(図44参照)、青色有機EL素子66Bにおいて下部電極層161Bと有機層163との間に透明導電層162B(厚さTB)を設けると共に、赤色有機EL素子66Rにおいて下部電極層161Rと有機層163との間に透明導電層162R(厚さTR)を設けるようにしてもよい(図47参照)。この場合においても、青色有機EL素子66Bおよび赤色有機EL素子66Rにおいてそれぞれ透明導電層162B,162Rが設けられている点を除き、図43および図44に示した場合と同様の構成条件を満たしているため、その図43および図44に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図47に示した青色有機EL素子66Bおよび赤色有機EL素子66Rに関する上記以外の構成は、図43に示した場合と同様である。
【実施例】
【0148】
次に、本発明に関する実施例について説明する。
【0149】
(実施例1)
以下の手順を経ることにより、上記第1の実施の形態において説明した一連の有機EL素子を代表して、図3および図4に示した青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子を試験的に製造した。
【0150】
すなわち、ガラス製の基板を準備したのち、まず、青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子のそれぞれの形成領域ごとに基板上に銀合金を選択的に成膜することにより、陽極として下部電極層を100nmの厚さとなるようにパターン形成した。続いて、緑色有機EL素子の形成領域のみにおいて下部電極層上にITOを選択的に成膜することにより、透明導電層を90nmの厚さとなるようにパターン形成した。続いて、下部電極層のうちの2mm×2mm角の中央領域(発光領域)に対応する領域を部分的に露出させるようにポリイミドをパターン成膜することにより、発光用のセルを構成した。
【0151】
続いて、上記した発光領域に対応する箇所にパターン成膜用の開口が設けられた金属マスクを使用しながら、10-4Pa以下の真空雰囲気中において真空蒸着法を使用して下部電極層または透明導電層上に発光補助層(m−MTDATA/α−NPD)、青色発光層(DPVBiにBCzVBiを5体積%混合させて共蒸着)、発光補助層(Alq/LiF/MgAg/α−NPD)、緑色発光層(Alqにクマリン6を1体積%混合させて共蒸着)、発光補助層(Alq/LiF/MgAg/α−NPD)、青色発光層(DPVBiにBCzVBiを5体積%混合させて共蒸着)、発光補助層(Alq/LiF/MgAg/α−NPD)、赤色発光層(AlqにBSNを30体積%混合させて共蒸着)および発光補助層(Alq/LiF/MgAg)をこの順に積層させることにより、4種類の発光層を含む積層構造を有するように有機層を形成した。この有機層を形成する際には、光学的距離LB1,LG,LB2,LRが上記した関係式12〜15を満たすようにしたと共に、光学的距離Dが上記した関係式16を満たすようにした。ここでは、有機層の総厚を305nmとすることにより、緑色有機EL素子に関して光学的距離LB1,LG,LB2,LRに対応する物理的距離(膜厚)をそれぞれ30nm、95nm、145nm、240nmとしたと共に、関係式12〜15中の次数mLB1,mLG,mLB2,mLRをそれぞれmLB1=0、mLG=1、mLB2=1、mLR=1とした。また、関係式16中の次数mDを青色発光層に関してmD=2、緑色発光層に関してmD=2、青色発光層に関してmD=2、赤色発光層に関してmD=1とした。続いて、有機層上に酸化亜鉛を含む透明導電膜を成膜することにより、陰極として上部電極層を30nmの厚さとなるように形成した。
【0152】
最後に、上部電極層上に、相対的に高い屈折率nH=2.30を有する酸化チタンを成膜することにより、高屈折率層として機能する反射面規定層を40nmの厚さとなるように形成したのち、化学蒸着(CVD;chemical vapor deposition )法を使用して反射面規定層(高屈折率層)上に、相対的に低い屈折率nL=1.75を有する窒化ケイ素を成膜することにより、低屈折率層として機能する反射面規定層を3000nmの厚さとなるように形成した。これらの2つの反射面規定層を形成する際には、光学的距離Dが上記した関係式16を満たすようにした。ここでは、関係式16中の次数mDをそれぞれ2つの青色発光層に関してmD=2、緑色発光層に関してmD=2、赤色発光層に関してmD=1とした。これにより、図3および図4に示した青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子が完成した。
【0153】
(実施例2)
以下の手順を経ることにより、上記第2の実施の形態において説明した一連の有機EL素子を代表して、図22および図23に示した青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子を試験的に製造した。
【0154】
すなわち、まず、有機層のうちの上部電極層に隣接することとなる発光補助層(最上層の発光補助層)が相対的に低い屈折率nL=1.80を有するようにし、すなわち最上層の発光補助層が低屈折率層として機能するようにした点を除き、上記した実施例1と同様の手順を経ることにより、ガラス製の基板上に下部電極層、透明導電層および有機層を順次形成した。最後に、有機層上に、相対的に高い屈折率nH=2.00を有する酸化亜鉛を含む透明導電膜を成膜することにより、陰極として高屈折率層として機能する上部電極層を80nmの厚さとなるように形成した。なお、光学的距離LB1,LG,LB2,LR,Dおよび次数mLB1,mLG,mLB2,mLR,mDに関しては、上記した実施例1と同条件となるように設定した。これにより、図22および図23に示した青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子が完成した。
【0155】
(実施例3)
以下の手順を経ることにより、上記第2の実施の形態において説明した一連の有機EL素子を代表して、さらに図28および図29に示した青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子を試験的に製造した。
【0156】
すなわち、まず、上記した実施例1と同様の手順を経ることにより、ガラス製の基板上に下部電極層および透明導電層を順次形成した。続いて、上記した実施例1において説明した成膜手法を使用して下部電極層または透明導電層上に発光補助層(m−MTDATA/α−NPD)、青色発光層(DPVBiにBCzVBiを5体積%混合させて共蒸着)、発光補助層(Alq/LiF/MgAg/α−NPD)、緑色発光層(Alqにクマリン6を1体積%混合させて共蒸着)、発光補助層(Alq/LiF/MgAg/α−NPD)、青色発光層(DPVBiにBCzVBiを5体積%混合させて共蒸着)、発光補助層(Alq/LiF/MgAg/α−NPD)、赤色発光層(AlqにBSNを30体積%混合させて共蒸着)、発光補助層(Alq/LiF/MgAg/α−NPD)、青色発光層(DPVBiにBCzVBiを5体積%混合させて共蒸着)および発光補助層(Alq/LiF/MgAg)をこの順に積層させることにより、5種類の発光層を含む積層構造を有するように有機層を形成した。この有機層を形成する際には、光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3が上記した関係式12〜15,17を満たすようにしたと共にしたと共に、光学的距離Dが上記した関係式16を満たすようにした。ここでは、有機層の総厚を305nmとすることにより、緑色有機EL素子に関して光学的距離LB1,LG,LB2,LRに対応する物理的距離(膜厚)をそれぞれ30nm、95nm、145nm、235nm、265nmとしたと共に、関係式12〜15中の次数mLB1,mLG,mLB2,mLR,mLB3をそれぞれmLB1=0、mLG=1、mLB2=1、mLR=1、mLB3=2とした。また、関係式16中の次数mDを青色発光層に関してmD=2、緑色発光層に関してmD=2、青色発光層に関してmD=2、赤色発光層に関してmD=1、青色発光層に関してmD=2とした。最後に、上記した実施例1と同様の手順を経ることにより、有機層上に上部電極層および主反射制御層を順次形成した。ここでは、関係式16中の次数mDをそれぞれ3つの青色発光層に関してmD=2、緑色発光層に関してmD=2、赤色発光層に関してmD=1とした。これにより、図28および図29に示した青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子が完成した。
【0157】
(実施例4)
以下の手順を経ることにより、上記第3の実施の形態において説明した一連の有機EL素子を代表して、図33および図34に示した青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子を試験的に製造した。
【0158】
すなわち、まず、有機層のうちの上部電極層に隣接することとなる発光補助層(最上層の発光補助層)が相対的に低い屈折率nL=1.80を有することにより低屈折率層として機能すると共に、上部電極層が相対的に高い屈折率nH=2.00を有することにより高屈折率層として機能するようにした点を除き、上記した実施例1と同様の手順を経ることにより、ガラス製の基板上に下部電極層、透明導電層、有機層および上部電極層を順次形成した。最後に、上部電極層上に、相対的に低い屈折率nL=1.40を有するフッ化リチウムを成膜することにより、低屈折率層として機能する反射面規定層を80nmの厚さとなるように形成した。なお、光学的距離D(D1,D2)および次数mLB1,mLG,mLB2,mLR,mDに関しては、上記した実施例1と同条件となるように設定した。これにより、図33および図34に示した青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子が完成した。
【0159】
(実施例5)
以下の手順を経ることにより、上記第4の実施の形態において説明した一連の有機EL素子を代表して、図43および図44に示した青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子を試験的に製造した。
【0160】
すなわち、上部電極層の形成材料を変更した点を除き、上記した実施例1と同様の手順を経ることにより、ガラス製の基板上に下部電極層、透明導電層、有機層および上部電極層を順次形成した。上部電極層を形成する際には、有機層上にマグネシウムおよび銀を共蒸着して光半透過性金属層(蒸着比;Mg:Ag=10:1)を6nmの厚さとなるように形成したのち、その光半透過性金属層上に酸化亜鉛を成膜して透明導電層を80nmの厚さとなるように形成することにより、積層構造を有するようにした。なお、光学的距離LB1,LG,LB2,LR,Dおよび次数mLB1,mLG,mLB2,mLR,mDに関しては、上記した実施例1と同条件となるように設定した。これにより、図43および図44に示した青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子が完成した。
【0161】
(比較例)
以下の手順を経ることにより、本発明(実施例1〜5)の有機EL素子に対する比較例の有機EL素子を試験的に製造した。
【0162】
すなわち、下部電極層の形成材料を変更したと共に、透明導電層および反射面規定層(低屈折率層,高屈折率層)を形成しなかった点を除き、上記した実施例2と同様の手順を経ることにより、ガラス製の基板上に下部電極層、有機層および上部電極層を順次形成した。下部電極層を形成する際には、基板上に透明導電材料としてITOを成膜することにより、180nmの厚さを有するようにした。この比較例の有機EL素子では、下部電極層が光透過性を有しており、すなわち有機層において発生した光が下部電極層において反射されないため、本発明の有機EL素子とは異なり、光の干渉現象が生じない。
【0163】
これらの実施例1〜5および比較例の有機EL素子の発光性能を調べたところ、以下の結果が得られた。
【0164】
まず、実施例1〜5および比較例の有機EL素子の基本的な発光性能を調べたところ、図48〜図53に示した結果が得られた。図48〜図53はそれぞれ実施例1〜5および比較例の有機EL素子の発光スペクトルを表しており、「横軸」は波長λ(nm)を示し、「縦軸」はスペクトルの強度I(−)を示している。ただし、比較例の有機EL素子に関しては、基板の上方および下方に放出された光の和に基づく発光スペクトルを示している。図48〜図52に示した「48B〜52B」は青色光の発光スペクトルを示し、「48G〜52G」は緑色光の発光スペクトルを示し、「48R〜52R」は赤色光の発光スペクトルを示している。上記した「基本的な発光性能」とは、色調整用のカラーフィルタを使用しない場合における有機EL素子の発光性能であり、すなわち色調に関する性能上の実力である。
【0165】
図48〜図53に示した結果から判るように、実施例1〜5の有機EL素子(図48〜図52参照)では、いずれにおいても青色光のスペクトルピーク(48B〜52B)、緑色光のスペクトルピーク(48G〜52G)および赤色光のスペクトルピーク(48R〜52R)が観察され、すなわち青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子からそれぞれ青色光、緑色光および赤色光が放出された。より具体的には、互いに同一の構造を有している青色有機EL素子および赤色有機EL素子では、緑色の光成分量が減少されると共に青色および赤色の光成分量が増加されることにより青色および赤色が強調された光(青色光および赤色光)が放出され、一方、青色有機EL素子および赤色有機EL素子とは異なる構造を有している緑色有機EL素子では、青色および赤色の光成分量が減少されると共に緑色の光成分量が増加されることにより緑色が強調された光(青色光および赤色光)が放出された。しかも、この場合には、図48〜図52中において青色光、緑色光および赤色光に対応する3つのスペクトルピークが明瞭に区別して観察され、すなわち3つのスペクトルピークが互いに異なる波長λにおいて十分な強度Iを有していることから明らかなように、青色光、緑色光および赤色光の強度および色純度が確保された。これに対して、比較例の有機EL素子(図53参照)では、可視光に対応する波長λ=約400nm〜800nmの波長域においてブロードなスペクトルが観察され、すなわち白色光が放出された。しかも、この場合には、実施例1〜5の有機E素子と比較して、スペクトルの強度Iが著しく小さくなった。このことは、実施例1〜5の有機EL素子では、光の干渉現象が生じるため、その光の干渉現象を利用して光の強度が増強されるのに対して、比較例の有機EL素子では、光の干渉現象が生じないため、その光の干渉現象を利用して光の強度が増強されないことを表している。このことから、本発明の有機EL素子(青色有機EL素子,緑色有機EL素子,赤色有機EL素子)では、発光性能を向上させることが可能であることが確認された。この場合には、特に、有機層が4種類の発光層を含んでいる実施例2(図49参照)と有機層が5種類の発光層を含んでいる実施例3(図50参照)との間においてスペクトルピークを比較したところ、実施例2よりも実施例3において強度Iが大きくなると共にピーク半値幅が狭まり、すなわち青色光、緑色光および赤色光の強度および色純度が向上した。
【0166】
続いて、実施例1〜5および比較例の有機EL素子の実用的な発光性能を調べたところ、図54〜図59に示した結果が得られた。図54〜図59はそれぞれ実施例1〜5および比較例の有機EL素子の他の発光スペクトルを表しており、図48〜図53に示した発光スペクトルに対応している。図54〜図59に示した「54B〜59B」は青色光の発光スペクトルを示し、「54G〜59G」は緑色光の発光スペクトルを示し、「54R〜59R」は赤色光の発光スペクトルを示している。上記した「実用的な発光性能」とは、色調整用のカラーフィルタを使用した場合における有機EL素子の発光性能であり、すなわち有機ELディスプレイに搭載された場合における色調に関する性能上の実力である。なお、実施例1〜5および比較例の有機EL素子の実用的な発光性能を調べる際には、図60に示した透過特性を有する3色(60B=青,60G=緑,60R=赤)のカラーフィルタを使用することにより、各色の発光スペクトルを調べた。図60は、カラーフィルタの透過特性を表しており、「横軸」は波長λ(nm)を示し、「縦軸」は透過率T(%)を示している。
【0167】
図54〜図59に示した結果から判るように、実施例1〜5の有機EL素子(図54〜図58参照)では、いずれにおいても青色光のスペクトルピーク(54B〜58B)、緑色光のスペクトルピーク(54G〜58G)および赤色光のスペクトルピーク(54R〜58R)が観察され、すなわち青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子からそれぞれカラーフィルタを通じて青色光、緑色光および赤色光が放出された。この場合には、特に、カラーフィルタを使用しなかった場合(図48〜図52参照)と比較して、青色有機EL素子および赤色有機EL素子から放出される緑色の光成分量が著しく減少したため、青色光および赤色光の色純度が向上した。一方、比較例の有機EL素子(図59参照)では、青色光のスペクトルピーク(59B)、緑色光のスペクトルピーク(59G)および赤色光のスペクトルピーク(59R)が観察され、すなわち実施例1〜5の有機EL素子と同様にカラーフィルタを通じて青色光、緑色光および赤色光が放出された。しかしながら、この場合には、実施例1〜5の有機E素子と比較して、やはりスペクトルの強度Iが著しく小さくなった。このことから、本発明の有機EL素子(青色有機EL素子,緑色有機EL素子,赤色有機EL素子では、有機ELディスプレイに搭載されることにより、その有機ELディスプレイの表示性能を向上させることが可能であることが確認された。
【0168】
以上、いくつかの実施の形態および実施例を挙げて本発明の有機発光素子および有機発光装置を説明したが、本発明の有機発光素子および有機発光装置の構成は、上記各実施の形態および実施例において説明した態様に限定されず、青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子において、下部電極層と上部電極層との間に設けられた有機層が複数の発光層が積層された積層構造を有しており、特に、上記した3つの構成条件を満たしていることにより発光性能または表示性能を向上させることが可能な限り、自由に変更可能である。
【0169】
特に、上記した各実施の形態では、青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子の構造に関して、下部電極層と有機層との間の距離が赤色有機EL素子および青色有機EL素子よりも緑色有機発光素子において大きくなるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、下部電極層と有機層との間の距離は、赤色有機発光素子、緑色有機発光素子および青色有機発光素子のうちの少なくとも1つにおいて異なっている限り、自由に変更可能である。この場合においても、上記した各実施の形態とほぼ同様の効果を得ることができる。ただし、青色有機EL素子から放出される青色光および赤色有機EL素子から放出される赤色光を色調の観点において明瞭に区別するためには、上記各実施の形態において説明したように、下部電極層と有機層との間の距離が赤色有機EL素子および青色有機EL素子よりも緑色有機発光素子において大きくなるようにするのが好ましい。
【0170】
また、上記した各実施の形態では、有機ELディスプレイの構造に関して、画像表示用の光を上方、すなわち封止パネルを経由して外部へ放出することにより画像を表示するトップエミッション型構造を有するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、画像表示用の光を下方、すなわち封止パネルに代えて駆動パネルを経由して外部へ放出することにより画像を表示するボトムエミッション型構造を有するようにしてもよい。このボトムエミッション型構造を有する有機ELディスプレイは、主に、光透過性絶縁材料を使用して光を透過させることが可能となるように駆動基板を構成すると共に、有機EL素子(下部電極層,透明導電層,有機層,上部電極層,主反射制御層,副反射制御層)の積層順を反転させることにより構成することが可能である。この場合においても、上記各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明に係る有機発光素子および有機発光装置は、いわゆる有機ELディスプレイに適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る有機ELディスプレイの全体の断面構成を表す断面図である。
【図2】図4に示した有機ELディスプレイのうちの主要部(有機EL素子)の断面構成を拡大して模式的に表す断面図である。
【図3】図2に示した有機ELディスプレイのうちの主要部(青色有機EL素子および赤色有機EL素子)の断面構成を拡大して詳細に表す断面図である。
【図4】図2に示した有機ELディスプレイのうちの主要部(緑色有機EL素子)の断面構成を拡大して詳細に表す断面図である。
【図5】図3に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図6】図4に示した緑色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図7】図3に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図8】図4に示した緑色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図9】図3に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関するさらに他の変形例を表す断面図である。
【図10】図4に示した緑色有機EL素子の構成に関するさらに他の変形例を表す断面図である。
【図11】図5に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図12】図6に示した緑色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図13】図7に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図14】図8に示した緑色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図15】図3に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関するさらに他の変形例を表す断面図である。
【図16】図5に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図17】図7に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態に係る有機ELディスプレイに搭載される青色有機EL素子および赤色有機EL素子の断面構成を断面図である。
【図19】本発明の第2の実施の形態に係る有機ELディスプレイに搭載される緑色有機EL素子の断面構成を断面図である。
【図20】図18に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図21】図19に示した緑色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図22】図18に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図23】図19に示した緑色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図24】図18に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関するさらに他の変形例を表す断面図である。
【図25】図19に示した緑色有機EL素子の構成に関するさらに他の変形例を表す断面図である。
【図26】図20に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図27】図21に示した緑色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図28】図22に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図29】図23に示した緑色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図30】図18に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関するさらに他の変形例を表す断面図である。
【図31】図20に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図32】図22に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図33】本発明の第3の実施の形態に係る有機ELディスプレイに搭載される青色有機EL素子および赤色有機EL素子の断面構成を断面図である。
【図34】本発明の第3の実施の形態に係る有機ELディスプレイに搭載される緑色有機EL素子の断面構成を断面図である。
【図35】図33に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図36】図34に示した緑色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図37】図33に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図38】図34に示した緑色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図39】図35に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図40】図36に示した緑色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図41】図33に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関するさらに他の変形例を表す断面図である。
【図42】図35に示した緑色有機EL素子の構成に関するさらに他の変形例を表す断面図である。
【図43】本発明の第4の実施の形態に係る有機ELディスプレイに搭載される青色有機EL素子および赤色有機EL素子の断面構成を断面図である。
【図44】本発明の第4の実施の形態に係る有機ELディスプレイに搭載される緑色有機EL素子の断面構成を断面図である。
【図45】図43に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図46】図44に示した緑色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図47】図43に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図48】実施例1の有機EL素子の基礎的な発光スペクトルを表す図である。
【図49】実施例2の有機EL素子の基礎的な発光スペクトルを表す図である。
【図50】実施例3の有機EL素子の基礎的な発光スペクトルを表す図である。
【図51】実施例4の有機EL素子の基礎的な発光スペクトルを表す図である。
【図52】実施例5の有機EL素子の基礎的な発光スペクトルを表す図である。
【図53】比較例の有機EL素子の基礎的な発光スペクトルを表す図である。
【図54】実施例1の有機EL素子の実用的な発光スペクトルを表す図である。
【図55】実施例2の有機EL素子の実用的な発光スペクトルを表す図である。
【図56】実施例3の有機EL素子の実用的な発光スペクトルを表す図である。
【図57】実施例4の有機EL素子の実用的な発光スペクトルを表す図である。
【図58】実施例5の有機EL素子の実用的な発光スペクトルを表す図である。
【図59】比較例の有機EL素子の実用的な発光スペクトルを表す図である。
【図60】カラーフィルタの透過特性を表す図である。
【符号の説明】
【0173】
10…駆動パネル、11…駆動用基板、12…TFT、13…層間絶縁層、14…駆動配線、15…平坦化絶縁層、16…有機EL素子、16B,46B,56B,66B…青色有機EL素子、16G,46G,56G,66G…緑色有機EL素子、16R,46R,56R,66R…赤色有機EL素子、17…層内絶縁層、18…保護層、20…封止パネル、21…封止用基板、22…カラーフィルタ、22B…青色フィルタ領域、22G…緑色フィルタ領域、22R…赤色フィルタ領域、30…接着層、100…有機ELディスプレイ、161B,161G,161R…下部電極層、161BM,161GM,161RM,164M…反射面、162B,162G,162R…透明導電層、163…有機層、164…上部電極層、165,166…反射面規定層、1631,1633,1635,1637,1639,1641…発光補助層、1632,1636,1640…青色発光層、1632M,1634M,1636M,1638M,1640M…発光面、1634…緑色発光層、1638…赤色発光層、1634M,1645M,1646M,1656M,1665M…界面、D,D1,D2,LB1,LB2,LB3,LG,LR…光学的距離、HB1,HB2,HB3,HPB…青色光、HG,HPG…緑色光、HP…画像表示用の光、HR,HPR…赤色光、nH,nL…屈折率、NB,NG,NR…発光点、TB,TG,TR…厚さ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネセンス(EL;Electro Luminescence)現象を利用して発光する有機発光素子および有機発光素子を備えた有機発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイの1つとして、有機EL現象を利用して画像を表示する有機発光装置(いわゆる有機ELディスプレイ)が注目されている。この有機ELディスプレイは、有機発光素子(いわゆる有機EL素子)の発光現象を利用して画像を表示する自発光型のディスプレイであるため、視野角が広く、消費電力が小さく、かつ軽量である点において優れている。
【0003】
有機ELディスプレイに搭載される有機EL素子は、主に、2つの電極層の間に有機層が設けられた構造を有している。この有機層は、発光源としての発光層と共に、その発光層を発光させるための正孔輸送層や電子輸送層などを併せて含んでいる。
【0004】
有機EL素子の構造に関しては、発光性能を向上させることを目的として、既にいくつかの態様が提案されている。
【0005】
具体的には、発光効率を高めると共に発光寿命を長期化するために、複数の発光層が積層されることにより直列に接続された積層構造(いわゆるタンデム構造)を有するように有機層を構成する技術が知られている(例えば、特許文献1〜7参照。)。この種の有機層では、任意の数の発光層を積層させることが可能である。この場合には、特に、青色光を発生させる青色発光層と、緑色光を発生させる緑色発光層と、赤色光を発生させる赤色発光層とを積層させることにより、それらの青色光、緑色光および赤色光の合成光として白色光を発生させることが可能である。
【特許文献1】特開昭61−037858号公報
【特許文献2】特開平11−329748号公報
【特許文献3】特開平11−329749号公報
【特許文献4】特開2003−045676号公報
【特許文献5】特開2003−264085号公報
【特許文献6】特開2003−272860号公報
【特許文献7】特開2004−039617号公報
【0006】
また、有機層のうちの発光層から発生した光(白色光)の中から所望の色(波長域)の光を効率よく取り出すために、複数の有機EL素子の間において光学的距離の差異を利用して光の干渉現象を生じさせる技術が知られている(例えば、特許文献8〜12参照。)。この種の有機EL素子では、光の3原色に対応する3色の光、すなわち青色光、緑色光および赤色光を個別に放出させることが可能である。
【特許文献8】特開2000−243573号公報
【特許文献9】特開2000−323277号公報
【特許文献10】特開2003−142277号公報
【特許文献11】特開2004−134101号公報
【特許文献12】特開2004−253389号公報
【0007】
さらに、上記した青色光、緑色光および赤色光の色純度を高めるために、光反射性を有する一方の電極層と光半透過性を有する他方の電極層との間において、有機層のうちの発光層から発生した光を反射させて共振させる技術が知られている(例えば、特許文献13,14参照。)。この光共振機能を有する有機EL素子の素子構造は、一般に、「光共振器構造(いわゆるマイクロキャビティ構造)」と呼ばれている。特に、光共振器構造を有する有機EL素子は、上記した光の干渉現象を利用する場合と比較して光取り出し効率が向上し、すなわち正面光強度が大きくなると共に色純度が高くなることから、フルカラーディスプレイに適している。
【特許文献13】国際公開第WO01/039554号パンフレット
【特許文献14】特開平10−177896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、最近では、有機ELディスプレイの実用性が広く認知されたことに伴い、表示性能の向上に関する要望が一層高まりつつある。このような技術的背景を踏まえると、今後益々有機ELディスプレイの市場普及を促進させるためには、表示性能を可能な限り向上させるために、その表示性能に寄与する有機EL素子の発光性能を可能な限り向上させる必要がある。しかしながら、従来の有機ELディスプレイでは、有機EL素子の発光性能を向上させる観点において未だ十分とは言えないため、多分に改善の余地がある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、発光性能を可能な限り向上させることが可能な有機発光素子を提供することにある。
【0010】
また、本発明の第2の目的は、表示性能を可能な限り向上させることが可能な有機発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る有機発光素子は、第1の電極層と第2の電極層との間に複数の発光層が積層された積層構造を有する有機層が設けられ、複数の発光層から発生した光を第1の反射面と第2の反射面との間において反射させて共振させることによりそれぞれ第2の電極層を経由して青色光、緑色光および赤色光を放出する青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子を含み、第1の反射面と複数の発光層のうちの各発光層の発光面との間の距離が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のいずれにおいても下記に示した関係式1を満たし、第1の反射面と第2の反射面との間の距離が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のいずれにおいても下記に示した関係式2を満たし、第1の電極層と有機層との間の距離が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のうちの少なくとも1つにおいて異なっているものである。
L=(mL−ΦL/2π)λL/2・・・関係式1
(「L」は第1の反射面と各発光層の発光面との間の距離(第1の光学的距離)、「mL」は次数(0または整数)、「ΦL」は各発光層において発生した光が第1の反射面において反射する際に生じる位相シフト、「λL」は各発光層において発生した光が有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
D=(mD−ΦD/2π)λD/2・・・関係式2
(「D」は第1の反射面と第2の反射面との間の距離(第2の光学的距離)、「mD」は次数(0または整数)、「ΦD」は複数の発光層において発生した光が第1の反射面および第2の反射面において反射する際に生じる位相シフト、「λD」は複数の発光層において発生した光が有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0012】
本発明に係る有機発光装置は、第1の電極層と第2の電極層との間に複数の発光層が積層された積層構造を有する有機層が設けられ、複数の発光層から発生した光を第1の反射面と第2の反射面との間において反射させて共振させることによりそれぞれ第2の電極層を経由して青色光、緑色光および赤色光を放出する青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子を含む有機発光素子を備え、第1の反射面と複数の発光層のうちの各発光層の発光面との間の距離が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のいずれにおいても下記に示した関係式3を満たし、第1の反射面と第2の反射面との間の距離が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のいずれにおいても下記に示した関係式4を満たし、第1の電極層と有機層との間の距離が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のうちの少なくとも1つにおいて異なっているものである。
L=(mL−ΦL/2π)λL/2・・・関係式3
(「L」は第1の反射面と各発光層の発光面との間の距離(第1の光学的距離)、「mL」は次数(0または整数)、「ΦL」は各発光層において発生した光が第1の反射面において反射する際に生じる位相シフト、「λL」は各発光層において発生した光が有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
D=(mD−ΦD/2π)λD/2・・・関係式4
(「D」は第1の反射面と第2の反射面との間の距離(第2の光学的距離)、「mD」は次数(0または整数)、「ΦD」は複数の発光層において発生した光が第1の反射面および第2の反射面において反射する際に生じる位相シフト、「λD」は複数の発光層において発生した光が有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0013】
本発明に係る有機発光素子では、青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子において、第1の電極層と第2の電極層との間に設けられた有機層が複数の発光層が積層された積層構造を有しており、特に、(1)第1の反射面と複数の発光層のうちの各発光層の発光面との間の距離(第1の光学的距離)が上記した関係式1を満たし、(2)第1の反射面と第2の反射面との間の距離(第2の光学的距離)が上記した関係式2を満たし、(3)第1の電極層と有機層との間の距離が青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子のうちの少なくとも1つにおいて異なっている。この場合には、第1の光学的距離の差異に基づく光の干渉現象を利用して、青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子からそれぞれ青色光、緑色光および赤色光が放出される。特に、第1の光学的距離が関係式1を満たしているため、光の干渉現象を利用して青色光、緑色光、青色光および赤色光HRの光取り出し効率が増加することにより、それらの青色光、緑色光および赤色光の強度が増強される。しかも、青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子がいずれも光共振器構造を有しており、特に、第2の光学的距離が関係式2を満たしているため、光の共振現象を利用して青色光、緑色光および赤色光の色純度が向上する。この場合には、例えば、複数の発光層が4種類の発光層(青色光を発生させる第1の青色発光層,緑色光を発生させる緑色発光層,青色光を発生させる第2の青色発光層,赤色光を発生させる赤色発光層)を含む場合に、上記した関係式1,2中の次数mL,mDが第1の青色発光層に関してmL=0,mD=2、緑色発光層に関してmL=1,mD=2、第2の青色発光層に関してmL=1,mD=2、赤色発光層に関してmL=1,mD=1であるか、あるいは複数の発光層が5種類の発光層(青色光を発生させる第1の青色発光層,緑色光を発生させる緑色発光層,青色光を発生させる第2の青色発光層,赤色光を発生させる赤色発光層,青色光を発生させる第3の青色発光層)を含む場合に、上記した関係式1,2中の次数mL,mDが第1の青色発光層に関してmL=0,mD=2、緑色発光層に関してmL=1,mD=2、第2の青色発光層に関してmL=1,mD=2、赤色発光層に関してmL=1,mD=1、第3の青色発光層に関してmL=2,mD=2であれば、光の干渉現象を利用して青色光、緑色光および赤色光の強度を増強させる観点において、その干渉条件が各色ごとに最適化される。
【0014】
本発明に係る有機発光装置では、上記した本発明に係る有機発光素子(青色有機発光素子,緑色有機発光素子,赤色有機発光素子)を備えているため、それらの青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子からそれぞれ放出される青色光、緑色光および赤色光の強度が増強されると共に色純度が向上ずる。
【0015】
なお、本発明に係る有機発光素子では、第1の反射面が第1の電極層と有機層との間の界面である一方で、(1)青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子がいずれも第1の電極層に近い側から順に相対的に高い屈折率を有する高屈折率層および相対的に低い屈折率を有する低屈折率層を含み、第2の反射面が高屈折率層と低屈折率層との間の界面であってもよいし、(2)青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子がいずれも第1の電極層に近い側から順に相対的に低い屈折率を有する低屈折率層および相対的に高い屈折率を有する高屈折率層を含み、第2の反射面が低屈折率層と高屈折率層との間の界面であってもよいし、あるいは(3)青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子がいずれも第1の電極層に近い側から順に相対的に低い屈折率を有する第1の低屈折率層および相対的に高い屈折率を有する第1の高屈折率層と相対的に高い屈折率を有する第2の高屈折率層および相対的に低い屈折率を有する第2の低屈折率層とを含み、第2の反射面が第1の低屈折率層と第1の高屈折率層との間の界面および第2の高屈折率層と第2の低屈折率層との間の界面であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る有機発光素子によれば、青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子において、第1の電極層と第2の電極層との間に設けられた有機層が複数の発光層が積層された積層構造を有しており、特に、上記した(1)〜(3)の構成条件を満たしているので、その(1)〜(3)の構成条件を満たしていない場合と比較して、青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子からそれぞれ放出される青色光、緑色光および赤色光の強度が増強されると共に色純度が向上する。したがって、発光性能を向上させることができる。この場合には、例えば、複数の発光層が4種類の発光層(青色光を発生させる第1の青色発光層,緑色光を発生させる緑色発光層,青色光を発生させる第2の青色発光層,赤色光を発生させる赤色発光層)を含む場合に、上記した関係式1,2中の次数mL,mDが第1の青色発光層に関してmL=0,mD=2、緑色発光層に関してmL=1,mD=2、第2の青色発光層に関してmL=1,mD=2、赤色発光層に関してmL=1,mD=1であるか、あるいは複数の発光層が5種類の発光層(青色光を発生させる第1の青色発光層,緑色光を発生させる緑色発光層,青色光を発生させる第2の青色発光層,赤色光を発生させる赤色発光層,青色光を発生させる第3の青色発光層)を含む場合に、上記した関係式1,2中の次数mL,mDが、第1の青色発光層に関してmL=0,mD=2、緑色発光層に関してmL=1,mD=2、第2の青色発光層に関してmL=1,mD=2、赤色発光層に関してmL=1,mD=1、第3の青色発光層に関してmL=2,mD=2であれば、光の干渉条件が各色ごとに最適化されるため、発光性能を可能な限り向上させることができる。
【0017】
本発明に係る有機発光装置によれば、上記した本発明に係る有機発光素子を備えているので、その有機発光素子の発光性能が可能な限り向上する。したがって、表示性能を可能な限り向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
[第1の実施の形態]
まず、図1〜図4を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る有機発光装置の構成について説明する。図1〜図4は、本実施の形態に係る有機発光装置としての有機ELディスプレイ100の構成を表しており、図1は全体の断面構成を示し、図2は主要部の断面構成を拡大して模式的に示し、図3および図4は図2に示した主要部の断面構成を詳細に示している。
【0020】
なお、本発明の第1の実施の形態に係る「有機発光素子」は、本実施の形態に係る有機ELディスプレイ100に有機EL素子16として搭載されるものであるため、その「有機発光素子」に関しては以下で併せて説明する。
【0021】
有機ELディスプレイ100は、有機EL現象を利用して画像表示用の光HPを放出することにより画像を表示するものである。この有機ELディスプレイ100は、例えば、図1に示したように、画像表示用の光HPを放出する有機EL素子16を備えており、その有機EL素子16は、青色光HPB(例えば、約460nm近傍の波長域)、緑色光HPG(例えば、約530nm近傍の波長域)および赤色光HPR(例えば、約620nm近傍の波長域)をそれぞれ放出する青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rを含んでいる。
【0022】
より具体的には、有機ELディスプレイ100は、例えば、図1に示したように、駆動パネル10および封止パネル20が互いに対向配置され、それらの駆動パネル10および封止パネル20が接着層30を介して互いに貼り合わされた構造を有している。この有機ディスプレイ100は、例えば、画像表示用の光HPを上方、すなわち封止パネル20を経由して外部へ放出することにより画像を表示するトップエミッション型構造を有している。
【0023】
駆動パネル10は、例えば、駆動用基板11の一面に、その駆動用基板11に近い側から順に、薄膜トランジスタ(TFT;thin film transistor)12と、層間絶縁層13と、駆動配線14と、平坦化絶縁層15と、上記した有機EL素子16(青色有機EL素子16B,緑色有機EL素子16G,赤色有機EL素子16R)および層内絶縁層17と、保護層18とが積層された構造を有している。
【0024】
駆動用基板11は、TFT12や有機EL素子16などを支持するものであり、例えば、シリコン(Si)やプラスチックなどの非光透過性絶縁性材料により構成されている。
【0025】
TFT12は、有機EL素子16を駆動させるものであり、例えば、駆動用基板11の一面に複数個に渡ってマトリックス状に配列されている。このTFT12は、層間絶縁層13に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて駆動配線14に電気的に接続されている。
【0026】
層間絶縁層13は、TFT12を周囲から電気的に分離するものであり、例えば、酸化ケイ素(SiO2 )やPSG(phospho-silicate glass)などの絶縁性材料により構成されている。この層間絶縁層13は、例えば、TFT12およびその周辺の駆動用基板11を覆うように配設されている。
【0027】
駆動配線14は、信号線として機能することにより有機EL素子16を駆動させるものであり、例えば、アルミニウム(Al)やアルミニウム銅合金(AlCu)などの導電性材料により構成されている。この駆動配線14は、平坦化絶縁層15に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて有機EL素子16に電気的に接続されている。なお、駆動配線14は、例えば、各TFT12ごとに2つずつ(ゲート信号線,ドレイン信号線)設けられており、上記したように、TFT12に電気的に接続されている。
【0028】
平坦化絶縁層15は、TFT12および駆動配線14と有機EL素子16との間を電気的に分離すると共に、その有機EL素子16が配置される下地を平坦化するものであり、例えば、酸化ケイ素(SiO2 )などの絶縁性材料により構成されている。
【0029】
有機EL素子16は、有機EL現象を利用して発光するものであり、上記したように、青色光HPBを放出する青色有機EL素子16Bと、緑色光HPGを放出する緑色有機EL素子16Gと、赤色光HPRを放出する赤色有機EL素子16Rとを含んでいる。なお、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rは、それらの青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rを1組として、TFT12の配列パターンに対応して複数組に渡ってマトリックス状に配列されている。
【0030】
これらの青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rは、互いにほぼ同様の構造を有しており、すなわち光反射性を有する下部電極層161B,161G,161Rと光半透過性を有する上部電極層164との間に有機層163が設けられた構造を有している。
【0031】
より詳細には、便宜上、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rの積層構造を互いに分離すると、それらの積層構造は、例えば、図2〜図4に示したように示される。なお、図3では、例えば、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rが互いに同一の積層構造を有していることに伴い、図示内容を簡略化するために、それらの青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rの積層構造をまとめて示している。
【0032】
すなわち、青色有機EL素子16Bは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161B、有機層163、上部電極層164および反射面規定層165,166が積層された積層構造を有している。緑色有機EL素子16Gは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161G、透明導電層162G、有機層163、上部電極層164および反射面規定層165,166が積層された積層構造を有している。赤色有機EL素子16Rは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161R、有機層163、上部電極層164および反射面規定層165,166が積層された積層構造を有している。特に、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rのそれぞれは、厳密には、上記したように互いに同様の積層構造を有していることに伴い、青色光HPBまたは赤色光HPRのいずれか一方だけでなく、青色光HPBおよび赤色光HPRの双方を放出するようになっている。
【0033】
下部電極層161B,161G,161Rは、有機層163に電圧を印加するための電極として機能する第1の電極層であり、図示しない駆動電源に接続されている。特に、下部電極層161B,161G,161Rは、有機層163から発生した光を上部電極層164を経由して外部に放出させるために、その光を反射させる反射電極として機能するものである。これらの下部電極層161B,161G,161Rは、光反射性を有し、より具体的には可視光の波長域において十分な反射率を有する材料により構成されている。ここでは、下部電極層161B,161G,161Rは、例えば、陽極として機能するために、有機層163に正孔(いわゆるホール)を効率よく注入することが可能であり、より具体的には仕事関数が十分に大きな材料により構成されている。この場合の下部電極層161B,161G,161Rの構成材料としては、例えば、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、セレン(Se)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、レニウム(Re)、タングステン(W)、モリブデン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)などの金属や、それらの金属の合金などが挙げられる。
【0034】
透明導電層162Gは、緑色有機EL素子16Gの光学的な構成条件(後述する光学的距離L,D)を調整するためのものである。この透明導電層162Gは、例えば、酸化インジウム錫(ITO;indium tin oxide)や酸化亜鉛などの透明導電材料により構成されており、厚さTGを有している。
【0035】
有機層163は、有機EL現象を利用して発光するものであり、複数の発光層を含み、すなわち複数の発光層が積層された積層構造(いわゆるタンデム構造)を有している。この有機層163は、例えば、複数の発光層として4種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)を含むと共に、それらの4種類の発光層を発光させるための複数の発光補助層(発光補助層1631,1633,1635,1637,1639)を併せて含んでいる。すなわち、有機層163は、例えば、下部電極層161B,161G,161Rに近い側から順に、発光補助層1631、青色発光層1632、発光補助層1633、緑色発光層1634、発光補助層1635、青色発光層1636、発光補助層1637、赤色発光層1638および発光補助層1639が積層された積層構造を有している。
【0036】
発光補助層1631は、青色発光層1632に正孔を供給するものであり、例えば、下部電極層161B,161G,161Rに近い側から順に、正孔注入層および正孔輸送層(いずれも図示せず)が積層された積層構造を有している。この正孔注入層は、例えば、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)などにより構成されており、正孔輸送層は、例えば、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)などにより構成されている。
【0037】
青色発光層1632は、有機EL現象を利用して青色光HB1を発生させる発光層(第1の青色発光層)であり、例えば、化1に示した構造式で表される4,4’−(ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル)(BCzVBi)が約5体積%混合された、化2に示した構造式で表される4,4−ビス(2,2−ジフェニル−エテン−1−イル)−ビフェニル(DPVBi)などの電子輸送性発光材料により構成されている。
【0038】
【化1】
【0039】
【化2】
【0040】
発光補助層1633は、青色発光層1632に電子を供給すると共に緑色発光層1634に正孔を供給するものであり、例えば、青色発光層1632に近い側から順に、電子輸送層、金属層および正孔輸送層(いずれも図示せず)が積層された積層構造を有している。この電子輸送層は、例えば、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq)などにより構成されており、金属層は、例えば、フッ化リチウム(LiF)/マグネシウム銀合金(MgAg)などにより構成されており、正孔輸送層は、例えば、α−NPDなどにより構成されている。この金属層の厚さは、約0.2nm〜4nmであるのが好ましい。なぜなら、金属層の厚さが大きすぎると、光吸収量が大きくなることに起因して光取り出し効率が低下してしまうからである。この金属層の厚さが上記した範囲内であれば、発光補助層1633が電子および正孔の供給機能を果たしつつ、その発光補助層1633の透過率が約80%以上となるため、十分な光取り出し効率が得られる。なお、発光補助層1633には、例えば、周知のタンデム構造を有する有機EL素子に適用されている各種層構造、より具体的には2つの発光層間に設けられることにより電子および正孔を発生または分離することが可能な各種層構造が適用されてもよい。この場合には、十分な光取り出し効率を得る観点から、発光補助層1633が可視光の波長域において透明であり、より具体的には透過率が約80%以上であるのが好ましい。
【0041】
緑色発光層1634は、有機EL現象を利用して緑色光HGを発生させる発光層であり、例えば、クマリン6が約1体積%混合されたAlq(トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム)などの電子輸送性発光材料により構成されている。
【0042】
発光補助層1635は、緑色発光層1634に電子を供給すると共に青色発光層1636に正孔を供給するものであり、例えば、発光補助層1633と同様の構成を有している。
【0043】
青色発光層1636は、有機EL現象を利用して青色光HB2を発生させる発光層(第2の青色発光層)であり、例えば、青色発光層1632と同様の電子輸送性発光材料により構成されている。なお、青色発光層1636の構成材料は、必ずしも青色発光層1632の構成材料と一致していなければならないわけではなく、その青色発光層1632の構成材料と異なっていてもよい。
【0044】
発光補助層1637は、青色発光層1636に電子を供給すると共に赤色発光層1638に正孔を供給するものであり、例えば、発光補助層1633と同様の構成を有している。
【0045】
赤色発光層1638は、有機EL現象を利用して赤色光HRを発生させる発光層であり、例えば、化3に示した構造式で表されるビスアミノスチリルナフタレンのメトキシ置換体(BSN)が約30体積%混合されたAlqなどの正孔輸送性発光材料により構成されている。
【0046】
【化3】
【0047】
発光補助層1639は、赤色発光層1638に電子を供給するものであり、例えば、上部電極層164に近い側から順に、電子注入層および電子輸送層(いずれも図示せず)が積層された積層構造を有している。この電子注入層は、例えば、マグネシウム(Mg)が約5体積%混合されたAlqなどにより構成されており、電子輸送層は、例えば、Alqなどにより構成されている。なお、電子注入層は、例えば、上記したマグネシウム(Mg)が約5体積%混合されたAlqの層上に、マグネシウム(Mg)および銀(Ag)の共蒸着層(約0.1nm〜10nm厚)が積層された積層構造を有していてもよいし、あるいはフッ化リチウム(LiF)の層上に、マグネシウムおよび銀の共蒸着層(約0.1nm〜10nm厚)が積層された積層構造を有していてもよい。
【0048】
上部電極層164は、有機層163に電圧を印加するための電極として機能する第2の電極層であり、下部電極層161B,161G,161Rと同様に図示しない駆動電源に接続されている。特に、上部電極層164は、有機層163から発生した光を外部に導くために、その光を透過させる透過電極として機能するものである。この上部電極層164は、光透過性を有し、より具体的には可視光の波長域において十分な透過率を有する材料により構成されている。この場合の上部電極層164の構成材料としては、例えば、酸化錫(SnO2 )、酸化インジウム錫(ITO;Indium Tin Oxide)、酸化亜鉛(ZnO)または酸化チタン(TiO2 )などの透明導電材料が挙げられる。なお、「透明」とは、いわゆる光透過性と同義である。
【0049】
反射面規定層165,166は、屈折率の差異を利用して光共振器構造のうちの反射面(第2の反射面;後述する反射面1656M)を規定するものである。すなわち、反射面規定層165は、相対的に高い屈折率nHを有することにより高屈折率層として機能するものであり、可視光の波長域において光吸収量が小さな材料により構成されている。この反射面規定層165の構成材料としては、例えば、ITO、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム(MgO)、酸化モリブデン(MoO3 )、酸化ニオブ(Nb2 O5 )またはセレン化亜鉛(ZnS)などの高屈折率材料が挙げられる。一方、反射面規定層166は、相対的に低い屈折率層nLを有することにより低屈折率層として機能するものであり、やはり可視光の波長域において光吸収量が小さな材料により構成されている。この反射面規定層166の構成材料としては、例えば、フッ化リチウム(LiF)、フッ化カルシウム(CaF2 )、フッ化マグネシウム(MgF2 )、フッ化アルミニウム(AlF3 )、臭化カリウム(KBr)、酸化ケイ素(SiO2 )または窒化ケイ素(SiN)などの低屈折率材料が挙げられる。確認までに、反射面規定層165,166は、上記したように高屈折率層または低屈折率層として機能し得る限り、単層構造を有していてもよいし、あるいは積層構造を有していてもよい。
【0050】
なお、図1に示したように、下部電極層161B,161G,161Rは、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rのそれぞれの配置領域ごとに分割されている。一方、有機層163、上部電極層164および反射面規定層165,166は、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rのそれぞれの配置領域を連続的に経由するように延在しており、すなわち青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rにより共有されている。
【0051】
層内絶縁層17は、例えば、ポリイミドまたはポリベンゾオキサゾールなどの有機絶縁性材料や酸化ケイ素(SiO2 )などの無機絶縁性材料により構成されており、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rの周囲に設けられている。
【0052】
保護層18は、主に有機EL素子16を保護するものであり、例えば、窒化ケイ素(SiN)などの光透過性誘電性材料により構成されたパッシベーション膜である。
【0053】
一方、封止パネル20は、封止用基板21の一面に、カラーフィルタ22が設けられた構造を有している。
【0054】
封止用基板21は、カラーフィルタ22を支持すると共に、画像表示用の光HPを透過させることにより外部へ放出させるためのものであり、例えば、ガラスなどの光透過性絶縁性材料により構成されている。
【0055】
カラーフィルタ22は、有機EL素子16(青色有機EL素子16B,緑色有機EL素子16G,赤色有機EL素子16R)において発生した青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRを透過させると共に、有機ELディスプレイ100の内部に外光が侵入することにより有機EL素子16などの高反射性部品において反射した際に、その反射光を吸収することによりコントラストを確保するためのものである。このカラーフィルタ22は、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rにそれぞれ対応して配置された3色のフィルタ領域、すなわち青色フィルタ領域22B、緑色フィルタ領域22Gおよび赤色フィルタ領域22Rを含んでいる。なお、青色フィルタ領域22B、緑色フィルタ領域22Gおよび赤色フィルタ領域22Rは、例えば、それぞれ青色、緑色および赤色の顔料が混入された樹脂を含んで構成されている。
【0056】
なお、接着層30は、駆動パネル10と封止パネル20とを互いに貼り合わせるためのものであり、例えば、熱硬化型樹脂などの接着材料を含んで構成されている。
【0057】
ここで、図2〜図4を参照して、有機EL素子16(青色有機EL素子16B,緑色有機EL素子16G,赤色有機EL素子16R)の詳細な構成について説明する。
【0058】
第1に、所定の反射面(第1の反射面)と有機層163を構成している複数の発光層のうちの各発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)の発光面との間の距離は、下記に示した関係式11を満たしている。
L=(mL−ΦL/2π)λL/2・・・関係式11
(「L」は所定の反射面と各発光層の発光面との間の距離(第1の光学的距離)、「mL」は次数(0または整数)、「ΦL」は各発光層から発生した光が所定の反射面において反射する際に生じる位相シフト、「λL」は各発光層から発生した光が有機発光素子16から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0059】
上記した「所定の反射面」とは、例えば、下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMであり、すなわち下部電極層161B,161Rのうちの発光補助層1631に隣接する面および下部電極層161Gのうちの透明導電層162Gに隣接する面である。
【0060】
図3および図4を参照して各発光層ごとに光学的距離Lを説明すると、以下の通りである。
【0061】
すなわち、下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと青色発光層1632の発光面1632Mとの間の光学的距離は、下記に示した関係式12を満たしている。ここでは、例えば、関係式12中の次数mLB1が、mLB1=0である。
LB1=(mLB1−ΦLB1/2π)λLB1/2・・・関係式12
(「LB1」は反射面161BM,161GM,161RMと発光面1632Mとの間の距離(第1の光学的距離)、「mLB1」は次数(0または整数)、「ΦLB1」は青色発光層1632から発生した青色光HB1が反射面161BM,161GM,161RMにおいて反射する際に生じる位相シフト、「λLB1」は青色発光層1632から発生した青色光HB1が青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0062】
上記した「発光面1632M」とは、青色発光層1632が面発光すると考えた場合に、その青色発光層1632中において発光している確率(有機EL現象を利用して実質的に発光している確率)が最も高い面であり、その青色発光層1632の材質(電子輸送性発光材料または正孔輸送性発光材料)に基づいて決定される面である。ここでは、例えば、青色発光層1632が電子輸送性発光材料により構成されていることに伴い、発光面1632Mは、その青色発光層1632のうちの発光補助層1631に隣接する面である。
【0063】
下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと緑色発光層1634の反射面1634Mとの間の光学的距離は、下記に示した関係式13を満たしている。ここでは、例えば、関係式13中の次数mLGが、mLG=1である。
LG=(mLG−ΦLG/2π)λLG/2・・・関係式13
(「LG」は反射面161BM,161GM,161RMと発光面1634Mとの間の距離(第1の光学的距離)、「mLG」は次数(0または整数)、「ΦLG」は緑色発光層1634から発生した緑色光HGが反射面161BM,161GM,161RMにおいて反射する際に生じる位相シフト、「λLG」は緑色発光層1634から発生した緑色光HGが青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0064】
上記した「発光面1634M」とは、例えば、緑色発光層1634が青色発光層1632と同様に電子輸送性発光材料により構成されていることに伴い、その緑色発光層1634のうちの発光補助層1633に隣接する面である。
【0065】
下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと青色発光層1636の反射面1636Mとの間の光学的距離は、下記に示した関係式14を満たしている。ここでは、例えば、関係式14中の次数mLB2が、mLB2=1である。
LB2=(mLB2−ΦLB2/2π)λLB2/2・・・関係式14
(「LB2」は反射面161BM,161GM,161RMと発光面1636Mとの間の距離(第1の光学的距離)、「mLB2」は次数(0または整数)、「ΦLB2」は青色発光層1636から発生した青色光HB2が反射面161BM,161GM,161RMにおいて反射する際に生じる位相シフト、「λLB2」は青色発光層1636から発生した青色光HGが青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0066】
上記した「発光面1636M」とは、例えば、青色発光層1636が青色発光層1632と同様に電子輸送性発光材料により構成されていることに伴い、その青色発光層1636のうちの発光補助層1635に隣接する面である。
【0067】
下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと赤色発光層1638の発光面1638Mとの間の光学的距離は、下記に示した関係式15を満たしている。ここでは、例えば、関係式15中の次数mLRが、mLR=1である。
LR=(mLR−ΦLR/2π)λLR/2・・・関係式15
(「LR」は反射面161BM,161GM,161RMと発光面1638Mとの間の距離(第1の光学的距離)、「mLR」は次数(0または整数)、「ΦLR」は赤色発光層1638から発生した赤色光HRが反射面161BM,161GM,161RMにおいて反射する際に生じる位相シフト、「λLR」は赤色発光層1638から発生した赤色光HRが青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0068】
上記した「発光面1638M」とは、例えば、赤色発光層1638が正孔輸送性発光材料により構成されていることに伴い、その赤色発光層1638のうちの発光補助層1639に隣接する面である。
【0069】
これらの光学的距離LB1,LG,LB2,LRは、青色発光層1632、緑色発光層1634、青色発光層1636および赤色発光層1638のそれぞれから発生した青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRが下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMにおいて反射されたのちに上部電極層164を経由することにより青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rの外部に放出される過程において、それらの青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRの光取り出し効率が光の干渉現象を利用して増加するように個別に設定されている。より具体的には、光学的距離LB1,LB2は、青色に対応する波長域(例えば、約460nm近傍の波長域)において青色光HB1,HB2の強度が増強されるように設定され、光学的距離LGは、緑色に対応する波長域(例えば、約530nm近傍の波長域)において緑色光HGの強度が増強されるように設定され、光学的距離LRは、赤色に対応する波長域(例えば、約620nm近傍の波長域)において赤色光HRの強度が増強されるように設定されている。
【0070】
第2に、下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離は、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rのうちの少なくとも1つにおいて異なっている。
【0071】
ここでは、例えば、上記した下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離が、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rよりも緑色有機EL素子16Gにおいて大きくなっている。より具体的には、例えば、図3および図4に示したように、緑色有機EL素子16Gにおいて、下部電極層161Gと有機層163との間に透明導電層162G(厚さTG)が設けられている一方で、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rのいずれにおいても、下部電極層161B,161Rと有機層163との間に上記した透明導電層162Gに対応する透明導電層が設けられていない。これにより、下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離は、上記した透明導電層162Gの厚さ分だけ、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rよりも緑色有機EL素子16Gにおいて大きくなっている。すなわち、緑色有機EL素子16Gでは、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rとは異なり、透明導電層162Gの厚さを加味して光学的距離LB1,LG,LB2,LRが規定される。
【0072】
これらの光学的距離LB1,LG,LB2,LRは、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rのそれぞれから青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRが放出される過程において、それらの青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rから光の干渉現象を利用して互いに異なる波長域の光が選択的に取り出されるように設定されている。より具体的には、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rでは、青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRの中から青色に対応する波長域(例えば、約460nm近傍の波長域)の青色光HPBおよび赤色に対応する波長域(例えば、約620nm近傍の波長域)の赤色光HPRが選択的に取り出されると共に、緑色有機EL素子16Gでは、青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRの中から緑色に対応する波長域(例えば、約530nm近傍の波長域)の緑色光HPGが選択的に取り出されるように設定されている。
【0073】
第3に、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rは、有機層163のうちの複数の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)から発生した光を一方の反射面(第1の反射面)と他方の反射面(第2の反射面)との間において反射させて共振させる光共振器構造を有しており、すなわち一種の狭帯域フィルタとして働く機能を有している。
【0074】
これらの青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rでは、一方の反射面と他方の反射面との間の距離が、下記に示した関係式16を満たしている。
D=(mD−ΦD/2π)λD/2・・・関係式16
(「D」は一方の反射面と他方の反射面との間の距離(第2の光学的距離)、「mD」は次数(0または整数)、「ΦD」は複数の発光層から発生した光が一方の反射面および他方の反射面において反射する際に生じる位相シフト、「λL」は複数の発光層から発生した光が青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0075】
上記した「一方の反射面」とは、例えば、下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMである。また、「他方の反射面」とは、例えば、互いに隣接する2つの層間における屈折率の差異に基づいて光を反射し、すなわち下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMにおいて反射された光を反射し得るだけの十分な屈折率差を有する界面である。ここでは、例えば、高屈折率層として機能する反射面規定層165(屈折率nH)と低屈折率層として機能する反射面規定層166(屈折率nL)との間において十分な屈折率差が確保されていることに伴い、「他方の反射面」は、反射面規定層165,166の間の界面1656Mである。
【0076】
この光学的距離Dは、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rのそれぞれから青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが放出される過程において、それらの青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの色純度が光共振器構造の光共振現象を利用して増強されるように設定されている。ここでは、例えば、関係式16中の次数mDが、青色発光層1632に関してmD=2、緑色発光層1634に関してmD=2、青色発光層1636に関してmD=2、赤色発光層1638に関してmD=1である。
【0077】
この有機ELディスプレイ100は、以下のように動作する。
【0078】
すなわち、図1〜図4に示したように、駆動パネル10のうちのTFT12を利用して青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rが駆動され、すなわち下部電極層161B,161G,161Rと上部電極層164との間に電圧が印加されると、有機層163のうちの青色発光層1632、緑色発光層1634、青色発光層1636および赤色発光層1638(発光点NB,NG,NR)において、発光補助層1631,1633,1635,1637,1639から供給された正孔および電子が再結合することにより発光する。すなわち、青色発光層1632から青色光HB1が発生し、緑色発光層1634から緑色光HGが発生し、青色発光層1636から青色光HB2が発生し、赤色発光層1638から赤色光HRが発生する。
【0079】
この際、図3および図4に示したように、青色光HB1、緑色光HG、青色発光層HB2および赤色光HRが下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMにおいて反射されたのちに上部電極層164を経由することにより青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rから放出される過程において、光学的距離LB1,LG,LB2,LRの差異を利用して光の干渉現象が生じる。これにより、光の干渉現象を利用して青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRの中から青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rごとに互いに異なる波長域の光が取り出されるため、それらの青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rからそれぞれ青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが放出される。この際、厳密には、緑色有機EL素子16Gから緑色光HPGのみが放出される一方で、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rのそれぞれから青色光HPBおよび赤色光HPRの双方が放出される。しかも、光の干渉現象を利用して光取り出し効率が増加するため、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度が増強される。これにより、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの合成光として画像表示用の光HPが有機ELディスプレイ100の外部へ放出されることにより画像として視認されるため、その画像表示用の光HPに基づいてフルカラーの画像が表示される。
【0080】
この場合には、特に、図2〜図4に示したように、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが下部電極層161R,161G,161Bの反射面161BM,161GM,161RMと反射面規定層165,166の間の界面1656Mとの間において反射されることにより共振される。これにより、赤色光HR、緑色光HGおよび青色光HBの半値幅が減少するため、それらの赤色光HR、緑色光HGおよび青色光HBの色純度が向上する。
【0081】
本実施の形態に係る有機ELディスプレイ100では、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rにおいて、下部電極層161B,161G,161Rと上部電極層164との間に設けられた有機層163が、複数の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)が積層された積層構造を有しており、特に、以下の3つの構成条件を満たしている。すなわち、第1に、下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと青色発光層1632、緑色発光層1634、青色発光層1636および赤色発光層1638のそれぞれの発光面1632M,1634M,1636M,1638Mとの間の距離(光学的距離LB1,LG,LB2,LR)が、上記した関係式11(関係式12〜15)を満たしている。第2に、下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと反射面規定層165,166の間の界面1656Mとの間の距離(光学的距離D)が、上記した関係式16を満たしている。第3に、下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離が、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rよりも緑色有機EL素子16Gにおいて大きくなっている。
【0082】
この3つの構成条件を満たした有機ELディスプレイ100では、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rのいずれにおいても初期段階において青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRが発生するにもかかわらず、光学的距離LB1,LG,LB2,LRの差異に基づく光の干渉現象を利用して、それらの青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rからそれぞれ青色光HPB、緑色光HGおよび赤色光HRが放出され、厳密には、緑色有機EL素子16Gから緑色光HPGのみが放出される一方で、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rのそれぞれから青色光HPBおよび赤色光HPRの双方が放出される。これにより、青色光HPB、緑色光HGおよび赤色光HRの合成光(画像表示用の光HP)に基づいてフルカラーの画像が表示される。この際、上記した関係式12〜15を満たすように光学的距離LB1,LG,LB2,LRが設定されているため、光の干渉現象を利用して青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRの光取り出し効率が増加することにより、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度が増強される。しかも、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rがいずれも光共振器構造を有しており、特に、上記した関係式16を満たすように光学的距離Dが設定されているため、光の共振現象を利用して青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの色純度が向上する。したがって、画像表示用の光HP(青色光HPB,緑色光HPG,赤色光HPR)の強度および色純度の観点において青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rの発光性能が向上するため、上記した3つの構成条件が満たされていない場合と比較して、表示性能を向上させることができる。
【0083】
この場合には、特に、有機層163が複数の発光層として4種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)を含む場合に、関係式11中の次数mLを各発光層ごとに最適化し、すなわち青色発光層1632に関する関係式12中の次数mLB1をmLB1=0、緑色発光層1634に関する関係式13中の次数mLGをmLG=1、青色発光層1636に関する関係式14中の次数mLB2をmLB2=1、赤色発光層1638に関する関係式15中の次数mLRをmLR=1としたので、光学的距離LB1,LG,LB2,LRの差異に基づく光の干渉現象を利用して青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRの光取り出し効率を増加させる観点において、その干渉条件が各色ごとに最適化される。しかも、関係式16中の次数mDを各発光層ごとに最適化し、すなわち青色発光層1632に関してmD=2、緑色発光層1634に関してmD=2、青色発光層1636に関してmD=2、赤色発光層1638に関してmD=1としたので、光学的距離Dに基づく光の共振現象を利用して青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2および赤色光HRの色純度を向上させる観点において、その共振条件が各色ごとに最適化される。したがって、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度が著しく増強されると共に色純度が著しく向上するため、表示性能を可能な限り向上させることができる。
【0084】
なお、本実施の形態に係る有機ELディスプレイ100において青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの色純度が向上する点に関して補足しておくと、以下の通りである。すなわち、本実施の形態では、上記したように、下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離が青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rよりも緑色有機EL素子16Gにおいて大きくなっているため、光学的距離LB1,LG,LB2,LRがやはり青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rよりも緑色有機EL素子16Gにおいて大きくなる。この場合には、光取り出し効率に寄与する光学的距離LB1,LG,LB2,LRが青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rと緑色有機EL素子16Gとの間において別個に設定され、すなわち青色光HPBおよび緑色光HPGの波長域が隣り合っている青色有機EL素子16Bと緑色有機EL素子16Gとの間において光取り出し条件が互いに異なるように設定されると共に、同様に緑色光HPGおよび赤色光HPRの波長域が隣り合っている緑色有機EL素子16Gと赤色有機EL素子16Rとの間において光取り出し条件が互いに異なるように設定される。したがって、下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離が青色有機EL素子16B、赤色有機EL素子16Rおよび緑色有機EL素子16Gの間において互いに等しい場合と比較して、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの色純度を向上させることができる。この場合には、特に、カラーフィルタ22を使用することにより、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの色純度が十分に高くなるため、その色純度を著しく向上させることができる。
【0085】
また、本実施の形態では、有機層163が緑色発光層(緑色発光層1634)および赤色発光層(赤色発光層1638)をそれぞれ1つずつ含む一方で青色発光層(青色発光層1632,1636)を2つ含むようにしたので、相対的に視感度が高い緑色光(緑色光HG)および赤色光(赤色光HR)の強度よりも、相対的に視感度が低い青色光(青色光HB1,HB2)の強度が大きくなる。したがって、視感度の観点において青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度バランスが適正化されるため、画像表示用の光HPの色バランスを適正化することができる。なお、確認までに説明しておくと、有機層163が2つの青色発光層1632,1636を含む場合に、画像表示用の光HPの強度や視野角依存性の観点において青色発光層1632,1636の構成材料を検討すると、例えば、上記した関係式12,14中の次数mLB1,mLB2を考慮することにより(例えば、mLB1=0,mLB2=1)、相対的に次数が高い青色発光層1636に関して、相対的に発光スペクトルの半値幅が大きくなるような材料を使用するのが好ましい。
【0086】
上記した他、本実施の形態に係る有機EL素子16(青色有機EL素子16B,緑色有機EL素子16G,赤色有機EL素子16R)では、下部電極層161B,161G,161Rと上部電極層164との間に、複数の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)が積層された積層構造を有する有機層163が設けられており、特に、上記した3つの構成条件を満たすようにしたので、上記したように、画像表示用の光HP(青色光HPB,緑色光HPG,赤色光HPR)の強度が増強されると共に色純度が向上する。したがって、発光性能を向上させることができる。この場合には、特に、上記したように、関係式11中の次数mLを各発光層ごとに最適化し、すなわち関係式12〜15に示した次数mLB1,mLG,mLB2,mLRを最適化する(mLB1=0,mLG=1,mLB2=1,mLR=1)と共に、関係式16中の次数mDを各発光層ごとに最適化し、すなわち次数mDを青色発光層1632に関してmD=2、緑色発光層1634に関してmD=2、青色発光層1636に関してmD=2、赤色発光層1638に関してmD=1とすることにより、発光性能を可能な限り向上させることができる。
【0087】
なお、本実施の形態では、図3および図4に示したように、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rにおいて、光共振器構造のうちの反射面(第2の反射面)を構成するために、上部電極層164上に、相対的に高い屈折率nHを有する反射面規定層165および相対的に低い屈折率層nLを有する反射面規定層166をこの順に設けることにより、それらの反射面規定層165,166の間の界面1656Mにおいて光を反射させるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。すなわち、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rの構造は、屈折率の差異を利用して光共振器構造のうちの反射面(第2の反射面)を構成し得る限り、自由に変更可能である。
【0088】
具体的な一例を挙げれば、図3および図4にそれぞれ対応する図5および図6に示したように、上部電極層164が相対的に高い屈折率nHを有することにより高屈折率層として機能する場合には、その上部電極層164上に反射面規定層165(屈折率nH)を設けずに反射面規定層166(屈折率nL)のみを設けることにより、屈折率の差異を利用して上部電極層164(屈折率nH)と反射面規定層166(屈折率nL)との間の界面1646Mにおいて光を反射させるようにしてもよい。この場合においても、反射面161BM,161GM,161RMと界面1646Mとの間の光学的距離Dが上記した関係式16を満たすことにより、図3および図4に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図5および図6に示した青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図3および図4に示した場合と同様である。
【0089】
また、他の例として、図3および図4にそれぞれ対応する図7および図8に示したように、有機層163のうちの発光補助層1639が相対的に高い屈折率nHを有することにより高屈折率層として機能すると共に、上部電極層164が相対的に低い屈折率nLを有することにより低屈折率層として機能する場合には、その上部電極層164上に反射面規定層165,166を設けないことにより、屈折率の差異を利用して発光補助層1639と上部電極層164との間の界面1634Mにおいて光を反射させるようにしてもよい。この場合においても、反射面161BM,161GM,161RMと界面1634Mとの間の光学的距離Dが上記した関係式16を満たすことにより、図3および図4に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図7および図8に示した青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図3および図4に示した場合と同様である。
【0090】
また、本実施の形態では、図3および図4に示したように、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rにおいて、有機層163が複数の発光層として4種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)を含み、それらの青色発光層1632、緑色発光層1634、青色発光層1636および赤色発光層1638が下部電極層161B,161G,171Rに近い側から順に積層されるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。すなわち、有機層163に含まれる複数の発光層の層数および積層順は、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rからそれぞれ青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが放出される限り、自由に変更可能である。
【0091】
具体的な一例を挙げれば、図3および図4にそれぞれ対応する図9および図10に示したように、有機層163が複数の発光層として5種類の発光層(上記した青色発光層1632、緑色発光層1634、青色発光層1636および赤色発光層1638と共に青色発光層1640)と共に、それらの5種類の発光層を発光させるための複数の発光補助層(上記した発光補助層1631,1633,1635,1637,1639と共に発光補助層1641)を併せて含み、すなわち下部電極層161B,161G,161Rに近い側から順に、上記した発光補助層1631から発光補助層1639に至る一連の層、青色発光層1640および発光補助層1641が積層された積層構造を有するようにしてもよい。
【0092】
青色発光層1640は、有機EL現象を利用して青色光HB3を発生させる発光層(第3の青色発光層)であり、例えば、青色発光層1632,1636と同様の電子輸送性材料により構成されている。なお、青色発光層1640の構成材料は、青色発光層1632,1636の構成材料と異なっていてもよい。発光補助層1641は、青色発光層1640に電子を供給するものであり、例えば、図3および図4に示した発光補助層1639と同様の機能および材質を有している。ここでは、発光補助層1639は、赤色発光層1638に電子を供給すると共に青色発光層1640に正孔を供給するものであり、例えば、図3および図4に示した発光補助層1633,1635,1637と同様の機能および材質を有している。
【0093】
下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと青色発光層1640の発光面1640Mとの間の距離(光学的距離LB3)は、下記に示した関係式17を満たしている。ここでは、例えば、関係式17中の次数mLB3が、mLB3=2である。この「発光面1640M」とは、青色発光層1640が青色発光層1632,1636と同様に電子輸送性発光材料により構成されていることに伴い、その青色発光層1640のうちの発光補助層1639に隣接する面である。
LB3=(mLB3−ΦLB3/2π)λLB3/2・・・関係式17
(「LB3」は反射面161BM,161GM,161RMと発光面1640Mとの間の距離(第1の光学的距離)、「mLB3」は次数(0または整数)、「ΦLB3」は青色発光層1640から発生した青色光HB3が反射面161BM,161GM,161RMにおいて反射する際に生じる位相シフト、「λLB3」は青色発光層1640から発生した青色光HB3が青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0094】
この光学的距離LB3および上記した他の光学的距離LB1,LG,LB2,LRは、青色発光層1632、緑色発光層1634、青色発光層1636、赤色発光層1638および青色発光層1640のそれぞれから発生した青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2、赤色光HRおよび青色光HB3が下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMにおいて反射されたのちに上部電極層164を経由することにより青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rの外部に放出される過程において、それらの青色光HB1、緑色光HG、青色光HB2、赤色光HRおよび青色光HB3の光取り出し効率が光の干渉現象を利用して増加するように個別に設定されている。なお、この場合においても、光学的距離Dは上記した関係式16を満たしている。ここでは、例えば、関係式16中の次数mDが、青色発光層1640に関してmD=2である。
【0095】
この場合においても、有機層163が5種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638,青色発光層1640)を含んでいると共に、光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3が上記した関係式11(関係式12〜15,17)を満たしている点を除き、図3および図4に示した場合と同様の構成条件を満たしているため、その図3および図4に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図9および図10に示した青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図3および図4に示した場合と同様である。
【0096】
もちろん、図9および図10に示した場合においても、図5および図6を参照して説明した変形例または図7および図8を参照して説明した変形例を適用することが可能である。すなわち、図9および図10にそれぞれ対応する図11および図12に示したように、高屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nH)と低屈折率層として機能する反射面規定層166(屈折率nL)との間の界面1646Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させるようにしてもよいし、あるいは図9および図10にそれぞれ対応する図13および図14に示したように、高屈折率層として機能する発光補助層1639(屈折率nH)と低屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nL)との間の界面1634Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させるようにしてもよい。これらの場合においても、図9および図10に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図11,図13および図12,図14に示した青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図9および図10に示した場合と同様である。
【0097】
また、本実施の形態では、図3および図4に示したように、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rにおいて、下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離が青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rよりも緑色有機EL素子16Gにおいて大きくなるようにするために、緑色有機EL素子16Gにおいて透明導電層162Gを設ける一方で、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rのいずれにおいても上記した透明導電層162Gに対応する透明導電層を設けないようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。具体的には、例えば、図4と共に、図3に対応する図15に示したように、緑色有機EL素子16Gにおいて下部電極層161Gと有機層163との間に透明導電層162G(厚さTG)を設けた場合と同様に(図4参照)、青色有機EL素子16Bにおいて下部電極層161Bと有機層163との間に透明導電層162B(厚さTB)を設けると共に、赤色有機EL素子16Rにおいて下部電極層161Rと有機層163との間に透明導電層162R(厚さTR)を設けるようにしてもよい(図15参照)。
【0098】
これらの透明導電層162B,162Rは、例えば、透明導電層162Gと同様の材質を有している。特に、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rにそれぞれ透明導電層162B,162Rを設ける場合には、上記したように、下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離が青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rよりも緑色有機EL素子16Gにおいて大きくなる関係を維持するために、透明導電層162Gの厚さTGが透明導電層162B,162Rの厚さTB,TRよりも大きくなるようにする(TG>TB,TR)。この場合には、青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rにおいて、光学的距離LB1,LG,LB2,LRがそれぞれ透明導電層162B,162G,162Rの厚さTB,TG,TRを加味して規定される。なお、透明導電層162B,162Rの厚さTB,TRの間の関係としては、例えば、互いに等しくてもよいし(TB=TR)、あるいは互いに異なっていてもよい(TB≒TR、すなわちTB>TRまたはTB<TR)。図15では、例えば、透明導電層162Bの厚さTBと透明導電層162Rの厚さTRとが互いに等しい場合(TB=TR)を示している。
【0099】
この場合においても、青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rにおいてそれぞれ透明導電層162B,162Rが設けられている点を除き、図3および図4に示した場合と同様の構成条件を満たしているため、その図3および図4に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図15に示した青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rに関する上記以外の構成は、図3に示した場合と同様である。
【0100】
もちろん、図15に示した場合においても、図5および図6を参照して説明した変形例または図7および図8を参照して説明した変形例を適用することが可能である。すなわち、図15に対応する図16に示したように、高屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nH)と低屈折率層として機能する反射面規定層166(屈折率nL)との間の界面1646Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させるようにしてもよいし、あるいは図15に対応する図17に示したように、高屈折率層として機能する発光補助層1639(屈折率nH)と低屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nL)との間の界面1634Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させるようにしてもよい。これらの場合においても、図15に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図16および図17に示した青色有機EL素子16Bおよび赤色有機EL素子16Rに関する上記以外の構成は、図15に示した場合と同様である。
【0101】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0102】
図18および図19は、本実施の形態に係る有機発光装置に搭載される有機発光素子としての有機EL素子46(青色有機EL素子46B,緑色有機EL素子46G,赤色有機EL素子46R)の断面構成を詳細に表しており、それぞれ上記第1の実施の形態において示した図3および図4に対応する断面構成を示している。なお、図18および図19では、上記第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素に同一の符号を付している。以下では、上記第1の実施の形態において既に説明した構成要素の機能や材質等に関する説明を随時省略する。
【0103】
本実施の形態に係る有機発光装置としての有機ELディスプレイは、上記第1の実施の形態において説明した有機EL素子16(青色有機EL素子16B,緑色有機EL素子16G,赤色有機EL素子16R)に代えて、有機EL素子46(青色有機EL素子46B,緑色有機EL素子46G,赤色有機EL素子46R)を搭載している点を除き、その第1の実施の形態において説明した有機ELディスプレイ100(図1および図2参照)と同様の構造を有している。
【0104】
これらの青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rは、光共振器構造の反射面(第2の反射面)の構成が異なり、より具体的には相対的に高い屈折率nHを有する反射面規定層165および相対的に低い屈折率nLを有する反射面規定層166の積層順が異なる点を除き、上記第1の実施の形態において説明した青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rとそれぞれ同様の構造を有している。すなわち、青色有機EL素子46Bは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161B、有機層163、上部電極層164および反射面規定層166,165が積層された積層構造を有している。緑色有機EL素子46Gは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161G、透明導電層162G、有機層163、上部電極層164および反射面規定層166,165が積層された積層構造を有している。赤色有機EL素子46Rは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161R、有機層163、上部電極層164および反射面規定層166,165が積層された積層構造を有している。
【0105】
この場合には、下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと、それらの下部電極層161B,161G,161Rに近い側から順に積層された反射面規定層166,165の間の界面1665Mとの間の距離(光学的距離D)が、上記した関係式16を満たしている。
【0106】
本実施の形態に係る有機ELディスプレイでは、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rにおいて、下部電極層161B,161G,161Rと上部電極層164との間に設けられた有機層163が、複数の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)が積層された積層構造を有しており、特に、反射面161BM,161GM,161RMと界面1665Mとの間の距離(光学的距離D)が上記した関係式16を満たしている点を除き、上記第1の実施の形態において説明した3つの構成条件を満たしている。したがって、この場合においても、上記第1の実施の形態と同様の作用が得られ、すなわち青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度および色純度の観点において青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rの発光性能が向上するため、表示性能を向上させることができる。この場合には、特に、上記した関係式11(関係式12〜15)中の次数mL(mLB1,mLG,mLB2,mLR)を各発光層ごとに最適化すると共に(mLB1=0,mLG=1,mLB2=1,mLR=1)、上記した関係式16中の次数mDを各発光層ごとに最適化することにより(青色発光層1632に関してmD=2,緑色発光層1634に関してmD=2,青色発光層1636に関してmD=2,赤色発光層1638に関してmD=1)、表示性能を可能な限り向上させることができる。
【0107】
上記した他、本実施の形態に係る有機EL素子46(青色有機EL素子46B,緑色有機EL素子46G,赤色有機EL素子46R)では、下部電極層161B,161G,161Rと上部電極層164との間に、複数の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)が積層された積層構造を有する有機層163が設けられており、特に、下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと反射面規定層166,165の間の界面1665Mとの間の距離(光学的距離D)が上記した関係式16を満たしている点を除き、上記第1の実施の形態において説明した3つの構成条件を満たしているので、その第1の実施の形態と同様の作用により、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度が増強されると共に色純度が向上する。したがって、発光性能を向上させることができる。この場合には、特に、上記した関係式11(関係式12〜15)中の次数mL(mLB1,mLG,mLB2,mLR)を各発光層ごとに最適化すると共に(mLB1=0,mLG=1,mLB2=1,mLR=1)、上記した関係式16中の次数mDを各発光層ごとに最適化することにより(青色発光層1632に関してmD=2,緑色発光層1634に関してmD=2,青色発光層1636に関してmD=2,赤色発光層1638に関してmD=1)、発光性能を可能な限り向上させることができる。
【0108】
なお、本実施の形態では、図18および図19に示したように、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rにおいて、光共振器構造のうちの反射面(第2の反射面)を構成するために、上部電極層164上に、相対的に低い屈折率nLを有する反射面規定層166および相対的に高い屈折率nHを有する反射面規定層165をこの順に設けることにより、それらの反射面規定層166,165の間の界面1665Mにおいて光を反射させるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。すなわち、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rの構成は、屈折率の差異を利用して光共振器構造のうちの反射面(第2の反射面)を構成し得る限り、自由に変更可能である。
【0109】
具体的な一例を挙げれば、図18および図19にそれぞれ対応する図20および図21に示したように、上部電極層164が相対的に低い屈折率nLを有することにより低屈折率層として機能する場合には、その上部電極層164上に反射面規定層166(屈折率nL)を設けずに反射面規定層165(屈折率nH)のみを設けることにより、屈折率の差異を利用して上部電極層164(屈折率nL)と反射面規定層165(屈折率nH)との間の界面1645Mにおいて光を反射させるようにしてもよい。この場合においても、反射面161BM,161GM,161RMと界面1645Mとの間の光学的距離Dが上記した関係式16を満たすことにより、図18および図19に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図20および図21に示した青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図18および図19に示した場合と同様である。
【0110】
また、他の例として、図18および図19にそれぞれ対応する図22および図23に示したように、有機層163のうちの発光補助層1639が相対的に低い屈折率nLを有することにより低屈折率層として機能すると共に、上部電極層164が相対的に高い屈折率nHを有することにより高屈折率層として機能する場合には、その上部電極層164上に反射面規定層166,165を設けないことにより、屈折率の差異を利用して発光補助層1639(屈折率nL)と上部電極層164(屈折率nH)との間の界面1634Mにおいて光を反射させるようにしてもよい。この場合における上部電極層164の構成材料としては、例えば、酸化亜鉛または酸化錫などの高屈折率を有する透明導電材料などが挙げられる。この場合においても、反射面161BM,161GM,161RMと界面1634Mとの間の光学的距離Dが上記した関係式16を満たすことにより、図18および図19に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図22および図23に示した青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図18および図19に示した場合と同様である。
【0111】
また、本実施の形態では、図18および図19に示したように、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rにおいて、有機層163が複数の発光層として4種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)を含み、それらの青色発光層1632、緑色発光層1634、青色発光層1636および赤色発光層1638が下部電極層161B,161G,171Rに近い側から順に積層されるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。すなわち、有機層163に含まれる複数の発光層の層数および積層順は、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rからそれぞれ青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが放出される限り、自由に変更可能である。
【0112】
具体的な一例を挙げれば、上記第1の実施の形態において図9および図10を参照して説明した変形例を適用することにより、図18および図19にそれぞれ対応する図24および図25に示したように、有機層163が複数の発光層として5種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638,青色発光層1640)と共に、それらの5種類の発光層を発光させるための複数の発光補助層(発光補助層1631,1633,1635,1637,1639,1641)を併せて含むようにしてもよい。この場合においても、有機層163が5種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638,青色発光層1640)を含んでいると共に、光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3が上記した関係式11(関係式12〜15,17)を満たしている点を除き、図18および図19に示した場合と同様の構成条件を満たしているため、その図18および図19に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図24および図25に示した青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図18および図19に示した場合と同様である。
【0113】
もちろん、図24および図25に示した場合においても、図20および図21を参照して説明した変形例または図22および図23を参照して説明した変形例を適用することが可能である。すなわち、図24および図25にそれぞれ対応する図26および図27に示したように、低屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nL)と高屈折率層として機能する反射面規定層165(屈折率nH)との間の界面1645Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させるようにしてもよいし、あるいは図24および図25にそれぞれ対応する図28および図29に示したように、低屈折率層として機能する発光補助層1639(屈折率nL)と高屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nH)との間の界面1634Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させるようにしてもよい。これらの場合においても、図24および図25に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図26,図28および図27,図29に示した青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図24および図25に示した場合と同様である。
【0114】
また、本実施の形態では、図18および図19に示したように、青色有機EL素子46B、緑色有機EL素子46Gおよび赤色有機EL素子46Rにおいて、下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離が青色有機EL素子46Bおよび赤色有機EL素子46Rよりも緑色有機EL素子46Gにおいて大きくなるようにするために、緑色有機EL素子46Gにおいて透明導電層162Gを設ける一方で、青色有機EL素子46Bおよび赤色有機EL素子46Rのいずれにおいても上記した透明導電層162Gに対応する透明導電層を設けないようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。具体的には、例えば、上記第1の実施の形態において図15を参照して説明した変形例を適用することにより、図19と共に、図18に対応する図30に示したように、緑色有機EL素子46Gにおいて下部電極層161Gと有機層163との間に透明導電層162G(厚さTG)を設けた場合と同様に(図19参照)、青色有機EL素子46Bにおいて下部電極層161Bと有機層163との間に透明導電層162B(厚さTB)を設けると共に、赤色有機EL素子46Rにおいて下部電極層161Rと有機層163との間に透明導電層162R(厚さTR)を設けるようにしてもよい(図30参照)。この場合においても、青色有機EL素子46Bおよび赤色有機EL素子46Rにおいてそれぞれ透明導電層162B,162Rが設けられている点を除き、図18および図19に示した場合と同様の構成条件を満たしているため、その図18および図19に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図30に示した青色有機EL素子46Bおよび赤色有機EL素子46Rに関する上記以外の構成は、図18に示した場合と同様である。
【0115】
もちろん、図30に示した場合においても、図20および図21を参照して説明した変形例または図22および図23を参照して説明した変形例を適用することが可能である。すなわち、図30に対応する図31に示したように、低屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nL)と高屈折率層として機能する反射面規定層165(屈折率nH)との間の界面1645Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させるようにしてもよいし、あるいは図30に対応する図32に示したように、低屈折率層として機能する発光補助層1639(屈折率nL)と高屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nH)との間の界面1634Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させるようにしてもよい。これらの場合においても、図30に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図31および図32に示した青色有機EL素子46Bおよび赤色有機EL素子46Rに関する上記以外の構成は、図30に示した場合と同様である。
【0116】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0117】
図33および図34は、本実施の形態に係る有機発光装置に搭載される有機発光素子としての有機EL素子56(青色有機EL素子56B,緑色有機EL素子56G,赤色有機EL素子56R)の断面構成を詳細に表しており、それぞれ上記第1の実施の形態において示した図3および図4に対応する断面構成を示している。なお、図33および図34では、上記第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素に同一の符号を付している。以下では、上記第1の実施の形態において既に説明した構成要素の機能や材質等に関する説明を随時省略する。
【0118】
本実施の形態に係る有機発光装置としての有機ELディスプレイは、上記第1の実施の形態において説明した有機EL素子16(青色有機EL素子16B,緑色有機EL素子16G,赤色有機EL素子16R)に代えて、有機EL素子56(青色有機EL素子56B,緑色有機EL素子56G,赤色有機EL素子56R)を搭載している点を除き、その第1の実施の形態において説明した有機ELディスプレイ100(図1および図2参照)と同様の構造を有している。
【0119】
これらの青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rは、光共振器構造の反射面(第2の反射面)の構成および数が異なり、より具体的には複数の反射面(第2の反射面)を有する点を除き、上記第1の実施の形態において説明した青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rとそれぞれ同様の構造を有している。ここでは、例えば、青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rにおいて、上部電極層164上に、相対的に高い屈折率nHを有する反射面規定層165が設けられておらずに、相対的に低い屈折率nLを有する反射面規定層166のみが設けられていると共に、有機層163のうちの発光補助層1639が相対的に低い屈折率nLを有することにより低屈折率層として機能し、かつ上部電極層164が相対的に高い屈折率nHを有することにより高屈折率層として機能することにより、2つの反射面(第2の反射面)を有している。この場合の「2つの反射面(第2の反射面)」とは、発光補助層1639(屈折率nL)と上部電極層164(屈折率nH)との間の界面1634Mおよび上部電極層164(屈折率nH)と反射面規定層166(屈折率nL)との間の界面1646Mである。
【0120】
すなわち、青色有機EL素子56Bは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161B、有機層163、上部電極層164および反射面規定層166が積層された積層構造を有している。緑色有機EL素子56Gは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161G、透明導電層162G、有機層163、上部電極層164および反射面規定層166が積層された積層構造を有している。赤色有機EL素子56Rは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161R、有機層163、上部電極層164および反射面規定層166が積層された積層構造を有している。この場合における上部電極層164の構成材料としては、例えば、酸化亜鉛または酸化錫などの高屈折率を有する透明導電材料などが挙げられる。
【0121】
この場合には、下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと、発光補助層1639と上部電極層164との間の界面1634Mとの間の距離が、上記した関係式16を満たしていると共に、それらの反射面161BM,161GM,161RMと、上部電極層164と反射面規定層166との間の界面1646Mとの間の界面1646Mとの間の距離も、上記した関係式16を満たしている。
【0122】
より具体的には、反射面161BM,161GM,161RMと界面1634Mとの間の距離は、下記に示した関係式18を満たしている。
D1=(mD1−ΦD1/2π)λD1/2・・・関係式18
(「D1」は反射面161BM,161GM,161RMと反射面1634Mとの間の距離(第1の光学的距離)、「mD1」は次数(0または整数)、「ΦD1」は複数の発光層から発生した光が反射面161BM,161GM,161RMおよび反射面1634Mにおいて反射する際に生じる位相シフト、「λL1」は複数の発光層から発生した光が青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0123】
また、反射面161BM,161GM,161RMと界面1646Mとの間の距離は、下記に示した関係式19を満たしている。
D2=(mD2−ΦD2/2π)λD2/2・・・関係式19
(「D2」は反射面161BM,161GM,161RMと反射面1646Mとの間の距離(第1の光学的距離)、「mD2」は次数(0または整数)、「ΦD2」は複数の発光層から発生した光が反射面161BM,161GM,161RMおよび反射面1646Mにおいて反射する際に生じる位相シフト、「λL2」は複数の発光層から発生した光が青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rから放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【0124】
これらの光学的距離D1,D2は、青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rのそれぞれから青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが放出される過程において、それらの青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの色純度が光共振器構造の光共振現象を利用して増強されるように設定されている。
【0125】
本実施の形態に係る有機ELディスプレイでは、青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rにおいて、下部電極層161B,161G,161Rと上部電極層164との間に設けられた有機層163が、複数の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)が積層された積層構造を有しており、特に、反射面161BM,161GM,161RMと界面1634Mとの間の距離(光学的距離D1)が上記した関係式18を満たしていると共に、反射面161BM,161GM,161RMと界面1646Mとの間の距離(光学的距離D2)が上記した関係式19を満たしている点を除き、上記第1の実施の形態において説明した3つの構成条件を満たしている。したがって、この場合においても、上記第1の実施の形態と同様の作用が得られ、すなわち青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度および色純度の観点において青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rの発光性能が向上するため、表示性能を向上させることができる。この場合には、特に、上記した関係式11(関係式12〜15)中の次数mL(mLB1,mLG,mLB2,mLR)を各発光層ごとに最適化すると共に(mLB1=0,mLG=1,mLB2=1,mLR=1)、上記した関係式16中の次数mDを各発光層ごとに最適化することにより(青色発光層1632に関してmD=2,緑色発光層1634に関してmD=2,青色発光層1636に関してmD=2,赤色発光層1638に関してmD=1)、表示性能を可能な限り向上させることができる。
【0126】
特に、本実施の形態では、反射面(第2の反射面)として2つの界面1634M,1646Mを有するため、その反射面(第2の反射面)を1つのみ有する上記第1の実施の形態および第2の実施の形態と比較して、光共振器構造の光共振作用が増強される。したがって、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの色純度をより向上させることができる。
【0127】
上記した他、本実施の形態に係る有機EL素子56(青色有機EL素子56B,緑色有機EL素子56G,赤色有機EL素子56R)では、下部電極層161B,161G,161Rと上部電極層164との間に、複数の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)が積層された積層構造を有する有機層163が設けられており、特に、反射面161BM,161GM,161RMと界面1634Mとの間の距離(光学的距離D1)が上記した関係式18を満たしていると共に、反射面161BM,161GM,161RMと界面1646Mとの間の距離(光学的距離D2)が上記した関係式19を満たしている点を除き、上記第1の実施の形態において説明した3つの構成条件を満たしているので、その第1の実施の形態と同様の作用により、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度が増強されると共に色純度が向上する。したがって、発光性能を向上させることができる。この場合には、特に、上記した関係式11(関係式12〜15)中の次数mL(mLB1,mLG,mLB2,mLR)を各発光層ごとに最適化すると共に(mLB1=0,mLG=1,mLB2=1,mLR=1)、上記した関係式16中の次数mDを各発光層ごとに最適化することにより(青色発光層1632に関してmD=2,緑色発光層1634に関してmD=2,青色発光層1636に関してmD=2,赤色発光層1638に関してmD=1)、発光性能を可能な限り向上させることができる。
【0128】
なお、本実施の形態では、図33および図34に示したように、青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rにおいて、光共振器構造のうちの2つの反射面(第2の反射面)を構成するために、上部電極層164上に相対的に低い屈折率nLを有する反射面規定層166のみを設けると共に、発光補助層1639が相対的に低い屈折率nLを有し、かつ上部電極層164が相対的に高い屈折率nHを有することにより、発光補助層1639と上部電極層164との間の界面1634Mおよび上部電極層164と反射面規定層166との間の界面1646Mにおいて光を反射させるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。すなわち、青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rの構成は、屈折率の差異を利用して光共振器構造のうちの反射面(第2の反射面)を2つ構成し得る限り、自由に変更可能である。
【0129】
具体的な一例を挙げれば、図33および図34にそれぞれ対応する図35および図36に示したように、上部電極層164上に、相対的に低い屈折率nLを有する反射面規定層166に代えて、相対的に高い屈折率nHを有する反射面規定層165を設けると共に、有機層163のうちの発光補助層1639が相対的に高い屈折率nHを有することにより高屈折率層として機能し、かつ上部電極層164が相対的に低い屈折率nLを有することにより低屈折率層として機能することにより、2つの反射面(第2の反射面)を有するようにしてもよい。この場合の「2つの反射面(第2の反射面)」とは、発光補助層1639(屈折率nH)と上部電極層164(屈折率nL)との間の界面1634Mおよび上部電極層164(屈折率nL)と反射面規定層166(屈折率nL)との間の界面1646Mであり、すなわち界面1634M,1646Mにおいて光が反射される。この場合における上部電極層164の構成材料としては、例えば、酸化亜鉛または酸化錫などの高屈折率を有する透明導電材料などが挙げられる。この場合においても、反射面161BM,161GM,161RMと反射面1634Mとの間の光学的距離D1が上記した関係式18を満たすと共に、反射面161BM,161GM,161RMと反射面1646Mとの間の光学的距離D2が上記した関係式19を満たすことにより、図33および図34に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図35および図36に示した青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図33および図34に示した場合と同様である。
【0130】
また、本実施の形態では、図33および図34に示したように、青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rにおいて、有機層163が複数の発光層として4種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)を含み、それらの青色発光層1632、緑色発光層1634、青色発光層1636および赤色発光層1638が下部電極層161B,161G,171Rに近い側から順に積層されるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。すなわち、有機層163に含まれる複数の発光層の層数および積層順は、青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rからそれぞれ青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが放出される限り、自由に変更可能である。
【0131】
具体的な一例を挙げれば、上記第1の実施の形態において図9および図10を参照して説明した変形例を適用することにより、図33および図34にそれぞれ対応する図37および図38に示したように、有機層163が複数の発光層として5種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638,青色発光層1640)と共に、それらの5種類の発光層を発光させるための複数の発光補助層(発光補助層1631,1633,1635,1637,1639,1641)を併せて含むようにしてもよい。この場合においても、有機層163が5種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638,青色発光層1640)を含んでいると共に、光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3が上記した関係式11(関係式12〜15,17)を満たしている点を除き、図33および図34に示した場合と同様の構成条件を満たしているため、その図33および図34に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図37および図38に示した青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図33および図34に示した場合と同様である。
【0132】
もちろん、図37および図38に示した場合においても、図35および図36を参照して説明した変形例を適用することが可能である。すなわち、図37および図38にそれぞれ対応する図39および図40に示したように、高屈折率層として機能する発光補助層1639(屈折率nH)と低屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nL)との間の界面1634Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させると共に、その低屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nL)と高屈折率層として機能する反射面規定層165(屈折率nH)との間の界面1645Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させるようにしてもよい。この場合においても、図35および図36に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図39および図40に示した青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図35および図36に示した場合と同様である。
【0133】
また、本実施の形態では、図33および図34に示したように、青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rにおいて、下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離が青色有機EL素子56Bおよび赤色有機EL素子56Rよりも緑色有機EL素子56Gにおいて大きくなるようにするために、緑色有機EL素子56Gにおいて透明導電層162Gを設ける一方で、青色有機EL素子56Bおよび赤色有機EL素子56Rのいずれにおいても上記した透明導電層162Gに対応する透明導電層を設けないようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。具体的には、例えば、上記第1の実施の形態において図15を参照して説明した変形例を適用することにより、図34と共に、図33に対応する図41に示したように、緑色有機EL素子56Gにおいて下部電極層161Gと有機層163との間に透明導電層162G(厚さTG)を設けた場合と同様に(図34参照)、青色有機EL素子56Bにおいて下部電極層161Bと有機層163との間に透明導電層162B(厚さTB)を設けると共に、赤色有機EL素子56Rにおいて下部電極層161Rと有機層163との間に透明導電層162R(厚さTR)を設けるようにしてもよい(図41参照)。この場合においても、青色有機EL素子56Bおよび赤色有機EL素子56Rにおいてそれぞれ透明導電層162B,162Rが設けられている点を除き、図33および図34に示した場合と同様の構成条件を満たしているため、その図33および図34に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図41に示した青色有機EL素子56Bおよび赤色有機EL素子56Rに関する上記以外の構成は、図33に示した場合と同様である。
【0134】
もちろん、図41に示した場合においても、図35および図36を参照して説明した変形例を適用することが可能である。すなわち、図41に対応する図42に示したように、高屈折率層として機能する発光補助層1639(屈折率nH)と低屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nL)との間の界面1634Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させると共に、その低屈折率層として機能する上部電極層164(屈折率nL)と高屈折率層として機能する反射面規定層165(屈折率nH)との間の界面1645Mにおいて、屈折率の差異を利用して光を反射させるようにしてもよい。これらの場合においても、図41に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図42に示した青色有機EL素子56Bおよび赤色有機EL素子56Rに関する上記以外の構成は、図41に示した場合と同様である。
【0135】
また、本実施の形態では、図33および図34を例示して示したように、青色有機EL素子56B、緑色有機EL素子56Gおよび赤色有機EL素子56Rにおいて、光共振器構造の反射面(第2の反射面)を有するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、高屈折率層(屈折率nH)として機能する層と低屈折率層(屈折率nL)として機能する層との間の屈折率の差異を利用して光を反射可能となるように反射面(第2の反射面)を構成する限り、その反射面(第2の反射面)の数は自由に設定可能である。ただし、(1)反射面(第2の反射面)の数が増えるほど、有機ELディスプレイの製造コストが増すこと、(2)反射面(第2の反射面)が2つあれば、光共振器構造において十分な光共振作用が得られること、(3)反射面(第2の反射面)が3つ以上ある場合には、上記した関係式16中の次数mDが大きくなりすぎることに起因して半値幅が狭くなりすぎるため、膜厚のばらつきや視野角に応じて色ずれが著しく大きくなることを考慮すれば、反射面(第2の反射面)の数は2つが好ましい。
【0136】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0137】
図43および図44は、本実施の形態に係る有機発光装置に搭載される有機発光素子としての有機EL素子66(青色有機EL素子66B,緑色有機EL素子66G,赤色有機EL素子66R)の断面構成を詳細に表しており、それぞれ上記第1の実施の形態において示した図3および図4に対応する断面構成を示している。なお、図43および図44では、上記第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素に同一の符号を付している。以下では、上記第1の実施の形態において既に説明した構成要素の機能や材質等に関する説明を随時省略する。
【0138】
本実施の形態に係る有機ELディスプレイは、上記第1の実施の形態において説明した有機EL素子16(青色有機EL素子16B,緑色有機EL素子16G,赤色有機EL素子16R)に代えて、有機EL素子66(青色有機EL素子66B,緑色有機EL素子66G,赤色有機EL素子66R)を搭載している点を除き、その第1の実施の形態において説明した有機ELディスプレイ100(図1および図2参照)と同様の構造を有している。
【0139】
これらの青色有機EL素子66B、緑色有機EL素子66Gおよび赤色有機EL素子66Rは、光共振器構造の反射面(第2の反射面)の構成が異なり、より具体的には上部電極層164上に、相対的に高い屈折率nHを有する反射面規定層165および相対的に低い屈折率nLを有する反射面規定層166の双方が設けられていない点を除き、上記第1の実施の形態において説明した青色有機EL素子16B、緑色有機EL素子16Gおよび赤色有機EL素子16Rとそれぞれ同様の構造を有している。この場合における上部電極層164は、例えば、光共振器構造の反射面(第2の反射面)を構成することが可能であり、すなわち必要に応じて光を十分に反射させることが可能な反射率を有する光半透過性材料を含んで構成されている。この場合の「反射面(第2の反射面)」とは、上部電極層164の反射面164Mであり、すなわち上部電極層164のうちの有機層163(発光補助層1639)に隣接する面である。
【0140】
すなわち、青色有機EL素子66Bは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161B、有機層163および上部電極層164が積層された積層構造を有している。緑色有機EL素子66Gは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161G、透明導電層162G、有機層163および上部電極層164が積層された積層構造を有している。赤色有機EL素子66Rは、例えば、平坦化絶縁層15に近い側から順に、下部電極層161R、有機層163および上部電極層164が積層された積層構造を有している。
【0141】
この場合の上部電極層164の構成は、上記した光半透過性材料を含んでいることにより反射面164Mを構成し得る限り、自由に設定可能である。具体的には、例えば、上部電極層164の構成は、例えば、光半透過性金属により構成された薄膜の単層構造であってもよいし、あるいは有機層163に近い側から順に光半透過性金属の薄膜と透明導電材料の薄膜とが積層された積層構造であってもよい。上記した単層構造を有する場合における光半透過性金属の薄膜としては、例えば、アルミニウム薄膜、銀がドープされたマグネシウムの薄膜、アルミニウムおよび銀の積層薄膜、あるいはカルシウムおよび銀の積層薄膜などが挙げられる。また、積層構造を有する場合における光半透過性金属の薄膜としては、例えば、アルミニウム薄膜、銀がドープされたマグネシウムの薄膜、アルミニウムおよび銀の積層薄膜、あるいはカルシウムおよび銀の積層薄膜などが挙げられ、一方、透明導電材料の薄膜としては、例えば、酸化亜鉛薄膜または酸化錫薄膜などが挙げられる。
【0142】
この場合には、下部電極層161B,161G,161Rの反射面161BM,161GM,161RMと上部電極層164の反射面164Mとの間の距離(光学的距離D)が、上記した関係式16を満たしている。
【0143】
本実施の形態に係る有機ELディスプレイでは、青色有機EL素子66B、緑色有機EL素子66Gおよび赤色有機EL素子66Rにおいて、下部電極層161B,161G,161Rと上部電極層164との間に設けられた有機層163が、複数の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)が積層された積層構造を有しており、特に、反射面161BM,161GM,161RMと反射面164Mとの間の距離(光学的距離D)が上記した関係式16を満たしている点を除き、上記第1の実施の形態にいて説明した3つの構成条件を満たしている。したがって、この場合においても、上記第1の実施の形態と同様の作用が得られ、すなわち青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度および色純度の観点において青色有機EL素子66B、緑色有機EL素子66Gおよび赤色有機EL素子66Rの発光性能が向上するため、表示性能を向上させることができる。この場合には、特に、上記した関係式11(関係式12〜15)中の次数mL(mLB1,mLG,mLB2,mLR)を各発光層ごとに最適化すると共に(mLB1=0,mLG=1,mLB2=1,mLR=1)、上記した関係式16中の次数mDを各発光層ごとに最適化することにより(青色発光層1632に関してmD=2,緑色発光層1634に関してmD=2,青色発光層1636に関してmD=2,赤色発光層1638に関してmD=1)、表示性能を可能な限り向上させることができる。
【0144】
上記した他、本実施の形態に係る有機EL素子66(青色有機EL素子66B,緑色有機EL素子66G,赤色有機EL素子66R)では、下部電極層161B,161G,161Rと上部電極層164との間に、複数の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)が積層された積層構造を有する有機層163が設けられており、特に、反射面161BM,161GM,161RMと反射面164Mとの間の距離(光学的距離D)が上記した関係式16を満たしている点を除き、上記第1の実施の形態において説明した3つの構成条件を満たしているので、その第1の実施の形態と同様の作用により、青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRの強度が増強されると共に色純度が向上する。したがって、発光性能を向上させることができる。この場合には、特に、上記した関係式11(関係式12〜15)中の次数mL(mLB1,mLG,mLB2,mLR)を各発光層ごとに最適化すると共に(mLB1=0,mLG=1,mLB2=1,mLR=1)、上記した関係式16中の次数mDを各発光層ごとに最適化することにより(青色発光層1632に関してmD=2,緑色発光層1634に関してmD=2,青色発光層1636に関してmD=2,赤色発光層1638に関してmD=1)、発光性能を可能な限り向上させることができる。
【0145】
なお、本実施の形態では、図43および図44に示したように、青色有機EL素子66B、緑色有機EL素子66Gおよび赤色有機EL素子66Rにおいて、有機層163が複数の発光層として4種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638)を含み、それらの青色発光層1632、緑色発光層1634、青色発光層1636および赤色発光層1638が下部電極層161B,161G,171Rに近い側から順に積層されるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。すなわち、有機層163に含まれる複数の発光層の層数および積層順は、青色有機EL素子66B、緑色有機EL素子66Gおよび赤色有機EL素子66Rからそれぞれ青色光HPB、緑色光HPGおよび赤色光HPRが放出される限り、自由に変更可能である。
【0146】
具体的な一例を挙げれば、上記第1の実施の形態において図9および図10を参照して説明した変形例を適用することにより、図43および図44にそれぞれ対応する図45および図46に示したように、有機層163が複数の発光層として5種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638,青色発光層1640)と共に、それらの5種類の発光層を発光させるための複数の発光補助層(発光補助層1631,1633,1635,1637,1639,1641)を併せて含むようにしてもよい。この場合においても、有機層163が5種類の発光層(青色発光層1632,緑色発光層1634,青色発光層1636,赤色発光層1638,青色発光層1640)を含んでいると共に、光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3が上記した関係式11(関係式12〜15,17)を満たしている点を除き、図43および図44に示した場合と同様の構成条件を満たしているため、その図43および図44に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図45および図46に示した青色有機EL素子66B、緑色有機EL素子66Gおよび赤色有機EL素子66Rに関する上記以外の構成は、それぞれ図43および図44に示した場合と同様である。
【0147】
また、本実施の形態では、図43および図44に示したように、青色有機EL素子66B、緑色有機EL素子66Gおよび赤色有機EL素子66Rにおいて、下部電極層161B,161G,161Rと有機層163との間の距離が青色有機EL素子66Bおよび赤色有機EL素子66Rよりも緑色有機EL素子66Gにおいて大きくなるようにするために、緑色有機EL素子66Gにおいて透明導電層162Gを設ける一方で、青色有機EL素子66Bおよび赤色有機EL素子66Rのいずれにおいても上記した透明導電層162Gに対応する透明導電層を設けないようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。具体的には、例えば、上記第1の実施の形態において図15を参照して説明した変形例を適用することにより、図44と共に、図43に対応する図47に示したように、緑色有機EL素子66Gにおいて下部電極層161Gと有機層163との間に透明導電層162G(厚さTG)を設けた場合と同様に(図44参照)、青色有機EL素子66Bにおいて下部電極層161Bと有機層163との間に透明導電層162B(厚さTB)を設けると共に、赤色有機EL素子66Rにおいて下部電極層161Rと有機層163との間に透明導電層162R(厚さTR)を設けるようにしてもよい(図47参照)。この場合においても、青色有機EL素子66Bおよび赤色有機EL素子66Rにおいてそれぞれ透明導電層162B,162Rが設けられている点を除き、図43および図44に示した場合と同様の構成条件を満たしているため、その図43および図44に示した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図47に示した青色有機EL素子66Bおよび赤色有機EL素子66Rに関する上記以外の構成は、図43に示した場合と同様である。
【実施例】
【0148】
次に、本発明に関する実施例について説明する。
【0149】
(実施例1)
以下の手順を経ることにより、上記第1の実施の形態において説明した一連の有機EL素子を代表して、図3および図4に示した青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子を試験的に製造した。
【0150】
すなわち、ガラス製の基板を準備したのち、まず、青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子のそれぞれの形成領域ごとに基板上に銀合金を選択的に成膜することにより、陽極として下部電極層を100nmの厚さとなるようにパターン形成した。続いて、緑色有機EL素子の形成領域のみにおいて下部電極層上にITOを選択的に成膜することにより、透明導電層を90nmの厚さとなるようにパターン形成した。続いて、下部電極層のうちの2mm×2mm角の中央領域(発光領域)に対応する領域を部分的に露出させるようにポリイミドをパターン成膜することにより、発光用のセルを構成した。
【0151】
続いて、上記した発光領域に対応する箇所にパターン成膜用の開口が設けられた金属マスクを使用しながら、10-4Pa以下の真空雰囲気中において真空蒸着法を使用して下部電極層または透明導電層上に発光補助層(m−MTDATA/α−NPD)、青色発光層(DPVBiにBCzVBiを5体積%混合させて共蒸着)、発光補助層(Alq/LiF/MgAg/α−NPD)、緑色発光層(Alqにクマリン6を1体積%混合させて共蒸着)、発光補助層(Alq/LiF/MgAg/α−NPD)、青色発光層(DPVBiにBCzVBiを5体積%混合させて共蒸着)、発光補助層(Alq/LiF/MgAg/α−NPD)、赤色発光層(AlqにBSNを30体積%混合させて共蒸着)および発光補助層(Alq/LiF/MgAg)をこの順に積層させることにより、4種類の発光層を含む積層構造を有するように有機層を形成した。この有機層を形成する際には、光学的距離LB1,LG,LB2,LRが上記した関係式12〜15を満たすようにしたと共に、光学的距離Dが上記した関係式16を満たすようにした。ここでは、有機層の総厚を305nmとすることにより、緑色有機EL素子に関して光学的距離LB1,LG,LB2,LRに対応する物理的距離(膜厚)をそれぞれ30nm、95nm、145nm、240nmとしたと共に、関係式12〜15中の次数mLB1,mLG,mLB2,mLRをそれぞれmLB1=0、mLG=1、mLB2=1、mLR=1とした。また、関係式16中の次数mDを青色発光層に関してmD=2、緑色発光層に関してmD=2、青色発光層に関してmD=2、赤色発光層に関してmD=1とした。続いて、有機層上に酸化亜鉛を含む透明導電膜を成膜することにより、陰極として上部電極層を30nmの厚さとなるように形成した。
【0152】
最後に、上部電極層上に、相対的に高い屈折率nH=2.30を有する酸化チタンを成膜することにより、高屈折率層として機能する反射面規定層を40nmの厚さとなるように形成したのち、化学蒸着(CVD;chemical vapor deposition )法を使用して反射面規定層(高屈折率層)上に、相対的に低い屈折率nL=1.75を有する窒化ケイ素を成膜することにより、低屈折率層として機能する反射面規定層を3000nmの厚さとなるように形成した。これらの2つの反射面規定層を形成する際には、光学的距離Dが上記した関係式16を満たすようにした。ここでは、関係式16中の次数mDをそれぞれ2つの青色発光層に関してmD=2、緑色発光層に関してmD=2、赤色発光層に関してmD=1とした。これにより、図3および図4に示した青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子が完成した。
【0153】
(実施例2)
以下の手順を経ることにより、上記第2の実施の形態において説明した一連の有機EL素子を代表して、図22および図23に示した青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子を試験的に製造した。
【0154】
すなわち、まず、有機層のうちの上部電極層に隣接することとなる発光補助層(最上層の発光補助層)が相対的に低い屈折率nL=1.80を有するようにし、すなわち最上層の発光補助層が低屈折率層として機能するようにした点を除き、上記した実施例1と同様の手順を経ることにより、ガラス製の基板上に下部電極層、透明導電層および有機層を順次形成した。最後に、有機層上に、相対的に高い屈折率nH=2.00を有する酸化亜鉛を含む透明導電膜を成膜することにより、陰極として高屈折率層として機能する上部電極層を80nmの厚さとなるように形成した。なお、光学的距離LB1,LG,LB2,LR,Dおよび次数mLB1,mLG,mLB2,mLR,mDに関しては、上記した実施例1と同条件となるように設定した。これにより、図22および図23に示した青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子が完成した。
【0155】
(実施例3)
以下の手順を経ることにより、上記第2の実施の形態において説明した一連の有機EL素子を代表して、さらに図28および図29に示した青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子を試験的に製造した。
【0156】
すなわち、まず、上記した実施例1と同様の手順を経ることにより、ガラス製の基板上に下部電極層および透明導電層を順次形成した。続いて、上記した実施例1において説明した成膜手法を使用して下部電極層または透明導電層上に発光補助層(m−MTDATA/α−NPD)、青色発光層(DPVBiにBCzVBiを5体積%混合させて共蒸着)、発光補助層(Alq/LiF/MgAg/α−NPD)、緑色発光層(Alqにクマリン6を1体積%混合させて共蒸着)、発光補助層(Alq/LiF/MgAg/α−NPD)、青色発光層(DPVBiにBCzVBiを5体積%混合させて共蒸着)、発光補助層(Alq/LiF/MgAg/α−NPD)、赤色発光層(AlqにBSNを30体積%混合させて共蒸着)、発光補助層(Alq/LiF/MgAg/α−NPD)、青色発光層(DPVBiにBCzVBiを5体積%混合させて共蒸着)および発光補助層(Alq/LiF/MgAg)をこの順に積層させることにより、5種類の発光層を含む積層構造を有するように有機層を形成した。この有機層を形成する際には、光学的距離LB1,LG,LB2,LR,LB3が上記した関係式12〜15,17を満たすようにしたと共にしたと共に、光学的距離Dが上記した関係式16を満たすようにした。ここでは、有機層の総厚を305nmとすることにより、緑色有機EL素子に関して光学的距離LB1,LG,LB2,LRに対応する物理的距離(膜厚)をそれぞれ30nm、95nm、145nm、235nm、265nmとしたと共に、関係式12〜15中の次数mLB1,mLG,mLB2,mLR,mLB3をそれぞれmLB1=0、mLG=1、mLB2=1、mLR=1、mLB3=2とした。また、関係式16中の次数mDを青色発光層に関してmD=2、緑色発光層に関してmD=2、青色発光層に関してmD=2、赤色発光層に関してmD=1、青色発光層に関してmD=2とした。最後に、上記した実施例1と同様の手順を経ることにより、有機層上に上部電極層および主反射制御層を順次形成した。ここでは、関係式16中の次数mDをそれぞれ3つの青色発光層に関してmD=2、緑色発光層に関してmD=2、赤色発光層に関してmD=1とした。これにより、図28および図29に示した青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子が完成した。
【0157】
(実施例4)
以下の手順を経ることにより、上記第3の実施の形態において説明した一連の有機EL素子を代表して、図33および図34に示した青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子を試験的に製造した。
【0158】
すなわち、まず、有機層のうちの上部電極層に隣接することとなる発光補助層(最上層の発光補助層)が相対的に低い屈折率nL=1.80を有することにより低屈折率層として機能すると共に、上部電極層が相対的に高い屈折率nH=2.00を有することにより高屈折率層として機能するようにした点を除き、上記した実施例1と同様の手順を経ることにより、ガラス製の基板上に下部電極層、透明導電層、有機層および上部電極層を順次形成した。最後に、上部電極層上に、相対的に低い屈折率nL=1.40を有するフッ化リチウムを成膜することにより、低屈折率層として機能する反射面規定層を80nmの厚さとなるように形成した。なお、光学的距離D(D1,D2)および次数mLB1,mLG,mLB2,mLR,mDに関しては、上記した実施例1と同条件となるように設定した。これにより、図33および図34に示した青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子が完成した。
【0159】
(実施例5)
以下の手順を経ることにより、上記第4の実施の形態において説明した一連の有機EL素子を代表して、図43および図44に示した青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子を試験的に製造した。
【0160】
すなわち、上部電極層の形成材料を変更した点を除き、上記した実施例1と同様の手順を経ることにより、ガラス製の基板上に下部電極層、透明導電層、有機層および上部電極層を順次形成した。上部電極層を形成する際には、有機層上にマグネシウムおよび銀を共蒸着して光半透過性金属層(蒸着比;Mg:Ag=10:1)を6nmの厚さとなるように形成したのち、その光半透過性金属層上に酸化亜鉛を成膜して透明導電層を80nmの厚さとなるように形成することにより、積層構造を有するようにした。なお、光学的距離LB1,LG,LB2,LR,Dおよび次数mLB1,mLG,mLB2,mLR,mDに関しては、上記した実施例1と同条件となるように設定した。これにより、図43および図44に示した青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子が完成した。
【0161】
(比較例)
以下の手順を経ることにより、本発明(実施例1〜5)の有機EL素子に対する比較例の有機EL素子を試験的に製造した。
【0162】
すなわち、下部電極層の形成材料を変更したと共に、透明導電層および反射面規定層(低屈折率層,高屈折率層)を形成しなかった点を除き、上記した実施例2と同様の手順を経ることにより、ガラス製の基板上に下部電極層、有機層および上部電極層を順次形成した。下部電極層を形成する際には、基板上に透明導電材料としてITOを成膜することにより、180nmの厚さを有するようにした。この比較例の有機EL素子では、下部電極層が光透過性を有しており、すなわち有機層において発生した光が下部電極層において反射されないため、本発明の有機EL素子とは異なり、光の干渉現象が生じない。
【0163】
これらの実施例1〜5および比較例の有機EL素子の発光性能を調べたところ、以下の結果が得られた。
【0164】
まず、実施例1〜5および比較例の有機EL素子の基本的な発光性能を調べたところ、図48〜図53に示した結果が得られた。図48〜図53はそれぞれ実施例1〜5および比較例の有機EL素子の発光スペクトルを表しており、「横軸」は波長λ(nm)を示し、「縦軸」はスペクトルの強度I(−)を示している。ただし、比較例の有機EL素子に関しては、基板の上方および下方に放出された光の和に基づく発光スペクトルを示している。図48〜図52に示した「48B〜52B」は青色光の発光スペクトルを示し、「48G〜52G」は緑色光の発光スペクトルを示し、「48R〜52R」は赤色光の発光スペクトルを示している。上記した「基本的な発光性能」とは、色調整用のカラーフィルタを使用しない場合における有機EL素子の発光性能であり、すなわち色調に関する性能上の実力である。
【0165】
図48〜図53に示した結果から判るように、実施例1〜5の有機EL素子(図48〜図52参照)では、いずれにおいても青色光のスペクトルピーク(48B〜52B)、緑色光のスペクトルピーク(48G〜52G)および赤色光のスペクトルピーク(48R〜52R)が観察され、すなわち青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子からそれぞれ青色光、緑色光および赤色光が放出された。より具体的には、互いに同一の構造を有している青色有機EL素子および赤色有機EL素子では、緑色の光成分量が減少されると共に青色および赤色の光成分量が増加されることにより青色および赤色が強調された光(青色光および赤色光)が放出され、一方、青色有機EL素子および赤色有機EL素子とは異なる構造を有している緑色有機EL素子では、青色および赤色の光成分量が減少されると共に緑色の光成分量が増加されることにより緑色が強調された光(青色光および赤色光)が放出された。しかも、この場合には、図48〜図52中において青色光、緑色光および赤色光に対応する3つのスペクトルピークが明瞭に区別して観察され、すなわち3つのスペクトルピークが互いに異なる波長λにおいて十分な強度Iを有していることから明らかなように、青色光、緑色光および赤色光の強度および色純度が確保された。これに対して、比較例の有機EL素子(図53参照)では、可視光に対応する波長λ=約400nm〜800nmの波長域においてブロードなスペクトルが観察され、すなわち白色光が放出された。しかも、この場合には、実施例1〜5の有機E素子と比較して、スペクトルの強度Iが著しく小さくなった。このことは、実施例1〜5の有機EL素子では、光の干渉現象が生じるため、その光の干渉現象を利用して光の強度が増強されるのに対して、比較例の有機EL素子では、光の干渉現象が生じないため、その光の干渉現象を利用して光の強度が増強されないことを表している。このことから、本発明の有機EL素子(青色有機EL素子,緑色有機EL素子,赤色有機EL素子)では、発光性能を向上させることが可能であることが確認された。この場合には、特に、有機層が4種類の発光層を含んでいる実施例2(図49参照)と有機層が5種類の発光層を含んでいる実施例3(図50参照)との間においてスペクトルピークを比較したところ、実施例2よりも実施例3において強度Iが大きくなると共にピーク半値幅が狭まり、すなわち青色光、緑色光および赤色光の強度および色純度が向上した。
【0166】
続いて、実施例1〜5および比較例の有機EL素子の実用的な発光性能を調べたところ、図54〜図59に示した結果が得られた。図54〜図59はそれぞれ実施例1〜5および比較例の有機EL素子の他の発光スペクトルを表しており、図48〜図53に示した発光スペクトルに対応している。図54〜図59に示した「54B〜59B」は青色光の発光スペクトルを示し、「54G〜59G」は緑色光の発光スペクトルを示し、「54R〜59R」は赤色光の発光スペクトルを示している。上記した「実用的な発光性能」とは、色調整用のカラーフィルタを使用した場合における有機EL素子の発光性能であり、すなわち有機ELディスプレイに搭載された場合における色調に関する性能上の実力である。なお、実施例1〜5および比較例の有機EL素子の実用的な発光性能を調べる際には、図60に示した透過特性を有する3色(60B=青,60G=緑,60R=赤)のカラーフィルタを使用することにより、各色の発光スペクトルを調べた。図60は、カラーフィルタの透過特性を表しており、「横軸」は波長λ(nm)を示し、「縦軸」は透過率T(%)を示している。
【0167】
図54〜図59に示した結果から判るように、実施例1〜5の有機EL素子(図54〜図58参照)では、いずれにおいても青色光のスペクトルピーク(54B〜58B)、緑色光のスペクトルピーク(54G〜58G)および赤色光のスペクトルピーク(54R〜58R)が観察され、すなわち青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子からそれぞれカラーフィルタを通じて青色光、緑色光および赤色光が放出された。この場合には、特に、カラーフィルタを使用しなかった場合(図48〜図52参照)と比較して、青色有機EL素子および赤色有機EL素子から放出される緑色の光成分量が著しく減少したため、青色光および赤色光の色純度が向上した。一方、比較例の有機EL素子(図59参照)では、青色光のスペクトルピーク(59B)、緑色光のスペクトルピーク(59G)および赤色光のスペクトルピーク(59R)が観察され、すなわち実施例1〜5の有機EL素子と同様にカラーフィルタを通じて青色光、緑色光および赤色光が放出された。しかしながら、この場合には、実施例1〜5の有機E素子と比較して、やはりスペクトルの強度Iが著しく小さくなった。このことから、本発明の有機EL素子(青色有機EL素子,緑色有機EL素子,赤色有機EL素子では、有機ELディスプレイに搭載されることにより、その有機ELディスプレイの表示性能を向上させることが可能であることが確認された。
【0168】
以上、いくつかの実施の形態および実施例を挙げて本発明の有機発光素子および有機発光装置を説明したが、本発明の有機発光素子および有機発光装置の構成は、上記各実施の形態および実施例において説明した態様に限定されず、青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子において、下部電極層と上部電極層との間に設けられた有機層が複数の発光層が積層された積層構造を有しており、特に、上記した3つの構成条件を満たしていることにより発光性能または表示性能を向上させることが可能な限り、自由に変更可能である。
【0169】
特に、上記した各実施の形態では、青色有機EL素子、緑色有機EL素子および赤色有機EL素子の構造に関して、下部電極層と有機層との間の距離が赤色有機EL素子および青色有機EL素子よりも緑色有機発光素子において大きくなるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、下部電極層と有機層との間の距離は、赤色有機発光素子、緑色有機発光素子および青色有機発光素子のうちの少なくとも1つにおいて異なっている限り、自由に変更可能である。この場合においても、上記した各実施の形態とほぼ同様の効果を得ることができる。ただし、青色有機EL素子から放出される青色光および赤色有機EL素子から放出される赤色光を色調の観点において明瞭に区別するためには、上記各実施の形態において説明したように、下部電極層と有機層との間の距離が赤色有機EL素子および青色有機EL素子よりも緑色有機発光素子において大きくなるようにするのが好ましい。
【0170】
また、上記した各実施の形態では、有機ELディスプレイの構造に関して、画像表示用の光を上方、すなわち封止パネルを経由して外部へ放出することにより画像を表示するトップエミッション型構造を有するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、画像表示用の光を下方、すなわち封止パネルに代えて駆動パネルを経由して外部へ放出することにより画像を表示するボトムエミッション型構造を有するようにしてもよい。このボトムエミッション型構造を有する有機ELディスプレイは、主に、光透過性絶縁材料を使用して光を透過させることが可能となるように駆動基板を構成すると共に、有機EL素子(下部電極層,透明導電層,有機層,上部電極層,主反射制御層,副反射制御層)の積層順を反転させることにより構成することが可能である。この場合においても、上記各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明に係る有機発光素子および有機発光装置は、いわゆる有機ELディスプレイに適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る有機ELディスプレイの全体の断面構成を表す断面図である。
【図2】図4に示した有機ELディスプレイのうちの主要部(有機EL素子)の断面構成を拡大して模式的に表す断面図である。
【図3】図2に示した有機ELディスプレイのうちの主要部(青色有機EL素子および赤色有機EL素子)の断面構成を拡大して詳細に表す断面図である。
【図4】図2に示した有機ELディスプレイのうちの主要部(緑色有機EL素子)の断面構成を拡大して詳細に表す断面図である。
【図5】図3に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図6】図4に示した緑色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図7】図3に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図8】図4に示した緑色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図9】図3に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関するさらに他の変形例を表す断面図である。
【図10】図4に示した緑色有機EL素子の構成に関するさらに他の変形例を表す断面図である。
【図11】図5に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図12】図6に示した緑色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図13】図7に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図14】図8に示した緑色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図15】図3に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関するさらに他の変形例を表す断面図である。
【図16】図5に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図17】図7に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態に係る有機ELディスプレイに搭載される青色有機EL素子および赤色有機EL素子の断面構成を断面図である。
【図19】本発明の第2の実施の形態に係る有機ELディスプレイに搭載される緑色有機EL素子の断面構成を断面図である。
【図20】図18に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図21】図19に示した緑色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図22】図18に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図23】図19に示した緑色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図24】図18に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関するさらに他の変形例を表す断面図である。
【図25】図19に示した緑色有機EL素子の構成に関するさらに他の変形例を表す断面図である。
【図26】図20に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図27】図21に示した緑色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図28】図22に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図29】図23に示した緑色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図30】図18に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関するさらに他の変形例を表す断面図である。
【図31】図20に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図32】図22に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図33】本発明の第3の実施の形態に係る有機ELディスプレイに搭載される青色有機EL素子および赤色有機EL素子の断面構成を断面図である。
【図34】本発明の第3の実施の形態に係る有機ELディスプレイに搭載される緑色有機EL素子の断面構成を断面図である。
【図35】図33に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図36】図34に示した緑色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図37】図33に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図38】図34に示した緑色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図39】図35に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図40】図36に示した緑色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図41】図33に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関するさらに他の変形例を表す断面図である。
【図42】図35に示した緑色有機EL素子の構成に関するさらに他の変形例を表す断面図である。
【図43】本発明の第4の実施の形態に係る有機ELディスプレイに搭載される青色有機EL素子および赤色有機EL素子の断面構成を断面図である。
【図44】本発明の第4の実施の形態に係る有機ELディスプレイに搭載される緑色有機EL素子の断面構成を断面図である。
【図45】図43に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図46】図44に示した緑色有機EL素子の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図47】図43に示した青色有機EL素子および赤色有機EL素子の構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図48】実施例1の有機EL素子の基礎的な発光スペクトルを表す図である。
【図49】実施例2の有機EL素子の基礎的な発光スペクトルを表す図である。
【図50】実施例3の有機EL素子の基礎的な発光スペクトルを表す図である。
【図51】実施例4の有機EL素子の基礎的な発光スペクトルを表す図である。
【図52】実施例5の有機EL素子の基礎的な発光スペクトルを表す図である。
【図53】比較例の有機EL素子の基礎的な発光スペクトルを表す図である。
【図54】実施例1の有機EL素子の実用的な発光スペクトルを表す図である。
【図55】実施例2の有機EL素子の実用的な発光スペクトルを表す図である。
【図56】実施例3の有機EL素子の実用的な発光スペクトルを表す図である。
【図57】実施例4の有機EL素子の実用的な発光スペクトルを表す図である。
【図58】実施例5の有機EL素子の実用的な発光スペクトルを表す図である。
【図59】比較例の有機EL素子の実用的な発光スペクトルを表す図である。
【図60】カラーフィルタの透過特性を表す図である。
【符号の説明】
【0173】
10…駆動パネル、11…駆動用基板、12…TFT、13…層間絶縁層、14…駆動配線、15…平坦化絶縁層、16…有機EL素子、16B,46B,56B,66B…青色有機EL素子、16G,46G,56G,66G…緑色有機EL素子、16R,46R,56R,66R…赤色有機EL素子、17…層内絶縁層、18…保護層、20…封止パネル、21…封止用基板、22…カラーフィルタ、22B…青色フィルタ領域、22G…緑色フィルタ領域、22R…赤色フィルタ領域、30…接着層、100…有機ELディスプレイ、161B,161G,161R…下部電極層、161BM,161GM,161RM,164M…反射面、162B,162G,162R…透明導電層、163…有機層、164…上部電極層、165,166…反射面規定層、1631,1633,1635,1637,1639,1641…発光補助層、1632,1636,1640…青色発光層、1632M,1634M,1636M,1638M,1640M…発光面、1634…緑色発光層、1638…赤色発光層、1634M,1645M,1646M,1656M,1665M…界面、D,D1,D2,LB1,LB2,LB3,LG,LR…光学的距離、HB1,HB2,HB3,HPB…青色光、HG,HPG…緑色光、HP…画像表示用の光、HR,HPR…赤色光、nH,nL…屈折率、NB,NG,NR…発光点、TB,TG,TR…厚さ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極層と第2の電極層との間に、複数の発光層が積層された積層構造を有する有機層が設けられ、前記複数の発光層から発生した光を第1の反射面と第2の反射面との間において反射させて共振させることにより、それぞれ前記第2の電極層を経由して青色光、緑色光および赤色光を放出する青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子、を含み、
前記第1の反射面と前記複数の発光層のうちの各発光層の発光面との間の距離が、前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のいずれにおいても下記に示した関係式1を満たし、
前記第1の反射面と前記第2の反射面との間の距離が、前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のいずれにおいても下記に示した関係式2を満たし、
前記第1の電極層と前記有機層との間の距離が、前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のうちの少なくとも1つにおいて異なっている
ことを特徴とする有機発光素子。
L=(mL−ΦL/2π)λL/2・・・関係式1
(「L」は第1の反射面と各発光層の発光面との間の距離(第1の光学的距離)、「mL」は次数(0または整数)、「ΦL」は各発光層において発生した光が第1の反射面において反射する際に生じる位相シフト、「λL」は各発光層において発生した光が有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
D=(mD−ΦD/2π)λD/2・・・関係式2
(「D」は第1の反射面と第2の反射面との間の距離(第2の光学的距離)、「mD」は次数(0または整数)、「ΦD」は複数の発光層において発生した光が第1の反射面および第2の反射面において反射する際に生じる位相シフト、「λD」は複数の発光層において発生した光が有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【請求項2】
前記第1の反射面が、前記第1の電極層と前記有機層との間の界面である
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子が、いずれも前記第1の電極層に近い側から順に、相対的に高い屈折率を有する高屈折率層および相対的に低い屈折率を有する低屈折率層を含み、
前記第2の反射面が、前記高屈折率層と前記低屈折率層との間の界面である
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記第2の電極層が、前記低屈折率層として機能している
ことを特徴とする請求項3記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子が、いずれも前記第1の電極層に近い側から順に、相対的に低い屈折率を有する低屈折率層および相対的に高い屈折率を有する高屈折率層を含み、
前記第2の反射面が、前記低屈折率層と前記高屈折率層との間の界面である
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記第2の電極層が、前記高屈折率層として機能している
ことを特徴とする請求項5記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子が、いずれも前記第1の電極層に近い側から順に、相対的に低い屈折率を有する第1の低屈折率層および相対的に高い屈折率を有する第1の高屈折率層と、相対的に高い屈折率を有する第2の高屈折率層および相対的に低い屈折率を有する第2の低屈折率層とを含み、
前記第2の反射面が、前記第1の低屈折率層と前記第1の高屈折率層との間の界面および前記第2の高屈折率層と前記第2の低屈折率層との間の界面である
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記複数の発光層が、前記第1の電極層に近い側から順に、第1の青色発光層と、緑色発光層と、第2の青色発光層と、赤色発光層と、を含み、
前記関係式1中の次数mLが、前記第1の青色発光層に関してmL=0、前記緑色発光層に関してmL=1、前記第2の青色発光層に関してmL=1、前記赤色発光層に関してmL=1である
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記関係式2中の次数mDが、前記第1の青色発光層に関してmD=2、前記緑色発光層に関してmD=2、前記第2の青色発光層に関してmD=2、前記赤色発光層に関してmD=1である
ことを特徴とする請求項8記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記複数の発光層が、前記第1の電極層に近い側から順に、第1の青色発光層と、緑色発光層と、第2の青色発光層と、赤色発光層と、第3の青色発光層と、を含み、
前記関係式1中の次数mLが、前記第1の青色発光層に関してmL=0、前記緑色発光層に関してmL=1、前記第2の青色発光層に関してmL=1、前記赤色発光層に関してmL=1、前記第3の青色発光層に関してmL=2である
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記関係式2中の次数mDが、前記第1の青色発光層に関してmD=2、前記緑色発光層に関してmD=2、前記第2の青色発光層に関してmD=2、前記赤色発光層に関してmD=1、前記第3の青色発光層に関してmD=2である
ことを特徴とする請求項10記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記第1の電極層と前記有機層との間の距離が、前記青色有機発光素子および前記赤色有機発光素子よりも前記緑色有機発光素子において大きくなっている
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記緑色有機発光素子において、前記第1の電極層と前記有機層との間に透明導電層が設けられていることにより、前記第1の反射面が、前記第1の電極層と前記透明導電層との間の界面であり、
前記青色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のいずれにおいても、前記第1の電極層と前記有機層との間に前記透明導電層が設けられていない
ことを特徴とする請求項12記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のいずれにおいても、前記第1の電極層と前記有機層との間に透明導電層が設けられていることにより、前記第1の反射面が、前記第1の電極層と前記透明導電層との間の界面であり、
その透明導電層の厚さが、前記青色有機発光素子および前記赤色有機発光素子よりも前記緑色有機発光素子において大きくなっている
ことを特徴とする請求項12記載の有機発光素子。
【請求項15】
第1の電極層と第2の電極層との間に、複数の発光層が積層された積層構造を有する有機層が設けられ、前記複数の発光層から発生した光を第1の反射面と第2の反射面との間において反射させて共振させることにより、それぞれ前記第2の電極層を経由して青色光、緑色光および赤色光を放出する青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子、を含む有機発光素子を備え、
前記第1の反射面と前記複数の発光層のうちの各発光層の発光面との間の距離が、前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のいずれにおいても下記に示した関係式3を満たし、
前記第1の反射面と前記第2の反射面との間の距離が、前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のいずれにおいても下記に示した関係式4を満たし、
前記第1の電極層と前記有機層との間の距離が、前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のうちの少なくとも1つにおいて異なっている
ことを特徴とする有機発光装置。
L=(mL−ΦL/2π)λL/2・・・関係式3
(「L」は第1の反射面と各発光層の発光面との間の距離(第1の光学的距離)、「mL」は次数(0または整数)、「ΦL」は各発光層において発生した光が第1の反射面において反射する際に生じる位相シフト、「λL」は各発光層において発生した光が有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
D=(mD−ΦD/2π)λD/2・・・関係式4
(「D」は第1の反射面と第2の反射面との間の距離(第2の光学的距離)、「mD」は次数(0または整数)、「ΦD」は複数の発光層において発生した光が第1の反射面および第2の反射面において反射する際に生じる位相シフト、「λD」は複数の発光層において発生した光が有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【請求項1】
第1の電極層と第2の電極層との間に、複数の発光層が積層された積層構造を有する有機層が設けられ、前記複数の発光層から発生した光を第1の反射面と第2の反射面との間において反射させて共振させることにより、それぞれ前記第2の電極層を経由して青色光、緑色光および赤色光を放出する青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子、を含み、
前記第1の反射面と前記複数の発光層のうちの各発光層の発光面との間の距離が、前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のいずれにおいても下記に示した関係式1を満たし、
前記第1の反射面と前記第2の反射面との間の距離が、前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のいずれにおいても下記に示した関係式2を満たし、
前記第1の電極層と前記有機層との間の距離が、前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のうちの少なくとも1つにおいて異なっている
ことを特徴とする有機発光素子。
L=(mL−ΦL/2π)λL/2・・・関係式1
(「L」は第1の反射面と各発光層の発光面との間の距離(第1の光学的距離)、「mL」は次数(0または整数)、「ΦL」は各発光層において発生した光が第1の反射面において反射する際に生じる位相シフト、「λL」は各発光層において発生した光が有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
D=(mD−ΦD/2π)λD/2・・・関係式2
(「D」は第1の反射面と第2の反射面との間の距離(第2の光学的距離)、「mD」は次数(0または整数)、「ΦD」は複数の発光層において発生した光が第1の反射面および第2の反射面において反射する際に生じる位相シフト、「λD」は複数の発光層において発生した光が有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【請求項2】
前記第1の反射面が、前記第1の電極層と前記有機層との間の界面である
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子が、いずれも前記第1の電極層に近い側から順に、相対的に高い屈折率を有する高屈折率層および相対的に低い屈折率を有する低屈折率層を含み、
前記第2の反射面が、前記高屈折率層と前記低屈折率層との間の界面である
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記第2の電極層が、前記低屈折率層として機能している
ことを特徴とする請求項3記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子が、いずれも前記第1の電極層に近い側から順に、相対的に低い屈折率を有する低屈折率層および相対的に高い屈折率を有する高屈折率層を含み、
前記第2の反射面が、前記低屈折率層と前記高屈折率層との間の界面である
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記第2の電極層が、前記高屈折率層として機能している
ことを特徴とする請求項5記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子が、いずれも前記第1の電極層に近い側から順に、相対的に低い屈折率を有する第1の低屈折率層および相対的に高い屈折率を有する第1の高屈折率層と、相対的に高い屈折率を有する第2の高屈折率層および相対的に低い屈折率を有する第2の低屈折率層とを含み、
前記第2の反射面が、前記第1の低屈折率層と前記第1の高屈折率層との間の界面および前記第2の高屈折率層と前記第2の低屈折率層との間の界面である
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記複数の発光層が、前記第1の電極層に近い側から順に、第1の青色発光層と、緑色発光層と、第2の青色発光層と、赤色発光層と、を含み、
前記関係式1中の次数mLが、前記第1の青色発光層に関してmL=0、前記緑色発光層に関してmL=1、前記第2の青色発光層に関してmL=1、前記赤色発光層に関してmL=1である
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記関係式2中の次数mDが、前記第1の青色発光層に関してmD=2、前記緑色発光層に関してmD=2、前記第2の青色発光層に関してmD=2、前記赤色発光層に関してmD=1である
ことを特徴とする請求項8記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記複数の発光層が、前記第1の電極層に近い側から順に、第1の青色発光層と、緑色発光層と、第2の青色発光層と、赤色発光層と、第3の青色発光層と、を含み、
前記関係式1中の次数mLが、前記第1の青色発光層に関してmL=0、前記緑色発光層に関してmL=1、前記第2の青色発光層に関してmL=1、前記赤色発光層に関してmL=1、前記第3の青色発光層に関してmL=2である
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記関係式2中の次数mDが、前記第1の青色発光層に関してmD=2、前記緑色発光層に関してmD=2、前記第2の青色発光層に関してmD=2、前記赤色発光層に関してmD=1、前記第3の青色発光層に関してmD=2である
ことを特徴とする請求項10記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記第1の電極層と前記有機層との間の距離が、前記青色有機発光素子および前記赤色有機発光素子よりも前記緑色有機発光素子において大きくなっている
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記緑色有機発光素子において、前記第1の電極層と前記有機層との間に透明導電層が設けられていることにより、前記第1の反射面が、前記第1の電極層と前記透明導電層との間の界面であり、
前記青色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のいずれにおいても、前記第1の電極層と前記有機層との間に前記透明導電層が設けられていない
ことを特徴とする請求項12記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のいずれにおいても、前記第1の電極層と前記有機層との間に透明導電層が設けられていることにより、前記第1の反射面が、前記第1の電極層と前記透明導電層との間の界面であり、
その透明導電層の厚さが、前記青色有機発光素子および前記赤色有機発光素子よりも前記緑色有機発光素子において大きくなっている
ことを特徴とする請求項12記載の有機発光素子。
【請求項15】
第1の電極層と第2の電極層との間に、複数の発光層が積層された積層構造を有する有機層が設けられ、前記複数の発光層から発生した光を第1の反射面と第2の反射面との間において反射させて共振させることにより、それぞれ前記第2の電極層を経由して青色光、緑色光および赤色光を放出する青色有機発光素子、緑色有機発光素子および赤色有機発光素子、を含む有機発光素子を備え、
前記第1の反射面と前記複数の発光層のうちの各発光層の発光面との間の距離が、前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のいずれにおいても下記に示した関係式3を満たし、
前記第1の反射面と前記第2の反射面との間の距離が、前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のいずれにおいても下記に示した関係式4を満たし、
前記第1の電極層と前記有機層との間の距離が、前記青色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記赤色有機発光素子のうちの少なくとも1つにおいて異なっている
ことを特徴とする有機発光装置。
L=(mL−ΦL/2π)λL/2・・・関係式3
(「L」は第1の反射面と各発光層の発光面との間の距離(第1の光学的距離)、「mL」は次数(0または整数)、「ΦL」は各発光層において発生した光が第1の反射面において反射する際に生じる位相シフト、「λL」は各発光層において発生した光が有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
D=(mD−ΦD/2π)λD/2・・・関係式4
(「D」は第1の反射面と第2の反射面との間の距離(第2の光学的距離)、「mD」は次数(0または整数)、「ΦD」は複数の発光層において発生した光が第1の反射面および第2の反射面において反射する際に生じる位相シフト、「λD」は複数の発光層において発生した光が有機発光素子から放出される際のスペクトルのピーク波長をそれぞれ表す。)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【公開番号】特開2007−12370(P2007−12370A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190084(P2005−190084)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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