説明

有機発光素子

【課題】有機発光素子を提供する。
【解決手段】電子輸送物質と下記化学式1で表示される金属化合物とを含む電子輸送層を備える有機発光素子である。
[化学式1]

Xは、アルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属であり、Yは、7族元素またはC1−C20有機グループであり、aは、1ないし3の整数であり、bは、1ないし3の整数である。これにより、本発明の有機発光素子は、新規な電子輸送層形成材料を利用して電子注入層を形成せずとも電子注入能が非常に改善される。その結果、通常的な電子輸送材料を使用した場合と比較して、電流効率、電力効率が向上するだけでなく、発光層に注入される電荷バランスが調節されて駆動電圧及び寿命特性が改善される。また、本発明の有機発光素子は、デジタル駆動(静電圧駆動)時に寿命低下が最小化しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子に係り、さらに詳細には、新規な電子輸送材料を利用し、電子注入能が改善され、駆動電圧、発光効率及び寿命の改善された有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、自発光型表示素子であって、視野角が広く、コントラストに優れるだけでなく、応答時間が速いという長所を有しているため、大きく注目されている。
【0003】
有機発光素子は、ガラス基板上にITO(Indium Tin Oxide)のような透明導電材料からなるアノードを形成し、その上部に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及びカソードを積層して製造される。
【0004】
前述したように、積層構造で構成された有機発光素子は、アノードとカソードとの間に直流電圧を印加すれば、アノードから正孔が注入され、カソードから電子が注入され、正孔は、正孔注入層及び正孔輸送層を経て発光層に移動し、電子は、電子輸送層を経て発光層に移動する。そして、発光層で正孔と電子とが再結合することによって光が発生する。
【0005】
前記電子輸送層の形成材料としては、トリス−8−ヒドロキシキノラートアルミニウム(Alq)が一般的に使われる。
【0006】
ところが、公知の電子輸送物質を利用して形成された電子輸送層を備える場合、電子注入時にバリヤによって要求輝度による電圧上昇が不回避である。したがって、新たな電子輸送物質の開発が至急望まれる状況である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、電子注入が容易になって電圧低下による消費電力が減少するだけでなく、駆動電圧、発光効率及び寿命特性を改善させた有機発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を達成するために、本発明では、電子輸送物質と下記化学式1で表示される金属化合物とを含む電子輸送層を備える有機発光素子を提供する。
【0009】
[化学式1]

【0010】
Xは、アルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属であり、Yは、7族元素またはC1−C20有機グループであり、aは、1ないし3の整数であり、bは、1ないし3の整数である。
【0011】
本発明の課題はまた、第1電子輸送物質を含む第1電子輸送層と、第2電子輸送物質と下記化学式1で表示される金属化合物とを含む第2電子輸送層と、を備える有機発光素子によってなされる。
【0012】
[化学式1]

【0013】
Xは、アルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属であり、Yは、7族元素またはC1−C20有機グループであり、aは、1ないし3の整数であり、bは、1ないし3の整数である。
【0014】
本発明による有機発光素子は、前述した単一電子輸送層以外に、第1電極、正孔注入層、発光層、第2電極を備えた構造を有する。また、本発明による有機発光素子は、2層構造を有する第1電子輸送層と第2電子輸送層とを備え、第1電極と第2電極との間に、正孔注入層及び発光層を備える。
【0015】
また、本発明の有機発光素子は、正孔注入層をさらに備えることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の有機発光素子は、新規な電子輸送材料を利用して電子注入層を形成せずとも電子注入能が非常に改善される。その結果、通常の電子輸送材料を使用した場合と比較して、電流効率、電力効率が向上するだけでなく、発光層に注入される電荷バランスが調節されて、駆動電圧及び寿命特性が改善される。また、本発明の有機発光素子は、静電圧駆動時に寿命の低下が最小化しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0018】
高効率性能を有する有機発光素子を具現するためには、発光層における電荷バランスが非常に重要である。多数のキャリアが正孔(+)である構造においては、電子(−)の電荷フロー密度を調節することが必要である。このために、本発明では、電子輸送層の形成時に下記化学式1で表示される金属化合物と電子輸送物質とを利用する。
【0019】
[化学式1]

【0020】
Xは、アルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属であり、Yは、7族元素またはC1−C20有機グループであり、aは、1ないし3の整数であり、bは、1ないし3の整数である。
【0021】
前記化学式1で、Xは、リチウム(Li)セシウム(Cs)、ナトリウム(Na)、バリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)またはイッテルビウム(Yb)であり、Yは、F、キノレート、アセトアセテートまたはハライドである。
【0022】
前記化学式1で表示される金属化合物は、リチウムキノレート、ナトリウムキノレート、リチウムアセトアセテート、マグネシウムアセトアセテート、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化ナトリウムからなる群から選択された一つ以上であることが望ましい。
【0023】
前記化学式1で表示される金属化合物の含量は、電子輸送層総量100重量部を基準として20ないし60重量部、特に、25ないし50重量部であることが望ましく、電子輸送物質の含量は、電子輸送層総量100重量部を基準として40ないし80重量部、特に、50ないし75重量部であることが望ましい。
【0024】
もし、化学式1の金属化合物の含量が前記範囲を逸脱すれば、付加効果が微小であるので、望ましくない。
【0025】
本発明による有機発光素子は、別途の電子注入層を必要とせず、かつ電子注入がさらに容易になる。
【0026】
また、前述した電子輸送層以外に、電子移動度が電場800〜1000(V/cm)1/2で10−8cm/V以上である電子輸送物質を含む電子輸送層をさらに備えうる。これをさらに詳細に説明すれば、本発明の有機発光素子は、第1電子輸送物質を含む第1電子輸送層と、第2電子輸送物質と化学式1で表示される金属化合物とを含む第2電子輸送層と、を備える。
【0027】
このように、2層構造の電子輸送層を備える場合には、単層の電子輸送層を使用する場合と比較して、はるかに有機的な電子注入が可能になり、これにより、駆動電圧が低下し、これにより、消費電力が大きく減少するという利点がある。
【0028】
前記第2電子輸送層において、化学式1で表示される金属化合物の含量は、第2電子輸送層総量100重量部を基準として20ないし60重量部、特に、25ないし50重量部であることが望ましく、第2電子輸送物質の含量は、第2電子輸送層総量100重量部を基準として40ないし80重量部、特に、50ないし75重量部であることが望ましい。
【0029】
前記第1電子輸送物質は、前述したように、前記電子移動度が10−8cm/V以上である電子輸送物質からなり、望ましくは、電場800〜1000(V/cm)1/2で10−4ないし10−8cm/vsの電子移動度を有し、具体的な例として、Alq3、Znq2またはBebq2が挙げられる。
【0030】
前記第2電子輸送物質は、第1電子輸送物質と同一に電子移動度が10−8cm/V以上である電子輸送物質からなり、第1電子輸送物質と同じ組成または相異なる材料で選択しうる。そのうち、第1電子輸送物質と第2電子輸送物質とが同じ材料で構成される場合が、電荷移動度の側面でさらに望ましい。
【0031】
前記第1電子輸送層と第2電子輸送層との厚さ比は、1:1ないし2:1であることが望ましい。
【0032】
本発明の一実施例による有機発光素子は、図1及び図2のような積層構造で現れる。
【0033】
図1を参照して、基板上に第1電極、正孔注入層(HIL:Hole Injection Layer)、正孔輸送層(HTL:Hole Transport Layer)が順次に形成されている。ここで、HILは、場合によっては省略可能である。
【0034】
前記HTLの上部に発光層(EML:Emission Layer)及び電子輸送物質と前述した化学式1の金属化合物とからなる電子輸送層(ETL:Electron Transport Layer)が形成されており、前記ETLの上部に第2電極が積層されている。
【0035】
前記電子輸送物質の望ましい例として、Bebqがあり、化学式1の金属化合物の望ましい例として、LiFがある。
【0036】
図2を参照して、基板上に第1電極、HIL、HTLが順次に形成されている。ここで、HILは、場合によっては省略可能である。
【0037】
前記HTLの上部にEML及び第1電子輸送物質を含む第1電子輸送層(ETL1)と、第2電子輸送物質及び前述した化学式1の金属化合物を含む第2電子輸送層(ETL2)とが形成されており、前記ETL2の上部に第2電極が積層されている。
【0038】
図2のような積層構造を有する有機発光素子において、ETL1は、電荷移動速度を制御する役割を行い、ETL2は、電子注入障壁を低める役割を行う。
【0039】
前記ETL1を構成する第1電子輸送物質の望ましい例としては、特に、Bebq、AlqまたはZnqがある。
【0040】
前記ETL2は、第2電子輸送物質と双極子である特性を有する化学式1の金属化合物とからなる。
【0041】
前記金属化合物としては、LiF、BaF、CsF、NaFまたはLiqが使われ、第2電子輸送物質の望ましい例としては、Bebq、ZnqまたはAlqがある。
【0042】
図1及び図2に示したように、本発明の有機発光素子は、電子注入層が不要である。
【0043】
以下、本発明の一実施例による有機発光素子の製造方法を説明する。
【0044】
まず、基板の上部に第1電極のアノード電極用物質をコーティングしてアノード電極を形成する。ここで、基板としては、通常的な有機EL素子で使われる基板を使用するが、透明性、表面平滑性、取扱容易性及び防水性に優れたガラス基板または透明プラスチック基板が望ましい。そして、アノード電極用物質としては、透明で伝導性に優れたITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、SnO、ZnOを使用する。
【0045】
正孔注入物質を真空熱蒸着、またはスピンコーティングして正孔注入層を選択的に形成する。
【0046】
前記正孔注入物質としては、米国特許第4,356,429号に開示された銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物またはAdvanced Material,6,p.677(1994)に記載されているスターバースト型アミン誘導体類であるTCTA、m−MTDATA、m−MTDAPBを使用しうる。
【0047】
ここで、前記正孔注入層の厚さは、2nmないし100nmである。このうち、10nmの厚さを利用しうる。前記正孔注入層の厚さが2nm未満である場合、過度に薄くて正孔が正しく注入されないという問題点があり、前記正孔注入層の厚さが100nmを超える場合、伝導度が低下する恐れがある。
【0048】
前記正孔注入層の上部に正孔輸送層物質を真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB(Langmuir−Blodgett)法のような方法によって形成しうるが、均一な膜質を得やすく、また、ピンホールが発生し難いという点で真空蒸着法によって形成することが望ましい。真空蒸着法によって正孔輸送層を形成する場合、その蒸着条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に、正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲内で選択される。
【0049】
前記正孔輸送層物質は、特別に制限されず、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(α−NPD)が使われる。
【0050】
次いで、前記正孔輸送層の上部に発光層が導入され、発光層材料は、特別に制限されない。ここで、発光層の形成方法としては、真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB法のような方法を使用しうる。
【0051】
前記発光層形成材料の具体的な例として、オキサジアゾールダイマー染料(Bis−DAPOXP)、スピロ化合物(Spiro−DPVBi,Spiro−6P)、トリアリールアミン化合物、ビス(スチリル)アミン(DPVBi,DSA)、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルぺリレン(TPBe)、9H−カルバゾール−3,3’−(1,4−フェニレン−ジ−2,1−エテン−ジイル)ビス[9−エチル−(9C)](BCzVB)、4,4−ビス[4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]ビフェニル(DPAVBi)、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−[(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン(DPAVB)、4,4’−ビス[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]ビフェニル(BDAVBi)、ビス(3,5−ジフルオロ−2−(2−ピリジル)フェニル−(2−カルボキシピリジル)イリジウムIII(FIrPic)、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン(Coumarin 6)2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7、−テトラメチル−1H,5H,11H−10−(2−ベンゾチアゾリル)キノリジノ−[9,9a,1gh]クマリン(C545T)、N,N’−ジメチル−キナクリドン(DMQA)、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy))、テトラフェニルナフタセン(ルブレン)、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム(III)(Ir(piq))、ビス(2−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−ピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(Ir(btp)(acac))、トリス(ジベンゾイルメタン)フェナントロリンユーロピウム(III)(Eu(dbm)(phen))、トリス[4,4’−ジ−tert−ブチル−(2,2’)−ビピリジン]ルテニウム(III)錯体(Ru(dtb−bpy)32(PF6))、DCM1、DCM2、Eu(3フッ化テノイルアセトン)3{(Eu(TTA)}、ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン)(DCJTB)(以上、赤色)を使用しうる。また、高分子発光物質としては、フェニレン系、フェニレンビニレン系、チオフェン系、フルオレン系及びスピロフルオレン系高分子のような高分子及び窒素を含む芳香族化合物を含みうるが、これに限定されるものではない。
【0052】
前記発光層の厚さは、10nmないし500nm、望ましくは、50nmないし120nmであることが望ましい。このうちでも、特に、青色発光層の厚さは、70nmでありうる。もし、発光層の厚さが10nm未満である場合には、漏れ電流が増加して効率が低下し、寿命が減少し、500nmを超える場合には、駆動電圧の上昇幅が高まって、望ましくない。
【0053】
場合によっては、前記発光層は、発光層ホストに前記発光ドーパントをさらに付加して製造することもある。蛍光発光型ホストの材料としては、トリス(8−ヒドロキシ−キノリナート)アルミニウム(Alq)、9,10−ジ(ナフティ−2−イル)アントラセン(ADN)、3−Tert−ブチル−9,10−ジ(ナフティ−2−イル)アントラセン(TBADN)、4,4’−ビス(2,2−ジフェニル−エテン−1−イル)−4,4’−ジメチルフェニル(DPVBi)、4,4’−ビス(2,2−ジフェニル−エテン−1−イル)−4,4’−ジメチルフェニル(p−DMDPVBi)、Tert(9,9−ジアリールフルオレン)(TDAF)、2−(9,9’−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9’−スピロビフルオレン(BSDF)、2,7−ビス(9,9’−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9’−スピロビフルオレン(TSDF)、ビス(9,9−ジアリールフルオレン)(BDAF)、4,4’−ビス(2,2−ジフェニル−エテン−1−イル)−4,4’−ジ−(tert−ブチル)フェニル(p−TDPVBi)が使われ、リン光型ホストの材料としては、1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン(mCP)、1,3,5−トリス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン(tCP)、4,4’,4”−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(TcTa)、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)、4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−2,2’−ジメチル−ビフェニル(CBDP)、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジメチル−フルオレン(DMFL−CBP)、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール)フルオレン(FL−4CBP)、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジ−トリル−フルオレン(DPFL−CBP)、9,9−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール)フルオレン(FL−2CBP)が使われる。
【0054】
このとき、ドーパントの含量は、発光層形成材料によって可変的であるが、一般的に、発光層形成材料(ホストとドーパントとの総量)100重量部を基準として3ないし80重量部であることが望ましい。もし、ドーパントの含量が前記範囲を逸脱すれば、EL素子の発光特性が低下して望ましくない。本発明で、例えば、DPAVBi(4,4’−ビス[4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]ビフェニル)が使われ、蛍光ホストとしては、ADN(9,10−ジ(ナフ−2−チル)アントラセン)またはTBADN(3−Tert−ブチル−9,10−ジ(ナフ−2−チル)アントラセン)が使われる。
【0055】
【化1】

【0056】
次いで、電子輸送物質と前述した化学式1の金属化合物とを真空蒸着法によって積層して電子輸送層を形成する。
【0057】
前記電子輸送物質としては、電子移動度が電場800〜1000(V/cm)1/2で10−8cm/V以上、特に、10−3ないし10−8cm/Vの値を有する電子輸送物質を利用する。
【0058】
もし、電子輸送層の電子移動度が10−8cm/V未満である場合、発光層への電子注入が十分であるので、電荷バランスの側面で望ましくない。
【0059】
前記電子輸送層形成物質としては、下記化学式2で表示されるビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム(Bebq)、その誘導体、8−ヒドロキシキノリン亜鉛(Znq)または(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)を使用する。
【0060】
【化2】

【0061】
また、本発明では、電子注入層を形成せずとも電子注入能に優れているが、電子輸送層の上部にカソードからの電子の注入を容易にする機能を有する物質である電子注入層を積層する場合、電子注入能がはるかに改善される。
【0062】
電子注入層の形成時に、LiF、NaCl、CsF、LiO、BaOなどの物質を利用しうる。前記電子輸送層、電子注入層の蒸着条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に、正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲内で選択される。
【0063】
最後に、電子注入層の上部に第2電極のカソード形成用金属を用いて真空蒸着法やスパッタリング法などの方法によってカソードを形成する。ここで、カソード形成用金属としては、低い仕事関数を有する金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を使用しうる。具体的な例としては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム−リチウム(Al−Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)が挙げられる。また、前面発光素子を得るために、ITO、IZOを使用した透過型カソードを使用することもある。
【0064】
本発明の他の一実施例による有機発光素子の製造方法を説明すれば、次の通りである。
【0065】
図2のように、2層構造の電子輸送層を備える有機発光素子は、発光層の上部に第1電子輸送物質を真空蒸着法によって積層して第1電子輸送層を形成し、前記第1電子輸送層の上部に第2電子輸送物質と前述した化学式1の金属化合物とを真空蒸着法によって積層して第2電子輸送層を形成することを経ることを除いては、前述した有機発光素子の製造方法と同一に実施する。
【0066】
以下、本発明を下記の実施例を例として説明するが、本発明が下記の実施例にのみ限定されるものではない。
【0067】
実施例1:有機発光素子の製作例
アノードは、コーニング15Ω/cm(1200Å)のITOガラス基板を50mm×50mm×0.7mmのサイズに切断してイソプロピルアルコール及び純水中で各5分間超音波洗浄した後、30分間UVオゾン洗浄して使用した。
【0068】
前記基板の上部に銅フタロシアニン(CuPc)を利用して、正孔注入層を5nmの厚さに形成した。
【0069】
前記正孔注入層の上部にNPBを真空蒸着して正孔輸送層を60nmの厚さに形成した。前記のように、正孔輸送層を形成した後、この正孔輸送層の上部にホストであるAlq 100重量部、ドーパントであるクマリン6を10重量部を使用して、これを真空蒸着して発光層を形成した。
【0070】
その後、前記発光層の上部にLiF 25重量部とBebq 75重量部とを真空蒸着して35nmの厚さの電子輸送層(ETL)を形成した。
【0071】
前記電子輸送層の上部にAl 3000Å(カソード)を順次に真空蒸着してAl電極を形成することによって、有機発光素子を完成した。
【0072】
実施例2:有機発光素子の製作例
リチウムキノレート50重量部とBebq 50重量部とを真空蒸着して電子輸送層を形成したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施して有機発光素子を完成した。
【0073】
実施例3:有機発光素子の製作例
アノードは、コーニング15Ω/cm(1200Å)のITOガラス基板を50mm×50mm×0.7mmのサイズに切断してイソプロピルアルコール及び純水中で各5分間超音波洗浄した後、30分間UVオゾン洗浄して使用した。
【0074】
前記基板の上部にCuPcを利用して正孔注入層を5nmの厚さに形成した。
【0075】
前記正孔注入層の上部にNPBを真空蒸着して正孔輸送層を60nmの厚さに形成した。前記のように、正孔輸送層を形成した後、この正孔輸送層の上部にホストであるAlq 100重量部のドーパントであるクマリン6 10重量部使用して、これを真空蒸着して発光層を形成した。
【0076】
その後、前記発光層の上部にBebqを真空蒸着して10nmの厚さの第1電子輸送層(ETL1)を形成した。
【0077】
前記ETL1の上部にLiF 25重量部とBebq 75重量部とを真空蒸着して15nmの厚さの第2電子輸送層(ETL2)を形成した。
【0078】
前記ETL2の上部にAl 3000Å(カソード)を順次に真空蒸着してAl電極を形成することによって、有機発光素子を完成した。
【0079】
実施例4:有機発光素子の製作例
リチウムキノレート50重量部とBebq 50重量部とを真空蒸着してETL2を形成したことを除いては、実施例3と同じ方法によって実施して有機発光素子を完成した。
【0080】
比較例1:有機発光素子の製作例
電子輸送層の形成時にAlqを利用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施して有機発光素子を完成した。
【0081】
前記実施例1及び比較例1によって製作された有機発光素子の電流密度による電力効率を調べ、その結果は、図3に示した。
【0082】
図3を参照して、実施例1の有機発光素子は、比較例1の場合と比較して電力効率特性が改善されるということが分かった。
【0083】
前記実施例2及び比較例1によって製作された有機発光素子の電圧による電流密度及び電流密度による電流効率を測定して、図4及び図5にそれぞれ表した。
【0084】
図4及び図5を参照すると、実施例2の有機発光素子は、比較例1の場合と比較して電流密度及び電流効率特性が向上するということが確認できた。
【0085】
前記実施例3及び比較例1によって製造された有機発光素子において、電圧による電流密度特性及び輝度変化を調べて、図6及び図7にそれぞれ表した。
【0086】
図6及び図7を参照して、実施例3の有機発光素子は、比較例1の場合に比べて、電流密度特性及び輝度変化が向上するということが分かった。
【0087】
前記実施例4及び比較例1によって製造された有機発光素子において、輝度による効率特性、電圧による電流密度特性(V−I特性)及び電圧による輝度(V−L)特性を調べて、図8ないし図10にそれぞれ表した。
【0088】
図8ないし図10を参照して、実施例4の有機発光素子は、比較例1の場合に比べて、効率、V−I及びV−L特性が改善されるということが分かった。
【0089】
前記のような実施例を通じて、当業者ならば、本発明の技術的思想を利用する多様な電子素子または装置を製造できるであろう。したがって、本発明の範囲は、説明された実施例によって決定されず、特許請求の範囲に記載された技術的思想によって決定されねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、電子装置関連の技術分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の一実施例による有機発光素子の積層構造を示す図面である。
【図2】本発明の他の一実施例による有機発光素子の積層構造を示す図面である。
【図3】本発明の一実施例による有機発光素子において、電流密度による電力効率を示す図面である。
【図4】本発明の一実施例による有機発光素子において、電圧による電流密度を示す図面である。
【図5】本発明の一実施例による有機発光素子において、電流密度による電流効率を示す図面である。
【図6】本発明による実施例3及び比較例1によって製造された有機発光素子において、電圧による電流密度特性を調べて示す図面である。
【図7】本発明による実施例3及び比較例1によって製造された有機発光素子において、電圧による輝度変化を調べて示す図面である。
【図8】本発明の実施例4及び比較例1によって製造された有機発光素子において、輝度による効率特性を示す図面である。
【図9】本発明の実施例4及び比較例1によって製造された有機発光素子において、電圧による電流密度特性(V−I特性)を示す図面である。
【図10】本発明の実施例4及び比較例1によって製造された有機発光素子において、電圧による輝度(V−L)特性を示す図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子輸送物質と下記化学式1で表示される金属化合物とを含む電子輸送層を備える有機発光素子:
[化学式1]

Xは、アルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属であり、
Yは、7族元素またはC1−C20有機グループであり、
aは、1ないし3の整数であり、
bは、1ないし3の整数である。
【請求項2】
前記化学式1で、Xは、リチウム(Li)セシウム(Cs)、ナトリウム(Na)、バリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)またはイッテルビウム(Yb)であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記化学式1で、Yは、キノレート、アセトアセテート、またはハライドであることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記化学式1で表示される金属化合物は、リチウムキノレート、ナトリウムキノレート、リチウムアセトアセテート、マグネシウムアセトアセテート、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化ナトリウムからなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記化学式1で表示される金属化合物の含量は、電子輸送層総量100重量部を基準として20ないし60重量部であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記電子輸送物質は、電子移動度が電場800〜1000(V/cm)1/2で10−8cm/V以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記電子輸送物質は、下記化学式2で表示されるビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム(Bebq)、その誘導体、8−ヒドロキシキノリン亜鉛(Znq)または(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)からなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【化1】

【請求項8】
前記素子は、第1電極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、第2電極を備えることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記素子は、正孔注入層をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の有機発光素子。
【請求項10】
第1電子輸送物質を含む第1電子輸送層と、
第2電子輸送物質と下記化学式1で表示される金属化合物とを含む第2電子輸送層と、を備える有機発光素子:
[化学式1]

Xは、アルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属であり、
Yは、7族元素またはC1−C20有機グループであり、
aは、1ないし3の整数であり、
bは、1ないし3の整数である。
【請求項11】
第1電子輸送物質は、電子移動度が電場800〜1000(V/cm)1/2で10−8cm/V以上であることを特徴とする請求項10に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記第1電子輸送物質は、電場800〜1000(V/cm)1/2で10−4ないし10−8cm/vsの電子移動度を有することを特徴とする請求項10に記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記第1電子輸送層と前記第2電子輸送層との厚さ比は、1:1ないし2:1であることを特徴とする請求項10に記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記電子輸送物質は、
下記化学式2で表示されるビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム(Bebq)、その誘導体、8−ヒドロキシキノリン亜鉛(Znq)または(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)からなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする請求項10に記載の有機発光素子。
【化2】

【請求項15】
前記第2電子輸送層で、化学式1で表示される金属化合物の含量は、第2電子輸送層総量100重量部を基準として20ないし60重量部であることを特徴とする請求項10に記載の有機発光素子。
【請求項16】
前記化学式1で、Xは、リチウム(Li)セシウム(Cs)、ナトリウム(Na)、バリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)またはイッテルビウム(Yb)であることを特徴とする請求項10に記載の有機発光素子。
【請求項17】
前記化学式1で、Yは、F、キノレート、アセトアセテート、塩化物または臭化物であることを特徴とする請求項10に記載の有機発光素子。
【請求項18】
前記化学式1で表示される金属化合物は、
リチウムキノレート、ナトリウムキノレート、リチウムアセトアセテート、マグネシウムアセトアセテート、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化ナトリウムからなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする請求項10に記載の有機発光素子。
【請求項19】
前記素子は、第1電極、正孔輸送層、発光層、第1電子輸送層、第2電子輸送層及び第2電極を備えることを特徴とする請求項10に記載の有機発光素子。
【請求項20】
前記素子は、正孔注入層をさらに備えることを特徴とする請求項19に記載の有機発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−124138(P2009−124138A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278415(P2008−278415)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】