説明

有機発光装置の製造方法

【課題】良好な発光特性を有する有機発光装置を得るための有機発光装置の製造方法を提供する。
【解決手段】有機平坦化層が設けられた基板の上に耐エッチング保護層を形成する工程と、前記耐エッチング保護層の上に複数の電極を形成する工程と、前記複数の電極が形成された基板の上に有機化合物層を形成する工程と、前記複数の電極のうち一部の電極の上に形成された前記有機化合物層の上に、フォトリソグラフィー法を用いてレジスト層を形成する工程と、前記レジスト層に覆われていない領域の前記有機化合物層をドライエッチングにて除去する工程と、を有しており、前記複数の電極を形成する工程までの工程において、前記有機平坦化層の表面全体が、前記耐エッチング保護層及び前記電極のいずれかに覆われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多色発光の有機発光装置は、発光色がそれぞれ異なる有機発光素子を複数種組み合わせてなる発光装置である。ここで多色発光の有機発光装置を製造する際には、発光色がそれぞれ異なる複数種類の発光層を所定の領域に選択的に形成する必要がある。このように所定の色を発する発光層を所定の領域に選択的に形成するため、様々な方法が用いられているが、そのひとつに、フォトリソグラフィーを用いた発光層等のパターニング方法がある。
【0003】
特許文献1には、フォトリソグラフィーを用いて発光層を含む有機化合物層のパターニングを行う際に、有機化合物層をドライエッチングして不要となった有機化合物層を部分的に除去する方法が提案されている。
【0004】
具体的には、まず、第一画素電極及び第二画素電極が所定のパターン形状にて形成された基板の面全体に、一種類目の有機化合物層である第一有機化合物層を成膜する。次に、第一有機化合物層を設ける部分にフォトリソグラフィー法を用いて第一有機化合物層を覆うレジスト層を設け、レジスト層で覆われていない領域の第一有機化合物層をドライエッチングにて選択的に除去する。次に、二種類目の有機化合物層である第二有機化合物層を全面に成膜し、第一有機化合物層及び第二有機化合物層を設ける部分にそれぞれフォトリソグラフィー法によりレジスト層を設ける。そしてレジスト層で覆われていない領域の第二有機化合物層をドライエッチングにて選択的に除去する。最後に、レジスト剥離液を用いて、レジスト層より上に形成された層を剥離した後、パターニングされた第一有機化合物層及び第二有機化合物層の上に共通電極を形成する。以上の方法により、複数種類の有機化合物層のパターニングを行い複数種類の有機発光素子が設けられた有機発光装置が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3839276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで特許文献1にて開示されている方法に則って有機化合物層を所定のパターン形状にて加工する際に、有機発光素子を駆動するためのトランジスタ(Tr)や配線層が設けられた基板を用いる場合がある。係る場合では、画素電極等を形成する前に、Trや配線層による凹凸を緩和させ平坦化するために、Trや配線層を覆う有機平坦化層を形成する必要がある。また、必要に応じて、画素電極の膜厚に応じて生じる段差を緩和させると共に、各発光素子の発光領域を区画する目的で、有機平坦化膜上に画素電極の端部を覆う有機画素分離膜が形成される場合もある。
【0007】
有機平坦化膜や有機画素分離膜は、有機化合物層と同様に有機材料からなる部材である。ここで特許文献1にて示されている方法でパターニングを行う場合、基板の表面に有機材料からなる部材が露出する状況下においては、以下に説明する不都合が起こり得る。
【0008】
ドライエッチングを行う際には、ドライエッチングを施す領域に設けられている電極上に有機化合物層の残膜が発生しないようにするためにドライエッチングを行う時間を調整する。具体的には、有機化合物層の膜厚と有機化合物層のエッチングレートから算出される、有機化合物層の除去に必要な時間よりも長めにドライエッチングを行う。
【0009】
ここで有機平坦化層や有機画素分離膜の構成材料のエッチングレートは、有機化合物層の構成材料のエッチングレートと大体同じである。このため有機化合物層をエッチング除去されたのち、第一画素電極と第二画素電極との間や表示領域の周辺に配置された有機平坦化層や有機画素分離膜は第一有機化合物層と同様にエッチングされてしまう。その結果、エッチングに曝される領域に設けられている有機平坦化層や有機画素分離膜に凹みが生じ、第一有機化合物層と有機平坦化層との間又は第一有機化合物層と画素分離膜との間で過度の段差が生じることになる。そうすると、第二有機化合物層や共通電極を成膜する際に、この過度の段差により第二有機化合物層や共通電極の一部が途切れたり薄くなったりすることがある。そして第二有機化合物層や共通電極が途切れた部分や膜厚が薄い部分は、有機発光素子の電極間ショートを引き起こしたり、電流供給経路における抵抗となったり、有機発光装置の特性を損ねたりする原因になる。
【0010】
また特許文献1では、フォトリソグラフィーを用いて有機化合物層をパターニングする工程において、レジスト層の現像を行った後に基板を水洗する。このとき、基板の表面に有機材料からなる部材(有機平坦化層、有機画素分離膜等)が露出していると、当該部材に水が浸入して吸蔵される。これにより、脱水に時間がかかったり、発光装置の使用時に残留した水分が染み出て有機発光素子の特性を低下させたりしてしまうという問題がある。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされるものであり、その目的は、良好な発光特性を有する有機発光装置を得るための有機発光装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の有機発光装置の製造方法は、有機平坦化層が設けられた基板の上に、少なくとも発光層を含む有機化合物層と、前記有機化合物層にキャリアを供給する電極と、を備えた有機発光素子を複数有する発光装置の製造方法であって、
有機平坦化層が設けられた基板の上に耐エッチング保護層を形成する工程と、
前記耐エッチング保護層の上に複数の電極を形成する工程と、
前記複数の電極が形成された基板の上に有機化合物層を形成する工程と、
前記複数の電極のうち一部の電極の上に形成された前記有機化合物層の上に、フォトリソグラフィー法を用いてレジスト層を形成する工程と、
前記レジスト層に覆われていない領域の前記有機化合物層をドライエッチングにて除去する工程と、を有しており、
前記複数の電極を形成する工程までの工程において、前記有機平坦化層の表面全体が、前記耐エッチング保護層及び前記電極のいずれかに覆われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法はトランジスタや配線の上部に少なくとも有機平坦化膜が設けられている有機発光装置において、フォトリソグラフィー法とドライエッチングとを用いて行われるパターニングを行う際に、有機平坦化層の被エッチング領域の段差を減少せしめる。これにより、共通電極の途切れや、共通電極と画素電極との間に発生し得るリーク・ショートを減少させることが可能となる。さらに、本発明は有機平坦化層の表面を、耐エッチング保護層及び下部電極のいずれかで覆うことにより、有機化合物層をフォトリソグラフィーでパターニングする際に有機平坦化層への水分の侵入を防止することができる。この結果、水分を吸蔵しやすい有機平坦化膜に吸蔵された水分は、素子完成後には脱離するので、有機発光素子の劣化を防止することができる。
【0014】
よって本発明によれば、良好な発光特性を有する有機発光装置を得るための有機発光装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第一有機化合物層の成膜・加工工程の具体例を示す断面模式図である。
【図2】第二有機化合物層の成膜・加工工程及び共通電極の形成工程の具体例を示す断面模式図である。
【図3】本発明における耐エッチング保護層の設置態様の他の具体例を示す断面模式図である。
【図4】耐エッチング保護層を設けずに第一有機化合物層の加工を行ったときの様子を示す断面模式図である。
【図5】実施例1における有機発光装置の製造プロセスを示す断面模式図である。
【図6】実施例1における有機発光装置の製造プロセスを示す断面模式図である。
【図7】実施例1における有機発光装置の製造プロセスを示す断面模式図である。
【図8】実施例1における有機発光装置の製造プロセスを示す断面模式図である。
【図9】本発明の実施例1における有機平坦化層と耐エッチング保護層、画素電極の設置態様の具体例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、有機平坦化層が設けられた基板の上に、少なくとも発光層を含む有機化合物層と、前記有機化合物層にキャリアを供給する電極と、を備えた有機発光素子を複数有する有機発光装置の製造方法である。本発明は、例えば、基板上に、有機平坦化層と複数の第一画素と、複数の第二画素と、がそれぞれ設けられている有機発光装置の製造方法である。
【0017】
ここで第一画素は、第一下部電極と、少なくとも発光層を有する第一有機化合物層と、第一上部電極と、からなる第一有機発光素子を含んでいる。また第二画素は、第二下部電極と、少なくとも発光層を有する第二有機化合物層と、第二上部電極と、から第二有機発光素子を含んでいる。第一有機化合物層と第二有機化合物層は、互いに異なる有機化合物層であり、本発明における有機化合物層は、少なくとも発光層を含んでいる。
【0018】
本発明において、有機化合物層(第一有機化合物層、第二有機化合物層)に含まれる発光層は、一層であってもよいし複数の層からなる積層体であってもよい。また有機化合物層には、発光層以外の層が含まれていてもよく、具体的には、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層、正孔輸送層等の機能層が含まれていてもよい。
【0019】
本発明において、互いに「異なる有機化合物層」とは、有機化合物層に関する要素のうち少なくとも一つが互いに異なる有機化合物層のことをいう。具体的には、発光層の材料、組成、膜厚、発光層を形成する際の成膜方法、成膜条件、発光層以外の他の層の材料、組成、膜厚、他の層を形成する際の成膜方法、成膜条件等のうち、少なくとも一つが互いに異なる有機化合物層のことをいう。さらに本発明においては、第一上部電極及び第二上部電極が、基板上に設けられる全ての画素にわたって連続して設けられる共通電極層であってもよい。尚、本発明の製造方法において製造される有機発光装置において、画素の種類は、二種類であってもよいし三種類以上であってもよい。
【0020】
また、本発明の製造方法は、主に、共通電極側から光を取り出すトップエミッション型の有機発光装置の製造方法として利用される。ただし本発明はこれに限定されることなく、ボトムエミッション型の有機発光装置の製造方法として利用することもできる。
【0021】
本発明の有機発光装置の製造方法の第一の態様としては、下記(1−a)乃至(5−a)で示される工程を少なくとも有している。
(1−a)有機平坦化層が設けられた基板の上に耐エッチング保護層を形成する工程(耐エッチング保護層形成工程)
(2−a)耐エッチング保護層の上に複数の電極を形成する工程(下部電極形成工程)
(3−a)複数の電極が形成された基板の上に有機化合物層を形成する工程(有機化合物層形成工程)
(4−a)複数の電極のうち一部の電極の上に形成された有機化合物層の上に、フォトリソグラフィー法を用いてレジスト層を形成する工程(レジスト層形成工程)
(5−a)レジスト層に覆われていない領域の有機化合物層をドライエッチングにて除去する工程(有機化合物層の加工工程)
【0022】
ここで第一の態様においては、複数の電極を形成する工程(下部電極形成工程)までの工程において、有機平坦化層の表面全体は、耐エッチング保護層及び前記電極のいずれかに覆われている。
【0023】
また本発明の有機発光装置の製造方法の第二の態様としては、下記(1−b)乃至(5−b)で示される工程を少なくとも有している。
(1−b)有機平坦化層が設けられた基板の上に複数の電極を形成する工程(下部電極形成工程)
(2−b)複数の電極の端部を覆う有機画素分離膜を形成する工程(有機画素分離膜形成工程)
(3−b)有機画素分離膜及び平坦化層の上に耐エッチング保護層を形成する工程(耐エッチング保護層形成工程)
(4−b)複数の電極の上に有機物化合物層を形成する工程(有機化合物層形成工程)
(5−b)複数の電極のうち一部の電極の上に形成された有機化合物層の上に、フォトリソグラフィー法を用いてレジスト層を形成する工程(レジスト層形成工程)
(6−b)レジスト層に覆われていない領域の有機化合物層をドライエッチングにて除去する工程(有機化合物層の加工工程)
【0024】
ここで第二の態様においては、耐エッチング保護層を形成する工程(耐エッチング保護層形成工程)までの工程において、有機平坦化層及び画素分離膜の表面全体が、耐エッチング保護層及び電極のいずれかで覆われている。
【0025】
さらに本発明の有機発光装置の製造方法の第三の態様としては、下記(1−c)乃至(5−c)で示される工程を少なくとも有している。
(1−c)有機平坦化層が設けられた基板を準備する工程(基板準備工程)
(2−c)第一下部電極と、第二下部電極と、を形成する下部電極の形成工程(下部電極形成工程)
(3−c)第一下部電極及び第二下部電極を覆うように第一有機化合物層を形成する第一有機化合物層の形成工程(第一有機化合物層の形成工程)
(4−c)第二下部電極上に形成された第一有機化合物層をフォトリソグラフィー法とドライエッチングとにより除去する第一有機化合物層の加工工程(第一有機化合物層の加工工程)
(5−c)第一有機化合物層の加工工程の後に、第二有機化合物層を形成する第二有機化合物層の形成工程(第二有機化合物層の形成工程)
【0026】
ここで本発明の第三の態様においては、第一有機化合物層の形成工程の前に、有機平坦化層が下部電極及び耐エッチング保護層の少なくとも一方によって覆われるように耐エッチング保護層を設ける耐エッチング保護層の形成工程をさらに有している。即ち、工程(3−c)の前において耐エッチング保護層の形成工程をさらに有する。また本発明では、第一有機化合物層の加工工程において、耐エッチング保護層のエッチングレートが、第一有機化合物層のエッチングレートよりも遅い。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を適宜参照しながら説明する。尚、以下の説明に記載されていない部分又は図面において特に図示されない部分に関しては、当該技術分野の周知技術又は公知技術を適用することができる。また、以下に説明する実施形態は、あくまでも本発明の実施形態の一つに過ぎず、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0028】
図1は、第一有機化合物層の成膜・加工工程の具体例を示す断面模式図である。また図2は、第二有機化合物層の成膜・加工工程及び共通電極の形成工程の具体例を示す断面模式図である。尚、図1(a)乃至(c)及び図2(a)乃至(c)は、二種類の画素(第一画素2a、第二画素2b)を有する有機発光装置1を製造する際の一連のプロセスを示している。
【0029】
以下、図1及び図2に基づいて、本実施形態における有機発光装置の製造方法について説明する。
【0030】
(基板の準備工程)
まず画素駆動回路(図1(a)中の符号12)を有する基板10を準備する(図1(a))。具体的には、基材11上にトランジスタ等のスイッチング素子を含む画素駆動回路12や配線(不図示)を形成した後、これら画素駆動回路12や配線を覆うように有機平坦化膜13を形成する。尚、画素駆動回路12や配線(不図示)を形成する際に、適宜絶縁層14を設けてもよい。
【0031】
基材11になる基板は、透明であっても不透明であってもよい。またガラス、合成樹脂等からなる絶縁性基板又は表面に、酸化シリコン(SiO2)膜、窒化シリコン(SiN)膜、窒化酸化シリコン(SiON)等の絶縁膜を形成した導電性基板あるいはSiウェーハ等の半導体基板でもよい。
【0032】
画素駆動回路12に含まれるトランジスタを構成する半導体層は、ポリシリコンに限定されるものではなく、非晶質シリコン、微結晶シリコン等を用いてもよい。また基材11上に設けられる配線には、AlやAl合金等の電気抵抗の低い金属材料を用いることができる。
【0033】
有機平坦化層13は、絶縁材料で形成され、基板10を平坦化させる機能を有する。また有機平坦化層13は、画素駆動回路12と下部電極(第一下部電極21a、第二下部電極21b)とを電気的に接続させる接続孔等の微細な開口を開けられるようにするため、パターン精度の良い材料であることが好ましい。ここで、有機平坦化層13の構成材料として、例えば、感光性ポリイミド、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0034】
絶縁層14は、窒化ケイ素や酸化ケイ素等の絶縁材料で形成される層であるが、絶縁層14を形成する際に使用される絶縁材料は特に限定されるものではない。尚、基板10を準備する際には、例えば、基材11、画素駆動回路12、有機平坦化層13及び絶縁層14が含まれる完成した基板を購入してもよい。
【0035】
(耐エッチング保護層の形成工程)
本実施形態では、有機発光素子を構成する下部電極(第一下部電極21a、第二下部電極21b)を形成する前に、耐エッチング保護層30を形成する(図1(a))。本実施形態では、下部電極を形成する前に耐エッチング保護層30を形成し、有機平坦化層13全体を耐エッチング保護層30で覆う。そして、画素駆動回路12とのコンタクトホール等をパターニングによって形成した後に下部電極(21a、21b)を形成する。表示領域において耐エッチング保護層30を形成する態様は、図1(a)に示される態様に限定されるものではなく、有機化合物層の加工工程を行う際に、有機平坦化層13の表面がエッチングガスや水に曝されないようにすればよい。例えば、耐エッチング保護層30を互いに隣接する下部電極(21a、21b)間に設けられている有機平坦化層13を被覆するように形成し、有機平坦化層13が下部電極及び耐エッチング保護層の少なくとも一方で覆われるようにしてもよい(図3(a))。
【0036】
また後述する図6のように、表示領域内61だけではなく表示領域外66においても、有機平坦化層13を端部に至るまで耐エッチング保護層30で被覆してもよい。こうすることで、フォトリソグラフィー法を用いて有機化合物層のパターニングを行う際に、有機平坦化層13に侵入してくる水分を遮断することが可能となる。耐エッチング保護層30を有機平坦化層13よりも広い領域に形成し、有機平坦層の下に形成される無機材料膜、もしくは基板と接触させた状態で有機平坦化層13の全面を被覆する。尚、耐エッチング保護層30は、電気的接続を確保するため、上部電極と回路もしくは配線とをコンタクトさせるコンタクト部65及び外部入力配線が接続されるパッド部64上で除去しておく。
【0037】
ところで、有機平坦化層13を耐エッチング保護層30で被覆する場合、有機平坦化層13に内在する水分を、耐エッチング保護層30を形成する前に予め除去しておくことが好ましい。有機平坦化層13に水分が内在したまま耐エッチング保護層30で被覆をすると、例えば、下記(i)乃至(1v)に示される加熱プロセスにおいて耐エッチング保護層30が割れる場合がある。
(i)耐エッチング層30の成膜時に行われる加熱プロセス
(ii)有機化合物層を成膜する前における真空条件下での加熱プロセス
(iii)有機化合物層をフォトリソグラフィーによりパターニングする工程の途中で行われる加熱プロセス
(iv)有機化合物層のパターニングの後で行われる真空条件下での加熱プロセス
【0038】
このため、有機平坦化層13は、耐エッチング保護層30を成膜する前に、有機平坦化層形成後の工程において有機平坦化層13を含む基板10を加熱するプロセスでの温度条件(加熱温度)よりも高い温度で加熱をし、水分を除去しておくことが好ましい。
【0039】
例えば、有機平坦化層13の構成材料として感光性ポリイミドを用いた場合は、基板10を、200℃乃至300℃で2時間程度加熱したのちに、有機平坦化層13を覆うように耐エッチング保護層30を形成する。さらに、画素駆動回路12とのコンタクトホール(接続孔)等をパターニングによって形成した後、下部電極(21a、21b)を形成する前にも必要に応じて基板10を加熱して有機平坦化層13の脱水を行ってもよい。
【0040】
以下に、耐エッチング保護層30を形成する他の態様について、適宜図面を参照しながら説明する。
【0041】
図3は、本発明における耐エッチング保護層の設置態様の他の具体例を示す断面模式図である。図3(a)〜(d)には、表示領域における耐エッチング保護層の設置態様のみを示す。一方、表示領域外に設けられた有機平坦化膜は、いずれも後述する図6と同様にその端部まで耐エッチング保護層30で覆っておくのが好ましい。
【0042】
図3(a)の態様は、図1(a)と同様に、下部電極(21a、21b)を形成する前に耐エッチング保護層30を形成する場合の具体例の一つである。既に説明したが、本発明では、下部電極(21a、21b)を形成する前に耐エッチング保護層30を形成する場合、図3(a)に示されるように、少なくとも互いに隣接する下部電極(21a、21b)間に設けられる有機平坦化層13を被覆するように形成する。そして有機平坦化層13が少なくとも耐エッチング保護層30又は下部電極で覆われるようにする。
【0043】
図3(b)の態様は、互いに隣接する下部電極(21a、21b)間に有機画素分離膜15が設けられている場合の具体例の一つである。図3(b)のように、基板10上に、感光性ポリイミド等の有機材料からなる有機画素分離膜15が設けられている場合、耐エッチング保護層30は、有機画素分離膜15を被覆するように形成する。つまり、図3(b)の態様では、耐エッチング保護層30の形成工程は、下部電極(21a、21b)の形成工程及び有機画素分離膜15の形成工程を行った後であって、後述する第一有機化合物層の形成工程よりも前に行われる。また図3(b)の場合、有機画素分離膜15のパターニングを行い、下部電極(21a、21b)上に開口を設ける工程と、耐エッチング保護層30の形成工程と、有機画素分離膜15の開口に合わせて耐エッチング保護層30に開口を設ける工程と、を順次行う。これにより、耐エッチング保護層30は少なくとも有機画素分離膜上(有機画素分離膜15上)に形成されるため、有機平坦化膜30及び有機画素分離膜15は、少なくとも耐エッチング保護層30又は下部電極(21a、21b)で覆われる。尚、有機画素分離膜15を形成する場合は、有機平坦化膜30に替えて、表示領域外に設けられた回路や配線を有機画素分離膜15で覆う構成としてもよい。その場合は、表示領域外において、有機画素分離膜15の端部よりも外側まで耐エッチング保護層30を形成して、有機画素分離膜15をその端部に至るまで覆っておく。
【0044】
図3(c)の態様は、下部電極(21a、21b)を形成した後に耐エッチング保護層30を形成する場合の具体例の一つである。尚、図3(c)の態様は、下部電極(21a、21b)を形成した後に耐エッチング保護層30を形成することについて図3(b)の態様と共通しているが、耐エッチング保護層30を形成する前に有機画素分離膜15を形成しているか否かで異なる。また本発明では、図3(c)の態様のように、有機画素分離膜15を前もって形成しないで、下部電極(21a、21b)の端部及び互いに隣接する下部電極間に設けられる有機平坦化層13を被覆するように耐エッチング保護層30を形成してもよい。ただし、本発明においては、下部電極(21a、21b)の端部を被覆する必然性はなく、例えば、図3(d)に示されるように、下部電極間に設けられる有機平坦化層13のみを被覆するように耐エッチング保護層30を形成してもよい。
【0045】
ところで後述する第一有機化合物層の加工工程において行われるエッチングには、酸素を主成分とするエッチングガスを用いたドライエッチングを行う。耐エッチング保護層30の構成材料として、第一有機化合物層の加工工程においてエッチングされる第一有機化合物層の構成材料よりも、エッチングレートが小さい材料を用いる。尚、耐エッチング保護層30は、単一の材料で構成される層である必然性はなく、複数の材料が平面的に混合されてなる層であってもよいし、複数の層からなる積層体であってもよい。
【0046】
ところで、フォトリソグラフィーを利用して有機発光装置を作製する場合、有機平坦化層13へ水分が侵入することがある。ここでフォトリソグラフィーを行うことで侵入した水分が有機平坦化層13に残存すると、有機発光装置を作製する際に発光ムラや特性劣化、周辺輝度劣化の原因となる場合がある。
【0047】
このため、耐エッチング保護層30は、有機平坦化層13への水分の浸入を遮断する層として機能させる。具体的には、少なくともフォトリソグラフィーを行う際に有機平坦化層13が剥き出しになっている部分があると、その剥き出しになっている部分は容易に水分を吸収してしまう。そのため、本発明においては、表示領域内に設けられている有機平坦化層13は、少なくとも耐エッチング保護層30又は下部電極(21a、21b)で覆う必要がある。さらに表示領域外では、図6に示されるように、耐エッチング保護層30を有機平坦化層13よりも外側にまで形成し、有機平坦化膜13の下層のカソードコンタクト領域やパッド部に形成された無機材料膜、もしくは基板と接触させる。その結果、有機平坦化層13の全面が、耐エッチング保護層30及び下部電極(21a、21b)の少なくとも一方で覆われることになる。画素分離膜15を有する場合には、図3(b)のように画素分離膜15も耐エッチング保護層で覆ってもよい。
【0048】
ここで耐エッチング保護層30を、外部から侵入する水分を遮断する層として機能させるために、好ましくは、耐エッチング保護層30の構成材料として無機材料を用いる。無機材料として、具体的には、窒化シリコン(SiN)や酸化シリコン(SiO)等の絶縁性無機材料や、下部電極(21a、21b)上に設けられる絶縁層とAl等の金属とからなる積層体等が挙げられる。
【0049】
ただし、耐エッチング保護層30の構成材料は無機材料に限定されるものではなく、水分透過率の低い有機材料であってもよい。例えば、水分透過率の低い感光性ポリイミド等の高分子材料で有機平坦化膜13や有機画素分離膜15を形成し、その表面にNe・Ar等を用いたプラズマ処理を施して表面架橋層を形成し、この表面架橋層を耐エッチング保護層30として用いることができる。
【0050】
耐エッチング保護層30の構成材料は、上記の条件に加えて、後の工程で形成される第一有機化合物層22aの構成材料よりもエッチングレートが小さい材料を選択する。即ち、選択的に第一有機化合物層22aがエッチングされるような材料を選択する。
【0051】
(下部電極の形成工程)
本発明の有機発光装置の製造方法は、実施形態によるが、耐エッチング保護層30の形成前又は耐エッチング保護層30の形成後において基板10上に下部電極(21a、21b)を形成する(図1(a))。以下、トップエミッション型の有機発光装置を作製する場合について説明するが、本発明が適用されるのはトップエミッション型の有機発光装置に限定されるものではない。
【0052】
トップエミッション型の有機発光装置を作製する場合、下部電極(21a、21b)は、例えば、Al、Ag、Au、Pt、Cr等の光の反射率が高い金属材料やこれら金属材料を複数種組み合わせてなる合金等の光反射性材料で形成する。また、これらの金属材料を含む層の上にインジウム錫酸化物やインジウム亜鉛酸化物等の透明電極を積層してなる積層電極としてもよい。下部電極(21a、21b)は、耐エッチング保護層30と共にフォトリソグラフィーで有機化合物層をパターニングする際に有機平坦化層13への水分の侵入を遮断する。そのため、必要に応じて金属材料の膜厚を数百nmの膜厚で厚く形成して下部電極(21a、21b)とすることもできる。
【0053】
また下部電極(21a、21b)は、画素ごとに個別に設けられる電極である。ここで下部電極(21a、21b)を形成する際は、上述した電極材料からなる薄膜を成膜した後、所望の形状にパターニングすることによって下部電極(21a、21b)を形成する。尚、電極材料からなる薄膜をパターニングする際は、公知のパターン形成方法を用いることができる。
【0054】
(有機画素分離膜の形成工程)
下部電極(21a、21b)を形成した後、必要に応じて第一有機化合物層の形成工程を行う前に有機画素分離膜15を形成する工程を行ってもよい。ここで有機画素分離膜15を形成する場合、有機画素分離膜15をドライエッチングから保護するために、有機画素分離膜15を形成する工程の後に耐エッチング保護層30の形成工程を行うのが好ましい。また有機画素分離膜15の形成工程において形成される有機画素分離膜15は、第一下部電極21a及び第二下部電極21bの端部をそれぞれ被覆する部材である。また耐エッチング保護層の形成工程において形成される耐エッチング保護層30が少なくとも有機画素分離膜15上に形成されるのが好ましい。
【0055】
また有機画素分離膜15を形成する場合、有機画素分離膜15の構成材料は、有機材料であれば特に限定されるものではない。尚、有機平坦化層13の構成材料を有機画素分離膜15の構成材料として使用してもよい。
【0056】
(第一有機化合物層の形成工程)
下部電極(21a、21b)を形成した後、第一有機化合物層22aを、有機発光装置に含まれる表示領域の全面にわたって形成する(図1(b))。
【0057】
第一有機化合物層22aは、少なくとも発光層を有する単層あるいは複数の層からなる積層体である。ここで第一有機化合物層22aが複数の層からなる場合、第一有機化合物層22aには、発光層の他に、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子輸送層、電子注入層等の機能層のうちのいずれかが含まれる。
【0058】
第一有機化合物層22aの構成態様としては、例えば、(陰極/)電子輸送層/発光層/正孔輸送層/正孔注入層(/陽極)が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
また第一有機化合物層22aの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは、数十nmから数百nmである。尚、第一有機化合物層22aを含めた有機化合物層の膜厚は、例えば、光学干渉距離によって決定することができる。ここで光学干渉距離によって有機化合物層の膜厚を決める場合には、各発光色で光学干渉距離が異なるので、有機化合物層の膜厚もこの光学干渉距離に応じて各発光色で異なることとなる。
【0060】
第一有機化合物層22aに含まれる発光層の材料は、低分子系材料や高分子材料を用いることができる。また第一有機化合物層22aを構成する各層は、材料や用途に応じて真空蒸着させる方法や、スピンコート法、インクジェット法等で塗布をする方法等、公知の方法から選択して成膜することができる。
【0061】
ここで発光層の構成材料となる低分子系材料として、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリーレン、芳香族縮合多環化合物、芳香族複素環化合物、芳香族複素縮合環化合物、金属錯体化合物等及びこれらの単独オリゴ体あるいは複合オリゴ体等を使用できる。ただし本発明は、これらに限定されるものではない。
【0062】
また発光層の構成材料となる高分子系材料として、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、その他、上記低分子材料を高分子化したもの等を使用できる。ただし本発明は、これらに限定されるものではない。
【0063】
さらに第一有機化合物層22aに発光層以外の層、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層等が含まれる場合、これらの層の構成材料として、公知の正孔注入・輸送性材料を使用することができる。また、第一有機化合物層22aに発光層以外の層、例えば、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層等が含まれる場合、これらの層の構成材料として、公知の電子注入・輸送性材料を使用することができる。
【0064】
(第一有機化合物層の加工工程)
以上説明したように第一有機化合物層22aを形成した後、所定のパターニングを行い、第一有機化合物層22aを加工する(図1(b)乃至(c))。具体的には、先程の第一有機化合物層22aの形成工程で第二下部電極上21b上に形成されている第一有機化合物層22aを除去する。ここで下記に第一有機化合物層の加工工程を行う際は、下記工程(1a)乃至(1h)に沿って行うのが好ましいが、本発明においては、下記工程(1a)乃至(1h)にて説明されるプロセスに限定されるものではない。
(1a)第一有機化合物層上に、水に可溶な剥離層を形成する剥離層の形成工程
(1b)剥離層上に、無機材料からなる保護層を形成する保護層の形成工程
(1c)保護層上に、レジスト材料を成膜するレジスト層の形成工程
(1d)レジスト層をパターニングするレジスト層の加工工程
(1e)少なくとも第二下部電極上に設けられる保護層と、剥離層と、第一有機化合物層と、をドライエッチングにより除去する工程
(1f)少なくとも第二下部電極上に設けられる保護層をドライエッチングにより除去する工程
(1g)少なくとも第二下部電極上に設けられる剥離層をドライエッチングにより除去する工程
(1h)少なくとも第二下部電極上に設けられる第一有機化合物層をドライエッチングにより除去する工程
【0065】
ここで第一有機化合物層22aの加工(パターニング)を行う際には、フォトリソグラフィー工程とドライエッチング工程とを弊用して行う。
【0066】
まずフォトリソグラフィー工程を行う際には、Mirror Projection Mask Aliner(MPA)やステッパー等の露光装置等公知の工程を用いることができる。
【0067】
ここで第一有機化合物層22aのパターニングを行うにあたり、第一有機化合物層22aがレジスト材料を含む溶液に対して溶解性を示さない場合は、第一有機化合物層22a上にレジスト材料を含む溶液を直接塗布してパターニングを行ってもよい。
【0068】
一方、第一有機化合物層22aがレジスト材料を含む溶液に対して溶解性を示す場合は、第一有機化合物層22a上にレジスト材料を含む溶液を塗布する前に第一有機化合物層22aを保護する層を設ける。例えば、図1(b)に示されるように、第一有機化合物層22a上に、剥離層31と、耐レジスト保護層32と、を順次設けて第一有機化合物層22aを、レジスト材料を含む溶液から保護する。具体的には、第一有機化合物層22aを保護する保護層を、有機化合物層側(第一有機化合物層22a側)から、水溶性高分子材料からなる層(剥離層31)と無機材料からなる層(耐レジスト保護層32)とが積層された層として形成する。尚、剥離層31は、第一有機化合物層22aの加工が終わった後で保護層32を効果的に除去するために設けられる層である。
【0069】
剥離層31の構成材料は、第一有機化合物層22aの構成材料に対して特定の溶媒に選択的に溶解する材料である。言い換えると、剥離層31を除去する際に用いる溶媒に対して、第一有機化合物層22aはほとんど溶解しない。ここで剥離層31の構成材料として、例えば、水溶性高分子材料を用いることができる。また剥離層31の構成材料として使用される水溶性高分子材料の具体例として、ポリビニルアルコール(PVA)やポリアクリル酸系ポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルピロリドン(PVP)等公知の材料を用いることができる。
【0070】
保護層32の構成材料として無機材料が挙げられる。また保護層32の構成材料となり得る無機材料のうち、レジスト材料を用いたフォトリソグラフィー工程のようなウエットな工程から剥離層31や第一有機化合物層22aが保護できる材料が好ましい。これを満たす材料として、例えば、酸化シリコン(SiO2)膜や窒化シリコン(SiN)膜、窒化酸化シリコン(SiON)等の公知の無機材料を用いることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、保護層32は、塗布法や印刷法等の公知の方法を用いて成膜・形成することができる。
【0071】
保護層32を形成した後、保護層32上にレジスト材料を含む溶液を塗布してレジスト層33を形成する。そして第一有機化合物層22aを形成する領域、即ち、第一画素が設けられている領域に形成されているレジスト層33が残存するように、露光・現像を行った後、エッチングガス40を用いたドライエッチングによるパターニングが行われる(図1(c))。
【0072】
ここでドライエッチングによるパターニングを行う際には、図1(c)のように残存しているレジスト層33をマスクとして、第二下部電極21b上に設けられている保護層32と、剥離層31と、第一有機化合物層22aと、をこの順で除去する。
【0073】
またドライエッチングを行う際には、例えば、化学的なエッチングによって行われる方法、物理的なエッチングによって行われる方法等が利用される。ここで化学的エッチングとは、基板上に成膜された材料に対する酸素やCF4のようなフッ素系ガス等のエッチングガスの化学反応性を利用してエッチングを行う方法である。また物理的エッチングとは、アルゴンガス等を用いて、ガス分子を基板上に成膜された材料に衝突させることによって物理的にエッチングする方法である。
【0074】
本発明においては、第一有機化合物層22aをエッチングする際に、エッチングガスを酸素ガスとする化学的エッチングを行うことが好ましい。ただし、耐エッチング保護層30とのエッチングの選択性を向上させるために、必要に応じてエッチングガスに酸素以外のガス、例えば、アルゴンやフッ素系ガス等を混ぜてもよい。
【0075】
尚、第一有機化合物層22aをエッチングする際には、第二下部電極21b上の第一有機化合物層22aを完全に除去する必要がある。しかし、第一有機化合物層22aの膜厚ばらつきや、第一有機化合物層22aの加工におけるエッチングばらつきに起因して第二下部電極21b上に第一有機化合物層22aの残膜が生じることがある。ここで第二下部電極21b上に第一有機化合物層22aの残膜が存在すると、第二下部電極21bから電荷を注入する際に注入不良の原因になるし、また第二有機化合物層22bを形成する際に、発光ムラの原因にもなる。
【0076】
このため、ドライエッチングを利用して第一有機化合物層22aを行う際に、第一有機化合物層22aのエッチング時間は、成膜された第一有機化合物層22aの膜厚とエッチングレートとから計算されるエッチング時間よりも十分に長く見積もる必要がある。具体的には、第一有機化合物層22aの膜厚に対して10%乃至30%の膜厚分までオーバーエッチングする程度の時間を見積もるのが好ましい。
【0077】
ここで有機平坦化層13上又は有機画素分離膜15上に耐エッチング保護層30を設けたときの効果について、適宜図面を参照しながら説明する。
【0078】
図4は、耐エッチング保護層30を設けずに第一有機化合物層の加工を行ったときの様子を示す断面模式図である。尚、図4は、図1乃至図2にて示されている実施形態に対する比較形態でもある。
【0079】
図4(a)のように、基板10を構成する有機平坦化層13上に耐エッチング保護層30を設けなかった場合において、図1(c)と同様にドライエッチングを行うと、まず被エッチング領域に設けられている有機化合物層22aがエッチングされる。ただし、上述したようにオーバーエッチングを行うと、被エッチング領域に設けられている有機平坦化層13もエッチングされることになる。結果として、図4(b)のように、エッチングによって有機平坦化層13に凹み13aが生じ、この凹み13aによって有機平坦化層13の過度の段差が生じてしまう。その結果、図4(c)に示されるように共通電極(上部電極23)まで形成すると、当該過度の段差が生じている部分において第二有機化合物層22bや共通電極が途切れたり、膜厚が薄くなったりする現象が起こる。ここで第二有機化合物層22bや共通電極が途切れたり、膜厚が薄くなったりすると、電流の供給不良や、リーク、ショート等といった不良の原因になる。
【0080】
これに対して、本発明では、有機平坦化層13上又は有機画素分離膜15上に耐エッチング保護層30を設けている。これにより、第一有機化合物層22aのドライエッチングの際に、互いに隣り合う下部電極(21a、21b)間に設けられている有機平坦化層13や有機画素分離膜15がエッチングされることがなくなる。また耐エッチング保護層30のエッチングレートは、第一有機化合物層22aよりも小さいので、仮に、オーバーエッチングによって耐エッチング保護層30の一部がエッチングされたとしてもこのエッチングによって生じる段差はごく小さいものになる。このため後の工程で第二有機化合物層22bや共通電極となる上部電極23を形成した際に電流が供給しにくくなったり、リーク、ショート等といった不良が生じたりすることがなくなる。
【0081】
(第二有機化合物層の形成工程)
以上のように、フォトリソグラフィー工程とドライエッチング工程とを併用して第一有機化合物層22aが除去された領域に、第二有機化合物層22bを成膜する(図2(a))。これにより第一下部電極21a上及び第二下部電極21b上には、それぞれ異なる発光色を出力する有機化合物層(22a、22b)が形成されるため、有機化合物層のパターニングが可能となる。尚、第二有機化合物層22bを成膜する際は、図2(a)に示されるように、第一有機化合物層22a上に第二有機化合物層22bを形成してもよい。また第二有機化合物層の形成工程を行う際に、好ましくは、第一有機化合物層の加工工程を上記(1a)乃至(1h)の工程で行った上で、下記工程(2a)乃至(2b)を行う。
(2a)第二下部電極上に第二有機化合物層を形成する工程
(2b)少なくとも前記第一下部電極上に形成されている保護層を、前記保護層上に形成された第二有機化合物層と共に、剥離層が可溶な溶媒に浸漬させることで除去する工程
【0082】
尚、作製する有機発光装置に含まれる画素が三種類以上ある場合は、画素の種類に合わせて有機化合物層の加工工程と他の有機化合物層の形成工程とを適宜追加する。ここで有機化合物層の加工工程については、基本的には、上述した第一有機化合物層の加工工程と同様である。また、他の有機化合物層の形成工程については、基本的には、上述した第二有機化合物層の加工工程と同様である。このように有機化合物層の加工工程と他の有機化合物層の形成工程とを繰り返すことで所望の発光色における有機化合物層のパターニングが可能となる。例えば、画素の発光色が青色、緑色及び赤色の3種類にすることでフルカラーの有機発光装置を作製することができる。
【0083】
(保護層・剥離層の除去工程)
次に、剥離層31が選択的に溶解する溶液に基板10を浸漬し、剥離層31を溶解させることで保護層32をリフトオフする(図2(b))。尚、剥離層31を溶解する際に、超音波や二流体等を用いて溶液の侵入や保護層32の剥離を促進させてもよい。このように保護層32及び剥離層31を除去することで、図2(b)のように有機化合物層をパターニングすることができる。
【0084】
尚、保護層32及び剥離層31を除去する方法としては、上述したリフトオフによる除去方法に限定されるものではない。例えば、有機化合物層の加工工程が一通り終了した段階で、保護層32及び剥離層31を順次ドライエッチングして除去する方法も採用することができる。
【0085】
以上説明した実施の形態では、有機化合物層のパターニングにおいて、フォトリソグラフィーを利用した工程、具体的には、水溶性高分子材料の形成工程やリフトオフ工程を行う際に基板は水に晒される。しかし、本発明では下部電極(21a、21b)及び耐エッチング保護層30のいずれかで有機平坦化層13を覆っているため、水分が有機平坦化層13へ侵入するのを防止することができる。
【0086】
(共通層・共通電極の形成工程)
以上に説明した工程により有機化合物層のパターニングが一通り終了した後、共通電極である上部電極23を形成する(図2(c))。共通電極(上部電極23)は、有機化合物層(22a、22b)から出力される光の取り出し方向を考慮して透明電極又は反射電極とする。上部電極23が透明電極の場合、構成材料として、インジウム錫酸化物やインジウム亜鉛酸化物のような透明導電材料を用いることができる。一方、上部電極23が反射電極の場合、Ag、Al等の光の反射率の高い金属単体、これら金属単体を複数種類含む合金を用いることができる。共通電極である上部電極23の形成方法としては、一般的に、蒸着法やスパッタリング法が用いられる。
【0087】
尚、上部電極23を形成する前に、電子注入層等の共通層を形成してもよい。電子注入層を形成する場合、電子注入層は、例えば、下記(a)又は(b)に示される方法で形成される。
(a)アルカリ金属、アルカリ土類金属あるいはこれらの化合物を0.5nm〜5nm程度の単層薄膜として成膜する方法
(b)アルカリ金属、アルカリ土類金属あるいはこれらの化合物と有機材料(電子注入材料となる有機材料)とを共蒸着する方法
【0088】
尚、電子注入層の構成材料として用いられるアルカリ金属、アルカリ土類金属あるいはこれらの化合物は、上部電極23に直接的に含ませてもよい。係る場合上部電極23を形成する際には、例えば、Ag等のカソード材料とMg等の低仕事関数の金属材料とを共蒸着して上部電極23となる電極薄膜を形成する等の方法が採用される。
【0089】
(封止工程)
上部電極23まで形成した後、大気中の酸素や水分が有機発光装置内に浸入するのを防ぐために有機発光装置自体を封止する。これにより有機発光装置は完成する。本発明において、封止の具体的な方法に関しては特に制限されず、例えば、吸湿剤とガラスキャップとを用いて封止してもよいが、防湿層に窒化ケイ素(SiN)膜等を用いた場合には、防湿層を1μm乃至10μm程度まで厚膜化したものを封止膜としてもよい。
【0090】
(有機発光装置)
本発明の製造方法で製造される有機発光装置1は、例えば、図2(c)に示される二種類の画素、即ち、第一画素2aと、第二画素2bと、を有する有機発光装置である。また第一画素2aは、第一下部電極21aと、少なくとも発光層を有する第一有機化合物層22aと、第一上部電極と、からなる。一方、第二画素2bは、第二下部電極21bと、少なくとも発光層を有する第二有機化合物層22bと、第二上部電極と、からなる。ここで第一上部電極及び第二上部電極は、基板上に設けられる全ての画素に共通する共通電極層、即ち、図2(c)に示される上部電極23の一部である。
【0091】
尚、図2(c)の有機発光装置1において、第一画素2aの平面領域とは、コンタクトホール16aを含む第一下部電極21aの全面をいうものである。また図2(c)の有機発光装置1において、第二画素2bの平面領域とは、コンタクトホール16bを含む第二下部電極21bの全面をいうものである。一方、図3(b)や図3(c)のように下部電極(21a、21b)の上方に耐エッチング保護層30が設けられている場合では、各画素(2a、2b)の平面領域は以下のように定義される。即ち、各画素(2a、2b)に含まれる下部電極(21a、21b)が設けられている平面領域のうち耐エッチング保護層30に覆われていない領域が画素の平面領域となる。
【0092】
ところで図2(c)にて示されている有機発光装置1は、第一画素2aと第二画素2bとがそれぞれ基板10上に1個ずつ設けられている。ただし本発明の製造方法で製造される有機発光装置は、基板上に、複数種類の画素、少なくとも第一画素と第二画素とがそれぞれ複数設けられている。また本発明においては、画素の種類に関して特に限定されない。
【実施例】
【0093】
以下、実施例により本発明について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0094】
[実施例1]
以下に説明するプロセスにより、三種類の画素を有する有機発光装置を作製した。図5(図5A乃至図5D)は、本実施例における有機発光装置の製造プロセスを示す断面模式図である。
【0095】
(1)基板
ガラス基板(基材11)上に、トランジスタと配線とからなる画素駆動回路12と、有機平坦化膜13とが順次設けられている基板10を用いて有機発光装置を作製した。尚、本実施例で使用された基板10は、図5(a)に示されるように、基板10内に、基材11、画素駆動回路12及び有機平坦化層13の他に、絶縁層14が含まれている
【0096】
(2)耐エッチング保護層の形成工程
まずトランジスタと配線とからなる画素駆動回路12が順次設けられているガラス基板に、感光性ポリイミドを成膜して有機平坦化膜13を形成した。次に、この基板10を、250℃で2時間真空加熱をした。次に、有機平坦化層13上に、有機平坦化層13の全体を覆うように、SiNを成膜して耐エッチング保護層30を形成した。このとき耐エッチング保護層の膜厚を1000nmとし、SiNの成膜温度を100℃とした。
【0097】
次に、フォトリソプロセスを利用して、耐エッチング保護層30及び有機平坦化層13の所定の領域にコンタクトホール16を形成した。尚、このコンタクトホール16は、画素駆動回路12と下部電極(21a、21b、21c)とを電気接続するために設けられる。
【0098】
(3)下部電極の形成工程
コンタクトホール16を形成した後、1×10-3Paよりも低圧である高真空環境下において、基板10を150℃で30分間真空加熱して、コンタクトホール16を形成した際に生じた水分を除去した。次に、耐エッチング保護層30上に、Agとインジウム亜鉛酸化物とをこの順に成膜して、Ag膜とインジウム亜鉛酸化物とからなる積層電極を形成した。尚、このときAg膜の膜厚を100nmとし、インジウム亜鉛酸化物膜の膜厚を20nmとした。次に、フォトリソプロセスを利用して積層電極のパターニングを行うことにより、所望の領域に第一下部電極21aと第二下部電極21bと第三下部電極21cとをそれぞれ形成した(図5(a))。尚、第一下部電極21a、第二下部電極21b及び第三下部電極21cは、陽極(アノード)として機能する。また、このとき有機平坦化層13は、耐エッチング保護層30と、第一下部電極21aと、第二下部電極21bと、第三下部電極21cと、によってすべて被覆された状態となっていた。
【0099】
次に、下部電極(第一下部電極21a、第二下部電極21b、第三下部電極21c)が形成されている基板10を真空成膜装置に導入した。次に、真空成膜装置内で120℃の真空ベークを5分行うことで脱水処理を行ったのち、真空装置内部に乾燥空気を導入してUVオゾン処理を10分行うことにより、下部電極表面の清浄を行った。
【0100】
(4)第一有機化合物層の形成工程
基板10の清浄が終わった後、表示領域の全体にわたって正孔輸送層と、赤色発光層と、電子輸送層とがこの順で積層されている第一有機化合物層22aを形成した(図5(b))。このとき第一有機化合層22aの総膜厚は250nmであった。
【0101】
(5)剥離層の形成工程
次に、ポリビニルピロリドン(PVP)を純水に対して5重量%となるように溶解させてPVP水溶液を調製した。
【0102】
次に、スピンコート法により、第一有機化合物層22a上に、先程調製したPVP水溶液を全面塗布してPVP薄膜を成膜した。次に、このPVP薄膜を100℃で10分間加熱処理することにより剥離層31を形成した(図5(c))。このとき剥離層31の膜厚をおおよそ0.5μmとなるようにした。
【0103】
(6)保護層の形成工程
次に、剥離層31まで形成した基板10をCVD成膜装置内に導入した後、窒化ケイ素(SiN)を成膜し、保護層32を形成した(図5(d))。このとき保護層32の膜厚を2μmとした。
【0104】
(7)レジスト層の形成工程
次に、スピンコート法により、保護層32上に、レジスト材料を含む溶液を塗布した後、120℃で10分間加熱することでレジスト層33を形成した(図5(e))。このときレジスト層33の膜厚は1μmであった。
【0105】
(8)露光・現像工程
次に、MPA(露光装置)に基板をセットし、所定の遮光マスクを用いて、所望の下部電極上の所定の領域にレジストが残るように露光を行った。続いて、現像液(東京応化製、商品名:NMD−3)を用いて現像を行った後、流水にて水洗することで、レジストを残す領域以外に設けられているレジストを除去した。
【0106】
(9)第一有機化合物層の加工工程
次に、基板10をドライエッチング装置に投入した後、レジスト層33が除去された領域に設けられている保護層32を、CF4プラズマを用いたエッチング(ドライエッチング)により除去した。続いて、レジスト層33が除去された領域に設けられている剥離層31及び第一有機化合物層22aを、酸素プラズマを用いたエッチングにより順次除去した(図5(f))。尚、エッチングを行う際に、剥離層31や第一有機化合物層22aの膜厚及びエッチングレートから理論的に算出されるエッチング時間に対して20%増となる時間を実際のエッチング時間とした。また実際のエッチング時間を計算する際には、剥離層31及び第一有機化合物層22aの膜厚を、それぞれ0.5μm、250nmとした上でエッチング時間を計算した。
【0107】
ここで、エッチングによる第一有機化合物層22aの加工を行った後のエッチング端面の段差は、剥離層31と第一有機化合物層22aとの膜厚の合計となっていた。このため、第一有機化合物層22aの加工工程において耐エッチング保護層30はほとんどエッチングされていないことがわかった。
【0108】
(10)第二有機化合物層の形成工程
次に、第一有機化合物層の加工が終わった後、所望のパターンにて形成された第一有機化合物層22aを有する基板10を真空成膜装置に導入した。次に、少なくとも第二下部電極21b上に、正孔注入層と、正孔輸送層と、緑色発光層と、電子輸送層と、がこの順で積層されている第二有機化合物層22bを形成した(図5(g))。このとき第二有機化合層22bの総膜厚は200nmであった。
【0109】
(11)第二有機化合物層の加工工程
次に、基板10を、純水を入れたガラス容器中に浸した。次に、超音波振動器を用いてPVP薄膜を溶解させて保護層32(SiN膜)を剥離させると共に、保護層32上に形成されている第二有機化合物層22bを剥離層31及び保護層32と共に剥離、除去させた(図5(h))。
【0110】
次に、第一有機化合物層22aの加工工程と同様の方法で、剥離層31(PVP)と保護層32(SiN膜)とを順次成膜した(図5(i))。次にフォトリソグラフィーとドライエッチングとを用いて、第三下部電極21c上に形成されている保護層32と、剥離層31と、第二有機化合物層22bと、を除去した(図5(j))。
【0111】
このとき、ドライエッチングを行う時間は、第一有機化合物層22aを加工する場合と同様に、剥離層31や第二有機化合物層22bの膜厚及びエッチングレートから理論的に算出されるエッチング時間に対して20%増となる時間を実際のエッチング時間とした。 ここで、エッチングによる第二有機化合物層22bの加工を行った後のエッチング端面の段差は、剥離層31と第二有機化合物層22bとの膜厚の合計となっていた。このため、第二有機化合物層22bの加工工程において耐エッチング保護層30はほとんどエッチングされていないことがわかった。
【0112】
(12)第三有機化合物層の形成工程
次に、第二有機化合物層の加工が終わった後、所望のパターンにて形成された第二有機化合物層22bを有する基板10を真空成膜装置に導入した。次に、少なくとも第三下部電極(不図示)上に、正孔注入層と、正孔輸送層と、青色発光層と、電子輸送層と、がこの順で積層されている第三有機化合物層22cを形成した(図5(k))。このとき第三有機化合層の総膜厚は140nmであった。
【0113】
(13)第三有機化合物層の加工工程
次に、基板10を、純水を入れたガラス容器中に浸して、超音波振動器を用いてPVP薄膜を溶解させて保護層32(SiN膜)を剥離させると共に、保護層32上に形成されている第三有機化合物層22cを剥離層31及び保護層32と共に剥離、除去させた。これにより、第一有機化合物層22a、第二有機化合物層22b及び第三有機化合物層の表面をそれぞれ露出させた(図5(l))。
【0114】
(14)共通層の形成工程
次に、三種類の有機化合物層が設けられている基板10を真空中に導入し、100℃で30分加熱処理を行い、十分に放熱させた後、電子輸送層(不図示)と電子注入層(不図示)とを順次成膜した。
【0115】
(15)上部電極の形成工程
次に、スパッタリング法により、電子注入層上にAgを成膜し上部電極23を形成した(図5(m))。このとき上部電極23の膜厚を12nmとした。
【0116】
(16)封止工程
最後に、CVD成膜により、基板10上にSiN膜を成膜し有機発光装置を封止した。このときSiN膜の膜厚は6μmであった。
【0117】
以上により有機発光装置を得た。
【0118】
(17)有機発光装置の評価
得られた有機発光装置について、直流電流を印加し発光させたところ、面内で均一な発光特性が確認された。
【0119】
[実施例2]
実施例1において、図1(a)に示される基板の代わりに図3(b)に示される基板を用いた他は、実施例1と同様の方法により有機発光装置を作製した。以下に、本実施例について、実施例1と異なる事項について説明する。
【0120】
(下部電極の作製工程)
まず実施例1(1)にて説明した基板10と同様の基板を用意した。次に、有機平坦化膜上に第一下部電極21a、第二下部電極21b及び第三下部電極(不図示)を、実施例1(3)と同様の方法により所望のパターンにより形成した。
【0121】
(有機画素分離膜の作製工程)
次に、感光性ポリイミドを含んだ溶液を塗布して塗膜を乾燥させることで感光性ポリイミド膜を形成した。このとき感光性ポリイミド膜の膜厚は2μmであった。次に、露光・現像を行うことにより、各下部電極上に所望の大きさの開口が設けられている有機画素分離膜15を形成した。
【0122】
(耐エッチング保護層の形成工程)
有機画素分離膜付基板を作製した後、この有機画素分離膜付基板を、250℃で2時間真空ベークした。次に、この有機画素分離膜付基板上に、有機画素分離膜及び有機平坦化層を全て覆うように酸化シリコン(SiO2)を成膜し、SiO2膜を形成した。このときSiO2膜の膜厚は100nmであった。次に、このSiO2膜を有機画素分離膜の形状に合わせてパターン形成することにより、耐エッチング保護層30を有機画素分離膜が設けられている領域に形成した。尚、本実施例での有機化合物層の加工工程において、実施例1と同じ条件でエッチングを行ったときに、本実施例にて形成した耐エッチング保護層30はエッチングされなかった。
【0123】
(有機発光装置の評価)
得られた有機発光装置について、実施例1と同様に直流電流を印加し発光させたところ、面内で均一な発光特性が確認された。また、非発光画素や発光画素の周辺より輝度が劣化しはじめる画素は確認されなかった。
【0124】
[比較例1]
実施例1において、図1(a)に示される基板の代わりに図4(a)に示される基板を用いた他は、実施例1と同様の方法により有機発光装置を作製した。即ち、本比較例は、実施例1(2)の耐エッチング保護層の形成工程を省略したこと以外は、実施例1と同様の方法により有機発光装置を作製した。
【0125】
尚、本比較例での有機化合物層の加工工程において、実施例1と同じ条件でエッチングを行ったときに、基板10に含まれる有機平坦化層13の一部、具体的には、有機化合物層の加工領域にある有機平坦化層13がエッチングされていた。ここでエッチングによってエッチング端面に生じた段差は、第一有機化合物層22aをエッチングした時点で160μm、第二有機化合物層22bをエッチングした時点で320nmであった。
【0126】
(有機発光装置の評価)
得られた有機発光装置について、実施例1と同様に直流電流を印加し発光させたところ、ところどころ非発光画素の存在と、発光画素の周辺より輝度が劣化しはじめていることを確認した。
【0127】
また本比較例の有機発光装置に存在する非発光画素の断面をSEMにて観察したところ、図4(c)のように有機平坦化膜がエッチングされた部分で段差が生じ、この段差が生じている部分で共通電極が途切れしている箇所が存在した。また、下部電極と上部電極とが接触し、ショートしている箇所も存在していることも確認された。
【符号の説明】
【0128】
1:有機発光装置、2a:第一画素、2b:第二画素、10:基板、11:基材、12:画素駆動回路、13:有機平坦化膜、14:絶縁層、15:有機画素分離膜、21a:第一下部電極、21b:第二下部電極、22a:第一有機化合物層、22b:第二有機化合物層、23:上部電極、30:耐エッチング保護層、31:剥離層、32:保護層、33:レジスト層、40:エッチングガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機平坦化層が設けられた基板の上に、少なくとも発光層を含む有機化合物層と、前記有機化合物層にキャリアを供給する電極と、を備えた有機発光素子を複数有する発光装置の製造方法であって、
有機平坦化層が設けられた基板の上に耐エッチング保護層を形成する工程と、
前記耐エッチング保護層の上に複数の電極を形成する工程と、
前記複数の電極が形成された基板の上に有機化合物層を形成する工程と、
前記複数の電極のうち一部の電極の上に形成された前記有機化合物層の上に、フォトリソグラフィー法を用いてレジスト層を形成する工程と、
前記レジスト層に覆われていない領域の前記有機化合物層をドライエッチングにて除去する工程と、を有しており、
前記複数の電極を形成する工程までの工程において、前記有機平坦化層の表面全体が、前記耐エッチング保護層及び前記電極のいずれかに覆われることを特徴とする、有機発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記有機化合物層をドライエッチングにて除去する工程において、前記耐エッチング保護層の構成材料のエッチングレートが、前記有機化合物層の構成材料のエッチングレートよりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記耐エッチング保護層は、絶縁性無機材料からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁性無機材料が、窒化シリコン又は酸化シリコンであることを特徴とする、請求項3に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記耐エッチング保護層を形成する工程を行う前に、前記有機平坦化層の脱水処理工程を行うことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記耐エッチング保護層を形成する工程の後、前記複数の電極を形成する工程の前に、前記有機平坦化膜及び前記耐エッチング保護層にコンタクトホールを形成する工程を有し、
前記コンタクトホールを形成する工程の後、前記複数の電極を形成する工程の前に、前記有機平坦化膜の脱水処理工程を行うことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記フォトリソグラフィー法を用いてレジスト層を形成する工程が、
前記有機化合物層の上に保護層を形成する工程と、
前記保護層の上にレジスト層を形成する工程と、を含み、
前記有機化合物層をドライエッチングにて除去する工程が、
前記レジスト層が設けられていない領域の前記保護層を除去する工程を含むことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記保護層が、前記有機化合物層側から、水溶性高分子材料からなる層と無機材料からなる層とが積層された層であることを特徴とする、請求項7に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項9】
有機平坦化層が設けられた基板の上に、少なくとも発光層を含む有機化合物層と、前記有機化合物層にキャリアを供給する電極と、を備えた有機発光素子を複数有する発光装置の製造方法であって、
有機平坦化層が設けられた基板の上に複数の電極を形成する工程と、
前記複数の電極の端部を覆う有機画素分離膜を形成する工程と
前記有機画素分離膜及び前記平坦化層の上に耐エッチング保護層を形成する工程と、
前記複数の電極の上に有機物化合物層を形成する工程と、
前記複数の電極のうち一部の電極の上に形成された前記有機化合物層の上に、フォトリソグラフィー法を用いてレジスト層を形成する工程と、
前記レジスト層に覆われていない領域の前記有機化合物層をドライエッチングにて除去する工程と、を有しており、
前記耐エッチング保護層を形成する工程までの工程において、前記有機平坦化層及び画素分離膜の表面全体が、前記耐エッチング保護層及び前記電極のいずれかで覆われることを特徴とする、有機発光装置の製造方法。
【請求項10】
前記有機化合物層をドライエッチングにて除去する工程において、前記耐エッチング保護層の構成材料のエッチングレートが、前記有機化合物層の構成材料のエッチングレートよりも小さいことを特徴とする、請求項9に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記耐エッチング保護層は、絶縁性無機材料からなることを特徴とする、請求項9又は10に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項12】
前記絶縁性無機材料が、窒化シリコン又は酸化シリコンであることを特徴とする、請求項11に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項13】
有機平坦化層を有する基板上に、複数の第一画素と、複数の第二画素と、がそれぞれ設けられ、
前記第一画素が、第一下部電極と、少なくとも発光層を有する第一有機化合物層と、第一上部電極と、を含み、
前記第二画素が、第二下部電極と、少なくとも発光層を有する第二有機化合物層と、第二上部電極と、を含み、
前記第一上部電極及び前記第二上部電極が、前記基板上に設けられる全ての画素に共通する共通電極層である有機発光装置の製造方法であって、
有機平坦化層が設けられた基板を準備する工程と、
第一下部電極と、第二下部電極と、を形成する下部電極の形成工程と、
前記第一下部電極及び前記第二下部電極を覆うように第一有機化合物層を形成する第一有機化合物層の形成工程と、
前記第二下部電極上に形成された前記第一有機化合物層をフォトリソグラフィー法とドライエッチングにより除去する第一有機化合物層の加工工程と、
前記第一有機化合物層の加工工程の後に、第二有機化合物層を形成する第二有機化合物層の形成工程と、を少なくとも有し、
前記第一有機化合物層の形成工程の前に、前記有機平坦化層が下部電極及び耐エッチング保護層の少なくとも一方によって覆われるように耐エッチング保護層を設ける耐エッチング保護層の形成工程をさらに有し、
前記第一有機化合物層の加工工程において、前記耐エッチング保護層のエッチングレートが、前記第一有機化合物層のエッチングレートよりも遅いことを特徴とする、有機発光装置の製造方法。
【請求項14】
前記下部電極の形成工程と前記第一有機化合物層の形成工程との間に、有機画素分離膜の形成工程と、前記耐エッチング保護層の形成工程と、をこの順に有し、
前記有機画素分離膜の形成工程において形成される有機画素分離膜が、前記第一下部電極及び第二下部電極の端部をそれぞれ被覆し、
前記耐エッチング保護層の形成工程において形成される耐エッチング保護層が少なくとも前記有機画素分離膜上に、前記有機画素分離膜と前記有機平坦化層を覆うように形成される特徴とする、請求項13に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項15】
前記下部電極の形成工程と第一有機化合物層の形成工程との間に前記耐エッチング保護層の形成工程を有し、
前記耐エッチング保護層の形成工程において、前記耐エッチング保護層が前記第一下部電極及び第二下部電極の端部をそれぞれ被覆することを特徴とする、請求項13に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項16】
前記下部電極の形成工程と第一有機化合物層の形成工程との間に前記耐エッチング保護層の形成工程を有し、
前記耐エッチング保護層の形成工程において、前記耐エッチング保護層が前記第一下部電極と第二下部電極との間に形成されることを特徴とする、請求項13に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項17】
前記耐エッチング保護層が、無機材料からなる層であることを特徴とする、請求項13乃至16のいずれか一項に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項18】
前記第一有機化合物層の加工工程が、
前記第一有機化合物層上に、純水に可溶な剥離層を形成する剥離層の形成工程と、
前記剥離層上に、無機材料からなる保護層を形成する保護層の形成工程と、
前記保護層上に、レジスト材料を成膜するレジスト層の形成工程と、
前記レジスト層をパターニングするレジスト層の加工工程と、
少なくとも前記第二下部電極上に設けられる保護層と、剥離層と、第一有機化合物層と、をドライエッチングにより除去する工程と、
少なくとも前記第二下部電極上に設けられる保護層をドライエッチングにより除去する工程と、
少なくとも前記第二下部電極上に設けられる剥離層をドライエッチングにより除去する工程と、
少なくとも前記第二下部電極上に設けられる第一有機化合物層をドライエッチングにより除去する工程と、を含み、
前記第二有機化合物層の形成工程が、
前記第二下部電極上に第二有機化合物層を形成する工程と、
少なくとも前記第一下部電極上に形成されている保護層を、前記保護層上に形成された第二有機化合物層と共に、剥離層が可溶な溶媒に浸漬させることで除去する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項13乃至17のいずれか一項に記載の有機発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−84578(P2013−84578A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−191771(P2012−191771)
【出願日】平成24年8月31日(2012.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】