説明

有機繊維を有する透明複合材料

【課題】窓ガラス等の透明ガラス代替として、広い温度範囲で光学歪が少なく透明性が高く、かつ衝撃や機械性能の向上した複合部品を提供する。
【解決手段】複合物品は、実質的に透明な基材と、前記基材中に埋設された少なくとも1つの実質的に透明で、長尺な有機繊維とから複合される。基材と有機繊維とは、対象波長域内において実質的に等しい屈折率を有しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、複合材料に関し、より詳細には、光学的に透明な補強複合物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスは、その優れた光学品質によりさまざまな用途において透明材として広く用いられている。例えば、ガラスは、建物用の窓ガラス材料または建築材料として広く用いられている。ガラスはまた、さまざまな輸送手段用途において透明材として広く用いられている。あいにく、ガラスは、比較的密度の高い材料であり、また、比較的脆いので、物体による衝撃時の飛散防止に十分な強度をガラスに与えるためには、比較的厚くする必要がある。
【0003】
ガラスに付随する重量におけるマイナス面を回避しようとして、透明材は、ポリマー材料からも作製されることがある。例えば、透明材は、ガラスより密度が低く、かつ、適切な光学特性を有するアクリル樹脂(例えば、プレキシグラス(TM))といった透明ポリマーから形成してもよい。あいにく、アクリル樹脂は、強度特性が比較的低いので、数多くの高い耐衝撃性を要する用途には適さない。
【0004】
ガラスに付随する重量におけるマイナス面および透明ポリマーに付随する強度の制約を考慮して、製造業者は、ガラス繊維により補強したポリマー材料から透明材を作製して、ポリマー製透明材の強度よび耐衝撃性を高めてきた。あいにく、ポリマー材料にガラス繊維を添加することにより、透明材の光学品質に悪影響を与える可能性がある。例えば、ガラス繊維は、ガラス繊維の各々が小型のレンズの働きをするような円筒形構造を有していることがある。各々が小型レンズの働きをしている複数のガラス繊維は、光が透明材を透過する際に光を散乱させる作用があり、その結果、透明材を通して見た物体がぼやけて見えることがある。
【0005】
ガラス繊維により補強したポリマー材料から作製された透明材に付随するさらなる欠点は、温度変化に伴ってガラス材料およびポリマー材料の屈折率がばらつくことである。n(λ,T)により表される屈折率は、温度Tにおいてある材料に入射する波長λの関数である。ガラス繊維により補強したポリマー材料の場合、ポリマー材料の屈折率は概して、所与の波長または可視スペクトルといった波長域に対して、温度の上昇とともに低下する。これに対して、ガラスの屈折率は典型的に、可視スペクトルに対して温度変化とともにほんのわずかしか変化しない。
【0006】
所与の波長に対するある材料の温度変化に伴う材料のこのような屈折率変化は、材料の屈折率の温度係数dn(λ,T)/dTとも定義可能である。dn(λ,T)/dTにおいて、dnは、材料の屈折率の変化を表し、λは、材料に入射する放射(例えば、光)の波長を表し、Tは、温度を表し、かつ、dTは、材料の温度変化を表す。なお、材料は、1つ以上の波長および温度におけるその屈折率に関して説明可能であるが、材料の屈折率の温度係数もまた、材料の屈折率データとともに列挙される場合が多い。
【0007】
ガラスおよびポリマー材料は、所与の波長に対する所与の一致点温度において同じ屈折率を有するよう選択可能であるが、ポリマー材料の屈折率の温度係数dn(λ,T)/dTと比較したガラスの屈折率の温度係数dn(λ,T)/dTの差により、一致点温度から温度が外れるにつれて、2つの材料の屈折率が変化する(例えば、差が広がる)。温度変化に伴いガラスおよびポリマー材料の屈折率が変化した結果、それに応じて、ガラス/ポリマー界面における光の散乱により、温度変化に伴う透明材の光学品質の低下が起こることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
理解できるように、当該技術分野において、比較的広い温度範囲内において光学的歪みを最小に抑えて比較的高い光学的透明度を有し、かつ、重量を最小に抑えて衝撃および機械性能を向上させた光学的透明複合物品が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
透明複合物品に付随する上記要求は、本開示により特に対処および緩和される。一実施形態において、本開示は、実質的に透明な基材と、該基材中に埋設された少なくとも1つの実質的に透明な有機繊維とを含む実質的に光学的に透明な複合物品を提供する。該繊維は、対象波長域内において基材屈折率と実質的に等しい屈折率を有する。
【0010】
さらなる実施形態において、光学透過特性が良好で、かつ、歪みが最小に抑えられた実質的に透明な複合物品が開示されている。該複合物品は、実質的に透明な基材と、該基材中に埋設された複数の実質的に透明な有機繊維とを含んでいてもよい。該繊維は、対象波長域内において基材屈折率と実質的に等しい屈折率を有していてもよい。該基材および該有機繊維はまた、屈折率の温度係数が実質的に等しくてもよい。屈折率の温度係数は、材料の温度変化に伴う材料の屈折率の変化を表す。
【0011】
さらなる実施形態において、対象波長域を選択する工程および基材屈折率を有する実質的に透明な基材を提供する工程のうちの1つ以上を含む複合物品を製造する方法論が開示されている。これに加えて、該方法は、対象波長域内において基材屈折率と実質的に等しい屈折率を有する少なくとも1本の実質的に透明な有機繊維を提供することを含んでいてもよい。該方法は、基材中に有機繊維を埋設することをさらに含んでいてもよい。
【0012】
さらなる実施形態において、複合物品が晒されることになる対象波長域として可視スペクトルおよび赤外線スペクトルのうちの少なくとも一方を選択する工程のうちの1つ以上を含む複合物品を製造する方法論が開示されている。複合物品が晒されることになる温度範囲を選択してもよい。該方法は、基材屈折率および屈折率の温度係数を有する実質的に透明な基材を提供することを含んでいてもよい。複数の実質的に透明な有機繊維を提供してもよく、ここで、該有機繊維は、屈折率および屈折率の温度係数を有する。該繊維の屈折率の温度係数は、該温度範囲内において基材の屈折率の温度係数と実質的に等しい。該繊維の屈折率は、対象波長域内における基材の屈折率と実質的に等しくてもよい。該方法は、対向する一対の実質的に平面の繊維面を有する長尺の断面で有機繊維を提供し、基材中に有機繊維を埋設して、基材中に有機繊維の少なくとも1層を形成する工程をさらに含んでいてもよい。有機繊維の実質的に平面の繊維面は、複合物品の実質的に平面の物品表面と実質的に平行となるように向けられていてもよい。
【0013】
取り上げた特徴、機能および利点は、本開示のさまざまな実施形態において独立して達成可能であり、または、以下の説明および図面を参照してさらなる詳細が理解可能であるさらに他の実施形態において組み合わせてもよい。
【0014】
本開示のこれらおよびその他の特徴は、全体を通じて同様の番号が同様の部品を指す図面を参照すると、より明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実質的に透明なポリマー基材と複数の実質的に透明な有機繊維とを含む実施形態における複合物品の斜視図である。
【図2】図2は、有機繊維の複数の層を示した図1の複合物品の分解斜視図である。
【図3】図3は、基材中の有機繊維の層の配置を示した図1の複合物品の一部の拡大斜視図である。
【図4】図4は、概して長尺の断面形状を有する有機繊維の実施形態を示した図3の4−4線に沿った拡大断面図である。
【図5】図5は、ある温度域内におけるポリマー基材および有機繊維の実質的に等しい屈折率を示し、かつ、温度変化に伴うポリマー基材の屈折率とガラス繊維の屈折率との不一致をさらに示した所与の波長対温度における屈折率のグラフである。
【図6】図6は、クロスプライ構成にある有機繊維を有する複合物品に対する強度対剛性(すなわち、弾性率)のグラフであり、クロスプライ構成にあるガラス繊維から構成される複合物品に対する強度対剛性をさらに示したグラフである。
【図7】図7は、複合物品の製造方法論の1つ以上の動作のフローチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、本開示の好適かつさまざまな実施形態を例示するために示されている図面を参照すると、図1は、複合物品10の実施形態を示している。複合物品10は、実質的に透明なポリマー基材16とポリマー基材16中に埋設された複数の実質的に透明な有機繊維18とを含む繊維により補強された複合パネル14として作製されていてもよい。パネル14の構成として図1に例示されてはいるが、複合物品10は、限定されることなく、広範な大きさ、形状および構成のいかなる1つで提供されていてもよく、かつ、平面のおよび/または合成表面を含んでいてもよい。
【0017】
図4を参照すると、複合物品10の有機繊維18は、ポリマー基材16中に埋設されており、かつ、好ましくは、少なくとも1つの実質的に平坦または平面の繊維面20を有する形状とされており、またはより好ましくは、対向する一対の実質的に平坦なまたは平面の繊維面20を有する形状とされている。ただし、有機繊維18は、有機繊維18の繊維面20のうちのいずれか1つの単曲率(single curvatures)(図示せず)を含むさまざまな代替形状および大きさのうちのいずれか1つを有するよう提供されていてもよい。実質的に透明なポリマー基材16と実質的に透明な有機繊維18とを組み合わせた結果、図4に示されているように複合物品10に入射する(24)あらゆる波長の放射または光の透過を促進する実質的に透明な複合物品10となる。例えば、基材16および有機繊維18は、複合物品10を通過する可視スペクトルの放射および/または赤外線スペクトルの放射の透過を促進するよう選択されていてもよい。
【0018】
基材16と有機繊維18とは、好ましくは、対象波長域に対する広い温度範囲内において相補的なまたは実質的に等しい屈折率を有することが有利である。所与の温度Tにおける所与の材料の屈折率は、該所与の温度Tにおける、真空中の所与の波長λの光の速度の、該所与の材料中の同じ波長λの光の速度に対する比率として定義することができる。基材16の屈折率と有機繊維18の屈折率とは、基材16の有機繊維18との界面における光または放射の散乱を最小に抑えるか、または、減少させるために、所与の温度範囲に対して対象の波長域内において実質的に等しいか、または綿密に整合させることが好ましい。そうでなければ、実質的に異なる屈折率を有する基材と繊維との界面において、そのような光の散乱が生じる可能性がある。現在開示されている実施形態において、基材16と有機繊維18との屈折率が実質的に等しいことにより、複合物品10を通過する光が比較的高い程度で透過しやすく、放射の歪みが低減されやすくなってもよく、かつ、複合物品10の有効な使用温度が効果的に拡大されてもよい。
【0019】
引き続き図4を参照して、基材16と有機繊維18とは、実質的に等しい屈折率の温度係数dn(λ,T)/dTを有するとも定義可能であり、ここで、dn(λ,T)/dTは、温度Tに関する偏導関数n(λ,T)である。上に示したように、材料の屈折率の温度係数dn(λ,T)/dTは、所与の波長に対するある材料の温度変化に伴う材料の屈折率変化とも定義できる。本開示の基材16と有機繊維18とは、対象波長域に対して広い温度範囲内において実質的に等しい屈折率を有することが好ましいと説明されているが、基材16と有機繊維18とは、実質的に等しい屈折率の温度係数を有するという観点から説明してもよい。というのも、ある材料の屈折率の温度係数は、入手可能な文献において該材料の屈折率データとともに列挙されていることが多いからである。
【0020】
本開示において、ポリマー基材16と有機繊維18とは、それぞれの屈折率の温度係数もまた実質的に等しくなるように、対象波長域に対して広い温度範囲内において実質的に等しい屈折率を有することが好ましい。ある実施形態において、ポリマー基材16と有機繊維18との屈折率の温度係数は、ポリマー基材16と有機繊維18との屈折率が、温度上昇に伴い所与の波長に対して基材16と有機繊維18との屈折率の実質的に類似の低下率と対応するようになっていてもよい。基材16と有機繊維18との実質的に等しい屈折率および実質的に等しい屈折率の温度係数によりもたらされる利点には、下でより詳細に説明される比較的広い温度範囲内において歪みを最小に抑えつつ複合物品10の光学的透明性を向上させることが含まれる。
【0021】
図1を参照すると、パネル14として形成され、かつ、有機ポリマー基材16から形成された複数の有機繊維18を含む複合物品10が示されており、ここで、有機繊維18はポリマー基材16中に埋設されている。有機繊維18は、実質的に透明なポリマー基材16に対する構造的補強材を含んでいてもよく、かつ、複合物品10の機械的性能を向上させてもよい。例えば、有機繊維18により提供される構造的補強材は、下でより詳細に説明するように、有機繊維18の引っ張り強度および弾性率が高められることにより、複合物品10の比剛性(すなわち、密度で割った複合物品10の剛性)を向上させることができる。
【0022】
図2を参照すると、帯状片として形成され、かつ、基材16中の層32内に配置された複数の有機繊維18を示した、図1のパネル14の分解図が示されている。有機繊維18の各々は、好ましくは対向する一対の実質的に平面の繊維面20を含む長尺の断面形状を有することが好ましい。ある実施形態において、有機繊維18の繊維面20は、下でより詳細に説明するような手法で複合物品10の光学的性能を高めるために、複合物品表面12と実質的に平行に配置されていてもよい。
【0023】
図3を参照すると、有機繊維18が複合物品10の基材16中の層32内に配置されている複合物品10の拡大斜視図が示されている。有機繊維18は、複合物品10中において互いに対していかなる向きに配置されていてもよく、層32の各々における有機繊維18が互いに実質的に平行な関係で配列されている図3に示されている配置に限定されない。複合物品10は、有機繊維18の層32を3層有するとして例示されているが、いかなる数の層32を設けてもよい。例えば、複合物品10は、有機繊維18の単一層32または数十層以上の層32を含んでいてもよい。
【0024】
1層以上の層32における有機繊維18は、複合物品10における他の有機繊維18に対して、層32内の有機繊維18の長さが互いに概して平行に配向されている単方向配置に限定はされないがこれを含むあらゆる手法で配向されていてもよい。有機繊維18はまた、ある層32内の有機繊維18が、その他の層32における有機繊維18に対して概して垂直に配向されている二方向配置またはクロスプライ構成で配向されていてもよい。これに関して、いかなる層32における有機繊維18も、層32内における有機繊維18の不均一な配置を含む互いに対していかなる方向に配向されていてもよい。さらに、層32内の有機繊維18は、織物構成(図示せず)または図1〜図4に例示されているもののような不織布構成で配置されていてもよい。1層以上の層32の有機繊維18は、隣り合う層32の有機繊維18と接触するまたは接触しない配置となっていてもよい。例えば、図4は、層32が基材16の材料により分離されるように互いに接触しない関係で配置されている有機繊維18の層32を例示している。
【0025】
図3を参照すると、複数の層32における有機繊維18の相対位置を示している複合物品10の拡大斜視図が示されている。各層32の有機繊維18は、直接隣り合う層32の有機繊維18に対して実質的に垂直に配向されているとして例示されている。さらに、各層32の有機繊維18は、同じ層32の有機繊維18の隣り合うものと実質的に平行な配列に配向されている。ただし、図3は、パネル14構成にある複合物品10の非限定的な実施形態を示しており、複合物品10の代替の構成または複合物品10のポリマー基材16中の有機繊維18の代替の配置を限定するものとして解釈されるべきではない。例えば、ある1つの層32の有機繊維18は、層32の隣り合うものの有機繊維18に対して垂直な向きに配向されていてもよい。さらに、ある1つの層32の有機繊維18は、層32の隣り合うものの有機繊維18に対していかなる非垂直な角度(例えば、15°、22.5°、45°、60°など)に配向されていてもよい。
【0026】
図4を参照すると、層32における有機繊維18の配置を示した複合物品10のある実施形態の断面図が示されている。図4から分かるように、有機繊維18は、比較的平坦なまたは実質的に平面の繊維面20を有する長尺の断面形状を有し、そうでなければ光が湾曲表面を通過する際に生じる可能性のある光の散乱を最小に抑えることが好ましい。有機繊維18の繊維面20の実質的に平面の構成により、光の散乱が最小に抑えられ、かつ、複合物品10の光学品質が向上すると有利である。上で触れた有機繊維18とポリマー基材16との屈折率の温度係数が実質的に等しいことにより、下でより詳細に説明するように温度変化による光学品質の低下が緩和される。
【0027】
引き続き図4を参照すると、有機繊維18の概して長尺の形状は、繊維幅28対繊維厚26比として定義される比較的高いアスペクト比を含むことが好ましい。繊維18の断面は、あらゆる値のアスペクト比を有する可能性があるものの、ある実施形態において、アスペクト比は、約3から約500まで変化してもよい。ある実施形態において、繊維厚26は、約5ミクロンから約5000ミクロン(0.0002から0.20インチ)の範囲内であってもよい。ただし、有機繊維18は、限定されることなくあらゆる繊維厚26で提供することができる。
【0028】
図4を参照すると、有機繊維18の長尺の断面形状は、複合物品10の物品表面12に実質的に平行に向けられていることが好ましい一対の実質的に平面の繊維面20を含んでいてもよい。しかしながら、有機繊維18は、有機繊維18の繊維面20が物品表面12に対して何らかの角度を有した向きに配置されるように、基材16中に埋設されていてもよい。実質的に平面であるように例示されてはいるが、有機繊維18の繊維面20は、わずかに凹面、わずかに凸面または頂部のある形状を含むわずかに湾曲した形状であってもよく、厳密に実質的に平面または平坦な外形に限定されるものではない。さらには、有機繊維18の繊維面20は、1つ以上の繊維面20に1つ以上の表面特徴(図示せず)を含んでいてもよいと考えられている。
【0029】
図4から分かるように、所与の層32内における有機繊維18は、所望の繊維間隔34で基材16中に埋設されていてもよい。例えば、有機繊維18は、約5000ミクロン(約0.20インチ)までかそれ以上の繊維間隔34で配置されていてもよい。繊維間隔34は、所与の層32内における有機繊維18の長さに沿って隣り合う有機繊維18同士の側端22間の平均横方向距離として定義することができる。これに加えて、有機繊維18は、隣り合う一対の有機繊維18の対向する側端22同士が互いに接触関係にあるように配置されていてもよい。しかしながら、有機繊維18は、側端22同士が互いに離間した関係に位置している図4に示されているように配置されていることが好ましい。これに関して、有機繊維18は、いかなる繊維間隔34で配置されていてもよく、かつ、図4に示されている繊維間隔34には限定されない。
【0030】
引き続き図4を参照すると、複合物品10の全体積に対する有機繊維18の全体積は、約10%から90%の範囲内とすることができる。ただし、有機繊維18は、複合物品10の全体積のいかなる部分を含んでいてもよい。限定はされないが、複合物品10の所望の光学特性、所望の強度特性、所望の衝撃特性、所望の剛性および重量要件を含むさまざまなパラメータに基づいて、所望の繊維体積を選択することができる。
【0031】
図4は、有機繊維18の断面について長尺の構成を示しているが、有機繊維18は、さまざまな代替の断面形状のうちのいかなる1つで提供されてもよい。例えば、有機繊維18は、限定はされないが、多角形、四辺形、正方形、矩形およびその他あらゆる適切な形状を含むあらゆる断面形状で形成されてもよい。これに加えて、有機繊維18の断面は、上で触れたように、湾曲した、または、湾曲部分を含む1つ以上の繊維面20を含んでいてもよい。有機繊維18は、上に示したようにいかなるアスペクト比で提供されてもよいものの、ある実施形態において、有機繊維18の断面は、図4に示したように約3から500のアスペクト比(例えば、繊維幅28対繊維厚26比)を有する長尺形状であることが好ましい。
【0032】
図5を参照すると、ポリマー基材16、有機繊維18およびガラス繊維54について特定波長での屈折率対温度をグラフ化したものが示されている。図5から分かるように、基材16の屈折率52と有機繊維18の屈折率50とは、ある温度範囲内において実質的に等しいことが好ましい。例えば、図5のグラフは、基材16の屈折率52と有機繊維18の屈折率50とが温度上昇に伴い概して低下していることを示している。本開示の非限定的な実施形態において、基材16の屈折率52と有機繊維18の屈折率50とは、約−65°Fから約220°Fまでの温度範囲内において実質的に等しくなるよう選択されてもよい。しかしながら、図5は、基材16および有機繊維18の一実施形態を表しており、温度に伴って図5に示されているものとは異なったように変化する屈折率を有していてもよい基材16および有機繊維18の代替の実施形態を限定するよう解釈されるべきではない。
【0033】
上に示したように、ある好適な実施形態において、基材16および有機繊維18は、複合物品10が晒される可能性のある所与の温度範囲に対して選択された対象波長域に対して実質的に等しい屈折率を有するものとして説明されていてもよい。対象波長域は、約760ナノメートル(nm)から2500nmまで(すなわち、約120から400THzの周波数)にわたる可能性のある赤外線スペクトルを含むあらゆるスペクトルを含んでいてもよい。また、複合物品10が晒される可能性のある対象波長域は、約380nmから760nmまで(すなわち、約790から400THzの周波数)にわたる可視スペクトルを含んでいてもよい。基材16および有機繊維18の組成は、基材16および有機繊維18の屈折率が、選択された波長域に対してある温度範囲内で実質的に等しくなるように選択することができる。例えば、基材16および有機繊維18の組成は、上記屈折率が、紫外線スペクトル内で実質的に等しくなるように選択することができる。
【0034】
前に示したように、基材16の屈折率52と有機繊維18の屈折率50とは、屈折率52、50が所与の温度範囲に対して互いから所定の最大差内に維持されるように選択される。例えば、基材16および有機繊維18は、屈折率52、50が所与の温度範囲および所与の選択波長域に対して互いの少なくとも約1から3パーセント以内に維持されるように選択されてもよい。非限定的な実施形態において、屈折率52、50が互いの少なくとも約1から3パーセント以内に維持される所与の温度範囲は、該温度はいかなる範囲内にわたっていてもよいものの、約−65°Fから約220°Fまでとすることができる。同様に、屈折率52、50が互いの少なくとも約1から3パーセント以内に維持される対象波長域は、該対象波長域はいかなるスペクトルを含んでいてもよいものの、可視スペクトルおよび/または赤外線スペクトルを含むものとすることができる。
【0035】
ある実施形態において、基材16の屈折率52と有機繊維18の屈折率50とは、屈折率52、50が可視スペクトルおよび/または赤外線スペクトルにおける温度範囲に対して実質的に等しくなるように選択されてもよい。また、基材16の屈折率52と有機繊維18の屈折率50とは、所与の温度範囲内の少なくとも1つの温度一致点56に対して等しいか、または、より好ましくは、同一であってもよい。例えば、図5は、基材16の屈折率曲線52と有機繊維18の屈折率曲線50との交点において基材16の屈折率52が有機繊維18の屈折率50と一致する一致点56温度を示している。
【0036】
しかしながら、図5は、基材16の材料および有機繊維18の材料の一実施形態を表しており、所与の波長に対して所与の温度範囲内において必ずしも一致するとは限らない種々の屈折率を有していてもよい代替の材料を限定するよう解釈されるべきではない。とりわけ、図5は、基材16の屈折率52と有機繊維18の屈折率50とが、ばらつきが比較的一定またはわずかであり、その結果、温度上昇または低下につれてポリマー基材16の基材屈折率52からは比較的大きく外れるガラス繊維54の屈折率54と比較して、温度範囲に沿って実質的に等しいことを示している。
【0037】
上に示したように、基材16と有機繊維18とは、実質的に等しい屈折率の温度係数を有することが好ましい。ある実施形態において、有機繊維18および基材16は、いかなる適切な屈折率の温度係数を有するよう選択されてもよい。図5は、温度上昇に伴い低下する基材16の屈折率52と有機繊維18の屈折率50とを示している。基材16の屈折率52と有機繊維18の屈折率50との比較的小さい差により、複合物品10の温度変化に伴う光学的歪みが最小に抑えられている。
【0038】
図6を参照すると、図3に示されている有機繊維18配置と同様に、ある層32(図3)における有機繊維18(図3)が他の層32における有機繊維18に対して概して垂直に配向されていてもよいクロスプライ構成で、ポリマー基材16(図1〜図4)中に埋設された有機繊維62から構成された複合物品10’の機械的性能を示したグラフが示されている。図6は、種々の組成の複合物品10’に対する強度58(ksi)および弾性率60(Msi)をグラフ化している。図6はまた、ガラス繊維66から構成されている複合物品10’の強度特性が、有機繊維62から構成されている複合物品10’におおよそ匹敵する強度58値を有することをグラフとして示している。さらに、図6は、ガラス繊維66から構成されている複合物品10’が、有機繊維62のある組成より概して高い弾性率60を有していることを示している。しかしながら、前に示したように、ガラス繊維の屈折率54の温度係数は、図5に示したようにポリマー基材の屈折率52の温度係数とは実質的に異なり、その結果、複合物品10の温度変化に伴いガラス繊維により補強されたポリマー基材複合物品10の光学品質がより一層劣化する可能性がある。
【0039】
図6は、種々の組成の有機繊維62を有する複合物品10’(図1〜図4)に対する強度58(ksi)および弾性率60(Msi)を示している。比較のため、図6は、補強用有機繊維を有さないポリマー76から構成された複合物品(すなわちポリマー材料)に対する機械的特性も示している。図6から分かるように、有機繊維62を有さないポリマー76から構成された複合物品10’は、約6ksiから約20ksiまでの範囲の引っ張り強度58および約0.2Msiから約0.55Msiまでの範囲の弾性率60を有していてもよい。対照的に、有機繊維62としてのフルオロカーボン繊維68により強化したポリマー基材を含む複合物品10’は、約6ksiから約62ksiまでの範囲の引っ張り強度58および約0.1Msiから約0.3Msiまでの範囲の弾性率60を有していてもよい。ナイロン(TM)繊維70を含む複合物品10’は、約6ksiから約78ksiまでの範囲の引っ張り強度58および約0.2Msiから約0.5Msiまでの範囲の弾性率60を有していてもよい。
【0040】
引き続き図6を参照すると、ポリプロピレン繊維74を含み、かつ、約6ksiから約80ksiまでの範囲の引っ張り強度58および約0.45Msiから約1.1Msiまでの範囲の弾性率60を有する複合物品10’もまた示されている。ポリエチレンテレフタレート繊維72を含む複合物品10’は、約6ksiから約70ksiまでの範囲の引っ張り強度58および約0.4Msiから約0.8Msiまでの範囲の弾性率60を有していてもよい。ポリエチレン繊維64を含む複合物品10’は、約10ksiから約300ksiまでの範囲の引っ張り強度58および約0.5Msiから約9.0Msiまでの範囲の弾性率60を有していてもよい。
【0041】
図6から分かるように、ポリエチレン繊維64から構成された複合物品10’は、ガラス繊維66を含む複合物品10’に対して向上した強度58およびより優れた剛性(すなわち、弾性率60)を示す。より詳細には、図6は、ポリエチレン繊維64を含む複合物品10’が、約10ksiから約300ksiまでの範囲の引っ張り強度58および約0.5Msiから約9.0Msiまでの範囲の弾性率60を有していてもよいことを示している。対照的に、ガラス繊維66を含む複合物品10’は、約28ksiから約75ksiまでの範囲の引っ張り強度58および約1.2Msiから約2.7Msiまでの弾性率60を有すると示されている。ただし、有機繊維62から構成された複合物品10’に対する上に記載した強度58(ksi)および弾性率60(Msi)の値は、非限定的な例であり、かつ、強度58(ksi)および弾性率60(Msi)についての高い値が可能である。
【0042】
ポリエチレン繊維64は、他の繊維材料に対してより向上した引っ張り強度58を有する伸張ポリエチレン繊維64構成を含んでいてもよい。ポリエチレン繊維64の伸張は、繊維分子の配列を促進することにより、ポリエチレン繊維64の引っ張り強度および剛性が高まり、その結果、複合物品10の基材16(図1〜図4)中に埋設されると、複合物品10’の特定の性能が向上する可能性がある。例えば、上に示したように、ガラス繊維66により作製された複合物品10’の比剛性に対して、ポリエチレン繊維64により、複合物品10’の比剛性が高まる可能性がある。
【0043】
理解可能なように、複合物品10(図1〜図4)の光学および機械的特性は、基材16の材料および有機繊維18の組成に部分的に依存している可能性がある。基材16および有機繊維18の材料は、複合物品10(図1〜図4)の意図された用途に基づいて選択されてもよい。有機繊維18が形成されてもよい材料は、限定はされないが、あらゆる適切な熱可塑性または熱硬化性材料を含む。例えば、基材16および/または有機繊維18が形成されてもよい熱可塑性材料は、限定はされないが、フルオロカーボン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトンを含む。ポリエチレンは、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、または、あらゆるその他の分子量のポリエチレンを含むあらゆるその他の形態のポリエチレンを含んでいてもよい。熱可塑性材料はまた、ナイロン(TM)、および、さまざまなその他の実質的に透明な有機材料のいずれか1つまたはその組み合わせを含んでいてもよい。基材16および/または有機繊維18が形成されてもよい熱硬化性材料は、限定はされないが、ポリウレタン、フェノール樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド、ポリエステル、エポキシ樹脂、および、さまざまなあらゆるその他の適切な透明ポリマー材料のうちの1つを含んでいてもよい。
【0044】
前に示したように、基材16(図1〜図4)の材料と有機繊維18の材料との選択、ならびに、繊維形状、繊維厚26(図4)、繊維幅28(図4)、繊維間隔34(図4)、層間隔36(図4)および繊維体積を含む有機繊維18の形状寸法および配置の選択は、複合物品10(図1)が晒される可能性のある環境(例えば、温度範囲および対象波長域)に部分的に基づいていてもよい。複合物品10は、パネル14の構成(図1)を含むさまざまな構成のうちのいずれか1つ、または、限定はされないがフロントガラスおよび/または航空機のキャノピーといった輸送手段の透明材を含むさまざまな代替の構成のうちのいずれか1つで構成されていてもよい。これに加えて、複合物品10は、建物用構造パネルまたは建築パネルといったいかなる輸送手段のまたは非輸送手段用途における使用のため、または、非構造用途のために構成されていてもよい。これに関して、複合物品10は、限定はされないが、いかなる用途、システム、サブシステム、構造物、装置および/またはデバイスにおける使用のために構成されていてもよい。
【0045】
ここで図7を参照すると、複合物品10(図1)を製造する方法論を含んでもよい1つ以上の動作のフローチャートが示されている。該方法論の工程100は、複合物品10が晒される可能性のある対象波長域を選択することを含んでもよい。例えば、工程100は、複合物品10が晒される可能性のある放射の可視スペクトルおよび/または赤外線スペクトルを選択することを含んでいてもよい。前に示したように、温度に伴う変化に加えて、材料の屈折率はまた、その材料が晒されている放射の波長とともに変化してもよい。
【0046】
図7の工程102は、複合物品10が晒される可能性のある温度範囲を選択してもよい。例えば、複合物品10(図1)の温度範囲は、約−65°Fから約220°Fまでにわたっていてもよい。ただし、用途によっては、複合物品10の動作温度範囲は、約−65°Fから180°Fまで、約−65°Fから160°Fまで、約−40°Fから160°Fまで、または、約0°Fから130°Fまでにわたっていてもよい。しかしながら、該温度範囲は、−65°Fより低い温度および/または220°Fより高い温度を含むいかなる温度の組間にわたっていてもよく、上に述べた範囲に限定されない。
【0047】
前に示したように、ポリマー基材の屈折率52および有機繊維の屈折率50は、温度の上昇に伴い概して低下してもよい。ポリマー基材16の材料は、基材16の屈折率が、温度範囲内における一致点56(図5)で有機繊維18の屈折率と一致するように選択されてもよい。このようにして、基材16と有機繊維18との屈折率差は、温度が一致点56温度から外れる(すなわち、上昇または低下する)につれて最小に抑えることができる。ただし、前に示したように、基材16および有機繊維18の屈折率は、温度動作範囲内のいかなる特定の温度においても必ずしも一致するとは限らない。
【0048】
図7の方法論の工程104は、基材屈折率52および屈折率の温度係数を有する実質的に透明な基材16(図1〜図4)を提供することを含んでもよい。基材16は、所与の用途に対していかなる適切な基材16を含んでいてもよい。例えば、上に示したように、基材16は、いかなる適切な熱可塑性材料またはいかなる適切な熱硬化性材料を含んでいてもよい。熱可塑性材料の非限定的な例として、上記ナイロン(TM)、フルオロカーボン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトンが挙げられる。熱硬化性材料の非限定的な例として、ポリウレタン、フェノール樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド、ポリエステルおよびエポキシ樹脂を挙げることができる。
【0049】
図7の工程106は、屈折率50および屈折率の温度係数を有する少なくとも1つの実質的に透明な有機繊維18(図1〜図4)を提供することを含んでもよい。有機繊維18は、対象波長域内において基材屈折率52と実質的に等しい屈折率50を有することが好ましい。基材16は、基材16の屈折率52が、所与の温度範囲について繊維18の屈折率50に対して所定の最大差内に存在するように選択されてもよい。例えば、基材16および有機繊維18は、その屈折率52、50が、約−65°Fから約220°Fまでの温度範囲といったあらゆる適切な温度範囲について、互いに約1パーセントから約3パーセント以内に存在するように選択されてもよい。ただし、基材16の屈折率52と有機繊維18の屈折率50とは、互いにいかなる範囲内に存在していてもよい。例えば、基材16の屈折率52と有機繊維18の屈折率50とは、互いから3パーセントより大きい割合だけ異なっていてもよい。また、基材16の屈折率52と有機繊維18の屈折率50とは、互いから約1パーセントから0.3パーセント以下の範囲内に存在していてもよい。さらに、基材16の屈折率52と有機繊維18の屈折率50との上記差のうちのいずれかに対する温度範囲は、限定されることなくあらゆる温度の組間にわたっていてもよい。
【0050】
工程106における有機繊維18(図1〜図4)の選択は、その屈折率の温度係数が、基材16の屈折率の温度係数と実質的に等しくなるように有機繊維18を選択することをさらに含んでいてもよい。屈折率の温度係数が実質的に等しくなるように基材16および有機繊維18を選択することにより、基材16と有機繊維18との屈折率差を温度上昇または低下の際に最小に抑えることができると有利である。例えば、図5は、基材16の屈折率52と有機繊維18の屈折率50とが、温度範囲内において実質的に等しいことにより、基材の屈折率52と有機繊維の屈折率50との相違が比較的小さい程度となることを示している。
【0051】
引き続き図7を参照すると、工程108は、図4に示したように好ましくは複合物品10の物品表面12に実質的に平行に向けられている可能性のある対向する一対の実質的に平面の繊維面20(図4)を有する長尺の断面形状で有機繊維18を提供することを含んでもよい。しかしながら、有機繊維18は、繊維面20が、複合物品10の物品表面12に対して非平行な配置(図示せず)に向けられるように配向されていてもよい。好ましくは、有機繊維18(図4)は、有機繊維18の厚みを貫通する方向に沿って互いに実質的に平行な対向する実質的に平面の繊維面20を有するほぼ矩形の断面形状を有する。ただし、上に示したように、有機繊維18は、いかなる適切な構成で提供してもよく、長尺または矩形の断面形状に限定されない。
【0052】
図7の方法論の工程110は、図4に示されている基材16中に複数の有機繊維18を埋設することを含んでいてもよい。ある実施形態において、複数の有機繊維18は、図2〜図5に示されているように層32構成に配置されていてもよい。各層32内の有機繊維18は、図4に示されているように所与の層32における有機繊維18の隣り合うもの同士の繊維端22間の平均横方向距離として定義される所望の繊維間隔34で離間されていてもよい。層32の隣り合うものにおける有機繊維18は、ある層32における有機繊維18の軸30(図3)が、図3に示されているように直接隣り合った層32の有機繊維18の繊維軸30に対して約90°の角度といった所定の角度に向けられるように配置されてもよい。ただし、ある層32における有機繊維18の軸30は、直接隣り合った層32の有機繊維18の繊維軸30に対してさまざまな代替の角度のうちのいずれか1つを有するよう向けられていてもよい。例えば、ある層32における有機繊維18の軸30は、直接隣り合った層32の有機繊維18の繊維軸30に対していかなる非垂直な角度(例えば、15°、22.5°、45°、60°など)を有するよう向けられていてもよい。
【0053】
図7の方法論の工程112は、複合物品10の光学的透明度を維持するために、有機繊維18の繊維面20(図4)を複合物品10の物品表面12に実質的に平行になるように向けることを含んでいてもよい。有機繊維18は、上に示したようにいかなる適切な断面形状で、かつ、複合物品10の全体積に対していかなる適切な繊維体積で提供してもよい。温度範囲内において基材16および有機繊維18の実質的に等しい屈折率により、光学透過性が向上し、かつ、複合物品10の歪みが最小に抑えられると有利である。
【0054】
好適な実施形態において、複合物品は、基材屈折率を有する実質的に透明な基材と、基材中に埋設された少なくとも1つの実質的に透明な有機繊維とを含み、有機繊維は、対象波長域内において基材屈折率と実質的に等しい屈折率を有する。上記複合物品はさらに以下の構成を有してもよい:基材と有機繊維とが、実質的に等しい屈折率の温度係数を有する。上記複合物品はさらに以下の構成を有してもよい:基材と有機繊維との屈折率および屈折率の温度係数が、基材の屈折率と有機繊維の屈折率とが温度範囲内の少なくとも1つの温度に対して対象波長域内の所与の波長において等しいようになっている。上記複合物品はさらに以下の構成を有してもよい:基材と有機繊維との屈折率および屈折率の温度係数が、基材の屈折率と有機繊維の屈折率とが約−65°Fから約220°Fまでの温度範囲に対して対象波長域内において互いの約1から3パーセント以内であるようになっている。上記複合物品はさらに以下の構成を有してもよい:対象波長域が、赤外線スペクトルおよび可視スペクトルのうちの少なくとも一方を含む。上記複合物品はさらに以下の構成を有してもよい:有機繊維が長尺の断面を有する。上記複合物品はさらに以下の構成を有してもよい:上記断面が繊維幅対繊維厚のアスペクト比を有し、かつ、アスペクト比が、約3から約500までの範囲内である。上記複合物品はさらに以下の構成を有してもよい:繊維厚が、約5ミクロンから約5000ミクロンまでの範囲内である。上記複合物品はさらに以下の構成を有してもよい:有機繊維が、互いに実質的に平行な対向する一対の実質的に平面の繊維面を有する。上記複合物品はさらに以下の構成を有してもよい:実質的に平面の繊維面が、複合物品の実質的に平面の物品表面に実質的に平行である。上記複合物品はさらに以下の構成を有してもよい:基材および有機繊維のうちの少なくとも一方が、熱可塑性材料および熱硬化性材料のうちび少なくとも1つから形成されている。上記複合物品はさらに以下の構成を有してもよい:熱可塑性材料が、フルオロカーボン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトンのうちの少なくとも1つを含み、かつ、熱硬化性材料が、ポリウレタン、フェノール樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド、ポリエステル、エポキシ樹脂のうちの少なくとも1つを含む。複合物品は、フロントガラス、キャノピー、窓、薄膜、構造パネル、建築パネル、非構造物品といった構造物を形成してもよい。
【0055】
別の好適な実施形態において、実質的に光学的に透明な複合物品は、基材屈折率を有する実質的に透明な基材と、基材中に埋設された複数の実質的に透明な有機繊維とを含んでいてもよく、有機繊維は、可視スペクトルおよび赤外線スペクトルのうちの少なくとも一方の範囲内で基材屈折率と実質的に等しい屈折率を有し、かつ、基材と有機繊維とが、実質的に等しい屈折率の温度係数を有する。
【0056】
別の好適な実施形態において、複合物品の製造方法は、基材屈折率を有する実質的に透明な基材を提供し、基材屈折率と実質的に等しい屈折率を有する少なくとも1つの実質的に透明な有機繊維を提供し、基材中に有機繊維を埋設することを含んでいてもよい。上記方法は、対象波長域を選択し、基材の屈折率の温度係数が、対象波長域内の繊維の屈折率の温度係数と実質的に等しくなるように基材および有機繊維を選択することをさらに含んでいてもよい。上記方法は、基材の屈折率と有機繊維の屈折率とが、温度範囲内の少なくとも1つの温度に対して対象波長域内の所与の波長において等しくなるように基材および有機繊維を選択することをさらに含んでいてもよい。上記方法は、基材の屈折率と有機繊維の屈折率とが、約−65°Fから約220°Fまでの温度範囲に対して互いの約1から3パーセント以内となるように基材および有機繊維を選択することをさらに含んでいてもよい。上記方法は、対象波長域として、赤外線スペクトルおよび可視スペクトルのうちの少なくとも一方を選択することをさらに含んでいてもよい。上記方法は、長尺の断面で有機繊維を提供することをさらに含んでいてもよい。上記方法は、互いに実質的に平行に向けられている対向する一対の実質的に平面の面を有する断面で有機繊維を提供することをさらに含んでいてもよい。上記方法は、繊維断面の実質的に平面の面が、複合物品の実質的に平面の物品表面と実質的に平行となるように繊維を配向させることをさらに含んでいてもよい。上記方法は、熱可塑性材料および熱硬化性材料をさらに含んでいてもよい。上記方法はさらに以下の構成を有していてもよい:熱可塑性材料が、フルオロカーボン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトンのうちの少なくとも1つを含み、かつ、熱硬化性材料が、ポリウレタン、フェノール樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド、ポリエステル、エポキシ樹脂のうちの少なくとも1つを含む。
【0057】
別の好適な実施形態において、複合物品の製造方法は、複合物品が晒されることになる対象波長域として可視スペクトルおよび赤外線スペクトルのうちの少なくとも一方を選択し、複合物品が晒されることになる温度範囲を選択し、基材屈折率および屈折率の温度係数を有する実質的に透明な基材を提供し、屈折率と温度範囲内において基材の屈折率の温度係数と実質的に等しい屈折率の温度係数とを有する複数の実質的に透明な有機繊維を提供し、繊維の屈折率は、対象波長域内において基材屈折率と実質的に等しく、対向する一対の実質的に平面の繊維面を有する長尺の断面で有機繊維を提供し、基材中に有機繊維を埋設して、基材中に有機繊維の少なくとも1層を形成し、実質的に平面の繊維面を、複合物品の実質的に平面の物品表面と実質的に平行となるように向ける工程を含んでいてもよい。
【0058】
本開示のさらなる修正および改善は、当業者にとって明らかであるかもしれない。したがって、ここに説明および図示されている部品の特定の組み合わせは、本開示のいくらかの実施形態のみを表すよう意図されており、本開示の精神および範囲内の代替の実施形態または装置の限定としての役割を果たすよう意図されてはいない。
【符号の説明】
【0059】
10 複合物品
12 物品表面
14 パネル
16 ポリマー基材
18 有機繊維
20 繊維面
22 側端
26 繊維厚
28 繊維幅
30 軸
32 層
34 繊維間隔
36 層間隔
50 有機繊維の屈折率
52 基材の屈折率
54 ガラス繊維の屈折率
56 一致点
58 強度
60 弾性率
62 有機繊維
64 ポリエチレン繊維
66 ガラス繊維
68 フルオロカーボン繊維
70 ナイロン繊維
72 ポリエチレンテレフタレート繊維
74 ポリプロピレン繊維
76 ポリマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材屈折率52を有する実質的に透明な基材16と、
基材中に埋設された少なくとも1つの実質的に透明な有機繊維18であって、対象波長域内において基材屈折率と実質的に等しい屈折率50を有する有機繊維と
を含む複合物品。
【請求項2】
基材と有機繊維とが実質的に等しい屈折率の温度係数を有する、
請求項1に記載の複合物品。
【請求項3】
基材と有機繊維との屈折率および屈折率の温度係数が、基材の屈折率と有機繊維の屈折率とが温度範囲内の少なくとも1つの温度に対して対象波長域内の所与の波長において等しいようになっている、
請求項2に記載の複合物品。
【請求項4】
基材と有機繊維との屈折率および屈折率の温度係数が、基材の屈折率と有機繊維の屈折率とが約−65°Fから約220°Fまでの温度範囲に対して対象波長域内において互いの約1から3パーセント以内であるようになっている、
請求項2に記載の複合物品。
【請求項5】
有機繊維が長尺の断面を有し、前記断面が繊維幅対繊維厚のアスペクト比を有し、かつ、
アスペクト比が約3から約500までの範囲内である、
請求項1に記載の複合物品。
【請求項6】
繊維厚が約5ミクロンから約5000ミクロンまでの範囲内である、
請求項5に記載の複合物品。
【請求項7】
有機繊維が、互いに実質的に平行な対向する一対の実質的に平面の繊維面を有し、かつ実質的に平面の繊維面が複合物品の実質的に平面の物品表面に実質的に平行である、
請求項5に記載の複合物品。
【請求項8】
基材および有機繊維のうちの少なくとも一方が、
フルオロカーボン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトンのうちの少なくとも1つを含む熱可塑性材料、および、
ポリウレタン、フェノール樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド、ポリエステル、エポキシ樹脂のうちの少なくとも1つを含む熱硬化性材料
のうちの少なくとも1つから形成されている、請求項1に記載の複合物品。
【請求項9】
基材屈折率を有する実質的に透明な基材を提供する工程、
基材屈折率と実質的に等しい屈折率を有する少なくとも1つの実質的に透明な有機繊維を提供する工程、および
基材中に有機繊維を埋設する工程
を含む、複合物品の製造方法。
【請求項10】
対象波長域を選択する工程、および
基材の屈折率の温度係数が対象波長域内において繊維の屈折率の温度係数と実質的に等しくなるように、基材および有機繊維を選択する工程
をさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
基材の屈折率と有機繊維の屈折率とが、温度範囲内の少なくとも1つの温度に対して対象波長域内の所与の波長において等しくなるように、基材および有機繊維を選択する工程
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
基材の屈折率と有機繊維の屈折率とが、約−65°Fから約220°Fまでの温度範囲に対して互いの約1から3パーセント以内となるように、基材および有機繊維を選択する工程
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
互いに実質的に平行に向けられている対向する一対の実質的に平面の面を有する断面に有機繊維を提供する工程
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
基材および有機繊維のうちの少なくとも一方が、
フルオロカーボン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトンのうちの少なくとも1つを含む熱可塑性材料、および、
ポリウレタン、フェノール樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド、ポリエステル、エポキシ樹脂のうちの少なくとも1つを含む熱硬化性材料
のうちび少なくとも1つから形成される、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−82418(P2012−82418A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−213286(P2011−213286)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】