説明

有機肥料

【課題】十分に熟成がされており、かつ、害虫忌避効果も奏する有機肥料の生産方法を提供すること。
【解決手段】
80℃〜90℃の高温下でも生存可能な耐熱性菌を有機資材に添加し、当該耐熱性菌の発熱作用により当該有機資材を80℃〜90℃の高温に加熱することにより有機肥料を生産する。
特に、発熱した有機資材から発生する水分を含むガスを集めて液体成分とガス成分とに分け、しかる後に当該ガス成分をマイナスイオン化して当該有機資材に戻してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非化学物質で害虫忌避性を有する有機肥料の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前世紀までの日本の農業は、人工的に化学合成された肥料・農薬(化学肥料・農薬)を大量に使用して作物(植物・野菜・穀物等)の増産を目指すものであった。
【0003】
しかし、最近、化学肥料を長年に亘って使い続けると、作物のベッドともいえる土壌が痩せ衰えてしまい、長い目で見れば作物の収穫量の減少を招きかねないことがわかってきた。
【0004】
すなわち、土壌中には数多くの菌類やバクテリアが生存している。これらの微生物は、本来は落ち葉・腐った木・糞尿などの有機物(いわゆる有機物肥料)を分解して生きている。
【0005】
しかし、これらの有機物肥料の代わりに無機質の化学肥料ばかりを大量に使い続けると、土壌中で有機物が不足しはじめることになる。
【0006】
そのため、作物の生育を助ける微生物が減少し、その代わりに無機質を好む嫌気性生物の細菌が土壌中で繁殖する。
【0007】
その結果、作物は病気にかかりやすくなり、それに対処するために農薬の使用量を増やせば、ますます土壌が痩せ衰えることに拍車がかかるという悪循環に陥ってしまう。
【0008】
そこで、最近、有機農法が提唱されている。これは、従来のように化学物質に依存するのではなく、天然の有機物を肥料として使用して作物を生育するという、自然のしくみに逆らわない農業を目指すものである。
【0009】
ここで、上記有機農法では、有機肥料の熟成が不十分であると、寄生虫等の害虫汚染の原因となる。そこで、現在に至るまで有機質肥料の熟成方法が種々研究されている。また、対症療法として、人体に無害の化学合成系の農薬(化学物質系の害虫忌避剤;例えば特許文献1参照)を使って害虫が作物に寄り付かないようにしていた。
【特許文献1】特開2010−001226公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、いくら人体に無害の害虫忌避剤であっても化学合成物質であり、天然由来の有機物肥料のみを使用して作物を生育するという有機農法の趣旨が全うされなくなる。
【0011】
本発明の目的は、十分に熟成がなされており、かつ、害虫忌避効果も奏する有機肥料の生産方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、80℃〜90℃の高温下でも生存可能な耐熱性菌を有機資材に添加し、当該耐熱性菌の発酵作用により当該有機資材を80℃〜90℃の高温まで加熱して当該有機資材を有機肥料とすることを特徴とする有機肥料の生産方法である。
【0013】
また、請求項2の発明は、前記耐熱性菌の発酵作用により発熱した前記有機資材から発生する水分を含むガスを集めて液体成分とガス成分とに分け、しかる後に当該ガス成分をマイナスイオン化して当該有機資材に戻すことを特徴とする請求項1記載の有機肥料の生産方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐熱性菌の発熱作用によって有機資材(落ち葉、家畜の糞尿、家庭からの調理ゴミ等)を80℃〜90℃の高温に加熱することにより、当該有機資材の熟成が十分になされる。すなわち、有機資材の有機物が十分に生分解されるとともに、高温(80℃〜90℃)の有機資材中には当該高温に順応した菌(作物の生育を助ける微生物)が繁殖する。
【0015】
また、本発明者の実験結果によると、上記したように有機資材を80℃〜90℃の温度状況下にすると、当該高温に順応して繁殖した菌は害虫が忌避する物質を産出するので、かかる有機資材を有機肥料として作物に使用すれば寄生虫等の害虫は寄り付かなくなる。
【0016】
特に、請求項2記載の発明のように、発熱した有機資材から発生したガスをマイナスイオン化して再び当該有機資材に戻せば、有機資材の温度上昇は加速されるので、一段と迅速に有機資材を有機肥料にすることができるとともに、害虫忌避効果も一層向上する。また、かかるガス循環によって、無機質を好む嫌気性生物の細菌が有機資材中で繁殖するのを、より効果的に抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る有機肥料の生産方法は、80℃〜90℃の高温下でも生存可能な耐熱性菌を有機資材に添加し、当該耐熱性菌の発酵作用により当該有機資材を80℃〜90℃の高温に加熱する構成とされている。
【0018】
例えば、耐熱性菌としては、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)などのバチルス属微生物、サーモアクチノミセス・ブルガリス(Thermoactinomyces vulgaris)、サーモモノスポーラ・カーバラ(Thermomonospora curvara)などの好温・好熱性の放線菌、フミコーラ・インソレンス(Humicola insokens)、タラロマイセス・デユポンティ(Talaromyces dupontii)などの好熱性の糸状菌を挙げることができる。この実施形態では、これらの耐熱性菌の1種または2種以上を用いている。
【0019】
また、有機資材として、落ち葉、家畜の糞尿、家庭からの調理ゴミが選定されている。
【0020】
この実施形態では、有機資材の加熱中に、図1に示すように、当該有機資材11中にエア(空気)を強制的に送り込むエアレーションを行っている。
【0021】
上記構成の有機肥料の生産方法の場合、耐熱性菌の発熱作用により有機資材が加熱されて、最終的には当該有機資材は80℃〜90℃の高温になる。この高温加熱された有機資材では、有機物の分解が十分になされるとともに、作物の生育を助ける微生物が繁殖する。かかる有機資材をそのまま、あるいは適宜成形等して粒状・液体状にして有機肥料が完成される。
【0022】
こうして完成された有機肥料は、熟成が十分になされた状態となっている。すなわち、有機物の分解が十分になされており、作物の生育を助ける微生物が繁殖した状態となっている。そのため、作物の生育に有効な肥料となる。また、自然界に存在する有機物なので自然を汚さない。
【0023】
また、本発明者の実験結果によると、このように高温熟成させた有機肥料では、害虫が忌避する物質を生産する菌も繁殖しているので、作物に与えた場合には寄生虫等の害虫は当該作物に寄り付かなくなる。
【0024】
特に、図1にしめすように、耐熱性菌の発酵作用により発熱した有機資材から発生する水分を含むガスを集めて液体成分とガス成分とに分け、しかる後に当該ガス成分をマイナスイオン化して当該有機資材に戻す構成とすることもできる。以下、かかる構成を付加した有機肥料の生産方法を、マイナスイオン化ガス循環方式と称する。
【0025】
マイナスイオン化ガス循環方式では、図1に示すように、有機資材2を蓋するカバー11を使用する。このカバー11は、発熱した有機資材2から出るガスを外部に逃がさない役目と、当該有機資材2を保温する役目を有する。
【0026】
このカバー2の上部にはガス戻し管21の一端部が開口接続されており、当該ガス戻し管21の他端部は空気供給管16に接続されている。このガス戻し管21には送風機F2が介装されており、当該送風機F2が駆動されることによりカバー11内に溜まったガスは吸いだされて空気供給管16に送られる。空気供給管16には送風機F1が介装されており、送風機F1が駆動されると空気が当該供給管16の吹出し穴16aを介して有機資材2中に供給される構成とされている。
【0027】
送風機F2とカバー11との間のガス戻し管21部分には、熱交換器31とマイナスイオン発生器41とが介装されている。上記熱交換器31によってガスは冷却されて、ガス成分と液体成分とに分離する。そして、ガス成分はマイナスイオン発生器41に送られて、マイナスイオンが付与される。
【0028】
このようにマイナスイオン化したガス成分を再び当該有機資材2に戻せば、当該有機資材2中の高温耐性菌は一段と活性化するので、温度上昇は加速される。したがって、一段と迅速に有機資材2を有機肥料にすることができるとともに、害虫忌避効果も一層向上する。また、かかるガス循環によって、無機質を好む嫌気性生物の細菌が有機資材2中で繁殖するのを、より効果的に抑えられる。
【0029】
また、液体成分は液肥貯留タンク51に溜められる。この液体成分は、上記有機資材2と同様に、害虫忌避効果を奏するので、例えば作物に散布すれば飛来性害虫対策に効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る有機肥料の生産方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0031】
2 有機資材
16 空気供給管
16a 吹出し穴
21 ガス戻し管
31 熱交換器
51 液肥貯留タンク
F1,F2 送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
80℃〜90℃の高温下でも生存可能な耐熱性菌を有機資材に添加し、当該耐熱性菌の発酵作用により当該有機資材を80℃〜90℃の高温まで加熱して当該有機資材を有機肥料とすることを特徴とする有機肥料の生産方法。
【請求項2】
前記耐熱性菌の発酵作用により発熱した前記有機資材から発生する水分を含むガスを集めて液体成分とガス成分とに分け、しかる後に当該ガス成分をマイナスイオン化して当該有機資材に戻すことを特徴とする請求項1記載の有機肥料の生産方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−62214(P2012−62214A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207306(P2010−207306)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(593110100)太陽農産株式会社 (1)
【Fターム(参考)】