説明

有機薄膜トランジスタ絶縁層材料及び有機薄膜トランジスタ

【課題】閾値電圧の絶対値及びヒステリシスが小さい有機薄膜トランジスタを製造しうる有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を提供すること。
【解決手段】本発明の有機薄膜トランジスタゲート絶縁層材料は、環状炭酸エステル基を有する繰り返し単位と、電磁波もしくは熱の作用により、活性水素と反応する第2の官能基を生成する第1の官能基を有する繰り返し単位とを、有する高分子化合物(A)、及び活性水素化合物(B)を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜トランジスタが有する絶縁層に適した絶縁層材料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜トランジスタは、無機半導体より低温で製造できるため、その基板としてプラスチック基板やフィルムを用いることができ、このような基板を用いることによりフレキシブルであり、軽量で壊れにくい素子を得ることができる。また、有機材料を含む溶液の塗布や印刷法を用いた成膜により素子作製が可能な場合があり、大面積の基板に多数の素子を低コストで製造することが可能な場合がある。
【0003】
さらに、トランジスタの検討に用いることができる材料の種類が豊富であるため、分子構造の異なる材料を検討に用いれば、幅広い範囲の特性のバリエーションを有する素子を製造することができる。
【0004】
有機薄膜トランジスタの1種である電界効果型有機薄膜トランジスタでは、ゲート電極に印加される電圧がゲート絶縁層を介して半導体層に作用して、ドレイン電流の電流量を制御する。そのため、ゲート電極と半導体層の間にはゲート絶縁層が形成される。
【0005】
また、電界効果型有機薄膜トランジスタの有機半導体層に用いられる有機半導体化合物は、湿度、酸素等の環境の影響を受けやすく、トランジスタ特性が、湿度、酸素等に起因する経時劣化を起こしやすい。
【0006】
そのため、有機半導体化合物が剥き出しになるボトムゲート型有機薄膜トランジスタ素子構造では、素子構造全体を覆うオーバーコート層を形成して有機半導体化合物を外気との接触から保護することが必須となっている。一方、トップゲート型有機薄膜トランジスタ素子構造では、有機半導体化合物はゲート絶縁層によりコートされて保護されている。
【0007】
このように、有機薄膜トランジスタでは、有機半導体層を覆うオーバーコート層及びゲート絶縁層等を形成するために、絶縁層材料が用いられる。本願明細書では、前記オーバーコート層及びゲート絶縁層のような有機薄膜トランジスタの絶縁層又は絶縁膜を有機薄膜トランジスタ絶縁層という。また、有機薄膜トランジスタ絶縁層を形成するのに用いる材料を有機薄膜トランジスタ絶縁層材料という。
【0008】
有機薄膜トランジスタ絶縁層材料には、絶縁性及び薄膜にしたときの絶縁破壊強度に優れた特性が要求される。また、特にボトムゲート型の電界効果トランジスタでは、有機半導体層がゲート絶縁層に重ねて形成される。そのため、ゲート絶縁層材料には、有機半導体層と良好な界面を形成するための有機半導体化合物との親和性、有機半導体層との界面を形成する膜表面の平坦さ等の特性も要求される。
【0009】
このような要求に応えるものとして、特許文献1には、有機薄膜トランジスタにおけるゲート絶縁層材料としてエポキシ樹脂とシランカップリング剤とを組み合わせて用いることが記載されている。ゲート絶縁層材料の吸湿性が高いとトランジスタ性能の安定性に問題があることから、この課題を解決するために、エポキシ樹脂の硬化反応の際に生成する水酸基とシランカップリング剤を反応させたものである。
【0010】
非特許文献1には、ポリビニルフェノールとメラミン化合物とを熱架橋させた樹脂をゲート絶縁層に用いることが記載されている。メラミン化合物で架橋することによってポリビニルフェノールに含まれる水酸基を除去し、同時に膜強度を高めたものである。このゲート絶縁層を有するペンタセンTFT(薄膜トランジスタ)はヒステリシスが小さく、ゲートバイアス応力に対して耐久性を示す。
【0011】
非特許文献2には、ポリビニルフェノール及びビニルフェノールとメチルメタクリレートとを共重合させたコポリマーをゲート絶縁層に用いることが記載されている。ビニルフェノールの水酸基をメチルメタクリレートのカルボニル基と相互作用させて膜全体の極性を低下させたものである。このゲート絶縁層を有するペンタセンTFTはヒステリシスが小さく、安定した電気特性を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−305950
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.89,093507(2006)
【非特許文献2】Appl.Phys.Lett.92,183306(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)のような発光素子を駆動するなど実用化を考慮すると、有機薄膜トランジスタの動作精度をより向上する必要があり、前記従来のゲート絶縁層を有する有機薄膜トランジスタは閾値電圧(Vth)の絶対値及びヒステリシスが大きい。
【0015】
本発明の目的は、閾値電圧の絶対値及びヒステリシスが小さい有機薄膜トランジスタを製造しうる有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以上の事に鑑み、種々検討を行った結果、炭酸エステル部分を有し、架橋構造を形成しうる特定の樹脂組成物を用いてゲート絶縁層を形成することにより、有機薄膜トランジスタの閾値電圧の絶対値及びヒステリシスを小さくできることを見出し、本発明に至った。
【0017】
即ち、本発明は、式
【0018】
【化1】

(1)
【0019】
[式中、R1は、水素原子又はメチル基を表す。R〜Rは、同一又は相異なり、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Raaは、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。aは、0〜20の整数を表す。Raaが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。]
で表される繰り返し単位、及び、分子内に第1の官能基を2つ以上含有し、該第1の官能基が、電磁波の照射もしくは熱の作用により、活性水素と反応する第2の官能基を生成する官能基である高分子化合物(A)と、
分子内に活性水素を2つ以上含有する低分子化合物及び分子内に活性水素を2つ以上含有する高分子化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)(活性水素化合物(B))とを、含有する有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を提供する。
【0020】
ある一形態においては、前記高分子化合物(A)は、さらに、電磁波の照射又は電子線のエネルギーの吸収により二量化反応を起こす官能基を有する繰り返し単位を含有する。
【0021】
ある実施形態においては、前記電磁波の照射又は電子線のエネルギーの吸収により二量化反応を起こす官能基を有する繰り返し単位が、式
【0022】
【化2】

(2)
【0023】
[式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Rbbは、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。bは、0〜20の整数を表し、cは、1〜5の整数を表す。Rbbが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。]
で表される繰り返し単位及び式
【0024】
【化3】

(3)
【0025】
[式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R〜R13は、同一又は相異なり、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Rccは、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。dは、0〜20の整数を表す。Rccが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。]
で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含む。
【0026】
ある一形態においては、前記第1の官能基が、ブロック化剤でブロックされたイソシアナト基及びブロック化剤でブロックされたイソチオシアナト基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である。
【0027】
ある一形態においては、前記第一の官能基が、式
【0028】
【化4】

(4)
【0029】
[式中、X’は、酸素原子又は硫黄原子を表し、R14、R15は、同一又は相異なり、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。]
で表される基及び式
【0030】
【化5】

(5)
【0031】
[式中、X’は、酸素原子又は硫黄原子を表し、R16〜R18は、同一又は相異なり、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。]
で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である。
【0032】
また、本発明は、ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、有機半導体層と、前記いずれかの有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を用いて形成した絶縁層とを有する有機薄膜トランジスタを提供する。
【0033】
ある一形態においては、前記絶縁層がゲート絶縁層である。
【0034】
また、本発明は、前記有機薄膜トランジスタを含むディスプレイ用部材を提供する。
【0035】
また、本発明は、前記ディスプレイ用部材を含むディスプレイを提供する。
【発明の効果】
【0036】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を用いて形成した絶縁層を有する有機薄膜トランジスタは、閾値電圧の絶対値及びヒステリシスが低い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態であるボトムゲートトップコンタクト型有機薄膜トランジスタの構造を示す模式断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態であるボトムゲートボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタの構造を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本発明をさらに詳細に説明する。
なお、本明細書において、「高分子化合物」とは、分子中に同じ構造単位が複数繰り返された構造を含む化合物をいい、いわゆる2量体もこれに含まれる。一方、「低分子化合物」とは、分子中に同じ構造単位を繰り返し有していない化合物を意味する。
【0039】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料は高分子化合物(A)、及び活性水素化合物(B)を含有する。活性水素とは、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のような炭素原子以外の原子に結合した水素原子をいう。
【0040】
高分子化合物(A)
高分子化合物(A)は炭酸エステル部分(−O−CO−O−)を含有し、電磁波が照射されるか熱が作用した場合に、活性水素と反応する第2の官能基を生成する第1の官能基を複数個有する。
【0041】
有機薄膜トランジスタ絶縁層材料に炭酸エステル部分が導入されていることにより、例えば、該有機薄膜トランジスタ絶縁層材料をゲート絶縁層の形成に用いた場合、有機薄膜トランジスタの閾値電圧の絶対値又はヒステリシスが低下して、動作精度が向上する。また、炭酸エステル部分が導入されると有機薄膜トランジスタ絶縁層材料の誘電率が増大し、例えばゲート絶縁層の形成に使用した場合、有機薄膜トランジスタのゲート容量を向上させ易くなり、有機薄膜トランジスタの駆動電圧を下げやすくなる。
【0042】
また、高分子化合物(A)に含まれる第1の官能基は活性水素と反応しないが、第1の官能基に電磁波が照射又は熱が作用すると第2の官能基が生成し、これが活性水素と反応する。つまり、前記第1の官能基は電磁波又は熱により脱保護されて、活性水素と反応する第2の官能基を生成するものである。第2の官能基は活性水素化合物(B)の活性水素と反応して結合することにより、絶縁層の内部に架橋構造を形成することができる。
【0043】
絶縁層の内部に架橋構造が形成されると、絶縁層中の分子の移動が抑制され、絶縁層の分極が抑制される。分極が抑制された絶縁層を、例えばゲート絶縁層として用いた場合、有機薄膜トランジスタの閾値電圧の絶対値又はヒステリシスが低下して、動作精度が向上する。
【0044】
第2の官能基は、ゲート絶縁層の形成工程において電磁波又は熱が加えられるまで保護(ブロック)されて、第1の官能基として樹脂組成物中に存在する。その結果、樹脂組成物の貯蔵安定性が向上する。
【0045】
例えば、環状炭酸エステル構造を含有する基を有する繰り返し単位と、前記第1の官能基を有する繰り返し単位とを有する高分子化合物は、高分子化合物(A)に該当する。
【0046】
環状炭酸エステル構造を含有する基を有する繰り返し単位は、前記式(1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0047】
式(1)中、R1は、水素原子又はメチル基を表す。ある一形態では、R1は水素原子である。Raaは、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。aは、0〜20の整数を表す。ある一形態では、aは0である。
【0048】
〜Rは、同一又は相異なり、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。ある一形態では、R〜Rは水素原子である。
【0049】
炭素数1〜20の一価の有機基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。
【0050】
炭素数1〜20の一価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状炭化水素基、炭素数3〜20の環状炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が挙げられ、好ましくは、炭素数1〜6の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜6の分岐状炭化水素基、炭素数3〜6の環状炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0051】
炭素数1〜20の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状炭化水素基、炭素数3〜20の環状炭化水素基は、これらの基に含まれる水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。
【0052】
炭素数6〜20の芳香族炭化水素基は、基中の水素原子がアルキル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などで置換されていてもよい。
【0053】
炭素数1〜20の一価の有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチニル基、シクロヘキシニル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、トリル基、キシリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、ジエチルフェニル基、トリエチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、メチルナフチル基、ジメチルナフチル基、トリメチルナフチル基、ビニルナフチル基、エテニルナフチル基、メチルアンスリル基、エチルアンスリル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基が挙げられる。
【0054】
炭素数1〜20の一価の有機基としては、アルキル基が好ましい。
【0055】
前記炭素数1〜20の二価の有機基としては、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、脂肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよく、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含有していてもよい。例えば、炭素数1〜20の二価の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の二価の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の二価の環状炭化水素基、炭素数6〜20の二価の芳香族炭化水素基、−O−CO−、−O−、−CO−NH−、−NH−CO−NH−、−NH−CO−O−が挙げられる。これらの基は、置換基を有していてもよい。中でも、炭素数1〜6の二価の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜6の二価の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜6の二価の環状炭化水素基、二価の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、−O−CO−が好ましい。
【0056】
二価の脂肪族炭化水素基及び二価の環状炭化水素基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピルレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、ジメチルプロピレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、イミノメチレン基、カルボニルイミノメチレン基、イミノカルボニルイミノメチレン基、オキシメチレン基、オキシカルボニルメチレン基、カルボニルオキシメチレン基等が挙げられる。
【0057】
炭素数6〜20の二価の芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基、アンスリレン基、ジメチルフェニレン基、トリメチルフェニレン基、エチレンフェニレン基、ジエチレンフェニレン基、トリエチレンフェニレン基、プロピレンフェニレン基、ブチレンフェニレン基、メチルナフチレン基、ジメチルナフチレン基、トリメチルナフチレン基、ビニルナフチレン基、エテニルナフチレン基、メチルアンスリレン基、エチルアンスリレン基、イミノフェニレン基、カルボニルイミノフェニレン基、イミノカルボニルイミノフェニレン基、オキシフェニレン基、オキシカルボニルフェニレン基、カルボニルオキシフェニレン基等が挙げられる。
【0058】
また、前記第1の官能基の好ましい例としては、ブロック化剤でブロックされたイソシアナト基又はブロック化剤でブロックされたイソチオシアナト基が挙げられる。
【0059】
前記ブロック化剤でブロックされたイソシアナト基又はブロックされたイソチオシアナト基は、イソシアナト基又はイソチオシアナト基と反応しうる活性水素を1分子中に1個だけ有するブロック化剤とイソシアナト基又はイソチオシアナト基とを反応させることにより製造することができる。
【0060】
前記ブロック化剤は、イソシアナト基又はイソチオシアナト基と反応した後でも、170℃以下の温度で解離するものが好ましい。ブロック化剤としては、例えば、アルコ−ル系化合物、フェノ−ル系化合物、活性メチレン系化合物、メルカプタン系化合物、酸アミド系化合物、酸イミド系化合物、イミダゾール系化合物、尿素系化合物、オキシム系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、重亜硫酸塩、ピリジン系化合物、ピラゾール系化合物が挙げられる。これらのブロック化剤は、単独使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。好ましいブロック化剤としては、オキシム系化合物、ピラゾール系化合物が挙げられる。
【0061】
以下に、具体的なブロック化剤を例示する。アルコ−ル系化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等が挙げられる。フェノール系化合物としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等が挙げられる。活性メチレン系化合物としては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等が挙げられる。メルカプタン系化合物としては、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等が挙げられる。酸アミド系化合物としては、アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等、酸イミド系化合物としては、コハク酸イミド、マレイン酸イミド等が挙げられる。イミダゾール系化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール等が挙げられる。尿素系化合物としては、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等が挙げられる。オキシム系化合物としては、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。アミン系化合物としては、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール等が挙げられる。イミン系化合物としては、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。重亜硫酸塩としては、重亜硫酸ソーダ等が挙げられる。ピリジン系化合物としては、2−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシキノリン等が挙げられる。ピラゾール系化合物としては、3,5−ジメチルピラゾール、3,5−ジエチルピラゾール等が挙げられる。
【0062】
本発明に用いてもよいブロック化剤でブロックされたイソシアナト基又はイソチアシアナト基としては、前記式(4)で表される基又は前記式(5)で表される基が好ましい。
【0063】
式(4)及び式(5)中、X’は、酸素原子又は硫黄原子を表し、R14〜R18は、同一又は相異なり、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。一価の有機基の定義、具体例等は、前述の一価の有機基の定義、具体例等と同様である。
【0064】
ある一形態では、R14及びR15は、同一又は相異なり、メチル基及びエチル基からなる群から選択される基である。また、他の一形態では、R16〜R18は水素原子である。
【0065】
ブロック化剤でブロックされたイソシアナト基としては、例えば、O−(メチリデンアミノ)カルボキシアミノ基、O−(1−エチリデンアミノ)カルボキシアミノ基、O−(1−メチルエチリデンアミノ)カルボキシアミノ基、O−[1−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ基、(N−3,5−ジメチルピラゾリルカルボニル)アミノ基、(N−3−エチル−5−メチルピラゾリルカルボニル)アミノ基、(N−3,5−ジエチルピラゾリルカルボニル)アミノ基、(N−3−プロピル−5−メチルピラゾリルカルボニル)アミノ基、(N−3−エチル−5−プロピルピラゾリルカルボニル)アミノ基等が挙げられる。
【0066】
ブロック化剤でブロックされたイソチオシアナト基としては、例えば、O−(メチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ基、O−(1−エチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ基、O−(1−メチルエチリデンアミノ)チオカルボキシアミノ基、O−[1−メチルプロピリデンアミノ]チオカルボキシアミノ基、(N−3,5−ジメチルピラゾリルチオカルボニル)アミノ基、(N−3−エチル−5−メチルピラゾリルチオカルボニル)アミノ基、(N−3,5−ジエチルピラゾリルチオカルボニル)アミノ基、(N−3−プロピル−5−メチルピラゾリルチオカルボニル)アミノ基、(N−3−エチル−5−プロピルピラゾリルチオカルボニル)アミノ基等が挙げられる。
【0067】
本発明に用いられる、第1の官能基としては、ブロック化剤でブロックされたイソシアナト基が好ましい。
【0068】
高分子化合物(A)は、さらに、電磁波の照射又は電子線のエネルギーの吸収により二量化反応を起こす官能基(本明細書中「光二量化反応基」という。)を複数個有することが好ましい。2種類の架橋の機構を併用することで有機薄膜トランジスタ絶縁層の架橋密度を高め易くなる。
【0069】
光二量化反応基が吸収する電磁波は、あまりに低エネルギーであると有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を光重合法によって形成する際に光二量化反応基も反応してしまう場合があるため、高エネルギーの電磁波が好ましい。光二量化反応基が吸収するのに好ましい電磁波は、紫外線、例えば波長が400nm以下、好ましくは150〜380nmの電磁波である。
【0070】
ここでいう二量化とは、有機化合物の分子2個が化学的に結合することをいう。結合する分子同士は同種でも異種でもよい。二量化する2個の分子中の二量化に関与する官能基同士の化学構造も同一であっても異なっていてもよい。但し、当該官能基は、触媒及び開始剤等の反応助剤を用いることなく光二量化反応を生じる構造、および組合せであることが好ましい。反応助剤の残基に接触すると周辺の有機材料が劣化する可能性があるからである。
【0071】
好ましい光二量化反応基の例は、水素原子がハロメチル基で置換されたアリール基、2位の水素原子がアリール基で置換されたビニル基、β位の水素原子がアリール基で置換されたα,β−不飽和カルボニル基、β位の水素原子がアリール基で置換されたα,β−不飽和カルボニルオキシ基である。中でも、水素原子がハロメチル基で置換されたフェニル基、2位の水素原子がフェニル基で置換されたビニル基、β位の水素原子がフェニル基で置換されたα,β−不飽和カルボニル基、β位の水素原子がフェニル基で置換されたα,β−不飽和カルボニルオキシ基が好ましい。繰り返し単位の側鎖基の基本骨格がアリール基であると、有機半導体のような他の有機材料に対する親和性が向上し、絶縁層の露出面に接して平坦な層を形成し易くなる。
【0072】
水素原子がハロメチル基で置換されたアリール基は、紫外線又は電子線を照射するとハロゲンが脱離して、ベンジル型のカルボラジカルが生成する。生成した2個のカルボラジカルが結合すると、炭素炭素結合が形成されて、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料が架橋される。前記カルボラジカルの結合は、いわゆる「ラジカルカップリング」である。また、2位の水素原子がアリール基で置換されたビニル基、β位の水素原子がアリール基で置換されたα,β−不飽和カルボニル基、β位の水素原子がアリール基で置換されたα,β−不飽和カルボニルオキシ基の場合には、紫外線又は電子線を照射すると2+2環化反応が生じ、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料が架橋される。
【0073】
特に好ましい光二量化反応基は、β位の水素原子がアリール基で置換されたα,β−不飽和カルボニルオキシ基である。これらの基は比較的感度が高く、架橋構造を形成するのに長時間の紫外線又は電子線の照射を必要としない。
【0074】
光二量化反応基を有する繰り返し単位は、前記式(2)で表される繰り返し単位、前記式(3)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0075】
式(2)及び式(3)中、R及びRは、同一又は相異なり、水素原子又はメチル基を表す。ある一形態では、R、Rは水素原子であり、他の一形態では、Rは水素原子である。Rbb及びRccは、同一又は相異なり、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。b及びdは、0〜20の整数を表す。bとdは、異なる数値であってもよい。ある一形態では、bは0である。他の一形態では、dは1であり、Rccが−O−CO−である。
【0076】
Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。ある一形態では、Xは塩素原子である。
cは、1〜5の整数を表す。ある一形態ではcは1である。
【0077】
R、R〜R13は、同一又は相異なり、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。ある一形態では、Rは水素原子である。他の一形態では、R〜R13は水素原子である。
【0078】
R、R〜R13で表される炭素数1〜20の一価の有機基と具体例としては、Rで表される炭素数1〜20の一価の有機基と具体例と同じ基が挙げられる。Rbb、Rccで表される炭素数1〜20の二価の有機基と具体例としては、Raaで表される炭素数1〜20の二価の有機基と具体例と同じ基が挙げられる。
【0079】
高分子化合物(A)は、例えば、式(1)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーと、第1の官能基を含有する重合性モノマーとを、光重合開始剤もしくは熱重合開始剤を用いて共重合させる方法により製造することが出来る。高分子化合物(A)に光二量化反応基を含ませる場合は、その際に、式(2)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマー又は式(3)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーを共重合させてよい。
【0080】
式(1)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーとしては、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−アクリロイルオキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メタクリロイルオキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン等が挙げられる。
【0081】
式(2)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーとしては、3−クロロメチルスチレン、4−クロロメチルスチレン、3−ブロモメチルスチレン、4−ブロモメチルスチレン等が挙げられる。
【0082】
式(3)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーとしては、ビニルシンナメート、シンナミルメタクリレート、シンナモイルオキシブチルメタクリレート、シンナミルイミノオキシイミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0083】
第1の官能基を含有する重合性モノマーとしては、ブロック化剤でブロックされたイソシアナト基又はブロック化剤でブロックされたイソチオシアナト基と不飽和結合とを分子内に有するモノマーが挙げられる。該ブロック化剤でブロックされたイソシアナト基又はブロック化剤でブロックされたイソチオシアナト基と不飽和結合とを分子内に有するモノマーは、イソシアナト基又はイソチオシアナト基と不飽和結合とを分子内に有する化合物と、ブロック化剤とを反応させることにより製造することが出来る。不飽和結合としては、不飽和二重結合が好ましい。
【0084】
以下、特に断らない限り、重合性モノマーとは、不飽和結合を含有する単量体化合物を意味する。不飽和結合は、好ましくは、不飽和二重結合である。
【0085】
分子内に不飽和二重結合とイソシアナト基とを有する化合物としては、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(2’−メタクリロイルオキシエチル)オキシエチルイソシアネート等が挙げられる。分子内に不飽和二重結合とイソチオシアナト基とを有する化合物としては、2−アクリロイルオキシエチルイソチオシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソチオシアネート、2−(2’−メタクリロイルオキシエチル)オキシエチルイソチオシアネート等が挙げられる。
【0086】
重合性モノマーに含まれるブロック化剤としては、前記のブロック化剤を好適に用いることが出来る。ブロック化剤でブロックされたイソシアナト基又はブロック化剤でブロックされたイソチオシアナト基と不飽和結合とを分子内に有するモノマーの製造においては、必要に応じて有機溶媒、触媒等を添加することが出来る。
【0087】
前記分子内にブロック化剤でブロックされたイソシアナト基と不飽和二重結合とを有するモノマーとしては、2−〔O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート、2−〔N−[1’、3’−ジメチルピラゾリル]カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート等が挙げられる。
【0088】
前記分子内にブロック化剤でブロックされたイソチオシアナト基と不飽和二重結合とを有するモノマーとしては、2−〔O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]チオカルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート、2−〔N−[1’、3’−ジメチルピラゾリル] チオカルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート等が挙げられる。
【0089】
前記光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾフェノン、メチル(o−ベンゾイル)ベンゾエート、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインオクチルエーテル、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ジアセチル等のカルボニル化合物、メチルアントラキノン、クロロアントラキノン、クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のアントラキノン 又はチオキサントン誘導体、ジフェニルジスルフィド、ジチオカーバメート等の硫黄化合物が挙げられる。
【0090】
共重合を開始させるエネルギーとして光エネルギーを用いる場合は、重合性モノマーに照射する光の波長は、360nm以上、好ましくは360〜450nmである。
【0091】
前記熱重合開始剤としては、ラジカル重合の開始剤となるものであればよく、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、1、1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩等のアゾ系化合物、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド等のケトンパーオキシド類、イソブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、o−メチルベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、2,4,4−トリメチルペンチル−2−ヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド類、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、トリス(tert−ブチルパーオキシ)トリアジン等のジアルキルパーオキシド類、1,1−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−tert−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−tert−ブチルパーオキシアゼレート、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−tert−ブチルパーオキシトリメチルアジペート等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシカーボネート類が挙げられる。
【0092】
本発明に用いられる高分子化合物(A)は、式(1)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマー、式(2)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマー、式(3)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマー、第1の官能基を含有する重合性モノマー以外の他の重合しうるモノマーを重合時に添加製造してもよい。
【0093】
他の重合しうるモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル及びその誘導体、メタアクリル酸エステル及びその誘導体、スチレン及びその誘導体、酢酸ビニル及びその誘導体、メタアクリロニトリル及びその誘導体、アクリロニトリル及びその誘導体、有機カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体、有機カルボン酸のアリルエステル及びその誘導体、フマル酸のジアルキルエステル及びその誘導体、マレイン酸のジアルキルエステル及びその誘導体、イタコン酸のジアルキルエステル及びその誘導体、有機カルボン酸のN−ビニルアミド誘導体、マレイミド及びその誘導体、末端不飽和炭化水素及びその誘導体等、有機ゲルマニウム誘導体等が挙げられる。
【0094】
他の重合しうるモノマーの種類は、絶縁層に要求される特性に応じて適宜選択される。優れた耐久性や有機薄膜トランジスタのヒステリシスを小さくする観点からは、スチレンやスチレン誘導体のように分子密度が高く、硬い膜を形成するモノマーが選択される。また、ゲート電極や基板の表面等の絶縁層の隣接面に対する密着性の観点からは、メタアクリル酸エステル及びその誘導体、アクリル酸エステル及びその誘導体のように、柔軟性を付与するモノマーが選択される。好ましい一形態では、メチル基、エチル基等のアルキル基のような活性水素含有基を有しないモノマーが選択される。
【0095】
例えば、式(1)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマー、式(2)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマー、第1の官能基を含有する重合性モノマーに加え、活性水素含有基を有しないスチレン又はスチレン誘導体を組み合わせて反応に用いることにより、特に耐久性が高く、ヒステリシスが小さいゲート絶縁層が得られる。
【0096】
アクリル酸エステル類及びその誘導体としては、単官能のアクリレートや、使用量に制約は出てくるが多官能のアクリレートをも使用することができ、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−sec−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシフェニルエチル、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチルアクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルアクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルアクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリンを挙げることができる。
【0097】
メタアクリル酸エステル類及びその誘導体としては、単官能のメタアクリレートや、使用量に制約は出てくるが多官能のメタアクリレートをも使用することができ、例えば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸−n−プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸−n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸−sec−ブチル、メタアクリル酸ヘキシル、メタアクリル酸オクチル、メタアクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシフェニルエチル、エチレングリコールジメタアクリレート、プロピレングリコールジメタアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタアクリレート、ジエチレングリコールジメタアクリレート、トリエチレングリコールジメタアクリレート、トリメチロールプロパンジメタアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルメタアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルメタアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルメタアクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチルメタアクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルメタアクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルメタアクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルメタアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタアクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタアクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルメタアクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルメタアクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルメタアクリレート、N,N−ジメチルメタアクリルアミド、N,N−ジエチルメタアクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリンを挙げることができる。
【0098】
スチレン及びその誘導体としては、スチレン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2,4,5−トリメチルスチレン、ペンタメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−ビニルビフェニル、3−ビニルビフェニル、4−ビニルビフェニル、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、4−ビニル−p−ターフェニル、1−ビニルアントラセン、α−メチルスチレン、o−イソプロペニルトルエン、m−イソプロペニルトルエン、p−イソプロペニルトルエン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、2,3−ジメチル−α−メチルスチレン、3,5−ジメチル−α−メチルスチレン、p−イソプロピル−α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロピルベンゼン、4−アミノスチレン等が挙げられる。
【0099】
アクリルニトリル及びその誘導体としては、アクリロニトリル等が挙げられる。メタアクリルニトリル及びその誘導体としては、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0100】
有機カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、アジピン酸ジビニル等が挙げられる。
【0101】
有機カルボン酸のアリルエステル及びその誘導体としては、酢酸アリル、安息香酸アリル、アジピン酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル等が挙げられる。
【0102】
フマル酸のジアルキルエステル及びその誘導体としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ−sec−ブチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジ−n−ブチル、フマル酸ジ−2−エチルヘキシル、フマル酸ジベンジル等が挙げられる。
【0103】
マレイン酸のジアルキルエステル及びその誘導体としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジ−sec−ブチル、マレイン酸ジイソブチル、マレイン酸ジ−n−ブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル、マレイン酸ジベンジル等が挙げられる。
【0104】
イタコン酸のジアルキルエステル及びその誘導体としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピル、イタコン酸ジ−sec−ブチル、イタコン酸ジイソブチル、イタコン酸ジ−n−ブチル、イタコン酸ジ−2−エチルヘキシル、イタコン酸ジベンジル等が挙げられる。
【0105】
有機カルボン酸のN−ビニルアミド誘導体としては、N−メチル−N−ビニルアセトアミド等が挙げられる。
【0106】
マレイミド及びその誘導体としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0107】
末端不飽和炭化水素及びその誘導体としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサン、塩化ビニル、アリルアルコール等が挙げられる。
【0108】
有機ゲルマニウム誘導体としては、アリルトリメチルゲルマニウム、アリルトリエチルゲルマニウム、アリルトリブチルゲルマニウム、トリメチルビニルゲルマニウム、トリエチルビニルゲルマニウム等が挙げられる。
【0109】
これらのうちでは、アクリル酸アルキルエステル、メタアクリル酸アルキルエステル、スチレン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アリルトリメチルゲルマニウムが好ましい。
【0110】
前記式(1)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーの使用量は、高分子化合物(A)に導入される炭酸エステル部分の量が適量になるように調節される。
【0111】
高分子化合物(A)に導入される式(1)で表される繰り返し単位の量は、高分子化合物(A)が有する繰り返し単位の合計に対して、好ましくは1〜80モル%であり、より好ましくは5〜70モル%であり、さらに好ましくは10〜60モル%である。
【0112】
好ましい一形態においては、高分子化合物(A)に導入される式(1)で表される繰り返し単位の量は、高分子化合物(A)が有する繰り返し単位の合計に対して10〜90モル%であり、好ましくは30〜85モル%であり、さらに好ましくは45〜75モル%である。
【0113】
式(1)で表される繰り返し単位の量が1モル%未満であると電界効果型有機薄膜トランジスタのヒステリシスを低下させる効果が不十分となることがあり、90モル%を超えると有機半導体材料との親和性が悪化して活性層をその上に積層するのが困難になることがある。
【0114】
高分子化合物(A)を製造する際、ブロック化剤でブロックされたイソシアナト基又はブロック化剤でブロックされたイソチオシアナト基を含有する重合性モノマーの仕込みモル比は、全ての重合に関与する重合性モノマー中、5〜50モル%であり、好ましくは5〜40モル%、より好ましくは10〜30モル%である。前記重合性モノマーの仕込みモル比をこの範囲に調節することにより、絶縁層の内部に架橋構造が十分形成され、極性基の含有量が低いレベルに保たれ、絶縁層の分極が抑制される。
【0115】
高分子化合物(A)が、式(2)で表される繰り返し単位及び式(3)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含む場合、式(1)で表される繰り返し単位の数を100とした場合、式(2)で表される繰り返し単位の数と式(3)で表される繰り返し単位の数の合計は、100以下、例えば、5〜100、好ましくは10〜100、より好ましくは10〜50、更に好ましくは10〜20である。この数の合計が100を超えると保存安定性が低下することがある。
【0116】
高分子化合物(A)は、重量平均分子量が3000〜1000000であってよく、好ましくは5000〜500000であり、より好ましくは10000〜100000、例えば、20000〜80000である。重量平均分子量は、例えば、ポリスチレンを基準として用いて換算することにより決定される。高分子化合物(A)は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0117】
本発明に用いられる式(1)で表される繰り返し単位を含有し、かつ、分子内に電磁波の照射もしくは熱の作用により活性水素と反応する第2の官能基を生成する第1の官能基を2つ以上含有する高分子化合物としては、例えば、ポリ(4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−[2−〔1’−(3’、5’−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(スチレン−コ−3−クロロメチルスチレン−コ−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(スチレン−コ−3−クロロメチルスチレン−コ−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−[2−〔1’−(3’、5’−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(スチレン−コ−3−クロロメチルスチレン−コ−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(スチレン−コ−3−クロロメチルスチレン−コ−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔1’−(3’、5’−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(スチレン−コ−3−クロロメチルスチレン−コ−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート]−コ−アリルトリメチルゲルマニウム)、ポリ(スチレン−コ−3−クロロメチルスチレン−コ−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔1’−(3’、5’−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート]−コ−アリルトリメチルゲルマニウム)、ポリ(3−クロロメチルスチレン−コ−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(3−クロロメチルスチレン−コ−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−[2−〔1’−(3’、5’−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−4−クロロメチルスチレン−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−4−クロロメチルスチレン−コ−[2−〔1’−(3’、5’−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−3−クロロメチルスチレン−コ−4−クロロメチルスチレン−コ−ペンタフルオロスチレン−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(スチレン−コ−ビニルシンナメート−コ−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(スチレン−コ−ビニルシンナメート−コ−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−[2−〔1’−(3’、5’−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(スチレン−コ−ビニルシンナメート−コ−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(スチレン−コ−ビニルシンナメート−コ−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔1’−(3’、5’−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(スチレン−コ−ビニルシンナメート−コ−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート]−コ−アリルトリメチルゲルマニウム)、ポリ(スチレン−コ−ビニルシンナメート−コ−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔1’−(3’、5’−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート] −コ−アリルトリメチルゲルマニウム)、ポリ(ビニルシンナメート−コ−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(ビニルシンナメート−コ−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−[2−〔1’−(3’、5’−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−ビニルシンナメート−コ−[2−〔1’−(3’、5’−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(スチレン−コ−ビニルシンナメート−コ−4−クロロメチルスチレン−コ−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])等が挙げられる。
【0118】
活性水素化合物(B)
活性水素化合物(B)は、分子内に活性水素を2つ以上含有する低分子化合物、又は分子内に活性水素を2つ以上含有する高分子化合物である。活性水素としては、典型的にはアミノ基、ヒドロキシ基又はメルカプト基等に含まれる水素原子が挙げられる。活性水素としては、上述した反応性官能基、中でもイソシアナト基、イソチオシアナト基との反応を良好に生じることができるフェノール性ヒドロキシ基中のヒドロキシル基に含まれる水素、アルコール性ヒドロキシ基中のヒドロキシ基、芳香族アミノ基中のアミノ基に含まれる水素が好適である。
【0119】
分子内に活性水素を2つ以上含有する低分子化合物の具体例としては、2個以上の活性水素含有基が低分子(単量体)構造に結合した構造を有する化合物が挙げられる。この低分子構造としては、例えば、アルキル構造やベンゼン環構造が挙げられる。該低分子化合物の具体例としては、アミン系化合物、アルコール系化合物、フェノール系化合物又はチオール系化合物が挙げられる。
【0120】
アミン系化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’,−テトラアミノエチルエチレンジアミン、オルト−フェニレンジアミン、メタ−フェニレンジアミン、パラ−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−パラ−フェニレンジアミン、メラミン、2,4,6−トリアミノピリミジン、1,5,9−トリアザシクロドデカン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,4−ビス(3−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリス(トリメチルシロキシ)シラン等が挙げられる。
【0121】
アルコール系化合物としては、エチレングリコール、1,2−ジヒドロキシプロパン、グリセロール、1,4−ジメタノールベンゼン等が挙げられる。
【0122】
フェノール系化合物としては、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)、1,2−ジヒドロキシナフタレン、レゾルシン、フルオログリセロール、2,3,4−トリヒドロキシベンズアルデハイド、3,4,5−トリヒドロキシベンズアミド等が挙げられる。
【0123】
チオール系化合物としては、エチレンジチオール、パラ−フェニレンジチオール等が挙げられる。
【0124】
分子内に活性水素を2つ以上含有する低分子化合物としては、アルコール系化合物、フェノール系化合物、芳香族アミン系化合物が好ましい。
【0125】
一方、前記分子内に活性水素を2つ以上含有する高分子化合物においては、活性水素は、高分子化合物を構成する主鎖に直接結合していてもよく、所定の基を介して結合していてもよい。また、活性水素は、高分子化合物を構成する構造単位に含まれていてもよく、その場合は、各構造単位に含まれていてもよく、一部の構造単位にのみ含まれていてもよい。さらに、活性水素は、高分子化合物の末端にのみ結合していてもよい。
【0126】
分子内に活性水素を2つ以上含有する高分子化合物の具体例としては、2個以上の活性水素を含有する基が高分子(重合体)構造に結合した構造を有する化合物が挙げられる。活性水素を含有する基としては、アミノ基、ヒドロキシル基及びメルカプト基等が挙げられる。これらの中でも好ましいものは、イソシアナト基又はイソチオシアナト基との反応性が良好なアミノ基及びヒドロキシル基である。
【0127】
かかる高分子化合物は、活性水素を含有する基を分子内に含有する重合性モノマーを単独で重合させるか、他の共重合性化合物と共重合させて重合体を形成することによって製造される。
【0128】
分子内に活性水素を2つ以上含有する高分子化合物を製造する際、活性水素を含有する基を含有する重合性モノマーの仕込みモル比は、全ての重合に関与する重合性モノマー中、好ましくは1〜50モル%であり、より好ましくは3〜30モル%であり、さらに好ましくは5〜20モル%である。前記重合性モノマーの仕込みモル比をこの範囲に調節することにより、絶縁層の内部に架橋構造が十分形成される。
【0129】
分子内に活性水素を2つ以上含有する高分子化合物は、環状炭酸エステル構造を含有する基を有することが好ましい。そうすることで、高分子化合物(A)との相溶性が良好となる。その場合は、式(1)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーを前記他の共重合性化合物として使用する。
【0130】
分子内に活性水素を2つ以上含有する高分子化合物に導入される式(1)で表される繰り返し単位の量は、前記高分子化合物が有する繰り返し単位の合計に対して、10〜90モル%であり、好ましくは30〜85モル%であり、さらに好ましくは45〜75モル%である。式(1)で表される繰り返し単位の量が10モル%未満であると高分子化合物(A)との相溶性が悪くなることがあり、90モル%を超えると架橋構造の形成が不十分になることがある。
【0131】
有機薄膜トランジスタ絶縁層の架橋密度を高めるためには、分子内に活性水素を2つ以上含有する高分子化合物が光二量化反応基を含むことが好ましい。その場合は、式(2)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマー又は式(3)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーを、前記他の共重合性化合物として使用する。
【0132】
分子内に活性水素を2つ以上含有する高分子化合物が、式(2)で表される繰り返し単位及び式(3)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含む場合、前記繰り返し単位の量は、前記高分子化合物が有する繰り返し単位の合計に対して、50モル%以下であり、好ましくは3〜30モル%であり、さらに好ましくは5〜25モル%である。前記繰り返し単位の量が50モル%を超えると保存安定性が低下することがある。
【0133】
これら重合性モノマーの重合の際には、光重合開始剤や熱重合開始剤を適用してもよい。なお、重合性モノマー、光重合開始剤、熱重合開始剤としては、上述したものと同様のものを適用できる。
【0134】
活性水素を含有する基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、アミノスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルベンジルアルコール、アミノエチルメタクリレート、エチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルアクリレート等が挙げられる。
活性水素を含有する基を含有する重合性モノマーとしては、分子内に水酸基を有するものが好ましい。
【0135】
また、分子内に活性水素を2つ以上含有する高分子化合物としては、フェノール化合物と、ホルムアルデヒドとを、酸触媒の存在下で縮合させることによって得られた、ノボラック樹脂も好適に用いられる。
【0136】
分子内に活性水素を含有する基を2個以上含有する高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、1000〜1000000であってよく、好ましくは3000〜500000であり、より好ましくは10000〜100000、例えば、20000〜50000である。これにより、絶縁層の平坦性及び均一性が良好となるという効果が得られるようになる。
【0137】
有機薄膜トランジスタ絶縁層材料
高分子化合物(A)と活性水素化合物(B)とを混合することにより有機薄膜トランジスタ絶縁層材料が得られる。両者の混合割合は、高分子化合物(A)に電磁波を照射する若しくは高分子化合物(A)を加熱することにより生成する第2の官能基と、活性水素化合物(B)の活性水素を含有する基とがモル比で、好ましくは60/100〜150/100、より好ましくは70/100〜120/100、さらに好ましくは90/100〜110/100となるように調節される。この割合が60/100未満であると活性水素が過剰になりヒステリシスの低下効果が小さくなることがあり、150/100を超えると活性水素と反応する官能基が過剰になり閾値電圧の絶対値が大きくなることがある。
【0138】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料には、混合や粘度調節のための溶媒や、高分子化合物(A)を架橋させるために用いる架橋剤と組み合わせて用いられる添加剤などを含有させてよい。使用される溶媒はテトラヒドロフランやジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶媒、ペンテン等の不飽和炭化水素系溶媒、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトンなどのケトン系溶媒、ブチルアセテートなどのアセテート系溶媒、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒またはこれらの混合溶媒である。
【0139】
また、添加剤としては、架橋反応を促進するための触媒、レベリング剤、粘度調節剤、光二量化反応基を含有する含フッ素樹脂などを用いることができる。光二量化反応基を含有する含フッ素樹脂は表面自由エネルギーを下げる効果があるため、本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料の添加剤として特に好ましい。
【0140】
光二量化反応基を含有する含フッ素樹脂はフッ素原子を分子内に含有する重合性モノマーと式(2)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマー又は式(3)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーとを共重合させるか、更に他の共重合性化合物と共重合させて重合体を形成することによって製造される。
【0141】
フッ素原子を含有する重合性モノマーとしては、2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン、2−トリフルオロメチルスチレン、3−トリフルオロメチルスチレン、4−トリフルオロメチルスチレン、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチルアクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルアクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルアクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルメタアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルメタアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルメタアクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチルメタアクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルメタアクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルメタアクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルメタアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタアクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタアクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルメタアクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルメタアクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルメタアクリレート等を挙げることができる。
【0142】
前記含フッ素樹脂を製造する際、フッ素原子を含有する重合性モノマーの仕込みモル比は、全ての重合に関与する重合性モノマー中、10〜90モル%であり、好ましくは30〜85モル%であり、さらに好ましくは45〜75モル%である。フッ素原子を含有する重合性モノマーの量が1モル%未満であると電界効果型有機薄膜トランジスタのヒステリシスを低下させる効果が不十分となることがあり、90モル%を超えると有機半導体材料との親和性が悪化して活性層をその上に積層するのが困難になることがある。
【0143】
また、前記含フッ素樹脂中、式(2)で表される繰り返し単位又は式(3)で表される繰り返し単位の量は、前記含フッ素樹脂が有する繰り返し単位の合計に対して、好ましくは1〜50モル%であり、より好ましくは3〜30モル%であり、さらに好ましくは5〜20モル%である。前記重合性モノマーの量が1モル%未満であると架橋構造形成が不十分となることがあり、50モル%を超えると保存安定性が低下することがある。
【0144】
前記含フッ素樹脂は、環状炭酸エステル構造を含有する基を有することが好ましい。そうすることで、高分子化合物(A)および活性水素化合物(B)との相溶性が良好となる。その場合は、式(1)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーを前記他の共重合性化合物として使用する。
【0145】
前記含フッ素樹脂中、式(1)で表される繰り返し単位の量は、前記高分子化合物が有する繰り返し単位の合計に対して、50モル%以下であり、好ましくは3〜30モル%であり、さらに好ましくは5〜25モル%である。前記繰り返し単位の量が50モル%を超えると有機半導体材料との親和性が悪化して活性層をその上に積層するのが困難になることがある。
【0146】
前記含フッ素樹脂の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料に対する添加量は、固形分を基準にして、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料中の含フッ素樹脂の濃度が0.1〜50重量%、より好ましくは1〜40重量%、更に好ましくは5〜30重量%になるように調節される。前記含フッ素樹脂の添加量が前記上限を超えると有機薄膜トランジスタ絶縁層の平坦性が悪くなることがある。
【0147】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料は、有機薄膜トランジスタに含まれる絶縁層の形成に用いられる組成物である。有機薄膜トランジスタのオーバーコート層又はゲート絶縁層、特にゲート絶縁層の形成に用いられることが好ましい。有機薄膜トランジスタ絶縁層材料としては、有機薄膜トランジスタオーバーコート層組成物、有機薄膜トランジスタゲート絶縁層組成物であることが好ましく、有機薄膜トランジスタゲート絶縁層組成物であることがより好ましい。
【0148】
有機薄膜トランジスタ
図1は、本発明の一実施形態であるボトムゲートトップコンタクト型有機薄膜トランジスタの構造を示す模式断面図である。この有機薄膜トランジスタには、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極2と、ゲート電極2上に形成されたゲート絶縁層3と、ゲート絶縁層3上に形成された有機半導体層4と、有機半導体層4上にチャネル部を挟んで形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、素子全体を覆うオーバーコート7とが、備えられている。
【0149】
ボトムゲートトップコンタクト型有機薄膜トランジスタは、例えば、基板上にゲート電極を形成し、ゲート電極上にゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層上に有機半導体層を形成し、有機半導体層上にソース電極、ドレイン電極を形成し、オーバーコートを形成することで製造することができる。本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料は、有機薄膜トランジスタゲート絶縁層組成物として、ゲート絶縁層の形成に好適に用いられる。また、有機薄膜トランジスタオーバーコート層組成物として、オーバーコート層の形成に用いることもできる。
【0150】
図2は、本発明の一実施形態であるボトムゲートボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタの構造を示す模式断面図である。この有機薄膜トランジスタには、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極2と、ゲート電極2上に形成されたゲート絶縁層3と、ゲート絶縁層3上にチャネル部を挟んで形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6上に形成された有機半導体層4と、素子全体を覆うオーバーコート7とが、備えられている。
【0151】
ボトムゲートボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタは、例えば、基板上にゲート電極を形成し、ゲート電極上にゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層上にソース電極、ドレイン電極を形成し、ソース電極、ドレイン電極上に有機半導体層を形成し、オーバーコートを形成することで製造することができる。本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料は、有機薄膜トランジスタゲート絶縁層組成物として、ゲート絶縁層の形成に好適に用いられる。また、有機薄膜トランジスタオーバーコート層組成物として、オーバーコート層の形成に用いることもできる。
【0152】
ゲート絶縁層又はオーバーコート層の形成は、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料に要すれば溶媒などを添加して絶縁層塗布液を調製し、絶縁層塗布液を、ゲート絶縁層又はオーバーコート層の下に位置することになる層の表面に塗布、乾燥、硬化させることにより行う。該絶縁層塗布液に用いられる有機溶媒としては、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を溶解させるものであれば特に制限は無いが、好ましくは、常圧での沸点が100℃〜200℃の有機溶媒である。該有機溶媒としては、2−ヘプタノン(沸点151℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)等が挙げられる。該絶縁層塗布液には、必要に応じてレベリング剤、界面活性剤、硬化触媒等を添加することができる。本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料は、有機薄膜トランジスタゲート絶縁層組成物として、ゲート絶縁層の形成に用いることもできる。
【0153】
該絶縁層塗布液は公知のスピンコート、ダイコーター、スクリーン印刷、インクジェット等によりゲート電極上に塗布することができる。形成される塗布層は必要に応じて乾燥させる。ここでいう乾燥は、塗布された樹脂組成物の溶媒を除去することを意味する。
【0154】
乾燥させた塗布層は、次いで硬化させる。硬化は有機薄膜トランジスタ絶縁層材料が架橋することを意味する。トランジスタ絶縁層材料の架橋は、例えば、塗布層に対して電磁波又は熱を印加することにより行われる。そうすると、高分子化合物(A)の第1の官能基から第2の官能基が生成して、活性水素化合物(B)の活性水素含有基と反応するからである。
【0155】
又は、トランジスタ絶縁層材料の架橋は、例えば、塗布層に対して光を照射することにより行われる。そうすると、高分子化合物(A)の光二量化反応基のラジカルカップリング反応又は環化反応により、二量化するからである。
【0156】
塗布層に対する電磁波又は熱の印加、塗布層に対する光の照射は両方行うことが好ましい。絶縁層の架橋密度が向上するからである。絶縁層の架橋密度が向上すると電圧印加時の分極がより抑制されると考えられる。その結果、特にゲート絶縁層として使用する場合には、有機薄膜トランジスタの閾値電圧(Vth)の絶対値及びヒステリシスが小さくなる。
【0157】
塗布層に熱を印加する場合は、塗布層を約80〜250℃、好ましくは約100〜230℃の温度に加熱して約5〜120分、好ましくは約10〜60分維持する。加熱温度が低すぎたり加熱時間が短すぎると絶縁層中の化合物の架橋が不十分になり、加熱温度が高すぎたり加熱時間が長すぎると絶縁層が損傷する可能性がある。塗布層に電磁波を印加する場合又はマイクロ波加熱する場合は、塗布層に与える影響が加熱した場合と同様になるように、印加条件を調節する。
【0158】
光二量化反応基が、水素原子がハロメチル基で置換されたアリール基である場合、該基は電磁波の照射又は電子線のエネルギーの吸収、好ましくは紫外線の照射又は電子線のエネルギーの吸収により相互に結合する。照射する電磁波の波長は360nm以下、好ましくは150〜300nmである。照射する電磁波の波長が360nmを越えると有機薄膜トランジスタ絶縁層材料に含まれる化合物の架橋が不十分になる場合がある。
【0159】
光二量化反応基が、2位の水素原子がアリール基で置換されたビニル基、β位の水素原子がアリール基で置換されたα,β−不飽和カルボニル基、β位の水素原子がアリール基で置換されたα,β−不飽和カルボニルオキシ基である場合、これらの基は電磁波の照射又は電子線のエネルギーの吸収、好ましくは紫外線の照射又は電子線のエネルギーの吸収により相互に結合する。照射する電磁波の波長は400nm以下、好ましくは150〜380nmである。照射する電磁波の波長が400nmを越えると有機薄膜トランジスタ絶縁層材料に含まれる化合物の架橋が不十分になる場合がある。
【0160】
紫外線の照射は、例えば、半導体の製造のために使用されている露光装置やUV硬化性樹脂を硬化させるために使用されているUVランプを用いて行うことができる。電子線の照射は、例えば、超小型電子線照射管を用いて行うことができる。加熱はヒーター及びオーブンなどを用いて行うことができる。その他の照射条件及び加熱条件は、光二量化反応基の種類及び量等に応じて適宜決定される。
【0161】
ゲート絶縁層上には、自己組織化単分子膜層を形成してもよい。該自己組織化単分子膜層は、例えば、有機溶媒中にアルキルクロロシラン化合物もしくはアルキルアルコキシシラン化合物を1〜10重量%溶解した溶液でゲート絶縁膜を処理することにより形成することが出来る。
【0162】
アルキルクロロシラン化合物としては、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン等が挙げられる。
アルキルアルコキシシラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0163】
基板1、ゲート電極2、ソース電極5、ドレイン電極6及び有機半導体層4は、通常使用される材料及び方法で構成すればよい。基板の材料には樹脂やプラスチックの板やフィルム、ガラス板、シリコン板などが用いられる。電極の材料には、クロム、金、銀、アルミニウム、モリブデン等を用い、蒸着法、スパッタ法、印刷法、インクジェット法等公知の方法で形成する。
【0164】
有機半導体としてはπ共役ポリマーが広く用いられ、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリアリルアミン類、フルオレン類、ポリカルバゾール類、ポリインドール類、ポリ(P−フェニレンビニレン)類などを用いることができる。また、有機溶媒への溶解性を有する低分子物質、例えば、ペンタセンなどの多環芳香族の誘導体、フタロシアニン誘導体、ペリレン誘導体、テトラチアフルバレン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、フラーレン類、カーボンナノチューブ類などを用いることができる。具体的には、9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−2,7−ジ(エチレンボロネート)と、5,5’−ジブロモ−2,2’−バイチオフェンとの縮合物等があげられる。
【0165】
有機半導体層の形成は、例えば、有機半導体に要すれば溶媒などを添加して有機半導体塗布液を調製し、該有機半導体塗布液をゲート絶縁層上に塗布し、該有機半導体塗布液を乾燥させることにより行う。本発明では、ゲート絶縁層を構成する樹脂がフェニル部分を有し、有機半導体化合物と親和性がある。それゆえ、前記塗布乾燥法によって、有機半導体層とゲート絶縁層との間に均一で平坦な界面が形成される。
【0166】
有機半導体塗布液に使用される溶媒としては、有機半導体を溶解又は分散させるものであれば特に制限は無いが、好ましくは、常圧での沸点が50℃〜200℃の溶媒である。
該溶媒としては、クロロホルム、トルエン、アニソール、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。該有機半導体塗布液は、前記絶縁層塗布液と同様に公知のスピンコート、ダイコーター、スクリーン印刷、インクジェット等によりゲート絶縁層上に塗布することができる。
【0167】
本発明の有機薄膜トランジスタは、有機薄膜トランジスタを保護し、また、表面の平滑性を高める目的で、オーバーコート材でコートしてもよい。
【0168】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を用いて、好適に有機薄膜トランジスタを有するディスプレイ用部材を作製できる。該有機薄膜トランジスタを有するディスプレイ用部材を用いて、ディスプレイ用部材を備えるディスプレイを好適に作製できる。
【実施例】
【0169】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0170】
合成例1
4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン(アルドリッチ製)5.00g、ビニルシンナメート(アルドリッチ製)1.09g、2−(O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート(昭和電工製、商品名「カレンズMOI−BM」)3.00g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.05g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(和光純薬製)6.09gを、50ml耐圧容器(エース製)に入れ、アルゴンガスをバブリングした後、密栓し、60℃のオイルバス中で20時間重合させて、高分子化合物1が溶解している粘稠なプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。高分子化合物1は、下記繰り返し単位を有している。括弧の添え数字は繰り返し単位のモル分率を示している。
【0171】
【化6】

高分子化合物1
【0172】
得られた高分子化合物1の標準ポリスチレンから求めた重量平均分子量は、39000であった(島津製GPC、「Tskgel super HM−H」1本+「Tskgel super H2000」1本、移動相=THF)。
【0173】
合成例2
4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン(アルドリッチ製)6.00g、ビニルシンナメート(アルドリッチ製)2.62g、4−ヒドロキシブチルアクリレート(株式会社 興人製)1.08g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.05g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(和光純薬製)6.50gを、50ml耐圧容器(エース製)に入れ、アルゴンガスをバブリングした後、密栓し、60℃のオイルバス中で20時間重合させ、高分子化合物2が溶解している粘稠なプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。高分子化合物2は、下記繰り返し単位を有している。括弧の添え数字は繰り返し単位のモル分率を示している。高分子化合物2は、分子内に活性水素を2つ以上有する化合物である。
【0174】
【化7】

高分子化合物2
【0175】
得られた高分子化合物2の標準ポリスチレンから求めた重量平均分子量は、252000であった(島津製GPC、「Tskgel super HM−H」1本+「Tskgel super H2000」1本、移動相=THF)。
【0176】
合成例3
4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン(アルドリッチ製)6.00g、ビニルシンナメート(アルドリッチ製)2.62g、4−アミノスチレン(アルドリッチ製)0.89g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.05g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(和光純薬製)14.34gを、50ml耐圧容器(エース製)に入れ、アルゴンガスをバブリングした後、密栓し、60℃のオイルバス中で20時間重合させ、高分子化合物3が溶解している粘稠なプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。高分子化合物3は、下記繰り返し単位を有している。括弧の添え数字は繰り返し単位のモル分率を示している。高分子化合物3は、分子内に活性水素を2つ以上有する化合物である。
【0177】
【化8】

高分子化合物3
【0178】
得られた高分子化合物3の標準ポリスチレンから求めた重量平均分子量は、24000であった(島津製GPC、Tskgel super HM−H 1本+Tskgel super H2000 1本、移動相=THF)。
【0179】
合成例4
2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン(アルドリッチ製)8.00g、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン(アルドリッチ製)1.34g、ビニルシンナメート(アルドリッチ製)1.03g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.05g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(和光純薬製)15.63gを、50ml耐圧容器(エース製)に入れ、アルゴンガスをバブリングした後、密栓し、60℃のオイルバス中で20時間重合させて、高分子化合物4が溶解している粘稠なプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。高分子化合物4は、下記繰り返し単位を有している。括弧の添え数字は繰り返し単位のモル分率を示している。
【0180】
【化9】

高分子化合物4
【0181】
得られた高分子化合物4の標準ポリスチレンから求めた重量平均分子量は、79000であった(島津製GPC、「Tskgel super HM−H」1本+「Tskgel super H2000」1本、移動相=THF)。
【0182】
合成例5
9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−2,7−ジ(エチレンボロネート)6.40g、及び5,5’−ジブロモ−2,2’−バイチオフェン4.00gを含むトルエン(80mL)中に、窒素下において、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.18g、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(Aldrich製、商品名「Aliquat 336」(登録商標))1.0g、及び2Mの炭酸ナトリウム水溶液24mLを加えた。この混合物を激しく攪拌し、加熱して24時間還流した。粘稠な反応混合物をアセトン500mLに注ぎ、繊維状の黄色のポリマーを沈澱させた。このポリマーを濾過によって集め、アセトンで洗浄し、真空オーブンにおいて60℃で一晩乾燥させた。得られたポリマーを高分子化合物5とよぶ。高分子化合物5は、下記繰り返し単位を有している。nは繰り返し単位の数を示している。高分子化合物5の標準ポリスチレンから求めた重量平均分子量は、61000であった(島津製GPC、「Tskgel super HM−H」1本+「Tskgel super H2000」1本、移動相=THF)。
【0183】
【化10】

高分子化合物5
【0184】
合成例6
4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン(アルドリッチ製)6.00g、スチレン(和光純薬製)3.28g、2−(O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート(昭和電工製、商品名「カレンズMOI−BM」)5.05g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.07g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(和光純薬製)9.60gを、50ml耐圧容器(エース製)に入れ、アルゴンガスをバブリングした後、密栓し、60℃のオイルバス中で20時間重合させて、高分子化合物6が溶解している粘稠なプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。高分子化合物6は、下記繰り返し単位を有している。括弧の添え数字は繰り返し単位のモル分率を示している。
【0185】
【化11】

高分子化合物6
【0186】
得られた高分子化合物6の標準ポリスチレンから求めた重量平均分子量は、66000であった(島津製GPC、「Tskgel super HM−H」1本+「Tskgel super H2000」1本、移動相=THF)。
【0187】
合成例7
4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン(アルドリッチ製)6.00g、スチレン(和光純薬製)4.38g、4−ヒドロキシブチルアクリレート(株式会社 興人製)1.51g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.06g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(和光純薬製)17.92gを、50ml耐圧容器(エース製)に入れ、アルゴンガスをバブリングした後、密栓し、60℃のオイルバス中で20時間重合させて、高分子化合物7が溶解している粘稠なプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。高分子化合物7は、下記繰り返し単位を有している。括弧の添え数字は繰り返し単位のモル分率を示している。高分子化合物7は、分子内に活性水素を2つ以上有する化合物である。
【0188】
【化12】

高分子化合物7
【0189】
得られた高分子化合物7の標準ポリスチレンから求めた重量平均分子量は、40000であった(島津製GPC、「Tskgel super HM−H」1本+「Tskgel super H2000」1本、移動相=THF)。
【0190】
実施例1
(有機薄膜トランジスタ絶縁層材料及び電界効果型有機薄膜トランジスタの製造)
合成例1で得た高分子化合物1のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液2.00g、合成例2で得た高分子化合物2のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液3.55g、テトラヒドロフラン7.00gを30mlのサンプル瓶に入れ、攪拌しながら溶解して、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を含む均一な塗布溶液を調製した。
【0191】
得られた塗布溶液を孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いてろ過し、クロム電極のついたガラス基板上にスピンコートした後、ホットプレート上で100℃で10分間乾燥した。その後、アライナー(Canon製;PLA−521)を用いて、6000mJ/cmのUV光(波長365nm)を照射し、更に、窒素中、ホットプレート上で220℃で30分間焼成してゲート絶縁層を得た。
【0192】
次に、高分子化合物5を溶媒であるクロロホルムに溶解して、濃度が0.5重量%である溶液(有機半導体組成物)を作製し、これをメンブランフィルターでろ過して塗布液を調製した。
【0193】
得られた塗布液を、前記ゲート絶縁層上にスピンコート法により塗布し、約60nmの厚さを有する活性層を形成し、次いで、メタルマスクを用いた真空蒸着法により、活性層上に、チャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極及びドレイン電極(活性層側から、酸化モリブデン、金の順番で積層構造を有する)を形成することにより、電界効果型有機薄膜トランジスタを作製した。
【0194】
実施例2
(有機薄膜トランジスタ絶縁層材料及び電界効果型有機薄膜トランジスタの製造)
合成例1で得た高分子化合物1のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液0.23g、合成例3で得た高分子化合物3のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液0.61g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.46g、合成例4で得た高分子化合物4のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液0.073g、テトラヒドロフラン0.3gを10mlのサンプル瓶に入れ、攪拌しながら溶解して、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を含む均一な塗布溶液を調製した。
【0195】
得られた塗布溶液を孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いてろ過し、クロム電極のついたガラス基板上にスピンコートした後、ホットプレート上で100℃で10分間乾燥した。その後、アライナー(Canon製;PLA−521)を用いて、6000mJ/cmのUV光(波長365nm)を照射し、更に、窒素中、ホットプレート上で220℃で30分間焼成してゲート絶縁層を得た。
【0196】
次に、実施例1と同様に活性層、ソース電極及びドレイン電極を形成して、電界効果型有機薄膜トランジスタを作製した。
【0197】
実施例3
(有機薄膜トランジスタ絶縁層材料及び電界効果型有機薄膜トランジスタの製造)
高分子化合物4のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液の量を0.147gにした以外は、実施例2と同様にして電界効果型有機薄膜トランジスタを作製した。
【0198】
実施例4
(有機薄膜トランジスタ絶縁層材料及び電界効果型有機薄膜トランジスタの製造)
高分子化合物4のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液の量を0.293gにし、テトラヒドロフランの量を0.5gにした以外は、実施例2と同様にして電界効果型有機薄膜トランジスタを作製した。
【0199】
実施例5
(有機薄膜トランジスタ絶縁層材料及び電界効果型有機薄膜トランジスタの製造)
高分子化合物6のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液1.00g、高分子化合物7のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液2.49g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート3.00gを30mlのサンプル瓶に入れ、攪拌しながら溶解して、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を含む均一な塗布溶液を調製した。
【0200】
得られた塗布溶液を孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いてろ過し、クロム電極のついたガラス基板上にスピンコートした後、窒素中、ホットプレート上で220℃で30分間焼成してゲート絶縁層を得た。
【0201】
次に、実施例1と同様に活性層、ソース電極及びドレイン電極を形成して、電界効果型有機薄膜トランジスタを作製した。
【0202】
<トランジスタ特性の評価>
こうして作製した電界効果型有機薄膜トランジスタについて、ゲート電圧Vgを0〜−40V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−40Vに変化させた条件で、そのトランジスタ特性を真空プロ−バ(BCT22MDC−5−HT−SCU;Nagase Electronic Equipments Service Co., LTD製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0203】
比較例は、ゲート電圧Vgを0〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−40Vに変化させた条件で、そのトランジスタ特性を測定した。
【0204】
電界効果型有機薄膜トランジスタのヒステリシスは、ソース・ドレイン間電圧Vsdが−40Vで、ゲート電圧Vgを0V→−40Vに変化させた際の閾値電圧Vth1とゲート電圧Vgを−40V→0Vに変化させた際の閾値電圧Vth2との電圧差異で表した。
【0205】
比較例1
(電界効果型有機薄膜トランジスタの製造)
高分子化合物1に代えてポリビニルフェノール(アルドリッチ製、Mn=8000)を用い、ゲート絶縁層の形成時にUV光の照射を行わない以外は実施例1と同様にして電界効果型有機薄膜トランジスタを作製し、トランジスタ特性を測定し、評価した。
【0206】
【表1】

【符号の説明】
【0207】
1…基板、
2…ゲート電極、
3…ゲート絶縁層、
4…有機半導体層、
5…ソース電極、
6…ドレイン電極、
7…オーバーコート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(1)
[式中、R1は、水素原子又はメチル基を表す。R〜Rは、同一又は相異なり、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Raaは、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。aは、0〜20の整数を表す。Raaが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。]
で表される繰り返し単位、及び、分子内に第1の官能基を2つ以上含有し、該第1の官能基が、電磁波の照射もしくは熱の作用により、活性水素と反応する第2の官能基を生成する官能基である高分子化合物(A)と、
分子内に活性水素を2つ以上含有する低分子化合物及び分子内に活性水素を2つ以上含有する高分子化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)とを、含有する有機薄膜トランジスタ絶縁層材料。
【請求項2】
前記高分子化合物(A)が、さらに、電磁波の照射又は電子線のエネルギーの吸収により二量化反応を起こす官能基を有する繰り返し単位を含有する請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料。
【請求項3】
前記電磁波の照射又は電子線のエネルギーの吸収により二量化反応を起こす官能基を有する繰り返し単位が、式
【化2】

(2)
[式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Rbbは、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。bは、0〜20の整数を表し、cは、1〜5の整数を表す。Rbbが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。]
で表される繰り返し単位及び式
【化3】

(3)
[式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R〜R13は、同一又は相異なり、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Rccは、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。dは、0〜20の整数を表す。Rccが複数個ある場合、それらは同一でも相異なっていてもよい。]
で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位である請求項2に記載の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料。
【請求項4】
前記第1の官能基が、ブロック化剤でブロックされたイソシアナト基及びブロック化剤でブロックされたイソチオシアナト基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料。
【請求項5】
前記第1の官能基が、式
【化4】

(4)
[式中、X’は、酸素原子又は硫黄原子を表し、R14、R15は、同一又は相異なり、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。]
で表される基及び式
【化5】

(5)
[式中、X’は、酸素原子又は硫黄原子を表し、R16〜R18は、同一又は相異なり、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。]
で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料。
【請求項6】
ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、有機半導体層と、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を用いて形成した絶縁層とを有する有機薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記絶縁層がゲート絶縁層である請求項6に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の有機薄膜トランジスタを含むディスプレイ用部材。
【請求項9】
請求項8に記載のディスプレイ用部材を含むディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−33909(P2012−33909A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143826(P2011−143826)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】