説明

有機薄膜トランジスタ絶縁層材料

【課題】閾値電圧の絶対値及びヒステリシスが小さい有機薄膜トランジスタを製造しうる有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を提供すること。
【解決手段】分子内に、ベンジルチオカルバメート基(−Ph−CH−SCSNR)を含有する高分子化合物(A)と、分子内に2個以上の不飽和二重結合を含有する不飽和二重結合化合物(B)とを含む有機薄膜トランジスタ絶縁層材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜トランジスタが有する絶縁層を形成するのに適した材料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜トランジスタは、無機半導体より低温で製造できるため、その基板としてプラスチック基板やフィルムを用いることができ、このような基板を用いることによりフレキシブルであり、軽量で壊れにくい素子を得ることができる。また、有機材料を含む溶液の塗布や印刷法を用いた成膜により素子作製が可能な場合があり、大面積の基板に多数の素子を低コストで製造することが可能な場合がある。
【0003】
さらに、トランジスタの検討に用いることができる材料の種類が豊富であるため、分子構造の異なる材料を検討に用いれば、幅広い範囲の特性のバリエーションを有する素子を製造することができる。
【0004】
有機薄膜トランジスタの1種である電界効果型有機薄膜トランジスタでは、ゲート電極に印加される電圧がゲート絶縁層を介して半導体層に作用して、ドレイン電流のオン、オフを制御する。そのため、ゲート電極と半導体層の間にはゲート絶縁層が形成される。
【0005】
また、電界効果型有機薄膜トランジスタの有機半導体層の形成に用いられる有機半導体化合物は、湿度、酸素等の環境の影響を受けやすく、トランジスタ特性が、湿度、酸素等に起因する経時劣化を起こしやすい。
【0006】
そのため、有機半導体化合物が剥き出しになる電界効果型有機薄膜トランジスタの1種であるボトムゲート型有機薄膜トランジスタの素子構造では、素子全体を覆うオーバーコート絶縁層を形成して有機半導体化合物を外気との接触から保護することが必須となっている。一方、トップゲート型有機薄膜トランジスタ素子構造では、有機半導体化合物はゲート絶縁層によりコートされて保護されている。
【0007】
このように、有機薄膜トランジスタにおける有機半導体層を覆うオーバーコート絶縁層及びゲート絶縁層等を形成するために、絶縁層材料が用いられる。本願明細書では、上記オーバーコート絶縁層及びゲート絶縁層のような有機薄膜トランジスタの絶縁層又は絶縁膜を有機薄膜トランジスタ絶縁層という。また、有機薄膜トランジスタ絶縁層を形成するのに用いる材料を有機薄膜トランジスタ絶縁層材料という。
【0008】
有機薄膜トランジスタ絶縁層材料には、絶縁性及び薄膜にしたときの絶縁破壊強度に優れた特性が要求される。また、特にボトムゲート型の電界効果型有機薄膜トランジスタでは有機半導体層がゲート絶縁層に重ねて形成される。そのため、有機薄膜トランジスタゲート絶縁層材料には、有機半導体層と密着した界面を形成するための有機半導体化合物との親和性、該有機薄膜トランジスタゲート絶縁層材料から形成した膜の有機半導体層側の表面が平坦になることが要求される。
【0009】
このような要求に応える技術として、特許文献1には、有機薄膜トランジスタゲート絶縁層材料としてエポキシ樹脂とシランカップリング剤とを組み合わせて用いることが記載されている。この技術においては、エポキシ樹脂の硬化反応の際に生成する水酸基とシランカップリング剤を反応させる。これは、前記水酸基はゲート絶縁層材料の吸湿性を高め、トランジスタ性能の安定性が損なわれるからである。
【0010】
非特許文献1には、ポリビニルフェノールとメラミン化合物とを熱架橋させた樹脂をゲート絶縁層に用いることが記載されている。この技術では、メラミン化合物で架橋することによってポリビニルフェノールに含まれる水酸基を除去し、同時に膜強度を高める。このゲート絶縁層を有するペンタセンTFTはヒステリシスが小さく、ゲートバイアス応力に対して耐久性を示す。
【0011】
非特許文献2には、ポリビニルフェノール及びビニルフェノールとメチルメタクリレートとを共重合させたコポリマーをゲート絶縁層に用いることが記載されている。この技術では、ビニルフェノールの水酸基をメチルメタクリレートのカルボニル基と相互作用させて膜全体の極性を低下させる。このゲート絶縁層を有するペンタセンTFTはヒステリシスが小さく、安定した電気特性を示す。
【0012】
しかしながら、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)のような発光素子の実用化を考慮すると、有機薄膜トランジスタの動作精度をより向上する必要があり、上記従来のゲート絶縁層を有する有機薄膜トランジスタは閾値電圧(Vth)の絶対値及びヒステリシスが大きい。
【0013】
他方、イニファタの一種であるベンジルジエチルジチオカルバメート(Ph-CH2-SCSNEt2)は、紫外光を照射すると、ベンジル炭素と硫黄間の結合が可逆的に解離し、ベンジルラジカル(Ph-CH2・)とジエチルジチオカルバミルラジカル(・SCSNEt2)が生成する。また、ベンジル炭素と硫黄間の結合は、熱によっても可逆的に解離する。ベンジルラジカルはビニルモノマーの重合開始剤として機能し、ジエチルジチオカルバミルラジカルは重合末端をキャッピングする。従って、照射条件(強度、時間)及び溶液条件(モノマー濃度、モノマー/開始剤比)を選択すれば多くのモノマーに対してリビング的にラジカル重合を進行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−305950号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.89,093507(2006)
【非特許文献2】Appl.Phys.Lett.92,183306(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、閾値電圧の絶対値及びヒステリシスが小さい有機薄膜トランジスタを製造しうる有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以上の事に鑑み、架橋構造を形成しうる特定の樹脂組成物を用いてゲート絶縁層を形成することにより有機薄膜トランジスタの閾値電圧(Vth)の絶対値及びヒステリシスを小さくできる。
【0018】
即ち、本発明は、式(1)
【0019】
【化1】

(1)
【0020】
[式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該炭素数1〜20の一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Raaは、高分子化合物の主鎖と側鎖とを連結し、フッ素原子を有していてもよい連結部分を表す。Rは、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該炭素数1〜20の一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。aは、0又は1の整数を表し、nは、1〜5の整数を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される繰り返し単位を含有する高分子化合物(A)と、2個以上の二重結合を含有する二重結合化合物であって高分子化合物(A)とは異なる二重結合化合物(B)とを含む有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を提供するものである。
【0021】
ある一形態においては、前記二重結合化合物(B)が、2個以上の二重結合を含有する低分子二重結合化合物(B−1)、及び二重結合を含有する繰り返し単位を2個以上含有する高分子二重結合化合物(B−2)からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0022】
ある一形態においては、前記低分子二重結合化合物(B−1)が、式(2)
【0023】
【化2】

(2)
【0024】
[式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該炭素数1〜20の一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。]
で表される二価の有機基と2個以上の二重結合とを含有する低分子二重結合化合物である。
【0025】
ある一形態においては、前記低分子二重結合化合物(B−1)が、式(5)
【0026】
【化3】

(5)
【0027】
[式中、R〜R12及びR17〜R21は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該炭素数1〜20の一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。R13〜R16は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該炭素数1〜20の一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Rdd、Ree及びRffは、それぞれ独立に、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該炭素数1〜20の二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。p1、p2及びp3は、それぞれ独立に、0又は1の整数を表す。]
で表される低分子二重結合化合物である。
【0028】
ある一形態においては、前記高分子二重結合化合物(B−2)が、式(3)
【0029】
【化4】

(3)
【0030】
[式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rbbは、高分子化合物の主鎖と側鎖とを連結し、フッ素原子を有していてもよい連結部分を表す。bは、0又は1の整数を表す。]
で表される繰り返し単位、及び、式(4)
【0031】
【化5】

(4)
【0032】
[式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R’は、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該炭素数1〜20の一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Rccは、高分子化合物の主鎖と側鎖とを連結し、フッ素原子を有していてもよい連結部分を表す。cは、0又は1の整数を表す。mは、1〜5の整数を表す。R’が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含有する高分子二重結合化合物である。
【0033】
また、本発明は、上記有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を用いて形成した有機薄膜トランジスタ絶縁層を有する有機薄膜トランジスタを提供する。
【0034】
ある一形態においては、前記有機薄膜トランジスタ絶縁層がゲート絶縁層である。
【0035】
また、本発明は、上記有機薄膜トランジスタを含むディスプレイ用部材を提供する。
【0036】
また、本発明は、上記ディスプレイ用部材を含むディスプレイを提供する。
【発明の効果】
【0037】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を用いて形成した絶縁層を有する有機薄膜トランジスタは、閾値電圧の絶対値及びヒステリシスが低い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態であるボトムゲートトップコンタクト型有機薄膜トランジスタの構造を示す模式断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態であるボトムゲートボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタの構造を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書において、「高分子化合物」とは、分子中に同じ構造単位が複数繰り返された構造を含む化合物をいい、いわゆる2量体もこれに含まれる。
【0040】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料は、R及びRで置換されたジチオカルバミルメチルフェニル基(−Ph−CH−SCSNR)を含有する高分子化合物(A)と、二重結合化合物(B)とを含有してなることが特徴である。高分子化合物(A)中のジチオカルバミルメチルフェニル基と二重結合化合物(B)中の二重結合とがリビング的に反応するため、架橋密度が高い硬化膜が形成される。有機薄膜トランジスタ絶縁層の架橋密度が高くなると、分子構造の移動が抑制され、絶縁層の分極が抑制される。絶縁層の分極が抑制されると、例えばゲート絶縁層として用いた場合に有機薄膜トランジスタの閾値電圧の絶対値が低下して、動作精度が向上する。
【0041】
<高分子化合物(A)>
高分子化合物(A)は、例えば、上記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物である。
【0042】
式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。ある一形態では、Rは、水素原子である。
【0043】
式(1)中、Rは、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該炭素数1〜20の一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0044】
有機薄膜トランジスタ絶縁層材料中にフッ素が導入されることにより、該材料から形成されるゲート絶縁層は極性が低く、ゲート電圧が印加されても分極し易い成分が少なく、ゲート絶縁層の分極が抑制される。
【0045】
一方、本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料において、フッ素原子は必須の成分ではない。フッ素を含まない有機薄膜トランジスタ絶縁層は、その表面が有機材料との親和性に優れる。その結果、例えば、有機薄膜トランジスタ絶縁層に隣接して有機半導体層を形成する場合、両者の密着性が良好になる。その場合に、形成される有機半導体層の表面の平坦性が向上する。
【0046】
また、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料がフッ素原子を含まないことで、親液部と撥液部とを有するバンク中に有機薄膜トランジスタ絶縁層材料とフッ素を含まない溶液とを含む絶縁層塗布液を塗布して有機薄膜トランジスタ絶縁層を形成する場合、該絶縁層塗布液の該バンクの撥液部への移動を抑制することができる。
【0047】
有機半導体化合物とフッ素を含有しない溶媒とを含む有機半導体塗布液を有機薄膜トランジスタ絶縁層上に塗布して有機半導体層を形成する場合、該溶媒と有機薄膜トランジスタ絶縁層の親和性が優れるため、膜厚が均一な有機半導体層を形成することができる。
【0048】
該炭素数1〜20の一価の有機基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。
炭素数1〜20の一価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状炭化水素基、炭素数3〜20の環状炭化水素基、及び、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が挙げられ、炭素数1〜6の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜6の分岐状炭化水素基、炭素数3〜6の環状炭化水素基、及び、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が好ましい。
炭素数6〜20の芳香族炭化水素基は、基中の水素原子がアルキル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などで置換されていてもよい。
【0049】
フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の一価の有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチニル基、シクロヘキシニル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、トリル基、キシリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、ジエチルフェニル基、トリエチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、メチルナフチル基、ジメチルナフチル基、トリメチルナフチル基、ビニルナフチル基、エテニルナフチル基、メチルアンスリル基、エチルアンスリル基、クロロフェニル基、及び、ブロモフェニル基が挙げられる。
炭素数1〜20の一価の有機基としては、アルキル基が好ましい。
【0050】
式(1)中、Raaは、高分子化合物の主鎖と側鎖とを連結し、フッ素原子を有していてもよい連結部分を表す。該連結部分は、本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を架橋させる環境条件の下で反応性を示さない構造を有する二価の基であればよい。該連結部分としては、例えば、炭素数1〜20の二価の有機基からなる結合、エーテル結合(−O−)、ケトン結合(−CO−)、エステル結合(−COO−、−OCO−)、アミド結合(−NHCO−、−CONH−)、ウレタン結合(−NHCOO−、−OCONH−)及びこれらの結合が組み合わされた結合が挙げられる。aは、0又は1の整数を表す。ある一形態では、aは0である。
【0051】
前記炭素数1〜20の二価の有機基としては、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、脂肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよい。炭素数1〜20の二価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20の二価の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の二価の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の二価の環状炭化水素基、及び、アルキル基等で置換されていてもよい炭素数6〜20の二価の芳香族炭化水素基が挙げられる。中でも、炭素数1〜6の二価の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜6の二価の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜6の二価の環状炭化水素基、及び、アルキル基等で置換されていてもよい二価の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0052】
二価の脂肪族炭化水素基及び二価の環状炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、ジメチルプロピレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、及び、シクロヘキシレン基が挙げられる。
【0053】
アルキル基等で置換されていてもよい炭素数6〜20の二価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アンスリレン基、ジメチルフェニレン基、トリメチルフェニレン基、エチレンフェニレン基、ジエチレンフェニレン基、トリエチレンフェニレン基、プロピレンフェニレン基、ブチレンフェニレン基、メチルナフチレン基、ジメチルナフチレン基、トリメチルナフチレン基、ビニルナフチレン基、エテニルナフチレン基、メチルアンスリレン基、及び、エチルアンスリレン基が挙げられる。
【0054】
式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該炭素数1〜20の一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。R及びRで表される炭素数1〜20の一価の有機基の定義及び具体例は、前述のRで表される炭素数1〜20の一価の有機基の定義及び具体例と同じである。ある一形態ではR及びRはエチル基である。
【0055】
式(1)中、nは、1〜5の整数を表す。ある一形態では、nは1である。
【0056】
本発明の高分子化合物(A)は、二重結合を有する側鎖基を有していてもよい。
ジチオカルバミルメチルフェニル基の反応箇所が増加して、硬化膜の架橋密度が高くなるからである。
【0057】
その場合、高分子化合物(A)は、上記式(3)で表される繰り返し単位及び上記式(4)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含有する高分子化合物(A−1)であることが好ましい。
【0058】
式(3)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。ある一形態では、Rはメチル基である。
【0059】
式(3)中、Rbbは、高分子化合物の主鎖と側鎖とを連結し、フッ素原子を有していてもよい連結部分を表す。Rbbで表される連結部分の定義及び具体例は、前述のRaaで表される連結部分の定義及び具体例と同じである。ある一形態では、Rbbは−COO−CHCH−で表される結合である。
bは、0又は1の整数を表す。ある一形態では、bは1である。
【0060】
式(4)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。ある一形態では、Rはメチル基である。
【0061】
式(4)中、Rccは、高分子化合物の主鎖と側鎖とを連結し、フッ素原子を有していてもよい連結部分を表す。Rccで表される連結部分の定義及び具体例は、前述のRaaで表される連結部分の定義及び具体例と同じである。ある一形態では、Rccは−COO−CHCH−NH−CO−NH−で表される結合である。
cは、0又は1の整数を表す。ある一形態では、cは1である。
【0062】
式(4)中、mは、1〜5の整数を表す。ある一形態では、mは1である。
【0063】
式(4)中、R’は、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該炭素数1〜20の一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。R’で表される炭素数1〜20の一価の有機基の定義及び具体例は、前述のRで表される炭素数1〜20の一価の有機基の定義及び具体例と同じである。ある一形態では、R’は水素原子である。
【0064】
本発明に用いられる高分子化合物(A)は、例えば、式(1)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーを、光重合開始剤もしくは熱重合開始剤を用いて重合させる方法により製造することが出来る。
【0065】
式(1)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーとしては、例えば、N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレンが挙げられる。
【0066】
前記光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾフェノン、メチル(o−ベンゾイル)ベンゾエート、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインオクチルエーテル、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ジアセチル等のカルボニル化合物、メチルアントラキノン、クロロアントラキノン、クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のアントラキノン誘導体又はチオキサントン誘導体、ジフェニルジスルフィド、ジチオカーバメート等の硫黄化合物が挙げられる。
【0067】
重合を開始させるエネルギーとして光エネルギーを用いる場合は、重合性モノマーに照射する光の波長は、360nm以上、好ましくは360〜450nmである。
【0068】
前記熱重合開始剤としては、ラジカル重合の開始剤となる化合物であればよく、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、1、1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩等のアゾ系化合物、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド等のケトンパーオキシド類、イソブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、o−メチルベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、2,4,4−トリメチルペンチル−2−ヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド類、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、トリス(tert−ブチルパーオキシ)トリアジン等のジアルキルパーオキシド類、1,1−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−tert−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−tert−ブチルパーオキシアゼレート、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−tert−ブチルパーオキシトリメチルアジペート等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシカーボネート類が挙げられる。
【0069】
また、ある好ましい実施形態では、高分子化合物(A)は、式
【0070】
【化6】

【0071】
[式中、R、R、Raa、a及びnは上記と同意義であり、Xはハロゲン原子である。]
で表される構造の重合性モノマーを光重合開始剤もしくは熱重合開始剤を用いて重合させ、次いで、N,N−ジアルキルチオカルバミック酸金属塩と反応させる方法により製造することができる。
【0072】
二重結合を有する側鎖基を有する高分子化合物(A)(例えば、高分子化合物(A−1))は、例えば、式(1)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマーと活性水素を有する重合性モノマーを、光重合開始剤もしくは熱重合開始剤を用いて共重合させた後、活性水素と反応する官能基と末端二重結合とを含有する化合物と反応させる方法により製造することが出来る。活性水素とは、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のような炭素原子以外の原子に結合した水素原子を言う。
【0073】
活性水素を有する重合性モノマーとしては、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、アクリル酸−4−ヒドロキシフェニル、アクリル酸−2−ヒドロキシフェニルエチル2−アミノエチルメタアクリレート、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタアクリル酸−4−ヒドロキシフェニル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシフェニルエチル、4−アミノスチレン、4−アリルアニリン、4−アミノフェニルビニルエーテル、4−(N−フェニルアミノ)フェニルアリルエーテル、4−(N−メチルアミノ)フェニルアリルエーテル、4−アミノフェニルアリルエーテル、アリルアミン、2−アミノエチルアクリレート、4−ヒドロキシスチレン、及び、4−ヒドロキシアリルベンゼンが挙げられる。活性水素と反応する官能基と末端二重結合とを含有する化合物としては、アクリロイルクロライド、メタクリロイルクロライド、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、4−ビニルベンゾイルクロライド、及び、4−ビニルフェニルイソシアネートが挙げられる。
【0074】
高分子化合物(A)及び高分子化合物(A−1)は、前記式(1)で表される繰り返し単位の原料となる重合性モノマー、活性水素を有する重合性モノマー以外の重合性モノマーを重合時に添加して製造してもよい。
【0075】
追加して使用される重合性モノマーとしては、例えば、二重結合とブロック化剤でブロックされたイソシアナト基又はブロック化剤でブロックされたイソチオシアナト基とをもつモノマー、アクリル酸エステル及びその誘導体、メタアクリル酸エステル及びその誘導体、スチレン及びその誘導体、酢酸ビニル及びその誘導体、メタアクリロニトリル及びその誘導体、アクリロニトリル及びその誘導体、有機カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体、有機カルボン酸のアリルエステル及びその誘導体、フマル酸のジアルキルエステル及びその誘導体、マレイン酸のジアルキルエステル及びその誘導体、イタコン酸のジアルキルエステル及びその誘導体、有機カルボン酸のN−ビニルアミド誘導体、末端不飽和炭化水素及びその誘導体、及び、不飽和炭化水素基を含む有機ゲルマニウム誘導体が挙げられる。
【0076】
追加して使用される重合性モノマーの種類は、絶縁層に要求される特性に応じて適宜選択される。溶媒に対する優れた耐久性や有機薄膜トランジスタのヒステリシスを小さくする観点からは、スチレンやスチレン誘導体のように、これらの化合物を含む膜において、分子の密度が高く、硬い膜を形成するモノマーが選択される。また、ゲート電極や基板の表面等の絶縁層の隣接面に対する密着性の観点からは、メタアクリル酸エステル及びその誘導体、アクリル酸エステル及びその誘導体のように、高分子化合物(A)及び(A−1)に可塑性を付与するモノマーが選択される。
【0077】
前記ブロック化剤でブロックされたイソシアナト基と二重結合とを有するモノマーとしては、例えば、2−〔O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート、及び、2−〔N−[1’,3’−ジメチルピラゾリル]カルボニルアミノ〕エチル−メタクリレートが挙げられる。
【0078】
前記ブロック化剤でブロックされたイソチオシアナト基と二重結合とを有するモノマーとしては、例えば、2−〔O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]チオカルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート、及び、2−〔N−[1’,3’−ジメチルピラゾリル]チオカルボニルアミノ〕エチル−メタクリレートが挙げられる。
【0079】
アクリル酸エステル類及びその誘導体は、単官能のアクリレートであっても、使用量に制約は出てくるものの、多官能のアクリレートであってもよい。アクリル酸エステル及びその誘導体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−sec−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルアクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルアクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、及び、N−アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
【0080】
メタアクリル酸エステル類及びその誘導体は、単官能のメタアクリレートであってもよく、使用量に制約は出てくるものの、多官能のメタアクリレートであってもよい。メタアクリル酸エステル類及びその誘導体としては、例えば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸−n−プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸−n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸−sec−ブチル、メタアクリル酸ヘキシル、メタアクリル酸オクチル、メタアクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸ベンジル、エチレングリコールジメタアクリレート、プロピレングリコールジメタアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタアクリレート、ジエチレングリコールジメタアクリレート、トリエチレングリコールジメタアクリレート、トリメチロールプロパンジメタアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルメタアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタアクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルメタアクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルメタアクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチルメタアクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルメタアクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルメタアクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルメタアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタアクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタアクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルメタアクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルメタアクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルメタアクリレート、N,N−ジメチルメタアクリルアミド、N,N−ジエチルメタアクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリンを挙げることができる。
【0081】
スチレン及びその誘導体としては、例えば、スチレン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2,4,5−トリメチルスチレン、ペンタメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、2−ビニルビフェニル、3−ビニルビフェニル、4−ビニルビフェニル、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、4−ビニル−p−ターフェニル、1−ビニルアントラセン、α−メチルスチレン、o−イソプロペニルトルエン、m−イソプロペニルトルエン、p−イソプロペニルトルエン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、2,3−ジメチル−α−メチルスチレン、3,5−ジメチル−α−メチルスチレン、p−イソプロピル−α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロピルベンゼン、o−トリフルオロメチルスチレン、m−トリフルオロメチルスチレン、p−トリフルオロメチルスチレン、o−2,2,2−トリフルオロエチルスチレン、m−2,2,2−トリフルオロエチルスチレン、p−2,2,2−トリフルオロエチルスチレン、o−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルスチレン、m−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルスチレン、p−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルスチレン、及び、ペンタフルオロスチレンが挙げられる。
【0082】
有機カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、及び、アジピン酸ジビニルが挙げられる。
【0083】
有機カルボン酸のアリルエステル及びその誘導体としては、例えば、酢酸アリル、安息香酸アリル、アジピン酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、及び、フタル酸ジアリルが挙げられる。
【0084】
フマル酸のジアルキルエステル及びその誘導体としては、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ−sec−ブチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジ−n−ブチル、フマル酸ジ−2−エチルヘキシル、及び、フマル酸ジベンジルが挙げられる。
【0085】
マレイン酸のジアルキルエステル及びその誘導体としては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジ−sec−ブチル、マレイン酸ジイソブチル、マレイン酸ジ−n−ブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル、及び、マレイン酸ジベンジルが挙げられる。
【0086】
イタコン酸のジアルキルエステル及びその誘導体としては、例えば、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピル、イタコン酸ジ−sec−ブチル、イタコン酸ジイソブチル、イタコン酸ジ−n−ブチル、イタコン酸ジ−2−エチルヘキシル、及び、イタコン酸ジベンジルが挙げられる。
【0087】
有機カルボン酸のN−ビニルアミド誘導体としては、例えば、N−メチル−N−ビニルアセトアミドが挙げられる。
【0088】
末端不飽和炭化水素及びその誘導体としては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサン、塩化ビニル、及び、アリルアルコールが挙げられる。
【0089】
不飽和炭化水素基を含む有機ゲルマニウム誘導体としては、例えば、アリルトリメチルゲルマニウム、アリルトリエチルゲルマニウム、アリルトリブチルゲルマニウム、トリメチルビニルゲルマニウム、及び、トリエチルビニルゲルマニウムが挙げられる。
【0090】
追加して使用される重合性モノマーとしては、アクリル酸アルキルエステル、メタアクリル酸アルキルエステル、スチレン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル及びアリルトリメチルゲルマニウムが好ましい。
【0091】
式(1)で表される繰り返し単位の原料となるモノマーの仕込みモル比は、重合に関与する全てのモノマー中、好ましくは0.1モル%以上50モル%以下であり、より好ましくは1モル%以上30モル%以下である。上記モノマーの仕込みモル比をこの範囲に調節することにより、絶縁層の内部に架橋構造が十分形成される。
【0092】
高分子化合物(A)及び高分子化合物(A−1)のポリスチレン換算の重量平均分子量は、3000〜1000000が好ましく、5000〜500000がより好ましい。高分子化合物(A)及び高分子化合物(A−1)は、直鎖状でも分岐状でもよく、環状であってもよい。
【0093】
高分子化合物(A)としては、例えば、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−スチレン−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−スチレン−コ−[2−〔1’−(3’,5’−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−スチレン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−スチレン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔1’−(3’,5’−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−スチレン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート]−コ−アリルトリメチルゲルマニウム)、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−スチレン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔1’−(3’,5’−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ〕エチル−メタクリレート]−コ−アリルトリメチルゲルマニウム)、及び、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−スチレン−コ−4-メトキシスチレン−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])が挙げられる。
【0094】
高分子化合物(A−1)としては、例えば、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−2−メタクリロイルオキシエチルメタクリレート−コ−スチレン−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−2−メタクリロイルオキシエチルメタクリレート−コ−スチレン−コ−[2−〔1’−(3’,5’−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−2−メタクリロイルオキシエチルメタクリレート−コ−スチレン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−2−メタクリロイルオキシエチルメタクリレート−コ−スチレン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔1’−(3’,5’−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−2−メタクリロイルオキシエチルメタクリレート−コ−スチレン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート]−コ−アリルトリメチルゲルマニウム)、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−2−メタクリロイルオキシエチルメタクリレート−コ−スチレン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔1’−(3’,5’−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ〕エチル−メタクリレート]−コ−アリルトリメチルゲルマニウム)、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−2−メタクリロイルオキシエチルメタクリレート−コ−スチレン−コ−4-メトキシスチレン−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−2−メタクリロイルオキシエチルメタクリレート−コ−スチレン−コ−4-メトキシスチレン−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート]−コ−[2−〔1’−(3’,5’−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−[2−(4−ビニルフェニルアミノカルボニルアミノ)エチルメタクリレート]−コ−スチレン−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−[2−(4−ビニルフェニルアミノカルボニルアミノ)エチルメタクリレート]−コ−スチレン−コ−[2−〔1’−(3’,5’−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−[2−(4−ビニルフェニルアミノカルボニルアミノ)エチルメタクリレート]−コ−スチレン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−[2−(4−ビニルフェニルアミノカルボニルアミノ)エチルメタクリレート]−コ−スチレン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔1’−(3’,5’−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ〕エチル−メタクリレート])、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−[2−(4−ビニルフェニルアミノカルボニルアミノ)エチルメタクリレート]−コ−スチレン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート]−コ−アリルトリメチルゲルマニウム)、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−[2−(4−ビニルフェニルアミノカルボニルアミノ)エチルメタクリレート]−コ−スチレン−コ−アクリロニトリル−コ−[2−〔1’−(3’,5’−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ〕エチル−メタクリレート]−コ−アリルトリメチルゲルマニウム)、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−[2−(4−ビニルフェニルアミノカルボニルアミノ)エチルメタクリレート]−コ−スチレン−コ−4-メトキシスチレン−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート])、及び、ポリ(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン−コ−[2−(4−ビニルフェニルアミノカルボニルアミノ)エチルメタクリレート]−コ−スチレン−コ−4-メトキシスチレン−コ−[2−〔O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ〕エチル−メタクリレート]−コ−[2−〔1’−(3’,5’−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ〕エチル−メタクリレート])が挙げられる。
【0095】
<二重結合化合物(B)>
二重結合化合物(B)は、好ましくは、末端二重結合を有する化合物であり、より好ましくは、2つ以上の末端二重結合を有する化合物である。末端二重結合とは、化合物の鎖状部分の末端に位置する二重結合をいう。その際、鎖状部分は化合物の主鎖であっても分岐鎖であってもよい。二重結合化合物(B)は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
【0096】
例えば、二重結合化合物(B)は、上記式(2)で表される二価の有機基、即ち、オキシカルボニルオキシレン基にジ置換カルビレン基が結合した構造の二価の有機基と2個以上の二重結合とを含有する低分子二重結合化合物(B−1)である。
【0097】
上記式(2)で表される有機基は、酸を作用させると分解する。そのため、光酸発生剤と共に使用した場合などには、本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料はポジ型感光性の機能を奏しうる。
【0098】
式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該炭素数1〜20の一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。R及びRで表される炭素数1〜20の一価の有機基の定義及び具体例は、前述のRで表される炭素数1〜20の一価の有機基の定義及び具体例と同じである。ある一形態では、R及びRはメチル基である。
【0099】
二重結合化合物(B−1)の好ましい例は、上記式(5)で表される低分子二重結合化合物である。
【0100】
式(5)中、R〜R12及びR17〜R21は、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該炭素数1〜20の一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。R〜R12及びR17〜R21で表される炭素数1〜20の一価の有機基の定義及び具体例は、前述のRで表される炭素数1〜20の一価の有機基の定義及び具体例と同じである。ある一形態では、R〜R12及びR17〜R21は水素原子である。
【0101】
式(5)中、R13〜R16は、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該炭素数1〜20の一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。R13〜R16で表される炭素数1〜20の一価の有機基の定義及び具体例は、前述のRで表される炭素数1〜20の一価の有機基の定義及び具体例と同じである。ある一形態では、R13〜R16はメチル基である。
【0102】
式(5)中、Rdd、Ree及びRffは、それぞれ独立に、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該炭素数1〜20の二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0103】
前記炭素数1〜20の二価の有機基としては、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、脂肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよい。炭素数1〜20の二価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20の二価の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の二価の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の二価の環状炭化水素基、及び、アルキル基等で置換されていてもよい炭素数6〜20の二価の芳香族炭化水素基が挙げられる。中でも、炭素数1〜6の二価の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜6の二価の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜6の二価の環状炭化水素基、及び、アルキル基等で置換されていてもよい二価の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0104】
二価の脂肪族炭化水素基及び二価の環状炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、ジメチルプロピレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、及び、シクロヘキシレン基が挙げられる。
【0105】
アルキル基等で置換されていてもよい炭素数6〜20の二価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アンスリレン基、ジメチルフェニレン基、トリメチルフェニレン基、エチレンフェニレン基、ジエチレンフェニレン基、トリエチレンフェニレン基、プロピレンフェニレン基、ブチレンフェニレン基、メチルナフチレン基、ジメチルナフチレン基、トリメチルナフチレン基、ビニルナフチレン基、エテニルナフチレン基、メチルアンスリレン基、及び、エチルアンスリレン基が挙げられる。
【0106】
式(5)中、p1、p2及びp3は、それぞれ独立に、0又は1の整数を表す。ある一態様では、p1は1であり、p2は1であり、p3は1である。
【0107】
二重結合化合物(B−1)は、例えば、ブロモフェニルクロロフォーメートと2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジオールとを脱酸剤の存在下で反応させて反応中間体を製造し、該反応中間体とビニルフェニルボロン酸とをカップリングさせる方法により製造することが出来る。
【0108】
二重結合化合物(B−1)としては、例えば、2,3−ビス(4’−ビニルビフェニル−4−オキシカルボニルオキシ)ブタン及び2,5−ビス(4’−ビニルビフェニル−4−オキシカルボニルオキシ)ヘキサンが挙げられる。
【0109】
また、例えば、二重結合化合物(B)は、上記式(3)で表される繰り返し単位、及び上記式(4)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含有する高分子二重結合化合物(B−2)である。この場合、式(3)中、R、Rbb及びbの定義は上記と同様である。また、式(4)中、R、Rcc、R’、c及びmの定義は上記と同様である。
【0110】
高分子二重結合化合物(B−2)は、例えば、活性水素を有する重合性モノマーを光重合開始剤もしくは熱重合開始剤を用いて重合させた後、活性水素と反応する官能基と末端二重結合とを含有する化合物と反応させる方法により製造することが出来る。この場合、活性水素を有する重合性モノマーの意義は上記と同様である。また、活性水素と反応する官能基と末端二重結合とを含有する化合物の定義は上記と同様である。
【0111】
高分子二重結合化合物(B−2)は、活性水素を有する重合性モノマー以外の重合性モノマーを重合時に添加して製造してもよい。
【0112】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料に含まれる二重結合化合物(B)の添加量は、高分子化合物(A)中の第1の官能基を有する繰り返し単位の量に対して、0.1〜1.0当量が好ましく、0.3〜5当量がより好ましい。二重結合化合物(B)の添加量が上記範囲以外では、架橋構造の形成が不十分になることがある。
【0113】
<有機薄膜トランジスタ絶縁層材料>
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料には、混合や粘度調節のための溶媒や、高分子化合物(A)及び高分子化合物(A−1)を架橋させるために用いる架橋剤、該架橋剤と組み合わせて用いられる添加剤などを含有させてよい。使用される溶媒としては、テトラヒドロフランやジエチルエーテルなどのエーテル溶媒、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素溶媒、ペンテン等の不飽和炭化水素溶媒、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、アセトンなどのケトン溶媒、ブチルアセテートなどのアセテート溶媒、イソプロピルアルコールなどのアルコール溶媒、クロロホルムなどのハロゲン溶媒、これらの溶媒の混合溶媒が挙げられる。また、添加剤としては、架橋反応を促進するための触媒、増感剤、レべリング剤、粘度調節剤などを用いることができる。
【0114】
該架橋反応を促進するための触媒としては、光酸発生剤、熱酸発生剤、光カチオン重合開始剤が挙げられる。
【0115】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料には、光酸発生剤又は熱酸発生剤を添加することが好ましい。該光酸発生剤及び熱酸発生剤としては、例えば、ジアゾメタン誘導体、トリアジン誘導体、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩を挙げることができる。ジアゾメタン誘導体としては、例えば、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタンが挙げられる。トリアジン誘導体としては、例えば、2−メチル−4,6−ジトリクロロメチル−トリアジンが挙げられる。ヨードニウム塩としては、例えば、トリルキュミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネートが挙げられる。
【0116】
また、該光酸発生剤及び熱酸発生剤としては、前記の材料の他に、特開平9−118663号公報記載の化合物、特開2007−262401号公報記載の化合物も使用することができる。
【0117】
架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、及び、エチレングリコールジメタクリレートが挙げられる。
【0118】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料は、有機薄膜トランジスタに含まれる絶縁層の形成に用いられる組成物である。有機薄膜トランジスタの絶縁層中でも、オーバーコート層又はゲート絶縁層の形成に用いられることが好ましい。有機薄膜トランジスタ絶縁層材料としては、有機薄膜トランジスタオーバーコート層組成物、有機薄膜トランジスタゲート絶縁層組成物であることが好ましく、有機薄膜トランジスタゲート絶縁層材料であることがより好ましい。
【0119】
<有機薄膜トランジスタ>
図1は、本発明の一実施形態であるボトムゲートトップコンタクト型有機薄膜トランジスタの構造を示す模式断面図である。この有機薄膜トランジスタには、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極2と、ゲート電極2上に形成されたゲート絶縁層3と、ゲート絶縁層3上に形成された有機半導体層4と、有機半導体層4上にチャネル部を挟んで形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、素子全体を覆うオーバーコート7とが、備えられている。
【0120】
ボトムゲートトップコンタクト型有機薄膜トランジスタは、例えば、基板上にゲート電極を形成し、ゲート電極上にゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層上に有機半導体層を形成し、有機半導体層上にソース電極、ドレイン電極を形成し、オーバーコートを形成することで製造することができる。本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料は、有機薄膜トランジスタゲート絶縁層材料として、ゲート絶縁層を形成するのに好適に用いられる。また、有機薄膜トランジスタオーバーコート層材料として、オーバーコート層を形成するのに用いることもできる。
【0121】
図2は、本発明の一実施形態であるボトムゲートボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタの構造を示す模式断面図である。この有機薄膜トランジスタには、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極2と、ゲート電極2上に形成されたゲート絶縁層3と、ゲート絶縁層3上にチャネル部を挟んで形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6上に形成された有機半導体層4と、素子全体を覆うオーバーコート7とが、備えられている。
【0122】
ボトムゲートボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタは、例えば、基板上にゲート電極を形成し、ゲート電極上にゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層上にソース電極、ドレイン電極を形成し、ソース電極、ドレイン電極上に有機半導体層を形成し、オーバーコートを形成することで製造することができる。本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料は、有機薄膜トランジスタゲート絶縁層材料として、ゲート絶縁層を形成するのに好適に用いられる。また、有機薄膜トランジスタオーバーコート層材料として、オーバーコート層を形成するのに用いることもできる。
【0123】
ゲート絶縁層又はオーバーコート層の形成は、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料に要すれば溶媒などを添加して絶縁層塗布液を調製し、絶縁層塗布液を、ゲート絶縁層又はオーバーコート層の下に位置する層の表面に塗布し、乾燥し、硬化させることにより行う。該絶縁層塗布液に用いられる有機溶媒としては、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を溶解させるものであれば特に制限は無いが、好ましくは、常圧での沸点が100℃〜200℃の有機溶媒である。該有機溶媒の例としては、2−ヘプタノン(沸点151℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)が挙げられる。該絶縁層塗布液には、必要に応じてレベリング剤、界面活性剤、硬化触媒等を添加することができる。本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料は、有機薄膜トランジスタゲート絶縁層組成物として、ゲート絶縁層の形成に用いることもできる。
【0124】
該絶縁層塗布液はスピンコート、ダイコート、スクリーン印刷、インクジェット等の公知の方法によりゲート電極上に塗布することができる。形成される塗布層は必要に応じて乾燥させる。ここでいう乾燥は、塗布された樹脂組成物に含まれる溶媒を除去することを意味する。
【0125】
乾燥させた塗布層は、次いで硬化させる。硬化は有機薄膜トランジスタ絶縁層材料が架橋することを意味する。トランジスタ絶縁層材料の架橋は、例えば、塗布層に電磁波の照射又は熱を印加することにより行われる。
【0126】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料に電磁波又は電子線を照射若しくは熱を印加すると、N,N−ジアルキルジチオカルバミル基が脱離し、生成したラジカルが二重結合化合物中の二重結合と反応し、架橋構造が形成される。
【0127】
例えば、本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層は、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を含む液を基材に塗布して該基材上に塗布層を形成する工程;及び該塗布層に電磁波又は電子線を照射する工程;を包含する形成方法で形成することができる。
【0128】
また、例えば、本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層は、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を含む液を基材に塗布して該基材上に塗布層を形成する工程;及び該塗布層に熱を印加する工程;を包含する形成方法で形成することができる。
【0129】
また、例えば、本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層は、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を含む液を基材に塗布して該基材上に塗布層を形成する工程;該塗布層に電磁波又は電子線を照射する工程;及び該塗布層に熱を印加する工程;を包含する形成方法で形成することができる。
【0130】
塗布層に熱を印加する場合は、塗布層を約80〜250℃、好ましくは約100〜230℃の温度に加熱して約5〜120分、好ましくは約10〜60分維持する。加熱温度が低すぎたり加熱時間が短すぎると絶縁層の架橋が不十分になり、加熱温度が高すぎたり加熱時間が長すぎると絶縁層が損傷する可能性がある。
【0131】
塗布層に電磁波を照射する場合、絶縁層の架橋及び損傷の度合いを考慮して、照射条件を調節する。マイクロ波を印加して加熱する場合は、絶縁層の架橋が及び損傷の度合いを考慮して印加条件を調節する。
【0132】
照射する電磁波の波長は450nm以下が好ましく、より好ましくは150〜410nmである。照射する電磁波の波長が450nmを越えると有機薄膜トランジスタ絶縁層材料の架橋が不十分になる場合がある。電磁波としては、紫外線が好ましい。
【0133】
紫外線の照射は、例えば、半導体の製造のために使用されている露光装置やUV硬化性樹脂を硬化させるために使用されているUVランプを用いて行うことができる。電子線の照射は、例えば、超小型電子線照射管を用いて行うことができる。加熱はヒーター及びオーブンなどを用いて行うことができる。
【0134】
ゲート絶縁層上には、自己組織化単分子膜層を形成してもよい。該自己組織化単分子膜層は、例えば、有機溶媒中にアルキルクロロシラン化合物もしくはアルキルアルコキシシラン化合物を1〜10重量%溶解した溶液でゲート絶縁層を処理することにより形成することが出来る。
【0135】
アルキルクロロシラン化合物の例としては、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシランが挙げられる。
【0136】
アルキルアルコキシシラン化合物の例としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシランが挙げられる。
【0137】
基板1、ゲート電極2、ソース電極5、ドレイン電極6及び有機半導体層4は、通常使用される材料及び方法で構成すればよい。基板の材料には樹脂やプラスチックの板やフィルム、ガラス板、シリコン板などが用いられる。電極の材料には、クロム、金、銀、アルミニウム、モリブデン等を用い、蒸着法、スパッタ法、印刷法、インクジェット法等の公知の方法で電極を形成する。
【0138】
有機半導体層4を形成するための有機半導体化合物としてはπ共役ポリマーが用いられ、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリアリルアミン類、フルオレン類、ポリカルバゾール類、ポリインドール類、ポリ(P−フェニレンビニレン)類などを用いることができる。また、有機溶媒への溶解性を有する低分子物質、例えば、ペンタセンなどの多環芳香族の誘導体、フタロシアニン誘導体、ペリレン誘導体、テトラチアフルバレン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、フラーレン類、カーボンナノチューブ類などを用いることができる。具体的には、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジ(エチレンボロネート)と、2,6−ジブロモ−(4,4−ビス−ヘキサデカニル−4H−シクロペンタ[2,1−b;3,4−b’]−ジチオフェンとの縮合物、9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−2,7−ジ(エチレンボロネート)と、5,5’−ジブロモ−2,2’−バイチオフェンとの縮合物等があげられる。
【0139】
有機半導体層の形成は、例えば、有機半導体化合物に要すれば溶媒などを添加して有機半導体塗布液を調製し、該有機半導体塗布液をゲート絶縁層上に塗布し、該有機半導体塗布液を乾燥させることにより行う。本発明では、ゲート絶縁層を構成する樹脂がベンゼン環を有し、有機半導体化合物と親和性がある。それゆえ、上記塗布乾燥法によって、有機半導体層とゲート絶縁層との間に均一で平坦な界面が形成される。
【0140】
有機半導体塗布液に使用される溶媒としては、有機半導体を溶解又は分散させるものであれば特に制限は無いが、好ましくは、常圧での沸点が50℃〜200℃の溶媒である。
該溶媒の例としては、クロロホルム、トルエン、アニソール、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。該有機半導体塗布液は、前記絶縁層塗布液と同様にスピンコート、ダイコート、スクリーン印刷、インクジェット等の公知の方法によりゲート絶縁層上に塗布することができる。
【0141】
本発明の有機薄膜トランジスタは、有機薄膜トランジスタを保護し、また、表面の平滑性を高める目的で、オーバーコート材でコートしてもよい。
【0142】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を用いて製造した絶縁層は、その上に平坦な膜等を積層することができ、積層構造を容易に形成することができる。また、該絶縁層上に有機エレクトロルミネッセンス素子を好適に搭載することができる。
【0143】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を用いて、好適に有機薄膜トランジスタを有するディスプレイ用部材を作製できる。該有機薄膜トランジスタを有するディスプレイ用部材を用いて、ディスプレイ用部材を備えるディスプレイを作製できる。
【0144】
本発明の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料は、絶縁層以外のトランジスタに含まれる層、有機エレクトロルミネッセンス素子に含まれる層を形成する用途にも用いることができる。
【実施例】
【0145】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明が実施例に限定されるものではない。
【0146】
<合成例1>
(高分子化合物1の合成)
50ml耐圧容器(エース製)に、4−(1−エトキシエトキシ)スチレン(東ソー有機合成製)を2.36g、4−ビニルアニソール(アルドリッチ製)を2.75g、アクリロニトリル(和光純薬製)を0.87g、スチレン(和光純薬製)を1.71g、ビニルベンジルクロライド(アルドリッチ製)を2.50g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(和光純薬製)を0.05g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(東京化成製)を23.88g入れ、アルゴンガスをバブリングし、密栓した。
【0147】
60℃のオイルバス中で20時間重合させ、高分子化合物1が溶解している粘稠なプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。高分子化合物1は、下記繰り返し単位を有している。括弧の添え数字は繰り返し単位のモル分率を示している。
【0148】
【化7】

高分子化合物1
【0149】
<合成例2>
(高分子化合物2)
ジムロートを取り付けた200mlの三口フラスコに、高分子化合物1のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を33.57g、N,N−ジエチルジチオカルバミック酸ナトリウム・3水和物(和光純薬製)を7.29g、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(Aldrich製、商品名「Aliquat 336」(登録商標))を0.1g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを100ml入れ、室温で2日間攪拌しながら、反応させた。反応終了後、生成した塩を濾別し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、メタノールで再沈殿して白色固体を得た。得られた白色固体をアセトン50mlに溶解させ、イオン交換水/メタノール(1/2(体積比))で再沈殿し、高分子化合物2を白色粉末として得た。高分子化合物2の得量は7.60gであった。高分子化合物2は、下記繰り返し単位を有している。括弧の添え数字は繰り返し単位のモル分率を示している。
【0150】
【化8】

高分子化合物2
【0151】
高分子化合物2の標準ポリスチレンから求めた重量平均分子量は、134000であった(島津製GPC、Tskgel super HM−H 1本+Tskgel super H2000 1本、移動相=THF)。
【0152】
<合成例3>
(高分子化合物3の合成)
2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジ(エチレンボロネート)を1.88g、及び2,6−ジブロモ−(4,4−ビス−ヘキサデカニル−4H−シクロペンタ[2,1−b;3,4−b’]−ジチオフェン)を3.81g含むトルエン(80mL)中に、窒素下において、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを0.75g、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(Aldrich製、商品名「Aliquat 336」(登録商標))を1.0g、及び2Mの炭酸ナトリウム水溶液を24mL加えた。
【0153】
この混合物を激しく攪拌し、加熱して24時間還流させた。粘稠な反応混合物をアセトン500mLに注ぎ、繊維状の黄色のポリマーを沈澱させた。このポリマーを濾過によって集め、アセトンで洗浄し、真空オーブンにおいて60℃で一晩乾燥させた。得られたポリマーを高分子化合物3とよぶ。高分子化合物3は、下記繰り返し単位を有している。nは繰り返し単位の数を示している。
【0154】
【化9】

高分子化合物3
【0155】
<合成例4>
(二重結合化合物1の合成)
セプタム及び三方コックを取り付けた150mlの三口フラスコに、4−ブロモ−フェニルクロロフォルメートを5.00g、トリエチルアミンを4.29g、脱水テトラヒドロフランを100ml入れ、氷浴で冷却した。2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール1.55gをガスタイトシリンジからゆっくり滴下した。滴下終了後、氷浴中で1時間攪拌して反応させ、更に、室温で一晩攪拌し、反応させた。反応終了後、反応混合物を水中に注ぎ、ジエチルエーテルで生成物を抽出し、有機層を更に水洗し、その後、分液し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。無水硫酸マグネシウムを濾別した後、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮して2,5−ビス(4−ブロモフェニルオキシカルボニルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンを粘稠な液体として得た。2,5−ビス(4−ブロモフェニルオキシカルボニルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンの得量は5.12gであった。
【0156】
【化10】

2,5−ビス(4−ブロモフェニルオキシカルボニルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン
【0157】
三方コックを付けたジムロートを付けた300mlの三つ口フラスコに、得られた2,5−ビス(4−ブロモフェニルオキシカルボニルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンを5.00g、4−ビニルフェニルボロン酸(東京化成工業製)を2.80g、炭酸カリウム(和光純薬製)を6.35g、トルエン(和光純薬製)を200ml、イオン交換水を20ml、及び、攪拌子を入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら、反応混合物中にアルゴンをバブリングしてフラスコ内部をアルゴン雰囲気にした。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(アルドリッチ製)を0.084g、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレートを0.107g加え、アルゴンバブリングを継続しながらフラスコを50℃のオイルバスに浸け、7時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで戻し、反応混合物を500mlの分液ロートに移した。フラスコをトルエン100mlで洗浄し、洗浄液を分液ロートに移した。水層を分液した後、イオン交換水50mlを加えて有機層を水洗し、水層を分液した。水洗工程を3回繰り返した後、有機層を分液して無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥終了後、無水硫酸マグネシウムを濾別し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた粘稠な液体にヘキサン100mlを加えて固体を析出させ、ガラスフィルターで固体を濾別し、減圧下で乾燥させることで2,5−ビス(4’−(4−ビニルビフェニル)オキシカルボニルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン(二重結合化合物1)を単黄色固体として得た。二重結合化合物1の得量は2.31gであった。
【0158】
【化11】

二重結合化合物1
【0159】
<合成例5>
(高分子化合物4の合成)
50ml耐圧容器(エース製)に、4−(1−エトキシエトキシ)スチレン(東ソー有機合成製)を1.50g、4−ビニルアニソール(アルドリッチ製)を4.19g、スチレン(和光純薬製)を3.25g、4−ブロモスチレン(アルドリッチ製)を1.11g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(和光純薬製)を0.05g、トルエン(和光純薬製)を15.16g入れ、アルゴンガスをバブリングし、密栓した。55℃のオイルバス中で20時間重合させ、粘稠なトルエン溶液を得た。
【0160】
三方コックを付けたジムロートを付けた300ml三つ口フラスコに、得られた粘稠なトルエン溶液を24.92g、と4−ビニルフェニルボロン酸(東京化成工業製)を2.29g、炭酸カリウム(和光純薬製)を5.35g、トルエン(和光純薬製)を50ml、イオン交換水を10ml、及び、攪拌子を入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら、反応混合物中にアルゴンをバブリングしてフラスコ内部をアルゴン雰囲気にした。フラスコ内に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(アルドリッチ製)を0.071g、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレートを0.09g加え、アルゴンバブリングを継続しながらフラスコを50℃のオイルバスに浸け、17時間反応させた。
【0161】
反応終了後、反応液を室温まで戻し、反応混合物を500mlの分液ロートに移した。
【0162】
フラスコをトルエン100mlで洗浄し、洗浄液を分液ロートに移した。水層を分液した後、イオン交換水50mlを加えて有機層を水洗し、水層を分液した。水洗工程を3回繰り返した後、有機層を分液して無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、無水硫酸マグネシウムを濾別し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、メタノールで再沈澱した。沈殿物を濾過し、乾燥させて高分子化合物4を灰色粉末として得た。高分子化合物4の得量は1.83gであった。高分子化合物4は、下記繰り返し単位を有している。括弧の添え数字は繰り返し単位のモル分率を示している。
【0163】
【化12】

高分子化合物4
【0164】
高分子化合物4の標準ポリスチレンから求めた重量平均分子量は、500000であった(島津製GPC、Tskgel super HM−H 1本+Tskgel super H2000 1本、移動相=THF)。
【0165】
<実施例1>
(有機薄膜トランジスタ絶縁層材料及び電界効果型有機薄膜トランジスタの製造)
10mlのサンプル瓶に、合成例2で得た高分子化合物2を0.4g、合成例4で得た二重結合化合物1を0.04g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを3.60g入れ、攪拌しながら溶解させて、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料である均一な塗布溶液1を調製した。
【0166】
得られた塗布溶液を孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過し、クロム電極のついたガラス基板上に濾液をスピンコートした後、ホットプレート上で100℃で1分間乾燥させた。その後、窒素中、ホットプレート上で200℃で30分間焼成してゲート絶縁層を得た。
【0167】
次に、高分子化合物3を溶媒であるキシレンに溶解させて、濃度が0.5重量%である溶液(有機半導体組成物)を作製し、該溶液をメンブランフィルターで濾過して塗布液を調製した。
【0168】
得られた塗布液を、前記ゲート絶縁層上にスピンコート法により塗布し、約30nmの厚さを有する活性層を形成し、次いで、メタルマスクを用いた真空蒸着法により、活性層上に、チャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極及びドレイン電極(活性層側から、酸化モリブデン、金の順番で積層構造を有する)を形成することにより、電界効果型有機薄膜トランジスタを作製した。
【0169】
<トランジスタ特性の評価>
こうして作製した電界効果型有機薄膜トランジスタについて、ゲート電圧Vgを20〜−40V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−40Vに変化させた条件で、そのトランジスタ特性を真空プロ−バ(BCT22MDC−5−HT−SCU;Nagase Electronic Equipments Service Co., LTD製)を用いて測定した。
【0170】
電界効果型有機薄膜トランジスタのヒステリシスは、ソース・ドレイン間電圧Vsdが−40Vで、ゲート電圧Vgを20V→−40Vに変化させた際の閾値電圧Vth1とゲート電圧Vgを−40V→20Vに変化させた際の閾値電圧Vth2との電圧差異で表した。結果を表1に示す。
【0171】
<実施例2>
(有機薄膜トランジスタ絶縁層材料及び電界効果型有機薄膜トランジスタの製造)
10mlのサンプル瓶に、合成例2で得た高分子化合物2を0.4g、合成例4で得た二重結合化合物1を0.04g、合成例5で得た高分子化合物4を0.04g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを4.10g入れ、攪拌しながら溶解して、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料である均一な塗布溶液2を調製した。塗布溶液1に代えて塗布溶液2を用いた以外は、実施例1と同様にして電界効果型有機薄膜トランジスタを作製し、トランジスタ特性を測定した。結果を表1に示す。
【0172】
<実施例3>
(有機薄膜トランジスタ絶縁層材料及び電界効果型有機薄膜トランジスタの製造)
10mlのサンプル瓶に、合成例2で得た高分子化合物2を0.2g、合成例4で得られた二重結合化合物1を0.04g、光酸発生剤(商品名:CPI−210S、サンアプロ株式会社製)を0.012g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを1.8g入れ、攪拌しながら溶解させ、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料である均一な塗布溶液3を調製した。得られた塗布溶液3を孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過し、クロム電極のついたガラス基板上に濾液をスピンコートした後、ホットプレート上で100℃で1分間乾燥させた。その後、アライナー(Canon製;PLA−521)を用いてUV光(波長365nm)を600mJ/cm照射し、窒素中、ホットプレート上で200℃で30分間焼成し、ゲート絶縁層を得た。得られたゲート絶縁層の膜厚は、406nmであった。
【0173】
ゲート絶縁層の作製以外は実施例1と同様にして電界効果型有機薄膜トランジスタを作製し、トランジスタ特性を測定した。結果を表1に示す。
【0174】
<実施例4>
(有機薄膜トランジスタ絶縁層材料及び電界効果型有機薄膜トランジスタの製造)
10mlのサンプル瓶に、合成例2で得た高分子化合物2を0.2g、合成例4で得られた二重結合化合物1を0.02g、光酸発生剤(商品名:CPI−210S、サンアプロ株式会社製)を0.011g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを1.8g入れ、攪拌しながら溶解させ、有機薄膜トランジスタ絶縁層材料である均一な塗布溶液4を調製した。
【0175】
塗布溶液3に代えて塗布溶液4を用いた以外は、実施例3と同様にして電界効果型有機薄膜トランジスタを作製し、トランジスタ特性を測定した。結果を表1に示す。得られたゲート絶縁層の膜厚は、421nmであった。
【0176】
<比較例1>
(電界効果型有機薄膜トランジスタの製造)
10mlのサンプル瓶に、ポリビニルフェノール−コ−ポリメチルメタクリレート(アルドリッチ製、Mn=6700)を1.00g、N,N,N’,N’,N”,N”−ヘキサメトキシメチルメラミン(住友化学製)を0.163g、熱酸発生剤(みどり化学(株)製、商品名:TAZ-108)を0.113g、2−ヘプタノンを7.00g入れ、攪拌溶解して均一な塗布溶液5を調製した。
【0177】
塗布溶液1に代えて塗布溶液5を用いた以外は実施例1と同様にして電界効果型有機薄膜トランジスタを作製し、トランジスタ特性を測定した。結果を表1に示す。
【0178】
【表1】

【符号の説明】
【0179】
1…基板、
2…ゲート電極、
3…ゲート絶縁層、
4…有機半導体層、
5…ソース電極、
6…ドレイン電極、
7…オーバーコート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

(1)
[式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該炭素数1〜20の一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Raaは、高分子化合物の主鎖と側鎖とを連結し、フッ素原子を有していてもよい連結部分を表す。Rは、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該炭素数1〜20の一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。aは、0又は1の整数を表し、nは、1〜5の整数を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される繰り返し単位を含有する高分子化合物(A)と、2個以上の二重結合を含有する二重結合化合物であって高分子化合物(A)とは異なる二重結合化合物(B)とを含む有機薄膜トランジスタ絶縁層材料。
【請求項2】
前記二重結合化合物(B)が、2個以上の二重結合を含有する低分子二重結合化合物(B−1)、及び二重結合を含有する繰り返し単位を2個以上含有する高分子二重結合化合物(B−2)からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料。
【請求項3】
前記低分子二重結合化合物(B−1)が、式(2)
【化2】

(2)
[式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該炭素数1〜20の一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。]
で表される二価の有機基と2個以上の二重結合とを含有する低分子二重結合化合物である請求項2に記載の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料。
【請求項4】
前記低分子二重結合化合物(B−1)が、式(5)
【化3】

(5)
[式中、R〜R12及びR17〜R21は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該炭素数1〜20の一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。R13〜R16は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該炭素数1〜20の一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Rdd、Ree及びRffは、それぞれ独立に、炭素数1〜20の二価の有機基を表す。該炭素数1〜20の二価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。p1、p2及びp3は、それぞれ独立に、0又は1の整数を表す。]
で表される低分子二重結合化合物である請求項3に記載の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料。
【請求項5】
前記高分子二重結合化合物(B−2)が、式(3)
【化4】

(3)
[式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rbbは、高分子化合物の主鎖と側鎖とを連結し、フッ素原子を有していてもよい連結部分を表す。bは、0又は1の整数を表す。]
で表される繰り返し単位、及び、式(4)
【化5】

(4)
[式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R’は、水素原子又は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。該炭素数1〜20の一価の有機基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。Rccは、高分子化合物の主鎖と側鎖とを連結し、フッ素原子を有していてもよい連結部分を表す。cは、0又は1の整数を表す。mは、1〜5の整数を表す。R’が複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含有する高分子二重結合化合物である請求項2に記載の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタ絶縁層材料を用いて形成した有機薄膜トランジスタ絶縁層を有する有機薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記有機薄膜トランジスタ絶縁層がゲート絶縁層である請求項6に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の有機薄膜トランジスタを含むディスプレイ用部材。
【請求項9】
請求項8に記載のディスプレイ用部材を含むディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−65839(P2013−65839A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−188511(P2012−188511)
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】