説明

有機薄膜パターニング用基板、有機電界発光素子、並びにこれを用いた有機EL表示装置および有機EL照明

【課題】 電荷輸送層上に形成したバンクを有する有機薄膜パターニング用基板を用いた有機電界発光素子において、駆動電圧が低く、かつ均一な発光が得られる有機電界発光素子を提供すること。
【解決手段】 基板上に直接または他の層を介して1層または2層以上の電荷輸送層を有し、該電荷輸送層上にバンクおよび該バンクによって区画された領域を有する有機電界発光素子用の有機薄膜パターニング用基板であって、該電荷輸送層が、熱および/または活性エネルギー線によって解離する官能基を有する化合物を、熱および/または活性エネルギー線によって解離させることにより得られた化合物を含有することを特徴とする、有機薄膜パターニング用基板およびこれを用いた有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子に用いられる有機薄膜パターニング用基板、およびこれを用いた有機電界発光素子ならびに有機EL表示装置および有機EL照明に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機ELディスプレイの発達は著しく、需要も増加の傾向にあるが、さらなる普及のためには製造の簡易化が求められ、製造プロセスが簡略で歩留まりがよく、低コストであるインクジェット方式を利用して画素を形成させる方法が提案されている。インクジェット方式では、まず画素の塗り分けのためのバンク(隔壁)を基板上に形成して区画領域を形成し、この区画された領域内にRGB三原色それぞれの画素を形成するインクを吐出して、乾燥することにより画素を形成させて、有機電界発光素子を形成する。
【0003】
しかしながら、このような有機電界発光素子は、正孔注入層、発光層などの複数の層をバンクで区画された領域に形成されなければならず、バンクで区画された領域に形成される各層の膜厚等の制御が困難であった。
そこで、例えば、特許文献1では、ポリ−3,4−アルキレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸との塩と架橋剤としてシランカップリング剤とを含む組成物を成膜し、架橋させることにより基板の全面にバッファー層を形成し、このバッファー層上にバンクを形成する方法が開示されている。この方法によれば、従来よりも簡易な工程で、かつ、バンクで区画された領域内に形成される各層の膜厚の不均一を生じにくい。しかしながら、このように架橋剤等を用いて形成されたバッファー層などの電荷輸送層上にバンクを形成することにより製造された有機電界発光素子は、均一な発光が得られなかったり、駆動電圧が高くなってしまったりするという問題点があった。さらには、製造プロセスとして酸素および水分を極端に減じた雰囲気下で製造しないと出来上がった素子の特性が速く劣化するという問題も抱えていて、製造装置の初期投資額や、維持コスト、製造装置メンテナンス時のダウンタイムの増大などで製造コストが上昇することを余儀なくされるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−242272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電荷輸送層上に形成したバンクを有する有機薄膜パターニング用基板を用いた有機電界発光素子において、膜厚分布が均一で、駆動電圧が低く、かつ均一な発光が低コストで製造できる有機電界発光素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討した結果、バンクを形成するための材料と電荷輸送層に含まれる架橋剤等の材料が反応し、その反応物等が素子として使用される際の電流経路に残留することにより、均一な発光が得られなかったり、駆動電圧が高くなってしまったりするといった問題を生じさせていると推測された。従って、本発明では該反応物等が生じない電荷輸送層を用いることにより、上記課題が解決できることが分かり本発明に到達した。
【0007】
さらに、熱および/または活性エネルギー線によって解離する官能基を有する化合物を
電荷輸送層に用いて、大気下で熱および/または活性エネルギー線によって解離させることにより得られた化合物を電荷輸送層に含有する素子を作製すると、そうした材料を含まない素子と比べて寿命が大きく延びることが判明した。
すなわち、本発明は、基板上に直接または他の層を介して1層または2層以上の電荷輸送層を有し、該電荷輸送層上にバンクおよび該バンクによって区画された領域を有する有機電界発光素子用の有機薄膜パターニング用基板であって、該電荷輸送層が、熱および/または活性エネルギー線によって解離する官能基を有する化合物を、熱および/または活性エネルギー線によって解離させることにより得られた化合物を含有することを特徴とする、有機薄膜パターニング用基板、およびこれを用いた有機電界発光素子ならびに該有機電界発光素子を用いた有機EL表示装置および有機EL照明に存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電荷輸送層上にバンク及び該バンクによって区画された領域を有する有機薄膜パターニング基板において、該電荷輸送層が、従来の架橋剤を用いた電荷輸送層とは異なり、熱等によって解離させることにより得られた化合物を含む層であることから、バンクを形成するための材料と架橋剤等の反応物等が電流経路に残ることを低減できる。
【0009】
また、例え、電荷輸送層に架橋剤やその他上層に拡散しやすい材料を用いたとしても、熱等によって解離させることにより得られた化合物を含む層が非常に溶剤に対して難溶性であるため、他の層との界面で混合することが減り、混合層の存在による電圧の上昇や、電荷注入効率の低下が抑制され、電荷移動度が上昇する。
また、特にバンクと隣接する電荷輸送層に、解離する官能基を有する化合物を、熱及び/又は活性エネルギー線によって解離することにより得られた化合物を含む場合、バンクを形成するための材料とも界面における混合や反応が抑制されるため、残渣が残るなどの悪影響が減り、素子の駆動電圧が上昇することを避けられる。
【0010】
さらには、熱等によって解離させることにより得られた化合物を含む層は、素子の製造プロセスにおける酸化劣化が少ないため、素子の初期特性の劣化や寿命の低下を低減することができる。
そのため、本発明の有機薄膜パターニング用基板を用いた有機電界発光素子は、駆動電圧が低く、かつ均一な発光が得られる。
【0011】
また、このような有機電界発光素子を用いた、高性能の有機EL表示装置および有機EL照明を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】有機薄膜パターニング用基板の製造手順と製造された有機薄膜パターニング用基板への有機薄膜の形成工程の実施の態様を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定はされない。
本発明において、「熱および/または活性エネルギー線」を「熱等」と言う場合がある。
本発明の有機薄膜パターニング用基板は、基板上に直接または他の層を介して1層または2層以上の電荷輸送層を有し、該電荷輸送層上にバンクおよび該バンクによって区画された領域を有する有機電界発光素子用の有機薄膜パターニング用基板であって、該電荷輸送層が、熱等によって解離する官能基を有する化合物を、熱等によって解離させることにより得られた化合物を含有することを特徴とする。(熱等によって解離する官能基を有す
る化合物(解離基を有する化合物))
熱等により解離する官能基とは、70℃以上で熱解離する基および/または活性エネルギー線の照射を受けて解離する基をいう。さらに好ましくは溶剤に対して可溶性を示す解離基である。ここで、溶剤に対して可溶性を示すとは、解離基が結合している状態、すなわち化合物の状態で、常温でトルエンに0.1重量%以上溶解することをいい、化合物のトルエンへの溶解性は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。
【0014】
このような熱等により解離する官能基として好ましくは、極性基を形成せずに熱等により解離する基であり、逆ディールスアルダー反応により解離する基であることがより好ましい。またさらに、100℃以上で熱解離する基であることが好ましく、300℃以下で熱解離する基であることが好ましい。
このような熱等により解離する官能基の脱離の例としては、例えば脱スルフィニルアセトアミド(JACS,V124,No.30,2002,8813参照)、脱オレフィン、脱アルコール、脱アルキル(H.Kwart and K.King,Department of Chemistry,University of Delaware,Nework,Delaware 19771,p415−447(1967),O.Diels and K.Alder,Ber.,62,554(1929)及びM.C.Kloetzel,Org.Reactions,4,6(1948)参照)、脱1,3−ジオキソール(N.D.Field,J.Am.Chem.Soc.,83,3504(1961)参照)、脱ジエン(R.Huisgen,M.Seidel,G.Wallbillich,and H.Knupfer,Tetrahedron,17,3(1962)参照)、脱イソキサゾール(R.Huisgen and M,Christi,Angew.Chem.Intern.Ed.Engl.,5,456(1967)参照)、脱トリアゾール(R.Kreher and J.Seubert,Z.Naturforach.,20B,75(1965)参照)等が挙げられる。
【0015】
本発明においては特に、熱等により解離する官能基がエテノ基、あるいはエタノ基を有する構造であることが好ましい。
熱等により解離する官能基を有する化合物としては、下記式(U1)又は下記式(U2)で表される部分構造を有する化合物であることが好ましい。
【0016】
【化1】

【0017】
(式(U1)中、環Aは芳香族環を表す。該芳香族環は置換基を有していてもよい。また、該置換基同士が直接または2価の連結基を介して環を形成していてもよい。
、S、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していても
よいアシル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、置換基を有していてもよいへテロアリールアミノ基または置換基を有していてもよいアシルアミノ基を表す。
【0018】
式(U2)中、環Bは芳香族環を表す。該芳香族環は置換基を有していてもよい。また、該置換基同士が直接または2価の連結基を介して環を形成していてもよい。
11〜S14、R11〜R16は、それぞれ独立に、上記S、S、R〜Rとして示したものと同様である。)
ここで、前記式(U1)中、環Aは、芳香族環を表す。また、前記式(U2)中、環Bは、芳香族環を表す。
【0019】
環A及び環Bで表される該芳香族環は、それぞれ1または2以上の置換基を有していてもよい。芳香族環は、芳香族炭化水素環であってもよくまた、芳香族複素環であってもよい。
該芳香族炭化水素環の核炭素数は通常6以上である。また通常40以下であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。
【0020】
該芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンゾピレン環、クリセン環、ベンゾクリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環、フルオレン環等が挙げられる。
上記の中でも環Aおよび環Bが、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環およびテトラセン環からなる群から選ばれることが好ましい。
【0021】
また、該芳香族複素環の核炭素数は、通常3以上である。また通常50以下であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。
また芳香族複素環としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、等が挙げられる。
【0022】
尚、環Aおよび環Bが有していてもよい置換基は、後述の環Az1および環Bz1が有していてもよい置換基と同様である。また、好ましい態様も同様である。
前記式(U1)または前記式(U2)で表される部分構造を有する化合物は、更にそれぞれ下記式U9またはU10で表される部分構造を繰り返し単位中に含む重合体であることが好ましい。
【0023】
【化2】

【0024】
(式(U9)中、環Az1は、解離基が結合する芳香族炭化水素環または芳香族複素環を表す。該芳香族炭化水素環及び該芳香族複素環は置換基を有していてもよい。また、該置換基同士が直接結合または2価の連結基を介して結合し、環を形成していてもよい。
z21、Sz22、Rz21〜Rz26は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、置換基を有していてもよいへテロアリールアミノ基または置換基を有していてもよいアシルアミノ基を表す。
【0025】
z1及びXz2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6以上50以
下の2価の芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい炭素数5以上50以下の2価の芳香族複素環基を表す。
式(U10)中、環Bz1は解離基が結合する芳香族炭化水素環または芳香族複素環を表す。該芳香族炭化水素環及び該芳香族複素環は置換基を有していてもよい。また、該置換基同士が直接または2価の連結基を介して環を形成していてもよい。
【0026】
z31〜Sz34、Rz31〜Rz36、Xz3及びXz4は、それぞれ独立に、上記Sz21、Sz22、Rz21〜Rz26、Xz1及びXz2として示したものと同様である。
Z1〜nZ4はそれぞれ独立に、0〜5の整数を表す。)
環Az1および環Bz1の芳香族炭化水素環としては、それぞれ独立に、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンゾピレン環、クリセン環、ベンゾクリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環、フルオレン環等が挙げられる。
【0027】
環Az1および環Bz1の芳香族複素環としては、それぞれ独立に、例えば、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、等が挙げられる。
【0028】
環Az1および環Bz1の置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1以上10以下の直鎖または分岐のアルキル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等の炭素数1以上8以下のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基等の炭素数1以上8以下のアルキニル基;ベンジル基等の炭素数2以上8以下のアラルキル基;フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等のアリールアミノ基;ピリジルアミノ基、チエニルアミノ基、ジチエニルアミノ基等のヘテロアリールアミノ基;アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の炭素数1以上8以下のアルコキシ基;アクリロイルオキシル基、メチルカルボニルアオキシル基、エチルカルボニルアオキシル基、ヒドロキシカルボニルメチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシカルボニルエチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシフェニルカルボニルオキシル基等の炭素数1以上15以下のアシルオキシル基;フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、等の炭素数10以上20以下のアリールオキシル基;等が挙げられる。これらの置換基はお互いに直接、あるいは、−O−、−S−、>CO、>SO、−(C2x)−、−O−(C2y)−、置換もしくは無置換の炭素数2以上20以下のアルキリデン基、置換基を有していてもよい炭素数2以上20以下のアルキレン基等、2価の連結基を介して結合し、環状構造を形成してもよい。上記xおよびyは、それぞれ1以上20以下の整数を表す。これらの置換基は1種のみ、または2種以上が任意の組み合わせで1つ、または2つ以上が環Az1および環Bz1に置換していてもよい。
【0029】
z1、Xz2、Xz3及びXz4の2価の芳香族炭化水素基としては、それぞれ独立
に、上記芳香族炭化水素環由来の基であって、炭素数が6〜50の2価基が挙げられる。Xz1、Xz2、Xz3及びXz4の2価の芳芳香族複素環基としては、それぞれ独立に、上記芳香族複素環由来の基であって、炭素数が5〜50の2価基が挙げられる。これら置換基は、上記環Az1および環Bz1の置換基として挙げたものと同様である。また、Sz21、Sz22、Rz21〜Rz26、Sz31〜Sz34、Rz31〜Rz36が置換基を有する場合の置換基としては、上記環Az1および環Bz1の置換基として挙げたものと同様である。
【0030】
熱等によって解離する官能基を有する化合物が、上記のような重合体である場合、重合体の重量平均分子量は、通常3,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下であり、また通常1,000以上、好ましくは2,500以上、より好ましくは5,000以上である。
また、数平均分子量は、通常2,500,000以下、好ましくは750,000以下、より好ましくは400,000以下であり、また通常500以上、好ましくは1,500以上、より好ましくは3,000以上である。
【0031】
通常、上記重量平均分子量はSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定により決定される。SEC測定では高分子量成分ほど溶出時間が短く、低分子量成分ほど溶出時間が長くなるが、分子量既知のポリスチレン(標準試料)の溶出時間から算出した校正曲線を用いて、サンプルの溶出時間を分子量に換算することによって、重量平均分子量及び数平均分子量が算出される。
【0032】
重合体の分子量が上記上限値を超えると、不純物の高分子量化によって重合体の精製が困難となる可能性がある。また重合体の分子量が上記下限値を下回ると、成膜性が低下する可能性があり、ガラス転移温度、融点および気化温度が低下するため、耐熱性が著しく損なわれる可能性がある。
重合体の1つの重合体鎖の中に含まれる熱等によって解離する官能基は、好ましくは平
均5以上、より好ましくは平均10以上、より好ましくは平均50以上である。この下限値を下回ると加熱前の該重合体の塗布溶剤に対する溶解性が低い場合があり、またさらに加熱後の重合体の溶剤への溶解性の低下の効果も低くなる可能性がある。
【0033】
熱等によって解離する官能基を有する化合物が、分子量が単一な化合物である場合、該化合物の分子量は、通常300以上、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、通常20000以下、好ましくは10000以下、より好ましくは5000以下である。分子量がこの上限値を上回ると、合成経路が煩雑となり高純度化が困難となる場合がある。また不純物の高分子量化によって化合物の精製が困難となる場合がある。また、分子量がこの下限値を下回ると、成膜性が低下する場合があり、ガラス転移温度、融点および気化温度が低下するため、耐熱性が著しく損なわれる場合がある。
【0034】
分子量が単一な化合物における分子量/熱等によって解離する官能基数の比率は、通常200以上であり、好ましくは300以上、より好ましくは500以上である。また通常4000以下、好ましくは3500以下、より好ましくは3000以下である。この下限値を下回ると、熱等によって解離する官能基が解離後の化合物の電気的耐久性が低下したり、結晶性が過多になりすぎて膜のクラッキングが起きる可能性がある。また反対に上限値を大きく上回ると、熱等によって解離する官能基の解離による溶解性抑制の効果が低くなりやすく、電気的耐久性が低下したり、電荷輸送性が低下したり、耐熱性が低下したりする可能性がある。
【0035】
<具体例>
本発明における、解離基を有する化合物の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
【化3】

【0037】
(熱等によって解離させる方法)
熱等によって解離する官能基を有する化合物を含有する組成物(解離基含有組成物)を調製する。該組成物は、熱等によって解離する官能基を有する化合物及び溶剤を含むものである。該組成物は、熱等によって解離する官能基を有する化合物の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで含むものであってもよい。
【0038】
組成物に含有される溶剤は、熱等によって解離する官能基を有する化合物を溶解するものが好ましく、通常、熱等によって解離する官能基を有する化合物を0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上溶解する溶剤である。
なお、この組成物は、熱等によって解離する官能基を有する化合物を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下含有する。
【0039】
溶剤の種類は、特に制限されるものではない。好ましくは、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族化合物;1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メト
キシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸イソプロピル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等のエステル系溶媒等の有機溶媒が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。その他の溶剤も用いることができ、例えば、トリフルオロメトキシアニソール、ペンタフルオロメトキシベンゼン、3−(トリフルオロメチル)アニソール、エチル(ペンタフルオロベンゾエート)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等を用いることも可能である。
【0040】
また、さらに、この組成物は、レベリング剤や消泡剤等の塗布性改良剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。後述する有機電界発光素子の欄で説明する発光材料等を含んでいてもよい。
成膜方法としては、該組成物を用いて例えば、スピンコート法、ワイヤーバー法、フローコート法、ダイコート法、ロールコート法、スプレーコート法などにより、所定の乾燥膜厚になるように、例えば、気温23℃、相対湿度50%の大気中で成膜を行なう。
【0041】
組成物を用いて形成した層を他の溶剤に不溶化させるため、成膜後、加熱処理および/または活性エネルギー線による処理を行なう。
加熱による場合は、着目する化学結合が曝された熱環境によって十分解離するに足る温度と時間を選定する。加熱の方法は適宜選ばれるが、通常、オーブンなどによる雰囲気加熱での対象物の間接加熱、あるいは、ホットプレートやハロゲンランプによる対象物の直接加熱が行なわれる。例えば、ホットプレート上で230℃にて、1時間ベークし、電荷輸送層を形成する。しかし、これに限定されることはなく、より低温あるいはより高温で解離する化合物も含まれる。好ましい温度範囲としては、通常70℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、また通常400℃以下、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下に、形成された層を加熱する。加熱時間としては、通常0.1秒以上、好ましくは1分以上、好ましくは24時間以下、より好ましくは10時間以下である。
【0042】
活性エネルギー線の照射による場合、活性エネルギー線としては、化合物の化学結合に対してエネルギーを与え、その結合そのものやその化合物の高次構造に対して変化を与えうるエネルギー線、例えば、紫外線、X線、放射性同位元素の崩壊によるガンマ線、あるいは、電子線、イオン線、中性原子線、他の素粒子線、例えば、陽子線、中性子線、陽電子線等が挙げられる。その発生方法や照射方法は各種存在する。例えば、エネルギー線の発生源であれば、マグネトロン、LED光源、レーザ光源、金属ターゲットに高速電子線を照射するX線源、放射性同位元素の崩壊によるガンマ線源、シンクロトロン(放射光)、熱電子を高電圧で加速して得る高圧電子線源、FIB(収束イオンビーム)などがあり、照射方法も、狭い領域に収束させた活性エネルギー線を走査して広い領域に照射したり、活性エネルギー線を広い領域に拡大して同時に照射したりする方法も用いることができる。条件としては、対象となる化合物に合わせて照射線の種類や中心エネルギーを選んだり、素子構造や膜厚に合わせて、照射領域や時間を適宜選定したりする。好ましくは、変化させたい結合の結合エネルギーに合わせて線源や照射エネルギー・時間を選定する。
【0043】
(その他の電荷輸送層)
本発明の有機薄膜パターニング用基板は、1層または2層以上の電荷輸送層のうち、少なくとも1層の電荷輸送層が、熱等によって解離する官能基を有する化合物を、熱等によって解離させることにより得られた化合物を含有するが、電荷輸送層を2層以上有する場合、これ以外の電荷輸送層(以下、その他の電荷輸送層という)が、熱等によって解離する官能基を有する化合物を、熱等によって解離させることにより得られた化合物を含有することも好ましい。
【0044】
尚、本発明において電荷輸送層とは、電荷輸送性化合物を含有する層であり、通常は、有機電界発光素子の電極層の間(すなわち、陽極と陰極の間)に形成される層であればよい。ただし、本発明において、有機薄膜パターニング用基板は、発光層のRGBの各色の塗り分けに用いられることが好ましいため、電荷輸送層としては発光層以外の層であることが好ましく、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層等であることが好ましい。
【0045】
(ドープ型化合物)
さらに、熱等によって解離する官能基を有する化合物を熱等によって解離させることによって得られた化合物を含有する電荷輸送層に、ドープ型化合物を含有させてもよい。
また、電荷輸送層を2層以上有し、バンクと隣接する電荷輸送層が、熱などによって解離する官能基を有する化合物を熱等によって解離させることによって得られた化合物を含有する層である場合その他の電荷輸送層は、ドープ型化合物を含有する層や架橋性基を有する電荷輸送性化合物を架橋して得られるポリマーを含有する層であってもよい。いずれの場合でも、ドープ型化合物を含有する層は特に、電極層(陽極)に隣接して形成されることが好ましい。
【0046】
まず、その他の電荷輸送層として、ドープ型化合物を含有する層について説明する。
本発明において、ドープ型化合物とは、電荷輸送層を構成する組成物中において、少量添加されることで電荷供与助剤として働く、すなわち、電子受容性化合物などのアクセプターまたは電子供与性化合物などのドナーとして働く化合物をいう。ここで、電荷輸送層を構成する組成物としては、正孔輸送性化合物であっても、電子輸送性化合物であってもよいが、正孔輸送性化合物である場合を例にとって説明する。
【0047】
正孔輸送性化合物は、通常、有機電界発光素子の正孔注入層や正孔輸送層に使用される、正孔輸送性を有する化合物であれば、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であっても、さらには、両者の混合物であってもよいが、高分子化合物であることが好ましい。
正孔輸送性化合物としては、4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル誘導体、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、カーボン等が挙げられる。
【0048】
尚、本発明において誘導体とは、例えば、芳香族アミン誘導体を例にするならば、芳香族アミンそのもの及び芳香族アミンを主骨格とする化合物を含むものであり、重合体であっても、単量体であってもよい。
正孔輸送性化合物は、このような化合物のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種または2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種または2種以上とを併用することが好ましい。
【0049】
上記例示した中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳
香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。具体的には、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載のものが挙げられる。
【0050】
また、正孔輸送性化合物としては、ポリチオフェンの誘導体である3,4-ethylenedioxythiophene(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を高分子量ポリスチレンスルホン酸中で重合してなる導電性ポリマー(PEDOT/PSS)もまた好ましい。また、このポリマーの末端を
メタクリレート等でキャップしたものであってもよい。
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の電荷輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
【0051】
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物等が挙げられる。さらに具体的には、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンダフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩(国際公開第2005/089024号パンフレット);塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸
アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンダフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素;ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、ショウノウスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0052】
電子受容性化合物の正孔輸送性化合物に対するドープ量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上である。但し、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。ただし、該正孔輸送性化合物が高分子化合物であったり混合物であったりした場合は、モル比を計算するための分子量として重量平均分子量(Mw)を用いるものとする。
【0053】
このようなドープ型化合物を含有する電荷輸送層の形成方法について、以下に説明する。
まず、該電荷輸送層の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から湿式成膜法により形成することが好ましい。
湿式成膜法により形成する場合、通常は、正孔輸送性化合物と電子受容性化合物とを溶剤に溶解または分散させた組成物(ドープ型化合物含有組成物)を調製し、該組成物を湿式成膜法により成膜する。通常は、ドープ型化合物含有組成物中または電荷輸送層中において、正孔輸送性化合物と電子受容性化合物とが反応することにより、正孔輸送性化合物のラジカルカチオンと電子受容性化合物に由来する対アニオンが形成される。
【0054】
該ドープ型化合物含有組成物において、電子受容性化合物の正孔輸送性化合物に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上であり、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。
溶剤としては、限定されるものではないが、例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤などが挙げられる。
【0055】
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシ
ベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル、等が挙げられる。
【0056】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル、等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
【0057】
アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、等が挙げられる。
その他、ジメチルスルホキシド、等も用いることができる。
これらの溶剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いてもよい。組成物中において、溶剤は、通常10重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上含有される。
【0058】
尚、該組成物は、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。
また、本発明において、湿式成膜法としては、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等が挙げられる。
【0059】
成膜時の温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましくい。
成膜時の相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、通常80%以下である。
【0060】
(架橋性基を有する電荷輸送性化合物)
また、電荷輸送層を2層以上有する場合、熱等によって解離する官能基を有する化合物を熱等によって解離させることによって得られた化合物を含有する電荷輸送層以外の電荷輸送層は、架橋性基を有する電荷輸送性化合物を架橋して得られるポリマーを含有する層であってもよい。
【0061】
架橋性基を有する電荷輸送性化合物(以下、架橋性化合物という)とは、分子内に、少なくとも1つの架橋性基を有する化合物である。架橋性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。
本発明において架橋性基とは、近傍に位置するほかの分子の同一又は異なる基と反応して、新規な化学結合を生成する基のことをいう。例えば、熱等の照射により、近傍に位置する他の分子の同一又は異なる基と反応して、新規な化学結合を生成する基が挙げられる。
【0062】
この架橋性基の例を挙げると、オキセタン、エポキシなどの環状エーテル由来の基;ビニル基、トリフルオロビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリロイル、シンナモイル等の不飽和二重結合由来の基;ベンゾシクロブテン由来の基などが挙げられる。
ここで、電荷輸送性化合物としては、正孔輸送性化合物であっても、電子輸送性化合物であってもよいが、正孔輸送性化合物である場合を例にとって説明する。
【0063】
架橋性化合物は、上記ドープ型化合物における正孔輸送性化合物として例示したものに、架橋性基が結合してなるものであることが好ましい。尚、架橋性基はアルキル基、アルコキシ基等の連結基を介して化合物の主骨格や主鎖に連結することが好ましい。
中でも、ポリアリールアミン誘導体やポリアリーレン誘導体に架橋性基が結合した化合物が好ましい。
【0064】
ポリアリールアミン誘導体としては、下記式(II)で表される繰り返し単位を含む重合体であることが好ましい。特に、下記式(II)で表される繰り返し単位からなる重合体であることが好ましく、この場合、繰り返し単位それぞれにおいて、ArまたはArが異なっているものであってもよい。
【0065】
【化4】

【0066】
(式(II)中、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。)
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、6員環の単環または2〜5縮合環由来の基およびこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
【0067】
置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5または6員環の単環または2〜4縮合環由来の基およびこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
【0068】
有機溶剤に対する溶解性、耐熱性の点から、ArおよびArは、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、チオフェン環、ピリジン環、フルオレン環からなる群より選ばれる環由来の基やベンゼン環が2環以上連結してなる基(例えば、ビフェニル基やターフェニル基)が好ましい。
【0069】
中でも、ベンゼン環由来の基(フェニル基)、ベンゼン環が2環連結してなる基(ビフェニル基)およびフルオレン環由来の基(フルオレニル基)が好ましい。
ArおよびArの置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基などが挙げられる。
【0070】
ポリアリーレン誘導体としては、前記式(II)におけるArやArとして例示した置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基などのアリーレン基をその繰り返し単位に有する重合体が挙げられる。
ポリアリーレン誘導体としては、下記式(III−1)および/または下記式(III−2)からなる繰り返し単位を有する重合体が好ましい。
【0071】
【化5】

【0072】
(式(III−1)中、Ra、Rb、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、フェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、又はカルボキシ基を表す。tおよびsは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。tまたはsが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のRaまたはRbは同一であっても異なっていてもよく、隣接するRaまたはRb同士で環を形成していてもよい。)
【0073】
【化6】

【0074】
(式(III−2)中、RおよびRは、それぞれ独立に、上記式(III−1)におけるRa、Rb、RまたはRと同義である。rおよびuは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。rまたはuが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のRおよびRは同一であっても異なっていてもよく、隣接するRまたはR同士で環を形成していてもよい。Xは、5員環または6員環を構成する原子または原子群を表す。)
Xの具体例としては、酸素原子、置換基を有していてもよいホウ素原子、置換基を有していてもよい窒素原子、置換基を有していてもよいケイ素原子、置換基を有していてもよいリン原子、置換基を有していてもよいイオウ原子、置換基を有していてもよい炭素原子またはこれらが結合してなる基である。
【0075】
また、ポリアリーレン誘導体としては、上記式(III−1)および/または上記式(III−2)からなる繰り返し単位に加えて、さらに下記式(III−3)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0076】
【化7】

【0077】
(式(III−3)中、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。vおよびwは、それぞれ独立に0または1を表す。)
Ar〜Arの具体例としては、前記式(II)における、Ar及びArと同様である。
【0078】
上記式(III−1)〜(III−3)の具体例およびポリアリーレン誘導体の具体例等は、特開2008-98619号公報に記載のものなどが挙げられる。
このような架橋性化合物を含有する電荷輸送層の形成方法について、以下に説明する。
まず、該電荷輸送層の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から湿式成膜法により形成することが好ましい。
【0079】
湿式成膜法により形成する場合、通常は、架橋性化合物を溶剤に溶解または分散させた組成物(架橋性化合物含有組成物)を調製し、該組成物を湿式成膜法により成膜する。
架橋性化合物含有組成物には、上述の架橋性化合物の他、溶剤を含有する。溶剤としては上記ドープ型化合物含有組成物に用いたものとして例示したものと同様である。
架橋性化合物含有組成物は、架橋性化合物の他、架橋反応を促進する添加物を含んでいてもよい。架橋反応を促進する添加物の例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の重合開始剤および重合促進剤;縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリールケトン化合物等の光増感剤;などが挙げられる。
【0080】
架橋性化合物含有組成物は、各種の発光材料、架橋性基を有さない正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物、レベリング剤、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。
また、架橋性化合物含有組成物は、上記ドープ型化合物含有組成物に含有される化合物として例示した電子受容性化合物を含有していてもよい。架橋性化合物に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上である。但し、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。この場合、架橋性化合物または架橋性化合物を架橋してなるポリマーに電子受容性化合物がドープされ、ドープ型化合物含有組成物の一態様となる。すなわち、これにより形成された層は、ドープ型化合物を含有する層となる。
【0081】
架橋性化合物含有組成物を基板上に直接または電極層や電荷輸送層などの上に成膜して、加熱および/または光などの活性エネルギー線に代表される活性エネルギー線の照射により、架橋性化合物を架橋させてポリマー(網目状高分子化合物)を形成する。
成膜方法としては、上記例示したような湿式成膜法が用いられることが好ましい。
成膜時の温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましくい。
【0082】
成膜時の相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、通常80%以下である。
成膜後、加熱乾燥、減圧乾燥等により、形成された膜を乾燥させることが好ましい。加熱により架橋させる場合は、その加熱が乾燥を兼ねていてもよい。
成膜後、加熱および/または活性エネルギー線の照射により、架橋性化合物を架橋させる。
【0083】
加熱の場合の加熱温度条件としては、通常120℃以上、好ましくは400℃以下である。加熱時間としては、通常1分以上、好ましくは24時間以下である。加熱手段としては特に限定されないが、成膜された層を有する基板をホットプレート上に載せたり、オーブン内で加熱するなどの手段が用いられる。例えば、ホットプレート上で120℃以上、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
【0084】
光などの活性エネルギー照射による場合には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。光以外の活性エネルギー線の照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。照射時間としては、膜の溶解性を低下させるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
【0085】
加熱または活性エネルギー線の照射は、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
以上のようにして、架橋性化合物を架橋させたポリマーを得ることができる。架橋性化合物を架橋させたポリマーを含有する電荷輸送層は、架橋性化合物を架橋させたポリマーからなるものであってもよいし、架橋性化合物を架橋させたポリマーの他、その他の材料を含有するものであってもよい。
【0086】
その他の材料としては、上記架橋性化合物含有組成物に含有されていてもよい材料として例示したものが挙げられ、特に電子受容性化合物を含有することが好ましい。
(有機薄膜パターニング用基板の作製)
以下、図1を参照にして、基板上に、電極層として陽極を形成し、第1の電荷輸送層として正孔注入層、第2の電荷輸送層として、熱等によって解離する官能基を有する化合物を、熱等によって解離させることにより得られた化合物を含有する層である正孔輸送層を形成し、該第2の電荷輸送層上にバンクが形成された有機薄膜パターニング用基板を例にとって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない(尚、図1は、陽極を省略した図となっている)。本発明の有機薄膜パターニング用基板における電荷輸送層は、正孔注入層や正孔輸送層以外であってもよいし、1層からなるものであっても、2層以上からなるものであってもよいし、また電極層は陰極であってもよい。
【0087】
(基板)
基板としては、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹
脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
【0088】
(陽極)
陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウムおよび/またはスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
【0089】
陽極の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法等により行われることが多い。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板上に塗布することにより陽極を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板上に薄膜を形成したり、基板上に導電性高分子を塗布して陽極を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
【0090】
陽極は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
陽極の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陽極の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極の厚みは任意であり、陽極は基板1と一体化されたものであってもよい。また、さらには、異なる導電材料が積層されたものであってもよい。
【0091】
陽極に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることは好ましい。
前記基板において、パターニングされた陽極上に有機薄膜を形成して発光素子を作製した場合、該陽極の辺縁部における素子劣化が問題の1つに挙げられる。こうした素子劣化は、該辺縁部が後述の陰極と対向した部分において顕著に現れる。この原因として挙げられるのは、該陽極と陰極に挟まれた有機薄膜に掛かる局所的な電界強度と電流密度の関係が、辺縁部では中央の平坦部と比べて極端に異なることによる。つまり、辺縁部ではその断面形状の特殊性(段差の存在)からくる電界強度の上昇とそれに伴う電流密度の増加により、局所的に有機薄膜を構成する材料の劣化が促進され、もって素子寿命がさらに短縮される結果となる。
【0092】
この問題を解決する1つの方法として、該陽極上に絶縁膜を設置し、辺縁部を覆って、発光させたい領域をパターニングして電流が流れる開口を形成する方法が知られており、そうした開口を有する絶縁薄膜を「開口絶縁膜」と一般的に称している。こうすることにより辺縁部の形状特殊性からくる電界集中を排除し、電界が陽極から陰極に向かって一様に分布するようにできる。
【0093】
前記絶縁膜としては、二酸化シリコン薄膜が一般的によく用いられているが、他に、酸化窒化シリコン薄膜や、ポリイミド薄膜に代表される有機薄膜を用いることもできる。
パターニングの方法としてはフォトリソグラフィー法が一般的に用いられている。また、開口を形成する方法としては、反応性イオンエッチング法の他、イオンミリング法、ウェットエッチング法などが用いられる。
【0094】
さらに、開口を形成して陽極が露出した後の表面に紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることは、好ましい。
しかしながら、こうした開口絶縁膜を形成することは、素子作製工程を増やし、歩留りの低下や製造コストの押し上げといったことに影響を与えることになり、できれば無い方が好ましい。これを可能にする方法の1つに、前記バンクを開口絶縁膜として用いる方法がある。それにはバンクの平面形状として前記陽極の辺縁部を覆うように設計することで実現可能である。
【0095】
特に、基板上に有機層をほぼ全面に渡って形成した上にバンクを形成した場合には、該バンクがより有効に開口絶縁膜としての機能を果たす。
(第1の電荷輸送層/正孔注入層)
第1の電荷輸送層(正孔注入層)は、ドープ型化合物を含有する層または架橋性基を有する電荷輸送性化合物を架橋して得られるポリマーを含有する層であることが好ましい。上記陽極のほぼ全面(本発明においてほぼ全面とは、全面も含む)に組成物を成膜して、形成する(図1A)。これらの層の形成方法は上述の通りである。
【0096】
正孔注入層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
正孔注入層は、上記の方法に限らず、その他の方法により形成されてもよく、真空蒸着法で形成されたものであってもよい。その場合、上記正孔輸送性化合物として例示したような化合物を用いることが好ましい。
【0097】
(第2の電荷輸送層/正孔輸送層)
本実施の態様では、第2の電荷輸送層(正孔輸送層)は、熱等によって解離する官能基を有する化合物を、熱等によって解離させることにより得られた化合物を含有する層である。上記のとおり、熱等により解離する基を含有する化合物を含む組成物を上記正孔注入層上のほぼ全面に成膜して熱等により解離させる(図1B)。
【0098】
正孔輸送層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
(バンクの形成)
上記正孔輸送層上に、バンクを形成する。バンクの形成方法は特に限定されるものではないが、フォトリソグラフィー法により形成されることが好ましく、正孔輸送層上に感光性組成物を成膜して、露光、現像することによりバンクを形成することが好ましい。バンクは撥インク性成分を含有することが好ましい。また、現像後、バンクで区画された領域内に、感光性組成物の残渣が残ると、有機電界発光素子としたときの発光に影響を及ぼす場合があるため、感光性組成物を成膜する前に、親水性化合物含有組成物を成膜し下引き層を形成した後(図1C)、この上に感光性組成物を成膜し(図1D)、露光、現像に供することが好ましい(図1E)。これにより、バンクは、親水性化合物含有組成物により形成される下引き層、感光性組成物により形成される樹脂層の積層構造となる(図1F)。バンクは、このように2層または3層以上からなる積層体であってもよく、単層からなるものであってもよい。
【0099】
(下引き層)
まず、親水性化合物含有組成物を用いて形成される下引き層について説明する。親水性化合物含有組成物は、親水性化合物を含有し、通常、さらに溶剤を含有する。
なお、以下、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の双方を含むことを意味し、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイル」なども同様の意味である。また、モノマー名の前に「(ポリ)」をつけたものは、当該「モノマー」と、その「ポリマー」との双方を含むことを意味し、「酸(無水物)」
、「(無水)…酸」とは、「酸」とその「酸無水物」の双方を含むことを意味する。また、「酸(塩)基」とは、「酸基」とその「塩基」の双方を含むことを意味する。また、「(共)重合」とは「重合」と「共重合」の双方を含むことを意味する。また、本発明において、「全固形分」とは、組成物の構成成分のうち、溶剤を除くすべての成分を意味する。
【0100】
また、本発明において、各種の樹脂の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
この下引き層の形成方法としては特に制限はないが、親水性化合物を含有する親水性化合物含有組成物を正孔輸送層上に塗布して乾燥することにより形成することが好ましい。
親水性化合物含有組成物は、感光後に重合または硬化し、その後の現像工程における現像液に対して不溶若しくは難溶の性質を獲得する感光性組成物(いわゆるネガ型フォトレジスト)を含有する親水性化合物含有組成物であってもよいし、露光部が感光によって変化し、その後の現像工程における現像液に対して易溶の性質を獲得する組成物を含む感光性組成物(いわゆるポジ型フォトレジスト)を含有する親水性化合物含有組成物であってもよい。また、特に、無機系ネガ型感光性組成物を採用してもよい。その1例としては、ペルオキソポリタングステン酸水溶液が挙げられる。その調製方法としては、以下の文献に記載のものが挙げられる。Excimer laser exposure characteristics of inorganic resists based on peroxopolytungstic acids. Ishikawa, Akira;Okamoto, Hiroshi; Miyauchi, Katsuki; Kudo, Tetsuichi. Cent. Res. Lab., Hitachi, Ltd., Tokyo, Japan. Proceedings of SPIE-The International Society for Optical Engineering (1989), 1086(Adv. Resist Technol. Process. 6), 180-5. このような無機系感光性組成物を用いたときには、バンクで区画された領域は、界面反応の痕跡を検出することができず、該バンクを形成する以前の表面と同様に良好に保たれる。
【0101】
このように下引き層が感光性を有する場合には、通常、下記詳述するバンク形成用レジスト層とその感光型(ネガ型またはポジ型)が一致するようにする。
本発明において、親水性化合物とは、水に溶解または膨潤する化合物である。具体的には、分子内に、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸(塩)基、ホスホン酸(塩)基、アミノ基、アミド基、4級アンモニウム塩基などの官能基を有する化合物であることが好ましい。特に、親水性化合物は、有機化合物であることが好ましく、耐性を確保するため、親水性樹脂であることが好ましい。ここで、親水性樹脂とは、上記官能基を有する樹脂であり、通常は、上記官能基を含有する単位(モノマーやポリマー)を重合や縮合して得られる樹脂をいい、重量平均分子量(Mw)が1000〜2,000,000程度の高分子材料をいう。
【0102】
親水性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、膠、カゼイン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチル澱粉、サクローズオクタアセテート、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、水溶性ポリアミド、無水マレイン酸共重合体、アラビアゴム、水溶性大豆多糖類、ホワイトデキストリン、プルラン、カードラン、キトサン、アルギン酸、酵素分解エーテル化デキストリン等の他、以下親水性モノマーを用いて(共)重合された(共)重合体などが挙げられる。
【0103】
親水性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、イタコン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミンもしくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、ビニルスルホン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、ビニルピロリドン、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、アミノ基もしくはそれらの塩、水酸基、アミド基およびエーテル基などから選ばれる親水性基を有するモノマーが挙げられる。
【0104】
また、親水性樹脂以外の親水性化合物としては、上記親水性モノマーとして例示したものが挙げられ、これらが親水性化合物含有組成物中にモノマーのまま含有されることも好ましい。
親水性化合物としては、上記例示の中で、ビニルピロリドンの(共)重合体、(メタ)アクリル酸の(共)重合体、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類などの親水性樹脂が好ましい。
【0105】
本発明で用いる親水性化合物含有組成物は、これらの親水性化合物の1種を含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
親水性化合物は、親水性化合物含有組成物の全固形分中、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上で、100重量%以下含有されることが好ましい。
本発明に係る親水性化合物含有組成物には、上記親水性化合物の他、必要に応じて他の成分が含有されていてもよい。他の成分としては、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤、エチレン性不飽和化合物やその他反応性化合物、界面活性剤、フィラー、基板密着増強剤、酸やアルコールなどの現像促進剤、色材、熱重合防止剤、可塑剤、保存安定剤、表面保護剤などが挙げられる。特に、親水性化合物含有組成物中に光重合開始剤やエチレン性不飽和化合物を含有させることにより該組成物に感光性をもたせ、樹脂層と共に露光時に重合させることも、それぞれの界面での接着性を確保する意味で有用である。
【0106】
この場合に用いられる光重合開始剤やエチレン性不飽和化合物としては、例えば、後述の感光性組成物に含有される光重合開始剤やエチレン性不飽和化合物として例示するものなどを用いることができる。親水性化合物含有組成物が、光重合開始剤を含有する場合、その含有量は、組成物の全固形分中、通常0.01重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。親水性化合物含有組成物がエチレン性不飽和化合物を含有する場合、その含有量は、組成物の全固形分中、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上、通常80重量%以下、好ましくは50重量%以下である。
【0107】
親水性化合物含有組成物に含有される溶剤としては、親水性化合物含有組成物の固形分が溶解若しくは分散可能で、均一な塗布を可能とするものであればよく特に限定されないが、水および/またはアルコール系溶剤を用いることが好ましく、特に、水および/またはアルコール系溶剤が、親水性化合物含有組成物に含まれる溶剤の主成分であることが好ましい。
【0108】
親水性化合物含有組成物に用いられるアルコール系溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メチル−3−エトキシブタノール、3−メチル−3−n−プロポキシブタノール、3−メチル−3−イソプロポキシブタノール、3−メチル−3−n−ブトキシシブタノール、3−メチル−3−イソブトキシシブタノール、3−メチル−3−sec−ブトキシブタノール、3−メチル−3−tert−ブトキシシブタノール、3−メトキシブタノール等のアルコキシアルコール類が挙げられる。
【0109】
なお、親水性化合物含有組成物の溶剤としては、水、アルコール系溶剤以外の溶剤であってもよく、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン等のケトン類、3−メトキシブチルアセテート、ブチルジグリコールアセテート、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類などが挙げられる。これらは単独で用いても、水やアルコール系溶剤と混合して用いてもよい。
【0110】
親水性化合物含有組成物に含まれる溶剤は、水、上述のアルコール系溶剤、およびその他の溶剤から選ばれる1種のみであってもよく、2種以上の混合溶剤であってもよい。
親水性化合物含有組成物中の、全固形分濃度は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上で、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0111】
上記親水性化合物含有組成物を、正孔輸送層上のほぼ全面に、成膜することにより下引き層を形成する際の方法としては上記の湿式成膜法が挙げられる。また、成膜後の乾燥方法としては、ホットプレート、IRオーブン、またはコンベクションオーブンを使用して乾燥させる方法が好ましい。乾燥温度としては、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、通常200℃以下、好ましくは130℃以下の温度で加熱乾燥する。また、乾燥時間としては、15秒以上が好ましく、30秒以上が好ましく、5分以下が好ましく、3分以下が好ましい。乾燥は、温度を高めず、減圧チャンバー内で乾燥を行う減圧乾燥法であってもよく、また減圧乾燥と加熱乾燥との併用でもよい。
【0112】
乾燥後に得られる下引き層の膜厚は、特に限定されないが、下引き層も含んだ出来上がりのバンク高さの1/3以下が好ましく、1/4以下であることが特に好ましく、また1/200以上であることが好ましく、1/50以上であることが特に好ましい。
下引き層の具体的な膜厚は、5nm以上が好ましく、7nm以上がより好ましく、10nm以上が特に好ましく、4μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.5μm以下が特に好ましい。下引き層の膜厚がこの下限を下回ると、下引き層の効果が得られ難く、上限を上回ると、上述の如く、バンクで区画された領域内に有機薄膜が均一に形成され難くなる。また、下引き層に感光性を持たせない場合は、上層のバンク形成用レジスト層を保持することが難しくなる。
【0113】
(樹脂層)
正孔輸送層上または上記下引き層上のほぼ全面に感光性組成物を成膜し、露光、現像することにより、バンクを形成する。本発明では、バンクのうち、感光性組成物により形成される部分を樹脂層という。すなわち、本発明では、露光現像前の感光性組成物により形成される層をバンク形成用レジスト層といい、バンク形成用レジスト層が露光現像により硬化し、バンクを形成した状態となっているものを樹脂層という。
【0114】
まず、感光性組成物について説明する。感光性組成物は、通常、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤および溶剤を含有する。さらに、バインダー樹脂、架橋剤、表面改質剤、撥インク性成分等を含有することが好ましい。また、着色剤、塗布性向上剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、エポキシ化合物、その他の樹脂等を適宜配合することができる。
【0115】
(1)エチレン性不飽和化合物
本発明において、エチレン性不飽和化合物とは、エチレン性不飽和結合を分子内に1個以上有する化合物を意味する。重合性、架橋性、露光部と非露光部の現像液溶解性の差異を拡大できる等の点から、エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する化合物であることが好ましい。特に、そのエチレン性不飽和結合は(メタ)アクリロイルオキシ基に由来する(メタ)アクリレート化合物が更に好ましい。
【0116】
感光性組成物中のエチレン性不飽和化合物の含有割合は、全固形分に対して通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下である。下限を下回ると、露光の際に充分な感度が得られない恐れがあり、上限を上回ると好ましいバンク形状を確保できない恐れがある。
感光性組成物中に、エチレン性不飽和化合物は、1種のみ含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。2種以上が含まれる場合、上記含有割合は2種以上の合計を表す。
【0117】
エチレン性不飽和結合を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和カルボン酸、およびそのアルキルエステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、スチレン等が挙げられる。
【0118】
エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル類、(メタ)アクリロイルオキシ基含有ホスフェート類、ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物とポリイソシアネート化合物とのウレタン(メタ)アクリレート類、および、(メタ)アクリル酸またはヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物とポリエポキシ化合物とのエポキシ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0119】
エチレン性不飽和化合物としては、不飽和カルボン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル類またはヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物とポリイソシアネート化合物とのウレタン(メタ)アクリレート類が好ましく、不飽和カルボン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル類がより好ましく、中でもペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等5官能以上の不飽和カルボン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル類が特に好ましい。
【0120】
(2)光重合開始剤
光重合開始剤は、活性光線によりエチレン性不飽和化合物のエチレン性不飽和結合を重合させる化合物であれば特に限定されるものではなく、公知の光重合開始剤を用いることができる。ここでいう活性光線は、前記活性エネルギー線とは区別して用いているが、物理的には活性エネルギー線に含まれる性質のもので、概ね紫外線を中心とした波長の電磁波である。
【0121】
感光性組成物中の光重合開始剤の含有割合としては、全固形分に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上であり、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。下限を下回ると、硬化性が低下する場合があり、上限を上回ると基板に対する密着性が低下する場合がある。
エチレン性不飽和化合物に対する光重合開始剤の配合比としては、(エチレン性不飽和化合物)/(光重合開始剤)(重量比)の値として、通常1/1〜100/1、好ましくは2/1〜50/1である。エチレン性不飽和化合物と光重合開始剤との配合比がこの範囲を逸脱すると、密着性や硬化性が低下する場合がある。
【0122】
感光性組成物中に、光重合開始剤は、1種のみ含まれていても、2種以上が含まれてい
てもよい。2種以上が含まれる場合、上記含有割合は2種以上の合計を表す。
光重合開始剤として具体的には、ハロメチル化トリアジン誘導体、ハロメチル化オキサジアゾール誘導体、ヘキサアリールビイミダゾール誘導体、ベンゾインアルキルエーテル類、アントラキノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、安息香酸エステル誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アンスロン誘導体、チタノセン誘導体、オキシムエステル系化合物などが挙げられる。
【0123】
その他、本発明で用いることができる光重合開始剤としては、ファインケミカル、1991年3月1日号、Vol.20、No.4,p16〜p26や、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特公昭45−37377号公報、特開昭58−40302号公報、特開平10−39503号公報等に記載されているものが挙げられる。
【0124】
光重合開始剤には、感度向上を目的として、水素供与性化合物や熱重合開始剤を併用してもよい。この場合、感光性組成物中における、水素供与性化合物や熱重合開始剤の含有割合は、光重合開始剤の一部として考える。光重合開始剤と水素供与性化合物と熱重合開始剤との併用割合としては、光重合開始剤に対して、水素供与性化合物または熱重合開始剤を5〜300重量%とすることが好ましい。
【0125】
水素供与性化合物としては、メルカプト基含有化合物、多官能チオール化合物、フェニルグリシン、フェニルアラニンなどのアンモニウム塩またはナトリウム塩誘導体、フェニルアラニンのエステル誘導体などが挙げられる。また、熱重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物、過酸化水素等が挙げられる。
(3)溶剤
溶剤としては、特に制限はないが、水あるいは有機溶剤が挙げられる。溶剤は1種を単独でもしくは2種以上を混合して使用することができる。
【0126】
有機溶剤としては、グリコールモノアルキルエーテル類、グリコールジアルキルエーテル類、グリコールアルキルエーテルアセテート類、グリコールジアセテート類、アルキルアセテート類、エーテル類、ケトン類、1価又は多価アルコール類、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、芳香族炭化水素類、鎖状又は環状エステル類、アルコキシカルボン酸類、ハロゲン化炭化水素類、エーテルケトン類、ニトリル類等が挙げられる。
【0127】
上記に該当する市販の溶剤としては、ミネラルスピリット、バルソル#2、アプコ#18ソルベント、アプコシンナー、ソーカルソルベントNo.1及びNo.2、ソルベッソ#150、シェルTS28 ソルベント、カルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ジグライム(いずれも商品名)などが挙げられる。
【0128】
上記溶剤は、感光性組成物中の各成分を溶解または分散させることができるもので、感光性組成物の使用方法に応じて選択されるが、沸点が60〜280℃の範囲のものを選択することが好ましい。より好ましくは70℃以上、260℃以下であり、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−1−ブチルアセテート、イソプロパノール等が好ましい。
【0129】
溶剤は、感光性組成物溶液中の全固形分の割合が、通常10重量%以上、好ましくは15重量%以上、通常90重量%以下、好ましくは50重量%以下となるように使用されることが好ましい。感光性組成物中の全固形分濃度がこの下限を下回ると、均一な塗膜が得られない恐れがあり、上限を上回ると必要な膜厚に制御できない恐れがある。
(4)バインダー樹脂
バインダー樹脂は、現像液で現像可能な樹脂であれば特に限定されないが、現像液としてアルカリ現像液が好ましいため、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
【0130】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル酸系樹脂、エチレン性不飽和基とカルボキシ基とを含有する樹脂、変性ノボラック樹脂、カルボキシ基含有ウレタン樹脂、変性エポキシ樹脂、変性ノボラック樹脂、カルド樹脂、等が好適に用いられるが、各種エチレン性不飽和基とカルボキシ基とを含有する樹脂が特に好ましい。
バインダー樹脂の含有割合は、全固形分に対して、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。下限を下回ると、バンクの形状確保が困難となる場合があり、上限を上回ると、感度や現像性の低下を招く場合がある。
【0131】
感光性組成物中に、バインダー樹脂は、1種のみ含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。2種以上が含まれる場合、上記含有割合は2種以上の合計を表す。
バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜100,000の範囲が好ましい。重量平均分子量が1,000未満の場合は均一な塗布膜を得るのが難しく、また、100,000を超える場合は現像性が低下する傾向がある。
【0132】
以下、アクリル酸系樹脂、エチレン性不飽和基とカルボキシ基とを含有する樹脂、変性ノボラック樹脂について説明する。
[A]アクリル系樹脂
アクリル酸系樹脂としては、アルカリ可溶性を確保するために側鎖または主鎖にカルボキシ基または水酸基を有する単量体由来の構成成分を含むことが好ましく、高アルカリ性溶液での現像が可能な樹脂が好ましい。
【0133】
例えば、(メタ)アクリル酸(共)重合体または、カルボキシ基或いは水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体であることが好ましい。これらのアクリル酸系樹脂は、種々の単量体と組合せて性能の異なる共重合体を得ることができ、かつ、製造方法が制御し易い利点がある。
[B]エチレン性不飽和基とカルボキシ基を含有する樹脂
エチレン性不飽和基とカルボキシ基とを含有する樹脂としては、公知のエチレン性不飽和基とカルボキシ基とを少なくとも一つずつ有する樹脂の1種または2種以上を用いることが好ましい。
【0134】
このような樹脂としては、アルカリ現像性等の面から、側鎖にエチレン性不飽和基を有するカルボキシ基含有ビニル系樹脂、酸変性型エポキシ(メタ)アクリレートが好適である。
側鎖にエチレン性不飽和基を有するカルボキシ基含有ビニル系樹脂としては、カルボキシ基含有ビニル系樹脂とエポキシ基含有不飽和化合物との反応生成物、2種以上の不飽和基を有する化合物と不飽和カルボン酸(必要に応じて、不飽和カルボン酸エステル)との共重合体、E−R−N−T樹脂等が挙げられる。尚、E−R−N−T樹脂とは、(E)成分:エポキシ基含有(メタ)アクリレートを5〜90モル%と、(R)成分:(E)成分と共重合し得る他のラジカル重合性化合物を10〜95モル%とを共重合し、得られた共重合体に含まれるエポキシ基の10〜100モル%に、(N)成分:不飽和一塩基酸を付加し、この(N)成分を付加したときに生成する水酸基の10〜100モル%に、(T)成分:多塩基酸無水物を付加して得られる樹脂である。
【0135】
酸変性型エポキシ(メタ)アクリレートとしては、エポキシ樹脂のα,β−不飽和基含有カルボン酸付加体に、多価カルボン酸および/またはその無水物が付加された、不飽和
基およびカルボキシ基含有エポキシ樹脂が挙げられる
[C]変性ノボラック樹脂
変性ノボラック樹脂は、ノボラック樹脂の1種または2種以上と不飽和基含有エポキシ化合物の1種または2種以上を反応させ、この反応物の水酸基にさらに多塩基酸および/またはその無水物の1種または2種以上を付加させることで得られる樹脂である(ただし、ノボラック樹脂の代りにレゾール樹脂を用いてもよい。)。
【0136】
(5)アミノ化合物
アミノ化合物を架橋剤として用いることができる。感光性組成物中の架橋剤の含有割合としては、全固形分に対して、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下である。また、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上である。上限を上回ると、感光性組成物の保存安定性が悪化する可能性がある。また、下限を下回ると硬化促進効果が期待できない。アミノ化合物としては、例えば、官能基としてメチロール基、それを炭素数1〜8のアルコール縮合変性したアルコキシメチル基を少なくとも2個有するアミノ化合物が挙げられる。
【0137】
(6)表面改質剤、現像改良剤
表面改質剤あるいは現像改良剤としては、例えば公知の、カチオン性、アニオン性、ノニオン性、フッ素系、シリコン系界面活性剤を用いることができる。また、現像改良剤として、有機カルボン酸或いはその無水物など公知のものを用いることもできる。また、その含有量は、感光性組成物の全固形分に対して、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
【0138】
(7)撥インク性成分
本発明において、撥インク性成分は、バンクで区画された領域内に形成される有機薄膜を形成するインクをはじく性質を有する成分であり、撥インク性成分を含有することにより、該インクのバンクに対する接触角が20°以上、より好ましくは30°以上、特に好ましくは45°以上となることである。撥インク性成分としては、バンクに撥インク性を持たせる効果があるものであればよく、特に限定されないが、フッ素含有化合物やシリコン含有化合物が挙げられるが、フッ素含有化合物が好ましい。
【0139】
フッ素含有化合物としては、パーフルオロアルキル基を含む化合物(パーフルオロアルキル基含有化合物)が好ましく、例えば、特開平7−35916号公報、特開平11−281815号公報、国際公開第2004−042474号パンフレット、特開2005−60515号公報、特開2005−315984号公報、特開2006−171086号公報等に開示されている撥液性化合物などの他、BYK−340(ビッグケミー社製)、モディパーF200、F600、F3035(以上、日油社製)フタージェントMシリーズ、Sシリーズ、Fシリーズ、Gシリーズ、Dシリーズ、オリゴマーシリーズ(以上、ネオス社製)、ユニダイン(ダイキン工業社製)、トリフロロプロピルトリクロロシラン(信越シリコーン社製)、サーフロンS−386(AGCセイミケミカル社製)等の市販品や、パーフルオロ基含有アクリルモノマーを成分として共重合した樹脂等も挙げられる。さらには安全性に懸念がある炭素数が6を超えるパーフルオロアルキル基を回避できるパーフルオロポリエーテル基などを含む化合物等も有効である。
【0140】
また、フッ素含有化合物としては、フッ素化エポキシ樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、フッ素化ポリアミド樹脂、フッ素化ポリウレタン樹脂、フッ素化シロキサン樹脂およびそれらの変性樹脂なども用いることができる。
また、架橋性基を有するフッ素含有化合物も現像処理の際に流れ出る可能性が低いので好ましい。この架橋性基を有するフッ素含有化合物としては、例えばメガファックRS−101、RS−102、RS−105、RS−401、RS−402、RS−501、R
S−502(以上、DIC社製)、オプツールDAC(ダイキン工業社製)、パーフルオロ(メタ)アクリレート、パーフルオロジ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0141】
感光性組成物中のフッ素含有化合物の含有割合は、フッ素含有化合物のフッ素含有量によっても異なり、フッ素含有量(フッ素含有化合物のフッ素濃度)が10重量%以上の場合は、感光性組成物の全固形分に対して、フッ素含有化合物の含有割合は0.001重量%以上が好ましく、0.05重量%以上がより好ましく、10重量%以下が好ましく、6重量%以下がより好ましい。フッ素含有量が10重量%より少ない場合、フッ素含有化合物の含有割合は感光性組成物の全固形分に対して0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、70重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましい。下限を下回ると、バンクの撥液性が不十分で混色してしまう場合があり、上限を上回ると現像性の確保が困難となる場合がある。
【0142】
感光性組成物中に、フッ素含有化合物は、1種のみ含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。2種以上が含まれる場合、上記含有割合は2種以上の合計を表す。
(8)着色剤
着色剤としては、顔料、染料等公知の着色剤を用いることができる。また、例えば、顔料を用いる際に、その顔料が凝集したりせずに安定して感光性組成物中に存在できるように、公知の分散剤や分散助剤が併用されてもよい。特にバンクを黒色に着色することで、鮮明な画素が得られる効果がある。黒色着色剤としては黒色染料や、カーボンブラック、チタンブラックなどの他、有機顔料を混合させて黒く着色することも低導電性を持たせる効果として有効である。
【0143】
着色剤の含有量としては感光性組成物の全固形分に対して、通常60重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
(9)重合禁止剤、酸化防止剤
感光性組成物には、安定性向上の観点等から、ハイドロキノン、メトキシフェノール等の重合禁止剤や、2,6−ジ−tert−ブチル−4−クレゾール(BHT)等のヒンダードフェノール系の酸化防止剤を含有する事が好ましい。その含有量としては、感光性組成物の全固形分に対して、通常5ppm以上1000ppm以下、好ましくは10ppm以上600ppm以下の範囲である。下限を下回ると、安定性が悪化する傾向となる。上限を上回ると、例えば光および/または熱による硬化の際に、硬化が不十分となる可能性がある。
【0144】
(10)シランカップリング剤
感光性組成物には、基板との密着性を改善するため、シランカップリング剤を添加することも好ましい。シランカップリング剤の種類としては、エポキシ系、メタクリル系、アミノ系、イミダゾール系等種々の物が使用できる。その含有割合は、感光性組成物の全固形分に対して、通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下である。
【0145】
(11)エポキシ化合物
感光性組成物には、硬化性や基板との密着性を改善するため、エポキシ化合物を添加することも好ましい。
エポキシ化合物としては、所謂エポキシ樹脂の繰返し単位を構成する、ポリヒドロキシ

化合物とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエーテル化合物、ポリカルボン酸化合物とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル化合物、および、ポリアミン化合物とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシエポキシ化合物の含有量としては、感光性組成物の全固形分に対して、通常40重量%以
下、好ましくは30重量%以下である。上限を上回ると、感光性組成物の保存安定性が悪化する可能性がある。
【0146】
(感光性組成物の塗布)
上述のような感光性組成物を、下引き層上に塗布して、バンク形成用レジスト層を形成する際の塗布方法としては、上記湿式成膜法が挙げられる。中でも、ダイコート法が好ましい。
感光性組成物の塗布量は、乾燥膜厚として、下引き層も含めたバンクの高さが通常0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは1μm以上、通常10μm以下、好ましくは9μm以下、より好ましくは7μm以下のような膜厚となる量である。この際、乾燥膜厚あるいは最終的に形成されたバンクの高さが、基板全域に渡って均一であることが重要である。このばらつきが大きい場合には、有機薄膜をパターニングした基板にムラ欠陥を生ずることとなる。
【0147】
(乾燥)
下引き層上に感光性組成物を塗布した後の乾燥は、ホットプレート、IRオーブン、またはコンベクションオーブンを使用することが好ましい。
乾燥条件は、感光性組成物の溶剤成分の種類、使用する乾燥機の性能などに応じて適宜選択することができ、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、通常130℃以下、好ましくは110℃以下の温度で乾燥する。また、乾燥時間としては、15秒以上が好ましく、30秒以上が好ましく、5分以下が好ましく、3分以下が好ましい。乾燥温度が低過ぎたり乾燥時間が短い場合には十分に乾燥を行うことができず感度が不安定となり、乾燥温度が高過ぎたり、乾燥時間が長過ぎると、生産性低下や、基板、その他の層の熱劣化の問題があり、好ましくない。
【0148】
なお、乾燥は、温度を高めず、減圧チャンバー内で乾燥を行う減圧乾燥法であってもよく、また加熱乾燥との併用でもよい。
{バンク形成工程}
上述のように下引き層の上に、撥インク性成分を含有する感光性組成物を全面塗布、乾燥することでバンク形成用レジスト層を形成した後、露光マスクを用いてバンクパターンを露光し、さらに非画像部を下引き層と共に現像処理で除去することにより、バンクを形成する。
【0149】
(露光)
露光は、感光性組成物を塗布、乾燥して形成されたバンク形成用レジスト層上に、ネガの露光マスク(マスクパターン)を重ね、この露光マスクを介し、紫外線または可視光線等の光活性線の光源を照射して行う。このように露光マスクを用いて露光を行う場合には、露光マスクをバンク形成用レジスト層に近接させる方法や、露光マスクをバンク形成用レジスト層から離れた位置に配置し、該露光マスクを介した露光光を投影する方法によってもよい。また、露光マスクを用いないレーザー光による走査露光方式によってもよい。
【0150】
この際、必要に応じ、酸素によるバンク形成用レジスト層の感度の低下を防ぐため、脱酸素雰囲気下で行ったり、バンク形成用レジスト層上にポリビニルアルコール層などの酸素遮断層を形成した後に露光を行ってもよい。
上記の露光に使用される光源は、特に限定されるものではない。光源としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、蛍光ランプなどのランプ光源や、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミニウムレーザー、青紫色半導体レーザー、近赤外半導体レーザーなどのレーザー光源などが挙げられる。特定の波長の光を照射して使用する場合には、光学フ
ィルタを利用することもできる。
【0151】
光学フィルタとしては、例えば薄膜で露光波長における光透過率を制御可能なタイプでもよく、その場合の材質としては、例えばCr化合物(Crの酸化物、窒化物、酸窒化物、フッ化物など)、MoSi、Si、W、Al等が挙げられる。
露光量としては、通常、1mJ/cm以上、好ましくは5mJ/cm以上、より好ましくは10mJ/cm以上であり、通常300mJ/cm以下、好ましくは200mJ/cm以下、より好ましくは150mJ/cm以下である。
【0152】
また、近接露光方式の場合には、露光対象とマスクパターンとの距離としては、通常10μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは75μm以上であり、通常500μm以下、好ましくは400μm以下、より好ましくは300μm以下である。
(現像)
上記の露光を行った後、現像することで、画像パターンを形成することができる。現像に用いる現像液としては、限定されるものではないが、アルカリ性化合物の水溶液や有機溶剤を用いることが好ましい。
【0153】
現像液には、さらに界面活性剤、緩衝剤、錯化剤、染料または顔料を含ませることができる。
アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、水酸化アンモニウムなどの無機アルカリ性化合物や、モノ−・ジ−またはトリエタノールアミン、モノ−・ジ−またはトリメチルアミン、モノ−・ジ−またはトリエチルアミン、モノ−またはジイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノ−・ジ−またはトリイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリンなどの有機アルカリ性化合物が挙げられる。これらのアルカリ性化合物は、2種以上の混合物であってもよい。
【0154】
なお、本発明の有機薄膜パターニング用基板を有機電界発光素子に用いる場合は、素子性能への悪影響が少ない点で現像液として、有機アルカリ性化合物の水溶液を用いることが好ましい。
この場合、この有機アルカリ水溶液の有機アルカリ性化合物濃度は過度に高濃度であるとバンクにダメージを与える可能性があり、過度に低濃度であると充分な現像性が確保できない可能性がある。
【0155】
有機溶剤としては、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよく、また水溶液として用いてもよい。
例えば、TMAH等の有機アルカリ0.05〜5重量%と、エチルアルコール等のアルコール類0.1〜20重量%を含む水溶液として用いてもよい。
【0156】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、モノグリセリドアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤;アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、アルキルスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類などのアニオン性界面活性剤;アルキルベタイン類、アミノ酸類などの両性界面活性剤:が挙げられる。
【0157】
現像処理の方法については特に制限は無いが、通常10℃以上、好ましくは15℃以上、通常50℃以下、好ましくは45℃以下の現像温度で、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法により行われる。
現像の際、非画像部の下引き層はバンク形成用レジスト層とともに除去される。従って、非画像部にバンク形成用レジスト層及び下引き層は残留せず、非画像部には、下引き層の下層の基板または他の層が表出する。ここで、非画像部とは、露光、現像により除去される部分であって、バンクとして残る以外の部分をいう。また、露光する前の感光性組成物を成膜して得られる層をバンク形成用レジスト層とよび、露光後はこれを樹脂層とよぶ。
【0158】
下引き層は樹脂層と基板との界面に存在し、下引き層と樹脂層は完全に一体化したバンクを形成するが、感光性組成物の塗布時に下引き層は膜を維持しており、通常は、バンク形成後も二層になっている様子が観察される。下引き層は、親水性化合物を含有することが好ましい。また、樹脂層は撥インク性成分を含有することが好ましく、この場合、撥インク性成分は樹脂層の内部にあってもよいが、撥インク性を示すためには、表面に存在していることが好ましい。
【0159】
(追露光および熱硬化処理)
現像の後、必要により上記の露光方法と同様な方法により追露光を行ってもよく、また熱硬化処理を行ってもよい。
追露光の条件としては、上記露光条件と同様である。
熱硬化処理条件の温度は、通常100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上、通常280℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下であり、時間は、通常5分以上、好ましくは20分以上、通常60分以下である。特に、撥液性の発現には、熱硬化処理を200〜240℃で20〜60分程度実施することが好ましい。
【0160】
<有機電界発光素子>
本発明は、上記有機薄膜パターニング用基板を用いた有機電界発光素子であって、該バンクによって区画された領域に、1層または2層以上の有機薄膜を有することを特徴とする。
バンク区画領域内に形成される有機薄膜は、1層であっても、2層以上であってもよいが、少なくとも1層は発光層であることが好ましい。また、発光層は、最下層、すなわち、バンクが形成された電荷輸送層に接する層であることが好ましい。
【0161】
発光層以外の層としては、有機電界発光素子の電極層の間(すなわち、陽極と陰極の間)に形成される層であればよい。
また、発光層は、通常、バンク区画領域内にRGBなどの色ごとに区画されて形成されるが、その他の有機薄膜は、バンクとバンク区画領域とに連続して、基板に対してほぼ全面に形成されるものであってもよい。
【0162】
(有機薄膜の形成)
本発明の有機薄膜パターニング用基板は、基板上のバンクによって区画された領域内(以下、バンク区画領域内という場合がある。)に有機薄膜を形成するために用いられる。
有機薄膜パターニング用基板の基板上のバンクで区画された領域内に有機薄膜を形成させるには、通常、有機薄膜の成分を溶剤に溶解または分散させたインクをバンク区画領域内に供給して乾燥させる(図1G)。
【0163】
このインクをバンク区画領域内に供給させる方法は特に限定されないが、インクジェッ
ト法(液滴吐出法)やノズルプリント法(液流吐出法)といったインク吐出型の塗布法が好ましく(特開昭59−75205号公報、特開昭61−245106号公報、特開昭63−235901号公報)、特にインクジェット法が好ましい。
インク吐出型の塗布法に用いられるインクの溶剤としては、高沸点溶剤成分を比較的多く添加することにより、ノズルの乾燥を防止することが一般的に知られており、溶剤の選定にはこれらを考慮した上で最適な溶剤を選定することが好ましい。
【0164】
また、特に、インクジェット法の場合、20plの液滴サイズで被塗布面に着滴させたとき、着滴後1分経過後の液滴径が100〜400μmのような溶剤であることが好ましく、さらに好ましくはこの液滴径は150〜300μmである。これにより、膜厚ムラやピンホールの発生を防止し、かつ端部の直線性を確保することができる。
バンク区画領域内にインクを供給した後は、乾燥工程によって有機薄膜を形成させるが、この乾燥条件は公知の方法を自由に選定することができ、例えばホットプレート、IRオーブン、コンベクションオーブンなどが挙げられる。また、温度を高めず、減圧チャンバー内で乾燥を行う、減圧乾燥法を組み合わせてもよい。またその環境は、形成させる有機薄膜の特性に応じて、大気中、Nガス中、減圧中などを選定できる。
【0165】
(発光層)
発光層は、その構成材料として、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、正孔輸送の性質を有する化合物(正孔輸送性化合物)、あるいは、電子輸送の性質を有する化合物(電子輸送性化合物)を含有する。発光材料をドーパント材料として使用し、正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物などをホスト材料として使用してもよい。発光材料については特に限定はなく、所望の発光波長で発光し、発光効率が良好である物質を用いればよい。更に、発光層は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。なお、湿式成膜法で発光層を形成する場合は、何れも低分子量の材料を使用することが好ましい。
【0166】
(発光材料)
発光材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。また、青色は蛍光発光材料を用い、緑色や赤色は燐光発光材料を用いるなど、組み合わせて用いてもよい。
【0167】
なお、溶剤への溶解性を向上させる目的で、発光材料の分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることが好ましい。
以下、発光材料のうち蛍光発光材料の例を挙げるが、蛍光色素は以下の例示物に限定されるものではない。
青色発光を与える蛍光発光材料(青色蛍光色素)としては、例えば、ナフタレン、ペリレン、ピレン、クリセン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼンおよびそれらの誘導体等が挙げられる。
【0168】
緑色発光を与える蛍光発光材料(緑色蛍光色素)としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、Al(CNO)などのアルミニウム錯体等が挙げられる。

黄色発光を与える蛍光発光材料(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
【0169】
赤色発光を与える蛍光発光材料(赤色蛍光色素)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミ
ン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
燐光発光材料としては、例えば、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
【0170】
周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。
錯体の配位子としては、(ヘテロ)アリールピリジン配位子、(ヘテロ)アリールピラゾール配位子などの(ヘテロ)アリール基とピリジン、ピラゾール、フェナントロリンなどが連結した配位子が好ましく、特にフェニルピリジン配位子、フェニルピラゾール配位子が好ましい。ここで、(ヘテロ)アリールとは、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
【0171】
燐光発光材料として、具体的には、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
【0172】
発光材料として用いる化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。発光材料の分子量が小さ過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、或いはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化を来したりする場合がある。一方、発光材料の分子量が大き過ぎると、有機化合物の精製が困難となってしまったり、溶剤に溶解させる際に時間を要したりする傾向がある。
【0173】
なお、上述した発光材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
発光層における発光材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05重量%以上、通常35重量%以下である。発光材料が少なすぎると発光ムラを生じる可能性があり、多すぎると発光効率が低下する可能性がある。なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
【0174】
(正孔輸送性化合物)
発光層には、その構成材料として、正孔輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、正孔輸送性化合物のうち、低分子量の正孔輸送性化合物の例としては、前述の正孔注入層3における正孔輸送性化合物として例示した各種の化合物のほか、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(Journal of Luminescence, 1997年,Vol.72−74,pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communications,1996年,pp.2175)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synthetic Metals,1997年,Vol.91,pp.209)等が挙げられる。
【0175】
なお、発光層において、正孔輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
発光層における正孔輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、通常65重量%以下である。正孔輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の正孔輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
【0176】
(電子輸送性化合物)
発光層には、その構成材料として、電子輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、電子輸送性化合物のうち、低分子量の電子輸送性化合物の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)等が挙げられる。なお、発光層において、電子輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0177】
発光層における電子輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、通常65重量%以下である。電子輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の電子輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
【0178】
発光層は上述のとおり、バンク区画領域内に形成され、特にインクジェット法により形成されることが好ましい。この場合、上記材料を適切な溶剤に溶解させて発光層形成用組成物を調製し、それを用いて成膜することにより形成する。
発光層を本発明に係る湿式成膜法で形成するための発光層形成用組成物に含有させる発光層用溶剤としては、発光層の形成が可能である限り任意のものを用いることができる。発光層用溶剤の好適な例は、上記アミン系架橋性組成物で説明した溶剤と同様である。
【0179】
発光層を形成するための発光層形成用組成物に対する発光層用溶剤の比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.01重量%以上、通常70重量%以下、である。なお、発光層用溶剤として2種以上の溶剤を混合して用いる場合には、これらの溶剤の合計がこの範囲を満たすようにする。
また、発光層形成用組成物中の発光材料、正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物等の固形分濃度としては、通常0.01重量%以上、通常70重量%以下である。この濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、小さすぎると膜に欠陥が生じる可能性がある。
【0180】
発光層形成用組成物を湿式成膜後、得られた塗膜を乾燥し、溶剤を除去することにより

、発光層が形成される。具体的には、上記正孔注入層の形成において記載した方法と同様である。湿式成膜法の方式は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されず、前述のいかなる方式も用いることができる。
【0181】
発光層の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。発光層の膜厚が、薄すぎると膜に欠陥が生じる可能性があり、厚すぎると駆動電圧が上昇する可能性がある。
(その他の層)
以下、上記説明した、正孔注入層、正孔輸送層および発光層以外の、有機電界発光素子の電極層の間(すなわち、陽極と陰極の間)に形成される層および陰極について説明する。電極層の間に形成される層は、有機薄膜パターニング用基板における電荷輸送層として用いられてもよいし、バンク区画領域内に形成される有機薄膜として用いられてもよい。
【0182】
もちろん、正孔注入層、正孔輸送層および発光層もまた、有機薄膜パターニング用基板における電荷輸送層として用いられてもよいし、バンク区画領域内に形成される有機薄膜として用いられてもよい。
{正孔阻止層}
発光層と後述の電子注入層との間に、正孔阻止層を設けてもよい。正孔阻止層は、発光層の上に、発光層の陰極側の界面に接するように積層される層である。
【0183】
この正孔阻止層は、陽極から移動してくる正孔を陰極に到達するのを阻止する役割と、陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送する役割とを有する。
正孔阻止層を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号公報に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層の材料として好ましい。
【0184】
なお、正孔阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
正孔阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
【0185】
{電子輸送層}
発光層と後述の電子注入層の間に、電子輸送層を設けてもよい。
電子輸送層は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送することができる化合物より形成される。
【0186】
電子輸送層に用いられる電子輸送性化合物としては、通常、陰極9または電子注入層8からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送
することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
【0187】
なお、電子輸送層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
電子輸送層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
電子輸送層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
【0188】
{電子注入層}
電子注入層は、陰極から注入された電子を効率良く発光層へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられ、その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
【0189】
更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は、通常、5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常200nm以下、中でも100nm以下が好ましい。
【0190】
なお、電子注入層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
電子注入層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
【0191】
{陰極}
陰極は、発光層側の層に電子を注入する役割を果たすものである。
陰極の材料としては、前記の陽極に使用される材料を用いることが可能であるが、効率良く電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属またはそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
【0192】
なお、陰極9の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
陰極の膜厚は、通常、陽極と同様である。
さらに、低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0193】
本発明に係る有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極と陰極との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい
{電子阻止層}
有していてもよい層としては、例えば、電子阻止層が挙げられる。
【0194】
電子阻止層は、正孔注入層または正孔輸送層と発光層との間に設けられ、発光層から移動してくる電子が正孔注入層に到達するのを阻止することで、発光層内で正孔と電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層内に閉じこめる役割と、正孔注入層3から注入された正孔を効率よく発光層の方向に輸送する役割とがある。特に、発光材料として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は電子阻止層を設けることが効果的である。
【0195】
電子阻止層に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いこと等が挙げられる。更に、本発明においては、発光層を本発明に係る有機層として湿式成膜法で作製する場合には、電子阻止層にも湿式成膜の適合性が求められる。このような電子阻止層に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号パンフレット)等が挙げられる。
【0196】
なお、電子阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
電子阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
さらに陰極と発光層または電子輸送層との界面に、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化リチウム(Li2O)、炭酸セシウム(II)(CsCO3)等で形成された極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率
を向上させる有効な方法である(Applied Physics Letters, 1997年, Vol.70, pp.152;特開平10−74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices,1997年,Vol.44, pp.1245;SID 04 Digest,pp.154等参照)。
【0197】
また、以上説明した層構成において、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。
更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明に係る有機電界発光素子を構成することも可能である。
また、基板以外の構成要素(発光ユニット)を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その場合には、各段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合は、それら2層)の代わりに、例えば五酸化バナジウム(V25)等からなる電荷発生層(Carrier Generation Layer:CGL)を設けると、段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
【0198】
更には、本発明に係る有機電界発光素子は、単一の有機電界発光素子として構成してもよく、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
【0199】
<有機EL表示装置>
本発明の有機EL表示装置は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機EL表示装置の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機EL表示装置を形成することができる。
【0200】
<有機EL照明>
本発明の有機EL照明は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
【実施例】
【0201】
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
(合成例1)化合物Q2の合成
【0202】
【化8】

【0203】
空気気流中、水(4500ml)にアルファ-フェランドレン(42.12g)とベンゾキノン(33.8g)を添加し、2日間、室温、超音波にて攪拌し、析出してきた結晶を濾取、水洗、乾燥させ、化合物Q1を得た。
続いて、攪拌しながらエタノール(200ml)に化合物Q1(39g)を溶解、ついで
35%NaOH溶液0.1gを添加し、30分間攪拌を保持した後、水(400ml)を加え、析出してくる結晶を濾取、水洗、乾燥させ、化合物Q2(39g)を得た。
【0204】
(NMR測定の結果)
化合物Q2:1H NMR(CDCl,400MHz) δ0.84(d,3H)、0.93(d,3H)、1.04−1.118(m,1H)、1.19−1.23(m,3H)、1.80(s、3H),3.94−3.97(m、1H),4.22(d、1H),5.84(d、1H),6.45(s、2H)、
(合成例2)化合物Q6の合成
【0205】
【化9】

【0206】
窒素気流中、化合物Q2(30.6g)と2,3−ジクロロー5,6−ジシアノーp−ベンゾキノン(DDQ)(33g)とをトルエン溶液(700ml)に溶解させ、2時間攪拌反応させた後、析出してきた複精製物を濾取し、濾液を濃縮ヘキサンおよび酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムによって精製し、乾燥化合物Q4(24.5g)を得た。1,4−ジブロモベンゼン(29.5g)をテトラヒドロフラン(THF)100ml溶液に溶解させ、−78℃に冷却、攪拌しながらn−ブチルリチウム1.6M/L 70mlを30分かけ滴下し、3時間攪拌した。この溶液に、化合物Q1(10.24g)を溶解させたTHF溶液100mlを1時間かけて滴下した後、−78℃にて2時間攪拌保持した。この反応溶液を室温に戻し一晩放置させた。続いて、この溶液に水200mlを加え攪拌、有機層を分取、さらにMgSO乾燥した後、ヘキサンおよび酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムによって精製し、乾燥化合物Q5(24.5g)を得た。
【0207】
次に空気気流中、化合物Q5(24.5g)をTHF(500ml)に溶解した後、55%沃化水素を2g添加、60分間攪拌を保持し、続いて、この溶液に水(200ml)を添加し、粗品化合物Q6を析出させた。この粗品化合物Q6をヘキサンおよび酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムによって精製し、さらに日本分析工業社製リサイクル分取HPLCLC−9204型(分取カラムJAIGEL−1H−40)により精製して化合物Q6(0.8g)を得た。
【0208】
(NMR測定の結果)
化合物Q6:1H NMR(CDCl,400MHz) δ0.834(d,3H)、1.1019(d,3H)、1.04−1.118(m,1H)、1.19−1.23(m,3H)、1.87(s、3H),3.94−3.97(m、1H),4.22(d、1H),5.83(d、1H),6.59(s、2H)
(Mass測定の結果)
化合物Q6のMASS分析手法は、下記の方法にて行なった。
【0209】
DEI法、DCI法(日本電子社製質量分析計 JMS−700/MStation)
イオン化法 DEI(positive ion mode)、
DCI(positive ion mode)−イソブタンガス
加速電圧:70eV
エミッター電流変化率:0Aから0.9A
走査質量数範囲:m/z100−1300 2.0sec/scan
結果はm/z=M+538であった。
【0210】
(合成例3)化合物Q10の合成
【0211】
【化10】

【0212】
窒素気流中、攪拌しながら化合物Q2(5.08g)と4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アセトアニリド(5.2g)と炭酸ソーダ(4.3g)とをトルエン(260ml)、エタノール(130ml)、及び水(240ml)の混合溶媒に溶解し、40分間窒素バブリングを施した後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを0.25g加え100℃にて6時間反応させた。次いで室温に戻し1晩放置し結晶を析出させた。結晶を濾取、エタノールにて洗浄して化合物Q8(4.3g)を得た。
【0213】
化合物Q8(4.3g)と水酸化カリウム(15g)とを75%エタノール水溶液(250ml)に溶解させ、100℃にて10時間加熱したのち室温に戻し、水を100ml添加析出してくる結晶を濾取し、化合物Q9(2g)を得た。
10分間窒素バブリングしたトルエン(10g)にジパラジウムトリス(ジベンジリデンアセトン)クロロフォルム(0.015g)と1,1’−フェロセンビス(ジフェニルフォスフィン)(0.056g)とを溶解したのち、70℃にて10分間加熱した。その後、このパラジウム触媒溶液を、化合物Q9(2g)、ブロモベンゼン(1.6g)とターシャリーブトキシナトリウム(3,4g)とをトルエン(200ml)に溶解、40分間窒素バブリングを施した溶液に添加、窒素気流中、100℃にて4時間攪拌した。この溶液を室温に戻し、水を100ml添加して析出してくる結晶を濾取、エタノールで洗浄し化合物Q10(1.3g)を得た。
【0214】
(Mass測定の結果)
化合物Q10のMASS分析手法は下記の方法により行なった。
DEI法、DCI法(日本電子社製 質量分析計 JMS−700/MStation)
イオン化法 DEI(positive ion mode)、
DCI(positive ion mode)−イソブタンガス
加速電圧:70eV
エミッター電流変化率: 0Aから0.9A
走査質量数範囲: m/z 100−800 2.0sec/scan
結果は、m/z=M+546であった。
【0215】
(合成例4)化合物Q11の合成
【0216】
【化11】

【0217】
10分間窒素バブリングしたトルエン(10g)にジパラジウムトリス(ジベンジリデンアセトン)クロロフォルム(0.015g)とトリス−ターシャリーブチルフォスフィン(0.015g)を溶解したのち、70℃にて10分間加熱した。その後、このパラジウム触媒溶液を、化合物Q9(2g)、ブロモベンゼン(3.2g)とターシャリーブトキシナトリウム(3.4g)とをトルエン(200ml)に溶解、40分間窒素バブリングを施した溶液に添加、窒素気流中、100℃にて4時間攪拌した。この溶液を室温に戻し、水を100ml添加し、析出してくる結晶を濾取、エタノールで洗浄し化合物Q11(1.5g)を得た。
【0218】
(NMR測定の結果)
化合物Q11:1H NMR(CDCl,400MHz) δ0.83(d,3H)、0.93(d,3H)、1.04−1.118(m,1H)、1.19−1.23(m,3H)、1.87(s、3H),3.94−4.05(m、1H),4.26(d、1H),5.90(d、1H),6.90−7.3(m、30H)
(合成例5)重合体1の合成
【0219】
【化12】

【0220】
上記で合成された化合物Q10(0.71g、1.30mmol)、4,4’−ジブロモビフェニル(0.39g、1.26mmol)、tert−ブトキシナトリウム(0.47g、4.86mmol)、及びトルエン(7ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液A)。
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.013g、0.0013mmol)のトルエン2ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.0210g、0.0104mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液B)。
【0221】
窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、2時間加熱還流反応した。反応液を放冷して、反応液をメタノール200ml中に滴下し、粗ポリマー1を晶出させた。
この粗ポリマー1をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られた粗ポリマー1をトルエン45mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.041g、0.3mmol)、及びtert−ブトキシナトリウム(1.80g、2mmol)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液C)。
【0222】
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.013g、1.2mmol)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.003g、1.6mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液D)。
窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(0.22g、1.3mmol)のトルエン(34ml)溶液を添加し、さらに、8時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、メタノールに滴下し、粗ポリマー1を得た。
【0223】
得られた粗ポリマー1をトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、本発明に係る重合体1を得た(0.29g)。
重量平均分子量(Mw)=106696
数平均分子量(Mn)=47937
分散度(Mw/Mn)=2.23
重合体1の熱解離を示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製:DSC6220)により観測した。熱解離は、温度が230℃で効率よく起こることが確認された。
【0224】
(合成例6)
【0225】
【化13】

【0226】
トルエン(60 ml)、EtOH(30 ml)の混合溶媒にQ12(6.91 g)、ボロン酸エステル(3.54 g)を加え、40分間窒素バブリングした。反応溶液に炭酸ナトリウム水溶液(炭酸水素ナトリウム 6.6 gを水30mlに溶解した後、30分窒素バブリング)を加えた。続いて、Pd(PPh3) 0.78gを加え、反応溶液を2時間還流した。有機層を分取したのち、水で2回洗浄した。有機層を減圧乾固した後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、Q13(4.6 g、収率:69%)を得た。
【0227】
(合成例7)
【0228】
【化14】

【0229】
トルエン(60 ml)、EtOH(30 ml)の混合溶媒にQ13(6.9 g)、フェニルボロン酸エステル(1.25 g)を加え、40分間窒素バブリングした。反応溶液に炭酸ナトリウム水溶液(炭酸水素ナトリウム 6.6 gを水30 mlに溶解した後、30分窒
素バブリング)を加えた。続いて、Pd(PPh3) 0.54gを加え、反応溶液を8
時間還流した。有機層を分取したのち、水で2回洗浄した。有機層を減圧乾固した後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、Q14(2.6 g、収率:66%)を得た。
【0230】
(合成例8)
【0231】
【化15】

【0232】
200mLのナスフラスコにQ14(2.6g)、エタノール(80 ml)を加え攪拌した。溶液に水酸化カリウム水溶液(KOH 13.8g /水 15 ml)を加えた後、溶液を85
℃オイルバスにつけ7時間反応した。溶液を室温まで放冷したのち、氷で冷却し、生成物を結晶化した。結晶をろ過した後、水で懸洗、乾燥し、Q15(1.66 g、収率:71 %)を得た。
【0233】
(合成例9)
【0234】
【化16】

【0235】
Q15(2.23 g)、4,4’−ジブロモビフェニル(0.92g)、tert−
ブトキシナトリウム(1.81g)、及びトルエン(30ml)を仕込み、系内を十分に
窒素置換して、65℃まで加温した(溶液A)。
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(60mg)のトルエン溶液(5ml)に、トリ−t−ブチルホスフィン95mgを加え、65℃まで加温した(溶液B)。
【0236】
窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、加熱還流反応した。2時間後、ジブロモベンゼン(0.68g)を加え、120分還流した。反応溶液に再度溶液Bを加え、30分後、ジブロモベンゼン(15mg)を追加し、このまま2時間反応した。
反応液を放冷して、反応液をエタノール中に滴下し、粗ポリマー2を晶出させた。
得られた粗ポリマー2をトルエン100mLに溶解させ、ブロモベンゼン0.18g、tert−ブトキシナトリウム1.81gを仕込み、系内を十分に窒素置換して、65℃まで加温した(溶液C)。
【0237】
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体30mgのトルエン溶液6mLに、トリ−t−ブチルホスフィン45mgを加え、65℃まで加温した(溶液D)。
窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン0.99gを添加し、さらに、4時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノールに滴下し、エンドキャップした粗ポリマー2を得た。
【0238】
このエンドキャップした粗ポリマー2をトルエン250mLに溶解し、希塩酸200mLにて洗浄し、アンモニア含有エタノール400mLにて再沈殿した。得られたポリマーをアセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、重合体2(1.04g)を得た。なお、重合体2の重量平均分子量及び数平均分子量を測定したところ、以下の通りであった。
【0239】
重量平均分子量(Mw)=31000
数平均分子量(Mn)=18400
分散度(Mw/Mn)=1.68
<有機電界発光素子の作成>
(実施例1)
<陽極の形成>
ガラス基板上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を120nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ製膜品)を通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極を形成した。陽極を形成した基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった。陽極を形成した基板のITOの表面粗さをVertScan(菱化システム社製)にて測定したところ、Ra:0.62 nm Rmax:3.69 nmであった。
【0240】
<正孔注入層の形成>
ドープ型化合物含有組成物の調製を行った。下記式P3の繰り返し構造を有する芳香族三級アミン高分子化合物(重量平均分子質量29600;ガラス転移温度177℃)2重量%と、下記式A1で表される電子受容性化合物0.8重量%を、溶剤として安息香酸エチルに溶解し、ドープ型化合物含有組成物を調製した。
【0241】
【化17】

【0242】
上記洗浄された陽極を形成した基板上に、上記ドープ型化合物含有組成物を用いて、スピンコート法にて乾燥膜厚30nmになるように、気温23℃、相対湿度50%の大気中で成膜を行なった。成膜後、ホットプレート上で80℃、1分間加熱乾燥した後、オーブン大気中で230℃、1時間ベークし、正孔注入層を形成した。
<正孔輸送層の形成>
次に、解離基含有組成物の調製を行った。下記式P1の構造を有するポリマーからなる解離基を有する化合物(合成例5で合成された重合体1:重量平均分子量=約11万)が0.4重量%濃度となるように溶剤としてトルエンに溶解し、解離基含有組成物を調製した。トルエンは市販の脱水トルエンを用い、酸素濃度1.0ppm、水分濃度1.0ppmの窒素グローブボックス中で該解離基含有組成物を調製した。
【0243】
【化18】

【0244】
前記正孔注入層を形成した基板を窒素グローブボックスに入れ、正孔注入層上に、上記解離基含有組成物を用いてスピンコート法にて乾燥膜厚20nmになるように、気温23℃、相対湿度50%の大気中で成膜を行なった。成膜後、ホットプレート上で230℃にて、1時間ベークすることで熱解離可溶基を熱によって解離させ、正孔輸送層を形成した。
【0245】
スピンコートおよびベークは、すべて酸素濃度1.0ppm、水分濃度1.0ppmの窒素グローブボックス中で大気暴露せずに行った。正孔輸送層の表面粗さを上記ITO表
面と同様に測定したところ、その表面粗さは、Ra:0.49 nm Rmax:3.65 nmであった。
<バンクの形成>
次に、正孔輸送層までを形成した基板を大気中に取り出し、紫外光をカットしたイエロールームにてバンクの形成を行った。
【0246】
下引き層を形成するため、親水性化合物含有組成物として、以下に示す親水性化合物0.67重量部、エチレン性不飽和化合物0.32重量部、光重合開始剤0.01重量部、表面改質剤0.0005重量部および溶剤として3−メトキシ−1−ブタノールを含有する組成物を調製した。調製はそれぞれの成分を配合し、よく混ぜ合わせることにより行った。
【0247】
(親水性化合物含有組成物)
親水性化合物:ポリビニルピロリドン K−85(日本触媒社製)
エチレン性不飽和化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(日本化薬社製)
光重合開始剤:イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
【0248】
【化19】

【0249】
表面改質剤:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン BYK−330(ビックケミー社製)
また、バンク形成用レジスト層(樹脂層)を形成するため、感光性組成物として以下に示す、バインダー樹脂を48重量部、エチレン性不飽和化合物(1)を24重量部、エチレン性不飽和化合物(2)を24重量部、エチレン性不飽和化合物(3)を5重量部、光重合開始剤を1.5重量部、表面改質剤を0.1重量部、撥インク性成分を1重量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する組成物を調製した。調製はそれぞれの成分を配合し、よく混ぜ合わせることにより行った。
【0250】
(感光性組成物)
バインダー樹脂:以下の合成例で合成された樹脂
エチレン性不飽和化合物(1):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(日本化薬社製)
エチレン性不飽和化合物(2):デコナールアクリレートDA−314(ナガセケムテックス社製)/以下の2化合物の混合物
【0251】
【化20】

【0252】
エチレン性不飽和化合物(3):以下式で表される化合物(長瀬産業社製)
【0253】
【化21】

【0254】
光重合開始剤:イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製社製)
表面改質剤:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン BYK−330(ビックケミー社製)
撥インク性成分:メガファック RS−102(DIC社製)
(合成例/バインダー樹脂の製造)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145重量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。これに、スチレン20重量部、グリシジルメタクリレート57重量部およびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製「FA−513M」)82重量部を滴下し、更に、140℃で2時間攪拌し続けた。次に、反応容器内を空気置換し、アクリル酸27重量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7重量部およびハイドロキノン0.12重量部を投入し、120℃で6時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)52重量部、トリエチルアミン0.7重量部を加え、120℃で3.5時間反応させ、下記式で表されるアルカリ可溶性樹脂であるバインダー樹脂−1を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は約8000
であった。
【0255】
【化22】

【0256】
まず、親水性化合物含有組成物を用いてスピンコート法により、乾燥膜厚0.1μmとなるように下引き層を正孔輸送層上のほぼ全面に成膜した。スピンコートは気温23℃、相対湿度50%の大気中で行なった。成膜後、ホットプレート上で80℃、60秒間加熱乾燥した。
さらに該下引き層上に、感光性組成物をスピンコート法により、乾燥膜厚3μmとなるようにバンク形成用レジスト層を該下引き層上のほぼ全面に成膜した。スピンコートは気温23℃、相対湿度50%の大気中で行なった。成膜後、常温で1分間、真空乾燥し、さらにホットプレート上で80℃、60秒間加熱乾燥した。形成された下引き層とバンク形成用レジスト層の厚みは、全厚で3.1μmであった。
【0257】
感光性組成物がネガ(光が照射された領域が硬化して残る)タイプであったことから、紫外光を遮光するクロムメッキが、感光性組成物を硬化させたい領域において紫外光を透過するように除去された石英基板のマスクを用いた。該マスクのマスクパターンは、紫外光透過部幅30μmで、クロムメッキ部(1辺70μmの正方形)がマスク面内で縦横に各20ヶ、碁盤の目のように並んだアレイパターンであった。このアレイパターンの紫外光透過領域が、2mm幅にパターン形成された陽極の辺縁に対して全てはみ出すことなく位置合わせを行った。位置合わせ後、3kW高圧水銀灯を用いて100mJ/cm2の露
光条件にて露光を施した。照射後、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)の2.38%水溶液およびエタノール10重量%を含む水溶液を現像液として、23℃において、水圧0.1MPaのシャワー現像を2分間施した後、純水スプレーで30秒間リンスし、圧空で水を切った。ついで、基板を窒素グローブボックス中に移し、窒素グローブボックス中で230℃、30分間ポストベークし、正孔輸送層上に下引き層と樹脂層の2層がこの順で積層されたバンクを形成した。形成したバンクは全厚3.1μm、開口部が1辺70μmの長さである略正方形となった。このようにして、バンクが形成された後
で、非露光部の下引き層がバンク形成用レジスト層と共に現像工程で除去され、正孔輸送層が露出した表面の表面粗さを、ITO表面と同様に測定したところ、その表面粗さは、Ra:0.48 nm Rmax:3.35 nmであった。
【0258】
また、その後、発光層は、インクジェット法により、溶剤としてCHB(シクロヘキシルベンゼン)を用いた組成物により形成されるため、バンク表面のCHBに対する接触角を測定した。その結果、接触角は60°であった。一方、バンクで区画された領域のCHBに対する接触角は3°以下であった。
<発光層の形成>
次に、有機薄膜として発光層を形成した。ホスト材料として、以下に示す有機化合物(C5)および(C6)を、(C5):(C6)=100:5(重量比)の比率で、溶剤であるCHBに溶解させ、インクジェット用インクとして用いられる、固形分濃度0.5重量%の発光層形成用組成物を調製した。
【0259】
【化23】

【0260】
【化24】

【0261】
この発光層形成用組成物をインクジェット装置に仕込み、正孔輸送層の上の該バンクで区画された領域(1辺70μm)1つ当たり液滴量25plで吐出し、発光層を形成した。
なお、20ノズル(該発光層形成用組成物を吐出する開口が20個ならんでいるノズル)を同時に使用して、20×20の区画領域にインクを吐出した。終了後、速やかに発光層が形成された基板を減圧乾燥機に導入し、減圧下(10kPa)、130℃、1時間の乾燥を行った。このようにして膜厚25nmの発光層を形成した。
【0262】
<正孔阻止層の形成>
下記式(iii)で表される化合物を入れたモリブデン製ボートを通電加熱し、発光層が形
成された基板上に蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度1.2×10−6Torr、(
1.6×10−4Pa)、蒸着速度1.0Å/秒(0.1nm/sec)とし、膜厚10nmの正孔阻止層を形成した。
【0263】
【化25】

【0264】
<電子輸送層の形成>
下記式(iv)で表される化合物を入れたモリブデン製ボートを通電加熱し、正孔阻止層上に蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度1.2×10―6Torr(1.6×10−4
Pa)、蒸着速度1.5Å/秒(0.15nm/sec)とし、膜厚30nmの電子輸送層を形成した。
【0265】
【化26】

【0266】
<電子注入層の形成>
ここで、電子輸送層までを形成した素子を一度真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して、正孔阻止層や電子輸送層の蒸着時と同様にして装置内の真空度が2×10−6Torr(2.7×10−4Pa)になるまで排気した。フッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.05Å/秒(0.005nm/sec)、真空度2.0×10−6Torr(2.7×10−4Pa)で、0.5nmの膜厚で電子輸送層の上に成膜した。
【0267】
<陰極形成>
次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度4Å/秒(0.4nm/sec)、真空度5×10−6Torr(6.7×10−4Pa)で膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極を形成した。
<封止>
陰極までを形成した基板を真空蒸着装置内より、大気中に取り出して、窒素グローブボックス(酸素濃度1.0ppm、水分濃度1.0ppm)に速やかに導入し、その中で封止を行った。
【0268】
まず、該基板の発光領域をすべて覆うことができる面積の窪みを有し、該基板の外形よりは小さい外形を有するガラス製キャップを用意し、水分除去のための乾燥剤を該窪みの底部に貼付した。該基板上に、該キャップのリブ(窪みの周囲にある縁取り)部と略同形状になるよう、該紫外線硬化樹脂を塗布し、該キャップをその塗布した樹脂とリブ部とが重なり合うように貼り合わせ、該キャップ側からスポット紫外線照射装置によって紫外線硬化樹脂を硬化させた。
【0269】
この素子は、1辺70μmの正方形の発光領域がムラ無く均一に発光することを確認した。
(実施例2)
実施例1において、正孔注入層の形成から発光層の形成までを下記の通り変更した以外は、実施例1と同様にして形成した。
【0270】
尚、実施例1と同様にして、陽極を形成した基板のITOの表面粗さをVertScan(菱化システム社製)にて測定したところ、Ra:0.62 nm Rmax:3.69 nmであった。
作成した素子は、1辺70μmの正方形の発光領域がムラ無く均一に発光することを確認した。
<正孔注入層の形成>
ドープ型化合物含有解離基含有組成物の調製を行った。下記式P3の構造を有するポリマーからなる解離基を有する重合体(合成例9で合成された重合体2:重量平均分子質量=約3万)2重量%と、前記式A1で表される電子受容性化合物0.8重量%を、溶剤として安息香酸エチルに溶解し、ドープ型化合物含有解離基含有組成物を調製した。
【0271】
【化27】

【0272】
上記洗浄された陽極を形成した基板上に、上記ドープ型化合物含有組成物を用いて、スピンコート法にて乾燥膜厚30nmになるように、気温23℃、相対湿度50%の大気中で成膜を行なった。成膜後、ホットプレート上で80℃、1分間加熱乾燥した後、オーブン大気中で230℃、1時間ベークし、正孔注入層を形成した。
<正孔輸送層の形成>
次に、架橋基含有組成物の調製を行った。下記式P1の構造を有するポリマーからなる架橋基を有する化合物(重量平均分子量=75000)が0.4重量%濃度となるように溶剤としてトルエンに溶解し、解離基含有組成物を調製した。トルエンは市販の脱水トルエンを用い、酸素濃度1.0ppm、水分濃度1.0ppmの窒素グローブボックス中で該架橋基含有組成物を調製した。
【0273】
【化28】

【0274】
前記正孔注入層を形成した基板を窒素グローブボックスに入れ、正孔注入層上に、上記架橋基含有組成物を用いてスピンコート法にて乾燥膜厚20nmになるように、気温23℃、相対湿度50%の大気中で成膜を行なった。成膜後、ホットプレート上で230℃にて、1時間ベークすることで架橋基を熱によって架橋させ、正孔輸送層を形成した。
スピンコートおよびベークは、すべて酸素濃度1.0ppm、水分濃度1.0ppmの窒素グローブボックス中で大気暴露せずに行った。正孔輸送層の表面粗さを上記ITO表面と同様に測定したところ、その表面粗さは、Ra:0.49 nm Rmax:3.65 nmであった。
【0275】
<バンクの形成>
次に、正孔輸送層までを形成した基板を大気中に取り出し、紫外光をカットしたイエロールームにてバンクの形成を行った。
(感光性組成物)
実施例1の<バンクの形成>(感光性組成物)の項で合成した組成物を用いて、正孔輸送層上のほぼ全面に、スピンコート法によりバンク形成用レジスト層を成膜した。スピンコートは気温23℃、相対湿度50%の大気中で行なった。成膜後、常温で1分間、真空乾燥し、さらにホットプレート上で80℃、60秒間加熱乾燥した。形成されたバンク形成用レジスト層の厚みは、乾燥膜厚全厚で2.1μmであった。
【0276】
感光性組成がネガタイプであったことから、紫外光を遮光するクロムメッキが、感光性組成物を硬化させたい領域において紫外光を透過するように除去された石英基板のマスクを用いた。該マスクのマスクパターンは、紫外光透過部幅30μmで、クロムメッキ部(1辺70μmの正方形)がマスク面内で縦横に各20ヶ、碁盤の目のように並んだアレイパターンであった。このアレイパターンの紫外光透過領域が、2mm幅にパターン形成された陽極の辺縁に対して全てはみ出すことなく位置合わせを行った。位置合わせ後、3kW高圧水銀灯を用いて100mJ/cm2の露光条件にて露光を施した。照射後、TMA
H(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)の2.38%水溶液を10倍希釈した水溶液を現像液として、23℃において、水圧0.1MPaのシャワー現像を2分間施した後、純水スプレーで30秒間リンスし、圧空で水を切った。ついで、基板を窒素グローブボックス中に移し、窒素グローブボックス中で230℃、30分間ポストベークし、正孔輸送層上にバンクを形成した。形成したバンクは全厚2.1μm、開口部が1辺70μmの
長さである略正方形となった。このようにしてバンクが形成された後で、非露光部のバンク形成用レジストが除去され正孔輸送層が露出した表面の表面粗さを、ITO表面と同様に測定したところ、その表面粗さは、Ra:0.48 nm Rmax:3.35 nmであった。
【0277】
また、その後、発光層は、インクジェット法により、溶剤としてCHB(シクロヘキシルベンゼン)を用いた組成物により形成されるため、バンク表面のCHBに対する接触角を測定した。その結果、接触角は60°であった。一方、バンクで区画された領域のCHBに対する接触角は6°以下であった。
<発光層の形成>
実施例1と同様にして、膜厚35nmの発光層を形成した。
【0278】
(比較例1)
正孔輸送層を以下の方法で形成した他は、実施例2と同様にして、有機電界発光素子を作製した。この素子は、1辺70μmの正方形の発光領域にムラが認められた。駆動電圧は実施例2に比べて高くなった。
尚、バンクで区画された領域の表面粗さは、Ra:0.32 nm Rmax:2.56 nmであった。
【0279】
また、バンク表面のCHBに対する接触角を測定した結果、接触角は60°であり、バンクで区画された領域のCHBに対する接触角は7°から15°であった。
<正孔輸送層の形成>
正孔輸送層形成用組成物の調製を行った。下記式P2の構造を有するポリマーからなる架橋性化合物(重量平均分子量35,800、分子量分布1.64)を0.4重量%の濃
度となるように溶剤としてトルエンに溶解し、正孔輸送層形成用組成物を調製した。トルエンは市販の脱水トルエンを用い、酸素濃度1.0ppm、水分濃度1.0ppmの窒素グローブボックス中で該正孔輸送層形成用組成物を調製した。
【0280】
【化29】

【符号の説明】
【0281】
1 基板
2 電荷輸送層(第1)
3 電荷輸送層(第2)
4 下引き層
5 バンク形成用レジスト層
6 露光マスク
7 活性光線
8 バンクで区画された領域
9 樹脂層
10 有機薄膜
11 バンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に直接または他の層を介して1層または2層以上の電荷輸送層を有し、該電荷輸送層上にバンクおよび該バンクによって区画された領域を有する有機電界発光素子用の有機薄膜パターニング用基板であって、
該電荷輸送層が、熱および/または活性エネルギー線によって解離する官能基を有する化合物を、熱および/または活性エネルギー線によって解離させることにより得られた化合物を含有することを特徴とする、有機薄膜パターニング用基板。
【請求項2】
前記電荷輸送層が、前記バンクと隣接していることを特徴とする、請求項1に記載の有機薄膜パターニング用基板。
【請求項3】
基板上に直接または他の層を介して2層以上の電荷輸送層を有し、該バンクと隣接しない電荷輸送層が、熱および/または活性エネルギー線によって解離する官能基を有する化合物を、熱および/または活性エネルギー線によって解離させることにより得られた化合物を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機薄膜パターニング用基板。
【請求項4】
熱および/または活性エネルギー線によって解離する官能基を有する化合物の、該官能基が解離基であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機薄膜パターニング用基板。
【請求項5】
熱および/または活性エネルギー線によって解離する官能基を有する化合物が、下記式(U1)又は下記式(U2)で表される部分構造を有する化合物であることを特徴とする、請求項4に記載の有機薄膜パターニング用基板。
【化1】

(式(U1)中、環Aは芳香族環を表す。該芳香族環は置換基を有していてもよい。また、該置換基同士が直接または2価の連結基を介して環を形成していてもよい。
、S、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、置換基を有していてもよいへテロアリールアミノ基または置換基を有していてもよいアシルアミノ基を表す。
式(U2)中、環Bは芳香族環を表す。該芳香族環は置換基を有していてもよい。また、該置換基同士が直接または2価の連結基を介して環を形成していてもよい。
11〜S14、R11〜R16は、それぞれ独立に、上記S、S、R〜Rとして示したものと同様である。)
【請求項6】
前記式(1)又は前記式(2)で表される部分構造を有する化合物が、
更にそれぞれ下記式U9またはU10で表される部分構造を繰り返し単位中に含む重合体であることを特徴とする、請求項5に記載の有機薄膜パターニング用基板。
【化2】

(式(U9)中、環Az1は、解離基が結合する芳香族炭化水素環または芳香族複素環を表す。該芳香族炭化水素環及び該芳香族複素環は置換基を有していてもよい。また、該置換基同士が直接結合または2価の連結基を介して結合し、環を形成していてもよい。
z21、Sz22、Rz21〜Rz26は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、置換基を有していてもよいへテロアリールアミノ基または置換基を有していてもよいアシルアミノ基を表す。
z1及びXz2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6以上50以
下の2価の芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい炭素数5以上50以下の2価の芳香族複素環基を表す。
式(U10)中、環Bz1は解離基が結合する芳香族炭化水素環または芳香族複素環を表す。該芳香族炭化水素環及び該芳香族複素環は置換基を有していてもよい。また、該置換基同士が直接または2価の連結基を介して環を形成していてもよい。
z31〜Sz34、Rz31〜Rz36、Xz3及びXz4は、それぞれ独立に、上記Sz21、Sz22、Rz21〜Rz26、Xz1及びXz2として示したものと同様である。
Z1〜nZ4はそれぞれ独立に、0〜5の整数を表す。)
【請求項7】
基板上に直接または他の層を介して2層以上の電荷輸送層を有し、該バンクと隣接しない電荷輸送層が、ドープ型化合物を含有する層であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機薄膜パターニング用基板。
【請求項8】
該バンクは、撥インク性成分を含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機薄膜パターニング用基板。
【請求項9】
該バンクは、下引き層と該下引き層上の樹脂層を含む積層構造であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機薄膜パターニング用基板。
【請求項10】
該下引き層が親水性化合物を含有し、該樹脂層が撥インク性成分を含有することを特徴
とする、請求項9に記載の有機薄膜パターニング用基板。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の有機薄膜パターニング用基板を用いた有機電界発光素子であって、該バンクによって区画された領域に、1層または2層以上の有機薄膜を有することを特徴とする、有機電界発光素子。
【請求項12】
該有機薄膜の少なくとも1層が発光層であることを特徴とする、請求項10に記載の有機電界発光素子。
【請求項13】
請求項11または12に記載の有機電界発光素子を用いた、有機EL表示装置。
【請求項14】
請求項11または12に記載の有機電界発光素子を用いた、有機EL照明。

【図1】
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【公開番号】特開2010−98301(P2010−98301A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214967(P2009−214967)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】