説明

有機薄膜及び有機電界発光素子

【課題】発光効率が高く、かつ色純度が高く幅広い発光色を得ることができる有機薄膜、及び有機電界発光素子を提供すること。
【解決手段】イリジウム錯体、白金錯体及びホスト材料を含む有機薄膜であって、前記有機薄膜中では、前記イリジウム錯体の最短発光極大波長が430nm以上480nm未満で、かつ前記白金錯体の発光極大波長が550nm以上650nm未満であり、溶液中での前記白金錯体の最短発光極大波長が、溶液中での前記イリジウム錯体の最短発光極大波長より短波長である有機薄膜、及び該有機薄膜を含む有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜及び有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電流を通じることによって励起され発光する有機薄膜を用いた有機電界発光素子(以下、「素子」、「有機EL素子」ともいう)は、低電圧駆動で高輝度の発光が得られることから、近年活発な研究開発が行われている。一般に有機電界発光素子は、発光層を含む有機層及び該層を挟んだ一対の電極から構成されており、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が発光層において再結合し、生成した励起子のエネルギーを発光に利用するものである。
【0003】
近年、燐光発光材料を用いることにより、素子の高効率化が進んでいる。例えば、燐光発光材料と白金錯体などを用い、発光効率及び耐久性に優れる有機電界発光素子が研究されている。また、発光材料をホスト材料中にドープした発光層を用いるドープ型素子が広く採用されている。
【0004】
有機EL素子は、例えば携帯電話ディスプレイ、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニター、及び一般照明を含む幅広い用途に適用され得るが、用途に応じて幅広い発光色を高効率で表現することが課題となっている。
特許文献1及び2には、モノマー発光材料と凝集体発光材料を併用して、凝集体発光材料からの発光がモノマー発光材料からの発光より長波長で、かつ両発光体からの複合発光が可視スペクトルを包含して白色発光をもたらす有機電界発光素子が記載されている。ここで、モノマー発光材料としてはイリジウム錯体(例えば、FIr(pic))、凝集体発光材料として白金錯体が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−514754号公報
【特許文献2】特開2007−73620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、特許文献1及び2では、イリジウム錯体のモノマー発光材料と白金錯体の凝集体発光材料とを用いた有機電界発光素子により白色発光を得ている。しかしながら、本発明者らが検討した結果、特許文献1に記載の有機電界発光素子は、発光効率が低く、また色純度にも問題があることが分かった。また、特許文献2の発明は、耐久性の向上を目的としたもので、発光効率向上の観点で好ましいモノマー発光材料と凝集体発光材料との組み合わせに関する知見は示されていない。
本発明は、上記課題を解決するためになされてものであり、発光効率が高く、かつ色純度が高く幅広い発光色を得ることができる有機薄膜、及び有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、下記の手段により解決される。
[1]
イリジウム錯体、白金錯体及びホスト材料を含む有機薄膜であって、
前記有機薄膜中では、前記イリジウム錯体の最短発光極大波長が430nm以上480nm未満で、かつ前記白金錯体の発光極大波長が550nm以上650nm未満であり、
溶液中での前記白金錯体の最短発光極大波長が、溶液中での前記イリジウム錯体の最短発光極大波長より短波長であることを特徴とする有機薄膜。
[2]
前記有機薄膜中での前記イリジウム錯体の最短発光極大波長が430nm以上470nm未満であることを特徴とする[1]に記載の有機薄膜。
[3]
前記イリジウム錯体が、下記一般式(1)で表されるイリジウム錯体であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の有機薄膜。
【化1】

[一般式(1)中、A11は窒素原子又は炭素原子を表し、A12はN又はCR13を表す。R11〜R13は各々独立に水素原子又は置換基を表す。Q11はA11及びNとともに含窒素ヘテロ環を形成する原子群を表す。(X−Y)は2座のモノアニオン性配位子を表す。nは1〜3の整数を表す。]
[4]
前記白金錯体が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の有機薄膜。
【化2】

[一般式(2)中、A21及びA22は各々独立に窒素原子又は炭素原子を表す。Q21はA21及びNとともに含窒素ヘテロ環を形成する原子群を表す。Q22はA22及びNとともに含窒素ヘテロ環を形成する原子群を表す。L21はPt及びA21と結合する原子群を表し、L22はPt及びA22と結合する原子群を表す。L23は連結基を表す。]
[5]
前記一般式(2)において、Q21、A21及びNにより形成される含窒素ヘテロ環及びQ22、A22及びNにより形成される含窒素ヘテロ環の少なくとも一方がピラゾール環であることを特徴とする[4]に記載の有機薄膜。
[6]
前記一般式(2)で表される白金錯体が、下記一般式(3)で表される白金錯体であることを特徴とする[5]に記載の有機薄膜。
【化3】

[一般式(3)中、R301〜R312は各々独立に水素原子又は置換基を表す。R301とR302、R303とR304、R305〜R308の少なくとも2つ、及びR309〜R312の少なくとも2つは、それぞれ、互いに連結して環を形成してもよい。L31は連結基を表す。]
[7]
一対の電極間に、発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、前記発光層が[1]〜[6]のいずれか一項に記載の有機薄膜である有機電界発光素子。
[8]
[7]に記載の有機電界発光素子を用いた発光装置。
[9]
[7]に記載の有機電界発光素子を用いた照明装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発光効率が高く、かつ色純度が高く幅広い発光色を得ることができる有機薄膜、及び有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1で得られた有機薄膜の発光スペクトルを示す図である。
【図2】実施例2で得られた有機薄膜の発光スペクトルを示す図である。
【図3】実施例5で得られた有機薄膜の発光スペクトルを示す図である。
【図4】実施例6で得られた有機薄膜の発光スペクトルを示す図である。
【図5】実施例1で用いたイリジウム錯体とホスト材料とからなる有機薄膜(比率は10:90(質量%))の発光スペクトルを示す図である。
【図6】実施例2で用いたイリジウム錯体とホスト材料とからなる有機薄膜(比率は10:90(質量%))の発光スペクトルを示す図である。
【図7】実施例2で用いた白金錯体とホスト材料とからなる有機薄膜(比率は10:90(質量%))の発光スペクトルを示す図である。
【図8】実施例3で用いた白金錯体とホスト材料とからなる有機薄膜(比率は10:90(質量%))の発光スペクトルを示す図である。
【図9】本発明に係る有機EL素子の層構成の一例(第1実施形態)を示す概略図である。
【図10】本発明に係る発光装置の一例(第2実施形態)を示す概略図である。
【図11】本発明に係る照明装置の一例(第3実施形態)を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る一般式の説明における水素原子は同位体(重水素原子等)も含み、また更に置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいることを表す。
本発明において、アルキル基等の置換基の「炭素数」とは、アルキル基等の置換基が他の置換基によって置換されてもよい場合も含み、当該他の置換基の炭素数も包含する意味で用いる。
【0011】
(置換基群A)
また、本明細書において、置換基群Aは以下の置換基を表す。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(芳香族ヘテロ環基も包含し、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、セレン原子、テルル原子であり、具体的にはピリジル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、キノリル、フリル、チエニル、セレノフェニル、テルロフェニル、ピペリジル、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル、ピロリジノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基、シロリル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)、ホスホリル基(例えばジフェニルホスホリル基、ジメチルホスホリル基などが挙げられる。)が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Aから選択される基を挙げることができる。
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
[有機薄膜]
本発明の有機薄膜は、イリジウム錯体、白金錯体及びホスト材料を含む有機薄膜であって、
有機薄膜中では、イリジウム錯体の最短発光極大波長が430nm以上480nm未満で、かつ白金錯体の発光極大波長が550nm以上650nm未満であり、
溶液中での白金錯体の最短発光極大波長が、溶液中でのイリジウム錯体の最短発光極大波長より短波長であることを特徴とする。
【0013】
本発明に用いるイリジウム錯体と白金錯体は、溶液中では白金錯体の最短発光極大波長がイリジウム錯体のそれより短波長で、かつ有機薄膜中ではイリジウム錯体の最短発光極大波長が白金錯体の発光極大波長より短波長となるものである。即ち、本発明に係る白金錯体は、溶液中に対して有機薄膜中では発光極大が長波長側にシフトするような錯体である。このことは、白金錯体が有機薄膜中で2分子以上が基底状態又は励起状態で会合し、該会合状態で発光していることを意味する。本発明の化合物は、有機薄膜の吸収スペクトルと励起スペクトルに大きな違いが見られないことから、主に励起会合体(エキシマー)に由来する発光と思われる。
本発明の有機薄膜においては、会合状態からの発光(以下、「会合発光」ともいう)の発光極大波長が550nm以上650nm未満となる白金錯体と、最短発光極大波長が430nm以上480nm未満のイリジウム錯体を併用することにより、色純度が高く幅広い発光色(白色及び青白〜オレンジ領域の発光色)を得ることができる。
更に、白金錯体の溶液中での最短発光極大波長が溶液中でのイリジウム錯体の最短発光極大波長より短波長になるようにしたので、発光効率が向上し、更に色純度の高い発光色を得ることができる。溶液中での最短発光極大波長がこのような関係にあると、イリジウム錯体から白金錯体へのエネルギー移動が起こりにくくなり、イリジウム錯体を効率良く発光させることができるためと推定している。
本発明において、溶液中の錯体の発光極大波長は、例えば次の方法により測定することができる。即ち、錯体をジクロロメタン溶液中に溶解又は分散して(錯体の種類によって異なるが、例えば溶液中での錯体濃度0.01〜0.1g/ml%)、SHIMADU社製分光蛍光光度計RF−5300PCにて測定することができる。
また、有機薄膜中での錯体の発光極大波長は、ガラス基板に各材料を蒸着させ、例えば、浜松ホトニクス社製スペクトルアナライザーPMA−11により測定することができる。
なお、本発明において「最短発光極大波長」とは、発光極大のうち最も短波側にある発光極大の波長を意味する。
【0014】
(イリジウム錯体)
本発明に係るイリジウム錯体は、有機薄膜中での最短発光極大波長が430nm以上480nm未満の錯体である。該最短発光極大波長は、好ましくは430nm以上470nm未満であり、より好ましくは440nm以上460nm未満であり、更に好ましくは440nm以上455nm未満である。有機薄膜中での最短発光極大波長がこの範囲にあると、イリジウム錯体の発光が色純度の高い青色発光となるので、白金錯体の会合発光と組合せることにより表現できる色の範囲が広がり、白色とした場合の色純度も向上させることができる。
また、色純度の観点から、本発明に係るイリジウム錯体の有機薄膜中において最短発光極大波長における半値幅は10〜100nmであることが好ましく、20〜80nmであることがより好ましい。更に、本発明に係るイリジウム錯体は、有機薄膜中において最短発光極大波長より長波長側に発光極大を有していてもよく、そのような発光極大を有する場合、色純度の観点から、該発光極大は430nm以上490nm以下にあることが好ましく、440nm以上480nm以下にあることがより好ましい。
本発明に係るイリジウム錯体の溶液中での最短発光極大波長は、本発明に係る白金錯体の溶液中での最短発光極大波長より長波長であれば特に制限されないが、440nm以上470nm以下であることが好ましく、440nm以上465nm以下であることがより好ましい。
【0015】
本発明に係るイリジウム錯体としては、下記一般式(1)で表されるイリジウム錯体が好ましい。
【0016】
【化4】

【0017】
[一般式(1)中、A11は窒素原子又は炭素原子を表し、A12はN又はCR13を表す。R11〜R13は各々独立に水素原子又は置換基を表す。Q11はA11及びNとともに含窒素ヘテロ環を形成する原子群を表す。(X−Y)は2座のモノアニオン性配位子を表す。nは1〜3の整数を表す。]
【0018】
一般式(1)について説明する。
11は窒素原子又は炭素原子を表し、炭素原子であることが好ましい。
11はA11及びNとともに含窒素ヘテロ環を形成する原子群を表す。該含窒素へテロ環としては特に限定されないが、含窒素ヘテロ芳香族6員環又は含窒素ヘテロ芳香族5員環であることが好ましい。具体的には、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアゾール環、ピラゾール環、イミダゾール環が好ましく、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環がより好ましく、ピリジン環、イミダゾール環が更に好ましく、ピリジン環が特に好ましい。ピリミジン環、ピラジン環、トリアゾール環、ピラゾール環及びイミダゾール環の場合、A11は炭素原子であることが好ましい。
含窒素へテロ環は置換基を有していてもよい。該置換基としては特に限定されないが、前記置換基群Aの置換基が挙げられる。好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基が挙げられ、より好ましくは、アルキル基、アリール基であり、更に好ましくはメチル基、フェニル基である。また、含窒素ヘテロ環が有する置換基は、該含窒素ヘテロ環が有する他の置換基又はR11〜R13と連結して環を形成してもよく、環としては、ベンゼン環、ヘテロアリール基が挙げられる。これらの置換基及び環は更に置換基を有していてもよく、該更なる置換基としてはアルキル基、アリール基が好ましく、メチル基フェニル基がより好ましい。
【0019】
11及びR12は各々独立に水素原子又は置換基を表す。置換基としては特に限定されないが、置換基群Aの置換基が挙げられる。R11及びR12は、シアノ基、ハロゲン化アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基などのフッ化アルキル基)、アリール基、ヘテロアリール基、フッ素原子であることが好ましく、シアノ基、トリフルオロメチル基、フッ素原子であることがより好ましく、フッ素原子であることが更に好ましくい。
【0020】
12はN又はCR13を表し、Nであることが好ましい。
12がCR13のとき、R13は水素原子又は置換基を表す。置換基としては特に限定されないが、置換基群Aの置換基が挙げられる。R13はシアノ基、トリフルオロメチル基、アリール基、ヘテロアリール基、フッ素原子であることが好ましく、シアノ基、アリール基であることがより好ましく、シアノ基であることが更に好ましい。R13は、R11又はR12と連結して結合してもよい。その場合、形成される環は置換基を有していてもよく、更に縮環していてもよい。
【0021】
(X−Y)は2座のモノアニオン性配位子を表す。これらの配位子は、発光特性に直接寄与するのではなく、分子の発光特性を制御することができると考えられている。例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer−Verlag社 H.Yersin著 1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社 山本明夫著 1982年発行等に記載の配位子が挙げられる。例えば、ホスフィン配位子、含窒素ヘテロアリール配位子(例えば、ピコリン酸、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトナト配位子(例えば、アセチルアセトンなど)が挙げられる。好ましくはジケトン類(アセチルアセトナト(acac))又はピコリン酸誘導体である。色純度の観点で更に好ましくはピコリン酸誘導体であり、耐久性の観点で更に好ましくはジケトン配位子である。
【0022】
以下に、(X−Y)が形成する2座配位子の例を具体的に挙げるが、本発明はこれらに限定されない
【0023】
【化5】

【0024】
一般式(I−1)〜(I−14)中、Rx、Ry及びRzはそれぞれ独立に水素原子又
は置換基を表す。
【0025】
Rx、Ry及びRzが表す置換基としては前述の置換基群Aのものが挙げられる。好ましくは炭素数3以下のアルキル基又は水素原子であること。
(X−Y)が形成する2座配位子、一般式(l−1)〜(l−14)中、一般式(l−1)又は(l−4)及びで表されるものが好ましい。
【0026】
一般式(1)中、nは1〜3の整数を表し、2又は3であることが好ましい。合成容易性の観点からは2が好ましく、化合物の有機EL素子中での安定性の観点からは3であることが好ましい。
【0027】
一般式(1)の具体例としては以下の化合物が挙げられる。ただし、本発明は、これらの化合物に限定されるわけではない。
【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
【化8】

【0031】
一般式(1)で表される化合物は、例えば特開2005−220136公報記載の方法で合成することができる。
【0032】
本発明において、前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(A1)又は(A3)で表される化合物であることも好ましい。
【0033】
【化9】

【0034】
(一般式(A1)及び(A3)中、E1a〜E1kはそれぞれ独立に炭素原子又はヘテロ原子を表す。R1a〜R1iはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。(X−Y)は補助配位子であり、2座のモノアニオン性配位子を表す。nは1〜3の整数を表す。一般式(A1)で表される化合物及び一般式(A3)で表される化合物はそれぞれ合計で18π電子構造を有する。)
【0035】
一般式(A1)又は(A3)で表される化合物は、主配位子として下記の一般式(A1’)又は(A3’)で表されるモノアニオン性の2座配位子を有している。なお、本発明における配位子の一般式中、*はイリジウムへの配位部位であって、E1aとイリジウムの結合、及びR1g〜R1iを有するベンゼン環の炭素原子とイリジウムの結合は、それぞれ独立に共有結合であっても配位結合であってもよい。
【0036】
【化10】

【0037】
(一般式(A1’)及び(A3’)中、E1a〜E1kはそれぞれ独立に炭素原子又はヘテロ原子を表す。R1a〜R1iはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。一般式(A1’)で表される2座配位子及び一般式(A3’)で表される2座配位子はそれぞれ合計で18π電子構造を有する。)
【0038】
該一般式(A1’)又は(A3’)で表される2座配位子は他の配位子と結合して3座、4座、5座、6座の配位子を形成することができる。
【0039】
一般式(A1)、(A3)、(A1’)及び(A3’)中、E1a〜E1kは炭素原子又はヘテロ原子から選ばれ、好ましくは炭素原子又は窒素原子から選ばれる。また、該金属錯体は18π電子構造を有することが好ましい。
1a〜E1eから形成される環は5員のヘテロ環を表し、具体的にはオキサゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾールなどが挙げられる。好ましくはイミダゾール又はピラゾールであり、より好ましくはイミダゾールである。
1f〜E1kから形成される環はそれぞれ独立に6員の芳香族炭化水素環、5員又は6員のヘテロ環から選ばれ、例えばベンゼン、オキサゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジンなどが挙げられる。
1a〜R1iはそれぞれ独立に前述の置換基群Aから選ばれ、好ましくは水素原子、炭化水素置換基、シアノ基、フルオロ基、OR2a、SR2a、NR2a2b、BR2a2b、又はSiR2a2b2cである。R2a〜R2cはそれぞれ独立に炭化水素置換基、又はヘテロ原子で置換された炭化水素置換基であり、R1a〜R1i、R2a〜R2cのうちの2つが互いに結合し、飽和又は不飽和の、芳香族環又は非芳香族環を形成していても良い。窒素原子に結合している場合、R1a〜R1iは水素原子ではない。
【0040】
ヘテロ原子とは、炭素原子又は水素原子以外の原子を指す。ヘテロ原子の例として、例えば酸素、窒素、リン、硫黄、セレン、砒素、塩素、臭素、ケイ素、又はフッ素が挙げられる。
【0041】
また、炭化水素置換基とは、1価又は2価で、鎖状、分岐又は環状の置換基であり、炭素原子と水素原子のみからなるものを指す。1価の炭化水素置換基の例として例えば、炭素数1〜20のアルキル基(炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、アリール基から選ばれる1つ以上の基によって置換された炭素数1〜20のアルキル基)。炭素数3〜8のシクロアルキル基(炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、アリール基から選ばれる1つ以上の基によって置換された炭素数3〜8のシクロアルキル基)、炭素数6〜18のアリール基(炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、アリール基から選ばれる1つ以上の基によって置換されたアリール基)等が挙げられる。
2価の炭化水素基の例として例えば、−CH−、−CHCH−、−CHCH
CH−、1,2−フェニレン基等が挙げられる。
【0042】
1a〜R1iは少なくとも1つが母骨格に対し2面角が70度以上であるアリール基である事が好ましく、下記一般式ss−1で表される置換基である事がより好ましく、2,6−ジ置換アリール基である事が更に好ましく、R1bが2,6−ジ置換アリール基である事が最も好ましい。
【0043】
【化11】

【0044】
(一般式ss−1中、Ra、Rb、Rcはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基のいずれかを表す。)
【0045】
Ra、Rb、Rcが表すアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−オクタデシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、1−アダマンチル、トリフルオロメチルなどが挙げられ、メチル基、又はイソプロピル基が好ましい。
【0046】
Ra、Rb、Rcが表すアリール基としては、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、o−メチルフェニル、m−メチルフェニル、p−メチルフェニル、2,6−キシリル、p−クメニル、メシチル、ナフチル、アントラニル、などが挙げられ、フェニル基、が好ましい。
【0047】
Ra、Rbの少なくとも1つはアルキル基又はアリール基から選ばれ、Ra、Rbの少なくとも1つはアルキル基から選ばれる事が好ましく、Ra、Rbが共にアルキル基であることが好ましく、Ra、Rbが共にメチル基、又はイソプロピル基である事が最も好ましい。
2,6−ジ置換アリール基として好ましくは2,6−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリイソプロピルフェニル基、2,6−ジメチル−4−フェニルフェニル基、2,6−ジメチル−4−(2,6−ジメチルピリジン−4−イル)フェニル基、2,6−ジフェニルフェニル基、2,6−ジフェニル−4−イソプロピルフェニル基、2,4,6−トリフェニルフェニル基、2,6−ジイソプロピル−4−(4−イソプロピルフェニル)フェニル基、2,6−ジイソプロピル−4−(3,5−ジメチルフェニル)フェニル基、2,6−ジイソプロピル−4−(ピリジン−4−イル)フェニル基、又は2,6−ジ−(3,5−ジメチルフェニル)フェニル基である。
【0048】
1a〜R1iは、少なくとも1つがアルキル基であることが好ましく、R1eがアルキル基であることがより好ましい。アルキル基は4以上の炭素原子から成るベンジル位より離れた部位で分岐しているアルキル基であることが好ましい。
【0049】
一般式(A1)及び(A3)中、(X−Y)で表される補助配位子としては、一般式(1)の(X−Y)の具体例として挙げたものが挙げられ、好ましいものも同様である。
一般式(A1)及び(A3)中、nは1〜3の整数を表し、2又は3であることが好ましい。合成容易性の観点からは2が好ましく、化合物の有機EL素子中での安定性の観点からは3であることが好ましい。
【0050】
本発明において、金属錯体は主配位子若しくはその互変異性体と補助配位子若しくはその互変異性体の組み合わせで構成されるか、該金属錯体の配位子の全てが主配位子又はその互変異性体で表される部分構造のみで構成されていてもよい。
【0051】
更に従来公知の金属錯体形成に用いられる、所謂配位子として当該業者が周知の配位子(配位化合物ともいう)を必要に応じて補助配位子として有していてもよい。
【0052】
本発明に記載の効果を好ましく得る観点からは、錯体中の配位子の種類は1〜2種類から構成されることが好ましく、更に好ましくは1種類である。錯体分子内に反応性基を導入する際には合成容易性という観点から配位子が2種類からなることも好ましい。
【0053】
前記一般式(A1)又は(A3)で表される化合物は、下記一般式(A1−1)又は(A3−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0054】
【化12】

【0055】
(一般式(A1−1)及び(A3−1)中、E1f〜E1kはそれぞれ独立に炭素原子又はヘテロ原子を表す。R1a〜R1iはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。(X−Y)は補助配位子であり、2座のモノアニオン性配位子を表す。nは1〜3の整数を表す。一般式(A1−1)で表される化合物及び一般式(A3−1)で表される化合物はそれぞれ合計で18π電子構造を有する。)
【0056】
一般式(A1−1)及び(A3−1)中、E1f〜E1kは及びR1a〜R1iの定義は、一般式(A1)及び(A3)におけるE1f〜E1kは及びR1a〜R1iと同様であり、好ましいものも同様である。
【0057】
前記一般式(A1)又は(A3)で表される化合物は、下記一般式(A1−2)又は(A3−2)で表される化合物であることも好ましい。
【0058】
【化13】

【0059】
(一般式(A1−2)及び(A3−2)中、E1f〜E1kはそれぞれ独立に炭素原子又はヘテロ原子を表す。R1a〜R1iはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。(X−Y)は補助配位子であり、2座のモノアニオン性配位子を表す。nは1〜3の整数を表す。一般式(A1−2)で表される化合物及び一般式(A3−2)で表される化合物はそれぞれ合計で18π電子構造を有する。)
【0060】
一般式(A1−2)及び(A3−2)中、E1f〜E1k及びR1a〜R1iの定義は、(A1−1)及び(A3−1)におけるE1f〜E1k及びR1a〜R1iと同様であり、好ましいものも同様である。
【0061】
本発明においては一般式(A1−2)がより好ましく、一般式(A1−2)は下記一般式(A1−3)で表される化合物であることが更に好ましい。
【0062】
【化14】

【0063】
(一般式(A1−3)中、R1a〜R1iはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。(X−Y)は補助配位子であり、2座のモノアニオン性配位子を表す。nは1〜3の整数を表す。一般式(A1−3)で表される化合物は18π電子構造を有する。)
【0064】
一般式(A1−3)中、R1a〜R1iの定義は、(A1)におけるR1a〜R1iと同様であり、好ましいものも同様である。
【0065】
一般式(A1’)及び(A3’)の好ましい具体例を以下に示す。中でも(X−63)、(X−64)、(X−67)が最も好ましい。
【0066】
【化15】

【0067】
【化16】

【0068】
【化17】

【0069】
【化18】

【0070】
【化19】

【0071】
【化20】

【0072】
1a〜R1iは一般式(A1)と同義であり、全て水素原子であることが好ましい。
【0073】
一般式(A1)又は(A3)で表される化合物は、例えば、US2007/0190359やUS2008/0297033に記載の方法など、種々の手法で合成できる。
例えば、配位子、又はその解離体と金属化合物を溶媒(例えば、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキサイド系溶媒、水などが挙げられる)の存在下、若しくは、溶媒非存在下、塩基の存在下(無機、有機の種々の塩基、例えば、ナトリウムメトキサイド、t−ブトキシカリウム、トリエチルアミン、炭酸カリウムなどが挙げられる)、若しくは、塩基非存在下、室温以下、若しくは加熱し(通常の加熱以外にもマイクロウェーブで加熱する手法も有効である)得ることができる。具体的には、XM−64は、7−メチルイミダゾフェナントリジンを出発原料として、US2007/0190359の、[0132]〜[0134]に記載の合成法にて合成することができる。また、XM−63は、US2008/0297033の[0281]〜[0287]に記載の合成法にて合成することができる。
【0074】
一般式(A1−3)で表される化合物のうち、下記化合物(1−25)〜(1−30)で表される化合物が特に好ましい。
【0075】
【化21】

【0076】
(白金錯体)
本発明に係る白金錯体は、有機薄膜中で会合発光し、その発光極大波長が550nm以上650nm未満の錯体である。該発光極大波長は、好ましくは555nm以上630nm以下であり、更に好ましくは560nm以上600nm以下である。有機薄膜中での最短発光極大波長がこの範囲にあると、イリジウム錯体の発光と組合せることにより表現できる色の範囲が広がり、白色とした場合の色純度も向上させることができる。
また更に、有機薄膜中でのイリジウム錯体の最短発光極大波長での発光強度を1.0とした場合、該有機薄膜中での白金錯体の550nm以上650nm以下にある発光極大波長での発光強度は0.3〜1.5であることが好ましく、0.4〜1.3がより好ましく、0.5〜1.2が更に好ましい。
本発明に係る白金錯体の溶液中での最短発光極大波長は、本発明に係るイリジウム錯体の溶液中での最短発光極大波長より短波長であれば特に制限されないが、発光効率あるいは色純度の観点から、420nm以上470nm以下であることが好ましく、430nm以上460nm以下であることがより好ましく、435nm以上455nm以下であることが更に好ましく、435nm以上450nm以下であることが特に好ましい。
【0077】
本発明に係る白金錯体としては、発光効率の観点から、下記一般式(2)で表される白金錯体であることが好ましい。
【0078】
【化22】

【0079】
[一般式(2)中、A21及びA22は各々独立に窒素原子又は炭素原子を表す。Q21はA21及びNとともに含窒素ヘテロ環を形成する原子群を表す。Q22はA22及びNとともに含窒素ヘテロ環を形成する原子群を表す。L21はPt及びA21と結合する原子群を表し、L22はPt及びA22と結合する原子群を表す。L23は連結基を表す。]
【0080】
一般式(2)について説明する。
21及びA22は各々独立に窒素原子又は炭素原子を表し、炭素原子であることが好ましい。
21はA21及びNとともに含窒素ヘテロ環を形成する原子群を表す。Q22はA22及びNとともに含窒素ヘテロ環を形成する原子群を表す。該含窒素へテロ環としては特に限定されないが、含窒素ヘテロ芳香族6員環又は含窒素ヘテロ芳香族5員環であることが好ましい。具体的には、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアゾール環、ピラゾール環、イミダゾール環が好ましく、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環がより好ましく、ピリジン環、ピラゾール環が更に好ましく、ピラゾール環が特に好ましい。Q21、A21及びNが形成する含窒素ヘテロ環が、ピリミジン環、ピラジン環、トリアゾール環、ピラゾール環及びイミダゾール環の場合、A21は炭素原子であることが好ましい。同様に、Q22、A22及びNが形成する含窒素ヘテロ環が、ピリミジン環、ピラジン環、トリアゾール環、ピラゾール環及びイミダゾール環の場合、A22は炭素原子であることが好ましい。Q21、A21及びNが形成する含窒素ヘテロ環と、Q22、A22及びNが形成する含窒素ヘテロ環とは同じでも、異なっていてもよいが、色純度あるいは発光効率の観点から、少なくとも一方の含窒素へテロ環がピラゾール環であることが好ましい。
含窒素へテロ環は置換基を有していてもよい。該置換基としては特に限定されないが、前記置換基群Aの置換基が挙げられる。好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基、アリール基、アミノ基が挙げられ、より好ましくは、アルキル基、アリール基であり、更に好ましくは、n−ブチル基、フェニル基である。また、含窒素ヘテロ環が有する置換基同士が連結して環を形成してもよい。これらの置換基及び環は更に置換基を有していてもよく、該更なる置換基としては前記置換基群Aの置換基が挙げられる。
【0081】
23は連結基を表す。該連結基としては特に限定されないが、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、又はリン原子を含む2価の連結基が特に好ましく、下記の連結基群Aより選択される基が特に好ましい。
(連結基群A)
【0082】
【化23】

【0083】
上記連結基群Aにおいて、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35及びR36はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R25〜R36が置換基を表す場合、該置換基としては下記置換基群Bから選ばれる置換基が挙げられる。R25〜R36が置換可能な場合、更に置換基群Bから選ばれる置換基を有していてもよく、R25とR26、R27とR28、R29とR30、R27とR29、R27とR30、R28とR30、R28とR29、R31とR32あるいはR33とR34がそれぞれ互いに結合し環を形成してもよい。
【0084】
(置換基群B)
置換基群Bは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基であり、より好ましくはアルキル基、であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル、n−ブチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0085】
23としては、−C(R25)(R26)−、−C(R27)(R28)C(R29)(R30)−、−Si(R31)(R32)−、−N(R35)−、−O−、−S−、−SO−、−SO−又は−CO−が好ましく、−C(R25)(R26)−、−C(R27)(R28)C(R29)(R30)−、−Si(R31)(R32)−、−O−、又は−S−がより好ましく、−C(R25)(R26)−、又は−C(R27)(R28)C(R29)(R30)−が更に好ましい。
【0086】
前記−C(R25)(R26)−において、R25及びR26は、好ましくは水素原子又は前記置換基群Bから選ばれる置換基である。
前記−C(R27)(R28)C(R29)(R30)−において、R27、R28、R29及びR30は好ましくは水素原子又は前記置換基群Bから選ばれる置換基である。
前記−Si(R31)(R32)−において、R31及びR32は好ましくは水素原子又は置換基群Bから選ばれる前記置換基である。
前記−Ge(R33)(R34)−において、R33及びR34は好ましくは水素原子又は置換基群Bから選ばれる前記置換基である。
前記−N(R35)−において、R35は好ましくは水素原子又はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基であり、より好ましくは、アルキル基、アリール基であり、更に好ましくはアリール基である。
前記−P(R36)−において、R36はR35の好ましい範囲と同義である。
【0087】
一般式(2)中、L21はPt及びA21と結合する原子群を表し、L22はPt及びA22と結合する原子群を表す。
21及びL22は芳香族環又は芳香族ヘテロ環を表すことが好ましい。該芳香族環及び芳香族ヘテロ環としては、5員又は6員の環が好ましく、ベンゼン環(ナフタレン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、カルバゾールなどの縮環構造を含む)、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、ピロール環、チオフェン環、フラン環、などが挙げられ、より好ましくはベンゼン環、ピリジン環であり、更に好ましくはベンゼン環である。芳香族環又は芳香族ヘテロ環は置換基を有してもよい。該置換基としては特に限定されないが、置換基群Aで表される置換基が挙げられ、好ましくはハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、シアノ基、アリール基が挙げられ、更に好ましくは、トリフルオロメチル基、パーフルオロブチル基、シアノ基である。また、置換基同士が連結して環を形成してもよい。
【0088】
一般式(2)で表される白金錯体は、下記一般式(3)で表される白金錯体であることが好ましい。
【0089】
【化24】

【0090】
[一般式(3)中、R301〜R312は各々独立に水素原子又は置換基を表す。R301とR302、R303とR304、R305〜R308の少なくとも2つ、及びR309〜R312の少なくとも2つは、それぞれ、互いに連結して環を形成してもよい。L31は連結基を表す。]
【0091】
一般式(3)について説明する。
31は、一般式(2)におけるL23と同義であり、好ましい範囲も同じである。
301〜R312は各々独立に水素原子又は置換基を表す。該置換基としては特に限定されないが、置換基群Aで表される置換基が挙げられ、好ましくはハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、シアノ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基などが挙げられ、更に好ましくは、トリフルオロメチル基、パーフルオロブチル基、シアノ基である。R301とR302、R303とR304、R305〜R308の少なくとも2つ、及びR309〜R312の少なくとも2つは、それぞれ、互いに連結して環を形成してもよい。
【0092】
一般式(2)の具体例としては以下の化合物が挙げられる。ただし、本発明は、これらの化合物に限定されるわけではない。
【0093】
【化25】

【0094】
【化26】

【0095】
一般式(2)で表される化合物は、例えば下記のスキームで合成することができる。
【0096】
【化27】

【0097】
上記スキーム中、R及びR’は、水素原子又は置換基を表す。
【0098】
(ホスト材料)
本発明の有機薄膜は、イリジウム錯体及び白金錯体の他に、ホスト材料を含有する。
ホスト材料としては、特に限定されないが、カルバゾール誘導体、アリールアミン誘導体、ベンゼン誘導体(縮環構造を含む)などが挙げられる。発光効率の観点から、カルバゾール誘導体、アリールアミン誘導体が好ましく、カルバゾール誘導体がより好ましい。
【0099】
カルバゾール誘導体としては、以下の化合物が挙げられる。ただし、これらの化合物に限定されるわけではない。
【0100】
【化28】

【0101】
アリールアミン誘導体としては、以下の化合物が挙げられる。ただし、これらの化合物に限定されるわけではない。
【0102】
【化29】

【0103】
その他のホスト材料としては以下の化合物が挙げられる。ただし、これらの化合物に限定されるわけではない。
【化30】

【0104】
本発明の有機薄膜は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、溶液塗布などの湿式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
本発明の有機薄膜中でのイリジウム錯体の含有量は、1質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましく、8質量%〜15質量%が更に好ましい。白金錯体の含有量は、1質量%〜20質量%が好ましく、2質量%〜15質量%がより好ましく、4〜12質量%が特に好ましい。幅広い発光色を得る観点から、有機薄膜中でのイリジウム錯体と白金錯体との質量比(イリジウム錯体:白金錯体)は、10:1〜1:10が好ましく、5:1〜1:5がより好ましく、5:2〜2:5が特に好ましい。
本発明の有機薄膜中でのホスト材料の含有量は、15質量%〜95質量%であることが好ましく、30質量%〜90質量%であることがより好ましく、60質量%〜90質量%が更に好ましく、70質量%〜90質量%が特に好ましい。
【0105】
有機薄膜の膜厚は特に限定されないが、製膜性の観点から、1nm以上1000nm以下であることが好ましく、3nm以上500nm以下であることがより好ましく、5nm以上300nm以下であることが更に好ましく、10nm以上100nm以下であることが特に好ましい。なお、製膜した際に表面が粗くなる場合があるが、その場合は膜厚は平均膜厚とする。膜厚は触針式膜厚計(Sloan社製Dektak 3ST)や、J.A.ウーラム社製分光エリプロメトリーM−2000などで測定することができる。
【0106】
[有機電界発光素子]
本発明の有機電界発光素子は、一対の電極間に、発光層を含む少なくとも一層の有機層を有し、少なくとも一層の発光層が本発明の有機薄膜である。
本発明の有機電界発光素子において、発光層は有機層であるが、更に複数の有機層を有していてもよい。
発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明若しくは半透明であることが好ましい。
図9は、本発明に係る有機電界発光素子の構成の一例を示している。図9に示される本発明に係る有機電界発光素子10は、基板12上に、一対の電極(陽極3及び陰極9)を有し、該一対の電極間に発光層6を有する。具体的には、陽極3と陰極9との間に、正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、正孔ブロック層7、及び電子輸送層8をこの順に有する。
【0107】
<有機層の構成>
前記有機層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができる。前記陽極上又は陰極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機層は、陽極又は陰極上の全面又は一部に形成される。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0108】
陰極と陽極との間の有機層の具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
有機電界発光素子の素子構成、基板、陰極及び陽極については、例えば、特開2008−270736号公報に詳述されており、該公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0109】
<基板>
基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
<陽極>
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
基板、陽極、陰極については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0070〕〜〔0089〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0110】
<有機層>
有機層について説明する。
−有機層の形成−
有機電界発光素子において、各有機層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、溶液塗布などの湿式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
【0111】
(発光層)
<発光材料>
本発明の有機電界発光素子の発光層における発光材料は、燐光発光材料であることが好ましく前記イリジウム錯体及び白金錯体であることが好ましい。
【0112】
発光層中の発光材料は、発光層中に一般的に発光層を形成する全化合物の質量に対して、0.1質量%〜50質量%含有されることが好ましく、耐久性、外部量子効率の観点から1質量%〜50質量%含有されることがより好ましく、2質量%〜40質量%含有されることが更に好ましい。
発光層中の燐光発光材料は、発光層中に耐久性、発光色相の観点から1質量%〜30質量%含有されることが好ましく、2質量%〜20質量%含有されることがより好ましい。
【0113】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、2nm〜500nmであるのが好ましく、中でも、外部量子効率の観点で、3nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0114】
発光層は、イリジウム錯体、白金錯体及びホスト材料の混合層とした構成であればその他の材料(発光材料あるいはホスト材料)を有していても良い。他に含まれていてもよい発光材料としては蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良い。
ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は一種であっても二種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。更に、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。
また、発光層は、複数の層からなっていてもよく、その場合、少なくとも一層は本発明の有機薄膜である。発光層が複数の層からなる場合に、それぞれの発光色は同じでも異なっていてもよい。
【0115】
<ホスト材料>
本発明に用いられるホスト材料として、以下の化合物を含有していても良い。例えば、ピロール、インドール、カルバゾール(例えばCBP(4,4’−ジ(9−カルバゾイル)ビフェニル))、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体及びそれらの誘導体(置換基や縮環を有していてもよい)等を挙げることができる。
【0116】
発光層において、ホスト材料の三重項最低励起エネルギー(Tエネルギー)が、燐光発光材料のTエネルギーより高いことが色純度、発光効率、駆動耐久性の点で好ましい。
【0117】
ホスト化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、発光効率、駆動電圧の観点から、発光層を形成する全化合物質量に対して15質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0118】
(蛍光発光材料)
本発明に使用できる蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の錯体やピロメテン誘導体の錯体に代表される各種錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0119】
(燐光発光材料)
本発明に使用できる燐光発光材料としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられ、中でも、更に好ましい発光性ドーパントとしては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、及びCe錯体が挙げられる。特に好ましくは、Ir錯体、Pt錯体、又はRe錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が好ましい。更に、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、3座以上の多座配位子を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が特に好ましい。
【0120】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
本発明に関し、有機層として、電子受容性ドーパントを含有する正孔注入層又は正孔輸送層を含むことが好ましい。
【0121】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。
【0122】
正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0165〕〜〔0167〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0123】
−正孔ブロック層−
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノレート(Aluminum(III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate(BAlqと略記する))等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0124】
−電子ブロック層−
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
電子ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0125】
<保護層>
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0169〕〜〔0170〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0126】
<封止容器>
本発明の素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
封止容器については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0171〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0127】
(駆動)
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0128】
本発明の発光素子は、種々の公知の工夫により、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、基板表面形状を加工する(例えば微細な凹凸パターンを形成する)、基板・ITO層・有機層の屈折率を制御する、基板・ITO層・有機層の膜厚を制御すること等により、光の取り出し効率を向上させ、外部量子効率を向上させることが可能である。
【0129】
本発明の発光素子は、陽極側から発光を取り出す、いわゆるトップエミッション方式であっても良い。
【0130】
本発明における有機EL素子は、共振器構造を有しても良い。例えば、透明基板上に、屈折率の異なる複数の積層膜よりなる多層膜ミラー、透明又は半透明電極、発光層、及び金属電極を重ね合わせて有する。発光層で生じた光は多層膜ミラーと金属電極を反射板としてその間で反射を繰り返し共振する。
別の好ましい態様では、透明基板上に、透明又は半透明電極と金属電極がそれぞれ反射板として機能して、発光層で生じた光はその間で反射を繰り返し共振する。
共振構造を形成するためには、2つの反射板の有効屈折率、反射板間の各層の屈折率と厚みから決定される光路長を所望の共振波長の得るのに最適な値となるよう調整される。第一の態様の場合の計算式は特開平9−180883号明細書に記載されている。第2の態様の場合の計算式は特開2004−127795号明細書に記載されている。
【0131】
本発明の有機電界発光素子の外部量子効率としては、5%以上が好ましく、7%以上がより好ましい。外部量子効率の数値は20℃で素子を駆動したときの外部量子効率の最大値、若しくは、20℃で素子を駆動したときの100〜300cd/m付近での外部量子効率の値を用いることができる。
【0132】
本発明の有機電界発光素子の内部量子効率は、30%以上であることが好ましく、50%以上が更に好ましく、70%以上が更に好ましい。素子の内部量子効率は、外部量子効率を光取り出し効率で除して算出される。通常の有機EL素子では光取り出し効率は約20%であるが、基板の形状、電極の形状、有機層の膜厚、無機層の膜厚、有機層の屈折率、無機層の屈折率等を工夫することにより、光取り出し効率を20%以上にすることが可能である。
【0133】
(本発明の有機電界発光素子の用途)
本発明の有機電界発光素子は、発光装置、ピクセル、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、又は光通信等に好適に利用できる。特に、発光装置、照明装置、表示装置等の発光輝度が高い領域で駆動されるデバイスに好ましく用いられる。
本発明の有機電界発光素子は、本発明の有機薄膜を発光層として有しているので、白色光源からカラーフィルターを通して青色を表現するディスプレイなどの発光装置に好適である。本発明の有機電界発光素子を白色光源として発光装置に用いることで、色純度が良好で発光効率のよい青色発光が得られる。
【0134】
次に、図10を参照して本発明の発光装置について説明する。
本発明の発光装置は、前記有機電界発光素子を用いてなる。
図10は、本発明の発光装置の一例を概略的に示した断面図である。
図10の発光装置20は、透明基板(支持基板)2、有機電界発光素子10、封止容器11等により構成されている。
【0135】
有機電界発光素子10は、基板2上に、陽極(第一電極)3、有機層11、陰極(第二電極)9が順次積層されて構成されている。また、陰極9上には、保護層12が積層されており、更に、保護層12上には接着層14を介して封止容器16が設けられている。なお、各電極3、9の一部、隔壁、絶縁層等は省略されている。
ここで、接着層14としては、エポキシ樹脂等の光硬化型接着剤や熱硬化型接着剤を用いることができ、例えば熱硬化性の接着シートを用いることもできる。
【0136】
本発明の発光装置の用途は特に制限されるものではなく、例えば、照明装置のほか、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電子ペーパ等の表示装置とすることができる。
【0137】
(照明装置)
次に、図11を参照して本発明の実施形態に係る照明装置について説明する。
図11は、本発明の実施形態に係る照明装置の一例を概略的に示した断面図である。
本発明の実施形態に係る照明装置40は、図11に示すように、前述した有機EL素子10と、光散乱部材30とを備えている。より具体的には、照明装置40は、有機EL素子10の基板2と光散乱部材30とが接触するように構成されている。
光散乱部材30は、光を散乱できるものであれば特に制限されないが、図11においては、透明基板31に微粒子32が分散した部材とされている。透明基板31としては、例えば、ガラス基板を好適に挙げることができる。微粒子32としては、透明樹脂微粒子を好適に挙げることができる。ガラス基板及び透明樹脂微粒子としては、いずれも、公知のものを使用できる。このような照明装置40は、有機電界発光素子10からの発光が散乱部材30の光入射面30Aに入射されると、入射光を光散乱部材30により散乱させ、散乱光を光出射面30Bから照明光として出射するものである。
【実施例】
【0138】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に制限されるものではない。
【0139】
(合成例)
化合物(2−1)の合成
化合物(2−1)の合成スキームを下記に示す。
【0140】
【化31】

【0141】
化合物(G−1)1.76g、化合物(G−11)10.88g、酸化銅(I)0.14g、化合物(G−4)0.56g、炭酸セシウム16g、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン30mlを3つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下175℃にて一晩反応させた。室温に戻し、酢酸エチル300mlを加えセライトろ過を施し、酢酸エチル/食塩水にて分液操作を施した。酢酸エチル/ヘキサンを溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(G−2)2.71gを得た。
化合物(G−2)2.46g、塩化白金1.41g、m−トルニトリル30mlを3つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下178℃で7時間反応させた。室温に戻し、クロロホルムを溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー、ベンゾニトリルを用いた再結晶及び酢酸エチルを用いた加熱洗浄により精製し、化合物(2−1)570mgを得た。得られた化合物の同定はH−NMRにより行った。400MHz 1H-NMR(dmso-d6) δ:8.93(d,2H)、8.05(t,2H)、7.91(d,2H)、7.57(d,2H)、7.17(d,2H)
【0142】
(実施例1)
−有機薄膜の作製−
イリジウム錯体として化合物(1−1)、白金錯体として化合物(2−1)及びホスト材料として化合物(H−1)を、表1の比率(質量%)となるようにガラス基板上に共蒸着し、膜厚50nmの有機薄膜を作製した。
【0143】
作製した有機薄膜の発光スペクトルを浜松ホトニクス社製量子収率測定装置により測定した。得られた発光スペクトルを図1に示す。また、CIExy座標は、(0.34、0.37)であった。
有機薄膜中と溶液中のイリジウム錯体及び白金錯体の発光極大波長と、発光効率の指標として発光量子収率を以下のように測定した。
(発光極大波長の測定)
作製した有機薄膜と錯体の含有量は変えずに、イリジウム錯体とホスト材料からなる有機薄膜と、白金錯体とホスト材料とからなる有機薄膜をそれぞれ作製し、浜松ホトニクス社製スペクトルアナライザーPMA−11により測定し、各錯体の有機薄膜中での発光極大波長を求めた。また、各錯体をジクロロメタン溶液中に溶解し(錯体濃度0.01mg/ml)、SHIMADU社製分光蛍光光度計RF−5300PCにより、各錯体の溶液中での発光極大波長を求めた。
(発光量子収率Φの測定)
作製した有機薄膜を310nmの励起波長で積分球を用いて浜松ホトニクス社製スペクトルアナライザーPMA−11により測定した(表1中の「有機薄膜のΦ」)。
次に、錯体の含有量は変えずに、イリジウム錯体とホスト材料からなる有機薄膜と、白金錯体とホスト材料とからなる有機薄膜をそれぞれ作製し、上記と同様な方法で測定した(表1中の「Ir錯体のΦ」、「Pt錯体のΦ」)。
発光量子収率が高いほど発光効率が高いことを意味するが、本発明では、以下の基準で評価した。
○:Φが0.7以上
△:Φが0.5以上0.7未満
×:Φが0.5未満
発光極大波長及び発光量子収率Φの測定結果を表1に示す。また、実施例1で用いたイリジウム錯体とホスト材料とからなる有機薄膜(比率は10:90(質量%))を実施例1と同様に作製し、その発光スペクトルを測定した。図5にその発光スペクトルを示す。
【0144】
(実施例2〜15、比較例1〜2)
表1に示すように、イリジウム錯体、白金錯体及びホスト材料の種類及び比率を変えた以外は実施例1と同様にして有機薄膜を作製し、発光極大波長及び発光量子収率Φを測定した。
また、実施例2、5及び6の有機薄膜については、実施例1と同様な方法で発光スペクトルを測定した。得られた発光スペクトルをそれぞれ図2〜4に示す。なお、実施例2の有機薄膜からの発光のCIExy座標は、(0.34、0.38)であった。
更に、実施例2で用いたイリジウム錯体、実施例2及び3で用いた白金錯体については、各錯体と各実施例で用いたホスト材料とからなる有機薄膜(比率は10:90(質量%))を作製し、実施例1と同様な方法で発光スペクトルを測定した。得られた発光スペクトルをそれぞれ図6〜8に示す。
【0145】
下記表1には、各有機薄膜からの発光色も記載した。なお、表1において、有機薄膜中での白金錯体の発光極大波長を範囲で記載している理由は、薄膜作製をする度に僅かではあるもののズレが生じやすいためである。これはPt錯体同士が薄膜中でどの程度接近しているかによって会合する分子の量が変化しうること、あるいは、Ir錯体とPt錯体それぞれの濃度の僅かなズレによって相手の発光スペクトルに重なる分だけ極大波長が変化しうるためと考えられる。
【0146】
【表1】

【0147】
表1の結果から、本発明の有機薄膜は、発光効率が高く、かつ色純度が高い白色発光が得られることが分かる。
【0148】
(実施例16、17、18、19)
実施例9において、白金錯体として化合物(2−2)を用いた以外は、実施例9と同様にして実施例16の有機薄膜を作製した。また、実施例9において、白金錯体として化合物(2−7)を用いた以外は、実施例9と同様にして実施例17の有機薄膜を作製した。また、実施例9において、白金錯体として化合物(2−10)を用いた以外は、実施例9と同様にして実施例18の有機薄膜を作製した。実施例1において、イリジウム錯体として化合物(1−27)を用いたい該は実施例1と同様にして実施例19の有機薄膜を作製した。
実施例16、17、18及び19では、水色〜白色の発光が得られた。
【0149】
実施例1及び2の結果から、本発明の有機薄膜では白色の色純度が高い発光が得られることが分かる。また、実施例1〜15の結果から、幅広い発光色が得られることが分かる。
【0150】
(実施例20)
0.5mm厚み、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極(ITO膜)上に真空蒸着法にて以下の有機層(有機化合物層)を順次蒸着した。
本明細書の実施例における蒸着速度は、特に断りのない場合は0.2nm/秒である。蒸着速度は水晶振動子を用いて測定した。以下に記載の膜厚も水晶振動子を用いて測定したものである。
【0151】
洗浄したITO基板を蒸着装置に入れ、4,4’,4’’−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン (2−TNATA)、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン (F−TCNQ)を99.7:0.3の質量比で120nm共蒸着し、更にこの上にα−NPDを7nm蒸着し、更にこの上に化合物(H−12)を3nm蒸着した。この上に実施例2の有機薄膜と同じ割合で、イリジウム錯体として化合物(1−1)、白金錯体として化合物(2−1)及びホスト材料として化合物(H−14)を30nm共蒸着し(発光層)、更にこの上にBAlqを30nm蒸着した。
得られた有機薄膜上にパターニングしたマスク(発光面積が4mm×5mmとなる)を設置し、フッ化リチウムを1nm蒸着した後アルミニウムを100nm蒸着した。これを大気に触れさせること無く、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、実施例20の有機電界発光素子を作製した。
得られた有機電界発光素子について、東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電圧を素子に印加し発光させたところ、強い白色発光が観測された。
【0152】
実施例2及び実施例20の結果から、実施例1及び実施例3〜19の有機薄膜を含む有機電界発光素子においても有機薄膜と同様の発光色が得られると考えられる。
【0153】
以下に、実施例及び比較例で用いた化合物を示す。
【0154】
【化32】

【0155】
【化33】

【0156】
【化34】

【符号の説明】
【0157】
2・・・基板
3・・・陽極
4・・・正孔注入層
5・・・正孔輸送層
6・・・発光層
7・・・正孔ブロック層
8・・・電子輸送層
9・・・陰極
10・・・有機電界発光素子(有機EL素子)
11・・・有機層
12・・・保護層
14・・・接着層
16・・・封止容器
20・・・発光装置
30・・・光散乱部材
30A・・・光入射面
30B・・・光出射面
32・・・微粒子
40・・・照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イリジウム錯体、白金錯体及びホスト材料を含む有機薄膜であって、
前記有機薄膜中では、前記イリジウム錯体の最短発光極大波長が430nm以上480nm未満で、かつ前記白金錯体の発光極大波長が550nm以上650nm未満であり、
溶液中での前記白金錯体の最短発光極大波長が、溶液中での前記イリジウム錯体の最短発光極大波長より短波長であることを特徴とする有機薄膜。
【請求項2】
前記有機薄膜中での前記イリジウム錯体の最短発光極大波長が430nm以上470nm未満であることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜。
【請求項3】
前記イリジウム錯体が、下記一般式(1)で表されるイリジウム錯体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機薄膜。
【化1】

[一般式(1)中、A11は窒素原子又は炭素原子を表し、A12はN又はCR13を表す。R11〜R13は各々独立に水素原子又は置換基を表す。Q11はA11及びNとともに含窒素ヘテロ環を形成する原子群を表す。(X−Y)は2座のモノアニオン性配位子を表す。nは1〜3の整数を表す。]
【請求項4】
前記白金錯体が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機薄膜。
【化2】

[一般式(2)中、A21及びA22は各々独立に窒素原子又は炭素原子を表す。Q21はA21及びNとともに含窒素ヘテロ環を形成する原子群を表す。Q22はA22及びNとともに含窒素ヘテロ環を形成する原子群を表す。L21はPt及びA21と結合する原子群を表し、L22はPt及びA22と結合する原子群を表す。L23は連結基を表す。]
【請求項5】
前記一般式(2)において、Q21、A21及びNにより形成される含窒素ヘテロ環及びQ22、A22及びNにより形成される含窒素ヘテロ環の少なくとも一方がピラゾール環であることを特徴とする請求項4に記載の有機薄膜。
【請求項6】
前記一般式(2)で表される白金錯体が、下記一般式(3)で表される白金錯体であることを特徴とする請求項5に記載の有機薄膜。
【化3】

[一般式(3)中、R301〜R312は各々独立に水素原子又は置換基を表す。R301とR302、R303とR304、R305〜R308の少なくとも2つ、及びR309〜R312の少なくとも2つは、それぞれ、互いに連結して環を形成してもよい。L31は連結基を表す。]
【請求項7】
一対の電極間に、発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、前記発光層が請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機薄膜である有機電界発光素子。
【請求項8】
請求項7に記載の有機電界発光素子を用いた発光装置。
【請求項9】
請求項7に記載の有機電界発光素子を用いた照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−213915(P2011−213915A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84400(P2010−84400)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】