説明

有機酸で変性された管型反応器製のエチレン/アルキルアクリレートコポリマーの充填化ブレンド

有機酸で変性された管型反応器製のエチレン/アルキルアクリレートコポリマーの充填化および可塑化ブレンドであって、(a)管型反応器で製造された少なくとも1種類のエチレン/アルキルアクリレートコポリマー約1〜約50重量%;(b)プロセスオイル、エポキシ化油、ポリエステル、ポリエーテル、およびポリエーテルエステルからなる群から選択される少なくとも1種類の可塑剤約1〜20重量%;(c)充填剤約40〜約90重量%;(d)炭素原子6〜54個を有する飽和もしくは不飽和モノおよびポリカルボン酸、およびその混合物からなる群から選択される、少なくとも1種類の有機酸または酸誘導体約0.05〜約5重量%;および任意選択的に、(e)粘着付与剤0〜約5重量%;から本質的になる、充填化および可塑化ブレンドが開示されている。これらの組成物を含む音管理シートも開示されている。これらの組成物を含む裏面コーティングを有するカーペット、特に自動車用カーペットも開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性防音組成物に関する。さらに具体的には、本発明は、有機酸で変性された管型反応器製のエチレン/アルキルアクリレートコポリマーの充填化および可塑化ブレンド、ならびに消音シートおよび自動車用カーペットのバッキングの製造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
無機充填剤と合わせられ、かつ例えば有機酸で変性された特定のエチレンコポリマーが、防音壁または消音などの音を管理する目的のために使用されている。一般に、音を最小限に抑える、または管理することができる3つの方法がある。音波は遮断することができ、振動は減衰することができ、または騒音は吸収することができる。これらの種々の方法で音を管理するために、様々な特性を有する物品が必要とされている。
【0003】
米国特許公報(特許文献1)には、エチレンおよび/またはα−オレフィン/ビニルまたはビニリデンインターポリマー、特にエチレン/スチレンインターポリマー、有機酸および充填剤の組成物が開示されている。
【0004】
米国特許公報(特許文献2)には、(特に)不飽和モノもしくはジカルボン酸のエチレン/エステルなどのエチレンインターポリマーを約0〜50重量%;プロセスオイル、エポキシ化油、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルエステルおよびその組み合わせからなる群から選択される可塑剤を0〜20重量%;充填剤を約40〜90重量%;炭素原子6〜54個を有する飽和ポリカルボン酸、炭素原子12〜20個を有する不飽和モノおよびジカルボン酸、脂環式および芳香族カルボン酸、および一価、二価および三価金属塩、前記酸のエステルおよびアミドからなる群から選択される少なくとも1種類の有機酸または酸誘導体を約0.05〜約5.0重量%;ブレンドすることによって得られる充填化熱可塑性組成物が開示されている。
【0005】
米国特許公報(特許文献3)には、(特に)不飽和モノもしくはジカルボン酸のエチレン/エステルなどのエチレンインターポリマー約0〜50重量%;プロセスオイル、エポキシ化油、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルエステルおよびその組み合わせからなる群から選択される可塑剤0〜20重量%;スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの少なくとも1種類の界面活性剤約0.05〜約5.0重量%、および任意選択的に変性樹脂、例えば粘着付与剤および特定のエチレンおよびプロピレンホモおよびコポリマー;をブレンドすることによって得られる同様な充填化熱可塑性組成物が開示されている。
【0006】
これらの特許には、上記の組成物の裏面コーティングを有する消音シートおよびカーペットの形状の上記の組成物も記述されている。
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,319,969号明細書
【特許文献2】米国特許第4,434,258号明細書
【特許文献3】米国特許第4,430,468号明細書
【特許文献4】米国特許第3,350,372号明細書
【特許文献5】米国特許第3,756,996号明細書
【特許文献6】米国特許第5,532,066号明細書
【特許文献7】米国特許第4,191,798号明細書
【特許文献8】米国特許第3,484,405号明細書
【特許文献9】米国特許第4,386,187号明細書
【非特許文献1】リチャード(Richard)T.Chou、ミミ(Mimi)Y、Keating and Lester J.Hughes、「High Flexibility EMA made from High Pressure Tubular Process」、Annual Technical Conference−Society of Plastics Engineers(2002年)、60th(第2巻)、1832−1836、CODEN:ACPED4 ISSN:0272−5223、AN 2002:572809 CAPLUS
【非特許文献2】the Technical Association of the Pulp and Paper Industry(ジョージア州アトランタ(Atlanta,GA))の刊行物
【非特許文献3】TAPPI CA Report #55、1975年2月、p.13−20
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のコポリマーなどの充填化エチレンコポリマーによって得られる消音性をより優れた耐熱性と組み合わせることが望ましい。消音材料が、自動車用途および製造工場において見られる温度などの高温にさらされる用途では、高温での安定性が重要である。
【0009】
管型反応器で製造されるエチレン/アルキルアクリレートおよびエチレン/アルキルメタクリレートコポリマーは、従来のオートクレーブバッチ反応器で製造されるエチレンコポリマーよりも、ポリマー内のコモノマーの不均一性が高く、長鎖の枝分れが少なく、等しいエステルコモノマー含有率での融点が高いことを特徴とする。管型反応器で製造されるエチレン/アルキルアクリレートおよびエチレン/アルキルメタクリレートコポリマーの融点が高い結果として、それらを含有する組成物は、オートクレーブ反応器において製造されたエチレン/アルキルアクリレートおよびエチレンメタクリレートコポリマーを含有する組成物よりも高い耐熱性を有する。
【0010】
本発明の目的は、従来の充填化熱可塑性組成物よりも高い耐熱性を有する充填化熱可塑性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、
(a)管型反応器で製造された少なくとも1種類のエチレン/アルキルアクリレートコポリマー約1〜約50重量%;
(b)プロセスオイル、エポキシ化油、ポリエステル、ポリエーテル、およびポリエーテルエステルからなる群から選択される少なくとも1種類の可塑剤約1〜20重量%;
(c)充填剤約40〜約90重量%;
(d)炭素原子6〜54個を有する飽和もしくは不飽和モノおよびポリカルボン酸、およびその混合物からなる群から選択される、少なくとも1種類の有機酸または酸誘導体約0.05〜約5重量%;および任意選択的に、
(e)粘着付与剤0〜約5重量%から本質的になる充填化熱可塑性組成物であって、
すべての重量%が、成分(a)〜(e)の全重量を基準にしている、組成物を提供する。
【0012】
シートに形成する場合には、本発明による充填化組成物は、騒音を生じさせる振動を止めるのに役立つ。したがって、本発明は、これらの組成物を含む音管理(sound management)(つまり、消音)シートも提供する。本発明はさらに、上記組成物を含む裏面コーティングを有するカーペット、特に自動車用カーペットを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本明細書で使用される「(から)本質的になる」という表現は、指定の成分は必須であるが;認識されている本発明の利点を妨げない他の成分も含ませることができるという意味である。
【0014】
「コポリマー」とは、2種類以上の異なるモノマーを含有するポリマーを意味する。「ジポリマー」および「ターポリマー」という用語は、2つのみの、および3つの異なるモノマーをそれぞれ含有するポリマーを意味する。「様々なモノマーのコポリマー」等の表現は、その単位が様々なモノマーから誘導されるコポリマーを意味する。
【0015】
本明細書で使用される、化学部分における炭素原子数は、Cの記号によって示され、nは前記部分に存在する炭素原子の数を表す。
【0016】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性組成物は、圧力下で加熱した場合に流動することができるポリマー材料である。メルトインデックス(MI)は、温度および圧力の制御条件下にて指定のキャピラリーを通るポリマーの質量流量である。本明細書で報告されるメルトインデックスは、ASTM 1238に従って190℃にて重量2160gを使用して決定され、MIの値はグラム/10分で報告される。
【0017】
本発明において有用な、管型反応器で製造されるエチレン/アルキルアクリレートコポリマーは、エチレンモノマーと、そのアルキル基が炭素原子1〜8個を含有する、少なくとも1種類のアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートコモノマーと、の共重合から誘導される熱可塑性エチレンコポリマーである。さらに具体的には、本発明による、管型反応器で製造されるエチレン/アルキルアクリレートコポリマーは、当技術分野で一般に知られている、オートクレーブで製造される従来のエチレン/アルキルアクリレートと区別される。このように、本発明の目的のために、「管型反応器で製造される」エチレン/アルキルアクリレートコポリマーという用語または表現は、管型反応器における高圧および高温などで製造されるエチレンコポリマーを示し、それぞれのエチレンおよびアルキルアクリレートコモノマーの異なる反応速度論の固有の結果が、管型反応器内の反応流路に沿ってモノマーを意図的に導入することによって軽減されるか、または一部補われる。当技術分野で一般に認識されているように、かかる管型反応器重合技術によって、ポリマー主鎖に沿って高い相対不均一度(コモノマーのよりランダムな分布)を有するコポリマーが製造され、長鎖の枝分れの存在が低減される傾向があり、かつ高圧攪拌オートクレーブ反応器において同じコモノマー比で製造されるコポリマーよりも、融点が高いことを特徴とするコポリマーが製造されるだろう。
【0018】
管型反応器で製造されたエチレン/アルキルアクリレートコポリマーに組み込まれるアルキルアクリレートコモノマーの相対量は、原則的に、全コポリマーに対して数重量%から40重量%程度の量、またはそれ以上の量までと大きく異なる。同様に、アルキル基の選択は再び、原則的に、単純なメチル基から、かなりの枝分れを含有する、または含有しない炭素原子8個のアルキル基まで様々である。アルキルアクリレートエステルコモノマー中に存在するアルキル基の相対量および選択は、得られるエチレンコポリマーが、どのようにかつどの程度まで、充填化熱可塑性組成物中の極性ポリマー成分としてみなされるかを確立するように考察することができる。好ましくは、アルキルアクリレートコモノマー中のアルキル基は炭素原子1〜4個を有し、アルキルアクリレートコモノマーは、管型反応器で製造されるエチレン/アルキルアクリレートコポリマー全体に対して7〜30重量%の濃度範囲を有する。最も好ましくは、メチルアクリレート(最も極性のコモノマーとみなされる)は、管型反応器で製造されるエチレン/メチルアクリレートコポリマー全体に対して20〜30重量%の濃度範囲で使用される;EMA(MA20〜30%)。管型反応器で製造されるこの種のエチレン/アルキルアクリレートコポリマーは、本願特許出願人から商品名エルバロイ(Elvaloy)(登録商標)ACで市販されている。
【0019】
従来のオートクレーブで製造されるコポリマーと比較して、本発明による、管型反応器で製造されるエチレン/アルキルアクリレートコポリマーをさらに例証し、特徴付けるために、関連する融点のデータを有する市販のエチレン/メチルアクリレートコポリマーの以下のリストから、管型反応器製EMA樹脂は、ポリマー鎖に沿ったMA分布が非常に異なることから、オートクレーブ製EMAの融点と比較して、かなり高い融点を有することが示されている。
(オートクレーブで製造されたコポリマー)
ニュージャージー州のエクソン・モービル社(Exxon Mobil,N.J.);EMA(MA21.5重量%)融点=76℃
ニュージャージー州のエクソン・モービル社(Exxon Mobil,N.J.);EMA(MA24重量%)融点=69℃
フランスのアトフィナ社(Atofina,France);EMA(MA20重量%)融点=80℃
フランスのアトフィナ社(Atofina,France);EMA(MA24重量%)融点=73℃
(管型反応器で製造されたコポリマー)
エルバロイ(Elvaloy)(登録商標)AC1125;本願特許出願人のEMA(MA25重量%)融点=88℃
エルバロイ(Elvaloy)(登録商標)AC1820;本願特許出願人のEMA(MA20重量%)融点=95℃。
【0020】
管型反応器で製造されたエチレン/アルキルアクリレートコポリマーとオートクレーブで製造されたエチレン/アルキルアクリレートコポリマーとの違いに関してさらに考察するために、(非特許文献1)を参照のこと。
【0021】
本発明において有用な、管型反応器で製造されたエチレン/メチルアクリレートコポリマーは、特にオートクレーブで製造されたEMAと比較して、数値的にわずか約10までのメルトインデックスを有する管型反応器で製造されたEMAにより証明されるように分子量が著しく異なり、剛性および弾性の著しい向上を示す。使用されるポリマー成分のメルトインデックスグレードの具体的な選択は、比較的低い分子量のEMA(8MIのエルバロイ(Elvaloy)(登録商標)AC1820など)と充填剤をさらに容易にブレンドする実用的能力に対して、高い相対分子量のEMA(0.7MIのエルバロイ(Elvaloy)(登録商標)AC1125など)と関連する向上した弾性回復の発現のバランスをとることによって、影響を受けるだろう。しかしながら、本発明による組成物の剛性および弾性回復は、管型反応器で製造されたEMAがプラストマーのみならず、分類上はエラストマーであるという見解と一致する、広いメルトインデックス範囲にわたって向上することが認められている。
【0022】
一般に、本発明の組成物においてエチレン/アルキルアクリレートコポリマー約5〜約50重量%、好ましくは約8〜約45重量%、最も好ましくは約15〜約40重量%が使用される。当然のことながら、高いパーセンテージの充填剤を含有する組成物は、必要に迫られて、低いパーセンテージのエチレン/アルキルアクリレートコポリマーを含有する。例えば、充填剤76重量%を有する組成物は、約24重量%未満のエチレン/アルキルアクリレートコポリマーを含有するだろう。
【0023】
コモノマー含有率の平均値が上記の範囲内である限り、単一のコポリマーの代わりに、2つ以上のエチレン/アルキルアクリレートコポリマーの混合物を本発明のブレンドに使用することができる。2種類の適切に選択されたエチレン/アルキルアクリレートコポリマーを本発明のブレンドで使用した場合には、特に有用な特性を得ることができる。管型反応器で製造された少なくとも1種類のエチレン/アルキルアクリレートコポリマー(つまり、成分(a))が、2種類の異なるエチレン/メチルアクリレートコポリマーを含む、本発明の組成物に注目すべきである。単一のEMA樹脂グレードのみを含有する組成物と比較して、適切に選択された2種類の異なるEMAコポリマーグレードを充填剤、可塑剤、および有機酸と合わせることによって、充填化組成物の物理的性質の改善を達成することができる。最も注目に値すべきなのは、充填化ブレンドにおける単一のEMAグレードの代わりに、等量の適切に選択された2種類のEMAグレードの混合物を使用することによって、引張伸びを実質的に増加することができ、その混合物は、交換された単一EMAグレードと同じ重量%のメチルアクリレート含有率および同じメルトインデックスを有する。
【0024】
上述の管型反応器EMAの実際の製造は好ましくは、管に沿って反応物コモノマーをさらに導入することによって高圧、高温の管型反応器で行われ、単に攪拌高温および高圧オートクレーブ型反応器で製造されるだけではない。しかしながら、米国特許公報(特許文献4);米国特許公報(特許文献5);および米国特許公報(特許文献6)に教示されるように反応物コモノマーの複数のゾーン導入によってコモノマーの交換が達成される、一連のオートクレーブ反応器で同様なEMA材料を製造することができ、かつ本発明の目的において、これらの高融点の材料自体が同等の管型反応器エチレン/アルキルアクリレートコポリマーであるとみなされることを理解されたい。
【0025】
(可塑剤)
本発明の組成物において有用な可塑剤成分の第1の群は、プロセス油またはプロセスオイルとして知られている。3種類のプロセスオイル:パラフィン系オイル、芳香族オイルおよびナフテン系オイルが知られている。これらのどれも純粋ではなく:グレードは、存在する主要なオイルタイプと一致する。
【0026】
パラフィン系オイルは、ブレンドから「ブリード」する傾向がある。ブリードは通常、望ましくないが、特別な用途において、例えば離型性が評価される型枠において有用であり得る。
【0027】
一方、適切な比で使用した場合には、ナフテン酸および芳香族系オイルはブリードせず、したがって自動車用カーペットの裏面などの使用に好ましい。
【0028】
プロセスオイルは粘度範囲によっても細分される。「軽い」オイルは、100°F(38℃)で100〜500SUS(セイボルト秒)と低い粘度である。「重い」オイルは、100°F(38℃)で6000SUS(セイボルト秒)と高い粘度である。100°F(38℃)で約100〜6000SUSの粘度を有するプロセスオイル、特にナフテン系オイルおよび芳香族オイルが好ましい。
【0029】
本発明の組成物中に存在するプロセスオイルなどの可塑剤の量は、約1〜約20重量%、好ましくは約2〜約15重量%である。最も好ましくは、炭酸カルシウムなどの中密度の充填剤を使用する場合には、プロセスオイルの量は約4〜約10重量であり、硫酸バリウムなどの高密度の充填剤を使用する場合には、プロセスオイルの量は約3〜約10重量である。
【0030】
場合によっては、約2%未満の量でのプロセスオイルの添加はそれほど影響を及ぼさないだろう。約10%を超えるプロセスオイルは、メルトインデックスを急速に上昇させ、ブレンドをかなり軟らかくする。極値では、例えば70%の充填剤、15%を超えるオイル、15%未満のエチレン/アルキルアクリレートにて、存在するエチレン/アルキルアクリレートの量がブレンドに適切な強さを提供するのに適切でないため、オイル含有率はブレンドを圧倒する。
【0031】
プロセスオイルの選択において、選択されるオイルの種類およびその粘度などの他の因子を考慮しなければならない。これらは、米国特許公報(特許文献7)に詳細に記述されている。
【0032】
本発明の実施において有用な可塑剤の第2の群は、エポキシ化ダイズ油およびエポキシ化アマニ油などのエポキシ化油を含む群である。
【0033】
有用な可塑剤の第3の群は、一般に、多塩基酸とポリオールとの液体縮合生成物であるポリエステルである。本発明の文脈における「液体」という用語は、室温で注入可能なことを意味する。酸成分は最も多くは、飽和脂肪族二塩基酸または芳香族二塩基酸;アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸、セバシン酸、およびグルタル酸、またはその混合物である。ポリオールは、脂肪族ポリオールまたはポリオキシアルキレンポリオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−および1,3−ブタングリコール、ジエチレングリコール、およびポリエチレングリコールである。好ましいポリエステル組成物は、その50重量%を超える量が脂肪族二塩基酸である酸成分と、脂肪族ポリオールまたはさらに好ましくは脂肪族グリコールのポリオール成分と、からなるだろう。最も好ましい組成物は、アジピン酸またはアゼライン酸、およびプロピレングリコールまたは1,3−もしくは1,4−ブタングリコールをベースとする。これらの可塑剤の分子量は、下は数百から上は約10,000までと様々である。市販の製品の分子量はまれに明記されている。通常、市場では、製品の分子量範囲は、低分子量、中分子量、または高分子量と分類される。本発明の目的における分子量の好ましい範囲は、中分子量として分類される範囲である。
【0034】
炭化水素オイルとポリエステルとの混合物もまた、本発明において有効な可塑剤である。かかる混合物を使用する1つの目的は、相対的に高いコストのポリエステルの高性能を低コストの炭化水素オイルと結びつけることである。特性をより正確に適応させることができる、または充填剤のレベルを増加することができることから、かかる混合物で可塑化された化合物のコストおよび性能は、所定の用途に対して著しく改善することができる。
【0035】
単独で使用した場合、本発明の組成物中のポリエステル可塑剤の量は、約1〜約15重量%、好ましくは約2〜約12重量%である。
【0036】
ポリエステル可塑剤と炭化水素プロセスオイルとの混合物を用いる場合、2つの成分の相対比率は、性能目的に応じて広い範囲にわたって変動する。50%以下のポリエステルを含有する可塑剤の混合物が経済的理由から好ましく、20%以下のポリエステルを含有する混合物が最も好ましい。
【0037】
ポリエーテルおよびポリエーテルエステルもまた、エチレンコポリマーと上述の充填剤とのブレンドにおける可塑剤として有用である。一般に、ポリエーテル可塑剤は、アルキレンオキシドのオリゴマーまたは低分子量ポリマーであり;エチレンまたはプロピレンオキシドのポリマーが市販されている最も一般的な種類である。これらのポリエーテルは、様々な種類の触媒を使用して、種々の環状エーテルを開環重合することによって、およびアルデヒドを重合することによって、またはアルキレンオキシドだけで酸または塩基触媒重合することによって、または出発アルコール等をアルコキシル化することによって製造することができる。ポリエーテルは、ヒドロキシル基によって終端させて、ジオール(グリコール)を形成することができ、またはアルキレンオキシドとグリセロールとの付加物の場合には、例えばトリオールなどを形成することができる。ヒドロキシ末端ポリエーテルを酸と反応させて、エステルを形成することもできる。ラウリン酸およびステアリン酸などの脂肪酸が一般に使用され;これらの化合物の最も一般的な例は、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールのモノおよびジエステルである。ポリエーテルの分子量は、高重合体で代表的な分子量までの範囲である。
【0038】
本発明の実施において好ましいポリエーテル組成物は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダムおよび/またはブロックコポリマーをベースとするポリオールからなる組成物である。このコポリマーポリオールは、非常に高レベルの充填剤を含有する本発明の組成物において、効率の点からより良い性能を提供する。
【0039】
単独で使用する場合、本発明の組成物におけるポリエーテル可塑剤の量は、約1〜約15重量%、好ましくは約2〜約12重量%である。
【0040】
ポリエーテルまたはポリエーテルエステル可塑剤と、ポリエステル可塑剤または炭化水素プロセスオイルとの混合物も、本発明の実施において使用することができる。ポリエーテル/ポリエステルの組み合わせの利点は、ポリエーテルがポリエステルよりも安価なことから、低コストなことである。ポリエーテルとプロセスオイルとの組み合わせもまた、オイルのコストが低いために、安価である。
【0041】
ポリエーテルとポリエステルとの組み合わせにおける2つの成分の相対比は、特性の要求基準およびコストに基づく系の効率に応じて調節することができる。主にポリエステルをベースとするものは、例えば、主にポリエーテルまたはポリエーテルエステルをベースとするものほど硬くなく、高価である。
【0042】
ポリエーテルまたはポリエーテルエステルと炭化水素オイルとの混合物を使用する場合、用いられる相対比は再び、コストおよび特性の要求基準に応じて異なるだろう。ポリエーテルはプロセスオイルよりも高価であるため、50%以下のポリエーテルを含有する可塑剤混合物が好ましい。
【0043】
上記で言及されるように、一方では、プロセスオイル、エポキシ化油、ポリエステルまたはポリエーテルまたはポリエーテルエステルの混合物、または他方では、そのいずれかの組み合わせを本発明の組成物の可塑剤として使用することもできる。
【0044】
可塑剤の混合物を使用する場合、可塑剤の量は、約2〜約15重量%、好ましくは約4〜約12重量%の範囲である。最も好ましくは、炭酸カルシウムなどの中密度の充填剤を使用する場合、可塑剤の量は約5〜約10重量%であり、硫酸バリウムなどの高密度の充填剤を使用する場合、可塑剤の量は約4〜約8重量%である。
【0045】
プロセスオイルを含有する可塑剤が好ましい。
【0046】
(充填剤)
本発明の第3の必須成分は、密度を変えて消音に影響を及ぼす充填剤である。本発明の組成物中に含有させることができる充填剤のパーセンテージ(重量ベースの)は主に、充填剤の密度の関数である。充填剤の粒径および形もまた、ブレンドの特性に影響するだろう。微粒子サイズの充填剤は一般に、高いブレンド粘度を生じさせる傾向があり、それらはまた高価である。No.9の白亜(約95%が325メッシュを通る)は粗さ(coarseness)、入手可能性(availability)、およびコストの実行可能な中間点を表す。さらに好ましい充填剤は炭酸カルシウムおよび硫酸バリウムであり、最も好ましいのは炭酸カルシウムである。本発明の組成物中に存在する充填剤の量は、約40〜約90重量%、好ましくは約50〜約90重量%である。最も好ましくは、炭酸カルシウムなどの中密度の充填剤を使用する場合、充填剤の量は約50〜約85重量%であり、あるいは約65〜約85重量%であり、硫酸バリウムなどの高密度の充填剤を使用する場合には、充填剤の量は約70〜約90重量%である。
【0047】
(有機酸)
本発明の組成物に用いられる最後の必須成分は、適切な種類の有機酸である。カプロン酸(C)などの一塩基飽和カルボン酸から、ベヘン酸(C22)などの長鎖脂肪酸タイプまでの、広範囲の飽和酸タイプにわたる有機酸が、特に低いパーセンテージの充填剤を有する組成物に対して、非常に低い濃度で伸び率を高め、メルトインデックスを高めるのに有効である。
【0048】
さらに、C12〜C20モノおよびジカルボン酸、特にオレイン酸(一価不飽和C18脂肪酸)を含む一価もしくは多価不飽和有機酸も有効である。
【0049】
上記の酸に加えて、アゼライン酸(式HOOC(CHCOOHのC飽和二塩基酸)などの飽和多塩基酸も有効である。特性の所望のバランスを確保するために、配合者には追加のツールが与えられる。
【0050】
モノマー有機酸に加えて、54個までの炭素原子を有する、いわゆる「二量体」および「三量体」の酸(より単純な直鎖状の二量体および三量体)もまた、特に高い充填剤添加にて非常に有効である。これらの二量体および三量体の酸は、モノマー酸分子のオレフィン結合の1つまたは複数が他のモノマー酸分子のオレフィン結合の1つまたは複数と反応して、非環式、環式、芳香族もしくは多環式二量体および/または三量体を形成する、一価もしくは多価不飽和酸から誘導される。通常、構造体の混合物が生じ、環状付加生成物が優勢である。リノール酸などのC18脂肪酸から誘導される二量体酸(CAS No.61788−89−4)および三量体酸(CAS No.68937−90−6)に特に注目すべきである。二量体化または三量体化後に残る不飽和結合を水素化して、完全飽和二量体(CAS No.68783−41−5)または完全飽和三量体を提供することができる。二量体酸および三量体酸は、商品名ユニダイム(Unidyme)(登録商標)でフロリダ州パナマシティのアリゾナ・ケミカル社(Arizona Chemical Company,Panama City,FL)から入手することができる。
【0051】
本明細書に開示される種類の酸のいずれかの混合物として、上記の酸の混合物を本発明の組成物において用いることができる。商品名ユニダイム(Unidyme)(登録商標)60でフロリダ州パナマシティのアリゾナ・ケミカル社(Arizona Chemical Company,Panama City,FL)から入手される、三量体を少なくとも51%、一般に55%含有する、上述の二量体酸と三量体酸との混合物に特に注目すべきである。
【0052】
有機酸の一価、二価または三価金属塩、特に脂肪酸のカルシウムおよび亜鉛塩は、本発明のプロセスを実施するのに有効である。
【0053】
現存の有機酸の数は膨大であり;上記の例は、良好な結果を有し、かつ本発明の精神から逸脱することのない、他の同様な類似体と置き換えることができる。
【0054】
好ましい有機酸は、二量体および三量体酸を含む、6〜54個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和モノ、ジおよびトリカルボン酸、および前記酸の亜鉛およびカルシウム塩からなる群から選択される。
【0055】
充填剤の量の範囲全体にわたって、好ましい有機酸のいずれかを使用することができるが、充填剤の量の特定の範囲において組成物を製造するために、特定の有機酸が好ましい。例えば、低い量の充填剤、例えば約40〜約65重量%、あるいは約40〜約55重量%の充填剤に関しては、さらに好ましい有機酸は、パルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸、およびこれらの酸の混合物からなる群から選択され、ステアリン酸がさらに好ましい。CaCO50重量%を含み、ステアリン酸を含有する本発明の組成物に特に注目すべきである。
【0056】
パルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸、およびこれらの酸の混合物からなる群から選択される有機酸を含有し、CaCO約65〜約90重量%、あるいは約55〜約90重量%の充填剤の量を含む、本発明の組成物に注目すべきである。ステアリン酸を含有し、CaCO76重量%を含む、本発明の組成物にも注目すべきである。
【0057】
より高い量の充填剤、例えば約65〜約90重量%、あるいは約55〜約90重量%の充填剤に関しては、さらに好ましい有機酸は、二量体および三量体酸、およびこれらの酸の混合物からなる群から選択される。CaCO約65〜約90重量%、あるいは約55〜約90重量%を含み、二量体および三量体酸、およびこれらの酸の混合物からなる群から選択される有機酸を含有する、本発明の組成物に注目すべきである。CaCO76重量%を含み、二量体および三量体酸、およびこれらの酸の混合物からなる群から選択される有機酸を含む、本発明の組成物に特に注目すべきであり、特にその二量体および三量体酸はリノール(C18)酸から誘導される。
【0058】
CaCO約40〜約65重量%、あるいは約40〜約55重量%の充填剤の量を含み、二量体および三量体酸、およびこれらの酸の混合物からなる群から選択される有機酸を含有する、本発明の組成物に注目すべきである。
【0059】
本発明の組成物における、記載のタイプの有機酸の使用において、その量は、約0.05〜約5重量%、好ましくは約0.1〜約2%である。最も好ましくは、脂肪酸または二量体もしくは三量体酸を使用する場合、その量は約0.12%〜約0.65%である。
【0060】
上記で言及されるもの以外のポリマー、ホモポリマーとコポリマーの両方を、本発明により得られる利点を著しく妨げることなく、上記のポリマーと組み合わせて、ある程度まで使用することもできる。これらとしては、限定されないが、エチレン/一酸化炭素およびエチレン/二酸化硫黄などのポリマーが挙げられる。同様に、コストの低減、または物理的性質の向上などの所望の効果を得るために、配合者によって、他の成分も本発明の組成物に添加することができる。したがって、特にホットメルトにおいて広く使用されている、増量剤樹脂、ワックス、発泡剤、架橋剤、酸化防止剤等を本発明の組成物に含有させることができる。いくつかの具体的な添加剤および潜在的に望ましい樹脂成分の実例となる例が以下に示される。
【0061】
上述の基本的なブレンドは本質的に、周囲温度で表面粘着性がない。「ブリード」タイプのパラフィン系オイルで製造したとしても、周囲温度での最終的なシートは、さわるとつるつるしているが、粘着性ではない。(当然のことながら、温度が200°Fから250°Fのレベルに高くなるにしたがって、ブレンドは徐々に軟化し、多くの基材によく付着するだろう)。時折、配合者はおそらく、向上した表面粘着性または接着性を有するシーティングを製造したいだろう。これは、配合物に粘着付与剤を組み込むことによって、本発明に記載のブレンドで行うことができる。その粘着付与剤は、米国特許公報(特許文献8)に記載のような、当技術分野で一般的に知られている適切な粘着付与剤であることができる。かかる粘着付与剤は、様々な天然および合成樹脂およびロジン材料を含む。使用することができる樹脂は、液体、半固体ないし固体であり、明確な融点を持たず、結晶化する傾向のない有機化合物の混合物の形を一般にとる複合非晶質物質である。かかる樹脂は水に不溶性であり、植物または動物由来の樹脂であるか、合成樹脂である。この樹脂は、組成物の相当な、かつ向上した粘着性を提供することができる。適切な粘着付与剤としては、必ずしも限定されないが、以下に記述される樹脂が挙げられる。
【0062】
本発明の組成物に粘着付与剤として使用することができる、樹脂成分の1つの種類は、パラ−クマロン−インデン樹脂などのクマロン−インデン樹脂である。一般に、使用することができるクマロン−インデン樹脂は、約500〜約5,000の範囲の分子量を有する。市販されているこの種類の樹脂の例としては、「ピッコ(Picco)」−25および「ピッコ(Picco)」−100として市販されている材料が挙げられる。
【0063】
本発明で有用な粘着付与剤として使用することができる他の種類の樹脂は、スチレン化テルペンも含むテルペン樹脂である。これらのテルペン樹脂は、約600〜6,000の分子量範囲を有する。市販されている一般的なこの種類の樹脂は、「ピコライト(Piccolyte)」S−100として、水素化ロジンのグリセロールエステルである「ステイベライト・エステル(Staybelite Ester)」#10として、ポリテルペン樹脂である「ウィングタック(Wingtack)」95として販売されている。
【0064】
粘着付与剤として使用することができる第3の種類の樹脂は、約500〜約5,000の範囲の分子量を有するブタジエン−スチレン樹脂である。この種類の一般的な市販の製品は、分子量約2,500を有する液体ブタジエン−スチレンコポリマー樹脂の「ブトン(Buton)」100として販売されている。粘着付与剤として使用することができる第4の種類の樹脂は、約500〜約5,000の範囲の分子量を有するポリブタジエン樹脂である。この種類の市販の製品は、分子量約2,000〜約2,500を有する液体ポリブタジエン樹脂の「ブトン(Buton)」150として市販されている。
【0065】
粘着付与剤として使用することができる第5の種類の樹脂は、石油の精製で得られる選択留分の触媒重合によって製造され、かつ分子量範囲約500〜約5,000を有する、いわゆる炭化水素樹脂である。かかる樹脂の例は、「ピコペイル(Piccopale)」−100として、「アモコ(Amoco)」および「ベルシコール(Velsicol)」樹脂として市販されている樹脂である。同様に、イソブチレンの重合から得られるポリブテンが粘着付与剤として含まれる。
【0066】
粘着付与剤は、ロジン材料、低分子量スチレン硬質樹脂、例えば「ピコラスティック(Piccolastic)」A−75として市販されている材料、不均化ペンタエリトリトールエステル、および「ベルシコール(Velsicol)」WX−1232として市販されている種類の芳香族モノマー系と脂肪族モノマー系とのコポリマーも含む。本発明で使用されるロジンは、ガムロジン、ウッドロジンまたはトール油ロジンであるが、好ましくはトール油ロジンである。二量化ロジン、水素化ロジン、不均化ロジン、またはロジンのエステルなどのロジン材料は、変性ロジンでもある。アルコール基2〜6個を含有する多価アルコールでロジンをエステル化することによって、エステルを製造することができる。
【0067】
本発明で使用することができる粘着付与剤のさらに網羅的なリストが、(非特許文献2)を含めて、(非特許文献3)に記載されており、200種をはるかに超える市販の粘着付与剤樹脂が列挙されている。
【0068】
使用時に、配合者は一般に、互いに相溶性であるエチレンベースのコポリマーおよび粘着付与剤樹脂を選択したいだろう;相溶性を示す化学的類似性をガイダンスに使用することができる。超熱間粘着性(super−hot−tack)、急速粘着性(quick−stick)ブレンドなどの2〜3の非常に特殊な用途では、配合者は、不相溶性の系を使用するようにうまく選ぶことができる。最後に、異常につるつるした表面が望まれるような場合には、逆の効果が求められ、アーミッド(Armid)Oなどのスリップ剤を少量、組み込むことによって有益であることが分かる。
【0069】
粘着付与剤樹脂の使用において、本発明の組成物に使用される量はブレンドに対して0〜約5重量%である。
【0070】
上記の教示では、「個々の成分」ベースでいくつかの可能性のある異なるポリマー成分が論じられており、多種多様な樹脂またはポリマータイプからの可能性のある寄与を略述している。例えば配合者が、接着力のために、管型反応器で製造されたEMAの一部を少量の粘着付与剤と交換することによって、単なる4成分組成物(つまり、管型反応器で製造されたEMA/オイル/充填剤/脂肪酸)を変性するように選択することができるように、当然のことながら、上記のタイプのポリマー成分が混合されることを強調しなければならない。さらに、オイルの一部をポリエステルまたはポリエーテル型添加剤と交換して、低い総量の可塑剤を用いて非常に有効な可塑化を得ることができる。このように、熟練した配合者にとって利用可能な、可能性のある組み合わせおよび順序は無限であり、まだ本発明の精神および意図内である。
【0071】
本発明のブレンドは本質的に熱可塑性であり、したがって加工後に再利用することができる。再利用される材料は、完成品(例えば、裏面がコートされた自動車用カーペット)の製造中に得られるトリミング屑(trim)に存在する紡織繊維、ジュート等も含有することができる。
【0072】
成分(a)が、2つの異なるエチレン/メチルアクリレートコポリマーを含み;成分(b)の可塑剤がプロセスオイルであり;成分(c)の充填剤が炭酸カルシウムであり;成分(d)の有機酸が、二量体および三量体酸を含む、炭素原子6〜54個を有する飽和もしくは不飽和モノ、ジおよびトリカルボン酸、およびその混合物からなる群から選択される、本発明の組成物が好ましい。
【0073】
前記炭酸カルシウムが約40〜約65重量%の量で存在し、かつ前記有機酸がパルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸、およびその混合物からなる群から選択される、上記の好ましい組成物が好ましい。CaCO50重量%を含み、有機酸がステアリン酸である組成物がさらに好ましい。
【0074】
前記炭酸カルシウムが約65〜約90重量%の量で存在し、前記有機酸が、二量体および三量体酸、およびこれらの酸の混合物からなる群から選択される、上記の好ましい組成物もまた好ましい。CaCO76重量%を含み、前記二量体および三量体酸がリノール(C18)酸から誘導される組成物がさらに好ましい。
【0075】
本発明の組成物は、ポリマー材料中で使用される従来の添加剤などの他の任意の添加剤、例えば、着色剤または充填剤として使用されるカーボンブラック;白化剤または充填剤として使用される二酸化チタン;他の顔料;染料;任意の増白剤;界面活性剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤、および加水分解安定剤などの安定剤;帯電防止剤;難燃剤;潤滑剤;ガラス繊維およびフレークなどの補強剤;粘着防止剤;剥離剤;加工助剤;および/またはその混合物を含むことができる。
【0076】
工業的サイズのバッチ式バンバリーミキサーまたは同等な強力ミキサーが本発明の組成物を製造するのに適している。ファレル(Farrel)連続ミキサー(「FCM」)も適切な混合装置である。どちらの場合でも、通常の方法で乾燥成分が装入される。大部分の場合には、この種類の装置で広く用いられている方法に従って、いずれかのユニットの混合チャンバ中に直接、可塑剤成分を注入するのが簡便である。1種類を超える可塑剤を使用する場合、および可塑剤のうちのいずれか1種類が少量で(可塑剤混合物全体の約10重量%未満)存在する場合、可塑剤は、充填化組成物で使用される他の成分に添加する前にブレンドすべきである。これによって、最終組成物における各可塑剤成分の均一な分布が促進され、その結果、最適な特性が確実に得られる。同様に、使用される有機酸の量が一般に、非常に少量(多くの場合には1%未満)であることから、有機酸を最終ブレンドに完全に混合することを確実にすることが重要である。これが行われないと、物理的性質の値が非常に不安定となる。このように、他の成分のうちの1種類の一部に有機酸をプレミックスすることは、しばしば有用であることが判明しており、例えば液体有機酸をプロセスオイルとプレミックスするか、または固体有機酸を充填剤のアリコートとプレミックスすることができる。所望の場合には、コポリマーおよび可塑剤を適切な強力混合装置(例えば、バンバリーミキサーまたはスクリュー押出機)において「マスターバッチ」として予め配合することができる。次いで、この「マスターバッチ」を充填剤および他の残りの成分と配合して、最終組成物を製造することができる。バンバリーミキサーに関しては、一般に範囲約325°F〜約375°Fの操作温度で、約3分の混合サイクルが一般に適している。FCMユニットの操作速度は、コネチカット州アンソニアのファレル社(Farrel Company,Ansonia,Conn)により作製された文献によって予想される範囲内に収まるだろう。ここで、一般に範囲約325°F〜約425°Fの温度が有効である。どちらの場合にも、可塑剤のレベルが非常に低い、例えば約2〜3%であると、高い温度が必要であり、可塑剤のレベルが約7%を超えると、低いミキサー温度でもよく混合される。評価されていないが、粘性の混合物(MI0.1〜20)を扱う他の装置は、完全に満足が行くものと考えられる。
【0077】
一般に、最終混合物が完全に溶融され、均質性が得られるということを前提にして、成分を添加する順序の変更は重要でないことが見出されている。
【0078】
ブレンドが混合されると、水中メルト切断+乾燥またはシーティング+細断(chopping)法などの通常の工業的方法を使用して、ペレット状の最終組成物が製造される。代替方法としては、熱い混合物を直ちに、最終形状、例えばシーティング、成形品に製造することもできる。
【0079】
本明細書に記載の高充填化組成物は、当業者によく知られている標準製法を使用することによって、工業的に最終シート、フィルムまたは立体の固体形状に加工することができる。このように、押出し成形、圧延、射出または回転成形、押出しコーティング、シート積層、シート熱成形等の製造法は、本発明の組成物を形成するための実際的なすべての手段である。
【0080】
シート物品は通常、一段階で押出し成形され、例えば米国特許公報(特許文献9)に記載のように熱成形にかけられる場合が多い。フィルム物品は、押出し成形および熱成形によって製造することができるが、流延またはフィルムブロー成形によっても製造することができる。ブロー成形フィルムには、コポリマーのみ、または組成物のポリマー成分に対する比較的均一に混合されたコポリマー−ポリマーブレンドが必要であり、別々の段階で製造することが好ましい。
【0081】
本発明のブレンドは、自動車用カーペット、フォーム、布またはスクリム材料などの基材上に容易に押出し成形することができ、または裏なしフィルムまたはシートとして押出し成形または圧延することができる。使用する装置および用いる配合技術に応じて、20ミル未満から100ミルを超える、広い範囲のフィルム厚を押出し成形することが可能である。したがって、このことは、この産業界に、フィルム厚、ブレンドの濃度、充填剤添加とバインダーとの比を変化させることによって、および当技術分野でよく知られている同様な技術によって得られる消音の量を変える可能性を提供する。
【0082】
音管理物品として、高充填化組成物は、自動車および他の用途の消音構成要素において有用である。これらのブレンドが物理的性質を容認できないほど低下させることなく結合することができる充填剤のレベルは、特に高温で、他の多くのポリマーよりも著しく高い。
【0083】
防音壁層用途で用いられる場合、本発明の組成物は、フォームまたは繊維状フェルトの分断層(decoupling layer)と組み合わせて使用される場合が多い。本発明の組成物の高密度はそれ自体で、音波振動の伝達に対するバリアーとして作用する。さらに、分断層(前記高密度バリアー層と組み合わせて)を使用することによって、バリアー層を通って音波振動が基材から直接伝達するのが防止される。防音壁層は通常、密度1.5〜2.6g/cmを有する。本発明の防音壁組成物は、熱成形前に圧延または押出し成形してシートを形成し、それが適用される車両、器具または他の構造の輪郭に適合させることができる。次いで、バリアー層にフォームまたは繊維層を積層することができ、カーペットまたは他の装飾層が重ねられる場合も多い。基材は、音管理が必要とされる物品を構成する材料であり、一般に、金属、プラスチック、ガラス、天然繊維、合成繊維、および木材から選択される1種または複数の材料を含む。
【0084】
おそらく、本発明の組成物は主に、特に低コストの高密度消音構造のシーティング分野で使用される。本発明の組成物から、押出し成形シーティングの向上した「風合い」、「持ち味」、低減された剛性、高い伸び、低減された厚さおよび特に向上した耐熱性、優れた熱安定性などの顕著な特性が得られる。
【0085】
本発明の充填化熱可塑性組成物は、限定されないが、自動車、オートバイ、バス、トラクター、列車、電車、飛行機等の輸送系を含む消音用途において成形可能な防音壁として使用される押出し成形シートなどの多くの音管理用途を有する。本発明の組成物を含む消音シートは様々な方法で使用される。
【0086】
自動車用カーペットに適用される場合には、記載のブレンドは、音を消すのに有効かつ経済的な手段であるが、同時にカーペットの成形可能な支持材としての役割も果たす。カーペット、特に自動車用カーペットにおける本発明の組成物の適用は本質的に、米国特許公報(特許文献7)に既に記載されている方法と同じである。
【0087】
シート状で使用される場合、特に布上にコーティングされる場合には、そのブレンドは、自動車、トラック、バス等の他の領域、例えばサイドパネル、ドアパネル、屋根材領域、ヘッドライナーおよびダッシュインシュレータに取り付けることができる。本発明の組成物は、自動車ドアおよびトラックライナー、後部座席のストレーナー、スペアタイヤカバー、カーペットの下敷、ダッシュマット、消音自動車封入物(sound damped automotive enclosure)、例えばオイルパン、ディスクブレーキパッド、マフラー等で使用することもできる。
【0088】
シート状では、高充填化ブレンドをドレープまたは掛け物(hanging)として使用して、織機、前記のプレス、コンベヤーベルトおよび材料移動システム等の工場装置の騒音のある部分を遮蔽し、または囲むことができる。
【0089】
本発明の組成物は、食器洗い機、冷蔵庫、空気調和装置等;家庭用品、例えばミキサー、電動工具、電気掃除機等;芝および庭用の器具、例えばリーフブロワー、スノーブロワー、芝刈機等;船外モーター、ウォータージェット水上バイク等のボート用途で使用される小さなエンジン;を含む、小さなおよび大きな器具での消音に使用することができる。その他の用途としては、ドラム、拡声器システム、音響抑制ディスクドライブシステム等の音を修飾するための装置が挙げられる。
【0090】
建築および建築産業において、本発明の組成物は、壁紙/カバー、複合音壁(composite sound wall)、熱成形可能な吸音マット組成物、振動減衰拘束層構造、および成形可能な遮音カーペットとして使用される。積層シート状では、他の材料と面したブレンドを使用して、装飾的使用および開放レイアウトのオフィスにおける仕切りパネルなどの機能的用途のどちらも達成することができる。
【0091】
好ましい消音シートおよび好ましいカーペットは、上述の好ましい組成物を含む。
【0092】
他の使用も可能である。本発明のブレンドの利点は、充填剤をポリマーに添加した場合に通常低減する、たわみ性および靱性などの特定の物理的性質を、広範囲の充填剤濃度にわたって有用な限界内で維持することができることである。上記のように、管型反応器で製造されるエチレン/アルキルアクリレートコポリマーにより得られる向上した耐熱性およびより良い熱安定性は特に有利である。したがって、本発明のブレンドは、様々な電子、電気通信領域および同様な領域におけるワイヤーおよびケーブル部品の製造において、様々な成形品、シーラントおよびコーキング材の製造において、または低コストの充填剤を組み込むことによって通常達成される経済性と共に、たわみ性、靱性および耐熱性およびより良い熱安定性が望まれる他の用途において使用することができる。
【0093】
以下の実施例は、本発明の種々の態様および特徴をさらに完全に実証するため、およびさらに説明するために示される。以下の提示自体は、本発明の違いおよび利点をさらに説明することを意図するものであり、過度に限定することを意味するものではない。
【実施例】
【0094】
(実施例の一般手順)
以下の実施例は、本発明を例証するために示される。すべての部およびパーセンテージは別段の指定がない限り重量による。
【0095】
すべての実施例において、その成分は、1ガロン(約3.8リットル)缶において内容物を手で約0.5分間振盪することによってプレミックスされた。(液体脂肪酸を使用する場合、迅速に均質性を達成することを確実にするために、その液体を1ガロン缶に添加する前に、非常に少量の酸をかなり大量の液体可塑剤と別々に、プレミックスすることが好ましい場合が多い)。次いで、成分をバンバリー型の実験室サイズ強力高せん断ミキサーに添加した。使用した混合条件は、温度範囲約325°F〜約375°F(約160℃〜約190℃)にて3分間、変化していた。
【0096】
(実施例の試験基準)
ASTM D−1238に従って、重量2160グラムを使用して、190℃にてメルトインデックス(MI)を測定し、MIの値はグラム/10分で報告した。密度はASTM D−792に従って決定した。DSC融点(m.p.)はASTM D−3418に従って決定した。ビカー軟化点は、ASTM D−1525に従って決定した。ショアA硬度は、ASTM D−2240に従って決定した。
【0097】
さらに詳述することなく、先の説明を参照すれば、当業者であれば、本発明を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の実施例は、単に例示的なものとして解釈すべきであり、その開示内容を全く限定するものではない。
【0098】
(実施例および比較例)
(使用した材料)
EMA−1:MI2.0、密度944kg/m、融点91℃、およびビカー軟化点48℃を有する、管型反応器で製造されたエチレン/24%メチルアクリレートコポリマー。
EMA−2:MI8.0、密度942kg/m、融点92℃、およびビカー軟化点54℃を有する、管型反応器で製造されたエチレン/20%メチルアクリレートコポリマー。
EMA−3:MI2.0、密度840kg/m、融点94℃、およびビカー軟化点60℃を有する、管型反応器で製造されたエチレン/18%メチルアクリレートコポリマー。
ステアリン酸(オクタデカン酸)、モノカルボン酸、CH(CH16−COOH、分子量284.49、密度0.94g/cm、融点70℃、クロンプトン社(Crompton Corporation)から商品名インダストレン(Industrene)(登録商標)Bで市販されている商用グレード。
二量体/三量体酸のブレンド、上述のようにユニダイム(Unidyme)(登録商標)60でフロリダ州パナマシティのアリゾナ・ケミカル社(Arizona Chemical Company,PanamaCity,FL)から入手され、三量体酸を少なくとも51%、一般に55%含有する(ガスクロマトグラフィーで測定)。
D3000オイル、エルゴン社(Ergon)から市販されている、210°FでのSUS粘度=128(セイボルト秒)、引火点=510°F、初期沸点=830°Fおよびフォード曇り値(Ford Fog Value)=80%を有する、ナフテン系プロセスオイル。
BLK CON、商品名ポリワン(PolyOne)(登録商標)2447で市販されている、着色剤として使用され、ポリエチレン中に分散されたカーボンブラック。
CaCO、充填剤、分子量100.9、密度2.93g/cm、分解温度約825℃、商用グレード。
【0099】
【表1】

【0100】
比較例C1は、代表的な市販の充填化熱可塑性組成物の特性を例証するために含まれる。これは、50%CaCO−充填化エチレン/酢酸ビニルのブレンドである。
EVA−1:MI43、密度0.957g/cm、ビカー軟化点36℃を有するエチレン/33%酢酸ビニル。
EVA−2:MI6、密度0.955g/cm、ビカー軟化点46℃を有するエチレン/28%酢酸ビニル。
【0101】
【表2】

【0102】
【表3】

【0103】
表2にまとめられた特性を調べると、管型反応器で製造されたエチレン/アルキルアクリレートを使用することによって、高い耐熱性(85℃を超える融点)を有する充填化組成物が得られることが示されている。実施例1は優れた伸びを示している。実施例3は、二量体/三量体酸のブレンドを使用することによって、高充填化組成物に優れた伸びおよび良好なたわみ性が得られることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)管型反応器で製造された少なくとも1種類のエチレン/アルキルアクリレートコポリマー約1〜約50重量%;
(b)プロセスオイル、エポキシ化油、ポリエステル、ポリエーテル、およびポリエーテルエステルからなる群から選択される少なくとも1種類の可塑剤約1〜20重量%;
(c)充填剤約40〜約90重量%;
(d)炭素原子6〜54個を有する飽和もしくは不飽和モノおよびポリカルボン酸、およびその混合物からなる群から選択される、少なくとも1種類の有機酸または酸誘導体約0.05〜約5重量%;および任意選択的に、
(e)粘着付与剤0〜約5重量%から本質的になる充填化熱可塑性組成物であって、
すべての重量%が、成分(a)〜(e)の全重量を基準にしていることを特徴とする充填化熱可塑性組成物。
【請求項2】
前記アルキルアクリレートにおけるアルキル基が炭素原子1〜4個を有し、かつ前記アルキルアクリレートが、管型反応器で製造されたエチレン/アルキルアクリレートコポリマー全体に対して7〜30重量%の濃度範囲を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルキルアクリレートがメチルアクリレートであり、管型反応器で製造されたエチレン/メチルアクリレートコポリマー全体に対して20〜30重量%の濃度範囲で用いられることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
成分(a)が2種類の異なるエチレン/メチルアクリレートコポリマーを含むことを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記可塑剤がプロセスオイルを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
成分(a)が2種類の異なるエチレン/メチルアクリレートコポリマーを含み;成分(b)の前記可塑剤がプロセスオイルであり;成分(c)の前記充填剤が炭酸カルシウムであり;成分(d)の有機酸が、二量体および三量体酸を含む、炭素原子6〜54個を有する飽和もしくは不飽和モノ、ジおよびトリカルボン酸、およびその混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記炭酸カルシウムが約40〜約65重量%の量で存在し、かつ前記有機酸が、パルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸、およびその混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
CaCOを50重量%含有し、かつ前記有機酸がステアリン酸であることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記炭酸カルシウムが約65〜約90重量%の量で存在し、かつ前記有機酸が、二量体および三量体酸、およびこれらの酸の混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
CaCOを76重量%含有し、かつ前記二量体および三量体酸がリノール(C18)酸から誘導されることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物を含むことを特徴とする消音シート。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物を含む裏面コーティングを有することを特徴とするカーペット。

【公表番号】特表2007−521370(P2007−521370A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517731(P2006−517731)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/020711
【国際公開番号】WO2005/003225
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】