説明

有機酸臭除去フィルター

【課題】体臭や汗臭、あるいはペット臭、すなわちイソ吉草酸、酪酸、酢酸等の有機酸臭に大きな消臭効果があって、しかも圧力損失が低く、耐久性能の優れた有機酸臭除去フィルターを提供する
【解決手段】発泡剤によって発泡したバインダー樹脂を介して不織布に水酸化金属を固着させ、JIS B9908規格で測定した圧力損失が、フィルターの通過風速が1.0m/秒の条件下で、フィルターの厚さ1cm当たり3〜30Paとすることで、タバコ臭に大きな消臭効果があって、しかも圧力損失が低く、耐久性能の優れたイソ吉草酸、酪酸、酢酸等の有機酸臭除去フィルターが得られることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用または業務用のエアコン、空気清浄機等のフィルターや、あるいは車などにおける車室内のいやな臭いを取り除くフィルター等として使用し、特に人から発生する体臭や汗臭、あるいはペット臭、すなわちイソ吉草酸、酪酸、酢酸等を効率的に吸着浄化するフィルターに関する技術である。
【背景技術】
【0002】
消臭フィルターは、様々な用途に利用されており、その消臭方法は大きく分類して活性炭やゼオライト等の吸着材を利用した吸着タイプと、オゾンや光触媒、金属フタロシアニン錯体等により悪臭物質を分解除去する触媒タイプ、あるいはこの吸着タイプと触媒タイプを併用した併用タイプに分けられる。このうち例えば、活性炭の優れた吸着作用を利用した技術がよく知られているが、これらは悪臭成分を吸着し、周辺の臭気濃度を短期的に低下させる働きには優れている。
【0003】
また、悪臭として一般に家庭で飼育している小動物、例えば犬、猫、ハムスター、小鳥などに起因するペット臭を取り除きたいという根強い要望もある。従来より引用文献1に記載の消臭組成物が知られている。これは、植物抽出物(例えば、カタバミ、ドクダミ、ツガ等)を配合した消臭手段と界面活性剤とを含有した消臭洗浄剤組成物である。
【0004】
なお、出願人は特許文献2を出願しており、高いpH環境にした第1消臭フィルターと、低いpH環境にした第2消臭フィルターとを備え、前記第1消臭フィルターは、活性炭混抄紙に金属フタロシアニン錯体とヒドラジン誘導体を担持させたものからなる消臭フィルターで、前記第2消臭フィルターは、活性炭混抄紙に金属フタロシアニン錯体を担持させたものからなる消臭フィルターであって、塩基性臭と酸性臭を同時に効率よく吸着分解し、中でもたばこ臭に大きな消臭性能を有するものを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−105385号公報
【特許文献2】特開2007−229092号公報
【0006】
上記技術は、吸着体と触媒を組み合わせたもので、吸着体に吸着された悪臭を、触媒により分解し脱臭する方法で、効率的に消臭するフィルターであるが、特に人から発生する体臭や汗臭、あるいはペット臭、すなわちイソ吉草酸、酪酸、酢酸等の有機酸臭に大きな消臭効果があって、しかも圧力損失が低く、さらに消臭耐久性のよい有機酸臭除去フィルターが求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、特に体臭や汗臭、あるいはペット臭、すなわちイソ吉草酸、酪酸、酢酸等の有機酸臭に大きな消臭効果があって、しかも圧力損失が低く、耐久性能の優れた有機酸臭除去フィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]発泡剤によって発泡したバインダー樹脂を介して不織布に水酸化金属を固着させ、JIS B9908規格で測定した圧力損失が、フィルターの通過風速が1.0m/秒の条件下で、フィルターの厚さ1cm当たり3〜30Paであることに特徴のある有機酸臭除去フィルター。
【0009】
[2]前記不織布がケミカルボンド不織布であり、前記バインダー樹脂がウレタン系樹脂である前項1に記載の有機酸臭除去フィルター。
【0010】
[3]前記発泡剤がアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩である前項1または2に記載の有機酸臭除去フィルター。
【0011】
[4]前記不織布に水酸化金属を20〜300g/m固着させた前項1〜3のいずれか1項に記載の有機酸臭除去フィルター。
【0012】
[5]有機酸臭除去フィルターの厚さが1〜10mmである前項1〜4のいずれか1項に記載の有機酸臭除去フィルター。
【発明の効果】
【0013】
[1]の発明では、不織布の通気性を生かしながら、発泡剤によって発泡したバインダー樹脂を介して不織布に水酸化金属を固着させることができる。前記不織布に水酸化金属が固着されているので、イソ吉草酸、酪酸、酢酸等の有機酸臭を水酸化金属との化学反応によって消臭することができる。また、発泡剤によって発泡したバインダー樹脂を介して前記不織布に水酸化金属を強力に固着させているので、消臭性能を持続することができる。さらに、JIS B9908規格で測定した圧力損失が、フィルターの通過風速が1.0m/秒の条件下で、フィルターの厚さ1cm当たり3〜30Paであるので例えば、室内に存在する悪臭、特に体臭や汗臭、あるいはペット臭、すなわちイソ吉草酸、酪酸、酢酸等の有機酸臭を素早く消臭することができる。
【0014】
[2]の発明では、前記不織布がケミカルボンド不織布であるので、発泡剤によって発泡したバインダー樹脂を介して水酸化金属を固着させても通気性の低下を抑制することができる。また、前記バインダー樹脂がウレタン系樹脂であるので、強固に固着することができ、消臭効果の耐久性に優れた有機酸臭除去フィルターを提供できる。
【0015】
[3]の発明では、前記発泡剤がアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩であるので、バインダー樹脂を均一に発泡することができ、しかも安定した発泡状態とすることができるので、前記不織布に水酸化金属を十分均一に固着することができ、しかも通気性の低下を抑制することができる。
【0016】
[4]の発明では、前記不織布に水酸化金属を20〜300g/m固着しているので、特に体臭や汗臭、あるいはペット臭、すなわちイソ吉草酸、酪酸、酢酸等の有機酸臭を十分消臭できる。
【0017】
[5]の発明では、有機酸臭除去フィルターの厚さが1〜10mmであるので、消臭性能を確保しながらかさばらず省スペースであり、しかも圧力損失が抑制された有機酸臭除去フィルターを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の有機酸臭除去フィルターは、特に体臭や汗臭、家庭で小動物、例えば犬、猫、ハムスター、小鳥等を飼育する場合には、小動物に起因するペット臭、すなわちイソ吉草酸、酪酸、酢酸等の有機酸臭に対して特に有効で、効率的に吸着浄化することができ、しかも耐久性に優れた有機酸臭除去フィルターである。
【0019】
本発明の水酸化金属としては、例えば水酸化ジルコニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第一鉄、水酸化銅などの水酸化金属を挙げられるが、これら例示のものに特に限定されるものではない。これら水酸化金属は、有機酸臭の分解に優れた効果を発揮する。
【0020】
本発明の有機酸臭除去フィルターの不織布は、特に限定されることなくどのようなものも使用でき、例えばケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、ウォーターニードル不織布、スパンボンド不織布などが用いられ、不織布の素材は、特に限定されるものではなく、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維等の合成繊維、あるいは、麻、綿、羊毛等の天然繊維等の繊維から構成されるが、圧力損失の観点からは、ケミカルボンド不織布が好ましく、不織布の素材は耐久性の点で合成繊維からなるのが好ましい。
【0021】
前記不織布の厚さは、1〜10mmであるのが好ましい。1mm未満では、水酸化金属の固着量を確保するのが難しくなるので、十分な消臭性能が得られなくなる。10mmを超えると十分な空気の通過量を確保することが難しくなり、消臭性能の低下を招くおそれがあり、またコスト的にも好ましくない。
【0022】
前記不織布の見掛け密度は0.01〜0.1g/cmであるのが好ましい。0.01g/cm未満では、水酸化金属の固着量を確保するのが難しくなるので、十分な消臭性能が得られなくなる。0.1g/cmを超えると十分な空気の通過量を確保することが難しくなり、消臭性能の低下を招くおそれがあり、好ましくない。
【0023】
前記不織布を構成する繊維の繊度は5〜50dtexの範囲であるものを用いるのが好ましく、5dtex未満では、通気性を確保し難く、消臭性能も低下することからも好ましくない。50dtexを超えると、水酸化金属の固着量を確保するのが難しくなるので、十分な消臭性能が得られなくなる。中でも、繊度は10〜30dtexの範囲とするのがより好ましい。
【0024】
水酸化金属の不織布への固着量は20〜300g/mが好ましい。20g/mを下回ると消臭性能の低下を招き、300g/mを越えると十分な空気の通過量を確保することが難しくなるので好ましくない。
【0025】
本発明で用いるバインダ−樹脂として、どのような樹脂でも使用することができる。例えば、ウレタン樹脂、自己架橋型アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、シリコン樹脂、グリオキザ−ル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ブタジエン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル−シリコン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、イソブチレン無水マレイン酸共重合体樹脂、エチレン−スチレン−アクリレート−メタアクリレ−ト共重合体樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂を2種類以上混合してバインダ−樹脂としてもよい。中でも、ウレタン樹脂が固着力の点で好ましい。
【0026】
本発明の発泡剤として、どのような発泡剤でも使用することができる。例えば、アルキルスルホン酸のアルカリ金属塩、アルキルフェノールエチレンオキシド付加物、アルキルスルホコハク酸のアルカリ金属塩などを挙げることができる。中でも、アルキルスルホン酸のアルカリ金属塩が好ましい。アルキルスルホン酸のアルカリ金属塩として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムを挙げることができる。
【0027】
発泡剤によるバインダー樹脂の発泡倍率は4〜8倍にするのが好ましい。すなわち、発泡剤をバインダー樹脂に加えたのち、例えばミキサーによって、機械的に泡立てて嵩を大きくした状態で不織布に塗布するのであるが、その際の発泡倍率は4〜8倍に設定する。そうすると、バインダー樹脂が発泡されているから、少ないバインダー樹脂でありながら不織布に水酸化金属を十分均一に固着することができ、しかも通気性の低下を抑制することができる。中でも、バインダー樹脂の発泡倍率は5〜7倍にするのがより好ましい。
【0028】
発泡剤によって発泡したバインダー樹脂を介して不織布に水酸化金属を固着させるには、あらかじめ水酸化金属を水に均一に分散させた水酸化金属分散液を用意し、バインダー樹脂を水に分散させた分散液に該水酸化金属分散液を加えたのちに発泡剤を加え、例えばミキサーによって、機械的に泡立てて嵩を大きく発泡させた処理液を用意する。この処理液には、発泡させる前に分散剤などの各種添加剤を、各種特性向上のため配合してもよい。前記処理液を不織布に塗布する手段としては、特に限定されるものではないが、例えば浸漬法、コーティング法等が挙げられる。中でも、コーティング法が好ましい。
【0029】
上記のように、処理液を付与した後に乾燥させるが、乾燥手段としては、加熱処理する方法が乾燥効率から好ましい。加熱処理温度は、100〜180℃とするのが好ましい。この温度での加熱処理によって、固着性をより高め、悪臭除去性能の持続耐久性を一層向上させることができる。
【0030】
本発明の有機酸臭除去フィルターの圧力損失は、フィルターの厚さ1cm当たり3〜30Paである。3Pa未満では、不織布に水酸化金属が固着量を確保するのが難しくなるので、十分な消臭性能が得られなくなる。30Paを超えると十分な空気の通過量を確保することが難しくなり、消臭性能の低下を招くおそれがある。
【0031】
本発明の有機酸臭除去フィルターの厚さは、1〜10mmであるのが好ましい。1mm未満では、不織布に水酸化金属の固着量を確保するのが難しくなるので、十分な消臭性能が得られなくなる。10mmを超えると十分な空気の通過量を確保することが難しくなり、消臭性能の低下を招くおそれがあり、またコスト的にも好ましくない。
【0032】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、実施例における各種ガス除去性能、圧力損失試験の測定は次のように行った。
【0033】
(初期性能試験)
有機酸臭除去フィルターから切り出した試験片(450×250mm)を毎分800リットルの通気を行なうファンをセットした空気清浄機のフィルターホルダーに固定し、内容量1mのアクリルボックス内に入れた後、ボックス内において濃度が10ppmとなるようにイソ吉草酸と酪酸と酢酸を1:1:1の割合で混合したガスを注入し、30分経過後にこの混合ガスの残存濃度を測定し、混合ガスの除去率(%)を算出し初期性能とした。除去率90%以上であるものを「◎」、除去率が80%以上90%未満であるものを「○」、除去率が70%以上80%未満であるものを「△」、除去率が70%未満であるものを「×」とし、「○」以上を合格とした。
【0034】
(繰り返し耐久性能試験)
上記性能試験を5回繰り返し行ったあと、そのまま空気清浄機を動かし30分間経過してこの混合ガスの残存濃度を測定し、混合ガスの除去率(%)を算出し耐久性能とした。除去率60%以上であるものを「◎」、除去率が50%以上60%未満であるものを「○」、除去率が40%以上50%未満であるものを「△」、除去率が40%未満であるものを「×」とし、「○」以上を合格とした。
【0035】
(圧力損失試験)
JIS B9908形式3に準拠し測定した。すなわち、有機酸臭除去フィルターを風洞のユニット固定部に保持し、送風機を作動させフィルター面風速が1.0m/秒になるように調整した。次に静圧測定孔に接続されたマノメーターによって、フィルターの上流側と下流側の静圧を測定しフィルターの厚み1cm当たりの圧力損失を算出した。評価基準は、圧力損失30Pa以下が合格で「○」、30Pa超35Pa以下を「△」、35Pa超を「×」とした。
【実施例】
【0036】
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例のものに特に限定されるものではない。なお、不織布、水酸化金属及びバインダー樹脂の種類、水酸化金属の不織布への固着量等を表1に、各種ガス除去性能及び圧力損失試験の結果を表2に示す。
【0037】
<実施例1>
水酸化ジルコニウム60重量部を水200質量部に加えた後、攪拌機により攪拌を行い、均一に分散液させた水酸化金属分散液を用意した。次に、ウレタン系バインダー樹脂(固形分50%)35質量部を、先に用意した水酸化金属分散液に全部加えよく攪拌したのちに発泡剤0.2重量部を加え、ミキサーによって機械的に泡立てて嵩を大きく発泡させた処理液を得た。この処理液をケミカルボンド不織布(ポリエステル繊維、目付50g/m、厚み5mm)にドクターナイフを用いてコーティングし、100℃×20分乾燥して、厚さ5mmの有機酸臭除去フィルターを得た。不織布への付着量は、水酸化金属54g/mであり、圧力損失試験を行った結果、圧力損失は5Paであった。
【0038】
<実施例2>
次に、実施例1において、ケミカルボンド不織布(ポリエステル繊維、目付20g/m、厚み2mm)を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ2mmの有機酸臭除去フィルターを得た。不織布への付着量は、水酸化ジルコニウム30g/mであり、圧力損失試験を行った結果、圧力損失は5Paであった。
【0039】
<実施例3>
次に、実施例1において、ケミカルボンド不織布(ポリエステル繊維、目付80g/m、厚み8mm)を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ8mmの有機酸臭除去フィルターを得た。不織布への付着量は、水酸化ジルコニウム60g/mであり、圧力損失試験を行った結果、圧力損失は14Paであった。
【0040】
<実施例4>
次に、実施例1において、スパンボンド不織布(ポリエステル繊維、目付50g/m、厚み5mm)を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ5mmの有機酸臭除去フィルターを得た。不織布への付着量は、水酸化ジルコニウム32g/mであり、圧力損失試験を行った結果、圧力損失は27Paであった。
【0041】
<実施例5>
次に、実施例1において、水酸化ジルコニウムに代えて2価の水酸化銅、すなわち水酸化銅(II)60重量部を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ5mmの有機酸臭除去フィルターを得た。不織布への付着量は、水酸化銅(II)52g/mであり、圧力損失試験を行った結果、圧力損失は5Paであった。
【0042】
<実施例6>
次に、実施例1において、アクリル系バインダー樹脂(固形分50%)を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ5mmの有機酸臭除去フィルターを得た。不織布への付着量は、水酸化ジルコニウム54g/mであり、圧力損失試験を行った結果、圧力損失は5Paであった。
【0043】
<実施例7>
次に、実施例1において、ドクターナイフを用いてコーティングの付着量を調整した以外は実施例1と同様にして、厚さ5mmの有機酸臭除去フィルターを得た。不織布への付着量は、水酸化ジルコニウム25g/mであり、圧力損失試験を行った結果、圧力損失は3Paであった。
【0044】
<実施例8>
次に、実施例1において、ドクターナイフを用いてコーティングの付着量を調整した以外は実施例1と同様にして、厚さ5mmの有機酸臭除去フィルターを得た。不織布への付着量は、水酸化ジルコニウム210g/mであり、圧力損失試験を行った結果、圧力損失は26Paであった。
【0045】
<比較例1>
次に、実施例1において、水酸化ジルコニウムを用いなかった以外は実施例1と同様にして、厚さ5mmのフィルターを得た。圧力損失試験を行った結果、圧力損失は3Paであった。
【0046】
<比較例2>
次に、実施例1において、発泡剤を用いず、すなわちバインダー樹脂を発泡させなかった以外は実施例1と同様にして、厚さ5mmのフィルターを得た。不織布への付着量は、水酸化ジルコニウム340g/mであり、圧力損失試験を行った結果、圧力損失は36Paであった。
【0047】
<比較例3>
次に、実施例1において、ケミカルボンド不織布(ポリエステル繊維、目付120g/m、厚み12mm)を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ12mmのフィルターを得た。不織布への付着量は、水酸化ジルコニウム85g/mであり、圧力損失試験を行った結果、圧力損失は32Paであった。
【0048】
<比較例4>
次に、実施例1において、ケミカルボンド不織布(ポリエステル繊維、目付600g/m、厚み60mm)を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ60mmのフィルターを得た。不織布への付着量は、水酸化ジルコニウム92g/mであり、圧力損失試験を行った結果、圧力損失は75Paであった。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の技術は、家庭用または業務用のエアコン、空気清浄機等のフィルターや、あるいは車などにおける車室内のいやな臭いを取り除くフィルター等として使用し、特に特に人から発生する体臭や汗臭、あるいはペット臭、すなわちイソ吉草酸、酪酸、酢酸等を効率的に吸着浄化するフィルターとして広く利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡剤によって発泡したバインダー樹脂を介して不織布に水酸化金属を固着させ、JIS B9908規格で測定した圧力損失が、フィルターの通過風速が1.0m/秒の条件下で、フィルターの厚さ1cm当たり3〜30Paであることに特徴のある有機酸臭除去フィルター。
【請求項2】
前記不織布がケミカルボンド不織布であり、前記バインダー樹脂がウレタン系樹脂である請求項1に記載の有機酸臭除去フィルター。
【請求項3】
前記発泡剤がアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩である請求項1または2に記載の有機酸臭除去フィルター。
【請求項4】
前記不織布に水酸化金属を20〜300g/m固着させた請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機酸臭除去フィルター。
【請求項5】
有機酸臭除去フィルターの厚さが1〜10mmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機酸臭除去フィルター。

【公開番号】特開2013−99483(P2013−99483A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245926(P2011−245926)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】