説明

有機金属化合物の製造方法及び該方法により得られた有機金属化合物を用いた金属含有膜の製造方法

【課題】酸素ガス雰囲気下で粗生成物を処理することにより、粗生成物中に含まれる副生成物を低減でき、MOCVD法で原料として使用したときに、高い成長速度が得られ、優れた気化安定性及び長期成膜安定性を有し、成膜室への汚染を抑えることができ、形成する膜の段差被覆性に優れた、純度の高い有機金属化合物を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明の有機金属化合物の製造方法は、金属含有物と配位子前駆体とを有機溶媒の存在下で反応させて有機金属化合物、副生成物及び残渣分を含む粗生成物を得る工程と、得られた粗生成物から残渣分及び有機溶媒を除去して濃縮する工程と、濃縮物を酸素ガス雰囲気下、130〜150℃で処理する工程とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属化学気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition、以下、MOCVD法という。)の原料として使用するのに好適な純度の高い有機金属化合物を製造する方法及び該方法により得られた有機金属化合物を用いた金属含有膜の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属含有薄膜を形成する際の一手法として、MOCVD法が一般的に使用されている。純度の低い有機金属化合物をMOCVD用原料として用いた場合、気化特性の経時劣化が大きいために、成膜の再現性が悪いという問題があった。従って、有機金属化合物純度の向上を図る必要がある。
この問題を解決する方策として、アルコールと、1種又は2種以上のアルカリ土類金属酸化物とを反応させてアルカリ土類金属アルコキシドを得、これをβ−ジケトンと反応させることを特徴とするアルカリ土類金属のβ−ジケトネート金属錯体の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に示される方法により、水和物の生成が抑制された高純度のアルカリ土類金属のβ−ジケトネート金属錯体を製造できるとある。
【特許文献1】特開2003−81908号公報(請求項1、段落[0041])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1に示される方法では、水和物の生成は抑制されているが、得られる金属錯体中には錯体を構成する金属と配位子とが相互作用により複数結合した多量体やオリゴマーのような副生成物が含まれており、上記製造方法ではMOCVD法に使用するのに十分な純度を有する金属錯体が得られているとはいえなかった。
【0004】
本発明の目的は、酸素ガス雰囲気下で粗生成物を処理することにより、粗生成物中に含まれる副生成物を低減でき、MOCVD法で原料として使用したときに高い成長速度が得られ、優れた気化安定性及び長期成膜安定性を有し、成膜室への汚染を抑えることができ、形成する膜の段差被覆性に優れた、純度の高い有機金属化合物を製造する方法及び該方法により得られた有機金属化合物を用いた金属含有膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、金属含有物と配位子前駆体とを反応させて有機金属化合物、副生成物及び残渣分を含む粗生成物を得る工程と、得られた粗生成物から残渣分を除去する工程と、残渣分を除去した粗生成物を酸素ガス雰囲気下、130〜150℃で処理する工程とを含むことを特徴とする有機金属化合物の製造方法である。
請求項1に係る発明では、酸素ガス雰囲気下で粗生成物を処理することにより、粗生成物中に含まれる有機金属化合物が複数個重合してできたオリゴマーのような副生成物を低減でき、MOCVD法で使用したときに優れた気化安定性及び長期成膜安定性を有し、成膜室への汚染を抑えることができる高純度の有機金属化合物が得られる。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の製造方法により得られた有機金属化合物である。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1記載の製造方法により得られた有機金属化合物をMOCVD法用原料として用い、MOCVD法により金属含有膜を作製することを特徴とする金属含有膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の有機金属化合物の製造方法は、酸素ガス雰囲気下で粗生成物を処理することにより、粗生成物中に含まれる有機金属化合物が複数個重合してできたオリゴマーのような副生成物を低減でき、MOCVD法で原料として使用したときに、高い成長速度が得られ、優れた気化安定性及び長期成膜安定性を有し、成膜室への汚染を抑えることができ、形成する膜の段差被覆性に優れた、高純度の有機金属化合物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明の製造方法は、金属としてPb、Zr、Ti、Hf、Si、Ba、Sr、Nb、Ta、Laが、配位子としてβジケトナート、炭素数1〜4のアルコキシド、炭素数1〜4のアルキルアミンから構成される有機金属化合物を製造するのに特に好適である。
【0010】
本発明の有機金属化合物の製造方法は、金属含有物と配位子前駆体とを反応させて有機金属化合物、副生成物及び残渣分を含む粗生成物を得る工程と、得られた粗生成物から残渣分を除去する工程と、残渣分を除去した粗生成物を酸素ガス雰囲気下、130〜150℃で処理する工程とを含むことを特徴とする。金属含有物としてはPb、Zr、Ti、Hf、Si、Ba、Sr、Nb、Ta又はLaを含む化合物が、配位子前駆体としては、βジケトナート、炭素数1〜4のアルコキシド又は炭素数1〜4のアルキルアミンからなる群より選ばれた1種又は2種以上が挙げられる。
【0011】
一般的な有機金属化合物の製造方法により粗生成物が生成された時点では、製造条件によって多少の割合は異なるが、有機金属化合物の他に複数種類の多量体やオリゴマー等が副生成物として少量存在している。例えば、有機金属化合物がPb(DPM)2である場合、あるPb(DPM)2のPb原子と別のPb(DPM)2のDPM配位子とが相互作用によってPb−O…Pb−Oのように複数結合して構成された多量体が副生成物として存在し、その他には、未反応物等の残渣分、溶媒等が含まれる。この副生成物が存在する粗生成物を酸素ガス雰囲気下で処理することにより、多量体を構成する相互作用を有する結合が弱められる。また、上記相互作用を有する結合は酸素ガスに不安定であるため、多量体等の副生成物の大部分が分解して所望の有機金属化合物等を新たに生成するものと考えられる。この酸素ガス雰囲気下での処理を施す本発明の製造方法により、粗生成物中に含まれる副生成物を低減でき、高い収率で所望の高純度有機金属化合物が得られる。得られた高純度有機金属化合物はMOCVD法で原料として使用したときに、高い成長速度が得られ、優れた気化安定性及び長期成膜安定性を有し、成膜室への汚染を抑えることができる。また形成する膜の段差被覆性に優れる。
【0012】
本発明の有機金属化合物の製造方法のうち、有機金属化合物としてビスイソプロポキシビスジピバロイルメタナトチタン(Ti(i-Pr)2(DPM)2)を製造する方法について説明する。
先ず、金属含有物としてイソプロポキシチタンを、配位子前駆体としてジピバロイルメタンを、有機溶媒としてヘキサンをそれぞれ用意する。イソプロポキシチタンはその一部が配位子となるため、配位子前駆体も兼ねる化合物である。イソプロポキシチタンをヘキサンに懸濁させて懸濁液を調製する。次いで、この懸濁液にジピバロイルメタンをゆっくりと添加し、攪拌して反応させることにより粗生成物を得る。得られた粗生成物には、製造目的物であるTi(i-Pr)2(DPM)2と、TiとDPMとが相互作用により複数結合した[Ti(DPM)4n(nは2〜6)のような構造を有する不安定なオリゴマーを含む副生成物、上記反応に寄与しなかった未反応物等の残渣分、有機溶媒等が含まれる。次に、得られた粗生成物にろ過、蒸留等の分離処理を施し、残渣分及び有機溶媒を除去して粗生成物を濃縮する。続いて得られた濃縮物を酸素ガス雰囲気下、130〜150℃で10〜15分間保持する処理を施す。この酸素ガス雰囲気下での処理により、濃縮物に含まれる多量体等の副生成物の大部分が分解され、所望のTi(i-Pr)2(DPM)2等を新たに生成するため、製造目的物であるTi(i-Pr)2(DPM)2の純度が高まる。処理温度が130℃未満では濃縮物に含まれる副生成物を分解処理することができず、150℃を越えると有機金属化合物が分解してしまう不具合を生じる。また、処理時間が10分未満では副生成物を分解処理するのに十分ではなく、15分を越えてもその効果は変わらない。このように上記工程を経ることにより高純度のTi(i-Pr)2(DPM)2が得られる。
【実施例】
【0013】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
先ず、金属含有物としてイソプロポキシチタンを、配位子前駆体としてジピバロイルメタンをそれぞれ用意し、イソプロポキシチタン10gをヘキサン100mlに懸濁させて懸濁液を調製した。次いで、この懸濁液にジピバロイルメタン50gを添加し、反応させることにより粗生成物を得た。この粗生成物を直接導入質量分析装置により分析したところ、製造目的物であるTi(i-Pr)2(DPM)2と、[Ti(DPM)4n(n=2〜6)、[Ti(i-Pr)2(DPM)2m(m=2〜6)等の副生成物、未反応物等の残渣分及びヘキサンがそれぞれ含まれていた。次にこの粗生成物を濾過し、残渣分と濾液とに分離した。続いて、得られた濾液を濃縮してヘキサンを除去した。次に、濃縮物を酸素ガス雰囲気下で130℃、10分間に維持する処理を施した。処理を終えた濃縮物を回収し、製造目的物であるTi(i-Pr)2(DPM)2を得た。最後に製造したTi(i-Pr)2(DPM)2を酸素ガスが充填された容器に保存した。
【0014】
<比較例1>
濃縮物を酸素ガス雰囲気下での処理の代わりに窒素ガス雰囲気下で130℃、10分間に維持する処理を施した以外は実施例1と同様にしてTi(i-Pr)2(DPM)2を得た。
【0015】
<比較試験1>
実施例1及び比較例1で得られたTi(i-Pr)2(DPM)2をMOCVD用原料として用い、成膜時間当たりの膜厚試験を行った。先ず、基板として表面にSiO2膜(厚さ5000Å)を形成したシリコン基板を9枚ずつ用意し、この基板を図1に示すMOCVD装置の成膜室に設置した。図1に示すように、MOCVD装置は、成膜室10と蒸気発生装置11を備える。成膜室10の内部にはヒータ12が設けられ、ヒータ12上には基板13が保持される。この成膜室10の内部は圧力センサー14、コールドトラップ15及びニードルバルブ16を備える配管17により真空引きされる。成膜室10にはニードルバルブ36、ガス流量調節装置34を介してO2ガス導入管37が接続される。蒸気発生装置11は原料容器18を備え、この原料容器18は本発明の有機金属化合物を貯蔵する。原料容器18にはガス流量調節装置19を介してキャリアガス導入管21が接続され、また原料容器18には供給管22が接続される。供給管22にはニードルバルブ23及び溶液流量調節装置24が設けられ、供給管22は気化器26に接続される。気化器26にはニードルバルブ31、ガス流量調節装置28を介してキャリアガス導入管29が接続される。気化器26は更に配管27により成膜室10に接続される。また気化器26には、ガスドレイン32及びドレイン33がそれぞれ接続される。
次いで、基板温度を450℃、気化温度を200℃、圧力を約1330Pa(10Torr)にそれぞれ設定した。反応ガスとしてO2ガスを用い、その分圧を500ccmとした。次に、キャリアガスとしてHeガスを用い、原料を0.2cc/分の割合でそれぞれ供給し、成膜時間が1分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、60分及び70分となったときにそれぞれ1枚ずつ成膜室より取出した。成膜を終えた基板上のTiO2薄膜を断面SEM(走査型電子顕微鏡)像から膜厚を測定した。また、成膜時間が5分の基板上のTiO2薄膜を断面SEM(走査型電子顕微鏡)像から段差被覆性を測定した。得られた成膜時間あたりの膜厚及び段差被覆性の結果を表1にそれぞれ示す。
【0016】
【表1】

【0017】
表1より明らかなように、比較例1で得られたTi(i-Pr)2(DPM)2は、成膜時間に対する膜厚が不均一であり、十分な膜厚も得られていなかった。また、成膜後にMOCVD装置の成膜室内を確認したところ、成膜室内の壁面もかなり汚れが見られた。このような結果となった背景としては、成膜時間が長くなるにつれて気化室内で分解物が蓄積したため、十分な膜厚が得られなかったためと考えられる。これに対して実施例1で得られたTi(i-Pr)2(DPM)2は、成膜時間あたりの膜厚の結果から、成膜時間あたりの膜厚が厚く、かつ長時間の成膜でも膜が安定して成膜されており、長期成膜安定性が得られていた。段差被覆性については1.0が得られており、基板の平坦部分と同様に溝の奥まで均一に成膜されており、優れた気化安定性が得られていた。また、成膜後にMOCVD装置の成膜室内を確認したところ、壁面に汚れは殆ど見られず、成膜室への汚染を抑えることができていた。
【0018】
<比較評価2>
実施例1及び比較例1で得られたTi(i-Pr)2(DPM)2をそれぞれ用い、アルゴン雰囲気中、10℃/分の昇温温度で熱重量分析を行った。図2に実施例1及び比較例1で得られたTi(i-Pr)2(DPM)2の熱重量分析結果をそれぞれ示す。
図2の熱重量分析結果より明らかなように、比較例1で得られたTi(i-Pr)2(DPM)2は、十分な揮発が行われておらず、約12重量%と多くの残渣が生じていた。これに対して実施例1で得られたTi(i-Pr)2(DPM)2は、殆ど残渣を生じることがなく、揮発性に優れる結果となっていた。
【0019】
<実施例2>
先ず、金属含有物としてn-ブトキシジルコニウムを、配位子前駆体としてジメチルヘプタンジオンをそれぞれ用意し、n-ブトキシジルコニウム10gをヘキサン100mlに懸濁させ、懸濁液を調製した。次いで、この懸濁液にジメチルヘプタンジオン50gを添加し、反応させることにより粗生成物を得た。この粗生成物を直接導入質量分析装置により分析したところ、製造目的物であるテトラキス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン)ジルコニウム(Zr(DMHD)4)と、Zr(DMHD)4が2〜6個重合したオリゴマー等の副生成物、未反応物等の残渣分及びヘキサンがそれぞれ含まれていた。次にこの粗生成物を濾過し、残渣分と濾液とに分離した。続いて、得られた濾液を濃縮してヘキサンを除去した。次に、濃縮物を酸素ガス雰囲気下で150℃、15分間に維持する処理を施した。処理を終えた濃縮物を回収し、製造目的物であるZr(DMHD)4を得た。最後に製造したZr(DMHD)4を酸素ガスが充填された容器に保存した。
【0020】
<比較例2>
濃縮物を酸素ガス雰囲気下での処理の代わりに窒素ガス雰囲気下で150℃、15分間に維持する処理を施した以外は実施例2と同様にしてZr(DMHD)4を得た。
【0021】
<比較試験3>
実施例2及び比較例2で得られたZr(DMHD)4をMOCVD用原料として用い、成膜時間当たりの膜厚試験を行った。先ず、基板として表面にSiO2膜(厚さ5000Å)を形成したシリコン基板を9枚ずつ用意し、この基板を図1に示すMOCVD装置の成膜室に設置した。次いで、基板温度を550℃、気化温度を200℃、圧力を約1330Pa(10Torr)にそれぞれ設定した。反応ガスとしてO2ガスを用い、その分圧を500ccmとした。次に、キャリアガスとしてHeガスを用い、原料を0.2cc/分の割合でそれぞれ供給し、成膜時間が1分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、60分及び70分となったときにそれぞれ1枚ずつ成膜室より取出した。成膜を終えた基板上のZrO2薄膜を断面SEM(走査型電子顕微鏡)像から膜厚を測定した。また、成膜時間が5分の基板上のZrO2薄膜を断面SEM(走査型電子顕微鏡)像から段差被覆性を測定した。得られた成膜時間あたりの膜厚及び段差被覆性の結果を表2にそれぞれ示す。
【0022】
【表2】

【0023】
表2より明らかなように、比較例2で得られたZr(DMHD)4は、成膜時間に対する膜厚が不均一であり、十分な膜厚も得られていなかった。また、成膜後にMOCVD装置の成膜室内を確認したところ、成膜室内の壁面もかなり汚れが見られた。このような結果となった背景としては、成膜時間が長くなるにつれて気化室内で分解物が蓄積したため、十分な膜厚が得られなかったためと考えられる。これに対して実施例2で得られたZr(DMHD)4は、成膜時間あたりの膜厚の結果から、成膜時間あたりの膜厚が厚く、かつ長時間の成膜でも膜が安定して成膜されており、長期成膜安定性が得られていた。段差被覆性については1.0に近い数値が得られており、基板の平坦部分と同様に溝の奥まで均一に成膜されており、優れた気化安定性が得られていた。また、成膜後にMOCVD装置の成膜室内を確認したところ、壁面に汚れは殆ど見られず、成膜室への汚染を抑えることができていた。
【0024】
<比較評価4>
実施例2及び比較例2で得られたZr(DMHD)4をそれぞれ用い、アルゴン雰囲気中、10℃/分の昇温温度で熱重量分析を行った。図3に実施例2及び比較例2で得られたZr(DMHD)4の熱重量分析結果をそれぞれ示す。
図3の熱重量分析結果より明らかなように、比較例2で得られたZr(DMHD)4は、十分な揮発が行われておらず、約25重量%と多くの残渣が生じていた。これに対して実施例2で得られたZr(DMHD)4は、殆ど残渣を生じることがなく、揮発性に優れる結果となった。
【0025】
<実施例3>
先ず、金属含有物として酸化鉛を、配位子前駆体としてジピバロイルメタンをそれぞれ用意し、酸化鉛10gをヘキサン100mlに懸濁させ、懸濁液を調製した。次いで、この懸濁液にジピバロイルメタン50gを添加し、反応させることにより粗生成物を得た。この粗生成物を直接導入質量分析装置により分析したところ、製造目的物であるビス(ジピバロイルメタナート)鉛(Pb(DPM)2)と、Pb(DPM)2が2〜6個重合したオリゴマー等の副生成物、未反応物等の残渣分及びヘキサンがそれぞれ含まれていた。次にこの粗生成物を濾過し、残渣分と濾液とに分離した。続いて、得られた濾液を濃縮してヘキサンを除去した。次に、濃縮物を酸素ガス雰囲気下で130℃、10分間に維持する処理を施した。処理を終えた濃縮物を回収し、目的物であるPb(DPM)2を得た。最後に製造したPb(DPM)2を酸素ガスが充填された容器に保存した。
【0026】
<比較例3>
濃縮物を酸素ガス雰囲気下での処理の代わりに窒素ガス雰囲気下で130℃、10分間に維持する処理を施した以外は実施例3と同様にしてPb(DPM)2を得た。
【0027】
<比較試験5>
実施例3及び比較例3で得られたPb(DPM)2をMOCVD用原料として用い、成膜時間当たりの膜厚試験を行った。先ず、基板として表面にSiO2膜(厚さ5000Å)を形成したシリコン基板を9枚ずつ用意し、この基板を図1に示すMOCVD装置の成膜室に設置した。次いで、基板温度を550℃、気化温度を220℃、圧力を約1330Pa(10Torr)にそれぞれ設定した。反応ガスとしてO2ガスを用い、その分圧を500ccmとした。次に、キャリアガスとしてHeガスを用い、原料を0.1cc/分の割合でそれぞれ供給し、成膜時間が1分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、60分及び70分となったときにそれぞれ1枚ずつ成膜室より取出した。成膜を終えた基板上のPbO薄膜を断面SEM(走査型電子顕微鏡)像から膜厚を測定した。また、成膜時間が5分の基板上のPbO薄膜を断面SEM(走査型電子顕微鏡)像から段差被覆性を測定した。得られた成膜時間あたりの膜厚及び段差被覆性の結果を表3にそれぞれ示す。
【0028】
【表3】

【0029】
表3より明らかなように、比較例3で得られたPb(DPM)2は、成膜時間に対する膜厚が不均一であり、十分な膜厚も得られていなかった。また、成膜後にMOCVD装置の成膜室内を確認したところ、成膜室内の壁面もかなり汚れが見られた。このような結果となった背景としては、成膜時間が長くなるにつれて気化室内で分解物が蓄積したため、十分な膜厚が得られなかったためと考えられる。これに対して実施例3で得られたPb(DPM)2は、成膜時間あたりの膜厚の結果から、成膜時間あたりの膜厚が厚く、かつ長時間の成膜でも膜が安定して成膜されており、長期成膜安定性が得られていた。段差被覆性については1.0に近い数値が得られており、基板の平坦部分と同様に溝の奥まで均一に成膜されており、優れた気化安定性が得られていた。また、成膜後にMOCVD装置の成膜室内を確認したところ、壁面に汚れは殆ど見られず、成膜室への汚染を抑えることができていた。
【0030】
<比較評価6>
実施例3及び比較例3で得られたPb(DPM)2をそれぞれ用い、アルゴン雰囲気中、10℃/分の昇温温度で熱重量分析を行った。図4に実施例3及び比較例3で得られたPb(DPM)2の熱重量分析結果をそれぞれ示す。
図4の熱重量分析結果より明らかなように、比較例3で得られたPb(DPM)2は、十分な揮発が行われておらず、約15重量%と多くの残渣が生じていた。これに対して実施例3で得られたPb(DPM)2は、殆ど残渣を生じることがなく、揮発性に優れる結果となった。
【0031】
<実施例4>
先ずn-ブチルリチウムとジエチルアミンからジエチルアミノリチウムを合成した。このジエチルアミノリチウムを配位子前駆体とした。次いで、金属含有物として四塩化ハフニウムを用い、四塩化ハフニウムのジエチルエーテル液に四塩化ハフニウムに対して4倍モル量のジエチルアミノリチウムを添加し、氷冷して30分間反応させることにより粗生成物を得た。この粗生成物を直接導入質量分析装置により分析したところ、製造目的物であるテトラキスジエチルアミノハフニウム(Hf(Et2N)4)と、Hf(Et2N)4が2〜6個重合したオリゴマー等の副生成物、未反応物等の残渣分がそれぞれ含まれていた。次にこの粗生成物を濾過し、残渣分と濾液とに分離した。得られた濾液を濃縮してジエチルエーテルを除去した。次に、濃縮物を酸素ガス雰囲気下で140℃、15分間に維持する処理を施した。処理を終えた濃縮物を回収し、製造目的物であるHf(Et2N)4を得た。最後に製造したHf(Et2N)4を酸素ガスが充填された容器に保存した。
【0032】
<比較例4>
濃縮物を酸素ガス雰囲気下での処理の代わりに窒素ガス雰囲気下で140℃、15分間に維持する処理を施した以外は実施例7と同様にしてHf(Et2N)4を得た。
【0033】
<比較試験7>
実施例4及び比較例4のHf(Et2N)4をMOCVD原料として用い、成膜時間当たりの膜厚試験を行った。先ず、基板として表面にSiO2膜(厚さ5000Å)を形成したシリコン基板を6枚ずつ用意し、この基板を図1に示すMOCVD装置の成膜室に設置した。次いで、基板温度を550℃、気化温度を70℃、圧力を約665Pa(5Torr)にそれぞれ設定した。反応ガスとしてO2ガスを用い、その分圧を1000ccmとした。次に、キャリアガスとしてHeガスを用い、原料を0.01cc/分の割合でそれぞれ供給し、成膜時間が1分、5分、10分、20分、30分及び40分となったときにそれぞれ1枚ずつ成膜室より取出した。成膜を終えた基板上のHfO2薄膜を断面SEM(走査型電子顕微鏡)像から膜厚を測定した。また、成膜時間が5分の基板上のHfO2薄膜を断面SEM(走査型電子顕微鏡)像から段差被覆性を測定した。得られた成膜時間あたりの膜厚及び段差被覆性の結果を表4にそれぞれ示す。
【0034】
【表4】

【0035】
表4より明らかなように、比較例4で得られたHf(Et2N)4は、成膜時間に対する膜厚が不均一であり、十分な膜厚も得られていなかった。また、成膜後にMOCVD装置の成膜室内を確認したところ、成膜室内の壁面もかなり汚れが見られた。このような結果となった背景としては、成膜時間が長くなるにつれて気化室内で分解物が蓄積したため、十分な膜厚が得られなかったためと考えられる。これに対して実施例4で得られたHf(Et2N)4は、成膜時間あたりの膜厚の結果から、成膜時間あたりの膜厚が厚く、かつ長時間の成膜でも膜が安定して成膜されており、長期成膜安定性が得られていた。段差被覆性については1.0に近い数値が得られており、基板の平坦部分と同様に溝の奥まで均一に成膜されており、優れた気化安定性が得られていた。また、成膜後にMOCVD装置の成膜室内を確認したところ、壁面に汚れは殆ど見られず、成膜室への汚染を抑えることができていた。
【0036】
<比較評価8>
実施例4及び比較例4で得られたHf(Et2N)4をそれぞれ用い、アルゴン雰囲気中、10℃/分の昇温温度で熱重量分析を行った。図5に実施例4及び比較例4で得られたHf(Et2N)4の熱重量分析結果をそれぞれ示す。
図5の熱重量分析結果より明らかなように、比較例4で得られたHf(Et2N)4は、十分な揮発が行われておらず、約35重量%と多くの残渣が生じていた。これに対して実施例4で得られたHf(Et2N)4は、殆ど残渣を生じることがなく、揮発性に優れる結果となった。
【0037】
<実施例5>
金属含有物として金属バリウムを、配位子前駆体としてジピバロイルメタンをそれぞれ用意し、金属バリウムのエーテル液に金属バリウムに対して2倍モル量のジピバロイルメタンを添加し、室温で30分間反応させることにより粗生成物を得た。この粗生成物を直接導入質量分析装置により分析したところ、製造目的物であるビス(ジピバロイルメタナート)バリウム(Ba(DPM)2)、Ba(DPM)2が2〜6個重合したオリゴマー等の副生成物、未反応物等の残渣分及びエーテルがそれぞれ含まれていた。次にこの粗生成物を濾過し、残渣分と濾液とに分離した。続いて、得られた濾液を濃縮してエーテルを除去した。次に、濃縮物を酸素ガス雰囲気下で130℃、15分間に維持する処理を施した。処理を終えた濃縮物を回収し、目的物であるBa(DPM)2を得た。最後に製造したBa(DPM)2を酸素ガスが充填された容器に保存した。
【0038】
<比較例5>
金属含有物として金属バリウムを、配位子前駆体としてジピバロイルメタンをそれぞれ用意し、金属バリウムのメタノール液に金属バリウムに対して2倍モル量のジピバロイルメタンを添加し、室温で30分間反応させることにより粗生成物を得た。次にこの粗生成物を濾過し、残渣分と濾液とに分離した。得られた濾液をメタノール中で再結晶し、製造目的物であるBa(DPM)2を得た。
【0039】
<比較試験9>
実施例5及び比較例5で得られたBa(DPM)2をMOCVD原料として用い、成膜時間当たりの膜厚試験を行った。先ず、基板として表面にSiO2膜(厚さ5000Å)を形成したシリコン基板を6枚ずつ用意し、この基板を図1に示すMOCVD装置の成膜室に設置した。次いで、基板温度を450℃、気化温度を200℃、圧力を約1330Pa(10Torr)にそれぞれ設定した。反応ガスとしてO2ガスを用い、その分圧を500ccmとした。次に、キャリアガスとしてHeガスを用い、原料を0.1cc/分の割合でそれぞれ供給し、成膜時間が1分、5分、10分、20分、30分及び40分となったときにそれぞれ1枚ずつ成膜室より取出した。成膜を終えた基板上のBaO薄膜を断面SEM(走査型電子顕微鏡)像から膜厚を測定した。また、成膜時間が5分の基板上のBaO薄膜を断面SEM(走査型電子顕微鏡)像から段差被覆性を測定した。得られた成膜時間あたりの膜厚及び段差被覆性の結果を表5にそれぞれ示す。
【0040】
【表5】

【0041】
表5より明らかなように、比較例5で得られたBa(DPM)2は、成膜時間に対する膜厚が不均一であり、十分な膜厚も得られていなかった。また、成膜後にMOCVD装置の成膜室内を確認したところ、成膜室内の壁面もかなり汚れが見られた。このような結果となった背景としては、成膜時間が長くなるにつれて気化室内で分解物が蓄積したため、十分な膜厚が得られなかったためと考えられる。これに対して実施例5で得られたBa(DPM)2は、成膜時間あたりの膜厚の結果から、成膜時間あたりの膜厚が厚く、かつ長時間の成膜でも膜が安定して成膜されており、長期成膜安定性が得られていた。段差被覆性については1.0に近い数値が得られており、基板の平坦部分と同様に溝の奥まで均一に成膜されており、優れた気化安定性が得られていた。また、成膜後にMOCVD装置の成膜室内を確認したところ、壁面に汚れは殆ど見られず、成膜室への汚染を抑えることができていた。
【0042】
<比較評価10>
実施例5及び比較例5で得られたBa(DPM)2をそれぞれ用い、アルゴン雰囲気中、10℃/分の昇温温度で熱重量分析を行った。図6に実施例5及び比較例5で得られたBa(DPM)2の熱重量分析結果をそれぞれ示す。
図6の熱重量分析結果より明らかなように、比較例5で得られたBa(DPM)2は、十分な揮発が行われておらず、約22重量%と多くの残渣が生じていた。これに対して実施例5で得られたBa(DPM)2は、殆ど残渣を生じることがなく、揮発性に優れる結果となった。
【0043】
<実施例6>
金属含有物として金属ストロンチウムを、配位子前駆体としてジピバロイルメタンをそれぞれ用意し、金属ストロンチウムのエーテル液に金属ストロンチウムに対して2倍モル量のジピバロイルメタンを添加し、室温で30分間反応させることにより粗生成物を得た。この粗生成物を直接導入質量分析装置により分析したところ、製造目的物であるビス(ジピバロイルメタナート)ストロンチウム(Sr(DPM)2)と、Sr(DPM)2が2〜6個重合したオリゴマー等の副生成物、未反応物等の残渣分及びエーテルがそれぞれ含まれていた。次にこの粗生成物を濾過し、残渣分と濾液とに分離した。得られた濾液を濃縮してエーテルを除去した。次に、濃縮物を酸素ガス雰囲気下で140℃、15分間に維持する処理を施した。処理を終えた濃縮物を回収し、製造目的物であるSr(DPM)2を得た。最後に製造したSr(DPM)2を酸素ガスが充填された容器に保存した。
【0044】
<比較例6>
金属含有物として金属ストロンチウムを、配位子前駆体としてジピバロイルメタンをそれぞれ用意し、金属ストロンチウムのメタノール液に金属ストロンチウムに対して2倍モル量のジピバロイルメタンを添加し、室温で30分間反応させることにより粗生成物を得た。次にこの粗生成物を濾過し、残渣分と濾液とに分離した。得られた濾液をメタノール中で再結晶し、製造目的物であるSr(DPM)2を得た。
【0045】
<比較試験11>
実施例6及び比較例6で得られたSr(DPM)2をMOCVD原料として用い、成膜時間当たりの膜厚試験を行った。先ず、基板として表面にSiO2膜(厚さ5000Å)を形成したシリコン基板を6枚ずつ用意し、この基板を図1に示すMOCVD装置の成膜室に設置した。次いで、基板温度を430℃、気化温度を140℃、圧力を約1330Pa(10Torr)にそれぞれ設定した。反応ガスとしてO2ガスを用い、その分圧を500ccmとした。次に、キャリアガスとしてHeガスを用い、原料を0.1cc/分の割合でそれぞれ供給し、成膜時間が1分、5分、10分、20分、30分及び40分となったときにそれぞれ1枚ずつ成膜室より取出した。成膜を終えた基板上のSrO薄膜を断面SEM(走査型電子顕微鏡)像から膜厚を測定した。また、成膜時間が5分の基板上のSrO薄膜を断面SEM(走査型電子顕微鏡)像から段差被覆性を測定した。得られた成膜時間あたりの膜厚及び段差被覆性の結果を表6にそれぞれ示す。
【0046】
【表6】

【0047】
表6より明らかなように、比較例6で得られたSr(DPM)2は、成膜時間に対する膜厚が不均一であり、十分な膜厚も得られていなかった。また、成膜後にMOCVD装置の成膜室内を確認したところ、成膜室内の壁面もかなり汚れが見られた。このような結果となった背景としては、成膜時間が長くなるにつれて気化室内で分解物が蓄積したため、十分な膜厚が得られなかったためと考えられる。これに対して実施例6で得られたSr(DPM)2は、成膜時間あたりの膜厚の結果から、成膜時間あたりの膜厚が厚く、かつ長時間の成膜でも膜が安定して成膜されており、長期成膜安定性が得られていた。段差被覆性については1.0に近い数値が得られており、基板の平坦部分と同様に溝の奥まで均一に成膜されており、優れた気化安定性が得られていた。また、成膜後にMOCVD装置の成膜室内を確認したところ、壁面に汚れは殆ど見られず、成膜室への汚染を抑えることができていた。
【0048】
<比較評価10>
実施例6及び比較例6で得られたSr(DPM)2をそれぞれ用い、アルゴン雰囲気中、10℃/分の昇温温度で熱重量分析を行った。図7に実施例6及び比較例6で得られたSr(DPM)2の熱重量分析結果をそれぞれ示す。
図7の熱重量分析結果より明らかなように、比較例6で得られたSr(DPM)2は、十分な揮発が行われておらず、約25重量%と多くの残渣が生じていた。これに対して実施例6で得られたSr(DPM)2は、殆ど残渣を生じることがなく、揮発性に優れる結果となった。
【0049】
<実施例7>
金属含有物として四塩化ケイ素を用い、四塩化ケイ素のヘキサン液に四塩化ケイ素に対して4倍モル量のジメチルアミノリチウムを配位子前駆体として加え、氷冷して30分間反応させることにより粗生成物を得た。この粗生成物を直接導入質量分析装置により分析したところ、製造目的物であるテトラキスジメチルアミノシラン(Si(Me2N)4)と、Si(Me2N)4が2〜6個重合したオリゴマー等の副生成物、未反応物等の残渣分がそれぞれ含まれていた。次にこの粗生成物を濾過し、残渣分と濾液とに分離した。続いて、得られた濾液を濃縮してヘキサンを除去した。次に、濃縮物を酸素ガス雰囲気下で130℃、10分間に維持する処理を施した。処理を終えた濃縮物を回収し、製造目的物であるSi(Me2N)4を得た。最後に製造したSi(Me2N)4を酸素ガスが充填された容器に保存した。
【0050】
<比較例7>
トリクロロシランに対して5倍モル量のジメチルアミノリチウムを加え、ジメチルアミン溶媒下、室温で24時間反応させることにより粗生成物を得た。次にこの粗生成物を濾過し、残渣分と濾液とに分離した。得られた濾液を濃縮してトリクロロシランを除去した。濃縮液を180℃、約1330Pa(10torr)の条件で減圧蒸留することにより目的物であるSi(Me2N)4を得た。
【0051】
<比較試験11>
実施例7及び比較例7で得られたSi(Me2N)4をMOCVD原料として用い、成膜時間当たりの膜厚試験を行った。先ず、基板として表面にSiO2膜(厚さ5000Å)を形成したシリコン基板を6枚ずつ用意し、この基板を図1に示すMOCVD装置の成膜室に設置した。次いで、基板温度を550℃、気化温度を70℃、圧力を約1330Pa(10Torr)にそれぞれ設定した。反応ガスとしてO2ガスを用い、その分圧を1000ccmとした。次に、キャリアガスとしてHeガスを用い、原料を0.5cc/分の割合でそれぞれ供給し、成膜時間が1分、5分、10分、20分、30分及び40分となったときにそれぞれ1枚ずつ成膜室より取出した。成膜を終えた基板上のSiO2薄膜を断面SEM(走査型電子顕微鏡)像から膜厚を測定した。また、成膜時間が5分の基板上のSiO2薄膜を断面SEM(走査型電子顕微鏡)像から段差被覆性を測定した。得られた成膜時間あたりの膜厚及び段差被覆性の結果を表7にそれぞれ示す。
【0052】
【表7】

【0053】
表7より明らかなように、比較例7で得られたSi(Me2N)4は、成膜時間に対する膜厚が不均一であり、十分な膜厚も得られていなかった。また、成膜後にMOCVD装置の成膜室内を確認したところ、成膜室内の壁面もかなり汚れが見られた。このような結果となった背景としては、成膜時間が長くなるにつれて気化室内で分解物が蓄積したため、十分な膜厚が得られなかったためと考えられる。これに対して実施例7で得られたSi(Me2N)4は、成膜時間あたりの膜厚の結果から、成膜時間あたりの膜厚が厚く、かつ長時間の成膜でも膜が安定して成膜されており、長期成膜安定性が得られていた。段差被覆性については1.0に近い数値が得られており、基板の平坦部分と同様に溝の奥まで均一に成膜されており、優れた気化安定性が得られていた。また、成膜後にMOCVD装置の成膜室内を確認したところ、壁面に汚れは殆ど見られず、成膜室への汚染を抑えることができていた。
【0054】
<比較評価12>
実施例7及び比較例7で得られたSi(Me2N)4をそれぞれ用い、アルゴン雰囲気中、10℃/分の昇温温度で熱重量分析を行った。図8に実施例7及び比較例7で得られたSi(Me2N)4の熱重量分析結果をそれぞれ示す。
図8の熱重量分析結果より明らかなように、比較例7で得られたSi(Me2N)4は、十分な揮発が行われておらず、約15重量%と多くの残渣が生じていた。これに対して実施例7で得られたSi(Me2N)4は、殆ど残渣を生じることがなく、揮発性に優れる結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】MOCVD装置の概略図。
【図2】実施例1及び比較例1で得られたTi(i-Pr)2(DPM)2の熱重量分析によるTG曲線の結果を示す図。
【図3】実施例2及び比較例2で得られたZr(DMHD)4の熱重量分析によるTG曲線の結果を示す図。
【図4】実施例3及び比較例3で得られたPb(DPM)2の熱重量分析によるTG曲線の結果を示す図。
【図5】実施例4及び比較例4で得られたHf(Et2N)4の熱重量分析によるTG曲線の結果を示す図。
【図6】実施例5及び比較例5で得られたBa(DPM)2の熱重量分析によるTG曲線の結果を示す図。
【図7】実施例6及び比較例6で得られたSr(DPM)2の熱重量分析によるTG曲線の結果を示す図。
【図8】実施例7及び比較例7で得られたSi(Me2N)4の熱重量分析によるTG曲線の結果を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属含有物と配位子前駆体とを反応させて有機金属化合物、副生成物及び残渣分を含む粗生成物を得る工程と、
前記得られた粗生成物から残渣分を除去する工程と、
前記残渣分を除去した粗生成物を酸素ガス雰囲気下、130〜150℃で処理する工程と
を含むことを特徴とする有機金属化合物の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の製造方法により得られた有機金属化合物。
【請求項3】
請求項1記載の製造方法により得られた有機金属化合物を有機金属化学気相成長法用原料として用い、有機金属化学気相成長法により金属含有膜を作製することを特徴とする金属含有膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−112790(P2007−112790A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252976(P2006−252976)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】