説明

有機金属化合物

【課題】薄膜の化学蒸着または原子層堆積に有用な有機金属化合物の提供。
【解決手段】少なくとも1つのホルムアミジナートリガンドを含有するヘテロレプティック有機金属化合物が提供される。これらのヘテロレプティック有機金属化合物は、従来の蒸着前駆体よりも改善された性質を有する。かかる化合物は、直接液体注入をはじめとする蒸着前駆体としての使用に好適である。例えばALDおよびCVD等により、かかる化合物またはそれらの有機溶媒中溶液を用いて、薄膜を堆積させる方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、一般に、有機金属化合物の分野に関する。特に、本発明は、薄膜の化学蒸着または原子層堆積に有用な有機金属化合物の分野に関する。
【0002】
原子層堆積(ALD)法において、表面を2以上の化学反応物質の交互に流れる蒸気にさらすことにより、共形薄膜(conformal thin film)が堆積される。第一前駆体(有機金属化合物、ソースまたは反応物質とも呼ばれる)からの蒸気は、その上に所望の薄膜が堆積される表面に提供される。未反応蒸気が次に真空下で系から除去される。次に、第二前駆体からの蒸気が前記表面に提供され、第一前駆体と反応させられ、過剰の第二前駆体蒸気が除去される。ALD法における各行程は典型的には所望のフィルムの単層を堆積させる。所望のフィルム厚が得られるまで、この一連の行程が繰り返される。一般に、ALD法は低い温度、例えば、200〜400℃で行われる。正確な温度範囲は堆積される個々のフィルムならびに用いられる個々の前駆体に依存する。ALD法は純粋な金属ならびに金属酸化物、金属窒化物、金属炭窒化物、および金属ケイ化窒化物を堆積させるために用いられてきた。
【0003】
ALD前駆体は、リアクターにおいて十分な濃度の前駆体蒸気が適当な時間内に基体表面上に単層を堆積させることを保証するために十分揮発性でなければならない。前駆体はさらに、時期尚早に分解することなく、および望ましくない副反応なしに蒸発するために十分安定でなければならないが、基体上に所望のフィルムを形成するために十分反応性でなければならない。このような揮発特性と安定特性の要求されるバランスのために、好適な前駆体が全体的に欠乏している。
【0004】
従来の前駆体はホモレプティック(homoleptic)すなわち、1つのリガンド基を有するものである。ホモレプティック前駆体は均一な化学特性をもたらし、かくして、リガンドの官能性と堆積法を一致させ、かつ調和させる特有の利点をもたらす。しかしながら、1つのリガンド基のみを使用すると、他の最重要な前駆体特性、例えば、表面反応(例えば、化学吸着)および気相反応(例えば、第二の相補前駆体(complementary precursor)との反応)を支配する金属中心の遮蔽、前駆体の揮発性の調節、および前駆体に必要な熱安定性を達成することに対して十分な制御ができない。米国特許出願公開2005/0042372号(Denkら)は、ALDの好適な前駆体として、あるホルムアミジナート化合物をはじめとするあるアミジナート化合物を開示している。これらの化合物は、1つのアミジナートまたはホルムアミジナートリガンドのみを含有する(即ち、これらはホモレプティックである)。かかるホモレプティックアミジナート化合物は任意に、米国特許出願公開2005/0042372号の段落[0033]および[0035]に示されている中性ドナーリガンドであって、金属中心に共有結合していないが、その代わりに金属中心と配位相互作用するものとして包含し得る。米国特許出願公開2005/0042372号のホモレプティックアミジナートは、あるALD条件下で必要とされる揮発性および熱安定性(または他の性質)のバランスを提供しない。かかるホモレプティックアミジナート化合物を用いることにより製造されるフィルムは多くの場合、前記フィルムの抵抗性を増大させる炭素で汚染されていることが判明している。炭素を組み入れることは、一般に、堆積プロセスの間に、あまり安定でない有機部分が分解して、より安定な小さなフラグメントになることと相関性がある。より小さなフラグメントは堆積される薄膜内にトラップされるか、またはフィルム表面において粒子を形成し、これは表面欠損および不十分な形態をもたらす。さらに、あるホモレプティックアミジナートの揮発性は、ALDにおいて実際に用いられるには低すぎる。ある通常のALDプロセスは、直接液体注入プロセスを利用し、ここにおいて、所望の前駆体化合物は好適な有機溶媒と組み合わせられる。しかしながら、アミジナート化合物は典型的には直接液体注入プロセスにおいて実用的であるにはかかる溶媒中の可溶性が不十分である。ALD要件を満たし、実質的に炭素を含まず、粒子を含まないフィルムを製造するために、かなり揮発性であり、熱安定性であり、十分に有機溶媒可溶性の前駆体である好適なソースが依然として必要とされている。
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0042372号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ホルムアミジナートリガンドを有する、特定のヘテロレプティック有機金属化合物が重合触媒として知られている。しかしながら、かかる有機金属化合物は金属含有フィルムの蒸着用前駆体として用いられていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金属含有層を基体上に形成する方法であって:基体を蒸着リアクター中に提供し;気体形態におけるヘテロレプティックホルムアミジナート化合物をリアクターに移送し;および金属を含むフィルムを基体上に堆積することを含む、基体上に金属含有層を形成する方法を提供する。ヘテロレプティックホルムアミジナート化合物は、金属、ホルムアミジナートリガンドおよびアニオン性リガンドを含む。1より多いホルムアミジナートリガンドが有機金属化合物中に存在し得る。さらに、有機金属化合物は1より多いアニオン性リガンドを有し得る。
【0007】
また、フィルムを堆積させる方法であって:リアクター中に基体を提供する行程;第一前駆体化合物として気体形態におけるヘテロレプティックホルムアミジナート化合物をリアクターに移送する行程;第一前駆体化合物を基体の表面上に化学吸着させる行程;任意の化学吸着されない第一前駆体化合物をリアクターから除去する行程;気体形態における第二前駆体をリアクターに移送する行程;第一および第二前駆体を反応する行程、基体上にフィルムを形成する行程;任意の未反応の第二前駆体を除去する行程;を含む方法も本発明により提供される。
【0008】
本発明はさらに、ヘテロレプティックホルムアミジナート化合物を包含する蒸気送出シリンダーを提供する。
【0009】
また、本発明により、金属ホルムアミジナート化合物を調製する方法であって:トリアルキルオルトホルメートを酢酸およびアルキルアミンと反応させて、ジ−アルキルホルムアミジンアセテートを提供し;ジ−アルキルホルムアミジンアセテートを金属アルコキシドと反応させて、金属ジ−アルキルホルムアミジナートを提供することを含む方法も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書全体にわたって使用される場合、特に文脈が他を明確に示していない限り、次の略号は次の意味を有する:℃=摂氏度;ppm=100万分の1部;M=モル;Me=メチル;Et=エチル;i−Pr=イソプロピル;n−Bu=n−ブチル;s−Bu=sec−ブチル;t−Bu=tert−ブチル;t−Am=tert−アミル;DAA=ジ(シリル−置換アルキル)アミノ、ジシリルアミノ、またはジ(アルキル−置換シリル)アミノをはじめとするジアルキルアミノ;EMA=エチルメチルアミノ;Cp=シクロペンタジエニル;MeCp=メチルシクロペンタジエニル;EtCp=エチルシクロペンタジエニル;CO=一酸化炭素;Bz=ベンゼン;AMD=アミジナト;PAMD=ホスホアミジナト;DMA=ジメチルアミノ;TMG=テトラメチルグアニジナト;PMDETA=ペタメチルジエチレントリアミン;およびTHF=テトラヒドロフラン。
【0011】
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素のことを言い、「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードのことを言う。同様に、「ハロゲン化」とは、フッ素化、塩素化、臭素化およびヨウ素化のことを言う。「アルキル」は、線状、分岐状および環状アルキルを包含する。同様に、「アルケニル」および「アルキニル」はそれぞれ線状、分岐状および環状アルケニルおよびアルキニルを包含する。
【0012】
特に他に注記しない限り、全ての量は重量パーセントであり、および全ての比はモル比である。全ての数値範囲は両端を含み、かかる数値範囲が合計して100%までであるという制約があることが明らかである場合を除いては任意の順序で組み合わせ可能である。
【0013】
本発明の有機金属化合物は、一般にホルムアミジナートまたはホルミジナート化合物として知られ、金属、少なくとも1つのホルムアミジナートリガンドおよび少なくとも1つのアニオン性リガンドを含有する。アニオン性リガンドは余分の電子を有するので、マイナスに荷電している。かかるアニオン性リガンドは、対応する中性リガンドと比べて増大した結合相互作用を提供する。好適なホルムアミジナートリガンドは式1のものであり、式中、RおよびRは、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、(C−C)シクロアルキル、ジアルキルアミノアルキル、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジ(シリル−アルキル)アミノ、ジ(アルキル−シリル)アミノ、ジシリルアミノ、アルキルアルコキシ、アルコキシアルキルおよびアリールから独立して選択される。
【0014】
【化1】

【0015】
一般に、本発明の有機金属化合物は、式(RNC(H)NR+m(m−n)(式中、RおよびRは、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、(C−C)シクロアルキル、ジアルキルアミノアルキル、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジ(シリル−アルキル)アミノ、ジ(アルキル−シリル)アミノ、ジシリルアミノ、アルキルアルコキシ、アルコキシアルキルおよびアリールから独立して選択される;M=金属;L=アニオン性リガンド;L=中性リガンド;m=Mの価数;n=1〜6;p=0〜3;mはnよりも大きい)を有する。下付き文字「n」は本発明の化合物中のホルムアミジナートリガンドの数を表す。RおよびRのそれぞれの基の例は、限定なく、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ビニル、アリル、ブテニル、アセチレニル、プロピニル、および置換または非置換アリール基を包含する。アリール基の例としては、これに限定されないが、フェニル、メチルフェニル、エチルフェニル、イソ−プロピルフェニル、ベンジル、トリルおよびキシリルが挙げられる。特に、1以上の分岐または立体的に嵩高いアルキルまたはアルコキシ基、例えば、tert−ブチル、イソ−ブチル、イソ−プロピル、tert−ブトキシ、イソ−ブトキシよびイソ−プロポキシ、またはC−C12アルコキシ基で置換されたある種のアリール基を本発明において好適に使用することができる。
【0016】
本発明のホルムアミジナート化合物を形成するために様々な金属を好適に使用することができる。本発明の有機金属化合物における金属は蒸着プロセス、例えば、ALDまたは化学蒸着法(「CVD」)における使用に好適な任意のものであり得る。典型的には、Mは2族〜16族金属から選択され、ランタニド金属を包含する。さらに典型的には、Mは3〜10、13、および14族から選択される。なおいっそう典型的には、Mは3〜10および13族、ケイ素およびゲルマニウムから選択される。本明細書において用いられるように、「金属」なる用語は、半金属ホウ素、ケイ素、ヒ素、セレンおよびテルルを包含するが、炭素、窒素、リン、酸素および硫黄を包含しない。本発明の有機金属化合物において有用な金属の例は、これに限定されないが、Be、Mg、Sr、Ba、Al、Ga、In、Si、Ge、Sb、Bi、Se、Te、Po、Zn、Sc、Y、Lu、La、ランタニド金属、Ti、Zr、Hf、Nb、W、Mn、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、IrまたはPtを包含する。特に好適な金属は、これに限定されないが、Al、Ga、In、Si、Ge、La、ランタニド金属、Ti、Zr、Hf、Nb、W、Mn、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、IrまたはPtを包含する。
【0017】
様々なアニオン性リガンド(L)を本発明において用いることができる。このようなリガンドは負電荷を有する。好適なリガンドとしては、これに限定されないが:水素化物、ハロゲン化物、アジ化物、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジ(シリル−アルキル)アミノ、ジシリルアミノ、ジ(アルキル−シリル)アミノ、ジアルキルアミノアルキル、ヒドラジド、ホスフィド、ニトリル、アルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、アルコキシアルキルジアルキルアミノ、シロキシ、ジケトネート、シクロペンタジエニル、シリル、ベータ−ジケトナト、ベータ−ジイミナト、ベータ−ケトイミナト、ジアルキルアミノ、ジ(シリル−アルキル)アミノ、ジシリルアミノ、またはジ(アルキル−シリル)アミノ、ピラゾレート、グアニジネート、ホスホグアニジネート、アルキルアミジナート、アリールアミジナート、およびホスホアミジナートが挙げられる。かかるリガンドのいずれかは任意に、例えば、1以上の水素を別の置換基、例えば、ハロ、アミノ、ジシリルアミノおよびシリルで置き換えることにより置換することができる。アニオン性リガンドの例としては、これに限定されないが:(C−C10)アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル;(C−C10)アルケニル、例えば、エテニル、アリル、およびブテニル;(C−C10)アルキニル、例えば、アセチレニルおよびプロピニル;(C−C10)アルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、およびブトキシ;(C−C10)アルキルアミノ、例えば、メチルアミノ、エチルアミノおよびプロピルアミノ;ジ(C−C10)アルキルアミノ、例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、エチルメチルアミノおよびジプロピルアミノ;シクロペンタジエニル、例えば、シクロペンタジエニル、メチルシクロペンタジエニル、エチルシクロペンタジエニルおよびペンタメチルシクロペンタジエニル;ジ(C−C10)アルキルアミノ(C−C10)アルコキシ、例えば、ジメチルアミノエトキシ、ジエチルアミノエトキシ、ジメチルアミノプロポキシ、エチルメチルアミノプロポキシおよびジエチルアミノプロポキシ;シリル、例えば、(C−C10)アルキルシリルおよび(C−C10)アルキルアミノシリル;グアニジネート、例えば、テトラメチルグアニジネートおよびテトラエチルグアニジネート;およびホスホアミジナート、例えば、N,P−ジメチル−メチルホスホアミジナト、N,P−ジエチル−メチルホスホアミジナト、N,P−ジエチル−エチルホスホアミジナト、N,P−ジ−イソ−プロピル−メチルホスホアミジナト、N,P−ジ−イソ−プロピル−イソ−プロピルホスホアミジナト、およびN,P−ジメチル−フェニルホスホアミジナトが挙げられる。好ましいアニオン性リガンドは、シクロペンタジエニル、ジ(C−C10)アルキルアミノ、アミジナート、および(C−C10)アルコキシである。2以上のアニオン性リガンドが存在する場合、かかるリガンドは同じであっても、異なっていてもよい。
【0018】
中性リガンド(L)は本発明の化合物において任意であり得る。かかる中性リガンドは全体的な電荷を有さず、安定剤として機能することができる。中性リガンドとしては、制限なく、CO、NO、窒素(N)、アミン、ホスフィン、アルキルニトリル、アルケン、アルキン、および芳香族化合物が挙げられる。「アルケン」なる用語は、1以上の炭素−炭素二重結合を有する任意の脂肪族化合物を包含する。中性リガンドの例としては、これらに限定されないが:(C−C10)アルケン、例えば、エテン、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ノルボルネン、ビニルアミン、アリルアミン、ビニルトリ(C−C)アルキルシラン、ジビニルジ(C−C)アルキルシラン、ビニルトリ(C−C)アルコキシシランおよびジビニルジ(C−C)アルコキシシラン;(C−C12)ジエン、例えば、ブタジエン、シクロペンタジエン、イソプレン、ヘキサジエン、オクタジエン、シクロオクタジエン、ノルボルナジエンおよびα−テルピネン;(C−C16)トリエン;(C−C10)アルキン、例えば、アセチレンおよびプロピン;および芳香族化合物、例えば、ベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、トルエン、o−シメン、m−シメン、p−シメン、ピリジン、フランおよびチオフェンが挙げられる。中性リガンドの数は、Mについて選択された特定の金属に依存する。2以上の中性リガンドが存在する場合、かかるリガンドは同一であっても、異なっていてもよい。
【0019】
本発明のホルムアミジナート化合物は、当該分野において公知の様々な方法により調製することができる。例えば、Zhangら、Organometallics、2004 (23)、3512ページの一般的手順を使用することができる。さらに、特定のアミジナートの製造のための、米国特許第5,502,128号(Rauschら)および国際公開第04/46417号において開示されている一般的手順は、本発明のホルムアミジナートを調製するために当業者が変更することができる。本発明の化合物は、リチウムホルムアミジナート塩を金属ハロゲン化物と好適な溶媒、例えば、エーテル中で反応させることにより調製することができる。かかる反応は、ある温度範囲にわたって行うことができ、特定の反応に関しては室温が好適である。本発明の化合物の別の合成法において、アルキルリチウムをまず金属ハロゲン化物と好適な溶媒、例えば、THF中、好適な温度、例えば、室温で反応させ、続いてホルムアミジンと好適な溶媒中、典型的には第一反応について用いられたのと同じ溶媒中で反応させることができる。
【0020】
別法として、ホルムアミジンリガンドは、好適なカルボジイミド化合物(アルキルおよび/またはアリールまたはジアルキルアミノ)をトリエチルシランとパラジウム触媒の存在下で反応させ、次いでアルコール分解行程を行って、遊離ホルムアミジンを形成することにより調製することができる。二塩化パラジウムは特に好適なパラジウム触媒である。低級アルコール、例えば、メタノールおよびエタノールが典型的にはアルコール分解行程において使用される。カルボジイミド化合物の例としては、式R−N=C=N−Rを有するものが挙げられるがこれに制限されない。RおよびRのそれぞれは、独立して、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ジアルキルアミノ、ジ(シリル−アルキル)アミノ、ジシリルアミノ、ジ(アルキル−シリル)アミノ、およびアリールから選択される。カルボジイミドの例としては、制限なく、ジ−イソ−プロピルカルボジイミド、ジ−tert−ブチルカルボジイミド、ジ−メチルカルボジイミド、およびN−tert−ブチル−N’−エチルカルボジイミドが挙げられる。好適なカルボジイミドは、一般に、例えば、Sigma−Aldrich(ウィスコンシン州ミルウォーキー)などから商業的に入手可能であるか、または様々な方法、例えば、前記の開示された方法により調製することができる。前記反応により調製されるホルムアミジンリガンドは、典型的には、H(RNCHNR)(式中、RおよびRは、独立して、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ジアルキルアミノ、ジ(シリル−アルキル)アミノ、ジシリルアミノ、ジ(アルキル−シリル)アミノ、およびアリールから選択される)を有する。前記反応は、様々な温度、例えば還流で行うことができる。典型的には、反応は数時間から数日内で完了する。
【0021】
本発明の金属ホルムアミジナート有機金属化合物は、金属塩(一般に、ハロゲン化物)の、アルカリ金属ホルムアミジナートとのメタセシス反応により調製することができる。アルカリ金属ホルムアミジナートは、ホルムアミジン化合物を、アルキルアルカリ金属試薬(例えば、n−ブチルリチウム、メチルリチウムおよびターシャリーブチルリチウム)、アルカリ金属水素化物(例えば、水素化ナトリウムおよび水素化カリウム)またはアルカリ金属アミド(例えば、ナトリウムアミド)と反応させることにより調製することができる。別法として、金属ホルムアミジナートは、金属ジアルキルアミドおよび遊離ホルムアミジン間の有機溶媒の存在下での交換反応により調製することができる。前記反応は一般に、例えば、窒素、アルゴンまたはその混合物などの不活性雰囲気下で行われる。典型的には、かかる反応において使用される有機溶媒は、金属および酸素化不純物を実質的に有さない。「実質的に有さない」とは、有機溶媒が0.005%未満の金属および酸素化不純物を含有することを意味する。
【0022】
金属ホルムアミジナート化合物は:トリアルキルオルトホルメートを酢酸および有機アミンと反応させて、ジ−アルキルホルムアミジンアセテートを提供し;ジ−アルキルホルムアミジンアセテートを金属含有塩基と反応させて、金属ジ−アルキルホルムアミジナートを提供することにより調製することができる。好適なオルトホルメートは、トリ(C−C)アルキルオルトホルメート、例えば、トリエチルオルトホルメートである。様々な有機アミン、例えば、(C−C)アルキルアミンおよびアリールアミンを好適に用いることができる。かかる有機アミンは第一アミンである。アルキルアミンの例としては、制限無く、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソ−プロピルアミン、n−ブチルアミン、イソ−ブチルアミンおよびtert−ブチルアミンが挙げられる。好適な金属含有塩基としては、これに限定されないが、金属ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム、金属アルキル、例えば、金属(C−C)アルキル、アリール金属、例えば、フェニルリチウム、および金属アルコキシド、例えば、金属(C−C15)アルコキシドが挙げられる。
【0023】
本発明の有機金属化合物は、金属または金属酸化物または金属窒化物または金属シリケートまたは金属酸窒化ケイ素薄膜の蒸着用前駆体として使用するのに特に好適である。かかる化合物は、様々なCVD法ならびに様々なALD法において用いることができる。2以上のかかる有機金属化合物をCVDまたはALD法において用いることができる。2以上の有機金属化合物が用いられる場合、かかる化合物は、同じ金属であるが、異なるリガンドを有するものを含有するか、あるいは異なる金属を含有し、かつ同じリガンドを有するか、あるいは異なる金属および異なるリガンドを含有し得る。かかる第二有機金属化合物の選択は十分に当業者の能力範囲内である。
【0024】
バブラー(シリンダーとしても知られる)は、堆積リアクターに蒸気相の有機金属化合物を提供するために用いられる典型的な送出装置である。かかるバブラーは、典型的には、注入口、気体入口および出口であって堆積チャンバーに連結されているものを含有する。キャリアガスは典型的には気体入口を通ってバブラーに侵入し、前駆体蒸気を取り込みまたは受け取る。前駆体蒸気を含有する気体は次に出口を通ってバブラーを出て、堆積チャンバーに移送される。様々なキャリアガス、例えば、水素、ヘリウム、窒素、アルゴン、およびその混合物を用いることができる。
【0025】
使用される個々の堆積装置に応じて、様々なバブラーを用いることができる。前駆体化合物が固体である場合、米国特許第6,444,038号(Rangarajanら)および第6,607,785号(Timmonsら)に開示されたバブラー、ならびに他の設計を用いることができる。液体前駆体化合物に関して、米国特許第4,506,815号(Melasら)および第5,755,885号(Mikoshibaら)において開示されたバブラー、ならびに他の液体前駆体バブラーを用いることができる。ソース化合物はバブラー中に液体または固体として維持される。固体ソース化合物は典型的には堆積チャンバーに移される前に気化または昇華させられる。ALD法に関して用いられるバブラーは、必要な蒸気パルスを提供するために必要に応じての開放および閉鎖をするために、空気弁を設備への入口または出口に有し得る。
【0026】
通常のCVD法において、液体前駆体を供給するためのバブラー、ならびに固体前駆体を供給するための特定のバブラーは、気体入口に連結されたディップチューブを含有する。一般に、キャリアガスは有機金属化合物の表面の下に導入され、ソース化合物を通ってその上のヘッドスペースへ上昇し、キャリアガス中に前駆体化合物の蒸気を取り込むかまたは移送する。
【0027】
ALD法において用いられる前駆体は、多くの場合、液体、低融点固体、または溶媒中で処方された固体である。これらの種類の前駆体を取り扱うために、ALD法において用いられるバブラーは、出口と連結されたディップチューブを含有し得る。気体は入口を通ってこれらのバブラーに入り、バブラーを加圧し、前駆体をディップチューブ中上昇させ、バブラーから押し出す。
【0028】
本発明は、前記の有機金属化合物を含む送出装置を提供する。一つの実施態様において、送出装置は、断面を有する内部表面を有する伸長した円筒形部分、頂部閉鎖部分および底部閉鎖部分を有する容器を含み、頂部閉鎖部分は、キャリアガスを導入するための入口開口部、および出口開口部を有し、伸長した円筒形部分は、前記の有機金属化合物を含有するチャンバーを有する。
【0029】
本発明は、前記のヘテロレプティックホルムアミジナート化合物で飽和した流体流れを、断面を有する内部表面を有する伸長した円筒形部分、頂部閉鎖部分および底部閉鎖部分を有し、頂部閉鎖部分が、キャリアガスを導入するための入口開口部および出口開口部を有し、伸長した円筒形部分が有機金属を含有するチャンバーを有し;入口開口部はチャンバーと流体連通し、チャンバーは出口開口部と流体連通している容器を含む化学蒸着系に供給するための装置を提供する。特に、有機金属化合物は、一般式(RNCHNR+m(m−n)(式中、RおよびRは、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ジアルキルアミノ、ジ(シリル−アルキル)アミノ、ジシリルアミノ、ジ(アルキル−シリル)アミノ、およびアリールから独立して選択される;M=金属;L=アニオン性リガンド;L=中性リガンド;m=Mの価数;n=1〜6;p=0〜3;mはnよりも大きい)を有する。さらに、本発明により、前記有機金属化合物で飽和された流体流れを供給するための1以上の装置を含む、金属フィルムの化学蒸着用装置も提供される。
【0030】
堆積チャンバーは典型的には、少なくとも一つ、おそらくは多くの基体がその中に配置される加熱された容器である。堆積チャンバーは、典型的には副生成物をチャンバーから抜き出しすための、適当ならば減圧を提供するために真空ポンプに連結された、出口を有する。金属有機CVD(「MOCVD」)は大気圧または減圧で行うことができる。堆積チャンバーは、ソース化合物の分解を誘発するために十分高い温度に維持される。典型的な堆積チャンバー温度は200℃から1200℃であり、さらに典型的には200〜600℃であり、選択される正確な温度は効率的な堆積を提供するために最適化される。任意に、堆積チャンバー中の温度は、基体が高温に維持されるならば、あるいは他のエネルギー、例えばプラズマが高周波源により生じるならば、全体として低下させることができる。
【0031】
堆積のための好適なな基体は、電子装置製造の場合においては、ケイ素、シリコンゲルマニウム、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム、インジウム燐などであり得る。かかる基体は、集積回路およびメモリーチップの製造において特に有用である。
【0032】
堆積は所望の性質を有するフィルムを製造するために望ましいだけ長く続けられる。典型的には、フィルム厚は、堆積を停止した時に、数百オングストロームから数千オングストロームまたはそれ以上である。
【0033】
したがって、本発明は:a)基体を蒸着リアクター中に提供する行程;b)前駆体として気体形態の前記ヘテロレプティックホルムアミジナート化合物をリアクターに移送する行程;およびc)金属を含むフィルムを基体上に堆積させる行程を含む、金属フィルムを堆積させるための方法を提供する。典型的なCVD法において、前記方法は、リアクター中で前駆体を分解する行程をさらに含む。
【0034】
金属含有薄膜(金属または金属酸化物または金属窒化物または金属シリケートまたは金属酸窒化ケイ素)は、基体を一つづつ、フィルムが形成される元素のそれぞれの前駆体化合物の蒸気に交互に付すことにより、ALDによりほぼ完全に化学量論的に製造される。ALD法において、基体は第一前駆体の蒸気に付され、前記第一前駆体は基体の表面と、かかる反応が起こるために十分高い温度で反応することができ、これにより第一前駆体(またはその中に含まれる金属)の単一の原子層が基体の表面上に形成され、かくして形成された表面であって、その上に第一前駆体原子層を有するものを第二前駆体の蒸気に付し、前記第二前駆体は第一前駆体と、かかる反応が起こるために十分高い温度で反応し、これにより、所望の金属フィルムの単一の原子層が基体の表面上に形成される。形成されるフィルムが所望の厚さに達するまで、第一および第二前駆体を交互に使用することにより、この手順を続けることができる。かかるALD法において用いられる温度は、典型的には、MOCVD法において用いられるものよりも低く、200℃〜400℃の範囲であり得るが、選択された前駆体、堆積されるフィルム、および当業者に公知の他の基準に応じて、他の好適な温度を用いることができる。
【0035】
ALD装置は典型的には、真空雰囲気を提供するための真空チャンバー手段、真空チャンバー手段中に配置された一対の手段であって、少なくとも1個の基体を支持するための支持手段および2つの異なる前駆体のそれぞれ少なくとも2種の蒸気のソースを形成するためのソース手段、およびまず前駆体の一つの単一の原子層、次いで他の前駆体の単一の原子層を基体上に提供するための一対の手段の他方に関して一つの手段を操作するための一対の手段の一つと操作可能に連結された操作手段を含む。ALD装置の説明に関しては米国特許第4,058,430号(Suntola)参照。
【0036】
さらなる実施態様において、本発明は、フィルムを堆積させる方法であって:基体を蒸着リアクター中に提供する行程;第一前駆体として気体形態の前記有機金属化合物をリアクターに移送する行程;第一前駆体化合物を基体の表面上に化学吸着させる行程;任意の化学吸着されない第一前駆体化合物をリアクターから除去する行程;気体形態の第二前駆体をリアクターに移送する行程;第一および第二前駆体を反応させて、基体上にフィルムを形成する行程;および任意の未反応第二前駆体を除去する行程を含む、フィルムを堆積させる方法を提供する。第一および第二前駆体を移送する交互行程ならびに第一および第二前駆体を反応させる行程は所望の厚さのフィルムが得られるまで繰り返される。前駆体をリアクターから除去する行程は、真空下でリアクターを排気すること、および非反応物質気体および/または溶媒蒸気を用いてリアクターをパージすることの1以上を含み得る。第二前駆体は、第一前駆体と反応して所望のフィルムを形成する任意の好適な前駆体であり得る。かかる第二前駆体は任意にもう一つ別の金属を含有してもよい。第二前駆体の例としては、これに限定されないが、酸素、オゾン、水、過酸化物、アルコール、亜酸化窒素およびアンモニアが挙げられる。
【0037】
本発明の有機金属化合物がALD法または直接液体注入法において用いられる場合、これらは有機溶媒と組み合わせることができる。有機金属化合物に対して可溶性及び適切に不活性の両方であり、有機金属化合物の蒸気圧、熱安定性、および極性に適合する任意の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒の例としては、制限なく、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、直鎖アルキルベンゼン、ハロゲン化炭化水素、シリル化炭化水素、アルコール、エーテル、グリム、グリコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、スルホン酸、フェノール、エステル、アミン、アルキルニトリル、チオエーテル、チオアミン、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、シリコーン油、ニトロアルキル、アルキルニトレート、およびその混合物が挙げられる。好適な溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジグリム、n−ブチルアセテート、オクタン、2−メトキシエチルアセテート、エチルラクテート、1,4−ジオキサン、ビニルトリメチルシラン、ピリジン、メシチレン、トルエン、およびキシレンが挙げられる。有機溶媒の混合物を用いることができる。直接液体注入法において用いられる場合、有機金属化合物の濃度は、典型的には、0.05〜0.25M、さらに典型的には0.05〜0.15Mの範囲である。有機金属化合物/有機溶媒組成物は、溶液、スラリーまたは分散液の形態であってよく、好適には溶液であり得る。
【0038】
本発明の有機金属化合物および有機溶媒を含む組成物は、直接液体注入を用いる蒸着法における使用に好適である。好適な直接液体注入法は、米国特許出願公開第2006/0110930号(Senzaki)に記載されているものである。
【0039】
本発明によりさらに提供されるのは、電子装置を製造する方法であって、前記方法のいずれか一つを用いて金属含有フィルムを堆積させる行程を含む方法である。
【0040】
本発明は、特にALD用ヘテロレプティックホルムアミジナート前駆体の使用する蒸着法であって、ホルムアミジナートリガンドの使用により、官能性、所望の熱安定性、匹敵するアセトアミジナートおよびグアニジネート類似体よりも高い蒸気圧、適当な金属中心遮蔽およびよく制御された表面ならびに堆積に所望の順応性で相乗的に作用を及ぼす気相反応の、好適なバランスを有するものの付与を提供する。本発明のヘテロレプティックホルムアミジナート化合物は、通常のアミジナートおよびグアニジネート化合物と比較して、堆積物、粒子、および表面欠損、例えば、粗さおよび組成の不均一性のない、より清浄なフィルムの堆積を提供する。本発明のヘテロレプティックホルムアミジナート化合物は、これらの通常の化合物と比較して、より長い貯蔵寿命も有し、安全性の問題が減少している。特に、安定な芳香族(即ち、アリールを含む)溶媒は、これらのソースを使用したALD成長の間にその場で生成すると考えられるので、芳香族ヘテロレプティックホルムアミジナート化合物は、堆積の過程におけるフィルムの清浄化のための外部溶媒の必要性を排除することが期待される。
【0041】
次の実施例は、本発明の様々な態様を説明することが期待される。
【実施例1】
【0042】
ジ−イソ−プロピルホルミジン(di−iso−propylformidine)はZhangら、Organometallics、2004(23)、3512ページの方法に従って合成された。ジイソプロピルカルボジイミド(0.5モル)およびトリエチルシラン(0.6モル)の混合物の溶液を塩化パラジウム(1〜2%)とともに圧力容器中、大気圧および不活性雰囲気下で密封した。次に、圧力容器を油浴中、48時間、一定して磁気撹拌しながら150℃に加熱した。混合物を室温に冷却した後、中間体シリル保護ホルムアミジンを反応混合物から減圧下(0.7torr、93Pa)、80℃で蒸留した。新たに蒸留された中間体に、次いで乾燥メタノール(0.53モル)を添加した。1.5時間後、最終固体を減圧下で蒸留した。収率は約30〜40%であった。
【実施例2】
【0043】
ジ−イソ−プロピルホルミジンアセテートを次のように合成した。トリエチルオルトホルメート(503g、3.4モル)および酢酸(204g、3.4モル)の混合物を不活性雰囲気下、130〜140℃で還流させた。反応の完了後、イソプロピルアミン(590ml、6.8モル)を滴下し、さらに1.5時間還流させた。揮発性物質を155℃で蒸留した。生成物ジ−イソプロピルホルムアミジンアセテートを90℃および0.7Torr(93Pa)圧力で蒸留した。
【0044】
ジ−イソプロピルホルムアミジンアセテートを、対応するアルコール(約50%)中の新たに調製されたアルカリ金属アルコキシド溶液に、80℃、不活性雰囲気下で添加した。粗生成物、ジ−イソプロピルホルムアミジンを反応混合物から80℃、1Torr(133Pa)圧力で蒸留した。生成物を50℃、4Torr(533Pa)圧力での第二蒸留によりさらに精製した。全体収率は65%であった。
【実施例3】
【0045】
ジ−イソ−プロピルホルミジナトリチウムを次のようにして合成した。−78℃で、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(ヘキサン中2.3M)を、エーテル性溶媒中に溶解させた等モル量のジ−イソ−プロピルホルミジンと反応させることにより、ジイソプロピルホルミジンのリチウム塩を調製した。添加は1滴ごと、効率よく撹拌しながら行った。添加完了後、反応混合物を室温にした。真空ストリッピングを用いて、溶媒および未反応試薬を除去した。最終生成物(白色固体)の収率は92%より高かった。
【実施例4】
【0046】
ジ−メチルホルミジナトリチウムは、実施例1および3の手順を用い、ジ−イソ−プロピルカルボジイミドをジメチルカルボジイミドと置き換えることにより合成されると期待される。
【実施例5】
【0047】
ジ−tert−ブチルホルミジナトリチウムは、実施例1および3の手順を用い、ジ−イソ−プロピルカルボジイミドをジ−tert−ブチルカルボジイミドと置き換えることにより合成されると期待される。
【実施例6】
【0048】
非対称1−tert−ブチル−3−エチルホルミジナトリチウムは、実施例1〜3の手順を用い、ジ−イソ−プロピルカルボジイミドを1−tert−ブチル−3−エチルカルボジイミドと置き換えることにより合成されると期待される。
【実施例7】
【0049】
ビス(ジ−tert−ブチルホルミジナト)ルテニウムジカルボニル、Ru(tert−Bu−FAMD)(CO)は、[RuCl(CO)(CO)](16.5g、50ミリモル)をTHF(350ml)中新たに調製されたLi(tert−Bu−FAMD)(16.4g、101ミリモル)と反応させることにより合成されると期待される。反応混合物を一夜撹拌し、次いで真空下で濃縮した。残留物をヘキサンで抽出し、セライトを通して濾過した。濾液を次いで濃縮して、粗物質を得、これは昇華により精製されて、純粋な固体生成物が得られると期待される。
【実施例8】
【0050】
ビス(ジ−イソ−プロピルホルミジナト)ビス(エチルメチルアミド)ジルコニウム、(Zr(iso−Pr−FAMD)(NEtMe))は、ジ−イソプロピルホルムアミジン(iso−Pr−FAMDH)(0.3モル、1.03当量)のトルエン中溶液をテトラキス(エチルメチルアミド)ジルコニウム(「TEMAZr」)(0.146モル)のトルエン中溶液に−30℃で添加することにより合成されると期待される。反応混合物をゆっくりと室温まで温め、さらに5時間反応させる。溶媒および他の揮発性物質は真空により除去されると期待される。最終固体生成物は昇華により単離され、昇華または抽出または結晶化またはその組み合わせによりさらに精製されると期待される。
【実施例9】
【0051】
(ジ−イソ−プロピルホルミジナト)トリス(エチルメチルアミド)ジルコニウム、(Zr(iso−Pr−FAMD)(NEtMe)は、ジ−イソプロピルホルムアミジン(0.15モル、1.03当量)のトルエン中溶液をTEMAZr(0.146モル)のトルエン中溶液に−30℃で添加することにより合成されると期待される。反応混合物を次にゆっくりと室温まであたため、さらに5時間反応させる。溶媒および他の揮発性物質は真空により除去され、最終固体生成物は実施例8においてと同様に昇華により単離されると期待される。
【実施例10】
【0052】
次の表に記載される式(RNC(H)NR+m(m−n)の有機金属ヘテロレプティックホルムアミジナート化合物は、実施例1〜9において提供される手順に従って調製されると期待される。
【0053】
【表1】

【0054】
前記表において、コンマにより区切られたリガンドは、各リガンドが当該化合物中に存在することを示す。
【実施例11】
【0055】
ALDまたは直接液体注入法における使用に好適な組成物は、実施例11の特定の化合物を特定の有機溶媒と組み合わせることにより調製される。具体的な組成物を次の表に示す。有機金属化合物は、典型的には直接液体注入について0.2Mの濃度で存在する。
【0056】
【表2】

【実施例12】
【0057】
ジルコニウム前駆体としてビス(ジ−イソ−プロピルホルミジナト)ビス(エチルメチルアミド)ジルコニウム[Zr(iso−Pr−FAMD)(NEtMe)]および好適な酸素源、例えば、HO、Oまたはオゾンを使用した、ALD手段による酸化ジルコニウムの堆積が期待される。典型的には、前駆体は、熱い(一般に200℃〜400℃)基体、例えば、ケイ素、二酸化ケイ素、TaまたはTaNに、好適な酸素源のパルスと交互にパルスにおいて送出することができる。ジルコニウム前駆体は、好適な手段、例えば、キャリアガスの通常のバブリングにより基体に送出することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体を蒸着リアクター中に提供し;気体形態におけるヘテロレプティックホルムアミジナート化合物をリアクターに移送し;金属を含むフィルムを基体上に堆積させることを含み;ヘテロレプティックホルムアミジナート化合物が、金属、ホルムアミジナートリガンドおよびアニオン性リガンドを含む、基体上に金属含有層を形成する方法。
【請求項2】
ヘテロレプティックホルムアミジナート化合物が、式(RNC(H)NR+m(m−n)(式中、RおよびRは、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、(C−C)シクロアルキル、ジアルキルアミノアルキル、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジ(シリル−アルキル)アミノ、ジ(アルキル−シリル)アミノ、ジシリルアミノ、アルキルアルコキシ、アルコキシアルキルおよびアリールから独立して選択される;M=金属;L=アニオン性リガンド;L=中性リガンド;m=Mの価数;n=1〜6;p=0〜3;mはnよりも大きい)を有する請求項1記載の方法。
【請求項3】
が水素化物、ハロゲン化物、アジ化物、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジ(シリル−置換アルキル)アミノ、ジシリルアミノ、ジ(アルキル−置換シリル)アミノ、ジアルキルアミノアルキル、ヒドラジド、ホスフィド、ニトリル、アルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、アルコキシアルキルジアルキルアミノ、シロキシ、ジケトネート、シクロペンタジエニル、シリル、ピラゾレート、グアニジネート、ホスホグアニジネート、アミジナート、およびホスホアミジナートから選択される請求項2記載の方法。
【請求項4】
が、CO、NO、アルケン、ジエン、トリエン、アルキン、および芳香族化合物から選択される請求項2記載の方法。
【請求項5】
Mが2族から16族金属から選択される請求項2記載の方法。
【請求項6】
フィルムを堆積する方法であって:蒸着リアクター中に基体を提供する行程;第一前駆体として気体形態におけるヘテロレプティックホルムアミジナート化合物をリアクターに移送する行程;基体の表面上に第一前駆体化合物を化学吸着させる行程;任意の化学吸着されない第一前駆体化合物をリアクターから除去する行程;気体形態における第二前駆体をリアクターに移送する行程;第一および第二前駆体を反応させて、基体上にフィルムを形成する行程;任意の未反応の第二前駆体を除去する行程;を含み、前記ヘテロレプティックホルムアミジナート化合物が、金属、ホルムアミジナートリガンドおよびアニオン性リガンドを含む方法。
【請求項7】
ヘテロレプティックホルムアミジナート化合物が、式(RNC(H)NR+m(m−n)(式中、RおよびRは、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、(C−C)シクロアルキル、ジアルキルアミノアルキル、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジ(シリル−置換アルキル)アミノ、ジ(アルキル−置換シリル)アミノ、ジシリルアミノ、アルキルアルコキシ、アルコキシアルキルおよびアリールから独立して選択される;M=金属;L=アニオン性リガンド;L=中性リガンド;m=Mの価数;n=1〜6;p=0〜3;mはnよりも大きい)を有する請求項6記載の方法。
【請求項8】
が水素化物、ハロゲン化物、アジ化物、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジ(シリル−アルキル)アミノ、ジシリルアミノ、ジ(アルキル−シリル)アミノ、ジアルキルアミノアルキル、ヒドラジド、ホスフィド、ニトリル、アルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、アルコキシアルキルジアルキルアミノ、シロキシ、ジケトネート、シクロペンタジエニル、シリル、ピラゾレート、グアニジネート、ホスホグアニジネート、アミジナート、およびホスホアミジナートから選択される請求項7記載の方法。
【請求項9】
Mが2族から16族金属から選択される請求項7記載の方法。
【請求項10】
第二前駆体が、酸素、オゾン、水、過酸化物、アルコール、亜酸化窒素およびアンモニアから選択される請求項7記載の方法。

【公開番号】特開2009−79285(P2009−79285A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−146636(P2008−146636)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】