説明

有機金属組成物

【課題】有機金属組成物の提供
【解決手段】ゲルマニウム含有膜の蒸着前駆体として用いるのに好適なゲルマニウム化合物を含有する組成物が提供される。かかる組成物を用いる、ゲルマニウムを含有する膜の堆積方法も提供される。かかるゲルマニウム含有膜は電子装置の製造において特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、有機金属化合物の分野に関する。特に、本発明はゲルマニウム膜の気相堆積に関する。
【背景技術】
【0002】
金属膜は、表面、例えば非導電性表面上に、様々な手段、例えば、化学蒸着(「CVD」)、物理蒸着(「PVD」)、および他のエピタキシャル技術、例えば、液相エピタキシー(「LPE」)、分子線エピタキシー(「MBE」)、化学線エピタキシー(「CBE」)および原子層堆積(「ALD」)によって堆積させることができる。化学蒸着法、例えば、有機金属化学気相堆積(「MOCVD」)は、有機金属前駆体化合物を高温(すなわち室温以上)において、大気圧もしくは減圧のいずれかで分解することによって金属層を堆積させる。様々な金属含有膜を、これらの方法を用いて堆積させることができる。
【0003】
半導体および電子装置用途には、これらの有機金属前駆体化合物は高度に純粋でなければならず、検出可能なレベルのメタロイドおよび金属不純物、例えば、ケイ素および亜鉛並びに酸化不純物を実質的に含んでいてはならない。酸化不純物は、典型的には、有機金属化合物の調製に用いられる溶媒から供給され、他の外来的な水分もしくは酸素の供給源からも供給される。
【0004】
電子装置の高い速度および周波数応答が望まれる特定の用途には、望ましい機能性を得るためにシリコンデバイスへのゲルマニウムの導入が必要である。ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(「HBT」)においては、薄いケイ素−ゲルマニウム層をバイポーラトランジスタのベースとしてシリコンウェハ上に成長させる。ケイ素−ゲルマニウムHBTは、従来のシリコンバイポーラトランジスタと比較した場合、速度、周波数応答、およびゲインにおいて大きな利点を有する。ケイ素−ゲルマニウムHBTの速度および周波数応答はより高価なガリウム−ヒ化物HBTに匹敵する。
【0005】
ケイ素−ゲルマニウムHBTのより高いゲイン、速度、および周波数応答はケイ素−ゲルマニウムの特定の利点、例えば、より狭いバンドギャップおよび抵抗率の減少によるものである。ケイ素−ゲルマニウムは従来のケイ素処理およびツールを用いてケイ素基体上にエピタキシャル成長させることができ、これは装置特性、例えばエネルギー帯構造およびキャリア移動性を操作することを可能にする。例えば、ケイ素−ゲルマニウムベースにおけるゲルマニウム濃度の勾配付けはHBT装置に電場もしくはポテンシャル勾配を組み込み、これがベースを横切るキャリアを加速し、それによりHBT装置の速度がケイ素のみの装置と比較して増加する。ケイ素およびケイ素−ゲルマニウム装置を組み立てるための一般的な方法はCVDによるもの、例えば、減圧CVD(「RPCVD」)によるものである。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0197945号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
表面粗さは歪みシリコン(strained silicon)層、例えば、ケイ素ーゲルマニウム層の成長の問題の1つである。ケイ素−ゲルマニウム層は、典型的には、表面上にトレンチおよびリッジ(ridge)を有する斜交平行線表面形態を示す。かかる表面粗さはケイ素−ゲルマニウム層中に存在する埋没転位によるものである。典型的には、この表面粗さは、例えば化学的機械的平坦化を用いることによる、膜の平坦化によって除去される。この追加の平坦化工程は歪みシリコン膜の製造のサイクル時間およびコストを著しく増加させる。表面粗さが減少したケイ素−ゲルマニウム層を作り出し、それによりかかるケイ素−ゲルマニウム層の平坦化の必要性を低下させることが望ましい。
【0007】
米国特許出願公開第2004/0197945号(Woelkら)は、2以上のゲルマニウム化合物(それらのゲルマニウム化合物のうちの1つがハロゲルマンである)を気相において用いた、ゲルマニウム含有膜の堆積を開示する。このアプローチは、反応器壁上での粒子形成を減少させつつゲルマニウム膜を堆積させ、反応器保守の低減を生じる点において効果的である。この出願は表面粗さの問題に明確に取り組んではいない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ケイ素−ゲルマニウム層を堆積させる方法であって、かかる層を堆積するための従来の方法と比較して表面粗さが減少しているケイ素−ゲルマニウム層を堆積する方法を提供する。一態様において、本発明は、ゲルマニウムを含む膜を基体上に堆積する方法であって、
a)気相においてゲルマニウム化合物と、気相改変剤および表面改変剤から選択される添加剤化合物とを、基体を含有する堆積チャンバに搬送する工程であって、ゲルマニウム化合物が式GeA(式中、各々のAは水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、ジアルキルアミノ、およびジアルキルアミノアルキルから独立に選択される)を有し、かつ添加剤化合物がゲルマニウムを含まない工程、
b)堆積チャンバにおいてゲルマニウム化合物を分解する工程、並びに
c)ゲルマニウムを含む膜を基体上に堆積させる工程、
を含む方法を提供する。
【0009】
別の態様において、本発明は、断面を有する内面を有する伸長された円筒形状の部分、頂部閉鎖部分および底部閉鎖部分を有する容器を含む気相配送装置であって、頂部閉鎖部分は担体ガスを導入するための注入口および排出口を有し、伸長された円筒形状の部分はゲルマニウム化合物と、気相改変剤および表面改変剤から選択される添加剤化合物とを含有するチャンバを有し、注入口はチャンバと流体連通し、かつチャンバは排出口と流体連通し、ゲルマニウム化合物は式GeA(式中、各々のAは水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、ジアルキルアミノ、およびジアルキルアミノアルキルから独立に選択される)を有し、かつ添加剤化合物はゲルマニウムを含まない、気相配送装置を提供する。
【0010】
式GeAのゲルマニウム化合物(式中、各々のAは水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、ジアルキルアミノ、およびジアルキルアミノアルキルから独立に選択される)を含む第1気相配送装置と、気相改変剤および表面改変剤から選択される添加剤化合物を含む第2気相配送装置とを含む装置であって、添加剤化合物はゲルマニウムを含まず、第1および第2気相配送装置は気相におけるゲルマニウム化合物および添加剤化合物を堆積チャンバに提供することが可能である装置も本発明によって提供される。
【0011】
さらに、本発明は、式MGe(式中、Mは金属もしくはメタロイドであり、x=0.5〜0.99、y=0.01〜0.5、x+y=1)のゲルマニウム含有層を含む装置であって、該層は<1nmの短距離平均表面粗さ、および<5nmの長距離平均表面粗さを有し、該ゲルマニウム含有層はy=0.2のとき<4×10cm−2の貫通転位密度を有する装置を提供する。Mはゲルマニウムとは異なる。一態様において、Mはケイ素である。典型的には、y=0.05〜0.45であり、より典型的には、0.1〜0.4である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書を通して用いられる場合、以下の略語は、その文脈が他を明瞭に示していない限り、以下の意味を有するものとする。℃=摂氏度、kPa=キロパスカル、g=グラム、ca.=約、cm=センチメートル、nm=ナノメートル、およびμm=ミクロン=マイクロメートル。
【0013】
「ハロゲン」ばフッ素、塩素、臭素およびヨウ素を指し、「ハロ」はフルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを指す。同様に、「ハロゲン化」はフッ化、塩化、臭化およびヨウ化を指す。「アルキル」は直鎖、分岐鎖および環状アルキルを含む。同様に、「アルケニル」および「アルキニル」は、それぞれ、直鎖、分岐鎖および環状アルケニルおよびアルキニルを含む。「SiGe」という用語はケイ素−ゲルマニウムを指す。「膜」および「層」は本明細書を通して交換可能に用いられる。本明細書で用いられる場合、「CVD」は化学蒸着の全ての形態、例えば、MOCVD、MOVPE、OMVPE、OMCVDおよびRPCVDを含むことを意図する。
【0014】
他に注記されない限り、全ての量は重量パーセントであり、全ての比はモル比である。全ての数値範囲は境界値を含み、かかる数値範囲の合計が100%までに抑制されることが明瞭である場合を除いて、任意の順序で組み合わせ可能である。
【0015】
様々なゲルマニウム化合物を本発明において用いることができる。一般には、ゲルマニウム化合物は式GeAを有し、式中、各々のAは水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、ジアルキルアミノ、およびジアルキルアミノアルキルから独立に選択される。ゲルマニウム化合物はヘテロレプティックでもホモレプティックでもよい。「ヘテロレプティックゲルマニウム化合物」が意味するところは混合基を有するゲルマニウム化合物、すなわち、4つの基を有し、少なくとも1つの基が他の基と異なるゲルマニウム化合物である。「ホモレプティックゲルマニウム化合物」が意味するところは、4つの同じ基を有するゲルマニウム化合物である。
【0016】
ゲルマニウム化合物は様々なアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含有することができる。好適なアルキル基には、これらに限定されることはないが、(C−C12)アルキル、典型的には(C−C)アルキル、より典型的には(C−C)アルキルが含まれる。例示的なアルキル基には、これらに限定されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、およびシクロヘキシルが含まれる。より典型的には、好適なアルキル基には、エチル、イソ−プロピル、およびtert−ブチルが含まれる。好適なアルケニル基には、これらに限定されることはないが、(C−C12)アルケニル、典型的には(C−C)アルケニル、より典型的には(C−C)アルケニルが含まれる。例示的アルケニル基には、ビニル、アリル、メタリルおよびクロチルが含まれる。典型的なアルキニル基には、これらに限定されることはないが、(C−C12)アルキニル、典型的には(C−C)アルキニル、より典型的には(C−C)アルキニルが含まれる。好適なアリール基は(C−C10)アリールであり、これには、これらに限定されるものではないが、フェニル、トリル、キシリル、ベンジルおよびフェネチルが含まれる。2つ以上のアルキル、アルケニル、アルキニルもしくはアリール基が存在するとき、かかる基は同じであっても異なっていてもよい。
【0017】
Rに関して典型的なアミノ(NR)基には、これらに限定されるものではないが、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ−イソ−プロピルアミノ、エチルメチルアミノ、イソ−プロピルアミノ、およびtert−ブチルアミノが含まれる。しかしながら、他の好適なアミノ基を用いることができる。
【0018】
上記アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール基のいずれもが、任意に、1つ以上のアミノ(NR)基で置換されていてもよく、式中、RおよびRはH、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリールから独立に選択される。「置換される」が意味するところは、そのアルキル、アルケニル、アルキニルもしくはアリール基の1個以上の水素が1つ以上のNR基で置き換えられていることである。NR基で置換されている例示的なアルキルには、これらに限定されることはないが、ジメチルアミノ−メチル((CHN−CH−)、ジメチルアミノ−エチル((CHN−C−)、ジエチルアミノ−エチル((CN−C−)、ジメチルアミノ−プロピル((CHN−C−)、およびジエチルアミノ−プロピル((CN−C−)が含まれる。
【0019】
様々なハロゲルマニウム化合物、例えば、これらに限定されるものではないが、テトラハロゲルマンおよび式X4−aGeRのハロゲルマニウム化合物(式中、各々のRはH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよびNRから独立に選択され、RおよびRはH、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリールから独立に選択され、各々のXは独立にハロゲンであり、並びにa=0〜3である)を用いることができる。テトラハロゲルマンは式GeXを有し、式中、各々のXは独立にハロゲンである。2個以上のハロゲンがハロゲルマニウム化合物中に存在するとき、かかるハロゲンは同じであっても異なっていてもよい。
【0020】
例示的ハロゲルマニウム化合物には、これらに限定されることはないが、テトラハロゲルマニウム化合物、例えば、テトラクロロゲルマン、テトラフルオロゲルマン、テトラブロモゲルマン、テトラヨードゲルマン、クロロトリブロモゲルマン、ジクロロジブロモゲルマン、トリクロロブロモゲルマン、トリクロロヨードゲルマン、ジクロロジヨードゲルマン、トリクロロヨードゲルマン、トリブロモヨードゲルマン、ジブロモジヨードゲルマン、ブロモトリヨードゲルマン、ジクロロブロモヨードゲルマン、クロロジブロモヨードゲルマン、クロロブロモジヨードゲルマン、トリクロロフルオロゲルマン、ジクロロジフルオロゲルマン、クロロトリフルオロゲルマン、トリブロモフルオロゲルマン、ジブロモジフルオロゲルマン、ブロモトリフルオロゲルマン、ヨードトリフルオロゲルマン、ジヨードジフルオロゲルマン、トリヨードフルオロゲルマン、クロロブロモヨードフルオロゲルマン、ジクロロブロモフルオロゲルマン、クロロジブロモフルオロゲルマン、ジブロモヨードフルオロゲルマン、ブロモジヨードフルオロゲルマン、ジクロロヨードフルオロゲルマンおよびクロロジヨードフルオロゲルマン;イソ−プロピル(ジメチルアミノ)ゲルマニウム二塩化物、メチル(ジメチルアミノ)ゲルマニウム二塩化物、メチル(ジメチルアミノ)ゲルマニウム二臭化物、ジクロロ(ジエチルアミノ)ゲルマン、ジクロロエチル(ジエチルアミノ)ゲルマン、ジクロロtert−ブチル(ジエチルアミノ)ゲルマン、ジクロロビス(ジメチルアミノ)ゲルマン、並びにクロロエチル(ジメチルアミノプロピル)(ジメチルアミノ)ゲルマン、ジクロロtert−ブチル(ジメチルアミノ)ゲルマン、クロロジ−イソ−プロピル(ジメチルアミノ)ゲルマン、トリメチルゲルマニウム塩化物、メチルゲルマニウム三塩化物、トリメチルゲルマニウムフッ化物、トリメチルゲルマニウム臭化物、トリス(トリフルオロメチル)ゲルマニウムヨウ化物、メチルゲルマニウム三フッ化物、ジメチルゲルマニウム二フッ化物、ジクロロメチルゲルマン、ジメチルゲルマニウム二塩化物、トリメチルゲルマニウムヨウ化物、ビニルゲルマニウム三塩化物、エチルゲルマニウム三塩化物、クロロtert−ブチルジメチルゲルマン、アリルゲルマニウム三塩化物、tert−ブチルゲルマニウム三塩化物、ジエチルゲルマニウム二塩化物、トリメチルゲルマニウム塩化物、n−ブチルゲルマニウム三塩化物、トリメチルゲルマニウム臭化物、ジ−n−ブチルゲルマニウム二塩化物、フェニルゲルマニウム二塩化物、トリ−n−ブチルゲルマニウム臭化物、トリ−n−ブチルゲルマニウム塩化物、並びにベンジルゲルマニウム三塩化物が含まれる。一態様において、ゲルマニウム化合物はテトラハロゲルマンである。
【0021】
他の好適なゲルマニウム化合物には、これらに限定されることはないが、ゲルマン、アルキルゲルマン、例えば、テトラメチルゲルマン、テトラエチルゲルマン、テトラ−n−プロピルゲルマン、メチルゲルマン、ジメチルゲルマン、トリメチルゲルマン、エチルゲルマン、ジエチルゲルマン、トリメチルゲルマン、ジメチルジエチルゲルマン、tert−ブチルメチルゲルマン、tert−ブチルジメチルゲルマン、tert−ブチルトリメチルゲルマン、tert−ブチルエチルゲルマン、tert−ブチルジエチルゲルマン、tert−ブチルトリメチルゲルマン、tert−ブチルイソ−プロピルゲルマン、メチルtert−ブチルイソ−プロピルゲルマン、イソ−プロピルゲルマン、ジ−イソ−プロピルゲルマン、ジ−イソ−プロピルジメチルゲルマン、トリ−イソ−プロピルゲルマン、トリ−イソ−プロピルメチルゲルマン、ジ−イソ−プロピルジエチルゲルマン、イソ−ブチルゲルマン、ジ−イソ−ブチルゲルマン、ジ−イソ−ブチルジエチルゲルマン、トリ−イソ−ブチルゲルマン、トリ−イソ−ブチルメチルゲルマン、およびジ−イソ−ブチルジメチルゲルマン;アミノゲルマン、例えば、(ジメチルアミノ)ゲルマン、ビス−(ジメチルアミノ)ゲルマン、メチル(ジメチルアミノ)ゲルマン、エチル(ジメチルアミノ)ゲルマン、ジエチル(ジエチルアミノ)ゲルマン、tert−ブチル(ジメチルアミノ)ゲルマン、tert−ブチルビス(ジメチルアミノ)ゲルマン、エチルtert−ブチルビス(ジメチルアミノ)ゲルマン、イソ−プロピル(ジメチルアミノ)ゲルマン、イソ−プロピル(ジエチルアミノ)ゲルマン、ジ−イソ−プロピルビス(ジメチルアミノ)ゲルマン、n−プロピル(ジメチルアミノ)ゲルマン、およびn−プロピル(ジエチルアミノ)ゲルマン;並びにハロゲルマニウム化合物、例えば、tert−ブチルジメチルゲルマニウム塩化物、tert−ブチルジメチルゲルマニウム臭化物、tert−ブチルジエチルゲルマニウム塩化物、tert−ブチルジエチルゲルマニウムヨウ化物、ジメチルゲルマニウム二塩化物、トリメチルゲルマニウム塩化物、トリメチルゲルマニウム臭化物、tert−ブチルゲルマニウム三塩化物、イソ−プロピルゲルマニウム塩化物、イソ−プロピルゲルマニウム三塩化物、ジ−イソ−プロピルゲルマニウム二臭化物、イソ−プロピルジメチルゲルマニウム塩化物、イソ−プロピルメチルゲルマニウム二塩化物、およびイソ−プロピルジメチルゲルマニウム臭化物が含まれる。
【0022】
本発明において有用なゲルマニウム化合物は、一般には、様々な供給源から商業的に入手可能であるか、または当該技術分野において記載される方法、例えば、米国特許出願公開第2004/0197945号に記載される方法によって製造することができる。1より多くのゲルマニウム化合物を本発明において用いることができることは当該技術分野における当業者に理解される。
【0023】
電子装置製造において用いるには、ゲルマニウム化合物は、典型的には、金属性不純物、例えば、亜鉛およびアルミニウムを実質的に含まず、好ましくは、亜鉛およびアルミニウムを含まない。かかるゲルマニウム化合物は、典型的には、ケイ素も実質的に含まない。「実質的に含まない」が意味するところは、それらの化合物が含むかかる不純物が0.5ppm未満であり、好ましくは、0.25ppm未満であることである。別の態様においては、本発明のゲルマニウム化合物は「5−ナイン」純度、すなわち、99.999%以上の純度を有する。より典型的には、ゲルマニウム化合物は「6−ナイン」、すなわち、99.9999%以上の純度を有する。
【0024】
本発明において有用な添加剤化合物は気相改変剤および表面改変剤から選択される。様々な気相改変剤および表面改変剤を用いることができる。添加剤化合物はゲルマニウムを含まない。「気相改変剤」はゲルマニウム化合物の気相反応性を向上させる化合物を指す。理論によって拘束されることを望むものではないが、かかる気相改変剤は、ゲルマニウム化合物よりも低い温度で分解する気相ゲルマニウム中間体を形成するか、もしくはその形成を補助し、または、その代わりに、気相においてゲルマニウム化合物を分解するための触媒として作用するものと考えられる。好適な気相改変剤には、これらに限定されるものではないが、ケイ素およびスズ化合物、IA族化合物、IIA族化合物、IIIA族化合物、VA族化合物、IB族化合物、IVB族合物、VB族化合物、VIB族化合物、VIIB族化合物、およびVIII族化合物が含まれる。特に好適な添加剤化合物はホウ素、アルミニウム、インジウム、ガリウム、スズ、タングステン、チタン、モリブデン、ルテニウム、白金、パラジウム、窒素、ヒ素、リン、アンチモンおよびビスマスの1以上を含むものである。例示的なIA族化合物には、これらに限定されることはないが、アルキルリチウム化合物、アルキルナトリウム化合物、水素化ナトリウム、およびハロゲン化カリウム、例えば、フッ化カリウムが含まれる。例示的なIIA族化合物には、これらに限定されるものではないが、アルキルベリリウム化合物、シクロペンタジエニルマグネシウム化合物、並びにカルシウム、バリウムおよびストロンチウムの1以上のハロゲン化化合物が含まれる。例示的なIIIA族化合物には、アルキルアルミニウム化合物、アルキルインジウム化合物、アルキルガリウム化合物、ハロアルミニウム化合物、ハロインジウム化合物、ハロガリウム化合物、アルキルホウ素化合物、およびハロホウ素化合物が含まれる。例示的なVA族化合物には、これらに限定されることはないが、アルキル窒素化合物、アルキルリン化合物およびアルキルヒ素化合物が含まれる。例示的なIB族化合物には、これらに限定されるものではないが、ハロゲン化第一銅、銀シクロペンタジエニド(silver cyclopentadienid)が含まれる。例示的なVB族化合物には、これらに限定されることはないが、バナジウム、ニオブおよびタンタルの塩化物および臭化物が含まれる。例示的なVIB族化合物には、これらに限定されるものではないが、クロム、モリブデンおよびタングステンのハロゲン化物が含まれる。例示的なVIIB族化合物には、これらに限定されることはないが、シクロペンタジエニルマンガン、四臭化マンガン、および四塩化マンガンが含まれる。例示的なVIII族化合物には、これらに限定されるものではないが、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、および白金のシクロペンタジエニルおよび塩化物化合物が含まれる。例示的な気相改変剤には、これらに限定されることはないが、三臭化ホウ素、tert−ブチルアミン、非対称性ジメチルヒドラジン、ホスフィン、tert−ブチルホスフィン、アルシン、tert−ブチルアルシン、パラジウムシクロペンタジエニド、白金シクロペンタジエニド、ジシクロペンタジエニルルテニウム、エチルベンジルモリブデン、タングステン化合物、およびチタン化合物が含まれる。
【0025】
「表面改変剤」は成長するケイ素含有膜の粗さを減少させる化合物を指す。理論によって束縛されることを望むものではないが、かかる表面改変剤は成長するゲルマニウム含有膜に対する界面活性剤効果を提供し、または、その代わりに、腐食剤としてゲルマニウム含有膜の表面トポグラフィーを調節するものと考えられる。好適な表面改変剤には、これらに限定されるものではないが、IIIA族化合物、VA族化合物、スズ化合物、例えば、塩化スズ、鉛化合物、ハロゲン化水素、およびケイ素のハロゲン化ヒドリドが含まれる。また、上記IIIA族およびVA族化合物のいずれもが表面改変剤として好適である。例示的なIIIAおよびVA族化合物には、これらに限定されるものではないが、三塩化ガリウム、三塩化アンチモン、トリメチルアンチモン、トリメチルビスマス、およびトリメチルヒ素が含まれる。例示的なハロゲン化水素には、これら限定されるものではないが、HCl、HF、HBr、およびNaHFが含まれる。
【0026】
添加剤化合物は、一般には、様々な供給源から商業的に入手可能である。1よりも多くの添加剤化合物を本発明において用いることができることが理解される。
【0027】
ゲルマニウム化合物は固体であっても、液体であっても、気体であってもよい。同様に、添加剤化合物は固体であっても、液体であっても、気体であってもよい。ゲルマニウム化合物および添加剤化合物が固体、液体もしくは気体であるとき、それらを組み合わせて1台の配送装置、例えば、バブラーに入れることができる。例えば、2以上の気体、2以上の液体、2以上の固体、もしくは液体および固体化合物の組み合わせを組み合わせて1台の配送装置に入れることができる。あるいは、複数の配送装置を用いることもできる。例えば、ゲルマニウム化合物を第1配送装置に添加し、添加剤化合物を第2配送装置に添加することができる。第1配送装置、第2配送装置もしくは両法の配送装置、のいずれかが、それぞれ、1より多くのゲルマニウム化合物および2より多くの添加剤化合物を含有することは当該技術分野における当業者には理解される。さらに、2より多くの配送装置を用いることができることが理解される。1以上の気体状ゲルマニウム化合物、例えば、ゲルマンを1以上の固体もしくは液体添加剤化合物(例えば、三塩化ガリウム)と共に用いようとするとき、気体状ゲルマニウム化合物は固体もしくは液体添加剤化合物と同じ配送装置内にはないことが好ましい。
【0028】
一態様において、ゲルマニウムを含む膜の堆積は、典型的には、まず所望のゲルマニウム化合物、すなわち、原料化合物もしくは前駆体化合物を、堆積チャンバに接続している排出口を有する気相配送装置内に入れることによって行う。用いられる個々の堆積装置に依存して、様々な気相配送装置を用いることができる。固体ゲルマニウム化合物および固体添加剤化合物には、米国特許第6,444,038号(Rangarajanら)および第6,607,785号(Timmonsら)に開示される装置、並びに他の設計のものを用いることができる。液体ゲルマニウム化合物および液体添加剤化合物には、米国特許第4,506,815号(Melasら)および第5,755,885号(Mikoshibaら)に開示される装置並びに他の液体前駆体気相配送装置を用いることができる。固体原料化合物は、典型的には、堆積チャンバに搬送する前に気化もしくは昇華させる。
【0029】
別の態様においては、ゲルマニウム化合物を第1気相配送装置に入れ、添加剤化合物を第2気相配送装置に入れることができる。次に、各々の気相配送装置を同じ堆積装置に接続する。その後、化合物の各々をそれぞれの配送装置から堆積チャンバ内に配送し、気相中のゲルマニウム化合物および添加剤化合物を提供する。気相中の2よりも多くのゲルマニウム化合物および/もしくは2よりも多くの添加剤化合物を提供するため、ゲルマニウムおよび/もしくは添加剤化合物を含有する2台より多くの気相配送装置を用いることができることが理解される。さらなる態様においては、ゲルマニウム化合物および添加剤化合物を1台の配送装置に入れる。
【0030】
さらなる態様においては、ゲルマニウム化合物、例えば、ゲルマンもしくは四塩化ゲルマニウムを第1気相配送装置に入れ、添加剤化合物を第2気相配送装置に入れる。ゲルマニウム化合物および添加剤化合物の両者は堆積チャンバに気相状態で搬送される。かかるゲルマニウム化合物および添加剤化合物を、一態様においては、気相において反応させてゲルマニウム源を形成することができる。このようにして、気相において安定した濃度のゲルマニウム源が提供される。
【0031】
あるいは、添加剤化合物を成長するゲルマニウム含有膜の表面上に一時的に堆積させ、続いて堆積されるゲルマニウム原子によって置換してもよい。このようにして、粗さが減少している表面が得られる。さらなる代替法においては、添加剤化合物を成長する膜中に組み込まれてもよい。添加剤化合物が十分に少量であるならば、そのような組み込みは最終ゲルマニウム含有膜に対する影響がほとんど、もしくは全くないものであり得る。
【0032】
一般的には、添加剤化合物は気相中に、気相中のゲルマニウム化合物のモルを基準にして、0.25モル%までの量で存在してもよい。典型的には、気相中の添加物化合物の量は0.01〜0.25モル%、より典型的には、0.05〜0.20モル%、さらにより典型的には、0.08〜0.15モル%である。
【0033】
本発明は、ゲルマニウム含有膜の堆積のために好適なゲルマニウム化合物で飽和された流体流を化学蒸着システムに供給するための気相配送装置であって、断面を有する内面を有する伸長された円筒形状の部分、頂部閉鎖部分および底部閉鎖部分を有する容器を含み、頂部閉鎖部分は担体ガスを導入するための注入口および排出口を有し、伸長された円筒形上部分は上記ゲルマニウム化合物および添加剤化合物を含有するチャンバを有し、注入口はチャンバと流体連通し、かつチャンバは排出口と流体連通している気相配送装置も提供する。別の態様においては、本発明は、ゲルマニウム含有膜を化学蒸着するための装置であって、上記気相配送装置の1つ以上を含む装置を提供する。かかる気相配送装置は気相におけるゲルマニウムおよび添加剤化合物を1つの堆積チャンバもしくは複数の堆積チャンバに提供するのに用いることができる。
【0034】
ゲルマニウムおよび添加剤化合物は、典型的には、担体ガスを気相配送装置に通すことによって堆積チャンバに搬送される。好適な担体ガスには、窒素、水素、およびそれらの混合物が含まれる。ゲルマニウムおよび/もしくは添加剤化合物が液体であるとき、担体ガスはその化合物の表面下に導入され、その化合物を通してその上の上部空間まで泡立たされて担体ガス中の化合物の蒸気を伴出もしくは移送する。ゲルマニウム化合物および/もしくは添加剤化合物が固体であるとき、担体ガスを配送装置内の化合物の頂部に導入し、固体化合物を通してその化合物の下の空間に移動させて担体ガス中の化合物の蒸気を伴出もしくは移送することができる。その後、伴出もしくは移送された蒸気は堆積チャンバ内に送られる。
【0035】
堆積チャンバは、典型的には、加熱された容器であり、その内部で少なくとも1つ、おそらくは多くの基体が堆積される。堆積チャンバは排出口を有しており、これは、典型的には、副生物をチャンバ外部に取り出し、かつ適切である減少された圧力をもたらすため、真空ポンプに接続される。MOCVDは大気圧もしくは減圧で行うことができる。堆積チャンバは原料化合物の分解を誘導するのに十分な高さの温度に維持される。堆積チャンバの温度は、典型的には、200℃〜1200℃であり、選択される正確な温度は効率的な堆積がもたらされるように最適化される。基体が高温で維持される場合、または他のエネルギー、例えば、高周波(「RF」)エネルギーがRF源によって生成される場合、任意に、堆積チャンバ内の温度を全体として低下させることができる。
【0036】
堆積に好適な基体は、電子装置製造の場合、ケイ素、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、サファイア等であり得る。かかる基体は集積回路の製造において特に有用である。
【0037】
堆積は、望ましい特性を有するゲルマニウム含有膜を生成するのに望ましい限り長く継続される。典型的には、膜厚は数十ナノメートルないし数百マイクロメートルである。
【0038】
本発明は、さらに、ゲルマニウムを含む膜を電子装置基体上に堆積させる工程を含む電子装置の製造方法であって、a)ゲルマニウム化合物と、気相改変剤および表面改変剤から選択される添加剤化合物とを、基体を含有する堆積チャンバに気相において搬送し、該ゲルマニウム化合物は式GeA(式中、各々のAは水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、ジアルキルアミノ、およびジアルキルアミノアルキルから独立に選択される)を有し、かつ添加剤はゲルマニウムを含まない工程、b)堆積チャンバ内でゲルマニウム化合物を分解する工程、並びにc)ゲルマニウムを含む膜を基体上に堆積させる工程、を含む方法を提供する。
【0039】
本発明はゲルマニウム含有膜(例えば、SiGe膜)の堆積に特に好適である。バイポーラーCMOS、すなわちBiCMOSにおいて用いられるとき、SiGe膜は高周波HBTのベースとして用いられ、典型的には、40〜80nmの厚みを有する。このSiGeベース膜および次のSiコレクタ膜を堆積するための基体は、ほぼ仕上げられたCMOS回路を有する高度に構造化されたシリコンウェハである。歪みシリコン、すなわちs−Siにおいて用いられるとき、SiGe膜は、典型的には、平坦シリコンウェハ上に3ないし5マイクロメートルの厚みを有する。このSiGe膜の成長に続いて、薄い(20nm)Si膜を成長させる。このケイ素膜は下層をなすSiGe層(歪みシリコン)の結晶格子を受け継ぐ。歪みシリコンは通常ケイ素よりも非常に速い電気的応答を示す。
【0040】
別の態様において、一群のケイ素−ゲルマニウム層を含む装置を組み立てるための方法が、i)IV族元素の表面層を含む基体を提供する工程、ii)該基体を400℃〜1200℃の範囲の温度に維持する工程、iii)Si1−xGe(式中、xは0〜0.50の範囲をとる)の層を、上記方法を用いるMOCVDによって該基体上に形成する工程、iv)境界のはっきりとした界面を得るため、該基体をほぼ工程i)の温度で維持し、ゲルマニウム化合物の流れを完全に遮断してケイ素前駆体流を続ける工程、並びにv)該基体をほぼ工程i)の温度で維持して歪みシリコンのキャップ層を形成し、それにより電子の移動性および装置の速度を向上する工程によって説明される。
【0041】
本発明の利点は、従来のゲルマニウム含有膜と比較して表面粗さが減少しているゲルマニウム含有膜を得ることができることである。特に、本発明は、式MGe(式中、Mは金属もしくはメタロイドであり、x=0.5〜0.99、y=0.01〜0.5、x+y=1である)のゲルマニウム含有層を含む装置であって、該層が<1nmの短距離平均表面粗さおよび<5nmの長距離平均表面粗さを有し、該ゲルマニウム含有層がy=0.2のとき4×10cm−2の貫通転位密度(「TDD」)を有する装置を提供する。特には、M=ケイ素である。典型的には、TDDは<1×10cm−2である。短距離平均表面粗さおよび長距離平均表面粗さの両者は、用いられる個々の機器に好適な通常のパラメータを用いる原子間力顕微鏡/光学干渉計を用いて決定される。短距離平均表面粗さは10×10μmの画像サイズで決定される。長距離平均表面粗さは40×40μmの画像サイズを用いて決定される。TDDは透過型電子顕微鏡平面観察によって決定されるエッチピット密度を用いて決定される。かかる膜は、典型的には、<0.1cm/cmのパイルアップ密度(pile up density)も有する。パイルアップ密度は透過型電子顕微鏡平面観察によって決定されるエッチピッチ密度を用いて決定される。
【0042】
以下の実施例は本発明のさらに様々な側面を説明することが期待される。全ての操作は不活性雰囲気中、典型的には、乾燥窒素雰囲気の下で行われる。
【実施例】
【0043】
実施例1
MOCVD装置に取り付けられた、四塩化ゲルマニウム(GeCl)および五塩化アンチモン(SbCl)を重量比(99.0:1.0)で含有する組成物を収容する通常の配送装置を用いて、ゲルマニウム膜がサファイア基体上に成長することが期待される。配送装置を加熱し、担体ガス(Hおよび/もしくはN)を加熱された配送装置に通過させる。気相において配合成分で飽和された担体ガスを、サファイア基体を収容する堆積チャンバに配向する。堆積チャンバは気相ゲルマニウム化合物の分解を誘導するのに十分な温度に維持される。ゲルマニウム膜がサファイア基体上に堆積することが期待される。堆積はゲルマニウム膜の所望の厚みが達成されるまで継続することが期待される。エッチピット密度(EPD)測定に基づき、この膜は<1×10cm−2のTDDおよび<0.1cm/cmのパイルアップ密度を有するものと期待される。原子間力顕微鏡(「AFM」)測定によって測定される短距離平均表面粗さは<1Åであることが期待される。
【0044】
実施例2
五塩化アンチモンを重量基準で1%の三塩化ガリウム(GaCl)と置き換えることを除いて実施例1の手順を繰り返す。この膜は実施例1のものに匹敵する表面形態を示すものと期待される。
【0045】
実施例3
(0001)サファイア基体上のMOCVDによって一群のSiGe(1−X)エピタキシャル構造が成長するものと期待される。ジクロロシラン(SiCl)を含有する第1配送装置をMOCVD装置に取り付ける。実施例2による四塩化ゲルマニウム、三塩化ガリウム(GeCl、GaCl)配合物を含有する第2配送装置をMOCVD装置に取り付ける。これらの配送装置を加熱し、担体ガス(Hおよび/もしくはN)を各々の加熱された配送装置に通過させる。気相ジクロロシランで飽和された担体ガスおよび気相四塩化ゲルマニウムで飽和された担体ガスを、サファイア基体を含有する堆積チャンバに配向する。堆積チャンバは大気圧(760Torr、すなわち、101kPa)および気相化合物の分解を誘導するのに十分な温度(例えば、1000℃〜1050℃)に維持する。この群の層については、1ないし2μm厚のSi0.90Ge0.10層がサファイア基体上に最初に成長するものと期待される。四塩化ゲルマニウムの質量流量を増加させることにより、組成Si0.80Ge0.20、Si0.70Ge0.30、およびSi0.60Ge0.40の続く層が成長するものと期待される。SiGe(1−x)段階層の堆積の後、境界の鮮明な界面を得るため、ゲルマニウム配合物気体流を完全に遮断してジクロロシラン流を続ける。この段階SiGeを下層として用い、エピタキシャル歪みシリコン層をキャップ層として堆積させることでケイ素堆積が行われるものと期待される。SiGe(1−x)段階層の堆積における成長速度は0.25μm/分を上回るものと期待される。エッチピット密度(EPD)測定に基づき、この膜は<1×10cm−2のTDD、および<0.5cm/cmのパイルアップ密度を有するものと期待される。AFMによって測定される短距離平均表面粗さは0.1〜0.5nm(1〜5Å)であるものと期待される。
【0046】
実施例4
以下の表は、本発明によるゲルマニウム含有膜の成長において添加剤化合物として用いるのに好適な化合物、並びに表面改変剤もしくは気相改変剤またはその両者としてのそれらの有効性を実現するのに典型的に用いられるそれら化合物の気相濃度を提供する。これらの添加剤は、適切な基体、例えば、サファイア、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウムおよびリン化インジウムを用いる、歪みシリコン(例えば、SiGe)膜の成長に現在用いられる標準CVD膜成長技術の下で用いることができる。
【0047】
【表1】

【0048】
上記表においては、以下の略語が用いられる。Me=メチル、Et=エチル、n−Pr=n−プロピル、i−Pr=イソ−プロピル、n−Bu=n−ブチル、t−Bu=tert−ブチル、Cp=シクロペンタジエニル、Bz=ベンジル、およびacac=アセチルアセトネート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルマニウムを含む膜を基体上に堆積する方法であって、
a)気相において、ゲルマニウム化合物と、気相改変剤および表面改変剤から選択される添加剤化合物とを、基体を含有する堆積チャンバに搬送する工程であって、ゲルマニウム化合物は式GeA(式中、各々のAは水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、ジアルキルアミノ、およびジアルキルアミノアルキルから独立に選択される)を有し、かつ添加剤はゲルマニウムを含まない工程、
b)堆積チャンバにおいてゲルマニウム化合物を分解する工程、並びに
c)ゲルマニウムを含む膜を基体上に堆積させる工程、
を含む方法。
【請求項2】
ゲルマニウム化合物および添加剤化合物が1つの気相配送装置から提供される請求項1記載の方法。
【請求項3】
ゲルマニウム化合物が第1気相配送装置から提供され、及び添加剤化合物が第2気相配送装置から提供される請求項1記載の方法。
【請求項4】
ゲルマニウム化合物が、ハロゲルマンである請求項1記載の方法。
【請求項5】
添加剤化合物が、ケイ素化合物、IIIA族化合物、VA族化合物、IVB族化合物、VIB族化合物、VII族化合物、スズ化合物、鉛化合物、ハロゲン化水素、およびケイ素のハロゲン化ヒドリドから選択される請求項1記載の方法。
【請求項6】
添加剤化合物がIIIA族化合物およびVA族化合物から選択される請求項1記載の方法。
【請求項7】
断面を有する内面を有する伸長された円筒形状の部分、頂部閉鎖部分および底部閉鎖部分を有する容器を含み、頂部閉鎖部分は担体ガスを導入するための注入口および排出口を有する気相配送装置であって、伸長された円筒形状の部分はゲルマニウム化合物と気相改変剤および表面改変剤から選択される添加剤化合物を含有するチャンバをと有し、注入口はチャンバと流体連通し、かつチャンバは排出口と流体連通し、ゲルマニウム化合物は式GeA(式中、各々のAは水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、ジアルキルアミノ、およびジアルキルアミノアルキルから独立に選択される)を有し、かつ添加剤化合物はゲルマニウムを含まない、気相配送装置。
【請求項8】
添加剤化合物がケイ素化合物、IIIA族化合物、VA族化合物、IVB族化合物、VIB族化合物、VII族化合物、スズ化合物、鉛化合物、ハロゲン化水素、およびケイ素のハロゲン化ヒドリドから選択される請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項7記載の気相配送装置を含む、金属膜を化学蒸着するための装置。
【請求項10】
式GeAのゲルマニウム化合物(式中、各々のAは水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、ジアルキルアミノ、およびジアルキルアミノアルキルから独立に選択される)を含む第1気相配送装置と、気相改変剤および表面改変剤から選択される添加剤化合物を含む第2気相配送装置とを含む装置であって、添加剤化合物はゲルマニウムを含まず、第1および第2気相配送装置は気相においてゲルマニウム化合物および添加剤化合物を堆積チャンバに提供することが可能である装置。
【請求項11】
式MGe(式中、Mは金属もしくはメタロイドであり、x=0.5〜0.99、y=0.01〜0.5、x+y=1である)のゲルマニウム含有層を含む装置であって、該層は<1nmの短距離平均表面粗さおよび<5nmの長距離平均表面粗さを有し、該ゲルマニウム含有層はy=0.2のとき<4×10cm−2の貫通転位密度を有する装置。

【公開番号】特開2007−169785(P2007−169785A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−339579(P2006−339579)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】