説明

有機金属錯体、ガス分離用成形体及びガス分離法

【課題】接触したガスに応じて構造を変化させてガスを吸着分離することが可能な成形体を提供する。
【解決手段】柔軟性結晶性の相互嵌合性構造を有し、親和性を有するガスの非存在下における第1の構造と、親和性を有するガスの存在下での当該ガスに対して高い親和性を有する第2の構造をとり得ることを特徴とする、金属イオン、芳香族多価カルボン酸配位子及び窒素原子またはリン原子を含有する芳香族二価配位子から構成される有機金属錯体を含むガス分離用成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機金属錯体に関し、詳しくは、吸着するガスに応じて構造が変化可能な有機金属錯体に関する。また、本発明は有機金属錯体を用いたガス分離用成形体及びガス分離法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス吸着剤はrigidな構造を有し、吸着するガスはこの吸着剤の孔に入り込むことができるものである。例えば特許文献1〜5は、二酸化炭素を吸着する技術を開示しているが、これらは、二酸化炭素を対象とした吸着剤であるが、構造がrigidであるため、複数のガスを吸着することができず、分離能力も不十分であった。
【0003】
特許文献6は、ベンゼンとシクロヘキサンを分離可能な錯体を開示しているが、ガス分離用の錯体についての開示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-212844号公報
【特許文献2】特開2007-203215号公報
【特許文献3】特開2006-051420号公報
【特許文献4】特開2005-187253号公報
【特許文献5】特開2005-040753号公報
【特許文献6】特開2008-247884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、フレキシブルな構造を有し、接触したガスに応じて構造を変化させて、ガスを吸着分離することが可能な有機金属錯体、ガス分離用成形体及びガス分離法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に鑑み検討を重ねた結果、特定の相互嵌合錯体が優れたガス吸着性能を有し、ガスの吸着に適した構造をとり得ることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は、以下の有機金属錯体、ガス分離用成形体及びガス分離法を提供するものである。
項1. 柔軟性結晶性の相互嵌合性構造を有し、親和性を有するガスの非存在下における基底第1構造と、親和性を有するガスの存在下での当該ガスに対する高親和性第2構造をとり得ることを特徴とする、有機金属錯体。
項2. 常温付近において単独ガス、もしくは2種以上の混合ガスから親和性を有するガス分子を高い分離度で吸着分離可能である、項1に記載の有機金属錯体。
項3. 吸着分離される特定成分ガスが二酸化炭素である項1〜2のいずれかに記載の有機金属錯体。
項4. 前記相互嵌合錯体は、金属イオン、芳香族多価カルボン酸配位子及び含窒素又は含リン芳香族二価配位子から構成され、前記芳香族多価カルボン酸配位子が前記金属イオンに平面で配位し、前記含窒素又は含リン芳香族二価配位子が前記金属イオンにアキシャル方向から配位し、かつ、前記芳香族多価カルボン酸配位子と前記金属イオンから構成される隣接する平面が段差を有し、これら平面が相互に嵌合している、項1〜3のいずれかに記載の有機金属錯体。
項5. 前記芳香族多価カルボン酸配位子が、イソフタル酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸又はこれらの誘導体である、項4に記載の有機金属錯体。
項6. 前記含窒素又は含リン芳香族二価配位子が、4,4’-ビピリジン、ピラジンまたはその誘導体である、項4または5に記載の有機金属錯体。
項7. 金属イオンが、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、カドミウム、水銀、鉛及びマンガンからなる群から選択される金属イオンである項4〜6のいずれかに記載の有機金属錯体。
項8. 項1〜7のいずれかに記載の有機金属錯体を含むガス分離用成形体。
項9. 項8に記載のガス分離用成形体に分離対象のガスを含む気体を接触させることを特徴とするガス分離法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特定のガスを高い分離能で選択的に吸着・分離することができる錯体が提供される。
【0009】
本発明の錯体は、ガスの種類に応じて柔軟に構造を変えることができるので、1つの錯体で複数のガスを選択的に吸着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】相互嵌合錯体の模式図を示す。
【図2】吸着等温線の結果を示す。
【図3】吸着等温線の結果を示す。
【図4】吸着等温線の結果を示す。
【図5】三成分吸着装置による実験結果を示す。
【図6】室温における三成分(CO,O,N)のガス分離実験の結果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書において、有機金属錯体が「柔軟性結晶性」であるとは、フレキシブルな構造を有し、ガスが吸着されていないときには、ガス非吸着構造である基底第1構造をとり、吸着されるガスが接触すると前記ガスに対して高親和性の第2構造をとり得ることを意味する。ここで、基底第1構造とは、選択的に吸着される特定ガスが吸着していないときの、特定ガスの吸着に最適ではない構造を意味し、高親和性第2構造とは、有機金属錯体に親和性を有して吸着される親和性ガスが有機金属錯体に接触した場合に、前記錯体の構造が親和性ガスを吸着するように変化し、基底第1構造よりも親和性ガスに対する親和性が向上した構造を意味する。このような結晶構造の変化は、有機金属錯体が相互嵌合錯体であって、異なる平面に位置する配位子の自由度があり、吸着ガスの形状に応じてその位置を変えて、ガスの吸着に最適な配置を取るためと考えられる。
【0012】
「相互嵌合構造」とは、共有結合と配位結合でできたモチーフが相互に侵入しあった構造で、2つのモチーフの間に共有結合、配位結合はないものをいう。2つのモチーフ間に共有結合と配位結合がないため、一定以上の圧力(分圧)のガスと接触すると、モチーフがずれてモチーフ間に空間ができて、特定のガスを吸着できるようになる。ここで、モチーフとしては、図1に示されるように金属(例えばZn)、カルボン酸型配位子(例えばイソフタル酸誘導体)、ピラー(例えばビピリジル)から構成される二次元シート構造が例示できる。また、カルボン酸型配位子とピラーを構成する配位子の構造(大きさ、形状など)を変更することで、ガスに対する吸着性能を変化させることができる。別の表現では、モチーフは、フィンのような突起が出ているフレームワーク構造であり、複数のモチーフにおいて、フィンが互いにかみ合って(侵入して)3次元の構造をとる。
【0013】
本発明において、ガスを選択的に吸着可能な有機金属錯体は、例えば金属イオン、芳香族多価カルボン酸配位子及び含窒素又は含リン芳香族二価配位子(錯体結晶のピラーに対応する)から構成される相互嵌合錯体であってもよい。
【0014】
金属イオンとしては、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、カドミウム、水銀、鉛、マンガンが挙げられ、好ましくは亜鉛、カドミウム、マンガンが挙げられ、より好ましくは亜鉛が挙げられる。
【0015】
芳香族多価カルボン酸配位子は、芳香環に2個以上、好ましくは2個のCOOH基が結合した化合物である。
【0016】
芳香環としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、9,10-ジヒドロアントラセン、フェナントレン、ビフェニル、ジフェニルメタン、テトラリン、インダン、インデン、ベンゾフラン、ベンゾピラン、フルオレンなどの環原子が炭素からなる芳香環、ピリジン、ピリミジン、インドール、キノリン、イソキノリン、ナフチリジンなどの環窒素原子を1個または2個含み、且つ、1個の芳香環又は2個以上(好ましくは2個)の芳香環が融合した含窒素芳香環が挙げられ、5員環又は6員環で構成されるのが好ましい。好ましい芳香環はベンゼン、ナフタレンが挙げられ、これら芳香環はCOなどの基で連結されてもよい。
【0017】
芳香環に対する2個のCOOH基の結合位置は、相互にメタ位が好ましい。例えば、芳香環がベンゼンの場合には、1,3-ベンゼンジカルボン酸(イソフタル酸)であり、ナフタレンの場合には、2,7−ナフタレンジカルボン酸であり、アントラセンの場合には、2,7−アントラセンジカルボン酸である。
【0018】
芳香族多価カルボン酸配位子のCOOH基は、芳香環に直接結合してもよく、CH、CO,CHOH,CHCHなどの適当なリンカー(スペーサー)を介して結合してもよい。好ましい芳香族多価カルボン酸配位子は、COOH基が芳香環に直接結合している。
【0019】
好ましい芳香族多価カルボン酸配位子を、以下の式(1)、式(2)、式(3)、式(2a)、式(3a)、式(2b)、式(3b)に示す。
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、Rは、同一又は異なってアジド(N),アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルカノイル基、ヒドロキシアルキル基、フェニル基、COOH,CN,NOである。
【0022】
、Rは、同一又は異なってアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルカノイル基、ヒドロキシアルキル基、フェニル基、CN,NOである。
【0023】
nは1〜4,m、p、q、rは各々同一又は異なって1〜3である。)
上記式(1)〜(3b)の化合物において、置換基を有していない、かつ、2つの環に共有されていない炭素原子(CH)の1〜3個、好ましくは1〜2個、特に1個は、窒素原子(N)で置換されていてもよい。
【0024】
含窒素又は含リン芳香族二価配位子(ピラー)としては、芳香環内の2個の窒素原子が一直線上に位置する含窒素又は含リン芳香環を有する配位子が挙げられ、例えば4,4’-ビピリジル、3,3’-ビピリジル、ピラジンなどが挙げられる。含窒素又は含リン芳香族二価配位子は、配位する芳香環の2個の窒素原子の向きが互いに180°の角度をなす限り、2つの基の間に任意のスペーサー基を挿入したものであってもよい。ピラーは、含窒素芳香族二価配位子が好ましい。
【0025】
好ましい含窒素または含リン芳香族二価配位子を、以下の式(4)、式(5)、式(6)、式(7)に示す。
【0026】
【化2】

【0027】
(式中、R、R、R、R同一又は異なってアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルカノイル基、ヒドロキシアルキル基、フェニル基、CN,NOである。
【0028】
、Rは、2つの環をつなぐ結合を示すか、直線状の基もしくはCH=CH,、を示す。
【0029】
qは1〜4,rは1〜4,sは1〜4、tは1〜4である。
【0030】
Xは、NまたはP、N→OまたはP→Oを示す)
なお、R、Rが、2つのピリジン環又はピロール環をつなぐ結合を示す場合、式(5)、式(6)、式(7)の化合物は、各々置換されていてもよい4,4’-ビピリジル又は置換されていてもよい3,3‘-ビピリジル、または置換されていてもよいビピロールを表す。
【0031】
本明細書において、アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのC〜Cの直鎖又は分枝を有するアルキル基が挙げられる。
【0032】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0033】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などのC〜Cの直鎖又は分枝を有するアルコキシ基が挙げられる。
【0034】
ヒドロキシアルキル基は、アルキル基の1〜3個、好ましくは1〜2個、特に1個の水素原子がOH基で置換された基を示す。
【0035】
アルカノイル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ピバロイル基などのC〜Cの直鎖又は分枝を有するアルカノイル基が挙げられる。
【0036】
Xは、好ましくはN(窒素原子)である。
【0037】
本発明で使用する好ましい芳香族多価カルボン酸配位子を以下に示す。
【0038】
【化3】

【0039】
本発明の相互嵌合錯体は、例えば、Chem. Mater. 1999, 11, 736記載の方法と同様にして、芳香族多価カルボン酸配位子またはその塩、金属イオンの無機塩及び含窒素又は含リン芳香族二価配位子を溶液中で反応させることにより合成できる。
【0040】
本発明の相互嵌合錯体とその製造法を模式的に図1に示す。
【0041】
相互嵌合錯体の製造に使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の飽和炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、アセトン等の有機溶媒、水等が挙げられ、これらを単独もしくは2種類以上を混合して使用することができる。
【0042】
反応温度は、通常-20〜180℃程度であり、好ましくは0℃〜150℃で実施される。
【0043】
本発明は、上記で製造された相互嵌合錯体にガス(単独ガス又は混合ガス)を接触させ、分離対象のガスを選択的に吸着し、分離することができる。
【0044】
吸着分離可能な気体としては、無機気体、有機気体が好ましく例示され、無機気体としては、窒素、酸素、水素、オゾン、ヘリウム、ネオン、アルゴン、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、一酸化炭素、二酸化炭素、NO,NO、NO,SO,SO、HS、Nなどが挙げられる。有機気体としては、メタン、エタン、プロパン、アセチレン、エチレン、ブタン、ブテン、ブチンなどが挙げられる。
【0045】
有機金属錯体は、バインダーなどで固めた粒状物、ペレットなどの成形体とし、所定の容器に充填し、有機金属錯体を含む充填物を通るように気体を通気することで、効率よく分離対象のガスを分離、回収できる。有機金属錯体に吸着されたガスは、例えば該吸着錯体を減圧にしたり、加熱することで、容易に脱着させて回収することができる。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:有機金属錯体(CID-1,2,3)の製造
硝酸亜鉛(1 mmol) とナフタレンジカルボン酸(1 mmol) をDMF溶媒(10 ml) に溶解させ、その後、ビピリジン(1 mmol)のDMF溶液(10 ml)を滴下し、 24時間、120℃加熱撹拌下に置くことで、白い沈殿としてCID-3を得た。
【0047】
ナフタレンジカルボン酸(1 mmol)に代えてイソフタル酸、3,5-ジカルボキシピリジンを用いた以外は上記と同様にしてCID-1,CID-2を得た。
実施例2:有機金属錯体(CID-5,6,7,8,9,10)の製造
硝酸亜鉛(1 mmol) とイソフタル酸誘導体(1 mmol)をDMF溶媒(10 ml)に溶解させ、 70℃加熱撹拌下状態で30分おき、その後、ビピリジン(1 mmol)のメタノール溶液(10 ml)を滴下し、12時間経過することで、CID5,6,7,8,9,10を各々得た。
実施例3:有機金属錯体(CID-4,11)の製造
ナフタレンジカルボン酸(1 mmol)に代えて4,4‘-カルボキシベンゾフェノンあるいは3-ジメチルアミノ1,5-ベンゼンジカルボン酸、を使用し、さらに硝酸亜鉛(1 mmol)に代えて硝酸カドミウム(1 mmol)を用いた以外は実施例1と同様にしてCID-4,11を得た。
【0048】
実施例1〜3で得たCID-1〜CID-11の結晶構造のデータ等を表1,表2に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
実施例4:ガスの吸着試験
本発明の実施例で得た各種相互嵌合錯体について、吸着等温線を低温又は室温で測定した結果を図2〜図4に示す。
【0052】
以下の条件で、実施例1で得た有機金属錯体(CID-3)とゼオライト(商品名「ゼオラムF-9粉末品」、東ソー)について、三成分吸着装置による実験を行った。
【0053】
あらかじめ窒素、酸素、二酸化炭素それぞれのガスを任意の組成比で混合しておき、その混合比をガスクロマトグラムで検出しておく。次に、単成分吸着装置と同様の方法で吸着剤に対し吸着実験を行った。1時間あたりの圧力変化が1.0 kPaとなったところを平衡状態と見なした。平衡状態に達した時点での吸着剤がさらされているガスの組成を同様にガスクロマトグラムで検出し、これらの情報から吸着剤に吸着されたガスの組成比を導き出した。
【0054】
なお、分離度は以下の式で定義される
分離度(SA,B)=(X/X)/(Y/Y
:吸着相における成分iのモル分率
:ガス相における成分iのモル分率
結果を図5,図6に示す。なお、図5においてCID-3がゼオライトに対し明らかに優れていたので、図6ではCID-3のみについて実験を行った。結果は、分離度(SCO2,その他(N2+O2))が約234と非常に高い数値を示し、本発明の有機金属錯体の優れた効果が実証された。
【0055】
この結果から、本発明の相互嵌合錯体が、優れたガス分離・吸着能を有することが明らかになった。特にCO2に対して、高い分離度を示す。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の有機金属錯体ないしガス分離用成形体は、以下のような用途を有する。
(1)燃焼排ガスからの回収、除去
火力発電所、セメントプラント、鉄鋼プラント、化学プラント等の工場排ガス(例えば石油や石炭、天然ガス燃焼排ガス)において、酸性ガス(CO2, H2S, COS, SO2, SO3),非酸性ガス(H2, CH4, CO, N2);非酸性ガスN2/酸性ガスCO2の分離、吸着、回収、除去などに用いることができる。
(2) 油田に注入したCO2除去;老朽化油田の採掘効率向上に有効である。
(3) 天然ガス、ランドフィルガス、バイオガスからの分離、除去
CO2のみを吸着することができる。天然ガスからのCO2成分の分離により、パイプラインの腐食防止が可能である(S.Cavenati,et al., J. Chem. Eng.Data, 2004, 49, 1101)
ランドフィルガス(Methane-60%/CO2-40%/N2/H2O)、バイオガスにおいてもCO2、N2、H2Oなどを除去することができる。
(4)自動車の排気ガスからの除去
ディーゼル(軽油)用排ガスから窒素酸化物を吸着し、これを還元して酸素と窒素に変換することができる。また、一酸化炭素を吸着してこれを二酸化炭素に酸化して除去することができる。さらに炭化水素を吸着し、これを酸化分解することができる。
【0057】
使用可能技術を以下に列挙する。
1)圧力スイング吸着法(PSA)でCO2/N2を分離
現在使用されている材料であるゼオライト、活性炭よりも優れた吸着材の代替、カーボンモレキュラーシーブ(N2吸着)などに使用できる。
2)モレキュラーシーブとして
天然ガス(メタン・窒素・CO2)から、CO2分離後、N2などの除去を行うことができる。
3)医療用途
オゾン、高濃度酸素などの吸着・製造に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性結晶性の相互嵌合性構造を有し、親和性を有するガスの非存在下における基底第1構造と、親和性を有するガスの存在下での当該ガスに対する高親和性第2構造をとり得ることを特徴とする、有機金属錯体。
【請求項2】
常温付近において単独ガス、もしくは2種以上の混合ガスから親和性を有するガス分子を高い分離度で吸着分離可能である、請求項1に記載の有機金属錯体。
【請求項3】
吸着分離される特定成分ガスが二酸化炭素である請求項1〜2のいずれかに記載の有機金属錯体。
【請求項4】
前記相互嵌合錯体は、金属イオン、芳香族多価カルボン酸配位子及び含窒素又は含リン芳香族二価配位子から構成され、前記芳香族多価カルボン酸配位子が前記金属イオンに平面で配位し、前記含窒素又は含リン芳香族二価配位子が前記金属イオンにアキシャル方向から配位し、かつ、前記芳香族多価カルボン酸配位子と前記金属イオンから構成される隣接する平面が段差を有し、これら平面が相互に嵌合している、請求項1〜3のいずれかに記載の有機金属錯体。
【請求項5】
前記芳香族多価カルボン酸配位子が、イソフタル酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸又はこれらの誘導体である、請求項4に記載の有機金属錯体。
【請求項6】
前記含窒素又は含リン芳香族二価配位子が、4,4’-ビピリジン、ピラジンまたはその誘導体である、請求項4または5に記載の有機金属錯体。
【請求項7】
金属イオンが、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、カドミウム、水銀、鉛及びマンガンからなる群から選択される金属イオンである請求項4〜6のいずれかに記載の有機金属錯体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の有機金属錯体を含むガス分離用成形体。
【請求項9】
請求項8に記載のガス分離用成形体に分離対象のガスを含む気体を接触させることを特徴とするガス分離法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−158617(P2010−158617A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2055(P2009−2055)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ▲1▼研究集会名 第61回コロイド及び界面化学討論会 主催者名 社団法人 日本化学会 開催日 平成20年9月7日 ▲2▼研究集会名 第58回錯体化学討論会 主催者名 錯体化学会 開催日 平成20年9月20日 ▲3▼研究集会名 第58回錯体化学討論会 主催者名 錯体化学会 開催日 平成20年9月21日 ▲4▼研究集会名 第2回分子科学討論会 主催者名 分子科学会 開催日 平成20年9月25日
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】