説明

有機金属錯体、発光性固体、有機EL素子及び有機ELディスプレイ

【課題】 りん光発光を示す有機金属錯体を用い、発光効率、熱的・電気的な安定性に優れ、駆動寿命の長い有機EL素子等の提供。
【解決手段】 金属原子と、該金属原子に対し、窒素原子2つ及び炭素原子1つを介して三座で結合し、該窒素原子2つの間に前記炭素原子が位置する三座配位子と、前記金属原子に対し、N原子、O原子及びS原子から選択される一の原子を介して一座で結合し、かつ、前記金属原子に対してパラ位を除く位置に置換基を有する環構造を含む一座配位子又はハロゲン原子で置換された環構造を含む一座配位子と、を有することを特徴とする有機金属錯体を含有する有機EL素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、りん光発光を示し、有機EL素子、照明装置等における発光材料や色変換材料等として好適な有機金属錯体及び発光性固体、該有機金属錯体乃至発光性固体を用いた有機EL素子、並びに、該有機EL素子を用いた有機ELディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、一層乃至複数層の薄い有機物層を負極と正極とで挟み込んだ構造を有し、前記有機物層に対し、前記正極から正孔を、前記負極から電子を、それぞれ注入し、該正孔と該電子とが前記有機物層で再結合する際の再結合エネルギーにより、前記有機物層中の発光材料の発光中心を励起させ、該発光材料が励起状態から基底状態に失活する際に放出される光を利用した発光素子である。該有機EL素子は、自発光、高速応答等の特徴を持ち、視認性が良好であり、超薄型、軽量であり、高速応答性、動画表示性に優れることから、フルカラーディスプレイ等のフラットパネルディスプレイへの適用が期待されている。特に、正孔輸送性の有機薄膜(正孔輸送層)と電子輸送性の有機薄膜(電子輸送層)とを積層した2層型(積層型)の有機EL素子が報告されて以来(非特許文献1参照)、該有機EL素子は、10V以下の低電圧で発光可能な大面積発光素子として注目されている。
【0003】
前記有機EL素子においては、発光効率を向上させる観点から、主材料である蛍光発光性のホスト材料に対し、蛍光発光性の高い色素分子をゲスト材料として少量ドープさせて、高い発光効率を示す発光層を形成することが提案されている(非特許文献2参照)。
【0004】
また、近年、前記蛍光発光性の材料に代えて、分子の励起三重項状態からの発光を利用するりん光発光性の材料を有機EL素子の発光材料とすることにより、前記有機EL素子の発光効率を高めることが可能であることが示され、注目を集めている(非特許文献3参照)。有機物からの発光は、発光を起こす励起状態の性質によって、蛍光とりん光とに分類される。これまで、一般的な有機物は室温ではりん光を発しないという理由で、有機EL素子では蛍光発光性の材料が利用されてきた。EL発光メカニズムからは、りん光発光状態は蛍光発光状態の4倍の確率で生成することが予想されるため、室温でりん光発光を起こす重金属錯体の発光材料への適用が、EL素子の高効率化手段として近年注目されている。しかし、りん光発光性の材料の場合、室温で強いりん光を発する材料が非常に少なく、材料の選択幅が狭という問題がある。
【0005】
室温でりん光を発する有機金属錯体を用いた有機EL素子の公知例としては、白金元素と窒素原子とによる配位結合2つと、白金元素と炭素原子との直接結合1つとからなり、前記配位結合に関与する2つの窒素原子が隣接して配置されたN^N^C型の三座配位子を有する金属錯体が一例として挙げられる(特許文献1参照)。
しかし、この金属錯体は室温でのりん光発光効率が十分ではなく、この金属錯体を用いた有機EL素子の場合、発光効率が低いという問題がある。一方、白金元素と窒素原子とによる配位結合2つと、白金元素と炭素原子との直接結合1つとからなり、前記配位結合に関与する2つの窒素原子の間に炭素原子が配置されたN^C^N型の三座配位子と、白金に結合するCl原子とを含む白金錯体が、溶液中で前記N^N^C型白金錯体よりも高効率でりん光を発することが報告されている(非特許文献4参照)。しかし、この金属錯体を用いた有機EL素子の場合、駆動寿命が短いという問題がある。
【0006】
【非特許文献1】C. W. Tang and S. A. VanSlyke, Applied Physics Letters vol.51, 913 (1987)
【非特許文献2】C. W. Tang, S. A. VanSlyke, and C. H. Chen, Journal of Applied Physics vol.65, 3610 (1989)
【非特許文献3】M. A. Baldo, et al., Nature vol.395, 151 (1998), M. A. Baldo, et al., Applied Physics Letters vol.75, 4 (1999)
【非特許文献4】J. A. G. Williams et al., Inorganic. Chemistry. Vol. 42, 8609-8611 (2003)
【特許文献1】特開2002−363552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。本発明は、高輝度で長寿命なりん光発光を示し、有機EL素子や照明装置等における発光材料や色変換材料等として好適な有機金属錯体及び発光性固体を提供することを目的とする。また、本発明は、前記有機金属錯体乃至発光性固体を用い、発光効率、熱的・電気的な安定性に優れ、駆動寿命が非常に長い有機EL素子を提供することを目的とする。また、前記有機EL素子を用い、高性能であり、平均駆動電流を発光画素によらず一定にすることができ、発光面積を変えることなく色バランスが良好なフルカラーディスプレイ等に好適であり、駆動寿命が非常に長い有機ELディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために発明者らが鋭意検討した結果、以下の知見を得た。即ち、金属原子と、該金属原子に配位結合する窒素原子2つ及び炭素原子1つを有してなり、かつ2つの前記窒素原子の間に前記炭素原子が配置されたN^C^N型の三座配位子と、前記金属原子に対して結合する位置から最も離れた位置を除く位置に置換基を有する環構造を含む一座配位子、又はハロゲン原子で置換された環構造を含む一座配位子と、を含む有機金属錯体が高輝度で長寿命なりん光発光を示し、有機EL素子に好適な良好な昇華性を示し、かつ真空蒸着により良好なneat膜、dope膜等を形成可能であり、有機EL素子や照明装置等における発光材料等として好適であり、該有機金属錯体を含む発光性固体、該有機金属錯体を用いた有機EL素子及び有機ELディスプレイは、発光効率、熱的・電気的な安定性等に優れ、駆動寿命が非常に長く、高性能である、という知見である。本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための本発明は、以下の通りである。
【0009】
本発明の有機金属錯体は、(1)金属原子と、(2)該金属原子に対し、窒素原子2つ及び炭素原子1つを介して三座で結合し、該窒素原子2つの間に前記炭素原子が位置する三座配位子と、(3)前記金属原子に対し、N原子、O原子及びS原子から選択される一の原子を介して一座で結合し、かつ、前記金属原子に対して結合する位置から最も離れた位置を除く位置に置換基を有する環構造を含む又はハロゲン原子で置換された環構造を含む一座配位子と、を有することを特徴とする。
有機物からの発光は、発光を生ずる励起状態の性質により蛍光とりん光とに分類されるが、従来、有機物は一般的にりん光を生じないという理由から、有機EL素子や照明装置等における発光材料や色変換材料等としては、蛍光発光材料が利用されてきた。しかし、EL発光メカニズムからは、蛍光発光状態の4倍の確率でりん光発光状態が生成することが予想されるため、室温でりん光発光を生ずる金属錯体の発光材料への適用がEL素子の高効率化には有効であり、近年注目されてきている。本発明の前記有機金属錯体からは、高輝度で長寿命な前記りん光発光が強く生ずるため、蛍光発光材料を用いたEL素子の内部量子効率が最大25%であるのに対して、理論上、最大100%という高い発光効率が達成可能である。このため、高輝度で長寿命な前記りん光発光を示す前記有機金属錯体は、有機EL素子等における発光材料等として好適である。本発明の有機金属錯体においては、特定の前記三座配位子(N^C^N型)又は前記一座配位子における骨格構造、置換基等の種類や数などを変えることにより、発光色を変えることができる。
【0010】
本発明の発光性固体は、本発明の前記有機金属錯体を含有する。本発明の有機金属錯体を含有する本発明の発光性固体は、駆動寿命が非常に長く、発光効率等に優れ、照明装置、ディスプレイ装置等に好適に使用することができる。
【0011】
本発明の有機EL素子は、正極及び負極の間に有機薄膜層を有してなり、該有機薄膜層が、前記有機金属錯体を含有する。本発明の有機金属錯体を含有する本発明の有機EL素子は、駆動寿命が非常に長く、発光効率等に優れ、照明装置、ディスプレイ装置等に好適に使用することができる。
【0012】
本発明の有機ELディスプレイは、本発明の前記有機EL素子を用いてなる。本発明の有機EL素子を用いた本発明の該有機ELディスプレイは、駆動寿命が非常に長く、発光効率等に優れる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、従来における問題を解決することができる。また、本発明によると、高輝度で長寿命なりん光発光を示し、有機EL素子や照明装置等における発光材料や色変換材料等として好適な有機金属錯体及び発光性固体を提供することができる。また、本発明によると、前記有機金属錯体乃至発光性固体を用い、発光効率、熱的・電気的な安定性に優れ、駆動寿命が非常に長い有機EL素子を提供することができる。また、前記有機EL素子を用い、高性能であり、平均駆動電流を発光画素によらず一定にすることができ、発光面積を変えることなく色バランスが良好なフルカラーディスプレイ等に好適であり、駆動寿命が非常に長い有機ELディスプレイを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(有機金属錯体及び発光性固体)
本発明の有機金属錯体は、金属原子と、該金属原子に対して三座で結合する特定の三座配位子と、前記金属原子に対して一座で結合する特定の一座配位子とを有する。
本発明の発光性固体は、本発明の前記有機金属錯体を含み、更に目的に応じて適宜選択したその他の成分を含む。前記発光性固体の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶、薄膜、などが挙げられる。該発光性固体における前記有機錯体金属の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常、0.1〜50質量%で、好ましくは0.5〜20質量%で高効率で長寿命な発光が得られる。
【0015】
−金属原子−
前記金属原子は、前記有機金属錯体における中心金属として作用し、該金属原子としては、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、IR、Ptなどが挙げられる。これらは、前記有機金属錯体1分子中に1個含まれ、2分子以上の前記有機金属錯体における各金属原子は、1種単独であってもよいし、2種以上であってもよい。前記金属原子の中でも、Ptが特に好ましい(この場合、前記有機金属錯体は白金錯体である)。
【0016】
−三座配位子−
前記三座配位子としては、前記金属原子に対して、窒素原子2つ及び炭素原子を介して三座で結合し、該窒素原子2つの間に前記炭素原子が位置するもの(N^C^N型)であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記窒素原子2つ及び前記炭素原子の3つの原子が、それぞれ別の環構造の一部であるもの、などが好ましく、前記窒素原子2つをそれぞれ第一の窒素原子、第二の窒素原子とした時、前記第一の窒素原子を含む第一窒素含有環構造における、該第一の窒素原子に隣接する第一の窒素隣接原子が、前記炭素原子を含む炭素含有環構造における、該炭素原子に隣接する第一の炭素隣接原子に結合し、前記第二の窒素原子を含む第二窒素含有環構造における、該第二の窒素原子に隣接する第二の窒素隣接原子が、前記炭素原子を含む炭素含有環構造における、該炭素原子に隣接する第二の炭素隣接原子に結合したもの、などがより好ましく、前記第一の炭素隣接原子及び前記第二の炭素隣接原子が、いずれも炭素原子であるものなどが特に好ましい。
なお、前記第一窒素含有環構造、前記第二窒素含有環構造、及び前記炭素含有環構造は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよいが、前記第一窒素含有環構造及び前記第二窒素含有環構造が互いに同じであるのが好ましい。
【0017】
前記三座配位子の好ましい具体例としては、下記表1に示す構造で表されるものが挙げられる。
【0018】
【表1】

【0019】
なお、表1中、「dpt」として示された構造においては、2つのピリジン環構造が、それぞれ前記第一窒素含有環構造、前記第二窒素含有環構造であり、該2つのピリジン環構造の間に位置するトルエン環構造が、前記炭素含有環構造に該当する。また、2つの前記ピリジン環構造において、該ピリジン環構造における窒素原子に隣接して位置しかつ前記トルエン環構造に結合した炭素原子が、前記第一の窒素隣接原子、前記第二の窒素隣接原子である。また、前記トルエン環構造における、前記ピリジン環構造における前記第一の窒素隣接原子(炭素原子)に結合する炭素原子、及び前記ピリジン環構造における前記第二の窒素隣接原子(炭素原子)に結合する炭素原子が、それぞれ前記第一の炭素隣接原子、前記第二の炭素隣接原子に該当する。「dpt」として示された構造においては、2つの前記ピリジン環構造における窒素原子2つと、該窒素原子2つの間に位置し、かつ前記トルエン環構造における前記第一の炭素隣接原子(炭素原子)及び前記第二の炭素隣接原子(炭素原子)の間に位置する炭素原子との3つの原子が、前記金属原子に対して三座で結合する。
【0020】
「dpb」として示された構造においては、2つのピリジン環構造が、それぞれ前記第一窒素含有環構造、前記第二窒素含有環構造であり、該2つのピリジン環構造の間に位置するベンゼン環構造が、前記炭素含有環構造に該当する。また、2つの前記ピリジン環構造において、該ピリジン環構造における窒素原子に隣接して位置しかつ前記ベンゼン環構造に結合した炭素原子が、前記第一の窒素隣接原子、前記第二の窒素隣接原子である。また、前記ベンゼン環構造における、前記ピリジン環構造における前記第一の窒素隣接原子(炭素原子)に結合する炭素原子、及び前記ピリジン環構造における前記第二の窒素隣接原子(炭素原子)に結合する炭素原子が、それぞれ前記第一の炭素隣接原子、前記第二の炭素隣接原子に該当する。「dpb」として示された構造においては、2つの前記ピリジン環構造における窒素原子2つと、該窒素原子2つの間に位置し、かつ前記ベンゼン環構造における前記第一の炭素隣接原子(炭素原子)及び前記第二の炭素隣接原子(炭素原子)の間に位置する炭素原子との3つの原子が、前記金属原子に対して三座で結合する。
【0021】
「diqt」として示された構造においては、2つのイソキノリル環構造が、それぞれ前記第一窒素含有環構造、前記第二窒素含有環構造であり、該2つのイソキノリル環構造の間に位置するトルエン環構造が、前記炭素含有環構造に該当する。また、2つの前記イソキノリル環構造において、該イソキノリル環構造における窒素原子に隣接して位置しかつ前記トルエン環構造に結合した炭素原子が、前記第一の窒素隣接原子、前記第二の窒素隣接原子である。また、前記トルエン環構造における、前記イソキノリル環構造における前記第一の窒素隣接原子(炭素原子)に結合する炭素原子、及び前記イソキノリル環構造における前記第二の窒素隣接原子(炭素原子)に結合する炭素原子が、それぞれ前記第一の炭素隣接原子、前記第二の炭素隣接原子に該当する。「diqt」として示された構造においては、2つの前記イソキノリル環構造における窒素原子2つと、該窒素原子2つの間に位置し、かつ前記トルエン環構造における前記第一の炭素隣接原子(炭素原子)及び前記第二の炭素隣接原子(炭素原子)の間に位置する炭素原子との3つの原子が、前記金属原子に対して三座で結合する。
【0022】
「tp」として示された構造においては、3つのピリジン環構造のうちの両端に位置する2つが、それぞれ前記第一窒素含有環構造、前記第二窒素含有環構造であり、該2つのピリジン環構造の間に位置するピリジン環構造が、前記炭素含有環構造に該当する。また、両端に位置する、2つの前記ピリジン環構造において、該ピリジン環構造における窒素原子に隣接して位置しかつ真中に位置する前記ピリジン環構造に結合した炭素原子が、前記第一の窒素隣接原子、前記第二の窒素隣接原子である。また、真中に位置する前記ピリジン環構造における、前記第一の窒素隣接原子(炭素原子)に結合する炭素原子、及び前記第二の窒素隣接原子(炭素原子)に結合する炭素原子が、それぞれ前記第一の炭素隣接原子、前記第二の炭素隣接原子に該当する。「tp」として示された構造においては、2つの前記ピリジン環構造における窒素原子2つと、該窒素原子2つの間に位置し、かつ前記ピリジン環構造における前記第一の炭素隣接原子(炭素原子)及び前記第二の炭素隣接原子(炭素原子)の間に位置する炭素原子との3つの原子が、前記金属原子に対して三座で結合する。
【0023】
「dpzb」として示された構造においては、2つの(N−ピラゾリル)環構造が、それぞれ前記第一窒素含有環構造、前記第二窒素含有環構造であり、該2つの(N−ピラゾリル)環構造の間に位置するベンゼン環構造が、前記炭素含有環構造に該当する。また、2つの前記(N−ピラゾリル)環構造において、該(N−ピラゾリル)環構造における窒素原子に隣接して位置しかつ前記ベンゼン環構造に結合した窒素原子が、前記第一の窒素隣接原子、前記第二の窒素隣接原子である。また、前記ベンゼン環構造における、前記第一の窒素隣接原子(窒素原子)に結合する炭素原子、及び前記第二の窒素隣接原子(窒素原子)に結合する炭素原子が、それぞれ前記第一の炭素隣接原子、前記第二の炭素隣接原子に該当する。「dpzb」として示された構造においては、2つの前記(N−ピラゾリル)環構造における、前記ベンゼン環構造と結合していない窒素原子2つと、該窒素原子2つの間に位置し、かつ前記ベンゼン環構造における前記第一の炭素隣接原子(炭素原子)及び前記第二の炭素隣接原子(炭素原子)の間に位置する炭素原子との3つの原子が、前記金属原子に対して三座で結合する。
【0024】
−一座配位子−
前記一座配位子としては、例えば、前記金属原子に対し、N原子、O原子及びS原子から選択される一の原子を介して一座で結合し、前記金属原子に対して結合する位置から最も離れた位置を除く位置に置換基を有する環構造を含む一座配位子(第一の形態)、前記金属原子に対し、N原子、O原子及びS原子から選択される一の原子を介して一座で結合し、ハロゲン原子で置換された環構造を含む一座配位子(第二の形態)、などが好適に挙げられる。
【0025】
前記第一の形態の一座配位子の場合、前記置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキル基、アリール基などが好適に挙げられる。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、などが挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、トルイル基、などが挙げられる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。
【0026】
前記第一の形態の一座配位子の場合、前記環構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、六員環、五員環などが挙げられ、これらは、ヘテロ原子を含んでいてもよいし、含んでいないものであってもよい。該環構造が、六員環の場合、前記一座配位子としては、例えば、前記金属原子に対してパラ位を除く位置に置換基を有する環構造を含む一座配位子が好適に挙げられる。
【0027】
前記第二の形態の一座配位子の場合、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。これらの中でも、反応性が低く、耐久性に優れる点で、フッ素原子が好ましい。
【0028】
前記一座配位子の好ましい具体例としては、下記表2に示す構造で表されるものが挙げられる。
【0029】
【表2】

【0030】
なお、表2中、「o2Fph」として示された構造は、前記第二の形態の一座配位子に該当し、O原子を介して前記金属原子に対して一座で結合し、該金属原子に対してオルト位にフッ素原子が1つ置換したベンゼン環構造を有する一座配位子である。
【0031】
「odmp」として示された構造は、前記第一の形態の一座配位子に該当し、O原子を介して前記金属原子に対して一座で結合し、該金属原子に対してオルト位にメチル基が2つ置換したベンゼン環構造を有する一座配位子である。
【0032】
「o2pph」として示された構造は、前記第一の形態の一座配位子に該当し、O原子を介して前記金属原子に対して一座で結合し、該金属原子に対してオルト位にフェニル基が1つ置換したベンゼン環構造を有する一座配位子である。
【0033】
「o26dpph」として示された構造は、前記第一の形態の一座配位子に該当し、O原子を介して前記金属原子に対して一座で結合し、該金属原子に対してオルト位にフェニル基が2つ置換したベンゼン環構造を有する一座配位子である。
【0034】
「dmpr」として示された構造は、前記第一の形態の一座配位子に該当し、ピラゾール環構造における1つのN原子を介して前記金属原子に対して一座で結合し、該N原子に隣接する炭素原子にメチル基が置換し、前記N原子に隣接するN原子に更に隣接する炭素原子にメチル基が置換した構造を有する一座配位子である。
【0035】
「mbtaz」として示された構造は、前記第一の形態の一座配位子に該当し、イソキノリル環構造におけるベンゼン構造部分中の、前記金属原子に結合するN原子から最も遠くに位置する炭素原子にメチル基が置換した構造を有する一座配位子である。
【0036】
前記一座配位子の中でも、前記有機金属錯体全体の電荷を中性にすることができるものであると、該有機金属錯体に昇華性を付与することができる点で好ましい。
【0037】
−有機金属錯体の構造例−
本発明の有機金属錯体の構造例としては、例えば、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表される有機金属錯体などが好適に挙げられ、前記金属原子に対して、上述した「dpt」、「dpb」、「diqt」、「tp」及び「dpzb」のいずれか表される三座配位子と、上述した「o2Fph」、「odmp」、「o2pph」、「o26dpph」、「dmpr」及び「mbtaz」のいずれかで表される一座配位子とが結合してなる有機金属錯体がより好適に挙げられる。
【0038】
【化3】

【0039】
前記一般式(1)において、Mは、金属原子を示す。Ar1、Ar2及びAr3は、環構造を表し、いずれも前記Mに結合し、該Ar1と該Ar2とが結合し、該Ar2と該Ar3とが結合し、全体として前記Mに三座で結合する三座配位子を形成している。なお、Ar1におけるNは、該Ar1で表される環構造を構成する窒素原子を表す。Ar2におけるCは、該Ar2で表される環構造を構成する炭素原子を表す。Ar3におけるNは、該Ar3で表される環構造を構成する窒素原子を表す。R1、R2及びR3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を表し、複数であってもよく、互いに隣接するものが結合して環構造を形成していてもよい。Lは、N原子、O原子及びS原子から選択される一の原子を介して前記Mに対して一座で結合し、環構造を含む一座配位子を表す。R4は、前記Lにおける、前記Mに対してパラ位を除く位置に置換する置換基を表す。
【0040】
【化4】

【0041】
一般式(2)において、Mは、金属原子を示す。Ar1、Ar2及びAr3は、環構造を表し、いずれも前記Mに結合し、該Ar1と該Ar2とが結合し、該Ar2と該Ar3とが結合し、全体として前記Mに三座で結合する三座配位子を形成している。なお、Ar1におけるNは、該Ar1で表される環構造を構成する窒素原子を表す。Ar2におけるCは、該Ar2で表される環構造を構成する炭素原子を表す。Ar3におけるNは、該Ar3で表される環構造を構成する窒素原子を表す。R1、R2及びR3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を表し、複数であってもよく、互いに隣接するものが結合して環構造を形成していてもよい。Lは、N原子、O原子及びS原子から選択される一の原子を介して前記Mに対して一座で結合し、環構造を含む一座配位子を表す。Xは、ハロゲン原子を表す。
【0042】
前記一般式(1)及び前記一般式(2)において、前記Mとしては、上述した金属原子が挙げられ、Ptであるのが好ましい(なお、該金属原子がPtでる場合、該有機金属錯体は白金錯体となる)。
また、前記Ar1、前記Ar2及び前記Ar3としては、前記環構造を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、五員環基、六員環基、及びこれらの縮合環基から選択されるものが好ましい。
【0043】
前記Ar2としては、五員環基、六員環基、及びこれらの縮合環基から選択されるものの中でも、ベンゼン環構造、ピリジン環構造、ピリミジン環構造、及びピレン環構造の少なくともいずれかであるのが好ましく、具体的には以下の構造がより好ましい。
【0044】
【化5】

【0045】
ただし、これらの式中、Mは、該Ar2が結合する上記金属原子を表し、前記Ar2の構造の一部ではなく、また、Ar1及びAr3は、該Ar2と共に前記三座配位子を形成し、これらは該Ar2の構造の一部ではない。
【0046】
本発明においては、前記Ar1及び前記Ar3のいずれかが、単環複素芳香族基及び多環複素芳香族基のいずれかであるのが好ましく、具体的には以下の構造がより好ましい。なお、該Ar1及びAr3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよいが、互いに同一であるのが好ましい。なお、これらの構造におけるRは、水素原子又は置換基を表す。
【0047】
【化6】

【0048】
前記一般式(1)及び前記一般式(2)において、前記R1、前記R2及び前記R3は、それぞれ前記Ar1、前記Ar2及び前記Ar3に置換する水素原子又は置換基を表し、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、それぞれ複数であってもよく、互いに隣接するものが結合して環構造を形成していてもよい。
前記R1、前記R2及び前記R3の具体例としては、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基、アルキルアセテート基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、などが好適に挙げられる。これらは、更に公知の置換基で置換されていてもよい。
【0049】
前記Lは、N原子、O原子及びS原子から選択される一の原子を介して前記Mに対して一座で結合し、環構造を含む一座配位子を表す。
前記一般式(1)における、−L−R4、又は、前記一般式(2)における、−L−X、の具体例としては、下記構造の基、などが好適に挙げられる。なお、下記の具体例において、Rは、前記−L−R4におけるR4又は前記−L−XにおけるXを意味する。
【0050】
【化7】

【0051】
前記一般式(1)で表される有機金属錯体又は前記一般式(2)で表される有機金属錯体は、電気的に中性であり、真空中で昇華性を示することから、薄膜を形成する際に、公知の塗布方法のみならず、真空蒸着法などを好適に適用することができる点で有利である。
【0052】
ここで、前記一般式(1)で表される有機金属錯体において、例えば、前記Ar2がベンゼン環構造であるものの構造を示すと、以下の通りである。
【0053】
【化8】

また、上記式で表される有機金属錯体において、例えば、前記Ar1及び前記Ar3もベンゼン環構造であるものの構造を示すと、以下の通りである。
【0054】
【化9】

【0055】
ここで、前記一般式(2)で表される有機金属錯体において、例えば、前記Ar2がベンゼン環構造であるものの構造を示すと、以下の通りである。
【0056】
【化10】

また、上記式で表される有機金属錯体において、例えば、前記Ar1及び前記Ar3もベンゼン環構造であるものの構造を示すと、以下の通りである。
【0057】
【化11】

【0058】
本発明の有機金属錯体におけるフォトルミネッセンス(P.L.:以下、単に「PL」と略称することがある)量子収率としては、これを薄膜化した際、同じ厚みに形成したアルミニウムキノリン錯体(Alq)の薄膜(PL量子収率=22%)をリファレンスとして算出した値が、70%以上であるが好ましく、90%以上であるのがより好ましい。
【0059】
前記PL量子効率は、例えば、以下のようにして測定し、算出することができる。即ち、図9に示すように、光源からの励起光(365nmの定常光)100を透明基板上の薄膜試料102に斜めから照射し、分光放射輝度計(ミノルタ社製、CS−1000)104を用いて測定した薄膜のPLスペクトルから、換算により、PL光子数[P(sample)]を算出する。発光測定と同時に、試料から透過及び反射した励起光をミラー106で収光し、の合計強度[I(sample)]をフォトダイオード108で検出する。続いて、リファレンスであるAlq3薄膜(PL量子収率22%)でも同様の測定を行い、リファレンスのPL光子数[P(ref.)]と、透過及び反射した励起光の合計強度[I(ref)]を求める。次に、透明基板のみの透過及び反射した励起光の合計強度[I(substrate)]を測定する。試料薄膜のPL量子収率は、以下の数式により算出することができる。
【0060】
【数1】

【0061】
−合成方法−
本発明の有機金属錯体の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記三座配位子(N^C^N型)と前記金属原子とハロゲン原子(塩素原子)とを有する有機金属錯体(前駆体)を、適宜選択した条件に従って、前記一座配位子の水素置換体あるいはアルカリ金属置換体と反応させる方法などが好適に挙げられる。
上記反応は、触媒の存在下でも好適に行うことができ、該触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銅塩−有機アミン触媒、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
なお、前記三座配位子と前記金属原子と前記ハロゲン原子(塩素原子)とを有する有機金属錯体(前駆体)の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、D. J. Cardenas and A. M. Echavarren, Organometallics Vol. 18, 3337 (1999)に記載の方法、などが好適に挙げられる。
【0063】
−用途等−
本発明の有機金属錯体、及び該有機金属錯体を含む発光性固体は、上述のようにPL量子効率に優れ、高い発光効率を示すことから、各種分野において好適に使用することができるが、高輝度で高寿命である所望な発光色が得られる点で、有機EL素子及び照明装置のいずれかに特に好適に使用することができる。また、前記有機ELを用いた有機ELディスプレイにおいては、フルカラーディスプレイを得る目的で、赤、緑及び青の各色の有機EL素子の組合せを1画素として用いるが、この場合、三色の有機EL素子が必要になる。本発明の有機金属錯体は、前記三座配位子の分子構造を適宜変化させることにより、その発光色を調節乃至変更可能であり、赤、緑及び青の各色の発光が得られる点で、該有機金属錯体を前記有機EL素子に適用すると有利である。
【0064】
(有機EL素子)
本発明の有機EL素子は、正極及び負極の間に有機薄膜層を有してなり、該有機薄膜層が、本発明の前記有機金属錯体を含有してなり、更に適宜選択したその他の層乃至部材を有してなる。
前記有機薄膜層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、少なくとも発光層を有し、更に必要に応じて、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層などを有していてもよい。なお、前記発光層は、発光層として単機能に形成されていてもよいし、発光層兼電子輸送層、発光層兼正孔輸送層、などのように多機能に形成されていてもよい。
【0065】
−発光層−
前記発光層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、本発明の前記有機金属錯体を発光材料として含有するのが好ましい。この場合、前記発光層は、前記有機金属錯体を単独で成膜して形成されていてもよいし、該有機金属錯体以外に他の材料、例えば、本発明の前記有機金属錯体をゲスト材料としたとき、発光波長が該ゲスト材料の光吸収波長付近にあるホスト材料を含んで形成されていてもよい。なお、該ホスト材料は、前記発光層に含有されているのが好ましいが、正孔輸送層、電子輸送層などに含有されていてもよい。
【0066】
前記ゲスト材料としての本発明の有機金属錯体と、前記ホスト材料とを併用する場合、EL発光が生ずる際、まず、前記ホスト材料が励起される。そして、該ホスト材料の発光波長と、前記ゲスト材料(前記有機金属錯体)の吸収波長とが重なり合うので、該ホスト材料から該ゲスト材料へと励起エネルギーが効率的に移動し、該ホスト材料は発光することなく基底状態に戻り、励起状態となった該ゲスト材料のみが励起エネルギーを光として放出するため、発光効率・色純度等に優れる。
【0067】
また、一般に薄膜中に発光分子が単独又は高濃度で存在する場合には、発光分子どうしが接近することにより発光分子間で相互作用が生じ、「濃度消光」と呼ばれる発光効率低下現象が起こるが、前記ゲスト材料と前記ホスト材料とを併用する場合、前記ゲスト化合物である前記有機金属錯体が、前記ホスト化合物中に比較的低濃度で分散されているので、前記「濃度消光」が効果的に抑制され、発光効率に優れる点で有利である。更に、前記ゲスト材料と前記ホスト材料とを前記発光層において併用する場合には、前記ホスト材料が一般に製膜性に優れるので、発光特性を維持しつつ製膜性に優れる点で有利である。
【0068】
前記ホスト材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、発光波長が該ゲスト材料の光吸収波長付近にあるものが好ましく、例えば、下記構造式(1)で表される芳香族アミン誘導体、下記構造式(2)で表されるカルバゾール誘導体、下記構造式(3)で表されるオキシン錯体、下記構造式(4)で表される1,3,6,8−テトラフェニルピレン化合物、下記構造式(5)で表される4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)−1,1’−ビフェニル(DPVBi)(主発光波長=470nm)、下記構造式(6)で表されるp−セシキフェニル(主発光波長=400nm)、下記構造式(7)で表される9,9’−ビアントリル(主発光波長=460nm)、後述のポリマー材料、などが好適に挙げられる。
【0069】
【化12】

【0070】
前記構造式(1)中、nは、2又は3の整数を表す。Arは、2価若しくは3価の芳香族基又は複素環式芳香族基を表す。R及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、1価の芳香族基又は複素環式芳香族基を表す。前記1価の芳香族基又は複素環式芳香族基としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。
【0071】
前記構造式(1)で表される芳香族アミン誘導体の中でも、下記構造式(1)−1で表されるN,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(NPD)(主発光波長=430nm)及びその誘導体が好ましい。
【0072】
【化13】

【0073】
【化14】

【0074】
前記構造式(2)中、Arは、以下に示す、芳香族環を含む2価若しくは3価の基、又は、複素環式芳香族環を含む2価若しくは3価の基を表す。
【0075】
【化15】

【0076】
これらは、非共役性の基で置換されていてもよく、また、Rは、連結基を表し、例えば以下のものが好適に挙げられる。
【0077】
【化16】

【0078】
前記構造式(2)中、R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、水酸基、アミド基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素環基、又は芳香族複素環基を表し、これらは置換基で更に置換されていてもよい。
前記構造式(2)中、nは、整数を表し、2又は3が好適に挙げられる。
【0079】
前記構造式(2)で表されるカルバゾール誘導体の中でも、Arが、ベンゼン環が単結合を介して2つ連結された芳香族基であり、R及びR10が水素原子であり、n=2であるもの、即ち、下記構造式(2)−1で表される4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−ビフェニル(CBP)(主発光波長=380nm)及びその誘導体から選択されるものが、発光効率等に特に優れる点で好ましい。
【0080】
【化17】

【0081】
【化18】

【0082】
前記構造式(3)中、R11は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、水酸基、アミド基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素環基、又は芳香族複素環基を表し、これらは置換基で更に置換されていてもよい。
【0083】
前記構造式(3)で表されるオキシン錯体の中でも、下記構造式(3)−1で表されるアルミニウムキノリン錯体(Alq)(主発光波長=530nm)が好ましい。
【0084】
【化19】

【0085】
【化20】

【0086】
前記構造式(4)中、R12〜R15は、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、水素原子又は置換基を表す。該置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基が好適に挙げられ、これらは更に置換基で置換されていてもよい。
【0087】
前記構造式(4)で表される1,3,6,8−テトラフェニルピレンの中でも、R12〜R15が水素原子である、即ち、下記構造式(4)−1で表される1,3,6,8−テトラフェニルピレン(主発光波長=440nm)が、発光効率等に特に優れる点で好ましい。
【0088】
【化21】

【0089】
【化22】

【0090】
【化23】

【0091】
【化24】

【0092】
前記ポリマー材料であるホスト材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、下記構造式で表される、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリチオフェン(PAT)、ポリパラフェニレン(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVCz)、ポリフルオレン(PF)、ポリアセチレン(PA)及びこれらの誘導体から選択されるのが好ましい。
【0093】
【化25】

【0094】
前記構造式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、窒素原子や硫黄原子を含んでいてもよいアリール基、又はアリールオキシ基を表し、これらは置換基で置換されていてもよい。xは、整数を表す。
【0095】
前記ポリマー材料であるホスト材料の中でも、ホストからゲストへのエネルギー移動が効率よく行われる点で下記構造式(8)で表されるポリビニルカルバゾール(PVCz)が好ましい。
【0096】
【化26】

【0097】
前記構造式(8)中、R17及びR18は、環状構造の任意の位置に付与されたそれぞれ複数の置換基を表し、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、窒素原子や硫黄原子を含んでいてもよいアリール基、又はアリールオキシ基を表し、これらは置換基で置換されていてもよい。該R17及びR18は、任意の隣接する置換位置がお互い結合して、窒素原子、硫黄原子、酸素原子を含んでいてもよい芳香族環を形成してもよく、これらは置換基で置換されていてもよい。xは、整数を表す。
【0098】
前記ポリマー材料であるホスト材料を使用する場合、該ホスト材料を溶媒中に溶解し、前記ゲスト材料である本発明の前記有機金属錯体を混合して塗布液を調製した後、該塗布液を、スピンコート法、インクジェット法、ディップコート法、ブレードコート法などの湿式製膜手法にて塗布することができる。このとき、塗布形成される層の電荷輸送性を高める目的で、該層の上に、正孔輸送層材料及び電子輸送層材料を同時に溶液中に混合し、製膜することもできる。これらの湿式製膜手法は、特に多機能な前記発光層を1層(正孔輸送層兼電子輸送層兼発光層)に形成する場合に好適である。
【0099】
前記発光層における前記有機金属錯体の含有層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1〜50質量%であるのが好ましく、0.5〜20質量%であるのがより好ましい。
前記含有量が、0.1質量%未満であると、寿命・発光効率等が十分でないことがあり、50質量%を超えると、色純度が低下することがあり、一方、前記より好ましい範囲であると、寿命・発光効率等に優れる点で好ましい。
【0100】
前記発光層における、前記ゲスト材料である本発明の有機金属錯体と、前記ホスト材料との比率(モル比、ゲスト材料:ホスト材料)としては、1:99〜50:50であるのが好ましく、1:99〜10:90であるのがより好ましい。
【0101】
なお、前記発光層が発光層兼電子輸送層、発光層兼正孔輸送層などのように多機能に形成されている場合には、これらの層における前記有機金属錯体の含有量も、上記同様とすることができる。
【0102】
前記発光層は、電界印加時に前記正極、正孔注入層、前記正孔輸送層等から正孔を注入することができ、前記負極、電子注入層、前記電子輸送層等から電子を注入することができ、更に該正孔と該電子との再結合の場を提供し、該再結合の際に生ずる再結合エネルギーにより、発光を示す前記有機金属錯体(発光材料、発光分子)を発光させる機能を有していればよく、該有機金属錯体以外に、該発光を害しない範囲内において他の発光材料を含有していてもよい。
【0103】
前記発光層は、公知の方法に従って形成することができ、例えば、蒸着法、湿式製膜法、MBE(分子線エピタキシー)法、クラスターイオンビーム法、分子積層法、LB法、印刷法、転写法、などにより好適に形成することができる。
【0104】
これらの中でも、有機溶媒を用いず廃液処理の問題がなく、低コストで簡便かつ効率的に製造することができる点で蒸着法が好ましいが、前記発光層を単層構造に形成する場合、例えば、該発光層を正孔輸送層兼発光層兼電子輸送層等として形成する場合には湿式製膜法も好ましい。
【0105】
前記蒸着法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、真空蒸着法、抵抗加熱蒸着、化学蒸着法、物理蒸着法、などが挙げられ、該化学蒸着法としては、例えば、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法などが挙げられる。前記蒸着法による前記発光層の形成は、例えば、前記有機金属錯体を真空蒸着することにより、該発光層が前記有機金属錯体以外に前記ホスト材料を含有する場合には該有機金属錯体及び該ホスト材料を真空蒸着による同時蒸着することにより、好適に行うことができる。前者の場合は、共蒸着の必要がない点で製造が容易である。
【0106】
前記湿式製膜法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、インクジェット法、スピンコート法、ニーダーコート法、バーコート法、ブレードコート法、キャスト法、ディップ法、カーテンコート法などが挙げられる。
【0107】
前記湿式製膜法の場合、前記発光層の材料を樹脂成分と共に溶解乃至分散させた溶液を用いる(塗布等する)ことができ、該樹脂成分としては、例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、などが挙げられる。
【0108】
前記湿式製膜法による前記発光層の形成は、例えば、前記有機金属錯体及び必要に応じて用いる前記樹脂材料を溶剤に溶液(塗布液)を用いる(塗布し乾燥する)ことにより、該発光層が前記有機金属錯体以外に前記ホスト材料を含有する場合には該有機金属錯体、該ホスト材料及び必要に応じて用いる前記樹脂材料を溶剤に溶解した溶剤に溶液(塗布液)を用いる(塗布し乾燥する)ことにより、好適に行うことができる。
【0109】
前記発光層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1〜50nmが好ましく、3〜20nmがより好ましい。
前記発光層の厚みが、前記好ましい数値範囲であると、該有機EL素子により発光される光の発光効率・発光輝度・色純度が十分であり、前記より好ましい数値範囲であるとそれが顕著である点で有利である。
【0110】
−正極−
前記正極としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記有機薄膜層に、具体的には該有機薄膜層が前記発光層のみを有する場合には該発光層に、該有機薄膜層が更に前記正孔輸送層を有する場合には該正孔輸送層に、該有機薄膜層が更に前記正孔注入層を有する場合には該正孔注入層に、正孔(キャリア)を供給することができるものが好ましい。
【0111】
前記正極の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも仕事関数が4eV以上の材料が好ましい。
【0112】
前記正極の材料の具体例としては、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、これらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料、これらとITOとの積層物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、導電性金属酸化物が好ましく、生産性、高伝導性、透明性などの観点からはITOが特に好ましい。
【0113】
前記正極の厚みとしては、特に制限はなく、材料等により適宜選択可能であるが、1〜5000nmが好ましく、20〜200nmがより好ましい。
【0114】
前記正極は、通常、ソーダライムガラス、無アルカリガラス等のガラス、透明樹脂等の基板上に形成される。
前記基板として前記ガラスを用いる場合、該ガラスからの溶出イオンを少なくする観点からは、前記無アルカリガラス、シリカなどのバリアコートを施した前記ソーダライムガラスが好ましい。
【0115】
前記基板の厚みとしては、機械的強度を保つのに充分な厚みであれば特に制限はないが、該基材としてガラスを用いる場合には、通常0.2mm以上であり、0.7mm以上が好ましい。
【0116】
前記正極は、例えば、蒸着法、湿式製膜法、電子ビーム法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシー)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、分子積層法、LB法、印刷法、転写法、化学反応法(ゾル−ゲル法など)により該ITOの分散物を塗布する方法、などの上述した方法により好適に形成することができる。
【0117】
前記正極は、洗浄、その他の処理を行うことにより、該有機EL素子の駆動電圧を低下させたり、発光効率を高めることも可能である。前記その他の処理としては、例えば、前記正極の素材がITOである場合には、UV−オゾン処理、プラズマ処理などが好適に挙げられる。
【0118】
−負極−
前記負極としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記有機薄膜層に、具体的には該有機薄膜層が前記発光層のみを有する場合には該発光層に、該有機薄膜層が更に前記電子輸送層を有する場合には該電子輸送層に、該有機薄膜層及び該負極間に電子注入層を有する場合には該電子注入層に、電子を供給することができるものが好ましい。
【0119】
前記負極の材料としては、特に制限はなく、前記電子輸送層、前記発光層などの該負極と隣接する層乃至分子との密着性、イオン化ポテンシャル、安定性等に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。
【0120】
前記負極の材料の具体例としては、アルカリ金属(例えばLi、Na、K、Csなど)、アルカリ土類金属(例えばMg、Caなど)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金又はそれらの混合金属、リチウム−アルミニウム合金又はそれらの混合金属、マグネシウム−銀合金又はそれらの混合金属、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、これらの合金、などが挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、仕事関数が4eV以下の材料が好ましく、アルミニウム、リチウム−アルミニウム合金又はそれらの混合金属、マグネシウム−銀合金又はそれらの混合金属、などがより好ましい。
【0121】
前記負極の厚みとしては、特に制限はなく、該負極の材料等に応じて適宜選択することができるが、1〜10,000nmが好ましく、20〜200nmがより好ましい。
【0122】
前記負極は、例えば、蒸着法、湿式製膜法、電子ビーム法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシー)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、分子積層法、LB法、印刷法、転写法、などの上述した方法により好適に形成することができる。
【0123】
前記負極の材料として2種以上を併用する場合には、該2種以上の材料を同時に蒸着し、合金電極等を形成してもよいし、予め調製した合金を蒸着させて合金電極等を形成してもよい。
【0124】
前記正極及び前記負極の抵抗値としては、低い方が好ましく、数百Ω/□以下であるのが好ましい。
【0125】
−正孔注入層−
前記正孔注入層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、電界印加時に前記正極から正孔を注入する機能を有しているものであるのが好ましい。
【0126】
前記正孔注入層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、下記式で表されるスターバーストアミン[4,4’,4’’−トリ(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン](以下「2−TNATA」と略すことがある)、銅フタロシアニン、ポリアニリン、などが好適に挙げられる。
【0127】
【化27】

【0128】
前記正孔注入層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1〜100nm程度が好ましく、5〜50nmがより好ましい。
【0129】
前記正孔注入層は、例えば、蒸着法、湿式製膜法、電子ビーム法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシー)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、分子積層法、LB法、印刷法、転写法、などの上述した方法により好適に形成することができる。
【0130】
−正孔輸送層−
前記正孔輸送層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、電界印加時に前記正極からの正孔を輸送する機能を有しているものが好ましい。
【0131】
前記正孔輸送層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族アミン化合物、カルバゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー及びポリマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー及びポリマー、カーボン膜、などが挙げられる。なお、これらの正孔輸送層の材料を前記発光層の材料と混合して製膜すると正孔輸送層兼発光層を形成することができる。
【0132】
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、これらの中でも、芳香族アミン化合物が好ましく、具体的には、下記式で表されるTPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン)、下記構造式(67)で表されるNPD(N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン)などがより好ましい。
【0133】
【化28】

【0134】
【化29】

【0135】
前記正孔輸送層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常1〜500nmであり、10〜100nmが好ましい。
【0136】
前記正孔輸送層は、例えば、蒸着法、湿式製膜法、電子ビーム法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシー)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、分子積層法、LB法、印刷法、転写法、などの上述した方法により好適に形成することができる。
【0137】
−正孔ブロッキング層−
前記正孔ブロッキング層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記正極から注入された正孔を障壁する機能を有しているものが好ましい。
【0138】
前記正孔ブロッキング層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0139】
前記有機EL素子が前記正孔ブロッキング層を有していると、正極側から輸送されてきた正孔が該正孔ブロッキング層でブロックされ、負極から輸送されてきた電子は該正孔ブロッキング層を通過して前記発光層に到達することにより、該発光層で効率良く電子と正孔との再結合が生じるため、該発光層以外の有機薄膜層での前記正孔と前記電子との再結合を防ぐことができ、目的とする発光材料からの発光が効率的に得られ、色純度等の点で有利である。
【0140】
前記正孔ブロッキング層は、前記発光層と前記電子輸送層との間に配置されるのが好ましい。
【0141】
前記正孔ブロッキング層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、通常1〜500nm程度であり、10〜50nmが好ましい。
【0142】
前記正孔ブロッキング層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0143】
前記正孔ブロッキング層は、例えば、蒸着法、湿式製膜法、電子ビーム法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシー)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、分子積層法、LB法、印刷法、転写法、などの上述した方法により好適に形成することができる。
【0144】
−電子輸送層−
前記電子輸送層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記負極からの電子を輸送する機能、前記正極から注入された正孔を障壁する機能のいずれかを有しているものが好ましい。
【0145】
前記電子輸送層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記アルミニウムキノリン錯体(Alq)等のキノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体など、などが挙げられる。なお、これらの電子輸送層の材料を前記発光層の材料と混合して製膜すると電子輸送層兼発光層を形成することができ、更に前記正孔輸送層の材料も混合させて製膜すると電子輸送層兼正孔輸送層兼発光層を形成することができ、この際、ポリビニルカルバゾール、ポリカーボネート等のポリマーを使用することができる。
【0146】
前記電子輸送層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、通常1〜500nm程度であり、10〜50nmが好ましい。
【0147】
前記電子輸送層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
この場合、前記発光層に隣接する該電子輸送層に用いる電子輸送材料としては、前記有機金属錯体よりも光吸収端が短波長である電子輸送材料を用いることが、有機EL素子中の発光領域を前記発光層に限定し、前記電子輸送層からの余計な発光を防ぐ観点からは好ましい。前記有機金属錯体よりも光吸収端が短波長である電子輸送材料としては、例えば、フェナントロリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体などが挙げられ、下記構造式(68)で表される2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)や、以下に示す化合物などが好適に挙げられる。
【0148】
【化30】

【0149】
【化31】

【0150】
【化32】

【0151】
【化33】

【0152】
前記電子輸送層は、例えば、蒸着法、湿式製膜法、電子ビーム法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシー)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、分子積層法、LB法、印刷法、転写法、などの上述した方法により好適に形成することができる。
【0153】
−電子注入層−
前記電子注入層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フッ化リチウム等のアルカリ金属フッ化物、フッ化ストロンチウム等のアルカリ土類金属フッ化物、などを好適に使用できる。電子注入層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することでき、例えば、通常、0.1〜10nm程度であり、0.5〜2nmが好ましい。
前記電子注入層は、例えば、蒸着法、電子ビーム法、スパッタリング法などにより好適に形成することができる。
【0154】
−その他の層−
本発明の有機EL素子は、目的に応じて適宜選択したその他の層を有していてもよく、該その他の層としては、例えば、色変換層、保護層、などが好適に挙げられる。
【0155】
−−色変換層−−
前記色変換層としては、りん光発光材料を含有しているのが好ましく、本発明の前記有機金属錯体を含有しているのがより好ましい。なお、前記色変換層は、該有機金属錯体のみで形成されていてもよいし、更に他の材料を含んで形成されていてもよい。
該色変換層において、前記有機金属錯体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0156】
ところで、一般的に、ある波長の光により励起された有機分子は、励起状態から光を放出して基底状態に遷移する前に、分子内、あるいは他の分子との相互作用によってその励起エネルギーの一部を熱エネルギーなどの形で非放射的に失うため、励起光と発光の波長は一致しないことが知られている。励起光と発光のエネルギー差は、ストークスシフトと呼ばれている。これまで前記色変換層に使用されてきた色変換材料は、材料選択幅の広さから一重項からの発光のみが観測される蛍光発光材料が使用されてきたが、該蛍光発光材料は、ストークスシフトが小さく(<100nm)、可視域に存在する最も強い吸収帯に対して発光はそのすぐ長波長側に観測されるため、例えば青系統の発光を効率良く吸収して赤系統の色に変換することができない。一方、本発明の前記有機金属錯体は、りん光発光材料であるため、ある波長の光により励起され一重項励起状態が生成すると、それよりも低いエネルギー状態である三重項励起状態に速やかに遷移してりん光発光可能であるため、蛍光発光材料に比べてストークスシフトが大きくなる(通常の有機物の場合、三重項状態は一重項励起状態のエネルギーよりも0.1〜2eV程度低いことが知られている)。例えば、励起源となる青色系統の発光を赤色に変換する用途においては、りん光材料を用いた色変換層の方が蛍光材料を用いた場合に比べて青色光の吸収率が高いため、分子1個当たりの色変換率は高くなる。換言すれば、前記蛍光発光材料を用いた色変換層の方が青色光を吸収しないため色変換層を透過してくる青色光が多い。これを補うために分散濃度を変えることなく色変換層を厚くすることで青色光吸収量が増え、赤色光を強くすることが可能だが、有機EL素子を作製した際に色変換層からの浸出物、例えば、水分や有機溶媒の残留物によって有機EL素子を構成する材料が劣化し、不発光領域が発生することが大きな問題となるため可能な限り色変換層は薄くする方がよい。また、蛍光発光材料を用いた色変換層では青色光を吸収するホストを併用することでゲストの吸収率が低いことを補っているが、前記りん光発光材料を用いた場合には必ずしもホストとなる材料を併用する必要はなく、単独で用いた場合でも高い色変換効率が得られるため、ホストを併用して作製された色変換層で懸念されるホスト分子からの発光、色変換層の製造性の悪化、基板製造コスト増加といった多くの課題も同時に解決できるという利点がある。さらに、ホストを用いた場合を考えると、蛍光発光材料は、前述のように濃度が高すぎると濃度消光が起きて発光が顕著に弱くなることが多いが、前記りん光発光材料は、前記蛍光発光材料に比べて濃度消光を起こし難いことが知られており、分散濃度に制限がない。例えば、前記りん光発光材料は、粉末状態であっても発光するものが蛍光発光材料に比べて多く、逆に分散濃度が低すぎると酸素分子による消光作用のために発光が弱められてしまう。粉末状態でりん光発光材料を使用する場合の有効性としては、色変換層の劣化抑制が達成できる点にある。色変換層においては、基板作製段階のフォトリソグラフィー工程やITOパターニング工程、素子として色変換を行う過程で常に光暴露されているため、光劣化による色変換効率低下が問題となる。色変換層に分散された発光材料を用いた場合には、発光材料単体で光に暴露されるため、その劣化は非常に早く、また、それを防ぐのは非常に困難である。それに対して粉末状態のりん光発光材料を用いた色変換層はバルクで光に暴露されるため、劣化が抑制され、寿命が長く、変換効率が変化しない色変換層を得ることができる。
【0157】
前記色変換層の設ける位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フルカラー表示を行う場合には画素上に設けるのが好ましい。
【0158】
本発明の前記有機EL素子においては、前記色変換層が、入射される光を、該光の波長よりも100nm以上波長の長い光に変換可能であることが好ましく、入射される光を、該光の波長よりも150nm以上波長の長い光に変換可能であるのがより好ましい。
【0159】
また、前記色変換層としては、紫外光から青色光の波長領域の光を赤色光に変換可能であるものが好ましい。
前記色変換層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蒸着法、塗布法などが好適に挙げられる。
なお、本発明においては、前記色変換層としては、公知のカラーフィルター等を用いてもよい。
【0160】
−−保護層−−
前記保護層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水分や酸素等の有機EL素子を劣化促進させる分子乃至物質が有機EL素子内に侵入することを抑止可能であるものが好ましい。
【0161】
前記保護層の材料としては、例えば、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等の金属酸化物、SiN、SiNOy等の窒化物、MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質などが挙げられる。
【0162】
前記保護層は、例えば、蒸着法、湿式製膜法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシー)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、印刷法、転写法、などの上述した方法により好適に形成することができる。
【0163】
−層構成−
本発明の有機EL素子における層構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、以下の(1)〜(13)の層構成、即ち、(1)正極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/負極、(2)正極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/負極、(3)正極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/負極、(4)正極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/負極、(5)正極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層兼電子輸送層/電子注入層/負極、(6)正極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層兼電子輸送層/負極、(7)正極/正孔輸送層/発光層兼電子輸送層/電子注入層/負極、(8)正極/正孔輸送層/発光層兼電子輸送層/負極、(9)正極/正孔注入層/正孔輸送層兼発光層/電子輸送層/電子注入層/負極、(10)正極/正孔注入層/正孔輸送層兼発光層/電子輸送層/負極、(11)正極/正孔輸送層兼発光層/電子輸送層/電子注入層/負極、(12)正極/正孔輸送層兼発光層/電子輸送層/負極、(13)正極/正孔輸送層兼発光層兼電子輸送層/負極、などが好適に挙げられる。
【0164】
なお、前記有機EL素子が前記正孔ブロッキング層を有する場合には、前記(1)〜(13)において、前記発光層と前記電子輸送層との間に該正孔ブロッキング層が配置される層構成が好適に挙げられる。
【0165】
これらの層構成の内、前記(4)正極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/負極の態様を図示すると、図1の通りであり、有機EL素子10は、ガラス基板12上に形成された正極14(例えばITO電極)と、正孔輸送層16と、発光層18と、電子輸送層20と、負極22(例えばAl−Li電極)とをこの順に積層してなる層構成を有する。なお、正極14(例えばITO電極)と負極22(例えばAl−Li電極)とは電源を介して互いに接続されている。正孔輸送層16と発光層18と電子輸送層20とで有機薄膜層24が形成されている。
【0166】
本発明の有機EL素子の輝度半源時間としては、長い程好ましく、例えば、電流密度50A/mの連続駆動において、5時間以上が好ましく、20時間以上がより好ましく、40時間以上が更に好ましく、60時間以上が特に好ましい。
本発明の有機EL素子の発光ピーク波長としては、特に制限はなく、可視光域から適宜選択することができ、例えば、600〜650nmが好ましい。
本発明の有機EL素子の発光電圧としては、電圧10V以下で発光することが望まれ、8V以下で発光するのが好ましく、7V以下で発光するのがより好ましい。
本発明の有機EL素子の電流効率としては、電流密度5A/mにおいて、10cd/A以上であるのが好ましく、30cd/A以上であるのがより好ましく、40cd/A以上であるのが特に好ましい。
【0167】
−用途等−
本発明の有機EL素子は、例えば、コンピュータ、車載用表示器、野外表示器、家庭用機器、業務用機器、家電用機器、交通関係表示器、時計表示器、カレンダ表示器、ルミネッセントスクリーン、音響機器等をはじめとする各種分野において好適に使用することができるが、照明装置や以下の本発明の有機ELディスプレイに特に好適に使用することができる。
【0168】
(有機ELディスプレイ)
本発明の有機ELディスプレイは、前記本発明の有機EL素子を用いたこと以外は、特に制限はなく、公知の構成を適宜採用することができる。
前記有機ELディスプレイは、単色発光のものであってもよいし、多色発光のものであってもよいし、フルカラータイプのものであってもよい。
【0169】
前記有機ELディスプレイをフルカラータイプのものとする方法としては、例えば「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33〜37ページに記載されているように、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する有機EL素子を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の有機EL素子による白色発光をカラーフィルタを通して3原色に分ける白色法、青色発光用の有機EL素子による青色発光を蛍光色素層を通して赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法、などが知られているが、本発明においては、用いる前記本発明の有機EL素子は赤色発光用等であるので、3色発光法、色変換法などを好適に採用することができる。
【0170】
なお、本発明の前記有機金属錯体を色変換材料として用いる場合には、前記色変換法を特に好適に採用することができる。
該色変換法による本発明の有機ELディスプレイの具体例としては、例えば、図2に示すように、この有機ELディスプレイは、画素に対応して配置された電極25上に、青色発光用の有機薄膜層30が一面に設けられ、更にその上に透明電極20を有する。そして、透明電極20上には、保護層(平坦化層)15を介して、赤色用の色変換層60及び赤色カラーフィルタ65の積層物と、緑色用の色変換層70及び緑色カラーフィルタ80の積層物とが、配置されている。そして、これらの上にガラス基板10が設けられている。
【0171】
この有機ELディスプレイにおける電極25及び透明電極20間に電圧を印加すると、青色発光用の有機薄膜層30が青色の発光を示す。この青色発光の一部は、透明電極20を透過し、保護層15、ガラス基板10をそのまま透過し、外部に放射される。一方、赤色用の色変換層60及び緑色用の色変換層70が存在する部位では、前記青色発光が、これらの色変換層中で、それぞれ赤色、緑色に変換され、更に赤色カラーフィルタ65、緑色カラーフィルタ80を透過することにより、それぞれ赤色発光、緑色発光となって、ガラス基板10を透過する。その結果、該有機ELディスプレイにおいては、フルカラー表示が可能である。
【0172】
そして、色変換層60及び70が、本発明の有機金属錯体(りん光発光材料)で形成されている場合には、特に赤色用の色変換層においてもホスト材料等を併用せずとも、該有機金属錯体単独膜とすることができ、製造が容易である上、極めて色変換効率に優れる。なお、図3は、3色発光法による有機ELディスプレイの構造例を示す図であり、図4は、白色法による有機ELディスプレイの構造例を示す図である。図3及び図4における符号は、図2における符号と同じものを意味する。
【0173】
また、前記3色発光法によりフルカラータイプの有機ELディスプレイを製造するには、例えば、本発明の前記有機EL素子を赤色発光用として用いる場合には(なお、本発明の前記有機EL素子を他の色の発光用として用いてもよく、全色を本発明の前記有機EL素子で形成してもよい)、更にそのほかに緑色発光用の有機EL素子及び青色発光用の有機EL素子が必要になる。
【0174】
前記青色発光用の有機EL素子としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば層構成が、ITO(正極)/前記NPD/Al−Li(負極)、であるものなどが好適に挙げられる。
【0175】
前記緑色発光用の有機EL素子としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば層構成が、ITO(正極)/前記NPD/前記Alq/Al−Li(負極)、であるものなどが好適に挙げられる。
【0176】
前記有機ELディスプレイの態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、「日経エレクトロニクス」、No.765,2000年3月13日号、55〜62ページに記載されているような、パッシブマトリクスパネル、アクティブマトリクスパネルなどが好適に挙げられる。
【0177】
前記パッシブマトリクスパネルは、例えば、図5に示すように、ガラス基板12上に、互いに平行に配置された帯状の正極14(例えばITO電極)を有し、正極14上に、互いに順番に平行にかつ正極14と略直交方向に配置された帯状の赤色発光用の有機薄膜層24、青色発光用の有機薄膜層26及び緑色発光用の有機薄膜層28を有し、赤色発光用の有機薄膜層24、青色発光用の有機薄膜層26及び緑色発光用の有機薄膜層28上に、これらと同形状の負極22を有してなる。
【0178】
前記パッシブマトリクスパネルにおいては、例えば、図6に示すように、複数の正極14からなる正極ライン30と、複数の負極22からなる負極ライン32とが互いに略直行方向に交差して回路が形成されている。各交差点に位置する、赤色発光用、青色発光用及び緑色発光用の各有機薄膜層24、26及び28が画素として機能し、各画素に対応して有機EL素子34が複数存在している。該パッシブマトリクスパネルにおいて、正極ライン30における正極14の1つと、負極ライン32における負極22の1つとに対し、定電流源36により電流を印加すると、その際、その交差点に位置する有機EL薄膜層に電流が印加され、該位置の有機EL薄膜層が発光する。この画素単位の発光を制御することにより、容易にフルカラーの画像を形成することができる。
【0179】
前記アクティブマトリクスパネルは、例えば、図7に示すように、ガラス基板12上に、走査線、データライン及び電流供給ラインが碁盤目状に形成されており、碁盤目状を形成する走査線等に接続され、各碁盤目に配置されたTFT回路40と、TFT回路40により駆動可能であり、各碁盤目中に配置された正極14(例えばITO電極)とを有し、正極14上に、互いに順番に平行に配置された帯状の赤色発光用の有機薄膜層24、青色発光用の有機薄膜層26及び緑赤色発光用の有機薄膜層28を有し、赤色発光用の有機薄膜層24、青色発光用の有機薄膜層26及び緑色発光用の有機薄膜層28上に、これらを全部覆うようにして配置された負極22を有してなる。赤色発光用の有機薄膜層24、青色発光用の有機薄膜層26及び緑色発光用の有機薄膜層28は、それぞれ、正孔輸送層16、発光層18及び電子輸送層20を有している。
【0180】
前記アクティブマトリクスパネルにおいては、例えば、図8に示すように、複数平行に設けられた走査線46と、複数平行に設けられたデータライン42及び電流供給ライン44とが互いに直交して碁盤目を形成しており、各碁盤目には、スイッチング用TFT48と、駆動用TFT50とが接続されて回路が形成されている。駆動回路38から電流を印加すると、碁盤目毎にスイッチング用TFT48と駆動用TFT50とが駆動可能となっている。そして、各碁盤目は、青色発光用、緑色発光用及び赤色発光用の各有機薄膜素子24、26及び28が画素として機能し、該アクティブマトリクスパネルにおいて、横方向に配置された走査線46の1つと、縦方向に配置された電流供給ライン44とに対し、駆動回路38から電流を印加すると、その際、その交差点に位置するスイッチング用TFT48が駆動し、それに伴い駆動用TFT50が駆動し、該位置の有機EL素子52が発光する。この画素単位の発光を制御することにより、容易にフルカラーの画像を形成することができる。
【実施例】
【0181】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0182】
(合成例1)
−Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)(2−フルオロフェノール)(以下「Pt(dpt)(o2Fph)」と記す)の合成−
(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)(以下「(dpt)」と記す)を、以下のように合成した。即ち、具体的には、3,5−ジブロモトルエン(5.0g;20mmol)と、2−トリ−n−ブチルスタニルピリジン(26.9g;73mmol)と、ビス(トリフェニル−ホスフィン)パラジウム・ジクロライド(1.55g;2.2mmol)と、塩化リチウム(11.7g;276mmol)とを、130mlのトルエンに入れて、2日間還流した。放冷後、KFの飽和水溶液50mlを加えた。ろ過により析出した固体を取り出し、少量の冷却したトルエンで洗浄(20ml×3回)し、真空乾燥した。得られた固体を、ジクロロメタンと、NaHCOとの混合溶液に入れてよく洗った。有機層を分液し、MgSO粉末で乾燥させた後、エバポレートで溶媒を除いた。ジクロロメタンで再結晶して目的物の灰色固体である3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン2.2gを得た。収率は、48%であった。
【0183】
【化34】

【0184】
Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)・クロライド(以下「Pt(dpt)Cl」と記す)を、以下のように合成した。即ち、具体的には、得られた3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン(300mg;1.2mmol)と、KPtCl(550mg;1.3mmol)とを、脱気した酢酸(30ml)に入れて、130℃で2日間還流した。放冷すると淡い黄色結晶が析出したので濾取した。濾取した固体をメタノール、水、ジエチルエーテルでよく洗浄し、真空乾燥した。得られた粗粉末をジクロロメタンにより再結晶し、目的物の黄色粉末であるPt(dpt)Cl 436mgを得た。収率は、75%であった。
【0185】
【化35】

【0186】
次に、Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)(2−フルオロフェノール)(以下「Pt(dpt)(o2Fph)」と記す)を、以下のように合成した。即ち、具体的には、得られたPt(dpt)Cl 100mg(0.21mmol)をアセトン30mlに入れて攪拌した。ここに、2−フルオロフェノール47mg(0.42mmol)をゆっくりと添加した。室温で10分間攪拌した。数滴の純水を加えると反応が進み、黄色固体が析出し始め、加熱しながら3時間攪拌した。放冷して、析出した淡黄色固体をろ取し、純水、メタノール、ジエチルエーテルで順によく洗浄し、真空乾燥し、Pt(dpt)(o2Fph)の黄色固体を得た。収率は、50%であった。
【0187】
【化36】

【0188】
(合成例2)
−Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)(2,6−ジメチル−フェノール)(以下「Pt(dpt)(odmp)」と記す)の合成−
合成例1において、2−フルオロフェノールを2,6−ジメチル−フェノールに変更した以外は、合成例1と同様にして、Pt(dpt)(odmp)の淡黄色固体を得た。収率は、65%であった。
【0189】
(合成例3)
−Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)(2−フェニルフェノール)(以下「Pt(dpt)(o2pph)」と記す)の合成−
合成例1において、2−フルオロフェノールを2−フェニルフェノールに変更した以外は、合成例1と同様にして、Pt(dpt)(o2pph)の淡黄色固体を得た。収率は、70%であった。
【0190】
(合成例4)
−Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)(2,6−ジフェニルフェノール)(以下「Pt(dpt)(o26dpph)」と記す)の合成−
合成例1において、2−フルオロフェノールを2,6−ジフェニルフェノールに変更した以外は、合成例1と同様にして、Pt(dpt)(o26dpph)の黄色固体を得た。収率は、60%であった。
【0191】
(合成例5)
−Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)(3,5−ジメチルピラゾール)(以下「Pt(dpt)(dmpr)」と記す)の合成−
合成例1において、2−フルオロフェノールを2,6−ジメチルピラゾールに変更した以外は、合成例1と同様にして、Pt(dpt)(dmpr)の淡黄色固体を得た。収率は、68%であった。
【0192】
(合成例6)
−Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)(5−メチル−1H−1,2,3−ベンゾトリアゾール)(以下「Pt(dpt)(mbtaz)」と記す)の合成−
合成例1において、2−フルオロフェノールを5−メチル−1H−1,2,3−ベンゾトリアゾールに変更した以外は、合成例1と同様にして、Pt(dpt)(mbtaz)の淡黄色固体を得た。収率は、62%であった。
【0193】
(合成例7)
−Pt(1,3−ジ(2−ピリジル)ベンゼン)(2−フルオロフェノール)(以下「Pt(dpb)(o2Fph)」と記す)の合成−
(1,3−ジ(2−ピリジル)ベンゼン)(以下「(dpb)」と記す)を、以下のように合成した。即ち、具体的には、1,3−ジブロモベンゼン(4.74g;20mmol)と、2−トリ−n−ブチルスタニルピリジン(26.9g;73mmol)と、ビス(トリフェニル−ホスフィン)パラジウム・ジクロライド(1.55g;2.2mmol)と、塩化リチウム(11.7g;276mmol)とを、130mlのトルエンに入れて、2日間還流した。放冷後、KFの飽和水溶液50mlを加えた。ろ過により析出した固体を取り出し、少量の冷却したトルエンで洗浄(20ml×3回)し、真空乾燥した。得られた固体を、ジクロロメタンと、NaHCOとの混合溶液に入れてよく洗った。有機層を分液し、MgSO粉末で乾燥させた後、エバポレートで溶媒を除いた。ジクロロメタンで再結晶して目的物の灰色固体である1,3−ジ(2−ピリジル)ベンゼン2.3gを得た。収率は、50%であった。
【0194】
【化37】

【0195】
Pt(1,3−ジ(2−ピリジル)ベンゼン)・クロライド(以下「Pt(dpb)Cl」と記す)を、以下のように合成した。即ち、具体的には、得られた1,3−ジ(2−ピリジル)ベンゼン(283mg;1.22mmol)と、KPtCl(550mg;1.33mmol)とを、脱気した酢酸(30ml)に入れて、130℃で2日間還流した。放冷すると淡い黄色結晶が析出したので濾取した。濾取した固体をメタノール、水、ジエチルエーテルでよく洗浄し、真空乾燥した。得られた粗粉末をジクロロメタンにより再結晶し、目的物の黄色粉末であるPt(dpb)Cl 410mgを得た。収率は、72%であった。
【0196】
【化38】

【0197】
次に、Pt(1,3−ジ(2−ピリジル)ベンゼン)(2−フルオロフェノール)(以下「Pt(dpb)(o2Fph)」と記す)を、以下のように合成した。即ち、具体的には、得られたPt(dpb)Cl 100mg(0.22mmol)をアセトン30mlに入れて攪拌した。ここに、2−フルオロフェノール49mg(0.44mmol)をゆっくりと添加した。室温で10分間攪拌した。数滴の純水を加えると反応が進み、黄色固体が析出し始め、加熱しながら3時間攪拌した。放冷して、析出した淡黄色固体をろ取し、純水、メタノール、ジエチルエーテルで順によく洗浄し、真空乾燥し、Pt(dpb)(o2Fph)の黄色固体を得た。収率は、45%であった。
【0198】
【化39】

【0199】
(合成例8)
−Pt(1,3−ジ(2−ピリジル)ベンゼン)(2,6−ジメチル−フェノール)(以下「Pt(dpb)(odmp)」と記す)の合成−
合成例7において、2−フルオロフェノールを2,6−ジメチル−フェノールに変更した以外は、合成例7と同様にして、Pt(dpb)(odmp)の淡黄色固体を得た。収率は、58%であった。
【0200】
(合成例9)
−Pt(1,3−ジ(2−ピリジル)ベンゼン)(2−フェニルフェノール)(以下「Pt(dpb)(o2pph)」と記す)の合成−
合成例7において、2−フルオロフェノールを2−フェニルフェノールに変更した以外は、合成例7と同様にして、Pt(dpb)(o2pph)の黄色固体を得た。収率は、64%であった。
【0201】
(合成例10)
−Pt(1,3−ジ(2−ピリジル)ベンゼン)(2,6−ジフェニルフェノール)(以下「Pt(dpb)(o26dpph)」と記す)の合成−
合成例7において、2−フルオロフェノールを2,6−ジフェニルフェノールに変更した以外は、合成例7と同様にして、Pt(dpb)(o26dpph)の黄色固体を得た。収率は、53%であった。
【0202】
(合成例11)
−Pt(1,3−ジ(2−ピリジル)ベンゼン)(3,5−ジメチルピラゾール)(以下「Pt(dpb)(dmpr)」と記す)の合成−
合成例7において、2−フルオロフェノールを2,6−ジメチルピラゾールに変更した以外は、合成例7と同様にして、Pt(dpb)(dmpr)の黄色固体を得た。収率は、55%であった。
【0203】
(合成例12)
−Pt(1,3−ジ(2−ピリジル)ベンゼン)(5−メチル−1H−1,2,3−ベンゾトリアゾール)(以下「Pt(dpb)(mbtaz)」と記す)の合成−
合成例7において、2−フルオロフェノールを5−メチル−1H−1,2,3−ベンゾトリアゾールに変更した以外は、合成例7と同様にして、Pt(dpb)(mbtaz)の黄色固体を得た。収率は、50%であった。
【0204】
(合成例13)
−Pt(3,5−ジ(1−イソキノリル)トルエン)(2−フルオロフェノール)(以下「Pt(diqt)(o2Fph)」と記す)の合成−
(3,5−ジ(1−イソキノリル)トルエン)(以下「(diqt)」と記す)を、以下のように合成した。即ち、具体的には、3,5−ジブロモトルエン(5.0g;20mmol)と、2−トリ−n−ブチルスタニル−イソ−キノリン(28.8g;73mmol)と、ビス(トリフェニル−ホスフィン)パラジウム・ジクロライド(1.55g;2.2mmol)と、塩化リチウム(11.7g;276mmol)とを、130mlのトルエンに入れて、2日間還流した。放冷後、KFの飽和水溶液50mlを加えた。ろ過により析出した固体を取り出し、少量の冷却したトルエンで洗浄(20ml×3回)し、真空乾燥した。得られた固体を、ジクロロメタンと、NaHCOとの混合溶液に入れてよく洗った。有機層を分液し、MgSO粉末で乾燥させた後、エバポレートで溶媒を除いた。ジクロロメタンで再結晶して目的物の灰色固体である3,5−ジ(1−イソキノリル)トルエン2.8gを得た。収率は、41%であった。
【0205】
【化40】

【0206】
Pt(3,5−ジ(1−イソキノリル)トルエン)・クロライド(以下「Pt(diqt)Cl」と記す)を、以下のように合成した。即ち、具体的には、得られた3,5−ジ(1−イソキノリル)トルエン(422mg;1.22mmol)と、KPtCl(550mg;1.33mmol)とを、脱気した酢酸(30ml)に入れて、130℃で2日間還流した。放冷すると淡い黄色結晶が析出したので濾取した。濾取した固体をメタノール、水、ジエチルエーテルでよく洗浄し、真空乾燥した。得られた粗粉末をジクロロメタンにより再結晶し、目的物の黄色粉末であるPt(diqt)Cl 452mgを得た。収率は、64%であった。
【0207】
【化41】

【0208】
次に、Pt(3,5−ジ(1−イソキノリル)トルエン)(2−フルオロフェノール)(以下「Pt(diqt)(o2Fph)」と記す)を、以下のように合成した。即ち、具体的には、得られたPt(diqt)Cl 127mg(0.22mmol)をアセトン30mlに入れて攪拌した。ここに、2−フルオロフェノール49mg(0.44mmol)をゆっくりと添加した。室温で10分間攪拌した。数滴の純水を加えると反応が進み、淡橙色固体が析出し始め、加熱しながら3時間攪拌した。放冷して、析出した淡橙色固体をろ取し、純水、メタノール、ジエチルエーテルで順によく洗浄し、真空乾燥し、Pt(diqt)(o2Fph)の橙色固体を得た。収率は、45%であった。
【0209】
【化42】

【0210】
(合成例14)
−Pt(3,5−ジ(1−イソキノリル)トルエン)(2,6−ジメチル−フェノール)(以下「Pt(diqt)(odmp)」と記す)の合成−
合成例13において、2−フルオロフェノールを2,6−ジメチル−フェノールに変更した以外は、合成例13と同様にして、Pt(diqt)(odmp)の茶色固体を得た。収率は、45%であった。
【0211】
(合成例15)
−Pt(3,5−ジ(1−イソキノリル)トルエン)(2−フェニルフェノール)(以下「Pt(diqt)(o2pph)」と記す)の合成−
合成例13において、2−フルオロフェノールを2−フェニルフェノールに変更した以外は、合成例13と同様にして、Pt(diqt)(o2pph)の茶色固体を得た。収率は、42%であった。
【0212】
(合成例16)
−Pt(3,5−ジ(1−イソキノリル)トルエン)(2,6−ジフェニルフェノール)(以下「Pt(diqt)(o26dpph)」と記す)の合成−
合成例13において、2−フルオロフェノールを2,6−ジフェニルフェノールに変更した以外は、合成例13と同様にして、Pt(diqt)(o26dpph)の茶色固体を得た。収率は、40%であった。
【0213】
(合成例17)
−Pt(3,5−ジ(1−イソキノリル)トルエン)(3,5−ジメチルピラゾール)(以下「Pt(diqt)(dmpr)」と記す)の合成−
合成例13において、2−フルオロフェノールを2,6−ジメチルピラゾールに変更した以外は、合成例13と同様にして、Pt(diqt)(dmpr)の赤茶色固体を得た。収率は、40%であった。
【0214】
(合成例18)
−Pt(3,5−ジ(1−イソキノリル)トルエン)(5−メチル−1H−1,2,3−ベンゾトリアゾール)(以下「Pt(diqt)(mbtaz)」と記す)の合成−
合成例13において、2−フルオロフェノールを5−メチル−1H−1,2,3−ベンゾトリアゾールに変更した以外は、合成例13と同様にして、Pt(diqt)(mbtaz)の赤色固体を得た。収率は、42%であった。
【0215】
(合成例19)
−Pt(3,5−ターピリジン)(2−フルオロフェノール)(以下「Pt(tp)(o2Fph)」と記す)の合成−
3,5−ターピリジン(以下「(tp)」と記す)を、以下のように合成した。即ち、具体的には、3,5−ジブロモトルエン(4.74g;20mmol)と、2−トリ−n−ブチルスタニルピリジン(26.9g;73mmol)と、ビス(トリフェニル−ホスフィン)パラジウム・ジクロライド(1.55g;2.2mmol)と、塩化リチウム(11.7g;276mmol)とを、130mlのトルエンに入れて、2日間還流した。放冷後、KFの飽和水溶液50mlを加えた。ろ過により析出した固体を取り出し、少量の冷却したトルエンで洗浄(20ml×3回)し、真空乾燥した。得られた固体を、ジクロロメタンと、NaHCOとの混合溶液に入れてよく洗った。有機層を分液し、MgSO粉末で乾燥させた後、エバポレートで溶媒を除いた。ジクロロメタンで再結晶して目的物の灰色固体である3,5−ターピリジン2.3gを得た。収率は、40%であった。
【0216】
【化43】

【0217】
Pt(3,5−ターピリジン)・クロライド(以下「Pt(tp)Cl」と記す)を、以下のように合成した。即ち、具体的には、得られた3,5−ターピリジン(284mg;1.22mmol)と、KPtCl(550mg;1.33mmol)とを、脱気した酢酸(30ml)に入れて、130℃で2日間還流した。放冷すると淡い黄色結晶が析出したので濾取した。濾取した固体をメタノール、水、ジエチルエーテルでよく洗浄し、真空乾燥した。得られた粗粉末をジクロロメタンにより再結晶し、目的物の黄色粉末であるPt(tp)Cl 390mgを得た。収率は、69%であった。
【0218】
【化44】

【0219】
次に、Pt(3,5−ターピリジン)(2−フルオロフェノール)(以下「Pt(tp)(o2Fph)」と記す)を、以下のように合成した。即ち、具体的には、得られたPt(tp)Cl 102mg(0.22mmol)をアセトン30mlに入れて攪拌した。ここに、2−フルオロフェノール49mg(0.44mmol)をゆっくりと添加した。室温で10分間攪拌した。数滴の純水を加えると反応が進み、黄色固体が析出し始め、加熱しながら3時間攪拌した。放冷して、析出した黄色固体をろ取し、純水、メタノール、ジエチルエーテルで順によく洗浄し、真空乾燥し、Pt(tp)(o2Fph)の黄色固体を得た。収率は、60%であった。
【0220】
【化45】

【0221】
(合成例20)
−Pt(3,5−ターピリジン)(2,6−ジメチル−フェノール)(以下「Pt(tp)(odmp)」と記す)の合成−
合成例19において、2−フルオロフェノールを2,6−ジメチル−フェノールに変更した以外は、合成例19と同様にして、Pt(tp)(odmp)の淡黄色固体を得た。収率は、40%であった。
【0222】
(合成例21)
−Pt(3,5−ターピリジン)(2−フェニルフェノール)(以下「Pt(tp)(o2pph)」と記す)の合成−
合成例19において、2−フルオロフェノールを2−フェニルフェノールに変更した以外は、合成例19と同様にして、Pt(tp)(o2pph)の淡黄色固体を得た。収率は、35%であった。
【0223】
(合成例22)
−Pt(3,5−ターピリジン)(2,6−ジフェニルフェノール)(以下「Pt(tp)(o26dpph)」と記す)の合成−
合成例19において、2−フルオロフェノールを2,6−ジフェニルフェノールに変更した以外は、合成例19と同様にして、Pt(tp)(o26dpph)の黄色固体を得た。収率は、32%であった。
【0224】
(合成例23)
−Pt(3,5−ターピリジン)(3,5−ジメチルピラゾール)(以下「Pt(tp)(dmpr)」と記す)の合成−
合成例19において、2−フルオロフェノールを2,6−ジメチルピラゾールに変更した以外は、合成例19と同様にして、Pt(tp)(dmpr)の黄色固体を得た。収率は、37%であった。
【0225】
(合成例24)
−Pt(3,5−ターピリジン)(5−メチル−1H−1,2,3−ベンゾトリアゾール)(以下「Pt(tp)(mbtaz)」と記す)の合成−
合成例19において、2−フルオロフェノールを5−メチル−1H−1,2,3−ベンゾトリアゾールに変更した以外は、合成例19と同様にして、Pt(tp)(mbtaz)の黄色固体を得た。収率は、38%であった。
【0226】
(合成例25)
−Pt(1,3−ジ(N−ピラゾリル)ベンゼン)(2−フルオロフェノール)(以下「Pt(dpzb)(o2Fph)」と記す)の合成−
1,3−ジ(N−ピラゾリル)ベンゼン(以下「(dpzb)」と記す)を、以下のように合成した。即ち、具体的には、1,3−ジヨードベンゼン(6.6g;20mmol)と、ピラゾール(3.26g;48mmol)と、CuI(76mg;0.4mmol)、トランス−ジアミノシクロヘキサン(456mg;4mmol)と、リン酸カリウム(17.8g;84mmol)と、ドデカン(1.36g;8mmol)とを、40mlのジオキサンに入れて、2日間還流した。放冷後、酢酸エチル120mlを加え、さらに酢酸エチル600mlを溶出液としてシリカゲルカラムに通した。溶出液を濃縮し、ヘキサン:酢酸エチル=50:1の溶出液とシリカゲルカラムとを用いたカラムクロマトグラフィーにより目的物(淡黄色結晶)である1,3−ジ(N−ピラゾリル)ベンゼン2.2gを得た。収率は、52%であった。
【0227】
【化46】

【0228】
Pt(1,3−ジ(N−ピラゾリル)ベンゼン)・クロライド(以下「Pt(dpzb)Cl」と記す)を、以下のように合成した。即ち、具体的には、得られた1,3−ジ(N−ピラゾリル)ベンゼン(256mg;1.22mmol)と、KPtCl(550mg;1.33mmol)とを、脱気した酢酸(30ml)に入れて、130℃で2日間還流した。放冷すると淡い黄色結晶が析出したので濾取した。濾取した固体をメタノール、水、ジエチルエーテルでよく洗浄し、真空乾燥した。得られた粗粉末をジクロロメタンにより再結晶し、目的物の黄色粉末であるPt(dpzb)Cl 410mgを得た。収率は、76%であった。
【0229】
【化47】

【0230】
次に、Pt(1,3−ジ(N−ピラゾリル)ベンゼン)(2−フルオロフェノール)(以下「Pt(dpzb)(o2Fph)」と記す)を、以下のように合成した。即ち、具体的には、得られたPt(dpzb)Cl 97mg(0.22mmol)をアセトン30mlに入れて攪拌した。ここに、2−フルオロフェノール49mg(0.44mmol)をゆっくりと添加した。室温で10分間攪拌した。数滴の純水を加えると反応が進み、黄色固体が析出し始め、加熱しながら3時間攪拌した。放冷して、析出した黄色固体をろ取し、純水、メタノール、ジエチルエーテルで順によく洗浄し、真空乾燥し、Pt(dpzb)(o2Fph)の黄色固体を得た。収率は、45%であった。
【0231】
【化48】

【0232】
(合成例26)
−Pt(1,3−ジ(N−ピラゾリル)ベンゼン)(2,6−ジメチル−フェノール)(以下「Pt(dpzb)(odmp)」と記す)の合成−
合成例25において、2−フルオロフェノールを2,6−ジメチル−フェノールに変更した以外は、合成例25と同様にして、Pt(dpzb)(odmp)の淡黄色固体を得た。収率は、43%であった。
【0233】
(合成例27)
−Pt(1,3−ジ(N−ピラゾリル)ベンゼン)(2−フェニルフェノール)(以下「Pt(dpzb)(o2pph)」と記す)の合成−
合成例25において、2−フルオロフェノールを2−フェニルフェノールに変更した以外は、合成例25と同様にして、Pt(dpzb)(o2pph)の淡黄色固体を得た。収率は、40%であった。
【0234】
(合成例28)
−Pt(1,3−ジ(N−ピラゾリル)ベンゼン)(2,6−ジフェニルフェノール)(以下「Pt(dpzb)(o26dpph)」と記す)の合成−
合成例25において、2−フルオロフェノールを2,6−ジフェニルフェノールに変更した以外は、合成例25と同様にして、Pt(dpzb)(o26dpph)の黄色固体を得た。収率は、36%であった。
【0235】
(合成例29)
−Pt(1,3−ジ(N−ピラゾリル)ベンゼン)(3,5−ジメチルピラゾール)(以下「Pt(dpzb)(dmpr)」と記す)の合成−
合成例25において、2−フルオロフェノールを2,6−ジメチルピラゾールに変更した以外は、合成例25と同様にして、Pt(dpzb)(dmpr)の黄色固体を得た。収率は、40%であった。
【0236】
(合成例30)
−Pt(1,3−ジ(N−ピラゾリル)ベンゼン)(5−メチル−1H−1,2,3−ベンゾトリアゾール)(以下「Pt(dpzb)(mbtaz)」と記す)の合成−
合成例25において、2−フルオロフェノールを5−メチル−1H−1,2,3−ベンゾトリアゾールに変更した以外は、合成例25と同様にして、Pt(dpzb)(mbtaz)の黄色固体を得た。収率は、38%であった。
【0237】
(合成例31)
−Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)(2,6−ジメチル−チオフェノール)(以下「Pt(dpt)(sdmp)」と記す)の合成−
合成例1において、2−フルオロフェノールを2,6−ジメチル−チオフェノールに変更した以外は、合成例1と同様にして、Pt(dpt)(sdmp)の淡黄色固体を得た。収率は、67%であった。
【0238】
【化49】

【0239】
(合成例32)
−Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)(2−クロロフェノール)(以下「Pt(dpt)(o2Clph)」と記す)の合成−
合成例1において、2−フルオロフェノールを2−クロロフェノールに変更した以外は、合成例1と同様にして、Pt(dpt)(o2Clph)の淡黄色固体を得た。収率は、65%であった。
【0240】
【化50】

【0241】
(合成例33)
−Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)(2−ブロモフェノール)(以下「Pt(dpt)(o2Brph)」と記す)の合成−
合成例1において、2−フルオロフェノールを2−ブロモフェノールに変更した以外は、合成例1と同様にして、Pt(dpt)(o2Brph)の淡黄色固体を得た。収率は、53%であった。
【0242】
【化51】

【0243】
(比較合成例1)
−Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)(ビフェニルオキサレート)(以下「Pt(dpt)(oph)」と記す)の合成−
Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)クロライド100mg(0.21mmol)をアセトン30mlに添加して攪拌した。ここに、メタノール20mlに溶解したナトリウム・フェノキシド3HO 53mg(0.32mmol)をゆっくりと滴下し、室温で10分間攪拌した。水を数滴滴下すると反応が進み、淡黄色固体が析出し始め、加熱しながら3時間攪拌した。放冷後、析出した淡黄色固体をろ取し、純水、メタノール、ジエチルエーテルで順によく洗浄し、真空乾燥して目的物であるPt(dpt)(oph)の淡黄色固体を得た。収率は、80%であった。
【0244】
【化52】

【0245】
(比較合成例2)
−Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)(1,2,4−トリアゾレート)(以下「Pt(dpt)(taz)」と記す)の合成−
Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)クロライド100mg(0.21mmol)をアセトン30mlに添加して攪拌した。ここに、メタノール20mlに溶解した1,2,4−トリアゾール・ナトリウム塩29mg(0.32mmol)をゆっくりと滴下し、室温で10分間攪拌した。水を数滴滴下すると反応が進み、黄色固体が析出し始め、加熱しながら3時間攪拌した。放冷後、析出した黄色固体をろ取し、純水、メタノール、ジエチルエーテルで順によく洗浄し、真空乾燥して目的物であるPt(dpt)(taz)の黄色固体を得た。収率は、82%であった。
【0246】
【化53】

【0247】
(比較合成例3)
−Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)(2−ベンゾチアゾロキサレート)(以下「Pt(dpt)(obtz)」と記す)の合成−
Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)クロライド100mg(0.21mmol)と、2−ヒドロキシベンゾチアゾール47.6mg(0.32mmol)とをジメチルスルホキシド(DMSO)30mlに添加して攪拌した。ここに、KOH粉末200mg(3.5mmol)を添加し、室温で10分間攪拌した。純水を数滴滴下すると反応が進み、黄色固体が析出し始め、加熱しながら3時間攪拌した。放冷後、析出した黄色固体をろ取し、純水、メタノール、ジエチルエーテルで順によく洗浄し、真空乾燥して目的物であるPt(dpt)(obtz)の黄色固体を得た。収率は、69%であった。
【0248】
【化54】

【0249】
(比較合成例4)
−Pt(1,3−ジ(2−ピリジル)ベンゼン)(ビフェニルオキサレート)(以下「Pt(dpb)(oph)」と記す)の合成−
比較合成例1において、Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)クロライドを、Pt(1,3−ジ(2−ピリジル)ベンゼン)クロライドに変更した以外は、比較合成例1と同様にして、Pt(dpb)(oph)の橙色固体を得た。収率は、45%であった。
【0250】
【化55】

【0251】
(比較合成例5)
−Pt(3,5−ジ(1−イソキノリル)トルエン)(ビフェニルオキサイド)(以下「Pt(diqt)(obp)」と記す)の合成−
比較合成例1において、Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)クロライドを、Pt(3,5−ジ(1−イソキノリル)トルエン)クロライドに変更した以外は、比較合成例1と同様にして、Pt(diqt)(obp)の橙色固体を得た。収率は、83%であった。
【0252】
【化56】

【0253】
(比較合成例6)
−Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)ピリジン)(フェノキサイド)(以下「Pt(dppr)(oph)」と記す)の合成−
比較合成例1において、Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)クロライドを、Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)ピリジン)クロライドに変更した以外は、比較合成例1と同様にして、Pt(dppr)(oph)の橙色固体を得た。収率は、55%であった。
【0254】
【化57】

【0255】
(比較合成例7)
−Pt(1,3−ジ(N−ピラゾール)ベンゼン)(フェノキサイド)(以下「Pt(dpzb)(oph)」と記す)の合成−
比較合成例1において、Pt(3,5−ジ(2−ピリジル)トルエン)クロライドを、Pt(1,3−ジ(N−ピラゾール)ベンゼン)クロライドに変更した以外は、比較合成例1と同様にして、Pt(dpzb)(oph)の橙色固体を得た。収率は、40%であった。
【0256】
【化58】

【0257】
ここで、合成例1〜33で得た各有機金属錯体における、前記三座配位子を表3に示し、前記一座配位子を表4に示した。また、合成例1〜30における、前記三座配位子と前記一座配位子との組合せについて表5に示した。
【0258】
【表3】

【0259】
【表4】

【0260】
【表5】

【0261】
(実施例1)
石英ガラス基板上に合成例1で合成したPt(dpt)(o2Fph)を蒸着速度比でCBPに2%ドープした薄膜(発光性固体)を厚みが50nmとなるように共蒸着により作製した。この薄膜(発光性固体)のPL(フォトルミネッセンス)量子収率を、PL量子収率既知のアルミニウムキノリン錯体(Alq3)薄膜(PL量子収率:22%)をリファレンスとして、以下の測定により求めた。
即ち、光源からの励起光(365nmの定常光)を透明基板上の薄膜試料に斜めから照射した。分光放射輝度計(ミノルタ社製、CS−1000)を用いて測定した薄膜のPLスペクトルから、換算により、PL光子数[P(sample)]を算出した。発光測定と同時に、試料から透過及び反射した励起光の合計強度[I(sample)]をフォトダイオードで検出した。続いて、リファレンスであるAlq3薄膜でも同様の測定を行い、リファレンスのPL光子数[P(ref.)]と、透過及び反射した励起光の合計強度[I(ref)]を求めた。次に、透明基板のみの透過及び反射した励起光の合計強度[I(substrate)]を測定した。試料薄膜のPL量子収率は、以下の数式により算出することができる。結果を表6に示した。
【0262】
【数2】

【0263】
(実施例2〜30及び30a〜c、並びに、比較例1〜7)
発光材料としての有機金属錯体をPt(dpt)(o2Fph)から表6〜表8に記載の有機金属錯体(これらは上述の合成例により合成したもの)に代えた以外は、実施例1と同様の条件で、形成した薄膜(発光性固体)のりん光発光の量子収率を測定した。結果を表6〜表8に示した。
【0264】
【表6】

【0265】
【表7】

【0266】
【表8】

【0267】
表6〜表8に示す結果から、本発明の有機金属錯体によるりん光発光薄膜は、非常に高いりん光発光の量子収率を持つことが明らかである。
【0268】
(実施例31)
得られた有機金属錯体であるPt(dpt)(o2Fph)を発光材料として発光層に用い、積層型の有機EL素子を作製した。即ち、ITO電極つきガラス基板を、水、アセトン、イソプロピルアルコールにより洗浄し、真空蒸着装置(1×10−4Pa、基板温度は室温)を用いて、該ITO上に正孔注入層として4,4’,4’’−トリ(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)を厚みが40nmに形成した。次に、該正孔注入層上に、正孔輸送層として上述したNPDを厚みが10nmに形成した。該正孔輸送層上に、Pt(dpt)(o2Fph)を蒸着速度比で、前記CBPに2%ドープした発光層を厚みが30nmに形成した。該発光層上に、正孔ブロッキング層として上述したBCPを厚みが20nmに形成した。該正孔ブロッキング層上に、電子輸送層として前記Alqを厚みが20nmに形成した。更に該電子輸送層上に、LiFを厚みが0.5nmに蒸着し、最後にアルミニウムを厚みが100nmに蒸着し、窒素雰囲気下で封止した。
以上により得た積層型の有機EL素子において、ITOを正極とし、アルミニウム電極を負極として、電圧を印加し、EL特性を測定した。電流密度5A/mのときの、電圧及び電流効率を表8に示した。
【0269】
(実施例32〜60及び60a〜c、並びに、比較例8〜14)
発光材料としてのPt(dpt)(o2Fph)を表8〜表10に記載の有機金属錯体(上述した合成例により合成したもの)に代えた以外は、実施例31と同様の条件で有機EL素子を作製した。これらの有機EL素子に、実施例31と同様にして、ITOを正極とし、アルミニウム電極を負極として、電圧を印加し、EL特性を測定した。電流密度5A/mのときの、電圧及び電流効率を表9〜11に示した。
【0270】
【表9】

【0271】
【表10】

【0272】
【表11】

【0273】
表9〜11に示す結果から、本発明の有機EL素子(実施例30〜60及び60a〜c)は、総てが非常に高いEL効率を示していることが明らかである。
【0274】
(実施例61〜90及び比較例15〜21)
実施例31〜60及び比較例8〜14でそれぞれ作製した有機EL素子を、電流密度10A/mで連続駆動し、発光輝度の変化を調べた。初期輝度及び初期輝度からの輝度半減時間を表12及び表13に示した。
【0275】
【表12】

【0276】
【表13】

【0277】
表12〜13に示す結果から、本発明の有機EL素子(実施例61〜90及び90a〜c)は、比較例15〜21に比し、輝度半減時間が非常に長く、超寿命であることが明らかである。
【0278】
ここで、本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) 金属原子と、
該金属原子に対し、窒素原子2つ及び炭素原子1つを介して三座で結合し、該窒素原子2つの間に前記炭素原子が位置する三座配位子と、
前記金属原子に対し、N原子、O原子及びS原子から選択される一の原子を介して一座で結合し、前記金属原子に対して結合する位置から最も離れた位置を除く位置に置換基を有する環構造を含む一座配位子と、
を有することを特徴とする有機金属錯体。
(付記2) 置換基が、アルキル基及びアリール基から選択される付記1に記載の有機金属錯体。
(付記3) 金属原子と、
該金属原子に対し、窒素原子2つ及び炭素原子1つを介して三座で結合し、該窒素原子2つの間に前記炭素原子が位置する三座配位子と、
前記金属原子に対し、N原子、O原子及びS原子から選択される一の原子を介して一座で結合し、ハロゲン原子で置換された環構造を含む一座配位子と、
を有することを特徴とする有機金属錯体。
(付記4) ハロゲン原子がフッ素原子である付記3に記載の有機金属錯体。
(付記5) 三座配位子における、窒素原子2つ及び炭素原子の3つの原子が、それぞれ別の環構造の一部である付記1から4のいずれかに記載の有機金属錯体。
(付記6) 窒素原子2つをそれぞれ第一の窒素原子、第二の窒素原子とした時、
前記第一の窒素原子を含む第一窒素含有環構造における、該第一の窒素原子に隣接する第一の窒素隣接原子が、前記炭素原子を含む炭素含有環構造における、該炭素原子に隣接する第一の炭素隣接原子に結合し、
前記第二の窒素原子を含む第二窒素含有環構造における、該第二の窒素原子に隣接する第二の窒素隣接原子が、前記炭素原子を含む炭素含有環構造における、該炭素原子に隣接する第二の炭素隣接原子に結合した付記1から5のいずれかに記載の有機金属錯体。
(付記7) 第一の炭素隣接原子及び第二の炭素隣接原子が、炭素原子である付記6に記載の有機金属錯体。
(付記8) 下記一般式(1)で表される付記1に記載の有機金属錯体。
一般式(1)

一般式(1)において、Mは、金属原子を示す。Ar1、Ar2及びAr3は、環構造を表し、いずれも前記Mに結合し、該Ar1と該Ar2とが結合し、該Ar2と該Ar3とが結合し、全体として前記Mに三座で結合する三座配位子を形成している。なお、Ar1におけるNは、該Ar1で表される環構造を構成する窒素原子を表す。Ar2におけるCは、該Ar2で表される環構造を構成する炭素原子を表す。Ar3におけるNは、該Ar3で表される環構造を構成する窒素原子を表す。R1、R2及びR3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を表し、複数であってもよく、互いに隣接するものが結合して環構造を形成していてもよい。Lは、N原子、O原子及びS原子から選択される一の原子を介して前記Mに対して一座で結合し、環構造を含む一座配位子を表す。R4は、前記Lにおける、前記Mに対して結合する位置から最も離れた位置を除く位置に置換する置換基を表す。
(付記9) 下記一般式(2)で表される付記3に記載の有機金属錯体。
一般式(2)

一般式(2)において、Mは、金属原子を示す。Ar1、Ar2及びAr3は、環構造を表し、いずれも前記Mに結合し、該Ar1と該Ar2とが結合し、該Ar2と該Ar3とが結合し、全体として前記Mに三座で結合する三座配位子を形成している。なお、Ar1におけるNは、該Ar1で表される環構造を構成する窒素原子を表す。Ar2におけるCは、該Ar2で表される環構造を構成する炭素原子を表す。Ar3におけるNは、該Ar3で表される環構造を構成する窒素原子を表す。R1、R2及びR3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を表し、複数であってもよく、互いに隣接するものが結合して環構造を形成していてもよい。Lは、N原子、O原子及びS原子から選択される一の原子を介して前記Mに対して一座で結合し、環構造を含む一座配位子を表す。Xは、ハロゲン原子を表す。
(付記10) Ar1、Ar2及びAr3が、五員環基、六員環基、及びこれらの縮合環基から選択される付記8から9のいずれかに記載の有機金属錯体。
(付記11) Ar2が、ベンゼン環構造、ピリジン環構造、ピリミジン環構造、及びピレン環構造の少なくともいずれかである付記8から10のいずれかに記載の有機金属錯体。
(付記12) Ar1及びAr3のいずれかが、単環複素芳香族基及び多環複素芳香族基のいずれかである付記8から11のいずれかに記載の有機金属錯体。
(付記13) Ar1及びAr3が互いに同一である付記8から12のいずれかに記載の有機金属錯体。
(付記14) 金属原子が、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、W、Re、Os、Ir、及びPtから選択される少なくとも一種である付記1から13のいずれかに記載の有機金属錯体。
(付記15) 電気的に中性である付記1から14のいずれかに記載の有機金属錯体。
(付記16) 真空中で昇華性を示す付記1から15のいずれかに記載の有機金属錯体。
(付記17) 有機EL素子及び照明装置のいずれかに用いられる付記1から16項のいずれかに記載の有機金属錯体。
(付記18) 付記1から17のいずれかに記載の有機金属錯体を含有することを特徴とする発光性固体。
(付記19) 正極及び負極の間に有機薄膜層を有してなり、該有機薄膜層が、付記1から17のいずれかに記載の有機金属錯体を含有することを特徴とする有機EL素子。
(付記20) 有機薄膜層が正孔輸送層と電子輸送層とに挟まれた発光層を有してなり、該発光層が、有機金属錯体を発光材料として含有する付記19に記載の有機EL素子。
(付記21) 発光層が、有機金属錯体を単独で成膜してなる付記20に記載の有機EL素子。
(付記22) 発光層が、下記構造式(2)で表されるカルバゾール誘導体を含有する付記20から21のいずれかに記載の有機EL素子。

前記構造式(2)中、Arは、芳香族環を含む2価若しくは3価の基、又は、複素環式芳香族環を含む2価若しくは3価の基を表す。R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、水酸基、アミド基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素環基、又は芳香族複素環基を表し、これらは置換基で更に置換されていてもよい。nは、2又は3の整数を表す。
(付記23) 電子輸送層に含まれる電子輸送材料が、下記構造式(68)で表される2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)である付記19から22のいずれかに記載の有機EL素子。

(付記24) 付記19から23のいずれかに記載の有機EL素子を用いたことを特徴とする有機ELディスプレイ。
(付記25) パッシブマトリクスパネル及びアクティブマトリクスパネルのいずれかである付記24に記載の有機ELディスプレイ。
【産業上の利用可能性】
【0279】
本発明の有機金属錯体又は発光性固体は、りん光発光を示し、有機EL素子や照明装置等における発光材料や色変換材料等として好適に利用可能である。
本発明の有機EL素子は、該有機金属錯体を用いるので、寿命・発光効率、熱的・電気的な安定性、色変換効率等に優れ、駆動寿命の長く、コンピュータ、車載用表示器、野外表示器、家庭用機器、業務用機器、家電用機器、交通関係表示器、時計表示器、カレンダ表示器、ルミネッセントスクリーン、音響機器等をはじめとする各種分野において好適に使用することができ、照明装置や以下の本発明の有機ELディスプレイに特に好適に利用可能である。
本発明の有機ELディスプレイは、前記有機EL素子を用いるので、高性能で長寿命であり、テレビ、携帯電話、コンピュータ、車載用表示器、野外表示器、家庭用機器、業務用機器、家電用機器、交通関係表示器、時計表示器、カレンダ表示器、ルミネッセントスクリーン、音響機器等をはじめとする各種分野において好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0280】
【図1】図1は、本発明の有機EL素子における層構成の一例を示す概略説明図である。
【図2】図2は、色変換層を有する有機ELディスプレイの一構造例を示す概略説明図である。
【図3】図3は、色変換層を有する有機ELディスプレイの一構造例を示す概略説明図である。
【図4】図4は、色変換層を有する有機ELディスプレイの一構造例を示す概略説明図である。
【図5】図5は、パッシブマトリクス方式の有機ELディスプレイ(パッシブマトリクスパネル)の一構造例を示す概略説明図である。
【図6】図6は、図5に示すパッシブマトリクス方式の有機ELディスプレイ(パッシブマトリクスパネル)における回路を示す概略説明図である。
【図7】図7は、アクティブマトリクス方式の有機ELディスプレイ(アクティブマトリクスパネル)の一構造例を示す概略説明図である。
【図8】図8は、図7に示すアクティブマトリクス方式の有機ELディスプレイ(アクティブマトリクスパネル)における回路を示す概略説明図である。
【図9】図9は、りん光量子収率を算出するための実験の概要を説明するための概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属原子と、
該金属原子に対し、窒素原子2つ及び炭素原子1つを介して三座で結合し、該窒素原子2つの間に前記炭素原子が位置する三座配位子と、
前記金属原子に対し、N原子、O原子及びS原子から選択される一の原子を介して一座で結合し、前記金属原子に対して結合する位置から最も離れた位置を除く位置に置換基を有する環構造を含む一座配位子と、
を有することを特徴とする有機金属錯体。
【請求項2】
置換基が、アルキル基及びアリール基から選択される請求項1に記載の有機金属錯体。
【請求項3】
金属原子と、
該金属原子に対し、窒素原子2つ及び炭素原子1つを介して三座で結合し、該窒素原子2つの間に前記炭素原子が位置する三座配位子と、
前記金属原子に対し、N原子、O原子及びS原子から選択される一の原子を介して一座で結合し、ハロゲン原子で置換された環構造を含む一座配位子と、
を有することを特徴とする有機金属錯体。
【請求項4】
ハロゲン原子がフッ素原子である請求項3に記載の有機金属錯体。
【請求項5】
下記一般式(1)で表される請求項1に記載の有機金属錯体。
【化1】

一般式(1)において、Mは、金属原子を示す。Ar1、Ar2及びAr3は、環構造を表し、いずれも前記Mに結合し、該Ar1と該Ar2とが結合し、該Ar2と該Ar3とが結合し、全体として前記Mに三座で結合する三座配位子を形成している。なお、Ar1におけるNは、該Ar1で表される環構造を構成する窒素原子を表す。Ar2におけるCは、該Ar2で表される環構造を構成する炭素原子を表す。Ar3におけるNは、該Ar3で表される環構造を構成する窒素原子を表す。R1、R2及びR3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を表し、複数であってもよく、互いに隣接するものが結合して環構造を形成していてもよい。Lは、N原子、O原子及びS原子から選択される一の原子を介して前記Mに対して一座で結合し、環構造を含む一座配位子を表す。R4は、前記Lにおける、前記Mに対して結合する位置から最も離れた位置を除く位置に置換する置換基を表す。
【請求項6】
下記一般式(2)で表される請求項3に記載の有機金属錯体。
【化2】

一般式(2)において、Mは、金属原子を示す。Ar1、Ar2及びAr3は、環構造を表し、いずれも前記Mに結合し、該Ar1と該Ar2とが結合し、該Ar2と該Ar3とが結合し、全体として前記Mに三座で結合する三座配位子を形成している。なお、Ar1におけるNは、該Ar1で表される環構造を構成する窒素原子を表す。Ar2におけるCは、該Ar2で表される環構造を構成する炭素原子を表す。Ar3におけるNは、該Ar3で表される環構造を構成する窒素原子を表す。R1、R2及びR3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を表し、複数であってもよく、互いに隣接するものが結合して環構造を形成していてもよい。Lは、N原子、O原子及びS原子から選択される一の原子を介して前記Mに対して一座で結合し、環構造を含む一座配位子を表す。Xは、ハロゲン原子を表す。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の有機金属錯体を含有することを特徴とする発光性固体。
【請求項8】
正極及び負極の間に有機薄膜層を有してなり、該有機薄膜層が、請求項1から6のいずれかに記載の有機金属錯体を含有することを特徴とする有機EL素子。
【請求項9】
発光層が、下記構造式(2)で表されるカルバゾール誘導体を含有する請求項8に記載の有機EL素子。

前記構造式(2)中、Arは、芳香族環を含む2価若しくは3価の基、又は、複素環式芳香族環を含む2価若しくは3価の基を表す。R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、水酸基、アミド基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素環基、又は芳香族複素環基を表し、これらは置換基で更に置換されていてもよい。nは、2又は3の整数を表す。
【請求項10】
請求項8から9のいずれかに記載の有機EL素子を用いたことを特徴とする有機ELディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−131524(P2006−131524A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−321295(P2004−321295)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】