説明

有機金属錯体およびこれを用いた発光素子、表示装置

【課題】燐光性化合物、特に有機金属錯体は、その発光効率の高さ故、様々な分野への応用が期待されている化合物であるが、蛍光性材料と比較して、その数は少ない。また、燐光を発光できる有機金属錯体は一般的に分解温度が低いため、耐熱性が問題となることもある。上記を鑑み、燐光発光が可能な耐熱性の高い有機金属錯体及びこれを用いた発光装置を提供する。
【解決手段】例えば、(G1)の構造を有する有機金属錯体。(式中、R1はアルキル基等、R2及びR3は水素等、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、水素、アルキル基等を表す。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを、MはIr等を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する発明は、有機金属錯体に関する。特に、三重項励起状態からの発光が得られる有機金属錯体に関する。また、その物質を用いた発光素子及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光性の有機化合物や無機化合物を発光材料として用いた発光素子の研究や製品開発が盛んに行われている。特に、EL(Electroluminescence)素子と呼ばれる発光素子の基本的な構造は、一対の電極(陽極及び陰極)間に発光材料を含む層(発光層)を設けただけの単純な構造であるため、薄型軽量化が可能、入力信号に対して高速に応答できるといった特徴を有している。
【0003】
有機EL素子の発光メカニズムとしては、発光層を挟んだ一対の電極間に電圧を印加することにより、陰極から注入された電子および陽極から注入された正孔がキャリアとなり、発光層の発光中心で再結合することで発光物質が励起状態となり、その分子励起子が基底状態に戻る際に熱エネルギーおよび光エネルギーを放出する。このうち、光エネルギーとして放出する割合(つまり、注入したキャリアに対するフォトンの発生割合)は「内部量子効率」と表現される。
【0004】
上記励起状態の種類としては、一重項励起状態(S)と三重項励起状態(T)が知られており、どちらの励起状態を経ても発光が可能である。なお、発光素子における一重項励起状態(S)と三重項励起状態(T)の統計的な生成比率は、S:T=1:3であると考えられている。
【0005】
上記生成比率の観点から、発光素子から発せられる光(フォトン)は、注入したキャリアの量を100%とすると、25%程度が一重項励起状態(S)から発せられる光であり、75%程度が三重項励起状態(T)から発せられる光であると推測できる。
【0006】
なお、一重項励起状態(S)から発せられる光を、本明細書中では「蛍光」と呼称すると共に、蛍光を発する化合物を「蛍光性化合物」と呼称する。また、三重項励起状態(T)から発せられる光を、本明細書中では「燐光」と呼称すると共に、燐光を発する化合物を「燐光性化合物」と呼称する。
【0007】
このため、蛍光性化合物に加えて燐光性化合物も用いることにより、内部量子効率の上限を100%にまで高める事が可能となり、蛍光性化合物のみの発光効率と比較して非常に高い発光効率を実現できる。
【0008】
このような理由から、高効率な発光素子を実現するために、発光層に燐光性化合物を含む発光素子を備える発光装置の開発が近年盛んに行われている(例えば、非特許文献1参照)。特に、燐光性化合物としては、室温における燐光量子収率の高さゆえに、イリジウム等を中心金属とする有機金属錯体が注目されており、燐光発光が可能な有機金属錯体の研究が盛んに行われている(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Zhang、Guo−Lin、外5名、Gaodeng Xuexiao Huaxue Xuebao(2004)、vol.25、No.3、p.397−400
【0010】
【非特許文献2】テツオ ツツイ、外8名、ジャパニーズ ジャーナル オブ アプライド フィジクス、vol.38、L1502−L1504(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のように、燐光性化合物は、その発光効率の高さ故、様々な分野に応用されている化合物であるが、蛍光性材料と比較して、その数は少ないのが現状である。
【0012】
また、有機金属錯体は一般的に分解温度が低いため、例えば、有機金属錯体を含む発光素子を作製する場合、有機金属錯体に高温が加わる処理(例えば、有機金属錯体を真空中で加熱して基板に薄く形成する処理(いわゆる真空蒸着処理))を行った際に、材料が分解して目的の性能が得られないといったように、耐熱性が問題となることもある。
【0013】
また、有機金属錯体は耐熱性が高いものが好ましい。例えば、有機金属錯体を真空中で加熱して基板に薄膜を形成する場合、加熱中に熱分解してしまうと当該有機金属錯体本来の性能を引き出せないといった問題が生じるためである。
【0014】
本発明は、このような技術的背景のもとでなされたものである。したがって、本発明の一態様は、燐光発光が可能な耐熱性の高い有機金属錯体を新たに提供することを課題とする。
【0015】
または、本発明の一態様は、合成に要する時間およびコストを抑えた有機金属錯体を提供することを課題の一つとする。
【0016】
または、本発明の一態様は、発光量子収率の高い有機金属錯体を提供することを課題の一つとする。
【0017】
または、本発明の一態様は、発光効率の高い発光素子を提供することを課題の一つとする。
【0018】
または、本発明の一態様は、駆動電圧の小さい発光素子を提供することを課題の一つとする。
【0019】
または、本発明の一態様は、駆動時間に対する発光強度の低下が小さい発光素子を提供することを課題の一つとする。
【0020】
または、本発明の一態様は、消費電力の小さい発光装置を提供することを課題の一つとする。
【0021】
または、本発明の一態様は、信頼性の高い発光装置を提供することを課題の一つとする。
【0022】
以上、本発明では上記課題の少なくとも一つを解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
そこで本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ジベンゾフラン骨格またはジベンゾチオフェン骨格を含むピラジン誘導体が、第9族または第10族の金属イオンによりオルトメタル化した構造を有する有機金属錯体が、燐光発光が可能であることを見出した。さらに、前記有機金属錯体の構造や配位子を調整することにより、良好な耐熱性、高い発光量子収率、合成時間およびコストの抑制効果についても新たに見出すに至った。
【0024】
すなわち、本発明の一態様は、一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体である。
【0025】
【化1】

【0026】
上記一般式(G1)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。
【0027】
ここで、R〜Rにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0028】
上記一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体は、ピラジン誘導体が中心金属Mによりオルトメタル化しているため、中心金属Mの重原子効果により燐光を発光することが可能となる。また、環状構造であるジベンゾフラン骨格又はジベンゾチオフェン骨格を有する剛直な構造を有しているため、耐熱性が高い。これにより、上記一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体は、燐光発光が可能な耐熱性の高い有機金属錯体となる。したがって、耐熱性を必要とする発光素子の作製など、様々な分野において、当該有機金属錯体を用いることができる。
【0029】
また、本発明の一態様は、下記一般式(G2)で表される構造を有する有機金属錯体である。
【0030】
【化2】

【0031】
上記一般式(G2)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。
【0032】
ここで、R〜Rにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0033】
上記一般式(G2)で表される構造を有する有機金属錯体は、ピラジン誘導体が中心金属Mによりオルトメタル化しているため、中心金属Mの重原子効果により燐光を発光することが可能となる。また、環状構造であるジベンゾフラン骨格又はジベンゾチオフェン骨格を有する剛直な構造を有しているため、耐熱性が高い。これにより、上記一般式(G2)で表される構造を有する有機金属錯体は、燐光発光が可能な耐熱性の高い有機金属錯体となる。したがって、耐熱性を必要とする発光素子の作製など、様々な分野において、本有機金属錯体を用いることができる。
【0034】
また、本発明の一態様は、下記一般式(G3)で表される有機金属錯体である。下記一般式(G3)は、前述の一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体の一態様であり、合成が容易なため好ましい構造である。
【0035】
【化3】

【0036】
上記一般式(G3)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、Lはモノアニオン性の配位子を表す。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。
【0037】
ここで、R〜Rにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0038】
上記一般式(G3)で表される有機金属錯体は、環状構造であるジベンゾフラン骨格又はジベンゾチオフェン骨格を有する剛直な構造である一般式(G1)が配位した構造であるため、良好な耐熱性を示す。したがって、耐熱性を必要とする発光素子の作製など、様々な分野において、本有機金属錯体を用いることができる。
【0039】
また、本発明の一態様は、下記一般式(G4)で表される有機金属錯体である。
【0040】
【化4】

【0041】
上記一般式(G4)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、Rは水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、Lはモノアニオン性の配位子を表す。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。
【0042】
ここで、RおよびRにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0043】
一般式(G4)で表される有機金属錯体は、一般式(G3)の置換基R、R、R、R、R、R及びRを水素とすることで、ピラジン誘導体の立体障害が軽減されるため金属イオンにオルトメタル化しやすく、有機金属錯体の合成収率を高めることができる。したがって、合成に要する時間およびコストを抑えることができる。
【0044】
また、本発明の一態様は、下記一般式(G5)で表される有機金属錯体である。下記一般式(G5)は、前述の一般式(G2)で表される構造を有する有機金属錯体の一態様であり、合成が容易なため好ましい構造である。
【0045】
【化5】

【0046】
上記一般式(G5)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、Lはモノアニオン性の配位子を表す。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。
【0047】
ここで、R〜Rにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0048】
上記一般式(G5)で表される有機金属錯体は、環状構造であるジベンゾフラン骨格又はジベンゾチオフェン骨格を有する剛直な構造である一般式(G2)が配位した構造であるため、良好な耐熱性を示す。したがって、耐熱性を必要とする発光素子の作製など、様々な分野において、本有機金属錯体を用いることができる。
【0049】
また、本発明の一態様は、下記一般式(G6)で表される有機金属錯体である。
【0050】
【化6】

【0051】
上記一般式(G6)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、Rは水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、Lはモノアニオン性の配位子を表す。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。
【0052】
ここで、RおよびRにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0053】
一般式(G6)で表される有機金属錯体は、一般式(G5)の置換基R、R、R、R、R、R及びRを水素とすることで、ピラジン誘導体の立体障害が軽減されるため金属イオンにオルトメタル化しやすく、有機金属錯体の合成収率を高めることができる。したがって、合成に要する時間およびコストを抑えることができる。
【0054】
また、本発明の一態様は、一般式(G3)〜(G6)において、モノアニオン性の配位子(L)が、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、カルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、フェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、2つの配位元素がいずれも窒素であるモノアニオン性の二座キレート配位子のいずれかである有機金属錯体である。特に好ましくは、下記構造式(L1)〜(L6)に示すモノアニオン性の配位子である。
【0055】
【化7】

【0056】
上記構造式(L1)〜(L6)において、R71〜R90はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基、ハロアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、または炭素数1〜4のアルキルチオ基のいずれか一を表す。また、A、A、Aは窒素N、または炭素C−Rを表し、Rは水素、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基、炭素数1〜4のハロアルキル基、またはフェニル基を表す。
【0057】
上記構造式(L1)〜(L6)に示すモノアニオン性の配位子は配位能力が高く、また、安価で入手することができる。したがって、合成に要する時間およびコストを抑えることができる。
【0058】
また、本発明の一態様は、下記一般式(G7)で表される有機金属錯体である。下記一般式(G7)は、前述の一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体の一態様であり、合成が容易なため好ましい構造である。
【0059】
【化8】

【0060】
上記一般式(G7)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。
【0061】
ここで、R〜Rにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0062】
上記一般式(G7)で表される有機金属錯体は、環状構造であるジベンゾフラン骨格又はジベンゾチオフェン骨格を有する剛直な構造である一般式(G1)が配位した構造であるため、非常に良好な耐熱性を示す。したがって、様々な分野において、本有機金属錯体を用いることができる。
【0063】
また、本発明の一態様は、下記一般式(G8)で表される有機金属錯体である。
【0064】
【化9】

【0065】
上記一般式(G8)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、Rは水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。
【0066】
ここで、RおよびRにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0067】
一般式(G8)で表される有機金属錯体は、一般式(G7)の置換基R、R、R、R、R、R及びRを水素とすることで、ピラジン誘導体の立体障害が軽減されるため金属イオンにオルトメタル化しやすく、有機金属錯体の合成収率を高めることができる。したがって、合成に要する時間およびコストを抑えることができる。
【0068】
また、本発明の一態様は、下記一般式(G9)で表される有機金属錯体である。下記一般式(G9)は、前述の一般式(G2)で表される構造を有する有機金属錯体の一態様であり、合成が容易なため好ましい構造である。
【0069】
【化10】

【0070】
上記一般式(G9)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。
【0071】
ここで、R〜Rにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0072】
上記一般式(G9)で表される有機金属錯体は、環状構造であるジベンゾフラン骨格又はジベンゾチオフェン骨格を有する剛直な構造である一般式(G2)が配位した構造であるため、非常に良好な耐熱性を示す。したがって、様々な分野において、本有機金属錯体を用いることができる。
【0073】
また、本発明の一態様は、下記一般式(G10)で表される有機金属錯体である。
【0074】
【化11】

【0075】
上記一般式(G10)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、Rは水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。
【0076】

ここで、RおよびRにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0077】
一般式(G10)で表される有機金属錯体は、一般式(G9)の置換基R、R、R、R、R、R及びRを水素とすることで、ピラジン誘導体の立体障害が軽減されるため金属イオンにオルトメタル化しやすく、有機金属錯体の合成収率を高めることができる。したがって、合成に要する時間およびコストを抑えることができる。
【0078】
また、本発明の一態様は、前述の有機金属錯体において、中心金属Mがイリジウムまたは白金であることを特徴とする有機金属錯体である。
【0079】
中心金属Mとして、重い元素であるイリジウムまたは白金を用いることにより、重原子効果によるスピン反転が生じやすくなり、項間交差により励起一重項準位の電子が励起三重項準位に移る可能性が高まる。したがって、中心金属Mとして、イリジウムまたは白金よりも軽い元素を用いた有機金属錯体と比較して、発光量子収率を高めることができる。
【0080】
また、本発明の一態様は、前述の有機金属錯体を発光物質として含むことを特徴とする発光素子である。
【0081】
前述の有機金属錯体は、発光量子収率が高いという特徴を有している。このため、前述の有機金属錯体を含む発光素子は、発光効率を高くすることができる、また、発光効率を高くすることができる故に、発光素子の駆動電圧を小さくすることもできる。さらに、前述の有機金属錯体は良好な耐熱性を有しているため、電気的、化学的な安定性が高い。このため、前述の有機金属錯体を含む発光素子は、長時間の駆動においても発光強度の低下を小さく抑えることができる。
【0082】
また、本発明の一態様は、前述の発光素子を備えることを特徴とする発光装置である。
【0083】
前述の発光素子は発光効率が高い、駆動電圧が小さいという特徴を有する。このため、前述の発光素子を発光装置に用いることにより、消費電力の小さい発光装置を提供できる。また、駆動時間に対する発光強度の低下が小さいという特徴を有する。このため、前述の発光素子を発光装置に用いることにより、信頼性の高い発光装置を提供できる。
【0084】
なお、本明細書における「発光装置」とは、発光素子を有する電子機器及び発光素子を有する照明装置も範疇に含めるものである。従って、画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源(照明装置を含む)を指す。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【0085】
また、本明細書において、EL層とは発光素子の一対の電極間に設けられた層を示すものとする。従って、電極間に挟まれた発光物質である有機化合物を含む発光層はEL層の一態様である。
【0086】
また、本明細書において、物質Aを他の物質Bからなるマトリクス中に分散する場合、マトリクスを構成する物質Bをホスト材料と呼び、マトリクス中に分散される物質Aをゲスト材料と呼ぶものとする。なお、物質A並びに物質Bは、それぞれ単一の物質であっても良いし、2種類以上の物質の混合物であっても良いものとする。
【0087】
また、本明細書において、「AとBとが接続されている」と記載する場合は、AとBとが電気的に接続されている場合(つまり、AとBとの間に別の素子や別の回路を挟んで接続されている場合)と、AとBとが機能的に接続されている場合(つまり、AとBとの間に別の回路を挟んで機能的に接続されている場合)と、AとBとが直接接続されている場合(つまり、AとBとの間に別の素子や別の回路を挟まずに接続されている場合)とを含むものとする。
【発明の効果】
【0088】
本発明の一態様を用いることにより、燐光発光が可能な耐熱性の高い有機金属錯体を提供できる。
【0089】
または、本発明の一態様を用いることにより、合成に要する時間およびコストを抑えた有機金属錯体を提供できる。
【0090】
または、本発明の一態様を用いることにより、発光量子収率の高い有機金属錯体を提供できる。
【0091】
または、本発明の一態様を用いることにより、発光効率の高い発光素子を提供できる。
【0092】
または、本発明の一態様を用いることにより、駆動電圧の小さい発光素子を提供できる。
【0093】
または、本発明の一態様を用いることにより、駆動時間に対する発光強度の低下が小さい発光素子を提供できる。
【0094】
または、本発明の一態様を用いることにより、消費電力の小さい発光装置を提供できる。
【0095】
または、本発明の一態様を用いることにより、信頼性の高い発光装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の一態様である発光素子について説明する図。
【図2】本発明の一態様である発光素子について説明する図。
【図3】本発明の一態様である発光素子について説明する図。
【図4】パッシブマトリクス型の発光装置を示す図。
【図5】パッシブマトリクス型の発光装置を示す図。
【図6】アクティブマトリクス型の発光装置を示す図。
【図7】電子機器について説明する図。
【図8】照明器具について説明する図。
【図9】電子機器について説明する図。
【図10】構造式(100)に示す有機金属錯体の1H−NMRチャート。
【図11】構造式(100)に示す有機金属錯体の紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトル。
【図12】構造式(124)に示す有機金属錯体の1H−NMRチャート。
【図13】構造式(124)に示す有機金属錯体の紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトル。
【図14】構造式(135)に示す有機金属錯体の1H−NMRチャート。
【図15】構造式(135)に示す有機金属錯体の紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトル。
【図16】本発明の一態様である発光素子について説明する図。
【図17】本発明の一態様である発光素子の電流密度−輝度特性。
【図18】本発明の一態様である発光素子の電圧−輝度特性。
【図19】本発明の一態様である発光素子の駆動時間−規格化輝度特性。
【図20】本発明の一態様である発光素子の発光スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0097】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0098】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である有機金属錯体について説明をする。
【0099】
≪一般式(G1)で表される構造の合成方法≫
下記一般式(G0)で表されるピラジン誘導体は、以下のような簡便な合成スキームにより合成できる。例えば、下記スキーム(a)に示すように、ジベンゾフラン骨格又はジベンゾチオフェン骨格を含むボロン酸(A1)とハロゲン化ピラジン化合物(A2)とをカップリングすることにより得られる。あるいは、下記スキーム(a’)に示すように、ジベンゾフラン骨格又はジベンゾチオフェン骨格を含むボロン酸のジケトン(A1’)とジアミン(A2’)を反応させることにより得られる。なお、下記一般式(G0)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Xはハロゲン元素を表す。
【0100】
【化12】

【0101】
【化13】

【0102】
【化14】

【0103】
上記の合成法により作製した、ピラジン誘導体が、第9族または第10族の金属イオンによりオルトメタル化した、下記一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体を、本発明の一態様とする。
【0104】
【化15】

【0105】
上記一般式(G1)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。
【0106】
ここで、R〜Rにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0107】
上記一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体は、ピラジン誘導体が中心金属Mによりオルトメタル化しているため、中心金属Mの重原子効果により燐光を発光することが可能となる。また、環状構造であるジベンゾフラン骨格又はジベンゾチオフェン骨格を有する剛直な構造を有しているため、耐熱性が高い。これにより、上記一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体は、燐光発光が可能な耐熱性の高い有機金属錯体となる。したがって、耐熱性を必要とする発光素子の作製など、様々な分野において、本有機金属錯体を用いることができる。
【0108】
なお、スキーム(a)およびスキーム(a’)において、化合物(A1)、(A2)、(A1’)、(A2’)は、様々な種類が市販されているか、あるいは合成可能であるため、一般式(G0)で表されるピラジン誘導体は数多くの種類を合成することができる。このため、一般式(G0)が第9族または第10族の金属イオンによりオルトメタル化した一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体も、様々な配位子を有するバリエーションが存在する。
【0109】
≪一般式(G2)で表される構造の合成方法≫
下記一般式(G0’)で表されるピラジン誘導体は、以下のような簡便な合成スキームにより合成できる。例えば、下記スキーム(b)に示すように、ジベンゾフラン骨格又はジベンゾチオフェン骨格を含むボロン酸(B1)とハロゲン化ピラジン化合物(A2)とをカップリングすることにより得られる。あるいは、下記スキーム(b’)に示すように、ジベンゾフラン骨格又はジベンゾチオフェン骨格を含むボロン酸のジケトン(B1’)とジアミン(A2’)を反応させることにより得られる。なお、下記一般式(G0’)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Xはハロゲン元素を表す。
【0110】
【化16】

【0111】
【化17】

【0112】
【化18】

【0113】
上記の合成法により作製した、一般式(G0’)で表されるピラジン誘導体が、第9族または第10族の金属イオンによりオルトメタル化した、下記一般式(G2)で表される構造を有する有機金属錯体を、本発明の一態様とする。
【0114】
【化19】

【0115】
上記一般式(G2)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。
【0116】
ここで、R〜Rにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0117】
上記一般式(G2)で表される構造を有する有機金属錯体は、ピラジン誘導体が中心金属Mによりオルトメタル化しているため、中心金属Mの重原子効果により燐光を発光することが可能となる。また、環状構造であるジベンゾフラン骨格又はジベンゾチオフェン骨格を有する剛直な構造を有しているため、耐熱性が高い。これにより、上記一般式(G2)で表される構造を有する有機金属錯体は、燐光発光が可能な耐熱性の高い有機金属錯体となる。したがって、耐熱性を必要とする発光素子の作製など、様々な分野において、本有機金属錯体を用いることができる。
【0118】
なお、スキーム(b)およびスキーム(b’)において、化合物(B1)、(A2)、(B1’)、(A2’)は、様々な種類が市販されているか、あるいは合成可能であるため、一般式(G0’)で表されるピラジン誘導体は数多くの種類を合成することができる。このため、一般式(G0’)が第9族または第10族の金属イオンによりオルトメタル化した一般式(G2)で表される有機金属錯体も、様々な配位子を有するバリエーションが存在する。
【0119】
≪一般式(G3)で表される有機金属錯体の合成法および一般式(G3)で表される有機金属錯体の好ましい一態様≫
次に、一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体の好ましい一態様である、下記一般式(G3)で表される有機金属錯体の合成法について説明する。
【0120】
【化20】

【0121】
まず、下記合成スキーム(c)に示すように、一般式(G0)で表されるピラジン誘導体と、ハロゲンを含む第9族または第10族の金属化合物(金属ハロゲン化物や金属錯体)とをアルコール系溶媒(グリセロール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール)単独、あるいはアルコール系溶媒1種類以上と水との混合溶媒と加熱することにより、一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体の一種である複核錯体(B)を得ることができる。加熱手段として特に限定はないが、オイルバス、サンドバス、またはアルミブロックを用いても良い。また、マイクロ波による加熱を用いることも可能である。
【0122】
ハロゲンを含む第9族または第10族の金属化合物としては、塩化ロジウム水和物、塩化パラジウム、塩化イリジウム水和物、塩化イリジウム水和物塩酸塩、テトラクロロ白金(II)酸カリウム等が挙げられるが、これらに限定されることはない。なお、下記合成スキーム(c)においてMは中心金属であり、第9族元素または第10族元素のいずれかを表し、Xはハロゲン元素を表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2、Mが第10族元素の時はn=1である。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Xはハロゲン元素を表す。
【0123】
【化21】

【0124】
さらに、下記合成スキーム(d)に示すように、上述の合成スキーム(c)で得られる複核錯体(B)と、モノアニオン性の配位子の原料HLとを反応させることにより、HLのプロトンが脱離してモノアニオン性の配位子Lが中心金属Mに配位し、一般式(G3)で表される本発明の一態様である有機金属錯体が得られる。加熱手段として特に限定はないが、オイルバス、サンドバス、またはアルミブロックを用いても良い。また、マイクロ波による加熱を用いることも可能である。なお、合成スキーム(d)では中心金属Mは第9族元素または第10族元素、Xはハロゲン元素を表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2、中心金属Mが第10族元素の時はn=1である。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Xはハロゲン元素を表す。
【0125】
【化22】

【0126】
以上のように、スキーム(c)およびスキーム(d)により合成できる下記一般式(G3)で表される有機金属錯体を、本発明の一態様とする。下記一般式(G3)は、一般式(G1)の構造を有する有機金属錯体の一態様であり、容易に合成ができるため好ましい。
【0127】
【化23】

【0128】
上記一般式(G3)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Lはモノアニオン性の配位子を表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。
【0129】
ここで、R〜Rにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0130】
上記一般式(G3)で表される有機金属錯体は、環状構造であるジベンゾフラン骨格又はジベンゾチオフェン骨格を有する剛直な構造である一般式(G1)が配位した構造であるため、良好な耐熱性を示す。したがって、耐熱性を必要とする発光素子の作製など、様々な分野において、本有機金属錯体を用いることができる。
【0131】
なお、前述のとおり、一般式(G0)が第9族または第10族の金属イオンによりオルトメタル化した一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体は、スキーム(a)およびスキーム(a’)に用いる化合物(A1)、(A2)、(A1’)、(A2’)の種類により様々な配位子を有するバリエーションが存在するため、一般式(G3)についても様々な配位子を有するバリエーションが存在する。
【0132】
様々な配位子を有するバリエーションのうち、下記一般式(G4)で表される有機金属錯体を、本発明の一態様とする。
【0133】
【化24】

【0134】
上記一般式(G4)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、Rは水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、Lはモノアニオン性の配位子を表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。
【0135】
ここで、RおよびRにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0136】
一般式(G4)で表される有機金属錯体は、一般式(G3)の置換基R、R、R、R、R、R及びRを水素とすることで、ピラジン誘導体の立体障害が軽減されるため金属イオンにオルトメタル化しやすく、有機金属錯体の合成収率を高めることができる。したがって、合成に要する時間およびコストを抑えることができる。
【0137】
≪一般式(G5)で表される有機金属錯体の合成法および一般式(G5)で表される有機金属錯体の好ましい一態様≫
次に、一般式(G2)で表される構造を有する有機金属錯体の好ましい一態様である、下記一般式(G5)で表される有機金属錯体の合成法について説明する。
【0138】
【化25】

【0139】
まず、下記合成スキーム(e)に示すように、一般式(G0’)で表されるピラジン誘導体と、ハロゲンを含む第9族または第10族の金属化合物(金属ハロゲン化物や金属錯体)とをアルコール系溶媒(グリセロール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール)単独、あるいはアルコール系溶媒1種類以上と水との混合溶媒と加熱することにより、一般式(G2)で表される構造を有する有機金属錯体の一種である複核錯体(C)を得ることができる。加熱手段として特に限定はないが、オイルバス、サンドバス、またはアルミブロックを用いても良い。また、マイクロ波による加熱を用いることも可能である。
【0140】
ハロゲンを含む第9族または第10族の金属化合物としては、塩化ロジウム水和物、塩化パラジウム、塩化イリジウム水和物、塩化イリジウム水和物塩酸塩、テトラクロロ白金(II)酸カリウム等が挙げられるが、これらに限定されることはない。なお、下記合成スキーム(e)においてMは中心金属であり、第9族元素または第10族元素のいずれかを表し、Xはハロゲン元素を表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2、Mが第10族元素の時はn=1である。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Xはハロゲン元素を表す。
【0141】
【化26】

【0142】
さらに、下記合成スキーム(f)に示すように、上述の合成スキーム(e)で得られる複核錯体(C)と、モノアニオン性の配位子の原料HLとを反応させることにより、HLのプロトンが脱離してモノアニオン性の配位子Lが中心金属Mに配位し、一般式(G5)で表される本発明の一態様である有機金属錯体が得られる。加熱手段として特に限定はないが、オイルバス、サンドバス、またはアルミブロックを用いても良い。また、マイクロ波による加熱を用いることも可能である。なお、合成スキーム(f)では中心金属Mは第9族元素または第10族元素、Xはハロゲン元素を表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2、中心金属Mが第10族元素の時はn=1である。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Xはハロゲン元素を表す。
【0143】
【化27】

【0144】
以上のように、スキーム(e)およびスキーム(f)により合成できる下記一般式(G5)で表される有機金属錯体を、本発明の一態様とする。下記一般式(G5)は、一般式(G2)の構造を有する有機金属錯体の一態様であり、容易に合成ができるため好ましい。
【0145】
【化28】

【0146】
上記一般式(G5)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、Lはモノアニオン性の配位子を表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。
【0147】
ここで、R〜Rにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0148】
上記一般式(G5)で表される有機金属錯体は、環状構造であるジベンゾフラン骨格又はジベンゾチオフェン骨格を有する剛直な構造である一般式(G2)が配位した構造であるため、良好な耐熱性を示す。したがって、耐熱性を必要とする発光素子の作製など、様々な分野において、本有機金属錯体を用いることができる。
【0149】
なお、前述のとおり、一般式(G0’)が第9族または第10族の金属イオンによりオルトメタル化した一般式(G2)で表される有機金属錯体は、スキーム(b)およびスキーム(b’)に用いる化合物(B1)、(A2)、(B1’)、(A2’)の種類により様々な配位子を有するバリエーションが存在するため、一般式(G5)についても様々な配位子を有するバリエーションが存在する。
【0150】
様々な配位子を有するバリエーションのうち、下記一般式(G6)で表される有機金属錯体を、本発明の一態様とする。
【0151】
【化29】

【0152】
上記一般式(G6)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、Rは水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、Lはモノアニオン性の配位子を表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。
【0153】
ここで、RおよびRにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0154】
一般式(G6)で表される有機金属錯体は、一般式(G5)の置換基R、R、R、R、R、R及びRを水素とすることで、ピラジン誘導体の立体障害が軽減されるため金属イオンにオルトメタル化しやすく、有機金属錯体の合成収率を高めることができる。したがって、合成に要する時間およびコストを抑えることができる。
【0155】
≪配位子(L)の具体例≫
一般式(G3)から一般式(G6)におけるモノアニオン性の配位子(L)は、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、カルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、フェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、2つの配位元素がいずれも窒素であるモノアニオン性の二座キレート配位子のいずれかが好ましい。特に好ましくは、下記構造式(L1)から(L6)のいずれかで表されるモノアニオン性の配位子である。これらの配位子は、配位能力が高く、また、安価に入手することができるため、合成に要する時間およびコストを抑えることができる。
【0156】
【化30】

【0157】
上記構造式(L1)から(L6)において、R71からR90はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基、ハロアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、または炭素数1〜4のアルキルチオ基のいずれか一を表す。また、A、A、Aは窒素N、または炭素C−Rを表し、Rは水素、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基、炭素数1〜4のハロアルキル基、またはフェニル基を表す。
【0158】
≪一般式(G7)で表される構造を有する有機金属錯体の合成法および一般式(G7)で表される有機金属錯体の好ましい一態様≫
次に、一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体の好ましい一態様である、下記一般式(G7)で表される有機金属錯体の合成法について説明する。
【0159】
【化31】

【0160】
上記一般式(G7)で表される本発明の一態様である有機金属錯体は、下記合成スキーム(g)に示すように、一般式(G0)で表されるピラジン誘導体と、ハロゲンを含む第9族もしくは第10族の金属化合物(塩化ロジウム水和物、塩化パラジウム、塩化イリジウム水和物、ヘキサクロロイリジウム酸アンモニウム、テトラクロロ白金酸カリウム等)、または第9族もしくは第10族の有機金属錯体化合物(アセチルアセトナート錯体、ジエチルスルフィド錯体等)とを混合した後、加熱することにより、一般式(G7)で表される構造を有する有機金属錯体を得ることができる。また、この加熱プロセスは、一般式(G0)表されるピラジン誘導体と、ハロゲンを含む第9族もしくは第10族の金属化合物、または第9族もしくは第10族の有機金属錯体化合物とをアルコール系溶媒(グリセロール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等)に溶解した後に行ってもよい。なお、スキーム(g)において、Mは第9族元素または第10族元素を表す。また、中心金属Mが第9族元素のときはn=2であり、中心金属Mが第10族元素のときはn=1である。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Xはハロゲン元素を表す。
【0161】
【化32】

【0162】
以上のように、スキーム(g)により合成できる下記一般式(G7)で表される有機金属錯体を、本発明の一態様とする。下記一般式(G7)は、一般式(G1)の構造を有する有機金属錯体の一態様であり、容易に合成ができるため好ましい。
【0163】
【化33】

【0164】
上記一般式(G7)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。
【0165】
ここで、R〜Rにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0166】
上記一般式(G7)で表される有機金属錯体は、環状構造であるジベンゾフラン骨格又はジベンゾチオフェン骨格を有する剛直な構造である一般式(G1)が配位した構造であるため、非常に良好な耐熱性を示す。したがって、様々な分野において、本有機金属錯体を用いることができる。
【0167】
なお、前述のとおり、一般式(G0)が第9族または第10族の金属イオンによりオルトメタル化した一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体は、スキーム(a)およびスキーム(a’)に用いる化合物(A1)、(A2)、(A1’)、(A2’)の種類により様々な配位子を有するバリエーションが存在するため、一般式(G0)を用いて合成する一般式(G7)についても、様々な配位子を有するバリエーションが存在する。
【0168】
様々な配位子を有するバリエーションのうち、下記一般式(G8)で表される有機金属錯体を、本発明の一態様とする。下記一般式(G8)は、一般式(G7)ので表される有機金属錯体の一態様であり、容易に合成ができるため好ましい。
【0169】
【化34】

【0170】
上記一般式(G8)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、Rは水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。
【0171】
ここで、RおよびRにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0172】
一般式(G8)で表される有機金属錯体は、一般式(G7)の置換基R、R、R、R、R、R及びRを水素とすることで、ピラジン誘導体の立体障害が軽減されるため金属イオンにオルトメタル化しやすく、有機金属錯体の合成収率を高めることができる。したがって、合成に要する時間およびコストを抑えることができる。
【0173】
≪一般式(G9)で表される有機金属錯体の合成法および一般式(G9)で表される有機金属錯体の好ましい一態様≫
次に、一般式(G2)で表される構造を有する有機金属錯体の好ましい一態様である、下記一般式(G9)で表される有機金属錯体の合成法について説明する。
【0174】
【化35】

【0175】
上記一般式(G9)で表される本発明の一態様である有機金属錯体は、下記合成スキーム(h)に示すように、一般式(G0’)で表されるピラジン誘導体と、ハロゲンを含む第9族もしくは第10族の金属化合物(塩化ロジウム水和物、塩化パラジウム、塩化イリジウム水和物、ヘキサクロロイリジウム酸アンモニウム、テトラクロロ白金酸カリウム等)、または第9族もしくは第10族の有機金属錯体化合物(アセチルアセトナート錯体、ジエチルスルフィド錯体等)とを混合した後、加熱することにより、一般式(G9)で表される構造を有する有機金属錯体を得ることができる。また、この加熱プロセスは、一般式(G0’)表されるピラジン誘導体と、ハロゲンを含む第9族もしくは第10族の金属化合物、または第9族もしくは第10族の有機金属錯体化合物とをアルコール系溶媒(グリセロール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等)に溶解した後に行ってもよい。なお、スキーム(h)において、Mは第9族元素または第10族元素を表す。また、中心金属Mが第9族元素のときはn=2であり、中心金属Mが第10族元素のときはn=1である。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Xはハロゲン元素を表す。
【0176】
【化36】

【0177】
以上のように、スキーム(h)により合成できる下記一般式(G9)で表される有機金属錯体を、本発明の一態様とする。下記一般式(G9)は、一般式(G2)の構造を有する有機金属錯体の一態様であり、容易に合成ができるため好ましい。
【0178】
【化37】

【0179】
上記一般式(G9)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。
【0180】
ここで、R〜Rにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0181】
上記一般式(G9)で表される有機金属錯体は、環状構造であるジベンゾフラン骨格又はジベンゾチオフェン骨格を有する剛直な構造である一般式(G2)が配位した構造であるため、非常に良好な耐熱性を示す。したがって、様々な分野において、本有機金属錯体を用いることができる。
【0182】
なお、前述のとおり、一般式(G0’)が第9族または第10族の金属イオンによりオルトメタル化した一般式(G2)で表される有機金属錯体は、スキーム(b)およびスキーム(b’)に用いる化合物(B1)、(A2)、(B1’)、(A2’)の種類により様々な配位子を有するバリエーションが存在するため、一般式(G0’)を用いて合成する一般式(G9)についても、様々な配位子を有するバリエーションが存在する。
【0183】
様々な配位子を有するバリエーションのうち、下記一般式(G10)で表される有機金属錯体を、本発明の一態様とする。下記一般式(G10)は、一般式(G9)で表される有機金属錯体の一態様であり、容易に合成ができるため好ましい。
【0184】
【化38】

【0185】
上記一般式(G10)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、Rは水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。
【0186】
ここで、RおよびRにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0187】
一般式(G10)で表される有機金属錯体は、一般式(G9)の置換基R、R、R、R、R、R及びRを水素とすることで、ピラジン誘導体の立体障害が軽減されるため金属イオンにオルトメタル化しやすく、有機金属錯体の合成収率を高めることができる。したがって、合成に要する時間およびコストを抑えることができる。
【0188】
以上、合成方法の一例におよび有機金属錯体の一態様ついて説明したが、開示する本発明の一態様である有機金属錯体は、他の合成方法によって合成されていてもよい。
【0189】
なお、より効率よく燐光発光させるためには、中心金属Mとして用いる第9族または第10族元素のうち、重原子効果の高い金属が好ましい。したがって本発明の一態様では、上述した本発明の一態様の有機金属錯体において、中心金属Mがイリジウムまたは白金であることを特徴とする。
【0190】
重原子であるイリジウムまたは白金が有機金属錯体中に存在することにより、重原子効果によるスピン反転が生じやすくなる。このため、項間交差により励起一重項準位の電子が励起三重項準位に移る可能性が高まり、前述の有機金属錯体を効率良く燐光発光できるため好ましい。
【0191】
なお、中心金属Mに用いることのできる第9族または第10族の元素の中にはイリジウムや白金よりも重い元素も存在するが、化学的安定性や危険性等を考慮すると、イリジウムまたは白金を用いることが好ましい。
【0192】
本発明の一様態である有機金属錯体は、前述の中心金属M、モノアニオン性の配位子Lを適宜組み合わせることにより構成される。本発明の一態様である有機金属錯体の具体的な構造式を、下記構造式(100)〜(151)にて列挙する。ただし、本発明はこれらに限定されることはない。
【0193】
【化39】

【0194】
【化40】

【0195】
【化41】

【0196】
【化42】

【0197】
【化43】

【0198】
【化44】

【0199】
【化45】

【0200】
【化46】

【0201】
【化47】

【0202】
なお、上記構造式(100)〜(151)で表される構造を有する有機金属錯体には、配位子の種類によっては立体異性体が存在しうるが、本発明の有機金属錯体にはこれらの異性体も全て含まれる。
【0203】
また、上述した本発明の一態様である有機金属錯体は、項間交差が可能なため増感剤として利用できる。また、燐光発光が可能であるため、発光材料や発光素子の発光物質として利用できる。
【0204】
なお、上記構造式(100)〜(151)のうち、構造式(100)、構造式(124)および構造式(135)で表される有機金属錯体の合成法を、それぞれ実施例1、実施例2および実施例3に記載する。また、これら3つの有機金属錯体についての核磁気共鳴分光法(1H−NMR)による分析結果、紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)測定結果、発光スペクトル測定結果も、それぞれの実施例に記載する。
【0205】
実施例1および実施例2に記載の通り、構造式(100)の絶対量子収率は78%、構造式(124)の絶対量子収率は78%であった。したがって、本実施の形態に記載した有機金属錯体は、高い発光量子収率を有しているといえる。
【0206】
また、実施例1から実施例3にて合成した構造式(100)、構造式(124)および構造式(135)の有機金属錯体は、共に、環状構造であるジベンゾフラン骨格を有する剛直な構造である。したがって、本実施の形態にて記載した有機金属錯体は、耐熱性が高いといえる。
【0207】
また、実施例1から実施例3に記載の合成法の通り、構造式(100)、構造式(124)および構造式(135)の有機金属錯体は、市販されているか、あるいは合成可能である材料を用いて容易に作製できる。したがって、本実施の形態にて記載した有機金属錯体は、合成に要する時間およびコストを抑制できるといえる。
【0208】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様として、有機金属錯体を発光層に用いた発光素子について図1を用いて説明する。
【0209】
図1は、第1の電極101と第2の電極103との間に発光層113を有するEL層102を挟んでなる発光素子を示した図である。発光層113には、実施の形態1で説明した本発明の一態様である有機金属錯体が含まれている。
【0210】
このような発光素子に対して電圧を印加することにより、第1の電極101側から注入された正孔と第2の電極103側から注入された電子とが、発光層113において再結合し、有機金属錯体を励起状態にする。そして、励起状態の有機金属錯体が基底状態に戻る際に発光する。このように、本発明の一態様である有機金属錯体は、発光素子における発光物質として機能する。なお、本実施の形態に示す発光素子において、第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極103は陰極として機能する。
【0211】
第1の電極101は、第1の電極101が陽極として機能する際は仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物や積層物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有したインジウム錫酸化物、酸化インジウム酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)等を用いることができる。
【0212】
また、第1の電極101として、導電性高分子(導電性ポリマー)を用いることも可能である。具体的には、例えば、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)等が挙げられる。
【0213】
但し、EL層102のうち、第1の電極101に接して形成される層が、後述する有機化合物と電子受容体(アクセプター)とが混合された複合材料を用いて形成される場合には、第1の電極101に用いる物質は、仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、アルミニウムを含む合金(Al−Si)等も用いることもできる。
【0214】
なお、第1の電極101は、例えばスパッタリング法、や蒸着法(真空蒸着法を含む)等により形成することができる。また、塗布法、印刷法、インクジェット法などにより形成してもよい。
【0215】
第1の電極101上に形成されるEL層102は、少なくとも発光層113を有しており、また、本発明の一態様である有機金属錯体を含んで形成される。EL層102の一部には公知の物質を用いることもでき、低分子系化合物および高分子系化合物のいずれを用いることもできる。なお、EL層102を形成する物質には、有機化合物のみから成るものだけでなく、無機化合物を一部に含む構成も含めるものとする。
【0216】
また、EL層102は、発光層113の他、図1に示すように正孔注入性の高い物質を含む正孔注入層111、正孔輸送性の高い物質を含む正孔輸送層112、電子輸送性の高い物質を含む電子輸送層114、電子注入性の高い物質を含む電子注入層115などを適宜組み合わせて積層することにより形成してもよい。
【0217】
正孔注入層111は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、例えば、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の金属酸化物を用いることができる。また、フタロシアニン(略称:HPc)、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物を用いることができる。
【0218】
また、低分子の有機化合物である4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等を用いることもできる。
【0219】
さらに、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることもできる。
【0220】
また、正孔注入層111として、有機化合物と電子受容体(アクセプターとも言う。電子伝達反応を担う化合物のうち、電子を受け取りやすい状態の化合物の総称)が混合した複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子受容体の働きにより正孔注入層111である有機化合物中に正孔が発生するため、正孔注入性および正孔輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した正孔の輸送に優れた材料(正孔輸送性の高い物質)であることが好ましい。
【0221】
複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0222】
複合材料に用いることのできる有機化合物としては、例えば、TDATA、MTDATA、DPAB、DNTPD、DPA3B、PCzPCA1、PCzPCA2、PCzPCN1、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)等の芳香族アミン化合物や、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等のカルバゾール誘導体を用いることができる。
【0223】
また、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチルアントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン等の芳香族炭化水素化合物を用いることもできる。
【0224】
さらに、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン、ペンタセン、コロネン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等の芳香族炭化水素化合物を用いることもできる。
【0225】
また、電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等の有機化合物や、遷移金属酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0226】
なお、上述したPVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPD等の高分子化合物と、上述した電子受容体を用いて複合材料を形成し、正孔注入層111に用いてもよい。
【0227】
正孔輸送層112は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、NPB、TPD、BPAFLP、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0228】
また、正孔輸送層112には、CBP、CzPA、PCzPAのようなカルバゾール誘導体や、t−BuDNA、DNA、DPAnthのようなアントラセン誘導体を用いてもよい。
【0229】
さらに、正孔輸送層112には、PVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPDなどの高分子化合物を用いることもできる。
【0230】
発光層113は、本発明の一態様である有機金属錯体を含む層であり、本発明の一態様である有機金属錯体よりも大きい三重項励起エネルギーを有する物質をホスト材料として用い、本発明の一態様である有機金属錯体をゲスト材料として分散させた層であることが好ましい。これによって、有機金属錯体からの発光が、濃度に起因して消光してしまうことを防ぐことができる。なお、三重項励起エネルギーとは、基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差である。
【0231】
また、上記有機金属錯体を分散状態にするために用いる物質(すなわちホスト材料)について特に限定はないが、2,3−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)キノキサリン(略称:TPAQn)、NPBのようなアリールアミン骨格を有する化合物の他、CBP、4,4’,4’’−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)等のカルバゾール誘導体や、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)等の金属錯体が好ましい。また、PVKのような高分子化合物を用いることもできる。
【0232】
電子輸送層114は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送層114には、Alq、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、BAlq、Zn(BOX)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などの金属錯体が挙げられる。
【0233】
また、複素芳香族化合物である、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン(略称:BzOs)などを用いることもできる。
【0234】
さらに、高分子化合物である、ポリ(2,5−ピリジン−ジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)などを用いることもできる。
【0235】
なお、上記に述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。上記以外の物質であっても、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、電子輸送層として用いてもよい。
【0236】
また、電子輸送層114は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0237】
電子注入層115は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層115には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、リチウム酸化物(LiOx)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウム(ErF)のような希土類金属化合物を用いることができる。また、上述した電子輸送層114を構成する物質を用いることもできる。
【0238】
あるいは、電子注入層115に、有機化合物と電子供与体(ドナーとも言う。電子伝達反応を担う化合物のうち、電子を放出しやすい状態の化合物の総称)が混合した複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体の働きにより有機化合物中に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層114を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0239】
なお、上述した正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、塗布法、印刷法、インクジェット法などの方法で形成することができる。
【0240】
第2の電極103は、第2の電極103が陰極として機能する際は仕事関数の小さい(好ましくは3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(Mg−Ag、Al−Li)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金の他、アルミニウムや銀などを用いることができる。
【0241】
また、第2の電極103として、導電性高分子(導電性ポリマー)を用いることも可能である。具体的には、例えば、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)等が挙げられる。
【0242】
但し、EL層102のうち、第2の電極103に接して形成される層が、上述する有機化合物と電子供与体(ドナー)が混合された複合材料を用いる場合には、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、珪素若しくは酸化珪素を含有したインジウム錫酸化物等様々な導電性材料を用いることができる。
【0243】
なお、第2の電極103を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法などを用いることができる。また、塗布法、印刷法、インクジェット法などを用いることもできる。
【0244】
上述した発光素子は、第1の電極101と第2の電極103との間に生じた電位差により電流が流れ、EL層102において正孔と電子とが再結合することにより発光する。そして、この発光は、第1の電極101または第2の電極103のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極101または第2の電極103のいずれか一方、または両方が可視光に対する透光性(具体的には、可視光に対して50%以上の透過率を有することが好ましく、より望ましくは80%以上の透過率を有することが好ましい)を有する電極となる。
【0245】
なお、本実施の形態で示した発光素子を用いて、パッシブマトリクス型の発光装置や、薄膜トランジスタ(TFT)によって発光素子の駆動が制御されたアクティブマトリクス型の発光装置を作製することができる。
【0246】
なお、アクティブマトリクス型の発光装置を作製する場合におけるTFTの構造は、特に限定されない。例えば、スタガ型や逆スタガ型のTFTを適宜用いることができる。また、TFT基板に形成される駆動用回路についても、N型およびP型のTFTからなるものでもよいし、N型のTFTまたはP型のTFTのいずれか一方のみからなるものであってもよい。さらに、TFTに用いられる半導体膜の結晶性についても特に限定されない。例えば、非晶質半導体膜、結晶性半導体膜、酸化物半導体膜、有機半導体膜などを用いることができる。
【0247】
なお、本実施の形態の構成を用いて作製した発光素子の一例について、その作製方法および素子特性を実施例4に示す。
【0248】
実施例4に記載の通り、発光素子1および発光素子2は、輝度1000cd/mにおいて、それぞれ22%、23%の外部量子効率であった。これらの外部量子効率は、どちらも蛍光性化合物の外部量子効率の限界値を超えていた。したがって、本実施の形態にて記載した有機金属錯体は、燐光発光が可能であるといえる。
【0249】
また、上記の外部量子効率の数値より、本実施の形態に記載した発光素子は、発光効率が高いといえる。
【0250】
また、実施例4の図18に記載された、発光素子の電圧と輝度の関係図より、発光素子は、3.5V程度の電圧で、約1000cd/mの輝度が得られる。したがって、本実施の形態に記載した発光素子は、駆動電圧が小さいといえる。
【0251】
また、実施例4の図19に記載された、発光素子の駆動時間と規格化輝度の関係図より、本実施の形態に記載した発光素子は、駆動時間に対する発光強度の低下が小さいといえる。
【0252】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。これにより、発光効率が高い、駆動電圧が小さい、駆動時間に対する発光強度の低下が小さいといった特徴を有する、高性能な発光素子を作製できる。
【0253】
(実施の形態3)
本発明の一態様である発光素子は、複数の発光層を有するものであってもよい。複数の発光層を設け、それぞれの発光層から発光させることで、複数の発光が混合された発光を得ることができる。したがって、例えば白色光を得ることができる。本実施の形態では、複数の発光層を有する発光素子の態様について図2を用いて説明する。
【0254】
図2において、第1の電極201と第2の電極203との間にはEL層202が設けられており、EL層202中に、第1の発光層213と第2の発光層215が設けられており、第1の発光層213における発光と第2の発光層215における発光が混合された発光を得ることができる。なお、第1の発光層213と第2の発光層215との間には、分離層214を有することが好ましい。本実施の形態に示す発光素子において、第1の電極201は陽極として機能し、第2の電極203は陰極として機能する。
【0255】
第1の電極201の電位が第2の電極203の電位よりも高くなるように電圧を印加すると、第1の電極201と第2の電極203との間に電流が流れ、第1の発光層213または第2の発光層215または分離層214の少なくとも1層以上で、正孔と電子とが再結合する。生じた励起エネルギーは、第1の発光層213と第2の発光層215の両方に分配され、第1の発光層213に含まれた第1の発光物質と第2の発光層215に含まれた第2の発光物質を励起状態にする。そして、励起状態になった第1の発光物質と第2の発光物質とは、それぞれ基底状態に戻る際に発光する。
【0256】
第1の発光層213には、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン(略称:TBP)、DPVBi、4,4’−ビス[2−(N−エチルカルバゾール−3−イル)ビニル]ビフェニル(略称:BCzVBi)、BAlq、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)ガリウムクロリド(GamqCl)などの蛍光性化合物や、ビス{2−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト−N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIr(acac))、ビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラ(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)などの燐光性化合物に代表される第1の発光物質が含まれており、450〜510nmに発光スペクトルのピークを有する発光(すなわち、青色〜青緑色)が得られる。
【0257】
また、第1の発光層213の構成は、第1の発光物質が蛍光性化合物の場合、第1の発光物質よりも大きい一重項励起エネルギーを有する物質を第1のホスト材料として用い、第1の発光物質をゲスト材料として分散した層であることが好ましい。また、第1の発光物質が燐光性化合物の場合、第1の発光物質よりも大きい三重項励起エネルギーを有する物質を第1のホスト材料として用い、第1の発光物質をゲスト材料として分散した層であることが好ましい。第1のホスト材料としては、先に述べたNPB、CBP、TCTA等の他、DNA、t−BuDNA等を用いることができる。なお、一重項励起エネルギーとは、基底状態と一重項励起状態とのエネルギー差である。また、三重項励起エネルギーとは、基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差である。
【0258】
一方、第2の発光層215は、本発明の一態様である有機金属錯体を含んでおり、黄色の発光が得られる。第2の発光層215の構成は、実施の形態2で説明した発光層113と同様の構成とすればよい。
【0259】
また、分離層214は、具体的には、上述したTPAQn、NPB、CBP、TCTA、Znpp、ZnBOX等を用いて形成することができる。このように、分離層214を設けることで、第1の発光層213と第2の発光層215のいずれか一方のみの発光強度が強くなってしまうという不具合を防ぐことができる。ただし、分離層214は必ずしも必要ではなく、第1の発光層213の発光強度と第2の発光層215の発光強度との割合を調節するため、適宜設ければよい。
【0260】
なお、本実施の形態では、第2の発光層215に本発明の一態様である有機金属錯体を用い、第1の発光層213に他の発光物質を適用したが、逆に第1の発光層213に本発明の一態様である有機金属錯体を用い、第2の発光層215に他の発光物質を適用してもよい。
【0261】
また、本実施の形態では、図2のように2つの発光層が設けられた発光素子について記載しているが、発光層の層数は2つに限定されるものでは無く、例えば3つあってもよい。そして、それぞれの発光層からの発光が混合されればよい。その結果、例えば白色光が得られる。
【0262】
なお、第1の電極201は、実施の形態2で述べた第1の電極101と同様の構成とすればよい。また、第2の電極203も、実施の形態2で述べた第2の電極103と同様の構成とすればよい。
【0263】
また、本実施の形態では、図2に示すように、正孔注入層211、正孔輸送層212、電子輸送層216、電子注入層217を設けているが、これらの層の構成に関しても、実施の形態2で述べた各層の構成を適用すればよい。なお、これらの層は必ずしも必要ではなく、素子の特性に応じて適宜設ければよい。
【0264】
以上のように、本実施の形態を用いることにより、複数の発光が混合された発光を得ることができる。したがって、例えば、第1の発光層の発光色と第2の発光層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることが可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色を発光する物質から得られた光を混合すると、白色発光を得ることができる。
【0265】
一例として、本明細書の発明の一態様である橙色の燐光を発光できる有機金属錯体を第1の発光層として用い、青色を発光できる材料を第2の発光層として用いることにより、白色発光を得ることができる。
【0266】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1または実施の形態2に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。これにより、様々な色を発光できる、発光効率が高い、駆動電圧が小さい、駆動時間に対する発光強度の低下が小さいといった特徴を有する、高性能な発光素子を作製できる。
【0267】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様として、発光素子においてEL層を複数有する構造(以下、積層型素子という)について、図3を用いて説明する。この発光素子は、第1の電極301と第2の電極304との間に、複数のEL層(第1のEL層302、第2のEL層303)を有する積層型発光素子である。なお、本実施の形態では、EL層が2層の場合について示すが、3層以上としても良い。
【0268】
本実施の形態において、第1の電極301は陽極として機能する電極であり、第2の電極304は陰極として機能する電極である。なお、第1の電極301および第2の電極304は、実施の形態2と同様な構成を用いることができる。また、複数のEL層(第1のEL層302、第2のEL層303)が実施の形態2で示したEL層と同様な構成であっても良いし、いずれかのEL層が実施の形態2で示したEL層と同様の構成であっても良い。すなわち、第1のEL層302と第2のEL層303は、同じ構成であっても異なる構成であってもよい。
【0269】
また、複数のEL層(第1のEL層302、第2のEL層303)の間には、電荷発生層305が設けられている。電荷発生層305は、第1の電極301と第2の電極304に電圧を印加したときに、一方のEL層に電子を注入し、他方のEL層に正孔を注入する機能を有する。本実施の形態では、第1の電極301の電位が第2の電極304の電位よりも高くなるように電圧を印加する場合について説明を行うが、この場合、電荷発生層305から第1のEL層302に電子が注入され、第2のEL層303に正孔が注入される。
【0270】
なお、電荷発生層305は、光の取り出し効率の点から、可視光に対する透光性(具体的には、可視光に対して50%以上の透過率を有することが好ましく、より望ましくは80%以上の透過率を有することが好ましい)を有することが好ましい。また、電荷発生層305は、第1の電極301や第2の電極304よりも低い導電率であっても機能する。
【0271】
電荷発生層305としては、正孔輸送性の高い有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを含む構成を用いればよい。また、電子輸送性の高い有機化合物と電子供与体(ドナー)とを含む構成を用いてもよい。さらに、これらの両方の構成が積層された構成を用いてもよい。
【0272】
正孔輸送性の高い有機化合物に電子受容体が添加された構成とする場合において、正孔輸送性の高い有機化合物としては、例えば、NPBやTPD、TDATA、MTDATA、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。なお、ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い有機化合物であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
【0273】
また、電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等を用いることができる。また、遷移金属酸化物を用いることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を用いることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0274】
一方、電子輸送性の高い有機化合物に電子供与体が添加された構成とする場合において、電子輸送性の高い有機化合物としては、例えば、Alq、Almq、BeBq、BAlqなど、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。また、Zn(BOX)、Zn(BTZ)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、PBDやOXD−7、TAZ、BPhen、BCPなども用いることができる。なお、ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。但し、正孔よりも電子の輸送性の高い有機化合物であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
【0275】
また、電子供与体としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属または希土類金属または元素周期表における第13族に属する金属およびその酸化物、炭酸塩を用いることができる。具体的には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、イッテルビウム(Yb)、インジウム(In)、酸化リチウム、炭酸セシウムなどを用いることが好ましい。また、テトラチアナフタセンのような有機化合物を電子供与体として用いてもよい。
【0276】
なお、上述した材料を用いて電荷発生層305を形成することにより、EL層が積層された場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0277】
本実施の形態では、2つのEL層を有する発光素子について説明したが、3つ以上のEL層を積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である。本実施の形態の発光素子のように、一対の電極間に複数のEL層を電荷発生層で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度領域での発光が可能となる。また、電流密度を低く保てるため、素子の長寿命化を実現できる。
【0278】
以上のように、本実施の形態を用いることにより、電極材料の抵抗による電圧降下を小さくできるので、大面積での均一発光が可能となる。さらに、低電圧駆動が可能であるため消費電力の低い発光装置を実現することができる。
【0279】
なお、それぞれのEL層の発光色を異なるものとすることで、所望の発光色を得ることができる。例えば、第1のEL層から発光される光と第2のEL層から発光させる光を、実施の形態2と同様に補色の関係として光を混合することにより、白色発光を得ることができる。
【0280】
また、3つのEL層を有する発光素子の場合においても、例えば、第1のEL層の発光色を赤色、第2のEL層の発光色を緑色、第3のEL層の発光色を青色とすることで、発光素子全体としては、白色発光を得ることができる。
【0281】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1乃至実施の形態3に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。これにより、様々な色を発光できる、発光効率が高い、駆動電圧が小さい、駆動時間に対する発光強度の低下が小さい、均一な発光ができる、消費電力が低いといった特徴を有する高性能な発光素子を作製できる。
【0282】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様として、有機金属錯体を増感剤として用いた発光素子の態様について、図1を用いて説明する。
【0283】
図1には、第1の電極101と第2の電極103との間に発光層113を有するEL層102を挟んでなる発光素子が表されている。そして、発光層113には、本発明の一態様である有機金属錯体と、この有機金属錯体よりも長波長の発光を呈することのできる蛍光性化合物が含まれている。
【0284】
このような発光素子において、第1の電極101から注入された正孔と第2の電極103側から注入された電子とが、発光層113において再結合し、蛍光性化合物を励起状態にする。そして、励起状態の蛍光性化合物は基底状態に戻るときに発光する。この時、本発明の一態様である有機金属錯体は、蛍光性化合物に対して増感剤として作用し、蛍光性化合物の一重項励起状態にある分子の数を増幅する。このように、本発明の一態様である有機金属錯体を増感剤として用いることによって発光効率の良い発光素子を得ることができる。なお、本実施の形態の発光素子において、第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極103は陰極として機能する。
【0285】
発光層113は、本発明の一態様である有機金属錯体と、この有機金属錯体よりも長波長の光を発光できる蛍光性化合物とを含んでいる。その構成は、有機金属錯体よりも大きい三重項励起エネルギーを有すると同時に、蛍光性化合物よりも大きい一重項励起エネルギーを有する物質をホスト材料として用い、有機金属錯体および蛍光性化合物をゲスト材料として分散した層であることが好ましい。
【0286】
なお、有機金属錯体と蛍光性化合物とを分散状態にするために用いる物質(すなわちホスト材料)については特に限定はなく、実施の形態2においてホスト材料として挙げた物質等を用いることができる。
【0287】
また、蛍光性化合物についても特に限定はないが、4−ジシアノメチレン−2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJTI)、マグネシウムフタロシアニン、マグネシウムポルフィリン、フタロシアニン等の赤色〜赤外の発光を示す化合物が好ましい。
【0288】
なお、本実施の形態で説明した第1の電極101、第2の電極103は、いずれも実施の形態2で説明した第1の電極、第2の電極と同様の構成とすればよい。
【0289】
また、本実施の形態では、図1に示すように、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層114、電子注入層115を設けているが、これらの層の構成に関しても、実施の形態2で説明した各層の構成を適用すればよい。ただし、これらの層は必ずしも必要ではなく、素子の特性に応じて適宜設ければよい。
【0290】
以上のように、本実施の形態を用いることにより、本発明の一態様である有機金属錯体を増感剤として用いて高効率の発光が得られる。
【0291】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1乃至実施の形態4に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
【0292】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様として、発光素子を用いて作製される発光装置であるパッシブマトリクス型の発光装置、およびアクティブマトリクス型の発光装置について説明する。
【0293】
図4及び図5にパッシブマトリクス型の発光装置の例を示す。
【0294】
パッシブマトリクス型(単純マトリクス型ともいう)の発光装置は、ストライプ状(帯状)に並列された複数の陽極と、ストライプ状に並列された複数の陰極とが互いに直交するように設けられており、陽極と陰極の交差部に発光層が挟まれた構造となっている。従って、選択された(電圧が印加された)陽極と選択された陰極との交点にあたる画素が点灯することになる。
【0295】
図4(A)から図4(C)は、封止前における画素部の上面図を示す図であり、図4(C)中の鎖線A−A’で切断した断面図が図4(D)である。
【0296】
まず、基板401上に、下地絶縁層として絶縁層402を形成する。なお、下地絶縁層402が必要でなければ特に形成しなくともよい。絶縁層402上には、ストライプ状に複数の第1の電極403が等間隔で配置されている(図4(A)参照)。
【0297】
次に、第1の電極403上には、各画素に対応する開口部を有する第1の隔壁404を形成する。なお、開口部を有する第1の隔壁404は絶縁材料(感光性または非感光性の有機材料(例えば、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジストまたはベンゾシクロブテンなど)、またはSOG膜(例えば、アルキル基を含むSiOx膜など))で構成されている。なお、各画素に対応する開口部が発光領域405となる(図4(B)参照)。
【0298】
次に、開口部を有する第1の隔壁404上に、第1の電極403と交差する、互いに平行な複数の逆テーパ状の第2の隔壁406を設ける(図4(C)参照)。逆テーパ状の第2の隔壁406はフォトリソグラフィ法を用いて形成する。
【0299】
図4(C)に示すように逆テーパ状の第2の隔壁406を形成した後、図4(D)に示すようにEL層407および第2の電極408を順次形成する。なお、開口部を有する第1の隔壁404及び逆テーパ状の第2の隔壁406を合わせた高さは、EL層407及び第2の電極408を合わせた膜厚より大きくなるように設定する。これにより、図4(D)に示すように複数の領域に分離された状態でEL層407および第2の電極408が形成される。なお、複数の分離領域410は、それぞれ電気的に独立している。
【0300】
第2の電極408は、第1の電極403と交差する方向に伸長する互いに平行なストライプ状の電極である。なお、逆テーパ状の第2の隔壁406上にもEL層407を形成する材料の一部及び第2の電極408を形成する導電層の一部が形成されるが、分離領域410とは電気的に分断されている。
【0301】
なお、本実施の形態における第1の電極403および第2の電極408は、一方が陽極であり、他方が陰極であれば良い。なお、EL層407を構成する積層構造については、電極の極性に応じて適宜調整すればよい。
【0302】
また、必要であれば、基板401に封止缶やガラス基板などの封止材をシール材などの接着剤で貼り合わせて封止し、発光素子が密閉された空間に配置されるようにしても良い。これにより、発光素子の劣化を防止することができる。なお、密閉された空間には、充填材や、乾燥した不活性ガスを充填しても良い。さらに、水分などによる発光素子の劣化を防ぐために基板と封止材との間に乾燥材などを封入することで、乾燥剤によって微量な水分が除去され、十分乾燥される。なお、乾燥剤としては、酸化カルシウムや酸化バリウムなどのようなアルカリ土類金属の酸化物のような化学吸着によって水分を吸収する物質を用いることが可能である。その他の乾燥剤として、ゼオライトやシリカゲル等の物理吸着によって水分を吸着する物質を用いてもよい。
【0303】
次に、図4(D)に示した構成を用いたパッシブマトリクス型の発光装置にFPCなどを実装した場合の上面図を図5に示す。
【0304】
図5において、画像表示を構成する画素部(図4(B)の発光領域に相当)には、走査線群とデータ線群が互いに直交するように交差している。
【0305】
ここで、図4における第1の電極403が、図5の走査線503に相当し、図4における第2の電極408が、図5のデータ線508に相当し、逆テーパ状の第2の隔壁406が第2の隔壁506に相当する。データ線508と走査線503の間には、図4のEL層407が挟まれており、領域505で示される交差部が1画素となる。
【0306】
なお、データ線508は配線端で接続配線509と電気的に接続され、接続配線509が入力端子512を介してFPC511aに接続される。また、走査線503は入力端子510を介してFPC511bに接続される。
【0307】
また、必要であれば、射出面に偏光板、円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムやマイクロレンズアレイを適宜設けてもよい。なお、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、射出面の表面に凹凸を設けることにより、発光装置外部から射出面に入射する光によって生じる、射出面の反射光を拡散し、映り込みを低減できる(アンチグレア処理とも言う)。また、射出面の表面に設ける凹凸形状を工夫(例えば、半円形状のレンズを、規則的に設ける)ことにより、発光層で発生した光を外部に取り出す効率(いわゆる、光取り出し効率)を高めることができる。
【0308】
なお、図5では、駆動回路を基板501上に設けない例を示したが、基板501上に駆動回路を有するICチップを実装させてもよい。
【0309】
また、ICチップを実装させる場合には、画素部の周辺(外側)の領域に、画素部へ各信号を伝送する駆動回路が形成されたデータ線側IC、走査線側ICをCOG方式によりそれぞれ実装する。COG方式以外の実装技術としてTCPやワイヤボンディング方式を用いて実装してもよい。TCPはTABテープにICを実装したものであり、TABテープを素子形成基板上の配線に接続してICを実装する。データ線側IC、および走査線側ICは、シリコン基板を用いたものであってもよいし、ガラス基板、石英基板もしくはプラスチック基板上にTFTで駆動回路を形成したものであってもよい。
【0310】
次に、アクティブマトリクス型の発光装置の例について、図6を用いて説明する。なお、図6(A)は発光装置を示す上面図であり、図6(B)は図6(A)を一点鎖線A−A’で切断した断面図である。本実施の形態におけるアクティブマトリクス型の発光装置は、素子基板601上に設けられた画素部602と、駆動回路部(ソース側駆動回路)603と、駆動回路部(ゲート側駆動回路)604と、を有する。画素部602、駆動回路部(ソース側駆動回路)603、及び駆動回路部(ゲート側駆動回路)604は、シール材605によって、素子基板601と封止基板606との間に封止されている。
【0311】
なお、発光装置の一点鎖線A−A’の断面図である図6(B)において、画素部602および駆動回路部(ソース側駆動回路)603の全ての断面状態を記載することは困難であるため、一部のみを表示する。
【0312】
また、素子基板601上には、駆動回路部(ソース側駆動回路)603、及び駆動回路部(ゲート側駆動回路)604に外部からの信号(例えば、ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、又はリセット信号等)や電位を伝達する外部入力端子を接続するための引き回し配線607が設けられる。ここでは、外部入力端子としてFPC(フレキシブルプリントサーキット)608を設ける例を示している。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態も含むものとする。
【0313】
次に、発光装置の断面構造について図6(B)を用いて説明する。素子基板601上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部(ソース側駆動回路)603と、画素部602が示されている。
【0314】
駆動回路部(ソース側駆動回路)603はnチャネル型TFT609とpチャネル型TFT610とを組み合わせたCMOS回路が形成される例を示している。なお、駆動回路部は、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、基板上ではなく外部に駆動回路を形成することもできる。
【0315】
また、画素部602はスイッチング用TFT611と、電流制御用TFT612と電流制御用TFT612の配線(ソース電極又はドレイン電極)に電気的に接続された陽極613とを含む複数の画素により形成される。なお、陽極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂を用いることにより形成する。
【0316】
また、陽極613および絶縁物614の上層に積層形成される膜の被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにするのが好ましい。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリル樹脂を用いた場合、絶縁物614の上端部に曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。なお、絶縁物614としては、感光性の光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。また、有機化合物に限らず酸化シリコン、酸窒化シリコン等の無機化合物を使用することもできる。
【0317】
陽極613上には、EL層615及び陰極616が積層形成されている。なお、陽極613をITO膜とし、陽極613と接続する電流制御用TFT612の配線として窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜との積層膜、或いは窒化チタン膜、アルミニウムを主成分とする膜、窒化チタン膜との積層膜を適用すると、配線としての抵抗も低く、ITO膜との良好なオーミックコンタクトがとれる。なお、ここでは図示しないが、陰極616は外部入力端子であるFPC(フレキシブルプリントサーキット)608に電気的に接続されている。
【0318】
なお、EL層615は、少なくとも発光層が設けられており、発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層又は電子注入層を適宜設ける構成とすることが好ましい。陽極613、EL層615及び陰極616との積層構造で、発光素子617が形成されている。
【0319】
また、図6(B)に示す断面図では発光素子617を1つのみ図示しているが、画素部602において、複数の発光素子がマトリクス状に配置されていることが好ましい。画素部602には、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光素子をそれぞれ選択的に形成し、フルカラー表示可能な発光装置を形成することができる。また、画素部602に、単色の発光が得られる発光素子を形成し、カラーフィルタと組み合わせることによってフルカラー表示可能な発光装置としてもよい。
【0320】
さらに、シール材605で封止基板606を素子基板601と貼り合わせることにより、素子基板601、封止基板606、およびシール材605で囲まれた空間618に発光素子617が備えられた構造になっている。なお、空間618は、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される構成も含むものとする。
【0321】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板606に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0322】
以上のように、本実施の形態を用いることにより、本発明に記載の発光素子を備えたパッシブマトリクス型発光装置、およびアクティブマトリクス型発光装置を作製できる。
【0323】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1から実施の形態5に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。これにより、消費電力が小さい、信頼性が高いといった特徴を有するパッシブマトリクス型発光装置、およびアクティブマトリクス型発光装置を作製できる。
【0324】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明を適用した一態様である発光装置を用いて完成させた様々な電子機器および照明器具の一例について、図7、図8および図9を用いて説明する。
【0325】
発光装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。これらの電子機器および照明器具の具体例を図7に示す。
【0326】
図7(A)はテレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置7100は、筐体7101に表示部7103が組み込まれている。表示部7103により、映像を表示することが可能であり、発光装置を表示部7103に用いることができる。また、ここでは、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示している。
【0327】
テレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー7109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
【0328】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0329】
図7(B)はコンピュータ7200であり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む。なお、コンピュータは、発光装置をその表示部7203に用いることにより作製される。
【0330】
図7(C)は携帯型遊技機7300であり、筐体7301と筐体7302の2つの筐体で構成されており、連結部7303により、開閉可能に連結されている。筐体7301には表示部7304が組み込まれ、筐体7302には表示部7305が組み込まれている。また、図7(C)に示す携帯型遊技機は、その他、スピーカ部7306、記録媒体挿入部7307、LEDランプ7308、入力手段(操作キー7309、接続端子7310、センサ7311(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン7312)等を備えている。もちろん、携帯型遊技機の構成は上述のものに限定されず、少なくとも表示部7304および表示部7305の両方、または一方に発光装置を用いていればよく、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。図7(C)に示す携帯型遊技機は、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能や、他の携帯型遊技機と無線通信を行って情報を共有する機能を有する。なお、図7(C)に示す携帯型遊技機が有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0331】
図7(D)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、発光装置を表示部7402に用いることにより作製される。
【0332】
図7(D)に示す携帯電話機7400は、表示部7402を指などで触れることで、情報を入力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0333】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0334】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部7402の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0335】
また、携帯電話機7400内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯電話機7400の向き(縦か横か)を判断して、表示部7402の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0336】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は筐体7401の操作ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0337】
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表示部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0338】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部7402に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0339】
図7(E)は卓上照明器具7500であり、照明部7501、傘7502、可変アーム7503、支柱7504、台7505、電源スイッチ7506を含む。なお、卓上照明器具は、発光装置を照明部7501に用いることにより作製される。なお、照明器具には天井固定型の照明器具または壁掛け型の照明器具なども含まれる。
【0340】
図8は、発光装置を、室内の照明装置801として用いた例である。発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。その他、ロール型の照明装置802として用いることもできる。なお、図8に示すように、室内の照明装置801を備えた部屋で、図7(E)で説明した卓上照明器具7500を併用してもよい。
【0341】
以上のように、本実施の形態を用いることにより、本発明に記載の発光素子を備えた電子機器や照明装置などの、様々な発光装置を作製できる。
【0342】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1から実施の形態6に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。これにより、消費電力が小さい、信頼性が高いといった特徴を有する電子機器や照明装置などの、付加価値の高い様々な発光装置を作製できる。
【0343】
(実施の形態8)
本実施の形態では、左目用の映像と右目用の映像を高速で切り換える表示装置を用いて、表示装置の映像と同期する専用の眼鏡を用いて動画または静止画である3D映像を視認する例を、図9を用いて示す。
【0344】
図9(A)は3D映像表示装置9100の外観であり、表示部9101と、専用の眼鏡本体9102がケーブル9104で接続されている。専用の眼鏡本体9102は、左目用パネル9103aと右目用パネル9103bに設けられているシャッターが交互に開閉することによって使用者が表示部9101の画像を3Dとして認識することができる。
【0345】
また、表示部9101と専用の眼鏡本体9102の主要な構成についてのブロック図を図9(B)に示す。
【0346】
図9(B)に示す表示部9101は、表示制御回路9116、表示部9117、タイミング発生器9113、ソース線側駆動回路9118、外部操作手段9122及びゲート線側駆動回路9119を有する。本発明の有機金属錯体を用いた高効率な発光素子は表示部9117に用いることができる。なお、キーボード等の外部操作手段9122による操作に応じて、出力する信号を可変する。
【0347】
タイミング発生器9113では、スタートパルス信号などを形成するとともに、左目用映像と左目用パネル9103aのシャッターとを同期させるための信号、右目用映像と右目用パネル9103bのシャッターとを同期させるための信号などを形成する。
【0348】
左目用映像の同期信号9131aを表示制御回路9116に入力して表示部9117に表示すると同時に、左目用パネル9103aのシャッターを開ける同期信号9130aを左目用パネル9103aに入力する。また、右目用映像の同期信号9131bを表示制御回路9116に入力して表示部9117に表示すると同時に、右目用パネル9103bのシャッターを開ける同期信号9130bを右目用パネル9103bに入力する。
【0349】
なお、フィールドシーケンシャル法を用いるため、タイミング発生器9113は、発光素子にも同期信号9130a、9130bと同期する信号を入力することが好ましい。
【0350】
以上のようにして、本実施の形態を用いることにより、表示画像の高輝度化が可能となり、3D画像表示装置の問題点の一つである画面の暗さを抑制することができる。また、本発明に記載の発光素子を備えることで、各画素の応答速度を非常に早くすることが可能であるため、3D映像表示装置の問題点の一つであるクロストークの発生を抑制することができる。さらに、3D映像表示装置を低消費電力化することも可能となる。
【0351】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1から実施の形態7に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。これにより、消費電力が小さい、信頼性が高いといった特徴を有する3D画像表示装置を作製できる。
【実施例1】
【0352】
≪合成例1≫
本実施例では、実施の形態1の構造式(100)で表される本発明の一態様である有機金属錯体、(アセチルアセトナート)ビス[2−(ジベンゾフラン−4−イル)−3,5−ジメチルピラジナート]イリジウム(III)(略称:[Ir(dm4dbfpr)(acac)])の合成例を具体的に例示する。なお、[Ir(dm4dbfpr)(acac)]の構造を以下に示す。
【0353】
【化48】

【0354】
<ステップ1;3,5−ジメチル−2−(ジベンゾフラン−4−イル)ピラジン(略称:Hdm4dbfpr)の合成>
まず、2−クロロ−3,5−ジメチルピラジン1.51gと4−ジベンゾフラニルボロン酸2.25g、炭酸ナトリウム1.12g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(略称:Pd(PPhCl)0.048g、水15mL、アセトニトリル15mLを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、内部をアルゴン置換した。この反応容器にマイクロ波(2.45GHz、100W)を10分間照射することで加熱し、反応させた。その後、この反応溶液に水を加え、ジクロロメタンにて抽出した。得られた抽出液を水で洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥した。乾燥した後の溶液をろ過した。この溶液の溶媒を留去した後、得られた残渣をメタノールで洗浄し、目的のピラジン誘導体Hdm4dbfprを得た(淡い橙色粉末、収率65%)。なお、マイクロ波の照射はマイクロ波合成装置(CEM社製、Discover)を用いた。ステップ1の合成スキームを下記(x−1)に示す。
【0355】
【化49】

【0356】
<ステップ2;ジ−μ−クロロ−ビス[ビス{2−(ジベンゾフラン−4−イル)−3,5−ジメチルピラジナート}イリジウム(III)](略称:[Ir(dm4dbfpr)Cl])の合成>
次に、2−エトキシエタノール15mLと水5mL、上記ステップ1で得たHdm4dbfpr1.25g、塩化イリジウム水和物(IrCl・HO)0.68gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz、100W)を30分間照射し、反応させた。反応溶液より析出してきた粉末をろ過し、エタノールで洗浄することにより、複核錯体[Ir(dm4dbfpr)Cl]を得た(赤色粉末、収率54%)。ステップ2の合成スキームを下記(x−2)に示す。
【0357】
【化50】

【0358】
<ステップ3;(アセチルアセトナート)ビス[2−(ジベンゾフラン−4−イル)−3,5−ジメチルピラジナート]イリジウム(III)(略称:[Ir(dm4dbfpr)(acac)])の合成>
さらに、2−エトキシエタノール10mL、上記ステップ2で得た複核錯体[Ir(dm4dbfpr)Cl]0.39g、アセチルアセトン0.078mL、炭酸ナトリウム0.26gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz、100W)を30分間照射し、反応させた。反応溶液にジクロロメタンを添加し、ろ過した。得られたろ液を濃縮し、析出してきた粉末をろ過した。この粉末をエタノール、水、ふたたびエタノール、ヘキサンの順で洗浄した後、ジクロロメタンに溶解した。この溶液をシリカゲルとセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)の混合物を通してろ過することにより不純物を除去し、濃縮した。得られた残渣を、エタノール、次いでヘキサンで洗浄することより、本発明の有機金属錯体[Ir(dm4dbfpr)(acac)]を得た(赤色粉末、収率36%)。ステップ3の合成スキームを下記(x−3)に示す。
【0359】
【化51】

【0360】
上記ステップ3で得られた赤色粉末の核磁気共鳴分光法(1H−NMR)による分析結果を図10および下記に示す。この結果から、本合成例1において、上述の構造式(100)で表される本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(dm4dbfpr)(acac)]が得られたことがわかった。
【0361】
1H−NMR.δ(CDCl):1.81(s,6H),2.72(s,6H),3.24(s,6H),5.26(s,1H),6.17(d,2H),7.23(m,2H),7.32−7.38(m,4H),7.53(d,2H),7.73(d,2H),8.26(s,2H).
【0362】
次に、[Ir(dm4dbfpr)(acac)]のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製、V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.071mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製、FS920)を用い、脱気したジクロロメタン溶液(0.43mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。得られた吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を図11に示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。また、図11において2本の実線が示されているが、細い実線は吸収スペクトルを示し、太い実線は発光スペクトルを示している。なお、図11に示す吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(0.071mmol/L)を石英セルに入れて測定した吸収スペクトルから、ジクロロメタンのみを石英セルに入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた結果を示している。
【0363】
図11に示すとおり、本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(dm4dbfpr)(acac)]は、605nmに発光ピークを有しており、ジクロロメタン溶液からは赤橙色の発光が観測された。
【0364】
次に、[Ir(dm4dbfpr)(acac)]の絶対量子収率を測定した。絶対量子収率の測定は絶対PL量子収率測定装置((株)浜松ホトニクス社製、C9920−02)を用い、トルエンを溶媒として1.0×10−5mol/Lとなるように濃度を調整した後、室温にて200nmから900nmの波長領域について測定を行った。その結果、絶対量子収率は78%であり、高い発光効率を示すことがわかった。
【実施例2】
【0365】
≪合成例2≫
本実施例では、実施の形態1の構造式(124)で表される本発明の一態様である有機金属錯体、ビス[2−(ジベンゾフラン−2−イル)−3,5−ジメチルピラジナート](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dm2dbfpr)(dpm)])の合成例を具体的に例示する。なお、[Ir(dm2dbfpr)(dpm)]の構造を以下に示す。
【0366】
【化52】

【0367】
<ステップ1;2−ブロモジベンゾフランの合成>
まず、ジベンゾフラン15gと氷酢酸90mLを、滴下ロートと温度計をつけた四つ口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素フローした。その後、フラスコを50℃に加熱し、滴下ロートより、臭素18.8gを、反応溶液を60℃以下に保持しながら15分かけて滴下した。その後、室温で24時間撹拌すると、黄色固体が析出した。反応後の溶液をろ過し、酢酸9mLで洗浄した。次いで、黄色固体が無色になるまで水で洗浄し、さらにメタノールで洗浄した。得られた固体をジクロロメタンで再結晶し、目的の2−ブロモジベンゾフランを得た(白色粉末、収率45%)。ステップ1の合成スキームを下記(y−1)に示す。
【0368】
【化53】

【0369】
<ステップ2;2−ジベンゾフラニルボロン酸の合成>
次に、上記ステップ1で得られた2−ブロモジベンゾフラン10.79gと脱水エーテル70mL、脱水トルエン70mLを、三つ口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。その後、この懸濁液に−78℃にてn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.58mol/L)を55mL滴下した。この反応溶液を−78℃にて2時間撹拌した後、ホウ酸トリメチル14.6mLを添加し、反応溶液を室温まで昇温した。その後、反応溶液に10%塩酸33mLを添加した。この溶液を酢酸エチルで抽出し、抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥した後の溶液をろ過して、ろ液を濃縮した。得られた残渣をヘキサンで洗浄することにより、目的の2−ジベンゾフラニルボロン酸を得た(白色粉末、収率29%)。ステップ2の合成スキームを下記(y−2)に示す。
【0370】
【化54】

【0371】
<ステップ3;3,5−ジメチル−2−(ジベンゾフラン−2−イル)ピラジン(略称:Hdm2dbfpr)の合成>
次に、2−クロロ−3,5−ジメチルピラジン1.80gと2−ジベンゾフラニルボロン酸2.68g、炭酸ナトリウム1.34g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(略称:Pd(PPhCl)0.0575g、水15mL、アセトニトリル15mLを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、内部をアルゴン置換した。この反応容器にマイクロ波(2.45GHz、100W)を10分間照射することで加熱し、反応させた。その後、この反応溶液に水を加え、ジクロロメタンにて抽出した。得られた抽出液を水で洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥した。乾燥した後の溶液をろ過した。この溶液の溶媒を留去した後、得られた残渣をメタノール、次いで酢酸エチルで洗浄し、目的のピラジン誘導体Hdm2dbfprを得た(白色粉末、収率94%)。なお、マイクロ波の照射はマイクロ波合成装置(CEM社製、Discover)を用いた。ステップ3の合成スキームを下記(y−3)に示す。
【0372】
【化55】

【0373】
<ステップ4;ジ−μ−クロロ−ビス[ビス{2−(ジベンゾフラン−2−イル)−3,5−ジメチルピラジナート}イリジウム(III)](略称:[Ir(dm2dbfpr)Cl])の合成>
次に、2−エトキシエタノール15mLと水5mL、上記ステップ3で得たHdm2dbfpr1.24g、塩化イリジウム水和物(IrCl・HO)0.54gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz、100W)を30分間照射し、反応させた。反応溶液より析出してきた粉末をろ過し、エタノールで洗浄することにより、複核錯体[Ir(dm2dbfpr)Cl]を得た(黄土色粉末、収率65%)。ステップ4の合成スキームを下記(y−4)に示す。
【0374】
【化56】

【0375】
<ステップ5;ビス[2−(ジベンゾフラン−2−イル)−3,5−ジメチルピラジナート](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dm2dbfpr)(dpm)])の合成>
さらに、2−エトキシエタノール10mL、上記ステップ4で得た複核錯体[Ir(dm2dbfpr)Cl]0.59g、ジピバロイルメタン0.21mL、炭酸ナトリウム0.40gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz、100W)を30分間照射し、反応させた。反応溶液にジクロロメタンを添加し、ろ過した。得られたろ液を濃縮し、析出してきた粉末をジクロロメタンに溶解した。この溶液をシリカゲルとセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)の混合物を通してろ過することにより不純物を除去し、濃縮した。得られた残渣を、メタノール、次いでヘキサンで洗浄することにより、本発明の有機金属錯体[Ir(dm2dbfpr)(dpm)]を得た(橙色粉末、収率16%)。ステップ5の合成スキームを下記(y−5)に示す。
【0376】
【化57】

【0377】
上記ステップ5で得られた橙色粉末の核磁気共鳴分光法(1H−NMR)による分析結果を図12および下記に示す。この結果から、本合成例2において、上述の構造式(124)で表される本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(dm2dbfpr)(dpm)]が得られたことがわかった。
【0378】
1H−NMR.δ(CDCl):0.91(s,18H),2.64(s,6H),3.23(s,6H),5.55(s,1H),6.48(s,2H),7.23(m,2H),7.33(m,4H),7.86(d,2H),8.23(s,2H),8.49(s,2H).
【0379】
次に、[Ir(dm2dbfpr)(dpm)]のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製、V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.065mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製、FS920)を用い、脱気したジクロロメタン溶液(0.39mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。得られた吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を図13に示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。また、図13において2本の実線が示されているが、細い実線は吸収スペクトルを示し、太い実線は発光スペクトルを示している。なお、図13に示す吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(0.065mmol/L)を石英セルに入れて測定した吸収スペクトルから、ジクロロメタンのみを石英セルに入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた結果を示している。
【0380】
図13に示すとおり、本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(dm2dbfpr)(dpm)]は、589nmに発光ピークを有しており、ジクロロメタン溶液からは橙色の発光が観測された。
【0381】
次に、[Ir(dm2dbfpr)(dpm)]の絶対量子収率を測定した。絶対量子収率の測定は絶対PL量子収率測定装置((株)浜松ホトニクス社製、C9920−02)を用い、トルエンを溶媒として1.0×10−5mol/Lとなるように濃度を調整した後、室温にて200nmから900nmの波長領域について測定を行った。その結果、絶対量子収率は78%であり、高い発光効率を示すことがわかった。
【実施例3】
【0382】
≪合成例3≫
実施例では、実施の形態1の構造式(135)で表される本発明の一態様である有機金属錯体、トリス[2−(ジベンゾフラン−4−イル)−3,5−ジメチルピラジナート]イリジウム(III)(略称:[Ir(dm4dbfpr)])の合成例を具体的に例示する。なお、[Ir(dm4dbfpr)]の構造を以下に示す。
【0383】
【化58】

【0384】
<ステップ1;トリス[2−(ジベンゾフラン−4−イル)−3,5−ジメチルピラジナート]イリジウム(III)(略称:[Ir(dm4dbfpr)])の合成>
まず、上記合成例1のステップ1で得られた配位子Hdm4dbfpr0.35g、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)0.14gを、三方コックを付けた反応容器に入れ、反応容器内をアルゴン置換した。その後、250℃にて53時間加熱し、反応させた。反応物をジクロロメタンに溶解し、この溶液をろ過した。ろ液の溶媒を留去し、得られた残渣を、酢酸エチルを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(dm4dbfpr)]を得た(橙色粉末、収率18%)。ステップ1の合成スキームを下記に示す。
【0385】
【化59】

【0386】
上記ステップで得られた橙色粉末の核磁気共鳴分光法(H−NMR)による分析結果を下記に示す。また、H−NMRチャートを図14に示す。この結果から、本合成例3において、上述の構造式(135)で表される本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(dm4dbfpr)]が得られたことがわかった。
【0387】
H−NMR.δ(CDCl):2.41(s,9H),3.03(s,9H),6.74(d,3H),7.16(s,3H),7.30(dd,3H),7.39(dt,3H),7.44(d,3H),7.55(d,3H),7.82(d,3H).
【0388】
次に、[Ir(dm4dbfpr)]のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.086mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用い、脱気したジクロロメタン溶液(0.52mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。得られた吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を図15に示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。また、図15において2本の実線が示されているが、細い実線は吸収スペクトルを示し、太い実線は発光スペクトルを示している。なお、図15に示す吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(0.086mmol/L)を石英セルに入れて測定した吸収スペクトルから、ジクロロメタンのみを石英セルに入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた結果を示している。
【0389】
図15に示すとおり、本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(dm4dbfpr)]は、578nmに発光ピークを有しており、ジクロロメタン溶液からはオレンジ色の発光が観測された。
【実施例4】
【0390】
本実施例では、実施例1にて合成した本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(dm4dbfpr)(acac)](構造式(100))を、発光物質として用いた発光素子(発光素子1)および、実施例2にて合成した本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(dm2dbfpr)(dpm)](構造式(124))を発光物質として用いた発光素子(発光素子2)について説明する。なお、本実施例で用いる有機化合物のその他の構造については、下記構造式(i)〜(iv)に示す。また、下記構造式(i)に示す物質、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)および下記構造式(ii)に示す物質、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)の合成法を例示する。なお、発光素子の素子構造は、図16に基づき説明する。
【0391】
【化60】

【0392】
≪発光素子1および発光素子2の作製≫
まず、ガラス製の基板1100上に第1の電極1101として110nmの膜厚で酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)を成膜する。なお、ITSO表面が、2mm角の大きさで露出するように周辺が絶縁膜で覆われている。ここで、第1の電極1101は、発光素子の陽極として機能する電極である。
【0393】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面をオゾン水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0394】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0395】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、真空蒸着装置内に設けられたホルダーに基板1100を固定した。本実施例では、真空蒸着法により、EL層1102を構成する正孔注入層1111、正孔輸送層1112、発光層1113、電子輸送層1114、電子注入層1115が順次形成される場合について説明する。
【0396】
真空装置内を10−4Paに減圧した後、上記構造式(i)で表される、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)と酸化モリブデンを、BPAFLP:酸化モリブデン=4:2(質量比)となるように共蒸着することにより、正孔注入層1111を形成した。膜厚は40nmとした。なお、共蒸着とは、異なる複数の物質をそれぞれ異なる蒸発源から同時に蒸発させる蒸着法である。
【0397】
次に、BPAFLPを20nm蒸着することにより、正孔輸送層1112を形成した。
【0398】
次に、発光素子1の場合には、正孔輸送層1112上に、上記構造式(ii)で表される2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)と、上記構造式(iii)で表される4、4’−ジ(1−ナフチル)−4’’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)と、上記構造式(100)で表される(アセチルアセトナート)ビス[2−(ジベンゾフラン−4−イル)−3,5−ジメチルピラジナート]イリジウム(III)(略称:[Ir(dm4dbfpr)(acac)])を、2mDBTPDBq−II:PCBNBB:[Ir(dm4dbfpr)(acac)]=0.8:0.2:0.05(質量比)となるように共蒸着し、発光素子2の場合には、正孔輸送層1112上に、2mDBTPDBq−IIと、PCBNBBと、上記構造式(124)で表される、ビス[2−(ジベンゾフラン−2−イル)−3,5−ジメチルピラジナート](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dm2dbfpr)(dpm)])を、2mDBTPDBq−II:PCBNBB:[Ir(dm2dbfpr)(dpm)]=0.8:0.2:0.05(質量比)となるように共蒸着して発光層1113を形成した。なお、膜厚は発光素子1および発光素子2共に40nmとした。
【0399】
次に、2mDBTPDBq−IIを10nm蒸着した後、さらに上記構造式(iv)で表されるバソフェナントロリン(略称:BPhen)を20nm蒸着することにより、電子輸送層1114を形成した。さらに電子輸送層1114上に、フッ化リチウムを2nm蒸着することにより、電子注入層1115を形成した。
【0400】
次に、第2の電極1103としてアルミニウムを200nm成膜し、本発明の一態様である発光素子(発光素子1および発光素子2)を得た。なお、第2の電極1103は、陰極として機能する電極である。上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0401】
また、これらの発光素子は、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止した。
【0402】
≪発光素子1および発光素子2の動作特性≫
作製した発光素子(発光素子1および発光素子2)の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0403】
まず、各発光素子の電流密度−輝度特性を図17に示す。なお、図17において、縦軸に輝度(cd/m)、横軸に電流密度(mA/cm)を示す。また、各発光素子の電圧−輝度特性を図18に示す。なお、図18において、縦軸に輝度(cd/m)、横軸に電圧(V)を示す。図17および図18に示すとおり、発光素子1および発光素子2は高い発光効率を有していることが分かる。また、各発光素子の駆動時間−輝度特性図を図19に示す。なお、図19において、縦軸に規格化輝度(%)、横軸に駆動時間(h)を示す。なお、規格化輝度とは、発光素子の初期輝度を100%とした場合における各時間の輝度をパーセント表示したものを指す。図19に示すとおり、発光素子1および発光素子2は駆動時間に対する発光強度の低下が小さいことが分かる。
【0404】
また、各発光素子に25mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを、図20に示す。図20に示す通り、発光素子1の発光スペクトルは604nmにピークを有しており、本発明の一態様である有機金属錯体([Ir(dm4dbfpr)(acac)])の発光に由来していることが示唆された。また、発光素子2の発光スペクトルは579nmにピークを有しており、本発明の一態様である有機金属錯体([Ir(dm2dbfpr)(dpm)])の発光に由来していることが示唆された。
【0405】
なお、発光素子1は、輝度1000cd/mのとき、電圧は2.9Vであり、外部量子効率は22%であった。また、発光素子2は、輝度1000cd/mのとき、電圧は2.9Vであり、外部量子効率は23%であった。
【0406】
(参考例1)
上記実施例で用いた、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)の合成方法について具体的に説明する。BPAFLPの構造を以下に示す。
【0407】
【化61】

【0408】
<ステップ1:9−(4−ブロモフェニル)−9−フェニルフルオレンの合成法>
100mL三口フラスコにて、マグネシウムを1.2g(50mmol)減圧下で30分加熱撹拌し、マグネシウムを活性化させた。これを室温に冷まして窒素雰囲気にした後、ジブロモエタン数滴を加えて発泡、発熱するのを確認した。ここにジエチルエーテル10mL中に溶かした2−ブロモビフェニル12g(50mmol)をゆっくり滴下した後、2.5時間加熱還流撹拌してグリニヤール試薬とした。
【0409】
4−ブロモベンゾフェノンを10g(40mmol)、ジエチルエーテルを100mL、を500mL三口フラスコに入れた。ここに先に合成したグリニヤール試薬をゆっくり滴下した後、9時間加熱還流撹拌した。
【0410】
反応後、この混合液をろ過して濾物を得た。得られた濾物を酢酸エチル150mLに溶かし、ここに1N−塩酸を酸性になるまで加えて2時間撹拌した。この液体の有機層の部分を水で洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて水分を取り除いた。この懸濁液をろ過し、得られたろ液を濃縮し油状物を得た。
【0411】
500mLなすフラスコに、この油状物と、氷酢酸50mLと、塩酸1.0mLとを入れ、窒素雰囲気下、130℃で1.5時間加熱撹拌し、反応させた。
【0412】
反応後、この反応混合液をろ過して濾物を得た。得られた濾物を水、水酸化ナトリウム水溶液、水、メタノールの順で洗浄したのち乾燥させ、目的物の白色粉末を収量11g、収率69%で得た。また、上記合成法の反応スキームを下記(x)に示す。
【0413】
【化62】

【0414】
<ステップ2:4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)の合成法>
100mL三口フラスコへ、9−(4−ブロモフェニル)−9−フェニルフルオレンを3.2g(8.0mmol)、4−フェニル−ジフェニルアミンを2.0g(8.0mmol)、ナトリウム、tert−ブトキシドを1.0g(10mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)を23mg(0.04mmol)加え、フラスコ内の雰囲気を窒素置換した。この混合物へ、脱水キシレン20mLを加えた。この混合物を、減圧下で攪拌しながら脱気した後、トリ(tert−ブチル)ホスフィン(10wt%ヘキサン溶液)0.2mL(0.1mmol)を加えた。この混合物を、窒素雰囲気下、110℃で2時間加熱撹拌し、反応させた。
【0415】
反応後、この反応混合液にトルエン200mLを加え、この懸濁液をフロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)を通してろ過した。得られたろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、トルエン:ヘキサン=1:4)による精製を行った。得られたフラクションを濃縮し、アセトンとメタノールを加えて超音波をかけたのち、再結晶したところ、目的物の白色粉末を収量4.1g、収率92%で得た。また、上記合成法の反応スキームを下記(x’)に示す。
【0416】
【化63】

【0417】
シリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)でのRf値(展開溶媒、酢酸エチル:ヘキサン=1:10)は、目的物は0.41、9−(4−ブロモフェニル)−9−フェニルフルオレンは0.51、4−フェニル−ジフェニルアミンは0.27だった。
【0418】
核磁気共鳴法(NMR)によって、上記ステップ2で得られた化合物が目的物である4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)であることを確認した。得られた物質の1H−NMRデータを以下に示す。
【0419】
1H−NMR(CDCl,300MHz):δ(ppm)=6.63−7.02(m,3H),7.06−7.11(m,6H),7.19−7.45(m,18H),7.53−7.55(m,2H),7.75(d、J=6.9,2H)。
【0420】
(参考例2)
上記実施例で用いた、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)の合成方法について具体的に説明する。2mDBTPDBq−IIの構造を以下に示す。
【0421】
【化64】

【0422】
≪2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)の合成≫
2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)の合成スキームを(y)に示す。
【0423】
【化65】

【0424】
2L三口フラスコに2−クロロジベンゾ[f,h]キノキサリン5.3g(20mmol)、3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニルボロン酸6.1g(20mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)460mg(0.4mmol)、トルエン300mL、エタノール20mL、2Mの炭酸カリウム水溶液20mLを加えた。この混合物を、減圧下で攪拌することで脱気し、フラスコ内を窒素置換した。この混合物を窒素気流下、100℃で7.5時間攪拌した。室温まで冷ました後、得られた混合物を濾過して白色の濾物を得た。得られた濾物を水、エタノールの順でよくすすいだ後、乾燥させた。得られた固体を約600mLの温トルエンに溶かし、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引濾過し、無色透明の濾液を得た。得られた濾液を濃縮し、約700mLのシリカゲルを使用し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。クロマトグラフィーは、温度約40℃のトルエンを展開溶媒に用いて行った。ここで得られた固体にアセトン・エタノールを加えて超音波を照射した後、生じた懸濁物を濾取して乾燥させたところ、目的物の白色粉末を収量7.85g、収率80%で得た。
【0425】
上記目的物は、温トルエンには比較的可溶であったが、冷めると析出しやすい材料であった。また、アセトン、エタノールなど他の有機溶剤には難溶であった。そのため、この溶解性の差を利用して、上記の様に、簡便な方法で収率よく合成することができた。具体的には、反応終了後、室温に戻して析出させた固体を濾取することで、大部分の不純物を簡便に除くことができた。また、温トルエンを展開溶媒とした、温カラムクロマトグラフィーにより、析出しやすい目的物も簡便に精製することができた。
【0426】
得られた白色粉末4.0gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は、圧力5.0Pa、アルゴン流量5mL/minの条件で、白色粉末を300℃で加熱して行った。昇華精製後、昇華精製装置の反応管において、230℃から240℃程度となる部分に固体状と繊維状に付着した、目的物の白色粉末を3.5g、収率88%で得た。
【0427】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)であることを確認した。得られた物質の1H−NMRデータを以下に示す。
【0428】
1H−NMR(CDCl,300MHz):δ(ppm)=7.45−7.52(m,2H)、7.59−7.65(m,2H)、7.71−7.91(m,7H)、8.20−8.25(m,2H)、8.41(d,J=7.8Hz,1H)、8.65(d,J=7.5Hz,2H)、8.77−8.78(m,1H)、9.23(dd,J=7.2Hz,1.5Hz,1H)、9.42(dd,J=7.8Hz,1.5Hz,1H)、9.48(s,1H)。
【符号の説明】
【0429】
101 第1の電極
102 EL層
103 第2の電極
111 正孔注入層
112 正孔輸送層
113 発光層
114 電子輸送層
115 電子注入層
201 第1の電極
202 EL層
203 第2の電極
211 正孔注入層
212 正孔輸送層
213 第1の発光層
214 分離層
215 第2の発光層
216 電子輸送層
217 電子注入層
301 第1の電極
302 第1のEL層
303 第2のEL層
304 第2の電極
305 電荷発生層
401 基板
402 絶縁層
403 第1の電極
404 第1の隔壁
405 発光領域
406 第2の隔壁
407 EL層
408 第2の電極
410 分離領域
501 基板
503 走査線
505 領域
506 第2の隔壁
508 データ線
509 接続配線
510 入力端子
511a FPC
511b FPC
512 入力端子
601 素子基板
602 画素部
603 駆動回路部(ソース側駆動回路)
604 駆動回路部(ゲート側駆動回路)
605 シール材
606 封止基板
607 引き回し配線
608 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
609 nチャネル型TFT
610 pチャネル型TFT
611 スイッチング用TFT
612 電流制御用TFT
613 陽極
614 絶縁物
615 EL層
616 陰極
617 発光素子
618 空間
801 照明装置
802 照明装置
1100 基板
1101 第1の電極
1102 EL層
1103 第2の電極
1111 正孔注入層
1112 正孔輸送層
1113 発光層
1114 電子輸送層
1115 電子注入層
7100 テレビジョン装置
7101 筐体
7103 表示部
7105 スタンド
7107 表示部
7109 操作キー
7110 リモコン操作機
7200 コンピュータ
7201 本体
7202 筐体
7203 表示部
7204 キーボード
7205 外部接続ポート
7206 ポインティングデバイス
7300 携帯型遊技機
7301 筐体
7302 筐体
7303 連結部
7304 表示部
7305 表示部
7306 スピーカ部
7307 記録媒体挿入部
7308 LEDランプ
7309 操作キー
7310 接続端子
7311 センサ
7312 マイクロフォン
7400 携帯電話機
7401 筐体
7402 表示部
7403 操作ボタン
7404 外部接続ポート
7405 スピーカ
7406 マイク
7500 卓上照明器具
7501 照明部
7502 傘
7503 可変アーム
7504 支柱
7505 台
7506 電源スイッチ
9100 3D映像表示装置
9101 表示部
9102 眼鏡本体
9103a 左目用パネル
9103b 右目用パネル
9104 ケーブル
9113 タイミング発生器
9116 表示制御回路
9117 表示部
9118 ソース線側駆動回路
9119 ゲート線側駆動回路
9122 外部操作手段
9130a 同期信号
9130b 同期信号
9131a 同期信号
9131b 同期信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体。
【化1】

(上記一般式(G1)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。)
【請求項2】
一般式(G2)で表される構造を有する有機金属錯体。
【化2】

(上記一般式(G2)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。)
【請求項3】
一般式(G3)で表される構造を有する有機金属錯体。
【化3】

(上記一般式(G3)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、Lはモノアニオン性の配位子を表す。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。)
【請求項4】
一般式(G4)で表される有機金属錯体。
【化4】

(上記一般式(G4)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、Rは水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、Lはモノアニオン性の配位子を表す。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。)
【請求項5】
一般式(G5)で表される有機金属錯体。
【化5】

(上記一般式(G5)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、Lはモノアニオン性の配位子を表す。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。)
【請求項6】
一般式(G6)で表される有機金属錯体。
【化6】

(上記一般式(G6)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、Rは水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、Lはモノアニオン性の配位子を表す。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。)
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれか一項において前記モノアニオン性の配位子が、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、カルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、フェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、2つの配位元素がいずれも窒素であるモノアニオン性の二座キレート配位子のいずれかである有機金属錯体。
【請求項8】
請求項3乃至請求項7のいずれか一項において、前記モノアニオン性の配位子は、構造式(L1)乃至構造式(L6)のいずれかで表される配位子である有機金属錯体。
【化7】

(式中、R71〜R90は水素、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基、ハロアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、または炭素数1〜4のアルキルチオ基のいずれか一を表す。また、A、A、Aは窒素N、または炭素C−Rを表し、Rは水素、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基、炭素数1〜4のハロアルキル基、またはフェニル基を表す。)
【請求項9】
一般式(G7)で表される有機金属錯体。
【化8】

(上記一般式(G7)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。)
【請求項10】
一般式(G8)で表される有機金属錯体。
【化9】

(上記一般式(G8)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、Rは水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。)
【請求項11】
一般式(G9)で表される有機金属錯体。
【化10】

(上記一般式(G9)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R及びRはそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。)
【請求項12】
一般式(G10)で表される有機金属錯体。
【化11】

(上記一般式(G10)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、Rは水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。なお、アルキル基は、フェニル基で置換されていても良い。また、Zは酸素または硫黄のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。)
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の有機金属錯体において、前記中心金属Mが、イリジウムまたは白金である有機金属錯体。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の有機金属錯体を、発光物質として含む発光素子。
【請求項15】
請求項14に記載の発光素子を備える発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−107003(P2012−107003A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233526(P2011−233526)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】