説明

有機金属錯体に基づいたイオン対形成柔軟塩、及び有機発光ダイオードにおけるそれらの応用

有機金属柔軟塩化合物を提供する。特に、これらの化合物は、単核Ir系柔軟塩を含む。これらの化合物は、有機発光ダイオード(OLED)及び発光セル(LEC)に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年11月2日に出願した米国仮出願番号No.61/280,338号に対する優先権を主張し、その出願の開示はその全体を参照により本明細書に明確に援用する。
【0002】
特許請求の範囲に記載した発明は、共同の大学・企業研究契約に関わる1つ以上の以下の団体:ミシガン大学評議員会、プリンストン大学、サザン・カリフォルニア大学、及びユニバーサル・ディスプレイ・コーポレーションにより、1つ以上の団体によって、1つ以上の団体のために、及び/又は1つ以上の団体と関係して行われた。上記契約は、特許請求の範囲に記載された発明がなされた日及びそれ以前に発効しており、特許請求の範囲に記載された発明は、前記契約の範囲内で行われた活動の結果としてなされた。
【0003】
本発明は、有機発光ダイオード(organic light emitting diode, OLED)及び発光セル(light emitting cell, LEC)に用いることができる新規な物質群に関する。特に、本発明は、単核Ir系柔軟塩(ソフト塩, soft salt)とOLED及びLECにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
有機物質を用いるオプトエレクトロニクスデバイスは、多くの理由によりますます望ましいものとなってきている。そのようなデバイスを作るために用いられる多くの物質はかなり安価であり、そのため有機オプトエレクトロニクスデバイスは、無機デバイスに対してコスト上の優位性について潜在力をもっている。加えて、有機物質固有の特性、例えばそれらの柔軟性は、それらを柔軟な基材上への製作などの特定用途に非常に適したものにしうる。有機オプトエレクトロニクスデバイスの例には、有機発光デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池、及び有機光検出器が含まれる。OLEDについては、有機物質は、従来の物質に対して性能上優位性をもちうる。例えば、有機発光層が発光する波長は、一般に、適切なドーパントで容易に調節することができる。
【0005】
OLEDは、そのデバイスを横切って電圧を印加した場合に光を発する薄い有機膜(有機フィルム)を用いる。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、及びバックライトなどの用途で用いるためのますます興味ある技術となってきている。いくつかのOLEDの物質と構成が、米国特許第5,844,363号明細書、同6,303,238号明細書、及び同5,707,745号明細書に記載されており、これらの明細書はその全体を参照により本明細書に援用する。
【0006】
燐光発光分子の一つの用途はフルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイのための工業規格は、「飽和」色といわれる特定の色を発光するように適合された画素(ピクセル)を要求している。特に、これらの規格は、飽和の赤、緑、及び青の画素を必要としている。色はCIE座標を用いて測定でき、CIE座標は当分野で周知である。
【0007】
緑色発光分子の一例は、Ir(ppy)と表されるトリス(2-フェニルピリジン)イリジウムであり、これは以下の式Iの構造を有する。
【化1】

【0008】
この式及び本明細書の後の図で、窒素から金属(ここではIr)への供与結合は直線で表す。
【0009】
本明細書で用いるように、「有機」の用語は、有機オプトエレクトロニクスデバイスを製作するために用いることができるポリマー物質並びに小分子有機物質を包含する。「小分子(small molecule)」とは、ポリマーではない任意の有機物質をいい、「小分子」は、実際は非常に大きくてもよい。小分子はいくつかの状況では繰り返し単位を含んでもよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いることは、分子を「小分子」の群から排除しない。小分子は、例えばポリマー主鎖上のペンダント基として、あるいは主鎖の一部として、ポリマー中に組み込まれてもよい。小分子は、コア残基上に作り上げられた一連の化学的殻からなるデンドリマーのコア残基として働くこともできる。デンドリマーのコア残基は、蛍光性又は燐光性小分子発光体であることができる。デンドリマーは「小分子」であることができ、OLEDの分野で現在用いられている全てのデンドリマーは小分子であると考えられる。
【0010】
本明細書で用いるように「トップ」は、基材から最も遠くを意味する一方で、「ボトム」は基材に最も近いことを意味する。第一の層が第二の層の「上に配置される」と記載した場合は、第一の層は基材から、より遠くに配置される。第一の層が第二の層と「接触している」と特定されていない限り、第一の層と第二の層との間に別な層があってよい。例えば、カソードとアノードとの間に様々な有機層があったとしても、カソードはアノードの「上に配置される」と記載できる。
【0011】
本明細書で用いるように、「溶液処理(加工)可能」とは、溶液もしくは懸濁液の形態で、液体媒体中に溶解され、分散され、又は液体媒体中で輸送され、及び/又は液体媒体から堆積されうることを意味する。
【0012】
配位子が発光物質の光活性特性に直接寄与していると考えられる場合は、その配位子は「光活性」ということができる。配位子が発光物質の光活性特性に寄与していないと考えられる場合は、配位子は「補助」ということができるが、補助配位子は光活性配位子の特性を変えうる。
【0013】
本明細書で用いるように、かつ当業者によって一般に理解されているように、第一の「最高被占分子軌道」(HOMO)又は「最低空分子軌道」(LUMO)のエネルギー準位は、その第一のエネルギー準位が真空のエネルギー準位により近い場合には、第二のHOMO又はLUMOよりも「大きい」あるいは「高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は真空準位に対して負のエネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつIPに対応する(より小さな負のIP)。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつ電子親和力(EA)に対応する(より小さな負のEA)。上(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位図の上では、物質のLUMOエネルギー準位はその同じ物質のHOMOエネルギー準位よりも高い。「より高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位よりも、そのような図のトップの近くに現れる。
【0014】
本明細書で用いるように、また当業者によって一般に理解されるように、第一の仕事関数は、その第一の仕事関数がより高い絶対値を有する場合には、第二の仕事関数よりも「大きい」あるいは「高い」。仕事関数は通常、真空準位に対して負の値として測定されるので、このことは「より高い」仕事関数は、より負であることを意味する。上(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位図の上では、「より高い」仕事関数は真空準位から下向きの方向へさらに離れて図示される。したがって、HOMO及びLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる慣例に従う。
【0015】
OLEDについてのさらなる詳細及び上述した定義は、米国特許第7,279,704号明細書に見ることができ、その全体を参照により本明細書に援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献4】米国特許第7,279,704号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998
【非特許文献2】Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
有機金属柔軟塩化合物(有機金属ソフト塩化合物)を提供し、その化合物は下記式で表される。
【数1】

【0019】
【数2】

は、a個の正電荷をもつ式Cを有する有機金属カチオンである。
【0020】
【数3】

は、b個の負電荷をもつ式Cを有する有機金属アニオンである。
【0021】
は(Lであり、式Cは(Lである。M及びMのそれぞれは独立に遷移金属又はランタニドである。L及びLのそれぞれは独立に、単座、二座、三座、又は多座配位子である。f及びgのそれぞれは、ビス又はトリス配位子配位を表していてもよい。X及びXは任意の数のキレート配位子又は補助配位子を表す。
【0022】
【数4】

である。
【0023】
m及びnは1〜20の整数である。
【0024】
一つの側面では、上述したとおりこの化合物は式:
【数5】

を有する。
【0025】
一つの側面では、M及びMのそれぞれはIrである。別の側面では、M及びMのそれぞれはIr(III)である。
【0026】
一つの側面では、この有機金属カチオンは下記式:
【化2】

を有する。
【0027】
別の側面では、上記有機金属アニオンは下記式:
【化3】

を有する。
【0028】
【化4】

のそれぞれは独立に、窒素原子及びsp混成炭素原子を介して金属に配位している芳香族もしくはヘテロ芳香族の複数の環の結合対を表す。
【0029】
一つの側面では、
【化5】

は、
【化6】

である。
【0030】
A及びBはそれぞれ独立に、5又は6員の芳香族又はヘテロ芳香族環である。A−Bは環Aの窒素原子と環Bのsp混成炭素原子を介して金属に配位している芳香族ないしヘテロ芳香族環の結合対を表す。R及びRのそれぞれは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換基を表すことができる。R及びR置換基のそれぞれは独立に、水素、重水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールからなる群から選択される。2つの隣接する置換基は環を形成していてもよい。
【0031】
【化7】

のそれぞれは独立に、下記のものからなる群から選択される。
【0032】
【化8】

【0033】
、R、及びRのそれぞれは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換基を表すことができる。R、R、及びR置換基のそれぞれは独立に、水素、重水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールからなる群から選択される。2つの隣接する置換基は環を形成していてもよい。
【0034】
及びLのそれぞれは独立に、以下のものからなる群から選択される。
【0035】
【化9】

【0036】
【化10】

【0037】
【化11】

【0038】
好ましくは、L及びLのそれぞれは独立に以下のものからなる群から選択される。
【0039】
【化12】

【0040】
一つの側面では、錯体中の有機金属カチオンの全て及び有機金属アニオンの全ては同じものである。
【0041】
なお別の側面では、有機金属アニオンは以下のものからなる群から選択される。
【0042】
【化13】

【0043】
さらなる側面では、有機金属カチオンは以下のものからなる群から選択される。
【0044】
【化14】

【0045】
【化15】

【0046】
上記化合物の具体例を提供する。一つの側面では、上記化合物は以下のものからなる群から選択される。
【0047】
【化16】

【0048】
さらに、有機発光デバイスを含めた第一のデバイスを提供する。有機発光デバイスは、アノード、カソード、及びそのアノードとカソードとの間に配置された有機層を含む。その有機層はさらに下記式:
【数6】

を含む化合物を含む。
【0049】
【数7】

は、a個の正電荷をもつCを有する有機金属カチオンである。
【0050】
【数8】

は、b個の負電荷をもつCを有する有機金属アニオンである。
【0051】
は(Lであり、式Cは(Lである。M及びMのそれぞれは独立に遷移金属又はランタニドである。L及びLのそれぞれは独立に、単座、二座、三座、又は多座配位子である。f及びgのそれぞれは、ビス又はトリス配位子配位を表すことができる。X及びXは任意の数のキレート配位子又は補助配位子を表す。
【0052】
【数9】

である。
【0053】
m及びnは1〜20の整数である。
【0054】
一つの側面では、上述したとおりこの化合物は式:
【数10】

を有する。
【0055】
一つの側面では、M及びMのそれぞれがIrである。別の側面では、M及びMのそれぞれがIr(III)である。
【0056】
一つの側面では、この有機金属カチオンは下記式:
【化17】

を有する。
【0057】
別の側面では、上記有機金属アニオンは下記式:
【化18】

を有する。
【0058】
【化19】

のそれぞれは独立に、窒素原子及びsp混成炭素原子を介して金属に配位している芳香族ないしヘテロ芳香族環の結合対を表す。
【0059】
一つの側面では、
【化20】

は、
【化21】

である。
【0060】
A及びBはそれぞれ独立に5又は6員の芳香族又はヘテロ芳香族環である。A−Bは環Aの窒素原子と環Bのsp混成炭素原子を介して金属に配位している芳香族ないしヘテロ芳香族環の結合対を表す。R及びRのそれぞれは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換基を表すことができる。R及びR置換基のそれぞれは独立に、水素、重水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールからなる群から選択される。2つの隣接する置換基は環を形成していてもよい。
【0061】
【化22】

のそれぞれは独立に、下記のものからなる群から選択される。
【0062】
【化23】

【0063】
、R、及びRのそれぞれは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換基を表すことができる。R、R、及びR置換基のそれぞれは独立に、水素、重水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールからなる群から選択される。2つの隣接する置換基は環を形成していてもよい。
【0064】
及びLのそれぞれは独立に、以下のものからなる群から選択される。
【0065】
【化24】

【0066】
【化25】

【0067】
好ましくは、L及びLのそれぞれは独立に以下のものからなる群から選択される。
【0068】
【化26】

【0069】
一つの側面では、錯体中の有機金属カチオンの全て及び有機金属アニオンの全ては同じものである。
【0070】
なお別の側面では、有機金属アニオンは以下のものからなる群から選択される。
【0071】
【化27】

【0072】
さらなる側面では、有機金属カチオンは以下のものからなる群から選択される。
【0073】
【化28】

【0074】
デバイスの具体例を提供する。一つの側面では、上記化合物は以下のものからなる群から選択される。
【0075】
【化29】

【0076】
【化30】

【0077】
一つの側面では、有機層は蒸着によって堆積される。
【0078】
別の側面では、有機金属アニオン及び有機金属カチオンのうちの一つが、他方よりも低い酸化電位及びより小さな負(負の程度が少ない)の還元電位の両方を有する。言い換えると、上記ソフト塩(柔軟塩)のイオンのうちの一種、そのカチオン又はアニオンのいずれかが、正孔と電子の両方をトラップし且つ輸送する。
【0079】
なお別の側面では、PVKがジクロロベンゼンと混合されて、上記有機層を堆積させる前に堆積される。
【0080】
さらなる側面では、BCPを含む膜が上記有機層の上に堆積される。
【0081】
一つの側面では、第一のデバイスは有機発光デバイスである。別の側面では、その第一のデバイスは有機発光セルである。
【0082】
上記有機金属柔軟塩(soft salt、ソフト塩)化合物を製造する方法も提供する。この方法は、a個の正電荷をもつ下記式:
【数11】

を有する有機金属カチオンを、b個の負電荷をもつ下記式:
【数12】

を有する有機金属アニオンと反応させることによって、下記式:
【数13】

を有する有機金属錯体を得る工程を含む。
【0083】
は(Lであり、式Cは(Lである。M及びMのそれぞれは独立に遷移金属又はランタニドである。L及びLのそれぞれは独立に、単座、二座、三座、又は多座配位子である。f及びgのそれぞれは、ビス又はトリス配位子配位を表すことができる。X及びXは任意の数のキレート配位子又は補助配位子を表す。
【0084】
【数14】

である。
【0085】
m及びnは1〜20の整数である。
【0086】
一つの側面では、上記の有機金属カチオン及び有機金属アニオンは、
【化31】

を中性の補助配位子及びアニオン性補助配位子と反応させることによって得られる。
【0087】
別の側面では、有機金属錯体を得るための反応の前に、有機金属カチオン及び有機金属アニオンを酸化及び還元して中性の金属錯体を形成させる。
【0088】
なお別の側面では、上記の中性金属錯体を基板上に組み合わせて熱真空蒸着させ、そこで反応が完了して上記の有機金属錯体が得られる。
【0089】
さらなる側面では、この方法は更に、第一の電極をもたらす工程、その第一の電極上に上記有機金属カチオンと上記有機金属アニオンを堆積させる工程、及び第二の電極を堆積させる工程を含む。
【0090】
一つの側面では、第一の電極はアノードであり、第二の電極はカソードである。
【0091】
有機金属柔軟塩化合物を製造する別の方法も提供する。この方法は、下記式:
【数15】

を有する有機金属カチオンを還元して中性にする工程、
下記式:
【数16】

を有する有機金属アニオンを酸化して中性にする工程、及び
その2つの中性種を反応させて下記式:
【数17】

を含む有機金属錯体を形成させる工程、を含む。
【0092】
は(Lであり、式Cは(Lである。M及びMのそれぞれは独立に遷移金属又はランタニドである。L及びLのそれぞれは独立に、単座、二座、三座、又は多座配位子である。f及びgのそれぞれは、ビス又はトリス配位子配位を表すことができる。X及びXは任意の数のキレート配位子又は補助配位子を表す。
【0093】
【数18】

である。
【0094】
m及びnは1〜20の整数である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は有機発光デバイスを示す。
【図2】図2は、別個の電子輸送層をもたない倒置型有機発光デバイスを示す。
【図3】図3は、ソフト塩の例の構造を示す。
【図4】図4は、(a)C2C1及びA3Na;(b)異なる濃度でのC2A3、のフォトルミネッセンススペクトルを示す(全て脱気したアセトニトリル中)。
【図5】図5は、消光研究のスターン−ボルマー・プロットと、Kの数値フィッティングを示す。
【図6】図6は、OLEDに用いた物質のエネルギー準位を示す。
【図7】図7は、様々な柔軟塩(ソフト塩)を用いるデバイスのEQE(左のグラフ)とJ−V特性(右のグラフ)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0096】
[詳細な説明]
一般に、OLEDは、アノードとカソードとの間に配置され且つそれらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が流された場合、有機層(1又は複数)にアノードは正孔を注入し、カソードは電子を注入する。注入された正孔と電子はそれぞれ反対に帯電した電極に向かって移動する。電子と正孔が同じ分子上に局在する場合、励起エネルギー状態を有する局在化された電子−正孔対である「励起子」が形成される。励起子が発光機構によって緩和するときに光が発せられる。いくらかの場合には、励起子はエキシマー又はエキシプレックス上に局在化されうる。非放射機構、例えば、熱緩和も起こりうるが、通常は好ましくないと考えられる。
【0097】
初期のOLEDは、一重項状態から光を発する(「蛍光」)発光性分子を用いており、例えば、米国特許第4,769,292号明細書(この全体を参照により援用する)に記載されているとおりである。蛍光発光は、一般に、10ナノ秒よりも短いタイムフレームで起こる。
【0098】
より最近、三重項状態から光を発する(「燐光」)発光物質を有するOLEDが実証されている。Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998 (“Baldo-I”);
及び、Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999) (“Baldo-II”)、これらを参照により全体を援用する。燐光は、米国特許第7,279,704号明細書の第5〜6欄に、より詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0099】
図1は有機発光デバイス100を示している。この図は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子阻止層130、発光層135、正孔阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、およびカソード160を含み得る。カソード160は、第一導電層162および第二導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記載した層を順次、堆積させることによって作製できる。これらの様々な層の特性及び機能、並びに例示物質は、米国特許第7,279,704号明細書の第6〜10欄により詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0100】
これらの層のそれぞれについてのより多くの例が得られる。例えば、可撓性且つ透明な基材−アノードの組み合わせが米国特許第5,844,363号明細書に開示されており、参照により全体を援用する。p型ドープ正孔輸送層の例は、50:1のモル比で、F−TCNQでドープしたm−MTDATAであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。発光物質及びホスト物質の例は、Thompsonらの米国特許第6,303,238号明細書に開示されており、その全体を参照により援用する。n型ドープ電子輸送層の例は、1:1のモル比でLiでドープされたBPhenであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。米国特許第5,703,436号明細書及び同5,707,745号明細書(これらはその全体を参照により援用する)は、上に重ねられた透明な電気導電性のスパッタリングによって堆積されたITO層を有するMg:Agなどの金属の薄層を有する複合カソードを含めたカソードの例を開示している。阻止層の理論と使用は、米国特許第6,097,147号明細書及び米国特許出願公開第2003/0230980号公報に、より詳細に記載されており、その全体を参照により援用する。注入層の例は、米国特許出願公開第2004/0174116号公報に提供されており、その全体を参照により援用する。保護層の記載は米国特許出願公開第2004/0174116号公報にみられ、その全体を参照により援用する。
【0101】
図2は倒置型(inverted)OLED200を示している。このデバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、およびアノード230を含む。デバイス200は記載した層を順に堆積させることによって製造できる。最も一般的なOLEDの構成はアノードの上方に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下方に配置されたカソード215を有するので、デバイス200を「倒置型」OLEDとよぶことができる。デバイス100に関して記載したものと同様の物質を、デバイス200の対応する層に使用できる。図2は、デバイス100の構造からどのようにいくつかの層を省けるかの1つの例を提供している。
【0102】
図1および2に例示されている簡単な層状構造は非限定的な例として与えられており、本発明の実施形態は多様なその他の構造と関連して使用できることが理解される。記載されている具体的な物質および構造は事実上例示であり、その他の物質および構造も使用できる。設計、性能、およびコスト要因に基づいて、実用的なOLEDは様々なやり方で上記の記載された様々な層を組み合わせることによって実現でき、あるいは、いくつかの層は完全に省くことができる。具体的に記載されていない他の層を含むこともできる。具体的に記載したもの以外の物質を用いてもよい。本明細書に記載されている例の多くは単一の物質を含むものとして様々な層を記載しているが、物質の組合せ(例えばホストおよびドーパントの混合物、または、より一般的には混合物)を用いてもよいことが理解される。また、層は様々な副層(sublayer)を有してもよい。本明細書において様々な層に与えられている名称は、厳格に限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し且つ発光層220に正孔を注入するので、正孔輸送層として、あるいは正孔注入層として説明されうる。一実施形態において、OLEDは、カソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有するものとして説明できる。この有機層は単一の層を含むか、または、例えば図1および2に関連して記載したように様々な有機物質の複数の層をさらに含むことができる。
【0103】
具体的には説明していない構造および物質、例えばFriendらの米国特許第5,247,190号(これはその全体を参照により援用する)に開示されているようなポリマー物質で構成されるOLED(PLED)、も使用することができる。さらなる例として、単一の有機層を有するOLEDを使用できる。OLEDは、例えば、Forrestらの米国特許第5,707,745号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているように積み重ねられてもよい。OLEDの構造は、図1および2に示されている簡単な層状構造から逸脱していてもよい。例えば、基板は、光取出し(out-coupling)を向上させるために、Forrestらの米国特許第6,091,195号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているメサ構造、および/またはBulovicらの米国特許第5,834,893号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているピット構造などの、角度の付いた反射表面を含みうる。
【0104】
特に断らないかぎり、様々な実施形態の層のいずれも、何らかの適切な方法によって堆積されうる。有機層については、好ましい方法には、熱蒸着(thermal evaporation)、インクジェット(例えば、米国特許第6,013,982号および米国特許第6,087,196号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、有機気相成長(organic vapor phase deposition、OVPD)(例えば、Forrestらの米国特許第6,337,102号(その全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびに有機気相ジェットプリンティング(organic vapor jet printing、OVJP)による堆積(例えば、米国特許出願第10/233,470号(これはその全体を参照により援用する)に記載されている)が含まれる。他の適切な堆積方法には、スピンコーティングおよびその他の溶液に基づく方法が含まれる。溶液に基づく方法は、好ましくは、窒素または不活性雰囲気中で実施される。その他の層については、好ましい方法には熱蒸着が含まれる。好ましいパターニング方法には、マスクを通しての蒸着、圧接(cold welding)(例えば、米国特許第6,294,398号および米国特許第6,468,819号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびにインクジェットおよびOVJDなどの堆積方法のいくつかに関連するパターニングが含まれる。その他の方法も用いることができる。堆積される物質は、それらを特定の堆積方法に適合させるために改変されてもよい。例えば、分枝した又は分枝していない、好ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキルおよびアリール基などの置換基が、溶液加工性を高めるために、小分子に用いることができる。20個又はそれより多い炭素を有する置換基を用いてもよく、3〜20炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する物質は対称構造を有するものよりも良好な溶液加工性を有しうるが、これは、非対称物質はより小さな再結晶化傾向を有しうるからである。デンドリマー置換基は、小分子が溶液加工を受ける能力を高めるために用いることができる。
【0105】
本発明の実施形態により製造されたデバイスは多様な消費者製品に組み込むことができ、これらの製品には、フラットパネルディスプレイ、コンピュータのモニタ、テレビ、広告板、室内もしくは屋外の照明灯および/または信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明な(fully transparent)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話機、携帯電話、携帯情報端末(personal digital assistant、PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁面(large area wall)、映画館またはスタジアムのスクリーン、あるいは標識が含まれる。パッシブマトリクスおよびアクティブマトリクスを含めて、様々な制御機構を用いて、本発明にしたがって製造されたデバイスを制御できる。デバイスの多くは、18℃から30℃、より好ましくは室温(20〜25℃)などの、人にとって快適な温度範囲において使用することが意図されている。
【0106】
本明細書に記載した物質及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有しうる。例えば、その他のオプトエレクトロニクスデバイス、例えば、有機太陽電池及び有機光検出器は、これらの物質及び構造を用いることができる。より一般には、有機デバイス、例えば、有機トランジスタは、これらの物質及び構造を用いることができる。
【0107】
ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロ環基、アリール、芳香族基、及びヘテロアリールの用語は、当分野で公知であり、米国特許第7,279,704号明細書の第31〜32欄で定義されており、これを参照により援用する。
【0108】
[有機電子デバイスにおける柔軟塩の応用]
【0109】
本明細書に記載した錯体は、有機発光ダイオード(OLED)及び発光セル(LEC)に用いることができる新しい物質群である。それらを応用する可能性のある方法には、発光層としての添加物なしの層、ドーパント及びホストとしての用途が含まれる。
【0110】
上記の金属錯体に基づく柔軟塩の基本構造は、
【化32】

である。
【0111】
Mは遷移金属又はランタニドのいずれかであることができ、Lはいずれかの数の単座、二座、三座、あるいは多座配位子であり、nは2つ又は3つの配位子配位を表す。Xはいずれかの数のキレート配位子又は補助配位子を表す。h〜hの合計は、hi+1〜hの合計と等しい。
【0112】
ヘテロ接合有機発光ダイオード(OLED)の報告以来、多くの量の研究上の興味がこの分野に引きつけられてきた。(Tangら,Organic electroluminescent diodes. Appl. Phys. Lett. 1987, 51(12), 913-915)。リン光ドーパントが導入されたときに、OLEDの効率において著しい進展があった。例えば、Kwong, R.ら,Efficient saturated red organic light emitting devices based on phosphorescent platinum (II) porphyrins. Chemistry of Materials 1999, 11(12), 3709-3713; Adachi, C.ら,High-Efficiency Organic Electrophosphorescent Devices with Tris(2-phenypyridine)iridium Doped into Electron Transporting Materials. Appl. Phys. Lett. 2000, 77(6), 904-906; Baldo, M. A.ら,Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices. Nature 1998, 395, 151-154; Baldo, M. A.ら,Very High Efficiency Green Organic Light-Emitting Devices Based on Electrophosphorescence. Appl. Phys. Lett. 1999, 75(1), 4-6; Adachi, C.ら,Nearly 100% internal phosphorescence efficency in an organic light emitting device. J. Appl. Phys. 2001, 90(10), 5048-5051; Ikai, M.ら,Highly efficient phosphorescence from organic light-emitting d
evices with an exciton-block layer. Applied Physics Letters 2001, 79(2), 156-158; Markham, J. P. J.ら,High-efficiency green phosphorescence from spin-coated single-layer dendrimer light-emitting diodes. Applied Physics Letters 2002, 80(15), 2645-2647。最も成功したリン光発光体の中にはシクロメタル化Ir錯体があり、それは多くの有用な特徴によるものであり、それには強いスピン軌道カップリングが含まれ、それが1〜10μsecの範囲のリン光寿命(Baldo, M. A.ら,Very High Efficiency Green Organic Light-Emitting Devices Based on Electrophosphorescence. Appl. Phys. Lett. 1999, 75(1), 4-6)、室温での高いリン光効率(Sajoto, T.ら,Temperature Dependence of Blue Phosphorescent Cyclometallated Ir (III) Complexes. Journal of the American Chemical Society 2009, 131(28), 9813-9822)、及び可視スペクトルにわたる発光エネルギーの良好な色の調節可能性(Sajoto, T.ら,Blue and Near-UV Phosphorescence from Iridium Complexes with Cyclometallated Pyrazolyl or N-Heterocyclic Carbene Ligands. Inorg. Chem. 200S. 44(22), 7992-8003; Lamansky, S.ら,Highly Phosphorescent Bis-Cyclometallated Iridium Complexes: Synthesis, Photophysical Characterization, and Use in Organic L
ight Emitting Diodes. J. Am. Chem. Soc. 2001, 123(18), 4304-4312)をもたらす。中性及びイオン性Ir系錯体の両方とも、これらの光物理特性を有する。(Lowry, M. S.ら,Accelerated luminophore discovery through combinatorial synthesis. Journal of the American Chemical Society 2004, 126(43), 14129-14135; Lo, K. K. W.ら,Novel luminescent cyclometallated iridium (III) diimine complexes that contain a biotin moiety. Organometallics 2004, 23(13), 3108-3116)。中性のIr系錯体は、明確なキャリア輸送/阻止層及び発光層からなるOLED構造中に用いられてきている。(Tang, C. W.ら,Electroluminescence of doped organic thin films. J. Appl. Phys. 1989, 65(9), 3610-3616)。カチオン性のIr錯体は発光電気化学セル(LEC)に用いられてきており、このセルは典型的には、キャリア輸送及び発光の両方を行う単一の活性層からなる一方で、アニオン性のIr錯体の研究は主にそれらの光物性に焦点が当てられてきている。(Slinker, J. D.ら,Green electroluminescence from an ionic iridium complex. Applied Physics Letters 200S, 86(17), 173506; Tamayo, A. B.ら,Cationic Bis-cyclometallated Iridium(III) Diimine Complexes and Their Use in Efficient Blue, Green, and Red Electroluminescent Devices. Inorg. Chem. 200S, 44(24), 8723-8732; Graber, S.ら,A Supramolecularly-Caged Ionic Iridium(III) Complex Yielding Bright and Very Stable Solid-State Light-Emitting Electrochemical Cells. Journal of the American Chemical Society 2008, 130(4S), 14944-14945; Su, U. C.ら,Decreased Turn-On Times of Single Component Light-Emitting Electrochemical Cells by Tethering an Ionic Iridium Complex with Imidazolium Moieties. Chemistry-an Asian Journal 2008, 3(11), 1922-1928)。
【0113】
「柔軟塩(ソフト塩)」は、有機金属化合物のみからなり、これらの物質の対イオンとして通常存在するハロゲン化物(ハライド)、アルカリ金属もしくはその他のイオンをもたないイオン性物質を説明するために導入された用語である。(Green, M. L. H.ら,New Organometallic solids - synthesis and solid-state properties of salts of redoxactive organometallic clusters, J. Chem. Soc. Chem. Commun. 1987, (24), 1811-1814)。これらの塩類は「柔軟(ソフト)」と考えられ、なぜなら、それらの成分イオンは、簡単なイオンよりも顕著に大きな半径をもち、格子エネルギーがより低くなることが予測され、そのイオン類は主にファン・デル・ワールス力を通して結合しているからである。柔軟塩(ソフト塩)は、結晶形態で容易に得ることができ(Basolo, F.ら,Stabilization of metal complexes by large counter-ions, Coord. Chem. Rev. 1986, 3(2), 213-223; Braga, D.; Grepioni, F., Crystal construction and molecular interplay in solid ferrocene, nickelocene, and ruthenocene. Organometallics 1992, 11(2), 711-718)、いろいろな金属をもつ様々なクラスターイオン及び柔軟塩、例えば、Fe26、Cr27、Mo28、Os29、及びRu29が研究されてきている。本明細書中で議論される化合物の一つに関連するIr系柔軟塩(ソフト塩)の結晶構造も最近報告された(De Cola, L.ら,私信、投稿済原稿)。
【0114】
いくらか小さなイオン、例えば、Na又はCl、あるいは有機金属ではないイオン、例えば、電荷をもつ大きな有機分子、を有する柔軟塩を用いることも望ましい可能性がある。これが、本明細書に開示した本発明の化合物の式を記載するために「含む」の語を用いることによって本明細書に記載した概念である。
【0115】
これらの化合物は有機金属カチオン及びその電荷と釣り合わせるのに充分なアニオンを含むこともできる。同様に、これらの化合物は、有機金属アニオンとその電荷と釣り合わせるのに充分なカチオンを含むことができる。
【0116】
単核Ir系柔軟塩は調べられておらず、OLED用途において広範に探索されている中性物質に対する、OLEDにおける興味ある代替物である。これらの柔軟塩は、メタセシス反応によって容易に合成することができ、溶液中での二重発光、両極性電荷伝導、及びHOMO及びLUMOエネルギー準位の設定における良好な柔軟性を示し、それは反対に荷電したイオン類中の2種の独立した機能成分によるものである。ここでは、我々は、3つの柔軟塩(ソフト塩)のついての合成、特性分析、及びOLED研究を示す。我々は、柔軟塩内でのエネルギー準位の配列はそのイオン類のそれぞれのための配位子選択によって調節することができ、このエネルギー配列がOLEDの性能を制御する有用なパラメータであることを示す。
【0117】
イオン性Ir錯体は、還流している溶媒中、ジクロロ架橋Ir(III)ダイマーと過剰な配位子とから合成された。得られるIr錯体の合計の電荷は、選択した補助配位子に左右される。例えば、シアン化物イオンが存在する場合には、2つのアニオンがIrと配位して安定なアニオン性Ir錯体を生成する。他方、中性配位子、例えばジイミン及びイソシアニドを用いた場合には、カチオン性錯体を得ることができる。水中で2種の反対に荷電したIr錯体を混合することによって、柔軟塩(ソフト塩)がメタセシス反応によって中程度の収率で得られた。本明細書で試験した3種の柔軟塩は、2種の異なるカチオンと3種の異なるアニオンとで構成されている。これらの5種のイオンはそれらの電荷に基づいて略され、すなわちカチオンはC、アニオンはAと、それに続く数によって異なるイオンを区別する。イオン類及び柔軟塩の構造、並びにそれらに対応する頭字語を図3に示している。
【0118】
〔柔軟塩のための、溶媒を用いない堆積方法〕
柔軟塩の成分イオン、すなわちカチオン及びアニオンはメタセシス反応の前に酸化され及び還元されて、安定且つ昇華性の可能性のある中性のメタル化錯体を形成することができる。これらの中性錯体が減圧下で一緒に熱蒸着される場合に、それらは基板上で反応し、それらの本来の原子価に戻り、そうして柔軟塩を形成する。この蒸着法は、非昇華性の柔軟塩を蒸着することに等しい。膜中の各成分の量を制御することによって、様々なタイプの電荷をもつ膜を得ることができる。1:1の比は、純粋な柔軟塩の膜をもたらしうる。一つの成分又は他の成分を過剰に用いて、一緒にした柔軟塩及び中性ドーパント膜の膜である膜を作ることもできる。この方法の一つの利点は、全工程中で溶媒を排除することであり、これは品質の高いデバイスを得るために有用であり、なぜなら柔軟塩(ソフト塩)は多孔質の格子を作る傾向があり、その格子に溶媒分子がトラップされて除去するのが困難なおそれがあるからである。減圧下での蒸着はその場で純粋な柔軟塩を作り、膜の品質をも確かなものにする。
【0119】
【化33】

【0120】
いくつかのIr系物質を、それぞれ、2つのカチオン性及び3つのアニオン性のIr錯体のハライドとアルカリ金属塩との間のメタセシス反応によって合成した。得られた「柔軟塩(ソフト塩)」錯体は、有機金属カチオンと有機金属アニオンとから構成されている。これらの化合物の電気化学及び光物理特性解析も本明細書に示す。この柔軟塩のレドックスポテンシャル(酸化還元電位)は、その2種のイオンのうち最も低いエネルギーポテンシャルによって決定されうる。溶液中でのイオン間のエネルギー移動が観測され、拡散支配速度で起こることがわかった。さらに、有機LEDを、さまざまな柔軟塩を使い、アノード/PVK/柔軟塩/BCP/カソードという簡単な構造を用いて作った。この柔軟塩はデバイス中で様々に機能し、0.2%〜4.7%の最大外部量子効率(EQE)をもたらした。柔軟塩中の2種のイオンの間の内部エネルギー配列は、異なるEQEの結果の原因でありうる。Sajoto, T.ら,Temperature Dependence of Blue Phosphoscent Cyclometallated Ir(III) Complexes. Journal of the American Chemical Society 2009, 131(28), 9813-9822。理論に縛られないが、高いEQEを達成するためには、イオンのうちの1種のHOMO及びLUMO値が別のイオンのそれらの間に入るべきである(すなわち、1種のイオンが最も低い酸化電位と最もマイナスの程度の小さな還元電位の両方を有している)と考えられる。
【0121】
〔光物理及び消光研究〕
イオン類及び柔軟塩の発光データを表1にまとめてある。脱気したアセトニトリル溶液中でのイオンC2及びA3のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを、例として図4(a)に示している。A3の発光(これは約450nmにピークがある)は、キレートしている配位子中の電気求引性フッ素によって青色シフトしており、良く分解された振電構造をもっている。この構造化された発光は、シクロメタル化配位子上の三重項配位子中心(CLC)遷移の結果である(Li, J.ら,Synthetic control of excited-state properties in cyclometallated Ir(III) complexes using ancillary ligands. Inorganic Chemistry 2005, 44(6), 1713-1727)。残りのイオンは、C2によって例示される、幅広く特徴のないスペクトルを示す。単一の配位子錯体C1、A1、及びA2は全てが金属から配位子への電荷移動(MLCT)状態から発光することが予測されると同時に、C^N配位子の違いはピーク位置のシフトの原因である。(Columbo, M.G.ら,Facial Tris Cyclometallated Rh3+ And Ir3+ Complexes - Their Synthesis, Structure, And Optical Spectroscopic Properties. Inorganic Chemistry 1994, 33(3), 545-550; Lamansky, S.ら,Synthesis and Characterization of Phosphorescent Cyclometallated Iridium Complexes. Inorg. Chem. 2001, 40(7), 1704-1711)。混合配位子錯体C2は、C1及びAtと比較して顕著な赤色シフトした発光を示したが、なぜなら、Ir→トリルピリジンに代わってIr→ビピリジンCT遷移が、この場合の最も低いエネルギー遷移になるからである。(Columbo, M.G.ら,Competition Between Ligand Centered And Charge-Transfer Lowest Excited-States In Bis Cyclometallated Rh3+ And Ir3+ Complexes. Electronic And Vibronic Spectra Of Transition Metal Complexes I, 1994; Vol. 171, pp 143-171)。
【0122】
柔軟塩(ソフト塩)のPLは、興味深い濃度依存性を示し、これはイオン間のエネルギー移動の結果である。C2A3は2種のイオンからの明確なスペクトルをもつ良い例として役に立ち、異なる濃度において測定される3つのPLスペクトルを図4(b)に比較している。3つのスペクトル全ては370nmの励起波長を用いて得られ、これはA3の吸収に対応する。このスペクトルに基づいて、2つのピークの比は濃度に応じて大きく変化し、これはイオン間のエネルギー移動の程度が異なることを示している。10−5Mの比較的低い濃度では、発光は主にアニオンからである。この高エネルギー青色発光は、A3発光の消光体として作用するカチオンで溶液がより高い濃度になると弱くなり、10−3M以上の濃度ではC2発光のみになる。
【0123】
【表1】

【0124】
表中、a)C1の対イオンはOTf、C2の対イオンはCl、そして全ての3種のアニオンの対イオンはNaである。b)アセトニトリル中で測定した。c)アセトニトリル溶液から、3000rpmで40秒スピンコーティングし、続いて減圧下で90℃、2時間焼成した。窒素下で測定した。d)アセトニトリル/DMF混合溶液(20:1)に溶かしたことを除いて(c)と同じ。e)10−2Mより低い濃度において。f)1Mより高い濃度において。
【0125】
C2A3中の2種のイオンの間のエネルギー移動を研究するために、スターン−ボルマー消光分析を行った。様々な量の消光体C2を用いて、脱気したアセトニトリル溶液中でのA3の寿命を記録した。A3の濃度は全ての試料において0.67μMに保ち、消光体の濃度は0〜120μMで変化させた。二分子消光モデルに基づけば、寿命の逆数は消光体の濃度([Q])に一次相関し、これは図5においてC2及びA3に対して観測されるとおりである。消光速度定数(K)は、フィッティングした直線の傾きをτ(消光体が全く存在しないときの寿命)で割り算することによって推算することができる。この計算によって、1.71×1010−1−1というK値を得て、これはアセトニトリル中での拡散限界(2×1010−1−1)に近い。(Turro, N. J., Modern Molecular Photochemistry. Benjamin/Cummings: Menlo Park, CA, 1978)。このデータは、この消光過程が短いレンジで有効であって、三重項−三重項エネルギー移動及び電子輸送消光を2つの可能な機構として残している。(Ma, B.ら,Djurovich, P. I.; Thompson, M. E., Excimer and electron transfer quenching studies of a cyclometallated platinum complex. Coord. Chem. Rev. 2005, 249, 1501-1510)。しかし、両方のイオン類のPL及びHOMO/LUMOエネルギーレベルは、エネルギー移動が最もありそうな説明であることを示唆している。なぜなら、第一に、A3はC2よりも高い三重項エネルギーを有しており、それによってエネルギー移動消光が起こることがエネルギー的に有利であるからである。第二に、A3はC2よりも高いLUMOと深いHOMOを有してもいる。A3が励起された場合、2種のイオン類の間のエネルギー配列は、一方向の電子輸送ではなく、電子交換が好ましい。この過程は本質的に、デクスター機構を通してのA3からC2へのエネルギー移動に等しい。C2の濃度が一定のレベルに達した場合、A3イオンと周りのC2イオンとの間の平均距離は、三重項エネルギー輸送の有効距離内である。このイオン間相互作用は、A3からの発光のほとんどの消去をもたらし、これは図4(b)の10−3Mでのスペクトルによって例示されている。
【0126】
〔量子収率〕
柔軟塩(ソフト塩)及びそれらの成分イオン類の量子収率(QY)は、溶液中、及び添加物なしの膜として測定した(表1)。溶液中では、QYは脱気後に顕著に増大し、この錯体からのリン光の効率的な酸素による消光と整合している。C1A2及びC2A3の脱気溶液のQYは、そのペア中でより低いエネルギーをもつイオンのQY値に合致しており、柔軟塩(ソフト塩)中での効率的なエネルギー移動に整合している。膜中では、QYは脱気溶液中で観測される値と比較して一般的に低く、それは自己消光によって予測されるとおりである。QY値も、配位子及び対イオンの大きさに敏感であることが分かったことは興味深い。例えば、柔軟塩(ソフト塩)は一般に、添加物なしの膜中でそれらの成分イオン類よりも高いQYを有するが、なぜなら、その柔軟塩のイオン類はハライド又はアルカリ金属イオン類よりも顕著に大きく、その柔軟塩中に、より大きな分子間空間をもたらすからである。同様に、より嵩高い配位子は、そのイオン類をイオン性固体中でさらに離して位置付けることによってQYを向上させることができ、これが、それらのQYが溶液中では全く似ているにもかかわらず、膜試料中でC2ClがC1CIよりも高いQYを有することを説明している。
【0127】
〔HOMO及びLUMOエネルギー〕
柔軟塩(ソフト塩)及び個々のイオン類の電気化学的特性は、サイクリックボルタンメトリー(CV)によって試験した。測定はアセトニトリル中で行い、フェロセンを内部基準として用いた。これまでに刊行された相関関係に基づいて、酸化還元電位(レドックスポテンシャル)から得られたHOMO/LUMOレベルを、表1にまとめている(D’Andrade, B. W.ら,Relationship between the ionization and oxidation potentials of molecular organic semiconductors. Organic Electronics 2005, 6(1), 11-20; Djurovich, P. I.ら,Measurement of the lowest unoccupied molecular orbital energies of molecular organic semiconductors. Organic Electronics, 2009, 10(3), 515-520)。このエネルギーレベルは比較する目的で図6にもグラフにしてある。これらのデータによれば、イオン類のHOMO/LUMO値は、全電荷とキレートしている配位子の両方によって影響を受けている。例えば、C1A1は同じC^Nキレート配位子を有する2つのイオン性Ir錯体を含み、非常に似た発光及び吸収エネルギーをもたらしている一方で、それらのHOMO及びLUMOエネルギーレベルは顕著に異なっている。アニオン性Ir錯体(A1)はより容易に酸化され、還元されにくく、これは類似しているカチオン錯体(C1)よりも高いHOMO及びLUMOとなる。
【0128】
柔軟塩(ソフト塩)のHOMO及びLUMOエネルギーは、Ir錯体のペア(対)の最低エネルギーポテンシャルによって定まる。このことは、個々のイオン類のキレート配位子を変えることによって柔軟塩(ソフト塩)のエネルギーレベルを調整することに対しての簡単な解をもたらす。この着想はC1A1とC1A2を比較することでわかる。C1A2は、A1のトリルピリジル(tpy)基をフェニルキノリン(PQ)基、すなわちA2で置き換えることによって得られる。C1A2においては、PQ配位子の広がったTC共役が、その正電荷によって還元電位が引き上げられるよりもむしろその還元電位を低くする。結果として、C1A2はそのアニオン上に両方の最低エネルギーポテンシャルを有するが、これとは対照的にC1A1は、アニオンのHOMOとそのカチオンのLUMOからの最低エネルギー酸化と最低エネルギー還元をそれぞれ有している。同様の方針を用いて、C2A3のエネルギーレベルを調整して、酸化と還元が両方ともそのカチオン上で起こるようにした。独立してエネルギーレベルを調節することができる可能性は、OLED特性に対する、柔軟塩のカチオン成分及びアニオン成分の上でのキャリア捕捉の役割を検証することを可能にしている。
【0129】
〔OLED研究〕
柔軟塩を、単層LEC及びヘテロ構造OLEDデバイスの両方で試験した。典型的なLECは遅延発光を示し、これは、電極/有機の界面での緩やかな電荷の蓄積の結果であり、これが電荷注入を容易にしている。柔軟塩(ソフト塩)をLEC構造(アノード/柔軟塩/カソード)中で用いた場合には、特徴的なLECの挙動は観察されなかった。この柔軟塩LECデバイスは開回路のままであり、数時間後には2.5V〜7Vの範囲の様々な電圧のもとで作動しなかった。このことは、適用された電場中で移動するLEC中に存在する小さなイオン類(これが機能可能なLECへの電荷の注入を容易にする)の不存在によって説明することができる。これらの柔軟塩に基づくLECにおける電荷注入は、柔軟塩の層の中に再結合ゾーンを確立するための、移動性イオン類を移動させることによって作り出されるオーム接合なしには困難であり且つバランスがとれない。柔軟塩層へのイオン性液体の添加(これはLECについて作動回数を顕著に少なくすることが示されている)は、この場合には、柔軟塩LECの特性を向上させない。(Pei, Q.ら,Polymer Light-Emitting Electrochemical-Cells. Science 1995, 269 (5227), 1086-1088; Pei, Q. B.ら,Polymer light-emitting electrochemical cells: In situ formation of a light-emitting p-n junction. Journal of The American Chemical Society 1996, 118(16), 3922-3929)。この単純なデバイス構造は、柔軟塩材料中に効率的な電荷注入はもたさないが、LECと同様に、柔軟塩の層中のキャリア輸送は荷電イリジウム錯体のレドックス反応によることが予測される。それ自身をカチオン及びアニオンの混合物にすることで、柔軟塩(ソフト塩)は同時二極性となり、正孔と電子の両方を輸送することが予測される。
【0130】
柔軟塩に基づくデバイス中での正孔注入障壁を低くするために、PVK層をITO上にスピンコーティングした。このPVK層はまた、柔軟塩層の凝集あるいは結晶化を防止する。このPVK/柔軟塩層はBCPの薄膜でキャッピングされて、カソードと柔軟塩との間のエネルギー配列が改善された。これら3種の柔軟塩系OLEDのエネルギー図を図6に示している。PVKと柔軟塩との界面では、正孔はアニオンを酸化することによって注入され、柔軟塩層の内部でアニオン錯体の間をジャンプする。柔軟塩層中での電荷の局在化は、OLEDに通常用いられる中性物質のものとは全く異なる。正孔が正のポーラロンとして存在する通常のOLEDとは対照的に、柔軟塩(ソフト塩)中の正孔は中性の種(アニオンの酸化)を形成し、その正電荷は格子全体に非局在化し、それは、アニオンの数に対して必要とされるものに対して過剰なカチオンとして表される。同じことが電子についても当てはまり、電子は、電子が注入された後での、格子中のカチオンの数と見合うために必要とされるアニオンよりも過剰なアニオンに対応する。柔軟塩(ソフト塩)を介する電荷の伝導は、類似する中性の格子よりも高いことが予測され、それは高度に帯電した柔軟塩格子の高い誘電性によるものである。正孔と電子が隣接する分子どうしの上に局在化している場合、各キャリアに伴う過剰な正及び負の格子電荷は中和され、2種のキャリアは結合されることが予測され、これは正及び負のポーラロンが中性の格子中で静電的に引きつけ合い、結合することができるのと同様である。
【0131】
柔軟塩中の2種のイオン間のエネルギーレベルの相対的な位置は、デバイス性能にとって重要である。C1A1の成分イオン類は同じシクロメタル化配位子のみからなるが、補助配位子は異なり、後者はこの錯体に電荷を付与する。この2種のイオンは類似したHOMO/LUMOギャップをもつが、分子の電荷はHOMO及びLUMOエネルギーを大きくシフトさせる。2つのHOMO及び2つのLUMOの間のエネルギー障壁は両方とも比較的高いので、キャリアが還元されたカチオン(電子)と酸化されたアニオン(正孔)との間で交換されることは困難であり、これは励起子の形成を阻害する。結果として、再結合が他方よりも一のイオン錯体上で起こることが明らかに好ましいということはない。C1A1は、3種の柔軟塩のなかで、添加物なしの膜中で最も低いPL QYを有するが、C1A1に基づくデバイスの0.2%のEQEは、そのPL効率のみに基づいて予測されるよりもかなり低い。このことは、HOMO/LUMOの良くないマッチングが、なぜC1A1が3種の柔軟塩の全てのうちで最も劣る性能を示すのかの主な理由であることを示唆している(図7及び表2)。C1A1とは対照的に、C1A2及びC2A3はそのフロンティア軌道の1種の間での近接したエネルギーマッチング、C1A3については近接したLUMOマッチング、C2A3については近接したHOMOマッチングを有する。さらに、これら2種の柔軟塩においては、1種のイオンのエネルギーレベルは他方のそれによって囲われており、これはイオン類のうちの1つが正孔と電子の両方を輸送しうることを示唆している。したがって、より小さなエネルギーギャップをもつイオン上で励起子が生じることがエネルギー的に好ましい。C1A2のアニオンとC2A3のカチオンは、正孔及び電子の両方のトラップとして作用し、これが励起子形成の効率を高める。このエネルギー上の構成の利点は、C1A2及びC2A3の顕著に高いEQE値、すなわちそれぞれ2.6及び4.7%に反映されている(図7左のグラフ)。表1の膜のQYデータと比較すると、C1A2及びC2A3を用いて作成したデバイスの最大EQE値(表2)は、理論的最大値と同程度である(内部効率はEQEの3〜5倍であると予測される)。(Hung, L. S.; Chen, C. H., Recent progress of molecular organic electroluminescent materials and devices. Materials Science & Engineering R-Reports 2002, 39(5-6), 143-222)。
【0132】
良好なEQEにもかかわらず、C1A2を用いたデバイスは、C2A3を用いたものよりも低い電導度を示す(図7右のグラフ)。同様の傾向は、輝度と作動電圧データに見ることができる(表2)。この差は、電子注入のエネルギー障壁から生じるようである。C1A2のカチオンのLUMO(−1.94eV)は、C2A3のカチオンのもの(−2.54eV)よりも0.6eV高く、BCPからの電子注入に対する、より大きな障壁を作っている。それとは対照的に、VKのHOMOと2種のアニオンのHOMOレベルとの間のエネルギー差による正孔注入への効果は、そのエネルギー図(図6)に基づけば同程度である。これら3種の柔軟塩の中で、C2A3は正孔及び電子注入層と最良のHOMO/LUMOの組み合わせをもたらし、その成分イオン類の間のエネルギーレベルも電荷再結合を容易にしている。C2A3に基づくOLEDのデバイスデータは、柔軟塩(ソフト塩)が、中性のIrリン光発光体を用いて作ったものと同程度の特性をもつOLEDを作る潜在能力を有することを示唆している。
【0133】
【表2】

【0134】
Ir系柔軟塩(Ir系ソフト塩)を合成し、特性分析をした。各柔軟塩は、独立にその配位子を変えることにより、イオン性Ir錯体のペアによって形成されるので、相対的なエネルギー特性(これは、光物理、電気化学、及びデバイスの特性に顕著に影響を及ぼす)は容易に調整される。例えば、C2A3は溶液中で二重発光を示し、その柔軟塩の濃度に応じたスペクトル中の2つの成分比をもつ。消光の研究は、青から赤色発光性イオンへのエネルギー移動過程は、拡散律速制限されていることを示している。2種のイオンのエネルギーレベルの間の内部での組み合わせは、良好なOLED性能を達成するための鍵である。C2A3は、4.7%の最大EQEをもち、最良の全デバイス性能をもたらし、これは膜のPL効率に基づく理論的な最大値と同程度である。この結果は、柔軟塩に基づくデバイスが、中性のIr系OLEDと同程度の効率に達する能力を有することを示唆している。そのような高い効率を達成するための鍵は、0.5〜1.0の範囲にある膜PL効率をもつ柔軟塩(ソフト塩)を調製することであり、これはIr燐光体をドーピングした薄膜について容易に達成することができる。
【0135】
有機金属柔軟塩(ソフト塩)化合物を提供し、この化合物は下記式:
【数19】

を含む。
【0136】
【数20】

は、aの正電荷をもつ式Cを有する有機金属カチオンである。
【0137】
【数21】

は、bの負電荷をもつ式Cを有する有機金属アニオンである。
【0138】
は(Lであり、式Cは(Lである。M及びMのそれぞれは独立に遷移金属又はランタニドである。L及びLのそれぞれは独立に、単座、二座、三座、又は多座配位子である。f及びgのそれぞれは、ビス又はトリス配位子配位を表すことができる。X及びXは任意の数のキレート配位子又は補助配位子を表す。
【0139】
【数22】

である。
【0140】
m及びnは1〜20の整数である。
【0141】
この式は上で式Iで表したものと同じ柔軟塩(ソフト塩)化合物を表す別の方法である。
【0142】
一つの側面では、上述したとおりこの化合物は式:
【数23】

を有する。
【0143】
一つの側面では、M及びMのそれぞれはIrである。しかし、本発明の化合物において、遷移金属としてIr(I)又はIr(III)を用いることができる。別の側面では、M及びMのそれぞれがIr(III)である。
【0144】
一つの側面では、この有機金属カチオンは下記式:
【化34】

を有する。
【0145】
別の側面では、上記有機金属アニオンは下記式:
【化35】

を有する。
【0146】
【化36】

のそれぞれは独立に、窒素原子及びsp混成炭素原子を介して金属に配位している芳香族もしくはヘテロ芳香族の複数の環の結合対を表す。
【0147】
一つの側面では、
【化37】

は、
【化38】

である。
【0148】
A及びBはそれぞれ独立に、5又は6員の芳香族又はヘテロ芳香族環である。A−Bは環Aの窒素原子と環Bのsp混成炭素原子を介して金属に配位している芳香族もしくはヘテロ芳香族の複数の環の結合対を表す。R及びRのそれぞれは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換基を表すことができる。R及びR置換基のそれぞれは独立に、水素、重水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールからなる群から選択される。2つの隣接する置換基は環を形成していてもよい。
【0149】
【化39】

のそれぞれは独立に、下記のものからなる群から選択される。
【0150】
【化40】

【0151】
、R、及びRのそれぞれは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換基を表すことができる。R、R、及びR置換基のそれぞれは独立に、水素、重水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールからなる群から選択される。2つの隣接する置換基は環を形成していてもよい。
【0152】
及びLのそれぞれは独立に、以下のものからなる群から選択される。
【0153】
【化41】

【0154】
【化42】

【0155】
好ましくは、L及びLのそれぞれは独立に以下のものからなる群から選択される。
【0156】
【化43】

【0157】
一つの側面では、化合物中の有機金属カチオンのそれぞれは同じであり、化合物中の有機金属アニオンのそれぞれは同じである。
【0158】
なお別の側面では、有機金属アニオンは以下のものからなる群から選択される。
【0159】
【化44】

【0160】
さらなる側面では、有機金属カチオンは以下のものからなる群から選択される。
【0161】
【化45】

【0162】
上記化合物の具体例を提供する。一つの側面では、上記化合物は以下のものからなる群から選択される。
【0163】
【化46】

【0164】
【化47】

【0165】
さらに、有機発光デバイスを含めた第一のデバイスを提供する。有機発光デバイスは、アノード、カソード、及びそのアノードとカソードとの間に配置された有機層を含む。その有機層はさらに下記式:
【数24】

を有する化合物を含む。
【0166】
【数25】

は、a個の正電荷をもつ式Cを有する有機金属カチオンである。
【0167】
【数26】

は、b個の負電荷をもつ式Cを有する有機金属アニオンである。
【0168】
は(Lであり、式Cは(Lである。M及びMのそれぞれは独立に遷移金属又はランタニドである。好ましくは、M及びMのそれぞれはIrである。L及びLのそれぞれは独立に、単座、二座、三座、又は多座配位子である。f及びgのそれぞれは、ビス又はトリス配位子配位を表すことができる。X及びXは任意の数のキレート配位子又は補助配位子を表す。
【0169】
【数27】

である。
【0170】
m及びnは1〜20の整数である。
【0171】
一つの側面では、有機金属カチオンは下記式:
【化48】

を有する。
【0172】
一つの側面では、有機金属アニオンは下記式:
【化49】

を有する。
【0173】
【化50】

のそれぞれは独立に、窒素原子及びsp混成炭素原子を介して金属に配位している芳香族ないしヘテロ芳香族の複数の環の結合対を表す。
【0174】
一つの側面では、
【化51】

は、
【化52】

である。
【0175】
A及びBはそれぞれ独立に、5又は6員の芳香族又はヘテロ芳香族環である。A−Bは環Aの窒素原子と環Bのsp混成炭素原子を介して金属に配位している芳香族ないしヘテロ芳香族の環の結合対を表す。R及びRのそれぞれは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換基を表すことができる。R及びR置換基のそれぞれは独立に、水素、重水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールからなる群から選択される。2つの隣接する置換基は環を形成していてもよい。
【0176】
【化53】

のそれぞれは独立に、下記のものからなる群から選択される。
【0177】
【化54】

【0178】
、R、及びRのそれぞれは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換基を表すことができる。R、R、及びR置換基のそれぞれは独立に、水素、重水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールからなる群から選択される。2つの隣接する置換基は環を形成していてもよい。
【0179】
及びLのそれぞれは独立に、以下のものからなる群から選択される。
【0180】
【化55】

【0181】
【化56】

【0182】
【化57】

【0183】
好ましくは、L及びLのそれぞれは独立に以下のものからなる群から選択される。
【0184】
【化58】

【0185】
なお別の側面では、有機金属アニオンは以下のものからなる群から選択される。
【0186】
【化59】

【0187】
さらなる側面では、有機金属カチオンは以下のものからなる群から選択される。
【0188】
【化60】

【0189】
【化61】

【0190】
デバイスの具体例を提供する。一つの側面では、上記化合物は以下のものからなる群から選択される。
【0191】
【化62】

【0192】
一つの側面では、有機層は蒸着によって堆積される。
【0193】
別の側面では、有機金属アニオン及び有機金属カチオンのうちの一つが、他のものよりも低い酸化電位及びより小さな負(負の程度が少ない)の還元電位の両方を有する。言い換えると、上記柔軟塩(ソフト塩)のイオンのうちの一種、カチオン又はアニオンのいずれかが、正孔と電子の両方をトラップし且つ輸送する。
【0194】
なお別の側面では、PVKがジクロロベンゼンと混合されて、上記有機層を堆積させる前に堆積される。
【0195】
さらなる側面では、BCPを含む膜が上記有機層の上に堆積される。
【0196】
一つの側面では、第一のデバイスは有機発光デバイスである。別の側面では第一のデバイスは有機発光セルである。
【0197】
上記有機金属柔軟塩(ソフト塩)化合物を製造する方法も提供する。この方法は、a個の正電荷をもつ下記式:
【数28】

を有する有機金属カチオンを、b個の負電荷をもつ下記式:
【数29】

を有する有機金属アニオンと反応させることによって、下記式:
【数30】

を有する有機金属錯体を得る工程を含む。
【0198】
は(Lであり、式Cは(Lである。M及びMのそれぞれは独立に遷移金属又はランタニドである。L及びLのそれぞれは独立に、単座、二座、三座、又は多座配位子である。f及びgのそれぞれは、ビス又はトリス配位子配位を表すことができる。X及びXは任意の数のキレート配位子又は補助配位子を表す。
【0199】
【数31】

である。
【0200】
m及びnは1〜20の整数である。
【0201】
一つの側面では、上記の有機金属カチオン及び有機金属アニオンは、
【化63】

を中性の補助配位子及びアニオン性補助配位子と反応させることによって得られる。
【0202】
別の側面では、有機金属錯体を得るための反応の前に、有機金属カチオン及び有機金属アニオンを酸化及び還元して中性の金属錯体を形成させる。
【0203】
なお別の側面では、上記の中性金属錯体を基板上に組み合わせて熱真空蒸着させ、そこで反応が完了して上記の有機金属錯体が得られる。
【0204】
さらなる側面では、この方法は更に、第一の電極をもたらす工程、その第一の電極上に上記有機金属カチオンと上記有機金属アニオンを堆積させる工程、及び第二の電極を堆積させる工程を含む。
【0205】
一つの側面では、第一の電極はアノードであり、第二の電極はカソードである。
【0206】
〔その他の物質との組み合わせ〕
【0207】
有機発光デバイス中の特定の層に有用として本明細書に記載した物質は、デバイス中に存在する広範囲のその他の物質と組み合わせて用いることができる。例えば、本明細書に開示した発光ドーパントは、存在してもよい、広範囲の、ホスト、輸送層、阻止層、注入層、電極、及びその他の層と組み合わせて用いることができる。以下に記載又は言及する物質は、本明細書に開示した化合物と組み合わせて有用でありうる物質の非限定的な例であり、当業者は組み合わせて有用でありうる他の物質を特定するための文献を容易に閲覧することができる。
【0208】
〔HIL/HTL〕
【0209】
本発明の態様において用いられる正孔注入/輸送性物質は特に限定されず、任意の化合物を、その化合物が一般に正孔注入/輸送性物質として用いられる限り、用いることができる。その物質の例には、以下のものが含まれるがそれらに限定されない:フタロシアニン又はポルフィリン誘導体;芳香族アミン誘導体;インドロカルバゾール誘導体;フルオロ炭化水素を含むポリマー;導電性ドーパント伴うポリマー;導電性ポリマー、例えば、PEDOT/PSS;ホスホン酸及びシラン誘導体などの化合物から誘導される自己組織化モノマー;金属酸化物誘導体、例えば、MoO;p型半導体有機化合物、例えば、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル;金属錯体;及び、架橋性化合物。
【0210】
HIL又はHTL中で用いられる芳香族アミン誘導体の例には、以下の構造のものが含まれるがこれらに限定されない。
【0211】
【化64】

【0212】
Ar〜Arのそれぞれは、芳香族炭化水素環状化合物(例えば、ベンゼン、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、アズレン)からなる群;芳香族ヘテロ環化合物(例えば、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリジルインドール、ピロロジピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、インドキサジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノジピリジン、ベンゾセレノフェノピリジン、及びセレノフェノジピリジン)からなる群;並びに、前記芳香族炭化水素環状化合物基及び前記芳香族ヘテロ環化合物基から選択される同じ種類又は異なる種類の基であって、且つ互いに直接結合され、あるいは酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子、鎖構造単位、及び脂肪族環式基のうちの少なくとも1つを介して結合された2〜10の環状構造単位からなる群、から選択される。ここで、各Arはさらに、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択された置換基で置換されている。
【0213】
一つの側面では、Ar〜Arは独立に以下のものからなる群から選択される。
【化65】

【0214】
kは1〜20の整数であり;X〜XはCH又はNであり;Arは上で定義した同じ基を有する。
【0215】
HIL又はHTLにおいて用いられる金属錯体の例には以下の一般式のものが含まれるがこれに限定されない:
【化66】

【0216】
Mは40より大きな原子量を有する金属であり;(Y−Y)は二座配位子であり、Y及びYは独立にC、N、O、P、及びSから選択され;Lは補助配位子であり;mは1からその金属に結合しうる配位子の最大数までの整数であり;且つ、m+nはその金属に結合しうる配位子の最大数である。
【0217】
一つの側面では、(Y−Y)は2−フェニルピリジン誘導体である。
【0218】
別の側面では、(Y−Y)はカルベン配位子である。
【0219】
別の側面では、Mは、Ir、Pt、Os、及びZnから選択される。
【0220】
さらなる側面では、上記金属錯体は、約0.6Vよりも小さな、Fe/Feに対する、溶液中での最小酸化電位を有する。
【0221】
〔ホスト〕
【0222】
本発明の態様における有機ELデバイスの発光層は、発光物質として金属錯体を少なくとも含むことが好ましく、その金属錯体をドーパント物質として用いながらホスト物質を含んでいてもよい。ホスト物質の例は特に限定されず、そのホストの三重項エネルギーがドーパントのものよりも大きい限り、任意の金属錯体又は有機化合物を用いることができる。
【0223】
ホストとして用いられる金属錯体の例は、以下の一般式を有することが好ましい:
【化67】

【0224】
Mは金属であり;(Y−Y)は二座配位子であり、Y及びYは独立に、C、N、O、P、及びSから選択され;Lは補助配位子であり;mは、1からその金属に結合しうる配位子の最大数までの整数値であり;且つ、m+nはその金属に結合しうる配位子の最大数である。
【0225】
一つの側面では、金属錯体は以下のものである。
【化68】

【0226】
(O−N)は、金属をO及びN原子に配位させる二座配位子である。
【0227】
別の側面では、MはIr及びPtから選択される。
【0228】
さらなる側面では、(Y−Y)はカルベン配位子である。
【0229】
ホストとして用いられる有機化合物の例は、芳香族炭化水素環状化合物(例えば、ベンゼン、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、アズレン)からなる群;芳香族ヘテロ環化合物(例えば、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリジルインドール、ピロロジピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、インドキサジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノジピリジン、ベンゾセレノフェノピリジン、及びセレノフェノジピリジン)からなる群;並びに、前記芳香族炭化水素環状化合物基及び前記芳香族ヘテロ環化合物基から選択される同じ種類又は異なる種類の基であって、且つ互いに直接結合され、あるいは酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子、鎖構造単位、及び脂肪族環式基のうちの少なくとも1つを介して結合された2〜10の環状構造単位からなる基、から選択される。ここで、各基はさらに、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択された置換基で置換されている。
【0230】
一つの側面では、ホスト化合物は、その分子中に以下の基のうちの少なくとも1つを含む。
【化69】

【0231】
〜Rは独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され、それがアリール又はヘテロアリールである場合には、それは上で述べたArと同じ定義を有する。
【0232】
kは0〜20の整数である。
【0233】
〜XはCH又はNから選択される。
【0234】
〔HBL〕
【0235】
正孔阻止層(HBL)を、発光層から離れる正孔及び/又は励起子の数を低減するために用いてもよい。デバイス中のそのような阻止層の存在は、阻止層を欠く同様のデバイスと比較して、実質的により高い効率をもたらしうる。また、阻止層は、発光をOLEDの所望の領域に閉じ込めるために用いることもできる。
【0236】
一つの側面では、HBLに用いられる化合物は、上に記載したホストとして用いられるものと同じ分子を含む。
【0237】
別の側面では、HBLに用いられる化合物は、その分子中に以下の基の少なくとも1つを含む。
【化70】

【0238】
kは0〜20の整数であり;Lは補助配位子であって、mは1〜3の整数である。
【0239】
〔ETL〕
【0240】
電子輸送層(ETL)は、電子を輸送しうる物質を含んでいてよい。電子輸送層はそれに本来備わっている性質であるか(非ドープ)又はドーピングされていることができる。ドーピングは、導電性を高めるために用いることができる。ETL物質の例は特に限定されず、それらが電子を輸送するために通常用いられる限り任意の金属錯体又は有機化合物を用いることができる。
【0241】
一つの側面では、ETLに用いられる化合物は、その分子中に以下の基の少なくとも1つを含む。
【化71】

【0242】
は、水素、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され、それがヘテロアリールである場合には、それは上に記載したArと同じ定義を有する。
【0243】
Ar〜Arは上で述べたArと同じ定義を有する。
【0244】
kは0〜20の整数である。
【0245】
〜XはCH又はNから選択される。
【0246】
別の側面では、ETLに用いられる金属錯体には下記一般式のものが含まれるがそれらに限定されない。
【化72】

【0247】
(O−N)又は(N−N)はO、N原子、あるいはN、N原子に金属を配位させる二座配位子であり;Lは補助配位子であり;mは1からその金属に結合しうる配位子の最大数までの整数である。
【0248】
OLEDデバイスの各層で用いられる上述した化合物のいずれか一つにおいて、その水素原子は部分的に又は完全に重水素化されていることができる。
【0249】
本明細書で開示した化合物に加えて、及び/又はそれらと組み合わせて、多くの正孔注入物質、正孔輸送物質、ホスト物質、ドーパント物質、励起子/正孔阻止層物質、電子輸送及び電子注入物質を、OLEDに用いることができる。本明細書に開示した材料と組み合わせてOLEDに用いることができる物質の非限定的な例を、下の表3に列挙している。表3は、非限定的な物質群、各群に対する化合物の非限定的な例、及びそれらの物質を開示している参考文献を挙げている。
【0250】
【表3】

【0251】
【表4】

【0252】
【表5】

【0253】
【表6】

【0254】
【表7】

【0255】
【表8】

【0256】
【表9】

【0257】
【表10】

【0258】
【表11】

【0259】
【表12】

【0260】
【表13】

【0261】
【表14】

【0262】
【表15】

【0263】
【表16】

【0264】
【表17】

【0265】
【表18】

【0266】
【表19】

【0267】
【表20】

【0268】
【表21】

【0269】
【表22】

【0270】
【表23】

【0271】
【表24】

【0272】
【表25】

【実施例】
【0273】
〔イオン性Ir錯体の合成〕
全てのイオン性Ir錯体は、以下に示す一般法で合成した。
【0274】
1当量のビス−シクロメタル化Ir(III)ジクロロ架橋ダイマーと、2.2当量の補助配位子を、メタノール中にて夜通しN下で還流させた。冷却したら、反応混合物を濃縮し、最終生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【化73】

【0275】
全ての出発物質及び溶媒は市販しているところから購入し、さらなる精製なしに用いた。H及び13C−NMRスペクトルは、室温で400MHz分光計で得た。マススペクトルは、アプライド・バイオシステムズ社のVoyager-DE STR分光計で記録した。IRデータは、パーキン・エルマー・スペクトラム社の2000 FT-IR分光計で得た。3種の柔軟塩の元素分析は、国立台湾大学のNSCレジオナル・アドバンスド・インスツルメンツ・センターで、Heraeus Vario EL III元素分析機で行った。室温で真空下で乾燥させた試料は、炭素については予測したパーセント割合よりも高い元素分析値をもたらし、多孔質結晶中にトラップされている溶媒と整合した。その試料を真空下で夜通し100℃で加熱すると、より良いCHN分析値を与えた(以下を参照されたい)。
【0276】
[Ir(tpy)(CN−t−Bu)]Cl、C1:その特性分析は以前刊行された。(Li, J.ら,Inorganic Chemistry 2005, 44(6), 1713-27を参照されたい。)
【0277】
[Ir(tpy)bpy)]Cl、C2:
イリジウム2−(p−トリル)ピリジンジクロロ架橋ダイマー(150 mg、0.13 mmol)と4,4′−ジ−tert−ブチル−2,2′−ビピリジン(79 mg、0.29 mmol)の混合物をメタノール(10 mL)に溶かし、15時間還流させた。その溶液を濃縮し、ヘキサンで洗って、黄色固体として純粋な生成物(185 mg、84%)を得た。
【数32】

【0278】
Na[Ir(tpy)(CN)]、A1:
イリジウム2−(p−トリル)ピリジンジクロロ架橋ダイマー(500 mg、0.44 mmol)をシアン化ナトリウム(261 mg、5.32 mmol)とメタノール(50 mL)中で一緒にし、撹拌しながら15時間還流させた。粗生成物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(DMF)によって精製して、明るい黄色固体として純粋な生成物(470 mg、88%)を得た。
【数33】

【0279】
Na[Ir(pq)(CN)]、A2:
イリジウムフェニルキノリンジクロロ架橋ダイマー(500 mg、0.39 mmol)をメタノール(50 mL)中でシアン化ナトリウム(231 mg、4.71 mmol)と一緒にし、撹拌しながら15時間還流させた。粗生成物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(DMF)によって精製して、明るい黄色固体として純粋な生成物(521 mg、94%)を得た。
【数34】

【数34B】

【0280】
Na[Ir(dfppy)(CN)]、A3:
イリジウム2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジンジクロロ架橋ダイマー300 mg、0.25 mmol)をメタノール(30 mL)中でシアン化ナトリウム(145 mg、2.96 mmol)と一緒にし、撹拌しながら15時間還流させた。粗生成物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(DMF)によって精製して、明るい黄色固体として純粋な生成物(270 mg、84%)を得た。
【数35】

【0281】
〔Ir系柔軟塩(ソフト塩)の合成〕
全てのIr系柔軟塩は、以下の一般法によって合成した。
【0282】
1当量のカチオン性Ir錯体と1当量のアニオン性Ir錯体を、水中で、室温にて1時間撹拌した。反応混合物をCHClで抽出した。有機層を一緒にし、MgSO上で乾燥させた後、減圧下で濃縮した。得られた固体をエチルエーテルで洗い、最終生成物を得た。
【化74】

【0283】
C1A1:
[Ir(tpy)(CN)]OTf(50 mg, 0.07 mmol)及びNa[Ir(tpy)(CN)](50 mg, 0.08 mmol)を水(10 mL)に添加した。この反応混合物を1時間室温で撹拌し、次にCHClで抽出した。一緒にした有機抽出液をMgSO上で乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた固体をジエチルエーテルで洗い、柔軟塩(ソフト塩)1(49 mg, 65%)を黄色固体として得た。
【数36】

【0284】
【化75】

【0285】
C1A2:
[Ir(tpy)(CN)]OTf(80 mg, 0.09 mmol)及びNa[Ir(pq)(CN)](80 mg, 0.11 mmol)を水(15 mL)に添加した。この反応混合物を1時間室温で撹拌し、次にCHClで抽出した。一緒にした有機抽出液をMgSO上で乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた固体をジエチルエーテルで洗い、柔軟塩(ソフト塩)2(85 mg, 67%)を黄色固体として得た。
【数37】

【0286】
【化76】

【0287】
C2A3:
[Ir(tpy)bpy)]Cl(83 mg, 0.10 mmol)及びNa[Ir(dfppy)(CN)](80 mg, 0.12 mmol)を水(15 mL)に添加した。この反応混合物を1時間室温で撹拌し、次にCHClで抽出した。一緒にした有機抽出液をMgSO上で乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた固体をジエチルエーテルで洗い、柔軟塩(ソフト塩)3(90 mg, 64%)を黄色固体として得た。
【数38】

【0288】
〔特性分析法〕
酸化及び還元電位は、EG&Gポテンシオスタットモデル283を使用するサイクリックボルタンメトリー(CY)によって測定した。CYスキャンは、電解質として0.1Mテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートを用い、無水且つ脱気したDMF中で、100mV/sのスキャン速度で記録した。フェロセン/フェロセニウム(CpFe/CpFe)レドックスカップルを、内部基準として用いた。Ptワイヤ及びガラス状炭素が、それぞれ対極及び作用電極として働いた。さらにAgワイヤを偽参照電極として使用した。二分子消光速度定数を測定するために応用した消光研究では、下記式1にしたがって計算した。
【0289】
τ/τ=1+Kτ[Q] (1)
【0290】
τ及びτは、消光剤有り及び消光剤なしでの励起状態の寿命であり、Kは実験による消光速度定数であり、[Q]は消光剤のモル濃度である。この消光研究のための試料溶液の全ては、発光物質A3について同じ濃度0.67μMを有していた。消光剤C2の濃度は0〜120μMの範囲だった。寿命測定は、全ての溶液試料を窒素でバブリングすることによる5分間の脱気した後でIBH寿命システムで行い、380nmで励起させた。フォトルミネッセンス(PL)及びエレクトロルミネッセンス(EL)発光スペクトルの両方とも、928PMT検出器を備えたPTI QuantaMasterモデルC−60SEスペクトロフルオロメーターによって得て、検出器の応答に対して較正した。アセトニトリルを、溶液PLのための溶媒として用いた。PLのスペクトル及び量子収率を得るために用いたフィルムは、空気中、室温にて、アセトニトリル溶液から、石英基板上へのスピンコーティングした。量子収率は、Hamamatsu PL量子収率測定システム(C9920−01)によって測定した。
【0291】
〔デバイス(OLED)作製及び試験〕
20Ω/平方(sq.)のシート抵抗をもつ、予め清浄にしたインジウム錫オキシド(ITO)コーティングしたガラス基板上に、OLEDを成長させた。20mgのPYKを1mLのジクロロベンゼンに溶かし、濾過した後で、3000rpmの速度で40秒間、ITO上にスピンコーティングし、次に90℃で1時間、真空下でベーキングした。柔軟塩(ソフト塩)を次にアセトニトリル溶液(30 mg/ml)からスピンコーティングした後、同じ条件でベーキングした。その後、その基板を真空チャンバーに移し、そこでBCP層を、抵抗加熱したタンタルボートからの熱蒸発によって約2Å/sの速度で堆積させた。基板上にシャドウマスクを置き、10ÅのLiF及び1200ÅのAlからなるカソードを順次堆積させた。デバイスは、空気中で、作成後1時間以内に試験をした。正面の表面から出てくる光を、Newport1835−C光学計につながれたKeithley2400電源計/2000マルチメーターへと導かれるUV−818Si光電陰極によって集めた。デバイスの電流−電圧及び光強度特性を、National InstrumentsによるLabVIEWプログラムを用いて測定した。
【0292】
上記3種の柔軟塩(ソフト塩)を、ITO/PVK/柔軟塩(ソフト塩)/BCP/LiF/Alの構造をもつOLEDデバイスに用いた。その外部量子効率(EQE)及びJ−Vデータを図7に示す。
【0293】
本明細書に記載した様々な態様は例の目的であり、本発明の範囲を限定することを意図していない。例えば、本明細書に記載した多くの物質及び構造は、本発明の精神から離れることなく、その他の物質及び構造で置き換えることができる。特許請求の範囲に記載した本発明は、したがって、本明細書に記載した具体的な例及び好ましい態様からの変形を含むことができ、それは当業者には明らかである。本発明が何故機能するのかについての様々な理論は限定することを意図していないことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
【数1】

(式中、
【数2】

は、a個の正電荷をもつ式Cを有する有機金属カチオンであり;
【数3】

は、b個の負電荷をもつ式Cを有する有機金属アニオンであり;
は(Lであり、式Cは(Lであり;
及びMのそれぞれは独立に遷移金属又はランタニドであり;
及びLのそれぞれは独立に、単座、二座、三座、又は多座配位子であり;
f及びgのそれぞれは、ビス又はトリス配位子配位を表すことができ;
及びXは任意の数のキレート配位子又は補助配位子を表し;
【数4】

であり;且つ、
m及びnは1〜20の整数である。)
を含む化合物。
【請求項2】
及びMがIrである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
及びMがIr(III)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
下記式:
【数5】

(式中、
【数6】

は、a個の正電荷をもつ式Cを有する有機金属カチオンであり;
【数7】

は、b個の負電荷をもつ式Cを有する有機金属アニオンであり;
は(Lであり、式Cは(Lであり;
及びMのそれぞれは独立に遷移金属又はランタニドであり;
及びLのそれぞれは独立に、単座、二座、三座、又は多座配位子であり;
f及びgのそれぞれは、ビス又はトリス配位子配位を表していてもよく;
及びXは任意の数のキレート配位子又は補助配位子を表し;
【数8】

であり;且つ、
m及びnは1〜20の整数である。)
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記有機金属カチオンが下記式:
【化1】

を有し;
前記金属アニオンが下記式:
【化2】

を有し、ここで
【化3】

のそれぞれは独立に、窒素原子及びsp混成炭素原子を介して金属に配位している芳香族もしくはヘテロ芳香族の複数の環の結合対を表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
【化4】


【化5】

であり、
式中、A及びBはそれぞれ独立に、5又は6員の芳香族又はヘテロ芳香族環であり;
A−Bは環Aの窒素原子と環Bのsp混成炭素原子を介して金属に配位している芳香族ないしヘテロ芳香族環の結合対を表し;
及びRのそれぞれは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換基を表すことができ;
及びR置換基のそれぞれは独立に、水素、重水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールからなる群から選択され;且つ
2つの隣接する置換基は環を形成していてもよい。)
である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
【化6】

のそれぞれが独立に下記:
【化7】

(式中、R、R、及びRのそれぞれは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換基を表すことができ;
、R、及びR置換基のそれぞれは独立に、水素、重水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールからなる群から選択され;且つ
2つの隣接する置換基は環を形成していてもよい。)
のものからなる群から選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
及びLのそれぞれが独立に以下のもの:
【化8】

【化9】

【化10】

からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
及びLのそれぞれが独立に以下のもの:
【化11】

からなる群から選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
前記有機金属カチオンの全てが同じであり、且つ前記有機金属アニオンの全てが同じである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
前記有機金属アニオンが以下のもの:
【化12】

からなる群から選択され、且つ
前記有機金属カチオンが以下のもの:
【化13】

からなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
以下のもの:
【化14】

からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
アノード;
カソード;及び
前記アノードとカソードの間に配置された有機層であって、下記式:
【数9】

(式中、
【数10】

は、a個の正電荷をもつ式Cを有する有機金属カチオンであり;
【数11】

は、b個の負電荷をもつ式Cを有する有機金属アニオンであり;
式Cは(Lであり;式Cは(Lであり;
及びMのそれぞれは独立に遷移金属又はランタニドであり;
及びLのそれぞれは独立に、単座、二座、三座、又は多座配位子であり;
f及びgのそれぞれは、ビス又はトリス配位子配位を表していてもよく;
及びXは任意の数のキレート配位子又は補助配位子を表し;
【数12】

であり;且つ、
m及びnは1〜20の整数である。)
を含む化合物を含む有機層、
を含む有機発光デバイス。
【請求項14】
及びMがIrである、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
及びMがIr(III)である、請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
前記化合物が下記式:
【数13】

(式中、
【数14】

は、a個の正電荷をもつ式Cを有する有機金属カチオンであり;
【数15】

は、b個の負電荷をもつ式Cを有する有機金属アニオンであり;
式Cは(Lであり;式Cは(Lであり;
及びMのそれぞれは独立に遷移金属又はランタニドであり;
及びLのそれぞれは独立に、単座、二座、三座、又は多座配位子であり;
f及びgのそれぞれは、ビス又はトリス配位子配位を表していてもよく;
及びXは任意の数のキレート配位子又は補助配位子を表し;
【数16】

であり;且つ、
m及びnは1〜20の整数である。)
を有する、請求項13に記載のデバイス。
【請求項17】
前記有機金属カチオンが下記式:
【化15】

を有し、
前記金属アニオンが下記式:
【化16】

を有し、式中、
【化17】

は独立に、窒素原子及びsp混成炭素原子を介して金属に配位している、芳香族もしくはヘテロ芳香族の複数の環の結合対を表す、請求項13に記載のデバイス。
【請求項18】
【化18】


【化19】

であり、
式中、
A及びBはそれぞれ独立に、5又は6員の芳香族又はヘテロ芳香族環であり;
A−Bは環Aの窒素原子と環Bのsp混成炭素原子を介して金属に配位している芳香族ないしヘテロ芳香族環の結合対を表し;
及びRのそれぞれは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換基を表すことができ;
及びR置換基のそれぞれは独立に、水素、重水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールからなる群から選択され;且つ
2つの隣接する置換基は環を形成していてもよい、
請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
【化20】

がそれぞれ独立に、以下のもの:
【化21】

(式中、R、R、及びRのそれぞれは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換基を表すことができ;
、R、及びR置換基のそれぞれは独立に、水素、重水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールからなる群から選択され;且つ
2つの隣接する置換基は環を形成していてもよい。)
からなる群から選択される、請求項17に記載のデバイス。
【請求項20】
及びLのそれぞれが独立に、以下のもの:
【化22】

【化23】

【化24】

からなる群から選択される、請求項13に記載のデバイス。
【請求項21】
及びLのそれぞれが独立に、以下のもの:
【化25】

からなる群から選択される、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記有機金属カチオンの全てが同じであり、且つ前記有機金属アニオンの全てが同じである、請求項13に記載のデバイス。
【請求項23】
前記有機金属アニオンが以下のもの:
【化26】

からなる群から選択され、且つ
前記有機金属カチオンが以下のもの:
【化27】

からなる群から選択される、請求項13に記載のデバイス。
【請求項24】
前記化合物が以下のもの:
【化28】

からなる群から選択される、請求項13に記載のデバイス。
【請求項25】
前記有機層が蒸着によって堆積させられた、請求項13に記載のデバイス。
【請求項26】
前記有機金属アニオン及び前記有機金属カチオンのうちの一つが、他のものよりも低い酸化電位及びより小さな負(負の程度が少ない)の還元電位の両方を有する、請求項13に記載のデバイス。
【請求項27】
PVKがジクロロベンゼンと混合されて、前記有機層を堆積させる前に堆積されている、請求項13に記載のデバイス。
【請求項28】
BCPを含む膜が前記有機層の上に堆積されている、請求項27に記載のデバイス。
【請求項29】
個の正電荷をもつ下記式:
【数17】

を有する有機金属カチオンを、b個の負電荷をもつ下記式:
【数18】

を有する有機金属アニオンと反応させることによって、下記式:
【数19】

を含む有機金属錯体を得る工程を含む方法。
(上記式中、Cは(Lであり、且つ式Cは(Lであり;
及びMのそれぞれは独立に遷移金属又はランタニドであり;
及びLのそれぞれは独立に、単座、二座、三座、又は多座配位子であり;
f及びgのそれぞれは、ビス又はトリス配位子配位を表していてもよく;
及びXは任意の数のキレート配位子又は補助配位子を表し;
【数20】

であり;且つ
m及びnは1〜20の整数である。)
【請求項30】
【化29】

を中性の補助配位子及びアニオン性補助配位子と反応させることによって、前記有機金属価カチオン及び前記有機金属アニオンを得る、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
下記式:
【数21】

を有する有機金属カチオンを還元して中性にし、
下記式:
【数22】

を有する有機金属アニオンを酸化して中性にし、
これら2つの中性種を反応させて下記式:
【数23】

を含む有機金属錯体を形成させる工程を含む方法であって、
前記式中、
は(Lであり、且つ式Cは(Lであり;
及びMのそれぞれは独立に、遷移金属又はランタニドであり;
及びLのそれぞれは独立に、単座、二座、三座、又は多座配位子であり;
f及びgのそれぞれは、ビス又はトリス配位子配位を表していてもよく;
及びXは任意の数のキレート配位子又は補助配位子を表し;
【数24】

であり;且つ
m及びnは1〜20の整数である、方法。
【請求項32】
前記の中性金属錯体を基板上に組み合わせて熱真空蒸着させ、基板上で反応が完了して前記有機金属錯体が得られる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
第一の電極をもたらす工程;
前記第一の電極上に前記有機金属カチオンと前記有機金属アニオンを堆積させる工程;及び
第二の電極を堆積させる工程を更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記第一の電極がアノードであり、前記第二の電極がカソードある、請求項33に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−509447(P2013−509447A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537185(P2012−537185)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/055040
【国際公開番号】WO2011/053950
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512047210)ザ・ユニヴァーシティ・オブ・サザン・カリフォルニア (2)
【Fターム(参考)】