説明

有機電気素子

【課題】正孔注入または正孔抽出用電極としてn型有機物層を備えた電気素子を提供する。
【解決手段】電気素子は、正孔を注入または抽出する第1電極であって、導電層及び導電層上に位置するn型有機物層を備える第1電極、電子を注入または抽出する第2電極、及び導電層と第2電極との間に位置するp型有機物層を備える。p型有機物層は、n型有機物層とp型有機物層との間でNP接合を形成する。n型有機物層のLUMOエネルギー準位と導電層のフェルミエネルギー準位とのエネルギー差は、約2eV以下であり、n型有機物層のLUMOエネルギー準位とp型有機物層のHOMOエネルギー準位とのエネルギー差は、約1eV以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正孔注入または正孔抽出用電極にn型有機物層を有する電気素子に係り、さらに詳細には、本発明は、正孔注入または正孔抽出のためのエネルギー障壁を低める電気素子に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池、有機発光素子、または有機トランジスタのような電気素子は、通常、2個の電極とこれら電極の間に介在された有機物層とを備える。例えば、太陽電池は、太陽エネルギーによって有機物層で発生したエキシトン(励起子)から分離された電子及び正孔を利用して電気を発生させる。有機発光素子は、2個の電極から有機物層に電子及び正孔を注入して電流を可視光に変換させる。有機トランジスタは、ゲートに印加された電圧によって有機物層に形成された正孔または電子をソース電極とドレイン電極との間で輸送させる。電気素子はまた、性能を向上させるために電子/正孔注入層、電子/正孔抽出層、または電子/正孔輸送層をさらに備えうる。
【0003】
しかし、金属、金属酸化物または導電性ポリマーを有する電極と有機物層との間の界面は不安定である。外部から加えられる熱、内部発生熱、または電気素子に加えられる電界は、電気素子の性能に悪影響を与える。また、電子/正孔注入層または電子/正孔輸送層と有機物層との間の導電エネルギー準位の差のため、素子動作のための駆動電圧が上昇しうる。したがって、電極に/から電子/正孔を注入/抽出するエネルギー障壁を最小化することだけでなく、電子/正孔注入層または電子/正孔輸送層と有機物層との間の界面を安定化させることが重要である。
【0004】
電気素子において、電極と前記電極との間に位置する有機物層間のエネルギー準位の差を調節できるように開発されてきた。有機発光素子の場合、正極電極は、正孔注入層のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)エネルギー準位と類似したフェルミエネルギー準位を有するように調節されるか、または正極電極のフェルミエネルギー準位と類似したHOMOエネルギー準位を有する物質を正孔注入層として選択する。正孔注入層は、正極電極のフェルミエネルギー準位だけでなく、正孔輸送層または発光層のHOMOエネルギー準位を考慮して選択されねばならないので、正孔注入層用物質の選択には、制限がある。
【0005】
したがって、有機発光素子の製造において、一般的に、正極電極のフェルミエネルギーを調節する方法が採用されている。しかし、正極電極用物質は制限される。例えば、有機トランジスタは、ソース/ドレイン電極として金または他の貴金属を使用している。しかし、金のような貴金属は、高コストであるだけでなく、加工性も他の金属に比べて不良であるので、素子の製造工程が複雑になり、かつ商業的に利用し難いという問題点がある。
【発明の開示】
【0006】
本発明の一態様によれば、正孔を注入または抽出する第1電極であって、導電層及び前記導電層上に位置するn型有機物層を備える第1電極と、電子を注入または抽出する第2電極と、前記第1電極の導電層と前記第2電極との間に位置するp型有機物層であって、前記第1電極の前記n型有機物層と前記p型有機物層との間でNP接合を形成するp型有機物層と、を備え、前記第1電極の前記n型有機物層のLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)エネルギー準位と前記第1電極の前記導電層のフェルミエネルギー準位とのエネルギー差が約2eV以下であり、前記第1電極の前記n型有機物層の前記LUMOエネルギー準位と前記p型有機物層のHOMOエネルギー準位とのエネルギー差が約1eV以下であることを特徴とする電気素子が提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、導電層及び前記導電層上に位置するn型有機物層を備える正極と、負極と、前記正極の導電層と前記負極との間に位置するp型有機物層であって、前記正極のn型有機物層と前記p型有機物層との間でNP接合を形成するp型有機物層と、を備え、前記正極の前記n型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記正極の前記導電層のフェルミエネルギー準位とのエネルギー差が約2eV以下であり、また、前記正極の前記n型有機物層の前記LUMOエネルギー準位と前記p型有機物層のHOMOエネルギー準位とのエネルギー差が約1eV以下であることを特徴とする有機発光素子が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、導電層及び前記導電層上に位置するn型有機物層を備える正極と、負極と、前記正極の導電層と前記負極との間に位置する電子ドナー層であって、p型有機物層を備え、前記正極の前記n型有機物層と前記p型有機物層との間でNP接合を形成する電子ドナー層と、を備え、前記正極の前記n型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記正極の前記導電層のフェルミエネルギー準位とのエネルギー差が約2eV以下であり、前記正極の前記n型有機物層の前記LUMOエネルギー準位と前記p型有機物層のHOMOエネルギー準位とのエネルギー差が約1eV以下であることを特徴とする有機太陽電池が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、前記ゲート電極上に位置する絶縁層と、前記絶縁層上に位置するp型有機物層と、前記ソース電極または前記ドレイン電極とp型有機物層との間に位置するn型有機物層であって、前記n型有機物層と前記p型有機物層との間でNP接合を形成するn型有機物層と、を備え、前記n型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記ソース電極または前記ドレイン電極のフェルミエネルギー準位とのエネルギー差が約2eV以下であり、前記n型有機物層の前記LUMOエネルギー準位と前記p型有機物層のHOMOエネルギー準位とのエネルギー差が約1eV以下であることを特徴とする有機トランジスタが提供される。
【0010】
発明の効果
本発明の例示的な具現例による電気素子は、正孔注入または正孔抽出用電極として導電層だけでなく、n型有機物層を備える。前記n型有機物層は、前記n型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記n型有機物層の一面と接触する前記導電層のフェルミエネルギー準位との差が約2eV以下であり、また、前記n型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記n型有機物層の他面と接触するp型有機物層のHOMOエネルギー準位との差が約1eV以下となるように選択される。前記n型有機物層は、正孔注入または正孔抽出に対する電気的障壁を低め、前記n型有機物層と前記p型有機物層との間にNP接合を形成するため、前記電気素子は、電極物質として多様な物質を使用できるため、素子の製造工程を簡素化でき、素子効率が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するために発明者によって考案された最適の態様を説明することによって、本発明の望ましい具現例のみが図示されて説明される。しかし、本発明は、本発明の範囲を逸脱せずに、多様な変化が可能である。したがって、添付図面及び以下の詳細な説明は、その性質上、例示的なものであり、本発明を制限するためのものではない。
【0012】
本発明の例示的な一具現例による電気素子は、正孔を注入または抽出する第1電極、電子を注入または抽出する第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に位置するp型半導体特性を有する有機物層(以下、“p型有機物層”)を備える。前記p型有機物層は、正孔注入層、正孔輸送層、または発光層を備える。前記電気素子は、前記p型有機物層と前記第2電極との間に少なくとも一つ有機物層をさらに備えうる。
【0013】
前記第1電極は、導電層及び前記導電層上に位置するn型半導体特性を有する有機物層(以下、“n型有機物層”)を備える。前記導電層は、金属、金属酸化物、または導電性ポリマーを含む。前記導電性ポリマーは、導電性ポリマーを含みうる。前記n型有機物層は、前記導電層のフェルミエネルギー準位と前記p型有機物層のHOMOエネルギー準位とに対して所定のLUMOエネルギー準位を有する。
【0014】
前記第1電極の前記n型有機物層は、前記第1電極の前記n型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記第1電極の前記導電層のフェルミエネルギー準位とのエネルギー差、及び前記n型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記p型有機物層のHOMOエネルギー準位とのエネルギー差が減少するように選択される。したがって、正孔が前記第1電極のn型有機物層のLUMOエネルギー準位を通じて前記p型有機物層のHOMOエネルギー準位に容易に注入される。または、正孔が前記第1電極のn型有機物層のLUMOエネルギー準位を通じて前記p型有機物層のHOMOエネルギー準位から容易に抽出される。
【0015】
前記第1電極の前記n型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記第1電極の前記導電層のフェルミエネルギー準位とのエネルギー差が約2eV以下(0eVは、含まれない)であり、望ましくは、約1eV以下(0eVは、含まれない)である。このエネルギー差は、物質選択の観点では0.01〜2eVであることが望ましい。前記第1電極の前記n型有機物層の前記LUMOエネルギー準位と前記p型有機物層のHOMOエネルギー準位とのエネルギー差が約1eV以下(0eVは、含まれない)であり、望ましくは、約0.5eV以下(0eVは、含まれない)である。このエネルギー差は、物質選択の観点では0.01〜1eVであることが望ましい。
【0016】
前記第1電極の前記n型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記第1電極の前記導電層のフェルミエネルギー準位とのエネルギー差が約2eVより大きければ、正孔注入または正孔抽出のエネルギー障壁に対する表面双極子またはギャップステートの効果が減少する。前記n型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記p型有機物層のHOMOエネルギー準位とのエネルギー差が約1eVより大きければ、前記p型有機物層と前記第1電極のn型有機物層とのNP接合が容易に発生せず、正孔注入または正孔抽出のための駆動電圧が上昇する。前記n型有機物層のLUMOエネルギー準位の範囲は、前述した範囲に限定されないが、前記第1電極の導電層のフェルミエネルギー準位と前記p型有機物層のHOMOエネルギー準位とに対して約0eVエネルギー差より大きい。
【0017】
図1の(a)及び(b)は、それぞれ本発明の例示的な一具現例による電気素子で、正孔注入または正孔抽出用の第1電極内にn型有機物層を適用する前及び後の前記第1電極のエネルギー準位を示す。図1の(a)で、前記導電層は、n型有機物層のフェルミエネルギー準位(EF2)より高いフェルミエネルギー準位(EF1)を有する。真空準位(VL)は、導電層及びn型有機物層で電子が自由に移動できるエネルギー準位を表す。
【0018】
電気素子が第1電極の一部分としてn型有機物層を使用する場合、導電層は、n型有機物層と接触する。図1の(b)で、電子は、導電層からn型有機物層に移動するので、前記二層のフェルミエネルギー準位(EF1,2)は、同じになる。その結果、表面双極子が導電層とn型有機物層との間の界面に形成され、真空準位、フェルミエネルギー準位、HOMOエネルギー準位、及びLUMOエネルギー準位は、図1の(b)に示したように変わる。
【0019】
したがって、導電層のフェルミエネルギー準位とn型有機物層のLUMOエネルギー準位との差が大きいとしても、正孔注入または正孔抽出のためのエネルギー障壁は、前記導電層とn型有機物層とを接触させることによって低めうる。また、前記導電層がn型有機物層のLUMOエネルギー準位より大きいフェルミエネルギー準位を有する場合、電子は、導電層からn型有機物層に移動して前記導電層とn型有機物層との間の界面にギャップステートを形成する。したがって、電子輸送のためのエネルギー障壁は最小化される。
【0020】
前記n型有機物層は、これに限定されないが、約5.24eVのLUMOエネルギー準位を有する2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)、フッ素置換の3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、シアノ置換のPTCDA、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、またはフッ素置換のNTCDA、シアノ置換のNTCDAを含む。
【0021】
本発明の例示的な一具現例による電気素子は、正孔を注入または抽出する第1電極のn型有機物層を接触するp型有機物層を備える。したがって、NP接合が電気素子内に形成される。図2は、前記第1電極のn型有機物層とp型有機物層との間で形成されたNP接合を示す。
【0022】
NP接合が形成された場合、第1電極のn型有機物層のLUMO準位とp型有機物層のHOMO準位とのエネルギー準位の差は、減少する。したがって、外部電圧や光源によって、正孔または電子が容易に形成される。p型有機物層内で正孔、または第1電極のn型有機物層内で電子も、NP接合によって容易に形成される。前記NP接合で正孔と電子とが同時に発生するので、電子は、第1電極のn型有機物層を通じて第1電極の導電層に輸送され、正孔は、p型有機物層に輸送される。
【0023】
NP接合がp型有機物層に正孔を効率的に輸送するためには、第1電極のn型有機物層のLUMO準位とp型有機物層のHOMO準位とのエネルギー準位の差が所定レベルにあることが良い。すなわち、前記第1電極のn型有機物層のLUMO準位とp型有機物層のHOMO準位とのエネルギー準位の差は、例えば、約1eV以下であり、望ましくは、約0.5eV以下である。
【0024】
本発明の例示的な一具現例の電気素子は、これに限定されないが、有機発光素子、有機太陽電池及び有機トランジスタを備える。
【0025】
有機発光素子
有機発光素子は、正極、負極及び前記正極と負極との間に位置するp型有機物層を備える。前記p型有機物層は、正孔注入層、正孔輸送層、または発光層を備える。前記有機発光素子はまた、前記p型正孔注入層と負極との間に位置する少なくとも一つの有機物層をさらに備えうる。前記有機発光素子が複数の有機物層を備える場合、前記有機物層は、同じ物質または異なる物質で形成されうる。図3は、本発明の例示的な一具現例による有機発光素子を表す。
【0026】
図3を参照すれば、有機発光素子は、基板31、基板31上の正極32、正極32上に位置し、正極32から正孔を受けるp型正孔注入層(HIL:Hole Injection Layer)33、HIL 33上に位置し、発光層(EML:Emitting Layer)35に正孔を伝達する正孔輸送層(HTL:Hole Transporting Layer)34、HTL 34上に位置し、正孔及び電子を利用して発光するEML 35、EML 35上に位置し、負極37からの電子をEML 35に輸送する電子輸送層(ETL:Electron Transporting Layer)36及びETL 36上に位置する負極37を備えうる。HTL 34、EML 35、及びETL 36は、同じ有機物質でまたは異なる有機物質で形成されうる。
【0027】
本発明の例示的な他の具現例によれば、有機発光素子は、基板31、基板31上に位置する正極32、正極32上に位置するp型HTL 34、HTL 34上に位置するEML 35、EML 35上に位置するETL 36及びETL 36上に位置する負極37を含みうる。EML 35及びETL 36は、同じ有機物質でまたは異なる有機物質で形成されうる。
【0028】
本発明の例示的なさらに他の具現例によれば、有機発光素子は、基板31、基板31上の正極32、正極32上に位置するp型EML 35、EML 35上に位置するETL 36及びETL 36上に位置する負極37を備えうる。ETL 36は、有機物質で形成されうる。
【0029】
図3を再び参照すれば、正極32は、正孔をHIL 33、HTL 34、またはEML 35に正孔を輸送し、導電層32a及びn型有機物層32bを備える。導電層32aは、金属、金属酸化物、または導電性ポリマーで形成される。n型有機物層32bのLUMOエネルギー準位と導電層32aのフェルミエネルギー準位とのエネルギー差は、約2eV以下であり、望ましくは、約1eV以下である。n型有機物層32bのLUMOエネルギー準位とp型HIL33のHOMOエネルギー準位とのエネルギー差は、約1eV以下であり、望ましくは、約0.5eV以下である。NP接合が正極32のn型有機物層32bとp型HIL 33との間で形成される。
【0030】
本発明の他の例示的な具現例によって、HTL 34またはEML 35がp型有機物で形成された場合、n型有機物層32bのLUMOエネルギー準位とp型HTL 34またはp型EML 35のHOMOエネルギー準位とのエネルギー差は、約1eV以下であり、望ましくは、約0.5eV以下である。NP接合が正極32のn型有機物層32bとp型HTL 34またはp型EML 35との間で形成される。
【0031】
n型有機物層32bのLUMOエネルギー準位と導電層32aのフェルミエネルギー準位とのエネルギー差が約2eVより大きければ、p型HIL 33への正孔注入のためのエネルギー障壁に対する表面双極子またはギャップステートの効果が減少する。前記n型有機物層32bのLUMOエネルギー準位と前記p型HIL 33のHOMOエネルギー準位とのエネルギー差が約1eVより大きければ、p型HIL 33またはn型有機物層32bでそれぞれ正孔または電子が容易に発生しない。したがって、正孔注入のための駆動電圧が上昇する。
【0032】
図4は、有機発光素子の理想的なエネルギー準位を示す。このエネルギー準位で、正極及び負極からそれぞれ正孔及び電子を注入するためのエネルギー損失が最小化される。図5は、本発明の例示的な一具現例による有機発光素子のエネルギー準位を示す。
【0033】
図5を参照すれば、本発明の他の例示的な具現例による有機発光素子は、導電層及びn型有機物層(図3参照)を有する正極、p型HIL、HTL、EML、ETL及び負極を備える。前記正極のn型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記正極の導電層のフェルミエネルギー準位とのエネルギー差は、約2eV以下であり、また、前記正極のn型有機物層のLUMOエネルギー準位とp型HILのHOMOエネルギー準位とのエネルギー差は、約1eV以下である。正孔/電子注入または抽出のためのエネルギー障壁が前記正極のn型有機物層によって低くなったため、前記正極のn型有機物層のLUMOエネルギー準位及び前記p型HILのHOMOエネルギー準位を利用して、正孔は、正極からEMLに容易に輸送される。
【0034】
前記正極のn型有機物層が正極からp型HIL、p型HTLまたはp型EMLへの正孔注入のためのエネルギー障壁を低めるので、前記正極の導電層は、多様な導電性物質で形成されうる。例えば、前記導電層は、負極のような物質で形成されうる。正極が負極と同じ物質で形成された場合、導電性物質が低い仕事関数を有するスタック型有機発光素子のようなものが製造されうる。
【0035】
図8及び図9は、それぞれ本発明の例示的な一具現例によるスタック型有機発光素子を示す。図8を参照すれば、有機発光素子の正極71は、隣接した有機発光素子の負極75と直列に連結されている。正極71は、導電層とn型有機物層とを備える。
【0036】
図9を参照すれば、有機発光素子は、それぞれ有機物層83と中間導電層85とを有する反復単位の複数個が正極81と負極87との間に介在された等価構造を形成する。中間導電層85は、導電層とn型有機物層とを備える。前記導電層は、仕事関数が負極87物質と類似した値を有しつつ、可視光線の透過率が約50%以上である透明な物質で形成されることが望ましい。不透明金属が導電層として利用される場合、導電層の厚さは、透明になるほどに薄く形成されねばならない。不透明金属は、例えば、Al、Ag、またはCuを含む。特に、Alが中間導電層85の導電層を形成する場合、前記導電層は、例えば、約5ないし10nmの厚さを有する。スタック型有機発光素子の場合、同じ駆動電圧下でスタック型有機発光素子の数に比例して輝度が向上するので、有機発光素子をスタック型にすれば、高輝度の有機発光素子が得られる。
【0037】
以下、本発明の例示的な一具現例による有機発光素子を構成する各層について具体的に説明する。以下で説明する各層の物質は、単一物質または2以上の物質の混合物でありうる。
【0038】
正極
正極は、HIL、HTLまたはEMLのようなp型有機物層内に正孔を注入する。前記正極は、導電層とn型有機物層とを備える。前記導電層は、金属、金属酸化物または導電性ポリマーを含む。前記導電性ポリマーは、導電性ポリマーを含みうる。
【0039】
前記n型有機物層は、p型有機物層に正孔注入のためのエネルギー障壁を低めるため、前記導電層は、多様な導電性物質で形成されうる。例えば、前記導電層は、約3.5ないし5.5eVのフェルミエネルギー準位を有する。例示的な導電性物質の例は、炭素、アルミニウム、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、銀、金、その他の金属及びこれらの合金;酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO:インジウム Tin Oxide)、酸化インジウム亜鉛及びその他のこれと類似した酸化金属;ZnO:Al及びSnO:Sbのような酸化物と金属との混合物がある。有機発光素子が前面発光型である場合には、前記導電層として透明物質だけでなく、光反射率に優れた不透明物質も使われうる。背面発光型の有機発光素子の場合には、前記導電層として透明物質でなければならず、もし、不透明物質が使われる場合には、透明になるほどと薄膜に形成されねばならない。
【0040】
n型有機物層が前記導電層とp型有機物層との間に位置し、低電界で正孔をp型有機物層に注入する。n型有機物層は、前記正極のn型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記正極の導電層のフェルミエネルギー準位とのエネルギー差が約2eV以下であり、前記n型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記p型有機物層のHOMOエネルギー準位とのエネルギー差が約1eV以下となるように選択される。
【0041】
前記n型有機物層は、例えば、約4ないし7eVのLUMOエネルギー準位及び約10−8cm/Vsないし約1cm/Vs、望ましくは、約10−6cm/Vsないし約10−2cm/Vsの電子移動度を有する。電子移動度が約10−8cm/Vs未満であれば、n型有機物層からp型有機物層に正孔を注入し難い。電子移動度が約1cm/Vsを超えれば、このような物質は、非結晶性ではなく、結晶性である。このような結晶性有機物は、有機発光素子に適用し難い。
【0042】
前記n型有機物層は、真空蒸着または溶液プロセスで形成されうる。前記n型有機物は、これに限定されるものではないが、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)、フッ素置換の3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、シアノ置換のPTCDA、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、フッ素置換のNTCDA、シアノ置換のNTCDAまたはヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(HAT)を含む。
【0043】
HILまたはHTL
HILまたはHTLは、正極と負極との間に位置するp型有機物層で形成されうる。前記p型HILまたはp型HTLと前記n型有機物層とは、NP接合を形成するので、このNP接合で形成された正孔は、前記p型HILまたはp型HTLを通じてEMLに輸送される。
【0044】
前記p型HILまたはp型HTLのHOMOエネルギー準位は、例えば、前記n型有機物層のLUMOエネルギー準位に対して約1eV以下のエネルギー差、望ましくは、約0.5eVのエネルギー差を有する。前記p型HILまたはp型HTLは、アリールアミン系化合物、導電性ポリマー、または共役部分と非共役部分とが共にあるブロック共重合体を含むが、これに限定されるものではない。
【0045】
EML
正孔伝達と電子伝達とがEMLで同時に起こるので、EMLは、n型特性及びp型特性を何れも有しうる。EMLは、電子輸送が正孔輸送に比べて速いn型EMLまたは正孔輸送が電子輸送に比べて速いp型EMLでありうる。
【0046】
n型EMLでは、電子輸送が正孔輸送より速いため、HTLとEMLとの界面付近で発光がなされる。さらに良い発光効率を有するために、HTLのLUMO準位がEMLのLUMO準位より高いことが良い。n型EMLは、これに限定されるものではないが、アルミニウムトリス(8−ヒドロキシキノリン)(Alq);8−ヒドロキシキノリンベリリウム(BAlq);ベンズオキサゾール系化合物、ベンズチアゾール系化合物またはベンズイミダゾール系化合物;ポリフルオレン系化合物;またはシラシクロペンタジエン(silole)系化合物を含む。
【0047】
p型EMLでは、正孔輸送が電子輸送より速いため、ETLとEMLとの界面付近で発光がなされる。したがって、さらに良い発光効率を有するために、ETLのHOMO準位がEMLのHOMO準位より低いことが良い。
【0048】
p型EMLを使用する場合、HTLのLUMO準位変化によって得られる発光効率の向上は、n型EMLの場合に比べて小さい。したがって、p型EMLを使用する有機発光素子は、HIL及びHTLを形成せず、n型有機物層とp型EMLとの間でNP接合を有しうる。p型EMLは、これに限定されるものではないが、カルバゾール系化合物;アントラセン系化合物;ポリフェニレンビニレン(PPV)系ポリマー;またはスピロ化合物を含む。
【0049】
ETL
ETLは、負極から電子をよく注入されてEMLによく輸送できるように、大きい電子移動度を有する。前記ETLは、これに限定されるものではないが、Alq;Alq構造を含む有機化合物;ヒドロキシフラボン−金属錯化合物またはシラシクロペンタジエン(silole)系化合物を含む。
【0050】
負極
負極物質としては、HTLのようなp型有機物層に電子注入が容易になされるように、小さな仕事関数を有する。前記負極は、これに限定されるものではないが、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ及び鉛のような金属またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO/Alのような多層構造物質を含む。前記負極は、正極の導電層と同じ物質で形成されうる。または、負極または正極の導電層は、透明物質を含みうる。
【0051】
有機太陽電池
有機太陽電池は、正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在された有機薄膜を備える。前記有機薄膜は、有機太陽電池の効率及び安定性を高めるために、複数の層を備える。図6は、本発明の例示的な一具現例による有機太陽電池を示す。
【0052】
図6を参照すれば、有機太陽電池は、基板41、基板41上に位置し、導電層42aとn型有機物層42bとを有する正極42、n型有機物層42b上に位置する電子ドナー層43、電子ドナー層43上に位置する電子アクセプタ層44、及び電子アクセプタ層44上に位置する負極45を備える。有機太陽電池が外部光源から光子を受ければ、電子ドナー層43と電子アクセプタ層44との間で電子及び正孔が発生する。発生した正孔は、電子ドナー層43を通じて正極42に輸送される。
【0053】
電子ドナー層43は、p型有機物で形成される。前記有機物は、2種以上の物質の組合わせでありうる。図面で示されていないが、本発明の他の例示的な具現例による有機太陽電池は、付加的な有機薄膜をさらに備え、または製造工程を簡単にするために特定の有機薄膜を省略できる。前記有機太陽電池は、色々な機能を同時に有する有機物を使用して、有機物層の数を減少させうる。
【0054】
従来の有機太陽電池は、電子ドナー層のような有機薄膜のHOMOエネルギー準位に沿って正孔を正極に輸送する。したがって、正極のフェルミエネルギー準位と電子ドナー層のHOMOエネルギー準位とのエネルギー準位差が小さいほど、正孔抽出がさらに増加する。しかし、本発明の例示的な一具現例による有機太陽電池は、正孔を抽出するために導電層42a及びn型有機物層42bを何れも有する正極42を備える。
【0055】
n型有機物層42bのLUMOエネルギー準位と導電層42aのフェルミ準位とのエネルギー差は、約2eV以下である。n型有機物層42bのLUMOエネルギー準位と電子ドナー層43のようなp型有機物層44のHOMO準位との差は、約1eV以下である。n型有機物層42bと電子ドナー層43との間でNP接合が形成されて正孔が効率的に抽出される。このように抽出された正孔は、n型有機物層42bのLUMOエネルギー準位を通じて導電層42aに注入される。したがって、導電層42aは、多様なフェルミエネルギー準位を有する物質で形成され、負極45と正極42とは、同じ物質で形成されうる。
【0056】
前記有機太陽電池の導電層42a及び負極45は、それぞれ前記有機発光素子の導電層及び負極物質と同じ物質で形成されうる。また、前記有機発光素子でのn型有機物層用物質と同じ物質が前記有機太陽電池のn型有機物層を形成できる。前記有機太陽電池で、電子アクセプタ層44は、前記有機発光素子でのETL物質またはn型EML物質またはフラーレン系化合物で形成されうる。前記電子ドナー層43は、前記有機発光素子でのp型HTL物質またはp型EML物質またはチオフェン系化合物で形成されうる。
【0057】
有機トランジスタ
図7は、本発明の例示的な一具現例による有機トランジスタを示す。図7を参照すれば、有機トランジスタは、基板61、ソース電極65、ドレイン電極66、ゲート62、基板61及びゲート62上に位置する絶縁層63、絶縁層63上に位置し、正孔を形成するp型有機物層64、ソース電極65及び/またはドレイン電極66とp型有機物層64との間に位置するn型有機物層67を備える。n型有機物層67のLUMOエネルギー準位とソース電極65またはドレイン電極66のフェルミエネルギー準位とのエネルギー差は、約2eV以下である。n型有機物層67のLUMOエネルギー準位とp型有機物層64のHOMOエネルギー準位とのエネルギー差は、約1eV以下である。
【0058】
n型有機物層67は、LUMO準位を通じて正孔をソース電極65から抽出して、これをドレイン電極66に注入できる。n型有機物層67とp型有機物層64との間にNP接合が形成されるため、正孔がソース電極65とドレイン電極66との間で円滑に輸送されうる。本発明の他の例示的な具現例で、n型有機物層67は、ソース電極65またはドレイン電極66の一部分を形成できる。この場合には、多様なフェルミエネルギー準位を有する物質がソース電極65及びドレイン電極66を形成できる。
【0059】
本発明の例示的な一具現例の有機トランジスタで、n型有機物層67は、前記有機発光素子のn型有機物層用物質で形成されうる。ゲート62としては、前記有機発光素子の正極または負極物質として例示された物質で形成されうる。ソース電極65またはドレイン電極66は、前記有機発光素子の正極物質として例示された物質で形成されうる。p型有機物層64は、これに限定されないが、ペンタセン系化合物、アントラジチオフェン系化合物、ベンゾジチオフェン系化合物、チオフェン系オリゴマー類、ポリチオフェン類、混合されたサブユニットチオフェンオリゴマー類、またはオキシ−官能化されたチオフェンオリゴマー類を含む。絶縁層63は、酸化シリコン、窒化シリコン、ポリイミド、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルフェノール)、またはポリ(メチルメタクリレート)のようなポリマーで形成されうる。
【実施の態様】
【0060】
以下、実施例を通じて、本発明の多様な態様及び特徴をさらに詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明の多様な態様及び特徴を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0061】
UPS及びUV−VIS吸収方法によるHATのHOMO及びLUMO準位の測定
ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(Hexanitrile hexaazatriphenylene:HAT)をn型半導体特性の有機物として使用した。HATのHOMO準位は、UPS(Ultraviolet Photoelectron Spectroscopy)方法で測定された。この方法では、超真空(<10−8Torr)下で、試料にHeランプから出る真空UV線(21.20eV)を照射するとき、試料から出る電子の運動エネルギーを分析した。
【0062】
UPS方法で、それぞれ金属の場合に仕事関数が、有機物の場合にイオン化エネルギー(HOMO準位及びフェルミエネルギー準位)が測定される。すなわち、放出される電子の運動エネルギーは、試料の電子結合エネルギーと真空UVエネルギー(約21.2eV)との差となる。したがって、放出される電子の運動エネルギー分布を分析することによって、試料内物質の分子内結合エネルギー分布が分かる。放出された電子の運動エネルギーが最大エネルギー値を有する場合、試料の結合エネルギーは、最小値を有する。この結合エネルギーの最小値を利用して、試料の仕事関数(フェルミエネルギー準位)及びHOMO準位を決定できる。
【0063】
金フィルムを利用して、金の仕事関数を測定した。前記金フィルムにHAT物質を真空蒸着し、このHATから出る電子の運動エネルギーを分析することによって、HATのHOMO準位を測定した。図10は、前記金フィルムとその上のHATフィルムとから出るUPSデータを示すグラフである。H.Ishii,et al.,Advanced Materials,11,pp605−625(1999)。前記HATフィルムは、20nmの厚さを有する。
【0064】
図10を参照すれば、x軸は、金フィルムの仕事関数を基準として測定された結合エネルギー(eV)を表す。すなわち、本測定で、金の仕事関数は、照射した光エネルギー(約21.20eV)から結合エネルギーの最大値(約15.92eV)を減算した値である約5.28eVと測定された。前記HATに照射された光エネルギー(約21.20eV)から結合エネルギーの最大値(約15.21eV)と最小値(約3.79eV)との差を減算した値と定義されるHATのHOMO準位は、約9.78eVであり、フェルミエネルギー準位は、約6.02Vである。
【0065】
前記HATをガラス表面に蒸着して形成された有機物を利用して、他のUV−VISスペクトルを得、吸収エッジを分析した結果、約3.26eVのバンドギャップを有することが分かった。したがって、HATのLUMOは、約6.54eVの値を有することが分かる。この値は、HAT物質のエキシトン結合エネルギーによって変化されうる。約6.54eVのHOMOエネルギーは、約6.02eVのフェルミ準位より大きい値であるので、LUMO準位がフェルミ準位よりさらに小さな値を有するためには、エキシトン結合エネルギーが約0.52eV以上でなければならない。有機物のエキシトン結合エネルギーは、通常、約0.5eVないし約1eVの値を有するので、前記HATのLUMO準位は、約5.54ないし6.02eVの値を有する。
【実施例2】
【0066】
HATの正孔注入特性
約1000Åの厚さのITOがコーティングされたガラス基板(Corning 7059 glass)を洗剤(製造社:Fischer Co.,製品番号:15−335−55)が溶解された蒸溜水に入れて超音波で30分間洗浄した。次いで、前記ガラス基板を蒸溜水に入れて10分間実施する超音波洗浄を2回反復した。
【0067】
蒸溜水の洗浄が終われば、イソプロピルアルコール、アセトン、及びメタノール溶剤で、前記ガラス基板をこの順序で各1回ずつ超音波洗浄を実施して乾燥させた。次いで、プラズマ洗浄器内で窒素プラズマを利用して14mtorrの圧力及び50Wの電力条件で、前記ITOコーティングされたガラス基板を5分間プラズマ処理した。このように表面処理されたITO正極の仕事関数は、約4.8eVを表した。
【0068】
前記ITO電極上に約100Åの厚さのHATを熱真空蒸着してITO導電層及びHAT n型有機物層を有する正極を形成した。次いで、約1500Åの厚さの4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)及び約500Åの厚さのアルミニウムを順次に真空蒸着して、それぞれp型HTL及び負極を形成して“素子A”を製作した。前記有機物及びアルミニウムの蒸着速度は、それぞれ0.4〜0.7Å/sec、及び2Å/secであった。前記蒸着時の真空度は、約2X10−7ないし5X10−8torrであった。
【比較例1】
【0069】
n型有機物層であるHAT層がないことを除いては、実施例2と同じ方法で“素子B”を製作した。図11は、それぞれ実施例2の素子A及び比較例1の素子Bの電流−電圧特性を示すグラフである。図11を参照すれば、素子Aでは、約6Vの電圧で約40mA/cm以上の電流密度が観察されたが、素子Bでは、約10Vの電圧でも約10−3mA/cm以下の電流密度が観察された。
【0070】
NPB層とITO導電層との間にHAT n型有機物層を挿入した素子A(実施例2)の場合、図1の(b)に示したように、ITO導電層の仕事関数(約4.8eV)がHAT n型有機物層のLUMO準位(約5.54ないし6.02eV)より小さいため、電子がITO導電層からHAT n型有機物層に移動し、これを通じて図1の(b)に示したように、真空準位VLが変化する。したがって、ITO導電層とHAT n型有機物層との間のエネルギー障壁が低くなり、また、NPB層のHOMO準位(約5.4eV)からHAT n型有機物層のLUMO準位(約5.54ないし6.02eV)への電子移動を通じて、正孔がNPB層に移動する。したがって、素子Aは、所定電圧以上でさらに高い電流密度を有する。
【0071】
しかし、素子B(比較例1)は、ITO導電層の仕事関数(約4.8eV)とNPB層のHOMO準位(約5.4eV)との間で正孔注入に対するエネルギー障壁を有する。したがって、素子Bにさらに高い電圧が印加されても、素子Bの電流密度は向上しなかった。
【実施例3】
【0072】
ガラス基板(corning 7059 glass)を分散剤を溶かした蒸溜水に入れて超音波で洗浄した。洗剤は、Fischer Co.の製品を使用し、蒸溜水は、Millipore Co.の製品のフィルタで2回濾過した蒸溜水を使用した。前記ガラス基板を30分間洗浄した後、蒸溜水で2回反復して超音波洗浄を10分間進めた。
【0073】
蒸溜水洗浄が終われば、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノール溶剤の順序で超音波洗浄して乾燥させた。前記ガラス基板上に約500Åの厚さのAlを真空蒸着し、前記Al導電層上に約100Åの厚さのHAT n型有機物層を熱真空蒸着してAl導電層及びHAT n型有機物層を有する正極を形成した。次いで、約1500Åの厚さの4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)及び約500Åの厚さのアルミニウムを順次に熱真空蒸着して、それぞれp型HTL及び負極を形成した。
【0074】
前記得られた素子を“素子C”という。前記有機物、及びアルミニウムの蒸着速度は、それぞれ約0.4ないし0.7Å/sec、及び約2Å/secであった。前記真空蒸着時の真空度は、約2X10−7ないし5X10−8torrであった。
【比較例2】
【0075】
HAT n型有機物層がないことを除いては、実施例3と同じ方法で“素子D”を製作した。図12は、それぞれ実施例3の素子C及び比較例2の素子Dの電流−電圧特性を示すグラフである。図12を参照すれば、約6VのDC電圧で、素子Cの電流密度は、約20mA/cm以上であったが、素子Dの電流密度は、約10−3mA/cm以下であった。
【0076】
Alの仕事関数(約4.2eV)がITOの仕事関数(4.8eV)より低いが、素子Cのターンオン電圧には変化がなく、電圧値が特定値に到達すれば、電流密度は向上した。逆に、素子Dは、素子Bのように、悪い電流−電圧特性を表した。したがって、ITOまたはAl導電層の仕事関数の変化に比例してVLが変化し、また、前記導電層とNPB p型有機物層との間の正孔注入または正孔抽出のエネルギー障壁は、HAT n型有機物層を通じて大きく変化しなかった。
【実施例4】
【0077】
酸素プラズマ処理ITO導電層及びHAT n型有機物層を備えた正極を含む有機発光素子
約1000Åの厚さのITOがコーティングされたガラス基板を、実施例2のように洗浄した。次いで、プラズマ洗浄器内で、酸素プラズマを利用して14mtorrの圧力及び50Wの電力条件で前記ITOコーティングされたガラス基板を5分間プラズマ処理した。このITOの仕事関数は、約5.2eVを表した。
【0078】
前記ITO上に約500Åの厚さのHATを熱真空蒸着してITO導電層及びHAT n型有機物層を有する透明正極を形成した。HATのHOMOエネルギー準位は、約9.78eVであった。次いで、約400Åの厚さ及び約5.4eVのHOMO準位を有する4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)を真空蒸着して、p型HTLを形成した。前記p型HTL上に約5.7eVのHOMO準位を有するAlqを約300Åの厚さに真空蒸着して、EMLを形成させた。
【0079】
前記EML上に約5.7eVのHOMO準位を有する下記化学式1で表示される化合物を200Åの厚さに真空蒸着してETLを形成させた。
【化1】

【0080】
前記ETL上に約12Åの厚さのLiF薄膜と約2500Åの厚さのAlとを真空蒸着して負極を形成することによって、有機発光素子を完成した。前記有機物、LiF、及びAlの蒸着速度は、それぞれ約0.4ないし0.7Å/sec、約0.3Å/sec、及び約2Å/secであった。蒸着チャンバ内の真空度は、約2×10−7ないし5×10−8torrであった。
【実施例5】
【0081】
窒素プラズマ処理ITO導電層及びHAT n型有機物層を備えた正極を含む有機発光素子
実施例2のように、前記ガラス基板を洗浄し、プラズマ処理した。このガラス基板上に形成されたITOの仕事関数は、約4.8eVであった。以下の有機物層及び負極は、前記ITO導電層が形成されたガラス基板上に実施例4と同じ方法によって形成された。
【実施例6】
【0082】
Al導電層及びHAT n型有機物層を備えた正極を含む有機発光素子
実施例3と同じ方法でガラス基板を洗浄した後、約100Åの厚さにAlを真空蒸着して、仕事関数が約4.2eVである半透明Al導電層を前記ガラス基板上に形成した。以下の有機物層及び負極は、前記Al導電層が形成されたガラス基板上に実施例4と同じ方法によって形成された。
【実施例7】
【0083】
Ag導電層及びHAT n型有機物層を備えた正極を含む有機発光素子
実施例3と同じ方法でガラス基板を洗浄した後、約100Åの厚さにAgを真空蒸着して、仕事関数が約4.2eVである半透明Ag導電膜をガラス基板上に形成した。以下の有機物層及び負極は、前記Al導電層が形成されたガラス基板上に実施例4と同じ方法によって形成された。
【0084】
図13は、実施例4ないし実施例7の有機発光素子の電流−電圧特性を表すグラフである。実施例4ないし実施例7の有機発光素子の導電層の仕事関数値は、それぞれ約5.2eV、約4.8eV、約4.2eV、及び約4.2eVであった。たとえ実施例4ないし実施例7の素子は、異なる仕事関数値を有するとしても、これらの電流−電圧特性は相互類似した。したがって、前記素子の電流−電圧特性は、仕事関数値に依存しなかった。
【0085】
表1は、電流密度及び電圧に対する実施例4ないし実施例7の素子の輝度を表す。それぞれAl及びAg導電層を有する実施例6及び実施例7の素子は、それぞれ約30%未満及び約50%未満の可視光透過度を有した。これは、ITO導電層を有する素子の場合の約80%以上の値に比べて低い。したがって、Al及びAg導電層を有する素子の輝度は、前記可視光透過度を鑑みるとき、ITO導電層を有する素子の輝度と同等なものである。
【表1】

【0086】
表1に示したように、n型有機物層のLUMOエネルギー準位を通じてHTLに正孔が円滑に注入された。n型有機物層のLUMOエネルギー準位が約5.54ないし6.02eVであり、n型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記導電層の仕事関数とのエネルギー差が約2eV以下である場合、有機発光素子の電流−電圧特性は、導電層の仕事関数値に独立的であった。実施例4ないし実施例7の有機発光素子において、n型有機物層のLUMOエネルギー準位と導電層の仕事関数とのエネルギー差は、それぞれ約0.24ないし0.82eV、約0.64ないし1.22eV、約1.24ないし1.82eV、及び約1.24ないし1.82eVであった。
【実施例8】
【0087】
Al導電層及びHAT n型有機物層を備えた正極を含む有機発光素子
実施例3と同じ方法でガラス基板を準備した。約100Åの厚さにAlを真空蒸着して、仕事関数が約4.2eVである半透明Al導電層を前記ガラス基板上に形成した。真空蒸着機内で、このAl導電層が形成されたガラス基板上に約9.78eVのHOMOエネルギー準位及び約500Åの厚さのHATを熱真空蒸着してAl導電層及びHAT n型有機物層を有する正極を形成した。
【0088】
次いで、約600Åの厚さ及び約5.46eVのHOMO準位を有する4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)を真空蒸着してp型HTLを形成した。前記p型HTL上に約5.62eVのHOMO準位及び約300Åの厚さのAlqを真空蒸着して電子輸送及びEMLを形成させた。前記電子輸送及びEML上に約12Åの厚さのLiF薄膜と約2500Åの厚さのAlとを順次に真空蒸着して負極を形成した。
【0089】
前記有機物、LiF、及びアルミニウムの蒸着速度は、それぞれ約0。4ないし0.7Å/sec、約0.3Å/sec、及び約1〜2Å/secであった。蒸着チャンバ内の真空度は、約2×10−7ないし5×10−8torrであった。
【比較例3】
【0090】
実施例3と同じ方法でガラス基板を準備した。次いで、前記ガラス基板上に約100Åの厚さにAlを真空蒸着して、仕事関数が約4.2eVである半透明Al導電層を前記ガラス基板上に形成した。約5.20eVのHOMOエネルギー準位及び約150Åの厚さを有する銅フタロシアニン(CuPc)層を、前記Al導電層が形成されたガラス基板上に形成して、HILを形成した。
【0091】
次いで、約600Åの厚さ及び約5.46eVのHOMOエネルギー準位を有する4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)を前記真空蒸着してp型HTLを形成した。前記p型HTL上に約5.62eVのHOMO準位及び約300Åの厚さのAlqを真空蒸着して電子輸送及びEMLを形成させた。前記電子輸送及びEML上に約12Åの厚さのLiF薄膜と約2500Åの厚さのAlとを順次に真空蒸着して負極を形成した。
【0092】
前記有機物、LiF、及びアルミニウムの蒸着速度は、それぞれ約0.4ないし0.7Å/sec、約0.3Å/sec、及び約1〜2Å/secであった。蒸着チャンバ内の真空度は、約2×10−7ないし5×10−8torrであった。
【比較例4】
【0093】
CuPc HILを形成していないことを除いては、比較例3と同じ方法で有機発光素子を製造した。すなわち、実施例8の導電物質の仕事関数及び比較例3−4の正極の仕事関数は、約4.2eVと同一であった。
【0094】
実施例8の素子は、正極のn型有機物層として電子親和性のHATを使用したが、比較例3〜4の素子は、正極にn型有機物層を備えなかった。図14は、実施例8及び比較例3〜4の電流−電圧特性を示すグラフであった。
【0095】
図14を参照すれば、実施例8の素子は、約5Vで向上した電流密度を表したが、比較例3−4の素子は、約5Vで向上した電流密度を表さなかった。表2は、Alqによる緑色発光についての実施例8及び比較例3〜4の素子の輝度を表す。
【表2】

【0096】
表2に示したように、正極がAl導電層及びHAT n型有機物層を備える実施例8の素子は、低電圧でさらに大きい輝度を表したが、正極が導電層のみを備える比較例3−4の素子は、同じ電圧ではるかに低い輝度を表した。これは、比較例3〜4の素子では、Al導電層とCuPc HILとの間のエネルギー障壁が、正孔注入するには過度に大きかったためである。
【実施例9】
【0097】
ITO導電層及びF4TCNQ n型有機物層を備えた正極を含む有機発光素子
実施例2と同じ方法で、仕事関数が約4.8eVであるITO導電層を備えるガラス基板を準備した。前記ITO導電層が形成されたガラス基板上に約5.24eVのLUMOエネルギー準位及び約360Åの厚さのF4TCNQを真空蒸着して正極を形成した。
【0098】
次いで、約400Åの厚さ及び約5.46eVのHOMOエネルギー準位を有する4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)を真空蒸着して、p型HTLを形成した。前記p型HTL上に約5.62eVのHOMO準位及び約500Åの厚さのAlqを真空蒸着して、電子輸送及びEMLを形成させた。前記電子輸送及びEML上に約12Åの厚さのLiF薄膜と約2500Åの厚さのAlとを順次に真空蒸着して負極を形成した。
【0099】
前記有機物、LiF、及びアルミニウムの蒸着速度は、それぞれ約0.4ないし0.7Å/sec、約0.3Å/sec、及び約1〜2Å/secであった。蒸着時に蒸着チャンバ内の真空度は、約2×10−7ないし5×10−8torrであった。本実施例9の前記有機発光素子の正極と負極との間に約8Vの順方向電界を印加したとき、約198mA/cmの電流密度が発生した。Alqによる緑色発光が前記ITO導電層とF4TCNQ n型有機物層とを有する正極を通じて観察された。
【実施例10】
【0100】
Al導電層及びF4TCNQ n型有機物層を備えた正極を含む有機発光素子
実施例3と同じ方法でガラス基板を準備した。前記ガラス基板上に約100Åの厚さ及び約4.2eVの仕事関数を有するAlを真空蒸着して、半透明のAl導電層を前記ガラス基板上に形成した。実施例9と同じ方法で前記Al導電層上にF4TCNQを形成して、Al導電層及びF4TCNQ n型有機物層を備えた正極を形成した。次いで、実施例9と同様に、HTL、及び電子輸送及びEMLを順次に形成した。
【0101】
本実施例10の有機発光素子の正極と負極との間に約8Vの順方向電界を印加したとき、約190mA/cmの電流が発生した。このとき、Alqによる緑色発光が前記Al導電層及びF4TCNQ n型有機物層を備えた正極を通じて観察された。たとえ実施例10の導電層の仕事関数は、実施例9の場合と異なったとしても、実施例10の素子でも緑色発光が観察された。
【比較例5】
【0102】
ITO/F4TCNQを有する正極の代りに、ITO/Alqを有する正極を形成したことを除いては、実施例9と同じ方法で有機発光素子を製造した。すなわち、約2.85eVのLUMOエネルギー準位及び約500Åの厚さを有するAlqをITO導電層上に形成した。
【0103】
本比較例5の有機発光素子の正極と負極との間に約8Vの順方向電界を印加したとき、この素子の電流密度は、約10−2mA/cmであった。このとき、Alqによる緑色発光が観測されなかった。
【0104】
Alq及びNPB HTLの界面で電子または正孔が形成されなかった。それは、AlqのLUMOエネルギー準位(約2.85eV)とNPB HTLのHOMOエネルギー準位(約5.46eV)との差(約2.61eV)が過度に大きいためである。逆に、F4TCNQ n型有機物層及びITOまたはAl導電層を備えた正極を含む実施例9及び10の素子は、高輝度を表した。実施例9及び10の素子で、ITO導電層のフェルミエネルギー準位(約4.8eV)またはAl導電層の仕事関数(約4.2eV)とF4TCNQ n型有機物層のLUMOエネルギー準位(約5.24eV)とは、約0.44eVないし1.04eVであり、また、NPB HTLのHOMOエネルギー準位とF4TCNQ n型有機物層のLUMOエネルギー準位(約5.24eV)との差は、約0.22eVであった。
【実施例11】
【0105】
有機太陽電池
約1000Åの厚さのITOがコーティングされたガラス基板(Corning 7059 glass)を洗剤(製造社:Fischer Co.,製品番号:15−335−55)が溶解された蒸溜水に入れて超音波で30分間洗浄した。次いで、前記ガラス基板を蒸溜水に入れて5分間実施する超音波洗浄を2回反復した。
【0106】
蒸溜水の洗浄後、イソプロピルアルコール、アセトン、及びメタノール溶剤で、前記ガラス基板をこの順序で各1回ずつ超音波洗浄を実施して乾燥させた。次いで、プラズマ洗浄器内で窒素プラズマを利用して14mtorrの圧力及び50Wの電力条件で前記ITOコーティングされたガラス基板を5分間プラズマ処理した。このITOの仕事関数は、4.8eVであった。
【0107】
前記ITO透明電極上に約200Åの厚さのHATを熱真空蒸着してITO導電層及びHAT n型有機物層を有する正極を形成した。次いで、約400Åの厚さ及び約5.20eVのHOMOエネルギー準位を有するCuPcを真空蒸着してp型電子ドナー層を形成した。
【0108】
前記p型電子ドナー層上に約400Åの厚さ、約6.20eVのHOMOエネルギー準位、及び約4.50eVのLUMOエネルギー準位を有するフラーレン(C60)を真空蒸着して電子アクセプタ層を形成させた。次いで、前記電子アクセプタ層上にHOMOエネルギー準位が約7.00eVであり、LUMOエネルギー準位が約3.50eVである2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−ペナントロリン(BCP)を100Åの厚さに真空蒸着して、エキシトン遮断層を形成させた。前記エキシトン遮断層は、太陽電池の効率をさらに高めるためのものである。
【0109】
前記エキシトン遮断層上に約5Åの厚さのLiF薄膜と約2500Åの厚さのアルミニウムとを順次に真空蒸着して負極を形成した。前記有機物、LiF、及びAlの蒸着速度は、それぞれ約0.4ないし0.7Å/sec、約0.3Å/sec、及び約2Å/secであった。蒸着チャンバ内の真空度は、2×10−7ないし5×10−8torrを維持した。
【0110】
前記有機太陽電池に、キセノンランプから出た光を照射して前記太陽電池のI−Vカーブを測定することによって、有機太陽電池の効率を計算した。有機太陽電池の効率は、測定された電圧と電流との積の最大値を、照射された光エネルギーで割算することによって得られる。本実施例11の太陽電池は、約0.36%の効率を有する。
【実施例12】
【0111】
有機太陽電池
HAT n型有機物層を約400Åの厚さに蒸着したことを除いては、実施例11と同じ方法を利用して、有機太陽電池を完成した。本実施例12の太陽電池は、約0.45%の効率を有した。
【比較例6】
【0112】
HAT n型有機物層を形成していないことを除いては、実施例11と同じ方法を利用して、有機太陽電池を完成した。本比較例6の太陽電池は、約0.04%の効率を有した。ITO導電層及びHAT n型有機物層を何れも有する正極を含む実施例11及び12の有機太陽電池は、高効率を表したが、ITO導電層のみを有する正極を含む比較例6の有機太陽電池は、低効率を表した。
【0113】
本明細書は、例示的な具現例について記述されたが、本発明の範囲を逸脱せずに、多様な変化が可能であり、また、当業者ならば、前記具現例の何れかの構成要素を他の均等な要素に置換することが可能であるということが分かるであろう。また、特定の状況または材料に合わせて、本発明の本質的な範囲を逸脱しない範囲で多様な改良がなされうる。したがって、本明細書は、本発明を実施するために考案された最適の態様であって、開示された特定の具現例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に属する全ての具現例を含むと意図される。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明による電気素子は、正孔注入または正孔抽出用電極として導電層以外にn型有機物質層を備える。前記n型有機物質層は、前記n型有機物質層のLUMOエネルギー準位と前記n型有機物質層の一側面と接触する導電層のフェルミエネルギー準位とのエネルギー準位の差が約2eV以下であり、また、n型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記n型有機物質層の他の側面と接触するp型有機物層のHOMO準位とのエネルギー準位の差が約1eV以下となるように選択される。前記n型有機物質層は、正孔注入または正孔抽出に対するエネルギー障壁を低め、また、n型有機物質層とp型有機物層との間にNP接合を形成するために、本発明の電気素子は、電極として多様な物質を使用できて製造工程が簡素化され、素子効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】(a)及び(b)は、それぞれ本発明の例示的な一具現例による電気素子で、正孔注入または正孔抽出用の第1電極内にn型有機物層を適用する前及び後の前記第1電極のエネルギー準位を示す図面である。
【図2】本発明の例示的な一具現例による電気素子で、正孔注入または正孔抽出用の第1電極のn型有機物層とp型有機物層との間で形成されたNP接合を示す図面である。
【図3】本発明の例示的な一具現例による有機発光素子を示す模式的な断面図である。
【図4】有機発光素子の理想的なエネルギー準位を示す図面である。
【図5】本発明の例示的な一具現例による有機発光素子のエネルギー準位を示す図面である。
【図6】本発明の例示的な一具現例による有機太陽電池を示す模式的な断面図である。
【図7】本発明の例示的な一具現例による有機トランジスタを示す模式的な断面図である。
【図8】本発明の例示的な一具現例によるスタック型有機発光素子を示す模式的な断面図である。
【図9】本発明の例示的な一具現例によるスタック型有機発光素子を示す模式的な断面図である。
【図10】金フィルム及び前記金フィルム上に位置するHATフィルムのUPSデータを示すグラフである。
【図11】実施例2と比較例1の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図12】実施例3と比較例2の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図13】実施例4ないし7の電流−電圧特性を表すグラフである。
【図14】実施例8と比較例3〜4の電流−電圧特性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正孔を注入または抽出する第1電極であって、導電層及び前記導電層上に位置するn型有機物層を備える第1電極と、
電子を注入または抽出する第2電極と、
前記第1電極の導電層と前記第2電極との間に位置するp型有機物層であって、前記第1電極の前記n型有機物層と前記p型有機物層との間でNP接合を形成するp型有機物層と、を備え、
前記第1電極のn型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記第1電極の導電層のフェルミエネルギー準位とのエネルギー差が約2eV以下であり、
前記第1電極のn型有機物層の前記LUMOエネルギー準位と前記p型有機物層のHOMOエネルギー準位とのエネルギー差が約1eV以下であることを特徴とする電気素子。
【請求項2】
前記p型有機物層は、正孔注入層、正孔輸送層、または発光層を備えることを特徴とする請求項1に記載の電気素子。
【請求項3】
前記p型有機物層と前記第2電極との間に少なくとも一つの有機物層をさらに備え、
前記少なくとも一つの有機物層は、正孔輸送層、発光層または電子輸送層を備えることを特徴とする請求項1に記載の電気素子。
【請求項4】
前記第1電極のn型有機物層は、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)、フッ素置換の3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、シアノ置換のPTCDA、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、フッ素置換のNTCDA、シアノ置換のNTCDA、またはヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(HAT)を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気素子。
【請求項5】
前記第1電極の前記導電層は、金属、金属酸化物または導電性ポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気素子。
【請求項6】
前記第1電極の導電層と前記第2電極とは、同じ物質で形成されたことを特徴とする請求項1に記載の電気素子。
【請求項7】
導電層及び前記導電層上に位置するn型有機物層を備える正極と、
負極と、
前記正極の導電層と前記負極との間に位置するp型有機物層であって、前記正極のn型有機物層と前記p型有機物層との間でNP接合を形成するp型有機物層と、を備え、
前記正極のn型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記正極の前記導電層のフェルミエネルギー準位とのエネルギー差が約2eV以下であり、
前記正極のn型有機物層の前記LUMOエネルギー準位と前記p型有機物層のHOMOエネルギー準位とのエネルギー差が約1eV以下であることを特徴とする有機発光素子。
【請求項8】
前記p型有機物層は、p型正孔注入層を備え、前記有機発光素子は、前記p型正孔注入層と前記負極との間に位置する少なくとも一つの有機物層をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記少なくとも一つの有機物層は、前記p型正孔注入層上に位置する正孔輸送層、前記正孔輸送層上に位置する発光層、または前記発光層上に位置する電子輸送層を備えることを特徴とする請求項8に記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記発光層は、n型発光層またはp型発光層を備えることを特徴とする請求項9に記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記p型有機物層は、p型正孔輸送層を備え、前記有機発光素子は、前記p型正孔輸送層と前記負極との間に位置する少なくとも一つの有機物層をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記少なくとも一つ有機物層は、前記p型正孔輸送層上に位置する発光層、または前記発光層上に位置する電子輸送層を備えることを特徴とする請求項11に記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記発光層は、n型発光層またはp型発光層を備えることを特徴とする請求項12に記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記p型有機物層は、p型発光層を備え、前記有機発光素子は、前記p型発光層と前記負極との間に位置する有機物層をさらに備え、前記有機物層は、電子輸送層を備えることを特徴とする請求項7に記載の有機発光素子。
【請求項15】
前記正極の前記導電層及び前記負極のうち少なくとも一つは、透明物質を含むことを特徴とする請求項7に記載の有機発光素子。
【請求項16】
前記正極の導電層と前記負極とは、同じ物質で形成されたことを特徴とする請求項7に記載の有機発光素子。
【請求項17】
前記n型有機物層は、約4ないし7eVのLUMOエネルギー準位及び約10−8cm/Vsないし1cm/Vsまたは約10−6cm/Vsないし10−2cm/Vsの電子移動度を有することを特徴とする請求項7に記載の有機発光素子。
【請求項18】
前記n型有機物層は、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)、フッ素置換の3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、シアノ置換のPTCDA、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、フッ素置換のNTCDA、シアノ置換のNTCDAまたはヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(HAT)を含むことを特徴とする請求項7に記載の有機発光素子。
【請求項19】
請求項7に記載の前記正極、前記p型有機物層及び前記負極をそれぞれ有する複数の反復単位を含み、
一つの反復単位の前記負極は、直列に連結された隣接した反復単位の前記正極に連結されたことを特徴とするスタック型有機発光素子。
【請求項20】
導電層及び前記導電層上に位置するn型有機物層を備える正極と、
負極と、
前記正極の導電層と前記負極との間に位置する電子ドナー層であって、p型有機物層を備え、前記正極の前記n型有機物層と前記p型有機物層との間でNP接合を形成する電子ドナー層と、を備え、
前記正極のn型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記正極の導電層のフェルミエネルギー準位とのエネルギー差が約2eV以下であり、
前記正極のn型有機物層の前記LUMOエネルギー準位と前記p型有機物層のHOMOエネルギー準位とのエネルギー差が約1eV以下であることを特徴とする有機太陽電池。
【請求項21】
前記負極と前記電子ドナー層との間に位置する電子アクセプタ層をさらに備えることを特徴とする請求項20に記載の有機太陽電池。
【請求項22】
前記正極の導電層と前記負極とは、同じ物質で形成されたことを特徴とする請求項20に記載の有機太陽電池。
【請求項23】
前記正極のn型有機物層は、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)、フッ素置換の3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、シアノ置換のPTCDA、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、フッ素置換のNTCDA、シアノ置換のNTCDAまたはヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(HAT)を含むことを特徴とする請求項20に記載の有機太陽電池。
【請求項24】
ソース電極と、
ドレイン電極と、
ゲート電極と、
前記ゲート電極上に位置する絶縁層と、
前記絶縁層上に位置するp型有機物層と、
前記ソース電極または前記ドレイン電極と前記p型有機物層との間に位置するn型有機物層であって、前記n型有機物層と前記p型有機物層との間でNP接合を形成するn型有機物層と、を備え、
前記n型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記ソース電極または前記ドレイン電極のフェルミエネルギー準位とのエネルギー差が約2eV以下であり、
前記n型有機物層のLUMOエネルギー準位と前記p型有機物層のHOMOエネルギー準位とのエネルギー差が約1eV以下であることを特徴とする有機トランジスタ。
【請求項25】
前記n型有機物層は、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)、フッ素置換の3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、シアノ置換のPTCDA、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、フッ素置換のNTCDA、シアノ置換のNTCDA、またはヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(HAT)を含むことを特徴とする請求項20に記載の有機トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−134159(P2012−134159A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−12234(P2012−12234)
【出願日】平成24年1月24日(2012.1.24)
【分割の表示】特願2006−542511(P2006−542511)の分割
【原出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】