説明

有機電界効果トランジスタ

【課題】有機トランジスタの導電特性を改良し、高強度の電流を得られるようにする。
【構成】ソース電極6及びドレイン電極8間の半導体層10中に、導電性チャンネルに近接し、又は電気絶縁層20及び前記半導体層10に対して、ゲート電極22の反対側に位置する圧電層23を備え、該圧電層23は、前記ソース電極6及びドレイン電極8から、及び前記半導体層10から絶縁されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界効果トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
現在知られている有機電界効果トランジスタは、
−ソース及びドレイン電極、
−少なくとも前記ソース及びドレイン電極間に位置する有機半導体物質製の半導体層、
−ゲート電極、及び
−前記ゲート電極及び半導体層間に設置された電気絶縁層
を備えている。
【0003】
ゲート電極にポテンシャルが印加されると、半導体層に存在する電荷キャリアは、半導体層内に留まりつつ、半導体層と絶縁層間の界面に集中する。この電荷キャリアの集中により、トランジスタのオンサイトの導電チャンネル特性が形成される。
【0004】
有機電界効果トランジスタは、有機半導体物質を使用して生産され、ОFETと参照される。
【0005】
有機半導体は、無機半導体に類する特性を有する結晶又はポリマーの形態の有機化合物である。前記特性とは、電子と空孔による導電性及びバンドギャップの存在である。これらの物質は、有機エレクトロニクスを形成する。
【0006】
特に、導電特性を有するポリマーが1970年代に発見されると、マイクロエレクトロニクスの膨大な分野に、真の活性化がもたらされ、低価格プラスチック基板の部品の製造に新規な展望が提供された。
【0007】
近年、「プラスチック・エレクトロニクス」と称される新規分野で大きな進展が見られている。デジタルカメラ、カーオーディオ又は電子かみそりで使用される、有機発光ダイオード(OLEDs)によるディスプレイスクリーンは既に市販されている。OLEDsにおけるこの魅力ある進展は、フレキシブル基板上に低コストで集積できる、有機半導体や有機電界効果トランジスタを使用する光起電性のソーラパネルのような、有機エレクトロニクスの他の用途における研究を刺激している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これ以外にも、有機トランジスタの導電特性を改良することが試みられている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、本発明は、
ソース電極及びドレイン電極、
少なくとも前記ソース電極及びドレイン電極間に位置する、有機半導体物質製の半導体層、
電圧VGがゲート電極に印加されたときに、半導体層中の可動電荷キャリアの濃度を増加させて、前記ソース電極及びドレイン電極間の前記半導体層内に導電性チャンネルを形成する電界を生成させるのに適した前記ゲート電極、及び
前記ゲート電極及び前記半導体層間に位置する電気絶縁層を備える有機電界効果トランジスタにおいて、
前記ソース電極及びドレイン電極間の半導体層中に、前記ソース電極及びドレイン電極に並んで位置する導電性チャンネルに近接するか、又は前記電気絶縁層及び半導体層に対して、前記ゲート電極の反対側に位置する圧電層を更に備え、該圧電層は、前記ソース電極及びドレイン電極から、及び前記半導体層から絶縁されていることを特徴とする有機電界効果トランジスタを提供するものである。
【0010】
電圧VSDが前記ソース電極及びドレイン電極に印加され、かつ電圧VGがゲート電極に印加されると、前記構成を有する圧電層は、前記ソース電極及びドレイン電極間に、力学的な波動を形成する。
【0011】
半導体層内のソース電極、及びドレイン電極間で形成される力学的な波動は、金属及び半導体間のポテンシャル障壁を低下させ、これにより、半導体層内の電荷注入を改良することが可能になり、前記導電性チャンネル内を流れる電荷の数を増加させる。
【0012】
本発明の有機トランジスタの1つ又は複数の態様として、下記の要件を、単独で又は組み合わせて適用することができる。
−絶縁層が、前記圧電層と、前記ソース電極及びドレイン電極間に位置している。
−前記圧電層の長手方向の軸が、前記ソース電極及びドレイン電極の軸と実質的に平行である。
−前記圧電層の物質は、30%を超える電気機械結合係数を有する。
−前記圧電層の厚さは、少なくとも電極間スペース(C)の範囲内で可変である。
−前記圧電層は、少なくとも前記ソース電極及びドレイン電極まで広がっている。
−絶縁層は、少なくとも前記ソース電極及びドレイン電極まで広がっている。
−前記半導体層はp型であり、前記絶縁層の誘電率は3未満である。
−前記圧電層は、天然結晶、合成セラミックス又はポリマーの形態である。
−前記有機トランジスは、前記圧電層用の外部電力供給手段を更に備えている。
【0013】
本発明の他の利点及び特徴は、添付図面を参照して行う、以下の発明の詳細な説明により明らかになると思う。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1態様による有機電界効果トランジスタの概略縦断面図である。
【図2】力学的な波動が示された、動作中の図1のトランジスタの部分拡大図である。
【図3】図3A,図3B及び図3Cは、図1のトランジスタの圧電層の代替例の拡大概略縦断面図である。
【図4】図1と類似する、本発明の第2態様による有機電界効果トランジスタの概略縦断面図である。
【図5】図4のトランジスタの変形例を示す図である。
【図6】図4のトランジスタの他の変形例を示す図である。
【図7】図4のトランジスタの第4の変形例を示す図である。
【図8】圧電層を有するトランジスタと従来のトランジスタのゲート電極に印加した電圧VGの関数として、図1のトランジスタを流れる電流強度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
全図において、同じ要素には同じ参照番号を付してある。
【0016】
図1は、本発明の第1態様により製造した有機電界効果トランジスタ2を示す。該トランジスタ2は基板4を有し、基板4上には、ソース電極6とドレイン電極8が形成されている。前記基板4は例えば125μmの厚さを有し、前記ソース電極6及びドレイン電極8は、少なくとも30nmの厚さを有している。ここで、厚さは、前記トランジスタ2を形成する種々の電極や層が付着形成された前記基板4の表面に垂直な縦方向Zに向けて測定される。前記ソース電極6及びドレイン電極8は、電極間スペースCを隔てて位置している。
【0017】
有機半導体物質製の半導体層10が、少なくとも電極6及び8間に、例えば電極6及び8上に付着形成されている。前記有機半導体層10は、p型でもn型でも良く、更にポリマーでも結晶でも良い。
【0018】
この半導体層10は、前記電極6及び8に機械的及び電気的に直接接触し、少なくとも該電極6及び8を絶縁する電極間スペースCを充填する。ここで、「直接接触」とは、接触が中間的な層無しに行われることを意味する。半導体層10の最小厚さは、例えば50nmから500μmの間で、100μmが好ましい。
【0019】
電気絶縁体層あるいは絶縁層20は、ゲート電極及び半導体層10間に位置している。前記電気絶縁体層20の底面は、前記半導体層10の上面と直接に機械的に接触している。この電気絶縁体層20は、ゲート電極22を、前記半導体層10から電気的に絶縁することを可能にする。前記電気絶縁体層20の厚さは例えば50nmから2μm、好ましくは800nmである。
【0020】
実質的に、ゲート電極22は、電極6及び8を絶縁する電極間スペースCの上方に位置している。該ゲート電極22の厚さは、例えば100nmから1μm、好ましくは100nmである。ゲート電極22は、半導体層10と電気絶縁体層20との界面の電荷キャリア濃度を増加させる電界を形成でき、これにより半導体層10内に導電性チャンネルを生成する。これは、前記層20は電気絶縁体で、移動できる電荷キャリアが半導体層10に沿って位置するからである。電圧VSDがソース電極6及びドレイン電極8間に印加されると、前記導電性チャンネルは、前記両電極間に電荷(電流ION)を流すことを可能にする。このとき、トランジスタ2はオン状態にあるといわれる。逆に、電圧VGがゲート電極22に印加されないと、導電性チャンネルも形成されず、従って両電極6及び8間に電圧VSDが印加されると、僅少の電流Ioffのみが前記両電極間を流れる。全ての図の例において、電圧VGがゲート電極22に印加されて、トランジスタ2がオフ状態からオン状態にスイッチされる。
【0021】
前記トランジスタ2は、ソース電極6及びドレイン電極8間の半導体層10内の導電性チャンネルに近接して(より詳細には、図示の例の導電性チャンネルの下に)、あるいは電気絶縁体層20及び半導体層10に関してゲート電極22の反対側で、ソース電極6及びドレイン電極8の近くに位置する圧電層23を含み、該圧電層23は、前記ソース電極6及びドレイン電極8、及び半導体層10から電気的に絶縁されている。
【0022】
このように構成される圧電層23は、電圧VSDが前記ソース電極6及びドレイン電極8に印加されると、前記ソース電極6及びドレイン電極8間に、力学的な波動を発生する。
【0023】
半導体層10内のソース電極6及びドレイン電極8間で発生する力学的な波動は、金属と半導体間のポテンシャル障壁を低下させ、これにより半導体内への電荷注入を改良し、前記導電性チャンネル内を流れる電荷数を増加させる。
【0024】
電圧VSDが前記ソース電極6及びドレイン電極8に印加されると、電界が前記圧電層23に加えられる。該圧電層23の端子における電界の変化が、力学的な波動を発生させる。
【0025】
図1に示した第1態様では、圧電層23は、電極間スペースC内のソース電極6及びドレイン電極8間に位置している。該圧電層23は、その長手方向軸I−Iが前記ソース電極6及びドレイン電極8により限定される軸にほぼ平行になるように形成され、前記力学的な波動が両電極間を向くようにする。
【0026】
このように、電界が圧電層23の端子に加わると、該圧電層23の結晶構造が、優先方向に収縮又は拡張し、圧電層23に巨視的歪みを生じさせる。該歪みは印加された電圧に比例する。前記トランジスタ2が動作中であると、圧電層23の端子に加えられる電界は、前記ソース電極6及びドレイン電極8間に既に加えられているものである。従って、前記圧電層23へ供給するための他の電圧源は不要で、前記ソース電極6及びドレイン電極8間に印加されている前記電圧VSDを使用する。p型半導体層の場合、電極間のポテンシャル差は、+15Vから−40Vである。セラミック製の圧電層の場合、生成する機械的歪みは、供給電圧に比例する。
【0027】
前記有機トランジスタ2には、圧電層23に直接接続した外部電圧供給源11を設置しても良い(例えば図4参照)。前記トランジスタの圧電層23には、該トランジスタ2の動作と独立して給電しても良い。
【0028】
例えば、所望の機械的歪みに適合させる周波数と電力を有するパルスDC電圧つまり交流電界を印加することができ、前記周波数と電力は、トランジスタ2に許容されるものより高くても良い。音響的又は力学的な波動を、前記交流電界により形成することができ、これにより、この繰返し反転する電界の下で、圧電層23に一定の歪みが与えられる。
【0029】
次いで、圧縮されかつ捻られた力学的な波動のビームが発生して、半導体層10内を伝播する。図2は、トランジスタ2の遷移状態からオン状態への間の、ソース電極6から始まる力学的な波動24の伝播を示す。これらの歪みは、導電性チャンネルにストレスを与えるように作用し、前記チャンネル内の導電性を改良する。更に発生した波動が伝播すると、半導体層10内の電荷輸送間の電荷速度を増加させることによりトラップの障壁が低下する。このように、力学的な波動は、追加のエネルギを与え、トランジスタの状態変化におけるソース電極6及びドレイン電極8間の電流の流れを改善し、その応答時間を短縮化することを可能にする。更にドレイン電極8に前記波動が存在すると、電荷捕捉が改良される。
【0030】
p型半導体層の場合、ソース電極6及びドレイン電極8間の電界VSDは負であり、従って力学的な波動は、ソース電極6からドレイン電極8へ向かう方向が優先的になる(矢印25参照)。従って電荷は、力学的な波動24により、ドレイン電極8に向けて輸送され、かつ加速される。従って圧電層23は「吸引装置」として機能し、つまり電荷を吸引し、ドレイン電極8に向けて移動させる。
【0031】
圧電層23の厚さは、少なくとも電極間スペースC内で、長手方向軸I−Iに沿って変化し、圧電層23が特定形状を取って、前記ソース電極6及びドレイン電極8間で波動伝播を促進することを可能にする。
【0032】
図3A、3B及び3Cは、前記圧電層23の態様を例示している。図3Aに示す態様では、圧電層23は、厚さが前記ソース電極6からドレイン電極8に向けて増加する台形の形状を有している。この形状は、ドレイン電極8での電荷捕捉を促進する。図3Bに示す態様では、圧電層23は、同様に台形の形状を有するが、その厚さは前記ソース電極6からドレイン電極8に向けて減少している。ここではドレイン電極8へ向かう電荷輸送が促進される。図3Cに示す態様では、圧電層23は凹状の形状を有し、ソース電極6からドレイン電極8に向けて、当初は減少し、次いで増加する。電荷チャネリングは電極に向けて集中する。
【0033】
n型半導体層を有するトランジスタの作動原理は同様であり、バイアス電圧VG及びVSDの符号及び力学的な波動の伝播の優先方向は反転する。
【0034】
薄い圧電層23は、どの型であるか等の物質の性質に依存して、1ナノメートルから1ミクロンまでの厚さを有する。
【0035】
前記層は、石英、トパーズ、トルマリン、ベルリナイト(AlPO4)、糖又はロッシェル塩、オルトリン酸ガリウム(GaPO4)などの天然結晶;ヒドロキシアパタイト又はヒ酸ガリウム(GaAsO4)結晶;ペロブスカイト結晶構造又はタングステン−銅構造のセラミクス(PbTiO3, BaTiO3, KNbO3, LiNbO3, LiTaO3, BiFeO3, NaxWO3, Ba2NaNb5O5, Pb2KNb5O15 or Pb(Zr0.5Ti0.5)O3)の形態をとる。これらの物質は、30%より大きい電気化学的カップリング定数kを有し、このkは、供給した電気エネルギに対する得られる機械的エネルギの比で表される。
【0036】
圧電層を、PZTセラミックス(化学式Pb(Zrx,Ti1-x)O3)のジルコン酸チタン酸鉛)のような合成セラミックス製とすることも可能である。該合成セラミックス圧電層の厚さは、例えば0.5から1μmである。
【0037】
圧電層を、ポリビニリデン・ジフルオライド(PVDF)、つまり(CH2CF2)n あるいはその誘導体のようなポリマー製、又はランガサイト・セラミックス(例えば化合物Ba3NbFe3Si2O14)とすることも可能である。圧電ポリマーは、加工が行いやすく、従って安価であるという利点がある。しかし、これらは、電気化学的カップリング定数が小さい(PVDFは12から15%、コポリマーP(VDF−TrFE)は30%以下)。
【0038】
最後に、フォスフォテルレイト(phosphotellurate)・アンモニウムのような焦電気性物質でもある圧電性物質を選択することは有利である。トランジスタの動作中の前記物質のヒートアップにより、その性能は改良される。
【0039】
前記圧電層23を、前記半導体層10及びソース電極6及びドレイン電極8から電気的に絶縁するために、例えば圧電層の形状に依存して、前記圧電層23と前記ソース電極6及びドレイン電極8間に、絶縁層26を挿入することが可能である。該絶縁層26は、前記ソース電極6及びドレイン電極8と前記圧電層23間の短絡を防止する。
【0040】
前記圧電層23が、前記ソース電極6及びドレイン電極8に接触しておらず、かつ半導体がn型の場合は、前記絶縁層は不要である。しかし、半導体がp型の場合は、圧電層23が半導体を正常に保つために、前記絶縁層26は非常に有用になる。3未満の誘電率を有する絶縁層を選択することが有利である。
【0041】
トランジスタ2の性能改善のためには、前記絶縁層26は、その縦方向Zの厚さが出来る限り小さくなるように配置し、これにより、過度に高いキャパシタンスを有することなく、良好な絶縁性を与えながら、力学的な波動に対して障壁を形成しないようにされる。前記絶縁層26の厚さは、圧電層23で使用する物質に依存する。しかし薄い層、例えば10から500ナノメートルの厚さを選択する。150nm未満の厚さの場合、力学的な波動の伝播に関する制限を無視できる。
【0042】
図4から図7に示す第2態様では、圧電層23は、トランジスタ2の基板4上で、かつソース電極6及びドレイン電極8の下方に位置している。前記圧電層23の長手方向軸I−Iは、ソース電極6及びドレイン電極8により限定される軸とほぼ平行である。
【0043】
第1の変形例では、圧電層23は、電極間スペースCの下方に位置している(図4)。更に絶縁層26は、ソース電極6及びドレイン電極8の下方に広がっている。
【0044】
第2の変形例では、圧電層23は、電極間スペースCの下方に位置し、絶縁層26は、ソース電極6及びドレイン電極8を越えて広がっている(図5参照)。
【0045】
第3の変形例では、圧電層23は、トランジスタ2の基板4上に位置し、ソース電極6の一側面の下方から、ドレイン電極8の他面の下方まで広がっている(図6参照)。
【0046】
第4の変形例では、圧電層23は、基板4上に位置し、ソース電極6及びドレイン電極8を越えて広がっている(図7参照)。
【0047】
しかし、好ましい態様は、圧電層23が電極間スペースC内又はその下方に形成されている(図1、4及び5)ことであり、これにより、ソース電極6及びドレイン電極8と圧電層23間の寄生容量つまりバイアスの形成が限定される。
【0048】
これら全ての態様は、所謂「トップゲート」トランジスタ構造に対応している。しかし本発明は、他の構造、例えば所謂「ボトムゲート」、あるいは「縦型ゲート」構造(基板の位置のみが変化する)にも適用できる。図8のグラフは、圧電層を含まないトランジスタと比較した場合の、トランジスタ2のIon/Ioff比の改良を例示するものである。このグラフは、圧電層23を含むp型トランジスタ2(曲線27)と、圧電層を含まないp型トランジスタ(曲線28)について、ゲート電極22に印加される電圧VGの関数として、ソース電極6及びドレイン電極8間を流れる電流IDSの強度変化を示すものである。
【0049】
両曲線27、28では、電圧VGが正であると、電流IDSの強度は、電流Ioffの強度に等しい。電圧VGが0と約10Vの間であると、電流IDSの強度は、電圧VGに対して比例的に増加する(直線領域)。これを超えると、両曲線27、28とも、電流IDSの強度は飽和して定常状態になる。
【0050】
低電圧VSDでは、圧電層23の動作は僅かで、該圧電層23のトランジスタ2内に組み込んでも、オフ状態でトランジスタ2の動作を修正しない。同じ非常な低電流Ioffが電極6及び8間を流れるのみである。
【0051】
他方、高電圧VSDでは、直線又は定常領域の圧電層23を含む有機トランジスタ2の電流IDSの強度は、従来の有機トランジスタの電流IDSの強度より数十単位だけ高くなる。この場合、圧電層23の動作は重要であり、ゲート電圧VGの関数としての電流の傾斜が増加するよう作用し、電流Ionの強度を増加させる。
【0052】
前記導電性チャンネルに近接する圧電層23を含むこのようなトランジスタ2は、前記導電性チャンネル内の電荷の注入と輸送を大きく改良することが理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−ソース電極(6)及びドレイン電極(8)、
−少なくとも前記ソース電極(6)及びドレイン電極(8)間に位置する、有機半導体物質製の半導体層(10)、
−電圧VGがゲート電極(22)に印加されたときに、半導体層(10)中の可動電荷キャリアの濃度を増加させて、前記ソース電極(6)及びドレイン電極(8)間の前記半導体層(10)内に導電性チャンネルを形成する電界を生成させるために適した前記ゲート電極(22)、及び
前記ゲート電極(22)及び前記半導体層(10)間に位置する電気絶縁層(20)を備える有機電界効果トランジスタにおいて、
前記ソース電極(6)及びドレイン電極(8)間の半導体層(10)内に前記ソース電極(6)及びドレイン電極(8)に並んで位置する導電性チャンネルに近接し、又は前記電気絶縁層(20)及び半導体層(10)に対して、前記ゲート電極(22)の反対側に位置する圧電層(23)を更に備え、該圧電層(23)は、前記ソース電極(6)及びドレイン電極(8)から、及び前記半導体層(10)から絶縁されていることを特徴とする有機電界効果トランジスタ。
【請求項2】
絶縁層(26)は、前記圧電層(23)と、前記ソース電極(6)及びドレイン電極(8)間に位置している請求項1に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項3】
前記圧電層(23)の長手方向の軸(I−I)は、前記ソース電極(6)及びドレイン電極(8)の軸と実質的に平行である請求項1又は2に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項4】
前記圧電層(23)の物質は、30%を超える電気機械結合係数を有する請求項1から3までのいずれか1項に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項5】
前記圧電層(23)の厚さは、少なくとも電極間スペース(C)の範囲内で可変である請求項1から4までのいずれか1項に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項6】
前記圧電層(23)は、少なくとも前記ソース電極(6)及びドレイン電極(8)まで広がっている請求項1から5までのいずれか1項に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項7】
前記絶縁層(26)は、少なくとも前記ソース電極(6)およびドレイン電極(8)まで広がっている請求項6に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項8】
前記半導体層(10)はp型であり、前記絶縁層(26)の誘電率は3未満である請求項2から7までのいずれか1項に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項9】
前記圧電層(23)は、天然結晶、合成セラミックス又はポリマーの形態である請求項1から8までのいずれか1項に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項10】
前記圧電層(23)用の外部電力供給手段(11)を更に備える請求項1から9までのいずれか1項に記載の有機電界効果トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−267968(P2010−267968A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−110813(P2010−110813)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(510132347)コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ (51)
【Fターム(参考)】