説明

有機電界発光化合物およびこれを含む表示素子

本発明は、有機電界発光化合物およびこれを使用した表示素子に関する。本発明による有機電界発光化合物は、発光効率がよくて、物質の寿命特性に優れ、よって、駆動寿命が非常に良好なOLED素子を製造することができる。
【代表図】なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、示される新規な有機電界発光化合物およびこれを使用している表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
高効率かつ長寿命の有機電界発光(electroluminescent;EL)素子の開発において最も重要な要素は、高性能の電界発光物質の開発である。
【0003】
青色発光の場合には、発光波長が長波長側に少し移動したら、発光効率の観点からは有利になる。しかし、純青色を満足しないため、高品質のディスプレイにその物質を適用するのは容易ではない。さらに、色純度、効率、および熱安定性の問題がある。
【0004】
青色物質の場合、出光興産株式会社によって欧州特許出願公開第1063869号(特許文献1)にDPVBi(化合物a)の開発が開示されて以来、多くの物質が開発され市販されてきた。今まで最も高い効率を有することが知られてきた出光興産によるジスチリル(distyryl)化合物のシステムは、6 lm/Wの電力効率を有し、30,000時間を超える有利な素子寿命を有する。しかし、駆動時間による色純度の低下により、フルカラーディスプレイに適用した場合、その寿命はわずか数千時間に過ぎない。
【化1】

【0005】
一方、コダックにより米国特許第6,465,115号(特許文献2)に開示されているジナフチルアントラセン化合物(化合物b)は、HTL物質としてクレームに特定されている化合物であるが、これは青色電界発光化合物としても使用されてきた。しかし、これらの化合物は、発光効率と色純度の観点で解決されるべき課題を有している。
【化2】

【0006】
最近、前記化合物bと類似した範囲の電界発光物質誘導体(化合物c)がLG化学により、国際公開第2006/25700号(特許文献3)に開示されている。しかし、化合物cも同様に、発光効率と色純度に限界がある。
【化3】

【0007】
一方、緑色蛍光物質としては、Alq(ホスト)に、ドーパントとして、クマリン誘導体(化合物d、C545T)、キナクリドン誘導体(化合物e)、DPT(化合物f)などが、数%から20%以下の濃度でドープされるシステムが開発され、広く使用されている。しかしながら、これらの従来の電界発光物質は、初期発光効率の観点では実用水準の良好な性能を示すが、初期効率の低下が著しく、寿命の側面でかなりの問題を示している。よって、この物質は、より大きなスクリーンの高性能パネルについて使用されるには限界を有している。
【0008】
これは、ホストとして使用されたAlqの陽イオン性化学種の短い寿命が原因であると報告されている。この問題を克服するために、陽イオン性化学種および陰イオン性化学種についての安定性を同時に有する両性のホストの開発が非常に求められている。
【0009】
【化4】

【化5】

【化6】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1063869号明細書
【特許文献2】米国特許第6,465,115号明細書
【特許文献3】国際公開第2006/25700号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は上記の問題点を解決することであり、電界発光物質において溶媒またはエネルギーキャリアとして機能するホストの特性が、従来の物質のと比較して著しく改善されている、電界発光化合物を提供することである。また、本発明の目的は、改良された発光効率および素子寿命を有する青色もしくは緑色電界発光物質、並びにこれを含む有機電界発光物質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、下記化学式1で表される有機電界発光化合物に関する:
【化7】

(前記化学式1においては、R乃至Rは、それぞれ独立して、フェニル基、C10〜C20の縮合多環式芳香族環であり、前記R乃至Rのフェニル基またはC10〜C20の縮合多環式芳香族環には、C1〜C20のアルキル基、C1〜C20のアルコキシ基、ハロゲン、C5〜C7のシクロアルキル基、フェニル基または縮合多環式芳香族基がさらに置換可能である)。
また、本発明は、上記化合物を使用する表示素子に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は比較例1の発光効率−電流密度特性を示す。
【図2】図2は実施例9の青色OLEDの電流密度−電圧特性を示す。
【図3】図3は実施例9の青色OLEDの発光効率−電流密度特性を示す。
【図4】図4は比較例2に従って、既存の電界発光物質が適用された緑色OLEDの発光効率−輝度特性を示す。
【図5】図5は実施例22の緑色OLEDの発光効率−電流密度特性を示す。
【図6】図6は実施例22、比較例3および比較例4の緑色OLEDの発光効率−電流密度特性を示す。
【図7】図7は実施例22および比較例2の緑色OLED色純度を比較する曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で言及する電界発光物質は、広い意味で、第1の電極、第2の電極および前記第1の電極と第2の電極との間に設けられる有機物質を含んでなる有機電界発光素子において、有機物質として使用されるあらゆる物質を含み;一方、電界発光物質は、狭い意味では、電界発光層において電界発光媒質として機能する電界発光ホストに適用されるものを意味する。
【0015】
本発明による化学式1の化合物においては、R乃至Rは、それぞれ独立して、フェニル、ナフチル、アントリル、フルオレニル、フェナントリル、フルオランセニル、ピレニル、ぺリレニルまたはナフタセニルからなる群から選択され;場合によって、フェニル、ナフチル、アントリル、フルオレニル、フェナントリル、フルオランセニル、ピレニル、ぺリレニルおよびナフタセニルは、C1〜C20のアルキル基、C1〜C20のアルコキシ基、ハロゲン原子、C5〜C7のシクロアルキル基、フェニル基または縮合多環式芳香族基で置換される。本発明による化学式1で表される有機電界発光物質は、下記式:
【化8】

【化9】

【化10】

で表されうるが、これらの式は本発明の範囲を限定しない。
【0016】
また、本発明は、第1の電極;第2の電極;および前記第1の電極と第2の電極との間に設けられる1以上の有機層を含んでなる有機電界発光素子であって、前記有機層が下記化学式1で表される化合物を1種以上含む、有機電界発光素子を提供する:
【化11】

(前記化学式1においては、R乃至Rは、それぞれ独立して、フェニル基、もしくはC10〜C20の縮合多環式芳香族環であり、前記R乃至Rのフェニル基もしくはC10〜C20の縮合多環式芳香族環には、C1〜C20のアルキル基、C1〜C20のアルコキシ基、ハロゲン、C5〜C7のシクロアルキル基、フェニル基または縮合多環式芳香族基がさらに置換可能である)。
【0017】
本発明による有機電界(EL)発光素子は、有機層がEL領域を含み、当該EL領域は、ELホストとしての化学式1で表される1種以上の化合物と共に、1種以上のEL発光ドーパントを含む。本発明の有機EL素子に適用されるELドーパントは、特に限定されないが、下記化学式2乃至4のいずれかで表される化合物で例示される:
【化12】

【化13】

【化14】

【0018】
化学式3および化学式4においては、ArおよびArは、独立して、下記化学式:
【化15】

で表される、インデノフルオレン、フルオレンまたはスピロ−フルオレンであり、
11乃至R16は、それぞれ独立して、C1〜C20アルキル、およびC1〜C5アルキル置換基を有するもしくは有しないフェニルまたはナフチルからなる群から選択され;
Ar乃至Arは、それぞれ独立して、C5〜C20の芳香族または多環式芳香族環から選択され;但し、ArとArが同じであり、ArとArが同じであって、ArとArが同じである。
【化16】

AおよびBは、それぞれ独立して、化学結合、または
【化17】

を表し;
17およびR18は、それぞれ独立して、芳香族環または2以上の芳香族環が縮合している多環式芳香族環を表し;
19乃至R22は、それぞれ独立して、ハロゲン置換基を有するもしくは有しない直鎖または分岐鎖のC1〜C20のアルキル基を表し;
23乃至R26は、それぞれ独立して、水素もしくは芳香族基を表し;
Ar乃至Ar10は、それぞれ独立して、芳香族環または2以上の芳香族環が縮合されている多環式芳香族環を表す。
【0019】
化学式3または化学式4の化合物は、具体的に下記式のいずれかで表される化合物で例示されうる:
【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

(前記化学式において、R19乃至R22は、メチル基またはエチル基を表す)。
【0020】
緑色のEL化合物は、下記化学式5乃至7のいずれかで表される化合物で例示されうる:
【化27】

【化28】

【化29】

(化学式6または化学式7においては、R27およびR28は、それぞれ独立して、2以上の芳香族環が縮合している多環式芳香族環を表し、R29乃至R32は、それぞれ独立して、芳香族環を表し、前記R27乃至R32の各芳香族環には、C1〜C20アルキル基がさらに置換可能である)。
【0021】
化学式6および化学式7の化合物は、具体的に下記式:
【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

のいずれかで表される化合物で例示されうる。
【0022】
ベストモード
本発明は、実施例を参照することにより、本発明の新規の有機EL化合物を製造する方法に関してさらに説明され、この実施例は、例示のためにだけ提供され、何らかの手段によって本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0023】
[製造例]化学式1で表される化合物の製造
【化34】

【0024】
化合物12の製造
9−ブロモアントラセン(58.3mmol)、ボロン酸誘導体(化合物11、70.0mmol)、およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh)(5.8mmol)をトルエン:エタノール(容量比2:1)の混合溶液に溶かした。これに2M炭酸ナトリウム水溶液を入れて、得られた混合物を120℃で5時間還流攪拌した。その後、温度を25℃に下げて、蒸留水を加えて反応を終了させた。酢酸エチルで抽出、減圧乾燥して、テトラヒドロフランとメタノールから再結晶させて化合物12を得た。
【0025】
化合物13の製造
上述のように得られた化合物12(46.0mmol)、N−ブロモスクシンイミド(50.6mmol)を窒素気流下でジクロロメタンに溶かした。得られた溶液を、次いで、25℃で5時間攪拌した。蒸留水を加えて反応を終了させた。ジクロロメタンで抽出し、減圧乾燥して、テトラヒドロフランとメタノールから再結晶させて、化合物13を得た。
【0026】
化合物2の製造
上述のように得られた化合物13(39.0mmol)を注意深く精製したテトラヒドロフランに溶かした。得られた溶液を−78℃に冷却し、これにn−ブチルリチウム(ヘキサン中1.6M)(46.8mmol)を徐々に添加した。この混合物を1時間攪拌した後、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(78.0mmol)を添加した。温度を徐々に25℃まで上げて、この混合物を一日間攪拌した。蒸留水を加えて反応を終了させ、酢酸エチルで抽出、減圧乾燥した。テトラヒドロフランとメタノールから再結晶させて、化合物2を得た。
【0027】
化合物3の製造
2−クロロ−9,10−アントラキノン(29.7mmol)、化合物2(35.5mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh)(3.0mmol)、アリクワット336(aliquat336)(3.0mmol)をトルエンに溶かした。これに2M炭酸カリウム水溶液を添加して、得られた混合物を3時間還流攪拌した。その後、温度を25℃に下げて、蒸留水を加えて反応を終了させた。酢酸エチルで抽出、減圧乾燥して、メタノールとテトラヒドロフランから再結晶させて、化合物3を得た。
【0028】
化合物6の製造
化合物4または5のブロモ化合物(54.3mmol)にテトラヒドロフランを添加して、25℃で10分間攪拌して完全に溶かした。−72℃に温度を下げた後、n−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M)(65.1mmol)を徐々に滴加した。1時間後、これに化合物3(21.7mmol)を加えた後、徐々に25℃に温度を上げた。この反応混合物を26時間攪拌した後、これに飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて、得られた混合物を1時間攪拌した。減圧ろ過し、有機層を分離、蒸発させて化合物6を得た。
【0029】
化合物1の製造
上述のように得られた化合物6(21.7mmol)、ヨウ化カリウム(KI)(86.8mmol)、次亜リン酸ナトリウム・一水和物(NaHPO・HO)(130.2mmol)を酢酸に溶かして、この溶液を21時間還流攪拌した。25℃に冷却した後、攪拌しつつ水を加え、生成された固体をろ別した。得られた固体をメタノール、酢酸エチル、テトラヒドロフランで順に洗浄し、薄いアイボリー色の固体として、目的化合物1を得た。
【0030】
[製造例1]化合物101の製造
【化35】

【0031】
化合物300の製造
9−ブロモアントラセン15.0g(58.3mmol)、フェニルボロン酸(化合物200)8.5g(70.0mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh)6.7g(5.8mmol)をトルエン300mLとエタノール150mLの混合溶液に溶かした。これに2M炭酸ナトリウム水溶液145mLを添加した後、得られた混合物を120℃で5時間還流攪拌した。その後、温度を25℃に下げて、蒸留水150mLを加えて反応を終了させた。酢酸エチル200mLで抽出、減圧乾燥して、テトラヒドロフラン20mLとメタノール300mLから再結晶させて、目的化合物300(12.0g、47.2mmol)を得た。
【0032】
化合物400の製造
化合物300(11.7g、46.0mmol)およびN−ブロモスクシンイミド9.0g(50.6mmol)を窒素気流下でジクロロメタン360mLに溶かした。得られた溶液を、次いで、25℃で5時間攪拌した。蒸留水300mLを加えて反応を終了させた。ジクロロメタン200mLで抽出、減圧乾燥して、テトラヒドロフラン20mLとメタノール200mLから再結晶させて、目的化合物400(13.0g、39.0mmol)を得た。
【0033】
化合物500の製造
化合物400(13.0g、39.0mmol)を注意深く精製したテトラヒドロフラン200mLに溶かした。得られた溶液を−78℃に冷却し、これにn−ブチルリチウム(ヘキサン中1.6M)29.3mL(46.8mmol)を徐々に添加した。この混合物を1時間攪拌した後、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン15.9mL(78.0mmol)を添加した。温度を25℃まで徐々に上げて、この混合物を一日間攪拌した後、蒸留水200mLを加えて反応を終了させ、この混合物を酢酸エチル300mLで抽出、減圧乾燥して、テトラヒドロフラン20mLとメタノール200mLから再結晶させて、目的化合物500(13.5g、35.5mmol)を得た。
【0034】
化合物600の製造
2−クロロ−9,10−アントラキノン7.2g(29.7mmol)、化合物500(13.5g、35.5mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh)3.5g(3.0mmol)、アリクワット336(aliquat336)1.4mL(3.0mmol)をトルエン300mLに溶かした。これに2M炭酸カリウム水溶液150mLを添加したあと、得られた混合物を3時間還流攪拌した。その後、温度を25℃に下げて、蒸留水100mLを加えて反応を終了させた。酢酸エチル200mLで抽出、減圧乾燥して、メタノール200mLとテトラヒドロフラン50mLから再結晶させて、目的化合物600(10.0g、21.7mmol)を得た。
【0035】
化合物700の製造
2−ブロモナフタレン11.2g(54.3mmol)にテトラヒドロフラン250mLを添加し、この混合物を25℃で10分間攪拌して完全に溶かした。−72℃に温度を下げた後、n−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M)26.0mL(65.1mmol)を徐々に滴加した。1時間後、これに化合物600(10.0g、21.7mmol)を加えて、温度を徐々に25℃まで上げた。反応混合物を26時間攪拌した後、これに飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて、得られた混合物を1時間攪拌した。減圧ろ過し、有機層を分離、蒸発させて目的化合物700(15.6g、21.7mmol)を得た。
【0036】
化合物101の製造
化合物700(15.6g、21.7mmol)、ヨウ化カリウム(KI)14.4g(86.8mmol)、次亜リン酸ナトリウム・一水和物(NaHPO・HO)13.8g(130.2mmol)を酢酸250mLに溶かして、この溶液を21時間還流攪拌した。この溶液を25℃に冷却した後、攪拌しつつ水を400mL添加し、生成した固体をろ別した。得られた固体をメタノール300mL、酢酸エチル100mL、テトラヒドロフラン50mLで順に洗浄し、薄いアイボリー色の目的化合物101(10.0g、68%)を得た。
HNMR(CDCl,200MHz)δ=7.22(m,1H),7.32−7.35(m,12H),7.48−7.54(m,5H),7.67−7.73(m,13H),7.89(m,3H)
MS/FAB:682(実測値)682.85(計算値)
【0037】
[製造例2〜36]
製造例1に記載された手順に従って、下記表1の有機EL化合物が製造された。各化合物のNMRデータは表2に示される。
【0038】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0039】
【表5】

【表6】

【表7】

【0040】
[実施例1〜13]本発明による化合物を使用したOLED素子の製造
本発明の電界発光物質を使用することによりOLED素子を製造した。
まず、OLED用ガラス(三星−コーニング社製造)から得られた透明電極ITO薄膜(15Ω/□)を、トリクロロエチレン、アセトン、エタノール、蒸留水を順に使用して超音波洗浄を行った後、イソプロパノールに入れて保管した後使用した。
次に、真空蒸着装置の基体フォルダにITO基体を設置し、真空蒸着装置のセル内に下記化学式で表される4,4’,4”−トリス(N,N−(2−ナフチル)−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)を入れて、次いで、チャンバー内の真空度が10−6torrに至るまで排気した。セルに電流を印加して2−TNATAを蒸発させて、ITO基体上に60nm厚の正孔注入層を蒸着した。
【化36】

【0041】
次いで、真空蒸着装置の他のセル内に、下記化学式で表されるN,N’−ビス(α−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(NPB)を入れて、セルに電流を印加しNPBを蒸発させて、正孔注入層上に20nm厚の正孔輸送層を蒸着した。
【化37】

【0042】
正孔注入層および正孔輸送層を形成した後、その上に電界発光層を次のように蒸着した。真空蒸着装置の一方のセル内に、本発明による化合物(例えば、化合物121)を入れて、また他のセルには、ドーパント物質として下記構造のペリレンをを入れた。二つの物質を異なる速度で蒸発させて、ペリレンを2〜5mol%の濃度でドーピングすることにより、前記正孔輸送層上に35nm厚の電界発光層を蒸着した。
【化38】

【0043】
次いで、電子輸送層として、下記化学式で表されるトリス(8−ヒドロキシキノリン)−アルミニウム(III)(Alq)を20nm厚で蒸着し、電子注入層として、下記化学式で表されるリチウムキノレート(Liq)を1〜2nm厚で蒸着した。その後、別の蒸着装置を使用して、Al陰極を150nm厚で蒸着してOLEDを製造した。
【化39】

【0044】
OLED素子に使用された各物質は、10−6torrで真空昇華により精製した後で使用された。
【0045】
[実施例14〜26]本発明による化合物を使用することによるOLED素子の製造
実施例1におけるように、正孔注入層および正孔輸送層を形成し、その上にEL層を以下のように蒸着させた。真空蒸着装置の一方のセル内に、本発明による化合物(例えば、化合物121)を入れて、また他方のセルには、下記構造のクマリン545T(C545T)を入れた。2つの物質を異なる速度で蒸発させて、クマリン545T(C545T)を2〜5mol%の濃度でドーピングすることにより、前記正孔輸送層上に35nm厚のEL層を蒸着した。
【化40】

【0046】
実施例1におけるのと同じ手順に従って、電子輸送層と電子注入層を蒸着した後、別の蒸着装置を使用して、Al陰極を150nm厚で蒸着してOLEDを製造した。
【0047】
[比較例1]従来のEL物質を使用することによるOLED素子の製造
実施例1におけるように正孔注入層および正孔輸送層を形成した。真空蒸着装置の一方のセル内には、青色EL物質としてジナフチルアントラセン(DNA)を入れて、他方のセルには、別の青色EL物質としてペリレンを入れた。蒸着速度を100:1にして、前記正孔輸送層上に35nm厚の電界発光層を蒸着した。
【化41】

【0048】
実施例1と同じ手順に従って、電子輸送層と電子注入層を蒸着した後、別の蒸着装置を使用して、Al陰極を150nm厚で蒸着してOLEDを製造した。
【0049】
[比較例2]従来のEL物質を使用することによるOLED素子の製造
実施例1におけるように、正孔注入層および正孔輸送層を形成した。前記蒸着装置の他のセルにELホスト物質としてトリス(8−ヒドロキシキノリン)−アルミニウム(III)(Alq)を入れて、さらに他方のセルには、クマリン545T(C545T)を入れた。2つの物質を異なる速度で蒸発させてドーピングすることにより、前記正孔輸送層上に30nm厚のEL層を蒸着した。ドーピング濃度は、このましくは、Alq基準で2〜5mol%であった。
【化42】

【0050】
実施例1と同じ手順に従って、電子輸送層と電子注入層を蒸着した後、別の蒸着装置を使用して、Al陰極を150nm厚で蒸着してOLEDを製造した。
【0051】
[比較例3]従来のEL物質を使用することによるOLED素子の製造
実施例1におけるように、正孔注入層および正孔輸送層を形成した。前記真空蒸着装置の他のセルに、青色EL物質としてジナフチルアントラセン(DNA)を入れて、また他方のセルには、クマリン545T(C545T)を入れた。2つの物質を異なる速度で蒸発させてドーピングすることにより、前記正孔輸送層上に30nm厚のEL層を蒸着した。ドーピング濃度は、好ましくは、Alq基準で2〜5mol%であった。
【0052】
[比較例4]従来のEL物質を使用することによるOLED素子の製造
実施例1におけるように、正孔注入層および正孔輸送層を形成した。前記真空蒸着装置の他方のセルに、青色EL物質として下記構造を有する米国特許出願公開第20060046097A1号に開示された化合物Aを入れて、さらに別のセルに、クマリン545T(C545T)を入れた。2つの物質を異なる速度で蒸発させてドーピングすることにより、前記正孔輸送層上に30nm厚のEL層を蒸着した。ドーピング濃度は、好ましくは、Alq基準で2〜5mol%であった。
【化43】

【0053】
実施例1におけるのと同じ手順に従って、電子輸送層と電子注入層を蒸着した後、別の蒸着装置を使用して、Al陰極を150nm厚で蒸着してOLEDを製造した。
【0054】
[実験例1]製造されたOLED素子の青色EL特性
本発明に従った有機EL化合物を含む実施例1〜13から製造されたOLED、および従来の電界発光化合物を含む比較例1から製造されたOLEDの青色発光効率を、個々に、500cd/mおよび2,000cd/mで測定し、その結果を表3に示した。
【0055】
【表8】

【0056】
上記表3は、本発明の物質を青色EL素子に適用した結果を示す。表3から認められ得るように、本発明のEL物質の発光効率は、低輝度で5.26〜6.30cd/Aおよび高輝度で4.80〜5.88cd/Aであったが、一方で、比較例1のEL物質の発光効率は、低輝度および高輝度においてそれぞれ4.45cd/Aおよび3.6cd/Aであった。よって、本発明による有機EL化合物を使用したEL素子が、比較例のと比べて1.5cd/A以上高い発光効率を示した。特に、高輝度では、各化合物について、2cd/A以上の発光効率の改善が確認された。
【0057】
さらに、色純度に関しては、本発明のホスト物質を適用した場合、若干の改善が観察された。上述のように発光効率と色純度とを同時に改善する結果は、本発明のEL物質が優れた特性を有していることを立証する。
【0058】
図1は、従来のEL物質であるDNA:ペリレンを使用した比較例1の発光効率−電流密度特性を示し;図2および図3は、本発明による化合物121をEL物質として使用した実施例9の電流密度−電圧特性、および発光効率−電流密度特性を示す。図に示される結果から、著しい特性改善が確認された。
【0059】
[実験例2]製造されたOLED素子の緑色EL特性
本発明による有機EL化合物を含む実施例14〜26から製造されたOLED、および従来の電界発光化合物を含む比較例1から製造されたOLEDの緑色発光効率を個々に、5,000cd/mおよび20,000cd/mで測定し、その結果を表4に示した。
【0060】
【表9】

【0061】
上記表4は、本発明の物質が適用された緑色EL素子の特性の結果を示す。実験例1の青色EL素子と同様に、低輝度および高輝度において、従来のEL物質に比べて優れた特性が確認された。
【0062】
比較例2のAlqホストに対して70%以上、比較例3の従来のホストに対して40%以上の効率改善が確認された。この結果は、従来の緑色EL物質の限界を超えて克服することを示す。特に、高輝度における著しい性能改善は、この化合物が、高輝度が要求される大画面用OLED、または極限の特性を要求する2インチ級受動型OLEDについての実用に供されるのを充分に可能にすると推定される。
【0063】
色度座標に関しては有意差はなかった。よって、色純度を維持しつつ改善された発光効率を有する本発明のEL物質は、既存の物質を一段階超えた、画期的な発明であると言える。
【0064】
図4は、従来の緑色EL物質であるAlq:C545Tを使用した比較例2の発光効率−輝度特性を示し、図5は、本発明による化合物121をEL物質として使用した実施例22の緑色EL素子の発光効率−電流密度特性を示す。図6は、従来のEL物質を使用した比較例3および比較例4、並びにEL物質として本発明による化合物121を使用した実施例22の緑色EL素子の発光効率−電流密度特性を示す。
【0065】
本発明のEL物質は、青色OLEDおよび緑色OLEDの双方に適用可能であって、性能面で非常に優れた結果を示した。この結果は、優れたEL物質の非常に目立つ特性を示す。このような特性を有した物質の発明は、OLEDパネル構造の単純化をもたらし、結果的に、OLED製造上の費用を低減させるといった付随的結果をもたらす。この優れた特性により、OLED分野の発展に革新的な結果が起こりうる。
【0066】
図7は、本発明による化合物121をEL物質として使用した実施例22の緑色EL素子と、比較例2の緑色EL素子の色純度との比較を示す。従来の純粋な緑色EL物質と比較して優位な差を示さないことから、本発明のEL物質は良好なEL色特性を示した。実施例22のEL素子のELスペクトルでは、520nmでの典型的な緑色ELピークが確認された。このことは、青色EL特性を有する本発明の有機EL化合物が、ELドーパントの特性を最大水準まで引き出すという非常に良好な電気的特性を有しているという事実を示している。
【0067】
特に、従来のEL物質と比較して、本発明に従った物質の優れた寿命特性は、良好な電子伝導性を有する従来の物質とは対照的に、本発明の物質の最大限の利点を達成する。
【0068】
アントラセンの2番位置に9−アリールアントリルの10番位置を導入することにより、分子間オービタルの重畳効果が改善され、そしてドーパントとのエネルギー準位関係をより有利にして、単純な従来の9,10−ジアリールアントラセン構造における短所を補完する。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明による電界発光化合物は、良好な発光効率および物質の優れた寿命特性を有し、よって、駆動寿命が非常に良好なOLED素子を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される有機電界発光物質:
【化1】

(化学式1において、R乃至Rは、それぞれ独立して、フェニル基またはC10〜C20の縮合多環式芳香族環を表し、前記R乃至Rのフェニル基またはC10〜C20の縮合多環式芳香族環には、C1〜C20のアルキル基、C1〜C20のアルコキシ基、ハロゲン、C5〜C7のシクロアルキル基、フェニル基または縮合多環式芳香族基がさらに置換可能である)。
【請求項2】
化学式1のR乃至Rが、それぞれ独立して、フェニル、ナフチル、アントリル、フルオレニル、フェナントリル、フルオランセニル、ピレニル、ぺリレニルまたはナフタセニルからなる群から選択され;場合によって、フェニル、ナフチル、アントリル、フルオレニル、フェナントリル、フルオランセニル、ピレニル、ぺリレニルおよびナフタセニルは、C1〜C20のアルキル基、C1〜C20のアルコキシ基、ハロゲン原子、C5〜C7のシクロアルキル基、フェニル基または縮合多環式芳香族基で置換されている、請求項1に記載の有機電界発光物質。
【請求項3】
下記化学式:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

で表される化合物から選択される、請求項2に記載の有機電界発光物質。
【請求項4】
第1の電極;第2の電極;および前記第1の電極と第2の電極との間に設けられる1以上の有機層を含んでなる有機電界発光素子であって、
前記有機層が下記化学式1で表される化合物を1種以上含む、有機電界発光素子:
【化6】

(化学式1において、R乃至Rは、それぞれ独立して、フェニル基またはC10〜C20の縮合多環式芳香族環を表し、前記R乃至Rのフェニル基もしくはC10〜C20の縮合多環式芳香族環には、C1〜C20のアルキル基、C1〜C20のアルコキシ基、ハロゲン、C5〜C7のシクロアルキル基、フェニル基または縮合多環式芳香族基がさらに置換可能である)。
【請求項5】
有機層が電界発光領域を含み、当該電界発光領域は、化学式1で表される1種以上の化合物と1種以上の電界発光ドーパントとを含む、請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
電界発光ドーパントが下記化学式2乃至4のいずれかで表される化合物から選択される、請求項5に記載の有機電界発光素子:
【化7】

【化8】

【化9】

(式中、ArおよびArは、下記化学式:
【化10】

で表される、インデノフルオレン、フルオレンおよびスピロ−フルオレンから選択され;
11乃至R16は、それぞれ独立して、C1〜C20アルキル、およびC1〜C5アルキル置換基を有するもしくは有しないフェニルまたはナフチルからなる群から選択され;
Ar乃至Arは、それぞれ独立して、C5〜C20の芳香族または多環式芳香族環から選択され;但し、ArとArが同じであり、ArとArが同じであり、かつArとArが同じであり;
【化11】

AおよびBは、それぞれ独立して、化学結合、または原子団
【化12】

を表し;
17およびR18は、それぞれ独立して、芳香族環または2以上の芳香族環が縮合している多環式芳香族環を表し;
19乃至R22は、それぞれ独立して、ハロゲン置換基を有するもしくは有しない直鎖または分岐鎖のC1〜C20のアルキル基を表し;
23乃至R26は、それぞれ独立して、水素もしくは芳香族基を表し;
Ar乃至Ar10は、それぞれ独立して、芳香族環または2以上の芳香族環が縮合している多環式芳香族環を表す)。
【請求項7】
電界発光ドーパントが下記式のいずれかで表される化合物から選択される、請求項6に記載の有機電界発光素子:
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

(前記化学式において、R19乃至R22は、メチル基またはエチル基を表す)。
【請求項8】
電界発光ドーパントが下記化学式5乃至7のいずれかで表される化合物から選択される、請求項5に記載の有機電界発光素子:
【化22】

【化23】

【化24】

(式中、R27およびR28は、それぞれ独立して、2以上の芳香族環が縮合している多環式芳香族環を表し;R29乃至R32は、それぞれ独立して芳香族環を表し;前記R27乃至R32の各芳香族環には、C1〜C20のアルキル基がさらに置換可能である)。
【請求項9】
電界発光ドーパントが下記式:
【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

のいずれかで表される化合物から選択される、請求項8に記載の有機電界発光素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2011−504493(P2011−504493A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534861(P2010−534861)
【出願日】平成19年11月23日(2007.11.23)
【国際出願番号】PCT/KR2007/005942
【国際公開番号】WO2009/066814
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(508223435)グラセル・ディスプレイ・インコーポレーテッド (53)
【Fターム(参考)】