説明

有機電界発光素子、及び表示装置

【課題】素子寿命を延ばした有機電界発光素子を提供すること。
【解決手段】例えば、透明絶縁体基板10上に、透明電極12(陽極)、正孔注入層14、正孔輸送層16(第2有機化合物層)、中間層18A、発光層20(第1有機化合物層)、及び背面電極24(陰極)が順次積層されて構成させる。そして、正孔輸送層16と発光層20との間に挟まれて配設される中間層18Aは、正孔輸送層16を構成する材料(例えば正孔輸送材料)と、発光層20を構成する材料(例えば発光材料)と、を含んで構成させる。中間層は、上記に限られず、電子輸送層と発光層との間など、その他の有機化合物層間に設けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子、及び表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(以下、有機電界発光素子)は、電極としての陽極及び陰極間に有機化合物層を設け、両電極間に電圧を印加することによって有機化合物層内に正孔、電子を注入し、これら電荷(キャリア)が再結合することにより発光する電荷注入型の発光素子である。また、素子構造としては両電極の間に1層又は複数層の有機化合物素層が挟まれた構造となっている。有機電界発光素子は自発光型の素子であり、高輝度低電圧駆動可能な薄型大画面ディスプレーなどへの応用を目指した研究が活発に行われている。
【0003】
有機電界発光素子は、有機化合物の特性及び製作工程面で、大きく低分子材料を利用した素子と高分子材料を利用した素子とに分類される。低分子材料は主に真空蒸着法等のドライプロセスを用いて製膜が行われる。このドライプロセスは、積層構造を作製しやすい、成膜レートを調整しやすい、マスクを用いたRGBカラー素子の塗りわけが可能であるなどといった利点がある。また、低分子材料においては一般に共蒸着により発光層に色素ドーピングを行い、輝度、発光効率、色純度の向上等が図られている(特許文献1乃至3参照)。
【0004】
一方、高分子材料においては、スピンコーティング法、インクジェット法、印刷法などのウェットプロセスが適用可能であり、大気中で成膜可能であり大規模な設備も必要としない。また、低温成膜が可能であり材料選択性も広がることから、プラスチック上に成膜することでフレキシブルなディスプレーなどの実現が期待されている(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2000−315583公報
【特許文献2】特開2001−244079公報
【特許文献3】特開2003−229272公報
【特許文献4】特開2006−133573公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、特定の中間層を介さず有機化合物層を直接積層した場合に比べ、素子寿命を延ばした有機電界発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明によれば、
少なくとも一方が透明又は半透明である陽極及び陰極よりなる一対の電極と、
前記一対の電極の間に配設される第1有機化合物層と、
前記一対の電極の間に配設される第2有機化合物層と、
前記第1有機化合物層と前記第2有機化合物層とに挟まれて配設され、前記第1有機化合物層を構成する材料と前記第2有機化合物層を構成する材料とを含んで構成される中間層と、
を有することを特徴とする有機電界発光素子。
【0007】
請求項2に係る発明によれば、
前記第1有機化合物層が発光層であり、
前記第2有機化合物層が電荷輸送層であり、
前記中間層が、前記発光層を構成する材料と前記電荷輸送層を構成する材料とを含んで構成される中間層である、
ことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【0008】
請求項3に係る発明によれば、
マトリックス状及びセグメント状の少なくとも一方で配列された、請求項1又は2に記載の有機電界発光素子と、
前記有機電界発光素子を駆動する駆動手段と、
を備えることを特徴とする表示装置。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、特定の中間層を介さず有機化合物層を直接積層した場合に比べ、素子寿命が延びる。
請求項2に係る発明によれば、他の有機化合物層間に特定の中間層を設けた場合に比べ、素子寿命が延びる。
請求項3に係る発明によれば、特定の中間層を介さず有機化合物層を直接積層した有機電界発光素子を用いる場合に比べ、有機電界発光素子の素子寿命に基づく表示欠陥が長期にわたって抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、実質的に同一の機能を有する部材には、全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0011】
図1は、実施形態に係る有機電界発光素子を示す概略構成図である。図2は、他の実施形態に係る有機電界発光素子を示す概略構成図である。図3は、他の実施形態に係る有機電界発光素子を示す概略構成図である。
【0012】
本実施形態に係る有機電界発光素子100は、図1に示すように、透明絶縁体基板10上に、透明電極12(陽極)、正孔注入層14、正孔輸送層16(第2有機化合物層)、中間層18A、発光層20(第1有機化合物層)、及び背面電極24(陰極)が順次積層されて構成されている。そして、正孔輸送層16と発光層20との間に挟まれて配設される中間層18Aは、正孔輸送層16を構成する材料(例えば正孔輸送材料)と、発光層20を構成する材料(例えば発光材料)と、を含んで構成されている。
【0013】
本実施形態に係る有機電界発光素子100は、上記構成に限られず、図2に示すように、例えば、透明絶縁体基板10上に、透明電極12(陽極)、正孔注入層14、発光層20(第1有機化合物層)、中間層18B、電子輸送層22(第2有機化合物層)、及び背面電極24(陰極)が順次積層されて構成されている。そして、この形態の場合、電子輸送層22と発光層20との間に挟まれて配設される中間層18Bは、電子輸送層22を構成する材料(例えば電子輸送材料)と、発光層20を構成する材料(例えば発光材料)と、を含んで構成されている。
【0014】
無論、本実施形態に係る有機電界発光素子100は、図3に示すように、透明絶縁体基板10上に、透明電極12、正孔注入層14、正孔輸送層16、中間層18A、発光層20、中間層18B、電子輸送層22、及び背面電極24が順次積層されて構成されている。そして、図1及び図2と同様な構成の中間層18A,18Bとしてもよい。
【0015】
一方、本実施形態に係る表示装置は、上記有機電界発光素子100と、有機電界発光素子100の一対の電極(透明電極12、背面電極24)に連結され、当該一対の電極間に直流電圧を印加するための電圧印加装置30(電圧印加手段)を、駆動手段として備えたものが挙げられる。
【0016】
電圧印加装置30を用いた有機電界発光素子100の駆動方法としては、例えば、一対の電極間に、4V以上20V以下で、電流密度1mA/cm以上200mA/cm以下の直流電圧を印加することによって有機電界発光素子100を発光させる。
【0017】
また、本実施形態に係る有機電界発光素子100は、最小単位(1画素単位)の構成について説明したが、例えば、当該1画素単位(有機電界発光素子)をマトリクス状及びセグメント状の少なくとも一方で配置した表示装置に適用される。有機電界発光素子100をマトリクス状に配置する場合、電極のみをマトリクス状に配置する態様であってもよいし、電極及び有機化合物層の両方をマトリクス状に配置する態様であってもよい。また、本実施形態において有機電界発光素子100をセグメント状に配置する場合、電極のみをセグメント状に配置する態様であってもよいし、電極及び有機化合物層の両方をセグメント状に配置する態様であってもよい。
【0018】
また、本実施形態に係る表示装置の駆動方式としては、従来公知の技術、例えば複数の行電極及び列電極を配し、行電極を走査駆動しながら各行電極に対応する画像情報に応じて列電極を一括して駆動させる単純マトリクス駆動や、画素毎に配された画素電極によるアクティブマトリックス駆動等を利用される。
【0019】
上記いずれの実施形態に係る有機電界発光素子100では、発光層20などの第1有機化合物層と、電荷輸送層(正孔輸送層16及び電子輸送層22)などの第2有機化合物層と、の間に中間層18A,18Bを設ける。そして、この中間層18A,18Bは、第1有機化合物層を構成する材料と、第2有機化合物層を構成する材料と、を含んで構成させる。即ち、当該中間層18A,18Bは、2者の材料の混合層をする。この構成の中間層18A,18Bを設けることで、第1有機化合物層と第2有機化合物層との間に生じる電気的な障壁が低減されると考えられる。このため、特定の中間層18A,18Bを介さず有機化合物層を直接積層した場合に比べ、素子寿命が延びる。つまり、例えば、非発光領域(ダークスポット)の発生・広がりを抑制し、初期輝度半減寿命が長期化された素子となる。結果、本実施形態に係る表示装置は、長期にわたって、有機電界発光素子の素子寿命に基づく表示欠陥が抑制される。
【0020】
特に、中間層18A,18Bを、第1有機化合物層として発光層20と、第2有機化合物層として電荷輸送層(正孔輸送層16及び電子輸送層22)と、の間に設けることで、発光層20と電荷輸送層との間の界面において生じる電荷トラップを抑制すると共に、電荷注入性が向上されると考えられる。このため、特に、他の有機化合物層間に特定の中間層を設けた場合に比べ、非発光領域(ダークスポット)の発生・広がりを抑制し、素子寿命が延びる。
【0021】
ここで、中間層18A,18Bにおいて、第1化合物層を構成する材料と、第2化合物層を構成する材料と、の混合比は、重量比で7:3から3:7までの範囲、望ましくは3:2から2:3までの範囲がよい。
【0022】
無論、発光層20と電荷輸送層(正孔輸送層16及び電子輸送層22)との間以外、例えば、正孔注入層14と正孔輸送層16との間などその他の有機化合物層間に、両者の材料を混合物が含まれる中間層を設けてもよい。
【0023】
次に、本実施形態に係る有機電界発光素子の製造方法と共に、より詳細に説明する。
【0024】
図4は、本実施形態に係る有機電界発光素子の製造方法を示す工程図である。なお、本実施形態に係る有機電界発光素子の製造方法については、図3に示す層構成を有する有機電界発光素子の製造方法について示す。
【0025】
まず、図4(A)に示すように、透明絶縁体基板10を準備する。ここで、透明絶縁体基板10としては、発光を取り出すため透明なものが望ましく、ガラス基板、プラスチックフィルム基板等が用いられる。ここで、透明とは、可視領域の光の透過率が10%以上であることを意味し、更に透過率が75%以上であることが望ましい。また、絶縁性とは、体積抵抗率が1013 Ωcm以上であることをいう。以下同様である。
【0026】
次に、図4(B)に示すように、透明絶縁体基板10上に、透明電極12を形成する。透明電極12は、透明絶縁体基板10と同様に発光を取り出すため透明であって、かつ正孔の注入を行うため仕事関数の大きなものが望ましく、例えば、酸化膜(例えば酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム、又は酸化亜鉛等)、金属膜(例えば金、白金、又はパラジウム等)が好適に用いられる。この透明電極12は、例えば、蒸着法、又はスパッタリング法などにより形成される。
【0027】
次に、図4(C)に示すように、透明電極12が形成された透明絶縁体基板10上に、正孔注入層14を形成する。正孔注入層14を構成する正孔注入材料としては、例えば、MTDATA(4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、銅フタロシアニン、ポリアニリン、PEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォネート)又はこれらの混合物が望ましく用いられる。
【0028】
ここで、正孔注入層14は、正孔注入材料とこれを溶解又は分散させる溶剤とを含む塗布液を用い、例えば、これをスピンコーティング法、ディップ法等を用いて製膜することによって形成される。
【0029】
次に、図4(D)に示すように、正孔注入層14が形成された透明絶縁体基板10上に、正孔輸送層16を形成する。正孔輸送層16を構成する正孔輸送材料としては、正孔輸送材料としては、テトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物等が望ましく用いられる。特に好適な具体例として下記例示化合物(I−1)〜(I−6)が挙げられる。なお、(I−1)〜(I〜6)中、nは1以上の整数を示す。
【0030】
【化1】

【0031】
【化2】

【0032】
ここで、正孔輸送層16は、正孔輸送材料とこれを溶解又は分散させる溶剤とを含む塗布液を用い、例えば、これをスプレー法、又はエレクトロスプレー法により製膜することによって形成される。無論、正孔輸送層16は、スピンコーティング法、ディップ法等を用いて製膜することによって形成してもよい。
【0033】
次に、図4(E)に示すように、正孔輸送層16が形成された透明絶縁体基板10上に、中間層18Aを形成する。中間層18Aを構成する材料は、正孔輸送層16を構成する材料(例えば正孔輸送材料)と、発光層20を構成する材料(例えば発光材料)と、の混合材料である。
【0034】
ここで、中間層18Aは、正孔輸送材料及び発光材料とこれらを溶解又は分散させる溶剤とを含む塗布液を用い、例えば、これをスプレー法、又はエレクトロスプレー法により製膜することによって形成される。
【0035】
次に、図4(F)に示すように、中間層18Aが形成された透明絶縁体基板10上に、発光層20を形成する。発光層20を構成する発光材料としては、他の状態よりも固体状態で高い蛍光量子収率を示す化合物が挙げられ、例えば、低分子発光材料、又は高分子発光材料が挙げられる。低分子発光材料としては、キレート型有機金属錯体、多核又は縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサチアゾール誘導体、又はオキサジアゾール誘導体等が挙げられる。高分子発光材料としては、例えば、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、又はポリアセチレン誘導体等が挙げられる。好適な具体例として、下記の化合物(II−1)乃至化合物(II−17)が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0036】
【化3】

【0037】
【化4】

【0038】
なお、化合物(II−1)〜(II−17)中、Arは、Arは置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の縮合芳香族炭化水素、又は置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環を表す。
化合物(II−1)〜(II−17)中、Xは、置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表す。具体的には、Xは、置換もしくは未置換のフェニレン基、置換もしくは未置換の芳香族数2以上10以下の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香族数2以上10以下の2価の縮合環芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の芳香族複素環、又は少なくとも1種の芳香族複素環を含む置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表す。
化合物(II−1)〜(II−17)中、n及びxは1以上の整数を、yは0又は1を示す。
【0039】
また、上記多核芳香族炭化水素、縮合芳香族炭化水素、及び芳香族複素環は特に限定されない。なお、当該多核芳香族炭化水素、縮合芳香族炭化水素、及び芳香族複素環とは、本実施形態においては、具体的には以下に定義されることを意味する。
【0040】
すなわち、「多核芳香族炭化水素」とは、炭素と水素から構成される芳香環が2個以上10個以下存在し、環同士が炭素―炭素結合によって結合している炭化水素を表す。具体的には、ビフェニル、ターフェニル等が挙げられる。
「縮合芳香族炭化水素」とは、炭素と水素から構成される芳香環が2個以上存在し、環同士が1対の炭素原子を共有している炭化水素を表す。具体的には、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、又はフルオレン等が挙げられる。
「芳香族複素環」とは、炭素と水素以外の元素も含む芳香環を表す。芳香族複素環には、芳香環に複素環が置換しているもの、複素環に芳香環が置換しているもののいずれも含む。また、複素環は、その環骨格を構成する原子数(Nr)が、Nr=5及び/又は6が望ましく用いられる。また、環骨格を構成する炭素原子以外の原子(異種原子)の種類及び数は特に限定されないが、例えば、硫黄原子、窒素原子、酸素原子、セレン原子、又は珪素原子等が望ましく用いられ、前記環骨格中には2種類以上及び/又は2個以上の異種原子が含まれてもよい。特に5員環構造をもつ複素環として、チオフェン、ピロール、フラン、セレノフェン、及びシロール又は、前記化合物の3位及び4位の炭素を窒素で置き換えた複素環が望ましく用いられ、6員環構造を持つ複素環として、ピリジンが望ましく用いられる。
【0041】
ArやXを表す構造として選択される各基が置換基を有する場合、該置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、アラルキル基、置換アミノ基、又はハロゲン原子が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1以上10以下のものが望ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、又はターシャリーブチル基等が挙げられる。
アルコキシル基としては、炭素数1以上10以下のものが望ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、又はイソプロポキシ基等が挙げられる。
アリール基としては、炭素数6以上20以下のものが望ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、炭素数7以上20以下のものが望ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
置換アミノ基の置換基としては、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基等が挙げられ、具体例としては前述の通りである。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられ、中でもフッ素原子が望ましい。
置換又は未置換のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香環数2以上10以下の1価の縮合芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環としては、前述と同様である。
【0042】
発光層20は、発光材料が低分子発光材料の場合、結着樹脂を含んで構成させることがよい。また、発光層20は、有機電界発光素子の耐久性向上又は発光効率の向上を目的として、上記発光材料中にゲスト材料として発光材料と異なる色素化合物を添加(ドーピング)されていてもよい。発光層20中における色素化合物の添加(ドーピング)の割合としては、例えば、0.001重量%以上40重量%以下程度、望ましくは0.001重量%以上10重量%以下程度である。この添加(ドーピング)に用いられる色素化合物としては、発光材料との相容性が良く、かつ発光層の良好な薄膜形成を妨げない有機化合物が用いられ、好適には4−ジシアンメチレン−2−メチル−6−(p2ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)誘導体、キナクリドン誘導体、ルブレン誘導体、又はポルフィリン等が用いられる。好適な具体例として、下記の化合物(III−1)〜(III−5)が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0043】
【化5】

【0044】
ここで、発光層20は、発光材料とその他添加物(例えば色素化合物)とこれらを溶解又は分散させる溶剤とを含む塗布液を用い、例えば、これをスプレー法、又はエレクトロスプレー法により製膜することによって形成される。無論、発光層20は、スピンコーティング法、ディップ法等を用いて製膜することによって形成してもよい。但し、発光材料として低分子発光材料を用いる場合、塗布液には結着樹脂も含まれる。
【0045】
次に、図4(G)に示すように、発光層20が形成された透明絶縁体基板10上に、中間層18Bを形成する。中間層18Bを構成する材料は、発光層20を構成する材料(例えば発光材料)と、電子輸送層22を構成する材料(例えば電子輸送材料)と、の混合材料である。
【0046】
ここで、中間層18Bは、発光材料及び正孔輸送材料とこれらを溶解又は分散させる溶剤とを含む塗布液を用い、例えば、これをスプレー法、又はエレクトロスプレー法により製膜することによって形成される。
【0047】
次に、図4(H)に示すように、中間層18Bが形成された透明絶縁体基板10上に、電子輸送層22を形成する。電子輸送層22を構成する電子輸送材料としては、好適にはオキサジアゾール誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、又はフルオレニリデンメタン誘導体等が挙げられる。好適な具体例として、下記の化合物(IV−1)〜(IV−3)が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0048】
【化6】

【0049】
ここで、電子輸送層22は、電子輸送材料とこれを溶解又は分散させる溶剤とを含む塗布液を用い、例えば、これをスプレー法、又はエレクトロスプレー法により製膜することによって形成される。無論、電子輸送層22は、スピンコーティング法、ディップ法等を用いて製膜することによって形成してもよい。
【0050】
次に、図4(I)に示すように、電子輸送層22が形成された透明絶縁体基板10上に、背面電極24を形成する。背面電極24は、電子注入を行うため仕事関数の小さな金属が使用されるが、特に望ましくはマグネシウム、アルミニウム、銀、インジウム、又はこれらの合金が挙げられる。背面電極24は、例えば、蒸着法や、スパッタリング法などにより形成される。
【0051】
なお、図示しないが、背面電極24上には、さらに素子の水分や酸素による劣化を防ぐために保護層を形成してもよい。具体的な保護層の材料としては、金属(In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、又はAlなど)、金属酸化物(MgO、SiO、又はTiO等)、又は樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリウレア樹脂、又はポリイミド樹脂等)等が挙げられる。保護層の形成には、例えば、蒸着法、スパッタリング法、プラズマ重合法、CVD法、コーティング法が適用される。
【0052】
以上説明した本実施形態に係る有機電界発光素子の製造方法では、正孔輸送層16、中間層18A、発光層20、中間層18B、電子輸送層22を、塗布液を霧状に噴霧する手法(スプレー法やエレクトロスプレー法等)により、連続して製膜して形成することがよい。
【0053】
具体的には、例えば、正孔輸送層16を形成するための塗布液を噴霧するノズル40により、当該塗布液を噴霧して正孔輸送層16を形成する(図4(D)参照)。この際、ノズル40と透明絶縁体基板10とを相対的に移動させて、特定の領域に正孔輸送層16を形成する。この操作は、他の層の形成でも同様である。
【0054】
次に、ノズル40による正孔輸送層16を形成するための塗布液の噴霧を終了させることなく、当該ノズル40による噴霧領域(霧状の塗布液が塗布面に接触する領域)と重なるように、発光層20を形成するための塗布液を噴霧するノズル42により、当該塗布液を噴霧して中間層18Aを形成する(図4(E)参照)。つまり、中間層18Aは、正孔輸送材料を含む塗布液をノズル40により噴霧すると共に、発光材料を含む塗布液をノズル42により噴霧することで形成される。なお、この各塗布液の噴霧量を調整することで、中間層18Aを構成する、上層・下層の両構成材料の混合比率が調整される。
【0055】
次に、ノズル40による正孔輸送層16を形成するための塗布液の噴霧を終了させる一方で、ノズル42による発光層20を形成するための塗布液の噴霧を続行することにより、発光層20を形成する(図4(F)参照)。
【0056】
次に、ノズル42による発光層20を形成するための塗布液の噴霧を終了させることなく、当該ノズル44による噴霧領域(霧状の塗布液が塗布面に接触する領域)と重なるように、電子輸送層22を形成するための塗布液を噴霧するノズル44により、当該塗布液を噴霧して中間層18Bを形成する(図4(G)参照)。つまり、中間層18Bは、発光材料を含む塗布液をノズル42により噴霧すると共に、電子輸送材料を含む塗布液をノズル44により噴霧することで形成される。なお、この各塗布液の噴霧量を調整することで、中間層18Bを構成する、上層・下層の両構成材料の混合比率が調整される。
【0057】
次に、ノズル42による発光層20を形成するための塗布液の噴霧を終了させる一方で、ノズル44による電子輸送層22を形成するための塗布液の噴霧を続行することにより、電子輸送層22を形成する(図4(H)参照)。
【0058】
上記如く、各層を形成するための塗布液を霧状に噴霧する手法(スプレー法やエレクトロスプレー法等)では、各層を構成する原料有機材料(発光材料、電荷輸送材料等)を溶剤に溶解又は分散させた塗布液をノズルから霧状に射出する。ここで、溶剤として揮発性の有機溶剤を適用すると、この霧状の塗布液が被塗布面上に到達する過程において当該有機溶媒が揮発して、原料有機材料から構成された粒子が形成される。つまり、当該有機溶剤が揮発した粒子、即ち、乾燥した粒子が被塗布面上に到達することになるため、下層(中間層を含む有機化合物層)の溶解が抑制されつつ、目的とする層(中間層を含む有機化合物層)が形成される。ここで、揮発性とは、沸点が200℃以下のものを示す。
【0059】
塗布液を霧状に噴霧する手法(スプレー法やエレクトロスプレー法等)において、中間層18A,18Bを形成する際、噴霧する2種の塗布液の噴霧量を互いに変化させ、上層・下層との界面を形成させないように形成してもよい。具体的には、例えば、下層を形成するための塗布液の噴霧して下層を形成した後、当該塗布液を噴霧しつつ、上層を形成するための塗布液の噴霧を開始し、その噴霧量を除々に増加させると共に、下層を形成するための塗布液の噴霧量を低減させていき、最終的に上層を形成するための塗布液の噴霧のみとして中間層18A,18Bを形成し、そのまま、上層を形成するための塗布液を噴霧を続行し、上層の形成を行う。これにより、中間層18A,18Bが、下層を形成するための塗布液(原料有機材料)と上層を形成するための塗布液(原料有機材料)との割合が厚み方向に連続的に傾斜した組成(傾斜組成)となり、上層・下層と中間層18A,18Bとの明確な界面形成が抑制される。
【0060】
塗布液を霧状に噴霧する手法(スプレー法やエレクトロスプレー法等)は、所望の膜厚を得やすく、装置構成も簡単で安価なものであり、低コスト化も実現される。また、当該塗布液を霧状に噴霧する手法において、2本以上のノズルを組み合わせることで、連続的に且つ効率よく、目的とする層(中間層を含む有機化合物層)の形成がなされる。
【0061】
なお、塗布液を霧状に噴霧する手法は、中間層18A,18Bのみの形成に採用して、他の層は、スピンコーティング法、ディップ法等により形成してもよい。
【0062】
一方、中間層18A,18Bを形成するため成膜法は、上記塗布液を霧状に噴霧する手法(スプレー法やエレクトロスプレー法)に限られず、所謂、塗布液の霧状物(ミスト)を生成して、これを堆積させるミスト法を採用してもよい。このミスト法は、例えば、それぞれ異なる塗布液(本実施形態では、発光層20を形成するための塗布液と電荷輸送性層(正孔輸送層16又は電子輸送層)を形成するための塗布液)が収納されたミスト発生源から、各塗布液を搬送ガス中に噴射してミストを形成する工程、複数のミスト発生源から各ミスト搬送管を介して供給されたミストを攪拌、混合する工程、この攪拌されたミストをミスト照射ノズルから被塗布面(下層が形成された基板)上に照射してミスト堆積膜(中間層18A,18B)を形成する工程、及びこのミスト堆積膜を乾燥する工程と、を含むものである。本ミスト法においては、ミスト化された塗布液をミスト発生源から搬送管へ搬送する際、ミスト化された塗布液を帯電させることがよい。また、ミスト照射ノズルは金属メッシュフィルターを有し、該金属メッシュフィルターと被塗布面(被塗布物(下層が形成された基板)を保持する保持部材)との間に電圧を印加して、照射ミストを印加電圧により加速するもよい。
【0063】
上記如くミスト法に適用される成膜装置として具体的には、例えば、図5に示すように、
それぞれ異なる塗布液(本実施形態では、発光層20を形成するための塗布液と電荷輸送性層(正孔輸送層16又は電子輸送層)を形成するための2種の塗布液)を搬送ガス中に噴射して、それぞれの塗布液のミストを形成するミスト形成手段52A,52Bと、
該ミスト形成手段52A,52Bに塗布液を供給する塗布液供給手段53A,53B(例えば、図示しないポンプ、流量制御弁及び流量測定装置からなる。)と、
該ミスト形成手段52A,52Bによって形成されたミストをミスト搬送管54A,54Bに搬送するための搬送ガス供給手段56A,56Bと、
ミスト搬送管54A,54Bによって供給される各塗布液のミストを攪拌、混合するためのミスト撹拌槽58と、
該混合された各塗布液のミストを被塗布物10Aに対し照射するためのミスト照射ノズル60と、
被塗布物10Aを加熱するための加熱ヒーター62と、
該被塗布物10Aを固定する保持部材64と、を備えている。
また、ミスト撹拌槽58と、ミスト照射ノズル60と、加熱ヒーター62、及び保持部材64は、ガス排出口66Aを備えた筐体からなる成膜室66内に配設されている。
また、各塗布液供給手段53A,53Bは、各塗布液を貯蔵する貯蔵容器55A,55Bと連結され、当該塗布液供給手段53A,53Bによりミスト形成手段52A,52Bへ各塗布液が随時供給されるよう構成されている。
【0064】
ここで、ミスト形成手段52A,52Bでは、各塗布液のミストはノズル(図示せず)から搬送ガス中に噴霧して形成される。ミスト形成手段52A,52Bとしては、スプレー法を利用したもの、又はピエゾによる超音波振動子を利用したものなどがあるが、望ましくはピエゾからなる超音波振動子を利用したものが用いられる。ミスト形成手段52A,52Bでは、塗布液の粘度、表面張力及び超音波振動子の振動周波数などにより、ミスト形成量の調整や、ミスト径を例えば0.5μm以上30μm以下とする。
【0065】
また、ミスト形成手段52A,52Bによるミスト形成過程において、ミスト形成と同時にミストを帯電させてもよい。帯電させる方法としては、例えば、ミスト形成手段52A,52Bのミストを生成するノズル(不図示)中心に電極を設置し、電圧を印加するなどといった手法が採用される。形成された塗布液のミストは、搬送ガス中に浮遊した状態となり、ミスト搬送管54A,54Bによりミスト撹拌槽58に搬送される。ミスト形成手段52A,52Aには、それぞれの搬送ガス供給手段56A,56Aから窒素、アルゴン、ヘリウム等のガスが搬送ガスとして送られる。搬送ガス供給手段56A,56Bは、例えばガスボンベ、ガス圧力調整器、及びガス流量制御器などからなる。
【0066】
ミスト形成手段52A,52Bにおいて形成された塗布液のミストは、搬送ガスによってそれぞれミスト搬送管54A,54Aを通り、ミスト撹拌槽58に供給される。ミスト撹拌槽58においては供給された搬送ガスによって対流が起き、異なる塗布液のミストが撹拌、混合される。このとき、異なる塗布液のミストは、同極に帯電しているため、互いに反発し、撹拌により凝集が抑制されて混合される。このミスト撹拌槽58にヒーター等の加熱源を設置してもよい。このヒーターなどの加熱源によりミストを構成する溶媒の一部が蒸発し、塗布液の原料有機材料の濃度が上昇するので、比較的短時間に所望の膜厚が得られやすくなる。
【0067】
ミスト撹拌槽58にて撹拌された塗布液のミストは、ミスト撹拌槽58の被塗布物10A(被塗布面)方向に向けられて設けた開口部、即ち、ミスト照射ノズル60を通して被塗布物10Aに噴射される。このミスト照射ノズル60は金属メッシュフィルターからなることがよく、この金属メッシュフィルターの開口穴径より大きいミストはここで捕集されるため、ミストの粒径分布を小さくする所謂ミストリファイナーの役割を果たす。また、ミスト照射ノズル60と保持部材64との間に、保持部材64が帯電ミストの対向電荷となるように電圧を印加することにより、ミスト照射ノズル60から噴射される帯電された塗布液のミストが電界によって加速される。よって、塗布液のミストの被塗布物10Aへの堆積レートがコントロールされ、塗布液のミストを加速し短時間に所望の膜厚を得ることや、塗布液のミストの堆積速度を落として平坦性のよい膜が得られる。
【0068】
上記ミスト法において、例えば、塗布液のミストの粒径は0.5μm以上30μm以下であることがよく、これにより塗布液のミストの体積に対する表面積の割合が大きくなり、大気中の溶媒沸点より低い温度で溶媒が気化しやすくなる。そのため、被塗布物10Aを加熱ヒーター62で加熱しておくことにより、塗布液のミストの被塗布物10Aへの付着と同時に溶媒が気化し、下層となる層(有機化合物層)への溶解を抑制しつつ、膜(層)の積層がなされる。また、ミスト化した塗布液(原料有機材料)を被塗布物10Aに堆積することにより、任意の膜厚を得やすく、製造装置構成も真空蒸着機よりも高価な構成とならず、比較的安価なものである。また、複数のミスト発生源を組み合わせることで連続的に、効率よく、異なる塗布液が混合された混合層(中間層18A,18B)の形成が実現される。
【0069】
上記ミスト法において、中間層18A,18Bを形成する際、2種の塗布液のミストの堆積レートを互いに変化させ、上層・下層との界面を形成させないように形成してもよい。具体的には、例えば、下層を形成するための塗布液のミストをミスト撹拌槽58に導入して、ミスト照射ノズル60より照射して下層を形成した後、継続して当該塗布液のミストをミスト撹拌槽58へ導入しながら、上層を形成するための塗布液のミストを前者とは異なるミスト搬送管よりミスト撹拌槽58に徐々に導入して混合し、連続的に混合した塗布液のミストを被塗布物10A(下層)に照射することで中間混合層を形成する。次いで、徐々にミスト撹拌槽58への下層を形成するための塗布液のミストの導入を減少させ、照射する塗布液のミスト中の下層を形成するための塗布液(原料有機材料)のミストの割合を減少させていき、最終的に照射ミストの組成を上層を形成するための塗布液のミストのみとして中間層18A,18Bを形成し、そのまま上層の形成を行う。これにより、中間層18A,18Bが、下層を形成するための塗布液(原料有機材料)と上層を形成するための塗布液(原料有機材料)との割合が厚み方向に連続的に傾斜した組成(傾斜組成)となり、上層・下層と中間層18A,18Bとの明確な界面形成が抑制される。
【0070】
なお、上記ミスト法では、2種の塗布液を利用して中間層18A,18Bを形成する場合を説明したが、無論、1種の塗布液を利用して他の層を形成する場合に適用してもよい。これにより、連続的に、効率よく、中間層18A,18Bや、他の層(発光層20、電荷輸送層)が形成される。
【0071】
ここで、塗布液を霧状に噴霧する手法や、塗布液の霧状物(ミスト)を生成して、これを堆積させるミスト法において、用いる塗布液の溶剤としては、原料有機材料(発光材料、電荷輸送材料等)を溶解させるものであることがよく、且つ上述の如く、揮発性の有機溶剤であることがよい。この有機溶剤として代表的なものは、例えば、2−メチル−1−プロパノール、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0072】
塗布液を霧状に噴霧する手法や、塗布液の霧状物(ミスト)を生成して、これを堆積させるミスト法により形成される各層の膜厚は、例えば、0.5nm以上1000nm以下、望ましくは10nm以上500nm以下である。
【実施例】
【0073】
以下実施例によって本発明を説明する。なお、本発明はこれらの実施例によってのみ限定されるものではない。
【0074】
[実施例A]
本実施例では、以下に示すようにスプレー法を利用して有機電界発光素子を作製する例を示す。
【0075】
(実施例A1)
ガラス基板(透明絶縁体基板)上に、ITO電極(透明電極)が幅2mmの短冊状にパターニングされた基板を準備し、これを中性洗剤、アセトン、イソプロピルアルコールを用いて洗浄した。
次に、基板表面を、紫外線/オゾン(UV/O)洗浄した後、3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)をスピンコーティング法により3000rpmで60秒間塗布し、膜厚10nmの正孔注入層を形成した。
次に、下記化合物A[重量平均分子量Mw=5.0×10]の0.8重量%モノクロロベンゼン溶液を、正孔注入層が形成された基板上にスプレー法により塗布することで膜厚50nmの正孔輸送層を形成した。
次に、下記化合物Aの0.8重量%モノクロロベンゼン溶液と、下記化合物B[重量平均分子量Mw=6×10]の0.8重量%モノクロロベンゼン溶液を、それぞれ異なるノズルから同時にスプレー法により、正孔輸送層が形成された基板上に塗布(各溶液(塗布液)の噴霧量比(重量比)は下記化合物A:下記化合物B=1:1)することで膜厚15nmの中間層を形成した。
次に、中間層上に、下記化合物Bの0.8重量%トルエン溶液をスプレー法により塗布することで50nmの発光層を形成した。
次に、基板を真空蒸着装置に移し、LiFを5nmの膜厚に成膜する。続けてCaを30nmの膜厚に成膜した後、Alを150nm蒸着して、これら積層体を背面電極とした。
最後にガラス封止して有機電界発光素子を得た。得られた有機電界発光素子の各有機化合物層の断面を観察したところ、それぞれの界面が明確に確認された。
【0076】
【化7】

【0077】
【化8】

【0078】
(実施例A2)
実施例A1と同様の手法で形成した前記化合物Aからなる正孔輸送層上に、前記化合物Aの0.8%モノクロロベンゼン溶液と、下記化合物C重量平均分子量Mw=7.0×10]の0.8重量%モノクロロベンゼン溶液を、それぞれ異なるノズルから同時にスプレー法により塗布(各溶液(塗布液)の噴霧量比(重量比)は前記化合物A:下記化合物C=1:1)することで膜厚15nmの中間層を形成した。
次に、中間層上に、下記化合物Cの0.8重量%モノクロロベンゼン溶液をスプレーコートすることで50nmの発光層を形成した。
次に、実施例A1と同様に背面電極を形成し、ガラス封止をして有機電界発光素子を得た。得られた有機電界発光素子の有機化合物層の断面を観察したところ、それぞれの界面が明確に確認された。
【0079】
【化9】

【0080】
(実施例A3)
ガラス基板(透明絶縁体基板)上に、ITO電極(透明電極)が幅2mmの短冊状にパターニングされた基板を準備し、これを中性洗剤、アセトン、イソプロピルアルコールを用いて洗浄した。
次に、基板表面を、紫外線/オゾン(UV/O)洗浄した後、3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)をスピンコーティング法により3000rpmで60秒間塗布し、膜厚10nmの正孔注入層を形成した。
次に、前記化合物Aの0.8重量%モノクロロベンゼン溶液をスプレー法により塗布することで50nmの正孔輸送層を形成した。
次に、前記化合物Cの0.8%モノクロロベンゼン溶液をスプレー法により塗布することで50nmの発光層を形成した。
次に、前記化合物Cの0.8%モノクロロベンゼン溶液と、下記化合物Dの0.8重量%モノクロロベンゼン溶液を、それぞれ異なるノズルから同時にスプレー法により、発光層が形成された基板上に塗布(各溶液(塗布液)の噴霧量比(重量比)は前記化合物C:下記化合物D=1:1)することで膜厚15nmの中間層を形成した。
次に、下記化合物Dの0.8重量%モノクロロベンゼン溶液をスプレー法により塗布することで膜厚10nmの電子輸送層を形成した。
次に、実施例A1と同様に背面電極を形成し、ガラス封止をして有機電界発光素子を得た。得られた有機電界発光素子の有機化合物層の断面を観察したところ、それぞれの界面が明確に確認された。
【0081】
【化10】

【0082】
(実施例A4)
ガラス基板(透明絶縁体基板)上に、ITO電極(透明電極)が幅2mmの短冊状にパターニングされた基板を準備し、これを中性洗剤、アセトン、イソプロピルアルコールを用いて洗浄した。
次に、基板表面を、紫外線/オゾン(UV/O)洗浄した後、ポリアニリンの1.0重量%トルエン溶液を、基板上にスプレー法で塗布することで膜厚5nmの正孔注入層を形成した。
次に、ポリアニリンの1.0重量%トルエン溶液と、前記化合物Aの0.8重量%トルエン溶液を、それぞれ異なるノズルから同時にスプレー法により塗布し、正孔注入層が形成された基板上に塗布(各溶液(塗布液)の噴霧量比(重量比)はポリアニリン:前記化合物A=0.3:1)することで膜厚10nmの中間層を形成した。
次に、中間層上に、前記化合物Aの0.8重量%トルエン溶液をスプレー法により塗布することで膜厚40nmの正孔輸送層を形成した。
次に、前記化合物Cの0.8重量%トルエン溶液をスプレー法により塗布することで膜厚50nmの発光層を形成した。
次に、実施例A1と同様に背面電極を形成し、ガラス封止をして有機電界発光素子を得た。得られた有機電界発光素子の有機化合物層の断面を観察したところ、それぞれの界面が明確に確認された。
【0083】
(比較例A1)
実施例A1と同様の手法で形成したPEDOT/PSSの正孔注入層上に、前記化合物Aの0.8重量%モノクロロベンゼン溶液をスピンコーティング法により塗布し、窒素雰囲気中130℃で30分間焼成することで正孔輸送層を形成した。
その後、前記化合物Bの0.8重量%モノクロロベンゼン溶液をスピンコーティング法により塗布し、窒素雰囲気中130℃で30分間焼成することで発光層を形成した。
次に、実施例A1と同様に背面電極を形成し、ガラス封止をして有機電界発光素子を得た。
素子の断面を観察したところ、前記化合物Bのモノクロロベンゼン溶液を塗布したことで前記化合物Aの正孔輸送層が溶解していることが確認された。
【0084】
(比較例A2)
実施例A1において、正孔輸送層と発光層の間に中間層を形成せず、それ以外は実施例1と同様の有機電界発光素子を作製した。得られた有機電界発光素子の有機化合物層の断面を観察したところ、それぞれの界面が明確に確認された。
【0085】
(評価)
作製した有機電界発光素子において、輝度半減寿命を測定した。比較例A1の輝度半減寿命を1とした場合の相対輝度半減寿命を表1に示す。
【0086】
なお、輝度半減寿命(初期輝度から輝度半減に至る時間)は、初期輝度が50cd/mとなるように電流値を設定し、定電流駆動により輝度が初期値から半減するまでの時間を輝度半減寿命(hr)とした。
【0087】
【表1】

【0088】
表1に示すように、スピンコーティング法により成膜した比較例A1に比べ、スプレー法により成膜した実施例A1、A2、A3、A4及び比較例A2の方が寿命は3倍から5倍長くなった。また、中間層を形成した実施例A1、A2、A3、A4については、中間層を形成しなかった比較例A2よりも寿命が長くなった。
【0089】
[実施例B]
本実施例では、以下に示すようにミスト法を利用して有機電界発光素子を作製する例を示す。
【0090】
(実施例B1)
ガラス基板(透明絶縁性基板)上に、ITO電極(透明電極)が幅2mmの短冊状にパターニングされた基板を準備し、これを中性洗剤、アセトン、イソプロピルアルコールを用いて洗浄した。
次に、基板表面を、紫外線/オゾン(UV/O)洗浄した後、3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)をスピンコーティング法により3000rpmで60秒間塗布し、膜厚10nmの正孔注入層を形成した。
次に、前記化合物A[重量平均分子量Mw=5.0×10]の0.8重量%モノクロロベンゼン溶液をミスト化し、ミスト照射ノズルから正孔注入層が形成された基板上に一面に照射することで膜厚50nmの正孔輸送層を形成した。
次に、前記化合物Aの0.8重量%モノクロロベンゼン溶液と、前記化合物B[重量平均分子量Mw=6.0×10]の0.8重量%モノクロロベンゼン溶液を、それぞれ異なるミスト発生源にてミスト化し、ミスト撹拌槽に導入して撹拌・混合した後(各溶液(塗布液)の混合比(重量比)前記化合物A:前記化合物B=1:1)、ミスト照射ノズルから正孔輸送層が形成された基板上に一面に照射することで膜厚15nmの中間層を形成した。
次に、中間層上に、前記化合物Bの0.8重量%モノクロロベンゼン溶液をミスト化して、ミストを照射することで50nmの発光層を形成した。
次に、基板を真空蒸着装置に移し、LiFを5nmの膜厚に成膜する。続けてCaを30nmの膜厚に成膜した後、Alを150nm蒸着して、これら積層体を背面電極とした。
最後にガラス封止して有機電界発光素子を得た。得られた有機電界発光素子の有機層の断面を観察したところ、それぞれの界面が明確に確認された。
【0091】
(実施例B2)
実施例B1と同様の手法で形成した前記化合物Aの正孔輸送層上に、前記化合物Aの0.8%モノクロロベンゼン溶液と、前記化合物C[重量平均分子量Mw=7.0×10]の0.8%モノクロロベンゼン溶液を、それぞれ異なるミスト発生源にてミスト化し、ミスト撹拌槽に導入して撹拌・混合した後(各溶液(塗布液)の混合比(重量比)は前記化合物A:前記化合物C=1:1)、ミスト照射ノズルから一面に照射することで膜厚15nmの中間層を形成した。
次に、中間層上に前記化合物Cの0.8%モノクロロベンゼン溶液をミスト化し、照射することで50nmの発光層を形成した。
次に、実施例B1と同様に背面電極を形成し、ガラス封止をして有機電界発光素子を得た。得られた有機電界発光素子の有機層の断面を観察したところ、それぞれの界面が明確に確認された。
【0092】
(実施例B3)
ガラス基板(透明絶縁体基板)上に、ITO電極(透明電極)が幅2mmの短冊状にパターニングされた基板を準備し、これを中性洗剤、アセトン、イソプロピルアルコールを用いて洗浄した。
次に、基板表面を、紫外線/オゾン(UV/O)洗浄した後、3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)をスピンコーティング法により3000rpmで60秒間塗布し、膜厚10nmの正孔注入層を形成した。
次に、前記化合物Aの0.8重量%モノクロロベンゼン溶液をミスト化し、ミスト照射ノズルから正孔注入層が形成された基板上に一面に照射することで50nmの正孔輸送層を形成した。
次に、前記化合物Cの0.8%モノクロロベンゼン溶液をミスト化し、ミスト照射ノズルから基板上に照射することで50nmの発光層を形成した。
次に、前記化合物Cの0.8%モノクロロベンゼン溶液と、前記化合物Dの0.8重量%モノクロロベンゼン溶液を、それぞれ異なるミスト発生源にてミスト化し、ミスト撹拌槽に導入して撹拌・混合した後(各溶液(塗布液)の噴霧量比(重量比)前記化合物C:前記化合物D=1:1)、ミスト照射ノズルから発光層が形成された基板上に一面に照射することで膜厚15nmの中間層を形成した。
次に、前記化合物Dの0.8重量%モノクロロベンゼン溶液をミスト化し、ミスト照射ノズルから基板上に照射することで膜厚10nmの電子輸送層を形成した。
次に、実施例B1と同様に背面電極を形成し、ガラス封止をして有機電界発光素子を得た。得られた有機電界発光素子の有機化合物層の断面を観察したところ、それぞれの界面が明確に確認された。
【0093】
(実施例A4)
ガラス基板(透明絶縁体基板)上に、ITO電極(透明電極)が幅2mmの短冊状にパターニングされた基板を準備し、これを中性洗剤、アセトン、イソプロピルアルコールを用いて洗浄した。
次に、基板表面を、紫外線/オゾン(UV/O)洗浄した後、ポリアニリンの1.0重量%トルエン溶液をミスト化し、基板上に照射することで膜厚5nmの正孔注入層を形成した。
次に、ポリアニリンの1.0重量%トルエン溶液と、前記化合物Aの0.8重量%トルエン溶液を、それぞれ異なるミスト発生源にてミスト化し、ミスト撹拌槽に導入して撹拌・混合した後(各溶液(塗布液)の噴霧量比(重量比)はポリアニリン:前記化合物A=0.3:1)、ミスト照射ノズルから正孔注入層が形成された基板上に一面に照射することで膜厚10nmの中間層を形成した。
次に、中間層上に、前記化合物Aの0.8重量%トルエン溶液をスプレー法により塗布することで膜厚40nmの正孔輸送層を形成した。
次に、前記化合物Cの0.8重量%トルエン溶液をミスト化し、ミスト照射ノズルから基板上に照射することで50nmの発光層を形成した。
次に、実施例A1と同様に背面電極を形成し、ガラス封止をして有機電界発光素子を得た。得られた有機電界発光素子の有機化合物層の断面を観察したところ、それぞれの界面が明確に確認された。
【0094】
(比較例B1)
実施例B1と同様の手法で形成したPEDOT/PSSの正孔注入層上に、前記化合物Aの0.8重量%モノクロロベンゼン溶液をスピンコーティング法により塗布し、窒素雰囲気中130℃で30分間焼成することで正孔輸送層を形成した。
その後、前記化合物Bの0.8重量%モノクロロベンゼン溶液をスピンコーティング法により塗布し、窒素雰囲気中130℃で30分間焼成することで発光層を形成した。
次に、実施例B1と同様に背面電極を形成し、ガラス封止をして有機電界発光素子を得た。
素子の断面を観察したところ、前記化合物Bのモノクロロベンゼン溶液を塗布したことで前記化合物Aの正孔輸送層が溶解していることが確認された。
【0095】
(比較例B2)
実施例B1において、正孔輸送層と発光層の間に中間層を形成せず、それ以外は実施例B1と同様の有機電界発光素子を作製した。得られた有機電界発光素子の有機層の断面を観察したところ、それぞれの界面が明確に確認された。
【0096】
(評価)
作製した有機電界発光素子において、輝度半減寿命を測定した。比較例B1の輝度半減寿命を1とした場合の相対輝度半減寿命を表2に示す。
【0097】
【表2】

【0098】
表2に示すように、スピンコーティング法により成膜した比較例B1に比べ、ミスト成膜した実施例B1、2、3、4及び比較例B2の方が寿命は3倍から5倍長くなった。また、中間層を形成した実施例B1、2、3、4については、中間層を形成しなかった比較例B2よりも寿命が長くなった。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】実施形態に係る有機電界発光素子を示す概略構成図である。
【図2】他の実施形態に係る有機電界発光素子を示す概略構成図である。
【図3】他の実施形態に係る有機電界発光素子を示す概略構成図である。
【図4】実施形態に係る有機電界発光素子の製造方法を示す工程図である。
【図5】ミスト法に適用される成膜装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0100】
10 透明絶縁体基板
10A 被塗布物
12 透明電極
14 正孔注入層
16 正孔輸送層
18A,18B 中間層
20 発光層
22 電子輸送層
24 背面電極
30 電圧印加装置
40,42,44 ノズル
52A,52B ミスト形成手段
53A,53B 塗布液供給手段
54A,54B ミスト搬送管
55A,55B 貯蔵容器
56A,56B 搬送ガス供給手段
58 ミスト撹拌槽
60 ミスト照射ノズル
62 加熱ヒーター
64 保持部材
66 成膜室
66A ガス排出口
100 有機電界発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明又は半透明である陽極及び陰極よりなる一対の電極と、
前記一対の電極の間に配設される第1有機化合物層と、
前記一対の電極の間に配設される第2有機化合物層と、
前記第1有機化合物層と前記第2有機化合物層とに挟まれて配設され、前記第1有機化合物層を構成する材料と前記第2有機化合物層を構成する材料とを含んで構成される中間層と、
を有することを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項2】
前記第1有機化合物層が発光層であり、
前記第2有機化合物層が電荷輸送層であり、
前記中間層が、前記発光層を構成する材料と前記電荷輸送層を構成する材料とを含んで構成される中間層である、
ことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
マトリックス状及びセグメント状の少なくとも一方で配列された、請求項1又は2に記載の有機電界発光素子と、
前記有機電界発光素子を駆動する駆動手段と、
を備えることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−45222(P2010−45222A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208658(P2008−208658)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】