説明

有機電界発光素子、有機電界発光素子用材料、該素子を用いた発光装置、表示装置及び照明装置

【課題】高い青色純度を実現し、発光効率の向上、及び有機電界発光素子の駆動中における色度変化の低減を改善した有機電界発光素子の提供。
【解決手段】基板と、該基板上に配置され、陽極及び陰極を含む一対の電極と、該電極間に配置され、発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有し、前記有機層が下記式で表される化合物を含む有機電界発光素子(R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。Z1〜Z4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、Z1およびZ2、並びにZ3およびZ4は互いに結合して環を形成してもよい)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子とそれに用いる有機電界発光素子用材料に関する。また、本発明は、前記有機電界発光素子を用いた発光装置、表示装置または照明装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(以下、「素子」、「有機EL素子」ともいう)は、低電圧駆動で高輝度の発光が得られることから活発に研究開発が行われている。有機電界発光素子は、一対の電極間に有機層を有し、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが有機層において再結合し、生成した励起子のエネルギーを発光に利用するものである。有機電界発光素子は、様々な発光波長を有する素子として提供することが可能であり、応答速度が速くて、比較的薄くて軽量であることから、広汎な用途へ応用されることが期待されている。なかでも、色純度が高くて、発光効率が高い有機電界発光素子の開発は、フルカラーディスプレイへの応用等において重要であり、これまでにも種々の開発研究成果が報告されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、発光領域層にナフタレン数が4〜6のオリゴナフタレン化合物を含有させることで、高いアモルファス性を有し、青色領域での高効率な発光と、長寿命化が可能となることが記載されている。
また、特許文献2では、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層のいずれかにビナフタレン誘導体を含ませることが記載されており、特に輸送層にビナフタレン誘導体を含ませると、青色から赤色の発光が可能であり、低電圧で長寿命化が可能となることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−19219号公報
【特許文献2】特表2009−514812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、上記特許文献1では、発光極大が460〜480nmと長波長側であり、高い青色純度を実現できないということが明らかになった。また、発光領域層にオリゴナフタレン化合物を含有させた有機電界発光素子を駆動させると、輝度変調時の色度が変化することも明らかとなった。
また、特許文献2でも高い青色純度を実現できず、ビナフタレン誘導体を含有させた有機電界発光素子を駆動させると、輝度変調時の色度が変化することも明らかとなった。
本発明の目的は上記問題を解決することにある。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、高い青色純度を実現し、発光効率の向上、及び有機電界発光素子の駆動中における色度変化の低減を改善した有機電界発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者らは、高い青色純度を実現し、発光効率の向上、及び有機電界発光素子の駆動中における色度変化の低減を改善した有機電界発光素子を提供することを目的として鋭意検討を進めた。
特許文献2に記載のビナフタレン誘導体にさらに2〜3個のナフタレン環を連結することで、高い青色純度の実現が予想されるが、結晶性が高くなるという課題が予想される。
このような状況のもと、発明者らは、ナフタレン環の1位と8位、4位と6位がアルキレンで結合したヘキサヒドロピレン環を連結中心とする化合物を用いることで、高いアモルファス性と青色純度を両立可能となり、発光材料として十分な性能を付与できることを見出すに至った。特に、駆動劣化後の色度変化の低減は公知文献では知られていない異質の効果である。
すなわち、特定の構造を有するヘキサヒドロピレン環を連結中心とする化合物を用いれば、上記の課題を解決することができることを見出して、以下に記載される本発明を提供するに至った。
【0007】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 基板と、
該基板上に配置され、陽極及び陰極を含む一対の電極と、
該電極間に配置され、発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有し、
前記有機層が下記一般式(1)で表される化合物を含む有機電界発光素子。
【化1】

(一般式(1)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。Z1〜Z4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、Z1およびZ2、並びにZ3およびZ4は互いに結合して環を形成してもよい。)
[2] [1]に記載の有機電界発光素子は、前記一般式(1)中、R1〜R12が、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、−NY12、−OY3、−SY4(Y1〜Y4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよい。)、ハロゲン原子、シリル基から選ばれることが好ましい。
[3] [1]又は[2]に記載の有機電界発光素子は、前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【化2】

(一般式(2)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。L1は2価以上の連結基を表し、W1は、O、S、CY89またはNY6を表し(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい)、Z3およびZ4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、L1およびW1、並びにZ3およびZ4は互いに結合して環を形成してもよい。DGはドナー性基を表す。nは1〜2の整数を表し、mは0又は1を表し、mが0のとき、L1とW1とは結合しない。)
[4] [3]に記載の有機電界発光素子は、前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【化3】

(一般式(3)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。L1、L2はそれぞれ独立に2価以上の連結基を表し、W1、W2はそれぞれ独立に、O、S、CY89またはNY6を表し(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい)、L1およびW1、並びにL2およびW2は互いに結合して環を形成してもよい。DGはドナー性基を表す。nは1〜2の整数を表し、m、pは0又は1の整数を表し、m又はpが0のとき、L1およびW1、並びにL2およびW2は結合しない。)
[5] [3]又は[4]に記載の有機電界発光素子は、前記一般式(2)および(3)中、前記ドナー性基が、−NY12、−OY3、−SY4(Y1〜Y4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらはいずれも更に置換基を有していてもよい。)または下記一般式(A)で表されることが好ましい。
【化4】

(一般式(A)中、X1、X2はそれぞれ独立にO、S、NY5を表し、R13〜R15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基、−NY12、−OY3、−SY4(Y1〜Y5はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す)を表す。これらはいずれも更に置換基を有していてもよい。)
[6] 前記一般式(2)および(3)中、L1、L2が、それぞれ独立にアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表すことを特徴とする[3]〜[5]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
[7] [3]〜[6]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子は、前記一般式(2)および(3)中、L1、L2が、それぞれ独立に下記一般式(4)〜(7)のいずれかで表されることが好ましい(但し、下記一般式(4)〜(7)で表される連結基中には、ハメットの置換基定数σp値が0.1以上の置換基は含まれない)。
【化5】

(一般式(4)中、A1〜A4は、それぞれ独立にCY7、Nを表し、A1とA2で縮環して芳香環を形成してもよい。Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよく、前記一般式(2)中のmが1のときは、W1はA4で結合し、前記一般式(3)中のmおよびpがそれぞれ独立に1を表すときは、W1およびW2はA4で結合する。)
【化6】

(一般式(5)中、A5〜A10は、それぞれ独立にCY7、Nを表し、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。前記一般式(2)中のmが1のときは、W1はA5またはA10で結合し、前記一般式(3)中のmおよびpがそれぞれ独立に1を表すときは、W1およびW2はA5またはA10で結合する。)
【化7】

(一般式(6)中、X3、X5は、それぞれ独立にO、S、NY6を表し、X4、X6は、それぞれ独立にCY7、Nを表す。Y6〜Y7はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。ただし、前記一般式(2)又は(3)中のm、pは0である。)
【化8】

(一般式(7)中、X7、X10はそれぞれ独立にO、S、NY6を表し、X8、X9はそれぞれ独立にCY7、Nを表す。Y6〜Y7はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。R16〜R17は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基、−NY12、−OY3、−SY4(Y1〜Y4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す)を表し、これらはいずれも更に置換基を有していてもよい。ただし、前記一般式(2)又は(3)中のm、pは0である。)
[8] [3]〜[7]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子は、前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(8)〜(11)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【化9】

(一般式(8)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。A1〜A4はそれぞれ独立にCY7、Nを表し、A1とA2で縮環して芳香環を形成してもよく、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。W1はO、S、CY89またはNY6を表し(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい)、Z3およびZ4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表す。A4およびW1、並びにZ3およびZ4は互いに結合して環を形成してもよい。mは0又は1を表し、mが0のときはA4とW1は結合しない。)
【化10】

(一般式(9)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。A5〜A10は、それぞれ独立にCY7、Nを表し、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。W1はO、S、CY89またはNY6を表し(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい)、Z3およびZ4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表す。A5およびW1、並びにZ3およびZ4は互いに結合して環を形成してもよい。mは0又は1を表し、mが0のときA5とW1とは結合しない。)
【化11】

(一般式(10)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。X3、X5は、それぞれ独立にO、S、NY6を表し、X4、X6は、それぞれ独立にCY7、Nを表す。Y6〜Y7はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Z2〜Z4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、Z3とZ4は互いに結合して環を形成してもよい。)
【化12】

(一般式(11)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。X7、X10はそれぞれ独立にO、S、NY6を表し、X8、X9はそれぞれ独立にCY7、Nを表す。Y6〜Y7はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。R16〜R17は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基、−NY12、−OY3、−SY4(Y1〜Y4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す)を表し、これらはいずれも更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Z2〜Z4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、Z3とZ4は互いに結合して環を形成してもよい。)
[9] 前記一般式(8)で表される化合物が、下記一般式(12)で表される化合物であることを特徴とする[8]に記載の有機電界発光素子。
【化13】

(一般式(12)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。A1〜A4はそれぞれ独立にCY7、Nを表し、A1とA2で縮環して芳香環を形成してもよく、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。W1は、O、S、CY89またはNY6を表し(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。)、Z3およびZ4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表す。Z3とZ4は互いに結合して環を形成してもよい。)
[10] [8]に記載の有機電界発光素子は、前記一般式(9)で表される化合物が、下記一般式(13)で表される化合物であることが好ましい。
【化14】

(一般式(13)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。A5〜A10は、それぞれ独立にCY7、Nを表し、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。W1は、O、S、CY89またはNY6を表し(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。)、Z3およびZ4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表す。Z3とZ4は互いに結合して環を形成してもよい。)
[11] [8]に記載の有機電界発光素子は、前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(8’)〜(11’)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【化15】

(一般式(8’)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。A1〜A4はそれぞれ独立にCY7、Nを表し、A1とA2で縮環して芳香環を形成してもよく、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。W1およびW2はそれぞれ独立にO、S、CY89またはNY6(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい)を表す。mは0又は1を表し、mが0のときはA4とW1は結合しない。pは0又は1を表し、pが0のときはA4とW2は結合しない。)
【化16】

(一般式(9’)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。A5〜A10は、それぞれ独立にCY7、Nを表し、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。W1およびW2はそれぞれ独立にO、S、CY89またはNY6(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい)を表す。mは0又は1を表し、mが0のときA5とW1とは結合しない。pは0又は1を表し、pが0のときはA5とW2は結合しない。)
【化17】

(一般式(10’)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。X3、X5は、それぞれ独立にO、S、NY6を表し、X4、X6は、それぞれ独立にCY7、Nを表す。Y6〜Y7はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Z2およびZ4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表す。)
【化18】

(一般式(11’)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。X7、X10はそれぞれ独立にO、S、NY6を表し、X8、X9はそれぞれ独立にCY7、Nを表す。Y6〜Y7はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。R16〜R17は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基、−NY12、−OY3、−SY4(Y1〜Y4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す)を表し、これらはいずれも更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Z2およびZ4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表す。)
[12] [11]に記載の有機電界発光素子は、前記一般式(8’)で表される化合物が、下記一般式(14)で表される化合物であることが好ましい。
【化19】

(一般式(14)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。A1〜A3はそれぞれ独立にCY7、Nを表し、A1とA2で縮環して芳香環を形成してもよく、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。W1およびW2はそれぞれ独立にO、S、CY89またはNY6(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい)を表す。)
[13] [11]に記載の有機電界発光素子は、前記一般式(9’)で表される化合物が、下記一般式(15)で表される化合物であることが好ましい。
【化20】

(一般式(15)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。A5〜A10は、それぞれ独立にCY7、Nを表し、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。W1およびW2はそれぞれ独立にO、S、CY89またはNY6(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい)を表す。)
[14] [1]〜[13]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子は、前記発光層に、アントラセン系ホスト材料を含むことが好ましい。
[15] [1]〜[14]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子は、前記発光層が真空蒸着プロセスにて形成されてなることが好ましい。
[16] [1]〜[15]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子は、前記発光層が湿式プロセスにて形成されてなることが好ましい。
[17] [1]〜[16]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を用いた発光装置。
[18] [1]〜[16]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を用いた表示装置。
[19] [1]〜[16]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を用いた照明装置。
[20] 下記一般式(1)で表されることを特徴とする有機電界発光素子用材料。
【化21】

(一般式(1)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。Z1〜Z4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、Z1およびZ2、並びにZ3およびZ4は互いに結合して環を形成してもよい。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い青色純度を実現し、発光効率の向上、及び有機電界発光素子の駆動中における色度変化の低減を改善した有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る有機電界発光素子の構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に係る発光装置の一例を示す概略図である。
【図3】本発明に係る照明装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
[有機電界発光素子]
本発明の有機電界発光素子は、基板と、該基板上に配置され、陽極及び陰極を含む一対の電極と、該電極間に配置され、発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有し、該有機層は前記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の有機電界発光素子は、前記一般式(1)で表される化合物を、発光材料として使用することが好ましい。
ここで、有機電界発光素子を駆動する場合、低輝度時と高輝度時では、印加電圧が異なる。有機層を用いる電界発光素子では電子を輸送する速度の電圧依存性とホールを輸送する速度の電圧依存性が異なるのが一般的である。このため、印加電圧が異なると電子の輸送速度とホールの輸送速度の相対差が変化し、発光層内で再結合が起こる位置が異なるものと考えられる。有機電界発光素子は複数の有機層の積層体であり、かつ金属電極を用いるため、発光位置が異なると光学干渉効果も異なる。ここで、通常の有機EL素子で用いられる素子厚みでは、青色発光スペクトルがブロードであったり、主ピーク以外にピークが存在したりすると、長波側の成分が干渉によって強められ、色度が一定にならないと考えられる。
これに対し、前記一般式(1)で表される化合物を発光材料として用いた有機電界発光素子は、従来公知の類似化合物を用いたものに比較して、純度の高い青色純度の発光が得られる。これは、いかなる理論に拘泥するものでもないが、会合抑制されていることや、励起状態における構造変化が小さい為に、スペクトルがシャープであることが理由として挙げられる。また、スペクトル形状がシャープ(半値幅が狭く、主ピーク以外のピークが小さい形状)であることなどにより、さらに低輝度で駆動させた時と高輝度で駆動させた時の色度変化が極めて小さくなることがわかった。
【0013】
また、置換基による短波長化は化合物の不安定化と同義であり、多くの場合置換基の開裂などによる耐久性の低下をもたらす。そのため、母骨格の短波長化あるいは狭スペクトル化が求められていた。
これに対し、前記一般式(1)で表される化合物は、その母骨格自体が、短波長化と、輝度変調時の色度変化の抑制に寄与している。そのため、前記一般式(1)で表される化合物は、その母骨格の置換基はほとんど限定されず、上記効果を得ることができる。但し、本発明の好ましい態様においては、特定の置換基を用いて、さらに短波長化と輝度変調時の色度変化の抑制を改善してもよい。
【0014】
<一般式(1)で表される化合物>
本発明において、前記一般式(1)の説明における水素原子は同位体(重水素原子等)も含み、またさらに置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいることを表す。
本発明において、「置換基」というとき、その置換基はさらに置換されていてもよい。例えば、本発明で「アルキル基」と言う時、フッ素原子で置換されたアルキル基(例えばトリフルオロメチル基)やアリール基で置換されたアルキル基(例えばトリフェニルメチル基)なども含むが、「炭素数1〜6のアルキル基」と言うとき、置換されたものも含めた全ての基として炭素数が1〜6であることを示す。
【0015】
本発明の説明における「アルキル基」は、直鎖状、分岐状又は環状であってもよい。一般的には炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6、最も好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基が好ましく、例えばメチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基などを好ましく採用することができる。アルキル基は、さらに置換基を有していてもよい。例えば、後述する置換基群Aの置換基を挙げることができる。
【0016】
本発明の説明における「シリル基」は置換されていることが好ましく、該置換基としては、アルキル基およびアリール基が好ましい。シリル基がアルキル基またはアリール基で置換されている場合、全ての水素原子がアルキル基またはアリール基で置換されてトリアルキルシリル基またはトリアリールシリル基を形成することがより好ましく、トリメチルシリル基またはトリフェニルシリル基を形成することがさらに好ましい。
【0017】
本発明の説明における「ヘテロアリール基」としては、窒素原子を含む5又は6員のヘテロ環が好ましい。前記窒素原子を含む5又は6員のヘテロ環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環などが挙げられる。中でもピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環であることがより好ましく、特に好ましくはピリジン環、イミダゾール環、ピラジン環であり、更に好ましくはピリジン環またはイミダゾール環であり、最も好ましくはピリジン環である。
【0018】
本発明の説明における「アリール基」は、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられる。アリール基は、単環のアリール基と縮合環を有するアリール基のいずれでもよく、単環のアリール基である場合はフェニル基であることが好ましく、縮合環を有するアリール基の場合はナフチレン基であることが好ましい。
【0019】
アリール基またはヘテロアリール基は、さらに後述する置換基群Aに記載される置換基などで置換されていてもよい。例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、フッ素原子またはシリル基で置換されているものを例示することができる。中でもアルキル基、アリール基、アミノ基が好ましく、アミノ基がより好ましい。
【0020】
以下において、一般式(1)で表される化合物について詳細に説明する。
【化22】

【0021】
一般式(1)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。Z1〜Z4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、Z1およびZ2、並びにZ3およびZ4は互いに結合して環を形成してもよい。
【0022】
一般式(1)において、R1〜R12は、それぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。前記一般式(1)におけるR1〜R12の表す置換基としては下記の置換基群Aが挙げられる。
【0023】
《置換基群A》
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(芳香族ヘテロ環基も包含し、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、セレン原子、テルル原子であり、具体的にはピリジル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、キノリル、フリル、チエニル、セレノフェニル、テルロフェニル、ピペリジル、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル、ピロリジノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基、シロリル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)、ホスホリル基(例えばジフェニルホスホリル基、ジメチルホスホリル基などが挙げられる。)が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Aから選択される基を挙げることができる。また、置換基に置換した置換基は更に置換されてもよく、さらなる置換基としては、以上に説明した置換基群Aから選択される基を挙げることができる。また、置換基に置換した置換基に置換した置換基は更に置換されてもよく、さらなる置換基としては、以上に説明した置換基群Aから選択される基を挙げることができる。
【0024】
1〜R12は、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、−NY12、−OY3、−SY4(Y1〜Y4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよい。)、ハロゲン原子、シリル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0025】
1〜R12は、結合して得られる環は芳香環でなければ、互いに結合して環を形成してもよい。その場合に形成される環としては5または6員環が好ましい。形成される5または6員環は、シクロアルケニル環の他に環を構成する原子の中に、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択されるヘテロ原子を1〜3個含むものを挙げることができる。形成される5または6員環は置換基を有していてもよく、炭素原子上の置換基としては上記の置換基群Aが挙げられ、ヘテロ原子上の置換基については下記の置換基群Bが挙げられる。
【0026】
《置換基群B》
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、シアノ基、ヘテロ環基(芳香族ヘテロ環基も包含し、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、セレン原子、テルル原子であり、具体的にはピリジル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、キノリル、フリル、チエニル、セレノフェニル、テルロフェニル、ピペリジル、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル、ピロリジノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基、シロリル基などが挙げられる。)これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、前記置換基群Bから選択される基を挙げることができる。また、置換基に置換した置換基は更に置換されてもよく、さらなる置換基としては、以上に説明した置換基群Bから選択される基を挙げることができる。また、置換基に置換した置換基に置換した置換基は更に置換されてもよく、さらなる置換基としては、以上に説明した置換基群Bから選択される基を挙げることができる。
【0027】
1〜Z4はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Z1およびZ2、並びにZ3およびZ4は互いに結合して環を形成してもよい。Z1〜Z4が表す置換基の一例は、アルキル基、アリール基、シリル基、−NY12、−OY3、−SY4(Y1〜Y4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらはいずれも更に置換基を有していてもよい。)および2価の連結基を介してドナー性基が連結した基である。
その中でも、Z1〜Z4はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、−OY3、−SY4および2価の連結基を介してドナー性基が連結した基であることが好ましい(このとき、−OY3、−SY4を表すときは、Y3、Y4が外れてZ1〜Z4のうち隣接する置換基と−O−または−S−として縮合環を形成することが好ましい)。
【0028】
前記Z1〜Z4が表す置換基が更に有していてもよい置換基としては、炭素原子上の置換基としては上記の置換基群Aが挙げられ、窒素原子上の置換基については上記の置換基群Bが挙げられる。その中でも、前記Z1〜Z4が表す置換基が更に有していてもよい置換基がアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を有することが、会合抑制の観点から好ましい。
さらに、Z1〜Z4は2つの水素原子を有することが好ましい。
【0029】
本発明では前記一般式(1)で表される化合物は、Z1〜Z4が少なくとも1つの2価の連結基を介してドナー性基が連結した基を有することが好ましく、1または2つの2価の連結基を介してドナー性基が連結した基を有することがより好ましく、2つの2価の連結基を介してドナー性基が連結した基を有することが特に好ましい。
前記ドナー性基を有することにより、さらに前記一般式(1)で表される化合物の発光スペクトルを狭スペクトル化することができ、青色純度を高めることができる。ここで、本明細書中、ドナー性基とは、電子供与性の置換基を意味し、「Hammett則のσp値が負の値を示す置換基」を意味する。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができる。例えば、稲本直樹著「ハメット則−構造と反応性−」(丸善)、日本化学会編「新実験化学講座14 有機化合物の合成と反応V」2605頁(丸善)、仲谷忠雄著「理論有機化学解説」217頁(東京化学同人)、ケミカル レビュー,91巻,165〜195頁(1991年)等の成書に詳しく解説されている。
前記ドナー性基の一例は、−NY12、−OY3、−SY4(Y1〜Y4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらはいずれも更に置換基を有していてもよく、Y1とY2は互いに結合して環を形成してもよい。)および下記一般式(A)で表される基である。
【0030】
【化23】

【0031】
一般式(A)中、X1、X2はそれぞれ独立にO、S、NY5を表し、R13〜R15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基、−NY12、−OY3、−SY4(Y1〜Y5はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す)を表す。これらはいずれも更に置換基を有していてもよい。
【0032】
1、X2はそれぞれ独立にO、S、NY5を表し、Y5はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらはいずれも更に置換基を有していてもよい。前記更に有していてもよい置換基としては、炭素原子上の置換基としては上記の置換基群Aが挙げられ、窒素原子上の置換基については上記の置換基群Bが挙げられる。
1、X2は、O、Sが好ましく、Sがより好ましい。
【0033】
13〜R15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基、−NY12、−OY3、−SY4を表し、Y1〜Y4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらはいずれも更に置換基を有していてもよい。R13〜R15は、
水素原子、アルキル基、アリール基、−NY12が好ましく、アルキル基、−NY12がより好ましい。
更に有していてもよい置換基としては、炭素原子上の置換基としては上記の置換基群Aが挙げられ、窒素原子上の置換基については上記の置換基群Bが挙げられ、その中でもアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を有することが会合抑制の観点から好ましい。
【0034】
前記一般式(1)におけるZ1〜Z4が2価の連結基を介して有することが好ましい前記ドナー性基としては、−NY12、−OY3、一般式(A)で表される基が好ましく、−NY12がより好ましい。さらに、該ドナー性基中にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を有することが会合抑制の観点から好ましい。
【0035】
前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【化24】

【0036】
一般式(2)中の前記一般式(1)中と共通する各記号の定義は、前記一般式(1)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。L1は2価以上の連結基を表し、W1は、O、S、CY89またはNY6を表し(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。)、L1およびW1、並びにZ3およびZ4は互いに結合して環を形成してもよい。DGはドナー性基を表す。nは1〜2の整数を表し、mは0又は1を表し、mが0のとき、L1とW1とは結合しない。
【0037】
前記一般式(2)で表される化合物は、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【化25】

【0038】
一般式(3)中の前記一般式(1)中と共通する各記号の定義は、前記一般式(1)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。L1、L2はそれぞれ独立に2価以上の連結基を表し、W1、W2はそれぞれ独立に、O、S、CY89またはNY6を表し(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい)、L1およびW1、並びにL2およびW2は互いに結合して環を形成してもよい。DGはドナー性基を表す。nは1〜2の整数を表し、m、pは0又は1の整数を表し、m又はpが0のとき、L1およびW1、並びにL2およびW2は結合しない。
【0039】
1、W2は、それぞれ独立にO、S、CY89またはNY6を表し、Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。W1、W2はそれぞれ独立に、O、CY89、NY6が好ましく、O、CY89がより好ましい。特に好ましい具体例としては、C(CH32、C(CH25が挙げられる。更に有していてもよい置換基としては、炭素原子上の置換基としては上記の置換基群Aが挙げられ、窒素原子上の置換基については上記の置換基群Bが挙げられる。
【0040】
1、L2はそれぞれ独立に2価以上の連結基を表し、前記一般式(2)ではL1とW1、並びにZ3とZ4は互いに結合して環を形成してもよく、前記一般式(3)ではW1とL1、並びにW2とL2は互いに結合して環を形成してもよい。
【0041】
1、L2の一例としては、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルケニレン、アルキニレン基を挙げることができ、アリーレン基またはヘテロアリーレン基が好ましく、環員数6〜18のアリーレン基または環員数5〜20のヘテロアリーレン基がより好ましく、環員数6〜12のアリーレン基または環員数5〜16のヘテロアリーレン基が特に好ましい。
1、L2がアリーレン基およびヘテロアリーレン基を表す場合、該アリーレン基およびヘテロアリーレン基は置換基を有していてもよい。このときの置換基としては、特に制限はないが、ハメットの置換基定数σp値が0.1以下の置換基であることが好ましく、σp値が−0.6〜0の置換基を有していることがさらに好ましい。
その中でも、L1、L2がアリーレン基およびヘテロアリーレン基を表す場合、該アリーレン基およびヘテロアリーレン基が有する置換基は、水素原子、フッ素原子、アルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基、−NY12、−OY3、−SY4(Y1〜Y4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す)であることが好ましく、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基であることがより好ましい。これらは更に置換基を有していてもよい。
1、L2がアリーレン基およびヘテロアリーレン基を表す場合、L1、L2は、下記一般式(4)〜(7)で表される基、あるいは2以上の下記一般式(4)〜(7)で表される基の組合せであることであることが特に好ましく、下記一般式(4)〜(7)で表される基であることがより特に好ましい(但し、下記一般式(4)〜(7)で表される連結基中には、ハメットの置換基定数σp値が0.1以上の置換基は含まれない)。
【化26】

【0042】
一般式(4)中、A1〜A4は、それぞれ独立にCY7、Nを表し、A1とA2で縮環して芳香環を形成してもよい。Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよく、前記式(2)中のmが1のときは、W1はA4で結合し、式(3)中のmおよびpがそれぞれ独立に1を表すときは、W1およびW2はA4で結合する。
【0043】
1〜A4は、それぞれ独立にCY7、Nを表し、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。A1〜A4はそれぞれ独立に、CH、CR(該Rはアルキル基)、CAr(該Arはアリール基)、Nが好ましく、CHまたはNであることがより好ましい。A1〜A4中におけるN原子の数は0〜3個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0または1個であることが特に好ましく、0個であることがより特に好ましい。
更に有していてもよい置換基としては、炭素原子上の置換基としては上記の置換基群Aが挙げられ、窒素原子上の置換基については上記の置換基群Bが挙げられる。
【0044】
【化27】

【0045】
一般式(5)中、A5〜A10は、それぞれ独立にCY7、Nを表し、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。前記一般式(2)中のmが1のときは、W1はA4で結合し、前記一般式(3)中のmおよびpがそれぞれ独立に1を表すときは、W1およびW2はA5で結合する。
【0046】
前記一般式(5)におけるA5〜A10の説明と好ましい範囲は、前記一般式(4)におけるA1〜A4の説明と好ましい範囲と同じである。
【0047】
【化28】

【0048】
一般式(6)中、X3、X5は、それぞれ独立にO、S、NY6を表し、X4、X6は、それぞれ独立にCY7、Nを表す。Y6〜Y7はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。ただし、前記一般式(2)又は(3)中のm、pは0である。
【0049】
3、X5は、それぞれ独立にO、S、NY6を表し、Y6は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。X3、X5は、S、NR(該Rはアルキル基)、NAr(該Arはアリール基)が好ましく、Sがより好ましい。
更に有していてもよい置換基としては、炭素原子上の置換基としては上記の置換基群Aが挙げられ、窒素原子上の置換基については上記の置換基群Bが挙げられる。
【0050】
4、X6は、それぞれ独立にCY7、Nを表し、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。X4、X6は、CH、CAr(該Arはアリール基)、Nが好ましく、CH、Nがより好ましい。
更に有していてもよい置換基としては、炭素原子上の置換基としては上記の置換基群Aが挙げられ、窒素原子上の置換基については上記の置換基群Bが挙げられる。
【0051】
【化29】

【0052】
一般式(7)中、X7、X10は、それぞれ独立にO、S、NY6を表し、X8、X9は、それぞれ独立にCY7、Nを表す。Y6〜Y7はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。R16〜R17は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基、−NY12、−OY3、−SY4(Y1〜Y4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す)を表し、これらはいずれも更に置換基を有していてもよい。ただし、前記一般式(2)又は(3)中のm、pは0である。
【0053】
前記一般式(7)におけるX7、X10の説明と好ましい範囲は、前記一般式(6)におけるX3、X5の説明と好ましい範囲と同じである。
前記一般式(7)におけるX8、X9の説明と好ましい範囲は、前記一般式(6)におけるX4、X6の説明と好ましい範囲と同じである。
【0054】
16〜R17は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基、−NY12、−OY3、−SY4(Y1〜Y4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す)を表し、これらはいずれも更に置換基を有していてもよい。R16〜R17は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、アリール基、−NY12が好ましく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、アリール基がより好ましい。
前記更に有していてもよい置換基としては、炭素原子上の置換基としては上記の置換基群Aが挙げられ、窒素原子上の置換基については上記の置換基群Bが挙げられる。
【0055】
ただし、R16〜R17は、ハメットの置換基定数σp値が0.1以下の置換基であることが好ましく、σp値が−0.5〜0.1の置換基を有していることがさらに好ましい。
【0056】
前記一般式(2)においてL1、L2は、前記一般式(4)〜(7)で表される連結基のなかでも、一般式(4)、(5)および(7)で表される連結基であることが、L1、L2を介してピレン骨格に連結する後述のDG(ドナー性基)の効果を十分に得られる観点から好ましく、一般式(4)または(5)で表される連結基であることがより好ましい。
また、2以上の前記一般式(4)〜(7)で表される連結基の組み合わせである場合、少なくとも1つの前記一般式(4)または前記一般式(5)で表される化合物を含むことが好ましく、その場合における前記一般式(4)で表される化合物はA1〜A4中に窒素原子を1または2個含むことが好ましく、前記一般式(5)で表される化合物は前記A5〜A10中に窒素原子を1個含むことが好ましい。
【0057】
前記一般式(2)におけるDGは、ドナー性基を表し、該ドナー性基の説明と好ましい範囲は、前記一般式(1)におけるZ1〜Z4が表す置換基の説明中におけるドナー基の説明と好ましい範囲と同様である。
また、前記一般式(2)において、ドナー性基は、2つ有することが好ましく、Z3、Z4中にもう一方のドナー性基を有することが好ましく、Z3中に有することがより好ましい。
なお、ドナー性基は、置換基群Bで表される置換基の置換基として、該置換基群B由来の連結基を介してL1と結合していてもよい。
【0058】
nは1又は2の整数を表す。
【0059】
mは0又は1の整数を表す。
【0060】
pは0又は1の整数を表し、m又はpが0のとき、Z2とL1、Z4とL2は結合しない。
【0061】
前記一般式(2)で表される化合物は、下記一般式(8)〜(11)のいずれかで表される化合物であることが好ましく、下記一般式(8)、(9)および(11)のいずれかで表される化合物であることがより好ましく、下記一般式(8)または(9)で表される化合物であることが特に好ましい。
【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【0062】
一般式(8)〜式(11)中の前記一般式(1)〜(7)と共通する各記号の定義は、前記一般式(1)〜式(7)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
【0063】
前記一般式(8)〜式(11)におけるY1〜Y2はそれぞれ独立に、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基が好ましく、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。前記更に有していてもよい置換基としては、炭素原子上の置換基としては上記の置換基群Aが挙げられ、窒素原子上の置換基については上記の置換基群Bが挙げられ、重水素原子、アルキル基、フッ素原子、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を有することが耐久性および会合抑制の観点から好ましく、重水素原子、メチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、フッ素原子、フェニル基(−C65、−C65)、p−メチルフェニル基(トリル基)、p−イソプロピルフェニル基、m−メチルフェニル基、o−メチルフェニル基、トリメチルシリル基、シアノ基がより好ましく、重水素原子、メチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、フッ素原子、フェニル基(−C65、−C65)、p−メチルフェニル基(トリル基)、m−メチルフェニル基、o−メチルフェニル基が特に好ましい。
【0064】
前記一般式(8)で表される化合物は、下記一般式(8’)で表される化合物であることが好ましい。ここで、下記一般式(8’)中の各記号の定義は、前記一般式(8)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【化34】

【0065】
前記一般式(9)で表される化合物は、下記一般式(9’)で表される化合物であることが好ましい。ここで、下記一般式(9’)中の各記号の定義は、前記一般式(9)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【化35】

【0066】
前記一般式(10)で表される化合物は、下記一般式(10’)で表される化合物であることが好ましい。ここで、下記一般式(10’)中の各記号の定義は、前記一般式(10)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【化36】

【0067】
前記一般式(11)で表される化合物は、下記一般式(11’)で表される化合物であることが好ましい。ここで、下記一般式(11’)中の各記号の定義は、前記一般式(11)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【化37】

【0068】
前記一般式(8)で表される化合物は、下記一般式(12)で表される化合物であることが好ましい。
【0069】
【化38】

【0070】
上記一般式(12)中の各記号の定義は、前記一般式(8)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0071】
前記一般式(9)で表される化合物は、下記一般式(13)で表される化合物であることが好ましい。
【0072】
【化39】

【0073】
上記一般式(13)中の各記号の定義は、前記一般式(9)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0074】
前記一般式(8’)または前記一般式(12)で表される化合物は、下記一般式(14)で表される化合物であることが好ましい。
【0075】
【化40】

【0076】
上記一般式(14)中の各記号の定義は、前記一般式(8’)または前記一般式(14)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0077】
前記一般式(9’)または前記一般式(13)で表される化合物は、下記一般式(15)で表される化合物であることが好ましい。
【0078】
【化41】

【0079】
上記一般式(15)中の各記号の定義は、前記一般式(9’)または前記一般式(13)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0080】
一般式(1)で表される化合物を用いた有機電界発光素子の極大発光波長は通常400nm〜480nmとなる。好ましくは420nm〜470nmであり、さらに好ましくは430nm〜460nmである。本発明では、一般式(1)で表される化合物として、特に一般式(8)〜(13)で表される化合物を採用すると、有機電界発光素子の極大発光波長がおよそ430nm〜460nmとなり、特に色純度の高い青色発光が得られるため好ましい。一般式(1)で表される化合物を用いた有機電界発光素子の極大発光波長は、色純度の高い青色発光が得られる観点から最も好ましくは440nm以上455nm未満である。
【0081】
一般式(1)で表される化合物は、分子量が1000以下であることが好ましく、900以下であることがより好ましく、850以下であることがさらに好ましい。分子量を低くすることによって、昇華温度を低くすることができるため、蒸着時における化合物の熱分解を防ぐことができる。また、蒸着時間を短縮して、蒸着に必要なエネルギーを抑えることもできる。
【0082】
一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明で用いることができる一般式(1)で表される化合物は、これらの具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0083】
【化42】

【0084】
【化43】

【0085】
【化44】

【0086】
【化45】

【0087】
上記一般式(1)で表される化合物は、公知の反応を組み合わせて合成することができ、具体的には、特開2009−283899号公報、特開2006−298793号公報に記載の方法で合成することができる。以下に一般式(1)で表される化合物の具体的合成手順の代表例を記載する。
【0088】
【化46】

【0089】
各工程は、特開2009−283899号公報、特開2006−298793号公報、Organic Letters,2005,vol.7,p.1857−1860に記載の合成方法、反応条件で行うことができる。
合成後、カラムクロマトグラフィー、再結晶等による精製を行った後、昇華精製により精製することが好ましい。昇華精製により、有機不純物を分離できるだけでなく、無機塩や残留溶媒等を効果的に取り除くことができる。
【0090】
前記一般式(1)で表される化合物を発光材料として用いる場合、その薄膜状態での極大発光波長は色純度の高い青色発光が得られる観点から、460nm未満であることが好ましく、400nm以上460nm以下であることがより好ましく、420nm以上455nm未満であることが特に好ましく、430nm以上455nm未満であることがさらに好ましく、440nm以上455nm未満であることが最も好ましい。
【0091】
[有機電界発光素子]
本発明の有機電界発光素子は、基板と、該基板上に配置され、陽極及び陰極を含む一対の電極と、該電極間に配置された1または複数の有機層とを有し、前記有機層は、発光材料として少なくとも1つの前記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする。
本発明の有機電界発光素子の構成は、特に制限されることはない。図1に、本発明の有機電界発光素子の構成の一例を示す。図1の有機電界発光素子10は、基板2上に、一対の電極(陽極3と陰極9)の間に有機層を有する。
有機電界発光素子の素子構成、基板、陰極及び陽極については、例えば、特開2008−270736号公報に詳述されており、該公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
以下、本発明の有機電界発光素子の好ましい態様について、基板、電極、有機層、保護層、封止容器、駆動方法、発光波長、用途の順で詳細に説明する。
【0092】
<基板>
本発明の有機電界発光素子は、基板を有する。
本発明で使用する基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0093】
<電極>
本発明の有機電界発光素子は、前記基板上に配置され、陽極及び陰極を含む一対の電極を有する。
発光素子の性質上、一対の電極である陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明若しくは半透明であることが好ましい。
【0094】
(陽極)
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0095】
(陰極)
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0096】
<有機層>
本発明の有機電界発光素子は、前記電極間に配置された1または複数の有機層を有し、前記有機層は発光層を含み、該発光層はホスト材料と、少なくとも1つの前記一般式(1)で表される化合物とを含むことを特徴とする。
前記有機層は、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記透明電極上に又は前記半透明電極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機層は、前記透明電極又は前記半透明電極上の全面又は一面に形成される。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
以下、本発明の有機電界発光素子における、有機層の構成、有機層の形成方法、有機層を構成する各層の好ましい態様および各層に使用される材料について順に説明する。
【0097】
(有機層の構成)
本発明の有機電界発光素子では、前記有機層が発光層を含む。前記有機層が、電荷輸送層を含むことが好ましい。前記電荷輸送層とは、有機電界発光素子に電圧を印加した際に電荷移動が起こる層をいう。具体的には正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層又は電子注入層が挙げられる。前記電荷輸送層が正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層又は発光層であれば、低コストかつ高効率な有機電界発光素子の製造が可能となる。
【0098】
前記一般式(1)で表される化合物は、有機電界発光素子の前記電極間に配置される1または複数の有機層中の発光層のうち、少なくとも一層に含有される。
但し、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、前記一般式(1)で表される化合物は本発明の有機電界発光素子のその他の有機層に含有されていてもよい。前記一般式(1)で表される化合物を含有してもよい発光層以外の有機層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電荷ブロック層(正孔ブロック層、電子ブロック層など)などを挙げることができ、好ましくは励起子ブロック層、電荷ブロック層、電子輸送層、電子注入層のいずれかであり、より好ましくは励起子ブロック層、電荷ブロック層、又は電子輸送層である。
【0099】
前記一般式(1)で表される化合物が発光層に含有される場合、一般式(1)で表される化合物は発光層の全質量に対して0.1〜100質量%含まれることが好ましく、1〜50質量%含まれることがより好ましく、2〜20質量%含まれることがより好ましい。特に好ましいのは、3〜10重量%含まれる場合である。
【0100】
前記一般式(1)で表される化合物が発光層以外の有機層に含有される場合、一般式(1)で表される化合物はその有機層の全質量に対して70〜100質量%含まれることが好ましく、80〜100質量%含まれることがより好ましく、90〜100質量%含まれることがさらに好ましい。
【0101】
(有機層の形成方法)
本発明の有機電界発光素子において、各有機層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、スピンコート法、バーコート法等の湿式製膜法(溶液塗布法)のいずれによっても好適に形成することができる。
本発明の有機電界発光素子は、前記一対の電極間に配置された有機層が、少なくとも一層の前記一般式(1)で表される化合物を含む組成物の蒸着により形成されていることが好ましい。
【0102】
(発光層)
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。但し、本発明における前記発光層は、このようなメカニズムによる発光に必ずしも限定されるものではない。
【0103】
本発明の有機電界発光素子における前記発光層は、一般式(1)で表される化合物(発光材料)のみで構成されていてもよく、ホスト材料と前記発光材料の混合層とした構成でもよい。前記発光材料の種類は一種であっても二種以上であってもよい。前記ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。前記ホスト材料は一種であっても二種以上であってもよく、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。更に、前記発光層は、電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいてもよい。
【0104】
また、発光層は一層であっても二層以上の多層であってもよく、それぞれの層に同じ発光材料やホスト材料を含んでもよいし、層毎に異なる材料を含んでもよい。発光層が複数の場合、それぞれの発光層が異なる発光色で発光してもよい。
【0105】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、2nm〜300nmであるのが好ましく、中でも、外部量子効率の観点で、5nm〜100nmであるのがより好ましく、10nm〜50nmであるのが更に好ましい。
【0106】
本発明の有機電界発光素子は、前記発光層が前記一般式(1)で表される化合物を含有し、前記発光層の発光材料として前記一般式(1)で表される化合物を用いる。ここで、本明細書中、ホスト材料とは、発光層において主に電荷の注入、輸送を担う化合物であり、また、それ自体は実質的に発光しない化合物のことである。ここで「実質的に発光しない」とは、該実質的に発光しない化合物からの発光量が好ましくは素子全体での全発光量の5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは1%以下であることを言う。前記一般式(1)で表される化合物は、発光層のホスト材料として用いてもよい。
【0107】
(発光材料)
本発明の有機電界発光素子では、前記一般式(1)で表される化合物を発光材料とするが、その場合であっても前記一般式(1)で表される化合物とは別の発光材料を組み合わせて用いることが可能である。また、本発明の有機電界発光素子において、前記一般式(1)で表される化合物を発光層のホスト材料として使用する場合や、発光層以外の有機層に用いる場合にも、前記一般式(1)で表される化合物とは別の発光材料を発光層に用いることができる。
本発明において用いることができる発光材料は、蛍光発光材料である。また、本発明における発光層は、色純度を向上させたり、発光波長領域を広げたりするために、2種類以上の発光材料を含有することができる。
【0108】
本発明の有機電界発光素子に用いることができる蛍光発光材料については、例えば、特開2008−270736号公報の段落番号[0100]〜[0164]、特開2007−266458号公報の段落番号[0088]〜[0090]に詳述されており、これら公報の記載の事項を本発明に適用することができる。
【0109】
本発明に使用できる蛍光発光材料の種類は特に限定されるものではないが、前記一般式(1)で表される化合物の他、例えば、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ピラン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、縮合多環芳香族化合物(アントラセン、フェナントロリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、又はペンタセンなど)、8−キノリノールの金属錯体、ピロメテン錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、及びこれらの誘導体などを挙げることができる。
【0110】
その他に、特開2010−111620号公報の[0082]に記載される化合物を発光材料として用いることもできる。
本発明の有機電界発光素子における発光層は、発光材料のみで構成されていてもよく、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でもよい。発光材料の種類は一種であっても二種以上であってもよい。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は一種であっても二種以上であってもよく、例えば、電子輸送性のホスト材料と正孔輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。更に、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいてもよい。
また、発光層は一層であっても二層以上の多層であってもよく、それぞれの層に同じ発光材料やホスト材料を含んでもよいし、層毎に異なる材料を含んでもよい。発光層が複数の場合、それぞれの発光層が異なる発光色で発光してもよい。
【0111】
(ホスト材料)
ホスト材料とは、発光層において主に電荷の注入、輸送を担う化合物であり、また、それ自体は実質的に発光しない化合物のことである。ここで「実質的に発光しない」とは、該実質的に発光しない化合物からの発光量が好ましくは素子全体での全発光量の5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは1%以下であることを言う。
【0112】
本発明の有機電界発光素子に用いることのできるホスト材料としては、例えば、以下の化合物を挙げることができる。
ピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、フラン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ポルフィリン系化合物、縮環芳香族炭化水素化合物(フルオレン、ナフタレン、フェナントレン、トリフェニレン等)、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体及びそれらの誘導体(置換基や縮環を有していてもよい)等を挙げることができる。その他に、特開2010−111620の[0081]や[0083]に記載される化合物を用いることもできる。
これらのうち、カルバゾール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、アリールアミン、縮環芳香族炭化水素化合物、金属錯体が好ましく、縮環芳香族炭化水素化合物が安定であるために特に好ましい。縮環芳香族炭化水素化合物としてはナフタレン系化合物、アントラセン系化合物、フェナントレン系化合物、トリフェニレン系化合物、ピレン系化合物が好ましく、アントラセン系化合物、ピレン系化合物がより好ましく、アントラセン系化合物が特に好ましい。アントラセン系化合物としては、WO2010/134350号公報の[0033]〜[0064]に記載のものが特に好ましく、例えば後掲の化合物H−1やH−2を挙げることができる。
【0113】
本発明の有機電界発光素子では、前記発光層に含まれる前記ホスト材料が、炭素数10〜50の炭化水素縮合環構造を有することが好ましい。
前記炭素数10〜50の炭化水素縮合環構造は、ナフタレン、フェナントレン、ベンゾ[c]フェナントレン、アントラセン、ピレン、トリフェニレンおよびクリセンが好ましく、ナフタレン、フェナントレン、ベンゾ[c]フェナントレンおよびアントラセンがより好ましく、アントラセンが最も好ましい。すなわち、前記ホスト材料の前記炭素数10〜50の炭化水素縮合環構造がアントラセン骨格であることがより好ましい。さらに、前記炭素数10〜50の炭化水素縮合環構造は、炭素と水素または重水素のみで構成された化合物であることが特に好ましい。
【0114】
本発明の有機電界発光素子における発光層において用いることができるホスト材料としては、正孔輸送性ホスト材料であっても、電子輸送性ホスト材料であってもよい。
【0115】
発光層において、前記ホスト材料の膜状態での一重項最低励起エネルギー(S1エネルギー)が、前記発光材料のS1エネルギーより高いことが色純度、発光効率、駆動耐久性の点で好ましい。ホスト材料のS1が発光材料のS1より0.1eV以上大きいことが好ましく、0.2eV以上大きいことがより好ましく、0.3eV以上大きいことが更に好ましい。
ホスト材料の膜状態でのS1が発光材料のS1より小さいと発光を消光してしまうためホスト材料には発光材料より大きなS1が求められる。また、ホスト材料のS1が発光材料より大きい場合でも、両者のS1差が小さい場合には一部、発光材料からホスト材料への逆エネルギー移動が起こるため、効率低下や色純度低下、耐久性低下の原因となる。従って、S1が十分に大きく、化学的安定性及びキャリア注入・輸送性の高いホスト材料が求められる。
【0116】
また、本発明の有機電界発光素子における発光層におけるホスト化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、発光効率、駆動電圧の観点から、発光層を形成する全化合物質量に対して15〜98質量%であることが好ましく、80〜97質量%であることがより好ましい。発光層に、一般式(1)で表される化合物を含む複数種類のホスト化合物を含む場合、一般式(1)で表される化合物は全ホスト化合物中50〜99質量%以下であることが好ましい。
【0117】
(その他の層)
本発明の有機電界発光素子は、前記発光層以外のその他の層を有していてもよい。
前記有機層が有していてもよい前記発光層以外のその他の有機層として、正孔注入層、正孔輸送層、ブロック層(正孔ブロック層、励起子ブロック層など)、電子輸送層などが挙げられる。前記具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ブロック層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
本発明の有機電界発光素子は、(A)前記陽極と前記発光層との間に好ましく配置される有機層を少なくとも一層含むことが好ましい。前記(A)前記陽極と前記発光層との間に好ましく配置される有機層としては、陽極側から正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層を挙げることができる。
本発明の有機電界発光素子は、(B)前記陰極と前記発光層との間に好ましく配置される有機層少なくとも一層含むことが好ましい。前記(B)前記陰極と前記発光層との間に好ましく配置される有機層としては、陰極側から電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層を挙げることができる。
具体的には、本発明の有機電界発光素子の好ましい態様の一例は、図1に記載される態様であり、前記有機層として、陽極3側から正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、正孔ブロック層7及び電子輸送層8がこの順に積層されている態様である。
以下、これら本発明の有機電界発光素子が有していてもよい前記発光層以外のその他の層について、説明する。
【0118】
(A)陽極と前記発光層との間に好ましく配置される有機層
まず、(A)前記陽極と前記発光層との間に好ましく配置される有機層について説明する。
【0119】
(A−1)正孔注入層、正孔輸送層
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
【0120】
本発明の発光素子は、発光層と陽極の間に少なくとも一層の有機層を含むことが好ましく、該有機層に、下記一般式(Sa−1)、一般式(Sb−1)、一般式(Sc−1)で表される化合物の内、少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。
【0121】
【化47】

(式中、Xは、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキレン基、置換または無置換の炭素数2〜30のアルケニレン基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換または無置換の炭素数2〜30のヘテロアリーレン基、あるいは、置換または無置換の炭素数2〜30の複素環基、あるいは、これらの基を組み合わせてなる基を表す。RS1、RS2、RS3は、各々独立に水素原子、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換または無置換の炭素数2〜30の複素環、置換または無置換の炭素数5〜30の縮合多環基、ヒドロキシ基、シアノ基、あるいは、置換または無置換のアミノ基を表す。隣接するRS1、RS2、RS3同士が互いに結合し、飽和炭素環または不飽和炭素環を形成してもよい。ARS1、ARS2は、各々独立に、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、あるいは、置換または無置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基を表す。)
【化48】

(式中、RS4、RS5、RS6およびRS7は、各々独立に水素原子、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換または無置換の炭素数2〜30の複素環、置換または無置換の炭素数5〜30の縮合多環基、ヒドロキシ基、シアノ基、あるいは、置換または無置換のアミノ基を表す。隣接するRS4、RS5、RS6およびRS7同士が互いに結合し、飽和炭素環または不飽和炭素環を形成してもよい。ARS3は、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、あるいは、置換または無置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基を表す。)
【化49】

(式中、RS8およびRS9は各々独立に水素原子、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または無置換の炭素数2〜30の複素環基、あるいは、置換または無置換の炭素数5〜30の縮合多環基を表す。RS10は置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または無置換の炭素数2〜30の複素環基、あるいは、置換または無置換の炭素数5〜30の縮合多環基を表す。RS11およびRS12は、各々独立に水素原子、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換または無置換の炭素数2〜30の複素環、置換または無置換の炭素数5〜30の縮合多環基、ヒドロキシ基、シアノ基、あるいは、置換または無置換のアミノ基を表す。隣接するRS11およびRS12同士が互いに結合し、飽和炭素環または不飽和炭素環を形成してもよい。ARS4は、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基または置換、あるいは、無置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基を表す。YS1、YS2は各々独立に、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキレン基、あるいは、置換または無置換の炭素数6〜30のアリーレン基を表す。nおよびmは各々独立に0〜5の整数を表す。)
【0122】
前記一般式(Sa−1)について説明する。
前記一般式(Sa−1)中、Xは、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキレン基、置換または無置換の炭素数2〜30のアルケニレン基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換または無置換の炭素数2〜30のヘテロアリーレン基、あるいは、置換または無置換の炭素数2〜30の複素環基、あるいは、これらの基を組み合わせてなる基を表す。Xとして好ましくは、置換または無置換の炭素数6〜30のアリーレン基であり、より好ましくは、置換または無置換のフェニレン、置換または無置換のビフェニレン、および、置換または無置換のナフチレンであり、さらに好ましくは置換または無置換のビフェニレンである。
S1、RS2、RS3は、各々独立に水素原子、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換または無置換の炭素数2〜30の複素環、置換または無置換の炭素数5〜30の縮合多環基、ヒドロキシ基、シアノ基、あるいは、置換または無置換のアミノ基を表す。隣接するRS1、RS2、RS3同士が互いに結合し、飽和炭素環または不飽和炭素環を形成してもよい。前記飽和炭素環または当該不飽和炭素環の例としては、ナフタレン、アズレン、アントラセン、フルオレン、フェナレンなどがある。RS1、RS2、RS3として好ましくは、水素原子、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または無置換の炭素数5〜30の縮合多環基、および、シアノ基であり、より好ましくは水素原子である。
ARS1、ARS2は、各々独立に、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、あるいは、置換または無置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基を表す。ARS1、ARS2として好ましくは、置換または無置換のフェニル基である。
【0123】
次に前記一般式(Sb−1)について説明する。
前記一般式(Sb−1)中、RS4、RS5、RS6およびRS7は、各々独立に水素原子、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換または無置換の炭素数2〜30の複素環、または置換または無置換の炭素数5〜30の縮合多環基、ヒドロキシ基、シアノ基、あるいは、置換または無置換のアミノ基を表す。隣接するRS4、RS5、RS6およびRS7同士が互いに結合し、飽和炭素環または不飽和炭素環を形成してもよい。前記飽和炭素環または当該不飽和炭素環の例としては、ナフタレン、アズレン、アントラセン、フルオレン、フェナレンなどがある。RS4、RS5、RS6およびRS7として好ましくは、水素原子、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または無置換の炭素数5〜30の縮合多環基、および、シアノ基であり、より好ましくは水素原子である。
ARS3は、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、あるいは、置換または無置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基を表す。ARS3として好ましくは、置換または無置換のフェニル基である。
【0124】
次に前記一般式(Sc−1)について説明する。
前記一般式(Sc−1)中、RS8およびRS9は各々独立に水素原子、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または無置換の炭素数2〜30の複素環基、あるいは、置換または無置換の炭素数5〜30の縮合多環基を表す。RS8およびRS9として好ましくは、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、および、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基であり、より好ましくは、メチル基およびフェニル基である。RS10は置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または無置換の炭素数2〜30の複素環基、あるいは、置換または無置換の炭素数5〜30の縮合多環基を表す。RS10として好ましくは置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基であり、より好ましくはフェニル基である。RS11およびRS12は、各々独立に水素原子、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換または無置換の炭素数2〜30の複素環、置換または無置換の炭素数5〜30の縮合多環基、ヒドロキシ基、シアノ基、あるいは、置換または無置換のアミノ基を表す。隣接するRS11およびRS12同士が互いに結合し、飽和炭素環または不飽和炭素環を形成してもよい。前記飽和炭素環または当該不飽和炭素環の例としては、ナフタレン、アズレン、アントラセン、フルオレン、フェナレンなどがある。RS11およびRS12として好ましくは、水素原子、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または無置換の炭素数5〜30の縮合多環基、および、シアノ基であり、より好ましくは水素原子である。ARS4は、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、あるいは、置換または無置換の炭素数2〜30のヘテロアリール基を表す。YS1、YS2は置換または無置換の炭素数1〜30のアルキレン、あるいは、置換または無置換の炭素数6〜30のアリーレンを表す。YS1、YS2として好ましくは、置換または無置換の炭素数6〜30のアリーレンであり、より好ましくは置換または無置換のフェニレンである。nは0〜5の整数であり、好ましくは0〜3、より好ましくは0〜2、さらに好ましくは0である。mは0〜5の整数であり、好ましくは0〜3、より好ましくは0〜2、さらに好ましくは1である。
【0125】
前記一般式(Sa−1)は、好ましくは下記一般式(Sa−2)で表される化合物である。
【0126】
【化50】

(式中、RS1、RS2、RS3は、各々独立に水素原子、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換または無置換の炭素数2〜30の複素環、置換または無置換の炭素数5〜30の縮合多環基、ヒドロキシ基、シアノ基、あるいは、置換または無置換のアミノ基を表す。隣接するRS1、RS2、RS3同士が互いに結合し、飽和炭素環または不飽和炭素環を形成してもよい。QSaは各々独立に、水素原子、シアノ基、フッ素原子、炭素数1〜30のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数2〜30の複素環、あるいは、置換または非置換のアミノ基を表す。)
【0127】
前記一般式(Sa−2)について説明する。RS1、RS2、RS3は一般式(Sa−1)中のそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。QSaは各々独立に、水素原子、シアノ基、フッ素原子、炭素数1〜30のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数2〜30の複素環、あるいは、置換または非置換のアミノ基を表す。QSaとして好ましくは、水素原子、シアノ基、フッ素原子、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、および、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基であり、より好ましくは水素原子、および、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子である。
【0128】
前記一般式(Sb−1)は、好ましくは下記一般式(Sb−2)で表される化合物である。
【0129】
【化51】

(式中、RS4、RS5、RS6およびRS7は、各々独立に水素原子、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換または無置換の炭素数2〜30の複素環、置換または無置換の炭素数5〜30の縮合多環基、ヒドロキシ基、シアノ基、あるいは、置換または無置換のアミノ基を表す。隣接するRS4、RS5、RS6およびRS7同士が互いに結合し、飽和炭素環または不飽和炭素環を形成してもよい。QSbは、水素原子、シアノ基、フッ素原子、炭素数1〜30のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数2〜30の複素環、あるいは、置換または非置換のアミノ基を表す。)
【0130】
前記一般式(Sb−2)について説明する。RS4、RS5、RS6およびRS7は一般式(Sb−1)中のそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。QSaは、水素原子、シアノ基、フッ素原子、炭素数1〜30のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数2〜30の複素環、あるいは、置換または非置換のアミノ基を表す。QSaとして好ましくは、水素原子、シアノ基、フッ素原子、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、および、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基であり、より好ましくは水素原子、および、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子である。
【0131】
前記一般式(Sc−1)は、好ましくは下記一般式(Sc−2)で表される化合物である。
【0132】
【化52】

(式中、RS8およびRS9は各々独立に水素原子、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または無置換の炭素数2〜30の複素環基、あるいは、置換または無置換の炭素数5〜30の縮合多環基を表す。RS10は置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または無置換の炭素数2〜30の複素環基、あるいは、置換または無置換の炭素数5〜30の縮合多環基を表す。RS11およびRS12は、各々独立に水素原子、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換または無置換の炭素数2〜30の複素環、または置換または無置換の炭素数5〜30の縮合多環基、ヒドロキシ基、シアノ基、あるいは、置換または無置換のアミノ基を表す。隣接するRS11およびRS12同士が互いに結合し、飽和炭素環または不飽和炭素環を形成してもよい。QScは、水素原子、シアノ基、フッ素原子、炭素数1〜30のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数2〜30の複素環、あるいは、置換または非置換のアミノ基を表す。)
【0133】
前記一般式(Sc−2)について説明する。RS8、RS9、RS10、RS11およびRS12は一般式(Sc−1)中のそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。QScは、水素原子、シアノ基、フッ素原子、炭素数1〜30のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数2〜30の複素環、または置換または非置換のアミノ基を表す。QScとして好ましくは、水素原子、シアノ基、フッ素原子、置換または非置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基であり、より好ましくは水素原子、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基であり、さらに好ましくはフェニル基である。
【0134】
前記一般式(Sa−1)、(Sb−1)および(Sc−1)で表される化合物の具体例としては以下のものが挙げられる。但し、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
【0135】
【化53】

【0136】
【化54】

【0137】
【化55】

【0138】
【化56】

【0139】
【化57】

【0140】
【化58】

【0141】
【化59】

【0142】
【化60】

【0143】
【化61】

【0144】
【化62】

【0145】
前記一般式(Sa−1)、(Sb−1)または(Sc−1)で表される化合物は、特開2007−318101号公報に記載の方法で合成可能である。合成後、カラムクロマトグラフィー、再結晶、再沈殿などによる精製を行った後、昇華精製により精製することが好ましい。昇華精製により有機不純物を分離できるだけではなく、無機塩や残留溶媒、水分等を効果的に取り除くことが可能である。
【0146】
本発明の発光素子において、前記一般式(Sa−1)、(Sb−1)または(Sc−1)で表される化合物は、前記発光層と前記陽極との間の有機層に含有されることが好ましく、その中でも発光層に隣接する陽極側の層に含有されることがより好ましく、正孔輸送層に含有される正孔輸送材料であることが特に好ましい。
前記一般式(Sa−1)、(Sb−1)または(Sc−1)で表される化合物は、添加する有機層の全質量に対して70〜100質量%含まれることが好ましく、85〜100質量%含まれることがより好ましい。
【0147】
〔一般式(M−3)で表される化合物〕
本発明の有機電界発光素子は、前記(A)陽極と前記発光層との間に好ましく配置される有機層に特に好ましく用いられる材料として、少なくとも一種の下記一般式(M−3)で表される化合物を挙げることができる。
【0148】
前記一般式(M−3)で表される化合物は発光層と陽極の間の発光層に隣接する有機層に含有されることがより好ましいが、その用途が限定されることはなく、有機層内のいずれの層に更に含有されてもよい。前記一般式(M−3)で表される化合物の導入層としては、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷ブロック層のいずれか、若しくは複数に含有することができる。
前記一般式(M−3)で表される化合物が含有される、発光層と陽極の間の発光層に隣接する有機層は、電子ブロック層又は正孔輸送層であることがより好ましい。
【0149】
【化63】

【0150】
前記一般式(M−3)中、RS1〜RS5はそれぞれ独立にアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−CO2R、−C(O)R、−NR2、−NO2、−OR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。複数のRS1〜RS5が存在するとき、それらは互いに結合して環を形成してもよく、更に置換基Zを有していてもよい。
aは0〜4の整数を表し、複数のRS1が存在するとき、それらは同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。b〜eはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、それぞれ複数のRS2〜RS5が存在するとき、それらは同一でも異なっていてもよく、任意の2つが結合し環を形成してもよい。
qは1〜5の整数であり、qが2以上のとき複数のRS1は同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0151】
アルキル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基Zを挙げることができる。RS1〜RS5で表されるアルキル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、i−プロピル基、シクロヘキシル基、t−ブチル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基Zを挙げることができる。RS1〜RS5で表されるシクロアルキル基として、好ましくは環員数4〜7のシクロアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数5〜6のシクロアルキル基であり、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
S1〜RS5で表されるアルケニル基としては好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、1−プロペニル、1−イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。
S1〜RS5で表されるアルキニル基としては、好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばエチニル、プロパルギル、1−プロピニル、3−ペンチニルなどが挙げられる。
【0152】
S1〜RS5で表されるペルフルオロアルキル基は、前述のアルキル基の全ての水素原子がフッ素原子に置き換えられたものが挙げられる。
【0153】
S1〜RS5で表されるアリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
【0154】
S1〜RS5で表されるヘテロアリール基としては、好ましくは、炭素数5〜8のヘテロアリール基であり、より好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換のヘテロアリール基であり、例えば、ピリジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、ピロリル基、インドリル基、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、トリアゾリル基、オキサゾリル基、ベンズオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンズイソオキサゾリル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、イミダゾリジニル基、チアゾリニル基、スルホラニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、ピリドインドリル基などが挙げられる。好ましい例としては、ピリジル基、ピリミジニル基、イミダゾリル基、チエニル基であり、より好ましくは、ピリジル基、ピリミジニル基である。
【0155】
S1〜RS5として好ましくは、水素原子、アルキル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ペルフルオロアルキル基、ジアルキルアミノ基、フルオロ基、アリール基、ヘテロアリール基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、フルオロ基、アリール基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基である。置換基Zとしては、アルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、シアノ基、ジアルキルアミノ基が好ましく、水素原子、アルキル基がより好ましい。
【0156】
S1〜RS5は任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。形成されるシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールの定義及び好ましい範囲はRS1〜RS5で定義したシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基と同じである。
【0157】
前記一般式(M−3)で表される化合物を、正孔輸送層中で用いる場合は、前記一般式(M−3)で表される化合物は50〜100質量%含まれることが好ましく、80〜100質量%含まれることが好ましく、95〜100質量%含まれることが特に好ましい。
また、前記一般式(M−3)で表される化合物を、複数の有機層に用いる場合はそれぞれの層において、上記の範囲で含有することが好ましい。
【0158】
前記一般式(M−3)で表される化合物を含む正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、3nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、該正孔輸送層は発光層に接して設けられている事が好ましい。
【0159】
以下に、前記一般式(M−3)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されることはない。
【0160】
【化64】

【0161】
【化65】

【0162】
【化66】

【0163】
【化67】

【0164】
【化68】

【0165】
その他、正孔注入層および正孔輸送層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0165〕〜〔0167〕に記載の事項を本発明に適用することもできる。また、特開2011−71452号公報の〔0250〕〜〔0339〕に記載の事項を本発明の正孔注入層および正孔輸送層について適用することもできる。
【0166】
前記正孔注入層には電子受容性ドーパントを含有することが好ましい。正孔注入層に電子受容性ドーパントを含有することにより、正孔注入性が向上し、駆動電圧が低下する、効率が向上するなどの効果がある。電子受容性ドーパントとは、ドープされる材料から電子を引き抜き、ラジカルカチオンを発生させることが可能な材料であれば有機材料、無機材料のうちいかなるものでもよいが、例えば、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)などのTCNQ化合物、ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレン(HAT−CN、後述の実施例で用いた化合物LG 101)などのヘキサアザトリフェニレン化合物、酸化モリブデンなどが挙げられる。
【0167】
前記正孔注入層中の電子受容性ドーパントは、正孔注入層を形成する全化合物質量に対して、0.01〜50質量%含有されることが好ましく、0.1〜40質量%含有されることがより好ましく、0.2〜30質量%含有されることがより好ましい。
【0168】
(A−2)電子ブロック層
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、3nm〜100nmであるのがより好ましく、5nm〜50nmであるのが更に好ましい。
電子ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
電子ブロック層に用いる材料は、前記発光材料のS1エネルギーより高いことが色純度、発光効率、駆動耐久性の点で好ましい。電子ブロック層に用いる材料の膜状態でのS1が発光材料のS1より0.1eV以上大きいことが好ましく、0.2eV以上大きいことがより好ましく、0.3eV以上大きいことが更に好ましい。
【0169】
(B)陰極と前記発光層との間に好ましく配置される有機層
次に、前記(B)陰極と前記発光層との間に好ましく配置される有機層について説明する。
【0170】
(B−1)電子注入層、電子輸送層
電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
電子輸送材料としては、例えば前記一般式(1)で表される化合物を用いることができる。その他の電子輸送材料としては、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、フタラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、イミダゾピリジン誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、シロールに代表される有機シラン誘導体、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン等の縮環炭化水素化合物等をから選ばれることが好ましく、ピリジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、イミダゾピリジン誘導体、金属錯体、縮環炭化水素化合物のいずれかであることがより好ましい。
【0171】
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜100nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのが更に好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0172】
電子注入層には電子供与性ドーパントを含有することが好ましい。電子注入層に電子供与性ドーパントを含有させることにより、電子注入性が向上し、駆動電圧が低下する、効率が向上するなどの効果がある。電子供与性ドーパントとは、ドープされる材料に電子を与え、ラジカルアニオンを発生させることが可能な材料であれば有機材料、無機材料のうちいかなるものでもよいが、例えば、テトラチアフルバレン(TTF)、テトラチアナフタセン(TTT)、ビス−[1,3 ジエチル−2−メチル−1,2−ジヒドロベンズイミダゾリル]などのジヒドロイミダゾール化合物、リチウム、セシウムなどが挙げられる。
【0173】
電子注入層中の電子供与性ドーパントは、電子注入層を形成する全化合物質量に対して、0.01質量%〜50質量%含有されることが好ましく、0.1質量%〜40質量%含有されることがより好ましく、0.5質量%〜30質量%含有されることがより好ましい。
【0174】
(B−2)正孔ブロック層
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の膜状態でのS1エネルギーは、発光層で生成する励起子のエネルギー移動を防止し、発光効率を低下させないために、発光材料のS1エネルギーよりも高いことが好ましい。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前記一般式(1)で表される化合物を用いることができる。
前記一般式(1)で表される化合物以外の、正孔ブロック層を構成するその他の有機化合物の例としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノレート(Aluminum (III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate(Balqと略記する))等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−DimethyL−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、3nm〜100nmであるのがより好ましく、5nm〜50nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
正孔ブロック層に用いる材料は、前記発光材料のS1エネルギーより高いことが色純度、発光効率、駆動耐久性の点で好ましい。正孔ブロック層に用いる材料の膜状態でのS1が発光材料のS1より0.1eV以上大きいことが好ましく、0.2eV以上大きいことがより好ましく、0.3eV以上大きいことが更に好ましい。
【0175】
(B−3)陰極と前記発光層との間に好ましく配置される有機層に特に好ましく用いられる材料
本発明の有機電界発光素子は、前記(B)陰極と前記発光層との間に好ましく配置される有機層の材料に特に好ましく用いられる材料として、前記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(P−1)で表される化合物および下記一般式(O−1)で表される化合物を挙げることができる。
以下、前記一般式(O−1)で表される化合物と、前記一般式(P−1)で表される化合物について説明する。
【0176】
本発明の有機電界発光素子は、発光層と陰極との間に少なくとも一層の有機層を含むことが好ましく、該有機層に少なくとも一種の下記一般式(O−1)で表される化合物を含有することが素子の効率や駆動電圧の観点から好ましい。以下に、一般式(O−1)について説明する。
【0177】
【化69】

【0178】
(一般式(O−1)中、RO1は、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。AO1〜AO4はそれぞれ独立に、C−RA又は窒素原子を表す。RAは水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、複数のRAは同じでも異なっていてもよい。LO1は、アリール環又はヘテロアリール環からなる二価〜六価の連結基を表す。nO1は2〜6の整数を表す。)
【0179】
O1は、アルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30)、又はヘテロアリール基(好ましくは炭素数4〜12)を表し、これらは前述の置換基群Aから選ばれる置換基を有していてもよい。RO1として好ましくはアリール基、又はヘテロアリール基であり、より好ましくはアリール基である。RO1のアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、アルキル基、アリール基又はシアノ基が挙げられ、アルキル基又はアリール基がより好ましく、アリール基が更に好ましい。RO1のアリール基が複数の置換基を有する場合、該複数の置換基は互いに結合して5又は6員環を形成していてもよい。RO1のアリール基は、好ましくは置換基群Aから選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基であり、より好ましくはアルキル基又はアリール基が置換していてもよいフェニル基であり、更に好ましくは無置換のフェニル基又は2−フェニルフェニル基である。
【0180】
O1〜AO4はそれぞれ独立に、C−RA又は窒素原子を表す。AO1〜AO4のうち、0〜2つが窒素原子であるのが好ましく、0又は1つが窒素原子であるのがより好ましい。AO1〜AO4の全てがC−RAであるか、又はAO1が窒素原子で、AO2〜AO4がC−RAであるのが好ましく、AO1が窒素原子で、AO2〜AO4がC−RAであるのがより好ましく、AO1が窒素原子で、AO2〜AO4がC−RAであり、RAが全て水素原子であるのが更に好ましい。
【0181】
Aは水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30)、又はヘテロアリール基(好ましくは炭素数4〜12)を表し、これらは前述の置換基群Aから選ばれる置換基を有していてもよい。また複数のRAは同じでも異なっていてもよい。RAとして好ましくは水素原子又はアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0182】
O1は、アリール環(好ましくは炭素数6〜30)又はヘテロアリール環(好ましくは炭素数4〜12)からなる二価〜六価の連結基を表す。LO1として好ましくは、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アリールトリイル基、又はヘテロアリールトリイル基であり、より好ましくはフェニレン基、ビフェニレン基、又はベンゼントリイル基であり、更に好ましくはビフェニレン基、又はベンゼントリイル基である。LO1は前述の置換基群Aから選ばれる置換基を有していてもよく、置換基を有する場合の置換基としてはアルキル基、アリール基、又はシアノ基が好ましい。LO1の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0183】
【化70】

【0184】
O1は2〜6の整数を表し、好ましくは2〜4の整数であり、より好ましくは2又は3である。nO1は、素子効率の観点では最も好ましくは3であり、素子の耐久性の観点では最も好ましくは2である。
【0185】
前記一般式(O−1)で表される化合物は、高温保存時の安定性、高温駆動時、駆動時の発熱に対して安定して動作させる観点から、ガラス転移温度(Tg)は100℃〜300℃であることが好ましく、120℃〜300℃であることがより好ましく、120℃〜300℃であることが更に好ましく、140℃〜300℃であることが更により好ましい。
【0186】
一般式(O−1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明で用いることができる一般式(O−1)で表される化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されることはない。
【0187】
【化71】

【0188】
【化72】

【0189】
前記一般式(O−1)で表される化合物は、特開2001−335776号に記載の方法で合成可能である。合成後、カラムクロマトグラフィー、再結晶、再沈殿などによる精製を行った後、昇華精製により精製することが好ましい。昇華精製により有機不純物を分離できるだけではなく、無機塩や残留溶媒、水分等を効果的に取り除くことが可能である。
【0190】
本発明の有機電界発光素子において、一般式(O−1)で表される化合物は発光層と陰極との間の有機層に含有されることが好ましいが、発光層に隣接する陰極側の層に含有されることがより好ましい。
一般式(O−1)で表される化合物は、添加する有機層の全質量に対して70〜100質量%含まれることが好ましく、85〜100質量%含まれることがより好ましい。
【0191】
本発明の有機電界発光素子は、発光層と陰極との間に少なくとも一層の有機層を含むことが好ましく、該有機層に少なくとも一種の下記一般式(P)で表される化合物を含有することが素子の効率や駆動電圧の観点から好ましい。以下に、一般式(P)について説明する。
【0192】
【化73】

【0193】
(一般式(P)中、RPは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30)、又はヘテロアリール基(好ましくは炭素数4〜12)を表し、これらは前述の置換基群Aから選ばれる置換基を有していてもよい。nPは1〜10の整数を表し、RPが複数の場合、それらは同一でも異なっていてもよい。RPのうち少なくとも一つは、下記一般式(P−1)〜(P−3)で表される置換基である。
【0194】
【化74】

【0195】
(一般式(P−1)〜(P−3)中、RP1〜RP3、R’P1〜R’P3はそれぞれアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30)、又はヘテロアリール基(好ましくは炭素数4〜12)を表し、これらは前述の置換基群Aから選ばれる置換基を有していてもよい。nP1及びnP2は0〜4の整数を表し、RP1〜RP3、R’P1〜R’P3が複数の場合、それらは同一でも異なっていてもよい。LP1〜LP3は、単結合、アリール環又はヘテロアリール環からなる二価の連結基のいずれかを表す。*は一般式(P)のアントラセン環との結合位を表す。)
【0196】
Pとして、(P−1)〜(P−3)で表される置換基以外の好ましい置換基はアリール基であり、より好ましくはフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基のいずれかであり、更に好ましくはナフチル基である。
P1〜RP3、R’P1〜R’P3として、好ましくはアリール基、ヘテロアリール基のいずれかであり、より好ましくはアリール基であり、更に好ましくはフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基のいずれかであり、最も好ましくはフェニル基である。
P1〜LP3として、好ましくは単結合、アリール環からなる二価の連結基のいずれかであり、より好ましくは単結合、フェニレン、ビフェニレン、ターフェニレン、ナフチレンのいずれかであり、更に好ましくは単結合、フェニレン、ナフチレンのいずれかである。
【0197】
一般式(P)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明で用いることができる一般式(P)で表される化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されることはない。
【0198】
【化75】

【0199】
【化76】

【0200】
前記一般式(P)で表される化合物は、WO2003/060956号公報、WO2004/080975号公報等に記載の方法で合成可能である。合成後、カラムクロマトグラフィー、再結晶、再沈殿などによる精製を行った後、昇華精製により精製することが好ましい。昇華精製により有機不純物を分離できるだけではなく、無機塩や残留溶媒、水分等を効果的に取り除くことが可能である。
【0201】
本発明の有機電界発光素子において、一般式(P)で表される化合物は発光層と陰極との間の有機層に含有されることが好ましいが、陰極に隣接する層に含有されることがより好ましい。
一般式(P)で表される化合物は、添加する有機層の全質量に対して70〜100質量%含まれることが好ましく、85〜100質量%含まれることがより好ましい。
【0202】
本発明の有機電界発光素子において、電子注入層、電子輸送層に用いられるその他の好ましい材料としては、例えば特開平9−194487等に記載のシロール化合物、特開2006−73581等に記載のホスフィンオキサイド化合物、特開2005−276801、特開2006−225320、WO2005/085387等に記載の含窒素芳香族ヘテロ六員環化合物、WO2003/080760、WO2005/085387等に記載の含窒素芳香族ヘテロ六員構造とカルバゾール構造を有するもの、US2009/0009065、WO2010/134350、特表2010−535806等に記載の芳香族炭化水素化合物(ナフタレン化合物、アントラセン化合物、トリフェニレン化合物、フェナントレン化合物、ピレン化合物、フルオランテン化合物、等)、等を挙げることができる。
【0203】
<保護層>
本発明において、有機電界素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0169〕〜〔0170〕に記載の事項を本発明に適用することができる。なお、保護層の材料は無機物であっても、有機物であってもよい。
【0204】
<封止容器>
本発明の有機電界発光素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
封止容器については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0171〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0205】
<駆動方法>
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0206】
本発明の有機電界発光素子の外部量子効率としては、5%以上が好ましく、6%以上がより好ましく、7%以上が更に好ましい。外部量子効率の数値は20℃で素子を駆動したときの外部量子効率の最大値、若しくは、20℃で素子を駆動したときの300〜400cd/m2付近での外部量子効率の値を用いることができる。
【0207】
本発明の有機電界発光素子の内部量子効率は、30%以上であることが好ましく、50%以上が更に好ましく、70%以上が更に好ましい。素子の内部量子効率は、外部量子効率を光取り出し効率で除して算出される。通常の有機EL素子では光取り出し効率は約20%であるが、基板の形状、電極の形状、有機層の膜厚、無機層の膜厚、有機層の屈折率、無機層の屈折率等を工夫することにより、光取り出し効率を20%以上にすることが可能である。
【0208】
<発光波長>
本発明の有機電界発光素子は、その発光波長は前記本発明の有機電界発光素子用材料の極大発光波長と同様であり、光の三原色のうち、青色の発光に用いる。本発明の有機電界発光素子では、前記一般式(1)で表される化合物を発光材料として用いて青色発光させる。
【0209】
<本発明の有機電界発光素子の用途>
本発明の有機電界発光素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、又は光通信等に好適に利用できる。特に、発光装置、照明装置、表示装置等の発光輝度が高い領域で駆動されるデバイスに好ましく用いられる。
【0210】
[発光装置]
本発明の発光装置は、本発明の有機電界発光素子を含むことを特徴とする。
次に、図2を参照して本発明の発光装置について説明する。
本発明の発光装置は、前記有機電界発光素子を用いてなる。
図2は、本発明の発光装置の一例を概略的に示した断面図である。図2の発光装置20は、透明基板(支持基板)2、有機電界発光素子10、封止容器16等により構成されている。
【0211】
有機電界発光素子10は、基板2上に、陽極(第一電極)3、有機層11、陰極(第二電極)9が順次積層されて構成されている。また、陰極9上には、保護層12が積層されており、更に、保護層12上には接着層14を介して封止容器16が設けられている。なお、各電極3、9の一部、隔壁、絶縁層等は省略されている。
ここで、接着層14としては、エポキシ樹脂等の光硬化型接着剤や熱硬化型接着剤を用いることができ、例えば熱硬化性の接着シートを用いることもできる。
【0212】
本発明の発光装置の用途は特に制限されるものではなく、例えば、照明装置のほか、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電子ペーパ等の表示装置とすることができる。
【0213】
[照明装置]
本発明の照明装置は、本発明の有機電界発光素子を含むことを特徴とする。
次に、図3を参照して本発明の照明装置について説明する。
図3は、本発明の照明装置の一例を概略的に示した断面図である。本発明の照明装置40は、図3に示すように、前述した有機EL素子10と、光散乱部材30とを備えている。より具体的には、照明装置40は、有機EL素子10の基板2と光散乱部材30とが接触するように構成されている。
光散乱部材30は、光を散乱できるものであれば特に制限されないが、図3においては、透明基板31に微粒子32が分散した部材とされている。透明基板31としては、例えば、ガラス基板を好適に挙げることができる。微粒子32としては、透明樹脂微粒子を好適に挙げることができる。ガラス基板及び透明樹脂微粒子としては、いずれも、公知のものを使用できる。このような照明装置40は、有機電界発光素子10からの発光が散乱部材30の光入射面30Aに入射されると、入射光を光散乱部材30により散乱させ、散乱光を光出射面30Bから照明光として出射するものである。
【0214】
[表示装置]
本発明の表示装置は、本発明の有機電界発光素子を含むことを特徴とする。
本発明の表示装置としては、例えば、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電子ペーパ等の表示装置とすることなどを挙げることができる。
【実施例】
【0215】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0216】
1.合成例1
(化合物1の合成)
【化77】

【0217】
(化合物1aの合成)
1,2,3,6,7,8−ヘキサヒドロピレン(ALDRICH製)50gのジクロロメタン溶液(500ml)に、室温にてブロミン(26ml)を滴下し、4時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、エタノールおよびヘキサンで洗浄することにより、化合物1a(39g)を得た。
【0218】
(化合物1bの合成)
化合物1a(29g)、N−(4−クロロ−3−ヒドロキシフェニル)アセトアミド(38g)、ジピバロイルメタン(東京化成製)(2.9g)、塩化銅(I)(16g)、炭酸セシウム(128g)のNMP溶液(850ml)を、窒素雰囲気下150℃で12時間攪拌した。反応液をセライト濾過し、濾液にトルエン/水を加えて、分液操作をおこなった。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製することにより、化合物1b(18.7g)を得た。
【0219】
(化合物1cの合成)
化合物1b(15g)、トリシクロヘキシルホスフィン・HBF4(3.9g)、炭酸カリウム(14.4g)のDMAc溶液(300ml)に、窒素雰囲気下150℃で酢酸パラジウム(1.2g)を添加し、12時間攪拌した。得られた粗結晶をシリカゲルカラムクロマト精製およびメタノール洗浄することにより、化合物1c(7.9g)を得た。
【0220】
(化合物1dの合成)
化合物1c(6g)、飽和水酸化カリウム水溶液(8ml)のエチレングリコール/トリグライム=1/1溶液300mlを120℃にて5時間攪拌した。反応液を冷却し、析出した粗結晶を濾取した。得られた粗結晶をトルエン/メタノールで再結晶することにより、化合物1d(4.5g)を得た。
【0221】
(化合物1の合成)
化合物1d(3.9g)、tBuONa(1.8g)、ヨードベンゼン(和光純薬製)(5.8g)のキシレン溶液(50ml)に、窒素雰囲気下でPd2(dba)3(0.86g)、10質量%トリターシャリーブチルホスフィン/ヘキサン溶液(3.8ml)を加え、100℃で9時間攪拌した。反応液を酢酸エチル/食塩水に注加し、有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残さをシリカゲルカラムクロマト精製することにより、化合物1(5.1g)を得た。なお、得られた化合物の同定は元素分析、NMR及びMASSスペクトルにより行った。
【0222】
2.発光材料の物性評価
(a)色度の評価
25mm×25mm×0.7mmの石英ガラス基板上に、真空蒸着法にて、下記のホスト材料H−5と表1に記載される各発光材料とを質量比(93:7)となるように蒸着して膜厚50nmの薄膜を形成した。得られた膜に350nmのUV光を照射し、発光させたときの発光スペクトルを蛍光分光光度計(FP−6300、日本分光(株)製)を用いて測定し、色度(x、y)を求めた。このときのy値に基づいて、色度を以下の3段階で評価した。
○ 0.04≦y≦0.12
△ 0.03≦y<0.04、0.09<y≦0.12
× y<0.03、0.12<y
【0223】
【化78】

【0224】
【表1】

【0225】
表1で比較発光材料として用いた比較材料1〜3は下記の構造である。なお、比較材料1は、特表2009−514812号公報の化合物2−60、比較材料2は、特表2009−514812号公報の化合物2−61、及び比較材料3は、特開2005−19219号公報の化合物6である。
【0226】
【化79】

【0227】
2.有機電界発光素子の作製と評価
<純度確認>
有機電界発光素子の作製に用いた材料は全て昇華精製を行い、高速液体クロマトグラフィー(東ソーTSKgel ODS−100Z)により純度(254nmの吸収強度面積比)が99.9%以上であることを確認した。
【0228】
(実施例1:有機電界発光素子の蒸着による作製)
厚み0.5mm、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極(ITO膜)上に真空蒸着法にて以下の有機化合物層を順次蒸着した。なお、以下の実施例及び比較例における蒸着速度は、特に断りのない場合は0.1nm/秒である。蒸着速度は水晶振動子を用いて測定した。また、以下の各層厚みは水晶振動子を用いて測定した。
第1層:HAT−CN:膜厚10nm
第2層:HT−2:膜厚30nm
第3層:H−1および表1中に記載の発光材料(質量比93:7):膜厚30nm
第4層:ET−1:膜厚30nm
【0229】
HAT−CNは下記構造を表す。
【化80】

【0230】
HT−2は下記構造を表す。
【化81】

【0231】
H−1は下記構造を表す。
【化82】

【0232】
ET−1は下記構造を表す。
【化83】

【0233】
この上に、フッ化リチウム1nm及び金属アルミニウム100nmをこの順に蒸着し陰極とした。このとき、フッ化リチウムの層上に、パターニングしたマスク(発光領域が2mm×2mmとなるマスク)を設置し、金属アルミニウムを蒸着した。
得られた積層体を、大気に触れさせることなく、窒素ガスで置換したグローブボックス内に入れ、ガラス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、発光部分が2mm×2mmの正方形である有機電界発光素子1−1〜1−15、および比較用の有機電界発光素子1−1〜1−3を得た。各素子とも発光材料に由来する発光が観測された。得られた各有機電界発光素子について、以下の試験を行った。
【0234】
<素子評価>
(a)外部量子効率
KEITHLEY社製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電圧を各素子に印加して発光させ、その輝度を輝度計(BM−8、(株)トプコン社製)を用いて測定した。発光スペクトルと発光波長はスペクトルアナライザー(PMA−11、浜松ホトニクス(株)製)を用いて測定した。これらを元に輝度が1000cd/m2付近の外部量子効率(η)を輝度換算法により算出し、比較材料1を用いた有機電界発光素子の値を1.0とした相対値で表わした。相対外部量子効率が1.0またはそれを超える場合が実用上必要であり、1.0よりも数字が大きいほど効率が良いことを示しているため、好ましい。
【0235】
(b)色度
各有機電界発光素子を輝度が1000cd/m2となるように直流電圧を印加して発光させたときの発光スペクトルから色度(x、y)を求めた。このときのy値から以下の3段階で色度を評価した。
○ 0.04≦y≦0.12
△ 0.03≦y<0.04、0.09<y≦0.12
× y<0.03、0.12<y
【0236】
(c)駆動劣化後の色度
各有機電界発光素子を輝度が1000cd/m2になるように直流電圧を印加して発光させ続け、輝度が500cd/m2に低下したときの色度(x’、y’)を発光スペクトルから求めた。駆動劣化前後のy値の変化Δy(=|y’−Δy|)から、以下の3段階で駆動劣化後の色度変化を評価した。
○ Δy≦0.01
△ 0.01<Δy≦0.02
× 0.02<Δy
【0237】
【表2】

【0238】
(実施例2)
層構成を以下に示すものに変えた以外は実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。なお、表3の外部量子効率は、比較材料1を用いた有機電界発光素子の外部量子効率を1.0としたときの相対値で表示している。
第1層:HT−4:膜厚50nm
第2層:HT−3:膜厚45nm
第3層:H−2及び表1中に記載の発光材料(質量比=95:5):膜厚25nm
第4層:ET−5:膜厚5nm
第5層:ET−3:膜厚20nm
【0239】
HT−4は下記構造を表す。
【化84】

【0240】
HT−3は下記構造を表す。
【化85】

【0241】
H−2は下記構造を表す。
【化86】

【0242】
ET−5は下記構造を表す。
【化87】

【0243】
ET−3は下記構造を表す。
【化88】

【0244】
【表3】

【0245】
(実施例3)
層構成を以下に示すものに変えた以外は実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表4に示す。なお、表4の外部量子効率は、比較材料1を用いた有機電界発光素子の外部量子効率を1.0としたときの相対値で表示している。
第1層:HAT−CN:膜厚10nm
第2層:HT−2:膜厚30nm
第3層:H−1及び表1中に記載の発光材料(質量比=95:5):膜厚30nm
第4層:ET−4:膜厚30nm
【0246】
ET−4は下記構造を表す。
【化89】

【0247】
【表4】

【0248】
(実施例4)
層構成を以下に示すものに変えた以外は実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表5に示す。なお、表5の外部量子効率は、比較材料1を用いた有機電界発光素子の外部量子効率を1.0としたときの相対値で表示している。
第1層:HAT−CN:膜厚10nm
第2層:HT−1:膜厚30nm
第3層:H−3及び表1中に記載の発光材料(質量比=93:7):膜厚30nm
第4層:ET−4:膜厚30nm
【0249】
HT−1は下記構造を表す。
【化90】

【0250】
H−3は下記構造を表す。
【化91】

【0251】
【表5】

【0252】
(実施例5)
層構成を以下に示すものに変えた以外は実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表6に示す。なお、表6の外部量子効率は、比較材料1を用いた有機電界発光素子の外部量子効率を1.0としたときの相対値で表示している。
第1層:HAT−CN:膜厚10nm
第2層:HT−2:膜厚30nm
第3層:H−4及び表1中に記載の発光材料(質量比=93:7):膜厚30nm
第4層:ET−2:膜厚30nm
【0253】
H−4は下記構造を表す。
【化92】

【0254】
ET−2は下記構造を表す。
【化93】

【0255】
【表6】

【0256】
(実施例6)
(有機電界発光素子評価(塗布))
−発光層形成用塗布液の調製−
化合物4(0.05質量%)、ホスト材料PH−1(0.95質量%)に、メチルエチルケトン(99.0質量%)を混合し、発光層形成用塗布液1を得た。
発光層形成用塗布液1において化合物4を化合物10、24に変更した以外は発光層形成用塗布液1と同様にして、発光層形成用塗布液2〜3を調製した。
また、発光層形成用塗布液1〜3において、ホスト材料PH−1をホスト材料H−2に変更した以外は発光層形成用塗布液1〜3と同様にして、発光層形成用塗布液4〜6をそれぞれ調製した。
【0257】
【化94】


【化95】

【0258】
また、比較例として、発光層形成用塗布液1および4における化合物4をそれぞれ比較材料1に変更した以外は発光層形成用塗布液1および4と同様にして、比較発光層形成用塗布液1および2を調整した。
【0259】
(素子作製手順)
−有機電界発光素子の作製−
25mm×25mm×0.7mmのガラス基板上にITOを150nmの厚みで蒸着し製膜したものを透明支持基板とした。この透明支持基板をエッチング、洗浄した。
このITOガラス基板上に、下記構造式で表されるPTPDES−2(ケミプロ化成製、Tg=205℃)2質量部を電子工業用シクロヘキサノン(関東化学製)98質量部に溶解し、厚みが約40nmとなるようにスピンコート(2,000rpm、20秒間、)した後、120℃で30分間乾燥と160℃で10分間アニール処理することで、正孔注入層を成膜した。
【0260】
【化96】

【0261】
この正孔注入層上に前記発光層形成用塗布液1を厚みが約40nmとなるようにスピンコート(1,300rpm、30秒間)し、発光層とした。
次いで、発光層上に、電子輸送層として、下記構造式で表されるBAlq(ビス−(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニル−フェノラト)−アルミニウム(III))を、厚みが40nmとなるように真空蒸着法にて形成した。
電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を、厚みが1nmとなるように真空蒸着法にて形成した。更に金属アルミニウムを70nm蒸着し、陰極とした。
以上により作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止することで、有機電界発光素子P1を作製した。
【0262】
【化97】

【0263】
有機電界発光素子P1において、発光層形成用塗布液1を2〜6に変更した以外は、有機電界発光素子P1と同様にして、有機電界発光素子P2〜P6を作製した。
また、比較例として、有機電界発光素子P1およびP4において、発光層形成用塗布液1および4を比較発光層形成用塗布液1および2に変更した以外は、有機電界発光素子P1およびP4と同様にして、有機電界発光素子P7およびP8を作製した。
【0264】
実施例1と同様の評価を行った。結果を表7に示す。なお、表7の外部量子効率は、比較材料1を用いた有機電界発光素子の外部量子効率を1.0としたときの相対値で表示している。
【0265】
【表7】

【0266】
上記表2〜表7より、本発明の有機電界発光素子は、高い青色純度を実現し、耐久性の改善、発光効率の向上、有機電界発光素子の駆動中における色度変化の低減していることがわかる。
【符号の説明】
【0267】
2・・・基板
3・・・陽極
4・・・正孔注入層
5・・・正孔輸送層
6・・・発光層
7・・・正孔ブロック層
8・・・電子輸送層
9・・・陰極
10・・・有機電界発光素子
11・・・有機層
12・・・保護層
14・・・接着層
16・・・封止容器
20・・・発光装置
30・・・光散乱部材
31・・・透明基板
30A・・光入射面
30B・・光出射面
32・・・微粒子
40・・・照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に配置され、陽極及び陰極を含む一対の電極と、
該電極間に配置され、発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有し、
前記有機層が下記一般式(1)で表される化合物を含む有機電界発光素子。
【化1】

(一般式(1)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。Z1〜Z4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、Z1およびZ2、並びにZ3およびZ4は互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)中、R1〜R12が、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、−NY12、−OY3、−SY4(Y1〜Y4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよい。)、ハロゲン原子、シリル基から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機電界発光素子。
【化2】

(一般式(2)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。L1は2価以上の連結基を表し、W1は、O、S、CY89またはNY6を表し(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい)、Z3およびZ4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、L1およびW1、並びにZ3およびZ4は互いに結合して環を形成してもよい。DGはドナー性基を表す。nは1〜2の整数を表し、mは0又は1を表し、mが0のとき、L1とW1とは結合しない。)
【請求項4】
前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項3に記載の有機電界発光素子。
【化3】

(一般式(3)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。L1、L2はそれぞれ独立に2価以上の連結基を表し、W1、W2はそれぞれ独立に、O、S、CY89またはNY6を表し(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい)、L1およびW1、並びにL2およびW2は互いに結合して環を形成してもよい。DGはドナー性基を表す。nは1〜2の整数を表し、m、pは0又は1の整数を表し、m又はpが0のとき、L1およびW1、並びにL2およびW2は結合しない。)
【請求項5】
前記一般式(2)および(3)中、前記ドナー性基が、−NY12、−OY3、−SY4(Y1〜Y4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらはいずれも更に置換基を有していてもよい。)または下記一般式(A)で表されることを特徴とする請求項3又は4に記載の有機電界発光素子。
【化4】

(一般式(A)中、X1、X2はそれぞれ独立にO、S、NY5を表し、R13〜R15はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基、−NY12、−OY3、−SY4(Y1〜Y5はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す)を表す。これらはいずれも更に置換基を有していてもよい。)
【請求項6】
前記一般式(2)および(3)中、L1、L2が、それぞれ独立にアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表すことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記一般式(2)および(3)中、L1、L2が、それぞれ独立に下記一般式(4)〜(7)のいずれかで表されることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子(但し、下記一般式(4)〜(7)で表される連結基中には、ハメットの置換基定数σp値が0.1以上の置換基は含まれない)。
【化5】

(一般式(4)中、A1〜A4は、それぞれ独立にCY7、Nを表し、A1とA2で縮環して芳香環を形成してもよい。Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよく、前記一般式(2)中のmが1のときは、W1はA4で結合し、前記一般式(3)中のmおよびpがそれぞれ独立に1を表すときは、W1およびW2はA4で結合する。)
【化6】

(一般式(5)中、A5〜A10は、それぞれ独立にCY7、Nを表し、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。前記一般式(2)中のmが1のときは、W1はA5またはA10で結合し、前記一般式(3)中のmおよびpがそれぞれ独立に1を表すときは、W1およびW2はA5またはA10で結合する。)
【化7】

(一般式(6)中、X3、X5は、それぞれ独立にO、S、NY6を表し、X4、X6は、それぞれ独立にCY7、Nを表す。Y6〜Y7はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。ただし、前記一般式(2)又は(3)中のm、pは0である。)
【化8】

(一般式(7)中、X7、X10はそれぞれ独立にO、S、NY6を表し、X8、X9はそれぞれ独立にCY7、Nを表す。Y6〜Y7はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。R16〜R17は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基、−NY12、−OY3、−SY4(Y1〜Y4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す)を表し、これらはいずれも更に置換基を有していてもよい。ただし、前記一般式(2)又は(3)中のm、pは0である。)
【請求項8】
前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(8)〜(11)のいずれかで表される化合物であることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【化9】

(一般式(8)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。A1〜A4はそれぞれ独立にCY7、Nを表し、A1とA2で縮環して芳香環を形成してもよく、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。W1はO、S、CY89またはNY6を表し(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい)、Z3およびZ4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表す。A4およびW1、並びにZ3およびZ4は互いに結合して環を形成してもよい。mは0又は1を表し、mが0のときはA4とW1は結合しない。)
【化10】

(一般式(9)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。A5〜A10は、それぞれ独立にCY7、Nを表し、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。W1はO、S、CY89またはNY6を表し(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい)、Z3およびZ4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表す。A5およびW1、並びにZ3およびZ4は互いに結合して環を形成してもよい。mは0又は1を表し、mが0のときA5とW1とは結合しない。)
【化11】

(一般式(10)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。X3、X5は、それぞれ独立にO、S、NY6を表し、X4、X6は、それぞれ独立にCY7、Nを表す。Y6〜Y7はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Z2〜Z4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、Z3とZ4は互いに結合して環を形成してもよい。)
【化12】

(一般式(11)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。X7、X10はそれぞれ独立にO、S、NY6を表し、X8、X9はそれぞれ独立にCY7、Nを表す。Y6〜Y7はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。R16〜R17は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基、−NY12、−OY3、−SY4(Y1〜Y4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す)を表し、これらはいずれも更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Z2〜Z4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、Z3とZ4は互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項9】
前記一般式(8)で表される化合物が、下記一般式(12)で表される化合物であることを特徴とする請求項8に記載の有機電界発光素子。
【化13】

(一般式(12)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。A1〜A4はそれぞれ独立にCY7、Nを表し、A1とA2で縮環して芳香環を形成してもよく、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。W1は、O、S、CY89またはNY6を表し(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。)、Z3およびZ4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表す。Z3とZ4は互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項10】
前記一般式(9)で表される化合物が、下記一般式(13)で表される化合物であることを特徴とする請求項8に記載の有機電界発光素子。
【化14】

(一般式(13)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。A5〜A10は、それぞれ独立にCY7、Nを表し、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。W1は、O、S、CY89またはNY6を表し(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。)、Z3およびZ4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表す。Z3とZ4は互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項11】
前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(8’)〜(11’)のいずれかで表される化合物であることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【化15】

(一般式(8’)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。A1〜A4はそれぞれ独立にCY7、Nを表し、A1とA2で縮環して芳香環を形成してもよく、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。W1およびW2はそれぞれ独立にO、S、CY89またはNY6(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい)を表す。mは0又は1を表し、mが0のときはA4とW1は結合しない。pは0又は1を表し、pが0のときはA4とW2は結合しない。)
【化16】

(一般式(9’)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。A5〜A10は、それぞれ独立にCY7、Nを表し、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。W1およびW2はそれぞれ独立にO、S、CY89またはNY6(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい)を表す。mは0又は1を表し、mが0のときA5とW1とは結合しない。pは0又は1を表し、pが0のときはA5とW2は結合しない。)
【化17】

(一般式(10’)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。X3、X5は、それぞれ独立にO、S、NY6を表し、X4、X6は、それぞれ独立にCY7、Nを表す。Y6〜Y7はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Z2およびZ4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表す。)
【化18】

(一般式(11’)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。X7、X10はそれぞれ独立にO、S、NY6を表し、X8、X9はそれぞれ独立にCY7、Nを表す。Y6〜Y7はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。R16〜R17は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基、−NY12、−OY3、−SY4(Y1〜Y4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す)を表し、これらはいずれも更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Z2およびZ4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表す。)
【請求項12】
前記一般式(8’)で表される化合物が、下記一般式(14)で表される化合物であることを特徴とする請求項11に記載の有機電界発光素子。
【化19】

(一般式(14)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。A1〜A3はそれぞれ独立にCY7、Nを表し、A1とA2で縮環して芳香環を形成してもよく、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。W1およびW2はそれぞれ独立にO、S、CY89またはNY6(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい)を表す。)
【請求項13】
前記一般式(9’)で表される化合物が、下記一般式(15)で表される化合物であることを特徴とする請求項11に記載の有機電界発光素子。
【化20】

(一般式(15)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。A5〜A10は、それぞれ独立にCY7、Nを表し、Y7は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Y1〜Y2はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。これらは更に置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。W1およびW2はそれぞれ独立にO、S、CY89またはNY6(Y6、Y8〜Y9は、それぞれ独立にアルキル基、シリル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい)を表す。)
【請求項14】
前記発光層に、アントラセン系ホスト材料を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項15】
前記発光層が真空蒸着プロセスにて形成されてなることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項16】
前記発光層が湿式プロセスにて形成されてなることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を用いた発光装置。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を用いた表示装置。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を用いた照明装置。
【請求項20】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする有機電界発光素子用材料。
【化21】

(一般式(1)中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、これらは互いに結合して環を形成してもよいが、結合して得られる環は芳香環ではない。Z1〜Z4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、Z1およびZ2、並びにZ3およびZ4は互いに結合して環を形成してもよい。)

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−106000(P2013−106000A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250945(P2011−250945)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(512253626)ユー・ディー・シー アイルランド リミテッド (13)
【Fターム(参考)】