説明

有機電界発光素子とその製造方法並びにマスクフレーム

【課題】透明電極成膜において有機薄膜上に透明電極をスパッタリング法により成膜する際、有機薄膜上への二次電子飛散によるチャージアップやスパッタリングダメージを抑制するとともに、ターゲット12の温度上昇をバッキングプレート下部を流れる冷却水をチラー等により強制冷却させることで抑え、ターゲット12輻射熱によるマスク変形(たわみ)を抑制する方法を提供する。
【解決手段】有機薄膜上への透明電極成膜をチャージアップを起こさず、かつスパッタリングダメージを抑制させながら行う方法であって、最終成膜プロセスがスパッタリング法である透明有機電界発光素子やトップエミッション型有機電界発光素子においては特性(駆動、寿命等)向上が期待できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機電界発光素子の透明電極の製造方法、透明有機電界発光素子及びトップエミッション型有機電界発光素子、高分子有機電界発光表示装置、フレキシブル有機電界発光素子、透明電極製造用マスクフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
上部光取り出し型及び両面光取り出し型の有機電界発光素子では、透明導電膜形成により金属薄膜からなる陰極の保護と配線抵抗の低抵抗化を図る(例えば特許文献1参照)。
また、透明導電膜そのものを陰極とした場合、下地の発光層の保護や電子注入障壁低減を目的として、発光層と透明導電膜との間にバッファー層を挟持する。透明導電膜形成には従来から行われている蒸着法、並びに近年光通信関連で利用されているプラズマやイオンビームによるアシスト蒸着法やイオンプレーティング法、イオンビームスパッタ法などが主に使用されており、その他としてsol/gel法、スプレー法などの湿式法を用いる場合もある(例えば特許文献2)。
一方、半導体やフラットパネルディスプレイ、電子部品などの薄膜製造工程における量産装置に使用されている方式としてスパッタリング法がある。
スパッタリング法は成膜速度や膜組成などが安定しており、また大面積基板への均一な成膜が可能であるため、量産化に適した方式として広く利用されている。更に膜厚及び導電性・透明性の均一性が高く、微細エッチング特性にも優れることから、主流ともなっている。
【0003】
スパッタリング法の特徴としては、以下のことが挙げられる。
一般的に基板に入射する粒子のエネルギーが50eV程度以上になると、粒子が基板内に入り込んだり、基板を構成する原子が叩き出されたり、あるいは基板に欠陥を発生させるなどにより、薄膜の不純物汚染やラフネスなどの問題を引き起こす。逆に蒸着法のように熱的なエネルギーのみで成膜する場合には入射粒子のエネルギーは0.1eVという低いオーダーであり、基板表面で十分なマイグレーション(泳動)ができなくなり、粒子付着による堆積膜は疎で基板-膜界面の接合強度は小さく、不安定なものになる。
基板に堆積されるスパッタ粒子は同じ物理的蒸着手法である真空蒸着法に比べ、粒子エネルギーが極めて大きく(蒸着法0.1eV程度⇒スパッタリング法600eV程度)、有機薄膜上に成膜を行った場合、高エネルギー粒子である反跳Arプラズマ、γ電子、ターゲット粒子などの飛散・衝突により膜の分子構造破壊などを引き起こして、有機発光材料本来の発光ポテンシャルが低下する懸念がある。
【0004】
一方、スパッタリング法を用いてメタルマスクにより電極パターン形成する場合、プラズマ閉じ込めによるターゲット表面の輻射熱、更にプラズマの端損失によりマスク表面に入射する二次電子(逐次電離過程に伴う加速電子)により、マスクが熱膨張し、たわむ懸念がある。
【0005】
【表1】

上記問題に対してマスク材質に低熱膨張率材料、具体的には表に示すようなオーステナイト系ステンレス鋼やインバー材を用いてたわみを抑制している。
【特許文献1】特開2001−176670号公報
【特許文献2】特許第2850906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トップエミッション型有機電界発光素子作製において、配線抵抗の低抵抗化、高い可視光透過性を実現する透明電極成膜技術の確立が重要な課題となる。
本発明は透明電極成膜において電極パターン形成するためのマスクに低熱膨張率かつ高電気絶縁性(高誘電率)材料、具体的には窒化アルミニウムセラミックス(AlN)などを用いたスパッタリング用マスクを用いる。
【0007】
上記マスク材料に求められるもう一つの特性は、薄板に高精細パターン加工を施すため、機械加工性に優れ、かつ軽量なものが望まれる。
【0008】
トップエミッション型有機電界発光素子は一般的な有機電界発光素子がガラス基板上に透明電極、有機薄膜、金属電極の順で成膜を行うのに対し、ガラス基板上に金属電極、有機薄膜、透明電極の順で成膜を行う。この方式により、カラーフィルターを封止基板側に作製し、発光素子基板と貼り合せることが可能となる。また、有機電界発光素子をアクティブマトリクス駆動ディスプレイとして応用する場合、基板と反対側の素子上部から光を取り出すトップエミッション方式により、基板上の駆動回路に光が遮られず、開口率の増加が見込める。
【0009】
透明導電膜の応用分野は光通信、半導体レーザー、各種ディスプレイ、記録メディア、民生用機器(デジタルカメラ、プロジェクター、携帯電話、レンズ、ミラー、ランプ等)など多様化しており、今後の透明導電膜の製造技術においては歩留まり向上などの量産時の安定性、また、多層膜形成時の膜性能について重要な要求項目となってきている。
【0010】
ITOはIndium tin oxideと呼ばれているが、その母結晶はIn2O3である。Snを酸化物換算で5〜10wt%添加した組成のITO(In2O3:Sn)は絶縁体のように透明でありながら、導電性が高く(10e+3S/cm)、吸収も少ない。透明性と導電性は互いに関係があるが、1対1の対応があるわけではない。透明性はIn2O3結晶の構造的な完全性が高く、バンドギャップ内の電子捕獲準位が非常に少ないということであるが、それは結晶内の原子が結晶系の座標点(格子点位置)に正しく、過不足なく位置しているか否かで決まることである。In2O3試薬は黄白色であり、酸素をわずかに含む(分圧で10e-1Pa以下)雰囲気中で蒸着またはスパッタ成膜すれば透明導電膜を得る。しかし、化合物としては酸素を手放しやすく、真空中加熱や数%の水素を含むような還元雰囲気中での加熱によって容易に還元され、還元が進めば青黒から黒、更に茶褐色にまで変色していく。導電性は母結晶のIn原子やSn原子で置換してやるか、酸素原子を必要十分に与えない条件の下で成膜することで発現する。
【0011】
ITOの透明性の物理的意味は半導体としてのバンドギャップが可視域の短波長限界400nm付近にあることに帰せられる。しかし、これだけでは不十分で、高い透明性を確保するにはバンドギャップ内に常温で電子が常駐するような準位が少ないか無視できるということである。このようなバンドギャップ内準位は酸素空孔や、In位置に置換したSn原子以外のIn、Sn原子または原子集団(クラスター)による格子欠陥に由来するものであり、母結晶自体が良質の結晶格子を形成しやすいものでなくてはならない。酸化性が極度に弱い雰囲気で成膜しない限り、In2O3はこの要件を満たす。実際、In2O3はガラス基板温度を300℃程度にしておけば、酸素がやや不足した雰囲気条件であっても、厚さ数十nmの段階から半値幅の狭い良く整ったX線回折パターンを示す。この結晶化しやすい特徴はSnを添加していっても、数十%程度までは失われない。SnO2膜やZnO膜とは大きく異なる特徴である。
【0012】
スパッタプロセスには電極材料が絶縁材料の場合、RFマグネトロンスパッタを用いている。RFマグネトロンスパッタは、陰極(TArget)にRF電圧をフローティング状態で印加すると正イオンのチャージアップが打ち消され、陰極表面には直流の自己バイアス電圧が発生し、この電圧によってイオンが加速され、絶縁性の陰極材料もスパッタすることが可能になる。
【0013】
RFマグネトロンスパッタは電流密度が高く、600eVもの高エネルギーでイオンが電子をたたくので、陰極材料を高速でスパッタできる。また、低圧力のためスパッタされた粒子の平均自由行程も長く、陰極と対向配置の基板上にスパッタ粒子を捕集して薄膜を堆積させることができる。しかし、高エネルギープロセスのため、有機薄膜上への成膜の場合、低パワーによる長時間成膜を行わなければならず、更に下地の有機薄膜に反跳Arプラズマやγ電子、更には加速されたTArget粒子が衝突し、大きなダメージを与えるという問題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、スパッタリング法において、ターゲットに対面させたマスクを介して基板に透明導電膜を形成することで有機電界発光素子の透明電極を製造する際、前記マスクよりも前記ターゲット寄りの箇所に強磁場を形成し、前記ターゲットから前記マスクに向かって飛散する荷電粒子(Arイオン、二次電子)を前記強磁場により前記マスクから逃げる方向に曲げるようにしたことを特徴とする有機電界発光素子の透明電極の製造方法である。
【0015】
請求項2記載の発明は、前記ターゲットはバッキングプレートの上に配置され、前記ターゲット表面の温度上昇を、前記バッキングプレートを冷却することで抑制するようにしたことを特徴とする請求項1記載の有機電界発光素子の透明電極の製造方法である。
【0016】
請求項3記載の発明は、前記バッキングプレートの冷却は、前記バッキングプレートの下部を流れる冷却水を、液体窒素などの冷媒(チラー)により10℃以下に制御することでなされることを特徴とする請求項2記載の有機電界発光素子の透明電極の製造方法である。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1、2、3に記載の透明電極の製造方法を用いて製造した透明有機電界発光素子及びトップエミッション型有機電界発光素子である。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項4に記載の有機電界発光素子において、高分子有機電界発光素子形成材料を基材上にパターン形成することを特徴とする透明有機電界発光素子及びトップエミッション型有機電界発光素子である。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項5に記載のパターン形成にオフセット印刷法を用いてR、G、B各色インキを塗り分け製造した高分子有機電界発光表示装置である。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項4、5、6に記載の有機電界発光素子、高分子有機電界発光表示装置において、素子下部電極上にSi3N4の窒化物やSiONのような三元化合物によるパッシベーション膜をCVD法で形成した後、請求項1に記載の製造方法を用いて透明電極形成を行ったフレキシブル有機電界発光素子である。
【0021】
請求項8記載の発明は、前記マスクは放熱特性に優れ、かつ低熱膨張率の材料で形成されていることを特徴とする請求項1記載の有機電界発光素子の透明電極の製造方法である。
【0022】
請求項9記載の発明は、スパッタリング法において、ターゲットに対面させたマスクを介して基板に透明導電膜を形成することで有機電界発光素子の透明電極を製造する際に用いられるマスクフレームであって、前記マスクを支持する前記マスクフレームの箇所よりも前記ターゲット寄りの前記マスクフレームの箇所に、前記ターゲットから前記マスクに向かって飛散する荷電粒子(Arイオン、二次電子)を前記マスクから逃げる方向に曲げる一対の磁石が設けられていることを特徴とする有機電界発光素子の透明電極製造用マスクフレームである。
【0023】
請求項10記載の発明は、前記マスクフレームは格子を形成する桟状に設けられていることを特徴とする請求項9記載の有機電界発光素子の透明電極製造用マスクフレームである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明をなんら制限するものではない。
図1、図2に示すように、本発明におけるスパッタリング用マスク2及びマスクフレーム16は、マスクフレーム16下部にネオジム系合金などからなる極性の異なる1対の磁石5を設置することで、マスクフレーム16下部に強磁場を形成し、二次電子(加速電子)の運動方向10をマスク2下部でベンディングさせて、すなわち、ターゲット12からスパッタリング用マスク2に向かって飛散する荷電粒子(Arイオン、二次電子)を前記強磁場によりスパッタリング用マスク2から逃げる方向に曲げるようにして、有機層への電子衝突によるスパッタダメージや基板チャージアップを抑制することが可能となる。
【0025】
また、本発明におけるスパッタリング用マスク2及びマスクフレーム16は、スパッタリング法において透明導電膜を形成する際、ターゲット12表面の輻射熱もしくはプラズマ照射熱によるマスク変形を、放熱特性に優れ、かつ低熱膨張率の材料を使用し、更に、図3に示すように、マスクフレーム16の開口部に格子状の桟17を設けることで抑制できる。マスク変形を抑えることで、変形によりマスク-基板間に生じた空隙にターゲット粒子が回りこむことで生じるマスクパターンぼけも解消することができる。
【0026】
本発明におけるスパッタリング装置及びスパッタリング用ターゲット12は、スパッタリング法において透明導電膜を形成する際、プラズマ閉じ込めによるターゲット12表面の温度上昇を、バッキングプレート13下部を流れる冷却水を液体窒素などの冷媒(チラー)により10℃以下に強制冷却することで抑制したものである。
【0027】
次に、マスクフレーム16、スパッタリング装置20について詳細に説明する。
図1(A)、(B)に示すように、マスクフレーム16は矩形枠状を呈し、その開口部内側に複数のマスクパターン1が形成されたスパッタリング用マスク2が配置され、スパッタリング用マスク2はその外周部がマスク固定ネジ3でマスクフレーム16に取着されている。
一対の磁石5は、マスクフレーム16の対向する2辺に平行して設けられ、一対の磁石5の間にはマスクフレーム16に沿って磁力線7が形成されている。
詳細には、スパッタリング用マスク2よりもターゲット12寄りの箇所に一対の磁石5が設けられ、一対の磁石5の間に磁力線7が形成されている。
一対の磁石5よりも上方の箇所でマスクフレーム16が下方に臨む箇所には、スパッタリング粒子入射角調整部(45deg)4が設けられている。
図2に示すように、マスクフレーム16に取り付けられたスパッタリング用マスク2の上面にはガラス基板6が重ね合わされて載置されている。
【0028】
図2に示すように、スパッタリング装置20はその上部にマスクフレーム16が配置され、マスクフレーム16の下方に間隔をおいて、スパッタリング用マスク2及びマスクフレーム16に対向するようにシャッタ板11、ターゲット12、バッキングプレート(OFC)13、カソードマグネット14などが配置されている。
カソードマグネット14の上部にはバッキングプレート13が配置され、カソードマグネット14の上部とバッキングプレート13の下部との間には前記冷却水を流すための流路15が形成されている。
バッキングプレート13の上に載置されたターゲット12の上空にArプラズマ8が発生され、これによってArイオン9がターゲット12に入射することでスパッタリングが行なわれ、ターゲット12から発生したスパッタリング粒子が上方に移動しマスクフレーム16を介してガラス基板6上に堆積することでマスクパターン1の形状に合致した透明導電膜が成膜される。
【0029】
本発明におけるトップエミッション型フレキシブル有機電界発光素子の作製方法は、支持基板上にMg、Al、Cr等の金属材料を真空蒸着法により電極パターン形成し、その上にポリ(3、4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)等の水溶性材料を正孔輸送層として、更にポリパラフェニレンビニレン(PPV)やポリフルオレン(PF)等の有機溶媒可溶性材料を発光層として、湿式法により形成する。この有機層成膜基板に段落番号0025、0026、0027に示すスパッタリング用マスク2及びマスクフレーム16、スパッタリング装置20を用いて、スパッタリング法で上部透明電極形成を行う方法である。
【0030】
本発明におけるR、G、B各色からなる高分子有機電界発光材料を塗り分けてパターン形成するのに用いるオフセット印刷法は、インキ供給ユニットからポリジメチルシロキサンなどからなるブランケット(胴)の全面にインキを供給し、パターニングされたネガ型刷版の凸部へブランケット(胴)からインキを転写するというもので、刷版に余分なインキを転写し、必要な部分のインキをそのままブランケット(胴)に残す方法である。この方法は版に余分なインキを100%転写するとともに、ブランケット(胴)から基板へインキを100%転写すること、即ち、刷版へ転写した後もブランケット(胴)には必要なパターニング部分のインキが100%残り、それが100%基板へ転写される必要がある。
【0031】
CVD法は膜にしたい元素を含む気化させた化合物(ソースガス)をそのまま、あるいは水素・窒素などのキャリアガスと混ぜ、高温加熱した基板表面にできるだけ均一になるように送り込み、基板表面で分解、還元、酸化、置換などの化学反応を起こさせ、基板上に薄膜を作る方法である。ソースガスとしてはハロゲン化物、有機化合物などが用いられる。基板上で起きる分解、還元、酸化、置換の各反応を次に示す。
(1)SiH4→700〜1000℃→Si+2H2…Si薄膜のための熱分解
(2)SiCl4+2H2→〜1200℃→Si+4HCl…Si薄膜のための還元
(3)SiH4+O2→〜400℃→SiO2+2H2…SiO2薄膜のための酸化
(4)CrCl2+Fe→1000℃→Cr+FeCl2…Cr薄膜のための置換
これらの反応は次の段階を経て起きると考えられる。基板表面への反応ガスの拡散→反応ガスの基板表面への吸着→基板表面での化学反応→副生成ガスの表面からの離脱・拡散退去(排気)。
CVD膜は高温反応ゆえに良質、表面反応ゆえにカバーレッジ(被覆性)が良いなどの特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】透明導電膜形成のためのスパッタリング用マスク2及びマスクフレーム16を模した図である。
【図2】図1記載のスパッタリング用マスク2及びマスクフレーム16を用いた際、二次電子の運動方向が曲がることでマスク表面のチャージアップが抑制される挙動を模した図である。
【図3】マスク表面のたわみを抑えるため、マスクフレーム16の開口部に格子状の桟17(嵌め込み式)を設けたマスクフレーム16を模した図である。
【符号の説明】
【0033】
1…マスクパターン(透明電極)、2…スパッタリング用マスク、3…マスク固定ネジ、4…スパッタリング粒子入射角調整部、5…磁場形成用永久磁石、6…ガラス基板、7…磁力線、8…Arプラズマ、9…Arイオン、10…二次電子運動方向(ベンディング)、11…シャッター板、12…ターゲット、13…バッキングプレート(OFC)、14…カソードマグネット、15…流路、16…マスクフレーム、17…桟。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタリング法において、ターゲットに対面させたマスクを介して基板に透明導電膜を形成することで有機電界発光素子の透明電極を製造する際、
前記マスクよりも前記ターゲット寄りの箇所に強磁場を形成し、
前記ターゲットから前記マスクに向かって飛散する荷電粒子(Arイオン、二次電子)を前記強磁場により前記マスクから逃げる方向に曲げるようにした、
ことを特徴とする有機電界発光素子の透明電極の製造方法。
【請求項2】
前記ターゲットはバッキングプレートの上に配置され、前記ターゲット表面の温度上昇を、前記バッキングプレートを冷却することで抑制するようにしたことを特徴とする請求項1記載の有機電界発光素子の透明電極の製造方法。
【請求項3】
前記バッキングプレートの冷却は、前記バッキングプレートの下部を流れる冷却水を、液体窒素などの冷媒(チラー)により10℃以下に制御することでなされることを特徴とする請求項2記載の有機電界発光素子の透明電極の製造方法。
【請求項4】
請求項1、2、3に記載の透明電極の製造方法を用いて製造した透明有機電界発光素子及びトップエミッション型有機電界発光素子。
【請求項5】
請求項4に記載の有機電界発光素子において、高分子有機電界発光素子形成材料を基材上にパターン形成することを特徴とする透明有機電界発光素子及びトップエミッション型有機電界発光素子。
【請求項6】
請求項5に記載のパターン形成にオフセット印刷法を用いてR、G、B各色インキを塗り分け製造した高分子有機電界発光表示装置。
【請求項7】
請求項4、5、6に記載の有機電界発光素子、高分子有機電界発光表示装置において、素子下部電極上にSi3N4の窒化物やSiONのような三元化合物によるパッシベーション膜をCVD法で形成した後、請求項1に記載の製造方法を用いて透明電極形成を行ったフレキシブル有機電界発光素子。
【請求項8】
前記マスクは放熱特性に優れ、かつ低熱膨張率の材料で形成されていることを特徴とする請求項1記載の有機電界発光素子の透明電極の製造方法。
【請求項9】
スパッタリング法において、ターゲットに対面させたマスクを介して基板に透明導電膜を形成することで有機電界発光素子の透明電極を製造する際に用いられるマスクフレームであって、
前記マスクを支持する前記マスクフレームの箇所よりも前記ターゲット寄りの前記マスクフレームの箇所に、前記ターゲットから前記マスクに向かって飛散する荷電粒子(Arイオン、二次電子)を前記マスクから逃げる方向に曲げる一対の磁石が設けられている、
ことを特徴とする有機電界発光素子の透明電極製造用マスクフレーム。
【請求項10】
前記マスクフレームは格子を形成する桟状に設けられていることを特徴とする請求項9記載の有機電界発光素子の透明電極製造用マスクフレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−265707(P2007−265707A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86952(P2006−86952)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】