説明

有機電界発光素子及びフォトクロミック表示素子

【課題】最大発光波長が400nm以下の紫外有機電界発光能を有し、キャリア輸送性や薄膜安定性に優れ、且つ、外部量子効率の高い有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】対向する陽極と陰極との間に、発光層、ホール注入層、ホール輸送層、及び電子輸送層を有する有機電界発光素子であって、前記発光層が、一般式(1)〜(7)から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有する発光層であり
[化1]


(各式中、Spは、
[化2]


を表す。但し、X〜Xは水素原子または、炭素原子数1〜8のアルキル基または、ハロゲン原子または、シアノ基を表す)、前記ホール注入層が、ホール注入層を構成する有機化合物を酸化しうる性質を有する電子受容性化合物を電子受容性ドーパントとしてドーピングし、ホール注入層を構成する有機化合物が酸化された状態にある有機電界発光素子、並びに、該有機電界発光素子が発光する光を励起光とするフォトクロミック表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピロビフルオレン化合物を発光層に用いた有機電界発光素子に関する。特に最大発光波長が400nm以下の紫外発光能を有する有機電界発光素子用材料を発光層に用いた、高い発光効率で最大発光波長が400nm以下で紫外発光する有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子が発光する光を励起光とするフォトクロミック表示素子が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。フォトクロミック材料で、無色から着色状態へと色変換するものは、紫外領域の光に感度を有することから、フォトクロミック表示素子の励起光源である有機電界発光素子には、従来の有機電界発光素子に求められていた可視発光ではなく紫外発光が求められ、従って、発光層用材料として、紫外発光能を有する有機化合物が求められている。
【0003】
紫外発光を有する有機電界発光素子に用いられている有機化合物として、例えば、p−クオーターフェニル等の直線状に連結したポリフェニルや、シラン系ポリマーや、フェニレンビニレン系ポリマーや、4,4’−ビス(9−カルバゾイル)ビフェニルが知られている(例えば特許文献2〜4および非特許文献1〜2を参照)。しかしながらこれらはキャリア輸送性や薄膜安定性等の面で劣る。更に有機電界発光素子として実用的に使用するためには、外部量子効率に換算して1以上を求められるが、この面でも劣る。
即ち、最大発光波長が400nm以下の紫外有機電界発光能を有し、キャリア輸送性や薄膜安定性に優れ、且つ、実用化可能なレベルの高い外部量子効率を有する有機電界発光素子用材料は未だ得られていないのが現状である。
【特許文献1】特開2004−264424号公報
【特許文献2】特開平3−152897号公報
【特許文献3】特開2001−167885号公報
【特許文献4】特開平07−278537号公報
【非特許文献1】「ジャーナルオブアプライドフィジクス(Journal of Applied Physics)」2000年、第88号、P.2892
【非特許文献2】「アプライドフィジクスレターズ(Applied Physics Letters)」2001年、第79号、P.2282
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、最大発光波長が400nm以下の紫外有機電界発光能を有し、キャリア輸送性や薄膜安定性に優れ、且つ、外部量子効率の高い有機電界発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、発光層として特定のスピロビフルオレン化合物を使用し、且つ、ホール注入層として酸化状態にあるホール注入材料を使用した有機電界発光素子が、上記課題を解決し、特に外部量子効率の高い有機電界発光素子であることを見いだした。
【0006】
即ち本発明は、対向する陽極と陰極との間に、少なくとも、発光層、ホール注入層、ホール輸送層、及び電子輸送層を有する有機電界発光素子であって、
前記発光層が、一般式(1)〜(7)から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有する発光層であり
【化1】

(各式中、Spは、
【化2】

を表す。但し、X〜Xは水素原子または、炭素原子数1〜8のアルキル基または、ハロゲン原子または、シアノ基を表し、一般式(1)〜(7)の有するベンゼン環またはナフタレン環が有する水素原子は、炭素原子数1〜8のアルキル基で置換されていても良い)、
前記ホール注入層が、ホール注入層を構成する有機化合物を酸化しうる性質を有する電子受容性化合物を電子受容性ドーパントとしてドーピングし、ホール注入層を構成する有機化合物が酸化された状態にある有機電界発光素子を提供する。
【0007】
又、本発明は、前記記載の有機電界発光素子が発光する光を励起光とするフォトクロミック表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の有機電界発光素子は、上記一般式(1)〜(7)で表されるスピロビフルオレン化合物のいずれかを使用するので、最大発光波長が400nm以下の紫外有機電界発光能を有し、キャリア輸送性や薄膜安定性に優れる。且つ、ホール注入層として、ホール注入層を構成する有機化合物を酸化しうる性質を有する電子受容性化合物を電子受容性ドーパントとしてドーピングし、ホール注入層を構成する有機化合物が酸化状態にあるホール注入性材料を使用するので、外部量子効率の高い有機電界発光素子が得られる。
【0009】
本発明の有機電界発光素子と、紫外線を吸収して着色するフォトクロミック材料と組み合わせることで、メモリー性を有するフォトクロミック表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
(発光材料用化合物)
本発明の素子に使用する発光層に含有される発光材料は、一般式(1)〜(7)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物である。なお、以下の説明において、一般式(1)〜(7)で表される化合物のうち、ベンゼン環またはナフタレン環にSpのみが1〜3個置換している構造を有するものであって、X〜Xが全て水素原子であるものを、それぞれ、化合物(I)〜化合物(VII)とする。
紫外発光し、可視光発光しないためには、置換基Spが結合する基と共役構造を有しないことが好ましい。しかし、ベンゼン環またはナフタレン環ではなく脂環式構造を有する基のみと結合したのでは、キャリア輸送性が劣り外部量子効率が下がってしまう。
紫外発光能を有し、良い発光効率を有するためには、Spに複数の芳香環が置換する構造ではなく、ベンゼン環またはナフタレン環に複数のSpが置換する構造が好ましい。ベンゼン環またはナフタレン環にSpが1置換した化合物は、いずれも400nm以下の最大発光波長とする有機電界発光能を有する。
更には、2個または3個のSpがベンゼン環に置換する場合には、メタ位に置換することにより共役が起こりにくい構造(例えば、化合物(II)、化合物(III))になりより好ましい。
また、Spがナフタレン環に置換する際には、α−置換体、β−置換体のいずれもが、400nm以下の最大発光波長とする紫外発光能を有するが、β−置換体の方が低波長に最大発光波長を有するため好ましい。また、ナフタレン環にSpを2置換する場合は、いずれもβ−置換体であるスピロビフルオレン化合物が好ましい。
化合物(I)〜化合物(VII)のベンゼン環およびナフタレン環が有する水素は、炭素原子数1〜8のアルキル基で置換されていても良いが、メチル基や、分岐を有するアルキル基が好ましい。分岐を有するアルキル基としては、イソブチル基やtert−ブチル基を挙げることができる。これらの基は、スピロビフルオレン同士の会合を抑制する効果があると考えられる。
Spが有するX〜Xの置換基は、水素または炭素数1〜8のアルキル基または、ハロゲン原子、またはシアノ基であるが、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、ハロゲン原子としては、フッ素が好ましい。
【0012】
(発光材料)
本発明の素子に使用する発光層は、前記一般式(1)〜(7)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を適当な有機溶剤、あるいは有機溶剤と決着樹脂との混合物に溶解し、塗布乾燥させて得ることができる。
有機溶剤の例としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、テトラリン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ブチルカルビトール等があげられる。これらの有機溶剤は、単独で使用しても混合して使用しても差し支えない。
また、結着樹脂としては、広範囲な結着性樹脂より選択でき、たとえばポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独または共重合体ポリマーとして1種または2種以上混合してもよい。
【0013】
(ホール注入層材料)
本発明の素子に使用するホール注入層には、ホール注入層を構成する有機化合物を酸化しうる性質を有する電子受容性化合物を電子受容性ドーパントとしてドーピングし、ホール注入層を構成する有機化合物が酸化された状態にある材料を用いる。このような材料を使用し、発光層として一般式(1)〜(7)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を組み合わせることで、より外部量子効率の高い紫外発光有機電界発光素子が得られる。
ホール注入層を構成する有機化合物としては、イオン化ポテンシャルが5.0〜5.8eVにある、ホール輸送性材料であれば、いずれの化合物でも用いることが出来、さらには、従来有機電界発光素子の作製に使用されている公知のものを適宜用いることも出来る。具体的には、ポリマー系材料として、ポリチオフェンとその誘導体類、ポリアニリンとその誘導体類、低分子系化合物として、トリフェニルアミン誘導体(具体例として4,4’,4”−トリ[N−(メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(mMTDATA)やN,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−ベンジジン)、フタロシアニン(Pc)誘導体(具体例として、HPc、CuPc、CoPc、NiPc、ZnPc、PdPc、FePc、MnPc、ClAlPc、ClGaPc、ClInPc、ClSnPc、ClSiPc、(HO)AlPc、(HO)GaPc、VOPc、TiOPc、MoOPc、GaPc−O−GaPc)等が挙げられる。電子受容性ドーパントは、電子受容性で上記したホール注入性有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。具体的には、無機化合物として塩化第二鉄や、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモン等のルイス酸化合物を用いることが出来、有機化合物の場合にはトリニトロフルオレノン、テトラシアノキノジメタン類、有機スルフォン酸類等の電子受容性化合物を用いることが出来る。
本発明のホール注入層材料として、簡便性を考慮した場合、ポリスチレンスルフォン酸を電子受容性ドーパントとして用いたポリ(3,4−エチレンジオキサイドチオフェン)(以下PEDOT:PSSと表記する)が、安定性を考慮した場合、2,3,5,6−テトラフルオロ7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンを電子受容性ドーパントとして用いたmMTDATAが好ましい。
【0014】
本発明における、ドーピングした有機層中のドーパント濃度は特に限定されないが、有機分子とドーパント分子のモル比率が、有機分子:ドーパント分子=1:0.1〜1:10の範囲であることが好ましい。ドーパント分子の比率が0.1未満ではドーパントにより酸化された分子(以下、酸化分子)の濃度が低すぎドーピングの効果が小さく、10倍を越えると、膜中のドーパント濃度が有機分子濃度をはるかに超え、酸化分子の膜中濃度が極端に低下するので、ドーピングの効果も下がる。
【0015】
(ホール輸送層材料)
本発明の素子に使用するホール輸送層の材料としては特に限定はなく公知の材料を使用できる。具体的には、ホールを輸送する能力を持ち、発光層または発光材料に対して優れたホール注入効果を有し、発光層で生成した励起子の電子輸送層または電子注入材料への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。そのような化合物としては、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、イミダゾールチオン、ピラゾリン、ピラゾロン、テトラヒドロイミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ヒドラゾン、アシルヒドラゾン、ポリアリールアルカン、スチルベン、ブタジエン、ベンジジン型トリフェニルアミン、スチリルアミン型トリフェニルアミン、ジアミン型トリフェニルアミン等と、それらの誘導体および、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン、π共役系高分子等の高分子材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらのホール輸送層材料の中で、さらに効果的なホール輸送層材料は、芳香族三級アミン誘導体である。芳香族三級アミン誘導体の具体例としては、トリフェニルアミン、トリトリルアミン、トリルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−フェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−(メチルフェニル)−N,N’−(4−n−ブチルフェニル)−フェナントレン−9,10−ジアミン、N,N−ビス(4−ジ−4−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサン等、またはこれらの芳香族三級アミン骨格を有したオリゴマーもしくはポリマーであるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
(電子輸送層材料)
本発明の素子に使用する電子輸送層の材料としては特に限定はなく公知の材料を使用できる。具体的には、電子を輸送する能力を持ち、陰極からの電子注入効果、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成した励起子のホール輸送層への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。そのような化合物としては、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、キノキサリン、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン等とそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの電子輸送層材料の中で、さらに効果的な電子輸送材料は、金属錯体化合物または含窒素環誘導体である。金属錯体化合物の具体例は、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリナート)クロロガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(o−クレゾラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(2−ナフトラート)ガリウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
また、含窒素環誘導体は、分子内にヘテロ原子を1個以上含有する芳香族複素環化合物が好ましく用いられる。該窒素環誘導体の具体的な化合物としては、5員環であるアゾ−ル骨格を有するものが好ましい。アゾ−ル骨格を有する化合物とは、炭素原子、水素原子以外の原子を基本骨格内に2つ以上有する化合物であり、単環もしくは縮合環であってもよい。前記含窒素誘導体としては、好ましくはN、O、S原子から選ばれる原子を2つ以上有するものであり、より好ましくは少なくとも一つN原子を骨格内に有するものであり、さらに好ましくはN原子を骨格内に2つ以上有するものである。また、ヘテロ原子は縮合位置にあっても、非縮合位置にあってもよい。ヘテロ原子を2つ以上含む含窒素誘導体としては、例えば、ピラゾール、イミダゾール、ピラジン、ピリミジン、インダゾール、プリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、ペリミジン、フェナントロリン、ピロロイミダゾール、ピロロトリアゾール、ピラゾロイミダゾール、ピラゾロトリアゾール、ピラゾロピリミジン、ピラゾロトリアジン、イミダゾイミダゾール、イミダゾピリダジン、イミダゾピリジン、イミダゾピラジン、トリアゾロピリジン、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン、トリアジンなどが好ましく挙げられる。これらの中でも、該電子輸送性ホスト材料として、イミダゾピリダジン、イミダゾピリジン、イミダゾピラジン、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール等の縮合アゾ−ル骨格を有する化合物またはトリアジン骨格を有する化合物がより好ましく、さらに好ましくは縮合イミダゾピリジンである。
【0018】
(電子注入層(バッファー層)材料)
本発明の有機電界発光素子は、最も電極に接する層として、電子注入を容易にすることを目的として、バッファー層を設けることができる。バッファー層として使用する材料としては無機化合物が挙げられる。例えば、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類酸化物、希土類酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類ハロゲン化物、希土類ハロゲン化物、SiO、AlO、SiN、SiON、AlON、GeO、LiO、LiON、TiO、TiON、TaO、TaON、TaN、Cなど各種酸化物、窒化物、酸化窒化物が挙げられる。
特に陽極に接する層の成分としては、SiO、AlO、SiN、SiON、AlON、GeO、Cが安定な注入界面層を形成して好ましい。また、特に陰極に接する層の成分としては、LiF、MgF、CaF、MgF、NaFが好ましい。
【0019】
(陽極)
本発明の素子で使用する陽極の材料としては、仕事関数がなるべく大きなものがよく、例えば、金、白金、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム等の金属単体あるいはこれらの合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化錫インジウム(ITO),酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物が使用できる。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレンスルフィド等の導電性ポリマーも使用できる。これらの電極物質は単独で用いてもよく、複数併用することもできる。
【0020】
(陰極)
本発明の素子で使用する陰極の材料としては、仕事関数の小さなものがよく、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、銀、鉛、錫、クロム等の金属単体あるいは複数の合金として用いることができる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。また、陰極は一層構成でもよく、多層構成をとることもできる。
【0021】
その他、本発明の有機電界発光素子は、公知の層を適宜設けることができる。例えば、電極と有機層界面に絶縁性層を設けることや、電極と有機層界面に接着層あるいは干渉層を設けることや、ホール輸送層がイオン化ポテンシャルの異なる2層から構成されることや、発光層と電子輸送層との間にホールブロック層を設けることなど、多様な層構成をとることができる。
なお、これらの構成の有機電界発光素子は、いずれも基板により支持されることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来の有機電界発光素子に慣用されているもの、例えば、ガラス,透明プラスチック,石英などからなるものを用いることができる。また、有機発光層からの発光を効率よく取り出す観点からは、上記陽極および陰極の少なくとも一方を透明または半透明物質により形成するのが好ましい。
【0022】
なお、作成した素子に対して、酸素や水分等との接触を防止する目的で保護層あるいは封止層を設けることもできる。保護層としては、ダイヤモンド薄膜、金属酸化物、金属窒化物等の無機材料膜、フッ素樹脂、ポリパラキシレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂等の高分子膜、さらには、光硬化性樹脂等が挙げられる。また、ガラス、気体不透過性フィルム、金属などをカバーし、適当な封止樹脂により素子自体をパッケージングすることもできる。
【0023】
(有機電界発光素子の形成方法)
本発明の有機電界発光素子は、公知の方法で得ることができる。具体的には、全ての層を蒸着または塗布法により形成できる。
例えば、陽極上に、酸化状態にあるホール注入性材料を蒸着またはスピンコートなどの方法により形成し、前記ホール注入層上にホール輸送層を蒸着またはスピンコートなどの方法により形成し、前記ホール輸送層上に一般式(1)〜(7)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有する材料よりなる発光層を蒸着またはスピンコートなどの方法により形成し、更に、発光層上部に電子輸送層を形成し、更に、この電子輸送層上部に、必要に応じて電子注入層(バッファー層)を形成することによって有機電界発光素子を製造することができる。
【0024】
(フォトクロミック表示素子)
本発明の有機電界発光素子を励起光源としてフォトクロミック素子を作製することができる。紫外発光による励起のため、バックグランドに着色を持たないフォトクロミック表示を行なうことができる。このフォトクロミック表示素子は、有機電界発光素子の内部または外部にフォトクロミック層を組み込む。好ましい態様として、透明電極を有する透明基板を少なくとも一方とする、二枚の電極を有する基板間に、本発明の有機電界発光素子用材料の層を形成し、該透明基板の透明電極側とは反対側に(即ち、有機電界発光素子の外部に)にフォトクロミック層を有するか、該透明電極上(即ち、有機電界発光素子の内部に)にフォトクロミック層を有するか、または、透明基板と透明電極との間(即ち、有機電界発光素子の内部に)に、フォトクロミック層を有する態様を挙げることができる。
フォトクロミック層は、透明電極面または透明基板面と接していてもよいし、接していなくてもよい。
【0025】
フォトクロミック材料に熱による消色反応が抑制されたフォトクロミック材料を使用すれば、フォトクロミック層にメモリー性が生じる。従って、有機電界発光素子はフォトクロミック層が発色するまでの短期間駆動させれば表示を保持でき、一定時間ごとにパルス電圧を印加して駆動することによって、長時間表示を保持できる。
なお、メモリー性とは、素子構成によって一概にはいえないが、概ね、25℃で5V以上の電圧を印加して駆動させた後、電圧印加を停止して1分以上表示が保持できる場合を指す。
一方、フォトクロミック層に書き込んだ画像を消去する場合は、フォトクロミック材料の吸収に応じた波長の光を照射すれば良く、具体的には、可視光、典型的には、太陽光や蛍光灯などの室内光をある時間照射すればよい。また、スポットライトや液晶表示に用いられる、フロントライトを用いることもできる。
【0026】
フォトクロミック層に使用するフォトクロミック材料としては、有機電界発光素子が発光する光で励起されて発色するフォトクロミック材料を使用する。フォトクロミック材料として、(社)日本化学会編、「有機フォトクロミズムの化学」(季刊化学総説、No.28、1996年、学会出版センター発行)、や「ケミカル・レビューズ(Chemical Reviews)」、2000年、第100号、p.1685−1890、に記載されている化合物等が使用でき、具体的には、スチルベン誘導体、スピロピラン類、スピロオキサジン類、ジアリールエテン類、フルギド類、シクロファン類、カルコン誘導体など、あるいはこれらの混合物があげられる。
中でも、フォトクロミック材料の光による発色および消色時の繰り返し安定性が高く、熱による消色反応が起こりづらい、スピロオキサジン類、ジアリールエテン類およびフルギド類が好ましい。更に、表示特性の観点から、有機電界発光素子の400nm以下の最大発光波長の光で励起して、無色または淡色の状態から発色する材料が特に好ましい。これらの材料として、「ケミカル・レビューズ(Chemical Reviews)」、2000年、第100号、p.1685−1716、に記載されているジアリールエテン類等が挙げられ、これらの中から適宜選択できる。
ジアリールエテン類として、具体的には、1,2−ビス(2,4−ジメチル−3−チエニル)パーフルオロシクロペンタン、2,3−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)−無水マレイン酸、2−(1,2−ジメチル−3−インドリル)−3−(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)無水マレイン酸、2,3−ビス(1,2−ジメチル−3−インドリル)無水マレイン酸、2,3−ビス(1,2−ジメチル−5−メトキシ−3−インドリル)無水マレイン酸、2−(1,2−ジメチル−3−インドリル)−3−(2,4−ジメチル−5−シアノ−3−チエニル)無水マレイン酸、1−(1,2−ジメチル−メトキシ−3−インドリル)−2−(2,4−ジメチル−5−シアノ−3−チエニル)パーフルオロシクロペンタン、1,2−ビス(2−ヘキシル−3−チエニル)パーフルオロシクロペンタンのジチエノ(チオフェン)誘導体等が挙げられる。
【0027】
片面に透明電極を有する透明基板の透明電極表面にフォトクロミック層を形成するには、透明電極の表面に、フォトクロミック組成物を透明電極表面に塗布または印刷した後、乾燥して形成するか、あるいは、前記フォトクロミック材料を透明電極表面に蒸着させる。中でも、生産性の面から、塗布または印刷法で形成することが好ましい。
塗布または印刷法の際に使用する溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノールなどのアルコール類、シクロヘキサノン等のケトン類、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル類、蟻酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等を使用することができる。これらの溶媒は単独でも混合して使用しても構わない。
【0028】
また、フォトクロミック組成物には、結着樹脂あるいは分散樹脂として、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ナイロンなどの高分子材料を添加しても良い。また、後述する、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基等の活性エネルギー線重合性官能基を有する化合物等を添加することもできる。また、オリゴマー、およびインキや塗料に使用される公知慣用の各種添加剤を、フォトクロミック材料の着色特性や経時安定性を阻害しない範囲内で添加してもよい。
高い発色状態を得るために、フォトクロミック層は、フォトクロミック材料を10質量%以上含有するのが好ましいので、該結着樹脂や分散樹脂は、この範囲内で適宜添加するのが好ましい。フォトクロミック層中のフォトクロミック材料は、50質量%以上含有するとなお好ましい。
【0029】
フォトクロミック層の膜厚は、フォトクロミック材料の発色時の吸光度が1以上となるような膜厚に形成すると、鮮明な表示が得られる。フォトクロミック材料の発色時の吸光係数はフォトクロミック材料によって異なるので、膜厚は一概に規定できないが、通常は、乾燥後のフォトクロミック層の膜厚が10nm〜100μmの範囲となるようにすると、鮮明な表示を得ることができる。フォトクロミック組成物は、乾燥後の膜厚が10nm〜100μmの範囲となるように、不揮発分濃度を適宜調整して使用する。
【0030】
フォトクロミック層を、前記電極の表面に塗布または印刷する方法としては、例えば、ダイコーティング、(マイクロ)グラビアコーティング、スピンコーティング、アプリケーター法等の塗工法、インクジェット印刷、平版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等の、公知慣用の塗布法や印刷法を適用することができる。塗膜を乾燥する方法には制限はなく、例えば、ホットプレート、オーブン、赤外線炉等を使用して乾燥すればよい。
一方、蒸着法でフォトクロミック層を形成する場合は、汎用の真空蒸着装置を用い、10−3Paより高い真空下で、タングステンやモリブデンボート、セラミックス坩堝、または、クヌーセンセルなどからの真空蒸着によって形成することができる。膜厚は、上記印刷や塗工法と同様でよい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例においては、発光層用材料として、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)、及び一般式(5)で表される化合物のうち、ベンゼン環またはナフタレン環にSpのみが1〜3個置換している構造を有するものであって、X〜Xが全て水素原子である化合物(II)、化合物(III)、化合物(IV)、及び化合物(V)を具体的な化合物として使用した。
【0032】
【化3】

【0033】
【化4】

【0034】
【化5】

【0035】
【化6】

【0036】
(実施例1)
(化合物(IV)を発光層に用いた有機電界発光素子)
ITO電極を形成したガラス基板上の、ITO電極上にPEDOT:PSSをスピンコートしてホール注入層を20nm形成した。続いて、前記ホール注入層上部に4,4’,4”−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(TCTA)を第一ホール輸送層として25nm蒸着し、さらに、第一ホール輸送層上部に1,3,5−トリ(9H−カルバゾール−9−イル)ベンゼン(TCB)を第二ホール輸送層として25nm蒸着した。続いて、前記第二ホール輸送層上部に化合物(IV)を紫外発光素子用材料として蒸着して30nmの発光層を形成した。その後、前記発光層上部に1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン(TPBI)を蒸着して30nmの電子輸送層を形成した。この電子輸送層上部にバッファー層としてLiFを1nm、陰極としてAlを80nm、蒸着によって形成することによって有機電界発光素子を製造した。
【0037】
得られた有機電界発光素子の有機電界発光スペクトルの最大発光波長は378nmであり最大発光波長が400nm以下の紫外領域で発光する有機電界発光素子であることがわかる。また、最大外部量子効率は1であった。
【0038】
(実施例2)
(化合物(IV)を発光層に用いた有機電界発光素子)
ITO電極を形成したガラス基板上の、ITO電極上にPEDOT:PSSをスピンコートしてホール注入層を20nm形成した。続いて、前記ホール注入層上部にTCTAをホール輸送層として50nm蒸着した。これ以降は実施例1と同様に発光層、電子輸送層、バッファー層、陰極を形成することによって有機電界発光素子を製造した。
得られた有機電界発光素子の有機電界発光スペクトルの最大発光波長は380nmであり最大発光波長が400nm以下の紫外領域で発光する有機電界発光素子であることがわかる。また、最大外部量子効率は1.1であった。
【0039】
(実施例3)
(化合物(IV)を発光層に用いた有機電界発光素子)
ホール輸送層にスピンコートにより形成したポリビニルカルバゾール(PVK)層(膜厚50nm)を用いた以外は実施例2と同様にして有機電界発光素子を製造した。
得られた有機電界発光素子の有機電界発光スペクトルの最大発光波長は382nmであり最大発光波長が400nm以下の紫外領域で発光する有機電界発光素子であることがわかる。また、最大外部量子効率は1.3であった。
【0040】
(実施例4)
(化合物(IV)を発光層に用いた有機電界発光素子)
電子輸送層に2−(4−ビフェニル)−5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)を用いた以外は実施例3と同様にして有機電界発光素子を製造した。
得られた有機電界発光素子の有機電界発光スペクトルの最大発光波長は382nmであり最大発光波長が400nm以下の紫外領域で発光する有機電界発光素子であることがわかる。また、最大外部量子効率は1.3であった。
【0041】
(実施例5)
(化合物(II)を発光層に用いた有機電界発光素子)
発光層に化合物(II)を用いた以外は実施例4と同様にして有機電界発光素子を製造した。
得られた有機電界発光素子の有機電界発光スペクトルの最大発光波長は378nmであり最大発光波長が400nm以下の紫外領域で発光する有機電界発光素子であることがわかる。また、最大外部量子効率は1.2であった。
【0042】
(実施例6)
(化合物(V)を発光層に用いた有機電界発光素子)
発光層に化合物(V)を用いた以外は実施例4と同様にして有機電界発光素子を製造した。
得られた有機電界発光素子の有機電界発光スペクトルの最大発光波長は385nmであり最大発光波長が400nm以下の紫外領域で発光する有機電界発光素子であることがわかる。また、最大外部量子効率は1.6であった。
【0043】
(実施例7)
(化合物(III)を発光層に用いた有機電界発光素子)
発光層に化合物(III)を用いた以外は実施例4と同様にして有機電界発光素子を製造した。
得られた有機電界発光素子の有機電界発光スペクトルの最大発光波長は395nmであり最大発光波長が400nm以下の紫外領域で発光する有機電界発光素子であることがわかる。また、最大外部量子効率は1.2であった。
【0044】
(参考例1)
(化合物(IV)を発光層に用いた有機電界発光素子)
ITO電極を形成したガラス基板上の、ITO電極上に銅フタロシアニン(CuPc)を真空蒸着してホール輸送層を15nm形成した。続いて、前記ホール輸送層上部に化合物(IV)を有機電界発光素子用材料として蒸着して50nmの発光層を形成した。その後、前記発光層上部にPBDを蒸着して20nmの電子輸送層を形成した。この電子輸送層上部にバッファー層としてLiFを1nm、陰極としてAlを80nm、蒸着によって形成することによって有機電界発光素子を製造した。
得られた有機電界発光素子の有機電界発光スペクトルの最大発光波長は361nmで最大発光波長が400nmの紫外領域で発光する有機電界発光素子であるが、その最大外部量子効率は0.02であった。
【0045】
(参考例2)
(化合物(IV)を発光層に用いた有機電界発光素子)
ITO電極を形成したガラス基板上の、ITO電極上にPEDOT:PSSをスピンコートする代わりに、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)を真空蒸着によりホール注入層として20nm形成した以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を製造した。
得られた有機電界発光素子の有機電界発光スペクトルの最大発光波長は410nmであり最大発光波長が400nm以下の紫外領域ではない、可視発光する有機電界発光素子であることがわかった。最大外部量子効率は0.8であった。
【0046】
(参考例3)
(化合物(IV)を発光層に用いた有機電界発光素子)
ITO電極を形成したガラス基板上の、ITO電極上にNPDの代わりにCuPcを真空蒸着によりホール注入層として20nm形成した以外は、参考例2と同様にして有機電界発光素子を製造した。
得られた有機電界発光素子の有機電界発光スペクトルの最大発光波長は410nmであり最大発光波長が400nm以下の紫外領域ではない、可視発光する有機電界発光素子であることがわかった。最大外部量子効率は0.8であった。
【0047】
(参考例4)
(化合物(IV)を発光層に用いた有機電界発光素子)
ITO電極を形成したガラス基板上の、ITO電極上にNPDの代わりにmMTDATAを真空蒸着によりホール注入層として20nm形成した以外は、参考例2と同様にして有機電界発光素子を製造した。
得られた有機電界発光素子の有機電界発光スペクトルの最大発光波長は410nmであり最大発光波長が400nm以下の紫外領域ではない、可視発光する有機電界発光素子であることがわかった。最大外部量子効率は0.8であった。
【0048】
(参考例5)
(化合物(II)を発光層に用いた有機電界発光素子)
発光層に化合物(II)を用いた以外は参考例1と同様にして有機電界発光素子を製造した。得られた有機電界発光素子の有機電界発光スペクトルの最大発光波長は365nmで最大発光波長が400nmの紫外領域で発光する有機電界発光素子であるが、その最大外部量子効率は0.002であった。
【0049】
(参考例6)
(化合物(V)を発光層に用いた有機電界発光素子)
発光層に化合物(V)を用いた以外は参考例1と同様にして有機電界発光素子を製造した。得られた有機電界発光素子の有機電界発光スペクトルの最大発光波長は377nmで最大発光波長が400nmの紫外領域で発光する有機電界発光素子であるが、その最大外部量子効率は0.001であった。
【0050】
(参考例7)
(化合物(III)を発光層に用いた有機電界発光素子)
発光層に化合物(III)を用いた以外は参考例1と同様にして有機電界発光素子を製造した。得られた有機電界発光素子の有機電界発光スペクトルの最大発光波長は371nmで最大発光波長が400nmの紫外領域で発光する有機電界発光素子であるが、その最大外部量子効率は0.001であった。
【0051】
【表1】

【0052】
(実施例8)
(フォトクロミック素子)
フォトクロミック材料として、2−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−2−(2−メチル−1−ベンゾチオフェン−3−イル)ヘキサフルオロシクロペンテン(15mg)と結着材としてMnが100000のポリスチレン(50mg)とを、トルエン(1mL)に溶解し、該トルエン溶液をアプリケーターを用いて、縦横の長さが共に20mmのガラス基板上に、1μmの厚さに塗布し、2−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−2−(2−メチル−1−ベンゾチオフェン−3−イル)ヘキサフルオロシクロペンテンよりなるフォトクロミック層を形成した。該フォトクロミック層を、実施例1により得られた、有機電界発光素子の支持ガラス基板側に圧着し、フォトクロミック表示素子を得た。
このフォトクロミック表示素子に、ITO電極を陽極として7Vの直流電圧を1分印加後、電圧の印加を止めた。フォトクロミック層は青色に着色しており、フォトクロミック層側のガラス基板にシャープカットフィルターY−48を重ねた場合において、室内光下、その発色状態を10分以上維持した。
【0053】
(実施例9)
フォトクロミック材料として、2−(1,2−5−メトキシジメチルインドール−3−イル)−2−(2−メチル−1−ベンゾチオフェン−3−イル)ヘキサフルオロシクロペンテン(15mg)と結着材としてMnが100000のポリスチレン(50mg)とを、トルエン(1mL)に溶解し、該トルエン溶液をアプリケーターを用いて、縦横の長さが共に20mmのガラス基板上に、1μmの厚さに塗布し、2−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−2−(2−メチル−1−ベンゾチオフェン−3−イル)ヘキサフルオロシクロペンテンよりなるフォトクロミック層を形成した。該フォトクロミック層を、実施例1により得られた、有機電界発光素子の支持ガラス基板側に圧着し、フォトクロミック表示素子を得た。
【0054】
このフォトクロミック表示素子に、ITO電極を陽極として7Vの直流電圧を1分印加後、印加を止めた。フォトクロミック層は青色に着色しており、フォトクロミック層側のガラス基板にシャープカットフィルターY−48を重ねた場合において、室内光下、その発色状態を10分以上維持した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する陽極と陰極との間に、少なくとも、発光層、ホール注入層、ホール輸送層、及び電子輸送層を有する有機電界発光素子であって、
前記発光層が、一般式(1)〜(7)から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有する発光層であり
【化1】

(各式中、Spは、
【化2】

を表す。但し、X〜Xは水素原子または、炭素原子数1〜8のアルキル基または、ハロゲン原子または、シアノ基を表し、一般式(1)〜(7)の有するベンゼン環またはナフタレン環が有する水素原子は、炭素原子数1〜8のアルキル基で置換されていても良い)、
前記ホール注入層が、ホール注入層を構成する有機化合物を酸化しうる性質を有する電子受容性化合物を電子受容性ドーパントとしてドーピングし、ホール注入層を構成する有機化合物が酸化された状態にあることを特徴とする、有機電界発光素子。
【請求項2】
前記電子受容性ドーパントがポリスチレンスルフォン酸であり、前記ホール注入層を構成する有機化合物がポリ(3,4−エチレンジオキサイドチオフェン)である請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
請求項1記載の有機電界発光素子が発光する光を励起光とすることを特徴とするフォトクロミック表示素子。


【公開番号】特開2007−214432(P2007−214432A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33722(P2006−33722)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】