説明

有機電界発光素子及び該素子に用いる化合物

【課題】耐久性が良好な発光素子及び該素子に用いる新規な化合物を提供する。
【解決手段】一般式(Z)で表される化合物、及び、一対の電極間に有機化合物層として発光層を有し、ひとつの有機化合物層が一般式(Z)で表される化合物を含有する有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを光に変換して発光できる発光素子、特に、有機電界発光素子及びそれに用いる新規な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光(EL)素子は、低電圧で高輝度の発光を得ることができるため、有望な表示素子として注目されている。この有機電界発光素子の重要な特性値として、外部量子効率がある。外部量子効率は、「外部量子効率φ=素子から放出されたフォトン数/素子に注入された電子数」で算出され、この値が大きいほど消費電力の点で有利な素子と言える。
【0003】
有機電界発光素子の外部量子効率は「外部量子効率φ=内部量子効率×光取り出し効率
で決まる。有機化合物からの蛍光発光を利用する有機EL素子においては、内部量子効率の限界値が25%であり、光取り出し効率が約20%であることから、外部量子効率の限界値は約5%とされている。
【0004】
有機電界発光素子の内部量子効率を向上させて、素子の外部量子効率を向上する方法として、三重項発光材料(りん光発光材料)を用いる素子が報告されている(特許文献1)。この素子は従来の蛍光発光を利用した素子(一重項発光素子)に比べて外部量子効率を向上させることが可能であり、外部量子効率の最大値は8%(100cd/m2時の外部量子効率は7.5%)を達しているが、耐久性の点で改良が望まれていた。
【特許文献1】国際公開第00/070655号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、耐久性が良好な発光素子及び該素子に用いる新規な化合物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成する好ましい構成は以下のとおりである。
【0007】
〔1〕一対の電極間に有機化合物層として少なくとも発光層を有し、少なくともひとつの有機化合物層が、下記一般式(Z)で表される化合物を含有することを特徴とする有機電界発光素子。
【0008】
【化1】

【0009】
(R21は窒素原子で連結する芳香族ヘテロ環及び水素原子以外の置換基を表し、R22〜R24は窒素原子で連結する芳香族ヘテロ環以外の置換基、又は水素原子を表し、R25〜R28は置換基を表し、n21〜n24は0〜4の整数を表す。)
【0010】
〔2〕前記発光層に三重項励起状態からの発光を示す化合物を含有することを特徴とする上記〔1〕に記載の有機電界発光素子。
〔3〕前記一般式(Z)で表される化合物が、前記発光層に含まれることを特徴とする上記〔1〕または〔2〕に記載の有機電界発光素子。
〔4〕前記一般式(Z)で表される化合物が、前記発光層に隣接する有機化合物層に含まれることを特徴とする上記〔1〕または〔2〕に記載の有機電界発光素子。
【0011】
〔5〕前記一般式(Z)で表される化合物の最低三重項エネルギー準位が65kcal/mol以上であることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の有機電界発光素子。
〔6〕上記一般式(Z)で表される化合物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高耐久発光が可能な発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の有機電界発光素子は、一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機化合物層(以下、「有機層」ともいう。)を有する有機電界発光素子(以下、「本発明の素子」、「発光素子」、又は「EL素子」ともいう。)であって、該有機化合物層の少なくとも一層に、一般式(X)で表される化合物を含有することを特徴とする。この構成により発光効率とともに、耐久性が良好な発光素子を提供することできる。
【0014】
上述のように本発明の有機電界発光素子は、有機化合物層として、少なくとも一つの発光層を有し、また発光層以外の有機化合物層として、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、励起子ブロック層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、保護層などが適宜配置されていてもよく、それぞれ他の層の機能を兼ね備えていても良い。また各層は複数の層から構成されていても良い。
該化合物は、発光層又は発光層に隣接する有機化合物層のいずれか又は両方に含有することが好ましく、発光層又は電子輸送層のいずれか又は両方に含有することがより好ましく、発光層に含まれることがさらに好ましい。
各層における式(X)で表される化合物の量は発光層に関しては、好ましくは1〜100質量%であり、より好ましくは10〜90質量%であり、さらに好ましくは10〜70質量%であり、特に好ましくは15〜50質量%である。発光層以外の層に関しては、好ましくは1〜100質量%であり、より好ましくは10〜100質量%であり、さらに好ましくは30〜100質量%であり、特に好ましくは50〜100質量%である。
【0015】
以下、本発明の有機電界発光素子の有機化合物層に添加する一般式(X)で表される化合物について詳細に説明する。
【0016】
【化2】

【0017】
(R11は窒素原子で連結する芳香族ヘテロ環及び水素原子以外の置換基を表し、R12〜R14は窒素原子で連結する芳香族ヘテロ環以外の置換基、又は水素原子を表し、R15〜R112は置換基を表し、n11、n12は0または1を表し、n13〜n16は0〜4の整数を表す。)
【0018】
11は窒素原子で連結する芳香族ヘテロ環及び水素原子以外の置換基を表す。
【0019】
11で表される置換基としては下記置換基群Aなどが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。
置換基群A:アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭
素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロアリール基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)
【0020】
11としてはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、含ケイ素ヘテロ環を形成する基、シリル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子が好ましく、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、シリル基がより好ましく、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基がさらに好ましい。
【0021】
12〜R14は窒素原子で連結する芳香族ヘテロ環以外の置換基、又は水素原子を表す。R12〜R14で表される置換基としては前記置換基群Aが適用できる。
【0022】
12〜R14としてはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、含ケイ素ヘテロ環を形成する基、シリル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子が好ましく、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、シリル基がより好ましく、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基がさらに好ましい。
【0023】
15〜R112は水素原子又は置換基を表し、置換基としては前記置換基群Aが適用できる。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、含ケイ素ヘテロ環を形成する基、シリル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子が好ましく、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、シリル基がより好ましく、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基がさらに好ましい。また、隣接する置換基同士は、可能な限り結合して環を形成してもよい。
【0024】
11、n12は0または1を表す。n11、n12は同じであっても異なっていてもよい。
13〜n16は0〜4の整数を表す。n13〜n16はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0025】
一般式(X)で表される化合物は、一般式(Z)で表される化合物が好ましい。
【0026】
【化3】

【0027】
(R21は窒素原子で連結する芳香族ヘテロ環及び水素原子以外の置換基を表し、R22〜R24は窒素原子で連結する芳香族ヘテロ環以外の置換基、又は水素原子を表し、R25〜R28は置換基を表し、n21〜n24は0〜4の整数を表す。)
【0028】
21は前記一般式(X)中のR11と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0029】
22〜R24は前記一般式(X)中のR12〜R14と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0030】
25〜R28は水素原子又は置換基を表し、置換基としては前記置換基群Aが適用できる。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、
含ケイ素ヘテロ環を形成する基、シリル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子が好ましく、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、シリル基がより好ましく、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基がさらに好ましい。また、隣接する置換基同士は、可能な限り結合して環を形成してもよい。
【0031】
21〜n24は0〜4の整数を表す。n21〜n24はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0032】
一般式(X)または(Z)で表される化合物はいずれの有機層に含まれていても良いが、電子輸送層もしくは発光層に含まれていることが好ましく、発光層に含まれていることがより好ましい。また、一つの有機層に含まれていても、複数の有機層に含まれていても良い。
【0033】
一般式(X)または(Z)で表される化合物の膜状態でのT1レベル(最低三重項励起状態のエネルギーレベル)は、45 kcal/mol (188.3 kJ/mol)以上が好ましく、55kcal/mol(251.0kJ/mol)以上がより好ましく、60kcal/mol(272.0kJ/mol)以上が更に好ましく、65kcal/mol(294.7kJ/mol)以上が特に好ましい。なお、上限として、85kcal/mol(355.6kJ/mol)以下であることが好ましい。
特に発光層が三重項励起状態からの発光を示す化合物を含有するとき、一般式(X)で表される化合物の膜状態でのT1レベルが上記範囲であることが好ましい。
【0034】
1レベルは、化合物の膜状態でのりん光スペクトルを測定し、スペクトルの短波端の波長から求めることができる。
【0035】
以下一般式(X)で表される化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0036】
【化4】

【0037】
【化5】

【0038】
【化6】

【0039】
本発明の化合物は例えば、「Heterocycles, Vol.55, No.5, 2001, 905-924」に記載に手法に従って合成することができる。
式(Z)で表される化合物は、種々の公知の手法を用いて合成することが出来る。例えば、アリールハライド、アリールトリフラート、ヘテロアリールハライド、ヘテロアリールトリフラートと、カルバゾール誘導体を、触媒(Pd,Cuなど)、塩基(炭酸塩、アルコキサイド、アミン誘導体など)、溶媒(炭化水素系溶媒、ハロゲン系用媒、エーテル系用媒、アルコール系溶媒、水など)の存在下、もしくは、非存在下で反応させ、合成することが出来る。
【0040】
以下に本発明の化合物の合成法について説明する。
【0041】
〔合成例1〕例示化合物(2)の合成
【0042】
【化7】

【0043】
〔化合物2aの合成〕
2,6−ジニトロトルエン25g(0.137モル)、含水率55%のPd−C10g、エタノール200mLを丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気下にて70℃で撹拌した。これにギ酸アンモニウム34.6g(0.549モル)をゆっくりと加えた。1時間加熱還流した後、反応液をセライトを通してろ過した。ろ液の濃度を2倍に濃縮し、氷水で冷却することで化合物2a11.9g(0.097モル)を肌色の結晶として得た。収率54%。
【0044】
〔例示化合物(2)の合成〕
化合物2a2.44g(20ミリモル)、2,2’−ジブロモビフェニル14.98g(48ミリモル)、Pd2(dba)31.83g(2ミリモル)、2−ジシクロヘキシルフォスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル3.81g(8ミリモル)、t−ブトキシナトリウム9.23g(96ミリモル)、キシレン100mLを500mLの丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気下にて撹拌した。1.5時間加熱還流した後、反応液をろ過した。ろ液を2倍に濃縮した後、冷却することで粗結晶を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン)にて精製し、例示化合物(2)5.5g(13ミリモル)を得た。NMR測定、MS測定により、目的の化合物である事を確認した。収率65%。
【0045】
〔合成例2〕例示化合物(4)の合成
【0046】
【化8】

【0047】
〔化合物4aの合成〕
発煙硝酸75mLを丸底フラスコ中、−10℃で撹拌しているところへ、4−t−ブチルブロモベンゼン30g(0.14モル)を30分かけてゆっくりと加えた。室温にて1時間、さらに60℃にて20分撹拌した。室温に放冷した後、反応液を氷水に注ぎ込み、30分撹拌した。沈殿をろ過し、得られた固体を飽和炭酸水素ナトリウム溶液、蒸留水で洗浄した。これを2−プロパノールで再結晶を行い、化合物4a21.9g(0.072モル)を得た。収率52%。
【0048】
〔化合物4bの合成〕
化合物4a9.09g(30ミリモル)、ヨードベンゼン15.3g(75ミリモル)、銅粉36g、メシチレン30mLを300mLの丸底フラスコに入れて撹拌した。4時間加熱還流した後、室温まで放冷し、ろ過した。ろ紙残を酢酸エチルで洗浄し、ろ液を濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=20/1)にて精製した後、2−プロパノールで再結晶し、化合物4bを淡黄色針状結晶として6.1g(20.3ミリモル)得た。収率68%。
【0049】
〔化合物4cの合成〕
化合物4b6.0g(20ミリモル)、エタノール150mLを500mL丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気下中60℃にて撹拌した。含水率55%のPd−C5gを加えた後、ギ酸アンモニウム10g(160ミリモル)をゆっくりと加えた。1時間加熱還流した後、反応液をセライトを通してろ過した。ろ液を濃縮し、化合物4c4.5g(18.7ミリモル)得た。収率94%。
【0050】
〔例示化合物(4)の合成〕
化合物4c4.33g(18ミリモル)、2,2’−ジブロモビフェニル12.36g(39.6ミリモル)、Pd2(dba)31.65g(1.8ミリモル)、2−ジシクロヘキシルフォスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル3.43g(7.2ミリモル)、t−ブトキシナトリウム7.84g(81.6ミリモル)、トルエン70mLを300mLの丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気下にて撹拌した。2時間加熱還流した後、反応液をろ過した。ろ液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=50/1)にて精製し、さらに得られた固体をメタノールで煮沸洗浄することで、白色粉末の例示化合物(4)6.0g(11.1ミリモル)を得た。NMR測定、MS測定により、目的の化合物である事を確認した。収率62%。
【0051】
次に、本発明の有機電界発光素子に関して説明する。本発明の有機電界発光素子は、システム、駆動方法、利用形態など特に問わない。代表的な有機電界発光素子として有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を挙げることができる。
【0052】
本発明の発光素子の外部量子効率としては、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、13%以上がさらに好ましい。外部量子効率の数値は20℃で素子を駆動したときの外部量子効率の最大値、もしくは、20℃で素子を駆動した時の100〜300cd/m2付近(好ましくは200〜300cd/m2)での外部量子効率の値を用いることができる。
【0053】
本発明の発光素子の内部量子効率としては、30%以上が好ましく、50%以上がさらに好ましく、70%以上がさらに好ましい。素子の内部量子効率は 内部量子効率=外部量子効率/光取り出し効率 で算出される。通常の有機EL素子では光取り出し効率は約20%であるが、基板の形状、電極の形状、有機層の膜厚、無機層の膜厚、有機層の屈折率、無機層の屈折率等を工夫することにより、光取り出し効率を20%以上にすることが可能で有る。
【0054】
本発明の発光層に含まれるホスト材料、電子輸送層に含まれる材料、及び、ホール輸送材料のガラス転移点は90℃以上400℃以下であることが好ましく、100℃以上380℃以下であることがより好ましく、120℃以上370℃以下であることがさらに好ましく、140℃以上360℃以下であることが特に好ましい。
ここで、Tgは示差走査熱量測定(DSC)、示差熱分析(DTA)などの熱測定や、X線回折(XRD)、偏光顕微鏡観察などにより確認できる。
【0055】
本発明に用いる発光材料について説明する。発光材料とは、発光層において実質的に発光する機能を担う化合物であり、発光は蛍光であってもりん光であっても、その両方を発光しても良いが、発光層において実質的にりん光を発光する化合物であることが好ましい。
本発明の有機電界発光素子は、発光層が蛍光発光化合物を含有せず、りん光発光化合物が実質的に発光する素子であることがより好ましい。
【0056】
発光層中の発光材料の濃度は、特に限定されないが、主成分であるホスト材料と同等かそれ以下であることが好ましく、0.1質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましく、0.3質量%以上20質量%以下であることが特に好ましく、0.5質量%以上10質量%以下が最も好ましい。
【0057】
りん光発光化合物は、特に限定されないが、遷移金属錯体が好ましく、イリジウム錯体、白金錯体、レニウム錯体、ルテニウム錯体、パラジウム錯体、ロジウム錯体、又は希土類錯体がより好ましく、イリジウム錯体、白金錯体がさらに好ましい。また特開2002−235076、特開2002−170684、特願2001−239281、特願2001−248165に記載のジフルオロフェニルピリジン配位子を有するオルトメタル化イリジウム錯体が好ましい。
【0058】
また、米国特許第6303238号、米国特許出願公開第6097147号、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234 A2、WO01/41512 A1、WO02/02714 A2、WO02/15645 A1、特開2001−247859、特願2000−33561、特開2002−117978、特願2001−248165、特開2002−235076、特願2001−239281、特開2002−170684、EP 1211257、特開2002−26495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679等の特許文献に記載のりん光発光化合物も好適に用いることができる。
【0059】
本発明に用いるりん光発光化合物のりん光寿命(室温)は特に限定されないが、1ms以下であることが好ましく、100μs以下であることがより好ましく、10μs以下であることがさらに好ましい。
【0060】
りん光発光化合物のT1レベル(最低三重項励起状態のエネルギーレベル)は、45 kcal/mol 以上(188.3 kJ/mol以上)、90 kcal/mol 以下(377.1 kJ/mol以下) が好ましく、55kcal/mol以上(251.0kJ/mol以上)、85 kcal/mol 以下(356.15 kJ/mol 以下)がより好ましく、60kcal/mol以上(272.0kJ/mol以上)、85kcal/mol以下(355.6kJ/mol以下)がさらに好ましく、65 kcal/mol 以上(272.35 kJ/mol以上)、80 kcal/mol 以下(335.
2 kJ/mol 以下)が特に好ましい。
【0061】
発光層に隣接する層(ホール輸送層、電子輸送層、電荷ブロック層、励起子ブロック層など)のT1レベル(最低三重項励起状態のエネルギーレベル)は、45 kcal/mol 以上(188.3 kJ/mol以上)、85kcal/mol以下(355.6kJ/mol以下)が好ましく、55kcal/mol以上(251.0kJ/mol以上)、85kcal/mol以下(355.6kJ/mol以下)がより好ましく、60kcal/mol以上(272.0kJ/mol以上)、85kcal/mol以下(355.6kJ/mol以下)がさらに好ましい。
【0062】
本発明の発光素子は、種々の公知の工夫により、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、基板表面形状を加工する(例えば微細な凹凸ハ゜ターンを形成する)、基板・ITO層・有機層の屈折率を制御する、基板・ITO層・有機層の膜厚を制御すること等により、光の取り出し効率を向上させ、外部量子効率を向上させることが可能である。
【0063】
本発明の発光素子は、陽極側から発光を取り出す、いわゆる、トップエミッション方式(特開2003−208109,2003−248441,2003−257651,2003−282261などに記載)であっても良い。
【0064】
本発明の発光素子で用いられる基材は、特に限定されないが、ジルコニア安定化イットリウム、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルや、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジグリコールカーボネート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン−ポリエチレン共重合体等の高分子量材料であっても良い。
【0065】
本発明の有機電界発光素子は、青色蛍光発光化合物を含有しても良いし、また、青色蛍光化合物を含有する青色発光素子と本発明の発光素子を同時に用いて、マルチカラー発光デバイス、フルカラー発光デバイスを作製しても良い。
【0066】
本発明の有機電界発光素子の発光層は積層構造を形成していてもよい。積層数は2層以上50層以下が好ましく、4層以上30層以下がより好ましく、6層以上20層以下がさらに好ましい。
【0067】
積層を構成する各層の膜厚は特に限定されないが、0.2nm以上、20nm以下が好ましく、0.4nm以上、15nm以下がより好ましく、0.5nm以上10nm以下がさらに好ましく、1nm以上5nm以下が特に好ましい。
【0068】
本発明の有機電界発光素子の発光層は複数のドメイン構造を有していても良い。発光層中に他のドメイン構造を有していても良い。例えば、発光層が、ホスト材料A及び蛍光材料Bの混合物からなる約1nm3の領域と、ホスト材料C及び蛍光材料Dの混合物からなる約1nm3の領域で構成されていても良い。各ドメインの径は、0.2nm以上10nm以下が好ましく、0.3nm以上5nm以下がより好ましく、0.5nm以上3nm以下がさらに好ましく、0.7nm以上2nm以下が特に好ましい。
【0069】
本発明の化合物を含有する発光素子の有機層の形成方法は、特に限定されるものではないが、抵抗加熱蒸着、電子ビーム、スパッタリング、分子積層法、コーティング法(スプレーコート法、ディップコート法、含浸法、ロールコート法、グラビアコート法、リバー
スコート法、ロールブラッシュ法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スピンコート法、フローコート法、バーコート法、マイクログラビアコート法、エアードクターコート、ブレードコート法、スクイズコート法、トランスファーロールコート法、キスコート法、キャストコート法、エクストルージョンコート法、ワイヤーバーコート法、スクリーンコート法等)、インクジェット法、印刷法、転写法などの方法が用いられ、特性面、製造面で抵抗加熱蒸着、コーティング法、転写法が好ましい。
【0070】
本発明の発光素子は陽極、陰極の一対の電極間に発光層もしくは発光層を含む複数の有機化合物膜を形成した素子であり、発光層のほか正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、保護層などを有してもよく、またこれらの各層はそれぞれ他の機能を備えたものであってもよい。各層の形成にはそれぞれ種々の材料を用いることができる。
【0071】
陽極は正孔注入層、正孔輸送層、発光層などに正孔を供給するものであり、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、またはこれらの混合物などを用いることができ、好ましくは仕事関数が4eV以上の材料である。具体例としては酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物、あるいは金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられ、好ましくは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からITOが好ましい。陽極の膜厚は材料により適宜選択可能であるが、通常10nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは50nm〜1μmであり、更に好ましくは100nm〜500nmである。
【0072】
陽極は通常、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、透明樹脂基板などの上に層形成したものが用いられる。ガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。基板の厚みは、機械的強度を保つのに十分であれば特に制限はないが、ガラスを用いる場合には、通常0.2mm以上、好ましくは0.7mm以上のものを用いる。
陽極の作製には材料によって種々の方法が用いられるが、例えばITOの場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾルーゲル法など)、酸化インジウムスズ分散物の塗布などの方法で膜形成される。
陽極は洗浄その他の処理により、素子の駆動電圧を下げることや、発光効率を高めることも可能である。例えばITOの場合、UV−オゾン処理、プラズマ処理などが効果的である。
【0073】
陰極は電子注入層、電子輸送層、発光層などに電子を供給するものであり、電子注入層、電子輸送層、発光層などの負極と隣接する層との密着性やイオン化ポテンシャル、安定性等を考慮して選ばれる。陰極の材料としては金属、合金、金属ハロゲン化物、金属酸化物、電気伝導性化合物、またはこれらの混合物を用いることができ、具体例としてはアルカリ金属(例えばLi、Na、K等)及びそのフッ化物または酸化物、アルカリ土類金属(例えばMg、Ca等)及びそのフッ化物または酸化物、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金またはそれらの混合金属、リチウム−アルミニウム合金またはそれらの混合金属、マグネシウム−銀合金またはそれらの混合金属、インジウム、イッテリビウム等の希土類金属等が挙げられ、好ましくは仕事関数が4eV以下の材料であり、より好ましくはアルミニウム、リチウム−アルミニウム合金またはそれらの混合金属、マグネシウム−銀合金またはそれらの混合金属等である。陰極は、上記化合物及び混合物の単層構造だけでなく、上記化合物及び混合物を含む積層構造を取ることもできる。例えば、アルミニウム/フッ化リチウム、アルミニウム/酸化リチウム の積層構造が好ましい。
陰極の膜厚は材料により適宜選択可能であるが、通常10nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは50nm〜1μmであり、更に好ましくは100nm〜1μmである。
陰極の作製には電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、コーティング法、転写法などの方法が用いられ、金属を単体で蒸着することも、二成分以上を同時に蒸着することもできる。さらに、複数の金属を同時に蒸着して合金電極を形成することも可能であり、またあらかじめ調整した合金を蒸着させてもよい。
陽極及び陰極のシート抵抗は低い方が好ましく、数百Ω/□以下が好ましい。
【0074】
発光層の材料は、電界印加時に陽極または正孔注入層、正孔輸送層から正孔を注入することができると共に陰極または電子注入層、電子輸送層から電子を注入することができる機能や、注入された電荷を移動させる機能、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層を形成することができるものであれば何でもよく、本発明の化合物のほか、例えばベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ペリレン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノールの金属錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、イリジウムトリスフェニルピリジン錯体、及び、白金ポルフィリン錯体に代表される遷移金属錯体、及び、それらの誘導体等が挙げられる。発光層の膜厚は特に限定されるものではないが、通常1nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは5nm〜1μmであり、更に好ましくは10nm〜500nmである。
発光層の形成方法は、特に限定されるものではないが、抵抗加熱蒸着、電子ビーム、スパッタリング、分子積層法、コーティング法、インクジェット法、印刷法、LB法、転写法などの方法が用いられ、好ましくは抵抗加熱蒸着、コーティング法である。
【0075】
発光層は一つであっても複数であっても良く、それぞれの層が異なる発光色で発光して、例えば、白色を発光しても良い。単一の発光層から白色を発光しても良い。
【0076】
正孔注入層、正孔輸送層の材料は、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれか有しているものであればよい。その具体例としては、本発明の化合物のほか、カルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、イミダゾール、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、本発明の化合物、及び、それらの誘導体等が挙げられる。正孔注入層、正孔輸送層の膜厚は特に限定されるものではないが、通常1nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは5nm〜1μmであり、更に好ましくは10nm〜500nmである。正孔注入層、正孔輸送層は上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
正孔注入層、正孔輸送層の形成方法としては、真空蒸着法やLB法、前記正孔注入輸送材料を溶媒に溶解または分散させてコーティングする方法、インクジェット法、印刷法、転写法が用いられる。コーティング法の場合、樹脂成分と共に溶解または分散することができ、樹脂成分としては例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポ
リフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などが挙げられる。
【0077】
電子注入層、電子輸送層の材料は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれか有しているものであればよい。その具体例としては、本発明の化合物のほか、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、イミダゾール、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、8−キノリノールの金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン、及び、それらの誘導体等が挙げられる。電子注入層、電子輸送層の膜厚は特に限定されるものではないが、通常1nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは5nm〜1μmであり、更に好ましくは10nm〜500nmである。電子注入層、電子輸送層は上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
電子注入層、電子輸送層の形成方法としては、真空蒸着法やLB法、前記電子注入輸送材料を溶媒に溶解または分散させてコーティングする方法、インクジェット法、印刷法、転写法などが用いられる。コーティング法の場合、樹脂成分と共に溶解または分散することができ、樹脂成分としては例えば、正孔注入輸送層の場合に例示したものが適用できる。
【0078】
保護層の材料としては水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al23、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe23、Y23、TiO2等の金属酸化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、SiNx、SiOxy などの窒化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
保護層の形成方法についても特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
【0079】
本発明の発光素子の用途は特に限定されないが、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等の分野に好適に使用できる。
【0080】
以下に本発明の具体的実施例を述べるが、本発明の実施の態様はこれらに限定されない。
【0081】
〔実施例1〕
洗浄したITO基板を蒸着装置に入れ、α―NPDを40nm蒸着した。この上に、F
Irpic(りん光発光化合物)と本発明の化合物(2)を6:94の比率(質量比)で30nm蒸着し、この上に、Balqを6nm蒸着し、この上に、Alqを20nm蒸着した。この上に、マグネシウムと銀を10:1の比率(モル比)で100nm共蒸着し、EL素子を作製した。なお、化合物(2)の膜状態での最低三重項エネルギーは、66kcal/molである。
東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流定電圧をEL素子に印加して発光させると、485nm付近に極大発光波長を有する発光が得られた。
素子の駆動耐久性は初期輝度300cd/m2にて測定すると輝度半減期は比較例1の素子の約2倍である。
【0082】
【化9】

【0083】
〔実施例2〕
実施例1の発光素子の作製において、化合物(2)の代わりに化合物(4)を用いた以外は、実施例1と同様にして発光素子を作成した。実施例1と同様の手法で素子を発光させると、485nm付近に極大発光波長を有する発光が得られた。なお、化合物(4)の膜状態での最低三重項エネルギーは、65kcal/molである。
素子の駆動耐久性は初期輝度300cd/m2にて測定すると輝度半減期は比較例1の素子の約10倍である。
【0084】
〔実施例3〕
実施例1の発光素子の作製において、α−NPDの代わりに、α−NPD:化合物(2)=30:70(質量比)を用いた以外は、実施例1と同様にして発光素子を作成した。実施例1と同様の手法で素子を発光させると、485nm付近に極大発光波長を有する発光が得られた。
素子の外部量子効率は実施例1の素子の約1.5倍である。
【0085】
〔比較例1〕
実施例1の発光素子の作成において、化合物(2)の代わりにCBPを用いた以外は、実施例1と同様にして発光素子を作成した。実施例1と同様の手法で素子を発光させると、485nm付近に極大発光波長を有する発光が得られた。
【0086】
【化10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に有機化合物層として少なくとも発光層を有し、少なくともひとつの有機化合物層が、下記一般式(Z)で表される化合物を含有することを特徴とする有機電界発光素子。
【化1】

(R21は窒素原子で連結する芳香族ヘテロ環及び水素原子以外の置換基を表し、R22〜R24は窒素原子で連結する芳香族ヘテロ環以外の置換基、又は水素原子を表し、R25〜R28は置換基を表し、n21〜n24は0〜4の整数を表す。)
【請求項2】
前記発光層に三重項励起状態からの発光を示す化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記一般式(Z)で表される化合物が、前記発光層に含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記一般式(Z)で表される化合物が、前記発光層に隣接する有機化合物層に含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記一般式(Z)で表される化合物の最低三重項エネルギー準位が65kcal/mol以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
下記一般式(Z)で表されることを特徴とする化合物。
【化2】

(R21は窒素原子で連結する芳香族ヘテロ環及び水素原子以外の置換基を表し、R22〜R24は窒素原子で連結する芳香族ヘテロ環以外の置換基、又は水素原子を表し、R25〜R28は置換基を表し、n21〜n24は0〜4の整数を表す。)

【公開番号】特開2007−227656(P2007−227656A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47149(P2006−47149)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】