説明

有機電界発光素子用材料、及び有機電界発光素子

【課題】本発明の目的は、有機EL素子に用いることができ、可視光下で安定に保存させることができ、また高輝度で素子を駆動させたときの効率に優れる有機電界発光素子用材料、及び該材料を用いた有機電界発光素子を提供することである。
【解決手段】燐光性金属錯体Aと燐光性金属錯体Bとを少なくとも含む有機電界発光素子用材料であって、金属錯体A及びBはともに原子量40以上の金属と配位子とを含む有機金属錯体であり、金属錯体Aは特定の構造を有し、金属錯体Bは配位子骨格に直接結合している原子の1つ以上が、該原子の同族かつ原子量の大きい原子に置き換えられていること以外は金属錯体Aと同一の構造を有し、金属錯体Aに対する金属錯体Bの含有比が0.005質量%以上2質量%以下であることを特徴とする有機電界発光素子用材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子用材料、及び有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(以下、「素子」、「有機EL素子」ともいう)は、低電圧駆動で高輝度の発光が得られることから、近年活発な研究開発が行われている。一般に有機電界発光素子は、発光層を含む有機層及び該層を挟んだ一対の電極から構成されており、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が発光層において再結合し、生成した励起子のエネルギーを発光に利用するものである。
【0003】
近年、燐光発光材料を用いることにより、素子の高効率化が進んでいる。例えば、燐光発光材料としてイリジウム錯体や白金錯体などを用い、発光効率及び素子耐久性に優れる有機電界発光素子が提案されている。
また、発光材料をホスト材料中にドープした発光層を用いるドープ型素子が広く採用されている。
例えば、特許文献1には、縮環アゾール配位子を含み、高耐久性かつ青色発光可能なイリジウム錯体について記載されている。
【0004】
また、従来、発光材料等の有機EL素子に用いられる材料は、不純物を含んでいると素子の耐久性などに悪影響を与えると考えられていた。したがって材料中の不純物を低減させ、材料の純度を高くする技術が提案されている。
例えば、特許文献2には、素子の耐久性を向上させることを目的として、有機化合物層の少なくとも1層が金属配位化合物を含有し、該有機化合物層中の金属配位化合物の分解生成物又は原料物の含有量が0.5質量%以下である発光素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0297033号明細書
【特許文献2】特開2005−347004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では青色純度が高く、耐久性の高い発光材料について記載されているが、特許文献1に記載の金属錯体は、特許文献1の55ページに記載されている通り、錯体の合成から単離に至るまで遮光条件で扱わなければならないほど、可視光に弱く、容易に酸化されるものであり、製造工程が複雑になったり、生産性に劣るため改善が望まれていた。
また、前記特許文献2では、主に素子の耐久性向上等を目的として、発光材料の純度を高める技術が開示されている。しかしながら、特許文献2では発光材料の可視光下での安定性、及び高輝度で発光素子を駆動させたときの効率については検討されていない。
【0007】
本発明の目的は、有機EL素子に用いることができ、可視光下で安定に保存させることができ、また高輝度で素子を駆動させたときの効率に優れる有機電界発光素子用材料、及び該材料を用いた有機電界発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、特定の燐光性金属錯体Aと別途合成した燐光性金属錯体Bを混合する方法、又は燐光性金属錯体Aを合成する際に燐光性金属錯体Bも生成するように合成する方法などにより、該金属錯体Aと該金属錯体Bとを特定の範囲の含有比で含む有機電界発光素子用材料とすることで、可視光下での保存安定性、及び高輝度で素子を駆動させたときの効率に優れるという効果があることを見出し、本発明に至った。
すなわち、前記課題は下記手段により解決できる。
【0009】
〔1〕
燐光性金属錯体Aと燐光性金属錯体Bとを少なくとも含む有機電界発光素子用材料であって、該燐光性金属錯体Aは下記一般式(1)で表される部分構造を含み、該燐光性金属錯体Bは一般式(1)におけるR及びRのうちの少なくとも1つの置換基において、Q又はQに直接結合している原子の1つ以上が、該原子の同族かつ原子量の大きい原子に置き換えられていること以外は該燐光性金属錯体Aと同一の構造を有し、該燐光性金属錯体Aに対する該燐光性金属錯体Bの含有比が0.005質量%以上2質量%以下である有機電界発光素子用材料。
【0010】
【化1】

【0011】
(一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に置換基を表す。R及びRは複数存在する場合はそれぞれのR及びRは同一でも異なっていてもよい。複数のR及びRはそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。Mは原子量40以上の金属を表し、X〜Xはそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。ただし、X〜Xが全て窒素原子を表すことはない。Qは5員又は6員の芳香族複素環を表し、Qは5員又は6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表す。n1及びn2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表すが、n1とn2の和が0になることはない。Q及びQを含む2座配位子は他の配位子と結合して3座以上の配位子を形成しても良い。QとQは連結基により連結し、環を形成してもよい。)
〔2〕
前記金属錯体Aは前記一般式(1)におけるR及びRの少なくとも1つとしてフッ素原子を有し、前記金属錯体Bは金属錯体Aの有するフッ素原子のうち少なくとも1つがフッ素原子以外のハロゲン原子に置き換えられている上記〔1〕に記載の有機電界発光素子用材料。
〔3〕
前記金属錯体Bにおけるフッ素原子以外のハロゲン原子が塩素原子である上記〔2〕に記載の有機電界発光素子用材料。
〔4〕
前記一般式(1)において、R及びRが全てフッ素原子である上記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
〔5〕
前記金属錯体Aが下記一般式(2)で表される部分構造を含む上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
【0012】
【化2】

【0013】
(一般式(2)中、Mは原子量40以上の金属を表し、X炭素原子又は窒素原子を表す。Qは5員又は6員の芳香族複素環を表す。E〜Eはそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。ただし、E〜Eが全て窒素原子を表すことはない。n1及びn2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表すが、n1とn2の和が0になることはない。環Q及びE〜Eを含む環を含む2座配位子は他の配位子と結合して3座以上の配位子を形成しても良い。)
〔6〕
前記金属錯体Aが下記一般式(3)で表される部分構造を含む上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
【0014】
【化3】

【0015】
(一般式(3)中、Mは原子量40以上の金属を表し、Eは炭素原子又は窒素原子を表す。n3は1〜4の整数を表す。ピリジン及びEを含む環を含む2座配位子は他の配位子と結合して3座以上の配位子を形成しても良い。)
〔7〕
前記Eが炭素原子である上記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
〔8〕
前記MがPtである上記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
〔9〕
前記一般式(1)が下記一般式(C−2)で表される上記〔1〕に記載の有機電界発光素子用材料。
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、L21は単結合又は二価の連結基を表す。Z21及びZ22はそれぞれ独立に5員又は6員の含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z23及びZ24はそれぞれ独立にベンゼン環又は5員又は6員の芳香族ヘテロ環を表す。Z21及びZ23はそれぞれ独立に1〜4個の置換基を有していてもよく、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。ただし、Z21及びZ23のうち少なくともいずれかは1つ以上の置換基を有する。Z22及びZ24は置換基を有していてもよく、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。X21、X22、X23及びX24はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。)
〔10〕
前記MがIrである上記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
〔11〕
前記一般式(1)が下記一般式(A10)で表される上記〔1〕に記載の有機電界発光素子用材料。
【0018】
【化5】

【0019】
(一般式(A10)中、R1a〜R1iはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。X−Yは二座のモノアニオン性の二座配位子を表す。nは1〜3の整数を表す。)
〔12〕
前記一般式(1)が下記一般式(P−1)で表される上記〔1〕に記載の有機電界発光素子用材料。
【0020】
【化6】

【0021】
(一般式(P−1)中、R及びRはそれぞれ独立に置換基を表す。R及びRは複数存在する場合はそれぞれのR及びRは同一でも異なっていてもよい。n1及びn2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表すが、n1とn2の和が0になることはない。X−Yは二座のモノアニオン性配位子を表す。nは1〜3の整数を表す。)
〔13〕
基板上に、一対の電極と、該電極間に発光材料を含有する発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、該有機層のうち少なくともいずれかに上記〔1〕〜〔12〕のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含む有機電界発光素子。
〔14〕
上記〔1〕〜〔12〕のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を発光層に含む上記〔13〕に記載の有機電界発光素子。
〔15〕
燐光性金属錯体Aと燐光性金属錯体Bとを少なくとも含む有機電界発光素子用材料であって、該燐光性金属錯体Aは下記一般式(1)で表される部分構造を含み、該燐光性金属錯体Bは一般式(1)におけるR及びRのうちの少なくとも1つの置換基において、Q又はQに直接結合している原子の1つ以上が、該原子の同族かつ原子量の大きい原子に置き換えられていること以外は該燐光性金属錯体Aと同一の構造を有し、該燐光性金属錯体Aに対する該燐光性金属錯体Bの含有比が0.005質量%以上2質量%以下である組成物。
【0022】
【化7】

【0023】
(一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に置換基を表す。R及びRは複数存在する場合はそれぞれのR及びRは同一でも異なっていてもよい。Mは原子量40以上の金属を表し、X〜Xはそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。ただし、X〜Xが全て窒素原子を表すことはない。Qは5員又は6員の芳香族複素環を表し、Qは5員又は6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表す。n1及びn2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表すが、n1とn2の和が0になることはない。Q及びQを含む2座配位子は他の配位子と結合して3座以上の配位子を形成しても良い。QとQは連結基により連結し、環を形成してもよい。)
〔16〕
燐光性金属錯体Aと燐光性金属錯体Bとを少なくとも含む有機電界発光素子用材料であって、該燐光性金属錯体Aは下記一般式(1)で表される部分構造を含み、該燐光性金属錯体Bは一般式(1)におけるR及びRのうちの少なくとも1つの置換基において、Q又はQに直接結合している原子の1つ以上が、該原子の同族かつ原子量の大きい原子に置き換えられていること以外は該燐光性金属錯体Aと同一の構造を有し、該燐光性金属錯体Aに対する該燐光性金属錯体Bの含有比が0.005質量%以上2質量%以下である発光層。
【0024】
【化8】

【0025】
(一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に置換基を表す。R及びRは複数存在する場合はそれぞれのR及びRは同一でも異なっていてもよい。Mは原子量40以上の金属を表し、X〜Xはそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。ただし、X〜Xが全て窒素原子を表すことはない。Qは5員又は6員の芳香族複素環を表し、Qは5員又は6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表す。n1及びn2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表すが、n1とn2の和が0になることはない。Q及びQを含む2座配位子は他の配位子と結合して3座以上の配位子を形成しても良い。QとQは連結基により連結し、環を形成してもよい。)
〔17〕
上記〔13〕又は〔14〕に記載の有機電界発光素子を用いた発光装置。
〔18〕
上記〔13〕又は〔14〕に記載の有機電界発光素子を用いた表示装置。
〔19〕
上記〔13〕又は〔14〕に記載の有機電界発光素子を用いた照明装置。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、有機EL素子に用いることができ、可視光下で安定に保存させることができ、また高輝度で素子を駆動させたときの効率に優れる有機電界発光素子用材料、及び該材料を用いた有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る有機EL素子の層構成の一例(第1実施形態)を示す概略図である。
【図2】本発明に係る発光装置の一例(第2実施形態)を示す概略図である。
【図3】本発明に係る照明装置の一例(第3実施形態)を示す概略図である。
【図4】実施例における金属錯体Aに対する金属錯体Bの含有率(質量%)と耐久性比(%)との関係をプロットしたグラフである。
【図5】実施例における金属錯体Aに対する金属錯体Bの含有率(質量%)と耐久性比(%)との関係をプロットしたグラフである。
【図6】実施例における金属錯体Aに対する金属錯体Bの含有率(質量%)と効率比との関係をプロットしたグラフである。
【図7】実施例における金属錯体Aに対する金属錯体Bの含有率(質量%)と効率比との関係をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の有機電界発光素子用材料は、本発明の有機電界発光素子用材料は、燐光性金属錯体Aと燐光性金属錯体Bとを少なくとも含む有機電界発光素子用材料であって、該燐光性金属錯体Aは下記一般式(1)で表される部分構造を含み、該燐光性金属錯体Bは一般式(1)におけるR及びRのうちの少なくとも1つの置換基において、Q又はQに直接結合している原子の1つ以上が、該原子の同族かつ原子量の大きい原子に置き換えられていること以外は該燐光性金属錯体Aと同一の構造を有し、該燐光性金属錯体Aに対する該燐光性金属錯体Bの含有比が0.005質量%以上2質量%以下である。
【0029】
【化9】

【0030】
(一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に置換基を表す。R及びRは複数存在する場合はそれぞれのR及びRは同一でも異なっていてもよい。複数のR及びRはそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。Mは原子量40以上の金属を表し、X〜Xはそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。ただし、X〜Xが全て窒素原子を表すことはない。Qは5員又は6員の芳香族複素環を表し、Qは5員又は6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表す。n1及びn2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表すが、n1とn2の和が0になることはない。Q及びQを含む2座配位子は他の配位子と結合して3座以上の配位子を形成しても良い。QとQは連結基により連結し、環を形成してもよい。)
【0031】
前述のように、特許文献2では、金属錯体の分解物又は原料の含有量は少なければ少ないほど良く、一定量以下にしているが、本発明では、特定の燐光性金属錯体Aと、別の燐光性金属錯体Bとを特定の範囲の含有比で用いる。すなわち、本発明と特許文献2とは全く異なる技術思想に基づくものである。また、本発明の材料を用いた素子は、極めて高輝度で駆動させた場合、効率が低下してしまういわゆるロールオフ現象を低減し、高い効率が維持される。
【0032】
本発明における一般式(1)で表される部分構造を含む燐光性金属錯体を特定燐光性金属錯体とも呼ぶ。
なお、本明細書における各一般式の説明における水素原子は同位体(重水素原子等)も含み、また更に置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいることを表す。
【0033】
[燐光性金属錯体]
(燐光性金属錯体A)
本発明の有機電界発光素子用材料は、燐光性金属錯体Aと燐光性金属錯体Bとを少なくとも含む。金属錯体Aは少なくとも1つの配位子中に、少なくとも1つの置換基を有する下記一般式(1)で表される部分構造を含み、金属錯体Bは一般式(1)のR及びRのうちの少なくとも1つの置換基において、Q又はQに直接結合している原子の1つ以上が、該原子の同族かつ原子量の大きい原子に置き換えられていること以外は金属錯体Aと同一の構造を有する。
【0034】
【化10】

【0035】
(一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に置換基を表す。R及びRは複数存在する場合はそれぞれのR及びRは同一でも異なっていてもよい。複数のR及びRはそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。Mは原子量40以上の金属を表し、X〜Xはそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。ただし、X〜Xが全て窒素原子を表すことはない。Qは5員又は6員の芳香族複素環を表し、Qは5員又は6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表す。n1及びn2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表すが、n1とn2の和が0になることはない。Q及びQを含む2座配位子は他の配位子と結合して3座以上の配位子を形成しても良い。QとQは連結基により連結し、環を形成してもよい。XとX、Xと炭素原子を結ぶ線は一本の線で表されているが、結合種は問わず、それぞれ単結合でも二重結合でも良い。)
【0036】
一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に置換基を表す。R及びRは複数存在する場合はそれぞれのR及びRは同一でも異なっていてもよい。複数のR及びRはそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。前記置換基としては、下記置換基群Aから選ばれることが好ましい。
【0037】
(置換基群A)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(芳香族ヘテロ環基も包含し、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、セレン原子、テルル原子であり、具体的にはピリジル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、キノリル、フリル、チエニル、セレノフェニル、テルロフェニル、ピペリジル、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル、ピロリジノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基、シロリル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)、ホスホリル基(例えばジフェニルホスホリル基、ジメチルホスホリル基などが挙げられる。)が挙げられる。
これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Aから選択される基を挙げることができる。
【0038】
一般式(1)において、R及びRとして好ましくは、ハロゲン原子、炭化水素置換基(好ましくは置換又は無置換の、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基)、シアノ基、OR2a、SR2a、NR2a2b、BR2a2b、又はSiR2a2b2cであり、更に好ましくはハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、フルオロアルキル基、シアノ基、又はOR2aである。該炭化水素置換基が有してもよい置換基としては、前記置換基群Aとして記載したものが挙げられ、好ましい範囲はR及びRの好ましい範囲と同様である。R2a〜R2cはそれぞれ独立に炭化水素置換基、又はヘテロ原子で置換された炭化水素置換基である。該へテロ原子としては酸素、窒素、リン、硫黄、セレン、砒素が挙げられ、好ましくは酸素、硫黄、窒素原子であり、より好ましくは窒素原子である。R2a〜R2cの好ましい範囲は前記R及びRが炭化水素置換基である場合と同じである。
及びRが複数存在する場合は、R及びRのうちの2つが互いに結合し、飽和又は不飽和の、芳香族環又は非芳香族環を形成していても良い。
一般式(1)において、R及びRとしては耐久性を低下させずに発光波長を制御できるためハロゲン原子が特に好ましく、フッ素原子が最も好ましい。また、R及びRは金属錯体Aの母骨格となるQ又はQで表される芳香族炭化水素環又は芳香族複素環のどの部分に置換されるかは限定されず、ほぼ同等の効果を与える。
また、一般式(1)において、R及びRが全てフッ素原子であることが特に好ましい。
【0039】
本発明において、上記アルキル基等の置換基の「炭素数」とは、アルキル基等の置換基が他の置換基によって置換されてもよい場合も含み、当該他の置換基の炭素数も包含する意味で用いる。
【0040】
一般式(1)中、Mは原子量40以上の金属であり、非放射性の金属であることが好ましい。該金属は、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、又はAuのいずれかであることがより好ましく、Os、Ir、又はPtであることが更に好ましく、Ir又はPtであることが特に好ましく、高い発光効率、高い錯体安定性の観点からPtであることが最も好ましい。
【0041】
一般式(1)中、X〜Xはそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。ただし、X〜Xが全て窒素原子を表すことはない。
は炭素原子であることが好ましい。
は炭素原子であることが好ましい。
は金属との結合手を有する原子であり、錯体の化学的安定性を保持するという理由から、窒素原子であることが好ましい。
【0042】
一般式(1)中、Qは5員又は6員の芳香族複素環を表す。Qとして具体的にはピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造が挙げられ、好ましくはピリジン、ピラジン、ピリミジン、イミダゾール、ピラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造であり、より好ましくはピリジン、イミダゾール、ピラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造である。該他の環が縮環した構造としては、インドリジン、プリン、プテリジン、β−カルボリン、ナフチリジン、キノキサリン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、イミダゾピリジン等が挙げられる。
【0043】
一般式(1)中、Qは5員又は6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表す。Qとして具体的にはベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造が挙げられ、好ましくはベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、イミダゾール、ピラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造であり、より好ましくはベンゼン、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造である。該他の環が縮環した構造としては、インドリジン、プリン、プテリジン、β−カルボリン、ナフチリジン、キノキサリン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、イミダゾピリジン等が挙げられる。
【0044】
一般式(1)において、QとQは連結基(好ましくはアリーレン基、より好ましくはフェニレン基)により連結し、環を形成してもよい。この環は共役しているためQ、Qと同じとみなすことができ、この環に結合している置換基において、該環に直接結合している原子が同族かつ原子量の大きい原子に置き換わったものも本発明における金属錯体Bとして含む。
すなわち一般式(1)において、Q及びQは、X−Xを介して全体で縮環を形成していても良い。このような例としては後述する一般式(A1)〜(A4)などが挙げられる。
【0045】
一般式(1)において、n1及びn2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。ただし、n1とn2の和が0になることはない。n1は好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。n2は好ましくは1〜3であり、より好ましくは1又は2である。
【0046】
前記一般式(1)は下記一般式(2)で表されることが好ましい。
【0047】
【化11】

【0048】
(一般式(2)中、Mは原子量40以上の金属を表し、X炭素原子又は窒素原子を表す。Qは5員又は6員の芳香族複素環を表す。E〜Eはそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。ただし、E〜Eが全て窒素原子を表すことはない。n1及びn2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表すが、n1とn2の和が0になることはない。)
【0049】
一般式(2)中、M、X、Q、n1及びn2の好ましい範囲は、前記一般式(1)におけるM、X、Q、n1及びn2の好ましい範囲と同様である。
一般式(2)中、E〜Eのうち2つ以上が炭素原子であることが好ましく、E及びEが炭素原子であることがより好ましい。Eは炭素原子又は窒素原子であるが、より短波長な発光を得る観点からは窒素原子であることが好ましい。また、化合物の化学的安定性及び素子耐久性の観点からは炭素原子である事もまた好ましい。
【0050】
前記一般式(2)は下記一般式(3)で表されることが好ましい。
【0051】
【化12】

【0052】
(一般式(3)中、Mは原子量40以上の金属を表し、Eは炭素原子又は窒素原子を表す。n3は1〜4の整数を表す。)
【0053】
一般式(3)中、Mの好ましい範囲は、前記一般式(1)におけるMの好ましい範囲と同様である。n3は好ましくは1〜2である。
【0054】
一般式(1)におけるMがPtである金属錯体について説明する。
一般式(1)におけるMがPtである金属錯体は下記一般式(C−1)で表されるものが好ましい。
【0055】
【化13】

【0056】
(式中、R及びRはそれぞれ独立に置換基を表す。R及びRは複数存在する場合はそれぞれのR及びRは同一でも異なっていてもよい。複数のR及びRはそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。X〜Xはそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。ただし、X〜Xが全て窒素原子を表すことはない。Qは5員又は6員の芳香族複素環を表し、Qは5員又は6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表す。Q及びQはそれぞれ独立にPtに配位する配位子を表す。Q及びQは置換基を有していてもよく、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。n1及びn2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表すが、n1とn2の和が0になることはない。Lはそれぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表す。)
【0057】
一般式(C−1)について説明する。Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立にPtに配位する配位子を表す。この時、Q、Q、Q及びQとPtの結合は、共有結合、イオン結合、配位結合などいずれであっても良い。Q、Q、Q及びQ中のPtに結合する原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子が好ましく、Q、Q、Q及びQ中のPtに結合する原子の内、少なくとも一つが炭素原子であることが好ましく、二つが炭素原子であることがより好ましく、二つが炭素原子で、二つが窒素原子であることが特に好ましい。
は炭素原子であることが好ましい。
は炭素原子であることが好ましい。
は金属との結合手を有する原子であり、錯体の化学的安定性を保持するという理由から、窒素原子であることが好ましい。
炭素原子でPtに結合するQ及びQとしては、アニオン性の配位子でも中性の配位子でもよく、環状配位子であっても非環状配位子であってもよい。アニオン性の配位子としてはビニル配位子、芳香族炭化水素環配位子(例えばベンゼン配位子、ナフタレン配位子、アントラセン配位子、フェナントレン配位子など)、ヘテロ環配位子(例えばフラン配位子、チオフェン配位子、ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、チアゾール配位子、オキサゾール配位子、ピロール配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子及び、それらを含む縮環体(例えばキノリン配位子、ベンゾチアゾール配位子など))が挙げられる。中性の配位子としてはカルベン配位子が挙げられる。
窒素原子でPtに結合するQ及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としては含窒素芳香族ヘテロ環配位子(ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子、オキサゾール配位子、チアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(例えばキノリン配位子、ベンゾイミダゾール配位子など))、アミン配位子、ニトリル配位子、イミン配位子が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アミノ配位子、イミノ配位子、含窒素芳香族ヘテロ環配位子(ピロール配位子、イミダゾール配位子、トリアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(例えはインドール配位子、ベンゾイミダゾール配位子など))が挙げられる。
酸素原子でPtに結合するQ及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはエーテル配位子、ケトン配位子、エステル配位子、アミド配位子、含酸素ヘテロ環配位子(フラン配位子、オキサゾール配位子及びそれらを含む縮環体(ベンゾオキサゾール配位子など))が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アルコキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、アシルオキシ配位子、シリルオキシ配位子などが挙げられる。
硫黄原子でPtに結合するQ及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはチオエーテル配位子、チオケトン配位子、チオエステル配位子、チオアミド配位子、含硫黄ヘテロ環配位子(チオフェン配位子、チアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(ベンゾチアゾール配位子など))が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アルキルメルカプト配位子、アリールメルカプト配位子、ヘテロアリールメルカプト配位子などが挙げられる。
リン原子でPtに結合するQ及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはホスフィン配位子、リン酸エステル配位子、亜リン酸エステル配位子、含リンヘテロ環配位子(ホスフィニン配位子など)が挙げられ、アニオン性の配位子としては、ホスフィノ配位子、ホスフィニル配位子、ホスホリル配位子などが挙げられる。
及びQは、置換基を有していてもよく、置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適宜適用できる。また置換基同士が連結していても良い(QとQが連結した場合、環状四座配位子のPt錯体になる)。
【0058】
及びQとして好ましくは、炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子、アルキルオキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、シリルオキシ配位子であり、より好ましくは、炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子、アリールオキシ配位子であり、更に好ましくは炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子である。
【0059】
としてはピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造が挙げられ、好ましくはピリジン、ピラジン、ピリミジン、イミダゾール、ピラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造であり、より好ましくはピリジン、イミダゾール、ピラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造である。該他の環が縮環した構造としては、インドリジン、プリン、プテリジン、β−カルボリン、ナフチリジン、キノキサリン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、イミダゾピリジン等が挙げられる。
【0060】
としてはベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造が挙げられ、好ましくはベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、イミダゾール、ピラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造であり、より好ましくはベンゼン、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造である。該他の環が縮環した構造としては、インドリジン、プリン、プテリジン、β−カルボリン、ナフチリジン、キノキサリン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、イミダゾピリジン等が挙げられる。
【0061】
一般式(C−1)において、R及びRが表す置換基としては前記一般式(1)におけるR及びRが表す置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
、Q、Q及びQのいずれか1つ以上はフッ素置換基を有することが好ましい。フッ素置換基の数は特に限定されないが、層分離を抑制する観点から一つの配位子に対し3つ以下であることが好ましい。フッ素置換基はQ、Q、Q及びQのうち芳香族炭化水素環配位子、ヘテロ環配位子及びそれらを含む縮環体を表すものに置換されていることが化学的安定性の観点から好ましい。
【0062】
は、単結合又は二価の連結基を表す。Lで表される二価の連結基としては、アルキレン基(メチレン、エチレン、プロピレンなど)、アリーレン基(フェニレン、ナフタレンジイル)、ヘテロアリーレン基(ピリジンジイル、チオフェンジイルなど)、イミノ基(−NR−)(フェニルイミノ基など)、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、ホスフィニデン基(−PR−)(フェニルホスフィニデン基など)、シリレン基(−SiRR’−)(ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基など)、又はこれらを組み合わせたものが挙げられる。これらの連結基は、更に置換基を有していてもよい。該置換基としては前記置換基群Aから選択される置換基が挙げられ、好ましい範囲はR及びRと同様である。
錯体の安定性及び発光量子収率の観点から、Lとして好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、イミノ基、オキシ基、チオ基、シリレン基であり、より好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基、イミノ基であり、更に好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基であり、更に好ましくは、単結合、メチレン基、フェニレン基であり、更に好ましくは単結合、ジ置換のメチレン基であり、更に好ましくは単結合、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジイソブチルメチレン基、ジベンジルメチレン基、エチルメチルメチレン基、メチルプロピルメチレン基、イソブチルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、シクロヘキサンジイル基、シクロペンタンジイル基、フルオレンジイル基、フルオロメチルメチレン基であり、特に好ましくは単結合、ジメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキサンジイル基である。
【0063】
一般式(C−1)において、n1及びn2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。ただし、n1とn2の和が0になることはない。n1は好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。n2は好ましくは1〜3であり、より好ましくは1又は2である。
【0064】
一般式(C−1)で表される白金錯体のうち、より好ましくは下記一般式(C−2)で表される白金錯体である。
【0065】
【化14】

【0066】
(式中、L21は単結合又は二価の連結基を表す。Z21及びZ22はそれぞれ独立に5員又は6員の含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z23及びZ24はそれぞれ独立にベンゼン環又は5員又は6員の芳香族ヘテロ環を表す。Z21及びZ23はそれぞれ独立に1〜4個の置換基を有していてもよく、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。ただし、Z21及びZ23のうち少なくともいずれかは1つ以上の置換基を有する。Z22及びZ24は置換基を有していてもよく、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。X21、X22、X23及びX24はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。)
【0067】
一般式(C−2)について説明する。L21は、前記一般式(C−1)中のLと同義であり、また好ましい範囲も同様である。X21、X22、X23及びX24はそれぞれ前記一般式(C−1)中のX及びXと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0068】
21、Z22は、それぞれ独立に5員又は6員の含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z21、Z22で表される含窒素芳香族ヘテロ環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、キノリン環、イソキノリン環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環などが挙げられる。錯体の安定性、発光波長制御及び発光量子収率の観点から、Z21、Z22で表される環として好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環であり、より好ましくはピリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環であり、更に好ましくはピリジン環、ピラゾール環であり、特に好ましくはピリジン環である。
【0069】
前記Z22で表される5員又は6員の含窒素芳香族ヘテロ環は置換基を有していてもよく、炭素原子上の置換基としては前記置換基群Aが、窒素原子上の置換基としては下記置換基群Bが適用できる。
(置換基群B)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニル、ペンタフルオロフェニルなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子であり、具体的にはイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)
炭素原子上の置換基として好ましくはアルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子である。置換基は発光波長や電位の制御のために適宜選択されるが、短波長化させる場合には電子供与性基、フッ素原子、芳香環基が好ましく、例えばアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、フッ素原子、アリール基、芳香族ヘテロ環基などが選択される。また長波長化させる場合には電子求引性基が好ましく、例えばシアノ基、ポリフルオロアルキル基などが選択される。
窒素原子上の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基であり、錯体の安定性の観点からアルキル基、アリール基が好ましい。前記置換基同士は連結して縮合環を形成していてもよく、形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
【0070】
23、Z24は、それぞれ独立にベンゼン環又は5員又は6員の芳香族ヘテロ環を表す。Z23、Z24で表される含窒素芳香族ヘテロ環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。錯体の安定性、発光波長制御及び発光量子収率の観点からZ23、Z24で表される環として好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チオフェン環であり、より好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環であり、更に好ましくはベンゼン環、ピリジン環である。
【0071】
前記Z24で表されるベンゼン環、5員又は6員の含窒素芳香族ヘテロ環は置換基を有していてもよく、炭素原子上の置換基としては前記置換基群Aが、窒素原子上の置換基としては前記置換基群Bが適用できる。
炭素上の置換基として好ましくはアルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子である。置換基は発光波長や電位の制御のために適宜選択されるが、長波長化させる場合には電子供与性基、芳香環基が好ましく、例えばアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基、芳香族ヘテロ環基などが選択される。また短波長化させる場合には電子求引性基が好ましく、例えばフッ素基、シアノ基、ポリフルオロアルキル基などが選択される。
窒素原子上の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基であり、錯体の安定性の観点からアルキル基、アリール基が好ましい。前記置換基同士は連結して縮合環を形成していてもよく、形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
【0072】
一般式(C−2)において、Z21及びZ23が有していてもよい置換基としては前記置換基群Aから選択される置換基が挙げられ、好ましい範囲は前記一般式(1)におけるR及びRと同様である。また置換基の数の好ましい範囲も前記一般式(1)と同様である。
21及びZ23のいずれか1つ以上はフッ素置換基を有することが好ましい。フッ素置換基の数は特に限定されないが、層分離を抑制する観点から一つの環に対し3つ以下であることが好ましい。
22及びZ24が有していてもよい置換基の好ましい範囲はZ21及びZ23と同様である。
【0073】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−3)で表される白金錯体である。
【0074】
【化15】

【0075】
(式中、A301〜A313は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L31は単結合又は二価の連結基を表す。)
【0076】
一般式(C−3)について説明する。L31は一般式(C−2)におけるL21と同義であり、また好ましい範囲も同様である。A301〜A306はそれぞれ独立にC−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。
301〜A306として好ましくはC−Rであり、R同士が互いに連結して環を形成していても良い。A301〜A306がC−Rである場合に、A302、A305のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、フッ素基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基、フェニル基、キシリル基、フッ素基である。該アルキル基、アリール基は更に置換基を有しても良く、該置換基としてはアルキル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基(好ましくはトリフルオロメチル基)であり、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)である。A302、A305がC−Rである場合、該A302、A305のRとしては、素子の耐久性向上の観点からはアリール基が好ましく、発光波長が短いという観点では水素原子、アルキル基、アミノ基、アルコキシ基、フッ素基、シアノ基が好ましい。
301、A303、A304、A306のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基であり、特に好ましくは水素原子であるが、1つ以上がフッ素原子を表すことが好ましい。
307、A308、A309及びA310は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。A307、A308、A309及びA310がC−Rである場合に、Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、フッ素原子、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して縮環構造を形成してもよい。発光波長を短波長側にシフトさせる場合、A308が窒素原子であることが好ましい。
【0077】
上記の如くA307〜A310を選択した場合、2つの炭素原子とA307、A308、A309及びA310から形成される6員環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環が挙げられ、より好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環であり、特に好ましくはベンゼン環、ピリジン環である。前記6員環が、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環(特に好ましくはピリジン環)であることにより、ベンゼン環と比較して、金属−炭素結合を形成する位置に存在する水素原子の酸性度が向上する為、より金属錯体を形成しやすくなる点有利である。
【0078】
311、A312及びA313は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。A311、A312及びA313がC−Rである場合に、Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、フッ素原子、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して、縮環構造を形成してもよい。A311、A312及びA313のうち少なくとも一つは窒素原子であることが好ましく、特にA311が窒素原子であることが好ましい。
【0079】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−4)で表される白金錯体である。
一般式(C−4)
【0080】
【化16】

【0081】
(一般式(C−4)中、A401〜A414はそれぞれ独立にC−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L41は単結合又は二価の連結基を表す。)
【0082】
一般式(C−4)について説明する。
401〜A414はそれぞれ独立にC−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表し、好ましい範囲は前記一般式(C−3)のRと同様であるが、1つ以上がフッ素原子を表すことが好ましい。A401〜A406及びL41は、前記一般式(C−3)におけるA301〜A306及びL31と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0083】
407〜A414としては、A407〜A410とA411〜A414のそれぞれにおいて、窒素原子の数は、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。発光波長を短波長側にシフトさせる場合、A408、A412が窒素原子であることが好ましく、A408とA412が共に窒素原子であることが更に好ましい。
407〜A414がC−Rを表す場合に、A408、A412のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、ポリフルオロアルキル基、アルキル基、アリール基、フッ素基、シアノ基であり、特に好ましくは、水素原子、ポリフルオロアルキル基、フッ素基、シアノ基である。A407、A409、A411、A413のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、ポリフルオロアルキル基、フッ素基、シアノ基であり、特に好ましく水素原子、フッ素基である。A410、A414のRとして好ましくは水素原子、フッ素基であり、より好ましくは水素原子である。A407〜A409、A411〜A413のいずれかがC−Rを表す場合に、R同士が互いに連結して環を形成していても良い。
【0084】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−5)で表される白金錯体である。
【0085】
【化17】

【0086】
(一般式(C−5)中、A501〜A512は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L51は単結合又は二価の連結基を表す。)
【0087】
一般式(C−5)について説明する。A501〜A506及びL51は、前記一般式(C−3)におけるA301〜A306及びL31と同義であり、好ましい範囲も同様である。
501〜A506はそれぞれ独立にC−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表し、好ましい範囲は前記一般式(C−3)のRと同様であるが、1つ以上がフッ素原子を表すことが好ましい。
【0088】
507、A508及びA509とA510、A511及びA512は、それぞれ独立に、一般式(C−3)におけるA311、A312及びA313と同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0089】
一般式(C−1)で表される白金錯体のうち、より好ましい別の態様は下記一般式(C−6)で表される白金錯体である。
【0090】
【化18】

【0091】
(式中、L61は単結合又は二価の連結基を表す。Z61及びZ62はそれぞれ独立に5員又は6員の含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z63はそれぞれ独立にベンゼン環又は5員又は6員の芳香族ヘテロ環を表す。YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。Z61及びZ63はそれぞれ独立に1〜4個の置換基を有していてもよく、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。ただし、Z61及びZ63のうち少なくともいずれかは1つ以上の置換基を有する。Z62は置換基を有していてもよい。X61及びX62はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。)
【0092】
一般式(C−6)について説明する。L61は、前記一般式(C−1)中のLと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0093】
61及びX62はそれぞれ前記一般式(C−1)中のX及びXと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0094】
61、Z62は、それぞれ前記一般式(C−2)におけるZ21、Z22と同義であり、また好ましい範囲も同様である。Z63は、前記一般式(C−2)におけるZ23と同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0095】
YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。非環状配位子とはPtに結合する原子が配位子の状態で環を形成していないものである。Y中のPtに結合する原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、窒素原子、酸素原子がより好ましく、酸素原子が最も好ましい。炭素原子でPtに結合するYとしてはビニル配位子が挙げられる。窒素原子でPtに結合するYとしてはアミノ配位子、イミノ配位子が挙げられる。酸素原子でPtに結合するYとしては、アルコキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、アシルオキシ配位子、シリルオキシ配位子、カルボキシル配位子、リン酸配位子、スルホン酸配位子などが挙げられる。硫黄原子でPtに結合するYとしては、アルキルメルカプト配位子、アリールメルカプト配位子、ヘテロアリールメルカプト配位子、チオカルボン酸配位子などが挙げられる。
Yで表される配位子は、置換基を有していてもよく、置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適宜適用できる。また置換基同士が連結していても良い。
【0096】
Yで表される配位子として好ましくは酸素原子でPtに結合する配位子であり、より好ましくはアシルオキシ配位子、アルキルオキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、シリルオキシ配位子であり、更に好ましくはアシルオキシ配位子である。
【0097】
一般式(C−6)において、Z61及びZ63が有していてもよい置換基としては前記置換基群Aから選択される置換基が挙げられ、好ましい範囲は前記一般式(1)におけるR及びRと同様である。また置換基の数の好ましい範囲も前記一般式(1)と同様である。
61及びZ63のいずれか1つ以上はフッ素置換基を有することが好ましい。フッ素置換基の数は特に限定されないが、層分離を抑制する観点から一つの環に対し3つ以下であることが好ましい。
62が有していてもよい置換基、及びその好ましい範囲はZ61及びZ63と同様である。
【0098】
一般式(C−6)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−7)で表される白金錯体である。
【0099】
【化19】

【0100】
(式中、A701〜A710は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L71は単結合又は二価の連結基を表す。YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。)
【0101】
一般式(C−7)について説明する。L71は、前記一般式(C−6)中のL61と同義であり、また好ましい範囲も同様である。A701〜A710は一般式(C−3)におけるA301〜A310と同義であり、また好ましい範囲も同様である。Yは一般式(C−6)におけるそれと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
701〜A706はそれぞれ独立にC−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表し、好ましい範囲は前記一般式(C−3)のRと同様であるが、1つ以上がフッ素原子を表すことが好ましい。
【0102】
一般式(C−1)で表される白金錯体として具体的には、特開2005−310733の[0143]〜[0152]、[0157]〜[0158]、[0162]〜[0168]に記載の化合物、特開2006−256999の[0065]〜[0083]に記載の化合物、特開2006−93542の[0065]〜[0090]に記載の化合物、特開2007−73891の[0063]〜[0071]に記載の化合物、特開2007−324309の[0079]〜[0083]に記載の化合物、特開2007−96255の[0055]〜[0071]に記載の化合物、特開2006−313796の[0043]〜[0046]が挙げられ、その他以下に例示する白金錯体が挙げられる。
【0103】
一般式(1)におけるMがPtである場合の、金属錯体A及びBの構造、及び金属錯体Bの含有量の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。下記表1〜表10、表21、表22に金属錯体AとBの種類、及び金属錯体Aに対する金属錯体Bの含有量を示す。
【0104】
【化20】

【0105】
【化21】

【0106】
【化22】

【0107】
【化23】

【0108】
【化24】

【0109】
【化25】

【0110】
【化26】

【0111】
【化27】

【0112】
【化28】

【0113】
【化29】

【0114】
【化30】

【0115】
【化31】

【0116】
【化32】

【0117】
【化33】

【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【0120】
【表3】

【0121】
【表4】

【0122】
【表5】

【0123】
【表6】

【0124】
【表7】

【0125】
【表8】

【0126】
【表9】

【0127】
【表10】

【0128】
【表11】

【0129】
【表12】

【0130】
一般式(C−1)で表される白金錯体化合物は、例えば、Journal of Organic Chemistry 53,786,(1988) 、G.R.Newkome et al.)の、789頁、左段53行〜右段7行に記載の方法、790頁、左段18行〜38行に記載の方法、790頁、右段19行〜30行に記載の方法及びその組み合わせ、Chemische Berichte 113,2749(1980)、H.Lexyほか)の、2752頁、26行〜35行に記載の方法等、種々の手法で合成できる。
例えば、配位子、又はその解離体と金属化合物を溶媒(例えば、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキサイド系溶媒、水などが挙げられる)の存在下、若しくは、溶媒非存在下、塩基の存在下(無機、有機の種々の塩基、例えば、ナトリウムメトキシド、t−ブトキシカリウム、トリエチルアミン、炭酸カリウムなどが挙げられる)、若しくは、塩基非存在下、室温以下、若しくは加熱し(通常の加熱以外にもマイクロウェーブで加熱する手法も有効である)得ることができる。
【0131】
一般式(1)におけるMがIrである金属錯体(特定イリジウム錯体とも呼ぶ)について説明する。
【0132】
特定イリジウム錯体は、下記一般式(A1)、一般式(A2)、一般式(A3)、又は一般式(A4)で表される2座配位子を有することが好ましい。なお、本発明における配位子の一般式中、*はイリジウムへの配位部位であって、E1aとイリジウムの結合、及びE1pとイリジウムの結合は、それぞれ独立に共有結合であっても配位結合であってもよい。
【0133】
【化34】

【0134】
(一般式(A1)〜(A4)中、E1a〜E1qはそれぞれ独立に炭素原子又はヘテロ原子を表す。R1a〜R1iはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。一般式(A1)〜(A4)で表される骨格はそれぞれ合計で18π電子構造を有する。ただし、一般式(A1)及び(A3)においては、R1a〜R1iのうち少なくとも一つは置換基を表す。一般式(A2)及び(A4)においては、R1a〜R1hのうち少なくとも一つは置換基を表す。)
【0135】
1a〜E1qは炭素原子又はヘテロ原子から選ばれ、好ましくは炭素原子又は窒素原子から選ばれる。また、E1aとE1pは異なる原子であることが好ましい。また、該骨格は18π電子構造を有する。
なお、本発明における配位子の一般式中、*は金属への配位部位であって、E1aと金属の結合、及びE1qと金属の結合はそれぞれ独立に共有結合であっても、配位結合であっても良い。
【0136】
該2座配位子は他の配位子と結合して3座、4座、5座、6座の配位子を形成しても良い。
【0137】
ヘテロ原子とは、炭素原子又は水素原子以外の原子を指す。ヘテロ原子の例として、例えば酸素、窒素、リン、硫黄、セレン、砒素、塩素、臭素、ケイ素、又はフッ素が挙げられる。
【0138】
1a〜E1eから形成される5員環は、5員のヘテロ環を表す。5員のヘテロ環として、具体的にはオキサゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾールなどが挙げられる。好ましくはイミダゾール又はピラゾールであり、より好ましくはイミダゾールである。これらの5員環は他の環によって縮環されていても良い。
また、E1a〜E1eのうち少なくとも1つは窒素原子を表すことが好ましく、E1a〜E1eのうち2つ、又は3つが窒素原子を表すことが更に好ましく、E1a〜E1eのうち2つが窒素原子を表すことが特に好ましい。E1a〜E1eのうち2つが窒素原子を表す場合、E1a、E1d、及びE1eのうち2つが窒素原子を表すことが好ましく、E1aとE1d、又はE1aとE1eが窒素原子を表すことがより好ましく、E1aとE1dが窒素原子を表すことが更に好ましい。
【0139】
1f〜E1kから形成される環は5員又は6員の芳香族炭化水素環又はヘテロ環であり、好ましくは6員環であり、より好ましくは6員の芳香族炭化水素環である。E1f〜E1kから形成される環の具体例としては、ベンゼン、オキサゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジンなどが挙げられる。好ましくはピリジン又はベンゼンであり、より好ましくはベンゼンである。
【0140】
1l〜E1qから形成される環は、5員又は6員の芳香族炭化水素環又はヘテロ環であり、好ましくは6員環であり、より好ましくは6員の芳香族炭化水素環である。E1l〜E1qから形成される環の具体例としては、ベンゼン、オキサゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジンなどが挙げられる。好ましくはピリジン又はベンゼンであり、より好ましくはベンゼンである。
【0141】
1a〜R1iはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。該置換基は、好ましくは前記置換基群Aから選ばれる基である。ただし、一般式(A1)及び(A3)においては、R1a〜R1iのうち少なくとも一つは置換基を表す。一般式(A2)及び(A4)においては、R1a〜R1hのうち少なくとも一つは置換基を表す。
1a、R1b、R1g、R1h、及びR1iのうち少なくとも一つが置換基を表すことが好ましい。
一般式(A1)及び(A3)において、R1a〜R1iが表す置換基としては前記一般式(1)におけるR及びRが表す置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(A2)及び(A4)において、R1a〜R1hが表す置換基としては前記一般式(1)におけるR及びRが表す置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0142】
1a〜R1iは、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素置換基(好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基)、シアノ基、OR2a、SR2a、NR2a2b、BR2a2b、又はSiR2a2b2cである。R2a〜R2cはそれぞれ独立に炭化水素置換基、又はヘテロ原子で置換された炭化水素置換基であり、R1a〜R1i、R2a〜R2cのうちの2つが互いに結合し、飽和又は不飽和の、芳香族環又は非芳香族環を形成していても良い。窒素原子に結合している場合、R1a〜R1iは存在しない。
【0143】
1a〜R1iは少なくとも1つが母骨格に対し2面角が70度以上であるアリール基であることが好ましく、下記一般式ss−1で表される置換基であることがより好ましく、2,6−ジ置換アリール基であることが更に好ましく、R1bが2,6−ジ置換アリール基であることが最も好ましい。
【0144】
【化35】

【0145】
(一般式ss−1中、Ra、Rb、Rcはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基のいずれかを表す。Rcの数は0〜3個である。)
【0146】
Ra、Rb、Rcが表すアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−オクタデシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、1−アダマンチル、トリフルオロメチルなどが挙げられ、メチル基、又はイソプロピル基が好ましい。
【0147】
Ra、Rb、Rcが表すアリール基としては、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、o−メチルフェニル、m−メチルフェニル、p−メチルフェニル、2,6−キシリル、p−クメニル、メシチル、ナフチル、アントラニル、などが挙げられ、フェニル基、2,6−キシリル、メシチル、が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0148】
Ra、Rbの少なくとも1つはアルキル基又はアリール基から選ばれることが好ましく、Ra、Rbの少なくとも1つはアルキル基から選ばれることがより好ましく、Ra、Rbが共にアルキル基であることが更に好ましく、Ra、Rbが共にメチル基、又はイソプロピル基であることが最も好ましい。
2,6−ジ置換アリール基として好ましくは2,6−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリイソプロピルフェニル基、2,6−ジメチル−4−フェニルフェニル基、2,6−ジメチル−4−(2,6−ジメチルピリジン−4−イル)フェニル基、2,6−ジフェニルフェニル基、2,6−ジフェニル−4−イソプロピルフェニル基、2,4,6−トリフェニルフェニル基、2,6−ジイソプロピル−4−(4−イソプロピルフェニル)フェニル基、2,6−ジイソプロピル−4−(3,5−ジメチルフェニル)フェニル基、2,6−ジイソプロピル−4−(ピリジン−4−イル)フェニル基、又は2,6−ジ−(3,5−ジメチルフェニル)フェニル基である。
【0149】
Rcの数は、好ましくは0又は1である。複数のRcは同一でも異なっても良い。
【0150】
一方で、R1a〜R1iは、少なくとも1つがアルキル基であることが好ましい。特に、R1eがアルキル基であることがより好ましい。アルキル基は4以上の炭素原子から成るベンジル位より離れた部位で分岐しているアルキル基であることが好ましく、メチル基又はネオペンチル基であることが好ましく、ネオペンチル基であることがより好ましい。
1a及びR1bの少なくとも1つは電子供与性基であることが好ましく、R1aが電子供与性置換基であることが好ましく、R1aがメチル基であることがより好ましい。
【0151】
炭化水素置換基とは、1価又は2価で、鎖状、分岐又は環状の置換基であり、炭素原子と水素原子のみからなるものを指す。
1価の炭化水素置換基の例としては、炭素数1〜20のアルキル基;炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、アリール基から選ばれる1つ以上の基によって置換された炭素数1〜20のアルキル基;炭素数3〜8のシクロアルキル基;炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、アリール基から選ばれる1つ以上の基によって置換された炭素数3〜8のシクロアルキル基;炭素数6〜18のアリール基;炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、アリール基から選ばれる1つ以上の基によって置換されたアリール基等が挙げられる。
2価の炭化水素基の例としては、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、1,2−フェニレン基等が挙げられる。
【0152】
一般式(A1)〜(A4)のいずれかで表される2座配位子は、一般式(A1)又は(A3)で表される2座配位子であることが好ましい。
【0153】
一般式(A1)又は(A3)で表される2座配位子は、下記一般式(A1−1)又は(A3−1)で表されるモノアニオン性の2座配位子であることが好ましい。
【0154】
【化36】

【0155】
(一般式(A1−1)及び(A3−1)中、E1a、E1d、E1e〜E1qはそれぞれ独立に炭素原子又はヘテロ原子を表す。R1a〜R1iはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。一般式(A1−1)及び(A3−1)で表される骨格はそれぞれ合計で18π電子構造を有する。ただし、R1a〜R1iのうち少なくとも一つは置換基を表す。)
【0156】
一般式(A1−1)及び(A3−1)中、E1a、E1d、E1e〜E1q及びR1a〜R1iの好ましいものは、一般式(A1)及び(A3)におけるE1a、E1d、E1e〜E1q及びR1a〜R1iと同様である。
【0157】
本発明においては、一般式(A1−1)で表されるモノアニオン性の2座配位子がより好ましい。
【0158】
一般式(A1−1)又は(A3−1)で表される2座配位子は、下記一般式(A1−2)又は(A3−2)で表されるモノアニオン性の2座配位子であることが好ましい。
【0159】
【化37】

【0160】
(一般式(A1−2)及び(A3−2)中、E1f〜E1qはそれぞれ独立に炭素原子又はヘテロ原子を表す。R1a〜R1iはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。一般式(A1−2)及び(A3−2)で表される骨格はそれぞれ合計で18π電子構造を有する。ただし、R1a〜R1iのうち少なくとも一つは置換基を表す。)
【0161】
一般式(A1−2)及び(A3−2)中、E1l〜E1q及びR1a〜R1iの好ましいものは、一般式(A1−1)及び(A3−1)におけるE1l〜E1q及びR1a〜R1iと同様である。
【0162】
一般式(A1−1)及び(A3−1)で表されるモノアニオン性の2座配位子は、一般式(A1−3)又は(A3−3)で表されるモノアニオン性の2座配位子であることがより好ましい。
【0163】
【化38】

【0164】
(一般式(A1−3)及び(A3−3)中、E1f〜E1qはそれぞれ独立に炭素原子又はヘテロ原子を表す。R1a〜R1iはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。一般式(A1−3)及び(A3−3)で表される骨格はそれぞれ合計で18π電子構造を有する。ただし、R1a〜R1iのうち少なくとも一つは置換基を表す。)
【0165】
一般式(A1−3)及び(A3−3)中、E1l〜E1q及びR1a〜R1iの好ましいものは、一般式(A1−1)及び(A2−1)におけるE1l〜E1q及びR1a〜R1iと同様である。
【0166】
一般式(A1−3)及び(A3−3)で表されるモノアニオン性の2座配位子は、一般式(A1−4)又は(A3−4)で表されるモノアニオン性の2座配位子であることがより好ましい。
【0167】
【化39】

【0168】
(一般式(A1−4)及び(A3−4)中、E1f〜E1kはそれぞれ独立に炭素原子又はヘテロ原子を表す。R1a〜R1iはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。一般式(A1−4)及び(A3−4)で表される骨格はそれぞれ合計で18π電子構造を有する。ただし、R1a〜R1iのうち少なくとも一つは置換基を表す。)
【0169】
一般式(A1−4)及び(A3−4)中、E1f〜E1k及びR1a〜R1iの好ましいものは、一般式(A1−1)及び(A2−1)におけるE1l〜E1q及びR1a〜R1iと同様である。
一般式(A1−4)及び(A3−4)で表されるモノアニオン性の2座配位子は、下記一般式(A1−5)で表されるモノアニオン性の2座配位子であることが好ましい。
【0170】
【化40】

【0171】
(一般式(A1−5)中、R1a〜R1iはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。ただし、R1a〜R1iのうち少なくとも一つは置換基を表す。)
【0172】
一般式(A1−5)中、R1a〜R1iの好ましいものは、一般式(A1−3)におけるR1a〜R1iと同様である。
【0173】
一般式(A1−5)で表される2座配位子は下記一般式(A1−6)で表される2座配位子であることが好ましい。
【0174】
【化41】

【0175】
(一般式(A1−6)中、R1a、R1g、R1h、及びR1iはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。Rb及びRcはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。ただし、R1a〜、R1g、R1h、及びR1iのうち少なくとも一つは置換基を表す。)
一般式(A1−6)中、R1a、R1g、R1h、R1iの好ましいものは、一般式(A1−1)におけるR1a、R1g、R1h、R1iと同様である。また、Rb及びRcの好ましいものは、一般式ss−1におけるRb及びRcと同様である。
【0176】
本発明において、特定イリジウム錯体は、下記一般式(A10)で表される燐光性金属錯体であることが好ましい。
【0177】
【化42】

【0178】
(一般式(A10)中、R1a〜R1iはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。X−Yは二座のモノアニオン性の二座配位子を表す。nは1〜3の整数を表す。ただし、R1a〜R1iのうち少なくとも一つは置換基を表す。)
【0179】
一般式(A10)中、R1a〜R1iの好ましいものは、一般式(A1)におけるR1a〜R1iの好ましいものと同様である。
【0180】
(X−Y)は、二座のモノアニオン性副配位子を示す。これらの副配位子は、発光特性に直接寄与するのではなく、分子の発光特性を制御することができると考えられている。「3−n」は0、1又は2でありうる。発光材料において使用される二座のモノアニオン性配位子を、当業界で公知であるものから選択することができる。二座のモノアニオン性配位子は、例えばLamanskyらのPCT出願WO02/15645号パンフレットの89〜90頁に記載されている配位子が挙げられるが、本発明はこれに限定されない。好ましい二座のモノアニオン性副配位子には、アセチルアセトネート(acac)及びピコリネート(pic)、及びこれらの誘導体が含まれる。
【0181】
本発明において、一般式(A1)〜(A1−6)のいずれかで表される主配位子から成る金属錯体は、主配位子若しくはその互変異性体と副配位子若しくはその互変異性体の組み合わせで構成されるか、該金属錯体の配位子の全てが主配位子又はその互変異性体で表される部分構造のみで構成されていてもよい。
【0182】
本発明に記載の効果を好ましく得る観点からは、錯体中の配位子の種類は1〜2種類から構成されることが好ましく、更に好ましくは1種類である。錯体分子内に反応性基を導入する際には合成容易性という観点から配位子が2種類からなることも好ましい。
【0183】
従来公知の金属錯体に用いられる副配位子としては、種々の公知の配位子があるが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer−Verlag社 H.Yersin著 1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社 山本明夫著 1982年発行等に記載の配位子(例えば、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロアリール配位子(例えば、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)が挙げられる。本発明の副配位子として好ましくは、ジケトン類あるいはピコリン酸誘導体である。
【0184】
以下に、副配位子の例を具体的に挙げるが、これらに限定されない。
【0185】
【化43】

【0186】
*は金属への配位位置を表す。
上記Rx、Ry及びRzはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。該置換基としては前記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられる。
好ましくは、Rx、Rzはそれぞれ独立にアルキル基、パーフルオロアルキル基、ハロゲン原子、アリール基のいずれかであり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、フッ素原子、置換されていても良いフェニル基であり、最も好ましくはメチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子、フェニル基である。Ryは好ましくは水素原子、アルキル基、パーフルオロアルキル基、ハロゲン原子、アリール基のいずれかであり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、置換されていても良いフェニル基であり、最も好ましくは水素原子、メチル基のいずれかである。これら副配位子は素子中で電荷を輸送したり励起によって電子が集中する部位ではないと考えられるため、Rx、Ry、Rzは化学的に安定な置換基であれば良く、本発明の効果にも影響を及ぼさない。
上記のなかでも一般式(l−1)、(l−4)、又は(l−5)がより好ましく、一般式(l−1)、又は(l−4)が更に好ましく一般式(l−1)が特に好ましい。
【0187】
本発明においては錯体の安定性、高い発光量子収率の観点から二座のモノアニオン性配位子はアセチルアセトネート(acac)であることが好ましい。
【0188】
【化44】

【0189】
一般式(A10)において、合成の容易さの観点からはnは3である事が好ましいが、nを1〜2として配位子を安価な副配位子に置き換える事もコスト削減の観点からまた好ましい。
nが3である場合、前記一般式(A10)は、下記一般式(A10−1)で表される。
【0190】
【化45】

【0191】
(一般式(A10−1)中、R1a〜R1iはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。ただし、R1a〜R1iのうち少なくとも一つは置換基を表す。)
一般式(A10−1)中、R1a〜R1iの好ましいものは、一般式(A1)におけるR1a〜R1iの好ましいものと同様である。
【0192】
一般式(A1)〜(A4)で表される2座配位子を有する特定イリジウム錯体の具体例を以下に示す。下記表11及び12に金属錯体AとBの種類、及び金属錯体Aに対する金属錯体Bの含有量を示す。
【0193】
【化46】

【0194】
【化47】

【0195】
【表13】

【0196】
【表14】

【0197】
1a〜R1iは一般式(A1)におけるR1a〜R1iと同義であり、好ましいものも同様である。
【0198】
一般式(A1)〜(A4)で表されるモノアニオン性の2座配位子と原子量40以上の金属を含む燐光性金属錯体は、例えば、US2007/0190359やUS2008/0297033に記載の方法など、種々の手法で合成できる。
【0199】
また、特定イリジウム錯体は、下記一般式(P−1)で表される化合物であることも好ましい。
【0200】
【化48】

【0201】
(一般式(P−1)中、R及びRはそれぞれ独立に置換基を表す。R及びRは複数存在する場合はそれぞれのR及びRは同一でも異なっていてもよい。R及びRは複数存在する場合には互いに結合して環を形成してもよい。n1及びn2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表すが、n1とn2の和が0になることはない。Eは炭素原子又は窒素原子を表す。X−Yは二座のモノアニオン性配位子を表す。nは1〜3の整数を表す。)
【0202】
nは2〜3であることが好ましく、2であることがより好ましい。Eは炭素原子であることが錯体の化学的安定性の向上という理由から好ましい。短波長発光させる観点からはEが窒素原子である事もまた好ましい。
、R、n1及びn2は前記一般式(1)におけるR、R、n1及びn2と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0203】
及びRとしては前記置換基群Aから選ばれる置換基が好ましく、ハロゲン原子、炭化水素置換基(好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基)、OR2a、SR2a、NR2a2b、BR2a2b、又はSiR2a2b2cである。R2a〜R2cはそれぞれ独立に炭化水素置換基、又はヘテロ原子で置換された炭化水素置換基であり、R1a〜R1i、R2a〜R2cのうちの2つが互いに結合し、飽和又は不飽和の、芳香族環又は非芳香族環を形成していても良い。
【0204】
、Rがアルキル基を表す場合、更に置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、下記置換基Zを挙げることができる。アルキル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、i−プロピル基、シクロヘキシル基、t−ブチル基等が挙げられる。
置換基Zとしては、ハロゲン原子、−R’、−OR’、−N(R’)、−SR’、−C(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)N(R’)、−CN、−NO、−SO、−SOR’、−SOR’、又は−SOR’が挙げられ、R’はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
【0205】
、Rがシクロアルキル基を表す場合、更に置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基Zを挙げることができる。シクロアルキル基として、好ましくは環員数4〜7のシクロアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数5〜6のシクロアルキル基であり、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
、Rがアルケニル基を表す場合、好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、1−プロペニル、1−イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。
、Rがアルキニル基を表す場合、好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばエチニル、プロパルギル、1−プロピニル、3−ペンチニルなどが挙げられる。
【0206】
、Rがヘテロアルキル基を表す場合、前記アルキル基の少なくとも1つの炭素がO、NR、又はSに置き換わった基を挙げることができる。
【0207】
、Rがアリール基を表す場合、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0208】
、Rがヘテロアリール基を表す場合、好ましくは、炭素数5〜8のヘテロアリール基であり、より好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換のヘテロアリール基であり、例えば、ピリジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、ピロリル基、インドリル基、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、トリアゾリル基、オキサゾリル基、ベンズオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンズイソオキサゾリル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、イミダゾリジニル基、チアゾリニル基、スルホラニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、7ピリドインドリル基などが挙げられる。好ましい例としては、ピリジル基、ピリミジニル基、イミダゾリル基、チエニル基であり、より好ましくは、ピリジル基、ピリミジニル基である。
【0209】
及びRとして好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、シアノ基、ペルフルオロアルキル基、ジアルキルアミノ基、アリール基、ヘテロアリール基、又はハロゲン原子であり、より好ましくはアルキル基、シアノ基、ペルフルオロメチル基、アリール基、又はハロゲン原子であり、更に好ましくは、アルキル基、アリール基、トリフルオロメチル基、又はハロゲン原子であり、特に好ましくは、メチル基、イソブチル基、フェニル基、又はフッ素原子である。
置換基Zとしては、アルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、シアノ基、ジアルキルアミノ基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0210】
一般式(P−1)中、R及びRは複数存在する場合には互いに結合して環を形成してもよい。該形成される環としては縮合4〜7員環が好ましく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基であることがより好ましく、アリール基であることが更に好ましい。
【0211】
(X−Y)は、二座のモノアニオン性配位子を示す。「3−n」は0、1又は2でありうる。発光材料において使用される二座のモノアニオン性配位子を、当業界で公知であるものから選択することができる。二座のモノアニオン性配位子は、例えばLamanskyらのPCT出願WO02/15645号パンフレットの89〜90頁に記載されている配位子が挙げられるが、本発明はこれに限定されない。好ましい二座のモノアニオン性配位子には、アセチルアセトネート(acac)及びピコリネート(pic)、及びこれらの誘導体が含まれる。
【0212】
本発明に記載の効果を好ましく得る観点からは、錯体中の配位子の種類は1〜2種類から構成されることが好ましく、更に好ましくは1種類である。錯体分子内に反応性基を導入する際には合成容易性という観点から配位子が2種類からなることも好ましい。
【0213】
従来公知の金属錯体に用いられる配位子としては、種々の公知の配位子があるが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer−Verlag社 H.Yersin著 1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社 山本明夫著 1982年発行等に記載の配位子(例えば、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロアリール配位子(例えば、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)が挙げられる。(X−Y)として好ましくは、ジケトン類あるいはピコリン酸誘導体である。
配位子の好ましい範囲としては前記一般式(A10)における(X−Y)と同様である。
【0214】
前記一般式(P−1)で表される化合物の好ましい形態の一つは、下記一般式(P−2)で表される化合物である。
【0215】
【化49】

【0216】
(一般式(P−2)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、−NR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。
及びRは隣り合う任意の2つが互いに結合して縮合環を形成しない。
置換基Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、−R’、−OR’、−N(R’)、−SR’又は−CNを表し、R’はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
n1及びn2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表すが、n1とn2の和が0になることはない。
X−Yは二座のモノアニオン性配位子を表す。
nは1〜3の整数を表す。)
【0217】
一般式(P−2)において、R、R、n1、n2、X−Y、nの好ましい範囲は一般式(P−1)と同様である。
【0218】
前記一般式(P−2)で表される化合物は、好ましくは下記一般式(P−3)で表される化合物である。
【0219】
【化50】

【0220】
(一般式(P−3)中、R、R、R、及びRはそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、−NR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。
、及びRは隣り合う任意の2つが互いに結合して縮合環を形成しない。
置換基Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、−R’、−OR’、−N(R’)、−SR’又は−CNを表し、R’はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。置換基を表す。
n1、n2、n3、及びn4はそれぞれ独立に0〜4の整数を表すが、n1とn2とn3とn4の和が0になることはない。
nは1又は2を表す。)
【0221】
一般式(P−3)において、R、R、n1、n2、nの好ましい範囲は一般式(P−1)と同様である。また、R、Rの好ましい範囲はR、Rと同様であり、n3、n4の好ましい範囲はn1、n2と同様である。
【0222】
前記一般式(P−1)で表される化合物の好ましい別の形態は、下記一般式(P−4)で表される化合物である。
【0223】
【化51】

【0224】
(一般式(P−4)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に置換基を表す。R、R、及びRは複数存在する場合はそれぞれのR、R、及びRは同一でも異なっていてもよい。R、R、及びRは複数存在する場合には互いに結合して環を形成してもよい。n1は0〜2、n2は0〜4、n5は0〜4の整数を表すが、n1とn2とn5の和が0になることはない。X−Yは二座のモノアニオン性配位子を表す。nは1〜3の整数を表す。)
【0225】
一般式(P−4)において、R、R、n1、n2、X−Y、nの好ましい範囲は一般式(P−1)と同様である。また、Rの好ましい範囲はR、Rと同様であり、n5の好ましい範囲はn2と同様である。
【0226】
前記一般式(P−1)で表される化合物の好ましい別の形態は、下記一般式(P−5)で表される化合物である。
【0227】
【化52】

【0228】
(一般式(P−5)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に置換基を表す。R、R、及びRは複数存在する場合はそれぞれのR、R、及びRは同一でも異なっていてもよい。R、R、及びRは複数存在する場合には互いに結合して環を形成してもよい。n1は0〜2、n2は0〜4、n5は0〜4の整数を表すが、n1とn2とn5の和が0になることはない。X−Yは二座のモノアニオン性配位子を表す。nは1〜3の整数を表す。)
【0229】
一般式(P−5)において、R、R、n1、n2、X−Y、nの好ましい範囲は一般式(P−1)と同様である。また、Rの好ましい範囲はR、Rと同様であり、n5の好ましい範囲はn2と同様である。
【0230】
一般式(P−1)で表される化合物の具体例を以下に列挙するが、以下に限定されるものではない。下記表13〜表15、表23に金属錯体AとBの種類、及び金属錯体Aに対する金属錯体Bの含有量を示す。
【0231】
【化53】

【0232】
【化54】

【0233】
【化55】

【0234】
【化56】

【0235】
【表15】

【0236】
【表16】

【0237】
【表17】

【0238】
【表18】

【0239】
一般式(P−1)で表される化合物は、種々の公知の合成法を組み合わせて合成することが可能であり、例えば国際公開第2009/073245号、国際公開弟2009/073246号に記載の方法で合成できる。
【0240】
(燐光性金属錯体B)
本発明の有機電界発光素子用材料は、特定燐光性金属錯体である金属錯体Aと金属錯体Bとを少なくとも含み、金属錯体Aに対する金属錯体Bの含有比が0.005質量%以上2質量%以下である。素子の発光特性を変えない観点から、本発明の効果が得られる限りにおいて金属錯体Bはできるだけ少ないことが好ましく、0.005質量%以上1質量%以下が好ましく、少なすぎると混合比を保つのが難しくなるため0.01質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下が最も好ましい。
【0241】
本発明における金属錯体Bは一般式(1)におけるR及びRのうちの少なくとも1つの置換基において、Q又はQに直接結合している原子の1つ以上が、該原子の同族かつ原子量の大きい原子に置き換えられていること以外は金属錯体Aと同一の構造を有する。例えば、金属錯体Aがフッ素原子を有する場合、金属錯体Bは金属錯体Aの該フッ素原子がフッ素原子以外のフッ素原子よりハロゲン原子(例えば塩素原子)に置き換わったものである。前記Q又はQに直接結合している原子としては、周期表の14族〜17族より選ばれることが好ましい。14族の原子としては炭素原子、ケイ素原子が好ましく、炭素原子がより好ましい。15族の原子としては窒素原子、リン原子が好ましく、窒素原子がより好ましい。16族の原子としては酸素原子、硫黄原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。素子にした時の発光波長を維持する観点から17族原子、つまりハロゲン原子がより好ましい。金属錯体Aは前記一般式(1)におけるR及びRの少なくとも1つとしてフッ素原子を有し、前記金属錯体Bは金属錯体Aの有するフッ素原子のうち少なくとも1つがフッ素原子以外のハロゲン原子に置換されていることが好ましく、金属錯体Bが塩素原子で置換されていることが特に好ましい。
【0242】
金属錯体Aに置換基が複数存在する場合、金属錯体Bはこれら全ての置換基でQ及びQに結合している原子が「該原子の同族かつ原子量の大きい原子」に置き換えられていても良いし、一部のみが置き換えられていても良い。
【0243】
本発明の有機電界発光素子用材料が、可視光下の安定性に優れる理由については詳しくはわかっていないが、可視光によって光励起を受けた錯体はそのものが分解するのではなく、固体状態で点在する会合状態の錯体へとエネルギーを移動させ、その部分に光励起エネルギーが集中することで分解が起こると考えられる。本発明のように構造の異なる金属錯体Bを金属錯体Aに対して特定の範囲の含有比で含有させると、固体状態での配列を乱す添加剤として働き、可視光下でのエネルギー負荷が分散するために安定性が向上すると考えられる。金属錯体Bの錯体の混合比率が大きすぎるとこの効果は弱くなると考えられる。この効果は、金属錯体Bが、結晶状態での排除体積が金属錯体Aよりも大きい置換基を持つ場合に顕著に働くため、好ましい。一方で、置換基の排除体積が大きくても、金属錯体Bが金属錯体Aの置換原子と同族でない原子を置換基中に持つ場合、置換基効果の違いにより2種の金属錯体間でのT1値や化学的安定性が大きく異なってくるため、素子内でエネルギーや電荷をトラップして発光効率を低下させたり、駆動時の耐久性悪化の原因になるため上記の効果は得られない。また、高輝度で素子を駆動させた時には一般的にT―T消滅と呼ばれる失活現象が起こり、錯体で形成された3重項エネルギーが失われてしまう。これは近接して励起状態にある錯体が存在する時に2分子衝突によるエネルギー移動が起こって他方が基底状態へと失活するためと考えられているが(金属錯体の光化学、三共出版(株)162ページ)、この時第2の錯体が存在する事によって近接する錯体との相対配置及び距離が変化し、T−T消滅が起こりにくくなるものと推測される。これは分子間相互作用を顕著に小さくするフッ素原子を他のハロゲンに置換した場合に最良の効果が見られる。
【0244】
本発明は、前記特定燐光性金属錯体である燐光性金属錯体Aと燐光性金属錯体Bとを少なくとも含む組成物にも関する。
本発明の組成物を用いることで、可視光下で安定に保存させることができ、また高輝度で素子を駆動させたときの効率に優れる有機電界発光素子用材料を得ることができる。
本発明の組成物には更に他の成分を添加することもできる。
【0245】
本発明の組成物において、金属錯体A及びBの合計の含有量は、組成物中の全固形分に対して、1質量%以上30質量%以下の範囲が好ましく、5質量%以上20質量%以下の範囲がより好ましい。
【0246】
〔有機電界発光素子〕
本発明の有機電界発光素子について説明する。
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、該有機層のうち少なくとも一層に前記一般式(A)で表されるモノアニオン性の2座配位子と原子量40以上の金属を含む燐光性金属錯体を含む。
【0247】
本発明の有機電界発光素子は、好ましくは発光層に前記特定燐光性金属錯体である金属錯体A及びBを含有する。
【0248】
本発明の有機電界発光素子において、発光層は有機層であるが、更に複数の有機層を有していてもよい。
発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明若しくは半透明であることが好ましい。
図1は、本発明に係る有機電界発光素子の構成の一例を示している。図1に示される本発明に係る有機電界発光素子10は、支持基板2上において、陽極3と陰極9との間に発光層6が挟まれている。具体的には、陽極3と陰極9との間に正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、正孔ブロック層7、及び電子輸送層8がこの順に積層されている。
【0249】
<有機層の構成>
前記有機層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記透明電極上に又は前記背面電極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機層は、前記透明電極又は前記背面電極上の前面又は一面に形成される。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0250】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
有機電界発光素子の素子構成、基板、陰極及び陽極については、例えば、特開2008−270736号公報に詳述されており、該公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0251】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0252】
<陽極>
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0253】
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0254】
基板、陽極、陰極については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0070〕〜〔0089〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0255】
<有機層>
本発明における有機層について説明する。
【0256】
−有機層の形成−
本発明の有機電界発光素子において、各有機層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、スピンコート法、バーコート法、インクジェット法、スプレー法等の溶液塗布プロセスによっても好適に形成することができる。液塗布プロセスを使用することで、生産性の向上、有機EL素子の大面積化などにつながることが考えられる。
【0257】
乾式法としては蒸着法、スパッタ法等が使用でき、湿式法としてはディッピング法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が使用可能である。これらの成膜法は有機層の材料に応じて適宜選択できる。湿式法により製膜した場合は製膜した後に乾燥してもよい。乾燥は塗布層が損傷しないように温度、圧力等の条件を選択して行う。
【0258】
上記湿式製膜法(塗布プロセス)で用いる塗布液は通常、有機層の材料と、それを溶解又は分散するための溶剤からなる。溶剤は特に限定されず、有機層に用いる材料に応じて選択すればよい。
【0259】
有機電界発光素子用材料を塗布液として用いる場合、塗布液中の含有量は、全固形分を基準として、0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.3〜40質量%、更に好ましくは0.3〜30質量%である。粘度は、一般的には1〜30mPa・s、より好ましくは1.5〜20mPa・s、更に好ましくは1.5〜15mPa・sである。
【0260】
塗布液は、有機電界発光素子用材料を所定の有機溶媒に溶解し、フィルター濾過した後、所定の支持体又は層上に塗布して用いることが好ましい。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは2.0μm以下、より好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下のポリテトラフロロエチレン(PTFE)製、ポリエチレン製、又はナイロン製のものが好ましい。
【0261】
溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、アミド系溶媒等の公知の有機溶媒を挙げることができる。
【0262】
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、クメンエチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、メチルイソプロピルベンゼン、等が挙げられ、トルエン、キシレン、クメン、トリメチルベンゼンがより好ましい。芳香族炭化水素系溶媒の比誘電率は通常、3以下である。
【0263】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等が挙げられ、ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールがより好ましい。アルコール系溶媒の比誘電率は通常、10〜40である。
【0264】
ケトン系溶媒としては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等が挙げられ、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレンカーボネートが好ましい。ケトン系溶媒の比誘電率は通常、10〜90である。
【0265】
脂肪族炭化水素系溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等が挙げられ、オクタン、デカンが好ましい。脂肪族炭化水素系溶媒の比誘電率は通常、1.5〜2.0である。
【0266】
アミド系溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチル正孔ムアミド、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられ、N−メチル−2−ピロリドン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましい。アミド系溶媒の比誘電率は通常、30〜40である。
【0267】
上記溶剤を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0268】
また、芳香族炭化水素系溶媒(以下、“第一の溶媒”ともいう)と、第一の溶媒より比誘電率の高い第二の溶媒とを混合して使用してもよい。
第二の溶媒としては、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒を使用することが好ましく、アルコール系溶媒を使用することがより好ましい。
第一の溶媒と第二の溶媒との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜70/30である。第一の溶媒を60質量%以上含有する混合溶媒が好ましい。
【0269】
有機層形成用塗布液に、重合性基を有する化合物を含有し、該重合性基を有する化合物の重合反応により有機層を形成するポリマーを形成する場合には、有機膜の塗布後、加熱又は光照射することにより、重合反応が進行し、ポリマーを形成することができる。
塗布後の加熱温度及び時間は、重合反応が進行する限り特に限定されないが、加熱温度は一般的に100℃〜200℃であり、好ましくは120℃〜160℃がより好ましい。加熱時間は一般的に1分〜120分であり、1分〜60分が好ましく、より好ましくは1分〜30分である。
【0270】
また、UV照射による重合反応、白金触媒による重合反応、塩化鉄などの鉄触媒による重合反応等が挙げられる。これら重合方法は、加熱による重合方法と併用してもよい。
【0271】
(発光層)
<発光材料>
本発明における発光層には本発明の前記特定燐光性金属錯体である金属錯体A及びBを含む有機電界発光素子用材料を含むことが好ましい。また、発光層には発光材料を含むことが好ましく、発光材料は本発明の有機電界発光素子用材料であることが好ましい。
【0272】
発光層中の発光材料は、発光層中に一般的に発光層を形成する全化合物の質量に対して、0.1質量%〜50質量%含有されることが好ましく、耐久性、外部量子効率の観点から1質量%〜50質量%含有されることがより好ましく、2質量%〜40質量%含有されることが更に好ましい。
発光層中の特定燐光性金属錯体A及びBは、発光層中に耐久性、発光色相の観点から合計で1質量%〜30質量%含有されることが好ましく、5質量%〜20質量%含有されることがより好ましい。
【0273】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、2nm〜500nmであるのが好ましく、中でも、外部量子効率の観点で、3nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0274】
本発明の素子における発光層は、発光材料のみで構成されていても良く、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でも良い。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、ドーパントは一種であっても二種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は一種であっても二種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。更に、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。
また、発光層は一層であっても二層以上の多層であってもよい。また、それぞれの発光層が異なる発光色で発光してもよい。
【0275】
<ホスト材料>
本発明に用いられるホスト材料として、以下の化合物を含有していても良い。例えば、ピロール、インドール、カルバゾール(例えばCBP(4,4’−ジ(9−カルバゾイル)ビフェニル))、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体及びそれらの誘導体(置換基や縮環を有していてもよい)等を挙げることができる。
【0276】
本発明における発光層において、前記ホスト材料三重項最低励起エネルギー(Tエネルギー)が、前記燐光発光材料のTエネルギーより高いことが色純度、発光効率、駆動耐久性の点で好ましい。
【0277】
また、本発明におけるホスト化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、発光効率、駆動電圧の観点から、発光層を形成する全化合物質量に対して15質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0278】
前記発光層は、前記特定燐光性金属錯体である金属錯体A及びBと、更にホスト材料を含む事が好ましい。ホスト材料としては、正孔輸送性ホスト材料であっても、電子輸送性ホスト材料であってもよいが、正孔輸送性ホスト材料を用いることができる。
本発明においては、発光層に前記特定燐光性金属錯体である金属錯体A及びBと、更に一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物の少なくとも1つ以上を含むことが好ましい。
【0279】
一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物は発光層中に30〜99質量%含まれることが好ましく、40〜97質量%含まれることが好ましく、50〜95質量%含まれることが特に好ましい。また、一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物を、複数の有機層に用いる場合はそれぞれの層において、上記の範囲で含有することが好ましい。
【0280】
一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物は、いずれかの有機層に、一種類のみを含有していてもよく、複数の一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物を任意の割合で組み合わせて含有していてもよい。
【0281】
前記ホスト材料は下記一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0282】
【化57】

【0283】
(一般式(4−1)及び(4−2)中、d、eは0〜3の整数を表し、少なくとも一方は1以上である。fは1〜4の整数を表す。Rは置換基を表し、Rは複数存在する場合、Rは互いに異なっていても同じでも良い。また、Rの少なくとも1つは下記一般式(5)で表されるカルバゾール基を表す。)
【0284】
【化58】

【0285】
(一般式(5)中、Rはそれぞれ独立に置換基を表す。gは0〜8の整数を表す。)
【0286】
はそれぞれ独立に置換基を表し、具体的にはハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、又は一般式(5)で表される置換基である。Rが一般式(5)を表さない場合、好ましくは炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下の置換又は無置換のアリール基であり、更に好ましくは炭素数6以下のアルキル基である。
【0287】
はそれぞれ独立に置換基を表し、具体的にはハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基であり、好ましくは炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下の置換又は無置換のアリール基であり、更に好ましくは炭素数6以下のアルキル基である。
gは0〜8の整数を表し、電荷輸送を担うカルバゾール骨格を遮蔽しすぎない観点から0〜4が好ましい。また、合成容易さの観点から、カルバゾールが置換基を有する場合、窒素原子に対し、対称になるように置換基を持つものが好ましい。
【0288】
一般式(4−1)において、電荷輸送能を保持する観点で、dとeの和は2以上である事が好ましい。また、他方のベンゼン環に対しRがメタで置換することが好ましい。その理由として、オルト置換では隣り合う置換基の立体障害が大きいため結合が開裂しやすく、耐久性が低くなる。また、パラ置換では分子形状が剛直な棒状へと近づき、結晶化しやすくなるため高温条件での素子劣化が起こりやすくなる。具体的には以下の構造で表される化合物である事が好ましい。
【0289】
【化59】

【0290】
上記式においてRはそれぞれ独立に置換基を表す。gは0〜8の整数を表す。
【0291】
一般式4−2において、電荷輸送能を保持する観点で、fは2以上である事が好ましい。fが2又は3の場合、同様の観点からRが互いにメタで置換することが好ましい。具体的には以下の構造で表される化合物である事が好ましい。
【化60】

【0292】
上記式においてRはそれぞれ独立に置換基を表す。gは0〜8の整数を表す。
【0293】
一般式(4−1)及び(4−2)が水素原子を有する場合、水素の同位体(重水素原子等)も含む。この場合化合物中の全ての水素原子が水素同位体に置き換わっていてもよく、また一部が水素同位体を含む化合物である混合物でもよい。好ましくは一般式(5)におけるRが重水素によって置換されたものであり、特に好ましくは以下の構造が挙げられる。
【0294】
【化61】

【0295】
更に置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいることを表す。
【0296】
一般式(4−1)及び(4−2)で表される化合物は、種々の公知の合成法を組み合わせて合成することが可能である。 最も一般的には、カルバゾール化合物に関してはアリールヒドラジンとシクロヘキサン誘導体との縮合体のアザーコープ転位反応の後、脱水素芳香族化による合成(L.F.Tieze,Th.Eicher著、高野、小笠原訳、精密有機合成、339頁(南江堂刊))が挙げられる。また、得られたカルバゾール化合物とハロゲン化アリール化合物のパラジウム触媒を用いるカップリング反応に関してはテトラヘドロン・レターズ39巻617頁(1998年)、同39巻2367頁(1998年)及び同40巻6393頁(1999年)等に記載の方法が挙げられる。反応温度、反応時間については特に限定されることはなく、前記文献に記載の条件が適用できる。また、mCPなどのいくつかの化合物は市販されているものを好適に用いる事ができる。
【0297】
本発明の一般式(4−1)及び(4−2)で表される化合物は、真空蒸着プロセスで薄層を形成することが好ましいが、溶液塗布などのウェットプロセスも好適に用いることが出来る。化合物の分子量は、蒸着適性や溶解性の観点から2000以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、800以下であることが特に好ましい。また蒸着適性の観点では、分子量が小さすぎると蒸気圧が小さくなり、気相から固相への変化がおきず、有機層を形成することが困難となるので、250以上が好ましく、300以上が特に好ましい。
【0298】
一般式(4−1)及び(4−2)は、以下に示す構造若しくはその水素原子が1つ以上重水素原子で置換された化合物であることが好ましい。
【0299】
【化62】

【0300】
上記式においてR及びRはそれぞれ独立に置換基を表す。
【0301】
以下に、本発明における一般式(4−1)及び(4−2)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0302】
【化63】

【0303】
【化64】

【0304】
【化65】

【0305】
【化66】

【0306】
【化67】

【0307】
【化68】

【0308】
(蛍光発光材料)
本発明に使用できる蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の錯体やピロメテン誘導体の錯体に代表される各種錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0309】
(燐光発光材料)
本発明に使用できる燐光発光材料としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられ、中でも、更に好ましい発光性ドーパントとしては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、及びCe錯体が挙げられる。特に好ましくは、Ir錯体、Pt錯体、又はRe錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が好ましい。更に、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、3座以上の多座配位子を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が特に好ましい。
【0310】
燐光発光材料の含有量は、発光層中に、発光層の総質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下の範囲が好ましく、0.2質量%以上50質量%以下の範囲がより好ましく、0.3質量%以上40質量%以下の範囲が更に好ましく、5質量%以上30質量%以下の範囲が最も好ましい。
【0311】
本発明に用いることのできる燐光発光材料(特定燐光性金属錯体及び/又は併用する燐光発光材料)の含有量は、発光層の総質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下の範囲が好ましく、1質量%以上40質量%以下の範囲がより好ましく、5質量%以上30質量%以下の範囲が最も好ましい。特に5質量%以上30質量%以下の範囲では、その有機電界発光素子の発光の色度は、燐光発光材料の添加濃度依存性が小さい。
本発明の有機電界発光素子は、上記特定燐光性金属錯体の少なくとも一種を該発光層の総質量に対して5〜30質量%含有することが最も好ましい。
【0312】
(炭化水素化合物)
有機電界発光素子は、有機層のいずれかの層が更に、炭化水素化合物、及びその誘導体を含むことが好ましく、発光層が炭化水素化合物を含むことがより好ましい。
また、炭化水素化合物は下記一般式(VI)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(VI)で表される化合物を発光材料とともに適切に用いることにより、材料分子間の相互作用を適切に制御し、隣接分子間のエネルギーギャップ相互作用を均一にすることで駆動電圧を更に低下させることが可能となる。
また、有機電界発光素子において用いられる、一般式(VI)で表される化合物は、化学的な安定性に優れ、素子駆動中における材料の分解等の変質が少なく、当該材料の分解物による、有機電界発光素子の効率低下や素子寿命の低下を防ぐことが出来る。
一般式(VI)で表される化合物について説明する。
【0313】
【化69】

【0314】
一般式(VI)中、R、R、R、R10、X〜X15は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。
【0315】
一般式(VI)の、R、R、R、R10、X〜X15で表されるアルキル基は、アダマンタン構造、アリール構造で置換されていてもよく、炭素数1〜70が好ましく、炭素数1〜50がより好ましく、炭素数1〜30が更に好ましく、炭素数1〜10がより更に好ましく、炭素数1〜6が特に好ましく、炭素数2〜6の直鎖のアルキル基が最も好ましい。
【0316】
一般式(VI)の、R、R、R、R10、X〜X15で表されるアルキル基としては、例えば、n−C50101基、n−C3061基、3−(3,5,7−トリフェニルアダマンタン−1−イル)プロピル基(炭素数31)、トリチル基(炭素数19)、3−(アダマンタン−1−イル)プロピル基(炭素数13)、9−デカリル基(炭素数10)、ベンジル基(炭素数7)、シクロヘキシル基(炭素数6)、n−ヘキシル基(炭素数6)、n−ペンチル基(炭素数5)、n−ブチル基(炭素数4)、n−プロピル基(炭素数3)、シクロプロピル基(炭素数3)、エチル基(炭素数2)、メチル基(炭素数1)などが挙げられる。
【0317】
一般式(VI)の、R、R、R、R10、X〜X15で表されるアリール基は、アダマンタン構造、アルキル構造で置換されていてもよく、炭素数6〜30が好ましく、炭素数6〜20がより好ましく、炭素数6〜15が更に好ましく、炭素数6〜10が特に好ましく、炭素数6が最も好ましい。
【0318】
一般式(VI)の、R、R、R、R10、X〜X15で表されるアリール基としては、例えば、1−ピレニル基(炭素数16)、9−アントラセニル基(炭素数14)、1−ナフチル基(炭素数10)、2−ナフチル基(炭素数10)、p−t−ブチルフェニル基(炭素数10)、2−m−キシリル基(炭素数8)、5−m−キシリル基(炭素数8)、o−トリル基(炭素数7)、m−トリル基(炭素数7)、p−トリル基(炭素数7)、フェニル基(炭素数6)などが挙げられる。
【0319】
一般式(VI)のR、R、R、R10は、水素原子であっても、アルキル基であっても、アリール基であってもよいが、前述の高いガラス転移温度が好ましい観点から、少なくともひとつはアリール基であることが好ましく、少なくともふたつはアリール基であることがより好ましく、3ないし4つがアリール基であることが特に好ましい。
【0320】
一般式(VI)の、X〜X15は、水素原子であっても、アルキル基であっても、アリール基であってもよいが、水素原子、又はアリール基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0321】
本発明における一般式(VI)で表される化合物の分子量は、有機電界発光素子を真空蒸着プロセスや溶液塗布プロセスを用いて作成するので、蒸着適性や溶解性の観点から、2000以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることが特に好ましい。また、蒸着適性の観点では、分子量が小さすぎると蒸気圧が小さくなり、気相から固相への変化がおきず、有機層を形成することが困難となるので、250以上が好ましく、350以上がより好ましく、400以上が特に好ましい。
【0322】
一般式(VI)で表される化合物は、室温(25℃)において固体であることが好ましく、室温(25℃)から40℃の範囲において固体であることがより好ましく、室温(25℃)から60℃の範囲において固体であることが特に好ましい。
室温(25℃)において固体を形成しない一般式(VI)で表される化合物を用いる場合は、他の材料と組み合わせることにより、常温で固相を形成させることができる。
【0323】
一般式(VI)で表される化合物は、その用途が限定されることはなく、有機層内のいずれの層に含有されてもよい。本発明における一般式(VI)で表される化合物の導入層としては、後述の発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電荷ブロック層のいずれか、若しくは複数に含有されるのが好ましく、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層のいずれか、若しくは複数に含有されるのがより好ましく、発光層、正孔注入層、正孔輸送層のいずれか、若しくは複数に含有されるのが特に好ましく、発光層に含むことが最も好ましい。
【0324】
一般式(VI)で表される化合物を、有機層中で用いる場合は、一般式(VI)で表される化合物の含量は、電荷輸送性を抑制しない程度の量に制限して用いる必要があり、一般式(VI)で表される化合物は0.1〜70質量%含まれることが好ましく、0.1〜30質量%含まれることがより好ましく、0.1〜25質量%含まれることが特に好ましい。
また、一般式(VI)で表される化合物を、複数の有機層に用いる場合はそれぞれの層において、上記の範囲で含有することが好ましい。
【0325】
一般式(VI)で表される化合物は、いずれかの有機層に、一種類のみを含有していてもよく、複数の一般式(VI)で表される化合物を任意の割合で組み合わせて含有していてもよい。
【0326】
本発明で用いることができる炭化水素化合物、及びその誘導体の具体例を以下に列挙するが、以下に限定されるものではない。
【0327】
【化70】

【0328】
【化71】

【0329】
【化72】

【0330】
【化73】

【0331】
一般式(VI)で表される化合物は、アダマンタン、若しくは、ハロゲン化アダマンタンと、ハロゲン化アルキル若しくは、アルキルマグネシウムハライド(グリニヤー試薬)を適当に組み合わせることによって合成できる。例えば、インジウムを用いて、ハロゲン化アダマンタンと、ハロゲン化アルキルをカップリングすることができる(参考文献1)。又はロゲン化アルキルをアルキル銅試薬に変換し、芳香族化合物のグリニヤー試薬とカップリングすることもできる(参考文献2)。又はロゲン化アルキルを、適当なアリールホウ酸とパラジウム触媒を用いてカップリングすることもできる(参考文献3)。
参考文献1:Tetrahedron Lett.39,1998,9557−9558.
参考文献2:Tetrahedron Lett.39,1998,2095−2096.
参考文献3:J.Am.Chem.Soc.124,2002,13662−13663.
【0332】
アリール基を有するアダマンタン骨格は、アダマンタン、若しくは、ハロゲン化アダマンタンと、対応するアレーンやアリールハライドを適当に組み合わせることにより合成できる。
【0333】
なお、上記に示した製造方法において、定義された置換基が、ある合成方法の条件下で変化するか、又は該方法を実施するのに不適切な場合、官能基の保護、脱保護(例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective
Groups in Organic Synthesis)、グリーン(T. W.
Greene)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley&Sons Inc.)(1981年)等)等の手段により容易に製造が可能である。また、必要に応じて適宜置換基導入等の反応工程の順序を変化させることも可能である。
【0334】
〔芳香族炭化水素化合物〕
本発明の有機電界発光素子は、有機層に芳香族炭化水素化合物を含有することが好ましい。
芳香族炭化水素化合物は発光層と陰極の間の発光層に隣接する有機層に含有されることがより好ましいが、その用途が限定されることはなく、有機層内のいずれの層に更に含有されてもよい。本発明にかかる芳香族炭化水素化合物の導入層としては、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電荷ブロック層のいずれか、若しくは複数に含有することができる。
芳香族炭化水素化合物が含有される、発光層と陰極の間の発光層に隣接する有機層は電荷ブロック層又は電子輸送層であることが好ましく、電荷ブロック層であることがより好ましい。
芳香族炭化水素化合物を発光層に隣接する層に含有することで、素子の効率と耐久性が向上する。発光層が励起されると励起子が発光層と隣接層の界面に偏り、隣接層を破壊する現象が起こるが、芳香族炭化水素化合物は耐久性の高い構造を有しているため、励起子により破壊されにくいため、上記のような効果が得られると考えられる。
【0335】
芳香族炭化水素化合物は合成容易さの観点から炭素原子と水素原子のみからなることが好ましい。
芳香族炭化水素化合物を発光層以外の層に含有させる場合は、70〜100質量%含まれることが好ましく、85〜100質量%含まれることがより好ましい。芳香族炭化水素化合物を発光層に含有させる場合は、発光層の全質量に対して0.1〜99質量%含ませることが好ましく、1〜95質量%含ませることがより好ましく、10〜95質量%含ませることが更に好ましい。
【0336】
芳香族炭化水素化合物としては、下記一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物(以下単に「炭化水素化合物」と称する場合がある)が好ましい。
一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物は炭素原子と水素原子のみからなり、化学的安定性の点で優れるため、駆動耐久性が高く、高輝度駆動時の各種変化がおきにくいという効果を奏する。
【0337】
一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物は、分子量が400〜1200の範囲であることが好ましく、より好ましくは400〜1000であり、更に好ましくは400〜800である。分子量が400以上であれば良質なアモルファス薄膜が形成でき、分子量が1200以下であると溶媒への溶解性や昇華及び蒸着適正の面で好ましい。
【0338】
一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物はその用途が限定されることはなく、発光層に隣接する有機層だけでなく有機層内のいずれの層に更に含有されてもよい。
【0339】
【化74】

【0340】
(一般式(Tp−1)において、R12〜R23はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基で置換されていてもよいフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基を表す。ただし、R12〜R23が全て水素原子になることはない。)
【0341】
12〜R23が表すアルキル基としては、置換基若しくは無置換の、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、又はtert−ブチル基である。
【0342】
12〜R23として好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基(これらは更にアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基で置換されていてもよい)で置換されていてもよい、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基であることが更に好ましい。
フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基(これらは更にアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基で置換されていてもよい)で置換されていてもよい、ベンゼン環であることが特に好ましい。
【0343】
一般式(Tp−1)におけるアリール環の総数は2〜8個であることが好ましく、3〜5個であることが好ましい。この範囲とすることで、良質なアモルファス薄膜が形成でき、溶媒への溶解性や昇華及び蒸着適正が良好になる。
【0344】
12〜R23は、それぞれ独立に、総炭素数が20〜50であることが好ましく、総炭素数が20〜36であることがより好ましい。この範囲とすることで、良質なアモルファス薄膜が形成でき、溶媒への溶解性や昇華及び蒸着適正が良好になる。
【0345】
本発明の一の態様において、前記一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物は下記一般式(Tp−2)で表される炭化水素化合物であることが好ましい。
【0346】
【化75】

【0347】
(一般式(Tp−2)中、複数のArは同一であり、アルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、又はトリフェニレニル基で置換されていてもよいフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、又はトリフェニレニル基を表す。)
【0348】
Arが表すアルキル基及びアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、又はトリフェニレニル基で置換されていてもよいフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、又はトリフェニレニル基としては、R12〜R23で挙げたものと同義であり、好ましいものも同様である。
【0349】
本発明の他の態様において、前記一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物は、下記一般式(Tp−3)で表される炭化水素化合物であることが好ましい。
【0350】
【化76】

【0351】
(一般式(Tp−3)中、Lはアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、又はトリフェニレニル基で置換されていてもよいフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基又はこれらを組み合わせて成るn価の連結基を表す。nは1〜6の整数を表す。)
【0352】
Lが表すn価の連結基を形成するアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、又はトリフェニレニル基としては、R12〜R23で挙げたものと同義である。
Lとして好ましくは、アルキル基又はベンゼン環で置換されていてもよいベンゼン環、フルオレン環、又はこれらを組み合わせて成るn価の連結基である。
以下にLの好ましい具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。なお具体例中*でトリフェニレン環と結合する。
【0353】
【化77】

【0354】
nは1〜5であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。
【0355】
本発明の他の態様において、前記一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物は、下記一般式(Tp−4)で表される炭化水素化合物であることが好ましい。
【0356】
【化78】

【0357】
(一般式(Tp−4)において、複数存在する場合のArは同一であり、Arはアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基で置換、又はこれらを組み合わせてなる基を表す。p、及びqはそれぞれ独立に0又は1を表すが、pとqが同時に0になることはない。p、及びqが0を表す場合、Arは水素原子を表す。)
【0358】
Arとして好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基を組み合わせてなる基であり、より好ましくは、メチル基、t−ブチル基、フェニル基、トリフェニレニル基を組み合わせてなる基である。
Arは、メタ位が炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基、又はこれらを組み合わせてなる基で置換されたベンゼン環であることが特に好ましい。
【0359】
本発明にかかる炭化水素化合物を有機電界発光素子の発光層のホスト材料や発光層に隣接する層の電荷輸送材料として使用する場合、発光材料より薄膜状態でのエネルギーギャップ(発光材料が燐光発光材料の場合には、薄膜状態での最低励起三重項(T)エネルギー)が大きいと、発光がクエンチしてしまうことを防ぎ、効率向上に有利である。一方、化合物の化学的安定性の観点からは、エネルギーギャップ及びTエネルギーは大き過ぎない方が好ましい。一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物の膜状態でのTエネルギーは、52kcal/mol以上80kcal/mol以下であることが好ましく、55kcal/mol以上68kcal/mol)以下であることがより好ましく、58kcal/mol以上63kcal/mol以下であることが更に好ましい。特に、発光材料として燐光発光材料を用いる場合には、Tエネルギーが上記範囲となることが好ましい。
【0360】
エネルギーは、材料の薄膜の燐光発光スペクトルを測定し、その短波長端から求めることができる。例えば、洗浄した石英ガラス基板上に、材料を真空蒸着法により約50nmの膜厚に成膜し、薄膜の燐光発光スペクトルを液体窒素温度下でF−7000日立分光蛍光光度計(日立ハイテクノロジーズ)を用いて測定する。得られた発光スペクトルの短波長側の立ち上がり波長をエネルギー単位に換算することによりTエネルギーを求めることができる。
【0361】
以下に、本発明にかかる芳香族炭化水素化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0362】
【化79】

【0363】
【化80】

【0364】
【化81】

【0365】
【化82】

【0366】
【化83】

【0367】
【化84】

【0368】
【化85】

【0369】
【化86】

【0370】
【化87】

【0371】
上記本発明にかかる芳香族炭化水素化合物として例示した化合物は、国際公開第05/013388号パンフレット、国際公開第06/130598号パンフレット、国際公開第09/021107号パンフレット、US2009/0009065、国際公開第09/008311号パンフレット及び国際公開第04/018587号パンフレットに記載の方法で合成できる。
合成後、カラムクロマトグラフィー、再結晶等による精製を行った後、昇華精製により精製することが好ましい。昇華精製により、有機不純物を分離できるだけでなく、無機塩や残留溶媒等を効果的に取り除くことができる。
【0372】
本発明の発光素子において、芳香族炭化水素化合物は発光層と陰極の間の発光層に隣接する有機層に含有されるが、その用途が限定されることはなく、有機層内のいずれの層に更に含有されてもよい。芳香族炭化水素化合物の導入層としては、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電荷ブロック層のいずれか、若しくは複数に含有することができる。
芳香族炭化水素化合物が含有される発光層と陰極の間の発光層に隣接する有機層は電荷ブロック層又は電子輸送層であることが好ましく、電子輸送層であることがより好ましい。
【0373】
有機電界発光素子を高温駆動時や素子駆動中の発熱に対して安定して動作させる観点から、本発明にかかる芳香族炭化水素化合物のガラス転移温度(Tg)は60℃以上400℃以下であることが好ましく、65℃以上300℃以下であることがより好ましく、80℃以上180℃以下であることが更に好ましい。
【0374】
本発明の有機電界発光素子は電極が陽極を含み、発光層と該陽極の間に有機層を有することが好ましい。発光層に隣接する有機層は、溶液における最低励起三重項(T)エネルギーは58kcal/mol以上である化合物を含むことが好ましく、62kcal/mol〜75kcal/molである化合物を含むことがより好ましい。最低励起三重項(T)エネルギーが58kcal/mol以上である化合物としてはカルバゾール化合物を挙げることができる。
【0375】
カルバゾール化合物は下記一般式(a)で表されるカルバゾール化合物であることが好ましい。
【0376】
【化88】

【0377】
(一般式(a)中、Rは該骨格の水素原子に置換し得る置換基を表し、Rは複数存在する場合はそれぞれ同じでも異なってもよい。nは0〜8の整数を表す。)
【0378】
一般式(a)で表される化合物を、電荷輸送層中で用いる場合は、一般式(a)で表される化合物は50〜100質量%含まれることが好ましく、80〜100質量%含まれることが好ましく、95〜100質量%含まれることが特に好ましい。
また、一般式(a)で表される化合物を、複数の有機層に用いる場合はそれぞれの層において、上記の範囲で含有することが好ましい。
【0379】
一般式(a)で表される化合物は、いずれかの有機層に、一種類のみを含有していてもよく、複数の一般式(a)で表される化合物を任意の割合で組み合わせて含有していてもよい。
【0380】
一般式(a)で表される化合物を含む電荷輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、3nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、該電荷輸送層は発光層に接して設けられている事が好ましい。
該電荷輸送層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0381】
Rが表す置換基としては具体的にはハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、芳香族複素環基が挙げられ、炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下の置換又は無置換のアリール基が好ましく、炭素数6以下のアルキル基である事がより好ましい。
nは0〜8の整数を表し、0〜4が好ましく、0〜2がより好ましい。
【0382】
一般式(a)を構成する水素原子は、水素の同位体(重水素原子等)も含む。この場合化合物中の全ての水素原子が水素同位体に置き換わっていてもよく、また一部が水素同位体を含む化合物である混合物でもよい。
【0383】
一般式(a)で表される化合物は、種々の公知の合成法を組み合わせて合成することが可能である。最も一般的には、カルバゾール化合物に関してはアリールヒドラジンとシクロヘキサン誘導体との縮合体のアザーコープ転位反応の後、脱水素芳香族化による合成(L.F.Tieze,Th.Eicher著、高野、小笠原訳、精密有機合成、339頁(南江堂刊))が挙げられる。また、得られたカルバゾール化合物とハロゲン化アリール化合物のパラジウム触媒を用いるカップリング反応に関してはテトラヘドロン・レターズ39巻617頁(1998年)、同39巻2367頁(1998年)及び同40巻6393頁(1999年)等に記載の方法が挙げられる。反応温度、反応時間については特に限定されることはなく、前記文献に記載の条件が適用できる。
【0384】
一般式(a)で表される化合物は、真空蒸着プロセスで薄層を形成することが好ましいが、溶液塗布などのウェットプロセスも好適に用いることが出来る。化合物の分子量は、蒸着適性や溶解性の観点から2000以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、800以下であることが特に好ましい。また蒸着適性の観点では、分子量が小さすぎると蒸気圧が小さくなり、気相から固相への変化がおきず、有機層を形成することが困難となるので、250以上が好ましく、300以上が特に好ましい。
【0385】
以下に、本発明における一般式(a)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0386】
【化89】

【0387】
【化90】

【0388】
【化91】

【0389】
【化92】

【0390】
(電荷輸送層)
電荷輸送層とは、有機電界発光素子に電圧を印加した際に電荷移動が起こる層をいう。具体的には正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層又は電子注入層が挙げられる。塗布法により形成される電荷輸送層が正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層又は発光層であれば、低コストかつ高効率な有機電界発光素子の製造が可能となる。
【0391】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
本発明に関し、有機層として、電子受容性ドーパントを含有する正孔注入層又は正孔輸送層を含むことが好ましい。
【0392】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。
【0393】
正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0165〕〜〔0167〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0394】
−正孔ブロック層−
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノレート(Aluminum(III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate(BAlqと略記する))等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0395】
−電子ブロック層−
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
電子ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0396】
<保護層>
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0169〕〜〔0170〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0397】
<封止容器>
本発明の素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
封止容器については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0171〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0398】
(駆動)
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0399】
本発明の発光素子は、種々の公知の工夫により、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、基板表面形状を加工する(例えば微細な凹凸パターンを形成する)、基板・ITO層・有機層の屈折率を制御する、基板・ITO層・有機層の膜厚を制御すること等により、光の取り出し効率を向上させ、外部量子効率を向上させることが可能である。
【0400】
本発明の発光素子は、陽極側から発光を取り出す、いわゆるトップエミッション方式であっても良い。
【0401】
本発明における有機EL素子は、共振器構造を有しても良い。例えば、透明基板上に、屈折率の異なる複数の積層膜よりなる多層膜ミラー、透明又は半透明電極、発光層、及び金属電極を重ね合わせて有する。発光層で生じた光は多層膜ミラーと金属電極を反射板としてその間で反射を繰り返し共振する。
別の好ましい態様では、透明基板上に、透明又は半透明電極と金属電極がそれぞれ反射板として機能して、発光層で生じた光はその間で反射を繰り返し共振する。
共振構造を形成するためには、2つの反射板の有効屈折率、反射板間の各層の屈折率と厚みから決定される光路長を所望の共振波長の得るのに最適な値となるよう調整される。第一の態様の場合の計算式は特開平9−180883号明細書に記載されている。第2の態様の場合の計算式は特開2004−127795号明細書に記載されている。
【0402】
本発明の有機電界発光素子の外部量子効率としては、5%以上が好ましく、7%以上がより好ましい。外部量子効率の数値は20℃で素子を駆動したときの外部量子効率の最大値、若しくは、20℃で素子を駆動したときの100〜300cd/m付近での外部量子効率の値を用いることができる。
【0403】
本発明の有機電界発光素子の内部量子効率は、30%以上であることが好ましく、50%以上が更に好ましく、70%以上が更に好ましい。素子の内部量子効率は、外部量子効率を光取り出し効率で除して算出される。通常の有機EL素子では光取り出し効率は約20%であるが、基板の形状、電極の形状、有機層の膜厚、無機層の膜厚、有機層の屈折率、無機層の屈折率等を工夫することにより、光取り出し効率を20%以上にすることが可能である。
【0404】
本発明の有機電界発光素子は、350nm以上700nm以下に極大発光波長(発光スペクトルの最大強度波長)を有するものが好ましく、より好ましくは350nm以上600nm以下、更に好ましくは400nm以上520nm以下、特に好ましくは400nm以上470nm以下である。
【0405】
(本発明の発光素子の用途)
本発明の発光素子は、発光装置、ピクセル、表示素子、表示装置、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、照明装置、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、又は光通信等に好適に利用できる。特に、発光装置、照明装置、表示装置等の発光輝度が高い領域で駆動されるデバイスに好ましく用いられる。
【0406】
次に、図2を参照して本発明の発光装置について説明する。
本発明の発光装置は、前記有機電界発光素子を用いてなる。
図2は、本発明の発光装置の一例を概略的に示した断面図である。
図2の発光装置20は、透明基板(支持基板)2、有機電界発光素子10、封止容器11等により構成されている。
【0407】
有機電界発光素子10は、基板2上に、陽極(第一電極)3、有機層11、陰極(第二電極)9が順次積層されて構成されている。また、陰極9上には、保護層12が積層されており、更に、保護層12上には接着層14を介して封止容器16が設けられている。なお、各電極3、9の一部、隔壁、絶縁層等は省略されている。
ここで、接着層14としては、エポキシ樹脂等の光硬化型接着剤や熱硬化型接着剤を用いることができ、例えば熱硬化性の接着シートを用いることもできる。
【0408】
本発明の発光装置の用途は特に制限されるものではなく、例えば、照明装置のほか、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電子ペーパ等の表示装置とすることができる。
【0409】
(照明装置)
次に、図3を参照して本発明の実施形態に係る照明装置について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る照明装置の一例を概略的に示した断面図である。
本発明の実施形態に係る照明装置40は、図3に示すように、前述した有機EL素子10と、光散乱部材30とを備えている。より具体的には、照明装置40は、有機EL素子10の基板2と光散乱部材30とが接触するように構成されている。
光散乱部材30は、光を散乱できるものであれば特に制限されないが、図3においては、透明基板31に微粒子32が分散した部材とされている。透明基板31としては、例えば、ガラス基板を好適に挙げることができる。微粒子32としては、透明樹脂微粒子を好適に挙げることができる。ガラス基板及び透明樹脂微粒子としては、いずれも、公知のものを使用できる。このような照明装置40は、有機電界発光素子10からの発光が散乱部材30の光入射面30Aに入射されると、入射光を光散乱部材30により散乱させ、散乱光を光出射面30Bから照明光として出射するものである。
【実施例】
【0410】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に制限されるものではない。
【0411】
実施例及び比較例に用いた有機材料は全て昇華精製したものを用いた。実施例及び比較例で使用した化合物の構造を以下に示す。
【0412】
【化93】

【0413】
【化94】

【0414】
【化95】

【0415】
【化96】

【0416】
【化97】


【0417】
化合物12−aは米国特許出願公開第2008/297033号明細書55ページ、第129段落以降に記載の方法を参照し合成した。また、化合物15−aは国際公開第02/15645号の33頁に記載の方法にて合成した。化合物17−aは国際公開第2008/140114号の169頁記載の方法を用いて合成した。化合物16−aはPolyhedron 2004年23号、419ページ以降に記載の方法で合成を行った。化合物13−a、14−aはInorganic chemistry 1991年30号、1685ページ以降に記載の方法に従って合成を行った。なお、各化合物について、X−a以外で表される錯体(Xは化合物番号である1〜19を表す)は、配位子合成の際に原料を変更することで同様に合成することができる。例えば、化合物15−bの配位子である化合物はジフルオロフェニルホウ酸の代わりにクロロフルオロフェニルホウ酸を用いて下記のように合成することができる。下記白金錯体の場合も同様である。
【0418】
【化98】

【0419】
白金錯体については、化合物9−a、9−b、11−a、11−bは特開2006−256999号公報を参照して合成した。化合物5−a、5−b、ref−5−bは特開2006−261623号公報を参照して合成した。化合物3−a〜3−d、4−a、4−b、ref−4−b、7−a、7−bは特開2006−093542号公報を参照して合成した。化合物2−aは下記のように合成した。化合物2−b〜2−dも同様に合成した。化合物1−a〜1−e、ref−1−b、6−a〜6−d、ref−6−b、8−a、8−b、10−a、10−b、16−a、16−b、19−a〜19−cも種々の公知の方法により同様に合成した。(化合物2−aの合成)
【0420】
【化99】

【0421】
第一塩化白金(2.66g、10.0mmol)及び化合物M2(3.4g、7.3mmol)をベンゾニトリル(70mL)中、窒素雰囲気下加熱還流条件にて2時間半攪拌した。反応液を室温まで放冷し、析出した固体を濾過、メタノールで洗浄することで、化合物2−aを黄色粉末として3.2g得た。収率75%。
【0422】
なお、化合物1−bは下記方法で合成を行った際に、化合物1−aとの混合物として得られ、HPLC及び質量分析法にて組成を確認した。2−b、5−bも同様である。
【0423】
【化100】

【0424】
(化合物18−aの合成)
18−aについては以下のように合成した。
【0425】
【化101】

【0426】
二塩化白金(1.96g、4.2mmol、1.2当量)及び化合物a(2.0g、3.5mmol、1.0当量)をメシチレン(15mL)中、窒素雰囲気下145℃にて1時間半攪拌した。反応液を室温まで放冷し、析出した固体を濾過、メタノールで洗浄することで、白金錯体を黄色粉末として2.7g得た。収率99%。18−b及び18−cも同様にして合成した。
【0427】
H−NMR (300MHz, CDCl)δ:溶媒に溶けず、解析不可であった。
【0428】
なお、本実施例に用いた有機材料は全て昇華精製したものを用い、高速液体クロマトグラフィー(東ソーTSKgel ODS−100Z)により分析し純度を算出した。
【0429】
〔実施例1〕
(有機電界発光素子の作製)
100μm厚み、2.5cm角の酸化インジウム錫(ITO)膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極(ITO膜)上に真空蒸着法にて以下の有機層を順次蒸着した。このとき、材料をるつぼに入れ、時間をおかずに蒸着した。
第1層:CuPc(銅フタロシアニン),膜厚120nm
第2層:NPD(N,N’−ジ−α−ナフチル−N,N’−ジフェニル)−ベンジジン),膜厚10nm
第3層(発光層):発光材料(12質量%)、mCP(1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン)(ホスト材料)(88質量%)、膜厚30nm
第4層:第一電子輸送材料(BAlq):膜厚30nm
この上に、フッ化リチウム1nm及び金属アルミニウム100nmをこの順に蒸着し陰極とした。
得られた積層体を、大気に触れさせることなく、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、素子を作製した。このように、材料をるつぼに入れ、時間をおかずに蒸着し、作製した素子を「素子1」とする。各素子1と同じ材料を用い、材料をるつぼに添加した状態で白色光に3日間暴露し、その後同様に作製した素子を「素子2」とする。
発光層における発光材料としては、下記表16に示した発光材料1及び2を表16に記載の混合比で用いた。
【0430】
なお、表16における発光材料2である金属錯体の一部の含有量についてはHPLC−MSによる測定と並行して、三菱化学アナリテック製自動試料燃焼装置AQF−100を用いて、酸素気流中で試料を燃焼し、塩素成分を過酸化水素水にトラップさせ、ハロゲン成分を含む過酸化水素中の塩素、フッ素、臭素量をダイオネクス製イオンクロマトICS−1500により測定し、試料中のハロゲン濃度から発光材料2である金属錯体の正確な含有量を評価している。また、金属錯体中のヨウ素含有量は、上記装置を用いてトラップを過酸化水素水/炭酸ナトリウム水溶液とすることで同様に測定している。
これらの測定結果より、各々の材料の吸光度がほぼ等しく、HPLCで得られた面積比をそのまま含有量として用いてもよいことを確認した。
【0431】
(有機電界発光素子の性能評価)
(a)耐久性比(可視光に対する安定性)
上記のように作製した素子1と、該素子と同じ材料を用い、材料をるつぼに添加した状態で白色光に3日間暴露し、その後同様に作製した素子2について、それぞれ輝度が2000cd/mになるように直流電圧を印加して発光させ続け、輝度半減時間を測定した。素子2の輝度半減時間が素子1の輝度半減時間に対して何%であるかを算出し、表16に「耐久性比」として記載した。該「耐久性比」が大きいほど、素子作製に用いた材料が可視光に対して安定であったといえる。
【0432】
(b)効率比(高輝度駆動時の効率)
東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電圧を各素子1に印加し発光させ、その輝度をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定した。発光スペクトルと発光波長は浜松ホトニクス製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定した。これらを元に電流密度が1mA/cmの時の外部量子効率と250mA/cmの時の外部量子効率を輝度換算法により算出した。250mA/cmでの効率の値を1mA/cmでの効率の値で割って、比を算出し、表16に「効率比」として記載した。該「効率比」が大きいほど、高輝度で素子を駆動した場合に効率に優れるといえる。
【0433】
【表19】

【0434】
【表20】

【0435】
【表21】

【0436】
本発明の素子は、比較素子に対して、耐久性比及び効率比の値が大きくなった。このことから、本発明の素子は比較素子よりも、可視光下で安定性に優れ、かつ高輝度での効率に優れるということがわかる。
図4は、金属錯体Aとして化合物1−a、金属錯体Bとして化合物1−bを用いた実施例である本発明の素子1−1〜1−16、及び比較素子1−1〜1−3について、金属錯体Bの金属錯体Aに対する含有量(質量%)と耐久性比(%)の関係をプロットしたグラフである。また、図5は金属錯体Bの含有量が少ない場合について、よりわかりやすくするために、本発明の素子1−1及び1−2、比較素子1−1及び1−2についての金属錯体Bの金属錯体Aに対する含有量(質量%)と耐久性比(%)の関係をプロットしたグラフである。
図4及び5から、金属錯体Bの金属錯体Aに対する含有量が、0.005質量%以上2質量%以下である場合に耐久性比に優れることがわかる。
また、同様に、図6は金属錯体Aとして化合物1−a、金属錯体Bとして化合物1−bを用いた実施例である本発明の素子1−1〜1−16、及び比較素子1−1〜1−3について、金属錯体Bの金属錯体Aに対する含有量(質量%)と効率比の関係をプロットしたグラフである。また、図7は金属錯体Bの含有量が少ない場合について、よりわかりやすくするために、本発明の素子1−1及び1−2、比較素子1−1及び1−2についての金属錯体Bの金属錯体Aに対する含有量(質量%)と効率比の関係をプロットしたグラフである。
図6及び7から、金属錯体Bの金属錯体Aに対する含有量が、0.005質量%以上2質量%以下である場合に効率比に優れることがわかる。
【0437】
〔実施例2〕
発光材料1及び2の種類、含有量、並びにホスト材料を下記表17に示す材料とする以外は実施例1と同様に素子を作製し、以下の耐久性の評価を行った。(c)耐久性比
上記のように作製した素子を、それぞれ輝度が2000cd/mになるように直流電圧を印加して発光させ続け、輝度半減時間を測定した。この輝度半減時間を、本発明の素子2−1〜2−7は本発明の素子2−1の値を1とした場合の、本発明の素子2−8〜2−11は本発明の素子2−8の値を1とした場合のそれぞれ相対値として下記表17に記載している。
【0438】
【表22】

【0439】
表17に示すとおり、ホスト材料としてH−1〜3及びH−5をホストとして用いた場合、他のホストを用いた時と比較して耐久性が向上している事がわかる。
【0440】
〔実施例3〕
発光材料1及び2の種類、並びに含有量を下記表18の通りとし、第2層と第3層の間に、表18に示す材料からなる層を5nm設けた以外は実施例1と同様に素子を作製し、上記実施例2と同様の耐久性の評価を行った。結果は、本発明の素子3−1の輝度半減時間の値を1とした場合の相対値で著した。
【0441】
【表23】

【0442】
表18に示すとおり、第2層と第3層の間にHT−1〜HT−3からなるカルバゾール材料を用いた層を設けた場合、該層がない場合と比較して耐久性が向上することが分かる。
【0443】
〔実施例4〕
発光材料1及び2の種類、並びに含有量を下記表19の通りとし、第3層と第4層の間に、表19に示す材料からなる層を3nm設けた以外は実施例1と同様に素子を作製し、素子効率の評価を行った。d)効率
東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電圧を各素子に印加し発光させ、その輝度をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定した。発光スペクトルと発光波長は浜松ホトニクス製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定した。これらを元に電流密度が1mA/cmの時の外部量子効率を輝度換算法により算出し、本発明の素子4−1の外部量子効率を1とした場合の相対値として下記表19に記載している。
【0444】
【表24】

【0445】
表19に示すとおり、第3層と第4層の間にE−1〜E−5からなる炭化水素芳香族化合物を用いた層を設けた場合、効率が大幅に向上し、その効果はトリフェニレン骨格を有するE−1及びE−2を用いた時に顕著であった。
【0446】
〔実施例5〕
<発光層形成用塗布液の調製>
mCPと、発光材料(下記表20に示した発光材料1及び2を表20に記載の混合比で用いた)とを、mCP:発光材料が95:5の質量比となるように、メチルエチルケトン(MEK)に溶解させ固形分濃度1.0質量%とした。これを0.22μmのポアサイズを有するPTFEフィルターでろ過して各発光層形成用塗布液を調製した。
【0447】
厚み0.5mm、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極(ITO膜)上にPEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))/PSS(ポリスチレンスルホン酸)水溶液(BaytronP(標準品))をスピンコート(4000rpm、60秒間)し、120℃で10分間乾燥することにより、ホール輸送性バッファ層を形成させた。
次いで、前記各発光層形成用塗布液を先のホール輸送性バッファ層上にスピンコート(2000rpm、60秒間)し、発光層を形成させた。この発光層の上に、電子注入層としてBAlqを真空蒸着法により20nm蒸着した。更にフッ化リチウム0.1nm及び金属アルミニウムを100nmをこの順に蒸着し陰極とした。
この積層体を、大気に触れさせること無く、窒素ガスで置換したグローブボックス内に入れ、ガラス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、本発明の素子5−1〜5−8及び比較素子5−1〜5−5を得た。得られた素子に対して本発明の素子1−1と同様の評価を行った。結果を表20に示す。
【0448】
【表25】

【0449】
表20に示すとおり、溶液塗布法を用いて素子を作製した場合においても、同様の効果が得られる事が分かる。
【0450】
〔実施例6〕
<発光層形成用塗布液の調製>
ホスト化合物H−2と、発光材料(下記表24に示した発光材料1及び2を表24に記載の混合比で用いた)とを、H−2:発光材料が95:5の質量比となるように、メチルエチルケトン(MEK)に溶解させ、固形分濃度1.0質量%とした。これを0.22μmのポアサイズを有するPTFEフィルターでろ過して、各発光層形成用塗布液を調製した。
【0451】
<正孔輸送層形成用塗布液Aの調製>
下記化合物Aを電子工業用キシレンに溶解させ、全固形分濃度0.4質量%とし、これを0.22μmのポアサイズを有するPTFEフィルターでろ過して、正孔輸送層形成用塗布液Aを調製した。
【0452】
<素子作製>
25mm×25mm×0.7mmのガラス基板上にITOを150nmの厚みで蒸着し成膜したものを透明支持基板とした。この透明支持基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。
このITO付ガラス基板上に、下記構造式で表される化合物B(US2008/0220265記載)0.5質量部をシクロヘキサノン99.5質量部に溶解し、厚みが約5nmとなるようにスピンコート(4000rpm、30秒間)した後、200℃で30分間乾燥することで、正孔注入層を成膜した。
【0453】
【化102】

【0454】
前記正孔注入層上に、正孔輸送層形成用塗布液Aを、厚みが約10nmとなるようにスピンコート(1500rpm、20秒間)した後、120℃で30分間乾燥することで、正孔輸送層を成膜した。
前記正孔輸送層上に、前記各発光層形成用塗布液をグローブボックス(露点−68度、酸素濃度10ppm)内で厚みが約30nmとなるようにスピンコート(1500rpm、20秒間)し、発光層とした。
次いで、発光層上に電子輸送層としてBAlqを真空蒸着法により20nm蒸着した。更に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を0.1nm、陰極として金属アルミニウムを100nmこの順に蒸着し、成膜した。
以上により作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止することで、実施例6−1〜6−7及び比較例6−1〜6−5の有機電界発光素子を作製した。得られた素子に対して本発明の素子1−1と同様の評価を行った。結果を下記表24に示す。
【0455】
【表26】

【0456】
以下に使用した化合物を記載する。
【0457】
【化103】

【0458】
【化104】

【符号の説明】
【0459】
2・・・基板
3・・・陽極
4・・・正孔注入層
5・・・正孔輸送層
6・・・発光層
7・・・正孔ブロック層
8・・・電子輸送層
9・・・陰極
10・・・有機電界発光素子(有機EL素子)
11・・・有機層
12・・・保護層
14・・・接着層
16・・・封止容器
20・・・発光装置
30・・・光散乱部材
30A・・・光入射面
30B・・・光出射面
31・・・透明基板
32・・・微粒子
40・・・照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燐光性金属錯体Aと燐光性金属錯体Bとを少なくとも含む有機電界発光素子用材料であって、該燐光性金属錯体Aは下記一般式(1)で表される部分構造を含み、該燐光性金属錯体Bは一般式(1)におけるR及びRのうちの少なくとも1つの置換基において、Q又はQに直接結合している原子の1つ以上が、該原子の同族かつ原子量の大きい原子に置き換えられていること以外は該燐光性金属錯体Aと同一の構造を有し、該燐光性金属錯体Aに対する該燐光性金属錯体Bの含有比が0.005質量%以上2質量%以下である有機電界発光素子用材料。
【化1】

(一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に置換基を表す。R及びRは複数存在する場合はそれぞれのR及びRは同一でも異なっていてもよい。複数のR及びRはそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。Mは原子量40以上の金属を表し、X〜Xはそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。ただし、X〜Xが全て窒素原子を表すことはない。Qは5員又は6員の芳香族複素環を表し、Qは5員又は6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表す。n1及びn2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表すが、n1とn2の和が0になることはない。Q及びQを含む2座配位子は他の配位子と結合して3座以上の配位子を形成しても良い。QとQは連結基により連結し、環を形成してもよい。)
【請求項2】
前記金属錯体Aは前記一般式(1)におけるR及びRの少なくとも1つとしてフッ素原子を有し、前記金属錯体Bは金属錯体Aの有するフッ素原子のうち少なくとも1つがフッ素原子以外のハロゲン原子に置き換えられている請求項1に記載の有機電界発光素子用材料。
【請求項3】
前記金属錯体Bにおけるフッ素原子以外のハロゲン原子が塩素原子である請求項2に記載の有機電界発光素子用材料。
【請求項4】
前記一般式(1)において、R及びRが全てフッ素原子である請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
【請求項5】
前記金属錯体Aが下記一般式(2)で表される部分構造を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
【化2】

(一般式(2)中、Mは原子量40以上の金属を表し、X炭素原子又は窒素原子を表す。Qは5員又は6員の芳香族複素環を表す。E〜Eはそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。ただし、E〜Eが全て窒素原子を表すことはない。n1及びn2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表すが、n1とn2の和が0になることはない。環Q及びE〜Eを含む環を含む2座配位子は他の配位子と結合して3座以上の配位子を形成しても良い。)
【請求項6】
前記金属錯体Aが下記一般式(3)で表される部分構造を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
【化3】

(一般式(3)中、Mは原子量40以上の金属を表し、Eは炭素原子又は窒素原子を表す。n3は1〜4の整数を表す。ピリジン及びEを含む環を含む2座配位子は他の配位子と結合して3座以上の配位子を形成しても良い。)
【請求項7】
前記Eが炭素原子である請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
【請求項8】
前記MがPtである請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
【請求項9】
前記一般式(1)が下記一般式(C−2)で表される請求項1に記載の有機電界発光素子用材料。
【化4】

(式中、L21は単結合又は二価の連結基を表す。Z21及びZ22はそれぞれ独立に5員又は6員の含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z23及びZ24はそれぞれ独立にベンゼン環又は5員又は6員の芳香族ヘテロ環を表す。Z21及びZ23はそれぞれ独立に1〜4個の置換基を有していてもよく、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。ただし、Z21及びZ23のうち少なくともいずれかは1つ以上の置換基を有する。Z22及びZ24は置換基を有していてもよく、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。X21、X22、X23及びX24はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。)
【請求項10】
前記MがIrである請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
【請求項11】
前記一般式(1)が下記一般式(A10)で表される請求項1に記載の有機電界発光素子用材料。
【化5】

(一般式(A10)中、R1a〜R1iはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。X−Yは二座のモノアニオン性の二座配位子を表す。nは1〜3の整数を表す。)
【請求項12】
前記一般式(1)が下記一般式(P−1)で表される請求項1に記載の有機電界発光素子用材料。
【化6】

(一般式(P−1)中、R及びRはそれぞれ独立に置換基を表す。R及びRは複数存在する場合はそれぞれのR及びRは同一でも異なっていてもよい。n1及びn2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表すが、n1とn2の和が0になることはない。X−Yは二座のモノアニオン性配位子を表す。nは1〜3の整数を表す。)
【請求項13】
基板上に、一対の電極と、該電極間に発光材料を含有する発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、該有機層のうち少なくともいずれかに請求項1〜12のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含む有機電界発光素子。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を発光層に含む請求項13に記載の有機電界発光素子。
【請求項15】
燐光性金属錯体Aと燐光性金属錯体Bとを少なくとも含む有機電界発光素子用材料であって、該燐光性金属錯体Aは下記一般式(1)で表される部分構造を含み、該燐光性金属錯体Bは一般式(1)におけるR及びRのうちの少なくとも1つの置換基において、Q又はQに直接結合している原子の1つ以上が、該原子の同族かつ原子量の大きい原子に置き換えられていること以外は該燐光性金属錯体Aと同一の構造を有し、該燐光性金属錯体Aに対する該燐光性金属錯体Bの含有比が0.005質量%以上2質量%以下である組成物。
【化7】

(一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に置換基を表す。R及びRは複数存在する場合はそれぞれのR及びRは同一でも異なっていてもよい。Mは原子量40以上の金属を表し、X〜Xはそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。ただし、X〜Xが全て窒素原子を表すことはない。Qは5員又は6員の芳香族複素環を表し、Qは5員又は6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表す。n1及びn2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表すが、n1とn2の和が0になることはない。Q及びQを含む2座配位子は他の配位子と結合して3座以上の配位子を形成しても良い。QとQは連結基により連結し、環を形成してもよい。)
【請求項16】
燐光性金属錯体Aと燐光性金属錯体Bとを少なくとも含む有機電界発光素子用材料であって、該燐光性金属錯体Aは下記一般式(1)で表される部分構造を含み、該燐光性金属錯体Bは一般式(1)におけるR及びRのうちの少なくとも1つの置換基において、Q又はQに直接結合している原子の1つ以上が、該原子の同族かつ原子量の大きい原子に置き換えられていること以外は該燐光性金属錯体Aと同一の構造を有し、該燐光性金属錯体Aに対する該燐光性金属錯体Bの含有比が0.005質量%以上2質量%以下である発光層。
【化8】

(一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に置換基を表す。R及びRは複数存在する場合はそれぞれのR及びRは同一でも異なっていてもよい。Mは原子量40以上の金属を表し、X〜Xはそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。ただし、X〜Xが全て窒素原子を表すことはない。Qは5員又は6員の芳香族複素環を表し、Qは5員又は6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表す。n1及びn2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表すが、n1とn2の和が0になることはない。Q及びQを含む2座配位子は他の配位子と結合して3座以上の配位子を形成しても良い。QとQは連結基により連結し、環を形成してもよい。)
【請求項17】
請求項13又は14に記載の有機電界発光素子を用いた発光装置。
【請求項18】
請求項13又は14に記載の有機電界発光素子を用いた表示装置。
【請求項19】
請求項13又は14に記載の有機電界発光素子を用いた照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−225801(P2011−225801A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198384(P2010−198384)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】