説明

有機電界発光素子用材料、有機電界発光素子、及び有機電界発光素子の製造方法

【課題】合成時に有機EL素子性能を低下させる不純物の生成がなく、上層塗布時に溶解混合又は膨潤混合を起こさず、膜質に優れ、かつ有機EL素子性能向上(高耐久性、及び低駆動電圧)に寄与する有機電界発光素子用材料を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するシロキサン化合物である有機電界発光素子用材料。


(一般式(1)中、Rはアルキル基、又はアリール基を表し、Lは炭素数3以上の2価の連結基を表し、HLは2個以上のトリアリールアミンユニットを含む基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子用材料、有機電界発光素子、及び有機電界発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料を利用したデバイスとして、有機電界発光素子(以下、OLED、有機EL素子ともいう)、有機半導体を利用したトランジスタなどの研究が活発に行われている。特に、有機電界発光素子は、固体発光型の大面積フルカラー表示素子や安価な大面積な面光源としての照明用途としての発展が期待されている。一般に有機電界発光素子は発光層を含む有機層及び該有機層を挟んだ一対の対向電極から構成される。このような有機電界発光素子に電圧を印加すると、有機層に陰極から電子が注入され陽極から正孔が注入される。この電子と正孔が発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出することにより発光が得られる。
有機EL素子は、有機層を、例えば蒸着などの乾式法又は塗布などの湿式法により成膜することで作製することができるが、生産性などの観点から湿式法が注目されている。
【0003】
ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(NPD)やトリフェニルジアミン(TPD)に代表される低分子アリールアミンは正孔移動度が高く、化学的に安定な材料であり、蒸着型OLEDでは正孔注入、及び正孔輸送層として用いられることが多い。
しかしながら、これらの低分子アリールアミンは溶媒溶解性が高いため、塗布型OLEDでは上層(例えば発光層)積層時にこれらの低分子アリールアミンからなる下層を溶解させ、層混合が起こり、有機EL素子の性能を低下させるという問題がある。
また、下層を溶解させずに上層を積層できたとしても、これらの低分子アリールアミンは結晶化してしまうため、形成した膜にひび割れが生じるなど、成膜性に劣る。
下層の溶解を防ぐ為に、下層に高分子材料を用いる方法や、下層を塗布後に架橋硬膜する方法が行われている。しかしながら、アクルレートやメタクリレートなど汎用的な高分子材料では、合成時に微量混入する重合開始剤の影響から、素子性能が低下する。また、ポリエーテルなど重合開始剤を用いない高分子材料でも膨潤することで上層材料の混入が生じてしまう。
一方、塗布後に架橋硬膜する方法でも、重合開始剤の素子への悪影響が問題となるため、スチリル化合物などによる熱重合法が検討されているが、硬膜に高い温度が必要であること、長時間を要することなどの問題がある。
【0004】
前記重合開始剤の問題について、重合時に重合開始剤を用いる必要がない高分子化合物としては、シロキサンポリマーがある。
シロキサンポリマーを有機電界発光素子用材料として用いたものとして、例えば特許文献1には、2個以上のアリールアミンユニットを有し、該ユニットとシロキサンポリマーの主鎖のケイ素原子が直接結合したシロキサンポリマーが記載されている。該特許文献1では、アリールアミン置換塩素化シランを加水分解による脱水縮合法により高分子量体を合成している。
また、特許文献2には、1個のアリールアミンユニットを1つのペンダント基として有し、該ペンダント基を主鎖とつなぐ炭素数3のリンカー(連結基)からなるシロキサンポリマーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−80167号公報
【特許文献2】国際公開第06/001874号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2記載のシロキサンポリマーはペンダント基を直接主鎖に結合させていることでポリマー鎖が剛直である、又はコンパクトなペンダント基同士がスタッキングすることで結晶性が高いなどの理由から、成膜性、及び積層適性の観点で改善が求められる。また、該シロキサンポリマーから得られる膜の膜質、該膜を有する有機電界発光素子の素子特性(耐久性、及び駆動電圧)についても改善が求められる。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、合成時に有機EL素子性能を低下させる不純物の生成がなく、上層塗布時に溶解混合又は膨潤混合を起こさず、膜質に優れ、かつ有機EL素子性能向上(高耐久性、及び低駆動電圧)に寄与する有機電界発光素子用材料を提供することを目的とする。
また、本発明は、上層塗布時に溶解混合又は膨潤混合を起こさず、膜質に優れ、かつ有機EL素子性能向上に寄与する膜を提供することを目的とする。
更に、本発明は、生産性に優れ、耐久性が高く、駆動電圧が低い有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記状況を鑑み、本発明者らは、鋭意研究を行なったところ、以下の知見を得た。
即ち、シロキサンポリマーの主鎖のケイ素原子と、アリールアミンユニットの間に、炭素数3以上のリンカーを入れ、かつ電荷輸送部位として機能するアリールアミンユニットを1つのペンダント基に2つ以上含ませることで、膜質向上と有機EL素子性能向上(高耐久性、及び低駆動電圧)を両立させることができることを見出した。
【0009】
即ち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1]
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するシロキサン化合物である有機電界発光素子用材料。
【化1】

(一般式(1)中、Rはアルキル基、又はアリール基を表し、Lは炭素数3以上の2価の連結基を表し、HLは2個以上のトリアリールアミンユニットを含む基を表す。)
[2]
前記一般式(1)におけるHLが下記一般式(2)で表される、上記[1]に記載の有機電界発光素子用材料。
【化2】

(一般式(2)中、Ar、Ar、及びArは各々独立にアリーレン基を表し、Ar、Ar、及びArは各々独立にアリール基を表す。Zは2価の連結基を表す。nは0又は1を表し、mは1以上の整数を表す。nが0の場合、ArとArは単結合で結合している。*2は一般式(1)におけるLと結合する部位を表す。)
[3]
前記一般式(1)におけるLが下記一般式(3)で表される、上記[1]又は[2]に記載の有機電界発光素子用材料。
【化3】

(一般式(3)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Tは2価の連結基を表し、Wは酸素原子、−NH−、又は硫黄原子を表し、Vは2価の連結基を表し、Xは−CH−、酸素原子、又は−NH−を表す。pは1〜5の整数を表し、sは0又は1を表し、uは0〜5の整数を表し、zは0又は1を表す。*3は一般式(1)におけるケイ素原子と結合する部位を表し、*4は一般式(1)におけるHLと結合する部位を表す。)

[4] 前記シロキサン化合物において、前記一般式(1)で表される繰り返し単位の総量に対し、未反応部位であるSi−Hを含む前記一般式(1)で表される繰り返し単位の比率が0〜10%である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
[5]
前記シロキサン化合物が前記一般式(1)で表される繰り返し単位の10〜50量体である、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
[6]
前記一般式(2)が下記一般式(5)で表される、上記[2]〜[5]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
【化4】

(一般式(5)中、R51〜R78はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シリル基を表す。ただし、R51〜R55のうちいずれか1つと、一般式(1)におけるLとが結合する。Zは単結合又は2価の連結基を表す。)
[7]
前記一般式(2)が下記一般式(6)で表される、上記[2]〜[5]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
【化5】

(一般式(6)中、R51〜R82はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シリル基を表す。ただし、R51〜R55のうちいずれか1つと、一般式(1)におけるLとが結合する。Zは単結合又は2価の連結基を表す。)
[8]
前記一般式(2)が下記一般式(7)で表される、上記[2]〜[5]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
【化6】

(一般式(7)中、R51〜R82はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、又はシリル基を表す。ただし、R51〜R55のうちいずれか1つと、一般式(1)におけるLとが結合する。Zは単結合又は2価の連結基を表す。)
[9]
基板上に、陽極及び陰極を含む一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、該陽極と該発光層との間の少なくとも一層の有機層に、上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含有する有機電界発光素子。
[10]
上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を正孔注入層に含有する、上記[9]に記載の有機電界発光素子。
[11]
上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を正孔輸送層に含有する、上記[9]記載の有機電界発光素子。
[12]
上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含有する層を湿式法にて作製する、上記[9]〜[11]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子の製造方法。
[13]
上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含有する膜。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、合成時に有機EL素子性能を低下させる不純物の生成がなく、上層塗布時に溶解混合又は膨潤混合を起こさず、膜質に優れ、かつ有機EL素子性能向上(高発光効率、及び低駆動電圧)に寄与する有機電界発光素子用材料を提供することができる。
また、本発明によれば、上層塗布時に溶解混合又は膨潤混合を起こさず、膜質に優れ、かつ有機EL素子性能向上に寄与する膜を提供することができる。
更に、本発明によれば、生産性に優れ、発光効率が高く、駆動電圧が低い有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0013】
本発明の有機電界発光素子用材料は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するシロキサン化合物である。
【0014】
〔シロキサン化合物〕
本発明におけるシロキサン化合物は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する。
【0015】
【化7】

【0016】
(一般式(1)中、Rはアルキル基、又はアリール基を表し、Lは炭素数3以上の2価の連結基を表し、HLは2個以上のトリアリールアミンユニットを含む基を表す。)
【0017】
一般式(1)中、Rはアルキル基、又はアリール基を表す。
該アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、t−ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
該アリール基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、具体的にはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基などが挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
は溶媒溶解性及び成膜性の向上という理由からアルキル基であることが好ましい。
【0018】
一般式(1)中、HLは2個以上のトリアリールアミンユニットを含む基を表す。
本発明におけるシロキサン化合物は、結晶性の高いトリアリールアミンユニットを含むペンダント基をシロキサン主鎖の側鎖に有することでアモルファス性が上昇し、成膜性が向上したと考えられる。
HLは下記一般式(2)で表されることが好ましい。
【0019】
【化8】

【0020】
(一般式(2)中、Ar、Ar、及びArは各々独立にアリーレン基を表し、Ar、Ar、及びArは各々独立にアリール基を表す。Zは2価の連結基を表す。nは0又は1を表し、mは1以上の整数を表す。nが0の場合、ArとArは単結合で結合している。*2は一般式(1)におけるLと結合する部位を表す。)
【0021】
一般式(2)中、Ar、Ar、及びArは各々独立にアリーレン基を表す。該アリーレン基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12のアリーレン基であり、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、フェナントリレン基、ピレニレン基、トリフェニレニレン基、などが挙げられ、ペンダント基導入率、及び電荷輸送性の向上という理由から、好ましくは、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、フェナントリレン基、などが挙げられ、最も好ましくはフェニレン基、ナフチレン基である。
【0022】
一般式(2)中、Ar、Ar、及びArは各々独立にアリール基を表す。該アリール基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、具体的にはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基などが挙げられ、ペンダント基導入率、及び電荷輸送性の向上という理由から、好ましくは、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、フェナントリレン基、などが挙げられ、最も好ましくはフェニレン基、ナフチレン基である。
【0023】
一般式(2)中、Ar〜Arで表されるアリーレン基又はアリール基は非重合性の置換基を有してもよい。該置換基としては、好ましくはアルキル基(好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、メチル基、エチル基、t−ブチル基が更に好ましい。)、シリル基(好ましくは炭素数1〜10のアルキル基により置換されたシリル基であり、より好ましくはトリメチルシリル基である。)、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)、シアノ基、シクロアルキル基(好ましくはシクロヘキシル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20であり、特にメトキシ基、エトキシ基が好ましい。)などが挙げられる。
【0024】
一般式(2)において、Ar、Ar、及びArがフェニレン基であり、Ar、Ar、及びArがフェニル基又はナフチル基を表すことが好ましい。
【0025】
一般式(2)中、Zは2価の連結基を表す。該2価の連結基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、シリレン基が好ましい。
が表すアルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジフェニルメチレン基などが挙げられ、好ましくは、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジフェニルメチレン基である。
【0026】
が表すシクロアルキレン基としては、炭素数1〜10のシクロアルキレン基が好ましく、具体的には、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、などが挙げられ、好ましくは、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基である。
【0027】
が表すシリレン基としては、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基が置換したシリレン基であり、より好ましくはジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジフェニルシリレン基であり、更に好ましくはジフェニルシリレン基である。
【0028】
一般式(2)中、nは0又は1を表す。nが0の場合、ArとArは単結合で結合している。共役系が拡がり電荷輸送性が向上するという理由から、nは0であることが好ましい。
【0029】
一般式(2)中、mは1以上の整数を表す。mはトリアリールアミンユニットの繰り返し数を表すものであり、mが2以上の場合、トリアリールアミンユニットどうしは、ArとZとで結合する。電荷輸送性と溶媒への溶解性の両立という観点から、mは好ましくは1〜9の整数であり、より好ましくは1〜5の整数であり、更に好ましくは1〜3の整数である。
n=0かつm=1の場合、ArとArは単結合で結合しており、n=0かつmが2以上の場合、ArとAr、ArとArが単結合で結合している。
【0030】
一般式(2)は下記一般式(5)〜(7)のいずれかで表されることが好ましい。
【0031】
【化9】

【0032】
(一般式(5)中、R51〜R78はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シリル基を表す。ただし、R51〜R55のうちいずれか1つと、一般式(1)におけるLとが結合する。Zは単結合又は2価の連結基を表す。)
【0033】
【化10】

【0034】
(一般式(6)中、R51〜R82はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シリル基を表す。ただし、R51〜R55のうちいずれか1つと、一般式(1)におけるLとが結合する。Zは単結合又は2価の連結基を表す。)
【0035】
【化11】

【0036】
(一般式(7)中、R51〜R82はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、又はシリル基を表す。ただし、R51〜R55のうちいずれか1つと、一般式(1)におけるLとが結合する。Zは単結合又は2価の連結基を表す。)
【0037】
一般式(5)〜(7)において、R51〜R82は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、又はシリル基を表す。
該アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、メチル基、エチル基、t−ブチル基が更に好ましい。
該シクロアルキル基としては、好ましくは炭素数3〜10のシクロアルキル基であり、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基がより好ましい。
該アルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基であり、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
該シリル基としては、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基により置換されたシリル基であり、より好ましくはトリメチルシリル基である。
一般式(5)〜(7)において、R51〜R82は水素原子、又はアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0038】
一般式(5)〜(7)において、Z〜Zは単結合又は2価の連結基を表す。該2価の連結基の具体例及び好ましい範囲は、前記Zと同様である。Z〜Zは単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はシリレン基が好ましく、単結合又はジフェニルシリレン基がより好ましい。
【0039】
一般式(5)〜(7)において、R51〜R55のうちいずれか1つと、一般式(1)におけるLとが結合する。
【0040】
一般式(1)中、Lは炭素数3以上の2価の連結基を表す。
に含まれる炭素数は3以上である。Lの炭素数が3未満であると、剛直で側鎖の柔軟性が低下することで、該シロキサン化合物を成膜して得られる膜の膜質が低下する。また、Lの炭素数が3未満であると、シロキサン化合物の溶媒への溶解性も低下する。
は、絶縁性を有する部位であるため、シロキサン化合物の電荷輸送性を考慮すると、Lの炭素数は好ましくは3以上12以下であり、より好ましくは3以上10以下であり、更に好ましくは3以上7以下である。
また、本発明におけるシロキサン化合物を用いることで、有機EL素子特性において駆動電圧が大幅に低下するという予想外の効果が得られた。これは、トリアリールアミンユニットを有するペンダント基と、シロキサン主鎖のケイ素原子を、炭素数3以上のリンカーで連結することで、フレキシブルなリンカーを介して剛直なアリールアミンユニットをペンダントしているため、アリールアミンユニットの重なりが増したことで正孔移動度が上昇したためと推測される。
【0041】
該2価の連結基Lは、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでもよい2価の炭化水素基であることが好ましく、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでもよい、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びこれらを組み合わせて得られる2価の基であることがより好ましい。
【0042】
は下記一般式(3)で表されることがより好ましい。
【0043】
【化12】

【0044】
(一般式(3)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Tは2価の連結基を表し、Wは酸素原子、−NH−、又は硫黄原子を表し、Vは2価の連結基を表し、Xは−CH−、酸素原子、又は−NH−を表す。pは1〜5の整数を表し、sは0又は1を表し、uは0〜5の整数を表し、zは0又は1を表す。*3は一般式(1)におけるケイ素原子と結合する部位を表し、*4は一般式(1)におけるHLと結合する部位を表す。)
【0045】
一般式(3)中、Rは水素原子又はアルキル基を表す。該アルキル基としては、溶媒溶解性及び電荷輸送性という理由から、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、t−ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
は水素原子又はメチル基が特に好ましい
【0046】
一般式(3)中、Tは2価の連結基を表す。該2価の連結基としては、2価の炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びこれらを組み合わせて得られる2価の基であることがより好ましい。
Tが表すアルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、オクチレン基、などが挙げられ、溶媒溶解性及び電荷輸送性という理由から、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基である。
また、該アルキレン基中には、シクロアルキレン基、又はアリーレン基を含んでもよく、該シクロアルキレン基、又はアリーレン基としては後述するTが表すシクロアルキレン基、又はアリーレン基と同様のものが挙げられる。
【0047】
Tが表すシクロアルキレン基としては、具体的には、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、好ましくは、シクロヘキシレン基である。
Tが表すアリーレン基としては、具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、フェナントリレン基、ピレニレン基、トリフェニレニレン基などが挙げられ、好ましくは、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基である。
【0048】
Tとしてはアルキレン基が好ましい。
【0049】
一般式(3)中、Wは酸素原子、−NH−、又は硫黄原子を表す。化学的安定性という理由から、Wは酸素原子が好ましい。
一般式(3)中、Vは2価の連結基を表す。Vの具体例及び好ましい範囲は前記Tの具体例及び好ましい範囲と同様である。
一般式(3)中、Xは−CH−、酸素原子、又は−NH−を表す。化学的安定性という理由から、Xは酸素原子が好ましい。
【0050】
一般式(3)中、pは1〜5の整数を表し、sは0又は1を表し、uは1〜5の整数を表し、zは0又は1を表す。sが0の場合、TとVとは単結合で結合している。uが0の場合、WとXとは単結合で結合している。zが0の場合、Vは一般式(1)におけるHLと直接結合している。
【0051】
本発明におけるシロキサン化合物は、一般式(1)で表される繰り返し単位の10〜50量体であることが好ましく、より好ましくは、30〜50量体である。50量体以上では、溶媒への溶解性が低下する。10量体以上であることで、上層塗布時に溶解混合又は膨潤混合を起こさないため好ましい。
【0052】
本発明におけるシロキサン化合物は、前記一般式(1)で表される構造以外の構造単位を含んでいてもよい。含んでもよい構造単位としては、−(SiR1112O)−単位などが挙げられる。R11及びR12はそれぞれ独立にアルキル基(好ましくはメチル基)を表す。
本発明のシロキサン化合物において、−(SiR1112O)−単位の含有量は、前記一般式(1)で表される構造単位の合計の含有量に対して、好ましくは80モル%以下であり、より好ましくは50モル%以下であり、更に好ましくは−(SiR1112O)−単位を含まないことが好ましい。
【0053】
本発明におけるシロキサン化合物において、化学的安定性の低下若しくは不純物と反応することで電荷トラップサイトとなる可能性があるという理由から、前記一般式(1)で表される繰り返し単位の総量に対し、未反応部位であるSi−Hを含む前記一般式(1)で表される繰り返し単位の比率が0〜20モル%であることが好ましく、0〜10モル%であることがより好ましい。
【0054】
本発明におけるシロキサン化合物の質量平均分子量(Mw)は10〜10であることが好ましく、10〜10であることがより好ましい。本発明におけるシロキサン化合物の数平均分子量(Mn)は10〜10であることが好ましく、10〜10であることがより好ましい。本発明におけるシロキサン化合物のMw及びMnはGPCにより測定でき、より詳細には、テトラヒドロフランを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から予め求められた換算分子量較正曲線を用いて求められる。GPC装置は、HLC−8220GPC(東ソー社製)を使用できる。
本発明におけるシロキサン化合物の分散度(Mw/Mn)は1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましい。
【0055】
〔シロキサン化合物の合成方法〕
本発明におけるシロキサン化合物は、ポリメチルハイドロシロキサン等のポリアルキルハイドロシロキサン、又はポリアリールハイドロシロキサンに、2個以上のアリールアミンユニットと炭素数3以上の連結基となる部位を有するモノマーをハイドロシリレーション反応させることで得ることができる。
ハイドロシリレーション反応を用いてシロキサンポリマーを得る方法は、塩素化シランの加水分解による脱水縮合法によりシロキサンポリマーを得る方法比べて、以下の点で優れる。
i)未反応の水酸基が残り、収率が高くなる。
ii)シロキサンポリマーの分子量分布が狭く、また再現性が向上する。
iii)低分子量体の環状シロキサンが生成しない(加水分解と脱水縮合を同時進行させる合成法では、低分子量体の環状シロキサンが生成し(実験化学講座 第4版 28巻)、該環状シロキサンは揮発性が高いため、有機EL素子作製プロセス中に素子外に蒸気となって拡散することが想定される。また、環状シロキサンは経時で二酸化ケイ素、二酸化炭素、水に分解するため、製造後の素子性能低下の懸念が大きい。)。
iv)酸が生じない(塩素化シランの加水分解では塩酸が生じて、これが酸触媒として機能することで重合が進行する(実験化学講座 第4版 28巻)。酸性条件下ではアミン化合物は分解の懸念がある)。
【0056】
ポリアルキルハイドロシロキサン、又はポリアリールハイドロシロキサンは、一般的に知られた脱水縮合法により得ることができ、分子量は反応時間及び反応温度を調節することで調整できる。また、末端部位はトリアルキルシラノールによりエンドキャップが可能である。こうして得られたポリアルキルハイドロシロキサン、又はポリアリールハイドロシロキサンは分取GPCを用いることで所望の分子量成分を分布狭く得られることができる。
【0057】
2個以上のアリールアミンユニットと炭素数3以上の連結基となる部位を有するモノマーとしては、下記一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【0058】
【化13】

【0059】
(一般式(4)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Tは2価の連結基を表し、Wは酸素原子、−NH−、又は硫黄原子を表し、Vは2価の連結基を表し、Xは−CH−、酸素原子、又は−NH−を表す。pは1〜5の整数を表し、sは0又は1を表し、uは0〜5の整数を表し、zは0又は1を表す。一般式(4)中、Ar、Ar、及びArは各々独立にアリーレン基を表し、Ar、Ar、及びArは各々独立にアリール基を表す。Zは2価の連結基を表す。nは0又は1を表し、mは1以上の整数を表す。nが0の場合、ArとArは単結合で結合している。)
【0060】
一般式(4)中、R、T、W、V、X、p、s、u、zは前記一般式(3)におけるR、T、W、V、X、p、s、u、zと同様である。Ar、Ar、及びArは前記一般式(2)におけるAr、Ar、及びArと同様である。Ar、Ar、及びArは前記一般式(2)におけるAr、Ar、及びArと同様である。Z、n、mは前記一般式(2)におけるZ、n、mと同様である。
【0061】
一般式(4)で表されるモノマー化合物の具体例を以下に示すが、本発明においてはこれらに限定されない。
【0062】
【化14】

【0063】
【化15】

【0064】
【化16】

【0065】
【化17】

【0066】
【化18】

【0067】
本発明におけるシロキサン化合物を合成する際の各化合物の仕込み比(モル比)は、好ましくは、前記アルコキシシランを脱水縮合して得られる重縮合体:一般式(4)で表されるモノマー化合物が、未反応Si−Hの割合を減らすことが好ましいという理由から、1:1であり、より好ましくは0.9:1である。
【0068】
合成における反応温度は、反応性及び基質が均一系での反応という理由から、好ましくは40〜110℃であり、より好ましくは80〜110℃である。
反応時間は3時間〜48時間が好ましく、8時間〜48時間がより好ましい。
反応における触媒としては、ジシクロペンタジエニル白金触媒が好ましい。
溶媒としては、トルエンが好ましい。
また、本発明におけるシロキサン化合物の合成においては、重合開始剤は不要であり、有機電界発光素子への重合開始剤の混入による悪影響が起こらない。
【0069】
本発明において、前記シロキサン化合物は、その用途が限定されることはなく、有機電界発光素子に含まれる有機層のうちのいずれの層に含有されてもよい。前記シロキサン化合物の導入層としては、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電荷ブロック層を挙げることができ、好ましくは発光層と陽極の間の有機層であり、正孔注入層、正孔輸送層、又は電子ブロック層に含有されることがより好ましい。
前記シロキサン化合物は、シロキサン化合物が含有される有機層の全質量に対して70〜100質量%含まれることが好ましく、85〜100質量%含まれることがより好ましい。
【0070】
〔有機電界発光素子〕
本発明における有機電界発光素子について詳細に説明する。
本発明における有機電界発光素子は、基板上に、陽極及び陰極を含む一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、該陽極と該発光層との間の少なくとも一層の有機層に前記有機電界発光素子用材料を含有する。
【0071】
本発明の有機電界発光素子において、発光層は有機層であり、発光層と陽極の間に更に少なくとも一層の有機層を含むが、これら以外にも更に有機層を有していてもよい。
発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明若しくは半透明であることが好ましい。
図1は、本発明に係る有機電界発光素子の構成の一例を示している。
図1に示される本発明に係る有機電界発光素子10は、支持基板2上において、陽極3と陰極9との間に発光層6が挟まれている。具体的には、陽極3と陰極9との間に正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、正孔ブロック層7、及び電子輸送層8がこの順に積層されている。
【0072】
<有機層の構成>
前記有機層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記透明電極上に又は前記背面電極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機層は、前記透明電極又は前記背面電極上の前面又は一面に形成される。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0073】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
有機電界発光素子の素子構成、基板、陰極及び陽極については、例えば、特開2008−270736号公報に詳述されており、該公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0074】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0075】
<陽極>
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0076】
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0077】
基板、陽極、陰極については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0070〕〜〔0089〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0078】
<有機層>
本発明における有機層について説明する。
【0079】
〔有機層の形成〕
本発明の有機電界発光素子において、各有機層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式成膜法、転写法、印刷法、スピンコート法、バーコート法等の溶液塗布プロセスのいずれによっても好適に形成することができる。
【0080】
有機層のいずれか一層は本発明におけるシロキサン化合物を用いた湿式法により成膜することが特に好ましい。また、他の層については乾式法又は湿式法を適宜選択して成膜することができる。湿式法を用いると有機層を容易に大面積化することができ、高輝度で発光効率に優れた発光素子が低コストで効率よく得られ、好ましい。乾式法としては蒸着法、スパッタ法等が使用でき、湿式法としてはディッピング法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が使用可能である。これらの成膜法は有機層の材料に応じて適宜選択できる。湿式法により製膜した場合は製膜した後に乾燥してよい。乾燥は塗布層が損傷しないように温度、圧力等の条件を選択して行う。
【0081】
上記湿式製膜法(塗布プロセス)で用いる塗布液は通常、有機層の材料と、それを溶解又は分散するための溶剤からなる。溶剤は特に限定されず、有機層に用いる材料に応じて選択すればよい。溶剤の具体例としては、ハロゲン系溶剤(クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、シクロヘキサノン等)、芳香族系溶剤(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、炭酸ジエチル等)、エーテル系溶剤(テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、ジメチルスルホキシド、アルコール系溶剤(メタノール、プロパノール、ブタノールなど)、水等が挙げられる。
本発明における前記シロキサン化合物の溶媒としては、上記のうち、ケトン系溶剤、芳香族系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、又はアルコール系溶剤が好ましい。
なお、塗布液中の溶剤に対する固形分量は特に制限はなく、塗布液の粘度も製膜方法に応じて任意に選択することができる。
【0082】
〔発光層〕
本発明の有機電界発光素子において、発光層は発光材料を含有するが、該発光材料としては、燐光発光性化合物を含有することが好ましい。燐光発光性化合物は、三重項励起子から発光することができる化合物であれば特に限定されることはない。燐光発光性化合物としては、オルトメタル化錯体又はポルフィリン錯体を用いるのが好ましく、オルトメタル化錯体を用いるのがより好ましい。ポルフィリン錯体の中ではポルフィリン白金錯体が好ましい。燐光発光性化合物は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0083】
本発明でいうオルトメタル化錯体とは、山本明夫著「有機金属化学 基礎と応用」,150頁及び232頁,裳華房社(1982年)、H. Yersin著「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」,71〜77頁及び135〜146頁,Springer−Verlag社(1987年)等に記載されている化合物群の総称である。オルトメタル化錯体を形成する配位子は特に限定されないが、2−フェニルピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、2−(2−チエニル)ピリジン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体又は2−フェニルキノリン誘導体であるのが好ましい。これら誘導体は置換基を有してもよい。また、これらのオルトメタル化錯体形成に必須の配位子以外に他の配位子を有していてもよい。オルトメタル化錯体を形成する中心金属としては、遷移金属であればいずれも使用可能であり、本発明ではロジウム、白金、金、イリジウム、ルテニウム、パラジウム等を好ましく用いることができる。中でもイリジウムが特に好ましい。このようなオルトメタル化錯体を含む有機層は、発光輝度及び発光効率に優れている。オルトメタル化錯体については、特願2000−254171号の段落番号0152〜0180にもその具体例が記載されている。
【0084】
本発明で用いるオルトメタル化錯体は、Inorg.Chem.,30,1685,1991、Inorg.Chem.,27,3464,1988、Inorg.Chem.,33,545,1994、Inorg.Chim.Acta,181,245,1991、J.Organomet.Chem.,335,293,1987、J.Am.Chem.Soc.,107,1431,1985等に記載の公知の手法で合成することができる。
【0085】
発光層中の燐光発光性化合物の含有量は特に制限されないが、例えば0.1〜70質量%であり、1〜20質量%であるのが好ましい。燐光発光性化合物の含有量が0.1質量%未満であるか、又は70質量%を超えると、その効果が十分に発揮されない場合がある。
【0086】
本発明において、発光層は必要に応じてホスト化合物を含有してもよい。
【0087】
上記ホスト化合物とは、その励起状態から燐光発光性化合物へエネルギー移動が起こり、その結果、該燐光発光性化合物を発光させる化合物である。その具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、ポリシラン化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。ホスト化合物は1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0088】
発光層の厚みは10〜200nmとするのが好ましく、20〜80nmとするのがより好ましい。厚みが200nmを超えると駆動電圧が上昇する場合があり、10nm未満であると発光素子が短絡する場合がある。
【0089】
(正孔注入層、正孔輸送層)
本発明の有機電界発光素子は、正孔注入層、及び正孔輸送層を有してもよい。正孔注入層、及び正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
正孔注入層、正孔輸送層については、例えば、特開2008−270736、特開2007−266458に詳述されており、これらの公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
本発明における前記シロキサン化合物を正孔注入層、正孔輸送層、又は電子ブロック層に含有することが好ましい。
【0090】
(電子注入層、電子輸送層)
本発明の有機電界発光素子は、電子注入層、及び電子輸送層を有してもよい。電子注入層、及び電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
電子注入層、電子輸送層については、例えば、特開2008−270736、特開2007−266458に詳述されており、これらの公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0091】
(正孔ブロック層)
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノレート(Aluminum(III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate(BAlqと略記する))等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体、トリフェニレン誘導体、カルバゾール誘導体等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0092】
(電子ブロック層)
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
電子ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0093】
〔その他の有機層〕
本発明の有機電界発光素子は、特開平7−85974号、同7−192866号、同8−22891号、同10−275682号、同10−106746号等に記載の保護層を有していてもよい。保護層は発光素子の最上面に形成する。ここで最上面とは、基材、透明電極、有機層及び背面電極をこの順に積層する場合には背面電極の外側表面を指し、基材、背面電極、有機層及び透明電極をこの順に積層する場合には透明電極の外側表面を指す。保護層の形状、大きさ、厚み等は特に限定されない。保護層をなす材料は、水分や酸素等の発光素子を劣化させ得るものが素子内に侵入又は透過するのを抑制する機能を有しているものであれば特に限定されず、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム等が使用できる。
【0094】
保護層の形成方法は特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子センエピタキシ法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等が適用できる。
【0095】
〔封止〕
また、有機電界発光素子には水分や酸素の侵入を防止するための封止層を設けるのが好ましい。封止層を形成する材料としては、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとの共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリユリア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン又はジクロロジフルオロエチレンと他のコモノマーとの共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、金属(In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Tl、Ni等)、金属酸化物(MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等)、金属フッ化物(MgF、LiF、AlF、CaF等)、液状フッ素化炭素(パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等)、該液状フッ素化炭素に水分や酸素の吸着剤を分散させたもの等が使用可能である。
【0096】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0097】
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【実施例】
【0098】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0099】
(実施例1)
<シロキサンポリマーの合成>
まず、以下のスキームに従って、モノマーである化合物1e、1f、1g、1h、1n,1sを合成した。
【0100】
【化19】

【0101】
【化20】

【0102】
(化合物1aの合成)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(東京化成製)(4.2g)と1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(東京化成製)(4.4g)を不活性雰囲気下、トルエン溶液(1800mL)中で10分間撹拌した後に、N−フェニル−1−ナフチルアミン(東京化成製)(80g),4−4’ジブロモビフェニル(和光純薬製)(204.8g)及びナトリウム tert−ブトキシド(東京化成製)(42.1g)を添加した。不活性雰囲気下、100℃で6時間反応させた後、水及び酢酸エチルを注加した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/30)することにより、化合物1a(147.8g)を得た。
【0103】
(化合物1bの合成)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(4g)と1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(3.6g)を不活性雰囲気下、トルエン溶液(2800mL)中で10分間撹拌した後に、化合物1a(144g),1−ナフチルアミン(東京化成製)(122.4g)及びナトリウム tert−ブトキシド(39.2g)を添加した。不活性雰囲気下、100℃で6時間反応させた後、水及び酢酸エチルを注加した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/20)することにより、化合物1b(122g)を得た。
【0104】
(化合物1cの合成)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(1.34g),2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−ジメチルアミノビフェニル(東京化成製)(1.02g),化合物1b(60g)及び4−ブロモアニソール(東京化成製)(24g)のTHF溶液(140mL)中に, 室温、不活性雰囲気下でヘキサメチルジシラザン リチウム(1.6mol/L THF溶液)を滴下した後、温度を65℃まで上げ、2時間撹拌した。反応終了後、水及び酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=2/1)することにより、化合物1c(24g)を得た。
【0105】
(化合物1dの合成)
化合物1c(16g)のジクロロメタン溶液中に、氷冷下で1M 3臭化ホウ素 in CHCl(Aldrich製)(34mL)を滴下した。その後、室温まで温度を上昇させ、1時間撹拌した。反応終了後、水及び酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/3)することにより、化合物1d(15.2g)を得た。
【0106】
(化合物1eの合成)
化合物1d(0.6g)、5−ブロモ−1−ペンテン(東京化成製)(0.17g)及び炭酸カリウム(0.54g)を、不活性雰囲気下、ジメチルアセトアミド(6.5mL)中で12時間撹拌させた。反応終了後、水及び酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をトルエン溶媒中で再結晶することにより、化合物1e(0.53g)を得た。
【0107】
(化合物1fの合成)
化合物1d(0.6g)、7−ブロモ−1−ヘプテン(Aldrich製)(0.2g)及び炭酸カリウム(0.54g)を、不活性雰囲気下、ジメチルアセトアミド(6.5mL)中で12時間撹拌させた。反応終了後、水及び酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をトルエン溶媒中で再結晶することにより、化合物1f(0.59g)を得た。
【0108】
(化合物1gの合成)
化合物1d(0.6g)、10−ブロモ−1−デセン(Aldrich製)(0.25g)及び炭酸カリウム(0.54g)を、不活性雰囲気下、ジメチルアセトアミド(6.5mL)中で12時間撹拌させた。反応終了後、水及び酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をトルエン溶媒中で再結晶することにより、化合物1g(0.63g)を得た。
【0109】
(化合物1hの合成)
化合物1b(3.2g)、4−ブロモスチレン(東京化成製)(1.37g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(東京化成製)(0.11g)、2,8,9−トリイソブチル−2,5,8,9−テトラアザ−1−ホスファビシクロ[3.3.3]ウンデセン(Aldrich製)(86mg)及びナトリウム ターシャリーブトキシド(東京化成製)(2.1g)を、不活性雰囲気下、脱水トルエン(50mL)中で12時間撹拌させた。反応終了後、水及び酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をトルエン溶媒中で再結晶することにより、化合物1h(3.15g)を得た。
【0110】
(化合物1iの合成)
パラジブロモベンゼン(東京化成製)(76g)のジエチルエーテル溶液(1000mL)中に、0℃、不活性雰囲気下、n−ブチルリチウム(in hexane,1.56M)(和光純薬製)(204mL)を滴下した。2時間撹拌した後、ジクロロジフェニルシラン(東京化成製)(40.4g)のジエチルエーテル溶液を滴下し、4時間撹拌した。反応終了後、無機塩を除去し、水及びジエチルエーテルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をヘキサン溶媒中で再結晶することにより、化合物1i(52.7g)を得た。
【0111】
(化合物1jの合成)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(東京化成製)(0.65g)と1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(東京化成製)(0.68g)を不活性雰囲気下、トルエン溶液(280mL)中で10分間撹拌した後に、N−フェニル−1−ナフチルアミン(東京化成製)(12.3g),化合物1i(50g)及びナトリウム tert−ブトキシド(東京化成製)(6.48g)を添加した。不活性雰囲気下、100℃で6時間反応させた後、水及び酢酸エチルを注加した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/30)することにより、化合物1j(63.2g)を得た。
【0112】
(化合物1kの合成)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(1.2g)と1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(1.1g)を不活性雰囲気下、トルエン溶液(850mL)中で10分間撹拌した後に、化合物1j(60g),1−ナフチルアミン(東京化成製)(36.7g)及びナトリウム tert−ブトキシド(11.8g)を添加した。不活性雰囲気下、100℃で6時間反応させた後、水及び酢酸エチルを注加した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/20)することにより、化合物1k(49.5 g)を得た。
【0113】
(化合物1lの合成)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0.45g),2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−ジメチルアミノビフェニル(東京化成製)(0.35g),化合物1k(25g)及び4−ブロモアニソール(東京化成製)(8.2g)のTHF溶液(50mL)中に,室温、不活性雰囲気下でヘキサメチルジシラザン リチウム(1.6mol/L THF溶液)を滴下した後、温度を65℃まで上げ、2時間撹拌した。反応終了後、水及び酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=2/1)することにより、化合物1l(17.6g)を得た。
【0114】
(化合物1mの合成)
化合物1l(16g)のジクロロメタン溶液中に、氷冷下で1M 3臭化ホウ素 in CHCl(Aldrich製)(34mL)を滴下した。その後、室温まで温度を上昇させ、1時間撹拌した。反応終了後、水及び酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/3)することにより、化合物1m(15.2g)を得た。
【0115】
(化合物1nの合成)
化合物1m(5g)、5−ブロモ−1−ペンテン(東京化成製)(1.1g)及び炭酸カリウム(3.5g)を、不活性雰囲気下、ジメチルアセトアミド(42mL)中で12時間撹拌させた。反応終了後、水及び酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をトルエン溶媒中で再結晶することにより、化合物1n(3.3g)を得た。
【0116】
(化合物1sの合成)
上記スキームに示すとおり、化合物1aから化合物1eを合成した場合と同様の合成方法により化合物1oから化合物1sを13g得た。
【0117】
<アリールアミンペンダント型シロキサンポリマー1の合成>
(合成例1)
化合物1e(0.5g)とポリ(メチルハイドロシロキサン)(分子量=2,100〜2,400,MeHSiOのmol%=100%,以下本ポリマーから合成したアリールアミンペンダント型シロキサンポリマーを35量体とよぶ)(43mg)のトルエン溶液を、窒素雰囲気下、80度で10分間撹拌した。その反応溶液中にジクロロ(ジシクロペンタジエン)白金を10mg添加した後、12時間撹拌した。反応溶液を減圧にて濃縮し、濃縮液をIPA(イソプロピルアルコール)溶媒中へと滴下して沈殿物を得た。その沈殿物のトルエン溶液からイソプロピルアルコール/酢酸エチル=3/2溶媒への再沈殿精製を複数回繰り返すことで過剰量の化合物1eを除去した。得られたアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー1の分子量はMn=14,900,Mw=23,800であり、構造はNMRで確認した。また、このアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー1のGPC及びNMR測定から未反応Si−Hは6mol%であることが分かった(未反応Si−Hは以下計算式より求めた)。
未反応Si−Hの割合=(100%反応した場合の理論分子量−GPC測定から求めた分子量)/59(MeSiOの分子量)/MeSiOのユニット数(合成例1では35)
【0118】
<アリールアミンペンダント型シロキサンポリマー2の合成>
(合成例2)
前記化合物1e(5g)とポリ(メチルハイドロシロキサン)(分子量=700〜800,MeHSiOのmol%=100%,以下本ポリマーをから合成したアリールアミンペンダント型シロキサンポリマーを10量体とよぶ)(51mg)を実施例1と同様の方法でアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー2(3.7g)を合成した。得られたアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー2の分子量はMn=6,700,Mw=7,300であり、構造はNMRで確認した。また、このアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー2のGPC及びNMR測定から未反応Si−Hは確認されなかった。
【0119】
<アリールアミンペンダント型シロキサンポリマー3の合成>
(合成例3)
前記化合物1e(2.8g)とポリ(メチルハイドロシロキサン)(分子量=2,900〜3,300,MeHSiOのmol%=100%,以下本ポリマーをから合成したアリールアミンペンダント型シロキサンポリマーを50量体とよぶ)(170mg)を実施例1と同様の方法でアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー3(0.27g)を合成した。得られたアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー3の分子量はMn=18,900, Mw=32,700であり、構造はNMRで確認した。また、このアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー3のGPC及びNMR測定から未反応Si−Hは10mol%であることが分かった。
【0120】
<アリールアミンペンダント型シロキサンポリマー4の合成>
(合成例4:比較例)
化合物1h(2g)とポリ(メチルハイドロシロキサン)(35量体)(190mg)を実施例1と同様の方法でアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー4(1.18g)を合成した。得られたアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー4の分子量はMn=11,400, Mw=16,900であり、構造はNMRで確認した。また、このアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー4のGPC及びNMR測定から未反応Si−Hは20mol%であることが分かった。
【0121】
<アリールアミンペンダント型シロキサンポリマー5の合成>
(合成例5)
化合物1f(0.4g)とポリ(メチルハイドロシロキサン)(35量体)(33mg)を実施例1と同様の方法でアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー5(0.21g)を合成した。得られたアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー5の分子量はMn=17,700, Mw=24,700であり、構造はNMRで確認した。また、このアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー5のGPC及びNMR測定から未反応Si−Hは5mol%であることが分かった。
【0122】
<アリールアミンペンダント型シロキサンポリマー6の合成>
(合成例6)
化合物1g(0.5g)とポリ(メチルハイドロシロキサン)(35量体)(37mg)を実施例1と同様の方法でアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー6(0.37g)を合成した。得られたアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー6の分子量はMn=13,500, Mw=25,300であり、構造はNMRで確認した。また、このアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー6のGPC及びNMR測定から未反応Si−Hは9mol%であることが分かった。
【0123】
<アリールアミンペンダント型シロキサンポリマー7の合成>
(合成例7)
化合物1n(1.5g)とポリ(メチルハイドロシロキサン)(35量体)(102mg)を実施例1と同様の方法でアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー9(0.65 g)を合成した。得られたアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー9の分子量はMn=18,000,Mw=30,100であり、構造はNMRで確認した。また、このアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー9のGPC及びNMR測定から未反応Si−Hは7mol%であることが分かった。
【0124】
<アリールアミンペンダント型シロキサンポリマー8の合成>
(合成例8)
化合物1s(2g)とポリ(メチルハイドロシロキサン)(35量体)(194mg)を実施例1と同様の方法でアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー10(1.1g)を合成した。得られたアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー10の分子量はMn=13,700,Mw=21,900であり、構造はNMRで確認した。また、このアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー10のGPC及びNMR測定から未反応Si−Hは6mol%であることが分かった。
【0125】
<アリールアミンペンダント型シロキサンポリマー9の合成>
(合成例9)
化合物1e(0.35g)とポリ(エチルハイドロシロキサン)(35量体)(43mg)を実施例1と同様の方法でアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー11(0.27g)を合成した。得られたアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー11の分子量はMn=15,800,Mw=24,000であり、構造はNMRで確認した。また、このアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー9のGPC及びNMR測定から未反応Si−Hは20mol%であることが分かった。
【0126】
<アリールアミンペンダント型メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー10の合成>
(合成例10)
化合物1e(0.5g)とメチルハイドロシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー(15量体:アズマックス製 HMS−501)(98mg)を実施例1と同様の方法でアリールアミンペンダント型メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー12(0.1g)を合成した。得られたアリールアミンペンダント型メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー12の分子量はMn=2,800,Mw=5,000であり、構造はNMRで確認した。また、このアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー9のGPC及びNMR測定から未反応Si−Hは9mol%であることが分かった。
【0127】
また、比較のため、特開2000−80167号公報を参照してシロキサンポリマー11を合成した。
【0128】
【化21】

【0129】
【化22】

【0130】
(実施例1)
<積層適正の検証(飽和溶解度)>
合成例1〜10で得られたアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー1〜10、比較例としてシロキサンポリマー11、及びNPDの粉体を黄色灯下でバイアル瓶に秤量し、溶剤量を所定量加えた後、超音波を1時間かけた。0.2μmフィルターでろ過した溶液を石英セルに入れ、紫外可視分光光度計(島津製作所UV−2400)にて吸光度を測定した。濃度を変えた溶液を3種作製し、吸光度を算出することで検量線を作成した。これらの濃度よりも高い濃度にて飽和溶液を調整し、その吸光度と検量線より、飽和溶解度を算出した。
【0131】
【表1】

【0132】
【表2】

【0133】
以上の結果から分かるように、本発明の実施例のアリールアミンペンダント型シロキサンポリマーを用いることで、例えば表中の2種類の溶媒間で10以上の溶媒溶解度差を付けることが可能になる。
【0134】
(実施例2)
<塗布性(成膜性)の検証>
実施例1で作製した飽和溶液をガラス基板上に滴下し、減圧下、120℃で2時間乾燥した。乾燥後の膜の形態を目視にて観察することで成膜性を確認した。
【0135】
【表3】

【0136】
表3において、「アモルファス膜」と記載した膜は透明な膜であった。
以上の結果から分かるようにリンカーを介して合成された本発明のシロキサンポリマーの成膜性は、低分子アリールアミンやリンカーを介さない、又はリンカーの炭素数が2以下であるシロキサンポリマーと比較して、高い成膜性を示すことが分かる。
【0137】
(実施例3)
<塗布型有機EL素子評価>
(素子作製手順)
(塗布液1の調整)
シロキサンポリマー1(0.4質量%)に電子工業用キシレン(関東化学製)(99.6質量%)を混合し、有機電界発光素子用塗布液(塗布液1)を得た。
【0138】
(塗布液2〜12の調整)
塗布液2〜12は対応するシロキサンポリマー2〜11若しくはα−NPDを用いた以外は、塗布液1と同様の方法で調整した。
【0139】
(有機EL素子Aの作製)
25mm×25mm×0.7mmのガラス基板上にITOを150mmの厚さで蒸着し成膜したものを透明支持基板とした。この透明支持基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。
このITOガラス基板上に、PTPDES−2(ケミプロ化成製)(0.4質量%)を電子工業用シクロヘキサノン(関東化学製)(99.6質量%)に溶解、スピンコートした後、120℃で30分間乾燥と160℃で10分間アニール処理することで、正孔注入層を成膜した(膜厚約40nm)。
この上に塗布液1をグローブボックス(露点−68℃、酸素濃度10ppm)内でスピンコートし、正孔輸送層とした(膜厚約10nm)。
更に、発光材料としてIr(ppy)とホスト材料としてCBPを質量比5:95となるように、共蒸着にて成膜し発光層とした(膜厚約30nm)。
次いで、その上に、真空蒸着法にてBAlqを膜厚40nmに蒸着し電子注入層とした(膜厚約40nm)。
そして、この上にフッ化リチウムを1nm蒸着し、更に金属アルミニウムを100nm蒸着し、陰極とした。
作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止した。
このようにして有機EL素子Aを作製した。
【0140】
(有機EL素子B〜Nの作製)
正孔輸送層の成膜に塗布液2〜12を用いる他は、有機EL素子Aと同様にして有機EL素子B〜Nを作製した。
【0141】
(素子駆動電圧及び素子耐久性評価)
初期の発光輝度1000cd/mで、室温において、作製した素子に定電流を印加した際の電圧と、連続的に駆動を行い、発光輝度が1/2に低下するまでの時間を測定した。結果を表4に示す。
【0142】
【表4】

【0143】
以上の結果から分かるように本発明のシロキサンポリマーを用いた素子は電圧及び輝度半減期において、比較例よりも大幅に素子性能が向上している。更に本発明の中でも、リンカーの炭素数が5である場合が最も素子性能が高い結果となった。これは、リンカーを介すことでアリールアミン部位の重なりが増し、電荷移動度が向上したと考えられる。リンカーの炭素数が10の場合は絶縁性のリンカー部分の割合が増すため、電荷移動度がリンカーの炭素数が5である場合よりも低下したものと考えられる。
【0144】
【化23】

【符号の説明】
【0145】
2・・・基板
3・・・陽極
4・・・正孔注入層
5・・・正孔輸送層
6・・・発光層
7・・・正孔ブロック層
8・・・電子輸送層
9・・・陰極
10・・・有機電界発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するシロキサン化合物である有機電界発光素子用材料。
【化1】

(一般式(1)中、Rはアルキル基、又はアリール基を表し、Lは炭素数3以上の2価の連結基を表し、HLは2個以上のトリアリールアミンユニットを含む基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)におけるHLが下記一般式(2)で表される、請求項1に記載の有機電界発光素子用材料。
【化2】

(一般式(2)中、Ar、Ar、及びArは各々独立にアリーレン基を表し、Ar、Ar、及びArは各々独立にアリール基を表す。Zは2価の連結基を表す。nは0又は1を表し、mは1以上の整数を表す。nが0の場合、ArとArは単結合で結合している。*2は一般式(1)におけるLと結合する部位を表す。)
【請求項3】
前記一般式(1)におけるLが下記一般式(3)で表される、請求項1又は2に記載の有機電界発光素子用材料。
【化3】

(一般式(3)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Tは2価の連結基を表し、Wは酸素原子、−NH−、又は硫黄原子を表し、Vは2価の連結基を表し、Xは−CH−、酸素原子、又は−NH−を表す。pは1〜5の整数を表し、sは0又は1を表し、uは0〜5の整数を表し、zは0又は1を表す。*3は一般式(1)におけるケイ素原子と結合する部位を表し、*4は一般式(1)におけるHLと結合する部位を表す。)
【請求項4】
前記シロキサン化合物において、前記一般式(1)で表される繰り返し単位の総量に対し、未反応部位であるSi−Hを含む前記一般式(1)で表される繰り返し単位の比率が0〜10%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
【請求項5】
前記シロキサン化合物が前記一般式(1)で表される繰り返し単位の10〜50量体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
【請求項6】
前記一般式(2)が下記一般式(5)で表される、請求項2〜5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
【化4】

(一般式(5)中、R51〜R78はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シリル基を表す。ただし、R51〜R55のうちいずれか1つと、一般式(1)におけるLとが結合する。Zは単結合又は2価の連結基を表す。)
【請求項7】
前記一般式(2)が下記一般式(6)で表される、請求項2〜5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
【化5】

(一般式(6)中、R51〜R82はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シリル基を表す。ただし、R51〜R55のうちいずれか1つと、一般式(1)におけるLとが結合する。Zは単結合又は2価の連結基を表す。)
【請求項8】
前記一般式(2)が下記一般式(7)で表される、請求項2〜5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
【化6】

(一般式(7)中、R51〜R82はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、又はシリル基を表す。ただし、R51〜R55のうちいずれか1つと、一般式(1)におけるLとが結合する。Zは単結合又は2価の連結基を表す。)
【請求項9】
基板上に、陽極及び陰極を含む一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、該陽極と該発光層との間の少なくとも一層の有機層に、請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含有する有機電界発光素子。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を正孔注入層に含有する、請求項9に記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を正孔輸送層に含有する、請求項9記載の有機電界発光素子。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含有する層を湿式法にて作製する、請求項9〜11のいずれか1項に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含有する膜。

【図1】
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【公開番号】特開2012−15337(P2012−15337A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150594(P2010−150594)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】