説明

有機電界発光素子

【課題】発光特性に優れる有機電界発光素子と、その発光素子を提供するために好適な金属錯体化合物を提供する。
【解決手段】一対の電極間に、発光層を含む有機化合物層を有する有機電界発光素子であって、該有機化合物層に、4座配位子を有し、該配位子の連結基上に特定のアルキル基を有する金属錯体を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」ともいう)に関するものであり、特に発光特性に優れる有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、低電圧駆動で高輝度の発光が得られることから、近年活発な研究開発が行われている。一般に有機EL素子は、発光層を含む有機化合物層および該層を挟んだ一対の電極から構成されており、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が発光層において再結合し、生成した励起子のエネルギーを発光に利用するものである。
【0003】
近年、燐光発光材料を用いることにより、素子の高効率化が進んでいる。燐光発光材料としてはイリジウム錯体や白金錯体などが知られているが(例えば特許文献1〜3参照)、耐久性や発光特性に優れた素子の開発には至っておらず、これらの特性を改善した燐光材料の開発が切望されているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6303238号明細書
【特許文献2】国際公開第00/57676号パンフレット
【特許文献3】国際公開第05/42444号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、発光特性に優れる有機電界発光素子の提供にある。またその発光素子を提供するために好適な金属錯体化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、4座配位子を有し、該配位子の連結基上に特定のアルキル基を有する金属錯体(特に下記一般式(1)または(2)で表される金属錯体)を有機化合物層に含有することにより、該有機化合物層中での金属錯体同士の会合、及び/又は該有機化合物層で用いられる他の有機材料との会合が抑制され、発光特性に優れる有機電界発光素子が得られることを見出した。
すなわち本発明は下記の通りである。
【0007】
〔1〕一対の電極間に、発光層を含む有機化合物層を有する有機電界発光素子であって、下記一般式(1)で表される4座配位子を有する金属錯体の少なくとも一種を有機化合物層に含有することを特徴とする有機電界発光素子。一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(一般式(1)中、Q21、Q22 はそれぞれ独立に、金属に配位する原子群を表す。Q23は、L23と炭素原子で結合し、金属に配位する原子群を表し、Q24は、L21と炭素原子で結合し、金属に配位する原子群を表す。L21、L22、L23、及びL24はそれぞれ独立に、単結合または連結基を表す。L21、L22、L23、及びL24のうち少なくとも1つは連結基であり、そのうちの少なくとも1つ以上の連結基上に、少なくとも1つ以上の下記置換基Rを有する。M21は金属イオンを表す。金属イオンとQ21、Q22、Q23、Q24との結合はそれぞれ共有結合でも、配位結合、イオン結合でも良い。nは0または1を表す。但し、n=0の場合、Q23とQ24は連結しない。
置換基R:置換基Rは下記一般式(R−1)〜(R−9)で表される3級もしくは4級炭素を有する炭素数3〜20の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
【0010】
【化2】

【0011】
一般式(R−1)において、R1Aは、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR1Aはそれぞれ同じでも、異なっていても良い。2つのR1Aは互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(R−2)において、R2Aは、3つのR2Aの合計が炭素数4以上を満たす、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR2Aはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。但し、3つのR2Aが互いに結合して環を形成することはない。
一般式(R−3)において、R3Aは、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR3Aはそれぞれ同じでも、異なっていても良い。複数のR3Aは互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(R−5)において、R5Aは、2つのR5Aの合計が炭素数4以上を満たす、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR5Aはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。複数のR5Aは互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(R−7)において、sは1以上の整数を表す。sは、一般式(R−7)で表される基の炭素数が20以下であれば任意の整数を取ることができ、s=1の場合、R7Aは、2つのR7Aの合計が炭素数4以上を満たす置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR7Aはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。sが1より大きい場合は、R7Aは、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表す。複数のR7Aは可能であれば互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(R−8)において、sは1以上の整数を表す。sは、一般式(R−8)で表される基の炭素数が20以下であれば任意の整数を取ることができる。R8Aは、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR8Aはそれぞれ同じでも、異なっていても良い。複数のR8Aは互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(R−9)において、sは1以上の整数を表す。sは、一般式(R−9)で表される基の炭素数が20以下であれば任意の整数を取ることができる。)Q9Aは、炭素原子を含み芳香族環または芳香族ヘテロ環を形成するアリール基、ヘテロアリール基を表す。Q9Aは置換基を有していても良い。)
〔2〕一般式(1)が下記一般式(2)で表されることを特徴とする上記〔1〕に記載の有機電界発光素子。
一般式(2)
【0012】
【化3】

【0013】
(一般式(2)中、R61、R62はそれぞれ独立に、水素原子もしくは置換基を表す。但しR61、R62の少なくとも1つは、前記置換基Rを表す。R63、R64、R65、R66、R67、及びR68はそれぞれ独立に、水素原子もしくは置換基を表す。Qはそれぞれ独立に、2つの炭素原子を含み炭素原子で金属に配位する原子群を表す。L64は、単結合または連結基を表す。M61は金属イオンを表す。nは0または1を表す。但し、n=0の場合、QとQは連結しない。)
〔3〕上記一般式(2)において、R61、R62の少なくとも1つがイソブチル基であることを特徴とする上記〔2〕に記載の有機電界発光素子。
〔4〕下記一般式(2)で表されることを特徴とする化合物。
一般式(2)
【0014】
【化4】

【0015】
(一般式(2)中、R61、R62はそれぞれ独立に、水素原子又は、置換基を表す。但しR61、R62の少なくとも1つは、下記置換基Rを表す。R63、R64、R65、R66、R67、及びR68はそれぞれ独立に、水素原子もしくは置換基を表す。Qはそれぞれ独立に、2つの炭素原子を含み炭素原子で金属に配位する原子群を表す。L64は、単結合または連結基を表す。M61は金属イオンを表す。nは0または1を表す。但し、n=0の場合、QとQは連結しない。
置換基R:置換基Rは下記一般式(R−1)〜(R−9)で表される3級もしくは4級炭素を有する炭素数3〜20の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
【0016】
【化5】

【0017】
一般式(R−1)において、R1Aは、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR1Aはそれぞれ同じでも、異なっていても良い。2つのR1Aは互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(R−2)において、R2Aは、3つのR2Aの合計が炭素数4以上を満たす、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR2Aはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。但し、3つのR2Aが互いに結合して環を形成することはない。
一般式(R−3)において、R3Aは、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR3Aはそれぞれ同じでも、異なっていても良い。複数のR3Aは互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(R−5)において、R5Aは、2つのR5Aの合計が炭素数4以上を満たす、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR5Aはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。複数のR5Aは互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(R−7)において、sは1以上の整数を表す。sは、一般式(R−7)で表される基の炭素数が20以下であれば任意の整数を取ることができ、s=1の場合、R7Aは、2つのR7Aの合計が炭素数4以上を満たす置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR7Aはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。sが1より大きい場合は、R7Aは、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表す。複数のR7Aは可能であれば互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(R−8)において、sは1以上の整数を表す。sは、一般式(R−8)で表される基の炭素数が20以下であれば任意の整数を取ることができる。R8Aは、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR8Aはそれぞれ同じでも、異なっていても良い。複数のR8Aは互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(R−9)において、sは1以上の整数を表す。sは、一般式(R−9)で表される基の炭素数が20以下であれば任意の整数を取ることができる。)Q9Aは、炭素原子を含み芳香族環または芳香族ヘテロ環を形成するアリール基、ヘテロアリール基を表す。Q9Aは置換基を有していても良い。)
〔5〕発光層中に、少なくとも1種の一般式(1)または(2)で表される化合物と、少なくとも1種のホスト材料を含有することを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
〔6〕発光層中に、少なくとも1種の一般式(1)または(2)で表される化合物と、少なくとも1種の燐光発光材料を含有することを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一般式(1)または(2)で表される錯体(本明細書において「本発明の錯体」と同義で用いる。)を有機化合物層に含有することにより、発光特性に優れる有機電界発光素子(本明細書において「本発明の素子」と同義で用いる。)が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明書において置換基群Aとは以下のように定義される。
【0020】
(置換基群A)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、
【0021】
アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、
【0022】
スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、
【0023】
スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環(ヘテロアリール)基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられ、具体的にはイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。
【0024】
本発明の素子について詳細に説明する。本発明の素子は、一対の電極間に少なくとも一層の有機化合物層を有する。有機化合物層が一層である場合には、有機化合物層として発光層を有する。素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明もしくは半透明であることが好ましい。
【0025】
本発明の素子は、有機化合物層に特定の構造を有する4座配位子を有する錯体を含有することを特徴とする。有機化合物層としては特に限定されないが、発光層の他に、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、励起子ブロック層、保護層などを有していてもよい。またこれらの各層は、それぞれ他の機能を兼備していても良い。
【0026】
本発明における有機化合物層の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。更に、正孔輸送層と発光層との間、又は、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。尚、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0027】
本発明の錯体は、有機化合物層が複数の層からなる場合、いずれの層にも含有することができる。本発明の錯体は、発光層に含有されることが好ましく、発光材料またはホスト材料として発光層に含有されることがより好ましく、発光材料として発光層に含有されることがさらに好ましく、少なくとも一種のホスト材料と共に発光層に含有されることが特に好ましい。
【0028】
本発明に用いることのできる燐光発光材料(本発明の錯体及び/又は併用する燐光発光材料)の含有量は、発光層の総質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下の範囲が好ましく、0.2質量%以上30質量%以下の範囲がより好ましく、0.3質量%以上20質量%以下の範囲がさらに好ましく、0.5質量%以上15質量%以下の範囲が最も好ましい。
【0029】
ホスト材料とは、発光層において主に電荷の注入、輸送を担う化合物であり、また、それ自体は実質的に発光しない化合物のことである。本明細書において「実質的に発光しない」とは、該実質的に発光しない化合物からの発光量が好ましくは素子全体での全発光量の5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは1%以下であることをいう。
【0030】
発光層中のホスト材料の濃度は、特に限定されないが、発光層中において主成分(含有量が一番多い成分)であることが好ましく、50質量%以上99.9質量%以下がより好ましく、70質量%以上99.8質量%以下がさらに好ましく、80質量%以上99.7質量%以下が特に好ましく、90質量%以上99.5質量%以下が最も好ましい。
【0031】
前記ホスト材料のガラス転移点は、100℃以上500℃以下であることが好ましく、110℃以上300℃以であることがより好ましく、120℃以上250℃以下であることがさらに好ましい。
【0032】
本発明の発光層に含まれるホスト材料の膜状態での蛍光波長は、400nm以上650nm以下の範囲であることが好ましく、420nm以上600nm以下の範囲であることがより好ましく、440nm以上550nm以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0033】
本発明に用いるホスト材料としては、特開2002−100476公報の段落0113〜0161に記載の化合物及び特開2004−214179公報の段落0087〜0098に記載の化合物を好適に用いることができるが、これらに限定されることはない。
【0034】
本発明の錯体を発光層以外の層(例えば電荷輸送層等)に導入する場合には、該層中において10質量%〜100質量%含まれることが好ましく、より好ましくは30質量%〜100質量%含まれることが好ましい。
【0035】
以下、本発明の錯体について詳細に説明する。
一般式(1)について説明する。Q21、Q22はそれぞれ独立に金属に配位する(配位により形成される結合としては、例えば配位結合、共有結合、イオン結合がある)原子群を表す。Q21、Q22は金属に配位する原子群であれば、特に限定されないが、炭素原子で配位する原子群、窒素原子で配位する原子群、酸素原子で配位する原子群、硫黄原子で配位する原子群、りん原子で配位する原子群が好ましく、炭素原子で配位する原子群、窒素原子で配位する原子群、酸素原子で配位する原子群がより好ましく、炭素原子で配位する原子群、窒素原子で配位する原子群がさらに好ましい。
【0036】
炭素原子で配位する原子群としては、例えば芳香族炭化水素(アリール)基(ベンゼン、ナフタレンなど)、ヘテロ環基(チオフェン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、チアゾール、オキサゾール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾールなど)およびこれらを含む縮合環、およびこれらの互変異性体が挙げられる。これらの基は、さらに置換基を有していても良い。置換基の例としては、前述の置換基群Aで説明する基が挙げられる。
【0037】
窒素原子で配位する原子群としては、例えば含窒素ヘテロ環基(ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、チアゾール、オキサゾール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾールなど)、アミノ基(アルキルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばメチルアミノ)、アリールアミノ基(例えばフェニルアミノ)などが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、イミノ基などが挙げられる。これらの基はさらに置換されていても良い。置換基の例としては、前述の置換基群Aで説明する基が挙げられる。
【0038】
酸素原子で配位する原子群としては、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)、カルボニル基(例えばケトン基、エステル基、アミド基など)、エーテル基(例えばジアルキルエーテル基、ジアリールエーテル基、フリル基など)などが挙げられる。これらの基はさらに置換されていても良い。置換基の例としては、前述の置換基群Aで説明する基が挙げられる。
【0039】
硫黄原子で配位する原子群としては、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミダゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、チオカルボニル基(例えばチオケトン基、チオエステル基など)、チオエーテル基(例えばジアルキルチオエーテル基、ジアリールチオエーテル基、チオフリル基など)などが挙げられる。これらの基はさらに置換されていても良い。置換基の例としては、前述の置換基群Aで説明する基が挙げられる。
【0040】
りん原子で配位する原子群としては、ジアルキルホスフィノ基、ジアリールホスフィノ基、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、ホスフィニン基等があげられる。これらの基はさらに置換されていても良い。置換基の例としては、前述の置換基群Aで説明する基が挙げられる。
【0041】
21、Q22は、炭素原子で配位する原子群、窒素原子で配位する原子群、酸素原子で配位する原子群が好ましく、炭素原子で配位する芳香族炭化水素基、炭素原子で配位するヘテロ環基、窒素原子で配位するヘテロ環基がより好ましく、炭素原子で配位する芳香族炭化水素基、窒素原子で配位するヘテロ環基がさらに好ましく、炭素原子で配位する6員環もしくは5員環構造を有する芳香族炭化水素基、窒素原子で配位する6員環もしくは5員環構造を有するヘテロ環基が特に好ましい。Q21、Q22は可能であれば前述の置換基群Aから選ばれる置換基を有していても良い。
【0042】
23は、L23と炭素原子で結合し、金属原子に配位する原子群を表す。L23と炭素原子に結合可能で、金属に配位可能である原子群であれば特に限定されない。金属に配位する原子群としては、Q21で説明したものが挙げられる。その中でも、炭素原子で配位する原子群、窒素原子で配位する原子群、酸素原子で配位する原子群が好ましく、炭素原子で配位する芳香族炭化水素基、炭素原子で配位するヘテロ環基、窒素原子で配位するヘテロ環基、酸素原子で配位するアリールオキシ基、酸素原子で配位するヘテロアリールオキシ基がより好ましく、炭素原子で配位する芳香族炭化水素基、炭素原子で配位するヘテロ環基、窒素原子で配位するヘテロ環基が特に好ましい。Q23は可能であれば前述の置換基群Aから選ばれる置換基を有していても良い。
【0043】
24は、L21と炭素原子で結合し、金属原子に配位する原子群を表す。L21と炭素原子に結合可能で、金属に配位可能である原子群であれば特に限定されない。金属に配位する原子群としては、Q21で説明したものが挙げられる。好ましい範囲は、上記Q23と同義である。
【0044】
nは0または1である。但し、n=0の場合、Q23とQ24は連結しない。
【0045】
21、L22、L23及びL24はそれぞれ独立に単結合または連結基を表す。L21、L22、L23及びL24で表される連結基としては、特に限定されないが例えばアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロ環連結基、酸素原子連結基、硫黄原子連結基、ケイ素原子連結基、イミノ連結基、カルボニル連結基、及びこれらの組み合わせからなる連結基が挙げられる。
【0046】
21、L22、L23及びL24として好ましくは、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロ環連結基、酸素原子連結基、硫黄原子連結基、ケイ素原子連結基、イミノ連結基、カルボニル連結基、及びこれらの組み合わせからなる連結基であり、より好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環連結基、酸素原子連結基、及びこれらの組み合わせからなる連結基であり、更に好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基及びこれらの組み合わせからなる連結基である。
【0047】
但し、L21、L22、L23及びL24のうち少なくとも1つは連結基であり、そのうちの少なくとも1つ以上の連結基上に、少なくとも一つ以上の下記置換基Rを有する。
【0048】
以下、置換基Rについて説明する。置換基Rは下記一般式(R−1)〜(R−9)で表される3級もしくは4級炭素を有する炭素数3〜20の無置換(もしくは置換)アルキル基を表す。この中でも、一般式(R−3)〜(R−9)で表される基が好ましく、一般式(R−4)〜(R−9)で表される基がより好ましく、一般式(R−4)、(R−5)、(R−9)で表される基が更にこのましく、一般式(R−4)で表される基が最も好ましい。
【0049】
【化6】

【0050】
一般式(R−1)について説明する。R1Aは、アルキル基またはアリール基を表し、複数のR1Aはそれぞれ同じでも、異なっていても良い。アルキル基またはアリール基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、フェニル基が更に好ましい。R1Aは、可能であれば、前述の置換基群Aから選ばれる置換基を有していて良い。2つのR1Aは可能であれば互いに結合して環を形成しても良い。
2つのR1Aが互いに結合することにより形成される環としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0051】
一般式(R−2)について説明する。R2Aは、3つのR2Aの合計が炭素数4以上を満たすアルキル基またはアリール基を表し、複数のR2Aはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。アルキル基またはアリール基としては、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基が好ましく、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基がより好ましく、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、フェニル基が更に好ましい。R2Aは、可能であれば、前述の置換基群Aから選ばれる置換基を有していて良い。3つのR2Aが互いに結合して環を形成することはない。
【0052】
一般式(R−3)について説明する。R3Aは、アルキル基またはアリール基を表し、複数のR3Aはそれぞれ同じでも、異なっていても良い。アルキル基またはアリール基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、フェニル基が更に好ましい。R3Aは、可能であれば、前述の置換基群Aから選ばれる置換基を有していて良い。複数のR3Aは可能であれば互いに結合して環を形成しても良い。複数のR3Aが互いに結合することにより形成される環としては、ビシクロ[2,2,2]オクタン、アダマンタンなどが挙げられる。
【0053】
一般式(R−4)はイソブチル基を表す。
【0054】
一般式(R−5)について説明する。R5Aは、2つのR5Aの合計が炭素数4以上を満たすアルキル基またはアリール基を表し、複数のR5Aはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。アルキル基またはアリール基としては、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基が好ましく、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基がより好ましく、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、フェニル基が更に好ましい。R5Aは、可能であれば、前述の置換基群Aから選ばれる置換基を有していて良い。複数のR5Aは可能であれば互いに結合して環を形成しても良い。複数のR5Aが互いに結合することにより形成される環としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0055】
一般式(R−6)は、3−メチル−ブチル基を表す。
【0056】
一般式(R−7)について説明する。sは1以上の整数を表す。sは、一般式(R−7)で表される基の炭素数が20以下であれば任意の整数を取ることができる。sは1〜3の整数が好ましく、1,2がより好ましく、1が更に好ましい。
s=1の場合、R7Aは、2つのR7Aの合計が炭素数4以上を満たすアルキル基またはアリール基を表し、複数のR7Aはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。アルキル基またはアリール基としては、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基が好ましく、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基がより好ましく、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、フェニル基が更に好ましい。
sが1より大きい場合は、R7Aは、アルキル基またはアリール基を表し、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、フェニル基が更に好ましい。R7Aは、可能であれば、前述の置換基群Aから選ばれる置換基を有していて良い。複数のR7Aは可能であれば互いに結合して環を形成しても良い。複数のR7Aが互いに結合することにより形成される環としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0057】
一般式(R−8)について説明する。sは1以上の整数を表す。sは、一般式(R−8)で表される基の炭素数が20以下であれば任意の整数を取ることができる。sは1〜3の整数が好ましく、1,2がより好ましく、1が更に好ましい。
8Aは、アルキル基またはアリール基を表し、複数のR8Aはそれぞれ同じでも異なっていても良い。アルキル基またはアリール基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、フェニル基が更に好ましい。R8Aは、可能であれば、前述の置換基群Aから選ばれる置換基を有していて良い。複数のR8Aは可能であれば互いに結合して環を形成しても良い。複数のR8Aが互いに結合することにより形成される環としては、ビシクロ[2,2,2]オクタン、アダマンタンなどが挙げられる。
【0058】
一般式(R−9)について説明する。sは1以上の整数を表す。sは、一般式(R−9)で表される基の炭素数が20以下であれば任意の整数を取ることができる。sは1〜3の整数が好ましく、1,2がより好ましく、1が更に好ましい。
9Aは、炭素原子を含み芳香族環または芳香族ヘテロ環を形成するアリール基、ヘテロアリール基を表す。アリール基、ヘテロアリール基を形成する芳香族環として、ベンゼン、ナフタレン、チオフェン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、チアゾール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾールが好ましく、ベンゼン、チオフェン、ピリジン、チアゾール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾールがより好ましく、ベンゼンが更に好ましい。Q9Aは、可能であれば、前述の置換基群Aから選ばれる置換基を有していて良い。
1A、R2A、R3A、R5A、R7A、R8A、Q9Aの置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子が好ましく、より好ましくは、アルキル基、アリール基である。
【0059】
21は、金属イオンを表す。金属イオンは特に限定されないが、1価〜4価の金属イオンが好ましく、1価〜3価の金属イオンが更に好ましく、2価の金属イオンが更に好ましい。
金属イオンの具体例としては、アルミニウムイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、ガリウムイオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン、銀イオン、セリウムイオン、ユーロピウムイオン、タングステンイオン、レニウムイオン、オスミウムイオン、イリジウムイオン、白金イオン、金イオン、鉛イオン、亜鉛イオンなどが挙げられる。
【0060】
本発明の錯体を発光材料として用いる場合、金属イオンとして好ましくは、白金イオン、金イオン、イリジウムイオン、レニウムイオン、パラジウムイオン、ロジウムイオン、ルテニウムイオン、タングステンイオン、銅イオンであり、より好ましくは白金イオン、イリジウムイオン、レニウムイオンであり、更に好ましくは白金イオンである。
【0061】
本発明の錯体を電子注入層(正孔注入層、電子注入層)材料、電荷ブロッキング層(正孔ブロッキング層、電子ブロッキング層)材料、励起子ブロッキング層材料、及び発光層のホスト材料として用いる場合、金属イオンとしては、アルミニウムイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、ガリウムイオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン、イリジウムイオン、白金イオン、金イオン、鉛イオンが好ましく、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン、イリジウムイオン、白金イオン、金イオンがより好ましく、パラジウムイオン、白金イオンが更に好ましい。
【0062】
一般式(1)で表わされる錯体の中で、下記一般式(1−a)で表される錯体が更に好ましい。
【0063】
【化7】

【0064】
(一般式(1−a)中、R51、R52はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。但しR51、R52の少なくとも1つは前記置換基Rを表す。R53、R54、R55、R56、R57、及びR58はそれぞれ独立に、水素原子もしくは置換基を表す。Q53、Q54は、ピリジン環と炭素原子で結合し、金属に配位する原子群を表す。L54は、単結合または連結基を表す。M51は金属イオンを表す。金属イオンとQ53、Q54との結合はそれぞれ共有結合でも、配位結合、イオン結合でも良い。nは0または1を表す。但し、n=0の場合、Q53とQ54は連結しない。)
【0065】
次に、一般式(1−a)について説明する。Q53、Q54、L54、M51、nは、一般式(1)のQ23、Q24、L24、M21、nとそれぞれ同義であり、また好ましい範囲も同様である。R51、R52はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。但しR51、R52の少なくとも1つは、前述のRで定義される基と同義であり、好ましい範囲も同様である。R53、R54、R55、R56、R57、及びR58は、それぞれ独立に、水素原子もしくは、置換基を表す。R53〜R58で表される置換基としては、前述の置換基群Aと同義である。R53〜R58は可能であれば互いに結合して環を形成していても良い。
【0066】
51およびR52のどちらか一方が前述の置換基Rで定義される基を表す場合、他方は水素原子または置換基である。該置換基としては下記置換基Bより選ばれる置換基が好ましい。
置換基Bとしては、1級アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、シアノ基、ヘテロ環基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、アリール基、ヘテロ環基であり、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、アリール基であり、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基である。
【0067】
51およびR52は、いずれも、前述の置換基Rで定義される基であることがより好ましい。
【0068】
前記R53、R55、R56、R58として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、スルホニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ヘテロ環基であり、さらに好ましくは、水素原子、メチル基、t−ブチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、フッ素原子、シアノ基、ピリジル基であり、さらに好ましくは、水素原子、メチル基、フッ素原子であり、特に好ましくは水素原子である。
【0069】
前記R54及びR57として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、シアノ基、ヘテロ環基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環基であり、さらに好ましくは、水素原子、アルキル基、アミノ基、アルコキシ基、ヘテロ環基であり、さらに好ましくは、水素原子、メチル基、t−ブチル基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メトキシ基、カルバゾリル基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0070】
次に一般式(2)について説明する。R63、R64、R65、R66、R67、R68、L64、M61、及びnは、前記一般式(1−a)におけるR53、R54、R55、R56、R57、R58、L54、M51、及びnとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同義である。但し、n=0の場合、QとQは連結しない。R61、R62はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。但しR61、R62の少なくとも1つは、前述のRで定義される基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0071】
61およびR62のどちらか一方が、前述の置換基Rで定義される基を表す場合、R62は水素原子または置換基を表す。該置換基としては前記置換基Bより選ばれるものが好ましく、好ましい範囲も同義である。
【0072】
61およびR62は、いずれも、前述の置換基Rで定義される基であることがより好ましい。
【0073】
Qは、ピリジン環と結合する炭素原子と金属に配位する炭素原子を含む原子群であり、該炭素原子で配位する原子群としては、前記一般式(1)におけるQ24で説明した炭素原子で配位する芳香族炭化水素基、炭素原子で配位するヘテロ環基等が挙げられる。
【0074】
Qとして好ましくは、炭素原子で配位する芳香族環基、炭素原子で配位するヘテロ環基であり、より好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾールであり、更に好ましくは、ベンゼン、ピリジンである。
【0075】
Qは可能であれば、置換基を有していてもよく、置換基としては、置換基群Aで説明した基が挙げられる。Qの置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基が好ましく、より好ましくはアルキル基、シアノ基であり、さらに好ましくは、トリフルオロメチル基、t−ブチル基、シアノ基である。
【0076】
Qは可能であれば他の環と縮合環を形成しても良い。Qと縮環する環としては、例えばベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環等が挙げられる。
【0077】
一般式(1)、(1−a)、(2)で表される錯体の中で、一般式(2)が好ましい。一般式(2)で表される金属錯体として好ましくは、白金錯体、パラジウム錯体であり、最も好ましくは白金錯体である。
【0078】
一般式(1)、(1−a)、(2)で表される化合物は低分子化合物であっても良く、また、オリゴマー化合物、ポリマー化合物(重量平均分子量(ポリスチレン換算)は好ましくは1000〜5000000、より好ましくは2000〜1000000、さらに好ましくは3000〜100000である。)であっても良い。ポリマー化合物の場合、一般式(1)、(1−a)、(2)で表される構造がポリマー主鎖中に含まれても良く、また、ポリマー側鎖に含まれていても良い。また、ポリマー化合物の場合、ホモポリマー化合物であっても良く、共重合体であっても良い。本発明の錯体は低分子化合物が好ましい。
【0079】
次に本発明の錯体の一例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0080】
【化8】

【0081】
【化9】

【0082】
【化10】

【0083】
【化11】

【0084】
【化12】

【0085】
本発明の素子を構成する各要素について詳細に説明する。
【0086】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機化合物層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。その具体例としては、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料が挙げられる。
例えば、基板としてガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0087】
基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
【0088】
基板は、無色透明であっても、有色透明であってもよいが、有機発光層から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。
【0089】
基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。
透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。熱可塑性基板を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
【0090】
<陽極>
陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0091】
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物が好適に挙げられる。陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
【0092】
陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
【0093】
本発明の有機電界発光素子において、陽極の形成位置としては特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、陽極は、基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0094】
なお、陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0095】
陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
【0096】
陽極の抵抗値としては、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
【0097】
なお、透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
【0098】
<陰極>
陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0099】
陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0100】
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0101】
なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの広報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0102】
陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
【0103】
陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0104】
本発明において、陰極形成位置は特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と前記有機化合物層との間に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
【0105】
陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜し、更にITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0106】
<有機化合物層>
本発明における有機化合物層について説明する。本発明の素子は、発光層を含む少なくとも一層の有機化合物層を有しており、発光層以外の他の有機化合物層としては、前述したごとく、正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0107】
−有機化合物層の形成−
本発明の有機電界発光素子において、有機化合物層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
【0108】
−発光層−
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における発光層は、発光材料のみで構成されていても良く、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でも良い。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、ドーパントは一種であっても二種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は一種であっても二種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。発光層としては、発光材料として本発明の錯体を用いたものが好ましく、少なくとも一種のホスト材料と本発明の錯体により構成されていることがより好ましい。
また、発光層は一層であっても二層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0109】
本発明に使用できる蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の錯体やピロメテン誘導体の錯体に代表される各種錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0110】
また、本発明に使用できる燐光発光材料は、本発明の錯体の他に,例えば、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。
遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金である。
ランタノイド原子としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
【0111】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0112】
また、本発明における発光層に含有されるホスト材料としては、例えば、本発明の金属錯体の他に、前述で挙げたものや、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するもの及びアリールシラン骨格を有するものや、後述の正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層の項で例示されている材料が挙げられる。
【0113】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0114】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、本発明の錯体の他に、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン等を含有する層であることが好ましい。
【0115】
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.5nm〜100nmであるのがより好ましく、1nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0116】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層、電子輸送層は、具体的には、本発明の錯体の他に、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする錯体に代表される各種錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0117】
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々50nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜100nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのが更に好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0118】
−正孔ブロック層−
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、本発明の錯体の他に、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0119】
<保護層>
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al23、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe23、Y23、TiO2等の金属酸化物、SiNx、SiNxy等の金属窒化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
【0120】
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
【0121】
<封止>
本発明の素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。封止容器と素子の間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
【0122】
本発明の素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0123】
本発明の素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0124】
本発明の素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等に好適に利用できる。
【0125】
本発明の錯体は、「Journal of Chemical Society、5008、(1952)」に記載の方法等、また後述の合成手法を用いることによって合成することができる。
例えば、配位子、またはその解離体と金属化合物を溶媒(例えば、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキサイド系溶媒、水等が挙げられる)の存在下、又は溶媒非存在下、塩基(無機、有機の種々の溶媒、例えばナトリウムメトキシド、t−ブトキシカリウム、トリエチルアミン、炭酸カリウム等が挙げられる)の存在下、もしくは塩基非存在下、室温以下もしくは加熱(通常の加熱以外にもマイクロウェーブで加熱する方法も有効である)し、得ることができる。
【0126】
本発明の錯体を合成する際の反応時間は、反応の活性により異なり、特に限定されないが、1分以上5日以下が好ましく、5分以上3日以下がより好ましく、10分以上1日以下が更に好ましい。
【0127】
本発明の錯体を合成する際の反応温度は、反応の活性によって異なり、特に限定されないが、0℃以上300℃以下が好ましく、5℃以上250℃以下がより好ましく、10℃以上220℃以下が更に好ましい。
【0128】
本発明の錯体は、目的とする錯体錯体の部分構造を形成している配位子を金属化合物に対して、好ましくは0.1当量〜20当量、より好ましくは0.3〜10当量、さらに好ましくは0.5当量〜6当量を加えて合成することができる。前記、金属化合物としては、金属ハロゲン化物(例えば、塩化白金、塩化イリジウム等)、金属アセテート(たとえば酢酸パラジウム、酢酸亜鉛等)、金属アセチルアセトナート(例えば、イリジウムアセチルアセトナート、白金アセチルアセトナート等)、又はそれらの水和物などが挙げられる。
【0129】
次に本発明の錯体の代表的な合成法について、下記の4座配位白金錯体を例に説明する。
【0130】
【化13】

【0131】
上記式中、R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57及びR58は、前記一般式(1−a)と同義であり、R71、R72、R73及びR74は、それぞれ独立に水素原子、又は置換基を表す。置換基としては、前述の置換基群Aを挙げることができる。
【0132】
本発明の錯体はJournal of Organic Chemistry 53, 786, (1988) 、G. R. Newkome et al.の、789頁、左段53行〜右段7行に記載の方法、790頁、左段18行〜38行に記載の方法、790頁、右段19行〜30行に記載の方法およびその組み合わせにより得ることができる。化合物(A)を出発物質とし、(A)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液に対し、0℃〜室温でリチウムジイソプロピルアミド、カリウムt−ブトキシド、水素化ナトリウムなどの塩基を1〜1.2当量加え、0℃〜室温下30分程度反応させ、これに対して、RX(Rは前記一般式(1)のそれと同義であり、Xはハロゲンを表す)で表される1.5〜4当量のアルキルハライドを加え、室温下30分程度反応させてモノアルキル化した後、再び同様の条件で、前記の塩基を1〜1.2当量と過剰のアルキルハライド(RX)を反応させて、ジアルキル置換体(B)を収率70〜99%で得ることができる。
【0133】
(B)から(C)を得る工程は、Synth. Commun. 11, 513 (1981)に記載の方法等により、合成することができる。
【0134】
(C)から本発明の錯体(D)を得る工程は、化合物(C)と、1〜1.5当量の塩化第一白金をベンゾニトリルに溶解させ、130℃〜加熱還流温度(ベンゾニトリルの沸点:191℃)に加熱し、30分〜4時間攪拌することにより合成することができる。化合物(D)はクロロホルム、酢酸エチルを用いた再結晶や、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、昇華精製などにより精製することができる。
【0135】
なお、上記に示した製造方法において、定義された置換基が、ある合成方法の条件下で変化するか、または該方法を実施するのに不適切な場合、官能基の保護、脱保護(例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、グリーン(T. W. Greene)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.)(1981年)等)等の手段により容易に製造が可能である。また、必要に応じて適宜置換基導入等の反応工程の順序を変化させることも可能である。
【実施例】
【0136】
[比較例1]
洗浄したITO基板を蒸着装置に入れ、銅フタロシアニン10nmを蒸着し、この上に、NPD(N,N’−ジ−α−ナフチル−N,N’−ジフェニル)−ベンジジン)を40nm蒸着した。この上に、化合物(D−1)とmCPを30:70の比率(質量比)で30nm蒸着し、この上に、BAlqを10nm蒸着し、この上に、Alq(トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体)を30nm蒸着した。得られた有機薄膜上にパターニングしたマスク(発光面積4mm×5mmとなる)を設置し、この上に、フッ化リチウムを3nm蒸着し、この上に、アルミニウムを100nm共蒸着し、EL素子を作製した。東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流定電圧をEL素子に印加して発光させた結果、青緑色発光が観測されたが、500〜600nm付近に会合由来と思われる長波発光成分も観測された。
【0137】
【化14】

【0138】
[実施例1]
比較例1の発光素子において、化合物(D−1)の代わりに、本発明の錯体(8)を用い、比較例1と同様にEL素子を作製した。東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流定電圧をEL素子に印加して発光させた結果、500〜600nm付近の長波発光成分が比較例1よりも減少し、色純度の向上した青緑色発光が観測された。
【0139】
[実施例2]
比較例1の発光素子において、化合物(D−1)の代わりに、本発明の錯体(10)を用い、比較例1と同様にEL素子を作製した。東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流定電圧をEL素子に印加して発光させた結果、500〜600nm付近の長波発光成分が比較例1よりも減少し、色純度の向上した青緑色発光が観測された。
【0140】
[実施例3]
比較例1の発光素子において、化合物(D−1)の代わりに、本発明の錯体(11)を用い、比較例1と同様にEL素子を作製した。東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流定電圧をEL素子に印加して発光させた結果、500〜600nm付近の長波発光成分が比較例1よりも減少し、色純度の向上した青緑色発光が観測された。
【0141】
他の本発明の錯体を用いた素子でも、発光特性に優れた有機電界発光素子を作製することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に、発光層を含む有機化合物層を有する有機電界発光素子であって、下記一般式(1)で表される4座配位子を有する金属錯体の少なくとも一種を有機化合物層に含有することを特徴とする有機電界発光素子。
一般式(1)
【化1】


(一般式(1)中、Q21、Q22 はそれぞれ独立に、金属に配位する原子群を表す。Q23は、L23と炭素原子で結合し、金属に配位する原子群を表し、Q24は、L21と炭素原子で結合し、金属に配位する原子群を表す。L21、L22、L23、及びL24はそれぞれ独立に、単結合または連結基を表す。L21、L22、L23、及びL24のうち少なくとも1つは連結基であり、そのうちの少なくとも1つ以上の連結基上に、少なくとも1つ以上の下記置換基Rを有する。M21は金属イオンを表す。金属イオンとQ21、Q22、Q23、Q24との結合はそれぞれ共有結合でも、配位結合、イオン結合でも良い。nは0または1を表す。但し、n=0の場合、Q23とQ24は連結しない。
置換基R:置換基Rは下記一般式(R−1)〜(R−9)で表される3級もしくは4級炭素を有する炭素数3〜20の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
【化2】


一般式(R−1)において、R1Aは、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR1Aはそれぞれ同じでも、異なっていても良い。2つのR1Aは互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(R−2)において、R2Aは、3つのR2Aの合計が炭素数4以上を満たす、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR2Aはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。但し、3つのR2Aが互いに結合して環を形成することはない。
一般式(R−3)において、R3Aは、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR3Aはそれぞれ同じでも、異なっていても良い。複数のR3Aは互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(R−5)において、R5Aは、2つのR5Aの合計が炭素数4以上を満たす、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR5Aはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。複数のR5Aは互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(R−7)において、sは1以上の整数を表す。sは、一般式(R−7)で表される基の炭素数が20以下であれば任意の整数を取ることができ、s=1の場合、R7Aは、2つのR7Aの合計が炭素数4以上を満たす置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR7Aはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。sが1より大きい場合は、R7Aは、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表す。複数のR7Aは可能であれば互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(R−8)において、sは1以上の整数を表す。sは、一般式(R−8)で表される基の炭素数が20以下であれば任意の整数を取ることができる。R8Aは、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR8Aはそれぞれ同じでも、異なっていても良い。複数のR8Aは互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(R−9)において、sは1以上の整数を表す。sは、一般式(R−9)で表される基の炭素数が20以下であれば任意の整数を取ることができる。)Q9Aは、炭素原子を含み芳香族環または芳香族ヘテロ環を形成するアリール基、ヘテロアリール基を表す。Q9Aは置換基を有していても良い。)
【請求項2】
一般式(1)が下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
一般式(2)
【化3】


(一般式(2)中、R61、R62はそれぞれ独立に、水素原子もしくは置換基を表す。但しR61、R62の少なくとも1つは、前記置換基Rを表す。R63、R64、R65、R66、R67、及びR68はそれぞれ独立に、水素原子もしくは置換基を表す。R63〜R68は可能であれば互いに結合して環を形成してもよい。Qはそれぞれ独立に、2つの炭素原子を含み炭素原子で金属に配位する原子群を表す。L64は、単結合または連結基を表す。M61は金属イオンを表す。nは0または1を表す。但し、n=0の場合、QとQは連結しない。)
【請求項3】
上記一般式(2)において、R61、R62の少なくとも1つがイソブチル基であることを特徴とする請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
下記一般式(2)で表されることを特徴とする化合物。
一般式(2)
【化4】


(一般式(2)中、R61、R62はそれぞれ独立に、水素原子又は、置換基を表す。但しR61、R62の少なくとも1つは、下記置換基Rを表す。R63、R64、R65、R66、R67、及びR68はそれぞれ独立に、水素原子もしくは置換基を表す。R63〜R68は可能であれば互いに結合して環を形成してもよい。Qはそれぞれ独立に、2つの炭素原子を含み炭素原子で金属に配位する原子群を表す。L64は、単結合または連結基を表す。M61は金属イオンを表す。nは0または1を表す。但し、n=0の場合、QとQは連結しない。
置換基R:置換基Rは下記一般式(R−1)〜(R−9)で表される3級もしくは4級炭素を有する炭素数3〜20の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
【化5】


一般式(R−1)において、R1Aは、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR1Aはそれぞれ同じでも、異なっていても良い。2つのR1Aは互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(R−2)において、R2Aは、3つのR2Aの合計が炭素数4以上を満たす、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR2Aはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。但し、3つのR2Aが互いに結合して環を形成することはない。
一般式(R−3)において、R3Aは、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR3Aはそれぞれ同じでも、異なっていても良い。複数のR3Aは互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(R−5)において、R5Aは、2つのR5Aの合計が炭素数4以上を満たす、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR5Aはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。複数のR5Aは互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(R−7)において、sは1以上の整数を表す。sは、一般式(R−7)で表される基の炭素数が20以下であれば任意の整数を取ることができ、s=1の場合、R7Aは、2つのR7Aの合計が炭素数4以上を満たす置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR7Aはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。sが1より大きい場合は、R7Aは、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表す。複数のR7Aは可能であれば互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(R−8)において、sは1以上の整数を表す。sは、一般式(R−8)で表される基の炭素数が20以下であれば任意の整数を取ることができる。R8Aは、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、複数のR8Aはそれぞれ同じでも、異なっていても良い。複数のR8Aは互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(R−9)において、sは1以上の整数を表す。sは、一般式(R−9)で表される基の炭素数が20以下であれば任意の整数を取ることができる。)Q9Aは、炭素原子を含み芳香族環または芳香族ヘテロ環を形成するアリール基、ヘテロアリール基を表す。Q9Aは置換基を有していても良い。)
【請求項5】
発光層中に、少なくとも1種の一般式(1)または(2)で表される化合物と、少なくとも1種のホスト材料を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
発光層中に、少なくとも1種の一般式(1)または(2)で表される化合物と、少なくとも1種の燐光発光材料を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。

【公開番号】特開2013−62513(P2013−62513A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−227431(P2012−227431)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【分割の表示】特願2006−151705(P2006−151705)の分割
【原出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(512253626)ユー・ディー・シー アイルランド リミテッド (13)
【Fターム(参考)】