説明

有機電界発光表示装置およびその製造方法

【課題】有機電界発光表示装置の製造に際して,発光層をレーザ転写法で形成する場合,画素の内部に残留する凝縮ガスに起因して,転写領域にドナーフィルムが転写されない不良を防止するために,第1電極の上部の画素定義膜に,残留ガスが排出されるガスベント溝が形成された有機電界発光表示装置を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる有機電界発光表示装置は,基板200上に形成される第1電極282と,第1電極282の上部に形成され,少なくとも1つのガスベント溝を含む画素定義膜290と,画素定義膜290により区分され,画素の一部に露出した第1電極282の上部に,少なくとも発光層を含む有機膜層33と,有機膜層33の上部に形成される第2電極400とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,有機電界発光表示装置に関し,より詳細には,レーザ熱転写法でドナーフィルムをラミネーションする際に,画素のエッジ部分に発生するドナーフィルムの未転写を防止することができる有機電界発光表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連する従来技術は,特許文献1と,特許文献2と,特許文献3とに開示されている。
【0003】
図1は,通常のフルカラー有機電界発光素子の構造を示す断面図である。
【0004】
図1を参照すると,基板100上に第1電極200が形成されている。上記第1電極200は,背面発光構造の場合は,透明電極で形成される。また,前面発光構造の場合は,反射膜を含む導電性金属で形成される。
【0005】
隣り合う第1電極200間に形成され,画素を定義し,発光層間を絶縁する絶縁性物質によりなる画素定義膜(PDL)300が形成される。
【0006】
上記画素定義膜(PDL)300により区分された上記画素領域には,有機発光層(R,G,B)を含む有機膜層33が形成される。上記有機膜層33は,上記有機発光層以外にも,正孔注入層と,正孔輸送層と,正孔抑制層と,電子輸送層と,電子注入層などとをさらに含んでいてもよい。上記有機発光層には,高分子物質,または低分子物質のうち,いずれを使用してもよい。
【0007】
次に,上記有機膜層33と上記画素定義膜300を覆うように,第2電極400が形成される。第1電極200が透明電極である場合には,上記第2電極400は,反射膜を含む導電性金属層により形成される。また,上記第1電極が反射膜を含む導電性金属層である場合には,上記第2電極400は,透明電極により形成される。
【0008】
図2は,従来のレーザ転写用ドナーフィルムの構造を示す断面図である。
【0009】
図2に示すように,従来のレーザ熱転写法を用いて上記発光層を形成する場合,レーザ転写用ドナーフィルム34は,ベースフィルム31と,光−熱変換層32と,転写層33とにより構成される。ここで,転写層33は,図1の有機膜層33と同一の構成である。
【0010】
図3は,ドナーフィルム34を使用した従来のレーザ熱転写法を示す図である。図3に示すように,レーザ照射の際,光−熱変換層32が膨脹し,転写層33が押圧されてドナーフィルムから剥離されることにより,有機電界発光表示装置の基板に転写される。
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,998,085号明細書
【特許文献2】米国特許第6,214,520号明細書
【特許文献3】米国特許第5,220,348号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら,従来の有機電界発光表示装置は,ドナーフィルム34のラミネーションの際,画素定義膜300と第1電極200とで区画された画素と,ドナーフィルム34とにより形成された空間内に封止された残留ガスAに起因して,上記ドナーフィルムが上記画素のエッジ部分Bに転写されないという問題が発生する。このような問題は,エッジオープン不良(edge openまたは未転写不良)と呼ばれ,装置寿命および特性に大きな悪影響を及ぼしていた。
【0013】
そこで,本発明は,上記問題に鑑みてなされたものであり,本発明の目的とするところは,有機電界発光表示装置の製造に際して,発光層をレーザ転写法で形成する場合,画素の内部に残存する凝縮ガスに起因して,上記画素のエッジ部分にドナーフィルムが転写されない不良を防止することが可能な,新規かつ改良された有機電界発光表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,基板の上部に形成される第1電極と;上記第1電極の上部に形成され,少なくとも1つのガスベント溝を備える画素定義膜と;上記画素定義膜により区分され,露出した上記第1電極の領域の上部に,少なくとも発光層を含む有機膜層と;上記有機膜層の上部に形成される第2電極と;を備えることを特徴とする,有機電界発光表示装置が提供される。
【0015】
上記基板上には,複数の第1電極が設置されており,隣り合う上記第1電極間は上記画素定義膜によって隔離されている。上記画素定義膜は,上記基板上に上記第1電極よりも高く形成されていてもよく,上記第1電極の側面と上記第1電極の上面の一部とを被覆するように形成されていてもよい。
【0016】
かかる構成により,レーザ熱転写法を用いて上記第1電極の露出された部分にドナーフィルムをラミネートする際,上記画素内に残留したガスが上記ガスベント溝を通じて排出されうる。結果として,上記画素内に封入された上記残留ガスの押圧に抗して,上記ドナーフィルムが上記画素の各面に転写されないという不良を回避することが可能となる。特に,上記画素のエッジ部分である画素エッジ領域に上記ドナーフィルムが転写されないエッジオープン不良を回避することが可能となる。
【0017】
上記第1電極は,インジウムスズ酸化物(Indium Tim Oxide;ITO),インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide;IZO),およびInよりなるグループから選ばれる1種の透明電極により形成されるものであってもよい。
【0018】
上記画素定義膜は,絶縁性を有する有機膜または無機膜で形成されるものであってもよい。
【0019】
上記ガスベント溝の位置が,画素エッジ領域に形成されていてもよい。
【0020】
上記ガスベント溝の深さは,1μm〜画素定義膜の断面厚みの範囲となるように形成されていてもよい。かかる構成により,転写される上記ドナーフィルムにより押圧される残留ガスが,上記ガスベント溝を通じて確実に排出され,未転写を防止することが可能となる。
【0021】
上記画素エッジ領域に位置するガスベント溝は,隣接する画素に連結されるように形成されていてもよい。
【0022】
上記ガスベント溝の長さは,各々の隣接する画素を区分する画素定義膜の幅と同一の長さに形成されうる。
【0023】
上記ガスベント溝の幅は,画素領域の横および/または縦の全体長さの30%以内となるように形成されていてもよい。つまり,略長方形である画素を形成する画素領域の長辺に設置されたガスベント溝の幅は,該長辺の30%以内の長さで形成されていてもよく,上記画素領域の短辺に設置されたガスベント溝に幅は,該短辺の30%以内の長さで形成されていてもよい。したがって,上記ガスベント溝の幅は,該ガスベント溝が設置された画素領域の横または縦の全体長さの30%以内となるように形成されていてもよい。
【0024】
上記基板の上部に薄膜トランジスタをさらに備えていてもよい。
【0025】
上記第2電極は,Ca,Mg,MgAg,Ag,Ag合金,Al,およびAl合金よりなる群から選ばれる1種であってもよい。
【0026】
また,上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,基板の上部に第1電極を形成する段階と;上記第1電極の上部に絶縁膜を形成する段階と;上記絶縁膜をパターニングし,少なくとも1つのガスベント溝を有する画素定義膜を形成する段階と;上記画素定義膜の上部に,上記画素定義膜により区分され,露出した上記第1電極の上部と上記画素定義膜の上部とに,レーザ熱転写法を用いて,少なくとも発光層が含まれる有機膜層を形成する段階と;上記有機膜層の上部に第2電極を形成する段階とを備えることを特徴とする,有機電界発光表示装置の製造方法を提供する。
【0027】
上記第1電極は,インジウムスズ酸化物(Indium Tim Oxide;ITO),インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide;IZO),およびInよりなる群から選ばれる1種の透明電極で形成されていてもよい。
【0028】
上記ガスベント溝が,ウェットエッチング方法,またはドライエッチング方法により形成されていてもよい。
【0029】
上記画素定義膜が,絶縁性を有する有機膜または無機膜で形成されていてもよい。
【0030】
上記画素定義膜に設けられるガスベント溝の位置が,画素エッジ領域に形成されていてもよい。
【0031】
上記画素エッジ領域に位置するガスベント溝の深さは,1μm〜画素定義膜の断面厚みの範囲で形成されていてもよい。
【0032】
上記画素エッジ領域に位置するガスベント溝は,隣接する画素に連結されるように形成されていてもよい。
【0033】
上記ガスベント溝の長さは,各々の隣接する画素を区分する画素定義膜の幅と同一の長さに形成されていてもよい。
【0034】
上記ガスベント溝の幅は,画素領域の横および/または縦の全体長さの30%以内に形成されていてもよい。つまり,略長方形である画素を形成する画素領域の長辺に設置されたガスベント溝の幅は,該長辺の30%以内の長さで形成されていてもよく,上記画素領域の短辺に設置されたガスベント溝に幅は,該短辺の30%以内の長さで形成されていてもよい。したがって,上記ガスベント溝の幅は,該ガスベント溝が設置された画素領域の横または縦の全体長さの30%以内となるように形成されていてもよい。
【0035】
上記基板の上部に薄膜トランジスタをさらに備えていてもよい。
【0036】
上記画素定義膜が,絶縁性を持つ有機または無機膜で形成されていてもよい。
【0037】
上記第2電極は,Ca,Mg,MgAg,Ag,Ag合金,Al,およびAl合金よりなる群から選ばれる1種の透明または半透過電極で形成されていてもよい。
【0038】
上記有機電界発光装置について,より詳細には,基板の上部に形成される第1電極と;上記基板の上部に形成され,画素に対応し,上記第1電極が露出した凹部がそれぞれ形成されており,上記画素の凹部を連結する少なくとも1つのガスベント溝が形成された画素定義膜と;上記露出した第1電極の上部に形成され,少なくとも発光層を含む有機膜層と;上記有機膜層の上部に形成された第2電極と;を備えることを特徴とする。上記第2電極は,上記画素定義膜の上部をさらに被覆していてもよい。
【0039】
さらに,上記有機電界発光装置の製造方法について,より詳細には,基板の上部に第1電極を形成する段階と;上記基板と上記第1電極との上部に絶縁膜を形成する段階と;上記絶縁膜をパターニングして,画素に対応する部分に上記第1電極が露出する凹部を形成し,上記画素の凹部を連結する少なくとも1つのガスベント溝を有する画素定義膜を形成する段階と;上記露出した第1電極の上部に,レーザ熱転写法を用いて,少なくとも発光層を含む有機膜層を形成する段階と;上記有機膜層の上部に第2電極を形成する段階と;を含むことを特徴とする。上記第2電極を形成する段階では,上記第2電極が上記画素定義膜の上部をさらに覆うように形成されてもよい。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように本発明によれば,画素定義膜に形成された少なくとも1つのガスベント溝により,レーザ熱転写法を用いて発光層を形成する際に,第1電極とドナーフィルムとの間に残存するガスを排出することが可能となり,画素のエッジ部分に発生するドナーフィルムの転写層の未転写であるエッジオープン不良を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書および図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0042】
図4は,本発明の実施例にかかる有機電界発光表示装置を示す断面図である。
【0043】
図4を参照すれば,ガラス,石英,プラスチック,または金属のいずれかによりなる基板200上に,第1電極282を形成する。第1電極は,反射膜を含む二重または三重の積層構造を有するアノード電極であり,前面発光構造の場合には,少なくとも上部の画素電極は,ITO,IZO,またはInのいずれか1種の透明電極で形成される。また,背面発光構造の場合には,少なくとも下部の画素電極が透明電極により形成される。
【0044】
次に,第1電極282と基板200面とを含む全体表面の上部に絶縁膜(図示せず)が積層される。上記絶縁物質は,有機物質または無機物質により形成されうる。上記絶縁物質に有機物質を用いる場合,上記有機物質は,BCB(benzocyclobutene),アクリル系フォトレジスト,フェノール系フォトレジスト,またはポリイミド系フォトレジストのいずれか1つの物質で形成されうる。ただし,これに限定されるものではない。
【0045】
その後,上記絶縁物質をエッチングし,少なくとも1つのガスベント溝(図示せず)を含む画素定義膜290を形成する。上記ガスベント溝は,画素定義膜290に形成され,画素定義膜290と第1電極282の表面とで形成される画素をドナーフィルム34により封止した際に,内部の気体が排出されるような構造を有していてもよい。
【0046】
上記絶縁物質をエッチングし,少なくとも1つのガスベント溝(図示せず)を含む画素定義膜290を形成する方法は,一般的に,ウェットエッチング方法またはドライエッチング方法を使用することができる。ウェットエッチング方法は,200℃未満の温度を有する酸と水を稀釈させたエッチング液を使用して絶縁物質をエッチングし,エッチング後,少なくとも1つのガスベント溝を含む画素定義膜290を形成する。このようなウェットエッチング方法の場合,酸を中和させるための中和工程および洗浄工程を必ず実施しなければならない。一方,ドライエッチング方法は,絶縁膜の上部に,フォト工程で形成されたフォトレジストパターンを用いて,少なくとも1つのガスベント溝を含む画素定義膜290を形成する。このようなドライエッチング方法を実施する場合,一般的に,反応ガスを使用し,ドライエッチングの後,高濃度のアルカリ溶液を使用してフォトレジストを除去する工程と,プラズマ処理を用いた洗浄工程とを実施しなければならない。
【0047】
上述のようなエッチング工程を実行することで,少なくとも1つのガスベント溝を含む画素領域が形成される。
【0048】
図5は,本発明によりガスベント溝Zを含む画素領域の平面構造図である。
【0049】
少なくともベースフィルム31と,光−熱変換層32と,有機膜層33’とを含むドナーフィルム34が画素領域の上部全面に位置する場合を考える。図5を参照すると,レーザ熱転写方向に沿ってガスベント溝Zは,画素エッジ部位と接続する画素定義膜310の内部に形成される。好ましくは,レーザ熱転写が始まる画素エッジ部位と対向する画素エッジ部位に位置する画素定義膜310内に,少なくとも1つ以上を転写方向に対して垂直C,水平P,または対角線方向Dに形成することによって,ガスが上記画素エッジ部位に凝縮するのを防止する。
【0050】
つまり,上記ガスベント溝がない場合には,熱転写によりドナーフィルム34を転写するレーザの移動方向に沿って,画素内に残留していたガスが押圧され,画素のエッジ部位に封止されることがある。そこで,上記ガスベント溝Zは,レーザ熱転写方向に沿って残留ガスが排出されるように,隣り合った画素が連結されて形成される。
【0051】
すなわち,転写方向に対して水平方向にガスベント溝を形成したり,上記転写方向に対して垂直方向に形成されていてもよく,これらの両方向,または対角線方向に形成されていてもよい。また,転写方向に対して垂直方向にガスベント溝を形成する場合には,画素定義膜の中心部に形成することが好ましい。そして,形成されるガスベント溝の深さ(図示せず)は,1μmから画素定義膜の断面の厚さの範囲である。
【0052】
溝の長さXは,隣接する画素間の画素定義膜の幅xと同一の長さ,または,対角線方向に隣接する画素を区分する画素定義膜の幅dと同一の長さで形成される。すなわち,水平,垂直,または対角線のいずれの方向でもよいが,隣接画素と連結されるように形成される。また,ガスベント溝の幅Yは,画素領域の各々の横および縦の全体長さのうち30%以内に形成される。
【0053】
次に,上記画素定義膜310に覆われていない露出した発光領域に有機膜層が形成される。上記有機膜層は,少なくとも光−熱変換層と有機膜層とを含み,多層に形成されたドナーフィルムをラミネーションすることにより,発光層が形成されるレーザ熱転写法により形成される。
【0054】
図6は,レーザ熱転写法を用いた有機膜層の形成方法を示す断面図である。
【0055】
図4と図6とを参照して説明すれば,上記ベースフィルム31上に照射されたレーザ40が,上記照射面の反対側に位置する上記光−熱変換層32に到達するように,レーザ熱転写法に使われるドナーフィルム34のベースフィルム31は,透明性の物質により形成される。例えば,ポリエチレンテレフタレート,ポリエステル,ポリアクリル,ポリエポキシ,ポリエチレン,またはポリスチレンのうち,少なくとも1つの高分子物質,または,ガラス基板により形成されうる。特に,ポリエチレンテレフタレートにより形成されることが好ましい。
【0056】
また,上記ベースフィルム層31上に形成される上記光−熱変換層32は,赤外線〜可視光線の波長領域を有する光を吸収し,上記光の一部を熱に変換させる層であり,適当な光学密度(optical density)を有することが求められるため,光を吸収する光吸収性物質を含むことが好ましい。ここで,上記光−熱変換層32は,Al,Ag,および,これらの酸化物または硫化物よりなる金属膜で形成されていてもよく,カーボンブラック,黒鉛,または赤外線染料を含む高分子よりなる有機膜で形成されていてもよい。上記金属膜は,真空蒸着法,電子ビーム蒸着法,またはスパッタリング法を用いて形成することができる。上記有機膜は,通常利用されるフィルムコート方法として,ロールコート,グラビア,押出,スピンコート,またはナイフコート方法のうちのいずれかの方法により形成することができる。
【0057】
次いで,上記光−熱変換層32の上部に形成される上記転写層33は,低分子有機物,または高分子有機物であってもよい。
【0058】
上記光−熱変換層32と転写層33との間に,転写特性を向上させるために,中間層をさらに含むことができるが,必ずしも含む必要はない。上記中間層は,ガス生成層(図示せず),バッファ層(図示せず),および金属反射膜(図示せず)のうちのいずれかである。
【0059】
上記ガス生成層は,光または熱を吸収すると,分解反応を起こし,窒素ガスや水素ガスなどを放出することにより,転写エネルギーを提供する役目を果たす。また,上記ガス生成層は,四硝酸ペンタエリトリット,またはトリニトロトルエンなどよりなっていてもよい。
【0060】
上記バッファ層は,光−熱吸収性物質が後続工程で形成される有機膜層を汚染または損傷させるのを防止し,有機膜層との接着力を制御して,転写パターン特性を向上させる役目をする。ここで,上記バッファ層は,金属酸化物,非金属無機化合物または不活性高分子よりなることができる。
【0061】
上記金属反射膜は,ドナーフィルム34のうち,ベースフィルム層31に照射されたレーザを反射させることで,より多くのエネルギーを光−熱変換層32に伝達する役目をする。また,上記ガス生成層が導入される場合には,上記金属反射膜は,上記ガス生成層から発生するガスが転写層33に侵入するのを防止する役目をする。
【0062】
上述のような構成を有するドナーフィルム34を用いて形成される有機膜層33’は,少なくとも有機発光層を含み,電子注入層,電子輸送層,正孔注入層,正孔輸送層,正孔抑制層などをさらに含んでいてもよい。
【0063】
次に,図示されてはいないが,上記有機膜層の上部に第2電極(図示せず)を形成し,有機電界発光装置を完成する。この際,上記第2電極は,カソード電極である。上記第2電極は,前面発光構造の場合,透明電極により形成される。また,背面発光構造の場合には,上記第2電極は,反射電極または反射膜を含む電極であって,Ca,Mg,MgAg,Ag,Ag合金,Al,およびAl合金のうち,1種の透明または半透過電極により形成される。
【0064】
このように,第1電極282の上部に,少なくとも1つのガスベント溝が形成される場合,レーザ熱転写法で発光層を形成する際,上記ガスベント溝を通じて画素の内部に残存するガスが周辺に排出されて,ドナーフィルムの転写層が転写される画素領域においてエッジオープン不良が発生する事を低減することができる。
【0065】
そして,本実施形態によれば,基板の上部に形成される第1電極282と,上記第1電極282の上部に形成され,少なくとも1つのガスベント溝を含む画素定義膜290と,上記画素定義膜290により区分され,画素に対応する露出した第1電極282の領域の上部に,少なくとも発光層を含む有機膜層33’と,上記有機膜層33’の上部に形成される第2電極400とを備える有機電界発光表示装置において,基板200と第1電極282との間にソース/ドレイン領域およびチャンネル領域を含む半導体層と,上記ソース/ドレイン領域に連結されるソース/ドレイン電極および上記チャンネル領域に対応するゲート電極とを含む薄膜トランジスタを備えることができる。
【0066】
上記有機電界発光装置について,本実施形態によれば,基板100の上部に形成される第1電極200と,基板100の上部に形成され,画素に対応し,第1電極200が露出した凹部がそれぞれ形成されており,上記画素の凹部を連結する少なくとも1つのガスベント溝Zが形成された画素定義膜300と,上記露出した第1電極200の上部に形成され,少なくとも発光層を含む有機膜層33’と,有機膜層33’の上部に形成された第2電極400と,を備えることを特徴とする。第2電極400は,画素定義膜300の上部をさらに被覆していてもよい。
【0067】
上記薄膜トランジスタは,半導体層が基板上に形成され,上記半導体層の上部にゲート電極が形成されるトップゲート構造(Top gate structure)であってもよく,基板上にゲート電極が形成され,上記ゲート電極の上部に半導体層が形成されるボトムゲート構造(Bottom gate structure)であってもよい。
【0068】
また,上記半導体層は,非晶質シリコン層,または非晶質シリコン層をELA(Excimer Laser Annealing),SLS(Sequential Lateral Solidification),MIC(Metal Induced Crystallization)またはMILC(Metal Induced Lateral Crystallization)法で結晶化させた多結晶シリコン層でありうる。
【0069】
以上のように形成された薄膜トランジスタは,基板と第1電極との間に形成され,ビアホールを介して露出されるソース/ドレイン電極のいずれか1つと第1電極とが接続されるように形成する有機電界発光表示装置にも使われることができる。
【0070】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は,有機電界発光表示装置に適用可能であり,特にレーザ熱転写法でドナーフィルムをラミネーションする際に発生するエッジオープン不良を低減することが可能な有機電界発光表示装置およびその製造方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】従来のフルカラー有機電界発光素子の構造を示す断面図である。
【図2】従来のレーザ転写用ドナーフィルムの構造を示す断面図である。
【図3】ドナーフィルムを使用する場合の転写モデルを示す図である。
【図4】本実施形態にかかる有機電界発光表示装置を示す断面図である。
【図5】本実施形態にかかるガスベント溝を示す平面図である。
【図6】レーザ熱転写法を用いた有機膜層の形成方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0073】
100,200 基板
282 第1電極
290,300,310 画素定義膜
292 有機膜層
400 第2電極
31 ベースフィルム
32 光−熱変換層
33 転写層
33’ 有機膜層
34 ドナーフィルム
40 レーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上部に形成される第1電極と;
前記第1電極の上部に形成され,少なくとも1つのガスベント溝を備える画素定義膜と;
前記画素定義膜により区分され,露出した前記第1電極の領域の上部に,少なくとも発光層を含む有機膜層と;
前記有機膜層の上部に形成される第2電極と;
を備えることを特徴とする,有機電界発光表示装置。
【請求項2】
前記第1電極は,インジウムスズ酸化物(ITO),インジウム亜鉛酸化物(IZO),およびInよりなるグループから選ばれる1種の透明電極により形成されるものであることを特徴とする,請求項1に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項3】
前記画素定義膜は,絶縁性を有する有機膜または無機膜で形成されるものであることを特徴とする,請求項1または2のいずれかに記載の有機電界発光表示装置。
【請求項4】
前記画素定義膜に設けられたガスベント溝の位置が,画素エッジ領域に形成されることを特徴とする,請求項1,2,または3のいずれかに記載の有機電界発光表示装置。
【請求項5】
前記画素エッジ領域に位置するガスベント溝の深さは,1μm〜画素定義膜の断面厚みの範囲内となるように形成されることを特徴とする,請求項4に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項6】
前記画素エッジ領域に位置するガスベント溝は,隣接する画素に連結されるように形成されることを特徴とする,請求項4,または5のいずれかに記載の有機電界発光表示装置。
【請求項7】
前記ガスベント溝の幅は,画素領域の横または縦の全体長さの30%以内となるように形成されることを特徴とする,請求項4,5,または6のいずれかに記載の有機電界発光表示装置。
【請求項8】
前記基板の上部に薄膜トランジスタをさらに備えることを特徴とする,請求項1〜7のいずれかに記載の有機電界発光表示装置。
【請求項9】
前記第2電極は,Ca,Mg,MgAg,Ag,Ag合金,Al,およびAl合金よりなるグループから選ばれる1種の透明または半透過電極であることを特徴とする,請求項1〜8のいずれかに記載の有機電界発光表示装置。
【請求項10】
基板の上部に第1電極を形成する段階と;
前記第1電極の上部に絶縁膜を形成する段階と;
前記絶縁膜をパターニングし,少なくとも1つのガスベント溝を有する画素定義膜を形成する段階と;
前記画素定義膜の上部に,前記画素定義膜により区分され,露出した前記第1電極の上部と前記画素定義膜の上部とに,レーザ熱転写法を用いて,少なくとも発光層が含まれる有機膜層を形成する段階と;
前記有機膜層の上部に第2電極を形成する段階と;
を含むことを特徴とする,有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1電極は,インジウムスズ酸化物(ITO),インジウム亜鉛酸化物(IZO),およびInよりなるグループから選ばれる1種の透明電極であることを特徴とする,請求項10に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記ガスベント溝が,ウェットエッチング方法,またはドライエッチング方法により形成されることを特徴とする,請求項10または11のいずれかに記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記画素定義膜が,絶縁性を有する有機膜または無機膜で形成されることを特徴とする,請求項10,11,または12のいずれかに記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記画素定義膜に設けられるガスベント溝の位置が,画素エッジ領域に形成されることを特徴とする,請求項10〜13のいずれかに記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記画素エッジ領域に位置するガスベント溝の深さは,1μm〜画素定義膜の断面厚みの範囲内となるように形成されることを特徴とする,請求項14に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記画素エッジ領域に位置するガスベント溝は,隣接する画素に連結されるように形成されることを特徴とする,請求項14または15のいずれかに記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項17】
前記ガスベント溝の幅は,画素領域の横または縦の全体長さの30%以内に形成されることを特徴とする,請求項14,15,または16のいずれかに記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項18】
前記基板の上部に薄膜トランジスタを形成する段階をさらに含むことを特徴とする,請求項10〜17のいずれかに記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項19】
前記第2電極は,Ca,Mg,MgAg,Ag,Ag合金,Al,およびAl合金よりなるグループから選ばれる1種の透明または半透過電極で形成されることを特徴とする,請求項10〜18のいずれかに記載の有機電界発光表示装置の製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−190683(P2006−190683A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220(P2006−220)
【出願日】平成18年1月4日(2006.1.4)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】