説明

有機電界発光表示装置及びその製造方法

【課題】発光効率の低い画素と発光効率の高い画素との間で均一な輝度で高精細に発光可能であるとともに、これらの画素に対応する有機電界発光素子間における、駆動電力及び素子寿命の不均一性を解消する有機電界発光表示装置及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも発光層を含む有機電界発光素子により形成される赤色、緑色、及び青色のそれぞれに対応する3色の矩形状画素領域と、前記3色の矩形状画素領域のうち、一の矩形状画素領域における輝度よりも低い輝度を有する他の矩形状画素領域の発光面上に、前記他の矩形状画素領域における短辺の長さに対して2倍以上4倍以下のレンズ径からなる半球状レンズと、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素上にレンズを配する有機電界発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光表示装置(有機EL表示装置)は自発光型の表示装置であり、ディスプレイや照明の用途に用いられる。有機電界発光ディスプレイは、従来のCRTやLCDと比較して視認性が高い、視野角依存性がないといった表示性能の利点を有する。また、ディスプレイを軽量化、薄層化できるといった利点もある。また、有機EL照明は、軽量化、薄層化という利点に加え、フレキシブル基板を用いることで、これまで実現できなかった形状の照明を実現できる可能性を持っている。
【0003】
近年、赤色、緑色、青色の発光を示す有機電界発光素子をそれぞれ有する有機電界発光表示装置が検討されている。
しかしながら、各色の有機電界発光素子の発光効率には、ばらつきがあり、一般に赤色及び青色の発色を示す有機電界発光素子の発光効率が、緑色の発色を示す有機電界発光素子の発光効率に劣る傾向にある。
このような発光効率のばらつきを有する有機電界発光表示装置において、均一な発光をさせると、発光効率の劣る有機電界発光素子の駆動電力を大きくなり、各有機電界発光素子間の消費電力がアンバランスとなる問題がある。また、発光効率の劣る有機電界発光素子の駆動電力を大きくすると、該有機電界発光素子のみ素子寿命が短くなるという問題がある。
【0004】
ところで、発光効率の向上させるため提案としては、種々の提案がなされており、例えば、光取り出し面上に、少なくとも2つ以上の大きさの異なる略半球状の微小レンズからなる微小レンズ群を形成して、光取り出し面/空気界面における全反射の確率を低下させ、発光効率を改善させる有機EL素子が提案されている(特許文献1参照)。
また、発光素子からの光が出力される射出方向の前記電極の上の少なくとも発光素子の1辺の長さ以内の位置に、少なくとも1つのマイクロレンズが形成されたレンズ層とを有することで、隣接する画素とのクロストークを避け、発光効率を改善させる有機EL素子が提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、これらのレンズを赤色、緑色、青色の発光を示す発光層を有する有機電界発光素子をそれぞれ有する有機電界発光表示装置において、赤色、緑色、青色のすべての有機電界発光素子に用いると、画素間の距離が長くなり、高精細の発光表示ができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004− 47298号公報
【特許文献2】特開2004−227940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、発光効率の低い画素と発光効率の高い画素との間で均一な輝度で高精細に発光可能であるとともに、これらの画素に対応する有機電界発光素子間における、駆動電力及び素子寿命の不均一性を解消する有機電界発光表示装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも発光層を含む有機電界発光素子により形成される赤色、緑色、及び青色のそれぞれに対応する3色の矩形状画素領域と、前記3色の矩形状画素領域のうち、一の矩形状画素領域における輝度よりも低い輝度を有する他の矩形状画素領域の発光面上に、前記他の矩形状画素領域における短辺の長さに対して2倍以上4倍以下のレンズ径からなる半球状レンズと、を有することを特徴とする有機電界発光表示装置である。
<2> 3色の矩形状画素領域のうち、最も輝度の高い矩形状画素領域に対応する発光面上に、該矩形状画素領域における短辺の長さに対して1倍以上であり、かつ、該矩形状画素領域における輝度よりも低い輝度を有する他の矩形状画素領域の発光面上のレンズ径より小さいレンズ径からなる半球状レンズを有する前記<1>に記載の有機電界発光表示装置である。
<3> 一の矩形状画素領域における輝度よりも低い輝度を有する他の矩形状画素領域が、赤色及び青色のそれぞれに対応する矩形状画素領域であり、前記一の矩形状画素領域が緑色に対応する矩形状画素領域である前記<1>から<2>のいずれかに記載の有機電界発光表示装置である。
<4> 有機電界発光素子が、反射電極と半透過電極との間に発光層を配することにより発光面側から任意の波長の光を選択的に取り出す光学共振器構造を有する前記<1><3>のいずれかに記載の有機電界発光表示装置である。
<5> 発光層に少なくとも1種の燐光材料を含む前記<1>から<4>のいずれかに記載の有機電界発光表示装置である。
<6> 少なくとも発光層を含む有機電界発光素子により形成される赤色、緑色、及び青色のそれぞれに対応する3色の矩形状画素領域と、前記3色の矩形状画素領域のうち、一の矩形状画素領域における輝度よりも低い輝度を有する他の矩形状画素領域の発光面上に、前記他の矩形状画素領域における短辺の長さに対して2倍以上4倍以下のレンズ径からなる半球状レンズと、を有する有機電界発光表示装置の製造方法であって、少なくとも、前記他の矩形状画素領域の発光面上の位置に前記半球状レンズを配することを特徴とする有機電界発光表示装置の製造方法である。
<7> 半球状レンズを、光硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂を用いてインプリント法により形成する前記<6>に記載の有機電界発光表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来の前記諸問題を解決することができ、前記目的を達成することができ、発光効率の低い画素と発光効率の高い画素との間で均一な輝度で高精細に発光可能であるとともに、これらの画素に対応する有機電界発光素子間における、駆動電力及び素子寿命の不均一性を解消する有機電界発光表示装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明における有機電界発光表示装置の一の構成例を概念的に説明する平面図である。
【図2】図2は、本発明における有機電界発光表示装置の他の構成例を概念的に説明する平面図である。
【図3A】図3Aは、本発明における有機電界発光表示装置の更に他の構成例を概念的に説明する平面図である。
【図3B】図3Bは、本発明における有機電界発光表示装置の更に他の構成例を概念的に説明する平面図である。
【図4】図4は、本発明の有機電界発光装置の一例であるボトムエミッション型の有機電界発光装置を示す概略断面図である。
【図5】図5は、本発明の有機電界発光装置の一例であるトップエミッション型の有機電界発光装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(有機電界発光表示装置)
本発明の有機電界発光表示装置は、矩形状画素領域と、半球状レンズ(A)とを有する。
前記矩形状画素領域は、少なくとも発光層を含む有機電界発光素子により形成される赤色、緑色、及び青色のそれぞれに対応する3色の矩形状画素領域としてなる。
また、前記半球状レンズ(A)は、前記3色の矩形状画素領域のうち、一の矩形状画素領域における輝度よりも低い輝度を有する他の矩形状画素領域の発光面上に、前記他の矩形状画素領域における短辺の長さに対して2倍以上4倍以下のレンズ径を有する。
【0011】
<矩形状画素領域>
前記矩形状画素領域としては、特に制限はなく、前記有機電界発光素子を含むものであれば、特に制限はなく、例えば、少なくとも、前記有機電界発光素子と、該有機電界発光素子上に配され、該有機電界発光素子から発光される光を取り出す矩形状の開口を有する光学機能層とを含む有機電界発光表示部の発光面側に形成される。
【0012】
前記矩形状画素領域の発光面における大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、短辺としては、1μm〜10,000μmが好ましく、5μm〜500μmがより好ましく、10μm〜100μmが特に好ましい。また、長辺としては、1μm〜100,000μmが好ましく、5μm〜5,000μmがより好ましく、10μm〜300μmが特に好ましい。
前記好ましい大きさであると、ディスプレイとして良好な表示性能にすることができる。
【0013】
<半球状レンズ>
前記半球状レンズ(A)は、前記矩形状画素領域から取り出される光の正面輝度を向上させる機能を有する。
前記半球状レンズ(A)としては、前記機能を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の半球状レンズ等が挙げられる。
【0014】
前記半球状レンズ(A)の配置としては、前記3色の矩形状画素領域のうち、一の矩形状画素領域における輝度よりも低い輝度を有する他の矩形状画素領域の発光面上に配することとすれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記半球状レンズの数としては、特に制限はなく、一つの矩形状画素領域に対して複数の前記半球状レンズを配してもよい。
【0015】
前記半球状レンズのレンズ径(A)としては、該他の矩形状画素領域における短辺の長さに対して2倍以上4倍以下であれば、特に制限はないが、2倍以上3倍以下が好ましく、2.5倍以上3倍以下がより好ましい。
前記レンズ径を有すると、レンズの配置が容易でディスプレイ全体の光取り出し効率の向上を見込める。
また、前記矩形状画素領域の発光面上に、複数の半球状レンズを配する場合、各半球状レンズ(A)のそれぞれのレンズ径としては、同じレンズ径であっても異なるレンズ径であってもよい。
また、前記複数の半球状レンズ(A)のうち、少なくとも一つが前記レンズ径を有すればよく、すべての半球状レンズが前記レンズ径である必要はないが、すべての半球状レンズが前記レンズ径を満たすことが好ましい。
【0016】
また、前記3色の矩形状画素領域のうち、他の矩形状画素領域よりも高い輝度を有する矩形状画素領域においては、必ずしも半球状レンズを配する必要はないが、高い輝度を得る観点から、該他の矩形状画素領域よりも高い輝度を有する矩形状画素領域においても、半球状レンズ(B)を配することが好ましい。
この場合、前記他の矩形状画素領域よりも高い輝度を有する矩形状画素領域の発光面上に配される半球レンズ(B)のレンズ径としては、前記3色の矩形状画素領域のうち、一の矩形状画素領域における輝度よりも低い輝度を有する他の矩形状画素領域の発光面上に配される半球状レンズのレンズ径よりも小さければ、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記3色の矩形状画素領域のうち、最も輝度の高い矩形状画素領域に対応する発光面上に配される半球状レンズ(B)のレンズ径としては、該矩形状画素領域における短辺の長さに対して1倍以上であり、かつ、該矩形状画素領域における輝度よりも低い輝度を有する他の矩形状画素領域の発光面上のレンズ径より小さいことが好ましく、更に、該矩形状画素領域における短辺の長さに対して1倍以上3倍以下がより好ましい。
このようなレンズ径を有すると、輝度の高い矩形状画素領域においても光取り出し効率を向上させることができる。
【0017】
これら他の矩形状画素領域における輝度よりも高い輝度を有する矩形状画素領域の発光面上に配される半球状レンズ(B)の数としては、特に制限はなく、一つの矩形状画素領域に対して複数の前記半球状レンズ(B)を配してもよい。
また、前記矩形状画素領域の発光面上に、複数の半球状レンズを配する場合、各半球状レンズ(B)のそれぞれのレンズ径としては、同じレンズ径であっても異なるレンズ径であってもよい。
【0018】
前記3色の矩形状画素領域における、具体的な配色と矩形状画素領域との対応関係としては、特に制限はないが、一の矩形状画素領域における輝度よりも低い輝度を有する他の矩形状画素領域が、赤色及び青色のそれぞれに対応する矩形状画素領域であり、前記一の矩形状画素領域が緑色に対応する矩形状画素領域であることが好ましい。
一般に赤色及び青色の発色を示す有機電界発光素子の発光効率が、緑色の発色を示す有機電界発光素子の発光効率に劣る傾向にあり、前記赤色及び青色に対応する矩形状画素領域における輝度を向上させることで、前記緑色に対応する矩形状画素領域における輝度との均一化させ、素子間における、駆動電力及び素子寿命の不均一性を解消することができる。
【0019】
各色の矩形状画素領域の発光面上に配される前記半球状レンズ(A)、(B)を複数有する場合には、特に制限はないが、1枚のシート状部材に複数の半球状レンズを有する光取り出し部材を用いることが好ましい。
このような光取り出し部材としては、インプリント法、インクジェット法などにより形成することができる。
【0020】
以下、本発明の有機電界発光表示装置を具体的な実施形態に基づき説明するが、本発明の思想は、以下の実施形態に限定されない。
【0021】
−第1の実施形態−
図1に基づき、本発明の有機電界発光表示装置の第1の実施形態を説明する。図1は、本発明における有機電界発光表示装置の一の構成例を概念的に説明する平面図である。
有機電界発光表示装置1は、光学機能層2の開口された領域に、赤色矩形状画素領域3Rと、緑色矩形状画素領域3Gと、及び青色矩形状画素領域3Bとを有している。赤色矩形状画素領域3R及び青色矩形状画素領域3Bにおける輝度は、緑色矩形状画素領域3Gにおける輝度よりも低くされている。
赤色矩形状画素領域3R及び青色矩形状画素領域3Bのそれぞれの発光面上には、大きな径からなる半球状レンズ(大)4が配されている。
また、緑色矩形状画素領域5の発光面上には、小さな径からなる半球状レンズ(小)5が配されている。
【0022】
このような構成からなる有機電界発光表示装置1においては、緑色矩形状画素領域3Gにおける輝度よりも低い輝度を示す赤色矩形状画素領域3R及び青色矩形状画素領域3Bの発光面上に、半球状レンズ(大)4が配されているため、赤色矩形状画素領域3R及び青色矩形状画素領域3Bにおける輝度が半球状レンズ(大)4により補われ、緑色矩形状画素領域3G及び半球状レンズ(小)5における正面輝度と同等の輝度が得られる。
また、半球状レンズ(大)4を配する矩形状画素領域を輝度の低い赤色矩形状画素領域3R及び青色矩形状画素領域3Bとし、緑色矩形状画素領域3Gの発光面上に半球状レンズ(大)4を配さないことから、赤色矩形状画素領域3R、緑色矩形状画素領域3G、及び青色矩形状画素領域3Bの短辺方向における各画素間距離を短く抑えられ、各色が高精細に発光可能とされる。
また、緑色矩形状画素領域3Gの発光面上には、半球状レンズ(小)5が配されているため、半球状レンズ(小)5が配されていない状態の正面輝度よりも、高い正面輝度が得られる。
したがって、有機電界発光表示素子1によれば、発光効率の低い赤色画素及び青色画素と、発光効率の高い緑色画素との間で均一な輝度で高精細に発光可能であるとともに、これらの画素に対応する有機電界発光素子間における、駆動電力及び素子寿命の不均一性が解消される。
【0023】
−第2の実施形態−
図2に基づき、本発明の有機電界発光表示装置の第2の実施形態を説明する。図2は、本発明における有機電界発光表示装置の他の構成例を概念的に説明する平面図である。
有機電界発光表示装置10においては、赤色矩形状画素領域3R、青色矩形状画素領域3Bのそれぞれにおいて、隣接する同色の矩形状画素領域の発光面上で半球状レンズ(大)4が連接されるように形成される。
また、緑色矩形状画素領域3Gにおいて、隣接する同色の矩形状画素領域の発光面上で半球状レンズ(小)5が連接されるように形成される。
このような有機電界発光表示装置10においては、同色の矩形状画素領域を長辺の方向に隣接させれば、同色の矩形状画素領域間の隙間に応じた半球状レンズの配置設定を行う必要がなく、製造効率を向上させることができる。
上記以外は、第1の実施形態における有機電界発光表示装置1と同様であるため、説明を省略する。
【0024】
−第3−1の実施形態−
図3Aに基づき、本発明の有機電界発光表示装置の第3−1の実施形態を説明する。図3Aは、実施例3における有機電界発光表示装置の更に他の構成例を概念的に説明する平面図である。
有機電界発光表示装置20においては、赤色矩形状画素領域3R、青色矩形状画素領域3Bのそれぞれにおいて、半球状レンズ(大)4と半球状レンズ(小)とが交互に配されるように形成される。
このような有機電界発光表示装置20においては、半球レンズの容易な配置と光取り出し効率の調整を両立することができる。
上記以外は、第2の実施形態における有機電界発光素子10と同様であるため、説明を省略する。
【0025】
−第3−2の実施形態−
図3Bに基づき、本発明の有機電界発光表示装置の第3−2の実施形態を説明する。図3Bは、本発明における有機電界発光表示装置の他の構成例を概念的に説明する平面図である。
有機電界発光表示装置25においては、青色矩形状画素領域3Bにおいて、隣接する同色の矩形状画素領域の発光面上で半球状レンズ(大)4が連接されるように形成される。
また、赤色矩形状画素領域3R、緑色矩形状画素領域3Gそれぞれにおいて、隣接する同色の矩形状画素領域の発光面上で半球状レンズ(小)5が連接されるように形成される。
このような有機電界発光表示装置25においては、面内の一の矩形状画素領域における輝度よりも低い輝度を有する他の矩形状画素領域の少なくともひとつに設置した場合も消費電力を低減することができる。
上記以外は、第2の実施形態における有機電界発光装置10と同様であるため、説明を省略する。
【0026】
<<有機電界発光表示部>>
前記有機電界発光表示部(有機電界発光素子)としては、例えば、前記有機電界発光素子、または前記有機電界発光素子及び前記光学機能層を含み、必要に応じてその他の部材を有する。
【0027】
−有機電界発光素子−
陽極と陰極の間に少なくとも発光層を有し、必要に応じて正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層などを有してもよく、またこれらの各層はそれぞれ他の機能を備えたものであってもよい。各層の形成にはそれぞれ種々の材料を用いることができる。
前記有機電界発光表示部は、赤(R)、緑(B)及び青(B)のいずれかを含む画素として構成される。
【0028】
−−陽極−−
前記陽極は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層などに正孔を供給するものであり、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、又はこれらの混合物などを用いることができ、好ましくは仕事関数が4eV以上の材料である。具体例としては酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物、あるいは金、銀、クロム、ニッケル等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられ、好ましくは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からITOが好ましい。
前記陽極の厚みは、特に制限はなく、材料により適宜選択可能であるが、10nm〜5μmが好ましく、50nm〜1μmがより好ましく、100nm〜500nmが更に好ましい。
【0029】
前記陽極としては、通常、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、透明樹脂基板などの上に層形成したものが用いられる。ガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。
前記基板の厚みは、機械的強度を保つのに十分であれば特に制限はないが、ガラスを用いる場合には、0.2mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましい。
【0030】
前記透明樹脂基板としては、バリアフィルムを用いることもできる。該バリアフィルムとは、プラスチック支持体上にガス不透過性のバリア層を設置したフィルムである。バリアフィルムとしては、酸化ケイ素や酸化アルミニウムを蒸着したもの(特公昭53−12953号公報、特開昭58−217344号公報)、有機無機ハイブリッドコーティング層を有するもの(特開2000−323273号公報、特開2004−25732号公報)、無機層状化合物を有するもの(特開2001−205743号公報)、無機材料を積層したもの(特開2003−206361号公報、特開2006−263989号公報)、有機層と無機層を交互に積層したもの(特開2007−30387号公報、米国特許第6413645号明細書、Affinitoら著 Thin Solid Films 1996年 290-291頁)、有機層と無機層を連続的に積層したもの(米国特許出願公開公報2004−46497号明細書)などが挙げられる。
【0031】
前記陽極の作製には、材料によって種々の方法が用いられるが、例えばITOの場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾル−ゲル法など)、酸化インジウムスズの分散物の塗布などの方法で膜形成される。陽極は洗浄その他の処理により、表示装置の駆動電圧を下げたり、発光効率を高めることも可能である。例えばITOの場合、UV−オゾン処理などが効果的である。
【0032】
−−陰極−−
前記陰極は、電子注入層、電子輸送層、発光層などに電子を供給するものであり、電子注入層、電子輸送層、発光層などの陰極と隣接する層との密着性やイオン化ポテンシャル、安定性等を考慮して選ばれる。
前記陰極の材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、又はこれらの混合物を用いることができ、具体例としてはアルカリ金属(例えばLi、Na、K等)又はそのフッ化物、アルカリ土類金属(例えばMg、Ca等)又はそのフッ化物、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金又はそれらの混合金属、リチウム−アルミニウム合金又はそれらの混合金属、マグネシウム−銀合金又はそれらの混合金属、インジウム、イッテリビウム等の希土類金属などが挙げられる。これらの中でも、仕事関数が4eV以下の材料が好ましく、アルミニウム、リチウム−アルミニウム合金又はそれらの混合金属、マグネシウム−銀合金又はそれらの混合金属が特に好ましい。
【0033】
前記陰極の厚みは、特に制限はなく、材料により適宜選択可能であるが、10nm〜5μmが好ましく、50nm〜1μmがより好ましく、100nm〜1μmが更に好ましい。
前記陰極の作製には、例えば電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、コーティング法などの方法が用いられ、金属を単体で蒸着することも、二成分以上を同時に蒸着することもできる。更に、複数の金属を同時に蒸着して合金電極を形成することも可能であり、またあらかじめ調整した合金を蒸着させてもよい。
前記陽極及び陰極のシート抵抗は、低い方が好ましく、数百Ω/□以下が好ましい。
【0034】
−−発光層−−
前記発光層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、電界印加時に陽極又は正孔注入層、正孔輸送層から正孔を注入することができると共に、陰極又は電子注入層、電子輸送層から電子を注入することができる機能や、注入された電荷を移動させる機能、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層を形成することができるものなどを用いることができる。
【0035】
前記発光層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記有機発光層は、発光材料のみで構成されていてもよく、ホスト材料と発光材料との混合層とした構成でもよい。
前記発光材料としては、特に制限はなく、蛍光材料でも燐光材料であってもよく、2種以上であってもよいが、少なくとも1種の燐光材料を含むことが好ましい。
【0036】
前記燐光材料としては、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができ、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体を挙げることができる。
前記遷移金属原子としては、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、金、銀、銅、及び白金が好ましく、レニウム、イリジウム、及び白金がより好ましく、イリジウム、白金が特に好ましい。
ランタノイド原子としては、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテシウムが挙げられる。中でも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
【0037】
前記ホスト材料は、電荷輸送材料であることが好ましい。
前記ホスト材料は1種であっても2種以上であってもよく、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。さらに、有機発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいてもよい。
また、有機発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0038】
前記発光層材料により、赤色発光層、緑色発光層及び青色発光層を形成することができる。
前記赤色発光層としては、例えば、電荷輸送材料として下記のCBP(4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル)と、燐光材料として下記のドーパントAとを共蒸着させることにより形成することができる。
【0039】
前記緑色発光層としては、例えば、電荷輸送材料として下記のmCP(1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)べンゼン)と、燐光材料として下記のIr(ppy)(トリス(2−フェニルピリジンイリジウム)とを共蒸着させることにより形成することができる。
【0040】
前記青色発光層としては、例えば、電荷輸送材料として下記のmCP(1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)べンゼン)と、燐光材料として下記のFirpic(イリジウム(III)ビス[(4,6−ジフルオロフェニル)−ピリジナート−N,C2]ピコリネート)とを共蒸着させることにより形成することができる。
【0041】
【化1】

【0042】
前記発光層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1nm〜5μmが好ましく、5nm〜1μmがより好ましく、10nm〜500nmが更に好ましい。
前記発光層の形成方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば抵抗加熱蒸着、電子ビーム、スパッタリング、分子積層法、コーティング法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)、LB法などの方法が挙げられる。これらの中でも、抵抗加熱蒸着、コーティング法が特に好ましい。
【0043】
−−正孔注入層、正孔輸送層−−
前記正孔注入層及び正孔輸送層の材料としては、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有しているものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記正孔注入層及び正孔輸送層の材料としては、例えばカルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記正孔注入層及び正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記正孔注入層及び正孔輸送層の形成方法としては、例えば真空蒸着法、LB法、前記正孔注入輸送剤を溶媒に溶解又は分散させてコーティングする方法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)が用いられる。コーティング法の場合、樹脂成分と共に溶解乃至分散することができる。
前記樹脂成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリブチルメタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)樹脂、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、エチルセルロース、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記正孔注入層及び正孔輸送層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば1nm〜5μmが好ましく、5nm〜1μmがより好ましく、10nm〜500nmが更に好ましい。
【0045】
−−電子注入層、電子輸送層−−
前記電子注入層及び電子輸送層の材料としては、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれか有しているものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記電子注入層及び電子輸送層の材料としては、例えばトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記電子注入層及び電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記電子注入層及び電子輸送層の形成方法としては、例えば真空蒸着法やLB法、前記電子注入輸送剤を溶媒に溶解乃至分散させてコーティングする方法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)などが用いられる。コーティング法の場合、樹脂成分と共に溶解乃至分散することができ、前記樹脂成分としては、例えば、正孔注入輸送層の場合に例示したものが適用できる。
前記電子注入層又は電子輸送層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1nm〜5μmが好ましく、5nm〜1μmがより好ましく、10nm〜500nmが更に好ましい。
【0047】
−−バリア層−−
前記バリア層としては、大気中の酸素、水分、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等の透過を防ぐという機能を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記バリア層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、SiN、SiON、などが挙げられる。
前記バリア層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm〜1,000nmが好ましく、7nm〜750nmがより好ましく、10nm〜500nmが特に好ましい。前記バリア層の厚みが、5nm未満であると、大気中の酸素及び水分の透過を防ぐバリア機能が不充分であることがあり、1,000nmを超えると、光線透過率が低下し、透明性を損なうことがある。
前記バリア層の光学的性質は、光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。
前記バリア層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CVD法、真空蒸着法、などが挙げられる。
【0048】
−−基板−−
前記基板としては、その形状、構造、大きさ等を適宜選択すればよく、一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。前記基板は、無色透明であっても、有色透明であってもよいが、発光層から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。
【0049】
前記基板の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガラス等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)樹脂等の有機材料、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
前記基板としてガラスを用いる場合には、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカなどのバリアコートを施したもの(例えば、バリアフィルム基板)を使用することが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0051】
前記熱可塑性基板を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
【0052】
−光学機能層−
前記光学機能層は、前記有機電界発光素子における発光領域を制御する層であり、前記矩形状画素領域の大きさに対応する開口を制御する機能を有することもできる。
前記光学機能層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知のブラックマトリックス層が挙げられる。
【0053】
−有機電界発光表示部の構造−
ここで、前記有機電界発光表示部の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば(1)有機電界発光表示部における光出射側の電極(陽極)、(2)光学共振器構造(マイクロキャビティ構造)の光学長、(3)ボトムエミッション型又はトップエミッション型、などが挙げられる。
【0054】
前記(1)の有機電界発光表示部の光出射側の電極(陽極)としては、ボトムエミッション型では、発光層からみた反射率が10%以下である透明電極(例えばITO)、又は発光層からみた反射率が10%を超える半透過電極(例えばAg電極)を用いることができる。前記陽極として透明電極を用いると、光の反射が弱いので、光学共振器構造を形成できない。前記陽極として半透過電極を用いると、光学共振器構造を形成できる。
トップエミッション型では、光出射側の電極(陽極)として、発光層からみた反射率が10%を超える半透過電極を用い、光学共振器構造を形成する。
【0055】
前記(2)の光学共振器構造の光学長は、有機電界発光表示部を構成する陽極と陰極の間の有機化合物層の厚みを変えることにより適宜調整することができる。ここで、前記有機化合物層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばホール輸送層、ホール注入層、発光層、電子輸送層、電子注入層、などが挙げられる。
ここで、前記光学共振器構造とは、光出射側の半透過反射層と光出射と逆側の反射層とが干渉する構造を意味する。
【0056】
前記(3)のボトムエミッション型又はトップエミッション型の構造を図を用いて説明する。
ここで、図4は、本発明の有機電界発光装置の一例であるボトムエミッション型の有機電界発光装置を示す概略断面図である。図5は、本発明の有機電界発光装置の一例であるトップエミッション型の有機電界発光装置を示す概略断面図である。
【0057】
図4のボトムエミッション型の有機電界発光装置100は、ガラス基板11上に、有機電界発光表示部101(陽極12、ホール注入層13、ホール輸送層14、発光層15、電子輸送層16、電子注入層17、陰極18)を有し、光取り出し面としてのガラス基板11上にレンズ30が形成されている。
図5のトップエミッション型の有機電界発光装置200は、ガラス基板11上に、有機電界発光表示部201(陽極12、ホール注入層13、ホール輸送層14、発光層15、電子輸送層16、電子注入層17、陰極18)を有し、陰極18上にガスバリア層19が形成され、光取り出し面としてのガスバリア層19上にレンズ30が形成されている。
なお、「光出射方向」は、発光層からの光が、光取り出し面から有機電界発光装置の外部に出射される方向を示す。図4に示すボトムエミッション型の有機電界発光装置100の場合、矢印で示した通り、発光層15からみて図面に平行に下方に向かう方向を示す。図5に示すトップエミッション型の有機電界発光装置200の場合、矢印で示した通り、発光層15からみて図面に平行に上方に向かう方向を示す。
【0058】
前記有機電界発光装置をフルカラータイプのものとする方法としては、例えば色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する層構造を基板上に配置する3色発光法などが挙げられる。
【0059】
(有機電界発光表示装置の製造方法)
本発明の有機電界発光表示装置の製造方法は、少なくとも発光層を含む有機電界発光素子により形成される赤色、緑色、及び青色のそれぞれに対応する3色の矩形状画素領域と、前記3色の矩形状画素領域のうち、一の矩形状画素領域における輝度よりも低い輝度を有する他の矩形状画素領域の発光面上に、前記他の矩形状画素領域における短辺の長さに対して2倍以上4倍以下のレンズ径からなる半球状レンズと、を有する有機電界発光表示装置の製造方法であって、少なくとも、前記他の矩形状画素領域の発光面上の位置に前記半球状レンズを配する工程を含み、必要に応じて、その他の工程を含む。
【0060】
前記半球状レンズの形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、インクジェット法、インプリント法、フォトリソグラフィ法、などが挙げられる。
【0061】
前記インプリント法としては、光硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれかを含む組成物溶液を、矩形状画素領域上に配される半球状レンズの形状及び配置パターンに対応する凹部を有するモールド構造体上に塗工した後、前記組成物溶液を硬化させることにより前記半球状レンズを形成する方法が挙げられる。
【0062】
前記インクジェット法としては、前記光硬化性樹脂及び前記熱可塑性樹脂のいずれかを含む組成物溶液を、インクジェット法により塗工した後、前記組成物溶液を硬化させることにより前記半球状レンズを形成する方法が挙げられる。該インクジェット法においては、インクジェットにより滴下された前記組成物溶液が表面張力によりレンズ形状とされた状態で硬化させる。
【0063】
これらの半球状レンズの形成に用いられる前記光硬化性樹脂、前記熱可塑性樹脂としては、光の照射又は熱の付与により硬化されるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0064】
前記半球状レンズの形成方法により形成された半球状レンズとしては、特に制限はないが、シート状部の面上に複数の半球レンズが配される光取り出し部材として形成されることが好ましい。
【0065】
また、前記半球状レンズの形成方法により形成された半球状レンズの位置合わせ方法としては、特に制限はないが、双眼顕微鏡を用いたアライメントマークを用いる方法、外形合わせによる方法が挙げられる。
【0066】
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機電界発光表示装置の製造工程として公知の工程の工程が挙げられる。
【0067】
また、前記以外の事項については、本発明の前記有機電界発光表示装置において説明した事項をすべて適用することができる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
<有機電界発光表示部の作製>
TFT(Thin Film Transister)上に、以下のように、赤色、緑色、青色のそれぞれの矩形状画素領域に対応する有機電界発光素子を形成した。
【0070】
前記TFTの反射電極(アルミニウム)上に、正孔注入層として、2−TNATA(4,4',4''−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)と、F4−TCNQ(テトラフルオロテトラシアノキノジメタン)とを99:1(2−TNATA:F4−TCNQ)で共蒸着して厚み40nmの正孔注入層を形成した。
【0071】
前記正孔注入層上に、α−NPD(N,N'−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミン)を10nm蒸着し、次いで、3,6−ビス(カルバゾール−1−イル)−1−フェニルカルバゾールを3nm蒸着し、総厚13nmの正孔輸送層を形成した。
【0072】
【化2】

【0073】
前記正孔注入層上に、発光層を形成した。なお、発光層の形成は、赤色、緑色、青色のそれぞれの矩形状画素領域に対応する有機電界発光素子ごとに、以下のように赤色発光層、緑色発光層、青色発光層を形成した。
【0074】
[赤発光層]
前記赤色発光層は、BAlq(ビス−(2−メチル−8−キノリノレート)−4−(フェニルフェノラート)アルミニウム)と化合物Rとを95:5(BAlq:化合物R)で共蒸着して、厚み30nmで形成した。
【0075】
【化3】

【0076】
前記緑色発光層は、mCP(1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)べンゼン)とIr(ppy)(トリス(2−フェニルピリジンイリジウム))とを85:15で共蒸着して、厚み25nmで形成した。
【0077】
【化4】

【0078】
前記青色発光層は、mCPと化合物Bとを85:15(mCP:化合物B)で共蒸着して、厚み35nmで形成した。
【0079】
【化5】

【0080】
前記各発光層上にBAlqを39nm蒸着し、次いで、BCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)を1nm蒸着し、総厚40nmの電子輸送層を形成した。
【0081】
【化6】

【0082】
前記電子輸送層上にLiFを蒸着して、厚み1nmの電子注入層を形成した。
【0083】
前記電子注入層上にAlを1.5nm蒸着し、次いで、Agを20nm蒸着して、総厚21.5nmの半透過電極を形成した。
【0084】
このように半透過電極が形成された赤色、緑色、青色の各有機電界発光素子を有する発光表示部に対して、SiONを蒸着して厚み3μmの封止層を形成し、有機電界発光表示部を形成した。
この発光素子上に対して、ガラス上に作製したブラックマトリックス(開口部 90μm×10μm(開口率27%))を貼り合わせ、該有機電界発光表示部における赤色発光層、緑色発光層、及び青色発光層を含むそれぞれの有機電界発光素子に対応する赤色画素領域、緑色画素領域、及び青色画素領域を形成した。
【0085】
<光取り出し部材の作製>
図1において白線で示すレンズの形状及び配置(30μmのレンズ径を有する複数のレンズ、及び10μmのレンズ径を有する複数のレンズ)に対応する凹部を有するガラスモールド上に該ガラスモールド上を覆うように光硬化性樹脂の組成物溶液(PAK−02、東洋合成工業製)を滴下し、スピンコートで塗布した後、フラットに形成された塗布面に対して、厚み100μmのPEN樹脂シート(帝人デュポン社製:Q65FA)として配し、該PET樹脂シート側からUV照射(1,000mJ/cm)を行って、光硬化性樹脂の組成物溶液を硬化させ、この状態からガラスモールドを剥離して、図1に示すレンズの形状及び配置(30μmのレンズ径を有する複数のレンズ、及び10μmのレンズ径を有する複数のレンズを含む光取り出し部材を作製した。
【0086】
<有機電界発光表示装置の製造>
有機電界発光表示部の赤色画素領域及び青色画素領域上の位置に、30μmのレンズ径からなる複数のレンズが配され、緑色画素領域上の位置に10μmのレンズ径からなる複数のレンズが配されるように、有機電界発光表示部上に光取り出し部材を配し、実施例1における有機電界発光表示装置を製造した(図1参照)。
【0087】
(実施例2)
実施例1における光取り出し部材の作製に代えて、以下のように光取り出し部材を作製し、実施例2における有機電界発光表示装置を製造したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2における有機電界発光表示装置を製造した。
【0088】
即ち、図2において白線で示すレンズの形状及び配置(30μmのレンズ径を有する複数のレンズ、及び10μmのレンズ径を有する複数のレンズ)に対応する凹部を有するガラスモールド上に該ガラスモールド上を覆うように光硬化性樹脂の組成物溶液(PAK−02、東洋合成工業製)を滴下し、スピンコートで塗布した後、フラットに形成された塗布面を、赤色画素領域及び青色画素領域上の位置に、30μmのレンズ径からなる複数のレンズが配され、緑色画素領域上の位置に10μmのレンズ径からなる複数のレンズが配されるように、有機電界発光表示部の面と位置合わせをして重ね合わせた。
次いで、ガラスモールド側からUV照射(1,000mJ/cm)を行って、光硬化性樹脂の組成物溶液を硬化させ、この状態からガラスモールドを剥離して、光取り出し部材を作製すると同時に、有機電界発光表示部の赤色画素領域及び青色画素領域上の位置に、30μmのレンズ径からなる複数のレンズが配され、緑色画素領域上の位置に10μmのレンズ径からなる複数のレンズが配される、実施例2における有機電界発光表示装置を製造した(図2参照)。
【0089】
(実施例3)
図2において白線で示すレンズの形状及び配置に対応する凹部を有するガラスモールドに代えて、図3Aにおいて白線で示すレンズの形状及び配置に対応する凹部を有するガラスモールドを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例3における有機電界発光表示装置を製造した(図3A参照)。
【0090】
(実施例4)
図2において白線で示すレンズの形状及び配置に対応する凹部を有するガラスモールドに代えて、図3Bにおいて白線で示すレンズの形状及び配置に対応する凹部を有するガラスモールドを用いたこと以外は、実施例2と同様にして実施例4における有機電界発光表示装置を製造した(図3B参照)。
【0091】
(比較例1)
実施例1において、有機電界発光表示部上に光取り出し部材を配さないこと以外は、実施例1と同様にして比較例1における有機電界発光表示装置を製造した。
【0092】
(比較例2)
実施例1において、図1において白線で示すレンズの形状及び配置(30μmのレンズ径を有する複数のレンズ、及び10μmのレンズ径を有する複数のレンズ)に対応する凹部を有するガラスモールドを用いて光取り出し部材を作製することに関し、全面にすべて10μmのレンズ径を有するレンズを碁盤目状に複数個配置したレンズアレイに対応する凹部を有するガラスモールドを用い、すべて10μmのレンズ径を有する複数のレンズを含む光取り出し部材を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2における有機電界発光表示装置を製造した。
【0093】
(比較例3)
実施例1において、図3Aにおいて白線で示すレンズの形状及び配置(30μmのレンズ径を有する複数のレンズ、及び10μmのレンズ径を有する複数のレンズ)に対応する凹部を有するガラスモールドを用いて光取り出し部材を作製することに関し、全面にすべて10μmのレンズ径を有するレンズを碁盤目状に複数個配置したレンズアレイに対応する凹部を有するガラスモールドを用い、すべて10μmのレンズ径を有する複数のレンズを含む光取り出し部材を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3における有機電界発光表示装置を製造した。
【0094】
(比較例4)
実施例3において、図3Aに示したレンズアレイを用いて有機電界発光表示部の青色画素領域上の位置に、30μmのレンズ径からなる複数のレンズが配され、青色画素領域及び緑色画素領域上の位置に10μmのレンズ径からなる複数のレンズが配されるように有機電界発光表示部上に光取り出し部材を配することに代えて、有機電界発光表示部の緑色画素領域上の位置に、30μmのレンズ径からなる複数のレンズが配され、青色画素領域及び赤色画素領域上の位置に10μmのレンズ径からなる複数のレンズが配されるように、有機電界発光表示部上に光取り出し部材を配したこと以外は、実施例3と同様にして、比較例4における有機電界発光表示装置を製造した。
【0095】
<矩形状画素領域における短辺の長さの測定方法>
画素を発光させ、矩形状画素領域における短辺の長さを、顕微鏡(オリンパス(株)社製:STM6−LM−F35)で測定し、RGB画素ともに平均値が1%以内の誤差範囲であることを確認した。
【0096】
<レンズ径の測定方法>
レンズ径を顕微鏡(オリンパス(株)社製:STM6−LM−F35)で5点測定し、平均値が1%以内の誤差範囲であることを確認した。
【0097】
<有機電界発光表示装置の評価>
実施例1〜4及び比較例1〜4における有機電界発光表示装置に対して、以下のように輝度、消費電力、及び素子寿命の評価を行った。
【0098】
<駆動電力の評価>
実施例1〜4及び比較例1〜4における有機電界発光表示装置を外部電源に接続し、赤色、緑色、及び青色の全発光に基づく、白色光の正面輝度が800cd/mとなる駆動状態に設定した。白色の正面輝度は輝度計(トップコム社製:SR−3)を、発光表示素子の中心と鉛直方向に同じ高さ且つこの中心の水平方向に5°の位置であって、発光表示素子から1メートル離れた位置に設置して行なった。
そのときの駆動電力を、ソースメジャーユニット2400(KEITHLEY社製)により測定しRGB各色の電力を合算して算出した。
【0099】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の有機電界発光表示装置は、均一な輝度で高精細に発光可能であるとともに、こ駆動電力及び素子寿命の不均一性がないので、例えば、コンピュータ、車載用表示器、野外表示器、家庭用機器、業務用機器、家電用機器、交通関係表示器、時計表示器、カレンダ表示器、ルミネッセントスクリーン、音響機器等をはじめとする各種分野において好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1、10、20、25、100、200 有機電界発光表示装置
2 光学機能層
3R 赤色矩形状画素領域
3G 緑色矩形状画素領域
3B 青色矩形状画素領域
4 半球状レンズ(大)
5 半球状レンズ(小)
11 ガラス基板
12 陽極
13 ホール注入層
14 ホール輸送層
15 発光層
16 電子輸送層
17 電子注入層
18 陰極
19 バリア層
30 レンズ
101、201 有機電界発光素子(有機電界発光表示部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも発光層を含む有機電界発光素子により形成される赤色、緑色、及び青色のそれぞれに対応する3色の矩形状画素領域と、前記3色の矩形状画素領域のうち、一の矩形状画素領域における輝度よりも低い輝度を有する他の矩形状画素領域の発光面上に、前記他の矩形状画素領域における短辺の長さに対して2倍以上4倍以下のレンズ径からなる半球状レンズと、を有することを特徴とする有機電界発光表示装置。
【請求項2】
3色の矩形状画素領域のうち、最も輝度の高い矩形状画素領域に対応する発光面上に、該矩形状画素領域における短辺の長さに対して1倍以上であり、かつ、該矩形状画素領域における輝度よりも低い輝度を有する他の矩形状画素領域の発光面上のレンズ径より小さいレンズ径からなる半球状レンズを有する請求項1に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項3】
一の矩形状画素領域における輝度よりも低い輝度を有する他の矩形状画素領域が、赤色及び青色のそれぞれに対応する矩形状画素領域であり、前記一の矩形状画素領域が緑色に対応する矩形状画素領域である請求項1から2のいずれかに記載の有機電界発光表示装置。
【請求項4】
有機電界発光素子が、反射電極と半透過電極との間に発光層を配することにより発光面側から任意の波長の光を選択的に取り出す光学共振器構造を有する請求項1から3のいずれかに記載の有機電界発光表示装置。
【請求項5】
発光層に少なくとも1種の燐光材料を含む請求項1から4のいずれかに記載の有機電界発光表示装置。
【請求項6】
少なくとも発光層を含む有機電界発光素子により形成される赤色、緑色、及び青色のそれぞれに対応する3色の矩形状画素領域と、前記3色の矩形状画素領域のうち、一の矩形状画素領域における輝度よりも低い輝度を有する他の矩形状画素領域の発光面上に、前記他の矩形状画素領域における短辺の長さに対して2倍以上4倍以下のレンズ径からなる半球状レンズと、を有する有機電界発光表示装置の製造方法であって、
少なくとも、前記他の矩形状画素領域の発光面上の位置に前記半球状レンズを配することを特徴とする有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項7】
半球状レンズを、光硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂を用いてインプリント法により形成する請求項6に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−54488(P2011−54488A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203899(P2009−203899)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】