説明

有機顔料とヒュームドシリカとの共粉砕

プラスチック又は表面コーティング、例えば、インク及び塗料のようなポリマー系に組み込まれると、優れた彩度、色の濃さ及び改善されたカラーフロップを含む改善された色特性を示す、有機顔料とヒュームドシリカとの混和物を含む顔料組成物を調製する。さらに、着色上有効量の本発明顔料組成物で着色されたコーティング組成物及びプラスチックの物品を提供する。本発明の特有の実施態様は、自動車コーティングに有用な顔料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
有機顔料とヒュームドシリカとの混和物(intimate mixture)を含む顔料組成物、及び顔料組成物の調製方法を開示する。顔料組成物は、プラスチック又は表面コーティング(例えば、インク及び塗料)のようなポリマー系に組み込まれた場合、優れた彩度、色の濃さ及び向上したカラーフロップを含む改良された色特性を示す。本発明はまた、コーティング組成物、及び有機顔料とヒュームドシリカとの混和物を含む、着色上有効な量の顔料組成物で着色されたプラスチックの物品を提供する。本発明の特有の実施態様は、自動車コーティングにおいて有用な顔料に関する。
【0002】
有機顔料は、染料とは対照的に、組み込まれる基材に対し不溶性である。その結果、顔料の色特性は、単に顔料の化学式に依存するわけではない。結晶形及び顔料粒子の粒度及び粒子形態のような他の特徴もまた、色特性に影響を与える。したがって、顔料を調製することは、単なる化学合成以上のものを伴う。反応混合物から分離した後の顔料の処理が、顔料がどのように基材を着色するかに大きく影響する場合がある。
【0003】
例えば、粒度、粒子形態、多形相、着色力等のような、必要な顔料特性を生じさせるためには、キナクリドン、DPP、ペリレン等のような有機顔料を、合成後にさらに加工しなければならないことが、当分野において周知である。そのため、粗有機顔料は、通常、湿式又は乾式粉砕(milling)(摩砕(grinding)とも称される)のような粒度縮小を含む、1つ以上の仕上げ又はコンディショニング工程を経る。例えば、R. B. McKay, "Control of the Application Performance of Classical Organic Pigments" in JOCCA, 89 93を参照のこと。
【0004】
湿式粉砕、乾式粉砕、高速粉砕等を含む、顔料粉砕の数多くの種類が周知である。その手順は、通常、塩又は金属酸化物、充填剤、レオロジー制御剤及び他のアジュバントのような助剤の存在下で実施される。
【0005】
全文が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,667,580号は、アルミナ及びシリカ充填剤を含む充填剤の存在下、より大きな粒度の顔料を粉砕、混合又は微粉砕することによる小粒度の有機顔料の調製を開示している。
【0006】
全文が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,122,081号は、水溶性スチレンコポリマー分散剤、場合によっては、水中の消泡剤及び/又は添加剤の存在下で、粗顔料を粉砕することによる有機顔料の粒度縮小方法を開示している。
【0007】
色相及び色の濃さ以外の光学特性もまた、着色プラスチック及びコーティングにおいて重要である。グロス又は光沢顔料としても知られている効果顔料は、独特の色彩効果を生み出す顔料として周知である。例えば、ゴニオクロマチックラスター顔料は、角度に依存する色彩変化を示す。すなわち、これらの顔料は、色特性が視角によって変化する「フロップ効果」を生み出す。一般に、視角が変化した結果、明度が変化すれば、その効果は、「明度フロップ」と称され、変化が色相におけるものであれば、その効果は、「カラーフロップ」と称される。
【0008】
その独特の色特性のため、効果顔料の市場は、化粧品、インク、例えば、偽造防止印刷インク(security printing ink)、プラスチック及び塗料、例えば、自動車コーティングのような用途において成長している。
【0009】
効果顔料は、その光学的効果が、シート状が主流の、相互並列配向された金属の又は屈折性の強い顔料粒子での光の有向反射に基づく、マイカ顔料、光学的に変化する干渉顔料又は金属顔料が最も多数を占める。これらの顔料は、通常、低屈折及び高屈折の層で交互にコーティングされた、光を反射する小板形態の核を有する。
【0010】
有機顔料は、特定の色及び光学的効果を得るために、多くの場合、非有機の効果顔料と組み合わせて使用される。ポリマー系で使用された場合に実質的により優れたカラーフロップを示す有機顔料が調製できることが知られている。
【0011】
全文が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,618,343号は、微量の銅フタロシアニンスルホン酸で変性された小粒度の顔料を組み込むことによって得られる、他とは異なるフロップ効果を有する顔料組成物を開示している。
【0012】
全文が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開番号2004/0194666は、フロップ効果を生み出すことのできる顔料組成物を生産するための、銅フタロシアニングリーン顔料での透明有機顔料の表面変性を開示している。
【0013】
全文が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,997,627号は、小粒径の多孔質充填剤及び顔料を含有する顔料組成物、並びに、強い明度及び明白な3次元効果を有するカラーフロップを示す効果コーティング組成物の調製のためのそれらの使用を開示している。
【0014】
有機顔料をマイカ又は他のシリケート添加剤で粉砕又は摩砕して良好な彩度を有する顔料を作成することは公知であるが、制御された粉砕又は摩砕方法において、ある種のシリカの特定のナノ寸法粒子、すなわちヒュームドシリカを添加剤として用いることにより、殊に、加工した顔料をポリマー組成物、例えば、自動車コーティングに組み込んだ場合、優れた彩度及び分散特性のみならず、大幅に向上したカラーフロップも有する有機顔料を産生することが見出された。
【0015】
本発明は、有機顔料を、添加剤としてのヒュームドシリカと一緒に共粉砕することにより、プラスチック及びコーティングのようなポリマー系に組み込まれた場合、改善された色特性、特に、優れた彩度及び向上したカラーフロップを示す、有機顔料とヒュームドシリカとの混和物を含む顔料粒子を産生する方法を提供する。
【0016】
ヒュームドシリカ/有機顔料混合物の総量に基づき、ヒュームドシリカ粒子1〜50重量部及び有機顔料50〜99重量部を含む混合物を粉砕することを含む、改善された色特性を有する顔料の製造方法を提供する。
【0017】
例えば、本方法は、ヒュームドシリカ粒子1〜35部及び有機顔料65〜99部、ヒュームドシリカ粒子3〜30部及び有機顔料70〜97部、又はヒュームドシリカ粒子5〜25部及び有機顔料75〜95部を含む混合物を粉砕することを含む。
【0018】
プラスチック及びコーティングのようなポリマー基材に組み込まれると、本発明の方法から得られた顔料は、共粉砕前の存在形態での有機顔料を組み込んだ場合に比べ、増大した彩度及びカラーフロップを示し、また多くの場合、他の公知の方法を使用して粉砕した有機顔料に比べ、増大した彩度及びカラーフロップを示す。
【0019】
本発明で使用する材料は、市販されており、また、当分野で公知の方法により調製される。
【0020】
ヒュームドシリカは、ケイ素含有化合物の酸化により製造される、1μm(ミクロン)未満の微小な非結晶質シリカ、SiOである。例えば、ヒュームドシリカは、一般に、水素/酸素炎中のクロロシラン(例えば、四塩化ケイ素)の気相加水分解により製造され、サブミクロン寸法のシリカの溶融球体を形成する。
【0021】
これらの粒子は、衝突して溶融し、約0.1〜0.5μm長の3次元の分岐鎖様凝集体を形成する。冷却は、非常に急速に起こり、粒子成長を制限し、ヒュームドシリカが非結晶質であることを確実にする。これらの凝集体は、次々に物理的に絡み合い、0.5〜44μm寸法範囲の凝集塊を形成する場合がある。発熱性の方法により製造されるヒュームドシリカは、高い空気含有量及び対応して低いバルク密度を有することを特徴とする。一般に、ヒュームドシリカは、1グラムにつき約50〜約400平方メートル(m2/g)範囲のB.E.T.(Brunauer Emmet Teller determined)表面積及び約10〜約50g/lの範囲のバルク密度を有する。ヒュームドシリカは、一般に極めて純度が高く、多くの場合、総不純物が100ppm未満である。
【0022】
この方法によりそのまま製造されるヒュームドシリカは、親水性であるが、ヘキサメチルジシラザン及びジメチルジクロロシランのような化学薬剤で処理して、疎水性のヒュームドシリカを作ることができる。一般に、当分野で公知の、親水性のヒュームドシリカに疎水性を付与する薬剤には、アルキル又はアリールハロシラン、シラン、それらの混合物、及びシロキサンが含まれる。
【0023】
様々な親水性及び疎水性のヒュームドシリカが市販されており、いずれを本発明において使用してもよい。
【0024】
上記のように、形成当初のヒュームドシリカ粒子は、極めて小さいが、結合してより大きな凝集体を形成することが知られている。凝集体は、より緩やかに結びついた凝集塊を形成することもある。本発明のヒュームドシリカは、1μm(例えば、<1μm〜0.001μm)未満の粒径を有し、優れた結果は、平均粒径0.5μm未満、例えば、0.1〜0.4μm、0.1〜0.2μm以下で達成される。一次粒径は、凝集体を形成する1μm未満のヒュームドシリカ粒子の寸法であるが、通常0.5μm未満である。一次粒子は、例えば、約0.001〜約0.5μmであることができ、優れた結果は、ヒュームドシリカ一次粒子が、約0.005〜約0.1、例えば、約0.01〜約0.1μmである場合に達成される。
【0025】
例えば、平均凝集体寸法0.1〜0.5μm及び一次粒径0.005〜0.1μmを有するヒュームドシリカ粒子を使用した場合に優れた結果が得られる。例えば、平均凝集体寸法は、約0.1〜約0.2μmである。
【0026】
有機顔料をヒュームドシリカと共に粉砕する本方法は、任意の有機顔料又は(有機)顔料粗原料に適用可能な一般的な方法である。
【0027】
通常、本方法中に粉砕される有機顔料は、平均粒径範囲が、0.005〜10μm、典型的には、0.01〜5μmである。有機顔料が、顔料粗原料又は調整された顔料の形態で使用されることが、これらの平均粒径範囲に基づき、明らかである。
【0028】
顔料及び顔料粗原料の適切な種類には、アゾ、アゾメチン、メチン、アントラキノン、フタロシアニン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イミノイソインドリン、イミノイソインドリノン、キナクリドン、フラバントロン、インダントロン、アントラピリミジン及びキノフタロン顔料が含まれ、ジケトピロロピロール、キナクリドン、フタロシアニン、インダントロン又はイミノイソインドリノン顔料が好ましい。
【0029】
本発明の顔料は、1種以上の顔料を含んでいてよい。また、2種以上の顔料又は顔料のクラスを含む固溶体であってもよい。
【0030】
本方法において有用な、注目すべき顔料は、カラーインデックス(Colour Index)に見出すことができ、キナクリドン顔料、例えば、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントバイオレット19、及びC.I.ピグメントレッド122;ペリレン顔料、例えば、C.I.ピグメントレッド179;アゾ濃縮顔料、例えば、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド144、及びC.I.ピグメントブラウン23;イソインドリノン顔料、例えば、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントイエロー109、及びC.I.ピグメントイエロー110;ジケトピロロピロール顔料、例えば、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255;C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントオレンジ71、及びC.I.ピグメントオレンジ73;銅フタロシアニン顔料、例えば、C.I.ピグメントブルー15;及びアントラキノン顔料、例えば、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントレッド177及びC.I.ピグメントイエロー147が含まれる。
【0031】
小粒径の又は透明な顔料の調製又は加工において本方法を使用すると、優れた結果が得られる。例えば、金属化自動車コーティングには、高度に飽和した小粒径の顔料が好ましい。
【0032】
通常、小粒径の顔料は、40〜100m2/gの範囲の比表面積を有する任意の顔料であり、多くの場合、小粒径の顔料は、50〜90m2/g又は60〜80m2/gの範囲の比表面積を有する。
【0033】
一般に、上記の範囲内の表面積を有する顔料は、光の散乱がないため、透明顔料と称される。
【0034】
本発明の共粉砕方法は、「粉砕方法」とも称されるが、水平又は垂直媒体ミル、バッチ又は連続、湿式又は乾式であることができ、例えば、粒子内にせん断応力を付与する任意の方法であることができる。粉砕中には、さらに、水及び有機溶媒を含む溶媒のような標準粉砕成分;粉砕媒体、例えば、金属ボール、くぎ、セラミック、塩又は他の金属酸化物のような無機粒子;分散剤;消泡剤;レオロジー制御剤、ポリマー等が存在することができる。
【0035】
有機顔料は、粉砕に先立ち、様々な公知の方法で処理してよく、また、粉砕後の生成物も、後続の粉砕方法を含む常法に従って処理することができる。
【0036】
例えば、有機顔料を、2%ポリビニルピロリドン(PVP)で処理してから、ヒュームドシリカ及び適切な寸法の粉砕媒体と共に粉砕する。粉砕生成物を取り出し、顔料から媒体を分離する。顔料を、例えば、塗料中に分散し、2コート系で金属基材に塗布する。
【0037】
本発明はまた、ヒュームドシリカ/有機顔料混和物の総量に基づき、ヒュームドシリカ粒子1〜50重量部と有機顔料50〜99重量部との混和物を含む顔料組成物を提供する。
【0038】
例えば、顔料組成物は、ヒュームドシリカ粒子1〜35部及び有機顔料65〜99部、ヒュームドシリカ粒子3〜30部及び有機顔料70〜97部、又はヒュームドシリカ粒子5〜25部及び有機顔料75〜95部を含む。
【0039】
本発明の顔料組成物は、プラスチック及びコーティングのようなポリマー基材に組み込まれた場合、ヒュームドシリカとの共粉砕前の存在形態での有機顔料に比べて、増大した彩度及びカラーフロップを示す。多くの場合、本顔料組成物は、同様に、他の公知の方法を用いて粉砕した有機顔料と比較した場合、より高い彩度及びカラーフロップを有する。
【0040】
本発明の1つの実施態様において、顔料組成物は、1μm(例えば<1μm〜0.001μm)未満の有機顔料及びヒュームドシリカ粒子を含む。例えば、顔料組成物に含まれるヒュームドシリカは、ヒュームドシリカの一次粒子の凝集体を含有する粒子であり、粒径1μm未満の凝集体は、例えば、約0.1〜0.5μm長の3次元の分岐鎖様凝集体であり、例えば、凝集体の粒径は、約0.1〜約0.4μm、0.1〜0.2μm以下である。
【0041】
ヒュームドシリカの一次粒径は、1μm未満、通常、0.5μm未満、例えば、約0.001〜約0.5μmであり、優れた結果は、ヒュームドシリカ一次粒子が、約0.005〜約0.1μm、例えば、約0.01〜約0.1μmである場合に達成される。
【0042】
例えば、優れた結果は、平均凝集体寸法が0.1〜0.5μmであり、一次粒径が0.005〜0.1μmであるヒュームドシリカ粒子を使用した場合に得られる。例えば、平均凝集体寸法は、約0.1〜約0.2μmである。
【0043】
顔料組成物に含まれるヒュームドシリカは、親水性又は疎水性である。
【0044】
フロップインデックスは、視角の範囲全体に回転したときの金属色の反射率における変化の測定値である。フロップインデックス0は、ソリッドカラーを示し、一方高フロップの金属又は真珠光沢のベースコート/クリアコート塗装色は、一般に、最大15〜17のフロップインデックスを有するであろう。
【0045】
本明細書において、「フロップインデックス値」又は「フロップインデックス」は、以下の式を用いて計算した値を意味する:
【数1】


(式中L15°は、スペキュラ(正反射)から、ずれ角15度で反射した可視光量の測定値である(視覚的に、L15°は、面角の色に相当する);
45°は、スペキュラ(正反射)から、ずれ角45度で反射した可視光量の測定値である(視覚的にL45°フラッシュ角の色に相当する);及び
110°は、スペキュラ(正反射)から、ずれ角110度で反射した可視光量の測定値である(視覚的にL110°フロップ角の色に相当する)。
【0046】
フロップインデックス値の測定は、Xrite Inc., Grandville, Michから入手できるXRITE MA68-11フロップインデックス計器のような、市販の計器を使用して、好都合に実施される。
【0047】
本発明の1つの実施態様において、本発明の方法により製造された顔料は、金属、グラファイト、真珠光沢又は干渉顔料のような効果顔料を含む工業用の自動車コーティング配合物に組み込まれた場合、9〜20、通常10以上、多くの場合11又は12以上のフロップインデックス値を示す。
【0048】
例えば、完全に不透明なコーティング上でフロップインデックスを測定すると都合がよい。本顔料と金属、グラファイト、真珠光沢又は干渉顔料のような効果顔料との重量比は、好ましくは1:99〜99:1である。
【0049】
本発明の顔料組成物は、一部には、ヒュームドシリカの存在を特徴とする。ヒュームドシリカは、上記のとおり、やはり極小であり、高表面積を有する特定の3次元分岐鎖様構造を有する凝集体を形成する極小の一次粒子からなる、特定の種類のアモルファスのシリカである。
【0050】
本発明の顔料組成物は、また、一部には、ヒュームドシリカと有機顔料との混和物であることを特徴とする。本明細書において、「混和物」とは、互いに物理的に直接接触している、少なくとも2つの成分の物理的混合物を意味する。例えば、1つの成分がもう1つの成分をコーティングしているか、又は1つの成分がもう1つの成分を含む粒子の外表面に直接付着していてよい。あるいは、1つの成分の材料が他の成分と混ざりあっているか、絡み合っていてよい。
【0051】
本顔料組成物において、ヒュームドシリカは、粉砕により、十分な力で有機顔料に押し付けられ、これらの成分の混和物である顔料粒子を形成する。すなわち、形成された顔料粒子は、有機顔料の中又は有機顔料上に埋め込まれたヒュームドシリカ粒子を有する。
【0052】
本発明の顔料組成物は、したがって、米国特許第5,667,580号の顔料組成物とは、少なくともこれら2つの側面において、物理的に区別される。
【0053】
米国特許第5,667,580号は、平均粒径10μm未満であり、狭い粒径分布を有する、有機顔料と透明充填剤とを含有する顔料組成物を開示している。米国特許第5,667,580号の充填剤は、無機物質であることができるが、ポリプロピレン又はポリアミドの有機充填剤であることが好ましい。記載の無機充填剤は、1つの代表的な実施態様において、TiOのような金属酸化物の薄層で被覆された、主に粒径範囲10〜30μmのフレーク状のマイカを含む真珠光沢顔料である。
【0054】
米国特許第5,667,580号の方法において、ヒュームドシリカは使用されておらず、最終顔料組成物の一部ではなく、さらにこの開示は、本顔料組成物の色の利点を伝えていない。
【0055】
さらに、米国特許第5,667,580号は、充填剤又は粉砕添加剤が、「大部分、有機顔料でコーティングされておらず」、有機顔料と添加剤(すなわち、本明細書におけるヒュームドシリカ)との混和物ではない、物理的混合物を記載している。
【0056】
本発明により提供される顔料組成物は、本明細書において「本発明顔料」とも称されるが、高分子材料、特に天然又は合成ポリマーを着色するのに有用である。したがって、本発明は、さらに、天然又は合成ポリマーと本発明顔料(すなわち、有機顔料とヒュームドシリカとの混和物)とを含む着色されたポリマー組成物を提供する。
【0057】
ポリマー組成物は、場合により、他の添加物、例えば、酸化防止剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン又は他の光安定剤、ホスファイト又はホスホナイト、ベンゾフラン−2−オン、チオシナジスト、ポリアミド安定剤、ステアリン酸金属塩、核剤、充填剤、補強剤、潤滑剤、乳化剤、染料、顔料、分散剤、蛍光増白剤、防炎剤、静電防止剤、発泡剤等、他の加工剤又はそれらの混合物がその中に組み込まれていてもよい。
【0058】
例えば、天然又は合成のポリマーは、熱可塑性、熱硬化性、架橋された又は本質的に架橋されたポリマー、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリラート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボナート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、セルロースエーテル、セルロースエステル、天然若しくは合成のゴム又はハロゲン化ビニルポリマー、例えば、PVC、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、不飽和ポリアミド、ポリイミド、フッ素化ポリマー、シリコン含有ポリマー、カルバマートポリマー及び以下に挙げるようなそれらのコポリマーであってよい。
【0059】
1.モノ−及びジ−オレフィンのポリマー、例えば、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリイソプレン又はポリブタジエン、及びシクロ−オレフィン、例えば、シクロペンテン又はノルボルネンの重合生成物;そしてさらにポリエチレン(場合により、架橋されていてよい)、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、高分子量の高密度ポリエチレン(HDPE−HMW)、超高分子量の高密度ポリエチレン(HDPE−UHMW)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ならびに直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、(VLDPE)及び(ULDPE)。
【0060】
ポリオレフィン、すなわち、前段落で例示されているような、モノ−オレフィンのポリマー、特にポリエチレン及びポリプロピレンは、様々な方法、特に下記の方法により調製することができる:
a)ラジカル重合(通常、高圧及び高温で);
b)触媒による方法、触媒は、通常、IVb、Vb、VIb又はVIII族の金属を1つ以上含有する。これらの金属は、通常、酸化物、ハロゲン化物、アルコラート、エステル、エーテル、アミン、アルキル、アルケニル及び/又はアリールのような、π−又はσ−配位のいずれかであってもよい配位子を1つ以上有する。これらの金属錯体は、遊離しているか、担体、例えば、活性化された塩化マグネシウム、塩化チタン(III)、酸化アルミニウム又は酸化ケイ素に固定されていてよい。このような触媒は、重合媒体中で可溶性又は不溶性であってもよい。触媒は、重合中で活性であることが可能であるか、あるいは更なる活性剤を使用してもよく、例えば、アルキル金属、金属水素化物、アルキル金属ハロゲン化物、アルキル金属酸化物又はアルキル金属オキサンであり、これら金属は、Ia、IIa及び/又はIIIa族の元素である。活性剤は、例えば、更なるエステル、エーテル、アミン又はシリルエーテル基で変性されたものであってもよい。
【0061】
2.1.)で述べたポリマーの混合物、例えば、ポリプロピレンとポリイソブチレンとの混合物、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合物(例えば、PP/HDPE、PP/LDPE)、及び異なる種類のポリエチレンの混合物(例えば、LDPE/HDPE)。
【0062】
3.モノオレフィンとジオレフィンどうしの、又は他のビニルモノマーとのコポリマー、例えば、エチレン/プロピレンコポリマー、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と低密度ポリエチレン(LDPE)とのその混合物、プロピレン/ブテン−1コポリマー、プロピレン/イソブチレンコポリマー、エチレン/ブテン−1コポリマー、エチレン/ヘキサンコポリマー、エチレン/メチルペンテンコポリマー、エチレン/ヘプテンコポリマー、エチレン/オクテンコポリマー、プロピレン/ブタジエンコポリマー、イソブチレン/イソプレンコポリマー、エチレン/アルキルアクリラートコポリマー、エチレン/アルキルメタクリラートコポリマー、エチレン/ビニルアセタートコポリマー及びそれらと一酸化炭素とのコポリマー、又はエチレン/アクリル酸コポリマー及びそれらの塩(イオノマー)、ならびにエチレンとプロピレンと、ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン又はエチリデンノルボルネンのようなジエンとのターポリマー;そしてさらに、このようなコポリマーどうしの、又は1.)で挙げたポリマーとの混合物、例えば、ポリプロピレン−エチレン/プロピレンコポリマー、LDPE−エチレン/ビニルアセタートコポリマー、LDPE−エチレン/アクリル酸コポリマー、LLDPE−エチレン/ビニルアセタートコポリマー、LLDPE−エチレン/アクリル酸コポリマー及び交互に又はランダムに構成されたポリアルキレン−一酸化炭素コポリマーならびにそれらと他のポリマー、例えば、ポリアミドとの混合物。
【0063】
4.その水素化変性物(例えば、粘着付与剤樹脂)を含む炭化水素樹脂(例えば、C〜C)及びポリアルキレンとデンプンとの混合物。
【0064】
5.ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)。
【0065】
6.スチレン又はα−メチルスチレンとジエン又はアクリル誘導体とのコポリマー、例えば、スチレン/ブタジエン、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/アルキルメタクリラート、スチレン/ブタジエン/アルキルアクリラート及びメタクリラート、スチレン/無水マレイン酸、スチレン/アクリロニトリル/メチルアクリラート;スチレンコポリマーと他のポリマー、例えば、ポリアクリラート、ジエンポリマー又はエチレン/プロピレン/ジエンターポリマーからなる耐衝撃性混合物;並びにスチレンのブロックコポリマー、例えば、スチレン/ブタジエン/スチレン、スチレン/イソプレン/スチレン、スチレン/エチレン−ブチレン/スチレン又はスチレン/エチレン−プロピレン/スチレン。
【0066】
7.スチレン又はα−メチルスチレンのグラフトコポリマー、例えば、ポリブタジエン上のスチレン、ポリブタジエン/スチレン又はポリブタジエン/アクリロニトリルコポリマー上のスチレン、ポリブタジエン上のスチレン及びアクリロニトリル(又はメタクリロニトリル);ポリブタジエン上のスチレン、アクリロニトリル及びメチルメタクリラート;ポリブタジエン上のスチレン及び無水マレイン酸;ポリブタジエン上のスチレン、アクリロニトリル及び無水マレイン酸又はマレイン酸イミド;ポリブタジエン上のスチレン及びマレイン酸イミド、ポリブタジエン上のスチレン及びアルキルアクリラート又はアルキルメタクリラート、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー上のスチレン及びアクリロニトリル、ポリアルキルアクリラート又はポリアルキルメタクリラート上のスチレン及びアクリロニトリル、アクリラート/ブタジエンコポリマー上のスチレン及びアクリロニトリル、並びにそれらと6.)で述べたコポリマーとの混合物、例えば、いわゆる、ABS、MBS、ASA又はAESポリマーとして既知のもの。
【0067】
8.ハロゲン含有ポリマー、例えば、ポリクロロプレン、塩化ゴム、イソブチレン/イソプレンの塩化及び臭化コポリマー(ハロブチルゴム)、塩化又はクロロスルホン化ポリエチレン、エチレン及び塩化エチレンのコポリマー、エピクロロヒドリンホモ−及びコポリマー、特にハロゲン含有ビニル化合物のポリマー、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン;並びに塩化ビニル/塩化ビニリデン、塩化ビニル/ビニルアセタート又は塩化ビニリデン/ビニルアセタートのようなそれらのコポリマー。
【0068】
9.α,β−不飽和酸及びその誘導体から誘導されたポリマー、例えば、ポリアクリラート及びポリメタクリラート又はブチルアクリラートで耐衝撃変性されたポリメチルメタクリラート、ポリアクリルアミド及びポリアクリロニトリル。
【0069】
10.9.)で述べたモノマーどうしの、又は他の不飽和モノマーとのコポリマー、例えば、アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー、アクリロニトリル/アルキルアクリラートコポリマー、アクリロニトリル/アルコキシアルキルアクリラートコポリマー、アクリロニトリル/ビニルハライドコポリマー又はアクリロニトリル/アルキルメタクリラート/ブタジエンターポリマー。
【0070】
11.不飽和アルコールとアミン又はそれらのアシル誘導体あるいはアセタールから誘導されたポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタート、ステアラート、ベンゾアート又はマレアート、ポリビニルブチラール、ポリアリルフタラート、ポリアリルメラミン;及び、1.)で挙げたオレフィンとそれらとのコポリマー。
【0071】
12.環式エーテルのホモポリマー及びコポリマー、例えば、ポリアルキレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド又はビスグリシジルエーテルとそれらとのコポリマー。
【0072】
13.ポリアセタール、例えば、ポリオキシメチレン、及びコモノマー、例えば、エチレンオキシドを含むこれらのポリオキシメチレン;熱可塑性ポリウレタン、アクリラート又はMBSで変性されたポリアセタール。
【0073】
14.ポリフェニレンオキシド及びスルフィド、及びそれらとスチレンポリマー又はポリアミドとの混合物。
【0074】
15.一方においてヒドロキシル基末端を、他方において脂肪族又は芳香族のポリイソシアナートを有するポリエーテル、ポリエステル及びポリブタジエンから誘導されたポリウレタン、並びにそれらの初期生成物。
【0075】
16.ジアミシとジカルボン酸とから及び/又はアミノカルボン酸あるいは対応するラクタムから誘導されたポリアミド及びコポリアミド、例えば、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド6/6、6/10、6/9、6/12、4/6、12/12、ポリアミド11、ポリアミド12、m−キシレン、ジアミン及びアジピン酸から誘導された芳香族ポリアミド;へキサメチレンジアミンとイソ−及び/又はテレ−フタル酸から、ならびに、場合により、変性剤としてのエラストマーから調製されたポリアミド、例えばポリ−2,4,4−トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド又はポリ−m−フェニレンイソフタルアミド。上述されたポリアミドとポリオレフィン、オレフィンコポリマー、イオノマー又は化学的に結合されたかグラフトされたエラストマーとのブロックコポリマー;又はポリエーテル、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコール、とのブロックコポリマー。さらにEPDM又はABSで変性されたポリアミド又はコポリアミド;及び加工中に縮合されたポリアミド(「RIMポリアミド系」)。
【0076】
17.ポリ尿素、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリヒダントイン及びポリベンゾイミダゾール。
【0077】
18.ジカルボン酸とジアルコールとから及び/又はヒドロキシカルボン酸又は対応するラクトンから誘導されたポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリ−1,4−ジメチロールシクロヘキサンテレフタラート、ポリヒドロキシベンゾアート、ならびにヒドロキシル末端基を有するポリエーテルから誘導されたブロックポリエーテルエステル;さらに、ポリカーボナート又はMBSで変性されたポリエステル。
【0078】
19.ポリカーボナート及びポリエステルカーボナート。
【0079】
20.ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリエーテルケトン。
【0080】
21.一方においてアルデヒド、他方においてフェノール、尿素又はメラミンから誘導された架橋ポリマー、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂及びメラミン−ホルムアルデヒド樹脂。
【0081】
22.乾性及び非乾性アルキド樹脂。
【0082】
23.飽和及び不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとのコポリエステル、そしてさらに架橋剤としてのビニル化合物から誘導される不飽和ポリエステル樹脂並びにそのハロゲン含有難燃性変性体。
【0083】
24.置換されたアクリルエステル、例えばエポキシアクリラート、ウレタンアクリラート又はポリエステルアクリラートから誘導された架橋性アクリル樹脂。
【0084】
25.メラミン樹脂、尿素樹脂、イソシアナート、イソシアヌラート、ポリイソシアナート又はエポキシ樹脂で架橋されたアルキド樹脂、ポリエステル樹脂及びアクリラート樹脂。
【0085】
26.脂肪族、脂環式、複素環式又は芳香族グリシジル化合物から誘導される架橋されたエポキシ樹脂、例えば、慣用の硬化剤、例えば、促進剤を伴うか又は伴わない酸無水物又はアミンを使用して架橋されたビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF−ジグリシジルエーテルの生成物。
【0086】
27.天然ポリマー、例えば、セルロース、天然ゴム、ゼラチン、又はポリマー相同的に化学的に変性されたそれらの誘導体、例えば、セルロースアセタート、プロピオナート及びブチラート、ならびにメチルセルロースのようなセルロースエーテル;さらにコロフォニウム樹脂及び誘導体。
【0087】
28.前述のポリマーの混合物(ポリブレンド)、例えばPP/EPDM、ポリアミド/EPDM又はABS、PVC/EVA、PVC/ABS、PVC/MBS、PC/ABS、PBTP/ABS、PC/ASA、PC/PBT、PVC/CPE、PVC/アクリラート、POM/熱可塑性PUR、PC/熱可塑性PUR、POM/アクリラート、POMMBS、PPO/HIPS、PPO/PA6.6及びコポリマー、PA/HDPE、PA/PP、PA/PPO、PBT/PC/ABS又はPBT/PET/PC。
【0088】
本発明の顔料を含有するポリマー組成物は、基材に適用されたコーティングであってよい。コーティングは、任意のコーティング系、又はあらかじめ成形されたフィルムをも含むことができ、どちらも基材に接着し、選択された顔料、例えば、自動車用コーティング、船舶用コーティング、塗料、インク、積層体、印刷アプリケーション用受理層、又は繊維処理を含む他の保護用若しくは装飾用コーティング及び艶出し用途に使用されるコーティング又はフィルムと相溶性である。
【0089】
本発明によるコーティング組成物は、任意の所望の基材、例えば金属、木材、プラスチック、複合体、ガラス又はセラミック材基材にも、慣用の方法、例えば刷毛、噴霧、注入、ドローダウン、スピンコーティング、含浸、電気泳動により、適用することができる。Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Edition, Vol.A18, pp. 491-500も参照のこと。
【0090】
コーティングは、通常、ポリマーバインダーを含有するが、そのバインダーは、原則として、業界で慣用の任意のものであるができ、例えば、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Edition, Vol.A18, pp. 368-426, VCH, Weinheim 1991に記載のそれらである。一般的に、熱可塑性又は熱硬化性樹脂、主として、熱硬化性樹脂をベースとするフィルム形成用バインダーである。それらの例は、アルキド樹脂、アクリル樹脂、アクリルアミド樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂及びポリウレタン樹脂である。
【0091】
例えば、本発明に有用な、一般的なコーティングバインダーの非限定的な例には、シリコン含有ポリマー、フッ素化ポリマー、不飽和ポリエステル、不飽和ポリアミド、ポリイミド、置換されたアクリルエステル由来の架橋性アクリル樹脂(例えば、エポキシアクリラート、ウレタンアクリラート、ポリエステルアクリラート)、ビニルアセタート、ビニルアルコール及びビニルアミンのポリマーが含まれる。コーティングバインダーポリマーは、コポリマー、ポリマーブレンド又はポリマー複合体であってよい。
【0092】
コーティングは、しばしば、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、イソシアナート、イソシアヌラート、ポリイソシアナート、エポキシ樹脂、無水物、ポリ酸及びアミンと、促進剤を伴って又は伴わずに架橋される。
【0093】
バインダーは、常温硬化性又は熱硬化性のバインダーであることができ;硬化触媒の添加が有利であろう。バインダーの硬化を促進する適切な触媒は、例えば、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Edition, Vol. A18, p.469, VCH Verlagsgesellschaft, Weinheim 1991に記載されている。
【0094】
バインダーは、空気中で乾燥するか又は室温で硬化する表面コーティング樹脂であってよい。そのようなバインダーの例は、ニトロセルロース、ポリビニルアセタート、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアクリラート、ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及び特にアルキド樹脂である。バインダーはまた、異なる表面コーティング樹脂の混合物であることができる。バインダーが硬化性のバインダーであるならば、それらは、通常、硬化剤及び/又は促進剤と共に用いられる。
【0095】
特定のバインダーを含有するコーティング組成物の例は:
1.常温若しくは熱架橋性のアルキド、アクリラート、ポリエステル、エポキシ又はメラミン樹脂あるいはこれらの樹脂の混合物(所望ならば、硬化触媒を添加)に基づくコーティング;
2.ヒドロキシル含有アクリラート、ポリエステル又はポリエーテル樹脂及び脂肪族若しくは芳香族イソシアナート、イソシアヌラート又はポリイソシアナートに基づく2成分ポリウレタンコーティング;
3.ベーキングの間に非ブロック化される、ブロックイソシアナート、イソシアヌラート又はポリイソシアナート(所望ならば、メラミン樹脂を添加)に基づく1成分ポリウレタンコーティング;
4.トリスアルコキシカルボニルトリアジン架橋剤及びアクリラート樹脂、ポリエステル樹脂又はポリエステル樹脂のような、ヒドロキシル基含有樹脂に基づく1成分ポリウレタンコーティング;
5.遊離アミノ基をウレタン構造内に有する、脂肪族若しくは芳香族ウレタンアクリラート又はポリウレタンアクリラート及びメラミン樹脂又はポリエステル樹脂(必要ならば硬化触媒を添加した)に基づく、1成分ポリウレタンコーティング;
6.(ポリ)ケチミン及び脂肪族若しくは芳香族イソシアナート、イソシアヌラート又はポリイソシアナートに基づく2成分コーティング;
7.(ポリ)ケチミン及び不飽和アクリラート樹脂又はポリアセトアセタート樹脂又はメタクリルアミドグリコラートメチルエステルに基づく2成分コーティング;
8.カルボキシル−若しくはアミノ含有ポリアクリラート及びポリエポキシドに基づく2成分コーティング;
9.無水物基を含有するアクリラート樹脂及びポリヒドロキシ又はポリアミノ成分に基づく2成分コーティング;
10.アクリラート含有無水物及びポリエポキシドに基づく2成分コーティング;
11.(ポリ)オキサゾリン及び無水物基を含有するアクリラート樹脂又は不飽和アクリラート樹脂、あるいは脂肪族若しくは芳香族イソシアナート、イソシアヌラート又はポリイソシアナートに基づく2成分コーティング;
12.不飽和ポリアクリラート及びポリマロナートに基づく2成分コーティング;
13.熱可塑性アクリラート樹脂又はエーテル化メラミンン樹脂との組み合わせで、外側で架橋しているアクリラート樹脂に基づく熱可塑性ポリアクリラートコーティング;
14.シロキサン変性又はフッ素変性アクリラート樹脂に基づく塗料系。
【0096】
コーティング組成物は、また、更なる成分を含むことができ、例は、溶媒、顔料、染料、可塑剤、安定剤、チキソトロピー剤、乾燥触媒及び/又はレベリング剤である。可能な成分の例は、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Edition, Vol. A18, pp. 429-471, VCH, Weinheim 1991に記載されているそれらである。
【0097】
可能な乾燥触媒又は硬化触媒は、例えば、有機金属化合物、アミン、アミノ含有樹脂及び/又はホスフィンである。有機金属化合物の例は、金属カルボキシラート、特に金属、Pb、Mn、Co、Zn、Zr若しくはCuのそれら、又は金属キレート、特に金属、Al、Ti又はZrのそれらであり、あるいは、例えば、有機スズ化合物のような有機金属化合物である。
【0098】
金属カルボキシラートの例は、Pb、Mn若しくはZnのステアラート、Co、Zn若しくはCuのオクトアート、Mn及びCoのナフテナート又は対応するリノレアート、レジナート若しくはタラートである。
【0099】
金属キレートの例は、アセチルアセトン、エチルアセチルアセタート、サリチルアルデヒド、サリチルアルドキシム、o−ヒドロキシアセトフェノン又はエチルトリフルオロアセチルアセタートのアルミニウム、チタニウム又はジルコニウムキレート及びそれらの金属のアルコキシドである。
【0100】
有機スズ化合物の例は、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウラート又はジブチルスズジオクトアートである。
【0101】
アミンの例は、特に、第三級アミン、例えばトリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルモルホリン、N−メチルモルホリン又はジアザビシクロオクタン(トリエチレンジアミン)及びそれらの塩である。更なる例は、第四級アンモニウム塩、例えば、塩化トリメチルベンジルアンモニウムである。
【0102】
アミノ含有樹脂は、同時にバインダーであり硬化触媒である。その例は、アミノ含有アクリラートコポリマーである。
【0103】
用いられる硬化触媒は、ホスフィン、例えば、トリフェニルホスフィンであることもできる。
【0104】
コーティング組成物は、放射線硬化性コーティング組成物であることもできる。この場合、バインダーは、実質的にエチレン性不飽和結合を含有するモノマー性又はオリゴマー性の化合物を含み、それは、適用後に、化学線照射により硬化する、すなわち、架橋された高分子量形態に変換される。系が、UV硬化系であるとき、それは、一般に、光開始剤をも含有する。相当する系は、上述の刊行物、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Edition, Vol.A18, pages 451-453に記載されている。放射線硬化性コーティング組成物において、新規な安定剤も、立体障害アミンの添加なしに用いることができる。
【0105】
コーティングは、放射線硬化性の、光重合性化合物の無溶媒の配合物であってもよい。説明的な例は、アクリラート又はメタクリラート、不飽和ポリエステル/スチレン混合物又は他のエチレン性不飽和モノマー若しくはオリゴマーの混合物である。
【0106】
コーティング組成物は、バインダーが可溶である有機溶媒又は溶媒混合物を含むことができる。コーティング組成物は、その他、水性溶液又は分散体であることもできる。ビヒクルは、有機溶媒と水との混合物であることもできる。コーティング組成物は、高固型塗料であってもよく、又は無溶媒であることもできる(例えば、粉体コーティング材)。粉体コーティングは、例えば、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Edition, Vol. A18, pages 438-444に記載されているようなそれらである。粉体コーティング材は、粉体のスラリー(好ましくは水中の粉体の分散物)形態であってもよい。
【0107】
本発明の顔料がコーティング(又は基材)中に存在する場合は、次いでそれが、保護コーティングのような、もうひとつのコーティングで被覆される、多層系であることも可能である。
【0108】
コーティングに使用する場合は、本発明の顔料を、当該技術における常法により、コーティングに組み込むことができる。
【0109】
化合物は、加工に先立ち、樹脂の混合中、例えば、樹脂の乾式混合中に、個別の成分として添加されてよく、あるいは化合物は、加工に先立ち、他の物質中、又は他の物質とともに、ブレンド、マスターバッチ、フラッシュ又は他の濃縮物として添加してよい。
【0110】
化合物は、加工工程中に添加してもよい。ポリマー樹脂及びコーティング配合物の標準加工工程は、当分野において周知であり、押出、共押出、圧縮成形、ブラベンダー溶融加工、フィルム形成、射出成形、吹き込み成形、他の成型及びシート成形加工、繊維形成、表面含浸、溶解、懸濁、分散及びプラスチック及びコーティング技術において公知の他の方法が含まれる。
【0111】
本発明の顔料又は染料がフィルム中に使用された場合、フィルムは、表面に、例えば、接着剤を使用して適用されるか、又は表面に共押出される。フィルムは、例えば、樹脂溶融物から、溶液のキャスティング又は当分野で公知の他の方法により調製することができる。予備成形されたフィルムを、カレンダリング、メルトアプリケーション、シュリンクラップ等、熱により適用してもよい。
【0112】
本発明の顔料は、工業用コーティング及び、自動車産業において従来より用いられているそれら、特に、アクリル/メラミン樹脂、アルキド/メラミン樹脂のような熱硬化性樹脂系、又は熱可塑性アクリル樹脂系、及び水性のコーティング系の調製に特に適している。本顔料組成物は、溶媒性及び水性の自動車仕上げ剤の着色に特に適している。
【0113】
通常、本発明顔料組成物の有効着色量が、着色する高分子量有機材料に組み込まれる。有効着色量とは、その高分子量有機材料に所望の色を提供するのに適した任意の量である。本顔料組成物は、特に、着色する高分子量有機材料の重量に基づき、約0.01〜約30重量%の量で使用される。このように、本発明は、有効着色量の本発明顔料組成物を高分子量有機材料に組み込むことを含む着色された高分子量有機材料の製造方法を包含する。
【0114】
本方法にしたがって着色された着色高分子量有機材料は、様々な用途に有用である。例えば、本高分子量有機材料は、ラッカー、インク及びエナメルコーティング組成物の調製用に使用することができる。本発明にしたがって調製された着色高分子量有機材料は、自動車用コーティング塗料の調製に特に有用である。
【0115】
無機及び/又はポリマー有機充填剤が小粒径であるため、本顔料組成物は、カレンダリングされ、キャスティングされ、成型され若しくは繊維に加工される等のプラスチックである高分子量有機材料の着色に特に適している。このような着色プラスチックは、加工中、実質的に摩耗を示さない。本顔料組成物は、ポリプロピレン又はポリアミド繊維、プラスチックフィルム、ボトルクレート等のような着色プラスチックの物品に、優れた物性を付与する。このように、本発明は、さらに、高分子量有機化合物が、カレンダリングされ、キャスティングされ、成型され若しくは繊維に加工されるプラスチックである加工、及びカレンダリングされ、キャスティングされ、成型され若しくは繊維に加工されるプラスチックの物品を包含する。
【0116】
さらに、本顔料組成物は、レーザーマーキング用顔料として使用することができる。
【0117】
本顔料組成物は、単独で、又は金属、グラファイト、真珠光沢又は干渉顔料、例えば、コーティングされていないマイカ、アルミニウムフレーク、多層カラーシフトフレーク顔料及びグラファイトフレークのような効果顔料を含む他の顔料又は染料と併用して使用することができる。本顔料組成物を、公知の、透明二酸化チタンでコーティングされたマイカ顔料と一緒に使用することにより、驚くべき効果を有する色合いが生まれる。
【実施例】
【0118】
以下の実施例は、本発明を説明するが、本質的に限定的であることを意図しない。本明細書及び特許請求の範囲における部及びパーセントは、他に記載のない限り、重量による。
【0119】
フロップインデックスは、XRITE MA 68計器を用いて測定した。塗料の評価は、HAPS(有害大気汚染物質)に準拠したモノコート又はBC/CC(ベースコート/クリアコート)塗料系において実施した。
【0120】
実施例1
0.2365 L(1/2pint)缶中の、MONASTRALマゼンタRT-243-Dキナクリドン顔料25部、ヒュームドシリカ3部及び1cm球型鋼媒体100部の混合物を15分間粉砕した。缶を1mmスクリーン上に開け、生成物を媒体から分離した。生成物を塗料ミルベースに調製し、金属塗料にレットダウンし、乾燥フィルム厚5.08μm(0.2mil)で金属基材上に噴霧した。該フィルムの品質は、より高い彩度及び望ましいダークフロップを示した。
【0121】
実施例2
市販のペリレン顔料を用い、粉砕時間15分間で、実施例1の手順を繰り返し、優れた彩度及び望ましいダークフロップのコーティングフィルムを製造した。
【0122】
実施例3
ヒュームドシリカと市販のキナクリドンマゼンタ顔料との本発明の組成物を、上記のとおり調製し、85/15アルミニウム金属溶媒性自動車コーティング中に、公知の材料及び手順を用いて配合した。キナクリドンマゼンタ顔料及びヒュームドシリカの非混和物を含有する類似のコーティング配合物を、粉砕せずに対照として調製し、さらに市販のキナクリドンマゼンタ調製物RT-243も調製した。各配合物を金属パネル上に噴霧し、フロップインデックス及びデルタC(ΔC)を測定し、表にまとめた。
【0123】
【表1】

【0124】
実施例4
実施例3同様、本発明のキナクリドンマゼンタ顔料/ヒュームドシリカ組成物、対照及び市販の調製物を85/15アルミニウム金属水性自動車コーティングに配合した。各配合物を、金属パネル上に噴霧し、フロップインデックス及びデルタCを測定し、表にまとめた。
【0125】
【表2】

【0126】
実施例5
ヒュームドシリカと市販のペリレン顔料との本発明の組成物を上記のとおり調製し、70/30アルミニウム金属溶媒性自動車コーティング中に、公知の材料及び手順を用いて配合した。ヒュームドシリカを用いずに粉砕した同じペリレン顔料を含有する類似のコーティング配合物を対照として調製し、さらに、市販のペリレン調製物Irgazin Red 179もを調製した。各配合物を金属パネル上に噴霧し、フロップインデックス及びデルタCを測定し、表にまとめた。
【0127】
【表3】

【0128】
これらの実験結果は、所望の効果を示している。有利な色の改良が、大幅に改善されたフロップによって補充されている。フロップは、カラーシフト対視角と定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒュームドシリカ/有機顔料混合物の総量に基づき、ヒュームドシリカ粒子1〜50重量部及び有機顔料50〜99重量部、好ましくはヒュームドシリカ粒子1〜35部及び有機顔料65〜99部、より好ましくはヒュームドシリカ粒子3〜30部及び有機顔料70〜97部を含む混合物を粉砕することを含む、顔料の製造方法。
【請求項2】
ヒュームドシリカが、粒径1μm未満を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ヒュームドシリカが、平均粒径0.1〜0.4μmを有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ヒュームドシリカ粒子が、粒径0.001〜0.5μm、好ましくは0.01〜0.1μmのヒュームドシリカ一次粒子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ヒュームドシリカ粒子が、0.1〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.2μmの平均凝集体寸法及び0.005〜0.1μmの一次粒子を有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
有機顔料が、アゾ、アゾメチン、メチン、アントラキノン、フタロシアニン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イミノイソインドリン、イミノイソインドリノン、キナクリドン、フラバントロン、インダントロン、アントラピリミジン及びキノフタロン顔料から選択され、好ましくは、ジケトピロロピロール、キナクリドン、フタロシアニン、インダントロン及びイミノイソインドリノン顔料から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
粉砕方法が、金属ボール、くぎ、セラミック、無機塩又は金属酸化物から選択される粉砕媒体、並びに、場合により、水、有機溶媒、分散剤、消泡剤、レオロジー制御剤及びポリマーから選択される1つ以上の成分の存在下、バッチ又は連続方法において、水平又は垂直媒体ミルを使用するヒュームドシリカ及び有機顔料の湿式又は乾式粉砕である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
ヒュームドシリカと有機顔料とを合わせた重量に基づき、ヒュームドシリカ粒子1〜50重量部及び有機顔料50〜99重量部の混和物を含む顔料組成物であって、有機顔料が、好ましくは、アゾ、アゾメチン、メチン、アントラキノン、フタロシアニン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イミノイソインドリノン、イミノイソインドリン、キナクリドン、フラバントロン、インダントロン、アントラピリミジン及びキノフタロン顔料から選択される顔料組成物。
【請求項9】
ヒュームドシリカ粒子が、1μm未満、好ましくは0.5μm未満、より好ましくは0.1μm未満である、請求項8記載の顔料組成物。
【請求項10】
ヒュームドシリカ粒子が、0.001〜0.5μm、好ましくは0.005〜0.1μm粒径のヒュームドシリカ一次粒子を含む、請求項8記載の顔料組成物。
【請求項11】
市販の自動車用コーティング配合物に組み込まれると、フロップインデックス値9以上を示す、請求項8記載の顔料組成物。
【請求項12】
市販の自動車用コーティング配合物に組み込まれると、フロップインデックス値10以上を示す顔料を製造する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
請求項8記載の顔料組成物と、1つ以上の天然又は合成の熱可塑性、熱硬化性、架橋性又は本質的に架橋性のポリマーとを含む組成物。
【請求項14】
ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリラート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリカルボナート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、セルロースエーテル、セルロースエステル、天然ゴム、合成ゴム、ハロゲン化ビニルポリマーアルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、不飽和ポリアミド、ポリイミド、フッ素化ポリマー又はシリコン含有ポリマー又はカルバマートポリマーを含む請求項13記載の組成物。
【請求項15】
フロップインデックス値9以上を示す、コーティングである、請求項13記載の組成物。

【公表番号】特表2010−514912(P2010−514912A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544381(P2009−544381)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/064022
【国際公開番号】WO2008/080807
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(508120547)チバ ホールディング インコーポレーテッド (81)
【氏名又は名称原語表記】CIBA HOLDING INC.
【Fターム(参考)】