有機顔料の平均一次粒子径、粒径分布、及び凝集粒子径の測定方法
【課題】 有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布、凝集粒子径を正確に精度よく、簡便に測定する方法を提供。
【解決手段】 小角エックス線散乱法に基づき、有機顔料の小角エックス線散乱プロファイル(測定散乱プロファイル)を測定する工程(A)と、前記有機顔料を、半径Rの球状粒子であって粒径分布のばらつきが存在すると仮定して、仮の半径Rの値と仮の粒径分布モデルから、理論散乱プロファイルをシミュレーションにより求める工程(B)と、該理論散乱プロファイルと前記測定散乱プロファイルとをカーブフィッティングさせることにより、有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布を決定する工程(C)とを有する。
【解決手段】 小角エックス線散乱法に基づき、有機顔料の小角エックス線散乱プロファイル(測定散乱プロファイル)を測定する工程(A)と、前記有機顔料を、半径Rの球状粒子であって粒径分布のばらつきが存在すると仮定して、仮の半径Rの値と仮の粒径分布モデルから、理論散乱プロファイルをシミュレーションにより求める工程(B)と、該理論散乱プロファイルと前記測定散乱プロファイルとをカーブフィッティングさせることにより、有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布を決定する工程(C)とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機顔料の平均一次粒子径、粒径分布、及び凝集粒子径の測定方法に関するものであり、特に、小角エックス線散乱法に基づき、有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布を測定する方法、エックス線透過法に基づき、分散体中の有機顔料の平均一次粒子径並びに粒径分布及び凝集粒子径を測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機顔料の平均一次粒子径を測定する方法としては、透過型電子顕微鏡を用いて直接観察し、短軸径や長軸径を計測する方法が知られている。
【0003】
しかしながら、この方法では、100個以上の顔料粒子を計測しなければならないため、手間がかかることや、粒子が重なって写っている場合、そのサイズを判別するのが難しく計測対象から外してしまうため、計測対象の粒子を選別する作業に計測者による恣意が働きやすいこと等があり、このようにして求めた一次粒子径やその粒径分布が、顔料全体を代表した数値であるのか疑問があるという問題があった。
【0004】
そこで、小角エックス線散乱法を用いて、被測定物中に含有する所定の粒子径に対する粒子含有率を定める粒度分布測定方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る測定方法にあっては、透過型電子顕微鏡を用いた画像解析より平均一次粒子径を求め、それを用いて小角エックス線散乱法で粒度分布を測定する方法であり、小角エックス線散乱法のみで平均一次粒子径及び粒径分布を測定する方法ではなかった。
【0006】
また、被測定物もアエロジル(超微粒子のシリカ)であり、この方法が有機顔料、特に粉末形状だけでなく、分散体、塗膜、及びカラーチップ中に含まれる有機顔料に対しても応用できるかは不明であった。
【0007】
また、有機顔料は、一般的に、分散体中では一次粒子のままの状態では存在しておらず、凝集体を形成しているのが大部分である。色材としての特性、例えば、インキの透明性や着色力、カラーフィルターのコントラスト等は、いずれも、顔料の一次粒子径のみならず凝集粒子径にも大きく左右されるため、一次粒子径と凝集粒子径の両者を知ることが、色材としての特性を利用する上で非常に重要である。
【0008】
このような顔料の凝集粒子径を測定する方法としては、一般的に、レーザー回折式、レーザー散乱式、遠心沈降式等による方法が知られている。従来法によれば、測定時に分散体を溶剤で大量に希釈しなければならず、この希釈により状態の変化が生じる場合には、測定値の信頼性が低いという問題があった。
【0009】
ただし、近年の測定技術の進歩により、被測定物の希釈を最小限に抑えられるようになったため、この問題は解消されつつある。しかしながら、これまでは一次粒子径と凝集粒子径は、あくまで別々の方法でしか測定することができなかった。
【0010】
すなわち、色材製品の製造の過程では、顔料の粉末を選定し、溶剤や樹脂中に分散し分散体とした後に、塗工や印刷をして塗膜や印刷物といった最終製品を得ている。この場合、顔料の一次粒子径は、粉末の状態で透過型電子顕微鏡(TEM)観察をし、分散体中の顔料の凝集粒子径は、レーザー回折式等の方法で評価するのが一般的であった。
【0011】
ところが、有機顔料結晶については、溶剤中で結晶成長が起こり一次粒子径の大きさが変化する場合があることが報告されている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。分散体製造過程や塗膜形成過程で結晶成長が起こっていたとしても、従来はその過程の中での一次粒子径の変化を逐次把握することは困難であった。
【特許文献1】特開2003−139680号公報
【非特許文献1】荒井良明、染料と薬品、6、10(1962)
【非特許文献2】高橋弘、色材、36、550(1963)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、製品製造の全工程で、顔料の一次粒子径を評価できることがより望ましい。あわせて、分散体中の顔料の凝集粒子径も同じ方法で測定できるならば、製品管理の上でも有用となるため、このような測定方法の確立も求められている。
【0013】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布を正確に精度よく、簡便に測定する方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、分散体中の有機顔料の平均一次粒子径並びに粒径分布と凝集粒子径を簡便に測定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる課題を解決するため、
本発明は、小角エックス線散乱法に基づき、有機顔料の小角エックス線散乱プロファイル(測定散乱プロファイル)を測定する工程(A)と、前記有機顔料を、半径Rの球状粒子であって粒径分布のばらつきが存在すると仮定して、仮の半径Rの値と仮の粒径分布モデルから、理論散乱プロファイルをシミュレーションにより求める工程(B)と、該理論散乱プロファイルと前記測定散乱プロファイルとをカーブフィッティングさせることにより、有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布を決定する工程(C)とを有することを特徴とする有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布の測定方法である。
【0016】
また、本発明は、上記有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布の測定方法を用いて、分散体中の有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布を求める工程(ア)と、エックス線透過法に基づき、この有機顔料のエックス線透過強度の経時変化を測定し、ストークスの沈降速度式(下記式(1)又は下記式(2))及び透過強度の比と粒子径の関係式(下記式(3))から前記有機顔料の凝集粒子径を求める工程(イ)とを有することを特徴とする分散体中の有機顔料の平均一次粒子径並びに粒径分布及び凝集粒子径の測定方法である。
【数1】
(式中、Dは凝集粒子径、η0は媒体粘度、Hは沈降距離、ρは粒子の比重、ρ0は媒体の比重、gは重力加速度、Tは経過時間である。)
【数2】
(式中、Dは凝集粒子径、η0は媒体粘度、X1は回転中心より沈降面までの距離、X2は回転中心より測定面までの距離、ρは粒子の比重、ρ0は媒体の比重、ωは回転角速度、Tは経過時間である。)
【数3】
(式中、E1は特定の経過時間T1における透過強度、E2は経過時間T1から微小時間経過したT2=T1+δTにおける透過強度、D1は特定の経過時間T1における凝集粒子径、N1は特定の経過時間T1における凝集粒子の粒子数、Kは定数、E2/E1は透過強度の比である。)
【発明の効果】
【0017】
本発明の測定方法によれば、有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布、凝集粒子径を正確に精度よく、簡便に、再現性良く測定することができ、また、透過型電子顕微鏡では測れない粒子径の違いでも本発明の測定方法では測ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の測定方法について、以下に詳細に説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
本実施形態における有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布の測定方法は、小角エックス線散乱法に基づき、有機顔料の小角エックス線散乱プロファイル(測定散乱プロファイル)を測定する工程(A)と、前記有機顔料を、半径Rの球状粒子であって粒径分布のばらつきが存在すると仮定して、仮の半径Rの値と仮の粒径分布モデルから、理論散乱プロファイルをシミュレーションにより求める工程(B)と、該理論散乱プロファイルと前記測定散乱プロファイルとをカーブフィッティングさせることにより、有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布を決定する工程(C)とを有する。
【0020】
本実施形態の測定対象物である有機顔料としては、フタロシアニン系、不溶性アゾ系、アゾレーキ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アントラピリミジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系等が挙げられる。また、この有機顔料は、粉末、分散体、塗膜、及びプラスチックなどに練り込まれたカラーチップのいずれかに含有された状態であるのが好ましい。粉末形状以外の分散体、塗膜、プラスチックなどに練り込まれたカラーチップ中に含まれた形状であっても測定することにより、例えば、カラーフィルター用のインキを製造する際に、その有機顔料の粒子径及び粒径分布を粉末原料の状態から分散体であるペースト、あるいは塗膜化された最終工程まで、工程毎に追跡することができ、製品管理の上でも有用となる。
【0021】
小角エックス線散乱法(Small Angle X−ray Scattering:SAXS)とは、散乱角(2θ)<10°以内の小角領域で生じる散漫な散乱・回折を測定する方法である。この小角エックス線散乱法では、物質中に1〜100nm程度の大きさの電子密度の異なる領域があると、その電子密度差によりエックス線の散漫散乱が計測される。この散乱角と散乱強度に基づいて測定対象物の粒子径を求める。
【0022】
本実施形態における小角エックス線散乱法に用いるエックス線回折装置は、市販の透過型あるいは反射型の装置を用いることができる。具体的には、まず、工程(A)で、有機顔料を市販のエックス線回折装置の試料ホルダー、試料台等に設置した後、散乱角(2θ)が10°未満の範囲の各散乱角(2θ)における散乱強度Iを測定して、小角エックス線散乱プロファイル(測定散乱プロファイル)を測定する。
【0023】
次いで、工程(B)では、得られた測定散乱プロファイルから、有機顔料を半径Rの球状粒子であって粒径分布のばらつきが存在すると仮定して、仮の半径Rの値と仮の粒径分布モデルから、市販の解析ソフトウェアを用いてシミュレーションを行い、理論散乱プロファイルを求める。
【0024】
一般に、物質中にΔρ(r)の電子密度差領域が存在した場合、散乱強度Iは下記式(4)のように近似することができる。
【0025】
【数4】
【0026】
上記式(4)において、qは散乱ベクトル、Vは体積積分の領域を示し、物質全体で積分を行うことを意味する。また、F(q)は形状因子、S(q)は構造因子であり、粒子が物質中で無秩序に存在する場合、S(q)=1となる。
また、散乱ベクトルqは、下記式(5)で表される。
【0027】
【数5】
【0028】
上記式(5)において、λはエックス線の波長であり、2θは散乱角である。上記式(4)において、粒子が半径Rの球状であれば、形状因子F(q)は、下記式(6)、(7)で表される。
【0029】
【数6】
【0030】
したがって、上記式(4)、(5)、及び(7)より、仮の半径Rの値を仮定して、形状因子F(q)が計算されるならば、散乱強度Iが記述できる。しかしながら、上記散乱強度Iは、物質中の粒子が、ある一定の大きさ(半径Rが一定)を持つ場合しか想定していない。ところが、実際の物質中では、粒子が一定の大きさで存在していることは稀で、粒子の大きさには、ある程度のばらつき(粒径分布のばらつき)が存在するのが一般的である。また、本発明で目的としているのは、このような粒径分布のばらつきがある有機顔料の粒径分布を正確に精度よく測定することであるから、必然的に、粒径分布のばらつきという仮定が前提となってくる。
【0031】
この粒径分布のばらつきがあると、上記散乱強度Iは、様々なサイズを持つ粒子から生じる散乱の重ね合わせで与えられる。粒径分布のばらつきの仮定に用いる分布関数は、統計学で用いられる公知の分布関数を使用することができるが、実際の物質における粒径分布のばらつきを考慮すると、Γ分布関数を使用するのが好ましい。このΓ分布関数は、下記式(8)で表される。
【0032】
【数7】
【0033】
ここで、R0は球状粒子の平均半径、Mは粒径分布の広がりパラメータである。
さて、物質中の粒径分布が上記Γ分布関数で与えられ、散乱強度Iが様々な半径Rの粒子(平均半径はR0)から生じる散乱の重ね合わせで与えられると仮定できるとすると、粒径分布のばらつきが存在する場合の散乱強度Iは、上記式(7)及び(8)を用いて、下記式(9)で表される。
【0034】
【数8】
【0035】
上記式(9)より、工程(B)では、仮の半径Rの値と仮の粒径分布モデルから、シミュレーションにより散乱角(2θ)における散乱強度Iを計算し、理論散乱プロファイルを求める。
【0036】
次いで、工程(C)では、散乱強度Iから計算される理論散乱プロファイルと測定散乱プロファイルとをカーブフィッティングさせ、両プロファイルがフィッティングした数値を、この有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布であると決定する。
【0037】
例えば、粒径分布にばらつきがあり、散乱強度Iが散乱の重ね合わせで与えられる場合、測定散乱プロファイルにおいて、振動構造が観測されなくなるという特徴がある。つまり、測定散乱プロファイルの形状から、粒径分布の存在の有無を推定でき、粒径分布を決めることができる。
【0038】
また、粒子の平均半径が大きくなると、測定散乱プロファイルにおいて、散乱角(2θ)の低角度側の傾斜が高くなるという特徴がある。つまり、低角度側の測定散乱プロファイルの傾斜の高さから、おおよその平均一次粒子径を推定でき、決めることができる。
【0039】
さらに、上記測定(工程(A))と解析(工程(B)、(C))を同じ試料に対して何回か繰り返し行い、その標準偏差σを求めることにより、この測定方法の再現性が得られる。
【0040】
特に、試料の設置の仕方に工夫をして、エックス線源のビーム径よりも広くなる範囲に試料を設置することにより、誤差を少なくし、再現性を向上させることができる。
【0041】
本実施形態の測定方法によれば、有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布を正確に精度よく、簡便に、再現性良く測定することができる。具体的には、15〜50nmの平均一次粒子径の有機顔料を±0.3nmの再現性の精度で測定することができる。
【0042】
また、有機顔料が、粉末、分散体、塗膜、及びカラーチップのいずれかに含有された状態であっても平均一次粒子径及び粒径分布を測定することができる。
【0043】
[第2の実施形態]
本実施形態における分散体中の有機顔料の平均一次粒子径並びに粒径分布及び凝集粒子径の測定方法は、上記工程(A)〜(C)の測定方法を用いて、分散体中の有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布を求める工程(ア)と、エックス線透過法に基づき、この有機顔料のエックス線透過強度の経時変化を測定し、ストークスの沈降速度式(上記式(1)又は上記式(2))及び透過強度の比と粒子径の関係式(上記式(3))から前記有機顔料の凝集粒子径を求める工程(イ)とを有する。
【0044】
本実施形態に係る測定方法は、測定対象物が分散体中の有機顔料であり、エックス線透過法に基づき、この有機顔料のエックス線透過強度の経時変化を測定し、ストークスの沈降速度式(上記式(1)又は上記式(2))及び透過強度の比と粒子径の関係式(上記式(3))から前記有機顔料の凝集粒子径を求める工程(イ)を有する以外は、第1の実施形態と同じであるので、それらの説明は省略する。
【0045】
図1は、本実施形態における分散体中の有機顔料の平均一次粒子径と凝集粒子径の測定方法の原理の模式図であり、(a)は、分散体中の有機顔料を自然沈降させた場合の例であり、(b)は、遠心操作により沈降を加速させた場合の例である。
【0046】
本実施形態では、セル内に有機顔料を含有する分散体を封入し、エックス線を照射して上記工程(A)〜(C)により、小角エックス線散乱法から有機顔料の平均一次粒子径と粒径分布を求める(工程(ア))。
【0047】
また、この試料を透過したエックス線の透過強度の経時変化を測定して透過強度の比を求め、ストークスの沈降速度式(上記式(1)又は上記式(2))及び透過強度の比と粒子径の関係式(上記式(3))から有機顔料の凝集粒子径を求める(工程(イ))。この工程(ア)と工程(イ)は同時に測定してもよいし、別々に行ってもよい。
【0048】
この工程(イ)では、セル内に有機顔料を含有する分散体を導入した後、セル内の特定の測定場所でのエックス線の透過強度の経時変化を測定する。図1(a)に示すように、分散体中の有機顔料を自然沈降させた場合では、上記式(1)で表されるストークスの沈降速度式において、η0(媒体粘度)、H(沈降距離)、ρ(粒子の比重)、ρ0(媒体の比重)、g(重力加速度)は既知で与えられるから、経過時間Tを導入すると、その経過時間での凝集粒子径Dが求められる。
【0049】
なお、ここで、例えば、T1時間経過した際には、凝集粒子径D1よりも大きいサイズの粒子はすでにその測定位置(沈降距離H)を通過していることになる。
【0050】
次に、特定の経過時間T1における凝集粒子径D1の粒子がどれだけ存在するかという粒径分布は、透過強度の比E2/E1と上記式(3)とから求められる。上記式(3)で表される透過強度の比と粒子径の関係式において、まず、特定の経過時間T1における透過強度E1と、経過時間T1から微小時間経過したT2=T1+δTにおける透過強度E2とを測定データから導入して透過強度の比E2/E1を求め、さらに上記式(1)から特定の経過時間T1における凝集粒子径D1を求めて、これらを上記式(3)に導入すれば、凝集粒子径D1を有する粒子の相対的な粒子数KN1が求められる。
【0051】
なお、ここでは、T1とT2との時間の差は微小であるとして、便宜的にT1における凝集粒子径D1を用いて相対的粒子数KN1を計算したが、T1の代わりにT2を用いて計算してもよいし、あるいはそれらの平均値を用いて計算を行ってもよい。
【0052】
この方法を用いて、図1(a)に示すように、有機顔料を自然沈降させながら、エックス線源に対して試料を移動させて凝集粒子径を求めることにより、経時的な凝集の様子を観測することができる。試料によっては、自然沈降に1日以上かかる場合もあり、そのような場合には、図1(b)に示すように遠心操作を行って、沈降を加速させながら測定してもよい。
【0053】
図1(b)に示すように、分散体中の有機顔料を遠心操作により沈降を加速させた場合、上記式(1)のかわりに上記式(2)を用いる。式(2)中、Dは凝集粒子径、η0は媒体粘度、X1は回転中心より沈降面までの距離、X2は回転中心より測定面までの距離、ρは粒子の比重、ρ0は媒体の比重、ωは回転角速度、Tは経過時間である。
【0054】
また、本実施形態の凝集粒子径測定方法では、従来法のレーザー光源に代えて、エックス線源を用いているため、エックス線はレーザー光より波長が短いことにより、多重散乱が起こりにくく、濃度の高い試料をそのままの状態で測定することができる。
【0055】
本実施形態の測定方法によれば、透過型電子顕微鏡の観察では測定できない分散体中の有機顔料の凝集粒子径を、正確に精度よく、簡便に測定することができる。
【実施例】
【0056】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
[実施例1](有機顔料粉末)
有機顔料として、大日本インキ化学工業(株)製のβ型銅フタロシアニンブルー(C.I.Pigment No.15:3)のFASTOGEN BLUE TGRを用いた。この顔料約10mgを、Al製試料ホルダーの円形孔(径5mm、厚さ0.5mm)に押し込んで固定し、透過用の試料台にセットした。
【0058】
(株)リガク社製X線回折装置RINT−TTRIIを用いて小角散乱プロファイルの測定を行った。測定条件は、CuKα特性エックス線(波長 0.1541841nm)、管電圧50kV、管電流300mAで行った。
カーブフィッティングの解析には、(株)リガク社製ソフトウェアNANO−Solverを使用した。
【0059】
図2に、この測定した粉末有機顔料の小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフを示した。図2において、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)と理論散乱プロファイル(計算データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布(合成分布)のグラフである。ここで、(a)の散乱プロファイルのグラフ中、横軸は散乱角(2θ)、縦軸は散乱強度(counts)である。また、(b)の粒径分布のグラフ中、横軸は粒径(nm)、縦軸は粒子の分布(1/nm)であり、Σ(粒径×分布)=1となるように規格化している。すなわち、縦軸の分布は、相対的には粒子数と同じ意味である。
【0060】
この測定では、平均一次粒子径は31.2nm、最大分布径は26.3nm、規格化分散は39.6%であった。ここで、最大分布径とは、粒径分布グラフの最大値を示す粒径を意味し、規格化分散とは、平均サイズで規格化した粒径分布の広がりを意味する。
【0061】
次に、この試料を同様の方法で9回(No.S−1〜S−9)測定を行い、平均一次粒子径(nm)の平均値と標準偏差σ(再現性の誤差)、ばらつき(CV%)を求めた。その結果を、表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
平均一次粒子径の平均値は31.2nm、標準偏差σは0.3nmであった。また、変動係数(ばらつき)CVとは、標準偏差σ/平均一次粒子径の平均値×100(%)で表される数値である。表1から、CV値は1%であることから、9回測定した時のばらつきは大変小さいことがわかった。
【0064】
[実施例2](有機顔料分散体)
実施例1の顔料をエチルセロソルブに分散して、20質量%分散液(分散体)とした。この分散液をポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルムを加工した袋に入れ、2mm厚のステンレス製スペーサーを挿入して、均一厚みとなるように袋の外から挟み込み、透過用測定試料とし試料台にセットした。実施例1と同様の方法で平均一次粒子径及び粒径分布を測定した。
【0065】
図3に、この測定した分散液中の有機顔料の小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフを示す。図3において、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)と理論散乱プロファイル(計算データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布(合成分布)のグラフである。この測定では、平均一次粒子径は44.1nm、最大分布径は38.0nm、規格化分散は37.1%であった。
【0066】
[実施例3](有機顔料塗膜)
実施例1の顔料2.5gを、エチルセロソルブ87.5gに分散させ、アクリル系樹脂を10g添加して分散塗料液を作製した。この顔料分散塗料液をポリプロピレン(PP)製フィルムに約40μl滴下し、乾燥し塗膜とした後、これを透過用測定試料とし、試料台にセットした。実施例1と同様の方法で平均一次粒子径及び粒径分布を測定した。
【0067】
図4に、この測定した塗膜中の有機顔料の小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフを示す。図4において、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)と理論散乱プロファイル(計算データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布(合成分布)のグラフである。この測定では、平均一次粒子径は46.0nm、最大分布径は38.1nm、規格化分散は41.3%であった。
【0068】
実施例1〜3では、同一の有機顔料を使用したにもかかわらず、これらの平均一次粒子径は完全には一致しなかった。この原因については、粉末測定の配向や、分散体中、塗膜中での結晶変化等の不明な要素が考えられる。しかしながら、これらの結果はそれぞれの粒子状態を示す貴重な情報であると言える。
【0069】
[比較例1](金属微粒子分散体)
銀微粒子分散液(分散体)(日本ペイント製ファインスフェアAg−W001)をポリプロピレン(PP 6μm厚)製フィルム2枚で挟んでAl製円形孔ホルダーに注入し、透過用試料台にセットした。実施例1と同様の方法で平均一次粒子径及び粒径分布を測定した。
【0070】
図5に、この測定した分散液中の銀微粒子の小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフを示す。図5において、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)と理論散乱プロファイル(計算データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布(合成分布)のグラフである。この測定では、平均一次粒子径は15.5nm、最大分布径は14.5nm、規格化分散は25.0%であった。
【0071】
なお、この銀微粒子のメーカースペックは10〜15nm(TEM写真)、または20〜30nm(レーザー散乱測定)である。また、この銀微粒子を透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM−200CX)で写真撮影した。図6に、分散液中の銀微粒子の透過型電子顕微鏡写真を示す。
【0072】
[比較例2](金属微粒子粉末)
上記銀微粒子分散液を、ポリプロピレン(PP 6μm厚)製フィルム上に塗布し、乾燥後、透過用試料台にセットした。実施例1と同様の方法で平均一次粒子径及び粒径分布を測定した。
【0073】
図7に、この測定した銀微粒子粉末の小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフを示す。図7において、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)と理論散乱プロファイル(計算データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布(合成分布)のグラフである。この測定では、平均一次粒子径は15.0nm、最大分布径は14.4nm、規格化分散は20.0%であった。
【0074】
比較例1〜2の銀微粒子の測定では、メーカースペックに近く、精度よい平均一次粒子径と粒径分布が得られた。これらの結果から、実施例1〜2の有機顔料の粉末測定方法及び分散体測定方法は適切であることが裏付けられた。
【0075】
[比較例3](透過型電子顕微鏡による目視測定)
実施例1の有機顔料粉末を、透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM−200CX)を用いて、目視で観察してその粒径を計測した。図8は、透過型顕微鏡(TEM)で観察した実施例1の有機顔料粉末の写真である。この粒子の短軸径(nm)、長軸径(nm)、軸平均(nm)を100個測定し、それらの平均値、標準偏差(σ)、ばらつき(CV%)を求めた。
【0076】
さらに、この測定を測定者及びサンプリングロットを変えて、4回(No1〜No4)行なった。測定者ごと短軸径(nm)の平均値、長軸径(nm)の平均値、軸平均(nm)の平均値とそれらのばらつき(CV%)の結果を、表2に各々示す。この測定の誤差は大きく、35.2〜53.2nmの範囲で軸平均値のばらつきが見られた。
【0077】
【表2】
【0078】
この結果から、比較例3のTEM写真上で粒子を選ぶ際、大きさを計測しやすい粒子が確率的にピックアップされ易くなるため、軸平均値(平均粒径)の誤差になりやすいことがわかった。
【0079】
また、比較例3では、短軸径と長軸径の平均を取って軸平均値(平均粒径)としている。一方、実施例1の小角エックス線散乱法で求めた平均一次粒子径は、粒子内部の各方位の平均的な長さによるものなので、アスペクト比の大きな粒子形状である場合、長軸よりも短軸に近い大きさが得られる傾向にあることがわかった。
【0080】
[実施例4](凝集粒子径の測定)
実施例2の分散液約3mlを、5ml容積の肉薄型ガラスセルに入れ、密封した後、透過用試料台にセットした。液面から3mmの高さにエックス線を管電圧20kV、管電流10mAで照射し、透過強度の経時変化を測定した。図9に、測定した有機顔料を含む分散液のエックス線透過強度の経時変化のグラフを示す。
【0081】
図9に示したエックス線透過強度の経時変化から透過強度の比E2/E1を求め、上記式(1)で表されるストークスの沈降速度式と上記式(3)で表される透過強度の比と粒子径の関係式を用いて、凝集粒子径分布を求めた。図10に、凝集粒子径分布のグラフを示す。この凝集粒子径分布は、12〜22μmの範囲に分布した。
【0082】
[比較例4](実体顕微鏡による凝集粒子径の測定)
また、実施例4の有機顔料を含む分散液の凝集の様子を、実体顕微鏡(Keyence社製 VHX100)で観察した。図11に、測定した有機顔料を含む分散液の実体顕微鏡による写真を示す。この写真から、数十μmの粗大な粒子が観察できた。
【0083】
この結果は、エックス線透過法による凝集粒子径の測定結果と矛盾せず、本発明の凝集粒子径の測定方法が妥当であることが裏付けられた。
【0084】
[実施例5](有機顔料分散体の平均一次粒子径とコントラストとの相関関係)
本発明に係る有機顔料の平均一次粒子径の測定方法で求めた平均一次粒子径とコントラストとの相関関係について調べた。
【0085】
まず、下記配合にて、各成分をサンドグラインダーを用いて滞留時間90分間で分散処理を行って、青色顔料ペーストAを調製した。
【0086】
顔料ペーストAの配合比:C.I.ピグメントブルー15:6 13.5質量部、分散剤(Disperbyk161 ビック・ケミー社製) 17.5質量部、分散助剤(Solsperse5000 ゼネカ社製) 1.5質量部、PGMEA 77.5質量部。
【0087】
(本発明に係る小角エックス線散乱法による平均一次粒子径測定)
上記顔料ペーストAに用いるC.I.ピグメントブルー15:6の小角エックス線散乱法による平均一次粒子径の測定を、実施例1と同様にして行った。この結果を、No.R−1のピグメントブルー15:6の平均一次粒子径(nm)として表3に示す。
【0088】
【表3】
【0089】
また、これとは別に、下記配合にて各成分をサンドグラインダーを用いて滞留時間290分間で分散処理を行って、バイオレット系顔料ペーストBを調製した。
【0090】
顔料ペーストBの配合比:C.I.ピグメントバイオレット23 15質量部、分散剤(Disperbyk161 ビック・ケミー社製) 7.5質量部、PGMEA 77.5質量部。
【0091】
上記顔料ペーストA、Bを用いて、下記配合にて各成分を混合し、1時間撹拌して顔料分散液(分散体)(No.R−1)を製造した。
【0092】
顔料分散液の配合比:顔料ペーストA 40質量部、顔料ペーストB 5質量部、有機高分子物質(ベンジルメタアクリレート、およびメタアクリル酸の共重合物) 10質量部、エチレン性化合物(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート) 5質量部、光重合開始系剤(ミヒラーズケトンと2−メルカプトベンゾチアゾール(質量比1:1)) 1質量部、PGMEA 39質量部。
【0093】
また、顔料ペーストAのピグメントブルー15:6のロットをNo.R−2〜R−5と変えた以外は、同様にして4種類の分散液(No.R−2〜R−5)も配合した。ロットを変えたNo.R−2〜R−5のピグメントブルー15:6についても、上記と同様に小角エックス線散乱法による平均一次粒子径の測定を行った。それらの結果を表3に各々示す。
【0094】
次いで、これらの顔料分散液(No.R−1〜R−5)をガラス基板上に乾燥膜厚が1.4μmとなるようにスピンコート法で塗付して乾燥させた。これを超高圧水銀灯で300mJ/cm2の照射量となるように露光して青色画素画像を形成した。
【0095】
(青色画素画像のコントラストの測定)
上記青色画素画像を用いてコントラストの測定を行った。図12に、コントラストの測定方法を説明する構成図を、(a)に2枚の偏光板を平行に配置して光量Aを測定する方法を、(b)に2枚の偏光板を直交に配置して光量Bを測定する方法を示す。
【0096】
まず、2枚の偏光板21,22間に、ガラス基板上に青色画素画像を形成したサンプル1を置き、光源3から光を照射して偏光板21、サンプル1、及び偏光板22を透過した光の光量(cd/cm2)を、輝度計(トプコン「BM−5A」トプコン社製)4で測定した。
【0097】
図12(a)に示したように、偏光板22の偏光方向を偏光板21の偏光方向と平行とした場合の光量A(平行)と、図12(b)に示したように、偏光板22の偏光方向を偏光板21の偏光方向と直交させた場合の光量B(直交)とをそれぞれ測定した。光量Aと光量Bとの比(光量A/光量B)から、コントラストを算出した。コントラストの値を、表3に示す。また、青色画素画像のコントラストとピグメントブルー15:6(顔料粉末)の平均一次粒子径との相関関係を示したグラフを、図13に示す。
【0098】
図13の結果から、顔料の平均一次粒子径が大きくなると、青色画素画像のコントラストが低下する関係にあることが認められた。
【0099】
[比較例5](ピグメントブルー15:6粒子の透過型電子顕微鏡による観察)
実施例5で用いたピグメントブルー15:6の粒子(No.R−1〜R−5)について、その粒子径を透過型電子顕微鏡で観察した。No.R−1〜R−5のロットでは、No.R−5の粒子の粒子径がわずかに大きく観察されたが、No.R−1〜R−4については、TEM写真を目視で観察した限りでは、大きさの差は認められなかった。
【0100】
実施例5と比較例5の結果から、顔料の平均一次粒子径に違いがあり、その顔料を用いて作製した画素画像ではコントラストの差が認められる場合であっても、比較例5の透過型電子顕微鏡による観察では、顔料の平均一次粒子径の差がはっきりわからなかった。それに対し、実施例5の本発明の平均一次粒子径の測定方法では、平均一次粒子径の差がはっきり認められ、また、顔料の平均一次粒子径と画素画像のコントラストとの相関関係を、より具体的に表せることがわかった。
【0101】
以上の結果から、本発明の測定方法によれば、有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布、凝集粒子径を正確に精度よく、簡便に、再現性良く測定でき、透過型電子顕微鏡では測れない粒子径の違いでも本発明の測定方法では測ることができるため、非常に有用であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の測定方法を用いて、有機顔料の平均一次粒子径を測定すれば、透過型電子顕微鏡を用いる場合よりもより正確に平均一次粒子径を測定することができるため、インキの透明性や着色力、カラーフィルターのコントラスト等に優れた顔料分散液を製造する際、粒子サイズの揃った顔料を選定する方法として応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】第2の実施形態における分散体中の有機顔料の平均一次粒子径と凝集粒子径の測定方法の原理の模式図であり、(a)は、分散体中の有機顔料を自然沈降させた場合の例であり、(b)は、遠心操作により沈降を加速させた場合の例である。
【図2】実施例1で測定した粉末有機顔料の小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフであり、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)と理論散乱プロファイル(計算データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布(合成分布)のグラフである。
【図3】実施例2で測定した分散体中の有機顔料の小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフであり、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)と理論散乱プロファイル(計算データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布(合成分布)のグラフである。
【図4】実施例3で測定した塗膜中の有機顔料の小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフであり、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)と理論散乱プロファイル(計算データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布(合成分布)のグラフである。
【図5】比較例1で測定した分散液中の銀微粒子の小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフであり、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)と理論散乱プロファイル(計算データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布(合成分布)のグラフである。
【図6】比較例1で測定した分散液中の銀微粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
【図7】比較例2で測定した銀微粒子粉末の小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフであり、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)と理論散乱プロファイル(計算データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布(合成分布)のグラフである。
【図8】透過型顕微鏡(TEM)で観察した実施例1の有機顔料の写真である。
【図9】実施例4で測定した有機顔料を含む分散液のエックス線透過強度の経時変化のグラフである。
【図10】実施例4で測定した有機顔料を含む分散液の凝集粒子径分布のグラフである。
【図11】比較例4で測定した有機顔料を含む分散液の実体顕微鏡写真である。
【図12】実施例5のコントラストの測定方法を説明する構成図であり、(a)は、2枚の偏光板を平行に配置して光量Aを測定する方法であり、(b)は、2枚の偏光板を直交に配置して光量Bを測定する方法である。
【図13】実施例5で測定した青色画素画像のコントラストとピグメントブルー15:6(顔料粉末)の平均一次粒子径との相関関係を示したグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機顔料の平均一次粒子径、粒径分布、及び凝集粒子径の測定方法に関するものであり、特に、小角エックス線散乱法に基づき、有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布を測定する方法、エックス線透過法に基づき、分散体中の有機顔料の平均一次粒子径並びに粒径分布及び凝集粒子径を測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機顔料の平均一次粒子径を測定する方法としては、透過型電子顕微鏡を用いて直接観察し、短軸径や長軸径を計測する方法が知られている。
【0003】
しかしながら、この方法では、100個以上の顔料粒子を計測しなければならないため、手間がかかることや、粒子が重なって写っている場合、そのサイズを判別するのが難しく計測対象から外してしまうため、計測対象の粒子を選別する作業に計測者による恣意が働きやすいこと等があり、このようにして求めた一次粒子径やその粒径分布が、顔料全体を代表した数値であるのか疑問があるという問題があった。
【0004】
そこで、小角エックス線散乱法を用いて、被測定物中に含有する所定の粒子径に対する粒子含有率を定める粒度分布測定方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る測定方法にあっては、透過型電子顕微鏡を用いた画像解析より平均一次粒子径を求め、それを用いて小角エックス線散乱法で粒度分布を測定する方法であり、小角エックス線散乱法のみで平均一次粒子径及び粒径分布を測定する方法ではなかった。
【0006】
また、被測定物もアエロジル(超微粒子のシリカ)であり、この方法が有機顔料、特に粉末形状だけでなく、分散体、塗膜、及びカラーチップ中に含まれる有機顔料に対しても応用できるかは不明であった。
【0007】
また、有機顔料は、一般的に、分散体中では一次粒子のままの状態では存在しておらず、凝集体を形成しているのが大部分である。色材としての特性、例えば、インキの透明性や着色力、カラーフィルターのコントラスト等は、いずれも、顔料の一次粒子径のみならず凝集粒子径にも大きく左右されるため、一次粒子径と凝集粒子径の両者を知ることが、色材としての特性を利用する上で非常に重要である。
【0008】
このような顔料の凝集粒子径を測定する方法としては、一般的に、レーザー回折式、レーザー散乱式、遠心沈降式等による方法が知られている。従来法によれば、測定時に分散体を溶剤で大量に希釈しなければならず、この希釈により状態の変化が生じる場合には、測定値の信頼性が低いという問題があった。
【0009】
ただし、近年の測定技術の進歩により、被測定物の希釈を最小限に抑えられるようになったため、この問題は解消されつつある。しかしながら、これまでは一次粒子径と凝集粒子径は、あくまで別々の方法でしか測定することができなかった。
【0010】
すなわち、色材製品の製造の過程では、顔料の粉末を選定し、溶剤や樹脂中に分散し分散体とした後に、塗工や印刷をして塗膜や印刷物といった最終製品を得ている。この場合、顔料の一次粒子径は、粉末の状態で透過型電子顕微鏡(TEM)観察をし、分散体中の顔料の凝集粒子径は、レーザー回折式等の方法で評価するのが一般的であった。
【0011】
ところが、有機顔料結晶については、溶剤中で結晶成長が起こり一次粒子径の大きさが変化する場合があることが報告されている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。分散体製造過程や塗膜形成過程で結晶成長が起こっていたとしても、従来はその過程の中での一次粒子径の変化を逐次把握することは困難であった。
【特許文献1】特開2003−139680号公報
【非特許文献1】荒井良明、染料と薬品、6、10(1962)
【非特許文献2】高橋弘、色材、36、550(1963)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、製品製造の全工程で、顔料の一次粒子径を評価できることがより望ましい。あわせて、分散体中の顔料の凝集粒子径も同じ方法で測定できるならば、製品管理の上でも有用となるため、このような測定方法の確立も求められている。
【0013】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布を正確に精度よく、簡便に測定する方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、分散体中の有機顔料の平均一次粒子径並びに粒径分布と凝集粒子径を簡便に測定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる課題を解決するため、
本発明は、小角エックス線散乱法に基づき、有機顔料の小角エックス線散乱プロファイル(測定散乱プロファイル)を測定する工程(A)と、前記有機顔料を、半径Rの球状粒子であって粒径分布のばらつきが存在すると仮定して、仮の半径Rの値と仮の粒径分布モデルから、理論散乱プロファイルをシミュレーションにより求める工程(B)と、該理論散乱プロファイルと前記測定散乱プロファイルとをカーブフィッティングさせることにより、有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布を決定する工程(C)とを有することを特徴とする有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布の測定方法である。
【0016】
また、本発明は、上記有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布の測定方法を用いて、分散体中の有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布を求める工程(ア)と、エックス線透過法に基づき、この有機顔料のエックス線透過強度の経時変化を測定し、ストークスの沈降速度式(下記式(1)又は下記式(2))及び透過強度の比と粒子径の関係式(下記式(3))から前記有機顔料の凝集粒子径を求める工程(イ)とを有することを特徴とする分散体中の有機顔料の平均一次粒子径並びに粒径分布及び凝集粒子径の測定方法である。
【数1】
(式中、Dは凝集粒子径、η0は媒体粘度、Hは沈降距離、ρは粒子の比重、ρ0は媒体の比重、gは重力加速度、Tは経過時間である。)
【数2】
(式中、Dは凝集粒子径、η0は媒体粘度、X1は回転中心より沈降面までの距離、X2は回転中心より測定面までの距離、ρは粒子の比重、ρ0は媒体の比重、ωは回転角速度、Tは経過時間である。)
【数3】
(式中、E1は特定の経過時間T1における透過強度、E2は経過時間T1から微小時間経過したT2=T1+δTにおける透過強度、D1は特定の経過時間T1における凝集粒子径、N1は特定の経過時間T1における凝集粒子の粒子数、Kは定数、E2/E1は透過強度の比である。)
【発明の効果】
【0017】
本発明の測定方法によれば、有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布、凝集粒子径を正確に精度よく、簡便に、再現性良く測定することができ、また、透過型電子顕微鏡では測れない粒子径の違いでも本発明の測定方法では測ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の測定方法について、以下に詳細に説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
本実施形態における有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布の測定方法は、小角エックス線散乱法に基づき、有機顔料の小角エックス線散乱プロファイル(測定散乱プロファイル)を測定する工程(A)と、前記有機顔料を、半径Rの球状粒子であって粒径分布のばらつきが存在すると仮定して、仮の半径Rの値と仮の粒径分布モデルから、理論散乱プロファイルをシミュレーションにより求める工程(B)と、該理論散乱プロファイルと前記測定散乱プロファイルとをカーブフィッティングさせることにより、有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布を決定する工程(C)とを有する。
【0020】
本実施形態の測定対象物である有機顔料としては、フタロシアニン系、不溶性アゾ系、アゾレーキ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アントラピリミジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系等が挙げられる。また、この有機顔料は、粉末、分散体、塗膜、及びプラスチックなどに練り込まれたカラーチップのいずれかに含有された状態であるのが好ましい。粉末形状以外の分散体、塗膜、プラスチックなどに練り込まれたカラーチップ中に含まれた形状であっても測定することにより、例えば、カラーフィルター用のインキを製造する際に、その有機顔料の粒子径及び粒径分布を粉末原料の状態から分散体であるペースト、あるいは塗膜化された最終工程まで、工程毎に追跡することができ、製品管理の上でも有用となる。
【0021】
小角エックス線散乱法(Small Angle X−ray Scattering:SAXS)とは、散乱角(2θ)<10°以内の小角領域で生じる散漫な散乱・回折を測定する方法である。この小角エックス線散乱法では、物質中に1〜100nm程度の大きさの電子密度の異なる領域があると、その電子密度差によりエックス線の散漫散乱が計測される。この散乱角と散乱強度に基づいて測定対象物の粒子径を求める。
【0022】
本実施形態における小角エックス線散乱法に用いるエックス線回折装置は、市販の透過型あるいは反射型の装置を用いることができる。具体的には、まず、工程(A)で、有機顔料を市販のエックス線回折装置の試料ホルダー、試料台等に設置した後、散乱角(2θ)が10°未満の範囲の各散乱角(2θ)における散乱強度Iを測定して、小角エックス線散乱プロファイル(測定散乱プロファイル)を測定する。
【0023】
次いで、工程(B)では、得られた測定散乱プロファイルから、有機顔料を半径Rの球状粒子であって粒径分布のばらつきが存在すると仮定して、仮の半径Rの値と仮の粒径分布モデルから、市販の解析ソフトウェアを用いてシミュレーションを行い、理論散乱プロファイルを求める。
【0024】
一般に、物質中にΔρ(r)の電子密度差領域が存在した場合、散乱強度Iは下記式(4)のように近似することができる。
【0025】
【数4】
【0026】
上記式(4)において、qは散乱ベクトル、Vは体積積分の領域を示し、物質全体で積分を行うことを意味する。また、F(q)は形状因子、S(q)は構造因子であり、粒子が物質中で無秩序に存在する場合、S(q)=1となる。
また、散乱ベクトルqは、下記式(5)で表される。
【0027】
【数5】
【0028】
上記式(5)において、λはエックス線の波長であり、2θは散乱角である。上記式(4)において、粒子が半径Rの球状であれば、形状因子F(q)は、下記式(6)、(7)で表される。
【0029】
【数6】
【0030】
したがって、上記式(4)、(5)、及び(7)より、仮の半径Rの値を仮定して、形状因子F(q)が計算されるならば、散乱強度Iが記述できる。しかしながら、上記散乱強度Iは、物質中の粒子が、ある一定の大きさ(半径Rが一定)を持つ場合しか想定していない。ところが、実際の物質中では、粒子が一定の大きさで存在していることは稀で、粒子の大きさには、ある程度のばらつき(粒径分布のばらつき)が存在するのが一般的である。また、本発明で目的としているのは、このような粒径分布のばらつきがある有機顔料の粒径分布を正確に精度よく測定することであるから、必然的に、粒径分布のばらつきという仮定が前提となってくる。
【0031】
この粒径分布のばらつきがあると、上記散乱強度Iは、様々なサイズを持つ粒子から生じる散乱の重ね合わせで与えられる。粒径分布のばらつきの仮定に用いる分布関数は、統計学で用いられる公知の分布関数を使用することができるが、実際の物質における粒径分布のばらつきを考慮すると、Γ分布関数を使用するのが好ましい。このΓ分布関数は、下記式(8)で表される。
【0032】
【数7】
【0033】
ここで、R0は球状粒子の平均半径、Mは粒径分布の広がりパラメータである。
さて、物質中の粒径分布が上記Γ分布関数で与えられ、散乱強度Iが様々な半径Rの粒子(平均半径はR0)から生じる散乱の重ね合わせで与えられると仮定できるとすると、粒径分布のばらつきが存在する場合の散乱強度Iは、上記式(7)及び(8)を用いて、下記式(9)で表される。
【0034】
【数8】
【0035】
上記式(9)より、工程(B)では、仮の半径Rの値と仮の粒径分布モデルから、シミュレーションにより散乱角(2θ)における散乱強度Iを計算し、理論散乱プロファイルを求める。
【0036】
次いで、工程(C)では、散乱強度Iから計算される理論散乱プロファイルと測定散乱プロファイルとをカーブフィッティングさせ、両プロファイルがフィッティングした数値を、この有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布であると決定する。
【0037】
例えば、粒径分布にばらつきがあり、散乱強度Iが散乱の重ね合わせで与えられる場合、測定散乱プロファイルにおいて、振動構造が観測されなくなるという特徴がある。つまり、測定散乱プロファイルの形状から、粒径分布の存在の有無を推定でき、粒径分布を決めることができる。
【0038】
また、粒子の平均半径が大きくなると、測定散乱プロファイルにおいて、散乱角(2θ)の低角度側の傾斜が高くなるという特徴がある。つまり、低角度側の測定散乱プロファイルの傾斜の高さから、おおよその平均一次粒子径を推定でき、決めることができる。
【0039】
さらに、上記測定(工程(A))と解析(工程(B)、(C))を同じ試料に対して何回か繰り返し行い、その標準偏差σを求めることにより、この測定方法の再現性が得られる。
【0040】
特に、試料の設置の仕方に工夫をして、エックス線源のビーム径よりも広くなる範囲に試料を設置することにより、誤差を少なくし、再現性を向上させることができる。
【0041】
本実施形態の測定方法によれば、有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布を正確に精度よく、簡便に、再現性良く測定することができる。具体的には、15〜50nmの平均一次粒子径の有機顔料を±0.3nmの再現性の精度で測定することができる。
【0042】
また、有機顔料が、粉末、分散体、塗膜、及びカラーチップのいずれかに含有された状態であっても平均一次粒子径及び粒径分布を測定することができる。
【0043】
[第2の実施形態]
本実施形態における分散体中の有機顔料の平均一次粒子径並びに粒径分布及び凝集粒子径の測定方法は、上記工程(A)〜(C)の測定方法を用いて、分散体中の有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布を求める工程(ア)と、エックス線透過法に基づき、この有機顔料のエックス線透過強度の経時変化を測定し、ストークスの沈降速度式(上記式(1)又は上記式(2))及び透過強度の比と粒子径の関係式(上記式(3))から前記有機顔料の凝集粒子径を求める工程(イ)とを有する。
【0044】
本実施形態に係る測定方法は、測定対象物が分散体中の有機顔料であり、エックス線透過法に基づき、この有機顔料のエックス線透過強度の経時変化を測定し、ストークスの沈降速度式(上記式(1)又は上記式(2))及び透過強度の比と粒子径の関係式(上記式(3))から前記有機顔料の凝集粒子径を求める工程(イ)を有する以外は、第1の実施形態と同じであるので、それらの説明は省略する。
【0045】
図1は、本実施形態における分散体中の有機顔料の平均一次粒子径と凝集粒子径の測定方法の原理の模式図であり、(a)は、分散体中の有機顔料を自然沈降させた場合の例であり、(b)は、遠心操作により沈降を加速させた場合の例である。
【0046】
本実施形態では、セル内に有機顔料を含有する分散体を封入し、エックス線を照射して上記工程(A)〜(C)により、小角エックス線散乱法から有機顔料の平均一次粒子径と粒径分布を求める(工程(ア))。
【0047】
また、この試料を透過したエックス線の透過強度の経時変化を測定して透過強度の比を求め、ストークスの沈降速度式(上記式(1)又は上記式(2))及び透過強度の比と粒子径の関係式(上記式(3))から有機顔料の凝集粒子径を求める(工程(イ))。この工程(ア)と工程(イ)は同時に測定してもよいし、別々に行ってもよい。
【0048】
この工程(イ)では、セル内に有機顔料を含有する分散体を導入した後、セル内の特定の測定場所でのエックス線の透過強度の経時変化を測定する。図1(a)に示すように、分散体中の有機顔料を自然沈降させた場合では、上記式(1)で表されるストークスの沈降速度式において、η0(媒体粘度)、H(沈降距離)、ρ(粒子の比重)、ρ0(媒体の比重)、g(重力加速度)は既知で与えられるから、経過時間Tを導入すると、その経過時間での凝集粒子径Dが求められる。
【0049】
なお、ここで、例えば、T1時間経過した際には、凝集粒子径D1よりも大きいサイズの粒子はすでにその測定位置(沈降距離H)を通過していることになる。
【0050】
次に、特定の経過時間T1における凝集粒子径D1の粒子がどれだけ存在するかという粒径分布は、透過強度の比E2/E1と上記式(3)とから求められる。上記式(3)で表される透過強度の比と粒子径の関係式において、まず、特定の経過時間T1における透過強度E1と、経過時間T1から微小時間経過したT2=T1+δTにおける透過強度E2とを測定データから導入して透過強度の比E2/E1を求め、さらに上記式(1)から特定の経過時間T1における凝集粒子径D1を求めて、これらを上記式(3)に導入すれば、凝集粒子径D1を有する粒子の相対的な粒子数KN1が求められる。
【0051】
なお、ここでは、T1とT2との時間の差は微小であるとして、便宜的にT1における凝集粒子径D1を用いて相対的粒子数KN1を計算したが、T1の代わりにT2を用いて計算してもよいし、あるいはそれらの平均値を用いて計算を行ってもよい。
【0052】
この方法を用いて、図1(a)に示すように、有機顔料を自然沈降させながら、エックス線源に対して試料を移動させて凝集粒子径を求めることにより、経時的な凝集の様子を観測することができる。試料によっては、自然沈降に1日以上かかる場合もあり、そのような場合には、図1(b)に示すように遠心操作を行って、沈降を加速させながら測定してもよい。
【0053】
図1(b)に示すように、分散体中の有機顔料を遠心操作により沈降を加速させた場合、上記式(1)のかわりに上記式(2)を用いる。式(2)中、Dは凝集粒子径、η0は媒体粘度、X1は回転中心より沈降面までの距離、X2は回転中心より測定面までの距離、ρは粒子の比重、ρ0は媒体の比重、ωは回転角速度、Tは経過時間である。
【0054】
また、本実施形態の凝集粒子径測定方法では、従来法のレーザー光源に代えて、エックス線源を用いているため、エックス線はレーザー光より波長が短いことにより、多重散乱が起こりにくく、濃度の高い試料をそのままの状態で測定することができる。
【0055】
本実施形態の測定方法によれば、透過型電子顕微鏡の観察では測定できない分散体中の有機顔料の凝集粒子径を、正確に精度よく、簡便に測定することができる。
【実施例】
【0056】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
[実施例1](有機顔料粉末)
有機顔料として、大日本インキ化学工業(株)製のβ型銅フタロシアニンブルー(C.I.Pigment No.15:3)のFASTOGEN BLUE TGRを用いた。この顔料約10mgを、Al製試料ホルダーの円形孔(径5mm、厚さ0.5mm)に押し込んで固定し、透過用の試料台にセットした。
【0058】
(株)リガク社製X線回折装置RINT−TTRIIを用いて小角散乱プロファイルの測定を行った。測定条件は、CuKα特性エックス線(波長 0.1541841nm)、管電圧50kV、管電流300mAで行った。
カーブフィッティングの解析には、(株)リガク社製ソフトウェアNANO−Solverを使用した。
【0059】
図2に、この測定した粉末有機顔料の小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフを示した。図2において、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)と理論散乱プロファイル(計算データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布(合成分布)のグラフである。ここで、(a)の散乱プロファイルのグラフ中、横軸は散乱角(2θ)、縦軸は散乱強度(counts)である。また、(b)の粒径分布のグラフ中、横軸は粒径(nm)、縦軸は粒子の分布(1/nm)であり、Σ(粒径×分布)=1となるように規格化している。すなわち、縦軸の分布は、相対的には粒子数と同じ意味である。
【0060】
この測定では、平均一次粒子径は31.2nm、最大分布径は26.3nm、規格化分散は39.6%であった。ここで、最大分布径とは、粒径分布グラフの最大値を示す粒径を意味し、規格化分散とは、平均サイズで規格化した粒径分布の広がりを意味する。
【0061】
次に、この試料を同様の方法で9回(No.S−1〜S−9)測定を行い、平均一次粒子径(nm)の平均値と標準偏差σ(再現性の誤差)、ばらつき(CV%)を求めた。その結果を、表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
平均一次粒子径の平均値は31.2nm、標準偏差σは0.3nmであった。また、変動係数(ばらつき)CVとは、標準偏差σ/平均一次粒子径の平均値×100(%)で表される数値である。表1から、CV値は1%であることから、9回測定した時のばらつきは大変小さいことがわかった。
【0064】
[実施例2](有機顔料分散体)
実施例1の顔料をエチルセロソルブに分散して、20質量%分散液(分散体)とした。この分散液をポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルムを加工した袋に入れ、2mm厚のステンレス製スペーサーを挿入して、均一厚みとなるように袋の外から挟み込み、透過用測定試料とし試料台にセットした。実施例1と同様の方法で平均一次粒子径及び粒径分布を測定した。
【0065】
図3に、この測定した分散液中の有機顔料の小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフを示す。図3において、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)と理論散乱プロファイル(計算データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布(合成分布)のグラフである。この測定では、平均一次粒子径は44.1nm、最大分布径は38.0nm、規格化分散は37.1%であった。
【0066】
[実施例3](有機顔料塗膜)
実施例1の顔料2.5gを、エチルセロソルブ87.5gに分散させ、アクリル系樹脂を10g添加して分散塗料液を作製した。この顔料分散塗料液をポリプロピレン(PP)製フィルムに約40μl滴下し、乾燥し塗膜とした後、これを透過用測定試料とし、試料台にセットした。実施例1と同様の方法で平均一次粒子径及び粒径分布を測定した。
【0067】
図4に、この測定した塗膜中の有機顔料の小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフを示す。図4において、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)と理論散乱プロファイル(計算データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布(合成分布)のグラフである。この測定では、平均一次粒子径は46.0nm、最大分布径は38.1nm、規格化分散は41.3%であった。
【0068】
実施例1〜3では、同一の有機顔料を使用したにもかかわらず、これらの平均一次粒子径は完全には一致しなかった。この原因については、粉末測定の配向や、分散体中、塗膜中での結晶変化等の不明な要素が考えられる。しかしながら、これらの結果はそれぞれの粒子状態を示す貴重な情報であると言える。
【0069】
[比較例1](金属微粒子分散体)
銀微粒子分散液(分散体)(日本ペイント製ファインスフェアAg−W001)をポリプロピレン(PP 6μm厚)製フィルム2枚で挟んでAl製円形孔ホルダーに注入し、透過用試料台にセットした。実施例1と同様の方法で平均一次粒子径及び粒径分布を測定した。
【0070】
図5に、この測定した分散液中の銀微粒子の小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフを示す。図5において、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)と理論散乱プロファイル(計算データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布(合成分布)のグラフである。この測定では、平均一次粒子径は15.5nm、最大分布径は14.5nm、規格化分散は25.0%であった。
【0071】
なお、この銀微粒子のメーカースペックは10〜15nm(TEM写真)、または20〜30nm(レーザー散乱測定)である。また、この銀微粒子を透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM−200CX)で写真撮影した。図6に、分散液中の銀微粒子の透過型電子顕微鏡写真を示す。
【0072】
[比較例2](金属微粒子粉末)
上記銀微粒子分散液を、ポリプロピレン(PP 6μm厚)製フィルム上に塗布し、乾燥後、透過用試料台にセットした。実施例1と同様の方法で平均一次粒子径及び粒径分布を測定した。
【0073】
図7に、この測定した銀微粒子粉末の小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフを示す。図7において、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)と理論散乱プロファイル(計算データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布(合成分布)のグラフである。この測定では、平均一次粒子径は15.0nm、最大分布径は14.4nm、規格化分散は20.0%であった。
【0074】
比較例1〜2の銀微粒子の測定では、メーカースペックに近く、精度よい平均一次粒子径と粒径分布が得られた。これらの結果から、実施例1〜2の有機顔料の粉末測定方法及び分散体測定方法は適切であることが裏付けられた。
【0075】
[比較例3](透過型電子顕微鏡による目視測定)
実施例1の有機顔料粉末を、透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM−200CX)を用いて、目視で観察してその粒径を計測した。図8は、透過型顕微鏡(TEM)で観察した実施例1の有機顔料粉末の写真である。この粒子の短軸径(nm)、長軸径(nm)、軸平均(nm)を100個測定し、それらの平均値、標準偏差(σ)、ばらつき(CV%)を求めた。
【0076】
さらに、この測定を測定者及びサンプリングロットを変えて、4回(No1〜No4)行なった。測定者ごと短軸径(nm)の平均値、長軸径(nm)の平均値、軸平均(nm)の平均値とそれらのばらつき(CV%)の結果を、表2に各々示す。この測定の誤差は大きく、35.2〜53.2nmの範囲で軸平均値のばらつきが見られた。
【0077】
【表2】
【0078】
この結果から、比較例3のTEM写真上で粒子を選ぶ際、大きさを計測しやすい粒子が確率的にピックアップされ易くなるため、軸平均値(平均粒径)の誤差になりやすいことがわかった。
【0079】
また、比較例3では、短軸径と長軸径の平均を取って軸平均値(平均粒径)としている。一方、実施例1の小角エックス線散乱法で求めた平均一次粒子径は、粒子内部の各方位の平均的な長さによるものなので、アスペクト比の大きな粒子形状である場合、長軸よりも短軸に近い大きさが得られる傾向にあることがわかった。
【0080】
[実施例4](凝集粒子径の測定)
実施例2の分散液約3mlを、5ml容積の肉薄型ガラスセルに入れ、密封した後、透過用試料台にセットした。液面から3mmの高さにエックス線を管電圧20kV、管電流10mAで照射し、透過強度の経時変化を測定した。図9に、測定した有機顔料を含む分散液のエックス線透過強度の経時変化のグラフを示す。
【0081】
図9に示したエックス線透過強度の経時変化から透過強度の比E2/E1を求め、上記式(1)で表されるストークスの沈降速度式と上記式(3)で表される透過強度の比と粒子径の関係式を用いて、凝集粒子径分布を求めた。図10に、凝集粒子径分布のグラフを示す。この凝集粒子径分布は、12〜22μmの範囲に分布した。
【0082】
[比較例4](実体顕微鏡による凝集粒子径の測定)
また、実施例4の有機顔料を含む分散液の凝集の様子を、実体顕微鏡(Keyence社製 VHX100)で観察した。図11に、測定した有機顔料を含む分散液の実体顕微鏡による写真を示す。この写真から、数十μmの粗大な粒子が観察できた。
【0083】
この結果は、エックス線透過法による凝集粒子径の測定結果と矛盾せず、本発明の凝集粒子径の測定方法が妥当であることが裏付けられた。
【0084】
[実施例5](有機顔料分散体の平均一次粒子径とコントラストとの相関関係)
本発明に係る有機顔料の平均一次粒子径の測定方法で求めた平均一次粒子径とコントラストとの相関関係について調べた。
【0085】
まず、下記配合にて、各成分をサンドグラインダーを用いて滞留時間90分間で分散処理を行って、青色顔料ペーストAを調製した。
【0086】
顔料ペーストAの配合比:C.I.ピグメントブルー15:6 13.5質量部、分散剤(Disperbyk161 ビック・ケミー社製) 17.5質量部、分散助剤(Solsperse5000 ゼネカ社製) 1.5質量部、PGMEA 77.5質量部。
【0087】
(本発明に係る小角エックス線散乱法による平均一次粒子径測定)
上記顔料ペーストAに用いるC.I.ピグメントブルー15:6の小角エックス線散乱法による平均一次粒子径の測定を、実施例1と同様にして行った。この結果を、No.R−1のピグメントブルー15:6の平均一次粒子径(nm)として表3に示す。
【0088】
【表3】
【0089】
また、これとは別に、下記配合にて各成分をサンドグラインダーを用いて滞留時間290分間で分散処理を行って、バイオレット系顔料ペーストBを調製した。
【0090】
顔料ペーストBの配合比:C.I.ピグメントバイオレット23 15質量部、分散剤(Disperbyk161 ビック・ケミー社製) 7.5質量部、PGMEA 77.5質量部。
【0091】
上記顔料ペーストA、Bを用いて、下記配合にて各成分を混合し、1時間撹拌して顔料分散液(分散体)(No.R−1)を製造した。
【0092】
顔料分散液の配合比:顔料ペーストA 40質量部、顔料ペーストB 5質量部、有機高分子物質(ベンジルメタアクリレート、およびメタアクリル酸の共重合物) 10質量部、エチレン性化合物(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート) 5質量部、光重合開始系剤(ミヒラーズケトンと2−メルカプトベンゾチアゾール(質量比1:1)) 1質量部、PGMEA 39質量部。
【0093】
また、顔料ペーストAのピグメントブルー15:6のロットをNo.R−2〜R−5と変えた以外は、同様にして4種類の分散液(No.R−2〜R−5)も配合した。ロットを変えたNo.R−2〜R−5のピグメントブルー15:6についても、上記と同様に小角エックス線散乱法による平均一次粒子径の測定を行った。それらの結果を表3に各々示す。
【0094】
次いで、これらの顔料分散液(No.R−1〜R−5)をガラス基板上に乾燥膜厚が1.4μmとなるようにスピンコート法で塗付して乾燥させた。これを超高圧水銀灯で300mJ/cm2の照射量となるように露光して青色画素画像を形成した。
【0095】
(青色画素画像のコントラストの測定)
上記青色画素画像を用いてコントラストの測定を行った。図12に、コントラストの測定方法を説明する構成図を、(a)に2枚の偏光板を平行に配置して光量Aを測定する方法を、(b)に2枚の偏光板を直交に配置して光量Bを測定する方法を示す。
【0096】
まず、2枚の偏光板21,22間に、ガラス基板上に青色画素画像を形成したサンプル1を置き、光源3から光を照射して偏光板21、サンプル1、及び偏光板22を透過した光の光量(cd/cm2)を、輝度計(トプコン「BM−5A」トプコン社製)4で測定した。
【0097】
図12(a)に示したように、偏光板22の偏光方向を偏光板21の偏光方向と平行とした場合の光量A(平行)と、図12(b)に示したように、偏光板22の偏光方向を偏光板21の偏光方向と直交させた場合の光量B(直交)とをそれぞれ測定した。光量Aと光量Bとの比(光量A/光量B)から、コントラストを算出した。コントラストの値を、表3に示す。また、青色画素画像のコントラストとピグメントブルー15:6(顔料粉末)の平均一次粒子径との相関関係を示したグラフを、図13に示す。
【0098】
図13の結果から、顔料の平均一次粒子径が大きくなると、青色画素画像のコントラストが低下する関係にあることが認められた。
【0099】
[比較例5](ピグメントブルー15:6粒子の透過型電子顕微鏡による観察)
実施例5で用いたピグメントブルー15:6の粒子(No.R−1〜R−5)について、その粒子径を透過型電子顕微鏡で観察した。No.R−1〜R−5のロットでは、No.R−5の粒子の粒子径がわずかに大きく観察されたが、No.R−1〜R−4については、TEM写真を目視で観察した限りでは、大きさの差は認められなかった。
【0100】
実施例5と比較例5の結果から、顔料の平均一次粒子径に違いがあり、その顔料を用いて作製した画素画像ではコントラストの差が認められる場合であっても、比較例5の透過型電子顕微鏡による観察では、顔料の平均一次粒子径の差がはっきりわからなかった。それに対し、実施例5の本発明の平均一次粒子径の測定方法では、平均一次粒子径の差がはっきり認められ、また、顔料の平均一次粒子径と画素画像のコントラストとの相関関係を、より具体的に表せることがわかった。
【0101】
以上の結果から、本発明の測定方法によれば、有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布、凝集粒子径を正確に精度よく、簡便に、再現性良く測定でき、透過型電子顕微鏡では測れない粒子径の違いでも本発明の測定方法では測ることができるため、非常に有用であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の測定方法を用いて、有機顔料の平均一次粒子径を測定すれば、透過型電子顕微鏡を用いる場合よりもより正確に平均一次粒子径を測定することができるため、インキの透明性や着色力、カラーフィルターのコントラスト等に優れた顔料分散液を製造する際、粒子サイズの揃った顔料を選定する方法として応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】第2の実施形態における分散体中の有機顔料の平均一次粒子径と凝集粒子径の測定方法の原理の模式図であり、(a)は、分散体中の有機顔料を自然沈降させた場合の例であり、(b)は、遠心操作により沈降を加速させた場合の例である。
【図2】実施例1で測定した粉末有機顔料の小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフであり、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)と理論散乱プロファイル(計算データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布(合成分布)のグラフである。
【図3】実施例2で測定した分散体中の有機顔料の小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフであり、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)と理論散乱プロファイル(計算データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布(合成分布)のグラフである。
【図4】実施例3で測定した塗膜中の有機顔料の小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフであり、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)と理論散乱プロファイル(計算データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布(合成分布)のグラフである。
【図5】比較例1で測定した分散液中の銀微粒子の小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフであり、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)と理論散乱プロファイル(計算データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布(合成分布)のグラフである。
【図6】比較例1で測定した分散液中の銀微粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
【図7】比較例2で測定した銀微粒子粉末の小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフであり、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)と理論散乱プロファイル(計算データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布(合成分布)のグラフである。
【図8】透過型顕微鏡(TEM)で観察した実施例1の有機顔料の写真である。
【図9】実施例4で測定した有機顔料を含む分散液のエックス線透過強度の経時変化のグラフである。
【図10】実施例4で測定した有機顔料を含む分散液の凝集粒子径分布のグラフである。
【図11】比較例4で測定した有機顔料を含む分散液の実体顕微鏡写真である。
【図12】実施例5のコントラストの測定方法を説明する構成図であり、(a)は、2枚の偏光板を平行に配置して光量Aを測定する方法であり、(b)は、2枚の偏光板を直交に配置して光量Bを測定する方法である。
【図13】実施例5で測定した青色画素画像のコントラストとピグメントブルー15:6(顔料粉末)の平均一次粒子径との相関関係を示したグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小角エックス線散乱法に基づき、有機顔料の小角エックス線散乱プロファイル(測定散乱プロファイル)を測定する工程(A)と、
前記有機顔料を、半径Rの球状粒子であって粒径分布のばらつきが存在すると仮定して、仮の半径Rの値と仮の粒径分布モデルから、理論散乱プロファイルをシミュレーションにより求める工程(B)と、
該理論散乱プロファイルと前記測定散乱プロファイルとをカーブフィッティングさせることにより、有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布を決定する工程(C)とを有することを特徴とする有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布の測定方法。
【請求項2】
前記有機顔料が、粉末、分散体、塗膜、及びカラーチップのいずれかに含有された状態である請求項1記載の有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布の測定方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の測定方法を用いて、分散体中の有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布を求める工程(ア)と、
エックス線透過法に基づき、この有機顔料のエックス線透過強度の経時変化を測定し、ストークスの沈降速度式(下記式(1)又は下記式(2))及び透過強度の比と粒子径の関係式(下記式(3))から前記有機顔料の凝集粒子径を求める工程(イ)とを有することを特徴とする分散体中の有機顔料の平均一次粒子径並びに粒径分布及び凝集粒子径の測定方法。
【数1】
(式中、Dは凝集粒子径、η0は媒体粘度、Hは沈降距離、ρは粒子の比重、ρ0は媒体の比重、gは重力加速度、Tは経過時間である。)
【数2】
(式中、Dは凝集粒子径、η0は媒体粘度、X1は回転中心より沈降面までの距離、X2は回転中心より測定面までの距離、ρは粒子の比重、ρ0は媒体の比重、ωは回転角速度、Tは経過時間である。)
【数3】
(式中、E1は特定の経過時間T1における透過強度、E2は経過時間T1から微小時間経過したT2=T1+δTにおける透過強度、D1は特定の経過時間T1における凝集粒子径、N1は特定の経過時間T1における凝集粒子の粒子数、Kは定数、E2/E1は透過強度の比である。)
【請求項1】
小角エックス線散乱法に基づき、有機顔料の小角エックス線散乱プロファイル(測定散乱プロファイル)を測定する工程(A)と、
前記有機顔料を、半径Rの球状粒子であって粒径分布のばらつきが存在すると仮定して、仮の半径Rの値と仮の粒径分布モデルから、理論散乱プロファイルをシミュレーションにより求める工程(B)と、
該理論散乱プロファイルと前記測定散乱プロファイルとをカーブフィッティングさせることにより、有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布を決定する工程(C)とを有することを特徴とする有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布の測定方法。
【請求項2】
前記有機顔料が、粉末、分散体、塗膜、及びカラーチップのいずれかに含有された状態である請求項1記載の有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布の測定方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の測定方法を用いて、分散体中の有機顔料の平均一次粒子径及び粒径分布を求める工程(ア)と、
エックス線透過法に基づき、この有機顔料のエックス線透過強度の経時変化を測定し、ストークスの沈降速度式(下記式(1)又は下記式(2))及び透過強度の比と粒子径の関係式(下記式(3))から前記有機顔料の凝集粒子径を求める工程(イ)とを有することを特徴とする分散体中の有機顔料の平均一次粒子径並びに粒径分布及び凝集粒子径の測定方法。
【数1】
(式中、Dは凝集粒子径、η0は媒体粘度、Hは沈降距離、ρは粒子の比重、ρ0は媒体の比重、gは重力加速度、Tは経過時間である。)
【数2】
(式中、Dは凝集粒子径、η0は媒体粘度、X1は回転中心より沈降面までの距離、X2は回転中心より測定面までの距離、ρは粒子の比重、ρ0は媒体の比重、ωは回転角速度、Tは経過時間である。)
【数3】
(式中、E1は特定の経過時間T1における透過強度、E2は経過時間T1から微小時間経過したT2=T1+δTにおける透過強度、D1は特定の経過時間T1における凝集粒子径、N1は特定の経過時間T1における凝集粒子の粒子数、Kは定数、E2/E1は透過強度の比である。)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−113042(P2006−113042A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53848(P2005−53848)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】
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