説明

有機顔料微粒子分散物の製造方法、これにより得られる有機顔料微粒子を用いたインクジェット記録用インク及び塗料

【課題】粒径が小さく粒径分布が狭い有機顔料微粒子を含有する、低粘度の分散物の製造方法を提供する。また、有機顔料微粒子を分散させる分散剤の量を低減することができ、さらには高濃度のアルカリに対して不安定な分散剤等であっても使用可能とし、適用しうる分散剤の種類を豊富化することができる有機顔料微粒子分散物の製造方法、これにより得られる有機顔料微粒子を用いたインクジェット記録用インク及び塗料を提供する。
【手段】有機顔料を有機溶媒に溶解した有機顔料溶液と、分子量が1,000未満の界面活性剤を有機溶媒に溶解した界面活性剤溶液とを流路内で流通合流させて合流液とし、その合流液と水性媒体とを流路内でさらに流通合流させて、前記有機顔料の微粒子を生成させる工程を含む有機顔料微粒子分散物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機顔料微粒子分散物の製造方法、これにより得られる有機顔料微粒子を用いたインクジェット記録用インク及び塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料は鮮明な色調と高い着色力とを示し多くの分野で広く使用されている。例えば、塗料、印刷インク、電子写真用トナー、インクジェットインク、カラーフィルタ等をその用途として挙げることができる。その中でも高性能が要求され実用上特に重要な用途として、カラーフィルタおよびインクジェットインクが挙げられる。
【0003】
カラーフィルタについては、液晶表示装置やCCDセンサー、デジタルカメラといった画像関連機器における小型化・高画素化を実現するため、近年その薄層化が強く求められている。そしてカラーフィルタを薄くするためには、そこに用いられる顔料の微細化が不可欠である。また、カラーフィルタの高コントラスト化においても、均一で微細な顔料微粒子の開発が求められる。すなわち微細で均一かつ安定な顔料微粒子の開発が画像関連機器の高性能化の鍵をにぎる。
【0004】
他方、インクジェット用インクについていうと、従来その色材に染料が用いられてきた。しかし染料は耐水性や耐光性が低く、それを改良するために顔料が用いられるようになってきている。そして、印字目的だけでなく、各種の精密部材の製造にインクジェット技術を利用することが試みられている。例えば、上記カラーフィルタの製造をはじめ、リソグラフィ等の従来技術に代替し、設計自由度を高め大幅に生産性を向上させる技術として期待されている。しかし、それに適し、十分に要求に応える顔料微粒子及びそのインクはまだない。
【0005】
そのような背景から、顔料を例えば直径数十ナノメートルにまで微細化しかつ粒径を制御して単分散に近づけることが求められている。このような粒子を一般的な粉砕法(ブレークダウン法)で得ることは一般に難しい。この方法で粒子をナノメートルサイズにまで粉砕するには多大な時間とエネルギーを要し、生産効率が低く、また用いうる物質も限定されてしまうからである。また粉砕法において強すぎるエネルギーをかけた場合には過分散と呼ばれる悪影響、例えば再凝集による増粘などの現象が起こることが知られている。
【0006】
これに対し粉砕によらない方法として、ビルドアップ法により顔料微粒子を得ることが検討されている。例えば、有機顔料の粗製物をアルカリを用いて有機溶媒に溶解して溶液とし、この溶液を分散剤や界面活性剤の存在下で水と、フラスコ等の槽中で、混合して微粒子分散物を得る手法が開示されている(特許文献1、2参照)。この手法により粉砕操作を経ることなく顔料微粒子の分散物を得ることができる。さらに、マイクロリアクターを用い、有機顔料を溶解させたアルカリ性もしく酸性の溶液と水性媒体との少なくとも一方に重合性化合物を含有させ、これら両者を混合して顔料微粒子を析出させた後、前記重合性化合物を重合する顔料分散液の製造方法が開発された。これにより、小粒径かつ単分散性の良好な分散液が得られるとされている(特許文献3参照)。
また、良溶媒に溶解した有機材料の溶液と、該良溶媒と相溶しかつ前記有機材料に対して貧溶媒となる溶媒と、高分子分散剤を含有させた溶液との少なくとも3種同時もしくは逐次に混合し、その混合液中に前記有機材料を粒子として生成させる有機粒子の製造方法がある(特許文献4参照)。しかし、ここでの液体混合は、槽中での撹拌混合であり、微粒子析出条件の精密な制御は難しい。
【0007】
しかし上記特許文献1〜4においては、いずれも分散剤等を有機顔料を溶解した有機溶媒溶液及び水性媒体のいずれかに溶解させる。そのため、分散剤等を溶解させる溶媒を自由に選択することができない。すなわち、有機顔料の溶解性やその微粒子の析出性等を考慮して溶媒が選定されるため、分散剤等の溶解性の点で必ずしも好ましい溶媒の種類とはならない。例えば、アルカリの存在下で有機顔料溶液を溶解させる場合には、アルカリに対して不安定な分散剤等を有する化合物を用いることは難しい。特にアルカリとして金属水酸化物や金属アルコキシドなどの強塩基を用いる条件では、分散剤等が分解したり変性したりすることがある。一方、水性媒体に分散剤を溶解させる方法においては、通常使用可能な分散剤等が水に溶解性を有するものに限られる。そして、顔料と分散剤等とが共存しない状態から顔料微粒子を析出させ、水性媒体中の分散剤等と混合接触させるものであり、原理的に分散性の付与の点で不利な手法といえる。その結果、粒径が制御できずに粗大化する、あるいは分散剤が多量に必要になることがあった。
【0008】
一方、顔料溶液と高分子分散剤溶液を別に調製し、両液の混合工程とそれらの混合液と貧溶媒である水との混合工程の連続操作をマイクロリアクター装置で行う顔料微粒子の製造方法が開示されている(特許文献5参照)。しかしこの方法は高分子化合物であるブロック共重合体を分散剤として用いる方法であるため多量の分散剤が必要になる。またアルカリ等に対して不安定な分散剤の使用については記載されていない。
【0009】
【特許文献1】特開2003−113341号公報
【特許文献2】特開2004−43776号公報
【特許文献3】特開2007−39643号公報
【特許文献4】国際公開WO/2007/013599号パンフレット
【特許文献5】特開2006−104448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、粒径が小さく粒径分布が狭い有機顔料微粒子を含有し、その分散安定性と低粘度とを両立した分散物の効率的な製造方法の提供を目的とする。また、有機顔料微粒子を分散させる界面活性剤の量を低減することができ、さらには高濃度のアルカリに対して不安定なものであっても使用可能とし、適用しうる界面活性剤の種類を豊富化することができる有機顔料微粒子分散物の製造方法、これにより得られる有機顔料微粒子を用いたインクジェット記録用インク及び塗料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記の目的は以下の手段により達成された。
(1)有機顔料を有機溶媒に溶解した有機顔料溶液と、分子量が1,000未満の界面活性剤を有機溶媒に溶解した界面活性剤溶液とを流路内で流通合流させて合流液とし、その合流液と水性媒体とを流路内でさらに流通合流させて、前記有機顔料の微粒子を生成させる工程を含むことを特徴とする有機顔料微粒子分散物の製造方法。
(2)前記有機顔料溶液が、前記有機顔料をアルカリの存在下で溶解した溶液であることを特徴とする(1)に記載の有機顔料分散物の製造方法。
(3)前記有機顔料溶液と界面活性剤溶液との合流液と前記水性媒体とを合流させる工程を、等価直径が2mm以下の流路内で行うことを特徴とする(1)または(2)に記載の有機顔料分散物の製造方法。
(4)前記有機顔料溶液と界面活性剤溶液とを合流させる工程およびその合流液と前記水性媒体とを合流させる工程をともに等価直径が2mm以下の流路内で行うことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の有機顔料分散物の製造方法。
(5)前記有機顔料溶液と界面活性剤溶液とを流路内で合流させてから、その合流液と前記水性媒体とを合流させるまでの間、前記有機顔料溶液と界面活性剤溶液とを層流状態で流通させることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の有機顔料分散物の製造方法。
(6)層流状態で流通している前記有機顔料溶液と界面活性剤溶液との合流液と、前記水性媒体との合流を、前記界面活性剤溶液が前記有機顔料溶液と水性媒体との間に介在するように行うことを特徴とする(5)に記載の有機顔料分散物の製造方法。
(7)分散物中の前記界面活性剤の質量を、前記有機顔料の質量に対して0.5倍以下とすることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の有機顔料分散物の製造方法。
(8)前記界面活性剤として、アルカリに対して分解性の化合物を用いることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の有機顔料分散物の製造方法。
(9)前記有機顔料微粒子の体積平均粒径(Mv)が10nm以上50nm以下である(1)〜(8)のいずれか1項に記載の有機顔料分散物の製造方法。
(10)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の製造方法で得られた分散物中の前記有機顔料微粒子を含有するインクジェット記録用インク。
(11)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の製造方法で得られた分散物中の前記有機顔料微粒子を含有する塗料。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、少量の界面活性剤で粒径が小さく粒径分布が狭い有機顔料微粒子を含有する分散物を得ることができ、その分散物の分散安定化と低粘度化とを両立して実現することができる。また本発明によれば、使用可能な界面活性剤の種類の範囲を広げ、例えば顔料溶液中で高濃度のアルカリと共存することにより変性や分解してしまうような不安定な分散剤の使用を可能にする。また、本発明の製造方法によれば上記の優れた特性を有する有機顔料微粒子を効率的かつ純度良く得ることができ、これを用いたインクジェット記録用インク及び塗料は吐出性ないし塗装性がよく、鮮やかで輝きのある良好な色みを呈する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について、その好ましい実施態様に基づき詳細に説明する。
【0014】
本発明の有機顔料分散物の製造方法は、有機顔料を有機溶媒に溶解した有機顔料溶液と、分子量が1000未満の界面活性剤を有機溶媒に溶解した界面活性剤溶液とを流路内に流通させながら合流させ、さらにその液と水性媒体とを流路内に流通させながら合流させて、前記有機顔料の微粒子を生成させる工程を含む。
【0015】
本発明の製造方法で得られる有機顔料微粒子の体積平均粒径は100nm以下であることが好ましく、70nm以下であることがより好ましく、10nm以上50nm以下であることが特に好ましい。単分散性については、その指標である体積平均粒径(Mv)を個数平均粒径(Mn)で除した値(Mv/Mn)を用い、その値が1.8以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。なお、本発明において、顔料微粒子の平均粒径(Mv,Mn)及び単分散度(Mv/Mn)は特に断らない限り日機装(株)社製のナノトラックUPA−EX150(商品名)を用いて蒸留水で顔料濃度0.2質量%に希釈して室温(25℃付近)にて測定した値をいう。
【0016】
なお本発明方法において目的とする「分散物」とは、微粒子を媒体に分散させた組成物をいい、その形態は特に限定されず、液状の組成物(分散液)、ペースト状の組成物、及び固体状の組成物を含む意味に用いる。
【0017】
本発明の製造方法により得られる有機顔料微粒子分散物において、有機顔料微粒子の含有率は特に限定されないが、分散物中0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、0.5質量%〜25質量%であることがより好ましい。
【0018】
本発明に用いられる有機顔料は、色相的に限定されるものではなく、マゼンタ顔料、イエロー顔料、またはシアン顔料であることができる。詳しくは、例えば、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラキノン、アントアントロン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合、ジスアゾ、アゾ、インダントロン、フタロシアニン、トリアリールカルボニウム、ジオキサジン、アミノアントラキノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロンまたはイソビオラントロン系顔料またはそれらの混合物などのマゼンタ顔料、イエロー顔料、またはシアン顔料である。
【0019】
更に詳しくは、例えば、C.I.ピグメントレッド190(C.I.番号71140)、C.I.ピグメントレッド224(C.I.番号71127)、C.I.ピグメントバイオレット29(C.I.番号71129)等のペリレン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ43(C.I.番号71105)、もしくはC.I.ピグメントレッド194(C.I.番号71100)等のペリノン系顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(C.I.番号73900)、C.I.ピグメントバイオレット42、C.I.ピグメントレッド122(C.I.番号73915)、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド202(C.I.番号73907)、C.I.ピグメントレッド207(C.I.番号73900、73906)、もしくはC.I.ピグメントレッド209(C.I.番号73905)のキナクリドン系顔料、C.I.ピグメントレッド206(C.I.番号73900/73920)、C.I.ピグメントオレンジ48(C.I.番号73900/73920)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ49(C.I.番号73900/73920)等のキナクリドンキノン系顔料、C.I.ピグメントイエロー147(C.I.番号60645)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド168(C.I.番号59300)等のアントアントロン系顔料、C.I.ピグメントブラウン25(C.I.番号12510)、C.I.ピグメントバイオレット32(C.I.番号12517)、C.I.ピグメントイエロー180(C.I.番号21290)、C.I.ピグメントイエロー181(C.I.番号11777)、C.I.ピグメントオレンジ62(C.I.番号11775)、もしくはC.I.ピグメントレッド185(C.I.番号12516)等のベンズイミダゾロン系顔料、C.I.ピグメントイエロー93(C.I.番号20710)、C.I.ピグメントイエロー94(C.I.番号20038)、C.I.ピグメントイエロー95(C.I.番号20034)、C.I.ピグメントイエロー128(C.I.番号20037)、C.I.ピグメントイエロー166(C.I.番号20035)、C.I.ピグメントオレンジ34(C.I.番号21115)、C.I.ピグメントオレンジ13(C.I.番号21110)、C.I.ピグメントオレンジ31(C.I.番号20050)、C.I.ピグメントレッド144(C.I.番号20735)、C.I.ピグメントレッド166(C.I.番号20730)、C.I.ピグメントレッド220(C.I.番号20055)、C.I.ピグメントレッド221(C.I.番号20065)、C.I.ピグメントレッド242(C.I.番号20067)、C.I.ピグメントレッド248、C.I.ピグメントレッド262、もしくはC.I.ピグメントブラウン23(C.I.番号20060)等のジスアゾ縮合系顔料、C.I.ピグメントイエロー13(C.I.番号21100)、C.I.ピグメントイエロー83(C.I.番号21108)、もしくはC.I.ピグメントイエロー188(C.I.番号21094)等のジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド187(C.I.番号12486)、C.I.ピグメントレッド170(C.I.番号12475)、C.I.ピグメントイエロー74(C.I.番号11714)、C.I.ピグメントレッド48(C.I.番号15865)、C.I.ピグメントレッド53(C.I.番号15585)、C.I.ピグメントオレンジ64(C.I.番号12760)、もしくはC.I.ピグメントレッド247(C.I.番号15915)等のアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー60(C.I.番号69800)等のインダントロン系顔料、C.I.ピグメントグリーン7(C.I.番号74260)、C.I.ピグメントグリーン36(C.I.番号74265)、ピグメントグリーン37(C.I.番号74255)、ピグメントブルー16(C.I.番号74100)、C.I.ピグメントブルー75(C.I.番号74160:2)、もしくは15(C.I.番号74160)等のフタロシアニン系顔料、C.I.ピグメントブルー56(C.I.番号42800)、もしくはC.I.ピグメントブルー61(C.I.番号42765:1)等のトリアリールカルボニウム系顔料、C.I.ピグメントバイオレット23(C.I.番号51319)、もしくはC.I.ピグメントバイオレット37(C.I.番号51345)等のジオキサジン系顔料、C.I.ピグメントレッド177(C.I.番号65300)等のアミノアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド254(C.I.番号56110)、C.I.ピグメントレッド255(C.I.番号561050)、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド272(C.I.番号561150)、C.I.ピグメントオレンジ71、もしくはC.I.ピグメントオレンジ73等のジケトピロロピロール系顔料、C.I.ピグメントレッド88(C.I.番号73312)等のチオインジゴ系顔料、C.I.ピグメントイエロー139(C.I.番号56298)、C.I.ピグメントオレンジ66(C.I.番号48210)等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントイエロー109(C.I.番号56284)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ61(C.I.番号11295)等のイソインドリノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ40(C.I.番号59700)、もしくはC.I.ピグメントレッド216(C.I.番号59710)等のピラントロン系顔料、またはC.I.ピグメントバイオレット31(60010)等のイソビオラントロン系顔料である。
【0020】
好ましい顔料は、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ジスアゾ縮合顔料、またはフタロシアニン系顔料であり、特に好ましくはキナクリドン、ジスアゾ縮合顔料、またはフタロシアニン系顔料である。
【0021】
本発明の有機顔料分散物の製造方法において、有機顔料溶液は均一に溶解した溶液として流路に導入することが好ましい。顔料粒子や固体のアルカリや塩を含む液を投入すると粒子サイズが大きくなったり、粒子分布が広い顔料微粒子になったりし、流路を閉塞する場合がある。本発明において、「均一に溶解」とは、可視光線下で観測した場合にほとんど濁りが観測されない状態をさし、その溶液は1μm以下のミクロフィルターを通して得られる溶液、または1μmのフィルターを通した場合に濾過される物を含まない溶液を均一に溶解した溶液をいう。
【0022】
上記有機顔料溶液を調製する際に用いる有機顔料を溶解する有機溶媒(以下、この有機顔料の溶解に用いる有機溶媒を「良溶媒」ということがある。)は特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、もしくはトリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール化合物溶媒、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、もしくはトリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級モノアルキルエーテル化合物溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、もしくはトリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)等のポリエーテル化合物溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、尿素、もしくはテトラメチル尿素等のアミド化合物溶媒、スルホラン、ジメチルスルホキシド、もしくは3−スルホレン等の含イオウ化合物溶媒、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物溶媒、酢酸、マレイン酸、ドコサヘキサエン酸、トリクロロ酢酸、もしくはトリフルオロ酢酸等のカルボン酸化合物溶媒、メタンスルホン酸、もしくはトリフルオロスルホン酸等のスルホン酸化合物溶媒が挙げられる。これらの溶媒を2種以上混合して用いてもよい。また溶解させるために適宜酸、アルカリなどを加えても良い。使用される良溶媒の量は、有機顔料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、好ましくは有機顔料に対して質量比で10〜500倍量であり、好ましくは20〜100倍量である。なかでも良溶媒としては、アミド化合物溶媒または含イオウ化合物溶媒が好ましく、含イオウ化合物溶媒がより好ましく、ジメチルスルホキシド(DMSO)が特に好ましい。
【0023】
また有機顔料を溶解させるために、良溶媒にアルカリあるいは酸を添加することが好ましい。酸性で溶解するかアルカリ性で溶解するかは、顔料がどちらの条件でより均一に溶解するかで選択することができる。一般に分子内にアルカリ性で解離可能な基を有する顔料の場合はアルカリ性を、アルカリ性で解離する基が存在せず、プロトンが付加しやすい窒素原子を分子内に多く有するときは酸性を用いることができる。例えば、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ジスアゾ縮合系顔料はアルカリ性で、フタロシアニン系顔料は酸性でより均一に溶解することができる。本製造方法においては可能な限りアルカリを加えて溶解させることが好ましい。
【0024】
アルカリ性で溶解させる場合に用いられる塩基はとくに限定されないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、もしくは水酸化バリウムなどの無機塩基が挙げられ、またはトリアルキルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、金属アルコキシド(NaOCH、KOC)、テトラアルキルアンモニウムアルコキシド(テトラメチルアンモニウムメトキシドなど)、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなど)などの有機塩基が挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、金属アルコキシド、テトラアルキルアンモニウムアルコキシド、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドから1種以上選ばれることが好ましい。
【0025】
使用される塩基の量は、顔料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、無機塩基の場合、好ましくは顔料に対して1.0〜30モル当量であり、より好ましくは2.0〜25モル当量であり、特に好ましくは3.0〜20モル当量である。有機塩基の場合は好ましくは顔料に対して0.4〜100モル当量であり、より好ましくは1.0〜20モル当量であり、さらに好ましくは1.0〜10モル当量である。添加される塩基の顔料溶液に対する濃度も特に限定されないが、0.01モル/Lから10モル/Lであることが好ましく、0.1モル/Lから2モル/Lであることがより好ましい。
【0026】
酸性で溶解させる場合に用いられる酸は、硫酸、塩酸、もしくは燐酸などの無機酸が挙げられ、または酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、もしくはトリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸が挙げられるが、好ましくは無機酸でありより好ましくは硫酸である。
【0027】
使用される酸の量は、顔料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、塩基に比べて過剰量用いられる場合が多い。無機酸および有機酸の場合を問わず、好ましくは顔料に対して3〜500モル当量であり、より好ましくは10〜500モル当量であり、特に好ましくは10〜100モル当量である。
【0028】
本発明の製造方法において顔料溶液における有機顔料の濃度は特に限定されないが、0.5〜20質量%であることが好ましく、1.0〜10質量%がより好ましい。
【0029】
本発明において水性媒体は顔料に対する貧溶媒の役割を果たすものであり、水単独または水と水に可溶な有機溶媒との混合溶媒をいう。水性媒体に用いられる有機溶媒は、例えば顔料や界面活性剤を均一に溶解するために水のみでは不十分な場合、流路中を流通するのに必要な粘性を得るのに水のみでは不十分な場合、層流の形成に必要な場合などに用いることが好ましい。水性媒体には水溶性の無機塩や酸、アルカリなどが含まれていてもよい。pHは10以下であることが好ましく、3〜9であることがより好ましく、6〜8であることが特に好ましい。水性媒体中に含まれる有機溶媒は限定されず、例えばメタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級モノアルキルエーテル系溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)等のポリエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、アセトン、2−ブタノンなどのケトン類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、酢酸などが挙げられ、アルコール系溶媒、ジメチルスルホキシドが好ましい。これらの溶媒を2種以上混合して用いてもよい。
【0030】
本発明の有機顔料分散物の製造方法においては、分子量が1,000未満の界面活性剤を1種以上溶解した溶液を用いる。この界面活性剤の種類はとくに限定されず、アニオン性、カチオン性、ノニオン性のものがいずれも使用できる。本発明においてはアニオン性界面活性剤を1種以上使用することが好ましい。界面活性剤は(1)析出した顔料表面に素早く吸着して、微細な顔料粒子を形成し、かつ(2)これらの粒子が再び凝集することを防ぐ作用を有するものである。高分子分散剤などと比較して低分子の界面活性剤は運動性が高く、吸着の速さの観点でビルドアップ合成法に好適である。また、本発明の製造方法においては、上記界面活性剤とは異なる高分子分散剤もしくは顔料性分散剤を適宜組み合わせて用いてもよい。顔料の分散に用いる分散剤に関しては、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」(化学情報協会、2001年12月発行)の29〜46頁に詳しく記載されている。
【0031】
アニオン性界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸塩、N−アシル−N−アルキルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。
このうちエステル構造を有するジアルキルスルホコハク酸塩(例えばジ(2−エチルヘキシル)スルホコハクサン ナトリウムなど)が特に好ましい。これらアニオン性界面活性剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
カチオン性界面活性剤には、四級アンモニウム塩、アルコキシル化ポリアミン、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、脂肪族アミン、脂肪族アミンと脂肪族アルコールから誘導されるジアミンおよびポリアミン、脂肪酸から誘導されるイミダゾリンおよびこれらのカチオン性物質の塩が含まれる。これらカチオン性界面活性剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
両イオン性界面活性剤は、前記アニオン性界面活性剤が分子内に有するアニオン基部分とカチオン性界面活性剤が分子内に有するカチオン基部分を共に分子内に有する界面活性剤である。
【0034】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが好ましい。これらノニオン性界面活性剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
本発明においては、なかでも界面活性剤として、アニオン性界面活性剤を用いることが好ましく、ジアルキルスルホコハク酸塩、N−アシル−N−アルキルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩を用いることがより好ましい。上記界面活性剤の分子量(混合物である場合は質量平均分子量)は上述のとおり1000未満であるが、100以上〜1000未満であることが好ましく、200以上〜800未満であることがより好ましい。
【0036】
本発明の製造方法においては、前記界面活性剤としてアルカリの作用で加水分解されうる化合物を好適に用いることができる。これを界面活性剤溶液に含有させ、顔料溶液に含有させないことで界面活性剤の分散作用を損わずに発揮されることができ好ましい。とくにジアルキルスルホコハク酸塩を始めとするエステル基を有する界面活性剤は、コスト面で有利であるにもかかわらず、顔料をアルカリに溶解させる工程を含むビルドアップ顔料粒子製造には実質上使用することができなかったが、本発明の手法によれば使用が可能である。
【0037】
上記界面活性剤と組み合わせて、高分子分散剤を使用してもよい。高分子分散剤は、顔料溶液、界面活性剤溶液、水性媒体のいずれに添加してもよく、顔料粒子形成後の分散液に添加してもよい。上記界面活性剤と組み合わせて用いることができる高分子分散剤としては、具体的には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール−部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール−部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリビニル硫酸塩、ポリ(4−ビニルピリジン)塩、ポリアミド、ポリアリルアミン塩、縮合ナフタレンスルホン酸塩、スチレン−アクリル酸塩共重合物、スチレン−メタクリル酸塩共重合物、アクリル酸エステル−アクリル酸塩共重合物、アクリル酸エステル−メタクリル酸塩共重合物、メタクリル酸エステル−アクリル酸塩共重合物、メタクリル酸エステル−メタクリル酸塩共重合物、スチレン−イタコン酸塩共重合物、イタコン酸エステル−イタコン酸塩共重合物、ビニルナフタレン−アクリル酸塩共重合物、ビニルナフタレン−メタクリル酸塩共重合物、ビニルナフタレン−イタコン酸塩共重合物、セルロース誘導体、澱粉誘導体などが挙げられる。その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、トンガントゴム、リグニンスルホン酸塩などの天然高分子類も使用できる。
ただし、高分子分散剤は分散剤使用量を増加させるため用いないことが好ましい。
本発明において高分子分散剤の質量平均分子量は1000〜100万であり、3000〜30万であることが好ましく、1万〜20万であることがより好ましい。なお、本発明において高分子化合物の分子量はゲルパーシエーションクロマトグラフィー(キャリア:テトラヒドロフラン)により求めたポリスチレン換算の質量平均分子量をいう。
【0038】
上記界面活性剤と組み合わせて、顔料性分散剤を使用しても良い。顔料性分散剤は、顔料溶液、界面活性剤溶液、水性媒体のいずれに添加してもよく、顔料粒子形成後の分散液に添加してもよい。顔料性分散剤とは、親物質としての有機顔料から誘導され、その親構造を化学修飾することで製造される顔料性分散剤と定義する。例えば、糖含有顔料分散剤、ピペリジル含有顔料分散剤、ナフタレンまたはペリレン誘導顔料分散剤、メチレン基を介して顔料親構造に連結された官能基を有する顔料分散剤、ポリマーで化学修飾された顔料親構造、スルホン酸基を有する顔料分散剤、スルホンアミド基を有する顔料分散剤、エーテル基を有する顔料分散剤、あるいはカルボン酸基、カルボン酸エステル基またはカルボキサミド基を有する顔料分散剤などがある。
【0039】
界面活性剤溶液において、界面活性剤を溶解する溶媒は、有機溶媒を主成分とする媒体であることが好ましく、水溶性有機溶媒を主成分とすることがより好ましい。この界面活性剤溶液用有機溶媒は特に限定されないが、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、アルコール類(炭素数4以下が好ましく、例えばメタノール、エタノール)、アセトン、テトラヒドロフランが挙げられ、中でもジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンが好ましい。
【0040】
本発明の製造方法において、界面活性剤溶液にはアルカリを含有させないことが好ましい。界面活性剤溶液における界面活性剤の濃度は特に限定されないが、本発明の製造方法で得られる分散物中の前記界面活性剤の質量が、前記有機顔料の質量に対して0.5倍以下となるようにすることが好ましく、0.1〜0.5倍となるようにすることが好ましく、0.2〜0.5倍がより好ましい。具体的な界面活性剤溶液の界面活性剤濃度としては、例えば5〜50質量%とすることができる。
【0041】
顔料溶液及び水性媒体に上記界面活性剤を含有させてもよいが、上述のように顔料溶液には強塩基等が添加されているため界面活性剤を含有させないことが好ましい。顔料溶液に該強アルカリ環境下でも変性等しにくい分散剤ないし界面活性剤を含有させ、界面活性剤溶液にそれ以外の界面活性剤を含有させ、適宜その特性や制約に応じた複数の分散剤ないし界面活性剤を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
本発明では顔料微粒子分散物を得た後に、分散液内で重合性化合物を重合して重合物を生成させてもよい。この手法により顔料微粒子を一様にポリマーで覆い分散安定性や長期保存安定性が向上する効果が期待できる。重合性化合物は水溶性、疎水性のいずれも用いることができる。重合性化合物は顔料溶液、分散剤溶液、水性媒体のいずれに含有させてもよく、顔料微粒子を生成させた後に添加してもよい。
【0043】
分散物中で重合物を得る手法としては、炭素二重結合(C=C)を有する化合物をラジカル重合させることが好ましい。具体的な重合性化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ベンジル)、ビニル芳香族単量体(例えば、スチレン、o−メチルスチレン)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等、およびその誘導体)、N−ビニルアミド類(例えばN−ビニルピロリドン)、(メタ)アクリル酸アミド類、アルキル置換(メタ)アクリルアミド類、メタクリルアミド類、N−置換マレイミド類、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル)、無水マレイン酸、(メタ)アクリロニトリル、メチルビニルケトン等が使用できる。中でも高分子分散剤として有効なポリビニルピロリドンを生成するN−ビニルピロリドンが特に好ましく用いられる。また、架橋により粒子をより強固に覆うために多官能性の重合性化合物を用いることもでき、具体例としてはエチレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル類などが挙げられる。
【0044】
重合性化合物のうち、その分子に親疎水性の機能を分離して持たせたものは重合性界面活性剤、反応性界面活性剤、あるいは反応性乳化剤とよばれ、本願発明の有機顔料分散液の製造方法に好ましく用いることができる。例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、(メタ)アクリロイル基などのα,β−エチレン性不飽和基とスルホン酸基またはその塩などのイオン解離可能な基やアルキレンオキシ基などの親水性基を有しているものが挙げられる。これらは一般に乳化重合に用いられ、分子内にラジカル重合可能な不飽和結合を少なくとも1つ以上有するアニオン性、またはノニオン性の界面活性剤である。
【0045】
本発明の有機顔料分散物の製造方法において、重合性界面活性剤は、単独で用いても、異なるものを併用しても、または重合性界面活性剤以外の重合性化合物と共に用いてもよい。好ましい重合性界面活性剤としては、例えば、花王(株)社、三洋化成(株)社、第一工業製薬(株)社、旭電化工業(株)社、日本乳化剤(株)社、日本油脂(株)社等より市販されているものが挙げられ、「微粒子・粉体の最先端技術、第1章3反応乳化剤を用いる微粒子設計、pp23−31」、2000年(株)シーエムシーに記載されたものなどが挙げられる。
【0046】
重合性界面活性剤の具体例を以下に記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
【化1】

【0048】
本発明の有機顔料分散物の製造方法に用いられる重合性化合物の重合方法は、有機顔料分散液中で重合できる方法であれば特に限定されないが、重合開始剤を用いてラジカルを発生させて重合させる方法が好ましい。重合を開始するきっかけは種々あるが、熱、光、超音波、マイクロ波等を用いることが好ましい。重合開始剤としては、水溶性、または油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾ系化合物等を使用することができる。具体的には、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキシド、2,2‘−アゾビスイソブチロにトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2‘−アゾビス(2−N−ベンジルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−N−(2−ヒドロキシエチル)アミジノプロパン]二塩酸塩等を挙げることができ、例えば、和光純薬工業(株)社のホームページ(www.wako−chem.co.jp)には、各種水溶性アゾ重合開始剤、油溶性アゾ重合開始剤、高分子アゾ重合開始剤が10時間半減期温度とその構造式と共に記載され入手可能である。重合開始剤の添加量は特に限定されないが、全モノマー成分に対して0.1〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは2〜10重量%である。
【0049】
重合工程を行う時期は特に限定されず、顔料微粒子を得た後の流路内で済ませる、捕集した分散液内で行う、精製後や濃縮後に行うなど適宜選択することができるが、操作が簡便であり重合条件が一定にできるため分子量などが均一で安定した重合物が得られやすいため流路内で済ませる方法が好ましい。
【0050】
重合性化合物の含有量は、有機微粒子の均一分散性および経時安定性(保存安定性)をより一層向上させるために、有機顔料100質量部に対して0.1〜1000質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜500質量部の範囲であり、特に好ましくは10〜250質量部の範囲である。この量が少なすぎるとポリマー処理後の有機顔料微粒子の分散安定性の向上が見られない場合がある。重合性化合物の他に界面活性剤を含有させるときの含有量は、両者の総量を上記の範囲とすることが好ましい。
【0051】
本発明の製造方法においては、顔料溶液と界面活性剤溶液とを合流させる工程(以下、前段の合流工程ということがある。)、さらにその合流液と水性媒体とを合流させる工程(以下、後段の合流工程ということがある。)を有する。このとき、さらに別の合流工程を組み合わせて、3回以上合流させる実施態様としてもよい。上記前段の合流と後段の合流との間隔は適宜調節すればよいが、層流維持、および用いる界面活性剤の種類によっては分解を抑制するために両者の間隔が5秒以内となるように逐次合流することが好ましく、1秒以内となるようにすることがより好ましい。
本発明の製造方法においては、少なくとも上記後段の合流にマイクロリアクターを用いることが好ましく、前段、後段ともにマイクロリアクターを用いて行うことが好ましい。マイクロリアクターとはマイクロ反応場を形成しうる細い流路を有するリアクターである。とくに合流部位の直後にあたる流路の等価直径が2mm以下であることが好ましく、80μm以上1mm以下であることがより好ましい。
【0052】
等価直径(equivalent diameter)は相当(直)径、とも呼ばれ、機械工学の分野で用いられる用語である。任意断面形状の配管(本発明では流路)に対し等価な円管を想定するとき、その等価円管の直径を等価直径という。等価直径(deq)は、A:配管の断面積、p:配管のぬれぶち長さ(周長)を用いて、deq=4A/pと定義される。円管に適用した場合、この等価直径は円管直径に一致する。
【0053】
管の中に水を流し、その中心軸状に細い管を挿入し着色した液を注入すると、水の流速が遅い間は、着色液は一本の線となって流れ、水は管壁に平行にまっすぐに流れる。しかし、流速を上げ、ある一定の流速に達すると急に水流の中に乱れが生じ、着色液は水流と混じって全体が着色した流れになる。前者の流れを層流(laminar flow)、後者を乱流(turbulent flow)という。
流れが層流になるか乱流になるかは流れの様子を示す無次元数であるレイノルズ数(Reynolds number)が、ある臨界値以下であるかによって決まる。レイノルズ数が小さいほど層流を形成しやすい。管内の流れのレイノルズ数Reは次式で表される。
Re=D<υ>ρ/μ
Dは管の等価直径、<υ>は断面平均速度、ρは流体の密度、μは流体の粘度を表す。この式からわかるように等価直径が小さいほどレイノルズ数は小さくなるので、μmサイズの等価直径の場合は安定な層流を形成しやすくなる。また、密度や粘度の液物性もレイノルズ数に影響し、密度が小さく、粘度が大きいほどレイノルズ数は小さくなるので層流を形成しやすいことがわかる。
臨界値を示すレイノルズ数を臨界レイノルズ数(critical Reynolds number)と呼ぶ。臨界レイノルズ数は必ずしも一定とはいえないが、凡そ次の値が基準となる。
Re<2300 層流
Re>3000 乱流
3000>Re>2300 過渡状態
【0054】
本発明の製造方法において、有機顔料溶液と界面活性剤との合流(前段の合流)後の流通を層流下で行い、前記両者の合流液と水性媒体との合流(後段の合流)後の流通を層流下で行うことが好ましい。それぞれの流通過程におけるレイノルズ数は特に限定されないが、上記前段合流後で後段合流までの流通のレイノルズ数を100〜3000とすることが好ましく、300〜2300とすることがより好ましい。後段合流後の流通のレイノルズ数を100〜3000とすることが好ましく、300〜2300とすることがより好ましい。
【0055】
本発明の製造方法に用いられるリアクターの種類、形状は特に限定されず少なくとも連続混合が可能なあらゆる装置が利用できる。連続混合が可能な1個の装置で行ってもよく、2個以上の装置を連結して使用してもよい。以下、本発明の製造方法に用いることができる好ましい製造装置(マイクロリアクター)の実施態様について説明する。
【0056】
図1−1は本発明の製造方法に用いることのできる一実施形態としての製造装置(連続混合可能な流路を有するマイクロリアクター)を模式的に示す平面図であり、図1−2はそのI−I線断面の断面図である。
本実施形態のマイクロリアクター10において、流路の長さ方向に直交する断面の形は使用される微細加工技術により異なるが、台形または矩形に近い形である。導入口11及び導入口12からポンプなどにより注入された液体はそれぞれ導入流路15を流れる。より詳しくいうと、導入口11から導入されたi液が導入流路15aを経由し、導入口12から導入されたii液が導入流路15bを経由して、両液が流体合流点15cにて接触合流し、さらに流路15dを流れ排出口(捕集口)14に至る。このとき流路の幅・深さを調節して流路の等価直径をマイクロメートルサイズにし、かつ流体の流速、粘度、密度から算出されるレイノルズ数を適当な値とすることにより、接触したi−ii合流液を流路15d中で安定な層流として流通させることが好ましい。
【0057】
本実施形態のマイクロリアクター10においては、さらに導入口13からポンプなどにより注入されたiii液が導入流路15eを流れ、流体合流点15fにて流路15dを流れるi−ii合流液と接触し、i−ii−iii液の合流液となり流路15gを流れる。流体のレイノルズ数が適当な値となるよう調節することにより、接触した3液を流路15g中で安定な層流として流通させることができる。すなわち、i−ii−iii液の3層の層流とすることができる。
【0058】
流路15d、15gを層流として流れる合流液においては、層流間の界面における分子拡散により互いの層流に含まれる溶質の混合または反応が行われる。このことを考慮し流路長Aの長さ、すなわち合流点15cから15fの距離を変えることにより、導入口11、12から注入されるi液とii液とに含まれる流体合流点15fにおける溶質の混合度を所望のものとすることができる。
3つの導入口11,12,13から導入される液体に拡散の極めて遅い溶質が含まれる場合は、流路15d、15g内での層流間での拡散混合があまり起きず、排出口14に達した後に初めて混合する場合もある。注入される3つの液体がフラスコ中で容易に混合するような場合には、流路長Bを長く取れば排出口では液の流れは均一な流れになりうるが、流路長Bが短い時には排出口まで層流が保たれる。
【0059】
本実施形態のマイクロリアクター10において、流路幅、流路深さ、流路長は特に限定されず適宜選択することができるが、流路幅W、流路深さHは80μm以上2mm以下であることが好ましく、100μm以上1mm以下であることがより好ましく、120μm以上600μm以下であることが特に好ましい。
【0060】
本発明の製造方法においては、上記実施態様の装置と異なり、1回の合流を行う装置を複数連結して連続混合する実施態様としてもよい。図2の装置20には、1回合流リアクター21及び1回合流リアクター22の2つを連結し、i液,ii液,iii液を流路25内で混合してiv液をえる実施態様を概念的に示している。なお、以下に使用可能なリアクターの具体的な構成例を挙げるが、本発明はそれらにより限定して解釈されるものではない。
【0061】
図3−1はY字型流路を有する反応装置30の説明図であり、図3−2はそのIII−III線の断面図である。流路の長さ方向に直交する断面の形は使用される微細加工技術により異なるが、台形または矩形に近い形であることが好ましい。このとき流路の等価直径をマイクロメートルサイズとすることが好ましい。導入口31及び導入口32からポンプなどにより注入された溶液は導入流路35を流れる。詳しくは、i液及びii液が導入流路15a及び導入流路35bをそれぞれ経由して流体合流点35cにて接触合流し、好ましくは安定な層流を形成して、反応流路35dを流れる。そして層流として流れる間に層流間の界面における分子拡散により互いの液体に含まれる溶質が混合され、反応が進行しうる。拡散の極めて遅い溶質のときは、層流間での拡散混合が起きず、排出口34に達した後に初めて混合する場合もある。注入される2つの液体がフラスコ中で容易に混合するような場合には、流路長Fを長く取れば排出口では液の流れは均一な流れになりうるが、流路長Fが短い時には排出口まで層流が保たれる。注入される2つの溶液がフラスコ中で混合せず層分離する場合は、2つの液体は層流として流れて排出口34に到達しうる。
【0062】
図4−1は片側に挿通した流路を設けた円筒管型流路を有する反応装置40の説明図であり、図4−2は同装置のIVa−IVa線の断面図であり、図4−3は同装置のIVb−IVb線の断面図である。流路の長さ方向に直交する断面の形は円かそれに近い形であることが好ましい。このとき円筒管の流路直径がマイクロメートルサイズであることが好ましい。導入口41及び導入口42からポンプなどにより注入された液体は導入流路43aと導入流路43bを通じて流体合流点43dにて接触し、好ましくは安定な円筒層流を形成して、反応流路43cを流れる。そして円筒層流として流れる間に層流間の界面における分子拡散により互いの層流に含まれる溶質が混合され、反応が進行しうる。円筒管型流路をもつ本装置は、2液の接触界面を大きく取れること、更に接触界面が装置壁面に接触する部分がないため、固体(結晶)が反応により生成する場合など壁面との接触部分からの結晶成長などがなく、流路を閉塞する可能性が低いのが特徴である。
【0063】
図5−1,5−2に示した装置50においては、導入口51及び52から導入した2液の流れが、流路53a,53b、合流点53d、流路53c、分流点53eを介して、さらに流路53f,53gを通じて、例えば層流のまま出口54,55まで到達させることができる。すなわち、一度合流した液体を、再度装置内で分割できるように改良を加えたものである。図6もまた同様に導入口61及び62から導入した2液を流路63a,63bを経て、合流点63dから流路63cにかけて合流流通させ、分流点63e,流路63f,63gを通じて分割する実施態様の装置60である。これにより、分割された2液がそれぞれ排出口64および65から取り出され捕集される。
これらの装置を用いると反応と分離が同時にできる。また、最終的に2液が混合してしまって反応が進みすぎたり、結晶が粗大化したりすることを避けることができる。一方の液中に選択的に生成物や結晶が存在する場合には、生成物や結晶を2液が混合してしまう場合に比べて高濃度の状態で得ることができる。また、これらの装置を幾つか連結することにより、抽出操作が効率的に行われるなどのメリットがある。
【0064】
図7に示すマイクロリアクター装置70は、液体A(図中、液体をその流れの方向を示す矢印で示している。このことは液体B,Cについても同様である。)を供給する1本の供給流路71の途中から分岐して液体Aを2つに分割できるようにした2本の分割供給流路71A,71Bと、液体Bを供給する分割していない1本の供給流路72と、溶液Aと溶液Bとの反応を行うマイクロ流路73とが、1つの合流領域74で連通するように形成されるものである。また、これら分割供給流路71A,71B、供給流路72、及びマイクロ流路73は、実質的に同一の平面内で合流領域74の周りに90°の等間隔で配置される。即ち、各流路71A,71B,72、73の中心軸(一点鎖線)は合流領域74において十文字状(交差角度α=90°)に交差する。尚、図7では液体Bに比べて供給量を多くできるよう液体Aの供給流路71のみを分割したが、液体Bの供給流路72も複数に分割してもよい。また、合流領域74の周りに配置する各流路71A,71B,72,73の交差角度αは、90°に限らず適宜設定できる。また、供給流路71、72の分割数は、特に限定されるものではないが、数が多すぎてマイクロリアクター装置50の構造が複雑になるときには、分割数を2〜10とすることが好ましく、2〜5とすることがより好ましい。
【0065】
図8は、図7の平面型のマイクロリアクター装置の別の態様であり、供給流路82の中心軸に対して分割供給流路81A,81Bの中心軸の成す交差角度βは図7の90°よりも小さく45°に形成される。また、分割供給流路71A,71Bの中心軸に対してマイクロ流路73の中心軸の成す交差角度αが135°になるように形成される。
【0066】
図9は、図8の平面型のマイクロリアクター装置の更に別の態様であり、液体Bが流れる供給流路92の中心軸に対して液体Aが流れる分割供給流路91A,91Bの中心軸の成す交差角度βは図7の90°よりも大きく135°に形成される。また、分割供給流路91A,91Bの中心軸に対してマイクロ流路93の中心軸の成す交差角度αが45°になるように形成される。供給流路92、分割供給流路91A,91B、及びマイクロ流路93の互いの交差角度α、βは適宜設定できるが、合流された液体Bと液体Aの全ての液体の厚み方向の断面積の総和をS1とし、マイクロ流路93の径方向の断面積をS2としたときに、S1>S2を満足するように交差角度α、βを設定することが好ましい。これにより、液体A,B同士の接触面積の一層の増大と拡散混合距離の一層の縮小を図ることができるので、より瞬時混合が生じ易くなるからである。
【0067】
図10は、立体型のマイクロリアクター装置の一実施態様であり、マイクロリアクター装置100を構成する3つのパーツを分解して模式的に示した分解斜視図である。本実施態様の立体型のマイクロリアクター装置100は、主として、それぞれが円柱状の形状をした供給ブロック101、合流ブロック102、及び反応ブロック103により構成される。そして、マイクロリアクター装置100を組み立てるには、円柱状をしたこれらのブロック101、102、103を、この順番で互いの側面同士を合わせて円柱状になるようにし、例えばこの状態で各ブロックをボルト・ナット等により一体的に締結する。
【0068】
供給ブロック101の合流ブロック102に対向する側面104には、2本の環状溝105、106が同芯状に穿設されており、マイクロリアクター装置100を組み立て状態において、2本の環状溝106、105は液体Bと液体Aとがそれぞれ流れるリング状流路を形成する。そして、供給ブロック101の合流ブロック102に対向しない反対側の側面114から外側環状溝106と内側環状溝105に達する貫通孔108、107がそれぞれ形成される。かかる2本の貫通孔108、107のうち、外側の環状溝106に連通する貫通穴108には、液体Aを供給する供給手段(ポンプ及び連結チューブ等)が連結され、内側環状溝105に連通する貫通孔107には、液体Bを供給する供給手段(ポンプ及び連結チューブ等)が連結される。図10では、外側環状溝106に液体Aを流し、内側環状溝105に液体Bを流すようにしたが、逆にしてもよい。
【0069】
合流ブロック102の反応ブロック103に対向する側面109の中心には円形状の合流部110が形成され、この合流部110から放射状に4本の長尺放射状溝111と4本の短尺放射状溝112が交互に穿設される。これら合流穴110や放射状溝111,112はマイクロリアクター装置100を組み立て状態において、合流領域110となる円形状空間と液体A,Bが流れる放射状流路とを形成する。また、8本の放射状溝111,112のうち、長尺放射状溝111の先端から合流ブロック102の厚み方向にそれぞれ貫通穴115が形成され、これらの貫通穴115は供給ブロック101に形成されている前述の外側環状溝106に連通される。同様に、短尺放射状溝112の先端から合流ブロック102の厚み方向にそれぞれ貫通穴116が形成され、これらの貫通穴116は供給ブロック101に形成されている内側環状溝105に連通される。
【0070】
また、反応ブロック103の中心には、反応ブロック103の厚み方向に合流部110に連通する1本の貫通孔113が形成され、この貫通孔113がマイクロ流路となる。これにより、液体Aは供給ブロック101の貫通孔108から外側環状溝106を経て合流ブロック102の貫通孔115を通り、長尺放射溝111の供給流路を流れる。その4つの分割流が合流部110に至る。一方、液体Bは供給ブロック101の貫通孔107から内側環状溝105を経て合流ブロック102の貫通孔116を通り短尺放射溝112の供給流路を流れる。その4つの分割流が合流部110に至る。合流部110において液体Aの分割流と液体Bの分割流とがそれぞれの運動エネルギーを有して合流した後、90°流れ方向を変えてマイクロ流路113に流入する。
【0071】
本発明の製造方法においては、上述した実施形態の装置を用いて、i及びii液を顔料溶液と界面活性溶液としまず合流混合し、その後iii液として水性媒体を導入して合流混合することが好ましい。顔料溶液と界面活性剤溶液と水性媒体との流速は特に限定されないが、顔料溶液と水性媒体との流速比を1:1〜1:20とすることが好ましく、1:2〜1:10とすることがより好ましい。顔料溶液と界面活性剤溶液との流速比は1:1〜20:1とすることが好ましく、2:1〜10:1とすることがより好ましい。
【0072】
本発明の製造方法において、顔料溶液と界面活性剤溶液と水性媒体とが合流したとき、それらの流通状態は特に限定されない。このとき、層流状態で流通している前記有機顔料溶液と界面活性剤溶液とを合流させた液と、前記水性媒体との合流を、前記界面活性剤溶液が前記有機顔料溶液と水性媒体との間に介在するように行うことが好ましい。この流通形態を、図1に示した装置のXI−XI線断面(矩形断面)として示すと、図11(a)のように概念化して示すことができる。このとき、i液として顔料溶液を導入口11に導入し、ii液を導入口12に導入して合流点15cで合流させ、流路15dを層流として流通させる。その後、導入口13からiii液となる水性媒体が導入され図11(a)のように3液が左からi液,ii液,iii液の順で並流した状態となる。これとは別の実施形態として、例えば、i液とii液とを断面上下において積層される層流として、その側方からiii液を導入すると、図11(b)のような3液の断面流通状態が得られる。
【0073】
本発明の製造方法においては、界面活性剤溶液が前記有機顔料溶液と水性媒体との間に介在流通されるように送液し層流を形成させることが好ましい。これにより結晶が析出する場所に界面活性剤を効果的に配置することができるため粒子形成制御の効率を上げることができ、界面活性剤の量を低減することができる。また、より小さいサイズの粒子が得られ、単分散性が向上するなどの効果を得ることができる。低分子量体である界面活性剤は液中で運動性が高く析出した顔料表面に速やかに吸着することが可能であるため、高分子分散剤などを分散剤とした場合に比べてこの効果が顕著であり、微細で均一な粒子を形成することができる。分散剤は強アルカリ中で分解するものが多く、分散剤をアルカリに溶解した顔料溶液に共存させる方法では選択できる分散剤が限定されていたが、本発明の手法によれば広く選択することができる。また形成される層の形状はとくに限定されず、平面層流であっても円筒層流であってもよい。
【0074】
本発明の製造方法は、得られた分散液を加熱する工程を含んでいてもよい。特に高分子分散剤を用いて微粒子を形成した場合に加熱により粘度の低減や、分散安定性向上などの効果が期待できる。加熱工程は顔料微粒子を得た後の流路内で済ませる、捕集した分散液内で行う、精製後や濃縮後に行うなど適宜選択することができるが、操作が簡便であり加熱条件を一定にすることができるため流路内で済ませる方法が好ましい。
【0075】
有機顔料微粒子分散物を乾燥させることにより有機顔料微粒子のペースト又は固形物とすることができる。乾燥方法は通常の方法によればよく特に限定されないが、例えば、凍結乾燥、減圧留去(エバポレーター)、それらの組み合わせなどの方法で可能である。固形物化ないしは濃縮化したときの有機顔料の含有率は特に限定されないが、5質量%〜90質量%であることが好ましく、20質量%〜80質量%であることがより好ましい。
【0076】
本発明の有機顔料微粒子分散液の製造方法で得られた顔料分散液は、濾過あるいは遠心分離などにより精製、濃縮、分級を行うことができる。顔料の堅牢性等を上げる目的で、紫外線吸収剤や酸化防止剤などを添加してもよい。また用途、目的に応じて香料、防カビ剤、表面張力調整剤、水溶性樹脂、殺菌剤、pH調整剤、尿素などの添加剤を使用してもよい。これらはその添加時期や方法は特に限定されないが、例えば、以下のような4つの態様によって説明すると、そのいずれによっても、または組み合わせて行ってもよい。
(1) 有機顔料を溶解した溶液に添加する。
(2) 水性媒体に添加する。
(3) 有機顔料を溶解した溶液と水性媒体を混合した後に添加する。
(4) 混合後の分散液を濃縮、精製した後に添加する。
【0077】
本発明の有機顔料微粒子は安定性が高いことが好ましく、この安定性を示す指標として保存処理による粒径の変化率で表すことができ、例えば、上述した体積平均粒径Mvの変化率で表すことができる。本発明の有機顔料微粒子は、例えば、加熱保存処理(例えば60〜80℃、50〜300時間の保存処理)したときの変化率が6.0%以下であることが好ましく、5.0%以下であることがより好ましく、4.0%以下であることが特に好ましい。
【0078】
本発明の有機顔料微粒子の分散液は、例えば、好適なインクジェット用インクとすることができる。その方法は、例えば、本発明の有機顔料微粒子の分散液を、遠心分離及び/または限外ろ過により精製、濃縮をおこなう。これに、グリセリン類、グリコール類等のような水溶性高沸点有機溶剤を添加、pHを7から9程度に調整し、さらに表面張力、粘度、防腐等のための添加物を添加することでインクジェットインクの調製が可能である。インクジェットインクとして調製したときに好ましい粘度は、顔料種、濃度により異なるが、一般的に例えば、5質量%の時は、20mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以下であることがより好ましく、特にこのましくは5mPa・s以下である。
その他、前述した、分離、濃縮、液物性の調製などを適宜行って、カラーフィルター等に広く用いることができる。
【0079】
本発明の有機顔料微粒子分散物を用いて、濃縮、樹脂の添加、液物性の調整などの工程を経てその有機顔料微粒子とビヒクル(塗料中の顔料成分を除く液体部分のことで、樹脂成分や水、有機溶剤などの媒体などを指す)とを含有する本発明の塗料とすることができる。熱または光で架橋反応を起こす樹脂を含む、熱硬化性塗料、あるいは光硬化性塗料として用いることが好ましい。
【0080】
本発明はアルカリ分解性や溶解性の問題を回避することにより分散剤の選択肢を広げる効果を有する。このことはインクや塗料などに実用する際の分散剤の種類を多くし、例えば分散安定性などの諸性能のみならず、コストや環境調和性などの観点も考慮にいれた分散剤選択を可能にするものである。
【実施例】
【0081】
(実施例1)
ピグメントイエロー128(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、CROMOPHTAL YELLOW 8GNP(商品名))8g、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液(和光純薬(株)社製)6.3gをジメチルスルホキシド120mLに室温で溶解し、これをi液(顔料溶液)とした。加えられた塩基の顔料溶液に対する濃度は0.27mol/Lと計算される。ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸 ナトリウム(東京化成(株)社製、分子量445)(界面活性剤)3.2gをジメチルスルホキシド20mLに溶解したものをii液(界面活性剤溶液)とした。蒸留水をiii液とした。
【0082】
図1に示す流路を有する石英製マイクロリアクターを用いて顔料微粒子分散物の合成を行った。流路15a、15b、15e、15d、15gの幅(W)は各150μm、流路深さ(H)は各150μm、流路長A、流路長Bはともに5cmとした。導入口11,12、13には長さ1m、等価直径1mmのテフロン(登録商標)チューブをコネクターを用いて接続し、その先にはi液(導入口11)、ii液(導入口12)、iii液(導入口13)をそれぞれ入れたシリンジをつなぎ、ポンプにセットした。この位置関係は流路15gの部分でii液がi液及びiii液の間を流れる配置である(図11(a)参照)。排出口14にもコネクターを用いて長さ1m、等価直径1mmのテフロン(登録商標)チューブを接続した。
【0083】
i液を1.5mL/min、ii液を0.25mL/min、iii液を8mL/minの送液速度にて送り出した。チューブ出口先端よりピグメントイエロー128の分散液が得られたのでこれを捕集した。このときの分散液のpHは12.0であった。i液とii液が合流してからiii液と合流するまでのレイノルズ数、iii液と合流後のレイノルズ数はそれぞれ約120、1000と計算され、層流領域である。
【0084】
この液を限外濾過装置(アドバンテック東洋社製、UHP−62K(商品名)、分画分子量5万)により蒸留水を加えてろ液を排除して体積を一定にしながら精製した後、顔料5.0質量%まで濃縮した。顔料5.0質量%分散液の粘度は 4.8mPa.s、この液の顔料粒子の体積平均粒径Mvは 27.1nmであり、単分散性の指標である体積平均粒径Mv/個数平均粒径Mnの比は1.34であった。顔料粒子の粒径(Mv)及び単分散性(Mv/Mn)は日機装(株)社製のナノトラックUPA−EX150(商品名)にて、蒸留水で顔料濃度0.2質量%に希釈して室温(25℃付近)で測定した。以下の実施例、比較例も同様である。
【0085】
(実施例2)
実施例1で用いたジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムの量を8.0gに変更し、それ以外は実施例1と同様にして顔料5.0質量%分散液を調製し、粘度および粒子径を測定した結果を表1に示した。
【0086】
(実施例3)
実施例1で用いたジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムを、同質量のアクアロンKH−10(商品名、第一工業製薬(株)社製、平均分子量780)56gに変更し、それ以外は実施例1と同様にして顔料5.0質量%分散液を調製し、粘度および粒子径を測定した結果を表1に示した。
【0087】
(実施例4)
実施例1において3種の液を導入する相対位置関係だけを変更した。導入口11にii液、導入口12にi液、導入口13にiii液が導入されるように接続した。すなわち図1に示した装置でいうと流路15gで顔料溶液が中央に配置されるのようにし、それ以外は実施例1と同様にして顔料5.0質量%分散液を調製し、粘度および粒子径を測定した結果を表1に示した。
【0088】
(実施例5)
実施例3において3種の液を導入する相対位置関係だけを変更した。導入口11にii液、導入口12にi液、導入口13にiii液が導入されるように接続した。すなわち図1の流路15gで顔料溶液が中央に配置されるようにし、それ以外は実施例3と同様にして顔料5.0質量%分散液を調製し、粘度および粒子径を測定した結果を表1に示した。
【0089】
(実施例6)
実施例1で用いたものと同じ液組成のi液、ii液、iii液を用い、図2に示した連結形態の流路構成を有する反応装置を用いて分散液の調製を行った。このときリアクター31及び32としては、等価直径500μmを有するY字型の3方ジョイント(東京理化器械(株)社製、型式 JYF−305(商品名))を用いてPY−128の微粒子分散物合成を行った。このとき図2に示すように、1つ目の3方ジョイントの2つの口からi液とii液を導入し、この合流液とiii液を2つ目の3方ジョイントに導入し、残った口から顔料分散液(iv液)を捕集した。接続には等価直径1mmのテフロン(登録商標)チューブとコネクターを用いた。i液、ii液、iii液の流速はそれぞれ3.0ml/min、0.5ml/min、16ml/minとした。このときの合流後のi液、ii液、iii液の流通断面の相対位置関係を明確に把握することは困難であった(流路内で層流を維持していたとしても、例えば図11(a)のように3液が層流をなすこともありうるが、図11(b)のようになることもあり、また時間とともに変化しうる。)。出口から得られた顔料分散液を実施例1と同様に精製、濃縮し、顔料5.0質量%分散液を調製し、粘度および粒子径を測定した結果を表1に示した。
【0090】
(比較例1)
実施例1で用いたi液とii液をあらかじめビーカーで混合したものを顔料溶液(ia液)とし、この液と水性媒体(iii液)を下記の流通反応装置により混合することによりPY−128の微粒子分散液を得た。すなわち、ピグメントイエロー128を8g、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液6.3g、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸 ナトリウム 3.2gをジメチルスルホキシド140mLに溶解したもの溶液を調製し、これをIA液とした。加えられた塩基の顔料溶液に対する濃度は0.23mol/Lと計算される。
【0091】
実施例1で用いた石英製反応装置のかわりに、内径0.5mmを有するY字3方ジョイント(東京理化器械(株)社製、型式 JYF−305(商品名))を用い、3つの入口の2つに長さ1m、等価直径1mmのテフロン(登録商標)チューブをコネクターを用いて接続し、それぞれia液と蒸留水(iii液)を入れたシリンジを繋ぎポンプにセットした。もう1つの口には長さ1.5m、等価直径500μmを有するテフロン(登録商標)チューブを接続し出口とした。ia液を3.5mL/min、iii液を16mL/minの送液速度にて送り出した。得られた分散液を実施例1と同様に処理して顔料5.0質量%分散液を調製し、粘度および粒子径を測定した結果を表1に示した。このとき分散液のpHは 12.5 であった。なお、ia液の調製は、i液とii液の混合開始から送液開始までに4時間が経過しており、20分流しつづけた。
【0092】
(比較例2)
特開2006−104448号公報、段落[0077]に記載の、2−(4−メチルフェニル)エチルビニルエーテル、2−(2−メトキシエチルオキシ)エチルビニルエーテル、4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸エチルをセグメントに有するトリブロック共重合体P1(高分子分散剤、質量平均分子量26,000)を合成した。実施例1で用いたジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムをブロックポリマーP−1 16gに変更した以外は実施例1と同様にして顔料5.0質量%分散液を調製し、粘度および粒子径を測定した結果を表1に示した。
【0093】
(比較例3)
実施例1で用いたジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムをブロックポリマーP−1 3.2gに変更した以外は実施例1と同様にして顔料5.0質量%分散液を調製し、粘度および粒子径を測定した結果を表1に示した。
【0094】
【表1】

(注1)顔料100質量部対する界面活性剤もしくは高分子分散剤の質量部
【0095】
上記表1に示した結果から分かるとおり、比較例の顔料分散物については粒径が大きくなってしまったり(比較例1、3)、粒径を小さく維持できるとしても多量の高分子分散剤を必要とする(比較例2)ことが分かる。これに対し実施例で得た本発明の分散物は、界面活性剤の量が少なくても高い分散安定性を発揮するため分散液の低粘度と分散性を両立することができ(実施例1、2と比較例2、3とを対比参照)、しかもそこに含まれる顔料微粒子の粒子径が小さく、粒子径がそろったものであることが分かる。このとき分散剤溶液(ii液)が介在流通されるようにすることで、さらに顔料微粒子の粒子径を小さいものとして得られることが分かる(実施例1と4,6とを対比、実施例3と5とを対比参照)。
【0096】
(実施例7)
実施例1で用いたi液の成分組成について、顔料を2,9−ジメチルキナクリドン(クラリアント製、HOSTAPERM PINK E(商品名))8gとし、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液(和光純薬(株)社製)18.1g、ジメチルスルホキシド120mLとした。加えられた塩基の顔料溶液に対する濃度は0.78mol/Lと計算される。その他は実施例1と同様にして顔料5.0質量%分散液を調製し、粘度および粒子径を測定した結果を表2に示した。得られた分散液のpHは12.6であった。
【0097】
(実施例8)
実施例7で用いたi液、ii液、iii液を用いて、実施例5に示した3種の液を導入する相対位置関係とし分散液の調製を行った。すなわち図1の装置において導入口11からii液を、導入口12からi液を、導入口13からiii液を導入した。それ以外は実施例7と同様にして顔料5.0質量%分散液を調製し、粘度および粒子径を測定した結果を表2に示した。
【0098】
(比較例4)
実施例7でii液に入れたジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムを、同量のブロック共重合体P−1 に変更し、それ以外は実施例7と同様にして顔料5.0質量%分散液を調製し、粘度および粒子径を測定した結果を表2に示した。
【0099】
(比較例5)
実施例7で用いたi液とii液をあらかじめ混合したものを顔料溶液とし、この液と水性媒体を3方リアクター中で混合することにより2,9−ジメチルキナクリドンの微粒子分散液を得た。すなわち2,9−ジメチルキナクリドンを8g、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液18.1g、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸 ナトリウム3.2gをジメチルスルホキシド140mLに室温で溶解したもの溶液を調製しこれをiB液とした。加えられた塩基の顔料溶液に対する濃度は0.67mol/Lと計算される。
このiB液と蒸留水(iii液)を、それぞれiB液3.5mL/min、iii液16mL/minの送液速度にて送り出した。得られた分散液を同様に処理して顔料5.0質量%分散液を調製し、粘度および粒子径を測定した結果を表2に示した。得られた分散液のpHは12.5であった。なお、iB液の調製開始から送液開始までには4時間が経過しており、20分流しつづけた。
【0100】
【表2】

(注1)顔料100質量部対する界面活性剤もしくは高分子分散剤の質量部
【0101】
上記表2に示した結果から分かるとおり、異なる顔料種(PR−122)であっても、本発明によれば、分散物の低粘度を維持して、粒子径が極めて小さくしかも均一な顔料微粒子が得られるという優れた作用効果を示すことが分かる。このとき分散剤溶液(ii液)が介在流通されるようにすることで、さらに粒子径が小さく均一なものが得られることが分かる(実施例7と8とを対比参照)。
【0102】
(実施例9)インクジェット用インクの調製
限外ろ過による精製、濃縮を経た、実施例7に記載の5%濃度の分散液を用い、下記組成になるようインクジェット用インクを調製した。
有機顔料(3.5%)
オルフィンE1010(2.0%)
グリセリン(10%)
水(84.5%)
セイコーエプソン社製PM−D600(商品名)のインクとして打滴試験を行ったところ目詰まり無く良好な印字を与えた。
【0103】
(実施例10)塗料の調製
限外ろ過による精製、濃縮を経た、実施例7に記載の5%濃度の分散液それぞれを用い、下記比率にて樹脂と混合して塗料を調製した。
有機顔料(5%):ジュリマーET−410(商品名、日本純薬株式会社製、30%)=2:1
これをスポイトによりガラス板に滴下、40℃で2時間加熱乾燥したところ、透明で鮮やかな塗布膜を与えた。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1−1】本発明の製造方法に用いることのできる一実施形態としての製造装置を模式的に示す平面図である。
【図1−2】図1−1のI−I線断面の断面図である。
【図2】本発明の製造方法に用いることのできる別の実施形態としての製造装置を概念的に示す装置説明図である。
【図3−1】片側にY字型流路を有する反応装置を模式的に示す平面図である。
【図3−2】図3−1のIII−III線断面の断面図である。
【図4−1】片側に挿通した流路を設けた円筒管型流路を有する反応装置を模式的に示す縦断面図である。
【図4−2】図4−1のIVa−IVa線断面の横断面図である。
【図4−3】図4−1のIVb−IVb線断面の横断面図である。
【図5−1】両側にY字型流路を有する反応装置を模式的に示す平面図である。
【図5−2】図5−1のV−V線断面の断面図である。
【図6】両側に挿通した流路を設けた円筒管型流路を有する反応装置を模式的に示す断面図である。
【図7】平面型マイクロリアクターの一実施態様を模式的に示す平断面図である。
【図8】平面型マイクロリアクターの別の実施態様を模式的に示す平断面図である。
【図9】平面型マイクロリアクターのさらに別の実施態様を模式的に示す平断面図である。
【図10】立体型のマイクロリアクターの一実施態様を模式的に示す分解斜視図である。
【図11】3液が層流条件下で合流したときの相対位置関係を概念的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0105】
10、20、30、40、50、60、70、80、90,100 反応装置
21、22 一回合流リアクター
11、12、13、31、32、41、42、51、52、61、62 導入口
14、34、35、44、54、55、64、65 排出口
15、15a、15b、15d、15e、15g、25、35、35a、35b、35d、43a、43b、43c、53、53a、53b、53c、53f、53g、63a、63b、63c、63f、63g、71、71A、71B、72、73、81、81A、81B、82、83、91、91A、91B、92、93 流路
15c、15f、35c、43d、53d、63d、74、84、94 流体合流点
53e、63e 流体分流点
101 供給ブロック
102 合流ブロック
103 反応ブロック
106 外側環状溝
105 内側環状溝
107、108 供給ブロックの貫通孔
110 合流部(合流領域)
111 長尺放射状溝
112 短尺放射状溝
115、116 合流ブロックの貫通孔
113 反応ブロックの貫通孔(マイクロ流路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機顔料を有機溶媒に溶解した有機顔料溶液と、分子量が1,000未満の界面活性剤を有機溶媒に溶解した界面活性剤溶液とを流路内で流通合流させて合流液とし、その合流液と水性媒体とを流路内でさらに流通合流させて、前記有機顔料の微粒子を生成させる工程を含むことを特徴とする有機顔料微粒子分散物の製造方法。
【請求項2】
前記有機顔料溶液が、前記有機顔料をアルカリの存在下で溶解した溶液であることを特徴とする請求項1に記載の有機顔料分散物の製造方法。
【請求項3】
前記有機顔料溶液と界面活性剤溶液との合流液と前記水性媒体とを合流させる工程を、等価直径が2mm以下の流路内で行うことを特徴とする請求項1または2に記載の有機顔料分散物の製造方法。
【請求項4】
前記有機顔料溶液と界面活性剤溶液とを合流させる工程およびその合流液と前記水性媒体とを合流させる工程をともに等価直径が2mm以下の流路内で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機顔料分散物の製造方法。
【請求項5】
前記有機顔料溶液と界面活性剤溶液とを流路内で合流させてから、その合流液と前記水性媒体とを合流させるまでの間、前記有機顔料溶液と界面活性剤溶液とを層流状態で流通させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機顔料分散物の製造方法。
【請求項6】
層流状態で流通している前記有機顔料溶液と界面活性剤溶液との合流液と、前記水性媒体との合流を、前記界面活性剤溶液が前記有機顔料溶液と水性媒体との間に介在するように行うことを特徴とする請求項5に記載の有機顔料分散物の製造方法。
【請求項7】
分散物中の前記界面活性剤の質量を、前記有機顔料の質量に対して0.5倍以下とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機顔料分散物の製造方法。
【請求項8】
前記界面活性剤として、アルカリに対して分解性の化合物を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機顔料分散物の製造方法。
【請求項9】
前記有機顔料微粒子の体積平均粒径(Mv)が10nm以上50nm以下である請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機顔料分散物の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法で得られた分散物中の前記有機顔料微粒子を含有するインクジェット記録用インク。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法で得られた分散物中の前記有機顔料微粒子を含有する塗料。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2】
image rotate

【図4−1】
image rotate

【図4−2】
image rotate

【図4−3】
image rotate

【図5−1】
image rotate

【図5−2】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−292999(P2009−292999A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150948(P2008−150948)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】