説明

有機/無機複合体が導入された電極及び前記電極を備える電気化学デバイス

本発明は、予め定められた一定のルールに従って固有の分光スペクトル又は色パターンを有する無機粒子又はこれらの集合体、及び前記無機粒子を連結及び固定可能な高分子を含有する有機/無機複合体が電極の片面又は両面に導入されることを特徴とする電極、この電極を備える電気化学デバイス及び前記電極を用いて電極そのもの又は電極を備える電気化学デバイス製品の出所又は種類を確認する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別力を有し、電極そのもの又はこれを備える電気化学デバイスの出所又は種類を確認することができる電極及びこれを備える電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学デバイスは、電子機器などの電源であって、最近、携帯電話機、キャムコーダー、ノート型パソコン、パ―ソナルコンピュ―タ、さらには、電気自動車のエネルギーにまで適用分野が拡大されるにつれて、電気化学デバイスに関する研究・開発が加速化されている。
【0003】
なお、このような電気化学デバイスの需要の増大に伴って偽物の流通が増えている。偽物は、真正商品に比べて安定性が低いため、偽物による電気化学デバイスの爆発があった場合は、真正商品であるかどうかの確認が難しい。そのため、最近、電気化学デバイスの分野において、真正商品であるかどうか確認できる方法が求められている。
【0004】
そのため、電子機器の本体と通信可能な半導体を電気化学デバイス内に内蔵することで、デバイスが真正商品であるかどうかを確認する方法が提示されている。しかし、この場合、デバイス内部に半導体を内蔵するためのスペースが必要になり、これによって、電極の配置空間が相対的に減少し、必然的に電池容量の減少に繋がる。さらに、半導体の導入による量産性・経済性の低下という問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、有機/無機複合体が導入された電極に固有の分光スペクトル又は色パターンを有する無機粒子を予め定められた一定のルールに従って導入することにより、電極そのもの又はこれを備える電気化学デバイスの出所又は種類を確認することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、予め定められた一定のルールに従って固有の分光スペクトル又は色パターンを有する無機粒子又はこれらの集合体、及び前記無機粒子を連結及び固定可能な高分子を含有する有機/無機複合体が電極の片面又は両面に導入されることを特徴とする電極、この電極を備える電気化学デバイス及び前記電極を用いて電極そのもの又は電極を備える電気化学デバイス製品の出所又は種類を確認する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の有機/無機複合体が導入された電極を示す模式図である。
【図2】図2は、比較例1の電極の製造に使用されたアルミナ粉末の写真である。
【図3】図3は、実施例1乃至6の電極の製造にそれぞれ使用されたCoAl、Cr、Fe、(Ti,Ni,Sb)O粉末の写真である。
【図4】図4は、実施例1乃至6で製造された有機/無機複合体が導入された電極の写真である。
【図5】図5は、比較例1で製造された有機/無機複合体が導入された電極の写真である。
【図6】図6は、実施例1乃至6及び比較例1でそれぞれ製造された有機/無機複合体が導入された電極の分光スペクトルである。
【発明の詳細な説明】
【0008】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0009】
電気化学デバイスは、陽極、陰極、分離膜及び電解質から構成されることができ、前記構成要素は、デバイスの性能向上のため、様々な構造特性を有するように開発されつつある。例えば、電極の表面に有機/無機複合体が導入されることができる。前記有機/無機複合体は、分離膜として機能することができると共に、電極の界面に堅固に結合でき、熱収縮が発生する可能性は低いため、デバイスの性能、安全性などを向上させることができる。
【0010】
前記有機/無機複合体は、無機粒子と前記無機粒子を連結及び固定可能な高分子とから構成されることができるが、従来は、前記無機粒子としてアルミナ、シリカ、チタニアなど、白色の無機粒子が主に使用されており、上記のような有機/無機複合体を用いて電極又は電気化学デバイスの出所、種類などを確認するという実例は、報告されていない。
【0011】
本発明は、有機/無機複合体中の無機成分として、予め定められた一定のルールに従って固有の分光スペクトル又は色パターンを有する無機粒子を導入することで、電極そのものに識別力を付与することに特徴がある。
【0012】
無機粒子は、種類に応じて固有の分光スペクトル又は色パターンを有することができる。従って、有機/無機複合体に、前述のような無機粒子を一定のルールに従って導入すると、前記有機/無機複合体を備える電極は、そのものでも商標のような識別力を有することができる。
【0013】
なお、前記「一定のルール」とは、本発明の有機/無機複合体又は電極が、第3者によって製造されるものと区別できるように予め定められた特定の分光スペクトル(ピーク位置及び強さ)及び/又は色パターンを意味する。ここで、前記特定の分光スペクトル(ピーク位置及び強さ)及び/又は色パターンは、使用される無機粒子の数、種類、含量などによって変化する。例えば、少なくとも1種の無機粒子を使用し、それらの含量を調節することで、分光スペクトルのピーク位置及び強さを調節することができる。また、可視光線又は非可視光線領域において発色する少なくとも1種の無機粒子、又は特定の化学条件(例えば、温度、酸化数)下で発色又は変色する少なくとも1種の無機粒子を使用することで色パターンを調節することができる。さらに、少なくとも2つの無機粒子を混用したり、それらの配列を変化させることで、分光スペクトル及び色パターンの両方を調節することができる。
【0014】
従って、本発明では、有機/無機複合体の分光スペクトル及び/又は色パターンを調査することで、電極そのもの又はこれを備える電気化学デバイスの出所、種類などを確認することができる。特に、本発明では、電気化学デバイスの内部構成要素、電極そのものが識別手段として機能するため、識別手段を設けるためのスペースが不要になってデバイスの容量減少が発生しない。また、デバイスの内蔵部品のみが偽物である場合でも、適用可能である。
【0015】
本発明において使用される無機粒子は、固有の分光スペクトル又は色パターンを有するものであれば、特に制限されない。
【0016】
例えば、前記無機粒子は、i)可視光線領域で固有の分光スペクトル又は色パターンを有する無機粒子、ii)非可視光線領域で固有の分光スペクトル又は色パターンを有する無機粒子、又は、iii)特定の化学条件(例えば、温度、酸化数)下で固有の分光スペクトル又は色パターンを有する無機粒子であることができる。また、前記無機粒子としては、塗料、顔料などに使用される無機粒子、ディスプレイ又はランプに使用される蛍光体粒子を使用することもできる。
【0017】
前記可視光線領域(380〜770nm波長の光)において固有の分光スペクトル又は色パターン、例えば、白色、黒色、黄色、オレンジ色、茶色、赤色、紫色、青色、緑色、灰色、桃色、蛍光色を有する無機粒子の非制限的な例は、次の通りである。
(a)白色: Al、ZnO、ZnS、SiO、ZrO、SnO、CeO、MgO、CaO、Y、TiO、Sb、BaTiO、SrTiO、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1−xLaZr1−yTi(PLZT)など、
(b)黒色:Fe、(Co,Ni)O−(Cr,Fe)など、
(c)黄色:PbCrO、ZnCrO4、BaCrO、CdS、FeO(OH)nHO、TiO−NiO−Sb、Pb(CN)、CaPbO、Al,Fe,Sn−2PbO−Sb、V−SnO、V−ZrO、Pr−ZrSiO、CrSbO又はCrWO−TiO、ZrSOコートされるCdS又は(CdZn)Sなど、
(d)オレンジ色:PbCrO PbO、PbCrO PbMoO、PbSOなど、
(e)茶色:Fe+FeO、Fe+MnO+Mn、ZnO・(Al,Cr,Fe)など、
(f)赤色:Fe、Pb、HgS、CdS+CdSe、CdS+HgS、2Sb Sbなど、
(g)紫色:Co(PO、Co(PO 4HO、Co(PO 8HOなど、
(h)青色:3NaAlSiONa、Fe[Fe(CN] nHO、CoO nAl、CoO nSnO mMgO、Co+SiO+Al+Fe+NiO+MnO、CoO−nAl又は(Co,Zn)O−nAl、2(Co,Zn)O・SiO、V−ZrSiOなど、
(i)緑色:Cr、CrO(OH)、Cu(CHCO 3CuO(AsO、CoO−ZnO−MgO、(Co,Zn)O・(Al,Cr)、3CaO−Cr・3SiO、(Al,Cr)など、
(j)灰色:Sb−SnO、Co,Ni−ZrSiOなど、
(k)桃色:Mn,P−α−Al、ZnO・(Al,Cr)、Cr−CaO・SnO・SiO、Fe−ZrSiO、Cr,Co−CaO・SnO・SiO、ZrSiOコートされるCd(S,Se)など、
(l)蛍光色:ZnS、ZnSiO、(Zn,Cd)S、CaS、SrS、CaWOなど、
(m)その他:SiC(緑色及び/又は黒色)、Si(白色)など。
【0018】
前記無機粒子の大きさは、特に制限されないが、0.001μm〜10μmの範囲であることが好ましい。0.001μmを下回る場合は、気孔の大きさが小さ過ぎて有機/無機複合体を通じたリチウムイオンの伝達が難しくなることがあり、10μmを上回る場合は、製造された最終電極の厚さが増大することがある。
【0019】
なお、前記無機粒子を連結及び固定できる高分子としては、当業界で通常使用されるバインダーポリマーを使用することができる。前記高分子は、無機粒子と無機粒子との間、無機粒子と電極基材表面との連結及び安定的な固定を行うバインダーの役割を充実に果たすことで、製造された最終有機/無機複合体の機械的な物性の低下を防止することができる。
【0020】
前記高分子は、ガラス転移温度(Tg)が−200℃〜200℃の範囲であることが好ましい。これは、柔軟性、弾性など、製造された最終有機/無機複合体の機械的な物性を向上させることができるためである。
【0021】
また、前記高分子は、電解液の含浸によってゲル化されることで高い電解液含浸率を示すものが好ましく、溶解度パラメータが15〜45MPa1/2であることがさらに好ましい。
【0022】
前記高分子の非制限的な例としては、フッ化ポリビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、フッ化ポリビニリデン−トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-trichloroethylene)、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリイミド、ポリエチレンオキサイド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、これを単独又は混合して使用することができる。
【0023】
本発明に係る有機/無機複合体の無機粒子及び高分子の含量比は、特に制限されないが、製造された最終電極の厚さ、物性及び予め定められた一定のルールに従う無機粒子の含量などによって10:90〜99:1重量比の範囲、好ましくは、50:50〜99:1重量比の範囲で調節することができる。
【0024】
また、本発明に係る有機/無機複合体は、前述の無機粒子及び高分子の他に、別の添加剤をさらに含むことができる。
【0025】
なお、本発明の有機/無機複合体は、気孔が形成されることが好ましい。前記気孔は、後で電解液の含浸によってリチウムイオン伝達能力を有することができる。前記気孔は、無機粒子同士の間、無機粒子と高分子との間、又は高分子同士の間に絡んだ状態で形成されることができ、気孔の大きさは、無機粒子の大きさに依存する。
【0026】
本発明の電極は、前記有機/無機複合体が片面又は両面に絡んだ状態である。例えば、本発明の電極は、前記有機/無機複合体が高分子によって電極気孔と絡んだ状態であることができる。この時、前記有機/無機複合体は、電解液を十分に含浸して電解質として機能するように電極厚さ方向に一定以上の厚さ、例えば、1μm〜10μmの厚さで導入されることが好ましい。参考のため、図1に、本発明によって前述の有機/無機複合体が電極の片面又は両面に導入された電極を模式的に示す。
【0027】
前記電極の製造方法の一実施形態として、(a)バインダーの役割を果たせる高分子を溶媒に溶解させて第1の混合溶液を製造するステップ、(b)少なくとも1種の前述した無機粒子を前記ステップ(a)の第1の混合溶液に添加及び混合して第2の混合溶液を製造するステップ、及び(c)電極の表面に前記ステップ(b)の第2の混合溶液をコーティングし、乾燥するステップを行うことができる。
【0028】
前記ステップ(a)の溶媒については、特に制限されないが、均一な混合及び容易な溶媒除去のため、溶解度パラメータが使用される高分子のそれと類似しており、低沸点を有することが好ましい。前記溶媒の非制限的な例としては、アセトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、シクロヘキサン、水又はこれらの混合物などが挙げられる。
【0029】
前記ステップ(b)では、前述した無機粒子の少なくとも1種を第1の混合溶液に添加した後、無機粒子の破砕を施すことが好ましい。この時、適切な破砕時間は、1〜20時間であり、破砕された無機粒子の粒度は、前述のように0.01〜10μmが好ましい。破砕方法は、当業界で公知の通常の方法、例えば、ボールミル法を使用することができる。
【0030】
また、前記ステップ(c)におけるコート法は、当業界で公知の通常の方法で行うことができ、ディップコート法、ダイコート法、ロールコート法、コンマコート法又はこれらの混合方式を使用することができる。
【0031】
また、本発明の有機/無機複合体が導入される電極は、電気化学デバイスにおいて通常使用されるものであれば、特に制限されないが、一般に、電流コレクタに電極活物質が結着した形態であることができる。
【0032】
前記電極活物質は、陽極活物質又は陰極活物質を使用することができる。
【0033】
陽極活物質としては、LiM(M=Co、Ni、Mn、CoNiMn)のようなリチウム遷移金属複合酸化物(例えば、LiMnなどのリチウムマンガン複合酸化物、LiNiOなどのリチウムニッケル酸化物、LiCoOなどのリチウムコバルト酸化物及びこれら酸化物のマンガン、ニッケル、コバルトの一部を他の転移金属などに置換したもの又はリチウムを含有した酸化バナジウムなど)又はカルコゲン化合物(例えば、二酸化マンガン、二硫化チタン、二硫化モリブデンなど)などを使用することができる。好ましくは、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、Li(NiCoMn)O(0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1−YCo、LiCo1−YMn、LiNi1−YMn(0≦Y<1)、Li(NiCoMn)O(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2−ZNi、LiMn2−ZCo(0<Z<2)、LiCoPO、LiFePO又はこれらの混合物などが挙げられる。
【0034】
陰極活物質は、従来、二次電池の陰極に使用し得る通常の陰極活物質を使用することができ、その非制限的な例としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能なリチウム金属、リチウム合金、炭素、石油コークス、活性炭、黒鉛、炭素繊維などが挙げられる。その他、リチウムを吸蔵及び放出できると共に、リチウムに対する電位が2V未満のTiO、SnOなどのような金属酸化物を使用することができる。特に、黒鉛、炭素繊維、活性炭などの炭素材が好ましく使用される。
【0035】
また、本発明は、陽極及び陰極を含み、前記陽極、陰極又はこれら両方が前述のような電極であることを特徴とする電気化学デバイスを提供する。
【0036】
本発明に係る電気化学デバイスは、電気化学反応をする全てのデバイスを含む。具体例としては、あらゆるの一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池又はキャパシタなどがある。前記二次電池の例としては、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池又はリチウムイオンポリマー二次電池などが挙げられる。
【0037】
本発明の電気化学デバイスにおいては、前述の有機/無機複合体が導入された電極を使用して陽極及び/又は陰極を製造することを除いては、当該技術分野で公知の通常の方法で製造することができる。その一実施形態としては、(a)前述の有機/無機複合体が導入された陽極、陰極及び前記陽極と陰極との間に分離膜を介在して電極組立体を製造し、これを電気化学デバイスのケースに投入するステップ、及び(b)前記ケースに電解液を注入するステップを含むことができる。
【0038】
前記分離膜は、特に制限されないが、多孔性セパレーターを使用することが好ましく、その非制限的な例としては、ポリプロピレン系、ポリエチレン系又はポリオレフィン系の多孔性セパレーターなどが挙げられる。
【0039】
なお、本発明では、電極に導入される有機/無機複合体が分離膜としての役割を果たすことができるため、分離膜を適用するステップを省略することもできる。
【0040】
前記電解液は、当業界で公知の通常の電解液溶媒を使用することができ、一般に、電解質塩と電解液を含む。
【0041】
前記電解質塩は、通常、非水電解液用電解質塩として使用されるものであれば、特に制限されない。電解質塩の非制限的な例としては、Aのような構造を有する塩であって、Aは、Li、Na、Kのようなアルカリ金属カチオン又はこれらの組合からなるカチオンを含み、Bは、PF、BF、Cl、Br、I、ClO、AsF、CHCO、CFSO、N(CFSO、C(CFSOのようなアニオン又はこれらの組合からなるアニオンを含み、前記カチオンとアニオンとの組合からなる塩である。特に、リチウム塩が好ましい。
【0042】
前記電解液溶媒としては、環状カーボネート、線状カーボネート、ラクトン、エーテル、エステル、スルホキシド、アセトニトリル、ラクタム及び/又はケトンを使用することができる。
【0043】
前記環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などがあり、前記線状カーボネートとしては、例えば、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びメチルプロピルカーボネート(MPC)などがある。前記ラクトンとしては、例えば、ガンマブチロラクトン(GBL)があり、前記エーテルとしては、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどがある。前記エステルとしては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、ピバル酸メチルなどがある。また、前記スルホキシドとしては、ジメチルスルホキシドなどがあり、前記ラクタムとしては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などがあり、前記ケトンとしては、ポリメチルビニルケトンなどがある。なお、前記有機溶媒のハロゲン誘導体を使用することもでき、これらの有機溶媒は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0044】
さらには、本発明では、前述の有機/無機複合体が導入された電極を使用することで、電極そのもの又は電極を備える電気化学デバイスの出所又は種類を確認する方法を提供する。
【0045】
前述のような有機/無機複合体は、予め定められた一定のルールに従って固有の分光スペクトル又は色パターンを有する無機粒子を含む。よって、分光スペクトル又は色パターンを確認することができるセンサー(肉眼を含む)を利用し、例えば、可視光線分光器などのような当業界で公知の分光器を用いることで、電極の表面に導入された有機/無機複合体の分光スペクトル又は色パターン(例えば、特定の波長又は化学状態下での色相、明度、彩度など)が予め定められた一定のルールに一致するか否かを調査することにより、電極そのもの又は電極を備える電気化学デバイス製品の出所又は種類を確認することができる。これによって、本発明では、電極又は電気化学デバイスの真偽を確認することができると共に、電極又は電気化学デバイスの種類に応じて区別することができるため、生産工程における誤用を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これらの実施例は、本発明の例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0047】
[実施例1]
1−1.有機/無機複合体が導入された電極の製造
<陽極の製造>
陽極活物質としてLiCoO 94重量%、導電剤としてカーボンブラック3重量%、結合剤としてPVdF3重量%を、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に添加して陽極混合物スラリーを製造した。前記陽極混合物スラリーを厚さが20μm程度の陽極コレクタであるアルミニウム(Al)薄膜に塗布及び乾燥して陽極を製造した後、ロールプレスを施した。
【0048】
<陰極の製造>
陰極活物質として炭素粉末、結合剤としてPVdF、導電剤としてカーボンブラックをそれぞれ96重量%、3重量%及び1重量%で、溶剤であるNMPに添加して陰極混合物スラリーを製造した。前記陰極混合物スラリーを厚さが10μmの陰極コレクタである銅(Cu)薄膜に塗布及び乾燥して陰極を製造した後、ロールプレスを施した。
【0049】
<有機/無機複合体が導入された電極の製造>
アセトン100重量部当りフッ化ポリビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVdF−CTFE)高分子5重量部を添加した後、50℃で約12時間以上溶解させ、高分子溶液を製造した。可視光線領域で青色を呈する無機粒子であるCoAlとPVdF−CTFEとを80:20の重量比で混合して前記高分子溶液に添加した後、12時間以上ボールミル法で無機粒子を破砕及び粉砕してスラリーを製造した。無機粒子の粒度は、400nmであった。
【0050】
ディップコート法で、前述のスラリーを前述の陽極及び陰極にコートした後、乾燥して有機/無機複合体が導入された陽極及び陰極を製造した。
【0051】
1−2.リチウム二次電池の製造
上記実施例1−1の有機/無機複合体が導入された陽極及び陰極をスタッキング方式で組み立てた後、電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。前記電解液としては、エチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)=1:2体積比の1M LiPF溶液を使用した。
【0052】
[実施例2]
CoAlの代わりに、可視光線領域で緑色を呈する無機粒子であるCrを使用したことを除いては、前記実施例1と同様にして有機/無機複合体が導入された電極及びリチウム二次電池を製造した。
【0053】
[実施例3]
CoAlの代わりに、可視光線領域で赤色を呈する無機粒子であるFeを使用したことを除いては、前記実施例1と同様にして有機/無機複合体が導入された電極及びリチウム二次電池を製造した。
【0054】
[実施例4]
CoAlの代わりに、可視光線領域で黄色を呈する無機粒子である(Ti,Ni,Sb)Oを使用したことを除いては、前記実施例1と同様にして有機/無機複合体が導入された電極及びリチウム二次電池を製造した。
【0055】
[実施例5]
CoAlの代わりに、33:67重量比のCoAl及びFeを使用したことを除いては、前記実施例1と同様にして有機/無機複合体が導入された電極及びリチウム二次電池を製造した。
【0056】
[実施例6]
CoAlの代わりに、67:33重量比のCoAl及びFeを使用したことを除いては、前記実施例1と同様にして有機/無機複合体が導入された電極及びリチウム二次電池を製造した。
【0057】
[比較例1]
CoAlの代わりに、可視光線領域で白色を呈する無機粒子であるアルミナを使用したことを除いては、前記実施例1と同様にして有機/無機複合体が導入された電極及びリチウム二次電池を製造した。
【0058】
[実験例]
分光器を用いて前記実施例1乃至6及び比較例1において有機/無機複合体が導入された電極の吸収スペクトルを観測し、その結果を添付の図6に示した。図面からわかるように、本発明の有機/無機複合体が導入された電極は、導入される無機粒子の種類、含量などによって異なった分光スペクトルを示し、電極そのもの又はこれを備える電気化学デバイスの識別手段として機能することができる。
【0059】
なお、可視光線領域において前記実施例1乃至6及び比較例1で製造された電極を撮った写真を添付の図4及び5に示した。図面からわかるように、本発明の有機/無機複合体が導入された電極は、肉眼でも十分に識別可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、デバイスの構造を変更又は追加することなく、電極又は電極を備える電気化学デバイスの出所又は種類を確認することができる。それで、本発明では、電極又は電気化学デバイスの真偽を確認できると共に、電極又は電気化学デバイスの種類に応じて区別することができるため、生産工程における誤用が防止できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機/無機複合体が電極の片面又は両面に導入されてなることを特徴とする、電極であって、
前記有機/無機複合体が、予め定められた一定のルールに従って固有の分光スペクトル又は色パターンを有する無機粒子又はこれらの集合体、及び前記無機粒子を連結及び固定可能な高分子を含んでなるものである、電極。
【請求項2】
前記有機/無機複合体の分光スペクトル、色パターン又はこれら両方に基づいて、電極そのもの又は前記電極を備える電気化学デバイスの出所又は種類を確認できることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記無機粒子が、
i)可視光線領域で固有の分光スペクトル又は色パターンを有する無機粒子、
ii)非可視光線領域で固有の分光スペクトル又は色パターンを有する無機粒子、又は、
iii)特定の化学条件下で固有の分光スペクトル又は色パターンを有する無機粒子からなる群から選択されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記無機粒子が、Al、ZnO、ZnS、SiO、ZrO、SnO、CeO、MgO、CaO、Y、TiO、Sb、BaTiO、SrTiO、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1−xLaZr1−yTi(PLZT)、Fe、(Co,Ni)O−(Cr,Fe)、PbCrO、ZnCrO4、BaCrO、CdS、FeO(OH)nHO、TiO−NiO−Sb、Pb(CN)、CaPbO、Al,Fe,Sn−2PbO−Sb、V−SnO、V−ZrO、Pr−ZrSiO、CrSbO又はCrWO−TiO、ZrSOコートされるCdS又は(CdZn)S、PbCrO PbO、PbCrO PbMoO、PbSO、Fe+FeO、Fe+MnO+Mn、ZnO・(Al,Cr,Fe)、Fe、Pb、HgS、CdS+CdSe、CdS+HgS、2Sb Sb、Co(PO、Co(PO 4HO、Co(PO 8HO、3NaAlSiONa、Fe[Fe(CN] nHO、CoO nAl、CoO nSnO mMgO、Co+SiO+Al+Fe+NiO+MnO、CoO−nAl又は(Co,Zn)O−nAl、2(Co,Zn)O・SiO、V−ZrSiO、Cr、CrO(OH)、Cu(CHCO 3CuO(AsO、CoO−ZnO−MgO、(Co,Zn)O・(Al,Cr)、3CaO−Cr・3SiO、(Al,Cr)、Sb−SnO、Co,Ni−ZrSiO、Mn,P−α−Al、ZnO・(Al,Cr)、Cr−CaO・SnO・SiO、Fe−ZrSiO、Cr,Co−CaO・SnO・SiO、ZrSiOコートされるCd(S,Se)、ZnS、ZnSiO、(Zn,Cd)S、CaS、SrS、CaWO、SiC及びSiからなる群から選択されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
前記無機粒子の大きさが、0.001μm〜10μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項6】
前記高分子は、ガラス転移温度が−200℃〜200℃であることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項7】
前記高分子が、電解液含浸によってゲル化可能であることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項8】
前記高分子が、溶解度パラメータが15〜45MPa1/2の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項9】
前記高分子が、フッ化ポリビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ポリビニリデン−トリクロロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリイミド、ポリエチレンオキサイド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシルメチルセルロース及びポリビニルアルコールからなる群から選択されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項10】
前記無機粒子及び高分子の含量比が、10:90〜99:1の重量比であることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項11】
前記有機/無機複合体が、気孔が形成されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項12】
前記有機/無機複合体が高分子によって電極の気孔と絡んだ状態であることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項13】
前記有機/無機複合体が、電極の厚さ方向に1μm〜10μmの厚さで導入されることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項14】
陽極及び陰極を含む電気化学デバイスであって、
前記陽極、陰極又はこれら両方が、請求項1〜13のいずれか一項に記載の電極であることを特徴とする、電気化学デバイス。
【請求項15】
分離膜をさらに含むことを特徴とする、請求項14に記載の電気化学デバイス。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の電極を用いて、電極そのもの又は電極を備える電気化学デバイスの出所又は種類を確認する方法。
【請求項17】
分光スペクトル又は色パターンを確認可能なセンサーを用いて、電極そのもの又は電極を備える電気化学デバイスの出所又は種類を確認することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
分光器を用いて、電極そのもの又は電極を備える電気化学デバイスの出所又は種類を確認することを特徴とする、請求項16に記載の方法。

【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【図3(d)】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図4(d)】
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【図4(e)】
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【図4(f)】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公表番号】特表2009−544139(P2009−544139A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520680(P2009−520680)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【国際出願番号】PCT/KR2007/003472
【国際公開番号】WO2008/010667
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】