説明

有機ELディスプレイ、有機ELディスプレイの製造方法

【課題】青色発光層の効率、及び寿命を改善する。
【解決手段】基板1上を、赤色、緑色、及び青色の画素に区画する隔壁3と、各画素の基板1上に設けた画素電極2と、各画素の画素電極上に設けた第一正孔輸送層4と、赤色画素の第一正孔輸送層4上に設けた赤色発光層5と、緑色画素の第一正孔輸送層4上に設けた緑色発光層6と、青色画素の第一正孔輸送層4上に設けた第一青色発光層7と、赤色発光層5上、緑色発光層6上、及び第一青色発光層7上に設けた第一電子輸送層8と、第一電子輸送層8上に設けた電荷発生層9と、青色画素の電荷発生層9上に設けた第二正孔輸送層10と、第二正孔輸送層10上に設けた第二青色発光層11と、赤色画素、及び緑色画素の電荷発生層9上、並びに青色画素の第二青色発光層11上に設けた第二電子輸送層12と、第二電子輸送層12上に設けた対向電極13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELディスプレイ、及び有機ELディスプレイの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子は一対の電極と、この電極間に設けられる有機化合物を含む発光層(以下、有機発光層と称す)と、を含んで構成される。有機EL素子に電圧を印加すると、陽極から正孔が注入されると共に、陰極から電子が注入され、これら正孔と電子とが有機発光層において結合することによって発光する(特許文献1参照)。
【0003】
有機発光層、電極を形成する材料は、真空蒸着法等により薄膜形成し、このときに微細パターンのマスク(以下、ファインメタルマスクと称す)を用いてパターニングする。
しかし、この方法ではファインメタルマスクを使用するため、基板が大型化するほど、パターニング精度が出にくいという問題がある。また、真空中で成膜するためにスループットが悪いという問題がある。
【0004】
そこで、最近では有機発光層の高分子材料や低分子材料を溶剤に溶かして塗工液(インキ)にし、これをウェットコーティング法で薄膜形成する方法が試みられるようになってきている。薄膜形成するためのウェットコーティング法としては、スピンコート法、バーコート法、スリットコート法、ディップコート法等があるが、高精細にパターニングしたりRGBの3色に塗り分けしたりするためには、これらのウェットコーティング法では難しく、塗りわけ・パターニングを得意とする印刷法による薄膜形成が最も有効であると考えられる。
【0005】
この有機発光インキを印刷する方法としては、弾性を有するゴムブランケットを用いるオフセット印刷法(特許文献2参照)や、同じく弾性を有するゴム版や樹脂版を用いる凸版印刷法(特許文献3参照)、さらにはインクジェット法(特許文献4参照)、ノズルプリント法などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−192472号公報
【特許文献2】特開2001−93668号公報
【特許文献3】特開2001−155858号公報
【特許文献4】特開2002−305077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常の有機ELディスプレイは、一層の有機発光層を含んで構成されている。有機ELディスプレイとして当然に高輝度で高効率、長寿命に発光することが求められている。
有機ELディスプレイにおいては、青色二次画素の寿命が、赤色二次画素、及び緑色二次画素の寿命より短いと、ディスプレイ駆動時に青色のみ暗くなって赤みがかるという問題がある。
【0008】
赤色有機発光材料や緑色有機発光材料は、燐光材料を一般に使用しており、高輝度でも高効率、長寿命に発光させることができる。
しかしながら、青色有機発光材料では現在、燐光材料は色純度が悪いため、一般に蛍光材料が使用されており、赤色有機発光材料や緑色有機発光材料と比較して効率、寿命が低い。
また、プロセスにおいても一般にファインメタルマスクを使用することによりパターニング精度が出にくいという問題がある。
本発明の課題は、青色発光層の効率、及び寿命を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、有機ELディスプレイは、基板と、樹脂組成物からなり、基板上を、赤色、緑色、及び青色の画素に区画する隔壁と、各画素の基板上に設けられた画素電極と、各画素の画素電極上に設けられた第一正孔輸送層と、赤色画素の第一正孔輸送層上に設けられ、通電によって発光する赤色発光層と、緑色画素の第一正孔輸送層上に設けられ、通電によって発光する緑色発光層と、青色画素の第一正孔輸送層上に設けられ、通電によって発光する第一青色発光層と、赤色発光層上、緑色発光層上、及び第一青色発光層上に設けられた第一電子輸送層と、第一電子輸送層上に設けられた電荷発生層と、青色画素の電荷発生層上に設けられた第二正孔輸送層と、第二正孔輸送層上に設けられ通電によって発光する第二青色発光層と、赤色画素、及び緑色画素の電荷発生層上、並びに青色画素の第二青色発光層上に設けられた第二電子輸送層と、第二電子輸送層上に設けられ、画素電極との間で通電する対向電極と、を備えることを特徴とする。
【0010】
すなわち、第一正孔輸送層、電荷発生層、第一電子輸送層、及び第二電子輸送層は、発光表示エリアの全面に設け、赤色画素には、一つの赤色発光層を設け、緑色画素には、一つの緑色発光層を設け、青色画素には、第一青色発光層、第二正孔輸送層、及び第二青色発光層を設ける。
また、赤色有機発光層、及び緑色有機発光層は、燐光発光の有機化合物からなることを特徴とする。
【0011】
また、有機ELディスプレイの製造方法は、樹脂組成物からなる隔壁によって基板上を、赤色、緑色、及び青色の画素に区画する工程と、各画素の基板上に画素電極を設ける工程と、各画素の画素電極上に第一正孔輸送層を設ける工程と、赤色画素の第一正孔輸送層上に通電によって発光する赤色発光層を設ける工程と、緑色画素の第一正孔輸送層上に通電によって発光する緑色発光層を設ける工程と、青色画素の第一正孔輸送層上に通電によって発光する第一青色発光層を設ける工程と、赤色発光層上、緑色発光層上、及び第一青色発光層上に第一電子輸送層を設ける工程と、第一電子輸送層上に電荷発生層を設ける工程と、青色画素の電荷発生層上に第二正孔輸送層を設ける工程と、第二正孔輸送層上に通電によって発光する第二青色発光層を設ける工程と、赤色画素、及び緑色画素の電荷発生層上、並びに青色画素の第二青色発光層上に第二電子輸送層を設ける工程と、第二電子輸送層上に画素電極との間で通電する対向電極を設ける工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、青色画素に、第一青色発光層と第二青色発光層とを設けたことで、青色発光層の効率、及び寿命を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】有機EL装置における有機ELディスプレイパネル断面の模式図である。
【図2】有機EL装置におけるノズルプリント装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ここでは、パッシブマトリックスタイプの有機ELディスプレイパネルを作成する場合を例に説明する。但し、本実施形態は、これに限定されるものではない。
図1は、有機ELディスプレイパネルの断面を示す模式図である。
有機ELディスプレイパネルにおける有機EL素子は、透光性基板1上に形成される。透光性基板1としては、ガラス基板やプラスチック製のフィルム、又はシートを用いることができる。プラスチック製のフィルムを用いれば、巻取りにより高分子EL素子の製造が可能となり、安価にディスプレイパネルを提供できる。そのプラスチックとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート等を用いることができる。また、これらのフィルムは、水蒸気バリア性、酸素バリア性を示す酸化ケイ素といった金属酸化物、窒化ケイ素といった窒化物やポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、エチレン‐酢酸ビニル共重合体鹸化物からなるバリア層が必要に応じて設けられる。
【0015】
透光性基板の上には、陽極としてパターニングされた画素電極2が設けられる。画素電極2の材料としては、ITO(インジウム錫複合酸化物)、IZO(インジウム亜鉛複合酸化物)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アルミニウム複合酸化物等の透明電極材料が使用できる。なお、低抵抗であること、耐溶剤性があること、透明性があることなどからITOが好ましい。ITOは、スパッタ法により透光性基板上に形成され、フォトリソ法によりパターニングされライン状の画素電極2となる。
【0016】
ライン状の画素電極2を形成後、隣接する画素電極の間に感光性材料を用いて、フォトリソグラフィー法により隔壁3が形成される。さらに詳しくは、感光性樹脂組成物を基板に塗布する工程と、パターン露光、現像して隔壁パターンを形成する工程と、を少なくとも有する。
【0017】
隔壁3を形成する感光性材料としては、本実施形態ではポジ型レジストを用いるが、これに限らずネガ型レジストやその他の樹脂をドライエッチングなどによりパターニングして使用しても良い。ポジ型レジストは、市販のもので構わないが、絶縁性を有する必要がある。隔壁が十分な絶縁性を有さない場合には、隔壁を通じて隣り合う画素電極に電流が流れてしまい、異常発光や電流のリーク等の表示不良が発生してしまう。感光性材料としては、具体的にはポリイミド系、アクリル樹脂系、ノボラック樹脂系、フルオレン樹脂系といったものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、有機EL素子の表示品位を上げる目的で、光遮光性の材料を感光性材料に含有させても良い。
隔壁3を形成する感光性樹脂は、スピンコーター、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター等の公知の塗布方法を用いて塗布される。次に、パターン露光、現像して隔壁パターンを形成する工程では、従来公知の露光、現像方法により隔壁部のパターンを形成できる。
【0018】
パターン露光の方式としては、カラーフィルターなどでも用いられているプロキシミティ露光が生産性やコストの点から好ましいが、これらに限定されるものではない。ここでプロキシミティ露光の場合、隔壁をパターニングするためにフォトマスクを使用するが、このフォトマスクは隔壁が求める形となるように設計される必要がある。多くの場合、隔壁とほぼ同一のパターンでポジ、又はネガの違いに対応したパターンを持つフォトマスクを作製することで求める隔壁形状が得られる。ポジ型レジストにより隔壁を形成する場合には、隔壁のある部分が遮光されるようなフォトマスクの設計となる。露光、現像により隔壁をパターニングしたのち、焼成工程にて加熱することにより、パターニングしたフォトレジスト樹脂を硬化させ、隔壁とする。このときの焼成温度は、180℃以上とすることが好ましい。焼成温度がこれより低いと、十分な耐性や安定性が得られなくなってしまうためである。
【0019】
また、隔壁3は上記の露光、現像方式以外にも印刷法などによるパターン形成をすることができる。例えば反転オフセット印刷方式の場合、まずブランケット上に隔壁を形成する樹脂をベタで形成し、次にパターンの不要となる部分を刷版に転写することにより除去する。最後にブランケット上に残ったパターンを被印刷基板にアライメントを合わせて、転写するという方法により隔壁のパターン形成が行われる。また、隔壁のパターン形成後に焼成により硬化処理が行われる。この反転オフセット印刷法の場合も、隔壁を形成する樹脂成分としては、例えばポリイミド系、アクリル樹脂系、ノボラック樹脂系、フルオレン樹脂系といったものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明における隔壁は、厚みが0.5μmから5.0μmの範囲にあることが望ましい。隔壁が薄すぎると隣接画素間で正孔輸送層経由でのリーク電流の発生や、ショートの防止効果が得られないことがあり好ましくない。
有機ELディスプレイパネルにおいて、画素電極の間に隔壁3を設けた場合、隔壁を直行・横断して陰極層を形成することになる。このように隔壁を跨ぐ形で陰極層を形成する場合、隔壁3が高すぎると陰極層の断線が起こってしまい表示不良となる。隔壁3の高さが5.0μmを超えると、隔壁の断面が順テーパー形状であっても陰極の断線がおきやすくなってしまい好ましくない。
【0021】
上記のように、隔壁3を形成したのち、第一正孔輸送層4を形成する。第一正孔輸送層4を形成する正孔輸送材料の例としては、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン類、及び無金属フタロシアニン類、キナクリドン化合物、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン系低分子正孔注入輸送材料や、ポリ(パラ−フェニレンビニレン)、ポリアニリン等の高分子正孔輸送材料、ポリチオフェンオリゴマー材料、その他公知の正孔輸送材料の中から選ぶことができる。
【0022】
第一正孔輸送層4の形成方法として塗布型材料については、ノズルプリント法、スピンコート法、スリットコート法、インクジェット法、凸版印刷法等公知の成膜方法を使用することができる。
第一正孔輸送層4の形成後、赤色有機発光層5、緑色有機発光層6、及び第一青色有機発光層7を形成する。赤色有機発光層5、緑色有機発光層6、及び第一青色有機発光層7は電流を通すことにより発光する層であり、赤色有機発光層5、緑色有機発光層6、及び第一青色有機発光層7を形成する有機発光材料は、一般に有機発光材料として用いられているものであれば良く、クマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’―ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’―ジアリール置換ピロロピロール系等、一重項状態から発光可能な公知の蛍光性低分子材料や、希土類金属錯体系の三重項状態から発光可能な公知の燐光性低分子材料が挙げられる。
【0023】
これらの有機発光材料は、溶媒に溶解、又は安定に分散させ有機発光インキとなる。有機発光材料を溶解、又は分散する溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の単独、又はこれらの混合溶媒が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、アニソールといった芳香族有機溶剤が有機発光材料の溶解性の面から好適である。また、有機発光インキには、必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等が添加されても良い。
【0024】
有機発光層の形成方法としては、ノズルプリント法、スリットコート法、インクジェット法や凸版印刷法、凹版オフセット印刷法、凸版反転オフセット印刷法等によりパターン形成することが可能である。
赤色有機発光層5、緑色有機発光層6、及び第一青色有機発光層7形成後、第一電子輸送層8を形成する。第一電子輸送層8の材料としては、一般に電子輸送材料として用いられているものであればよく、トリアゾール系、オキサゾール系、オキサジアゾール系、シロール系、ボロン系等の低分子系材料が挙げられ、真空蒸着法による成膜形成が可能である。
【0025】
第一電子輸送層8の形成後、電荷発生層9を形成する。電荷発生層9の材料としては、遷移金属酸化物が好ましく、遷移金属酸化物の中でも、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)などの酸化物が好ましく、WO3がより好ましい。成膜形成は真空蒸着法が可能である。
電荷発生層9の形成後、第二正孔輸送層10を形成する。第二正孔輸送層10の材料としては、前述した第一正孔輸送層4と同じものを使用するが、これに限定されるものではない。
【0026】
第二正孔輸送層10の形成方法として塗布型材料については、ノズルプリント法、スリットコート法、インクジェット法、凸版印刷法等公知の成膜方法を使用することができる。
第二正孔輸送層10の形成後、第二青色有機発光層11を形成する。第二青色有機発光層11の材料としては、前述した第一青色有機発光層と同じものを使用するが、これに限定されるものではない。
【0027】
第二青色有機発光層11の形成方法として塗布型材料については、ノズルプリント法、スリットコート法、インクジェット法や凸版印刷法、凹版オフセット印刷法、凸版反転オフセット印刷法等によりパターン形成することが可能である。
第二青色有機発光層11の形成後、第二電子輸送層12を形成する。第二電子輸送層12の材料としては、前述した第一電子輸送層8と同じものを使用するがこれに限定するものではない。成膜は真空蒸着法が可能である。
【0028】
第二電子輸送層12の形成後、対向電極13を形成する。対向電極13の材料としては、有機発光層の発光特性に応じたものを使用でき、例えばリチウム、マグネシウム、カルシウム、イッテルビウム、アルミニウム等の金属単体や、これらと金、銀などの安定な金属との合金等が挙げられる。また、インジウム、亜鉛、錫などの導電性酸化物を用いることもできる。陰極層の形成方法としては、マスクを用いた真空蒸着法による形成方法が挙げられる。
【0029】
なお、本実施形態の有機ELディスプレイパネルでは、陽極である画素電極と陰極層の間に陽極層側から正孔輸送層と有機発光層、電子輸送層を積層した構成であるが、陽極層と陰極層の間において正孔輸送層、有機発光層以外に正孔ブロック層、電子注入層といった層を必要に応じ選択した積層構造をとることが出来る。また、これらの層を形成する際には、正孔輸送層や発光層、陰極層と同様の形成方法が使用できる。
最後にこれらの有機EL構成体を、外部の酸素や水分から保護するために、ガラスキャップ14と接着剤15を用いて密閉封止し、有機ELディスプレイパネルを得ることができる。また、透光性基板1が可撓性を有する場合は、封止剤と可撓性フィルムを用いて封止を行ってもよい。
【0030】
(実施例1)
実施例1について述べる。
対角1.8インチサイズのガラス基板の上にスパッタ法を用いてITO(インジウム-錫酸化物)薄膜を形成し、フォトリソ法と酸溶液によるエッチングでITO膜をパターニングして、画素電極2を形成した。画素電極2のラインパターンは、線幅90μm、スペース30μmでラインが約32mm角の中に約270ライン形成されるパターンとした。
【0031】
次に、隔壁3を画素電極2と平行なライン形状になるよう以下のように形成した。画素電極2を形成した透光性基板1としてのガラス基板上に、ポジ型感光性レジストとしてAZエレクトロニックマテリアルズ製LC100を全面スピンコートした。スピンコートの条件を150rpmで5秒間回転させた後に500rpmで20秒間回転させ、隔壁の高さを2.0μmとした。全面に塗布した感光性材料に対し、フォトリソグラフィー法により露光、現像を行い、画素電極2の間を覆うと共に、画素を構成するために格子状パターンを有する隔壁3を形成した。その後、隔壁3を230℃30分でオーブンにて焼成を行った。
【0032】
次に、第一正孔輸送層4となる正孔輸送インキとして、バイトロンCH−8000を40ml、超純水を40ml、1−プロパノールを20ml(20体積%)で混合し、調液しインキとした。なお、正孔輸送インキ塗布前の基板に前処理として、オーク製作所製UV/O3洗浄装置にて3分間紫外線照射を行った。図2に示すように、ノズルプリント装置4aを用いて、正孔輸送材料のインキを画素電極2上に、ノズルプリント装置4aを用いたノズルプリント法によって塗布し、正孔輸送層を形成する。このノズルプリント装置4aは、有機発光インクが収容されるインクタンク2aと、インクの液柱を吐出するインクノズル3aと、を備えている。このインクノズル3aからインクの液柱を画素電極2の表面に向けて吐出する。画素電極2に付着したインクは、粘度が低いために隔壁3で区切られた領域内で平均化する。その後、乾燥し定着させる。
【0033】
なお、ノズルプリント装置4aは、少なくとも一つ以上のノズル3aを備えたマルチノズルであってもよい。マルチノズル化することで生産性を向上させることができる。
その後、30℃の減圧乾燥炉に基板をいれ、減圧乾燥を行った。このとき約40秒で10kPaとなり、5分後に0.5kPaとなった後、大気圧に戻し、減圧乾燥工程を終了し、正孔輸送層を形成した。このときの正孔輸送層の膜厚は50nmとなった。形成された正孔輸送層に対し、塗布状態の確認を行った。
【0034】
次に、隔壁3に挟まれた画素電極2の真上にそのラインパターンに合わせて有機発光層をノズルプリント法によりパターン形成を行った。
赤色有機発光層5のホスト材料には、2,2′,2″-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(TPBi)、ドープ材料には2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチルー21H,23H−ポリフィリンプラチナ2(PtOEP)を用いて重量比率をTPBi/PtOEP=0.90/0.10にて濃度1%になるようにトルエンに溶解させた有機発光インキを用いた。このとき乾燥後の有機発光層の膜厚は画素中心部で50nmとなった。
【0035】
緑色有機発光層6のホスト材料には、TPBi、ドープ材料にはトリス(2−(p−トリル)ピリジン)イリジウムIII(Ir(mppy)3)を用いて重量比率をTPBi/Ir(mppy)3=0.94/0.06にて濃度1%になるようにトルエンに溶解させた有機発光インキを用いた。このとき乾燥後の有機発光層の膜厚は画素中心部で50nmとなった。
【0036】
青色有機発光層7は、ジフェニルアントラセン誘導体を濃度1%になるようにトルエンに溶解させた有機発光インキを用いた。このとき、乾燥後の有機発光層の膜厚は、画素中心部で50nmとなった。
なお、インク中の有機発光材料の濃度は、0.1重量%以上5.0重量%以下の範囲であればよく、0.5重量%以上1.5重量%以下であることがより好ましい。このように、濃度を0.1重量%以上5.0重量%以下とすることで、ノズルプリント塗布時の膜厚が大きくなりすぎず、ノズルプリント塗布時のパターン精度を維持することができる。なお、上記比率の有機発光材料の重量は、上記のホスト材料とドーパント材料を合わせた重量を表している。
【0037】
次に、第一電子輸送層8として、電子輸送材料のAlq3を抵抗加熱蒸着法により30nmマスク蒸着して形成した。
次に、電荷発生層9として、電荷発生材料のWO3を抵抗加熱蒸着法により20nmマスク蒸着して形成した。
次に、青色二次画素上に、第二正孔輸送層10となる正孔輸送インキとして、バイトロンCH−8000を40ml、超純水を40ml、1−プロパノールを20ml(20体積%)で混合し、調液しインキとした。なお、正孔輸送インキ塗布前の基板に前処理として、オーク製作所製UV/O3洗浄装置にて3分間紫外線照射を行った。正孔輸送層をノズルプリント法にて塗布した。その後、30℃の減圧乾燥炉に基板を入れ、減圧乾燥を行った。このとき、約40秒で10kPaとなり、5分後に0.5kPaとなった後、大気圧に戻し、正孔輸送層を形成した。このときの正孔輸送層の膜厚は50nmとなった。形成された正孔輸送層に対し、塗布状態の確認を行った。
【0038】
次に、第二青色有機発光層11として、青色有機発光材料のジフェニルアントラセン誘導体を濃度1%になるようにトルエンに溶解させた有機発光インキを用い、隔壁3に挟まれた画素電極2の真上に、そのラインパターンに合わせて有機発光層をノズルプリント法によりパターン形成を行った。このとき乾燥後の有機発光層の膜厚は画素中心部で50nmとなった。
【0039】
次に、第二電子輸送層12として、電子輸送材料のAlq3を抵抗加熱蒸着法により30nmマスク蒸着して形成した。
最後に、LiF、Alからなる対向電極13を画素電極2のラインパターンと直交するようなラインパターンで抵抗加熱蒸着法によりマスク蒸着して形成した。対向電極13のラインパターンは、線幅90μm、スペース30μm、LiF層を0.5nmの厚さで形成した後、Alを150nmの厚さで形成した。そして、これらの有機EL構成体を、外部の酸素や水分から保護するために、ガラスキャップ14と接着剤15を用いて密閉封止し、有機EL素子を作製した。
【0040】
得られたパッシブ型有機ELディスプレイパネルは、電極同士の短絡がなく、選択した画素のみを点灯でき、発光ムラの無い良好な表示装置を得た。青色二次画素のみを点灯させた時、輝度は8.0Vで150cd/mを示した。初期輝度200cd/mにおける輝度半減時間は1500時間であった。
【0041】
得られたパッシブ型有機ELディスプレイパネルにおいて、赤色二次画素のみを点灯させたとき、輝度は6Vで150cd/mを示した。初期輝度200cd/mにおける輝度半減時間は3000時間であった。
得られたパッシブ型有機ELディスプレイパネルにおいて緑色二次画素のみを点灯させたとき、輝度は4Vで150cd/mを示した。初期輝度200cd/mにおける輝度半減時間は5000時間であった。
【0042】
(比較例1)
比較例1においては、第一電子輸送層8を形成した後、電荷発生層9、第二正孔輸送層10、第二青色有機発光層11、及び第二電子輸送層12を形成せずに、陰極を成膜形成した。
得られたパッシブ型有機ELディスプレイパネルは、電極同士の短絡がなく、選択した画素のみを点灯でき、発光ムラの無い良好な表示装置を得た。青色二次画素のみを点灯させたとき、輝度は6.0Vで150cd/mを示した。初期輝度200cd/mにおける輝度半減時間は700時間であった。
【0043】
得られたパッシブ型有機ELディスプレイパネルにおいて赤色二次画素のみを点灯させたとき、輝度は6.5Vで150cd/mを示した。初期輝度200cd/mにおける輝度半減時間は2950時間であった。
得られたパッシブ型有機ELディスプレイパネルにおいて緑色二次画素のみを点灯させたとき、輝度は4.8Vで150cd/mを示した。初期輝度200cd/mにおける輝度半減時間は4870時間であった。
【符号の説明】
【0044】
1:透光性基板
2:画素電極
3:隔壁
4:第一正孔輸送層
5:赤色有機発光層
6:緑色有機発光層
7:第一青色有機発光層
8:第一電子輸送層
9:電荷発生層
10:第二正孔輸送層
11:第二青色有機発光層
12:第二電子輸送層
13:対向電極
14:ガラスキャップ
15:接着剤
2a:インクタンク
3a:インクノズル
4a:ノズルプリント装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
樹脂組成物からなり、前記基板上を、赤色、緑色、及び青色の画素に区画する隔壁と、
各画素の前記基板上に設けられた画素電極と、
各画素の前記画素電極上に設けられた第一正孔輸送層と、
赤色画素の前記第一正孔輸送層上に設けられ、通電によって発光する赤色発光層と、
緑色画素の前記第一正孔輸送層上に設けられ、通電によって発光する緑色発光層と、
青色画素の前記第一正孔輸送層上に設けられ、通電によって発光する第一青色発光層と、
前記赤色発光層上、前記緑色発光層上、及び前記第一青色発光層上に設けられた第一電子輸送層と、
前記第一電子輸送層上に設けられた電荷発生層と、
青色画素の前記電荷発生層上に設けられた第二正孔輸送層と、
前記第二正孔輸送層上に設けられ通電によって発光する第二青色発光層と、
赤色画素、及び緑色画素の前記電荷発生層上、並びに青色画素の前記第二青色発光層上に設けられた第二電子輸送層と、
前記第二電子輸送層上に設けられ、前記画素電極との間で通電する対向電極と、を備えることを特徴とする有機ELディスプレイ。
【請求項2】
前記赤色有機発光層、及び前記緑色有機発光層は、燐光発光の有機化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の有機ELディスプレイ。
【請求項3】
樹脂組成物からなる隔壁によって基板上を、赤色、緑色、及び青色の画素に区画する工程と、
各画素の前記基板上に画素電極を設ける工程と、
各画素の前記画素電極上に第一正孔輸送層を設ける工程と、
赤色画素の前記第一正孔輸送層上に通電によって発光する赤色発光層を設ける工程と、
緑色画素の前記第一正孔輸送層上に通電によって発光する緑色発光層を設ける工程と、
青色画素の前記第一正孔輸送層上に通電によって発光する第一青色発光層を設ける工程と、
前記赤色発光層上、前記緑色発光層上、及び前記第一青色発光層上に第一電子輸送層を設ける工程と、
前記第一電子輸送層上に電荷発生層を設ける工程と、
青色画素の前記電荷発生層上に第二正孔輸送層を設ける工程と、
前記第二正孔輸送層上に通電によって発光する第二青色発光層を設ける工程と、
赤色画素、及び緑色画素の前記電荷発生層上、並びに青色画素の前記第二青色発光層上に第二電子輸送層を設ける工程と、
前記第二電子輸送層上に前記画素電極との間で通電する対向電極を設ける工程と、を有することを特徴とする有機ELディスプレイの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−73842(P2013−73842A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213174(P2011−213174)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】