説明

有機ELディスプレイパネルの製造方法

【課題】初期の発光輝度の寿命劣化が改善された有機ELディスプレイパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】基板101上に少なくとも第1電極102
、第1電極に対向する第2電極、及び前記第1電極と第2電極の間に配置される発光媒体層を形成し、前記発光媒体層は、有機発光層と、前記有機発光層に第1電極側で接触する正孔輸送層105とを少なくとも備える有機ELディスプレイパネルの製造方法であって、
前記有機発光層を形成する前に、前記基板上に形成した前記正孔輸送層の表面に対し光照射109を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機EL素子及び有機EL素子を用いた画像表示装置に関する技術であって、特に有機ELディスプレイパネル(有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネル)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネセンス素子(以下、有機EL素子と呼ぶ。)は、2つの対向する電極の間に有機発光材料からなる有機発光層が形成されて構成され、有機発光層に電流を流すことで発光させるものであるが、効率よく且つ信頼性のある有機EL素子を作製するには有機発光層の膜厚が重要となる。また、これを用いてカラーディスプレイ化するには、高精細にパターニングする必要がある。
【0003】
一般的に、ディスプレイ用の基板には、パターニングされた感光性ポリイミドがサブピクセルを区画するように隔壁状に形成されているものを用いる。すなわち、各画素を区画するように隔壁パターンが形成されている。その際、隔壁パターンは、基板に対し陽極として成膜されている透明電極のエッジ部を覆うように形成される。
次に正孔キャリアを注入するための正孔注入層を成膜する方法には、ドライ成膜法とウェット成膜法との2種類がある。ウェット成膜法を用いる場合、一般には、水に分散されたポリチオフェンの誘導体が用いられる。一方、ドライ成膜法を用いる場合、正孔輸送能力を有した有機材料や金属酸化物などの無機物が、蒸着法やスパッタリング法を用いて成膜される。ドライ成膜法で形成したドライ成膜の場合は、比較的簡便に且つ均一に全面コーティングが可能である。
【0004】
次に電極から正孔注入層に注入された正孔の発光層へのスムーズな注入と、後に成膜する対向電極から注入される電子が正孔輸送層に流れ込まないように発光層界面でせき止める役割として、正孔注入層と発光層との間に正孔輸送層が形成される。形成方法としては正孔注入層と同様である。
有機発光層を形成する方法についても同様に、ドライ成膜法とウェット成膜法の2種類がある。しかし、均一な成膜が容易なドライ成膜法である真空蒸着法を用いる場合、微細パターンのマスクを用いてパターニングする必要があり、大型基板や微細パターニングが非常に困難である。
【0005】
そこで最近では高分子材料を溶剤に溶かして塗工液とし、これをウェット成膜法で薄膜形成する方法が試みられるようになってきている。高分子材料の塗液を用いてウェット成膜法で有機発光層を含む発光媒体層を形成する場合の層構成は、陽極側から正孔輸送層、有機発光層と積層する2層構成が一般的である。このとき、有機発光層はカラーパネル化するために赤(R)、緑(G)、青(B)のそれぞれの発光色をもつ有機発光材料を溶剤中に溶解または安定して分散してなる有機発光インキを用いて塗り分けることができる(特許文献1、2参照)。
【0006】
電極の間には有機発光層以外にもキャリア注入層(キャリア輸送層とも呼ばれる。)が形成される。キャリア注入層とは電極から有機発光層へ電子を注入させる際に、電子の注入量を制御あるいは、もう一方の電極から有機発光層へ正孔が注入される際に、正孔の注入量を制御するのに用いられる層であって、電極と有機発光層との間に挿入される層を指す。キャリア注入層としての電子注入層は、キノリノール誘導体の金属錯体などの電子輸送性の有機物や、Ca、Baなどの仕事関数の比較的小さい例えばアルカリ金属などが用いられる。あるいはこれらの機能を持つ層を複数積層する場合もある。
【0007】
一般的な有機EL素子は、図1に示すように、基板101上に第1電極102が形成され、その第1電極上に正孔注入層104(キャリア注入層)、正孔輸送層105(キャリア輸送層)、有機発光層106、第2電極107がこの順に積層された構成となっている。また、各画素(サブピクセル)を区分する隔壁103が設けられている。
このようなディスプレイパネルを所定の輝度で点灯させると、初めての点灯直後が時間に対する輝度低下の割合が最も大きいことから、ディスプレイの焼きつきを招くおそれがあるという問題があった。
【0008】
これを解決する手段として、エージング法として所定の輝度で所定の時間発光させることによって、初期の輝度低下を起こした後のものを製品としていた。しかし、初期の輝度劣化を起こさせることは効率の低下を伴うことと等しく、ある程度劣化させた状態を製品の初期状態とするため、本来の素子の性能が生かしきれないという問題があった。
また有機電界発光素子を安定化させる方法として、階段状の波形で順電圧を駆動電圧の値まで印加することが提案されている(特許文献1参照)。
【0009】
また、他の安定化方法として有機電界発光素子を50℃以上有機化合物の融点以下で加熱処理することが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平4−14794号公報
【特許文献2】特開平5−182764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載の前記安定化方法では、エージング工程後も1時間後の輝度が初期輝度の80%程度であって輝度低下が大きく、安定化が不十分である。
また、特許文献2に記載の前記安定化方法では、輝度の半減時間は18〜25時間と大きな改善はない。
このように、従来の有機EL素子の製造方法においては、点灯直後から時間に対する輝度低下の割合が大きいため、ディスプレイの焼きつきを招くおそれがあるという問題があった。
【0012】
本発明では、前記課題に着目したもので、上述のような初期の寿命劣化を抑制することが可能な有機ELディスプレイパネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、基板上に少なくとも第1電極、第1電極に対向する第2電極、及び前記第1電極と第2電極の間に配置される発光媒体層を形成し、前記発光媒体層は、有機発光層と、前記有機発光層に第1電極側で接触するキャリア輸送層とを少なくとも備える有機ELディスプレイパネルの製造方法であって、
前記発光媒体層を形成する前に、前記基板上に形成した前記キャリア輸送層の表面に対し光照射を行うことを特徴とするものである。
【0014】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、前記照射する光は、前記キャリア輸送層が吸収可能な波長が含まれていることを特徴とするものである。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した構成に対し、 前記照射する光は、200nm以上550nm以下の波長成分を含む光であることを特徴とするものである。
【0015】
次に、請求項4に記載した発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した構成に対し、前記光照射する前記キャリア輸送層の上に対向するように形成される有機発光層の発光色に応じて、照射する光の波長分布を変えることを特徴とするものである。
次に、請求項5に記載した発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した構成に対し、前記有機発光層を、ウェット成膜法を用いて形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、有機発光層と接するキャリア輸送層を成膜後に表面処理を施すことで、初期の寿命劣化を抑制する。
すなわち、本発明により、有機発光層と接触し且つ有機発光層よりも第1電極側に配置されるキャリア輸送層に光照射を行うことで、初期輝度劣化の要因の一つであるキャリア輸送層の発光に寄与する成分を光劣化させることができる。その結果、前記キャリア輸送層自身からの発光や、近接膜分子とのエキサイプレックスの形成などによる寿命の短い発光成分を取り除くことができることで、製造した有機ELディスプレイパネルを使用した有機ELディスプレイ装置における、初期の輝度劣化を抑制させることができる。つまり、効率の低下を抑えたディスプレイパネルのエージング効果が得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】有機EL素子の一例を説明する断面図である。
【図2】TFT付き基板の説を説明する断面図である。
【図3】有機EL素子の一例を説明する断面図である。
【図4】実施例1において用いた正孔輸送層材料の化学構造式を示す図である。
【図5】実施例2において用いた正孔輸送層材料の化学構造式を示す図である。
【図6】凸版印刷装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態の有機EL素子は、図1に示すように、基板101上に形成された第1電極102と、第1電極102と対向するように形成された第2電極107と、第1電極102と第2電極107との間に形成された発光媒体層108とを有する。発光媒体層108は、発光に寄与する有機発光層106と、電子あるいは正孔からなるキャリアを注入するキャリア注入層104と、キャリア注入層からキャリアを有機発光層106へ輸送するためのキャリア輸送層105と、を少なくとも備える。発光媒体層108はまた、陰極と有機発光層106の間に電子注入層や正孔ブロック層(正孔輸送層)を、陽極と有機発光層106の間に正孔注入層や電子ブロック層(正孔輸送層)等を必要に応じて積層した構造となっている。図1のキャリア輸送層105は、正孔輸送層である。正孔輸送層を設けない場合には、キャリア注入層104が、有機発光層106に接触するキャリア輸送層となる。
【0019】
さらに、前記有機EL素子は、各有機発光層106を区画する隔壁103を有する。このような有機EL素子を画素(サブピクセル)として配列することにより、画像表示装置とすることができる。各画素を構成する有機発光層106を例えばRGBの3色に塗り分けることで、フルカラーのディスプレイパネルを作製することができる。
【0020】
以下、本実施形態の構成について詳細に説明する。
本実施形態の有機EL表示装置の説明をするための例として、第1電極102を陽極、第2電極107を陰極としたアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置について述べる。この場合には、第1電極102は画素ごとに隔壁103で区画された画素電極として形成され、第2電極107は対向電極となる。また、キャリア注入層104は正孔輸送性の正孔注入層となる。もっとも、第1電極102側を陽極とした逆構造の有機EL素子としてもよい。この場合にはキャリア注入層は電子輸送性の電子注入層となる。
【0021】
<基板>
図2に本実施形態で適用可能な隔壁103付きTFT基板101の例を示した。
本実施形態のアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置に用いる基板101(バックプレーン)308には、薄膜トランジスタ(TFT)と有機EL表示装置の下部電極(画素電極)とが設けられており、かつ、TFTと下部電極とが電気的に接続している。
【0022】
TFTや、その上方に構成されるアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置は、基板本体である支持体101Aに支持される。支持体101Aとしては、機械的強度、絶縁性を有し寸法安定性に優れた支持体101Aであれば如何なる材料も使用することができる。例えば、支持体101Aとして、ガラスや石英、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルムやシート、または、これらプラスチックフィルムやシートに酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属酸化物や、弗化アルミニウム、弗化マグネシウム等の金属弗化物、窒化珪素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物、酸窒化珪素などの金属酸窒化物、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などの高分子樹脂膜を単層もしくは積層させた透光性基材や、アルミニウムやステンレスなどの金属箔、シート、板や、前記プラスチックフィルムやシートにアルミニウム、銅、ニッケル、ステンレスなどの金属膜を積層させた非透光性基材などを用いることができる。有機EL素子における光取り出しをどちらの面から行うかに応じて、支持体101Aの透光性を選択すればよい。これらの材料からなる支持体101Aは、有機EL表示装置内への水分の侵入を避けるために、無機膜を形成したり、フッ素樹脂を塗布したりして、防湿処理や疎水性処理を施してあることが好ましい。特に、発光媒体層108への水分の侵入を避けるために、支持体101Aにおける含水率およびガス透過係数を小さくすることが好ましい。
【0023】
支持体101A上に設ける薄膜トランジスタは、公知の薄膜トランジスタを用いることができる。具体的には、主として、ソース/ドレイン領域及びチャネル領域が形成される活性層、ゲート絶縁膜及びゲート電極から構成される薄膜トランジスタが挙げられる。薄膜トランジスタの構造としては、特に限定されるものではなく、例えば、スタガ型、逆スタガ型、トップゲート型、コプレーナ型等が挙げられる。
【0024】
活性層311は、特に限定されるものではなく、例えば、非晶質シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、セレン化カドミウム等の無機半導体材料又はチオフエンオリゴマー、ポリ(p−フェリレンビニレン)等の有機半導体材料により形成することができる。これらの活性層311は、例えば、次のような方法によって形成される。
【0025】
(a)アモルファスシリコンをプラズマCVD法により積層し、イオンドーピングする方法;SiH4ガスを用いてLPCVD法によりアモルファスシリコンを形成し、固相成長法によりアモルファスシリコンを結晶化してポリシリコンを得た後、イオン打ち込み法によりイオンドーピングする方法。
【0026】
(b)Si26ガスを用いてLPCVD法により、また、SiH4ガスを用いてPECVD法によりアモルファスシリコンを形成し、エキシマレーザー等のレーザーによりアニールし、アモルファスシリコンを結晶化してポリシリコンを得た後、イオンドーピング法によりイオンドーピングする方法(低温プロセス)。
【0027】
(c)減圧CVD法又はLPCVD法によりポリシリコンを積層し、1000℃以上で熱酸化してゲート絶縁膜を形成し、その上にn+ポリシリコンのゲート電極8を形成し、その後、イオン打ち込み法によりイオンドーピングする方法(高温プロセス)
ゲート絶縁膜309としては、通常、ゲート絶縁膜として使用されているものを用いることができ、例えば、PECVD法、LPCVD法等により形成されたSiO2や、ポリシリコン膜を熱酸化して得られるSiO2等を用いることができる。
【0028】
ゲート電極314としては、通常、ゲート電極として使用されているものを用いることができる。ゲート電極314の材料は、例えば、アルミ、銅等の金属;チタン、タンタル、タングステン等の高融点金属;ポリシリコン;高融点金属のシリサイド;ポリサイド;等が挙げられる。
薄膜トランジスタは、シングルゲート構造、ダブルゲート構造、ゲート電極が3つ以上のマルチゲート構造であってもよい。また、LDD構造、オフセット構造を有していてもよい。さらに、1つの画素中に2つ以上の薄膜トランジスタが配置されていてもよい。
【0029】
本実施形態のディスプレイパネルは、薄膜トランジスタが有機EL表示装置のスイッチング素子として機能するように接続されている必要があり、トランジスタのドレイン電極310と有機EL表示装置の画素電極が電気的に接続されている。
【0030】
<画素電極>
基板101の上に画素電極102を成膜し、必要に応じてパターニングをおこなう。本実施形態では、画素電極は隔壁103によって区画されることで、各画素に対応した画素電極となる。
【0031】
画素電極の材料としては、ITO(インジウムスズ複合酸化物)やインジウム亜鉛複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化物などの金属複合酸化物や、金、白金などの金属材料や、これら金属酸化物や金属材料の微粒子をエポキシ樹脂やアクリル樹脂などに分散した微粒子分散膜を、単層もしくは積層したものをいずれも使用することができる。画素電極を陽極とする場合にはITOなど仕事関数の高い材料を選択することが好ましい。下方から光を取り出す、いわゆるボトムエミッション構造の場合は透光性のある材料を選択する必要がある。必要に応じて、画素電極の配線抵抗を低くするために、銅やアルミニウムなどの金属材料を補助電極として併設してもよい。
【0032】
画素電極の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式成膜法や、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの湿式成膜法などを用いることができる。画素電極のパターニング方法としては、材料や成膜方法に応じて、マスク蒸着法、フォトリソグラフィー法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法などの既存のパターニング法を用いることができる。基板101としてTFTを形成した基板を用いる場合は、下層の画素に対応して導通を図ることができるように形成する。
【0033】
<キャリア注入層>
本実施形態のキャリア注入層104は、画素電極を覆うようにパターンあるいは基板101上の全面に成膜される。
【0034】
キャリア注入層104を形成する正孔輸送材料としては、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVK)誘導体、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などが挙げられる。これらの材料は溶媒に溶解または分散させ、スピンコーター等を用いた各種塗布方法や凸版印刷方法を用いて形成される。
【0035】
また正孔輸送材料として無機材料を用いる場合、無機材料としては、Cu2O,Cr23,Mn23,FeOx(x:〜0.1),NiO,CoO,Pr23,Ag2O,MoO2,Bi23、ZnO,TiO2,SnO2,ThO2,V25,Nb25,Ta25,MoO3,WO3,MnO2等の遷移金属酸化物およびこれらの窒化物、硫化物を一種以上含んだ無機化合物を用いることができる。ただし材料はこれらに限定されるものではない。無機材料は耐熱性および電気化学的安定性に優れている材料が多いため好ましい。これらは単層もしくは複数の層の積層構造、又は混合層として形成することができる。好ましい膜厚は5nm以上であり、より好ましくは15nm程度以上である。正孔輸送層の形成法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などのドライ成膜法や、スピンコート法、ゾルゲル法、などのウェット成膜法など既存の成膜法を用いることができるが本発明ではこれらに限定されず、一般的な成膜法を用いることができる。
【0036】
<隔壁>
本実施形態の隔壁103は、画素に対応した発光領域を区画するように形成する。隔壁103は、画素電極102の端部(周縁)を覆うように形成するのが好ましい。一般的にアクティブマトリクス駆動型の表示装置は各画素(サブピクセル)に対して画素電極102が形成され、それぞれの画素ができるだけ広い面積を占有しようとする。このため、画素電極の端部を覆うように形成される隔壁103の最も好ましい形状は、各画素電極を最短距離で区切る格子状を基本とする。
【0037】
隔壁103の形成方法としては、従来と同様、基体上に無機膜を一様に形成し、レジストでマスキングした後、ドライエッチングを行う方法や、基体上に感光性樹脂を積層し、フォトリソ法により所定のパターンとする方法が挙げられる。必要に応じて撥水剤を添加したり、プラズマやUVを照射して形成後にインクに対する撥液性を付与することもできる。
【0038】
隔壁103の好ましい高さは0.1μm以上10μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上2μm以下である。
【0039】
<キャリア輸送層>
キャリア注入層形成後、キャリア輸送層を形成することができる。
キャリア輸送層としての正孔輸送層に用いる材料として、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリアリーレン誘導体、アリールアミン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体などの、芳香族アミンを含むポリマーなどが挙げられる。これらの材料は溶媒に溶解または分散させ、スピンコーター等を用いた各種塗布方法や凸版印刷方法を用いて形成される。
【0040】
<キャリア輸送層表面処理>
キャリア輸送層としの正孔輸送層の形成後、図2に示すように、正孔輸送層表面に光照射109することで酸化反応をおこし蛍光量子収率の低下を引き起こさせる。
照射する光の波長分布としては、選択された正孔輸送層材料が吸収しうる光の波長以下であれば酸化反応を起こさせることが可能である。その吸収しうる光の波長としては、200nm以上550nm以下の波長の光の成分が含まれている光が望ましい。
【0041】
前記光照射は正孔輸送層を設けない構造の場合でも適用可能である。この場合、有機発光層106と接するキャリア輸送層は正孔注入層104(キャリア注入層)となり、その正孔注入層に対する光照射により、同様の効果を得ることができる。
【0042】
光照射方法としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライド、ハロゲンランプ、レーザー照射など200nm以上550nm以下の波長成分が含まれていれば、特に限定されることはない。
【0043】
上述のように、有機発光層106と界面を形成するキャリア輸送層の表面に光照射することによって、キャリア輸送層(本実施形態では正孔輸送層)自身からの発光や、近接膜分子とのエキサイプレックスの形成などによる寿命の短い発光成分を取り除くことができる。これによって、ELディスプレイの初期の輝度劣化を抑制させることができ、効率を下げることのないディスプレイパネルのエージング効果が得ることができる。
【0044】
光照射する波長(平均波長)は、各画素の発光色、すなわち形成する有機発光層106に応じて異ならせても良い。光照射の波長が吸収波長領域に含まれるようにすることにより、エージング効果がより効果的になる。照射する光の照射量は、照射対象の材料によって異なるが、照射開始直後の膜からのフォトルミネセンス発光強度に基づき照射量を決定することが好ましい。
【0045】
<有機発光層>
キャリア輸送層としての正孔輸送層105を形成、及び光照射の処理をした後に、有機発光層106を形成する。有機発光層106は電流を通すことにより発光する層であり、有機発光層106から放出される表示光が単色の場合、正孔輸送層105を被覆するように形成するが、多色の表示光を得るには必要に応じてパターニングを行うことで好適に用いることができる。
【0046】
有機発光層106を形成する有機発光材料は、例えばクマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系などの発光性色素をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に分散させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系やポリフルオレン系の高分子材料が挙げられるが、本実施形態はこれらに限定されるわけではない。
【0047】
これらの有機発光材料は溶媒に溶解または安定に分散させ有機発光インキとなる。有機発光材料を溶解または分散する溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどの単独またはこれらの混合溶媒が挙げられる。中でもトルエン、キシレン、アニソールといった芳香族有機溶媒が有機発光材料の溶解性の面から好適である。また、有機発光インキには必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等が添加されてもよい。
【0048】
上述した高分子材料に加え、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス[8−(パラ−トシル)アミノキノリン]亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレンなどの低分子系発光材料が使用できる。
【0049】
有機発光層106の形成法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などのドライ成膜法や、インクジェット印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などのウェット成膜法など既存の成膜法を用いることができるが、本実施形態はこれらに限定されるわけではない。
【0050】
<発光媒体層の形成方法>
塗布法で発光媒体層108を形成する場合、下記のような凸版印刷法を用いることができる。特に有機発光材料を溶媒に溶解または安定に分散させた有機発光インキを用いて有機発光層106を各発光色に塗り分ける場合には、隔壁103間にインキを転写してパターニングできる凸版印刷法が好適である。
【0051】
図4に凸版印刷装置600の概略図を示す。この凸版印刷装置600は、有機発光材料からなる有機発光インキを、画素電極、正孔注入層、正孔輸送層が形成された被印刷基板101602上にパターン印刷する際に使用されるものである。
【0052】
本凸版印刷装置600は、インクタンク603と、インキチャンバー604と、アニロックスロール605と、凸部が設けられた版607がマウントされた版銅608と、を備える。インクタンク603には、溶剤で希釈された有機発光インキが収容されている。そして有機発光インキが、インクタンク603からインキチャンバー604に送り込まれるようになっている。アニロックスロール605は、インキチャンバー604のインキ供給部に接し且つ回転可能に支持されている。
【0053】
そして、アニロックスロール605の回転に伴い、アニロックスロール表面に供給された有機発光インキのインキ層609は均一な膜厚に形成される。このインキ層609のインキは、アニロックスロール605に近接して回転駆動される版胴608にマウントされた版607の凸部に転移される。一方、ステージ601には、被印刷基板101602が設置され、版607の凸部にあるインキが被印刷基板101602に対して印刷される。そして、必要に応じて乾燥工程を経て被印刷基板101上に有機発光層106が形成される。図4中、符号606はドクタを示す。
【0054】
他の発光媒体層108をインキ化して塗工する場合についても同様に前記凸版印刷装置600を使用した形成法を用いて形成することができる。
【0055】
<電子注入層>
有機発光層106を形成した後に、第2電極としての対向電極107を形成する前に、有機発光層106の上に、不図示の正孔ブロック層や電子注入層等を形成しても良い。これらの機能層は、有機ELディスプレイパネルの大きさ等から任意に選択することができる。
【0056】
正孔ブロック層および電子注入層に用いる材料としては、一般に電子輸送材料として用いられているものであれば良く、トリアゾール系、オキサゾール系、オキサジアゾール系、シロール系、ボロン系等の低分子系材料、フッ化リチウムや酸化リチウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩や酸化物等を用いて真空蒸着法による成膜が可能である。また、これらの電子輸送性材料およびこれら電子輸送材料をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に溶解させトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水等の単独または混合溶媒に溶解または分散させて電子注入塗布液とし、印刷法により成膜できる。
【0057】
<対向電極(第1電極)>
次に、対向電極107を形成する。対向電極を陰極とする場合には、有機発光層106への電子注入効率の高い、仕事関数の低い物質を用いる。具体的にはMg,Al,Yb等の金属単体を用いたり、発光媒体層108と接する界面にLiや酸化Li,LiF等の化合物を1nm程度挟んで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いてもよい。または電子注入効率と安定性を両立させるため、仕事関数が低いLi,Mg,Ca,Sr,La,Ce,Er,Eu,Sc,Y,Yb等の金属1種以上と、安定なAg,Al,Cu等の金属元素との合金系を用いてもよい。具体的にはMgAg,AlLi,CuLi等の合金が使用できる。
【0058】
対向電極107の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法を用いることができる。
【0059】
<封止体>
有機EL表示装置としては電極間に発光材料を挟み、電流を流すことで発光させることが可能であるが、有機発光材料は大気中の水分や酸素によって容易に劣化してしまうため、通常は外部と遮断するための封止体(不図示)を設ける。封止体は、例えば封止材上に樹脂層を設けて作製することができる。
【0060】
封止材としては、水分や酸素の透過性が低い基材である必要がある。また、材料の一例として、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素等のセラミックス、無アルカリガラス、アルカリガラス等のガラス、石英、耐湿性フィルムなどを挙げることができる。耐湿性フィルムの例として、プラスチック基材の両面にSiOxをCVD法で形成したフィルムや、透過性の小さいフィルムと吸水性のあるフィルムまたは吸水剤を塗布した重合体フィルムなどがあり、耐湿性フィルムの水蒸気透過率は、10-6g/m2/day以下であることが好ましい。
【0061】
樹脂層の材料の一例として、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂などからなる光硬化型接着性樹脂、熱硬化型接着性樹脂、2液硬化型接着性樹脂や、エチレンエチルアクリレート(EEA)ポリマー等のアクリル系樹脂、エチレンビニルアセテート(EVA)等のビニル系樹脂、ポリアミド、合成ゴム等の熱可塑性樹脂や、ポリエチレンやポリプロピレンの酸変性物などの熱可塑性接着性樹脂を挙げることができる。樹脂層を封止材の上に形成する方法の一例として、溶剤溶液法、押出ラミ法、溶融・ホットメルト法、カレンダー法、ノズル塗布法、スクリーン印刷法、真空ラミネート法、熱ロールラミネート法などを挙げることができる。必要に応じて吸湿性や吸酸素性を有する材料を含有させることもできる。封止材上に形成する樹脂層の厚みは、封止する有機EL表示装置の大きさや形状により任意に決定されるが、5μm以上500μmが望ましい。なお、ここでは封止材上に樹脂層として形成したが直接有機EL表示装置側に形成することもできる。
【0062】
有機EL表示装置と封止体との貼り合わせは、封止室で行う。封止体を、封止材と樹脂層の2層構造とし、樹脂層に熱可塑性樹脂を使用した場合は、加熱したロールで圧着のみ行うことが好ましい。熱硬化型接着樹脂を使用した場合は、加熱したロールで圧着した後、さらに硬化温度で加熱硬化を行うことが好ましい。光硬化性接着樹脂を使用した場合は、ロールで圧着した後、さらに光を照射することで硬化を行うことができる。
【実施例1】
【0063】
[実施例1]
以下、本発明の実施例について説明する。
基板101として、支持体101A上に設けられたスイッチング素子として機能する薄膜トランジスタと、その上方に形成された画素電極とを備えたアクティブマトリクス基板101を用いた。基板101のサイズは200mm×200mmでその中に対角5インチ、画素数は320×240のディスプレイが中央に配置されている。基板101の端部に取出し電極とコンタクト部が形成されている。
【0064】
この基板101上に設けられている画素電極の端部を被覆し且つ画素を区画するような形状で隔壁103を形成した。隔壁103の形成は、日本ゼオン社製ポジレジストZWD6216−6をスピンコーターにて基板101全面に厚み2μmで形成した後、フォトリソグラフィーによって幅40μmの隔壁103を形成した。これによりサブピクセル数960×240ドット、0.12mm×0.36mmピッチ画素領域が区画された。
【0065】
その後、モリブデンターゲットが設置されているスパッタリング成膜装置に基板101を設置し、取り出し電極やコンタクト部に成膜されないように、表示領域上に第1キャリア注入層をパターン成膜した。このときのスパッタ条件は圧力1Pa、電力1kWで酸素のアルゴンガスに対する流量比が30%であった。膜厚を50nmとした。
【0066】
次に、正孔輸送をもつ正孔輸送層材料として、図5に示す化学式からなるF8を濃度1%になるようにトルエンに溶解させた有機発光インキを用いて、基板101上に正孔輸送層を凸版印刷法で成膜した。すなわち、基板101を印刷機にセッティングし、絶縁層に挟まれた画素電極の真上に、そのラインパターンに合わせて正孔輸送層を凸版印刷法で成膜した。このとき100線/インチのアニロックスロールおよびピクセルのピッチに対応する感光性樹脂版を使用した。印刷、乾燥後の正孔輸送層層の膜厚は20nmとなった。乾燥後、高圧水銀ランプにて365nmの波長の紫外線を正孔輸送層材料の成膜した側から積算光量1Jを照射し、蛍光量子収率の低下を引き起こさせることによりエージングを完了した。
【0067】
次に、有機発光材料であるポリフェニレンビニレン誘導体を濃度1%になるようにトルエンに溶解させたインキを用い、この基板101を印刷機にセッティングし、絶縁層に挟まれた画素電極の真上にそのラインパターンに合わせて有機発光層106を凸版印刷法で印刷を行った。このとき150線/インチのアニロックスロールおよびピクセルのピッチに対応する感光性樹脂版を使用した。印刷、乾燥後の有機発光層106の膜厚は80nmとなった。この工程を計3回繰り返し、R(赤)、G(緑)、B(青)の発光色に対応する有機発光層106を各画素に形成した。
【0068】
その後、電子注入層として真空蒸着法でカルシウムを厚み10nm成膜し、その後対向電極としてアルミニウム膜150nm成膜した。
その後、封止材としてガラス板を発光領域全てをカバーするように載せ、約90℃で1時間接着剤を熱硬化して封止を行った。こうして得られたアクティブマトリクス駆動型有機ELディスプレイパネルに電源、信号と供給源を接続しパネルを点灯させた。初期輝度を200cd/m2になるように電流量を調整し、輝度の変化を測定したところ約50hで初期輝度の95%である190cd/m2になった。
【0069】
[実施例2]
実施例1と同様の基板101を用い、基板101上に設けられている画素電極の端部を被覆し画素を区画するような形状で隔壁103を形成した。隔壁103の形成は、日本ゼオン社製ポジレジストZWD6216−6をスピンコーターにて基板101全面に厚み2μmで形成した後、フォトリソグラフィーによって幅40μmの隔壁103を形成した。これによりサブピクセル数960×240ドット、0.12mm×0.36mmピッチ画素領域が区画された。
【0070】
その後、モリブデンターゲットが設置されているスパッタリング成膜装置に設置し、取り出し電極やコンタクト部に成膜されないように、表示領域上に第1キャリア注入層をパターン成膜した。このときのスパッタ条件は、圧力1Pa、電力1kWで酸素のアルゴンガスに対する流量比が30%であった。膜厚を50nmとした。
【0071】
次に、正孔輸送をもつ正孔輸送層材料として図6に示す化学式からなるTFBを濃度1%になるようにアニソールに溶解させたインキを用い、正孔輸送層を凸版印刷法で成膜した。すなわち、基板101を印刷機にセッティングし、絶縁層に挟まれた画素電極の真上にそのラインパターンに合わせて正孔輸送層を凸版印刷法で成膜した。このとき100線/インチのアニロックスロールおよびピクセルのピッチに対応する感光性樹脂版を使用した。印刷、乾燥後の正孔輸送層層の膜厚は20nmとなった。乾燥後、メタルハライドランプにて365nmの波長の紫外線を正孔輸送層材料の成膜した側から積算光量1.5Jを照射し、蛍光量子収率の低下を引き起こさせることによりエージングを完了した。
【0072】
次に、有機発光材料であるポリフェニレンビニレン誘導体を濃度1%になるようにトルエンに溶解させたインキを用い、有機発光層106を凸版印刷法で形成した。すなわち、基板101を印刷機にセッティングし、絶縁層に挟まれた画素電極の真上にそのラインパターンに合わせて有機発光層106を凸版印刷法で印刷を行った。このとき150線/インチのアニロックスロールおよびピクセルのピッチに対応する感光性樹脂版を使用した。印刷、乾燥後の有機発光層106の膜厚は80nmとなった。この工程を計3回繰り返し、R(赤)、G(緑)、B(青)の発光色に対応する有機発光層106を各画素に形成した。
【0073】
その後、電子注入層として真空蒸着法でカルシウムを厚み10nm成膜し、その後対向電極としてアルミニウム膜150nm成膜した。
その後、封止材としてガラス板を発光領域全てをカバーするように載せ、約90℃で1時間接着剤を熱硬化して封止を行った。こうして得られたアクティブマトリクス駆動型有機ELディスプレイパネルを駆動させるために、実施例1と同様に電源、信号を供給源を接続しパネルを点灯させた。実施例1と同様に初期輝度を200cd/m2になるように電流量を調整し、輝度の変化を測定したところ約64hで初期輝度の95%である190cd/m2になった。
【0074】
[比較例]
実施例1と同じ基板101を用いて同様の条件で正孔輸送層層まで成膜・乾燥を行い、本実施形態に係る光照射処理を施すことなく、有機発光層成膜以降のプロセスを行い有機ELディスプレイパネルを作製した。
【0075】
その後、こうして得られたアクティブマトリクス駆動型有機ELディスプレイパネルに電源、信号と供給源を接続しパネルを点灯させた。初期輝度を200cd/m2になるように電流量を調整し、輝度の変化を測定したところ約2hで初期輝度の95%である190cd/m2になった。
【0076】
前記の実施例1、2と比較例のディスプレイパネルの初期輝度から95%の輝度になるまでの時間を比較すると実施例1:実施例2:比較例=25:32:1であり、正孔輸送層材料の蛍光量子収率を落とす処理を施すことで、長寿命化が達成できた。
【符号の説明】
【0077】
101 基板
101A 支持体
102 第1電極(画素電極)
103 隔壁103
104 正孔注入層(キャリア注入層)
105 正孔輸送層(キャリア輸送層)
106 有機発光層
107 第2電極(対向電極)
108 発光媒体層
109 光照射
600 凸版印刷装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に少なくとも第1電極、第1電極に対向する第2電極、及び前記第1電極と第2電極の間に配置される発光媒体層を形成し、前記発光媒体層は、有機発光層と、前記有機発光層に第1電極側で接触するキャリア輸送層とを少なくとも備える有機ELディスプレイパネルの製造方法であって、
前記発光媒体層を形成する前に、前記基板上に形成した前記キャリア輸送層の表面に対し光照射を行うことを特徴とする有機ELディスプレイパネルの製造方法。
【請求項2】
前記照射する光は、前記キャリア輸送層が吸収可能な波長が含まれていることを特徴とする請求項1に記載した有機ELディスプレイパネルの製造方法。
【請求項3】
前記照射する光は、200nm以上550nm以下の波長成分を含む光であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した有機ELディスプレイパネルの製造方法。
【請求項4】
前記光照射する前記キャリア輸送層の上に形成される有機発光層の発光色に応じて、照射する光の波長分布を変えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した有機ELディスプレイパネルの製造方法。
【請求項5】
前記有機発光層を、ウェット成膜法を用いて形成することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した有機ELディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−210613(P2011−210613A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78572(P2010−78572)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】