説明

有機ELデバイス製造装置及び角度補正機構

【課題】
本発明は、クラスタ構造を有し、ライン長を短くできる、あるいは、スペース効率のよい有機ELデバイス製造装置または基板の姿勢を補正する角度補正機構を提供することである。
【解決手段】
本発明は、第1の櫛歯状ハンドによって基板を搬入する搬入口と、第2の櫛歯状ハンドによって前記基板を搬出する搬出口と、前記基板を支持する複数の支持ピンと、複数の前記支持ピンを固定し、前記基板を支持し回転させる支持ピン回転台と、前記支持ピン回転台を前記基板と平行な平面内で回転させる回転駆動手段と、複数の前記支持ピンと、前記第1の櫛歯状ハンドと前記第2の櫛歯状ハンドの少なくとも一方との干渉を回避する回避手段と、有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELデバイス製造装置及び角度補正機構に係わり、特に大型基板を搬送して蒸着法による製造に好適な有機ELデバイス製造装置及び基板姿勢を補正する角度補正機構に関する。
【背景技術】
【0002】
表示デバイスとして有機ELデバイスが注目され、その製造する有力な方法として真空蒸着法がある。有機ELデバイス製造するには、単に発光材料層(EL層)を形成し電極で挟むだけの構造ではなく、陽極の上に正孔注入層や輸送層、陰極の上に電子注入層や輸送層をなど様々な材料が薄膜としてなる多層構造を形成すために、有機ELデバイス製造装置は処理チャンバを複数有するクラスタが複数連なる構成をとる。このような従来技術としては下記のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−027213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、クラスタ構造では、各処理部が放射状に配置されるために、かつ各クラスタ間の処理部が干渉しないように離間して配置されるために、各クラスタ間の距離を長くとる必要があり、ライン全体として長くなる課題がある。特に、昨今は表示デバイスに使用される基板サイズも1500mm×1850mmにも及び、ますますライン長が長くなる。また、放射状の配置は、クラスタ及び処理部間にデットスペースができスペース効率が悪い。
【0005】
なお、本発明おけるクラスタとは、基板を搬送する方向の少なくとも片側に設けられた複数の基板処理部と基板搬入出部を有するものをいう。
【0006】
従って、本発明の第一の目的は、クラスタ構造を有し、ライン長を短くできる有機ELデバイス製造装置または基板の姿勢を補正する角度補正機構を提供することである。
また、本発明の第二の目的は、クラスタ構造を有し、スペース効率のよい有機ELデバイス製造装置または基板の姿勢を補正する角度補正機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するために、少なくとも下記の特徴を有する。
本発明は、第1の櫛歯状ハンドによって基板を搬入する搬入口と、第2の櫛歯状ハンドによって前記基板を搬出する搬出口と、前記基板を支持する複数の支持ピンと、複数の前記支持ピンを固定し、前記基板を支持し回転させる支持ピン回転台と、前記支持ピン回転台を前記基板と平行な平面内で回転させる回転駆動手段と、複数の前記支持ピンと、前記第1の櫛歯状ハンドと前記第2の櫛歯状ハンドの少なくとも一方との干渉を回避する回避手段と、有する角度補正機構であることを第1の特徴とする。
また、前記回避手段は、複数の前記支持ピンを前記第1の櫛歯状ハンドと前記第2の櫛歯状ハンドの少なくとも一方との干渉をしないようにマトリックス状に配置してもよい。
さらに、前記回避手段は、前記基板を載置した前記支持ピン回転台を上下する上下駆動手段と、前記支持ピン回転台の上部に平行に設けられ、複数の凸部を有し、前記凸部間に前記第1の櫛歯状ハンドと前記第2の櫛歯状ハンドを挿入可能であり、複数の前記支持ピンが可動な溝を備える基板載置台とを有してもよい。
【0008】
また、本発明は、上記の目的を達成するために、蒸着材料を基板に蒸着する処理部を具備する真空処理チャンバと、前記基板を搬入または搬出し、第1の特徴を有する角度補正機構を有する受渡室と、前記基板を前記受渡室と前記複数の処理部との間を搬送する搬送手段とを具備する真空チャンバと、を有する有機ELデバイス製造装置であることを第2の特徴とする。
さらに、本発明は、蒸着材料を基板に蒸着する処理部を具備する真空処理チャンバと、前記基板を搬入または搬出する受渡室と、前記基板を前記受渡室と前記複数の処理部との間を搬送する搬送手段とを具備する真空チャンバとを有するクラスタを複数有し、前記受渡室とは別に、前記基板を搬入する搬入ロード室と前記基板を搬出する搬出ロード室を備え、かつ、前記搬入ロード室から前記搬出ロード室へ前記基板を搬送する搬送系を構成する搬送部において、第1の特徴を有する角度補正機構を設けた、有機ELデバイス製造装置であることを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クラスタ構造を有し、ライン長を短くできるまたは基板の姿勢を補正する角度補正機構を提供することができる。
また、本発明によれば、クラスタ構造を有し、スペース効率のよいまたは基板の姿勢を補正する角度補正機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態である有機ELデバイス製造装置を示す図である。
【図2】本発明の実施形態である搬送チャンバ2と処理チャンバ1の構成の概要を示す図である。
【図3】本発明の実施形態である搬送チャンバと処理チャンバの構成の模式図と動作説明図である。
【図4】角度補正機構の必要性を説明する図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における角度補正機構の第1の実施例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態における角度補正機構の第2の実施例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態である処理チャンバ1の処理フローを示した図である。
【図8】シャドウマスクの一例を示す図である。
【図9】本発明の(3)の実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の実施形態を図1から図7を用いて説明する。有機ELデバイス製造装置は、単に発光材料層(EL層)を形成し電極で挟むだけの構造ではなく、陽極の上に正孔注入層や輸送層、陰極の上に電子注入層や輸送層をなど様々な材料が薄膜としてなる多層構造を形成したり、基板を洗浄したりする。図1はその製造装置の一例を示したものである。
【0012】
本実施形態における有機ELデバイス製造装置100は、大別して処理対象の基板6(以下、単に基板という)を搬入するロードクラスタ3、前記基板6を処理する4つのクラスタ(A〜D)、各クラスタ間又はクラスタとロードクラスタ3あるいは次工程(封止工程)との間の設置された5つの受渡室4から構成されている。次工程の後方には基板を搬出するために少なくとも後述するロード室31のようなアンロード室(図示せず)がある。
【0013】
ロードクラスタ3は、前後に真空を維持するためにゲート弁10を有するロード室31と前記ロード室31から基板6を受取り、旋回して受渡室4aに基板6を搬入する搬送ロボット5Rからなる。各ロード室31及び各受渡室4は前後にゲート弁10を有し、当該ゲート弁10の開閉を制御し真空を維持しながらロードクラスタ3あるいは次のクラスタ等へ基板を受渡する。
【0014】
有機ELデバイス製造装置100は、放射状形状ではなく長方形または正方形の形状を有するクラスタを、図1の矢印に示す搬送方向に対して直列に配置している。各クラスタ(A〜D)は、一台の搬送ロボット5を有する搬送チャンバ2と、搬送ロボット5から基板を受取り、所定の処理をする図面上で上下に配置された2つの処理チャンバ1(第1の添え字a〜dはクラスタを示し、第2の添え字u、dは上側下側を示す。以下英文字である添え字において、小文字は場所を、大文字は構成要素を示す)を有する。各処理チャンバには、矢印に示す搬送方向に対して平行に配置された2つの処理部がある。例えば、後述するように、真空蒸着チャンバである処理チャンバ1buには、処理部1buLと1buRがある。他の処理チャンバにおいても同様である。図1においては符号が煩雑になるために、処理チャンバ1buと1cdのみに添え字L(左側)、R(右側)を付している。搬送チャンバ2と処理チャンバ1の各処理部にはゲート弁10が設けてある。
【0015】
図2は、搬送チャンバ2と処理チャンバ1の構成の概要を示す。処理チャンバ1の構成は処理内容によって異なるが、真空で発光材料を蒸着しEL層を形成する真空蒸着チャンバ1buを例にとって説明する。図3は、そのときの搬送チャンバ2bと真空蒸着チャンバ1buの構成の模式図と動作説明図である。図2における搬送ロボット5は、全体を上下に移動可能(図3の矢印53参照)で、左右に旋回可能な3リンク構造のアーム51を有し、その先端には基板搬送用の櫛歯状ハンド52を上下二段に2本有する。上下二段にすることによって、上は搬入用、下は搬出用とし、一つの動作で搬入出処理を同時に行なうことができる。2本ハンドにするか1本ハンドにするかは処理内容によって決める。以後の説明では、説明を簡単にするために1本ハンドで説明する。
【0016】
一方、真空蒸着チャンバ1buは、大別して発光材料を蒸発させ基板6に蒸着させる蒸着部7と、基板6の必要な部分に蒸着させるアライメント部8と、及び搬送ロボット5と基板の受渡しを行い、蒸着部7へ基板6を移動させる処理受渡部9からなる。アライメント部8と処理受渡部9には、左側処理部にある8L、9Lと、右側処理部にある8R、9Rを設ける。処理受渡部9は、搬送ロボット5の櫛歯状ハンド52と干渉することなく基板6を受渡し可能で、基板6を固定する手段94を有する櫛歯状ハンド91と、前記櫛歯状ハンド91を旋回させて基板6を直立させて、アライメント部8あるいは蒸着部7に移動し対面させる基板面制御手段92を有する。前記固定する手段としては、真空中であることを考慮して電磁吸着やクリップする手段等を用いる。
【0017】
アライメント8は、図8に示すマスク81M、フレーム81Fからなるシャドウマスク81と基板上のアライメントマーク84によって基板6とシャドウマスク81と位置合せをするアライメント駆動部83とを有する。蒸着部7は、蒸発源71をレール76上に沿って上下方向に移動させる上下駆動手段72、蒸発源71がレール75上に沿って左右のアライメント部間を移動する左右駆動ベース74を有する。蒸発源71は、内部に蒸着材料である発光材料を有し、前記蒸着材料を加熱制御(図示せず)することによって安定した蒸発速度が得られ、図3の引出し図に示すように、ライン状に並んだ複数の噴射ノズル73から噴射される構造となっている。必要によっては、安定した蒸着が得られるように添加剤も同時に加熱して蒸着する。
【0018】
以上実施形態において、搬送ロボット5は、真空中に有する機構をなるべく簡単化するために、全体の上下移動と、ベース部の回転と、櫛歯状ハンド52を放射状に伸縮させる3自由度で構成されている。そこで、図4に示すように受渡室4bに基板6が破線で示すように平行に搬入され、搬送ロボット5bが基板6をそのまま処理受渡部9buLに搬送すると、基板6は処理受渡部9buLに対してある角度αLを持った状態で斜めに設置される。これに対処するには、(1)図4の実線で示すように長方形の基板6が処理受渡部1buLに対して平行に重なるように、前述した角度αLを搬送系で補正するか、(2)搬送ロボット5の自由度を増やすか、(3)蒸着部で補正するか、が必要である。
【0019】
まず、(1)の本実施形態を説明する。そこで、上記した実施形態の説明に中で搬送系を構成するのは、ロードクラスタ3のロード室31、搬送ロボット5R、受渡室4、搬送チャンバ2の搬送ロボット5及び処理チャンバ1の処理受渡部9である。少なくともこのうちどこかで補正する必要がある。しかし、真空チャンバ内はなるべくシンプルな構造とする必要があり、ロード室31又は受渡室4で補正することが望ましい。ロード室31と受渡室4の構造は基本的には同じであるので、受渡室4を例に取る。
【0020】
図5は、角度補正機構の第1の実施例として受渡室4における角度補正機構を示した図である。図5(a)は搬送ロボット5の櫛歯状ハンド52を受渡室4に挿入した時を上から見た鳥瞰図で、図5(b)は受渡室4の側面図を示した図である。
受渡室4は、両サイドの基板搬入出口に設けられたゲート弁10I、10Eと複数の支持ピン4Pを有する載置台4Dと角度補正機構4Hとを有し、前記角度補正機構4Hは、載置台4Dを支持する載置台支持部4Sと、前記載置台支持部4Sを左右に回転させる回転駆動モータ4KMと、載置台支持部4Sをシールする磁気シール4Jとから構成されている。
【0021】
このような機構において、図5(a)の破線で示すように、クラスタAの搬送ロボット5aが、基板6を無回転状態の載置台4Dに、その載置台に平行な状態で載置した後、搬送ロボット5bが、図4に示す処理受渡部1buLに重なるように搬送する場合を想定する。この場合、前述したように、処理受渡部9buLに搬送ロボット5bから見て、基板6を右にαL度の回転させた状態で搬送すればよい。
【0022】
その動作フローを見ると、先ず、ゲート弁10E閉じた状態でゲート弁10Iを開き、搬送ロボット5aの櫛歯状ハンド52aによりゲート弁の開口部10IKから基板を搬入し、載置台4Dに載置する。前記櫛歯状ハンド52aが退出後、弁体10IBを閉じるとともに、載置台4Dを前記角度補正機構4Hにより右にαL度回転させる。その後、ゲート弁10Eを開き、その開口部10EKから搬送ロボット5bの櫛歯状ハンド52bを挿入し、基板6を持ち上げて搬出する。搬送ロボット5bは、そのベースを処理受渡部1buLの方向に回転させてリンク長さを調節しながら処理受渡部9buLに基板6を載置する。
【0023】
以上の説明では、基板6を受渡室4に平行な状態で搬入し、載置台4Dに設置する場合を説明したが、基板6が角度βを持って設置された場合は、基板6の櫛歯状ハンド52bに対する角度がαLになるように載置台4Dの角度を制御する。
【0024】
本実施例では、載置台4Dが角度補正をした後、搬送ロボット5bを支持ピン4Pと干渉することなく、載置台4Dと基板6の間に挿入することができるように、支持ピン4Pの太さ、間隔及び櫛歯状ハンド52の櫛歯の本数、幅等を決定する。図5(a)では、実線が角度補正後の基板6とその時の支持ピン4Pの状態を示し、破線が角度補正前の状態を示している。
【0025】
図6は、受渡室4における角度補正機構の第2の実施例を示した図である。
第1の実施例では、前述した支持ピンの大きさにより、搬送ロボット5bの搬入領域、即ち搬入角度αL等が制限される。後述するように各クラスタの構成が同じで、搬送する基板の大きさが一定の場合には、角度αL等を一定にすることが可能である。そのような場合は、第1の実施例は機構が簡単で優れている。しかし、そうでない場合は第1の実施例では多少の制約が出てくる。そこで、第2の実施例の角度補正機構4Hは、載置台4Dを回転させずに基板6のみを回転させる機構を有する。その結果、搬送ロボット5bの搬入ルートの形状は不変となり、如何なる角度にも対応でき、櫛歯状ハンド52bの櫛歯の幅を値小さくでき対応できる基板サイズを広くすることができる。
【0026】
図6において、角度補正機構は、支持ピン4Pと、前記支持ピンを固定した支持ピン回転台4KDと、前記支持ピン回転台4KDを回転台支持部4SJを介して、左右に回転させる回転駆動モータ4KMと、上下に移動させる上下駆動モータ4JMとで構成されている。なお、4Vは回転台支持部4SJの上下移動に対するシール用ベローである。一方、載置台4Dは固定であり、その横断面は図6(a)示すように、基板を6支持する凸部4DTを有する。また、載置台4Dには、支持ピン4Pを回転可能とする各支持ピン又は支持ピン群に対する可動溝4SKがある。
【0027】
このような機構において、先ず、搬送ロボット5aが受渡室4bに搬入し、基板6を載置台4Dの凸部4DTに載置する。このとき、支持ピン4Pは支持ピン回転台4KDとともに最下位位置にある。その後、支持ピン回転台4KDを上昇させ、支持ピン4Pで基板6を支持し、所望の角度、例えばαL度、支持ピン回転台4KDを回転させ、その状態で支持ピン回転台4KDを降下させて、載置台4Dに基板6を載置する。次に、搬送ロボット5bを搬入させ、基板6を把持し受渡室4bから搬出する。
【0028】
以上のように、本実施例では、搬送ロボット5bにとって、どのような角度になっても常に載置台4Dの凸部4DT間を搬出ルートとすることができる。なお、本実施例では、細長い凸部4DTで基板6を載置したが、直線状に配置した支持ピンで載置してもよい。
【0029】
以上説明したように、本実施形態によれば、受渡室に、基板の搬送角度を変える角度補正機構を設けることで、長方形の処理チャンバ有するクラスタ構造を直列に連結することができ、全体のライン長を短くできる有機ELデバイス製造装置を提供できる。
また、本実施形態によれば、上記のクラスタ構造を有するライン構成を実現でき、スペース効率のよい有機ELデバイス製造装置または同製造方法を提供することができる。
【0030】
以上の説明において、例えば、αR、αLの関係を考慮せずに説明してきた。
従って、角度補正機構を各受渡部4に設ければ、各クラスタまたは各処理チャンバの寸法あるいは基板サイズに対応できる。
【0031】
一連の処理において、図1における各処理チャンバ同士、あるいは、一つの処理チャンバの中に図3に示すように複数の処理部同士を同一形状、同一配置にすることができる。
例えば、図1の実施形態において、クラスタA〜Dは同一形状、同一配置であり、しかも各クラスタの上下に配置された2つの処理チャンバも搬送方向に対して線対称であり、しかも一つの処理チャンバにおける2つの処理部も搬送方向に垂直線に対して線対称である。搬送ロボット5は搬送チャンバ、強いて言えばクラスタの中心位置に配置される。
その結果、図4におけるαR、αLは、αR=−αL=αとなり、処理チャンバ1bdでは、処理チャンバ1buとクロスの関係にあるので、処理受渡部9bdRではαの値を、処理受渡部9bdLでは−αの値をとる。
【0032】
そこで、先ず第1に受渡室4の角度補正機構は、同一サイズ基板を処理するのであれば、連続した値をとる必要がなく、一定の角度±αの2値の値をとればよい。この場合は、第1実施形態の第1の実施例が有効になる。
この場合において、同一クラスタ内でαから−α或いは−αからαを持つ処理受渡部に基板6を搬送するときは、そのクラスタが接する受渡室4で角度補正を行なう必要がある。
【0033】
図1に示す実施形態では、後述するように同一処理チャンバ内での2つの処理部の処理は同一である。従って、同一クラスタ内では、αからα或いは−αから−αを持つ処理受渡部に搬送することになる。さらに、各クラスタの補正角度が±αで同一であるならば、ある基板は、すべて補正角度αで、次の基板はすべて補正角度−αで有機ELデバイス製造装置100の搬入口から搬出口まで処理され、搬送されることになる。この場合は、なるべく上流側で一度角度補正をすればよく、前記前提条件が変わらなければ下流での角度補正は不要である。勿論、前記前提条件が変わるところには角度補正機構を設ける必要がある。
【0034】
本実施形態での候補としてはロード室31と受渡室4aである。ロード室31では、受渡室と同様な機構を設けてもよいが、ロード室31に基板6を搬入するときに予め±αの角度を待たせて搬入させてもよい。また、ロード室31には、基板毎に搬入するのではなく、複数枚収納されたカセット単位で搬入するのであれば、上側のロード室31にはαの角度を持つカセット、下側のロード室31には−αの角度を持つカセットを配置してもよい。
【0035】
本実施形態によれば、2つの同一ラインを並列に持つことができるので、全体生産ラインを見かけ上長くなることもあるが、生産量に対する単位長さにおいては従来に比べて短くすることができる。
【0036】
次に(2)の搬送ロボットの自由度を増やす方法についての実施形態を説明する。図5に示す搬送ロボット5の櫛歯状ハンド52を左右回転させる自由度を設ける。例えば櫛歯状ハンド52のリンクとの接続部52Jにその自由度を設ける。真空チャンバ内に移動する機構を新たに設けることは好ましくはないが、上記第1の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0037】
(3)の蒸着部で補正する方法を説明する前に、図7を用いて、図1から図3に示した処理チャンバ1が、受渡室4又はその上流で角度補正された基板6を処理受渡部9に搬入し、真空蒸着し、搬出するまで処理フローを説明する。本フロー処理後は、前述したように同一クラスタの対角線上にある処理部に搬送して同様な蒸着処理を行なう。
本実施形態での真空蒸着処理の基本的な考え方は、上面搬送された基板6を垂直にたてて、アライメント部8に搬送し、蒸着する。搬送時基板6の下面が蒸着面であるならば反転する必要があるが、上面が蒸着面であるので垂直にたてるだけでよい。
【0038】
次に本実施形態に真空蒸着処理フローを図3を参照しながら図7を用いて詳細に説明する。図3において基板6が存在するところは実線で示す。
まず、Rラインにおいて、基板6Rを搬入し、基板6Rを垂直に立ててアライメント部8Rに移動し、基板6とシャドウマスク81とで位置合せを行なう(StepR1からStepR3)。このとき、基板は蒸着面を上にした上面搬送であるので、反転等することなく直ぐに位置合せを行なうことができる。位置合せは、図3の引出し図に示すように、CCDカメラ86で撮像し、基板6に設けられたアライメントマーク84がマスク81Mに設けられた窓85の中心にくるように、シャドウマスク81Rを前記アライメント駆動部83で制御することによって行なう。本蒸着が赤(R)を発光させる材料であるならば、図8に示すようにマスク81MのRに対応する部分に窓があいており、その部分が蒸着されることになる。その窓の大きさは色によって異なるが平均して幅50μm、高さ150μm程度である。マスク81Mの厚さは40μmであり、今後さらに薄くなる傾向がある。
【0039】
位置合せが終了したら、蒸発源71をRライン側に移動させ(StepL0)、その後ライン状の蒸発源71を上又は下に移動させて蒸着する(StepR4)。Rライン蒸着中に、LラインではRラインの同様にStepL1からStepL3の処理を行なう。すなわち、他の基板6Lを搬入し、該基板6Lを垂直に立ててアライメント部8Lに移動し、シャドウマスク81Lとの位置合せを行なう。Rラインの基板6Rの蒸着を完了すると、蒸発源71はLラインに移動し(StepR5)、Lラインにある基板6Lを蒸着する(StepL4)。このとき蒸発源71がRラインの蒸着領域から完全に出る前に、基板6Rがアライメント部8Rから離れると、不必要に蒸着される可能性があるので、完全に出た後に、基板6Rの処理チャンバ1からの搬出動作を開始し、その後新たな基板6Rの準備に入る。前記不必要な蒸着を避けるためにラインの間に仕切り板11を設ける。なお、図3は、StepR4及びStepL1の状態を示している。即ち、Rラインでは蒸着を開始し、Lラインでは真空蒸着チャンバ1buに基板を搬入した状態である。
【0040】
その後、上記フローを連続して行なうことにより、蒸発部7の移動時間を除いて無駄に蒸着材料を使用することなく蒸着することができる。蒸着に必要な時間とその他処理時間は略1分であり、蒸発源71の移動時間を5秒とすれば、従来は1分の無駄な蒸着時間が本実施形態では5秒に短縮できる。上記本実施形態によれば、図6に示すように真空蒸着チャンバ1buの処理基板1枚の処理サイクルは実質的に蒸着時間+蒸発源71の移動時間となり、生産性を向上させることができる。前述の条件で処理時間を評価すれば、従来の2分に対し、本発明では1分5秒となり、チャンバひとつあたりの生産性を約2倍に向上できる。
【0041】
以上の(1)(2)実施形態は全て基板6の蒸着面を上にして搬送し、立っているシャドウマスクで蒸着できるように、基板を立てる場合について説明した。その他の蒸着方法では、基板、シャドウマスクとも水平にして行なう方法がある。その場合の多くは、図9に示すように蒸着面を下にし、蒸着処理を下方から行なう。このような場合は、(3)実施形態の蒸着部で補正する方法も有効である。
【0042】
このような実施形態では、基板処理面を下面に搬送するために、基板6を専用のケースに入れて基板の両端を把持して搬送する。角度調節機構は上記の実施形態に示した方法を適用できる。
【0043】
また、基板を垂直にして蒸着している場合には、シャドウマスクの位置合わせ機構などと複雑に絡んで、処理チャンバ1内の処理受渡部9を回転させることは難しいが、基板処理面が水平の場合、図5に示す機構を処理受渡部9に設けたり、補正角が一定であれば、図9に示すようにアライメント部7をその角度に合わせて設け、蒸発源71をその角度に合わせて走査させることにより実質的に角度補正することも可能である。
【0044】
本実施形態においても、先の実施形態と同様な効果を得ることができる。
従って、異なる蒸着面姿勢によるシャドウマスクの姿勢の如何に関わらず本発明を適用できる。
【0045】
また、上記説明では有機ELデバイスを例に説明したが、有機ELデバイスと同じ背景にある蒸着処理をする成膜装置および成膜方法にも適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1:処理チャンバ 1bu:真空蒸着チャンバ
2:搬送チャンバ
3:ロードクラスタ 4:受渡室
4H:角度補正機構 4D:受渡室の載置台
4P:受渡室の基板支持ピン 5:搬送ロボット
6:基板 7:蒸着部
8:アライメント部 9:処理受渡部
10:ゲート弁 11:仕切り板
31:ロード室 81:シャドウマスク
71:蒸発源 100:有機ELデバイスの製造装置
A〜D:クラスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の櫛歯状ハンドによって基板を搬入する搬入口と、
第2の櫛歯状ハンドによって前記基板を搬出する搬出口と、
前記基板を支持する複数の支持ピンと、
複数の前記支持ピンを固定し、前記基板を支持し回転させる支持ピン回転台と、
前記支持ピン回転台を前記基板と平行な平面内で回転させる回転駆動手段と、
複数の前記支持ピンと、前記第1の櫛歯状ハンドと前記第2の櫛歯状ハンドの少なくとも一方との干渉を回避する回避手段と、
有する角度補正機構。
【請求項2】
請求項1に記載の角度補正機構であって、
前記回避手段は、複数の前記支持ピンを前記第1の櫛歯状ハンドと前記第2の櫛歯状ハンドの少なくとも一方との干渉をしないようにマトリックス状に配置したことである、
ことを特徴とする角度補正機構。
【請求項3】
請求項1に記載の角度補正機構であって、
前記回避手段は、前記基板を載置した前記支持ピン回転台を上下する上下駆動手段と、
前記支持ピン回転台の上部に平行に設けられ、複数の凸部を有し、前記凸部間に前記第1の櫛歯状ハンドと前記第2の櫛歯状ハンドを挿入可能であり、複数の前記支持ピンが可動な溝を備える基板載置台とを有する、
ことを特徴とする角度補正機構。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の角度補正機構であって、
前記回転駆動手段は、前記支持ピン回転台に垂直に設けられた回転台支持部と、前記回転台支持部を回転させる回転駆動モータと、前記回転台支持部を真空シールするシール手段とを有する、
ことを特徴とする角度補正機構。
【請求項5】
請求項3に記載の角度補正機構であって、
前記回転駆動手段は、前記支持ピン回転台に垂直に設けられた回転台支持部と、前記回転台支持部を回転させる回転駆動モータと、前記回転台支持部を真空シールするシール手段とを有し、
前記上下駆動手段は、前記回転台支持部を上下させる上下駆動モータと、前記シール手段に設けられ、前記回転台支持部の上下を可能とするシール用ベローとを有する、
ことを特徴とする角度補正機構。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかに記載の角度補正機構であって、
前記搬入口と前記搬出口にそれぞれゲート弁を設けた、
ことを特徴とする角度補正機構。
【請求項7】
蒸着材料を基板に蒸着する処理部を具備する真空処理チャンバと、
前記基板を搬入または搬出し、請求項1乃至6に記載の角度補正機構を有する受渡室と、
前記基板を前記受渡室と前記複数の処理部との間を搬送する搬送手段とを具備する真空チャンバと、
を有することを特徴とする有機ELデバイス製造装置。
【請求項8】
蒸着材料を基板に蒸着する処理部を具備する真空処理チャンバと、前記基板を搬入または搬出する受渡室と、前記基板を前記受渡室と前記複数の処理部との間を搬送する搬送手段とを具備する真空チャンバとを有するクラスタを複数有し、
前記受渡室とは別に、前記基板を搬入する搬入ロード室と前記基板を搬出する搬出ロード室を備え、かつ
前記搬入ロード室から前記搬出ロード室へ前記基板を搬送する搬送系を構成する搬送部において、請求項1乃至6に記載のいずれかに記載の角度補正機構を設けた、
ことを特徴とする有機ELデバイス製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−110114(P2013−110114A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−284367(P2012−284367)
【出願日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【分割の表示】特願2008−246499(P2008−246499)の分割
【原出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】