有機ELデバイス
【課題】塗布形成される有機発光層を含む有機ELデバイスにおいて、バンクの周りに画素規制層(絶縁性無機膜)を設けて画素領域間の間隔を小さくしつつ、発光層厚の均一化を図ることにより、発光効率を向上させる。
【解決手段】1)ライン状に延在する2以上の第1バンクと、2)隣り合う前記第1バンク間に形成された領域を分割して画素領域を形成し、前記第1バンクの高さより低い複数の第2バンクと、3)前記画素領域ごとに独立して設けられた正孔輸送層と、4)前記第1バンクおよび第2バンクの底面の下に配置された絶縁性無機膜であって、前記画素領域の端に設けられ、かつ前記画素領域を仕切る2つの前記第2バンクの対向する側面に沿って、前記画素領域の端に設けられた絶縁性無機膜と、5)前記絶縁性無機膜の上面と接し、かつ塗布形成された機能層とを有する有機ELデバイスを提供する。
【解決手段】1)ライン状に延在する2以上の第1バンクと、2)隣り合う前記第1バンク間に形成された領域を分割して画素領域を形成し、前記第1バンクの高さより低い複数の第2バンクと、3)前記画素領域ごとに独立して設けられた正孔輸送層と、4)前記第1バンクおよび第2バンクの底面の下に配置された絶縁性無機膜であって、前記画素領域の端に設けられ、かつ前記画素領域を仕切る2つの前記第2バンクの対向する側面に沿って、前記画素領域の端に設けられた絶縁性無機膜と、5)前記絶縁性無機膜の上面と接し、かつ塗布形成された機能層とを有する有機ELデバイスを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL素子を用いたディスプレイパネルが知られている。
【0003】
実際に有機EL素子を発光させるための駆動方式には、パッシブマトリクス法とアクティブマトリクス法の2種類がある。このうちアクティブマトリクス方式は、TFT(薄膜トランジスタ)による駆動方式である。
【0004】
図1は従来のフルカラー有機ディスプレイパネルの発光画素(パッシブ型)の配列を示す図である。同図のように、有機ディスプレイパネルの発光画素は、赤R、緑G、青Bの発光部がマトリクス状に配置された発光画素41を複数有し、さらに複数の発光画素41からなる画像表示配列を有している。
【0005】
図2は、フルカラー有機ディスプレイパネルの発光画素41の基板部51aの概略構造(パッシブ型)を示す図である。同図に示すように、基板部51aは透明なガラス等からなる基板52上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)等からなる第1電極53が設けられている。複数の第1電極53は、互いに平行に、ストライプ状に配列されている。また、第1電極53を含む基板52上には、電気絶縁性の絶縁膜54及び隔壁55が配列されている。絶縁膜54及び隔壁55は、第1電極53に対して直交するように、且つ、所定間隔おきに形成されている。また、隔壁(バンク)55は、基板52上から突出するように設けられている。また、隔壁(バンク)55は、第1電極53の一部分を露出せしめるような位置に形成されている。
【0006】
また、第1電極53において隔壁が形成されない部分の上には、少なくとも1層の有機EL層56が形成されている。さらに、有機EL層56上には、第1電極53の延在方向と略垂直方向に延びる第2電極57が形成されている。
【0007】
隔壁55は、隣り合う第2電極57を隔離することにより、隣り合う第2電極57同士のショートを防止するために設けられている。従って、隔壁55の断面形状は、図2に示すように、逆台形形状等のオーバハング形状であることが望ましい。
【0008】
また、一般的に有機EL層56を構成する有機材料は湿気に弱く、また、隔壁55を構成する材料にも湿気に弱い材料が用いられる。そのため、発光画素41においては、図3に示すように、隔壁55及び有機EL層56が形成される面が、封止部(例えば、ガラス管、保護膜等)によって封止される。図3は、従来のフルカラー有機ディスプレイパネルの発光画素の構造を示す断面図であり、図3Aには、ガラス管68によって封止された発光画素41が示され、図3Bには、透湿性の低い保護膜69によって封止された発光画素41が示されている。図3A及び図3Bのいずれも、第1電極53の長手方向に沿った断面図である。
【0009】
以上のように構成される発光画素41は、駆動された第1電極53及び第2電極57の交差する部分の有機EL層56が発光する。発光された光は、基板52を透過して、表示面方向に進んでいく(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−040370号公報
【特許文献2】特開2000−089690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、近年の有機ELディスプレイパネル及び有機ELディスプレイの研究/開発では、発光輝度を高めることが重要な課題の一つとなっている。有機ELディスプレイパネル及び有機ELディスプレイの技術分野において、輝度を高める種々の方法が提案されている。しかしながら、飛躍的に輝度を高めるような決定的な解決策はなく、改良を積み重ねることにより少しずつ輝度が高められているのが実状である。
【0012】
一般的に、発光面における発光面積を広くすることは、輝度を高める要因となる。すなわち、発光面における発光面積を広くすることにより、発光面に対して両電極から送り込まれるホールと電子が効率よく作用することになり、発光効率が改善されるからである。
【0013】
しかしながら、上記した従来の発光画素では、両電極のオーバラップ領域である画素領域間の間隔が大きく、発光面積のロスが存在する。この発光面積のロスを減らすべく、上記した従来の発光画素の構成において、画素領域間の間隔を小さくすると、画素領域間の干渉が発生してしまう可能性がある。
【0014】
上記した発光面積のロス及び画素領域間の干渉という、相反する課題を解決する方法として、画素素領域間を区切る第2のバンクを設ける方法が知られている。
【0015】
しかしながら、バンク近傍で発光層を平坦にすることは難しく、バンクは発光層厚の不均一化に作用する。この発光層厚の不均一化は発光効率に対してマイナスに寄与する。これを解決するために画素領域間の間隔を広げると、上記のとおり発光面積のロスが発生してしまう。
【0016】
本発明の目的は、バンクの周りに画素規制層(絶縁性無機膜)を設けて、画素領域間の間隔を小さくしつつ、発光層厚の均一化を図ることにより、発光効率を向上することができる有機ELデバイス及び表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の有機ELデバイスは、ライン状に延在する2以上の第1バンクと、隣り合う前記第1バンク間に形成された領域を分割して画素領域を形成し、前記第1バンクの高さより低い複数の第2バンクと、前記画素領域ごとに独立して設けられた正孔輸送層と、前記画素領域を仕切る2つの前記第1バンクの対向する側面に沿って、前記画素領域の端に設けられた絶縁性無機膜と、を有する構成を採る。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、バンクの周りに画素規制層(絶縁性無機膜)を設けて、画素領域間の間隔を小さくしつつ、発光層厚の均一化を図ることにより、発光効率を向上する有機ELデバイス及び表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来のフルカラー有機ディスプレイパネルの発光画素の配列を示す図
【図2】従来のフルカラー有機ディスプレイパネルの発光画素の基板部の概略構造を示す図
【図3】従来のフルカラー有機ディスプレイパネルの発光画素の構造を示す断面図
【図4】本発明の実施の形態1に係る有機ELデバイスの基本構成を示す断面図
【図5】実施の形態1に係る有機ELデバイスの基本構成を示す斜視図
【図6】正孔輸送層の下に絶縁性無機膜を有する有機ELデバイスの断面図
【図7】グラビア印刷工法によるバンク形成方法の説明に供する図
【図8】実施の形態2に係る有機ELデバイスの断面図
【図9】有機ELデバイスの構成バリエーションを示す図
【図10】実施の形態3に係る有機ELデバイスの構成を示す斜視図
【図11】実施の形態4に係る有機ELデバイスの構成を示す斜視図
【図12】バンク断面形状のバリエーションの説明に供する図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下で図面を参照して詳細に説明する本発明の実施の形態に係る有機ELデバイスは、1)ライン状に延在する2以上の第1バンクと、2)隣り合う第1バンク間に形成された領域を分割して画素領域を形成し、第1バンクの高さより低い複数の第2バンクと、3)画素領域ごとに独立して設けられた正孔輸送層と、4)画素領域を仕切る2つの第1バンクの対向する側面に沿って、画素領域の端に設けられた絶縁性無機膜と、を有する。
【0021】
そして、上記有機ELデバイスは、画素領域を仕切る2つの第2バンクの対向する側面に沿って、前記画素領域の端に設けられた絶縁性無機膜を、さらに有することが好ましい。
【0022】
無機絶縁膜の作用により、対向するバンク間の距離を短くする場合でも、塗布法により形成される正孔輸送層または中間層を、画素領域全体に均一の厚さに形成することができる。すなわち、無機絶縁膜の作用により、画素領域間の間隔を小さくしつつ、発光層の厚さを均一化することができる。
【0023】
後述する実施の形態1では、正孔輸送層の材料が、PSS−PEDOT(ポリエチレンスルホン酸をドープしたポリエチレンジオキシチオフェン、以下PEDOTと略す)や、その誘導体(共重合体など)が含まれる場合について説明する。実施の形態1では、正孔輸送層の厚さが、無機絶縁膜の作用により画素領域全体で均一化される。
【0024】
実施の形態2では、正孔輸送層の材料が、WOx(タングステンオキサイド)やMoOx(モリブデンオキサイド)、VOx(バナジウムオキサイド)などの酸化物や、これらの組み合わせである場合について説明する。実施の形態2では、中間層の厚さが、無機絶縁膜の作用により画素領域全体で均一化される。
【0025】
実施の形態3では、第2バンクに、隣接する画素領域を連通する溝が設けられる場合について説明する。
【0026】
実施の形態4では、有機ELデバイスの駆動方式が、特にパッシブ方式である場合について説明する。
【0027】
実施の形態5では、バンクの断面形状のバリエーションについて説明する。
【0028】
なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
【0029】
(実施の形態1)
[1.有機ELデバイスの基本構成]
図4は、本発明の実施の形態1に係る有機ELデバイスの基本構成を示す断面図である。また、図5は、有機ELデバイスの基本構成を示す斜視図である。なお、図4は、有機ELデバイスを図5のA−A面で切り取ったときの断面図である。また、図4及び図5では、正孔輸送層、中間層(IL)、有機発光層(高分子有機EL材料層)及び陰極(カソード電極)は図示されていない。
【0030】
図4において有機ELデバイス10は、基板100、陽極(アノード電極)210、絶縁性無機膜220、第1バンク(隔壁)230、及び第2バンク240(図5参照)を有する。有機ELデバイス10は、駆動方式がアクティブ方式の有機ELデバイスである。
【0031】
基板100は、ゲート電極120、ゲート絶縁層130、ソース電極140、ドレイン電極150、有機半導体層160、及び絶縁層170を有する。これらのうちゲート電極120、ゲート絶縁層130、ソース電極140、ドレイン電極150、及び有機半導体層160は、有機TFT(薄膜トランジスタ)を構成する。なお、有機TFTに代えて、シリコンTFTとしてもよい。
【0032】
また、基板100には、コンタクトホール180が設けられる。コンタクトホール180は、ドレイン電極150と、基板100に設けられた陽極210を電気的に接続する。コンタクトホール180と陽極210との接続点は、絶縁性無機膜220の下に配置される。
【0033】
また基板100上には、絶縁性無機膜220が配置される。絶縁性無機膜220は、第1バンク230の下、及び、第1バンク230の両脇に配置される。第1バンク230の両脇に配置される絶縁性無機膜220の幅は、5〜10μmであることが好ましい。絶縁性無機膜220は、電気絶縁性の無機膜である。また、絶縁性無機膜220は、濡れ性が高いことが好ましく、その材質としては、シリコンオキサイド(SiO2)やシリコンナイトライド(Si3N4)、シリコンオキシナイトライド(SiON)などが含まれる。無機絶縁膜210の厚さは10nm〜200nmであることが好ましい。
【0034】
次に有機ELデバイス10における基板100上の基本構成について詳細に説明する。
【0035】
図5に示すように有機ELデバイス10の基板100上には、複数の第1バンク230がライン状に配置される。ここでは、複数の第1バンク230は、互いが平行に延在している。
【0036】
また基板100上には、第1バンク230の高さよりも低い複数の第2バンク240が配置される。第2バンク240は、隣接する第1バンク230間に形成される領域を複数の領域に分割するように配設される。ここでは、複数の第2バンク240は、第1バンク230の延在方向と垂直な方向に配置される。こうして2つの第1バンク230と2つの第2バンク240とによって囲まれた領域(以下、「画素領域」と呼ぶことがある)300が、基板100上に複数形成される。この画素領域300は、ピクセルに相当する。
【0037】
第1バンク230の基板100と向き合う面(つまり、第1バンク230の底面)の下には、絶縁性無機膜220が配置される。さらに、絶縁性無機膜220は、第1バンク230の周りに、具体的には、画素領域300を仕切る2つの第1バンク230の対向する側面のそれぞれに沿って画素領域300の両端に、配置されている。また、絶縁性無機膜220の上面(ここでは、平坦な面)は、その一端が第1バンク230の側面と接し、その側面から画素領域300の内部に向けて延びている。そして、その絶縁性無機膜220の上面の高さは、第2バンク240の高さよりも低い。ここでは、絶縁性無機膜220は、第1バンク230の底面周辺に、特に、第1バンク230の底面の周りで且つ第1バンク230の下層に配置されている。そして、上述のとおり、絶縁性無機膜220は、第1バンク230の側面から5〜10μmまでの位置まで配置されることが好ましい。
【0038】
また、絶縁性無機膜220は、第2バンク240の底面の下にも配置されている。さらに、絶縁性無機膜220は、第2バンク240の周りに、具体的には、画素領域300を仕切る2つの第2バンク240の対向する側面のそれぞれに沿って画素領域300の他の両端に配置されている。また、絶縁性無機膜220の上面(ここでは、平坦な面)は、その一端が第2バンク240の側面に接し、その側面から画素領域300の内部に向けて延びている。そして、その絶縁性無機膜220の上面の高さは、第2バンク240の高さよりも低い。ここでは、絶縁性無機膜220は、第2バンク240の底面周辺、特に、その底面の周りで且つ第2バンク240の下層に配置される。
【0039】
各画素領域300の底面には、陽極210が配置される。有機ELデバイス10は駆動方式がアクティブ方式の有機ELデバイスであるので、陽極210は、ピクセルごとに設けられる。
【0040】
[2.有機ELデバイスの構成の詳細]
画素領域300には、基板100側から、順に、正孔輸送層、中間層、高分子有機EL材料層が積層される。
【0041】
(1)正孔輸送層
陽極210上には、正孔輸送層が配置される。正孔輸送層は、正孔輸送材料からなる層である。本実施の形態では、正孔輸送材料には、PEDOTや、その誘導体(共重合体など)が含まれる。正孔輸送層の厚さは通常、10nm以上100nm以下であり、約30nmでありうる。
【0042】
図6は、正孔輸送層の下に絶縁性無機膜を有する有機ELデバイスの断面図である。図6に示すように正孔輸送層250の材料がPEDOT(又は、その誘導体)である場合、正孔輸送層250は、絶縁性無機膜220の上面を覆うように、画素領域300に設けられる。すなわち、この場合、バンク近傍において正孔輸送層250の底面は、絶縁性無機膜220の上面と接している。こうしてバンク底面周辺に設けられた絶縁性無機膜220により、正孔輸送層250の材料が溶解した溶液は画素領域300全体に均一に塗布され、膜厚が均一な正孔輸送層250を得ることができる。
【0043】
(2)中間層
正孔輸送層250上には、中間層260が配置される(図6参照)。中間層260は、正孔輸送層250に電子が輸送されるのをブロックする役割や、高分子有機EL材料層に正孔を効率よく運ぶ役割などを有し、例えばポリアニリン系の材料からなる層である。中間層260の厚さは通常、10nm以上100nm以下であり、約40nmでありうる。
【0044】
(3)有機EL層
高分子有機EL材料層270は、中間層260上に配置される(図6参照)。さらに、高分子有機EL材料層270上には、カソード電極(図示せず)が配置される。
【0045】
[3.有機ELデバイスの製造方法]
次に上記構成を有する有機ELデバイス10の製造方法について説明する。なお、基板100の製造方法については従来と特に変わるところがないので、その説明は省略される。
【0046】
好ましい製造方法の一例は、1)基板面に陽極210を形成するステップ、2)陽極210が形成された基板面に、絶縁性無機膜220を形成するステップ、3)絶縁性無機膜220上に、画素領域300を規定する第1バンク230及び第2バンク240を形成するステップ、4)画素領域300内に、正孔注入層250を形成するステップ、5)画素領域300内に、中間層260を形成するステップ、6)画素領域300内に、高分子有機EL材料層270を形成するステップ、及び7)高分子有機EL材料層270に陰極を形成するステップを含む。
【0047】
1)ステップでは、基板に導電体薄膜を成膜してこれをフォトリソグラフィ加工またはエッチング加工することにより、基板100上に、陽極210が形成される。陽極210は、画素領域300が形成される予定位置に、画素領域300ごとに独立して形成される。
【0048】
2)ステップでは、基板100上に、絶縁性無機膜220は、スパッタにより形成される。絶縁性無機膜220は、マスクを介してスパッタすることで、形成予定位置に直接形成されてもよいし、また、スパッタによって膜を形成した後に、エッチングによって形成予定位置の膜のみを残すことにより、形成されてもよい。
【0049】
3)ステップでは、絶縁性無機膜220上に、画素領域300を規定する第1バンク230及び第2バンク240が形成される。バンクの形成方法については、後に詳細に説明する。
【0050】
4)ステップでは、形成された画素領域300内に、PEDOT等が溶解した溶液をコートする。コートは、例えば、インクジェット、凸版印刷、凹版印刷、又は、ディスパンサー法により行われる。
【0051】
5)ステップでは、画素領域300内であって正孔輸送層250の上層に、中間層260の材料が有機溶媒に溶解した溶液がコートされる。コートは、例えば、インクジェット、凸版印刷、凹版印刷、又は、ディスパンサー法により行われる。
【0052】
6)ステップでは、画素領域300内であって中間層260の上層に、高分子有機EL材料層270の材料が有機溶媒に溶解した溶液がコートされる。コートは、例えば、インクジェットにより行われる。
【0053】
7)ステップでは、陰極が高分子有機EL材料層270上に形成される。
【0054】
ここで、3)ステップの第1バンク230及び第2バンク240の形成は、以下に示す方法で行うことができる。
【0055】
まず、第1の形成方法として、第1バンク230及び第2バンク240は、グラビア印刷工法によって形成される(図7参照)。図7は、グラビア印刷工法によるバンク形成方法の説明に供する図である。図7には、バンクを形成するグラビア印刷装置400の構成が示されている。
【0056】
まず、印刷ロール410、圧胴ロール420、及びインク(隔壁の構成材料)が貯蔵されたタンク(符号なし)内に配置された供給ロール430をそれぞれ回転させる。
【0057】
供給ロール430は、その下部がインク内に浸っており、下部表面に付着したインクを回転することにより印刷ロール410に供給する。
【0058】
印刷ロール410のロール面410A上には、凹部が設けられている。この凹部には、供給ロール430によって供給されたインクが充填される。凹部に充填されたインクの厚みにはバラツキがあることから、ドクタ440によってインクの厚さを一定にする。
【0059】
凹部に充填されたインクは、圧胴ロール420によって印刷ロール410に圧接された基板100に対して転写される。こうして印刷ロール面410Aにおける凹部のパターンに応じてパターニングされたバンクが形成される。
【0060】
次に、例えば基板100を90度回転させ、印刷ロール410のロール面410Aを第2バンク240用のものに換えた後、第1バンク230を形成する場合と同様に、第2バンク240を形成する。こうして第1バンク230及び第2バンク240で囲まれた画素領域300が基板100上に形成される。なお、このステップ(4)を行う前に、パターニング済みの第1バンク230に対してプリベーク処理を行なって、第1バンク230を構成する樹脂材料を硬化させてもよい。
【0061】
また、第2の形成方法としては、以下に示すフォトリソグラフィによる形成方法でもよい。
【0062】
まず、第2バンク240を形成する予定位置を含むライン上に、第2バンク240を構成する材料を塗布した後、順に、プリペーグ、フォトマスクを介した露光、現像、ポストベーグを行うことにより、第2バンク240を形成する。
【0063】
次に、第2バンク240の形成方法と同様に、第1バンク230を形成する予定位置を含むライン上に、第1バンク230を構成する材料を塗布した後に、順に、プリペーグ、フォトマスクを介した露光、現像、ポストベーグを行うことにより、第1バンク230を形成する。
【0064】
また第3の形成方法として、第1バンク230及び第2バンク240を形成する予定位置にバンク材料を塗布した後に、プリペーグ、露光、現像、ポストベーグを順に行うことにより、第1バンク230及び第2バンク240を同時に形成してもよい。このとき、露光の際に用いられるフォトマスクには、場所によって光の透過率が異なるハーフトーン膜を用いることができる。こうすることで、第1バンク230の形成予定位置と第2バンク240の形成予定位置に照射される光の量を調整して、高さの異なる第1バンク230及び第2バンク240を同時に形成することができる。
【0065】
以上説明したように本実施の形態によれば、有機ELデバイス10において、絶縁性無機膜220は、画素領域300に臨む第1バンク230の側面に沿って、画素領域300の端に配置されている。別の言い方をすれば、第1バンク230から画素領域300内にはみ出して絶縁性無機膜220が設けられている。
【0066】
こうすることで、正孔輸送層250の層厚均一性を向上することができる。
【0067】
すなわち、塗布形成される層をバンク近傍で平坦にすることは、通常困難である。しかしながら、有機材料に比べて濡れ性の高い絶縁性無機膜220を第1バンク230の周りに設けることにより、絶縁性無機膜220の上面と接する層(本実施の形態では、正孔輸送層250)を平坦に形成することができ、その層の層厚均一性を向上することができる。結果として、第1バンク230近傍の層厚均一性(正孔輸送層250、中間層260、及び高分子有機EL材料層270の層厚均一性)を向上することができる。
【0068】
ここで、層厚均一性が保たれない部分は、発光効率にマイナスの影響を及ぼすことが知られている。そのため、画素領域300に形成される層の層厚均一性を向上することにより、画素領域300の輝度を向上することができる。
【0069】
また、有機ELデバイス10において、コンタクトホール180と陽極210との接続点は、絶縁性無機膜220の下部に配置される。
【0070】
こうすることで、コンタクトホール180から注入された正孔が高分子有機EL材料層270に直接的に浸入することが防止される。これにより、コンタクトホールのように発光が予定されない箇所が発光することが防止される。
【0071】
ここで、本実施の形態に係る有機ELデバイス10は、上記した従来技術に比べて、第1バンク230の他に、第2バンク240を有している。この第2バンク240は隣接する画素領域を隔離する機能を有し、第1の画素領域の有機発光層で起こる励起及びこの励起によって発生する光エネルギーが、第1の画素領域に隣接する第2の画素領域に漏洩することを防止する。なお、バンクの色を画素領域から発せられる光とのコントラストの高い色(例えば、黒色)にすることにより、光エネルギーの漏洩防止効果をさらに高めることができる。
【0072】
従って、従来のように隣接する画素領域を仕切る補助バンク(本実施の形態の第2バンクに相当)がない場合には、陽極間の距離(つまり、画素領域間の距離)を大きくとる必要がある一方で、有機ELデバイス10では、陽極210間の距離(つまり、画素領域300間の距離)を小さくすることができる。この結果、陽極210間のスペースが小さくなり、画素ピッチを小さくすることができると共に、有機ELデバイス10全体において画素領域300に振り分けられる面積を大きくすることができる。
【0073】
ただし、画素領域300間の距離を小さくするのに伴い、第2バンク240間の距離を小さくすると、塗布法により画素領域300に形成される層の層厚が不均一化する。これは、有機ELデバイス10の発光効率が低下する要因となる。すなわち、第2バンク240自体は、画素領域300間の距離を小さくする阻害要因ともなり得る。
【0074】
これに対して、本実施の形態では、上記のとおり、第2バンク240の側面に沿って画素領域300の端に、絶縁性無機膜220が配置される。別の言い方をすれば、第2バンク240から画素領域300内にはみ出して絶縁性無機膜220が設けられている。
【0075】
こうすることで、第2バンク240間の距離が小さくても、塗布法により画素領域300に形成される層を均一な層厚で形成することができる。
【0076】
すなわち、有機ELデバイス10において、絶縁性無機膜220が第2バンク240の側面に沿って画素領域300の端に設けられることにより、陽極210間(つまり、画素領域間300の距離)を小さくしつつ、絶縁性無機膜220の上面に接する層の層厚を均一化することができる。
【0077】
また、第2バンク240は、正孔輸送層250、中間層260、及び高分子有機EL材料層270を画素領域300ごとに独立して設けることを容易にしている。
【0078】
また、第2バンク240自体が、中間層260、及び高分子有機EL材料層270の層厚均一性を向上する一面もある。すなわち、上記した従来のように隣接画素領域を仕切る補助バンク(本実施の形態の第2バンクに相当)がない場合に、例えばホコリ等の不純物が画素領域に存在していると、中間層及び高分子有機EL層の形成に用いられる有機溶媒溶液がその不純物に引き寄せられて、中間層及び高分子有機EL層の層厚に偏りが生じてしまう問題がある。これに対して、本実施の形態のように第2バンク240を設けることにより、第1の画素領域に塗布した有機溶媒溶液が、第1の画素領域に隣接し不純物が存在する第2の画素領域に流動することを防止することができる。
【0079】
また、上記したように第2バンク240の高さは、第1バンク230の高さよりも低くする。第2バンク240の高さは、第1バンク230の高さの1/10〜9/10であることが好ましい。これにより、陽極210及び陰極からそれぞれ注入される正孔及び電子が効率よく高分子有機EL材料層270に作用するため高い輝度が得られると共に、上記した隣接画素領域310の隔離機能を発揮することができる。さらに、上記したようなバンクの高さとすることにより、有機発光層の形成が容易となり、製造工程の観点からもメリットがある。
【0080】
これに対して、例えば、第2バンク240の高さを第1バンク230の高さの1/10より小さくすると、有機発光層の構成材料(有機EL材料)が第2バンク240の側面に付着し易くなる。これにより有機発光層の層厚分布が不均一になる可能性が高くなり、輝度を向上させることが難しくなる。一方、第2バンク240の高さを第1バンク230の高さの9/10より大きくすると、有機発光層の構成材料が第1バンク230を超えて他のラインに溢れ易くなり、ライン同士がクロストークを起こす可能性が高まる。
【0081】
より好ましくは、第2バンク240の高さは、第1バンク230の高さの1/5〜1/3である。特に、有機発光層の構成材料として高分子有機材料が用いられる場合、塗布されるインク濃度が1%程度で粘性が低いため、第1バンク230を超えて他のラインに漏れ易い。従って、第2バンク240に対し第1バンク230が十分に高いことが好ましい。
【0082】
なお、「1/10〜9/10」は、「1/10以上かつ9/10以下」を意味する。すなわち、第1バンク240の高さをd1、第2バンク230の高さをd2とした場合、d1/10≦d2≦9×d1/10が成り立つことを意味している。
【0083】
なお、バンクを構成する材料は特に限定されるものではなく、例えば、ポリアクリレート又はポリイミドなどの有機材料を用いることができる。ただし、製造プロセスの観点ではベーク時にガスが発生しないメリットがあることから、ポリイミドが好ましい。
【0084】
また、第1バンク230及び第2バンク240を構成する有機材料は異なっていてもよい。すなわち、第1バンク230には、第1バンク230を挟んで隣接する画素領域300間の干渉を防止する役割がある。そのため、第1バンク230は、インクが第1バンク230を超えて隣接画素領域300に行かないように、濡れ性の低い材料で構成されることが好ましい。従って、第1バンク230は濡れ性の低い材料で構成し、第2バンク240は、第1のバンク230よりも濡れ性の高い材料で構成してもよい。第1バンク230表面の水の接触角は40°以上が好ましく、また第2バンク240表面の水の接触角は20°以下が好ましい。すなわち、第1バンク230表面と第2バンク240表面の水の接触角に、20°以上の差があることが望ましい。
【0085】
また、バンクの断面形状は、図4乃至図7では台形としているが、これに限定されるものではなく、矩形でもよい。また、バンク断面の各辺は直線でなく、曲線でもよい。
【0086】
(実施の形態2)
実施の形態2では、正孔輸送層の材料が、WOx(タングステンオキサイド)やMoOx(モリブデンオキサイド)、VOx(バナジウムオキサイド)などの酸化物や、これらの組み合わせである場合について説明する。
【0087】
[1.有機ELデバイスの基本構成]
実施の形態2に係る有機ELデバイスの基本構成は、図4及び図5に示される実施の形態1の基本構成と同じである。すなわち、第1バンクの周りに、具体的には、画素領域を仕切る2つの第1バンクの対向する側面のそれぞれに沿って画素領域の端に、絶縁性無機膜が配置されている。また、第2バンクの周りに、具体的には、画素領域を仕切る2つの第2バンクの対向する側面のそれぞれに沿って画素領域の端に、絶縁性無機膜が配置されている。
【0088】
[2.有機ELデバイスの構成の詳細]
図6の場合と同様に、画素領域300には、基板100側から、順に、正孔輸送層、中間層、高分子有機EL材料層が積層される(図8参照)。図8は、中間層の下に絶縁性無機膜を有する有機ELデバイスの断面図である。
【0089】
(1)正孔輸送層
正孔輸送層250の材料がWOx(タングステンオキサイド)やMoOx(モリブデンオキサイド)、VOx(バナジウムオキサイド)などの酸化物や、これらの組み合わせである場合、正孔輸送層250は、絶縁性無機膜220の上面(又は、上面全体のうち少なくともバンク近傍に位置する部分)を覆わない。すなわち、中間層が形成される前の段階では、絶縁性無機膜220の上面(又は、上面全体のうち少なくともバンク近傍に位置する部分)は、正孔輸送層250によって覆われることなく、露出した状態となっている。
【0090】
(2)中間層
中間層260は、正孔輸送層250上に配置される(図8参照)。ここで、中間層260が形成される段階では絶縁性無機膜220の上面が露出しているので、バンク近傍において中間層260の底面は、絶縁性無機膜220の上面と接する。こうしてバンクの周りに設けられた絶縁性無機膜220により、中間層260の材料を溶解した溶液は画素領域300全体に均一に塗布され、膜厚が均一な中間層260を得ることができる。
【0091】
(3)有機EL層
高分子有機EL材料層270は、中間層260上に配置される(図8参照)。さらに、高分子有機EL材料層270上には、カソード電極(図示せず)が配置される。
【0092】
[3.有機ELデバイスの製造方法]
好ましい製造方法の一例は、1)基板面に陽極210を形成するステップ、2)陽極210上に、正孔注入層250を形成するステップ、3)基板面に絶縁性無機膜220を形成するステップ、4)絶縁性無機膜220上に、画素領域300を規定する第1バンク230及び第2バンク240を形成するステップ、5)画素領域300内に、中間層260を形成するステップ、6)画素領域300内に、高分子有機EL材料層270を形成するステップ、及び7)高分子有機EL材料層270に陰極を形成するステップを含む。
【0093】
陽極210、絶縁性無機膜220、中間層260、高分子有機EL材料層270、及び陰極の形成方法は、実施の形態1で示したものと同様の方法を用いることができる。
【0094】
2)ステップでは、陽極210上に、正孔注入層250が形成される。ここでは、例えば、加熱蒸着法又はスパッタ法によって正孔注入層250が形成される。
【0095】
なお、有機ELデバイス10の構成には種々のバリエーションが考えられ、その構成によって製造方法が変わってくる場合がある。図9は、有機ELデバイスの構成バリエーションを示す図である。
【0096】
絶縁性無機膜220が正孔輸送層上に配置される場合(図9A)及び基板上に配置される場合(図9B)場合には上記した製造方法を用いることができるが、例えば、基板上であって正孔輸送層の下に配置される場合(図9C)には、3)ステップ、2)ステップの順の製造工程になる。
【0097】
いずれの構成にしても、絶縁性無機膜220はバンクの周りに設けられ、その上面が中間層260の底面と接していることに変わりはない。
【0098】
このように本実施の形態によれば、第1バンク230(又は、第2バンク240)の周りに絶縁性無機膜220が設けられ、その上面が中間層260の底面と接する。なお、有機ELデバイスの構成として中間層がない場合もある。この場合には、絶縁性無機膜220は、高分子有機EL材料層270の底面と接していればよい。
【0099】
こうすることで、絶縁性無機膜220の上面と接する中間層260又は高分子有機EL材料層270の層厚均一性を向上することができる。
【0100】
なお、バンクの断面形状は、図9では台形としているが、これに限定されるものではなく、矩形でもよい。また、バンク断面の各辺は直線でなく、曲線でもよい。
【0101】
(実施の形態3)
実施の形態3では、第2バンクに、隣接する画素領域を連通する溝が設けられる。これに伴い、第2バンクの底面周辺(特に、第2バンクに形成された溝の周辺)には、絶縁性無機膜は設けられない。
【0102】
すなわち、図10は、実施の形態3に係る有機ELデバイスの構成を示す斜視図であり、同図に示すように有機ELデバイス10Aは、第2バンク240Aを有する。この第2バンク240Aには、隣接する画素領域300を連通する溝245が形成されている。なお図10には、実施の形態1及び実施の形態2に係る有機ELデバイスの基本構成において第2バンクに溝が設けられた構成が示されている。
【0103】
この溝245の幅は、画素領域300に設けられる層の材料に応じて、その好適値が異なってくる。
【0104】
実施の形態1のように正孔輸送層の材料に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOTと称される)や、その誘導体(共重合体など)が含まれる場合には、正孔輸送層250が塗布形成される際に用いられる溶液は溝245を通って隣接画素領域300間で流動せず、一方、中間層260及び高分子有機EL材料層270を塗布形成される際に用いられる溶液は溝245を通って隣接画素領域300で流動可能な幅が、溝245の好適な幅である。
【0105】
通常、PEDOT等は水溶液として塗布される。一方、中間層260及び高分子有機EL材料層270の構成材料は有機溶媒に溶かされて有機溶媒溶液として塗布される。そして、水溶液は有機溶媒溶液に比べて粘性が高い。従って、上記した溝245の好適な幅は、PEDOT等が溶解した水溶液の粘度と、中間層260及び高分子有機EL材料層270の構成材料が溶解した有機溶媒溶液の粘度との兼ね合いから決定することができる。
【0106】
以上のように第2バンク240Aを設けたことにより、塗布形成される正孔輸送層250を画素領域300ごとに独立して設けることが容易になる。
【0107】
また、第2バンク240Aに溝245が形成されることにより、各画素領域300の輝度のぶれを少なくして、画質を向上することができる。
【0108】
すなわち、中間層260及び高分子有機EL材料層270は、有機溶媒溶液を画素領域300に塗布して形成される。このとき、各画素領域300に対する有機溶媒溶液の塗布量は、多少ぶれる可能性がある。この塗布量のぶれは各画素領域300の輝度のぶれに繋がり、画質を低下させる要因となる。このような問題に対し、本実施の形態に係る有機ELデバイス10Aでは、第2バンク240Aに隣接する2つの画素領域300を連通する溝245を形成したことにより、画素領域300間で有機溶媒溶液量を平準化することができる。従って、画素領域300間で有機溶媒溶液の滴下量が異なる場合でも、最終的に各画素領域300に残る有機溶媒溶液量のぶれを少なくすることができる。この結果、中間層260及び高分子有機EL材料層270の層厚を、画素領域300間で均一にすることができる。
【0109】
一方で、上記したように不純物(ほこり等)が存在する場合には、その不純物に有機溶媒溶液が引き寄せられてしまう問題がある。しかし、溝245を好適な幅にすることにより、隣接する画素領域300間での有機溶媒溶液の流動を許容すると共に、不純物(ほこり等)が存在する画素領域300へ有機溶媒溶液が過度に流動することを抑えることができる。
【0110】
一方、実施の形態2のように正孔輸送層の材料が、WOx(タングステンオキサイド)やMoOx(モリブデンオキサイド)、VOx(バナジウムオキサイド)などの酸化物や、これらの組み合わせである場合には、正孔輸送層250は塗布形成されるものではないので、第2バンク240Aの機能として、正孔輸送層250を画素領域300ごとに隔離する機能は予定されていない。この場合には、第2バンク240Aの機能としては、隣接する画素領域300で有機溶媒溶液の流動を許容する機能と、不純物(ほこり等)が存在する画素領域300へ有機溶媒溶液が過度に流動することを抑える機能とが予定されている。
【0111】
(実施の形態4)
実施の形態4は、駆動方式がパッシブ方式の有機ELデバイスに関する。図11は、実施の形態4に係る有機ELデバイスの構成を示す斜視図である。
【0112】
図11において、パッシブ方式が適用された有機ELデバイス10Bは、帯状の陽極210Bを有する。
【0113】
陽極210Bは、基板100上に、2つの第2バンク240の間に、且つ、第2バンク240と平行に配置される。
【0114】
陽極210上には、絶縁性無機膜220が配置される。絶縁性無機膜220上には、第1バンク230が配置される。
【0115】
絶縁性無機膜220は、陽極210と第1バンク230との間に設けられ、陽極210と第1バンク230とを接着する接着層として機能する。
【0116】
このように陽極210と第1バンク230との間に接着層を設けたことにより、第1バンク230及び第2バンク240により構成される井桁構造の強度を向上することができる。
【0117】
(実施の形態5)
実施の形態5は、バンクの断面形状のバリエーションに関する。図12は、バンク断面形状のバリエーションの説明に供する図である。
【0118】
実施の形態1乃至実施の形態4においては、バンクの断面形状を台形(又は、矩形)として説明を行った。これに対して、本実施の形態では、バンクの基部の方が先端部よりも幅が広くなっている。
【0119】
すなわち、図12において第2バンク240Bは、基板220側の基部244と、先端部242とに分けられる。そして、基部244の幅は、先端部242の幅よりも広く、基端に向かって漸次広くなっている。別の言い方をすれば、基部244の2つの表面(つまり、画素領域300に臨む面)は、基端に向かって互いに遠ざかっている。
【0120】
こうすることで、テーパ角度dを小さくすることができるので、有機発光層の層厚均一性を向上することができる。
【0121】
また、第2バンク240Bの断面形状を上記形状にすることにより、第2バンク240Bと、下層及び第1バンクとの接触面積(結合面積)を広くすることができる。これにより、第1バンク及び第2バンク240Bから構成される井桁構造の強度を向上することができる。この結果、バンク幅を小さく設計することができるため、画素ピッチを小さくすることができると共に、有機ELデバイス10全体において画素領域300に振り分けられる面積を大きくすることができる。すなわち、有機ELデバイス10において、高精細化を図ることができると共に、発光面積を広くすることができる。
【0122】
なお上記説明では第2バンク240Bにのみ触れたが、第1バンクも上記形状と同様の断面形状とすることにより、同様の効果が得られる。
【0123】
2007年5月28日出願の特願2007−139861及び2007年5月29日出願の特願2007−141518の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の有機ELデバイス及び表示装置は、画素領域間の干渉を抑えつつ、画素領域を効率よく配置して発光面積を高めることにより輝度を向上する効果を有し、例えば有機ELテレビへの利用に止まらず、ワープロ,パソコン等の携帯型情報処理装置、腕時計型電子機器など、各種の電子機器における表示部に用いて好適である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL素子を用いたディスプレイパネルが知られている。
【0003】
実際に有機EL素子を発光させるための駆動方式には、パッシブマトリクス法とアクティブマトリクス法の2種類がある。このうちアクティブマトリクス方式は、TFT(薄膜トランジスタ)による駆動方式である。
【0004】
図1は従来のフルカラー有機ディスプレイパネルの発光画素(パッシブ型)の配列を示す図である。同図のように、有機ディスプレイパネルの発光画素は、赤R、緑G、青Bの発光部がマトリクス状に配置された発光画素41を複数有し、さらに複数の発光画素41からなる画像表示配列を有している。
【0005】
図2は、フルカラー有機ディスプレイパネルの発光画素41の基板部51aの概略構造(パッシブ型)を示す図である。同図に示すように、基板部51aは透明なガラス等からなる基板52上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)等からなる第1電極53が設けられている。複数の第1電極53は、互いに平行に、ストライプ状に配列されている。また、第1電極53を含む基板52上には、電気絶縁性の絶縁膜54及び隔壁55が配列されている。絶縁膜54及び隔壁55は、第1電極53に対して直交するように、且つ、所定間隔おきに形成されている。また、隔壁(バンク)55は、基板52上から突出するように設けられている。また、隔壁(バンク)55は、第1電極53の一部分を露出せしめるような位置に形成されている。
【0006】
また、第1電極53において隔壁が形成されない部分の上には、少なくとも1層の有機EL層56が形成されている。さらに、有機EL層56上には、第1電極53の延在方向と略垂直方向に延びる第2電極57が形成されている。
【0007】
隔壁55は、隣り合う第2電極57を隔離することにより、隣り合う第2電極57同士のショートを防止するために設けられている。従って、隔壁55の断面形状は、図2に示すように、逆台形形状等のオーバハング形状であることが望ましい。
【0008】
また、一般的に有機EL層56を構成する有機材料は湿気に弱く、また、隔壁55を構成する材料にも湿気に弱い材料が用いられる。そのため、発光画素41においては、図3に示すように、隔壁55及び有機EL層56が形成される面が、封止部(例えば、ガラス管、保護膜等)によって封止される。図3は、従来のフルカラー有機ディスプレイパネルの発光画素の構造を示す断面図であり、図3Aには、ガラス管68によって封止された発光画素41が示され、図3Bには、透湿性の低い保護膜69によって封止された発光画素41が示されている。図3A及び図3Bのいずれも、第1電極53の長手方向に沿った断面図である。
【0009】
以上のように構成される発光画素41は、駆動された第1電極53及び第2電極57の交差する部分の有機EL層56が発光する。発光された光は、基板52を透過して、表示面方向に進んでいく(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−040370号公報
【特許文献2】特開2000−089690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、近年の有機ELディスプレイパネル及び有機ELディスプレイの研究/開発では、発光輝度を高めることが重要な課題の一つとなっている。有機ELディスプレイパネル及び有機ELディスプレイの技術分野において、輝度を高める種々の方法が提案されている。しかしながら、飛躍的に輝度を高めるような決定的な解決策はなく、改良を積み重ねることにより少しずつ輝度が高められているのが実状である。
【0012】
一般的に、発光面における発光面積を広くすることは、輝度を高める要因となる。すなわち、発光面における発光面積を広くすることにより、発光面に対して両電極から送り込まれるホールと電子が効率よく作用することになり、発光効率が改善されるからである。
【0013】
しかしながら、上記した従来の発光画素では、両電極のオーバラップ領域である画素領域間の間隔が大きく、発光面積のロスが存在する。この発光面積のロスを減らすべく、上記した従来の発光画素の構成において、画素領域間の間隔を小さくすると、画素領域間の干渉が発生してしまう可能性がある。
【0014】
上記した発光面積のロス及び画素領域間の干渉という、相反する課題を解決する方法として、画素素領域間を区切る第2のバンクを設ける方法が知られている。
【0015】
しかしながら、バンク近傍で発光層を平坦にすることは難しく、バンクは発光層厚の不均一化に作用する。この発光層厚の不均一化は発光効率に対してマイナスに寄与する。これを解決するために画素領域間の間隔を広げると、上記のとおり発光面積のロスが発生してしまう。
【0016】
本発明の目的は、バンクの周りに画素規制層(絶縁性無機膜)を設けて、画素領域間の間隔を小さくしつつ、発光層厚の均一化を図ることにより、発光効率を向上することができる有機ELデバイス及び表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の有機ELデバイスは、ライン状に延在する2以上の第1バンクと、隣り合う前記第1バンク間に形成された領域を分割して画素領域を形成し、前記第1バンクの高さより低い複数の第2バンクと、前記画素領域ごとに独立して設けられた正孔輸送層と、前記画素領域を仕切る2つの前記第1バンクの対向する側面に沿って、前記画素領域の端に設けられた絶縁性無機膜と、を有する構成を採る。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、バンクの周りに画素規制層(絶縁性無機膜)を設けて、画素領域間の間隔を小さくしつつ、発光層厚の均一化を図ることにより、発光効率を向上する有機ELデバイス及び表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来のフルカラー有機ディスプレイパネルの発光画素の配列を示す図
【図2】従来のフルカラー有機ディスプレイパネルの発光画素の基板部の概略構造を示す図
【図3】従来のフルカラー有機ディスプレイパネルの発光画素の構造を示す断面図
【図4】本発明の実施の形態1に係る有機ELデバイスの基本構成を示す断面図
【図5】実施の形態1に係る有機ELデバイスの基本構成を示す斜視図
【図6】正孔輸送層の下に絶縁性無機膜を有する有機ELデバイスの断面図
【図7】グラビア印刷工法によるバンク形成方法の説明に供する図
【図8】実施の形態2に係る有機ELデバイスの断面図
【図9】有機ELデバイスの構成バリエーションを示す図
【図10】実施の形態3に係る有機ELデバイスの構成を示す斜視図
【図11】実施の形態4に係る有機ELデバイスの構成を示す斜視図
【図12】バンク断面形状のバリエーションの説明に供する図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下で図面を参照して詳細に説明する本発明の実施の形態に係る有機ELデバイスは、1)ライン状に延在する2以上の第1バンクと、2)隣り合う第1バンク間に形成された領域を分割して画素領域を形成し、第1バンクの高さより低い複数の第2バンクと、3)画素領域ごとに独立して設けられた正孔輸送層と、4)画素領域を仕切る2つの第1バンクの対向する側面に沿って、画素領域の端に設けられた絶縁性無機膜と、を有する。
【0021】
そして、上記有機ELデバイスは、画素領域を仕切る2つの第2バンクの対向する側面に沿って、前記画素領域の端に設けられた絶縁性無機膜を、さらに有することが好ましい。
【0022】
無機絶縁膜の作用により、対向するバンク間の距離を短くする場合でも、塗布法により形成される正孔輸送層または中間層を、画素領域全体に均一の厚さに形成することができる。すなわち、無機絶縁膜の作用により、画素領域間の間隔を小さくしつつ、発光層の厚さを均一化することができる。
【0023】
後述する実施の形態1では、正孔輸送層の材料が、PSS−PEDOT(ポリエチレンスルホン酸をドープしたポリエチレンジオキシチオフェン、以下PEDOTと略す)や、その誘導体(共重合体など)が含まれる場合について説明する。実施の形態1では、正孔輸送層の厚さが、無機絶縁膜の作用により画素領域全体で均一化される。
【0024】
実施の形態2では、正孔輸送層の材料が、WOx(タングステンオキサイド)やMoOx(モリブデンオキサイド)、VOx(バナジウムオキサイド)などの酸化物や、これらの組み合わせである場合について説明する。実施の形態2では、中間層の厚さが、無機絶縁膜の作用により画素領域全体で均一化される。
【0025】
実施の形態3では、第2バンクに、隣接する画素領域を連通する溝が設けられる場合について説明する。
【0026】
実施の形態4では、有機ELデバイスの駆動方式が、特にパッシブ方式である場合について説明する。
【0027】
実施の形態5では、バンクの断面形状のバリエーションについて説明する。
【0028】
なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
【0029】
(実施の形態1)
[1.有機ELデバイスの基本構成]
図4は、本発明の実施の形態1に係る有機ELデバイスの基本構成を示す断面図である。また、図5は、有機ELデバイスの基本構成を示す斜視図である。なお、図4は、有機ELデバイスを図5のA−A面で切り取ったときの断面図である。また、図4及び図5では、正孔輸送層、中間層(IL)、有機発光層(高分子有機EL材料層)及び陰極(カソード電極)は図示されていない。
【0030】
図4において有機ELデバイス10は、基板100、陽極(アノード電極)210、絶縁性無機膜220、第1バンク(隔壁)230、及び第2バンク240(図5参照)を有する。有機ELデバイス10は、駆動方式がアクティブ方式の有機ELデバイスである。
【0031】
基板100は、ゲート電極120、ゲート絶縁層130、ソース電極140、ドレイン電極150、有機半導体層160、及び絶縁層170を有する。これらのうちゲート電極120、ゲート絶縁層130、ソース電極140、ドレイン電極150、及び有機半導体層160は、有機TFT(薄膜トランジスタ)を構成する。なお、有機TFTに代えて、シリコンTFTとしてもよい。
【0032】
また、基板100には、コンタクトホール180が設けられる。コンタクトホール180は、ドレイン電極150と、基板100に設けられた陽極210を電気的に接続する。コンタクトホール180と陽極210との接続点は、絶縁性無機膜220の下に配置される。
【0033】
また基板100上には、絶縁性無機膜220が配置される。絶縁性無機膜220は、第1バンク230の下、及び、第1バンク230の両脇に配置される。第1バンク230の両脇に配置される絶縁性無機膜220の幅は、5〜10μmであることが好ましい。絶縁性無機膜220は、電気絶縁性の無機膜である。また、絶縁性無機膜220は、濡れ性が高いことが好ましく、その材質としては、シリコンオキサイド(SiO2)やシリコンナイトライド(Si3N4)、シリコンオキシナイトライド(SiON)などが含まれる。無機絶縁膜210の厚さは10nm〜200nmであることが好ましい。
【0034】
次に有機ELデバイス10における基板100上の基本構成について詳細に説明する。
【0035】
図5に示すように有機ELデバイス10の基板100上には、複数の第1バンク230がライン状に配置される。ここでは、複数の第1バンク230は、互いが平行に延在している。
【0036】
また基板100上には、第1バンク230の高さよりも低い複数の第2バンク240が配置される。第2バンク240は、隣接する第1バンク230間に形成される領域を複数の領域に分割するように配設される。ここでは、複数の第2バンク240は、第1バンク230の延在方向と垂直な方向に配置される。こうして2つの第1バンク230と2つの第2バンク240とによって囲まれた領域(以下、「画素領域」と呼ぶことがある)300が、基板100上に複数形成される。この画素領域300は、ピクセルに相当する。
【0037】
第1バンク230の基板100と向き合う面(つまり、第1バンク230の底面)の下には、絶縁性無機膜220が配置される。さらに、絶縁性無機膜220は、第1バンク230の周りに、具体的には、画素領域300を仕切る2つの第1バンク230の対向する側面のそれぞれに沿って画素領域300の両端に、配置されている。また、絶縁性無機膜220の上面(ここでは、平坦な面)は、その一端が第1バンク230の側面と接し、その側面から画素領域300の内部に向けて延びている。そして、その絶縁性無機膜220の上面の高さは、第2バンク240の高さよりも低い。ここでは、絶縁性無機膜220は、第1バンク230の底面周辺に、特に、第1バンク230の底面の周りで且つ第1バンク230の下層に配置されている。そして、上述のとおり、絶縁性無機膜220は、第1バンク230の側面から5〜10μmまでの位置まで配置されることが好ましい。
【0038】
また、絶縁性無機膜220は、第2バンク240の底面の下にも配置されている。さらに、絶縁性無機膜220は、第2バンク240の周りに、具体的には、画素領域300を仕切る2つの第2バンク240の対向する側面のそれぞれに沿って画素領域300の他の両端に配置されている。また、絶縁性無機膜220の上面(ここでは、平坦な面)は、その一端が第2バンク240の側面に接し、その側面から画素領域300の内部に向けて延びている。そして、その絶縁性無機膜220の上面の高さは、第2バンク240の高さよりも低い。ここでは、絶縁性無機膜220は、第2バンク240の底面周辺、特に、その底面の周りで且つ第2バンク240の下層に配置される。
【0039】
各画素領域300の底面には、陽極210が配置される。有機ELデバイス10は駆動方式がアクティブ方式の有機ELデバイスであるので、陽極210は、ピクセルごとに設けられる。
【0040】
[2.有機ELデバイスの構成の詳細]
画素領域300には、基板100側から、順に、正孔輸送層、中間層、高分子有機EL材料層が積層される。
【0041】
(1)正孔輸送層
陽極210上には、正孔輸送層が配置される。正孔輸送層は、正孔輸送材料からなる層である。本実施の形態では、正孔輸送材料には、PEDOTや、その誘導体(共重合体など)が含まれる。正孔輸送層の厚さは通常、10nm以上100nm以下であり、約30nmでありうる。
【0042】
図6は、正孔輸送層の下に絶縁性無機膜を有する有機ELデバイスの断面図である。図6に示すように正孔輸送層250の材料がPEDOT(又は、その誘導体)である場合、正孔輸送層250は、絶縁性無機膜220の上面を覆うように、画素領域300に設けられる。すなわち、この場合、バンク近傍において正孔輸送層250の底面は、絶縁性無機膜220の上面と接している。こうしてバンク底面周辺に設けられた絶縁性無機膜220により、正孔輸送層250の材料が溶解した溶液は画素領域300全体に均一に塗布され、膜厚が均一な正孔輸送層250を得ることができる。
【0043】
(2)中間層
正孔輸送層250上には、中間層260が配置される(図6参照)。中間層260は、正孔輸送層250に電子が輸送されるのをブロックする役割や、高分子有機EL材料層に正孔を効率よく運ぶ役割などを有し、例えばポリアニリン系の材料からなる層である。中間層260の厚さは通常、10nm以上100nm以下であり、約40nmでありうる。
【0044】
(3)有機EL層
高分子有機EL材料層270は、中間層260上に配置される(図6参照)。さらに、高分子有機EL材料層270上には、カソード電極(図示せず)が配置される。
【0045】
[3.有機ELデバイスの製造方法]
次に上記構成を有する有機ELデバイス10の製造方法について説明する。なお、基板100の製造方法については従来と特に変わるところがないので、その説明は省略される。
【0046】
好ましい製造方法の一例は、1)基板面に陽極210を形成するステップ、2)陽極210が形成された基板面に、絶縁性無機膜220を形成するステップ、3)絶縁性無機膜220上に、画素領域300を規定する第1バンク230及び第2バンク240を形成するステップ、4)画素領域300内に、正孔注入層250を形成するステップ、5)画素領域300内に、中間層260を形成するステップ、6)画素領域300内に、高分子有機EL材料層270を形成するステップ、及び7)高分子有機EL材料層270に陰極を形成するステップを含む。
【0047】
1)ステップでは、基板に導電体薄膜を成膜してこれをフォトリソグラフィ加工またはエッチング加工することにより、基板100上に、陽極210が形成される。陽極210は、画素領域300が形成される予定位置に、画素領域300ごとに独立して形成される。
【0048】
2)ステップでは、基板100上に、絶縁性無機膜220は、スパッタにより形成される。絶縁性無機膜220は、マスクを介してスパッタすることで、形成予定位置に直接形成されてもよいし、また、スパッタによって膜を形成した後に、エッチングによって形成予定位置の膜のみを残すことにより、形成されてもよい。
【0049】
3)ステップでは、絶縁性無機膜220上に、画素領域300を規定する第1バンク230及び第2バンク240が形成される。バンクの形成方法については、後に詳細に説明する。
【0050】
4)ステップでは、形成された画素領域300内に、PEDOT等が溶解した溶液をコートする。コートは、例えば、インクジェット、凸版印刷、凹版印刷、又は、ディスパンサー法により行われる。
【0051】
5)ステップでは、画素領域300内であって正孔輸送層250の上層に、中間層260の材料が有機溶媒に溶解した溶液がコートされる。コートは、例えば、インクジェット、凸版印刷、凹版印刷、又は、ディスパンサー法により行われる。
【0052】
6)ステップでは、画素領域300内であって中間層260の上層に、高分子有機EL材料層270の材料が有機溶媒に溶解した溶液がコートされる。コートは、例えば、インクジェットにより行われる。
【0053】
7)ステップでは、陰極が高分子有機EL材料層270上に形成される。
【0054】
ここで、3)ステップの第1バンク230及び第2バンク240の形成は、以下に示す方法で行うことができる。
【0055】
まず、第1の形成方法として、第1バンク230及び第2バンク240は、グラビア印刷工法によって形成される(図7参照)。図7は、グラビア印刷工法によるバンク形成方法の説明に供する図である。図7には、バンクを形成するグラビア印刷装置400の構成が示されている。
【0056】
まず、印刷ロール410、圧胴ロール420、及びインク(隔壁の構成材料)が貯蔵されたタンク(符号なし)内に配置された供給ロール430をそれぞれ回転させる。
【0057】
供給ロール430は、その下部がインク内に浸っており、下部表面に付着したインクを回転することにより印刷ロール410に供給する。
【0058】
印刷ロール410のロール面410A上には、凹部が設けられている。この凹部には、供給ロール430によって供給されたインクが充填される。凹部に充填されたインクの厚みにはバラツキがあることから、ドクタ440によってインクの厚さを一定にする。
【0059】
凹部に充填されたインクは、圧胴ロール420によって印刷ロール410に圧接された基板100に対して転写される。こうして印刷ロール面410Aにおける凹部のパターンに応じてパターニングされたバンクが形成される。
【0060】
次に、例えば基板100を90度回転させ、印刷ロール410のロール面410Aを第2バンク240用のものに換えた後、第1バンク230を形成する場合と同様に、第2バンク240を形成する。こうして第1バンク230及び第2バンク240で囲まれた画素領域300が基板100上に形成される。なお、このステップ(4)を行う前に、パターニング済みの第1バンク230に対してプリベーク処理を行なって、第1バンク230を構成する樹脂材料を硬化させてもよい。
【0061】
また、第2の形成方法としては、以下に示すフォトリソグラフィによる形成方法でもよい。
【0062】
まず、第2バンク240を形成する予定位置を含むライン上に、第2バンク240を構成する材料を塗布した後、順に、プリペーグ、フォトマスクを介した露光、現像、ポストベーグを行うことにより、第2バンク240を形成する。
【0063】
次に、第2バンク240の形成方法と同様に、第1バンク230を形成する予定位置を含むライン上に、第1バンク230を構成する材料を塗布した後に、順に、プリペーグ、フォトマスクを介した露光、現像、ポストベーグを行うことにより、第1バンク230を形成する。
【0064】
また第3の形成方法として、第1バンク230及び第2バンク240を形成する予定位置にバンク材料を塗布した後に、プリペーグ、露光、現像、ポストベーグを順に行うことにより、第1バンク230及び第2バンク240を同時に形成してもよい。このとき、露光の際に用いられるフォトマスクには、場所によって光の透過率が異なるハーフトーン膜を用いることができる。こうすることで、第1バンク230の形成予定位置と第2バンク240の形成予定位置に照射される光の量を調整して、高さの異なる第1バンク230及び第2バンク240を同時に形成することができる。
【0065】
以上説明したように本実施の形態によれば、有機ELデバイス10において、絶縁性無機膜220は、画素領域300に臨む第1バンク230の側面に沿って、画素領域300の端に配置されている。別の言い方をすれば、第1バンク230から画素領域300内にはみ出して絶縁性無機膜220が設けられている。
【0066】
こうすることで、正孔輸送層250の層厚均一性を向上することができる。
【0067】
すなわち、塗布形成される層をバンク近傍で平坦にすることは、通常困難である。しかしながら、有機材料に比べて濡れ性の高い絶縁性無機膜220を第1バンク230の周りに設けることにより、絶縁性無機膜220の上面と接する層(本実施の形態では、正孔輸送層250)を平坦に形成することができ、その層の層厚均一性を向上することができる。結果として、第1バンク230近傍の層厚均一性(正孔輸送層250、中間層260、及び高分子有機EL材料層270の層厚均一性)を向上することができる。
【0068】
ここで、層厚均一性が保たれない部分は、発光効率にマイナスの影響を及ぼすことが知られている。そのため、画素領域300に形成される層の層厚均一性を向上することにより、画素領域300の輝度を向上することができる。
【0069】
また、有機ELデバイス10において、コンタクトホール180と陽極210との接続点は、絶縁性無機膜220の下部に配置される。
【0070】
こうすることで、コンタクトホール180から注入された正孔が高分子有機EL材料層270に直接的に浸入することが防止される。これにより、コンタクトホールのように発光が予定されない箇所が発光することが防止される。
【0071】
ここで、本実施の形態に係る有機ELデバイス10は、上記した従来技術に比べて、第1バンク230の他に、第2バンク240を有している。この第2バンク240は隣接する画素領域を隔離する機能を有し、第1の画素領域の有機発光層で起こる励起及びこの励起によって発生する光エネルギーが、第1の画素領域に隣接する第2の画素領域に漏洩することを防止する。なお、バンクの色を画素領域から発せられる光とのコントラストの高い色(例えば、黒色)にすることにより、光エネルギーの漏洩防止効果をさらに高めることができる。
【0072】
従って、従来のように隣接する画素領域を仕切る補助バンク(本実施の形態の第2バンクに相当)がない場合には、陽極間の距離(つまり、画素領域間の距離)を大きくとる必要がある一方で、有機ELデバイス10では、陽極210間の距離(つまり、画素領域300間の距離)を小さくすることができる。この結果、陽極210間のスペースが小さくなり、画素ピッチを小さくすることができると共に、有機ELデバイス10全体において画素領域300に振り分けられる面積を大きくすることができる。
【0073】
ただし、画素領域300間の距離を小さくするのに伴い、第2バンク240間の距離を小さくすると、塗布法により画素領域300に形成される層の層厚が不均一化する。これは、有機ELデバイス10の発光効率が低下する要因となる。すなわち、第2バンク240自体は、画素領域300間の距離を小さくする阻害要因ともなり得る。
【0074】
これに対して、本実施の形態では、上記のとおり、第2バンク240の側面に沿って画素領域300の端に、絶縁性無機膜220が配置される。別の言い方をすれば、第2バンク240から画素領域300内にはみ出して絶縁性無機膜220が設けられている。
【0075】
こうすることで、第2バンク240間の距離が小さくても、塗布法により画素領域300に形成される層を均一な層厚で形成することができる。
【0076】
すなわち、有機ELデバイス10において、絶縁性無機膜220が第2バンク240の側面に沿って画素領域300の端に設けられることにより、陽極210間(つまり、画素領域間300の距離)を小さくしつつ、絶縁性無機膜220の上面に接する層の層厚を均一化することができる。
【0077】
また、第2バンク240は、正孔輸送層250、中間層260、及び高分子有機EL材料層270を画素領域300ごとに独立して設けることを容易にしている。
【0078】
また、第2バンク240自体が、中間層260、及び高分子有機EL材料層270の層厚均一性を向上する一面もある。すなわち、上記した従来のように隣接画素領域を仕切る補助バンク(本実施の形態の第2バンクに相当)がない場合に、例えばホコリ等の不純物が画素領域に存在していると、中間層及び高分子有機EL層の形成に用いられる有機溶媒溶液がその不純物に引き寄せられて、中間層及び高分子有機EL層の層厚に偏りが生じてしまう問題がある。これに対して、本実施の形態のように第2バンク240を設けることにより、第1の画素領域に塗布した有機溶媒溶液が、第1の画素領域に隣接し不純物が存在する第2の画素領域に流動することを防止することができる。
【0079】
また、上記したように第2バンク240の高さは、第1バンク230の高さよりも低くする。第2バンク240の高さは、第1バンク230の高さの1/10〜9/10であることが好ましい。これにより、陽極210及び陰極からそれぞれ注入される正孔及び電子が効率よく高分子有機EL材料層270に作用するため高い輝度が得られると共に、上記した隣接画素領域310の隔離機能を発揮することができる。さらに、上記したようなバンクの高さとすることにより、有機発光層の形成が容易となり、製造工程の観点からもメリットがある。
【0080】
これに対して、例えば、第2バンク240の高さを第1バンク230の高さの1/10より小さくすると、有機発光層の構成材料(有機EL材料)が第2バンク240の側面に付着し易くなる。これにより有機発光層の層厚分布が不均一になる可能性が高くなり、輝度を向上させることが難しくなる。一方、第2バンク240の高さを第1バンク230の高さの9/10より大きくすると、有機発光層の構成材料が第1バンク230を超えて他のラインに溢れ易くなり、ライン同士がクロストークを起こす可能性が高まる。
【0081】
より好ましくは、第2バンク240の高さは、第1バンク230の高さの1/5〜1/3である。特に、有機発光層の構成材料として高分子有機材料が用いられる場合、塗布されるインク濃度が1%程度で粘性が低いため、第1バンク230を超えて他のラインに漏れ易い。従って、第2バンク240に対し第1バンク230が十分に高いことが好ましい。
【0082】
なお、「1/10〜9/10」は、「1/10以上かつ9/10以下」を意味する。すなわち、第1バンク240の高さをd1、第2バンク230の高さをd2とした場合、d1/10≦d2≦9×d1/10が成り立つことを意味している。
【0083】
なお、バンクを構成する材料は特に限定されるものではなく、例えば、ポリアクリレート又はポリイミドなどの有機材料を用いることができる。ただし、製造プロセスの観点ではベーク時にガスが発生しないメリットがあることから、ポリイミドが好ましい。
【0084】
また、第1バンク230及び第2バンク240を構成する有機材料は異なっていてもよい。すなわち、第1バンク230には、第1バンク230を挟んで隣接する画素領域300間の干渉を防止する役割がある。そのため、第1バンク230は、インクが第1バンク230を超えて隣接画素領域300に行かないように、濡れ性の低い材料で構成されることが好ましい。従って、第1バンク230は濡れ性の低い材料で構成し、第2バンク240は、第1のバンク230よりも濡れ性の高い材料で構成してもよい。第1バンク230表面の水の接触角は40°以上が好ましく、また第2バンク240表面の水の接触角は20°以下が好ましい。すなわち、第1バンク230表面と第2バンク240表面の水の接触角に、20°以上の差があることが望ましい。
【0085】
また、バンクの断面形状は、図4乃至図7では台形としているが、これに限定されるものではなく、矩形でもよい。また、バンク断面の各辺は直線でなく、曲線でもよい。
【0086】
(実施の形態2)
実施の形態2では、正孔輸送層の材料が、WOx(タングステンオキサイド)やMoOx(モリブデンオキサイド)、VOx(バナジウムオキサイド)などの酸化物や、これらの組み合わせである場合について説明する。
【0087】
[1.有機ELデバイスの基本構成]
実施の形態2に係る有機ELデバイスの基本構成は、図4及び図5に示される実施の形態1の基本構成と同じである。すなわち、第1バンクの周りに、具体的には、画素領域を仕切る2つの第1バンクの対向する側面のそれぞれに沿って画素領域の端に、絶縁性無機膜が配置されている。また、第2バンクの周りに、具体的には、画素領域を仕切る2つの第2バンクの対向する側面のそれぞれに沿って画素領域の端に、絶縁性無機膜が配置されている。
【0088】
[2.有機ELデバイスの構成の詳細]
図6の場合と同様に、画素領域300には、基板100側から、順に、正孔輸送層、中間層、高分子有機EL材料層が積層される(図8参照)。図8は、中間層の下に絶縁性無機膜を有する有機ELデバイスの断面図である。
【0089】
(1)正孔輸送層
正孔輸送層250の材料がWOx(タングステンオキサイド)やMoOx(モリブデンオキサイド)、VOx(バナジウムオキサイド)などの酸化物や、これらの組み合わせである場合、正孔輸送層250は、絶縁性無機膜220の上面(又は、上面全体のうち少なくともバンク近傍に位置する部分)を覆わない。すなわち、中間層が形成される前の段階では、絶縁性無機膜220の上面(又は、上面全体のうち少なくともバンク近傍に位置する部分)は、正孔輸送層250によって覆われることなく、露出した状態となっている。
【0090】
(2)中間層
中間層260は、正孔輸送層250上に配置される(図8参照)。ここで、中間層260が形成される段階では絶縁性無機膜220の上面が露出しているので、バンク近傍において中間層260の底面は、絶縁性無機膜220の上面と接する。こうしてバンクの周りに設けられた絶縁性無機膜220により、中間層260の材料を溶解した溶液は画素領域300全体に均一に塗布され、膜厚が均一な中間層260を得ることができる。
【0091】
(3)有機EL層
高分子有機EL材料層270は、中間層260上に配置される(図8参照)。さらに、高分子有機EL材料層270上には、カソード電極(図示せず)が配置される。
【0092】
[3.有機ELデバイスの製造方法]
好ましい製造方法の一例は、1)基板面に陽極210を形成するステップ、2)陽極210上に、正孔注入層250を形成するステップ、3)基板面に絶縁性無機膜220を形成するステップ、4)絶縁性無機膜220上に、画素領域300を規定する第1バンク230及び第2バンク240を形成するステップ、5)画素領域300内に、中間層260を形成するステップ、6)画素領域300内に、高分子有機EL材料層270を形成するステップ、及び7)高分子有機EL材料層270に陰極を形成するステップを含む。
【0093】
陽極210、絶縁性無機膜220、中間層260、高分子有機EL材料層270、及び陰極の形成方法は、実施の形態1で示したものと同様の方法を用いることができる。
【0094】
2)ステップでは、陽極210上に、正孔注入層250が形成される。ここでは、例えば、加熱蒸着法又はスパッタ法によって正孔注入層250が形成される。
【0095】
なお、有機ELデバイス10の構成には種々のバリエーションが考えられ、その構成によって製造方法が変わってくる場合がある。図9は、有機ELデバイスの構成バリエーションを示す図である。
【0096】
絶縁性無機膜220が正孔輸送層上に配置される場合(図9A)及び基板上に配置される場合(図9B)場合には上記した製造方法を用いることができるが、例えば、基板上であって正孔輸送層の下に配置される場合(図9C)には、3)ステップ、2)ステップの順の製造工程になる。
【0097】
いずれの構成にしても、絶縁性無機膜220はバンクの周りに設けられ、その上面が中間層260の底面と接していることに変わりはない。
【0098】
このように本実施の形態によれば、第1バンク230(又は、第2バンク240)の周りに絶縁性無機膜220が設けられ、その上面が中間層260の底面と接する。なお、有機ELデバイスの構成として中間層がない場合もある。この場合には、絶縁性無機膜220は、高分子有機EL材料層270の底面と接していればよい。
【0099】
こうすることで、絶縁性無機膜220の上面と接する中間層260又は高分子有機EL材料層270の層厚均一性を向上することができる。
【0100】
なお、バンクの断面形状は、図9では台形としているが、これに限定されるものではなく、矩形でもよい。また、バンク断面の各辺は直線でなく、曲線でもよい。
【0101】
(実施の形態3)
実施の形態3では、第2バンクに、隣接する画素領域を連通する溝が設けられる。これに伴い、第2バンクの底面周辺(特に、第2バンクに形成された溝の周辺)には、絶縁性無機膜は設けられない。
【0102】
すなわち、図10は、実施の形態3に係る有機ELデバイスの構成を示す斜視図であり、同図に示すように有機ELデバイス10Aは、第2バンク240Aを有する。この第2バンク240Aには、隣接する画素領域300を連通する溝245が形成されている。なお図10には、実施の形態1及び実施の形態2に係る有機ELデバイスの基本構成において第2バンクに溝が設けられた構成が示されている。
【0103】
この溝245の幅は、画素領域300に設けられる層の材料に応じて、その好適値が異なってくる。
【0104】
実施の形態1のように正孔輸送層の材料に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOTと称される)や、その誘導体(共重合体など)が含まれる場合には、正孔輸送層250が塗布形成される際に用いられる溶液は溝245を通って隣接画素領域300間で流動せず、一方、中間層260及び高分子有機EL材料層270を塗布形成される際に用いられる溶液は溝245を通って隣接画素領域300で流動可能な幅が、溝245の好適な幅である。
【0105】
通常、PEDOT等は水溶液として塗布される。一方、中間層260及び高分子有機EL材料層270の構成材料は有機溶媒に溶かされて有機溶媒溶液として塗布される。そして、水溶液は有機溶媒溶液に比べて粘性が高い。従って、上記した溝245の好適な幅は、PEDOT等が溶解した水溶液の粘度と、中間層260及び高分子有機EL材料層270の構成材料が溶解した有機溶媒溶液の粘度との兼ね合いから決定することができる。
【0106】
以上のように第2バンク240Aを設けたことにより、塗布形成される正孔輸送層250を画素領域300ごとに独立して設けることが容易になる。
【0107】
また、第2バンク240Aに溝245が形成されることにより、各画素領域300の輝度のぶれを少なくして、画質を向上することができる。
【0108】
すなわち、中間層260及び高分子有機EL材料層270は、有機溶媒溶液を画素領域300に塗布して形成される。このとき、各画素領域300に対する有機溶媒溶液の塗布量は、多少ぶれる可能性がある。この塗布量のぶれは各画素領域300の輝度のぶれに繋がり、画質を低下させる要因となる。このような問題に対し、本実施の形態に係る有機ELデバイス10Aでは、第2バンク240Aに隣接する2つの画素領域300を連通する溝245を形成したことにより、画素領域300間で有機溶媒溶液量を平準化することができる。従って、画素領域300間で有機溶媒溶液の滴下量が異なる場合でも、最終的に各画素領域300に残る有機溶媒溶液量のぶれを少なくすることができる。この結果、中間層260及び高分子有機EL材料層270の層厚を、画素領域300間で均一にすることができる。
【0109】
一方で、上記したように不純物(ほこり等)が存在する場合には、その不純物に有機溶媒溶液が引き寄せられてしまう問題がある。しかし、溝245を好適な幅にすることにより、隣接する画素領域300間での有機溶媒溶液の流動を許容すると共に、不純物(ほこり等)が存在する画素領域300へ有機溶媒溶液が過度に流動することを抑えることができる。
【0110】
一方、実施の形態2のように正孔輸送層の材料が、WOx(タングステンオキサイド)やMoOx(モリブデンオキサイド)、VOx(バナジウムオキサイド)などの酸化物や、これらの組み合わせである場合には、正孔輸送層250は塗布形成されるものではないので、第2バンク240Aの機能として、正孔輸送層250を画素領域300ごとに隔離する機能は予定されていない。この場合には、第2バンク240Aの機能としては、隣接する画素領域300で有機溶媒溶液の流動を許容する機能と、不純物(ほこり等)が存在する画素領域300へ有機溶媒溶液が過度に流動することを抑える機能とが予定されている。
【0111】
(実施の形態4)
実施の形態4は、駆動方式がパッシブ方式の有機ELデバイスに関する。図11は、実施の形態4に係る有機ELデバイスの構成を示す斜視図である。
【0112】
図11において、パッシブ方式が適用された有機ELデバイス10Bは、帯状の陽極210Bを有する。
【0113】
陽極210Bは、基板100上に、2つの第2バンク240の間に、且つ、第2バンク240と平行に配置される。
【0114】
陽極210上には、絶縁性無機膜220が配置される。絶縁性無機膜220上には、第1バンク230が配置される。
【0115】
絶縁性無機膜220は、陽極210と第1バンク230との間に設けられ、陽極210と第1バンク230とを接着する接着層として機能する。
【0116】
このように陽極210と第1バンク230との間に接着層を設けたことにより、第1バンク230及び第2バンク240により構成される井桁構造の強度を向上することができる。
【0117】
(実施の形態5)
実施の形態5は、バンクの断面形状のバリエーションに関する。図12は、バンク断面形状のバリエーションの説明に供する図である。
【0118】
実施の形態1乃至実施の形態4においては、バンクの断面形状を台形(又は、矩形)として説明を行った。これに対して、本実施の形態では、バンクの基部の方が先端部よりも幅が広くなっている。
【0119】
すなわち、図12において第2バンク240Bは、基板220側の基部244と、先端部242とに分けられる。そして、基部244の幅は、先端部242の幅よりも広く、基端に向かって漸次広くなっている。別の言い方をすれば、基部244の2つの表面(つまり、画素領域300に臨む面)は、基端に向かって互いに遠ざかっている。
【0120】
こうすることで、テーパ角度dを小さくすることができるので、有機発光層の層厚均一性を向上することができる。
【0121】
また、第2バンク240Bの断面形状を上記形状にすることにより、第2バンク240Bと、下層及び第1バンクとの接触面積(結合面積)を広くすることができる。これにより、第1バンク及び第2バンク240Bから構成される井桁構造の強度を向上することができる。この結果、バンク幅を小さく設計することができるため、画素ピッチを小さくすることができると共に、有機ELデバイス10全体において画素領域300に振り分けられる面積を大きくすることができる。すなわち、有機ELデバイス10において、高精細化を図ることができると共に、発光面積を広くすることができる。
【0122】
なお上記説明では第2バンク240Bにのみ触れたが、第1バンクも上記形状と同様の断面形状とすることにより、同様の効果が得られる。
【0123】
2007年5月28日出願の特願2007−139861及び2007年5月29日出願の特願2007−141518の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の有機ELデバイス及び表示装置は、画素領域間の干渉を抑えつつ、画素領域を効率よく配置して発光面積を高めることにより輝度を向上する効果を有し、例えば有機ELテレビへの利用に止まらず、ワープロ,パソコン等の携帯型情報処理装置、腕時計型電子機器など、各種の電子機器における表示部に用いて好適である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライン状に延在する2以上の第1バンクと、
隣り合う前記第1バンク間に形成された領域を分割して画素領域を形成し、前記第1バンクの高さより低い複数の第2バンクと、
前記画素領域ごとに独立して設けられた正孔輸送層と、
前記第1バンクおよび第2バンクの底面の下に配置された絶縁性無機膜であって;前記画素領域を仕切る2つの前記第1バンクの対向する側面に沿って、前記画素領域の端に設けられ、かつ前記画素領域を仕切る2つの前記第2バンクの対向する側面に沿って、前記画素領域の端に設けられた絶縁性無機膜と、
前記絶縁性無機膜の上面と接し、かつ塗布形成された機能層と、
を有する有機ELデバイスであって、
前記第1バンクおよび前記第2バンクは有機材料からなる、有機ELデバイス。
【請求項2】
前記第2バンクの表面は、前記第1バンクの表面のぬれ性よりも高い、請求項1に記載の有機ELデバイス。
【請求項3】
前記正孔輸送層の材質は、タングステンオキサイド(WOx)、モリブデンオキサイド(MoOx)、バナジウムオキサイド(VOx)、またはこれらの組み合わせを含み、
前記絶縁性無機膜の上面と接し、かつ塗布形成された機能層は、電子ブロック層である、
請求項1または2に記載の有機ELデバイス。
【請求項1】
ライン状に延在する2以上の第1バンクと、
隣り合う前記第1バンク間に形成された領域を分割して画素領域を形成し、前記第1バンクの高さより低い複数の第2バンクと、
前記画素領域ごとに独立して設けられた正孔輸送層と、
前記第1バンクおよび第2バンクの底面の下に配置された絶縁性無機膜であって;前記画素領域を仕切る2つの前記第1バンクの対向する側面に沿って、前記画素領域の端に設けられ、かつ前記画素領域を仕切る2つの前記第2バンクの対向する側面に沿って、前記画素領域の端に設けられた絶縁性無機膜と、
前記絶縁性無機膜の上面と接し、かつ塗布形成された機能層と、
を有する有機ELデバイスであって、
前記第1バンクおよび前記第2バンクは有機材料からなる、有機ELデバイス。
【請求項2】
前記第2バンクの表面は、前記第1バンクの表面のぬれ性よりも高い、請求項1に記載の有機ELデバイス。
【請求項3】
前記正孔輸送層の材質は、タングステンオキサイド(WOx)、モリブデンオキサイド(MoOx)、バナジウムオキサイド(VOx)、またはこれらの組み合わせを含み、
前記絶縁性無機膜の上面と接し、かつ塗布形成された機能層は、電子ブロック層である、
請求項1または2に記載の有機ELデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−200049(P2009−200049A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103446(P2009−103446)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【分割の表示】特願2008−553967(P2008−553967)の分割
【原出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【分割の表示】特願2008−553967(P2008−553967)の分割
【原出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]