説明

有機ELパネルの欠陥検査方法及び欠陥検査装置

【課題】有機ELパネルの欠陥検査を行うに際して、有機層の成膜直後に成膜の不具合を検知することを可能にする。
【解決手段】有機層12に検査光2Aを照射する光源2を基板10に対して斜めに向けて配置し、検査光2Aが入射しない位置に有機層12を撮像する撮像手段3を配置し、検査光2Aの照射によって有機層12から発せられる光を撮像手段3にて検出し、撮像手段3によって得られる有機層12の撮像信号に基づいて欠陥を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELパネルの欠陥を検査する方法及び欠陥検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機ELパネルは、自発光の有機EL素子を基板上に単数又は複数配置したものであって、表示装置や照明装置などに用いられている。有機EL素子は、陰極と陽極を形成する一対の電極(上部電極と下部電極)間に発光層を含む有機層を積層した構造を有する。
【0003】
有機ELパネルは有機EL素子に所望の発光が得られない場合に、その箇所が欠陥になり、有機ELパネルの品質を低下させることになる。この欠陥には各種の要因があるが、有機層の成膜時に異物が混入することや有機層の成膜むらなどのように有機層の成膜時の不具合が原因になることが多い。有機層は、発光層に加えて正孔注入・輸送層や電子注入・輸送層といった各種機能層を積層した構造を有しているが、その膜厚は数ナノメートルから数百ナノメートルオーダーで極めて薄い。したがって、有機層の成膜不良は通常の可視光を使用した顕微鏡などによる目視検査で発見することは極めて困難である。
【0004】
そこで、従来は、有機EL素子に給電することで有機EL素子を実際に発光させ、その発光状態を観察することで有機ELパネルの欠陥検査を行う、所謂点灯検査が一般になされている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−134489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機ELパネルに対して点灯検査を行うためには、下部電極,有機層,上部電極からなる有機EL素子が基板上に形成されており、上部電極と下部電極に給電するための配線が基板上に形成されていることが必要になる。有機ELパネルの製造工程は、基板上に下部電極と配線のパターンを形成した後、有機層を成膜し、その後に上部電極を形成する。したがって、従来の点灯検査では、有機ELパネルにおける欠陥原因の大半が前述したように有機層の成膜時にあるにも拘わらず、上部電極を形成した後でなければ有機ELパネルの欠陥検査を行うことができないこととなり、大きな欠陥が見つかった場合は上部電極の形成工程の時間や材料が無駄になる場合があった。また、有機層の成膜工程の後、再成膜による欠陥修復を行うことができない問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、有機ELパネルの欠陥検査を行うに際して、有機層の成膜直後に成膜の不具合を検知することを可能にして、その後の工程の無駄をなくすこと、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明による有機ELパネルの欠陥検査方法及び欠陥検査装置は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0009】
一対の電極間に有機層を積層した有機EL素子を基板上に形成した有機ELパネルの欠陥を検査する方法であって、前記有機層に検査光を照射する光源を前記基板に対して斜めに向けて配置し、前記検査光が入射しない位置に前記有機層を撮像する撮像手段を配置し、前記検査光の照射によって前記有機層から発せられる光を前記撮像手段にて検出し、前記撮像手段によって得られる前記有機層の撮像信号に基づいて欠陥を検査することを特徴とする。
【0010】
一対の電極間に有機層を積層した有機EL素子を基板上に形成した有機ELパネルの欠陥を検査する装置であって、前記基板に対して斜めに向けて配置され前記有機層に検査光を照射する光源と、前記検査光が入射しない位置に配置され前記有機層を撮像する撮像手段と、前記検査光の照射によって前記有機層から発せられる光を前記撮像手段にて検出し、前記撮像手段によって得られる前記有機層の撮像信号に基づいて欠陥を検査する欠陥検査手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このような特徴を有する有機ELパネルの欠陥検査方法及び欠陥検査装置によると、有機ELパネルの欠陥検査を行うに際して、有機層の成膜直後に成膜の不具合を検知することを可能にして、その後の工程の無駄をなくすことができる。また、検査光が撮像手段に入射しないように、検査光の光源と撮像手段の配置を考慮しているので、特に撮像手段の前にフィルタを設けなくても有機層の画像を高いコントラストで撮像することができる。これによって、欠陥の検査精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る有機ELパネルの欠陥検査方法及び欠陥検査装置を示した説明図である。
【図2】撮像手段によって得られる有機層12のパターン画像の一例を示している。同図(a)が欠陥の無い状態のパターン画像であり、同図(b)が欠陥の有る状態のパターン画像である。
【図3】本発明の実施形態に係る有機ELパネルの欠陥検査方法及び欠陥検査装置の他の構成例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る有機ELパネルの欠陥検査方法及び欠陥検査装置を示した説明図である。有機ELパネル1は、一対の電極(上部電極と下部電極)間に有機層12を積層した有機EL素子を基板10上に形成したものである。図においては、基板10上に下部電極11が形成され、その上に有機EL素子毎にパターニングされた有機層12を積層した状態を示している。
【0014】
このような有機ELパネル1に対して、有機層12に検査光2Aを照射する光源2を基板10に対して斜めに向けて配置している。光源2の照射軸2Pと基板10の表面との角度は傾斜した状態であれば良いが、特に、30〜50°とすることが好ましい。これに対して、有機層12を撮像する撮像手段3を検査光2Aの反射光が入射しない位置に配置している。図示の例では、撮像手段3の撮像光軸3Pを基板10の表面に対して略垂直に配置している。これによって、検査光2Aが基板10の表面などで反射した光が撮像手段3に入射しないようにしている。
【0015】
検査光2Aは、例えば紫外光などであり、有機層12に照射することで有機層12(例えば発光層)を励起状態にして発光を促すエネルギーを有するものである。有機ELパネル1の有機層12は、通常の状態では略透明であって、これを撮像手段3で撮像してもコントラストの高いパターン画像を得ることができないが、有機層12に検査光2Aを照射することで、照射された範囲内の有機層12が発光し、この範囲を撮像手段3で撮像することで、高いコントラストのパターン画像を得ることができる。
【0016】
欠陥検査手段4は、検査光2Aの照射によって有機層12から発せられる光を撮像手段3にて検出し、撮像手段3によって得られる有機層12の撮像信号に基づいて欠陥を検査するものである。図2は、撮像手段3によって得られる有機層12のパターン画像の一例を示している。同図(a)が欠陥の無い状態のパターン画像であり、同図(b)が欠陥の有る状態のパターン画像である。有機層12が例えば矩形のドット形状でドットマトリクス状に配置されている場合には、検査光2Aを照射することで、同図(a)に示すようなRGBのパターン画像を得ることができる。これに対しては、有機層12の一部に欠陥Fがある場合には、欠陥Fの有る有機層12は十分な輝度が得られない状態になるので、欠陥の無いパターン画像(同図(a))と欠陥の有るパターン画像(同図(b))を比較すると、両者に違いが生じる。欠陥検査手段4はこのような撮像信号の違いを検知して欠陥の有無を判断している。
【0017】
このような本発明の実施形態に係る有機ELパネルの欠陥検査方法及び欠陥検査装置によると、有機ELパネル1に検査光2Aを照射することで有機層12を発光させるので、有機層12上に上部電極を形成する前の工程で、有機層12の成膜不良等の欠陥を検査することができる。これによって、有機層12の成膜後の工程を無駄にすること無く、有機ELパネル1の欠陥検査を行うことができる。
【0018】
また、検査光2Aを照射する光源2を有機ELパネル1の基板10に対して斜めに配置しており、有機層12を撮像する撮像手段3を検査光2Aの反射光が入射しないように配置しているので、有機層12のパターン画像のコントラストが反射光の入射によって低減することを抑止できる。これにより高いコントラストの撮像信号に基づいて欠陥検査を行うことができ、検査精度を向上することが可能になる。
【0019】
図3は、本発明の実施形態に係る有機ELパネルの欠陥検査方法及び欠陥検査装置の他の構成例を示した説明図である。図示の例は、撮像手段3を有機ELパネル1の基板10の背面側に配置しており、撮像手段3は基板10を介して出射する光を検出している。この例は、基板10と下部電極11が光透過性を有するものであって、有機EL素子の発光を基板10側から出射する方式(ボトムエミッション方式)に対して適用できるものである。この場合には、基板10を透過した検査光2Aが入射しないように撮像手段3を配置する。
【0020】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る有機ELパネルの欠陥検査方法及び欠陥検査装置は、有機ELパネル1の欠陥検査を行うに際して、有機層12の成膜直後に成膜の不具合を検知することを可能にして、その後の工程の無駄をなくすことができる。また、検査光2Aが撮像手段3に入射しないように、検査光2Aの光源2と撮像手段3の配置を考慮しているので、特に撮像手段3の前にフィルタを設けなくても有機層12の画像を高いコントラストで撮像することができる。これによって、欠陥の検査精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0021】
1:有機ELパネル,
10:基板,11:下部電極,12:有機層,
2:光源,2A:検査光,2P:照射軸,
3:撮像手段,3P:撮像光軸,
4:欠陥検査手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に有機層を積層した有機EL素子を基板上に形成した有機ELパネルの欠陥を検査する方法であって、
前記有機層に検査光を照射する光源を前記基板に対して斜めに向けて配置し、
前記検査光が入射しない位置に前記有機層を撮像する撮像手段を配置し、
前記検査光の照射によって前記有機層から発せられる光を前記撮像手段にて検出し、前記撮像手段によって得られる前記有機層の撮像信号に基づいて欠陥を検査することを特徴とする有機ELパネルの欠陥検査方法。
【請求項2】
前記検査光は紫外光であることを特徴とする請求項1に記載された有機ELパネルの欠陥検査方法。
【請求項3】
前記撮像手段は、前記基板を介して出射する光を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載された有機ELパネルの欠陥検査方法。
【請求項4】
一対の電極間に有機層を積層した有機EL素子を基板上に形成した有機ELパネルの欠陥を検査する装置であって、
前記基板に対して斜めに向けて配置され前記有機層に検査光を照射する光源と、
前記検査光が入射しない位置に配置され前記有機層を撮像する撮像手段と、
前記検査光の照射によって前記有機層から発せられる光を前記撮像手段にて検出し、前記撮像手段によって得られる前記有機層の撮像信号に基づいて欠陥を検査する欠陥検査手段を備えることを特徴とする有機ELパネルの欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−29326(P2013−29326A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163639(P2011−163639)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】