説明

有機ELモジュール

【課題】モジュール全体の薄型化を可能にしながら、有機EL素子が形成された素子基板内でアクティブエリアの拡大を図る。
【解決手段】有機ELモジュール1は、単数又は複数の有機EL素子1Uが形成された素子基板10と、素子基板10上に設けられ有機EL素子1Uの電極から引き出された第1端子部11と、有機EL素子1Uを覆う封止層12と、封止層12上に間隔を置いて配置された回路基板13と、回路基板13に設けられた第2端子部14と、第1端子部11と第2端子部14とを電気的に接続すると共に、回路基板13を素子基板10上で支持する柱部15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板を備えた有機ELモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子を備えた自発光パネル(有機ELパネル)は、例えば携帯電話の表示画面,車載用或いは家庭用電子機器のモニタ画面,パーソナルコンピュータやテレビジョン受像装置の情報表示画面,宣伝用点灯パネル等に用いられる各種表示装置として、スキャナやプリンタ等に用いられる各種光源として、一般照明や液晶表示装置のバックライト等に用いられる照明装置として、また、光電変換機能を利用した光通信用デバイスとして、各種用途及び機種に利用可能なものである。
【0003】
有機EL素子は大気に含まれる水分等に触れると発光特性が劣化する性質があるので、有機ELパネルを長時間安定的に作動させるためには、有機EL素子を大気から遮断するための封止構造が必要不可欠になっている。有機ELパネルの封止構造の一例としては、有機EL素子が形成された基板と封止基板とを貼り合わせて有機EL素子を囲う封止空間を形成する中空封止構造と、有機EL素子を封止層(封止膜)で覆う膜封止構造が知られている。
【0004】
一方、有機EL素子を駆動するための回路素子や回路基板を有機ELパネルに実装するには、例えば下記特許文献1に記載されるように、有機EL素子から引き出された端子を有機EL素子が形成された基板の周囲部分に配置し、その端子に回路素子や回路基板を接続することが一般に行われている。また、その他の実装形態としては、下記特許文献2に記載されるように、有機EL素子を封止した封止基板上に回路素子を配置し、この回路素子に封止基板上に形成した配線を接続することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−170773号公報
【特許文献2】特開2006−106082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるように、有機EL素子が形成された基板の周囲部分に回路素子や回路基板を接続すると、この周囲部分には有機EL素子を形成することができないので、基板全体を発光領域(アクティブエリア)にすることができず、小型携帯端末のように機器内でできるだけ大きいアクディブエリアを確保したいものには採用しにくい問題があった。また、複数のパネルを平面的に並べて比較的大きなパネル(タイリングパネル)を得る場合には、一つのパネルにおける基板の周囲部分に非発光となる額縁部分が形成されると複数パネルの繋ぎ目が目立ち、タイリングパネル全体として表示や照明等の高い品質を確保できないという問題があった。
【0007】
これに対して、特許文献2に記載されるように、有機EL素子を封止する封止基板上に回路素子や回路基板を実装すると、有機EL素子が形成された基板内で比較的大きなアクディブエリアを確保することが可能になる。しかしながら、有機EL素子が形成された基板に封止基板を貼り合わせた中空封止構造が前提になるので、貼り合わせのための接着領域が必要になり、この接着領域が基板周囲に非発光の額縁部分を形成することになって、やはり前述した従来技術の問題を根本的には解決できないという問題があった。
【0008】
また、封止基板上に回路素子や回路基板を配置したモジュールは、中空の封止空間によって生じるパネルの厚みに回路素子等の厚みが加わることになるので、回路素子を実装したモジュール全体の厚さが増すことになり、モジュールが組み込まれる電子機器の薄型化に対応できない問題があった。更には、このようなモジュールは、封止基板に配線のための加工を施して、更にこれを有機EL素子が形成された基板と貼り合わせる工程が必要になるので、駆動回路の実装を含むアセンブリ工程が煩雑化する問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、有機ELパネルに駆動回路が実装された有機ELモジュールにおいて、有機EL素子が形成された素子基板内でアクティブエリアの拡大を図ることができること、素子基板周囲の額縁部分を狭くして、複数のパネルを平面的に並べたタイリングパネルの機能品質向上を図ることができること、有機ELモジュール全体の薄型化を図ることができること、駆動回路の実装を含むアセンブリ工程の簡略化を可能にすること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明による有機ELモジュールは、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0011】
単数又は複数の有機EL素子が形成された素子基板と、該素子基板上に設けられ前記有機EL素子の電極から引き出された第1端子部と、前記有機EL素子を覆う封止層と、前記封止層上に間隔を置いて配置された回路基板と、前記回路基板に設けられた第2端子部と、前記第1端子部と前記第2端子部とを電気的に接続すると共に、前記回路基板を前記素子基板上で支持する柱部とを備えることを特徴とする有機ELモジュール。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る有機ELモジュールの基本構成を示した説明図(概念図)である。
【図2】本発明の一実施形態に係る有機ELモジュールにおける柱部の具体的な構造例を示した説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る有機ELモジュールにおける柱部の具体的な構造例を示した説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る有機ELモジュールにおける素子基板上での柱部の配置構成の例を示した説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る有機ELモジュールにおける柱部と端子部との接続構造の例を示した説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る有機ELモジュールにおける柱部と端子部との接続構造の例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る有機ELモジュールの基本構成を示した説明図(概念図)である。図1(a),(b),(c)はそれぞれ異なる形態例を示しているが、共通の部位は同一符号を付して重複説明を省略する。
【0014】
有機ELモジュール1は、単数又は複数の有機EL素子1Uが形成された素子基板10と、素子基板10上に設けられ有機EL素子1Uの電極から引き出された第1端子部11と、有機EL素子1Uを覆う封止層12と、封止層12上に間隔を置いて配置された回路基板13と、回路基板13に設けられた第2端子部14と、第1端子部11と第2端子部14とを電気的に接続すると共に、回路基板13を素子基板10上で支持する柱部15とを備える。
【0015】
有機EL素子1Uは、素子基板10上に形成される下部電極16と、下部電極16上に積層される有機EL層17と、有機EL層17の上に積層される上部電極18によって構成され、下部電極16と上部電極18の一方が陰極で他方が陽極として機能し、光透過性の素子基板10側から光を放出する。素子基板10上における有機EL素子1Uの配置形態は、複数の有機EL素子1Uをドットマトリクス状に配置したもの、各種のパターン形状を有するセグメント毎に配置したもの、素子基板10上の所定の領域全体に配置したものなど、どのような形態であってもよい。また、ドットマトリクス状に配置された有機EL素子1Uの駆動方式としては、パッシブ駆動方式であっても、アクディブ駆動方式であってもよい。また、図1においては、第1端子部11が下部電極16から引き出されているが、図示されていない箇所で上部電極18からも第1端子部11が引出されている。
【0016】
有機EL素子1Uは封止層12によって覆われており、有機EL素子1U上には封止空間が存在しない。これによって、有機ELモジュール1全体の薄型化が可能になる。封止層12は、水分や酸素等の有機EL素子1Uの劣化因子に対するバリア機能を有するものであればよく、各種の無機膜やポリマー膜と無機膜の多層膜などを用いることができる。特には、原子層成長法によって成膜された無機アモルファス性膜を用いることで、有機EL素子1Uの構造体表面の被覆性を向上させることができると共に、高いバリア機能を得ることができる。この封止層12は、素子基板10上の第1端子部11上を除くようにパターン形成されている。これによって、封止層12の成膜材料が第1端子部11を覆うことで第1端子部11と柱部15との電気的な接続性能が低下するのを抑止している。
【0017】
回路基板13は、有機EL素子1Uを駆動するための駆動素子20を実装するものであるか、或いは他の回路基板と接続される配線パターンを有するものである。図示の例では、回路基板13における素子基板10に対向する面に第2端子部14が設けられ、回路基板13における素子基板10と逆側の面に駆動素子20が実装されている。駆動素子20の端子20Aと第2端子部14とはスルーホールを経由した配線パターン21によって電気的に接続されている。回路基板13の材料は、絶縁性を有する樹脂やセラミック材料、或いは半導体ウェーハから切り出したチップ(シリコン基板)そのものを用いることができる。
【0018】
柱部15は、素子基板10上の第1端子部11と回路基板13における第2端子部14とを電気的に接続する導電性を有し、また、回路基板13を素子基板10上で支持するための機械的な強度を有する。柱部15は、第1端子部11と第2端子部14とを電気的に接続するために第1端子部11と第2端子部14の端子パターンに対応した導電経路を有している。柱部15は、この導電経路毎に分離して個別に配置されるか、或いは一体的に配置される場合は導電経路を互いに絶縁する絶縁部分を備えている。
【0019】
柱部15は、それ自身が導電性を有する金属などの導電部材によって構成することができるが、それに限らず、硬化することによって必要な支持強度を得ることができる導電性接着剤や、圧着することで導電性を得ることができる導電性フィルム(異方性導電フィルム)、或いは、内部に導電経路を有する導電性基板などによって構成することができる。
【0020】
また、柱部15は、回路基板13と別体のものであっても、回路基板13と一体に形成されているものであってもよい。回路基板13と柱部15を一体に形成する場合は、第2端子部14が形成された回路基板13をエッチング等で加工して凸状の柱部15のパターンを形成する。
【0021】
このような特徴を有する有機ELモジュール1によると、封止層12によって有機EL素子1Uを膜封止することでモジュール全体の薄型化が可能になる。また、柱部15を設けることで、封止層12の上方位置に回路基板13を配置することが可能になる。これによって、有機EL素子1Uを形成した素子基板10に駆動回路を接続するためのスペースを設ける必要が無くなるので、素子基板10の略全体を発光領域(アクティブエリア)にすることが可能になる。このように本発明の実施形態に係る有機ELモジュール1は、従来技術ではなし得なかったモジュール全体の薄型化とアクディブエリア拡大の両方を実現することができる。
【0022】
また、封止層12を覆うように回路基板13を配置することで、柱部15に支えられた回路基板13が外力から封止層12を保護する機能を果たす。これによって、有機ELモジュール1を電子機器等に組み込んだ状態で電子機器等の内部部品が封止層12に接触することで有機EL素子1Uの封止性能が低下する不具合を解消することができる。
【0023】
更に、封止基板に回路素子を実装する従来技術と比較して、封止基板の加工や封止基板と素子基板とを貼り合わせる工程を省くことができる。また、回路素子との接続は、柱部15上に回路基板13をアライメントして、柱部15を介して第1端子部11と第2端子部14を接続するだけでよいから、駆動回路の実装を含むアセンブリ工程の簡略化が可能になる。
【0024】
そして、素子基板10の周囲には、駆動回路を接続するスペースや封止基板を貼り合わせるための接着スペースを設ける必要が無いので、素子基板10周囲の額縁部分を狭くすることが可能になる。これによって、複数の有機ELモジュール1の素子基板10を平面的に並べたタイリングパネルを構成する場合に、有機ELモジュール1同士の繋ぎ目を目立たなくすることができ、表示や照明などでのタイリングパネルとしての機能品質を向上させることができる。
【0025】
図1(a)に示した形態例は前述した特徴を備えているが、図1(b)に示した形態例は、それに加えて、素子基板10と回路基板13の間に補強用の補助柱部22を備えている。補助柱部22は、図1の各例に示すように柱部15を素子基板10の中央部に配置した場合は素子基板10の周辺部に設けることが好ましい。補助柱部22を素子基板10の周辺部に設けた場合であっても、素子基板10上の補助柱部22の専有面積は、駆動回路の接続スペースや封止基板の接着スペースに比べると遙かに小さくできる。このような補助柱部22を設けることで、回路基板13が変形してその端部が封止層12に接触することを回避することができ、また、回路基板13による封止層12の保護機能を更に高めることができる。
【0026】
図1(c)に示した形態例は、図1(a)に示した形態例に加えて、素子基板10と回路基板13の間が充填部材23で充填されている。また、素子基板10と回路基板13と充填部材23の端面が面一になっている。充填部材23は、流動性のある状態で素子基板10と回路基板13の間隙に充填され、その後硬化して所定の曲げ又は圧縮強度を有することが好ましく、各種の樹脂材料を用いることができる。このような充填部材23を設けることでも、回路基板13が変形してその端部が封止層12に接触することを回避することができ、また、回路基板13による封止層12の保護機能を更に高めることができる。封止層12の保護機能を更に高めるために、図1(c)に示した形態例に図1(b)に示した補助柱部22を付加しても構わない。
【0027】
図2は、柱部の具体的な構造例を示した説明図である。図2(a)に示す例は、柱部15が素子基板10の内部に配置されている。この例では、柱部15は、下部電極16に接続された第1端子部11(11A)と上部電極18に接続された第1端子部11(11B)のそれぞれの上に独立して配置されており、縦横十字状に配置された第1端子部11A,11Bの配置パターンに合わせて素子基板10上に点在している。
【0028】
図2(a)に示すように、第1端子部11毎の各柱部15が独立して配置される場合には、柱部15を導電性部材によって構成することができる。導電性部材の一例としては、AlやCu等の導電性の高い金属を用いることができる。この例では、柱部15は独立しているので個々に間隔を開けることで互いに電気的に絶縁されている。図示の例では、柱部15は矩形断面を有しているが、これに限らず円形や楕円形、多角形の断面形状を有していてもよい。また、それぞれの柱部15の端部が平板状の回路基板13の第2端子部14に接続するためには、複数の柱部15は均一な高さを有することが好ましい。
【0029】
柱部15は、図2(b),(c)に示すように、部分的又は全体的に一体化することができる。このように一体化した柱部15を素子基板10に沿って延在させることで、回路基板13の支持強度を高めることができる。この場合、柱部15は、第1端子部11と第2端子部14を接続する互いに絶縁された複数の導電部分(導電経路)15Aを有し、個々の導電部分15Aの間には絶縁部分15Bが設けられている。このように柱部15を導電部分15Aと絶縁部分15Bを備える一体構造にすることで、導電部分15Aで高い導電性を担保し、絶縁部分15Bで支持強度を担保することができるので、導電部分15Aと絶縁部分15Bを形成する材料の選択範囲を拡大することができ、導電性と支持強度を共に高めることができる。
【0030】
図3は、柱部の更に具体的な構造例を示した説明図である。図3(a),(b)に示した例は、導電部分(導電経路)15Aを備える柱部15において、導電部分15Aの少なくとも2つが互いに異なる断面積を有している。図3(a)に示した例は、上部電極18に接続される第1端子部11(11B)上の柱部15における導電部分15Aの断面積が、下部電極16に接続される第1端子部11(11A)上の柱部15における導電部分15Aの断面積より大きくなっている。この例によると、流れる電流量が大きい上部電極に接続される導電部分15Aの抵抗値を小さくすることができる。
【0031】
また、図3(b)に示した例は、有機EL素子1Uの色(C1,C2,C3)毎に、対応する第1電極11上の柱部15における導電部分15Aの断面積を異ならせている。これによると、導電部分15Aの断面積の設定によって、輝度劣化が生じやすい色(C1)の有機EL素子1Uに対しては電流が多く流れるように導電部分15Aの断面積を大きくすることができ、劣化速度の色毎の違いを均一化し、劣化による色ズレを抑止することができる。
【0032】
この際、図3(a),(b)に示した例では、導電部分15Aの断面積を異ならせた場合であっても、それに応じて絶縁部分15Bの断面積を調整して、柱部15全体の断面積を均一にしている。これによると、柱部15毎の支持強度のばらつきを抑制することができる。なお、図2(a)に示すように導電経路が独立した柱部15によって構成される場合であっても、図3の例と同様に、少なくとも2つが互いに異なる断面積を有する構成にすることができる。また、図3(a),(b)に示した柱部15は、図2(c)に示すように一体化した構成にしても構わない。
【0033】
図4は、素子基板上での柱部の配置構成の例を示した説明図である。図4(a)に示した例は、柱部15が素子基板10の内部に配置されており、矩形状の素子基板10に対して対角線上に柱部15が配置されている。このような配置にすると矩形状の回路基板13を安定的に支持することができる。図4(b)に示した例は、素子基板10の周辺の一部に柱部15が配置されている。このような配置にすると、図2(a)に示したようなパッシブマトリクス駆動の下部電極16と上部電極18の端部を柱部15に接続することができる。図4(c)に示した例は、素子基板10の四隅に柱部15を配置している。このような配置にすると、例えば、素子基板10上を2分割したような2つのセグメント素子の上部電極と下部電極をそれぞれの柱部15に接続することができる。なお、図4(b)に示した例は、柱部15が配置されていない素子基板10の周辺部分に、図4(c)に示した例は、柱部15が配置されていない素子基板10の中央部分に、それぞれ補助柱部22を設けることで、安定的に回路基板13を支持することができる。
【0034】
図5及び図6は、柱部と端子部との接続構造の例を示した説明図である。図5(a)に示した例は、回路基板13における第2端子部14(或いは素子基板10における第1端子部11)と柱部15とを溶接によって接続した例である。この例では、第2端子部14(又は第1端子部11)の表面にメッキ(はんだメッキ)14Sが施されており、このメッキ14Sが施された第2端子部14と柱部15の端部を加熱圧接することで、メッキ14Sが溶融して第2端子部14と柱部15の端部を接合している。
【0035】
図5(b)に示した例は、回路基板13における第2端子部14(或いは素子基板10における第1端子部11)と柱部15とを導電性接着剤を介して接続した例である。この例では、第2端子部14(又は第1端子部11)の表面に導電性接着剤14Pが塗布されており、この導電性接着剤14Pが塗布された第2端子部14と柱部15の端部を圧接した後、導電性接着剤14Pを硬化させることで第2端子部14と柱部15の端部を接合している。
【0036】
図5(c)に示した例は、回路基板13における第2端子部14(或いは素子基板10における第1端子部11)と柱部15とを凹凸嵌合によって接続した例である。この例では、第2端子部14(又は第1端子部11)に凹部(又は孔部)14Rが形成されており、この凹部14Rに柱部15の先端をはめ込むことで第2端子部14と柱部15の端部を接合している。この例は、柱部15をピン状にして、凹部14Rにこの柱部15を挿入してコネクタ接続する構造として採用することができ、また、図5(a)に示したはんだ溶接時の仮止め構造としても採用することができる。
【0037】
図6に示した例は、柱部の接続端が円錐側面(又は多角錐側面)を有している。図6(a)に示した例は、円錐状の柱部15の先端を回路基板13における保護膜14Mに保護された第2端子部14(或いは素子基板10における第1端子部11)に突き刺すことで柱部15と第2端子部14とを接続している。この際、図示の例では、柱部15の先端が保護膜14Mを突き破り第2端子部14に当たって潰れた状態になっている。これによると、柱部15の潰れた先端が第2端子部14に密着することで広い接合面積を確保することができる。
【0038】
図6(b)に示した例は、円錐状の柱部15の先端を回路基板13のスルーホール13Aに挿入し、その先に配置された第2端子部14に突き刺すことで柱部15と第2端子部14とを接続している。これによると、柱部15の円錐側面にスルーホール13Aの内面が接触することになり、機械的な接合強度を高めることができ、また円錐側面がスルーホール13Aの内面に当たることで、柱部15の先端の差し込み量が規制され、第2端子部14と柱部15の適正な接続状態を得ることができる。
【0039】
以下に、前述した有機EL素子1Uの具体的な構成例について説明する。
【0040】
素子基板10は、光透過性であり、ガラスやプラスチックなど、有機EL素子1Uを支持することができる基材によって形成される。下部電極16を形成する透明導電膜層は、ITO(Indium Tin Oxide),IZO(Indium Zinc Oxide),酸化亜鉛系透明導電膜,SnO2系透明導電膜,二酸化チタン系透明導電膜などの透明金属酸化物を用いることができる。
【0041】
下部電極16が複数の電極にパターン形成されている場合は、各電極間の絶縁性を確保するために絶縁膜が設けられる。この絶縁膜は、ポリイミド樹脂,アクリル系樹脂,酸化シリコン,窒化シリコンなどの材料が用いられる。絶縁膜の形成は、絶縁膜の材料を下部電極16がパターン形成された素子基板10上に成膜した後、下部電極16上に有機EL素子1Uの開口を形成するパターニングがなされる。具体的には、下部電極16が形成された素子基板10にスピンコート法により所定の塗布厚となるように膜を形成し、露光マスクを用いて露光処理,現像処理を施すことにより、有機EL素子1Uの開口パターン形状を有する絶縁膜の層が形成される。この絶縁膜は、下部電極16のパターン間を埋めると共にその側端部分を一部覆うように形成され、有機EL素子1Uをドットマトリクス状に配置する場合は格子状に形成される。
【0042】
また、パッシブマトリクス駆動の例では、図示省略した隔壁が、マスク等を用いることなく上部電極18のパターンを形成するため、或いは隣り合う上部電極18を完全に電気的に絶縁するために、下部電極16と交差する方向にストライプ状に形成される。具体的には、前述した絶縁膜の上に感光性樹脂等の絶縁材料を、有機EL素子1Uを形成する有機EL層17と上部電極18の膜厚の総和より厚い膜厚にスピンコート法等で塗布形成した後、この感光性樹脂膜上に下部電極16に交差するストライプ状パターンを有するフォトマスクを介して紫外線等を照射し、層の厚さ方向の露光量の違いから生じる現像速度の差を利用して、側部が下向きのテーパ面を有する隔壁を形成する。
【0043】
有機EL層17は、発光層を含む発光機能層の積層構造を有し、下部電極16と上部電極18の一方を陽極とし他方を陰極とすると、陽極側から順次、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などが選択的に形成される。有機EL層17の成膜は乾式の成膜として真空蒸着法などが用いられ、湿式の成膜としては塗布や各種の印刷法が用いられる。
【0044】
有機EL層17の形成例を以下に説明する。例えば先ず、NPB(N,N-di(naphtalence)-N,N-dipheneyl-benzidene)を正孔輸送層として成膜する。この正孔輸送層は、陽極から注入される正孔を発光層に輸送する機能を有する。この正孔輸送層は、1層だけ積層したものでも2層以上積層したものであってもよい。また正孔輸送層は、単一の材料による成膜ではなく、複数の材料により一つの層を形成しても良く、電荷輸送能力の高いホスト材料に電荷供与(受容)性の高いゲスト材料をドーピングしてもよい。
【0045】
次に、正孔輸送層の上に発光層を成膜する。一例としては、抵抗加熱蒸着法により、赤(R)、緑(G)、青(B)の発光層を、塗分け用マスクを利用してそれぞれの成膜領域に成膜する。赤(R)としてDCM1(4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(4’−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン)等のスチリル色素等の赤色を発光する有機材料を用いる。緑(G)としてアルミキノリノール錯体(Alq3) 等の緑色を発光する有機材料を用いる。青(B)としてジスチリル誘導体、トリアゾール誘導体等の青色を発光する有機材料を用いる。勿論、他の材料でも、ホスト-ゲスト系の層構成でも良く、発光形態も蛍光発光材料を用いてもりん光発光材料を用いたものであってもよい。
【0046】
発光層の上に成膜される電子輸送層は、抵抗加熱蒸着法等の各種成膜方法により、例えばアルミキノリノール錯体(Alq3 )等の各種材料を用いて成膜する。電子輸送層は、陰極から注入される電子を発光層に輸送する機能を有する。この電子輸送層は、1層だけ積層したものでも2層以上積層した多層構造を有してもよい。また、電子輸送層は、単一の材料による成膜ではなく、複数の材料により一つの層を形成しても良く、電荷輸送能力の高いホスト材料に電荷供与(受容)性の高いゲスト材料をドーピングして形成してもよい。
【0047】
有機EL層17上に形成される上部電極18は、こちらが陰極の場合には、陽極より仕事関数の小さい(例えば4eV以下)材料(金属,金属酸化物,金属フッ化物,合金等)を用いることができ、具体的には、アルミニウム(Al),インジウム(In),マグネシウム(Mg)等の金属膜、ドープされたポリアニリンやドープされたポリフェニレンビニレン等の非晶質半導体、Cr23,NiO,Mn25等の酸化物を使用できる。構造としては、金属材料による単層構造、LiO2/Al等の積層構造等が採用できる。
【0048】
封止層12は、一例としては、原子層成長法によって成膜される金属やケイ素の酸化物,窒化物,酸窒化物の単層又は多層膜を用いることができる。例えば、TMA(トリメチルアルミニウム)やTEA(トリエチルアルミニウム)、DMAH(ジメチルアルミニウム水素化物)等のアルキル系金属と、水や酸素、アルコール類との反応で得られるアルミニウム酸化物膜(例えば、Al22膜)、ケイ素系材料の気化ガスと水の気化ガスとの反応で得られるケイ素酸化物膜(例えば、SiO2膜)などを用いることができる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。上述の各図で示した実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、各図の記載内容はそれぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0050】
1:有機ELモジュール,1U:有機EL素子,
10:素子基板,11:第1端子部,12:封止層,13:回路基板,
14:第2端子部,15:柱部,16:下部電極,17:有機EL層,
18:上部電極,20:駆動素子,21:配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単数又は複数の有機EL素子が形成された素子基板と、
該素子基板上に設けられ前記有機EL素子の電極から引き出された第1端子部と、
前記有機EL素子を覆う封止層と、
前記封止層上に間隔を置いて配置された回路基板と、
前記回路基板に設けられた第2端子部と、
前記第1端子部と前記第2端子部とを電気的に接続すると共に、前記回路基板を前記素子基板上で支持する柱部とを備えることを特徴とする有機ELモジュール。
【請求項2】
前記柱部は、前記第1端子部と前記第2端子部を接続する導電経路を有することを特徴とする請求項1記載の有機ELモジュール。
【請求項3】
複数の前記柱部が備えられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の有機ELモジュール。
【請求項4】
前記柱部は、前記第1端子部と前記第2端子部を接続する互いに絶縁された複数の導電経路を有することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の有機ELモジュール。
【請求項5】
前記導電経路は、少なくとも2つが互いに異なる断面積を有することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の有機ELモジュール。
【請求項6】
前記柱部は均一な断面積を有することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の有機ELモジュール。
【請求項7】
前記柱部は導電部材によって構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の有機ELモジュール。
【請求項8】
前記柱部は導電性接着剤によって構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の有機ELモジュール。
【請求項9】
前記柱部は導電性フィルムによって構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の有機ELモジュール。
【請求項10】
前記柱部は前記回路基板と一体に形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の有機ELモジュール。
【請求項11】
前記柱部は接続端が円錐又は多角錘側面を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の有機ELモジュール。
【請求項12】
前記柱部は、前記素子基板に沿って均一な高さを有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の有機ELモジュール。
【請求項13】
前記柱部は、前記素子基板の内部に配置されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか記載の有機ELモジュール。
【請求項14】
前記柱部は、前記素子基板の周囲に沿って配置されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の有機ELモジュール。
【請求項15】
前記柱部は、前記素子基板の四隅に配置されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか記載の有機ELモジュール。
【請求項16】
前記素子基板と前記回路基板の間に補強用の補助柱部を備えていることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の有機ELモジュール。
【請求項17】
前記第1端子部と前記第2端子部の一方又は両方と前記柱部とは溶接されていることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の有機ELモジュール。
【請求項18】
前記第1端子部と前記第2端子部の一方又は両方と前記柱部とは導電性接着剤を介して接続されていることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の有機ELモジュール。
【請求項19】
前記第1端子部と前記第2端子部の一方又は両方と前記柱部とは凹凸嵌合によって接続されていることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の有機ELモジュール。
【請求項20】
前記第1端子部と前記第2端子部の一方又は両方にはメッキが施されていることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の有機ELモジュール。
【請求項21】
前記封止層は、前記第1端子部上を除くようにパターン形成されていることを特徴とする請求項1〜20のいずれかに記載の有機ELモジュール。
【請求項22】
前記回路基板は、前記封止層を覆うように配置されることを特徴とする請求項1〜21のいずれかに記載の有機ELモジュール。
【請求項23】
前記回路基板は、半導体ウェーハから切り出したチップであることを特徴とする請求項1〜22のいずれかに記載の有機ELモジュール。
【請求項24】
前記素子基板と前記回路基板の間が充填部材で充填されていることを特徴とする請求項1〜23のいずれかに記載の有機ELモジュール。
【請求項25】
前記素子基板と前記回路基板と前記充填部材の端面が面一であることを特徴とする請求項24記載の有機ELモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−25961(P2013−25961A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158358(P2011−158358)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】