説明

有機EL光源ユニット

【課題】有機EL光源ユニットにおいて、素子電極への給電を確実とすることで、輝度斑を抑制することができる。
【解決手段】有機EL光源ユニット1は、発光素子11と、発光素子11に給電する給電部12と、を備える。発光素子11は、発光層15と、素子基板16と、封止基板17と、封止基板17の外周に導出されるプラス電極18a及びマイナス電極18bと、を有する。給電部12は、電極18a、18bと接する複数の接点部14を有し、これら各接点部14が電極18a、18bに圧接されることで機械的及び電気的に多点にて接続される。ユニット1は、複数の接点部14が電極18a、18bに多点にて接続されるので、各接点部14で接圧が均一となり、電極18a、18bへの給電が確実となって輝度斑を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下、ELという)発光素子を備える有機EL光源ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の有機EL発光素子(以下、発光素子という)において、通常、素子電極は透明性の良いITO(酸化インジウム錫)が用いられる。このITOは、抵抗率が高いため、素子電極への給電を、例えば、一接点のみで行った場合にはITO内での電圧降下により、接点から離れるにしたがって発光層への供給電力が低下し、輝度斑が生じやすい。そこで、この問題を解消するために、発光素子と、発光素子の素子電極と面的に接触する給電部と、を備える有機EL光源ユニット(以下、ユニットという)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7及び図8に、このようなユニット100の構成を示す。ユニット100は、発光素子11と、発光素子11に給電する一対の板状の給電部12と、発光素子11を保持する正面側及び背面側素子ケース13a、13bと、を備える。発光素子11は、発光層15が設けられる素子基板16と、発光層15等を封止する封止基板17と、発光層15に給電するためのプラス電極18a及びマイナス電極18bと、マイナス電極18bに発光層15を繋ぐアルミ電極23と、を備える。
【0004】
給電部12は、プラス電極18a及びマイナス電極18bにそれぞれ面接触することで、発光層15に給電する。素子ケース13a、13bは、重なり合わさって発光素子11と給電部12を保持する。ユニット100は、給電部12と電極18a、18bが互いに面同士で接触するので、一箇所に集中して給電することがなくなり、給電が確実となって輝度斑を低減させ、輝度の均等化を図ることができる。しかし、給電部12と電極18a、18bが互いに面同士で接触することから、双方の接触面が精度良く仕上げられていない場合、電気的接触が部分的となって電位の斑ができるので、輝度斑が発生する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−228455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、素子電極への給電を確実とすることで、輝度斑を抑制することができる有機EL光源ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、光放出面を有する発光層が設けられる素子基板と、前記光放出面の反対側で前記素子基板に対向して配置される封止基板と、前記封止基板の外周に導出され前記素子基板に配置される素子電極と、を有する有機EL発光素子と、前記素子電極に給電する給電部と、を備えた有機EL光源ユニットであって、前記給電部は、前記素子電極と接する複数の接点部を有し、これら各接点部が素子電極に圧接されることで機械的及び電気的に多点にて接続されるものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の有機EL光源ユニットにおいて、前記接点部は、櫛歯状であるものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の有機EL光源ユニットにおいて、前記櫛歯状の接点部の一部の剛性が、他の櫛歯状の接点部と異なっているものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の有機EL光源ユニットにおいて、前記接点部の一部が、前記素子電極に対する給電部の位置を位置決めするように構成されているものである。
【0011】
請求項5の発明は、照明器具であって、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の有機EL光源ユニットと、前記給電部に電力を供給する配線部と、を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、複数の接点部が素子電極に多点にて接続されるので、各接点部で接圧が均一となり、素子電極への給電が確実となって輝度斑を抑制することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、接点部が櫛歯状なので、各接点部と素子電極の接点の接圧がより均一となり、素子電極への給電がより確実となって輝度斑を抑制することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、剛性の高い接点部が、給電部と素子電極が接しているときに剛性の低い接点部にかかる力を軽減させるので、剛性の低い接点部がへたりにくくなる。そのため、素子電極への給電が確実となっている期間が長くなるので、輝度斑をより長い期間抑制することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、給電部が発光素子の形状に沿う形状となるので、素子電極に対して給電部を位置決めしやすくなる。
【0016】
請求項5の発明によれば、上記のような効果が得られる照明器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る有機EL光源ユニットを用いる照明器具の断面図。
【図2】同照明器具の分解図。
【図3】同ユニットの分解図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る有機EL光源ユニットの発光素子と給電部の斜視図。
【図5】同ユニットの発光素子と給電部の変形例の斜視図。
【図6】同ユニットの発光素子と給電部の他の変形例の斜視図。
【図7】従来の有機EL光源ユニットの断面図。
【図8】同ユニットの分解図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL光源ユニット1(以下、ユニットという)を用いて成る照明器具2の構成を示す。図3は、ユニット1の構成を示す。ユニット1は、本実施形態では光を照射する光源であり、照明器具2の一構成要素を成す。照明器具2は、ユニット1と、これを保持する正面側及び背面側筐体3a、3bと、ユニット1から照射される光(白抜き矢印)を放出する前面パネル4と、ユニット1に電力を供給する配線部5と、を備える。
【0019】
正面側筐体3aは枠体状に形成され、背面側筐体3bは下面開口の蓋体状に形成されている。これら筐体3a、3bは、重なり合わさってユニット1を保持する。正面側筐体3aは、背面側筐体3bの側壁と接する周縁部6に、導体のリード線やコネクタ等である配線部5を通すための溝7を有し、また、下面開口には透光性を有する板状の前面パネル4が設置される。
【0020】
ユニット1は、有機EL発光素子11(以下、発光素子という)と、発光素子11に給電する給電部12と、発光素子11と給電部12を保持する正面側及び背面側素子ケース13a、13bと、を備える。
【0021】
発光素子11は、有機ELの発光層15が設けられる透明な矩形の素子基板16と、発光層15等を封止する封止基板17と、発光層15に給電するための素子電極であるプラス電極18a及びマイナス電極18bと、を備え、発光パネルとして構成される。発光素子11は、配線部5が取り付けられた一対の給電部12が、プラス電極18a及びマイナス電極18bにそれぞれ接触することで、発光層15に給電される。
【0022】
給電部12は、電極18a、18bと接する複数の接点部14を有し、これら各接点部14が電極18a、18bに素子ケース13a、13bによって圧接されることで機械的及び電気的に多点にて接続される。接点部14は、板状の銅やステンレススチールのような金属導電体から成る給電部12に曲げ加工を施すことで、ディンプル状に形成され、このディンプル状部分の凸側が電極18a、18bと接する。なお、給電部12は、板状の金属導電体にディンプル状の接点部14を形成したもの以外に、例えば、線状の金属導電体にコイル状の接点部14を形成したものであってもよい。
【0023】
ユニット1は、複数の接点部14が電極18a、18bに多点にて接続されるので、各接点部14で接圧が均一となり、電極18a、18bへの給電が確実となって輝度斑を抑制することができる。また、ユニット1は、給電部12がプラス電極18aとマイナス電極18bの材料であるITOと比較して極めて低い抵抗値となるので、プラス電極18aとマイナス電極18bの抵抗による影響が最小限となる。すなわち、プラス電極18a及びマイナス電極18bに印加される電圧の降下現象が最小限となり、輝度斑を低減させることができる。
【0024】
素子ケース13a、13bは、いずれも蓋体状に形成されている。正面側素子ケース13aは、素子基板16と対向するケース壁に光を出射するための開口部21と、ケース側壁に給電部12を保持するための溝部22と、を有する。素子ケース13a、13bは、アクリル等の樹脂から形成され、互いの側壁同士が接するようにして重なり合わさることで、直方体の箱状となり、発光素子11と給電部12を保持する。
【0025】
素子基板16は、発光層15から照射される光を導出し、ガラスや透明樹脂などの透明部材から成り、その上に発光層15への給電用の電極となるプラス電極18a及びマイナス電極18bが形成され、このプラス電極18a及びマイナス電極18b上に発光層15が積層される。素子基板16の発光層15が形成された反対面側(裏面側)は、EL発光の光放出面となっている。
【0026】
電極18a、18bは、例えば、ITO(酸化インジウム錫)により透明電極として素子基板16上に平面状に形成され、それらの間の矩形の絶縁分離層により分離された2つの矩形パターンからなり、プラス電極18aの面積がマイナス電極18bの面積よりも大きい。
【0027】
プラス電極18a上には、発光体として、例えば、蛍光性有機化合物を含む有機薄膜から成る発光層15が形成され、発光層15の上面には、蒸着によりサブミクロン厚のアルミ電極23が形成される。このアルミ電極23は、マイナス電極18bに接続される。また、発光層15及びアルミ電極23は、シリコン樹脂から成る封止基板17により封止される。プラス電極18aとマイナス電極18bは、封止基板17の外周に導出されており、素子基板16の一対の対向する辺方向に沿う導出部分で給電部12と直接的に接触するか、又は導電性薄膜を介して間接的に接触する。
【0028】
なお、発光素子11は、発光層15とプラス電極18aの間に発光層15へのホール注入性を向上させるための正孔輸送層や、発光層15とアルミ電極23の間に発光層15への電子注入性を向上させるための電子輸送層を有していてもよい。また、マイナス電極18bは、必ずしも透明電極でなくてもよく、例えば、アルミから成る電極であってもよい。
【0029】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係るユニット1の発光素子11と給電部12を示す。給電部12は、接点部14がディンプル状のものに替えて櫛歯状のものであり、その他の構成については上記第1の実施形態と同様である。
【0030】
各接点部14は、板状の金属導電体から成る給電部12に抜き打ち加工及び曲げ加工を施すことで、平面視において同じ幅の櫛歯状で、側面視においてそれぞれV字状に折れ曲がった形状に形成され、このV字状部分の凸側が電極18a、18bと接する。ユニット1は、接点部14が櫛歯状なので、各接点部14と電極18a、18bの接点の接圧がより均一となり、電極18a、18bへの給電がより確実となって輝度斑を抑制することができる。
【0031】
図5は、本実施形態の第1の変形例に係るユニット1の発光素子11と給電部12を示す。櫛歯状の接点部14の一部であるへたり防止部14aの剛性が、他の櫛歯状の接点部14bと異なり、その他の構成については上記第2の実施形態と同様である。
【0032】
へたり防止部14aは、接点部14bと比べて平面視における櫛歯の幅が広く形成されて剛性が高い。ユニット1は、接点部14bよりも剛性の高いへたり防止部14aが、給電部12と電極18a、18bが接しているときに接点部14bにかかる力を軽減させるので、接点部14bがへたりにくくなる。そのため、電極18a、18bへの給電が確実となっている期間が長くなるので、輝度斑をより長い期間抑制することができる。なお、へたり防止部14aは、接点部14bと比べて側面視における厚さを厚くすることで剛性を高くしてもよい。
【0033】
図6は、本実施形態の第2の変形例に係るユニット1の発光素子11と給電部12を示す。櫛歯状の接点部14の一部である位置決め部14c、14dは、電極18a、18bに対する給電部12の位置を位置決めするように構成され、その他の構成については上記第2の実施形態と同様である。
【0034】
位置決め部14cは、櫛歯の端部が側面視においてL字状に折れ曲がって形成され、封止基板17の側面と接する。位置決め部14dは、櫛歯の根元部が側面視においてL字状に折れ曲がって形成され、電極18a、18bの側面と接する。そのため、ユニット1は、給電部12が発光素子11の形状に沿う形状となるので、電極18a、18bに対して給電部12を位置決めしやすくなる。
【0035】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、一対の給電部は、両方とも接点部の形状が同じものを示したが、一方の給電部の接点部がディンプル状であり、他方が櫛歯状であるものであっても構わない。
【符号の説明】
【0036】
1 ユニット(有機EL光源ユニット)
11 発光素子(有機EL発光素子)
12 給電部
14、14b 接点部
14a へたり防止部(接点部)
14c、14d 位置決め部(接点部)
15 発光層
16 素子基板
17 封止基板
18a プラス電極(素子電極)
18b マイナス電極(素子電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光放出面を有する発光層が設けられる素子基板と、前記光放出面の反対側で前記素子基板に対向して配置される封止基板と、前記封止基板の外周に導出され前記素子基板に配置される素子電極と、を有する有機EL発光素子と、
前記素子電極に給電する給電部と、を備えた有機EL光源ユニットであって、
前記給電部は、前記素子電極と接する複数の接点部を有し、これら各接点部が素子電極に圧接されることで機械的及び電気的に多点にて接続されることを特徴とする有機EL光源ユニット。
【請求項2】
前記接点部は、櫛歯状であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL光源ユニット。
【請求項3】
前記櫛歯状の接点部の一部の剛性が、他の櫛歯状の接点部と異なっていることを特徴とする請求項2に記載の有機EL光源ユニット。
【請求項4】
前記接点部の一部が、前記素子電極に対する給電部の位置を位置決めするように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の有機EL光源ユニット。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の有機EL光源ユニットと、
前記給電部に電力を供給する配線部と、を有することを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−29040(P2011−29040A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174682(P2009−174682)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】