説明

有機EL光源ユニット

【課題】有機EL光源ユニットにおいて、劣化した放熱シートを交換するとき、放熱シートと一緒に封止基板が発光素子から剥離することを防ぐことができる。
【解決手段】有機EL光源ユニット1は、発光素子11と、給電部12と、発光素子11と給電部12を保持する正面側及び背面側素子ケース13a、13bと、放熱シート14と、を備える。発光素子11は、発光層15と、素子基板16と、封止基板17と、封止基板17の外周に導出されるプラス電極18a及びマイナス電極18bと、を有する。素子ケース13a、13bは、ケース壁23に開口部27を有すると共に、封止基板17の少なくとも1辺の端部を保持する構造である。放熱シート14は、平面視において開口部27内に配置される。劣化した放熱シート14を封止基板17から剥がすときに、封止基板17の端部にかかる力を背面側素子ケース13bが抑え込むので、封止基板17が発光素子11から剥離することを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下、ELという)発光素子を備える有機EL光源ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の有機EL発光素子(以下、発光素子という)は、発光層が発光中に熱を発するので、発光層に温度の斑ができて輝度斑が発生し易い。そこで、この問題を解消するために、発光素子と、発光層が発する熱を放熱させるための放熱シートと、を備える有機EL光源ユニット(以下、ユニットという)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6及び図7に、このようなユニット100の構成を示す。ユニット100は、発光素子11と、発光素子11に給電する給電部12と、発光素子11を保持する正面側及び背面側素子ケース13a、13bと、発光素子11に取り付けられる放熱シート14と、を備える。発光素子11は、発光層15が設けられる素子基板16と、発光層15等を封止する封止基板17と、発光層15に給電するためのプラス電極18a及びマイナス電極18bと、マイナス電極18bに発光層15を繋ぐアルミ電極33と、を備える。
【0004】
素子ケース13a、13bが重なり合わさって給電部12と素子基板16を保持する。放熱シート14は、封止基板17と背面側素子ケース13bに粘着接触して貼り付けられる。ユニット100は、発光層15が発する熱を放熱シート14によって外部へ放出するので、輝度斑の発生を抑えることができる。しかし、ユニット100を長期間使用すると、放熱シート14が劣化するので、放熱シート14を新しいものに交換しなければならないが、放熱シート14を封止基板17から剥がすときに、封止基板17の端部が放熱シート14と一緒に引っ張られて発光素子11から剥離する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−228455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、劣化した放熱シートを交換するとき、放熱シートと一緒に封止基板が発光素子から剥離することを防ぐことができる有機EL光源ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、光放出面を有する発光層が設けられる素子基板と、前記光放出面の反対側で前記素子基板に対向して配置される封止基板と、前記封止基板の外周に導出され前記素子基板に配置される素子電極と、を有する有機EL発光素子と、前記素子電極に給電する給電部と、前記有機EL発光素子と前記給電部を電気的に接続すると共に、機械的に固定する素子ケースと、前記発光層が発する熱を放熱させるために前記封止基板上に取り付けられる放熱シートと、を備えた有機EL光源ユニットであって、前記素子ケースは、前記封止基板と対向するケース壁に開口部を有すると共に、前記封止基板の少なくとも1辺の端部を保持する構造であり、前記放熱シートは、平面視において前記素子ケースの開口部内に配置されるものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の有機EL光源ユニットにおいて、前記有機EL発光素子の発光層は、平面視において前記素子ケースの開口部内に配置されるように構成されているものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、劣化した放熱シートを封止基板から剥がすときに、封止基板の端部にかかる力を素子ケースが抑え込むので、放熱シートと一緒に封止基板が有機EL発光素子から剥離することを防ぐことができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、平面視において素子ケースの開口部内に配置される放熱シートが発熱部となる発光層全体を覆うことができるので、封止基板が有機EL発光素子から剥離することを防ぎつつ、発光層が発する熱をより放熱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る有機EL光源ユニットを用いる照明器具の断面図。
【図2】同照明器具の分解図。
【図3】同ユニットの分解図。
【図4】同ユニットの変形例の断面図。
【図5】同ユニットの分解図。
【図6】従来の有機EL光源ユニットの断面図。
【図7】同ユニットの分解図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る有機EL光源ユニット1(以下、ユニットという)を用いて成る照明器具2の構成を示す。図3は、ユニット1の構成を示す。ユニット1は、本実施形態では光を照射する光源であり、照明器具2の一構成要素を成す。照明器具2は、ユニット1と、これを保持する正面側及び背面側筐体3a、3bと、ユニット1から照射される光を出射する前面パネル4と、ユニット1に電力を供給する給電線5と、を備える。正面側筐体3aは枠体状に形成され、背面側筐体3bは下面開口の蓋体状に形成されている。これら筐体3a、3bは、重なり合わさってユニット1を保持する。正面側筐体3aは、背面側筐体3bの側壁と接する周縁部6に、導体のリード線やコネクタ等である給電線5を通すための溝7を有し、また、下面開口には透光性を有する板状の前面パネル4が設置される。
【0013】
ユニット1は、有機EL発光素子11(以下、発光素子という)と、発光素子11に給電する給電部12と、発光素子11と給電部12を保持する正面側及び背面側素子ケース13a、13bと、発光素子11に取り付けられる放熱シート14と、を備える。
【0014】
発光素子11は、有機ELの発光層15が設けられる透明な矩形の素子基板16と、発光層15等を封止する封止基板17と、発光層15に給電するための素子電極であるプラス電極18a及びマイナス電極18bと、を備え、発光パネルとして構成される。発光素子11は、給電線5が取り付けられた一対の給電部12が、プラス電極18a及びマイナス電極18bにそれぞれ接触することで、発光層15に給電される。
【0015】
正面側素子ケース13aはケース壁21及びケース側壁22から成り、背面側素子ケース13bはケース壁23及びケース側壁24から成る。素子ケース13a、13bは、アクリル等の樹脂から形成され、ケース側壁22とケース側壁24が接するようにして重なり合わさることで、直方体の箱状となり、発光素子11と給電部12を電気的に接続すると共に、機械的に固定する。
【0016】
正面側素子ケース13aは、素子基板16と対向するケース壁21に光を出射するための開口である照射部25と、ケース側壁22に給電部12を保持するための溝部26と、を有する。背面側素子ケース13bは、封止基板17と対向するケース壁23に、放熱シート14を取り付けるための開口部27を有すると共に、封止基板17の4辺の端部を保持する構造である。なお、背面側素子ケース13bは、封止基板17の少なくとも1辺の端部を保持する構造であればよい。
【0017】
放熱シート14は、発光層15が発する熱を放熱させる。また、一方の面が粘着面となっており、その粘着力によって封止基板17上に貼り付けられるか、又は接着剤によって封止基板17上に貼り付けられ、平面視において背面側素子ケース13bの開口部27内に配置される。放熱シート14は、ユニット1が筐体3a、3bに保持されているとき、背面側筐体3bに密着して発光層15から吸収した熱を筐体3a、3bに放熱し、かつ、発光層15の面内の温度分布を均一にするので、ユニット1の輝度斑の発生を抑えることができる。
【0018】
ユニット1は、劣化した放熱シート14を封止基板17から剥がすときに、封止基板17の端部にかかる力を背面側素子ケース13bが抑え込むので、放熱シート14と一緒に封止基板17が発光素子11から剥離することを防ぐことができる。
【0019】
素子基板16は、発光層15から照射される光を導出し、ガラスや透明樹脂などの透明部材から成り、その上に発光層15への給電用の電極となるプラス電極18a及びマイナス電極18bが形成され、このプラス電極18a及びマイナス電極18b上に発光層15が積層される。素子基板16の発光層15が形成された反対面側(裏面側)は、EL発光の光放出面となっている。
【0020】
プラス電極18a及びマイナス電極18bは、例えば、ITO(酸化インジウム錫)により透明電極として素子基板16上に平面状に形成され、それらの間の矩形の絶縁分離層により分離された2つの矩形パターンからなり、プラス電極18aの面積がマイナス電極18bの面積よりも大きい。
【0021】
プラス電極18a上には、発光体として、例えば、蛍光性有機化合物を含む有機薄膜から成る発光層15が形成される。また、発光層15の上面には、蒸着によりサブミクロン厚のアルミ電極33が形成され、このアルミ電極33はマイナス電極18bに接続される。また、発光層15及びアルミ電極33は、シリコン樹脂から成る封止基板17により封止される。プラス電極18aとマイナス電極18bは、封止基板17の外周に導出されており、素子基板16の一対の対向する辺方向に沿う導出部分で給電部12と直接的に接触するか、又は導電性薄膜を介して間接的に接触する。
【0022】
なお、発光素子11は、発光層15とプラス電極18aの間に発光層15へのホール注入性を向上させるための正孔輸送層や、発光層15とアルミ電極33の間に発光層15への電子注入性を向上させるための電子輸送層を有していてもよい。また、マイナス電極18bは、必ずしも透明電極でなくてもよく、例えば、アルミから成る電極であってもよい。
【0023】
給電部12は、銅やステンレススチールのような金属導電体から成り、例えば、板状の金属導電体を打ち抜き加工して矩形に形成される。また、給電部12は、プラス電極18aとマイナス電極18bの材料であるITOと比較して極めて低い抵抗値となるので、プラス電極18aとマイナス電極18bの抵抗による影響が最小限となる。すなわち、プラス電極18a及びマイナス電極18bに印加される電圧の降下現象が最小限となり、ユニット1の輝度斑を低減させることができる。なお、給電部12は、板状の金属導電体を矩形に形成したもの以外に、例えば、線状の金属導電体をコイル状に形成したものであってもよい。
【0024】
図4及び図5は、本実施形態の変形例に係るユニット1を示す。ユニット1は、発光層15が、平面視において背面側素子ケース13bの開口部27内に配置されるように構成されており、その他の構成については上記と同様である。ユニット1は、平面視において背面側素子ケース13bの開口部27内に配置される放熱シート14が発熱部となる発光層15全体を覆うことができるので、封止基板17が発光素子11から剥離することを防ぎつつ、発光層15が発する熱をより放熱させることができる。
【0025】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、ユニットは、矩形のものを示したが、円形のものであっても構わない。その場合、素子ケースの開口部も、ユニットの形状に合わせて円形のものであっても構わない。
【符号の説明】
【0026】
1 ユニット(有機EL光源ユニット)
11 発光素子(有機EL発光素子)
12 給電部
13a 正面側素子ケース(素子ケース)
13b 背面側素子ケース(素子ケース)
14 放熱シート
15 発光層
16 素子基板
17 封止基板
18a プラス電極(素子電極)
18b マイナス電極(素子電極)
23 ケース壁
27 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光放出面を有する発光層が設けられる素子基板と、前記光放出面の反対側で前記素子基板に対向して配置される封止基板と、前記封止基板の外周に導出され前記素子基板に配置される素子電極と、を有する有機EL発光素子と、
前記素子電極に給電する給電部と、
前記有機EL発光素子と前記給電部を電気的に接続すると共に、機械的に固定する素子ケースと、
前記発光層が発する熱を放熱させるために前記封止基板上に取り付けられる放熱シートと、を備えた有機EL光源ユニットであって、
前記素子ケースは、前記封止基板と対向するケース壁に開口部を有すると共に、前記封止基板の少なくとも1辺の端部を保持する構造であり、
前記放熱シートは、平面視において前記素子ケースの開口部内に配置されることを特徴とする有機EL光源ユニット。
【請求項2】
前記有機EL発光素子の発光層は、平面視において前記素子ケースの開口部内に配置されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL光源ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−29041(P2011−29041A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174719(P2009−174719)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】